説明

生体情報取得システム

【課題】 被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集できる、被収集者の位置自由度が大きい生体情報取得システムを提供する。
【解決手段】 本発明の生体情報取得システムは、生体情報が収集される被収集者の身体部位に装着され、被収集者の体振動を、気密空間の気体圧の変動に変換する体振動/気体圧変換手段と、変換された気体圧の変動を電気信号に変換するセンサ手段とを有する。体振動/気体圧変換手段は、例えば、身体部位に装着される空気が挿入されている空気パッドと、空気パッドと連通したエアーチューブとでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体情報取得システムに関し、例えば、心拍数や呼吸数などの生体情報を収集するシステムに適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
個人、住居、医療機関及び地域社会を結ぶ情報インフラを用いた健康管理システムにおいて、生体情報を取り扱う個人(被収集者)の負担を軽減することが重要である。例えば、生活習慣病の把握に必要な心拍変化、体重変化などの人間の生体情報を、被収集者(又はその周囲の者)が毎日決まった時間に測定し、通信回線を介してメディカルセンターに送信し、健康状態を分析してもらうサービスが既に存在するが、このような測定を毎日決まった時間に行うことは、生体情報を取り扱う個人(被収集者)の負担が大きい。
【0003】
このような点を考慮すると、特許文献1の以下のような開示技術は好ましい。特許文献1は、密閉空気式音センサを内部に有する密閉キャビネットをベッドの床部に敷き、被収集者がベッドに載った状態における密閉キャビネットの空気圧変動を検出し、その検出信号を分析することにより、被収集者の心拍数や呼吸数などの生体情報を収集することを開示している。特許文献1の開示技術によれば、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく、生体情報を収集することができる。
【特許文献1】特開2001−276019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の記載技術は、被収集者がベッド(言い換えれば密閉キャビネット)に載らなければ生体情報を収集することができない。例えば、生体情報の被収集者が歩行しているような状況では生体情報を収集することができず、移動していなくても、ベッド以外の場所に居たときには生体情報を収集することができない。後者の場合であれば、椅子や座布団の下などにも、特許文献1の密閉キャビネットを設けて対応することも考えられるが、被収集者が居る可能性がある場所に密閉キャビネットを設けることは実際的ではない。
【0005】
そのため、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集できる、被収集者の位置自由度が大きい生体情報取得システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明の生体情報取得システムは、生体情報が収集される被収集者の身体部位に装着され、被収集者の体振動を、気密空間の気体圧の変動に変換する体振動/気体圧変換手段と、変換された気体圧の変動を電気信号に変換するセンサ手段とを有することを特徴とする。
【0007】
第1の本発明の生体情報取得システムは、生体情報が収集される被収集者が存在する気密空間室と、上記被収集者の体振動により変化する上記気密空間室の気体圧変動を、ローカルな気体圧変動に変換する体振動/気体圧変換手段と、変換されたローカルな気体圧変動を電気信号に変換するセンサ手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集できる、被収集者の位置自由度が大きい生体情報取得システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による生体情報取得システムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る生体情報取得システムの電気的な構成を示すブロック図であり、図2は、第1の実施形態に係る生体情報取得装置のベルトを展開したときの外観を示す平面図であり、図3は、第1の実施形態に係る生体情報取得装置を手首に装着したときの外観を示す斜視図である。
【0011】
図1において、第1の実施形態に係る生体情報取得システム1は、生体情報取得装置2と、生体情報処理装置3とを有する。
【0012】
生体情報取得装置2は、生体情報が収集される被収集者の体動を表す生成情報を取得(検知)して生体情報処理装置3に無線送信するものである。生体情報処理装置3は、生体情報取得装置2から送信されてきた生体情報(体振動データ)を処理し、被収集者の心拍数や呼吸数に係る情報を得るものである。
【0013】
