説明

生体情報取得装置

【課題】処理装置の回路基板の大型化や光源の高出力化することなく光音響信号の強度を上げ、SNRを向上させること。
【解決手段】光源4が発した光を被検体に向けて出射する出射端部3aとを備える光照射手段1と、出射された光の被検体への照射を制御する照射制御手段6aと、光の照射を受けて被検体が発する音響波を受信して電気信号を出力する複数振動子を備える探触子2と、探触子が備える複数の振動子の内の一部の振動子からの電気信号を受ける受信手段と、受信手段が受ける電気信号を出力する一部の振動子を他の一部の振動子に切り替える探触子制御手段とを有する生体情報取得装置6であって、照射制御手段は、照射端部から出射する光が光源が発した光の総光量を維持しつつ、被検体への該光の照射領域の大きさが前記探触子の大きさよりも小さく且つ該照射領域が一部の振動子の位置に該当するように、出射端部の被検体に対する位置を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被検体に照明光を照射し、被検体から放出された超音波を画像化する生体情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
がんに起因して発生する血管新生を特異的に画像化する方法として、光音響トモグラフィ(以下、PAT;Photoacoustic tomography)が注目されている。PATは照明光(近赤外線)を被検体に照明し、被検体内部から発せられる光音響波を超音波探触子で受信して画像化する方式の技術である。このPATについて、非特許文献1で述べられている光音響装置の模式図を図9に示す。図9において、光音響プローブ101は被検体から発せられた光音響波を受信する128個の素子(振動子)からなる探触子102と、被検体へ照明光を照射するための照明光学系105からなる。超音波装置100内は受信32チャンネルのシステムであり、その処理装置106は、探触子102で受信した光音響信号を画像化する。その際、ファンクションジェネレータからのトリガ信号に基づき、レーザ光源104から照明光を発し、これに同期させて光音響信号を探触子102で取得する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.Park et al.,Beamforming for photoacoustic imaging using linear array transducer,2007 IEEE Ultrasonics Symposium,2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の技術では以下のような課題があった。
【0005】
非特許文献1は、受信32チャンネルの超音波装置100と128個の素子のリニアプローブ(探触子102)を使用してPAT画像と超音波画像を取得している。つまり、一度に32個の素子から情報を得て、この情報に基づき画像を取得している。このように、PAT画像を取得する際、一度に受信できるチャンネル数が探触子102の素子数よりも少ないため、PATの取得画像の開口が狭くなる。そうすると、画像化した際に、取得した画像の幅が狭くなってしまう。一方、PATの取得画像の開口を広げるために一度に受信できるチャンネル数(素子数)を増やすことは、処理装置106の回路規模を大きくしてしまう。
【0006】
また、一度に受信できる素子数が32チャンネル(32素子)であるが、探触子102に隣接する全素子数(128素子)分の幅に照明光を照射しているため、受信に寄与しない96素子分の幅の照明光が無駄になってしまう。光音響の初期音圧pはp=Γμaφ(Γ:グリューナイゼン係数、μa:吸収係数、φ:光量)で表すことができる。そのため同じ照明光の照射量で、探触子102に隣接する幅全体(128素子分)に照射したときの光音響の初期音圧と、32素子分の開口幅に照射したときの光音響の初期音圧とでは四倍の差が生じる。これは、前者の場合は被検体内部の組織(吸収体)への光量φが概ね1/4になるため、その部分から発せられる初期音圧pが概ね1/4になってしまうことに起因する。したがって、探触子102が受信できる信号強度が低下してしまう。それに対して、発する光の総量(総光量)の大きな光源104を適用しても、光音響信号の初期音圧を向上させることが可能であるが、この場合、光源104の大型化や入手が困難といった課題が生じる。
【0007】
本発明はこのような背景技術の問題点に鑑み発明したものである。
【0008】
