説明

生体情報検出装置

【課題】 利用者に違和感を与えずに配置でき、生体情報を効率よく検出できる生体情報検出装置を提供すること。
【解決手段】 生体情報検出装置20を、生体の長手方向に沿った振動を検出し振動に基づいて信号を出力する振動検出部21と、振動検出部21により出力された信号を処理する信号処理部23と、信号処理部23により処理された信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部24と、を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍などの生体情報を検出する生体情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歪み検出センサが装着された、弾性的に撓曲可能な敷き板部を被験者の下部に配置し、被験者の生体活動に伴い発生する敷き板部の歪みの変動を検出する生体情報計測用パネルが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−043445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の生体情報計測用パネルでは、歪み検出センサが被験者の下部に配置されるため、寝心地に違和感を与えるおそれがある。歪み検出センサがマットレスの上部に配置された場合は、被験者の動き、状態によるマットレスの大きな変形に伴い、敷き板部の破損や歪み検出センサの変形、破断が起こる場合がある。また、歪み検出センサと信号線との接続部への応力集中のため、接続部の破断が起こる場合がある。歪み検出センサがマットレスの下部に配置された場合は、振動が歪み検出センサへ到達する前にマットレスにより吸収されて減衰してしまい、歪み検出センサの変形が十分に得られず、生体信号をとらえられない場合がある。また、通気性のために孔が設けられたベッドフレームや、金属ワイヤが格子状に配置されたワイヤハンモック状のベッドフレームを備えるベッドには、歪み検出センサが取り付けられない場合がある。仮に歪み検出センサを取り付けられたとしても、孔と対面する部分では歪み検出センサ全体が振動してしまい変形が十分に得られないために、生体信号が検出できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、生体情報を効率よく検出でき、利用者に違和感を与えずに配置できる生体情報検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、生体情報検出装置は、生体の長手方向に沿った振動を検出し前記振動に基づいて信号を出力する振動検出部と、前記振動検出部により出力された前記信号を処理する信号処理部と、前記信号処理部により処理された前記信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えることである。
【0007】
本発明の第2の課題解決手段は、振動検出部は、ベッドフレームと前記ベッドフレームの長手方向の片側端部に設けられたボード部材と前記ベッドフレームの上に載置されたマットレスを備えるベッドの前記ボード部材と前記マットレスの間に挟持されて前記マットレスの長手方向に沿った振動を検出することである。
【0008】
本発明の第3の課題解決手段は、振動検出部は、ベッドフレームと前記ベッドフレームの上に載置されたマットレスを備えるベッドの前記マットレスの長手方向の端部に内蔵されて前記マットレスの長手方向に沿った振動を検出することである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、振動検出部により生体の長手方向に沿った振動が検出されるため、生体の心拍による振動は生体の長手方向に沿う成分の振幅が最も大きいことから、生体の心拍によって生じる振動を効率よく検出することができる。
【0010】
また、振動検出部は、ベッドのボード部材とマットレスの間に挟持されるため、マットレスの上や、マットレスとベッドフレームの間に配置される場合と比較して、マットレス上に横たわる生体に違和感を与えない。また、通気性のために孔が設けられたベッドフレームや、金属ワイヤが格子状に配置されたワイヤハンモック状のベッドフレームを備えたベッドにも問題なく取り付けられる。
【0011】
また、振動検出部がマットレスの長手方向の端部に内蔵されるため、ボード部材を備えていないベッドにも問題なく取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例に係る生体情報検出装置を配置したベッドを示す説明図である。
【図2】実施例に係る生体情報検出装置を示す説明図である。
【図3】横たわった状態の生体(人)の心拍による振動を方向ごとに計測した試験結果を示すグラフである。
【図4】実施例に係る生体情報検出装置により検出した心拍振動信号を示すグラフである。
【図5】比較例に係り、生体情報検出装置の振動検出部を、生体の下部かつマットレスの下部に配置して検出した心拍振動信号を示すグラフである。