生体情報取得装置2は、図2に示すように、被収集者の部位に巻いて装着するためのベルト10を有する。マジックテープ(登録商標)が設けられているベルト10の先端部10aを、ベルト10の基端のバックル部10bの開口に通した後、折り曲げることにより、生体情報取得装置2を被収集者の部位に装着することができる。生体情報取得装置2が装着される被収集者の部位は限定されないが、被収集者に違和感を与えない部位が好ましい。例えば、腕時計などが取り付けられることが多く、装着されたとしても違和感を覚える被収集者が少ない手首に装着することは好ましい。
【0014】
ベルト10には、空気パッド部20及び生体情報取得装置本体30が設けられており、空気パッド部20及び生体情報取得装置本体30間は、エアーチューブ25によって連結されている。
【0015】
空気パッド部20は、空気パッド21と、空気パッド21をスライド可能にベルト10に取り付ける取付部22とを有する。空気パッド21は、エアーチューブ25と共に、気密空間(大気空間)を形成しており、被収集者の部位と接触する面側は、その部位表面の振動(体振動)によって変形するように柔軟な部材で形成されている。すなわち、被収集者の体振動が、空気パッド21及びエアーチューブ25で形成される気密空間の圧力変化を引き起こすようになされている。
【0016】
生体情報取得装置本体30も、図示しないベルトとの取付構造によって、スライド可能にベルト10に取り付けられるものである。生体情報取得装置本体30は、外観からは、電源スイッチ31、データ送信ユニット(データ送信部)32、データ送信ユニット32のアンテナ32aが目視できる。この第1の実施形態の場合、データ送信ユニット32として、例えば、市販のものを流用するため外部から目視できるが、生体情報取得装置本体30の筐体内部にデータ送信ユニット(データ送信部)32が設けられていても良いことは勿論である。生体情報取得装置本体30は、電源スイッチ31及びデータ送信部32に加え、図1に示すように、電源部33、差圧センサ34及び増幅回路35を有する。
【0017】
電源部33は、当該生体情報取得装置本体30の動作用の電源を供給するものであり、例えば、電池(2次電池であっても良い)で構成されている。なお、太陽電池を利用したものであっても良い。
【0018】
電源スイッチ31は、当該生体情報取得装置本体30の動作のオンオフを指示させるものである。図1では、スライドスイッチの例を示しているが、プッシュスイッチなど、他のスイッチであっても良い。また、外観から見えない位置、例えば、当該生体情報取得装置本体30の筐体を開けなければいけない位置に設けるようにし、被収集者の無意味な操作を防止するようにしても良い。
【0019】
差圧センサ34は、基準となる気密空間と、空気パッド21及びエアーチューブ25で形成される気密空間との差圧を電気信号として取り出すものである。なお、空気パッド21及びエアーチューブ25で形成される気密空間の圧力を電気信号として取り出せるものであれば、センサの形式は問われないものである。増幅回路35は、差圧センサ34の出力信号を増幅するものであり、差圧センサ34の出力信号レベルが大きい場合には、増幅回路35は省略される。
【0020】
データ送信ユニット(データ送信部)32は、増幅回路35によって増幅された差圧センサ34の出力信号を、生体情報処理装置3に送信するものである。この第1の実施形態の場合、増幅された差圧センサ34の出力信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換した後、生体情報処理装置3に送信するものであり、そのため、「データ送信」という表現を適用している。
【0021】
なお、増幅された差圧センサ34の出力信号をデジタル信号に変換することなく送信するようにしても良い。また、送信信号に変換する前に、差圧センサ34の出力信号(アナログ信号)を、ローパスフィルタを介して帯域制限するようにしても良い。さらに、生体情報取得装置2及び生体情報処理装置3間の通信方式は限定されるものではない。例えば、ブルーツース(登録商標)やZigbeeなどの既存の近距離通信方式を適用することができる。また、データ通信方式はシリアル通信を意図しているが、データ送信ユニット(データ送信部)32がバッファメモリを備えて、所定量のデータが蓄積される毎に間欠的に送信するものであっても良い。
【0022】
データ送信ユニット(データ送信部)32を、コネクタを介して、生体情報取得装置本体30に着脱自在に設け、データ送信ユニット(データ送信部)32を取り替えることで、異なる通信方式などに対応できるようにしても良い。
【0023】
生体情報処理装置3は、機能的には、図1に示すように、データ受信部40、心拍成分抽出部41、心拍数計測部42、呼吸成分抽出部43、呼吸数計測部44及び画面表示部45を有する。
【0024】