本発明の目的は、光音響信号の受信処理を行う回路規模を大型化させることなく、かつ光源を高出力化させることなく、光音響信号の強度を上げることにより、SNR(signal noise ratio)を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、光源と該光源が発した光を被検体に向けて出射する出射端部とを備える光照射手段と、
前記光照射手段の出射端部から出射された光の被検体への照射を制御する照射制御手段と、
前記光照射手段からの光の照射を受けて前記被検体が発する音響波を受信して電気信号を出力する複数振動子を備える探触子と、
前記探触子が備える複数の振動子の内の一部の振動子からの前記電気信号を受ける受信手段と、
前記受信手段が受ける電気信号を出力する一部の振動子を他の一部の振動子に切り替える探触子制御手段と
を有する生体情報取得装置であって、
前記照射制御手段は、前記照射端部から出射する光が前記光源が発した光の総光量を維持しつつ、前記被検体への該光の照射領域の大きさが前記探触子の大きさよりも小さく且つ該照射領域が前記一部の振動子の位置に該当するように、前記出射端部の前記被検体に対する位置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、受信手段の規模を大型化させることなく、かつ光源を高出力化させることなく、SNRが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の装置構成を説明する図である。
【図2】本発明の実施例1の切替え方法を説明する図である。
【図3】本発明の実施例1の切替え装置の構成を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1の切り替え装置の他の構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2の装置構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施例2の切替え方法と構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施例2の切り替え装置の他の構成を説明する図である。
【図8】本発明の実施例3の装置構成を説明する図である。
【図9】背景技術を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を用いて、本実施の形態を説明する。図1はハンドヘルド型の生体情報取得装置である光音響装置100を模式的に図示したものである。生体情報取得装置である光音響装置100は、光照射手段と、光照射手段から出射される光を制御する照射制御手段と、光の照射を受けて被検体が発する音響波を受信する複数の振動子を備えた探触子と、探触子が備える振動子が発する電気信号を受ける受信手段と、探触子が備える複数の振動子の内の電気信号を出力する振動子の組み合わせを切り替える探触子制御手段とを備える。それぞれについて、以下詳述する。
【0013】
光照射手段は、照明光を発する光源4と、光源4が発した光を不図示の被検体に向けて出射する出射端部である出射端3aとを備えている。図1に示す本実施の形態においては、出射端部はバンドルファイバ3の端部3aである。尚、図1では好ましい形態として光源4と出射端部である出射端3aとの間に照明光学系5を介在させている。
【0014】
照射制御手段は、光照射手段の出射端部から出射された光の被検体への照射を制御するものであり、図1に示す本実施の形態においては、切り替え装置8と、これを制御する制御装置6aとで構成される。切り替え装置8は、光源4と照明光学系5との間に設けられ、光源4が発した光の照明光学系5への入射を切り替えるものである。そして、切り替え装置8の動作は、制御装置6aからの切り替え情報に基づいて行われる。
【0015】
探触子2は、内部に複数の振動子2a(後述の図2(a)参照)を備え、振動子2aは、光照射手段の出射端部である出射端3aからの光の照射を受けて被検体が発する音響波を受信して電子信号を出力するものである。尚、本発明においては、探触子2または探触子2が備える振動子2aと、上述の出射端部である出射端3aとの関係が特徴の1つであるため、以下の説明においては、探触子2と出射端3aとを総称して、光音響プローブ1と称する場合がある。
【0016】
受信手段である処理装置6は、探触子2が備える複数の振動子2aの内の一部の振動子2aからの電気信号を受けるものである。尚、本実施の形態ではより好ましい形態として、受信手段である処理装置6は、探触子2が備える振動子2aが受信した音響波に基づく電気信号に増幅処理、ディジタル変換処理、また画像再構成処理などの様々な処理を施し、画像情報をモニタ7に表示させる。