データ受信部40は、生体情報取得装置本体30のデータ送信部32に対応するものであり、データ送信部32が無線送信したデジタル信号(差圧センサ34の検知信号;以下、体振動データと呼ぶ)を受信するものである。生体情報処理装置3としては、例えば、パソコンを適用でき、データ受信部40としては、パソコンのスロットやUSBコネクタなどに装着し得る通信ユニットを適用できる。データ受信部40は、受信した体振動データを、心拍成分抽出部41、呼吸成分抽出部43及び画面表示部45に与える。
【0025】
心拍成分抽出部41は、入力された体振動データから心拍成分を抽出するものである。体調が悪いときをも考慮すると、心拍数は1分間に60〜120回程度であるので、例えば、60/60Hz(=1Hz)〜120/60(=2Hz)を含む範囲を通過帯域(例えば1〜4Hz)とするバンドパスフィルタ(デジタルフィルタ)を、心拍成分抽出部41として適用する。心拍成分抽出部41は、抽出した心拍成分データを、心拍数計測部42及び画面表示部45に与える。
【0026】
図4は、心拍成分の抽出結果例を示している。図4(A)は、差圧センサ34の出力信号(体振動信号)を示しており、図4(B)は、その差圧センサ34の出力信号に対し、心拍成分抽出部41であるバンドパスフィルタを介した後の波形(心拍成分データ)を示している。図4(C)は、図4(A)の体振動信号を得る際に同時に測定した心電図の波形を示している。図4(B)及び(C)の比較から、差圧センサ34の出力信号(体振動信号)に対し、フィルタリングすることにより、心拍成分が抽出できていることが分かる。なお、図4(B)における1拍当たりの2つの山は、周知のように、心臓の収縮による山(前半)とその血管による反射の山(後半)である。
【0027】
心拍数計測部42は、入力された心拍成分データから心拍数を計数するものである。心拍数計測部42は、例えば、心拍成分データをFFT変換(高速フーリエ変換)し、心拍数範囲を考慮した周波数範囲内で、最もパワーが高い成分の周波数を回数に変換することで心拍数を捉える。心拍数計測部42は、得られた心拍数データを画面表示部45に与える。なお、心拍数計測部42として、上述した方法に代え、既存のいずれかの方法によって心拍数を計数するものを適用するようにしても良い。
【0028】
呼吸成分抽出部43は、入力された体振動データから呼吸成分を抽出するものである。呼吸数は1分間に10〜20回程度であるので、例えば、10/60Hz〜20/60Hzを含む範囲を通過帯域(例えば、0〜1Hz)とするローパスフィルタ又はバンドパスフィルタ(デジタルフィルタ)を、呼吸成分抽出部43として適用する。呼吸成分抽出部43は、抽出した呼吸成分データを、呼吸数計測部44及び画面表示部45に与える。
【0029】
図5は、呼吸成分の抽出結果例を示している。図5(A)は、差圧センサ34の出力信号(体振動信号)を示しており(上述した図4(A)と同一データ)、図5(B)は、その差圧センサ34の出力信号に対し、呼吸成分抽出部43であるフィルタを介した後の波形(呼吸成分データ)を示している。図5(C)は、図5(A)の体振動信号を得る際に同時に測定した鼻先での空気圧の変化波形を示している。図5(B)及び(C)の比較から、差圧センサ34の出力信号(体振動信号)に対し、フィルタリングすることにより、呼吸成分が抽出できていることが分かる。
【0030】
呼吸数計測部44は、入力された呼吸成分データから呼吸数を計数するものである。呼吸数計測部44は、例えば、呼吸成分データをFFT変換(高速フーリエ変換)し、呼吸数範囲を考慮した周波数範囲内で、最もパワーが高い成分の周波数を回数に変換することで呼吸数を捉える。呼吸数計測部44は、得られた呼吸数データを画面表示部45に与える。なお、呼吸数計測部44として、上述した方法に代え、既存のいずれかの方法によって呼吸数を計数するものを適用するようにしても良い。
【0031】
画面表示部45は、入力された体振動データ、心拍成分データ、心拍数、呼吸成分データ、呼吸数を画面表示するものである。なお、体振動データ、心拍成分データ、心拍数、呼吸成分データ及び呼吸数の任意のデータを、画面表示に代え、又は、画面表示に加え、印刷出力したり、記憶したりするようにしても良く、さらに、他の装置に送信するようにしても良い。また、被収集者の標準的な心拍数や呼吸数との比較を自動的に行い、容体の判定などを行うようにしても良い。
【0032】
図1では、生体情報取得装置2と生体情報処理装置3と1対1の関係のように示したが、図6に示すように、複数(図6は3個の例を示している)の生体情報取得装置2−1〜2−3が、生体情報処理装置3を共有するものであっても良い。この場合には、例えば、生体情報取得装置2−1〜2−3が、異なる周波数の搬送波で送信したり、異なる拡散符号を適用して拡散して送信したりし、一方、生体情報処理装置3は、各チャネルの受信データを、バッファリングしながら、共通構成を適用して時分割に処理し、又は、並列構成によって並列的に処理し、時分割でチャネルを切り替えて表示出力するようにすれば良い。また例えば、生体情報処理装置3が、監視者の操作に応じて、生体情報取得装置2−1〜2−3に送信権を付与するようにしても良い。
【0033】
(A−2)第1の実施形態の動作
生体情報の収集対象である被収集者には、その手首に生体情報処理装置3を装着させる。また、生体情報処理装置3は電源スイッチ31をオンする。
【0034】
この状態においては、被収集者が位置を停止させていても、また、移動していても、心拍動や呼吸動作に伴って生じる体振動により、空気パッド21及びエアーチューブ25で形成される気密空間の圧力が変化し、体振動に応じた体振動信号が差圧センサ34から出力される。このようなセンサ検知信号は、増幅回路35で増幅された後、データ送信部32によって、デジタル信号(体振動データ)に変換されて生体情報処理装置3に送信される。
【0035】
生体情報処理装置3においては、生体情報取得装置2から送信されてきた体振動データをデータ受信部40が受信し、心拍成分抽出部41、呼吸成分抽出部43及び画面表示部45に与えられる。
【0036】
心拍成分抽出部41においては、受信された体振動データから心拍成分データが抽出され、抽出された心拍成分データが、心拍数計測部42及び画面表示部45に与えられる。そして、心拍数計測部42によって、心拍成分データから心拍数が計数されて画面表示部45に与えられる。
【0037】
呼吸成分抽出部43においては、受信された体振動データから呼吸成分データが抽出され、抽出された呼吸成分データが、呼吸数計測部44及び画面表示部45に与えられる。そして、呼吸数計測部44によって、呼吸成分データから呼吸数が計数されて画面表示部45に与えられる。
【0038】
以上のようにして、画面表示部45には、体振動データ(原データ)、心拍成分データ、心拍数、呼吸成分データ、呼吸数が与えられ、これらデータが表示される。
【0039】
(A−3)第1の実施形態の効果
上記第1の実施形態によれば、システムが自動的に生体情報を得ているので、生体情報を得るために毎日の測定操作を被収集者が意図して実行する必要がない。すなわち、被収集者の心身を拘束することはない。また、収集のためには、電源オンだけを実行すれば良く、被収集者に対する操作負担も小さい。
【0040】
また、上記第1の実施形態によれば、生体情報処理装置3が被収集者に装着されているので、測定場所は限定されず、被収集者が移動中にも生体情報を収集することができる。例えば、老人などの徘徊者に装着した場合には、徘徊先で容体が急変したような場合でも、そのことを、生体情報処理装置3をモニタすることで認識することができる。
【0041】
さらに、第1の実施形態の生体情報取得装置2は、手首に巻く、腕時計と同様なものであるので、装着を嫌う被収集者が少ないと推測でき、実用性が高いことが期待できる。
【0042】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による生体情報取得システムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0043】
第2の実施形態に係る生体情報取得システムは、生体情報取得装置2の装着構成及び装着方法が第1の実施形態と異なり、その他の点は第1の実施形態と同様である。
【0044】
図7は、第2の実施形態に係る生体情報取得装置2の装着方法の説明図であり、第1の実施形態に係る図3との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0045】
第2の実施形態に係る生体情報取得装置2は、図7に示すように、生体情報取得装置30がヘルメット36に取り付けられ、空気パッド部20が被収集者の首の後ろ側に装着される。空気パッド部20は、例えば、図示しない絆創膏によって取り付けられる。その他は、第1の実施形態と同様である。
【0046】
例えば、徘徊老人には、徘徊時に頭部に怪我をしないようにヘルメット36をかぶせることが行われている。このようなヘルメット36に対し、生体情報取得装置2を取り付けることができる。
【0047】
第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集することができ、しかも、被収集者の位置自由度が大きい、という効果を奏することができる。
【0048】
(C)第3の実施形態
次に、本発明による生体情報取得システムの第3の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0049】
第3の実施形態に係る生体情報取得システムは、体振動を取得するために、身体に取り付ける構成部分が、既述した実施形態と異なり、その他の点は既述した実施形態と同様である。
【0050】
図8は、第3の実施形態の特徴点を説明するための図面であり、後述する耳栓を外耳道に挿入した状態を示している。
【0051】
第3の実施形態の生体情報取得装置は、差圧センサ33(図1参照)につながっているエアーチューブ25の先端には、概ね釣鐘状の耳栓26が設けられている。エアーチューブ25は、耳栓26の中心軸を貫通して耳栓26の先端まで到達している。耳栓26は、外耳道を損傷しないような弾性を有する材質、例えば、シリコンで形成されている。