【0017】
探触子制御手段は、受信手段が受ける電気信号を出力する一部の振動子を他の一部の振動子に切り替えるものであり、図1に示す本実施の形態においては、上述の制御装置6aで構成される。つまり、図1に示す本実施の形態においては、制御装置6aは、照射制御手段の一部と探触子制御手段の両者を担っている。
【0018】
そして、本実施の形態においては、照射制御手段である切り替え装置8とこれを制御する制御装置6aとが、照射端部である出射端3aから出射する光が光源4が発した光の総光量を維持しつつ、不図示の被検体への光の照射領域の大きさが探触子2の大きさよりも小さくように制御する。そして更にその照射領域が、受信手段が受信する電気信号を出力する一部の振動子の位置に該当するように、出射端部である出射端3aの被検体に対する位置を制御する。尚、ここで、被検体への光の照射領域は出射端3aの面積と等価である。
【0019】
上述のように、本実施の形態においては、受信手段は、探触子2が備える複数の振動子2aの内の一部の振動子2aからの電気信号を受けるものであるため、受信手段の回路規模を大型化させることなく生体情報を取得することが可能となる。
【0020】
更に、探触子制御手段が、受信手段が受ける電気信号を出力する一部の振動子2aを他の一部の振動子2aに切り替えるものである。また、照射制御手段は、照射端部から出射する光が光源4が発した光の総光量を維持させる。更に照射制御手段は、被検体への光の照射領域の大きさが探触子2の大きさよりも小さく、且つ受信手段が受信する電気信号を出力する一部の振動子の位置に該当するように、出射端部の被検体に対する位置を制御するものである。これらによって、光源4を高出力化させることなく、光音響波の音圧を上げることが出来、結果SNRを向上させることが可能となる。そして、探触子2の大きさを充分に活用した音響波の取得が可能となる。
【0021】
以下、本発明を実施例でより詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
実施例1ではハンドヘルド型光音響装置について、図1を用いて説明する。光音響プローブ1は被検体から発せられた光音響波を受信する探触子2と、被検体へ近赤外線からなる照明光を照射する照射端からなる。一例として、探触子2はリニアプローブとし、照射端まで複数のバンドルファイバ3を設けた。尚、探触子2は、光音響波を受信して電気信号を出力する振動子2aを複数備えている(図2(a)参照)。図1はバンドルファイバの出射端3aから被検体への照明光学系を不図示としたが、バンドルファイバの出射端3aから直接被検体を照射しても良いし、拡散板など任意の光学系を設けても良い。また、被検体までの照明光の引き回しはバンドルファイバ3を使用せず、遮光筒に設けたミラーの組み合わせによる空中伝搬などでも有効である。さらに、バンドルファイバの出射端3aは探触子2の片側にのみ図示したが、これに限定されず、探触子2に対称に挟むように設けても良い。
【0023】
近赤外線は光源4で発生し、照明光学系5によってビーム成形され、バンドルファイバ3へ入射される。光源1はNd:YAGレーザやアレクサンドライトレーザなどパルスレーザを用いる。このほか、Nd:YAGレーザ光を励起光とするTi:saレーザやOPOレーザを用いても良い。
【0024】
出射端3aは光音響プローブ1側のバンドルファイバの数に応じて複数有している。複数の出射端3aは探触子2に隣接して設けられている。そして、いずれか一つのバンドルファイバの出射端3aまで光源4から発せられた照明光の実質的な総光量を伝搬させる。換言すると、光源4が発した光の総光量を出射端3aまで維持して伝搬させる。なお、ここで述べた光源4からの実質的な総光量とは、複数の照射位置へ照明光を照射するためにハーフミラーなどで分岐させずに、一回の光音響データ取得時に一箇所の照射位置にのみ照射可能な総光量を照射するという意味である。したがって、伝搬中の光の減衰や反射、あるいは光量測定やトリガ取得のための分岐による総光量の低下があっても、それは無視する。さらに、一箇所の照射位置からほぼ光源4からの総光量を照射し、それ以外の照射位置から微量な光量で照明光を照射させる場合でも、光源4からの実質的な総光量と解す。
【0025】