【0052】
この第3の実施形態の場合、エアーチューブ25の先端には、空気パッド21が設けられておらず、開口したままとなっている。
【0053】
耳栓26をインナーイヤホンのように外耳道50に挿入すると、鼓膜51と耳栓26とに囲まれた外耳道腔が形成される。この外耳道腔及びエアーチューブ25で形成される気密空間の圧力は、被収集者の体振動に応じて変化する。この圧力変化を差圧センサ33が検知した以降の処理は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0054】
なお、第3の実施形態の場合、生体情報取得装置本体30(図2参照)は、例えば、上着の胸ポケットに収容しておけば良い。
【0055】
第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集することができ、しかも、被収集者の位置自由度が大きい、という効果を奏することができる。
【0056】
さらに、第3の実施形態によれば、外耳道腔の圧力(空気圧)変化を捉えるようにしているので、体表面の振動を捉えるより、高精度に体振動を捉えることができる。
【0057】
(D)第4の実施形態
次に、本発明による生体情報取得システムの第4の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0058】
第4の実施形態に係る生体情報取得システムは、生体情報取得装置が身体に装着しないで体振動を取得しようとしたものである。
【0059】
図9は、第4の実施形態に係る生体情報取得装置を浴室内に取り付けた状態を示す概略斜視図であり、第1の実施形態に係る図3との同一、対応部分には同一、対応符号を付して示している。
【0060】
図9において、第4の実施形態に係る生体情報取得装置3は、ダイヤフラムヘッド部60及び生体情報取得装置本体30と、ダイヤフラムヘッド部60及び生体情報取得装置本体30を結ぶエアーチューブ25とを有する。生体情報取得装置本体30及びエアーチューブ25は、第1の実施形態のものと同様である。なお、図9では、生体情報取得装置本体30も浴室内に設けたものを示したが、生体情報取得装置本体30を浴室外に設けるようにしても良い。
【0061】
ダイヤフラムヘッド部60は、聴診器のヘッドと同様な構造を有し、その振動板側を浴室の内方に向けて浴室の壁面61に取り付けられている。
【0062】
浴室は、水気が他の部屋などに行かないように気密性が高くなっている。そのため、被収集者が安定して浴槽に浸かっているときや、被収集者が浴室内で安定して佇んでいるときなどの体振動は、浴室内の空気圧を変動させ、ダイヤフラムヘッド部60のダイヤフラムを変動させる。これにより、ダイヤフラムヘッド部60及びエアーチューブ25で形成される気密空間の圧力も変化する。この圧力変化を差圧センサ33が検知した以降の処理は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0063】
第4の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、被収集者を心身共に拘束することなく、かつ、被収集者に操作負担をかけることなく生体情報を収集することができる。また、第4の実施形態によれば、浴室内に限定されるが、被収集者の位置自由度は大きい。
【0064】
例えば、浴室内で倒れているような状況での体振動は容易に捉えることができ、通常時の心拍数や呼吸数との比較から、被収集者の異常を他の者が認識することができる。
【0065】
(E)他の実施形態
本発明の技術思想は、上述した各実施形態の構成のものに限定されず、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0066】
第1及び第2の実施形態では空気パッド部21を利用したものを示したが、第4の実施形態のようなダイヤフラムヘッド部60を適用するようにしても良い。逆に、第4の実施形態のダイヤフラムヘッド部60の部分を、第1及び第2の実施形態における空気パッド部21に置き換えるようにしても良い。
【0067】
第1及び第2の実施形態では、空気パッド部21を手首や首(の後ろ側)に装着するものを示したが、装着する身体の部位はこれに限定されるものではない。例えば、腕、胸、腰、尻などであっても良く、これらの部位に装着して、心拍数及び呼吸数を計測できることを確認済みである。
【0068】
第4の実施形態では、生体情報取得装置3のダイヤフラムヘッド部60を浴室内に設けたものを示したが、他の気密空間内に、生体情報取得装置3のダイヤフラムヘッド部60を設けるようにしても良い。例えば、保育器に、第4の実施形態の技術思想を適用するようにしても良い。
【0069】
上記各実施形態では、生体情報取得装置2から生体情報処理装置3へ体振動信号(体振動データ)を送信するものを示したが、生体情報取得装置2が、心拍数や呼吸数などの加工した生体情報を得て、その得た生体情報を生体情報処理装置3へ送信するようにしても良い。また、電源部33を構成する電池の残容量が少ないことを表す情報や、体温などの体振動以外の情報を、生体情報取得装置2から生体情報処理装置3へ送信するようにしても良い。
【0070】
上記各実施形態では、生体情報取得装置2と生体情報処理装置3との通信が無線通信のものを示したが、有線通信であっても良い。
【0071】
上記各実施形態では、生体情報取得装置2と生体情報処理装置3とが別個の装置になっているものを示したが、生体情報取得装置2と生体情報処理装置3とが1個の装置で構成されていても良い。
【0072】
また、生体情報取得装置2におけるエアーチューブ25を省略し、空気パッド部20若しくはダイヤフラムヘッド部60と、生体情報取得装置本体30とが直結されたものであっても良い。
【0073】
上記各実施形態では、生体情報処理装置3が心拍成分(心拍成分信号)、心拍数、呼吸成分(呼吸成分信号)、及び、呼吸数を得るものを示したが、この一部の情報だけを得るようにしても良い。また、他の情報(例えば、いびきでの信号波形)を得るようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1の実施形態に係る生体情報取得システムの電気的な構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る生体情報取得装置のベルトを展開したときの外観を示す平面図である。
【図3】第1の実施形態に係る生体情報取得装置を手首に装着したときの外観を示す斜視図である。
【図4】第1の実施形態における体振動データから抽出した心拍成分データを示す信号波形図である。
【図5】第1の実施形態における体振動データから抽出した呼吸成分データを示す信号波形図である。
【図6】第1の実施形態に係る生体情報取得システムの変形実施形態を示す説明図である。
【図7】第2の実施形態に係る生体情報取得装置をヘルメットに装着したときの外観を示す斜視図である。
【図8】第3の実施形態に係る耳栓を外耳道に挿入した状態を示す説明図である。
【図9】第4の実施形態に係る生体情報取得装置を浴室内に取り付けた状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1…生体情報取得システム、2…生体情報取得装置、3…生体情報処理装置、20…空気パッド部、25…エアーチューブ、26…耳栓、30…生体情報取得装置本体、32…データ送信部、34…差圧センサ、40…データ受信部、41…心拍成分抽出部、42…心拍数計測部、43…呼吸成分抽出部、44…呼吸数計測部、60…ダイヤフラムヘッド部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報が収集される被収集者の身体部位に装着され、被収集者の体振動を、気密空間の気体圧の変動に変換する体振動/気体圧変換手段と、
変換された気体圧の変動を電気信号に変換するセンサ手段と
を有することを特徴とする生体情報取得システム。
【請求項2】
上記体振動/気体圧変換手段が、身体部位に装着される空気が挿入されている空気パッドと、空気パッドと連通したエアーチューブとでなり、上記エアーチューブが上記センサ手段に接続していることを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得システム。
【請求項3】
上記体振動/気体圧変換手段が、上記センサ手段に接続しているエアーチューブと、上記エアーチューブの先端に、上記エアーチューブを閉鎖しないように設けられた耳栓とを有し、上記耳栓を外耳道に挿入することにより、鼓膜までの外耳道を含めて、上記気密空間を形成することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得システム。
【請求項4】
生体情報が収集される被収集者が存在する気密空間室と、
上記被収集者の体振動により変化する上記気密空間室の気体圧変動を、ローカルな気体圧変動に変換する体振動/気体圧変換手段と、
変換されたローカルな気体圧変動を電気信号に変換するセンサ手段と
を有することを特徴とする生体情報取得システム。
【請求項5】
上記気密空間室が浴室であることを特徴とする請求項4に記載の生体情報取得システム。
【請求項6】
上記センサ手段の出力信号を処理し、心拍数に関係する情報及び呼吸数に関係する情報を得る信号処理手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の生体情報取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−237847(P2008−237847A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86979(P2007−86979)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(501061319)学校法人 東洋大学 (68)
【Fターム(参考)】