バンドルファイバの出射端3aの面積(被検体への照射領域の大きさ)は、探触子2の受信開口幅(開口素子数)とその直角方向の奥行きの積から決まる。尚、以下においても、開口幅、開口(受信開口)等を用いて説明する場合があるが、開口とは、音響波を受けて受信手段である処理装置6に電気信号を出力する一部の素子(探触子2の一部の素子)のことである。これは換言すると、受信手段である処理装置6が受ける電気信号を出力する一部の振動子2aのことである。そして出射端3aの面積は、皮膚の最大許容露光量(MPE;Maximum Permissible Exposure)以下で光量が出来る限り大きくなるように、奥行きを光源4からの実質的な総光量に応じて狭くする。こうすることで、照明光の一回当たりの照射に対する光音響波が大きくなる。尚、被検体への光の照射領域は出射端3aの面積と等価である。また、図1では光音響波を一度に取得できる開口幅(開口素子数であり、探触子が備える複数の振動子の内の一部の振動子を意味する)が、全幅の1/4とした場合を図示している。そのため、バンドルファイバの出射端3aを四個設け、各々の出射端の幅を開口幅と一致させた。なお、被検体への照明位置の分割(バンドルファイバの出射端3aの個数)は四分割に限定されない。一度に取得できる受信可能な開口幅が全体の半分であれば、二分割にするなど、光音響波の取得受信開口幅(開口素子数)に応じて決定できる。そして、切替えられた照明光の照射位置に隣接する探触子2の振動子からなる素子を用いて、処理装置6は振動子からなる素子が出力する電気信号を取得する。尚、探触子2の素子とは、探触子2が備える振動子からなる音響波受信素子を意味し、この素子は、通常複数の振動子で構成されるため、探触子2は、複数の振動子からなる素子(音響波受信素子)を複数備えていることになる。そして、探触子2は一部の素子からの電気信号を処理装置6に出力しているので、結果、処理装置6は、探触子2が備える複数の振動子の一部の振動子からの電気信号を受けている。ただし、以下の図2(a)においては、発明の理解を容易にするため、構成及び図示を簡略化して、1つの素子を1つの振動子2aと対応させて図示している。
【0026】
また探触子2の素子数が128素子であり、処理装置6が取得できるチャンネル数(素子数)が32チャンネル(32素子)だとしても、これよりも少ない開口幅(例えば16素子分)に分割(例えば八分割)して本実施例を適用しても良い。これは光源4の出力が低い場合に好適である。
【0027】
照明光の一部を分岐して測定されるフォトダイオード(不図示)からの出力をトリガ信号とし、処理装置6はそのトリガ信号が入力されたら、探触子2は光音響波を取得し、これに基づく電気信号(以下音響波信号という場合もある)を出力する。そして、この電気信号を増幅、ディジタル変換、画像再構成などを行い、画像情報を生成し、モニタ7に表示させる。なおトリガ信号はフォトダイオードに限定されず、信号発生器(ファンクションジェネレータ)で光源4の発光と処理装置6への入力トリガを同期させる方法でも有効である。
【0028】
照射制御手段の一部である切替え装置8は、照明光の照射位置を変更させるために設けたものである。図1では、光源4と照明光学系5との間に切替え装置8を設け、処理装置6内の、照射制御手段の一部である制御装置6aからの切替え情報に基づき、照明光学系5への入射を切替える。そのため、切替えによって各バンドルファイバの出射端3aから照射される光源4からの実質的な総光量は維持され且つ一定となる。制御装置6aは、複数の出射端3aの中から探触子2の受信開口に隣接するバンドルファイバの出射端3aを選択し、そのバンドルファイバの出射端3aに対応した照明光学系5へ光源4からの照明光を入射するように切替え装置8を動作させる。なお、図1に示した切替え装置8と照明光学系5の順番は任意であり、反対にしても有効である。
【0029】
次に、照射位置を切り替える制御装置6aについて図2を用いて説明する。なお、図2(a)は光音響プローブ1の正面図を示し、探触子2は複数の振動子2aを備えるリニアプローブとしている。尚、探触子2の種類はリニアプローブに限定されず、コンベックスプローブにも適用できる。
【0030】
図2(a)において、探触子2の受信素子数は128チャンネルあり、処理装置6が一度に取得可能なチャンネル数が32チャンネルとする。すなわち、チャンネル番号0−31ch(受信開口A)と、32−63ch(受信開口B)、64−95ch(受信開口C)、96−128ch(受信開口D)に分け、処理装置6は受信開口Aから受信開口Dまで順番に光音響波に基づく電気信号(光音響信号)を受信することになる。
【0031】
つぎに、図2(b)のタイミングチャートを用いて説明する。光源4のレーザ発光が10Hzとすると、発光間隔は100msとなる。まず受信開口Aの素子で光音響信号(電気信号)を受信するためには、制御装置6aが切替え手段8を駆動し、受信開口Aの素子に隣接したバンドルファイバの出射端3aから照明光を照射させる。そして、その照射と同期させて受信開口Aの素子を使い、処理装置6は光音響信号(電気信号)を取得する(図2(b)では30μs)。光源のレーザ発光から次のレーザ発光までの間(図2(b)中では発光してから50μs後)に受信開口Bの素子に隣接したバンドルファイバの出射端3aが照明光を照射させるように、制御装置6aが切替え手段8を駆動する。そして、その照射と同期させて受信開口Bの素子を使い、処理装置6は光音響信号(電気信号)を取得する。同様に、次のレーザ発光までの間に受信開口Cの素子に隣接したバンドルファイバの出射端3aが照明光を照射させるように、制御装置6aが切り替え手段8を駆動し、その照射と同期させて受信開口Cの素子から処理装置6は光音響信号(電気信号)を取得する。そしてさらに、次のレーザ発光までの間に受信開口Dの素子に隣接したバンドルファイバの出射端3aが照明光を照射させるように、制御装置6aが切り替え手段8を駆動し、その照射と同期させて受信開口Dの素子から処理装置6は光音響信号(電気信号)を取得する。これで探触子2の全素子分の開口からの光音響信号を取得できたことになる。複数回の光音響信号を取得する場合は、再び次のレーザ発光までの間に受信開口Aの素子に隣接したバンドルファイバの出射端3aが照明光を照射させるように、制御装置6aが切り替え手段8を駆動し、その照射と同期させて受信開口Aの素子から処理装置6は光音響信号(電気信号)を取得し、これを繰り返す。
【0032】
なお、ここで説明したバンドルファイバの出射端3aの切替えと、受信開口AからDまでの順番はこれに限定されず、連続して同じバンドルファイバの出射端3aから出射させなければ良い。例えば、受信開口Cで最初に光音響信号(電気信号)を取得し、受信開口A、受信開口D、受信開口Bと続けても良い。さらに、探触子2の素子数や処理装置6のチャンネル数、同期タイミングのディレイタイムや受信時間などは変更できる。
【0033】
また、光音響信号取得後、次のレーザ発光までの間は、超音波画像を取得しても良い。
【0034】
つぎに、図3(a)から(c)、また図4(a)、図4(b)を用いて、切替え装置8について説明する。なお、図3(a)、図3(b)と図4(a)、図4(b)は切替え装置8の説明を簡単にするため、探触子2の全素子幅に対して受信開口幅を二分割するように示したが、当然、図1や図2(a)のように受信開口を四分割する場合にも適用できる。また全ての照明光学系5を不図示とした。
【0035】
図3(a)の切替え装置8はミラー8dを用い、光路を切替えるミラー8dをアクチュエータ8cで動けるものとする。A側のバンドルファイバの入射端3bへ照明光を入射するためにはアクチュエータ8cに設けたミラー8dがその光を反射するように駆動させる。また、図3(b)に示すように、B側のバンドルファイバの入射端3bへ照明光を入射するためにはアクチュエータ8cに設けたミラー8dがその光に当たらないように駆動させる。いずれの駆動も、A側/B側の照明位置情報に基づき制御装置6aによって、アクチュエータ8cを駆動制御する。図3(a)、図3(b)は2分割を前提に図示したが、さらに分割数が増えた場合、一例として四分割とした場合は図3(c)のようにアクチュエータ8c上のミラー8dを位置決めすることにより、A側からD側を選択して切替える構成でも良い。
【0036】
さらに図4(a)の切換え装置8は全反射型のミラー8dの代わりに、ポリゴンミラー8aを適用している。ポリゴンミラー8aは光源4の発光周波数に同期して回転し、A側とB側のバンドルファイバの入射端3bへ入射するよう調整されている。ポリゴンミラー8aを用いてより多くの切替えが必要な場合、バンドルファイバの入射端3bを増やし、ポリゴンミラー8aの回転速度を落とせば良い。また制御を簡単にするため、ポリゴンミラー8aの回転速度を一定にすることが好ましく、バンドルファイバの入射端3bをポリゴンミラー8aの回転軸を中心に角度が等間隔なるように設ける。
【0037】
図3(a)から図3(c)及び図4(a)では光路を切替えるために、アクチュエータ8cでミラー8dを駆動させる方法や、ポリゴンミラー8aを使用する方法について説明した。しかしこれらに限定されず。切替え装置8はガルバノミラーや音響光学偏向素子(AOD)などの光学素子も適用可能である。
【0038】
また、図4(b)のように切替え装置8は複数の光源を用いて、不図示の制御装置6aからの照明位置情報に基づき発光の動作タイミングを調整し、照射位置を切替える方法でも有効である。この場合、動作タイミング制御手段を別途設けても良いし、制御装置6aにその機能を持たせても良い。図4(b)に示す構成の場合、総光量が比較的低い光源4を用いることができるため、光音響装置の小型化が可能となる。
【0039】
切替え装置8は図3(a)図3(c)、図4(a)、図4(b)を用いて説明した構成を組み合わせても良い。例えば、四分割に切換える際に、図4(b)のように光源4を二つ設け、それぞれを図3(a)、図3(b)のように二分割可能にすることで合わせて四分割しても良い。
【0040】
以上、実施例1で説明した構成によれば、受信手段である処理装置6の回路規模を大型化させることなく、かつ光源4を高出力化させることなく、光源4からの実質的な総光量を照射することにより光音響信号の強度を上げることでSNRが向上する。したがって、探触子2の素子の並び方向の幅と概ね同じ幅に照射端を設けた場合と比べて、分割した分だけ受信に寄与する光量が増えるため、例えば四分割した場合、被検体から発生する光音響波が四倍になる。そして、光音響波に基づく電気信号である光音響信号を画像化すると、コントラスト解像度が向上し、視認性ならびに臨床での診断能が向上する。
【実施例2】
【0041】
実施例1では受信開口に隣接した複数のバンドルファイバの出射端3aを設け、受信開口によって照明光の出射位置を切換える方法について説明した。実施例2はバンドルファイバの出射端3aを一つにして、それを受信開口に応じて走査させる方法について図5を用いて説明する。なお、実施例1と同じ符号については説明を省略する。
【0042】
バンドルファイバの出射端3aは探触子2に隣接している。探触子2はリニアプローブとしているが、これに限定されずコンベックスプローブにも適用できる。そして実施例1と同様に、光源4から発せられた実質的な総光量をバンドルファイバ3aの出射端まで維持して伝搬させる。バンドルファイバの出射端3a(被検体への照射領域)の面積は、受信開口幅とその直角方向の奥行きの積から決まる。光源4からの実質的な総光量に応じて、MPE以下の範囲でありながら光量が出来る限り大きくなるように奥行きを狭くする。こうすることで、照明光の一回当たりの照射に対する光音響波が最大となる。そして出射端3aの幅を受信開口幅に一致させた。
【0043】
また探触子2の素子数が128素子であり、処理装置6が取得できるチャンネル数が32チャンネルだとして、これよりも少ない開口幅(例えば16素子分)に分割(例えば八分割)して本実施例を適用しても良い。これは光源4の出力が低い場合に好適である。
【0044】
そして、照射制御手段の一部である切替え装置8は、照明光の照射位置を変更させるために設けたものである。図5では、バンドルファイバの出射端3aを走査させる切替え装置8を図示した。そして、処理装置6内の制御装置6a(照射制御手段の一部)からの切替え情報に基づき、バンドルファイバの出射端3aを切替え装置8で走査させる。制御装置6aは、探触子2のうちの受信開口(複数の振動子の内の一部の振動子)に隣接する位置に出射端3aが位置するように切替え装置8を動作させる。
【0045】
次に、制御装置6aの制御方法について図6を用いて説明する。図6(a)は光音響プローブの正面図であり、模式的に光照射位置(つまり出射端の位置)と受信開口の位置の変化を示している。この動作制御について図6(b)に示す。
【0046】
図6(b)のように、n番目の光音響信号(光音響波に基づいて出力される電気信号)を取得するとき、その受信位置となるように、探触子2の受信開口に照明光の照射位置を該当(対応)させ、光音響信号を取得する。そして、n+1番目の光音響信号の取得領域上に探触子2の受信開口と照明光の照射位置を走査させる。このタイミングは、図6(b)ではレーザ発光後50μsec後に切り替えているが、n番目のレーザ発光からn+1番目のレーザ発光の間に行えばよい。
【0047】
尚、実施例2では切替え装置8を走査させる機構としたが、これに限定されない。例えば図7のように、バンドルファイバ(不図示)から発せられた照明光をポリゴンミラー8aなど反射素子で照明光の照射位置を走査する方法でも有効である。この場合、ポリゴンミラー8aの反射端が出射端部となる。またこの場合より好ましくは、凹レンズやFθレンズなどからなるビーム成形光学系8bを設ける。
【0048】
以上、実施例2で説明した構成によれば、開口位置及び被検体に対する光の照射端部を連続的に走査させることができる。そのため、任意の開口で受信させることが可能となる。
【実施例3】
【0049】
実施例1と実施例2では探触子2をリニアプローブやコンベックスプローブとした場合の光音響装置について説明した。実施例3ではリニアプローブをエレベーション方向にメカニカルセクタスキャンする三次元画像取得可能な光音響装置の構成と方法について説明する。尚、装置全体の構成は、図1と同様であり、光音響プローブ1の特徴部については、図8に示す。
【0050】
図8は探触子2内部のリニアプローブを電子走査しながら、エレベーション方向にメカニカルセクタスキャンする三次元画像取得可能な光音響プローブ1を正面から図示したものである。処理装置6に基づき制御装置6aは探触子2内のリニアプローブをエレベーション方向にセクタスキャンする。そのセクタスキャンの方向、すなわち受信開口の方向に応じて、図の左側(A側)から右側(B側)の順で対応するバンドルファイバの出射端3aから照明光を照射させる。これは二次元アレイ型の探触子2が電子セクタ走査する場合に適用しても良い。なお、このときの切替えは図3(a)から図3(c)または図4(a)、図4(b)を用いて実施例1で説明した構成と方法を適用すればよい。
【0051】
以上のように、光音響波の受信方向に応じて照明光の出射位置を制御する方法は、セクタ走査方向(受信開口の方向)に応じた位置から照明光を照射することができる。そのため、受信音圧を最大限上げることによるSNRの向上は、三次元画像取得可能な探触子2にも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 光音響プローブ
2 探触子
3 バンドルファイバ
3a 出射端
3b 入射端
4 光源
5 照明光学系
6 処理装置
6a 制御装置
7 モニタ
8 切替え装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と該光源が発した光を被検体に向けて出射する出射端部とを備える光照射手段と、
前記光照射手段の出射端部から出射された光の被検体への照射を制御する照射制御手段と、
前記光照射手段からの光の照射を受けて前記被検体が発する音響波を受信して電気信号を出力する複数の振動子を備える探触子と、
前記探触子が備える複数の振動子の内の一部の振動子からの前記電気信号を受ける受信手段と、
前記受信手段が受ける電気信号を出力する一部の振動子を他の一部の振動子に切り替える探触子制御手段と
を有する生体情報取得装置であって、
前記照射制御手段は、前記照射端部から出射する光が前記光源が発した光の総光量を維持しつつ、前記被検体への該光の照射領域の大きさが前記探触子の大きさよりも小さく且つ該照射領域が前記一部の振動子の位置に該当するように、前記出射端部の前記被検体に対する位置を制御することを特徴とする生体情報取得装置。
【請求項2】
前記光照射手段が前記出射端部を複数有し、前記照射制御手段は、前記複数の出射端部のうちの一部の出射端部から光を出射させ、該光を出射する一部の出射端部を切り替えることで、前記出射端部の被検体に対する位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項3】
前記探触子が前記振動子をセクタスキャンするセクタスキャン手段を更に有し、前記複数の出射端部は前記探触子を間に挟んで位置しており、前記照射制御手段は、前記セクタスキャン手段の動作に基づいて前記複数の出射端部のうちの前記光を出射する出射端部を切り替えることで、前記出射端部の被検体に対する位置を制御することを特徴とする請求項2に記載の生体情報取得装置。
【請求項4】
前記照射制御手段は、前記出射端部を走査することで、前記出射端部の被検体に対する位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の生体情報取得装置。
【請求項5】
前記照射領域の大きさが、前記一部の振動子の大きさに等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。
【請求項6】
前記光照射手段が複数の光源を有し、該複数の光源の動作タイミングを制御するタイミング制御手段を更に有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239714(P2012−239714A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113907(P2011−113907)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】