【図6】比較例に係り、生体情報検出装置の振動検出部を、生体の下部かつマットレスの下部に配置したところを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は、実施例に係る生体情報検出装置20を配置したベッド10を示す説明図である。図1(a)はベッド10を上方から見た図、図1(b)はベッド10を側方から見た図である。ベッド10は、ベッドフレーム11、ベッドフレーム11の長手方向の片側端部に設けられたヘッドボード12(ボード部材)、ベッドフレーム11に載置されるマットレス13を備える。ヘッドボード12とマットレス13の間には、実施例に係る生体情報検出装置20の振動検出部21が挟持される。
【0015】
図2は、実施例に係る生体情報検出装置20を示す説明図である。実施例に係る生体情報検出装置20は、振動を検出する振動検出部21と、振動検出部21により検出された振動信号を処理する信号処理部23と、信号処理部23により処理された信号から生体情報を算出する生体情報算出部24と、を備える。振動検出部21と信号処理部23の間は信号線22により電気的に接続されている。振動検出部21には、振動検出部21をヘッドボード12とマットレス13の間に挟持された状態で保持する保持部材としての面ファスナー25が設けられる。振動検出部21に設けられた面ファスナー25に対向する面ファスナーは、ヘッドボード12またはマットレス13に設けられる。また、面ファスナー25が振動検出部21の両面に設けられ、振動検出部21の面ファスナーに対向する面ファスナーが、ヘッドボード12およびマットレス13に設けられてもよい。なお、保持部材は面ファスナーに限られず、マジックテープ、ネジ止め、接着、縫合、スナップフィット等、マットレス13、ヘッドボード12および振動検出部21とが互いに密に接触を保てる構造であればよい。
【0016】
なお、振動検出部21に保持部材が設けられていなくても、マットレス13をヘッドボード12に押し付けるようにして配置して、マットレス13とヘッドボード12の間に振動検出部21を挟持するようにしてもよい。また、振動検出部21は、マットレス13とフットボード(ボード部材)の間に挟持されてもよい。また、振動検出部21は、マットレス13の長手方向の端部に内蔵されてもよく、この場合、マットレス13の本体とカバーとの間に振動検出部21が挟持されるため、ベッドがヘッドボード12およびフットボードを備えていない場合でも、振動検出部21はマットレス13の振動を検出することができる。
【0017】
振動検出部21は、例えば、印加される圧力に応じて電流を生じる圧電センサなどにより構成される。圧電センサの一例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機圧電フィルムセンサが挙げられる。振動検出部21は、全体がフィルムセンサで構成されても、複数のフィルムセンサが弾性部材により固定されて構成されてもよい。有機圧電フィルムセンサは、フィルム面に対して垂直方向の振動を検知するものが用いられる。振動検出部21は、ベッド10のマットレス13とヘッドボード12の間に挟持されるため、マットレス13の長手方向に生じる振動を検出する。振動検出部21は、印加される圧力に応じて電流を生じることで、振動に応じた信号(出力電圧)を出力する。振動検出部21からの信号は、信号線22により信号処理部23に伝送される。
【0018】
信号処理部23は、電子回路、マイクロプロセッサ、コンピュータ等により構成され、取得する生体情報に応じて信号の処理を行う。振動検出部21により取得可能な生体情報としては、ベッド10のマットレス13上の生体(人)の移動(寝返りなど)、呼吸、心拍などが挙げられる。生体の移動を検出するときは、信号処理部23は、振動検出部21からの信号をそのまま、または適宜増幅等して出力する。生体の呼吸を検出するときは、信号処理部23は、ローパスフィルタにより、振動検出部21からの信号から、呼吸に相当する周波数帯の信号を抽出し、適宜増幅等して出力する。生体の心拍を検出するときは、信号処理部23は、バンドパスフィルタにより、振動検出部21からの信号から、心拍に相当する周波数帯の信号を抽出し、適宜増幅等して出力する。
【0019】
生体情報算出部24は、電子回路、マイクロプロセッサ、コンピュータ等により構成され、信号処理部23により処理され出力された信号に基づいて、生体情報を算出する。生体の移動を検出するときは、生体情報算出部24は、信号処理部23からの信号があらかじめ設定された所定の閾値を超えるときは生体の移動があると判断する。生体の呼吸を検出するときは、生体情報算出部24は、信号処理部23によりローパスフィルタを用いて抽出された、呼吸に相当する周波数帯の信号に基づいて、単位時間あたりの呼吸数などを算出する。生体の心拍を検出するときは、生体情報算出部24は、信号処理部23によりバンドパスフィルタを用いて抽出された、心拍に相当する周波数帯の信号に基づいて、単位時間当たりの心拍数などを算出する。
【0020】
実施例に係る生体情報検出装置20の動作を以下に説明する。振動検出部21は、マットレス13上に横たわる生体の移動、呼吸、心拍などにより生じ、マットレス13に伝搬する、マットレス13の長手方向に沿った振動を検出する。振動検出部21により振動が検出されると、振動に応じた信号が信号線22を経由して信号処理部23に伝送される。信号処理部23は、バンドパスフィルタを用いて、振動検出部21からの信号から、心拍に相当する周波数帯の信号を抽出し、適宜増幅等して出力する。生体情報算出部24は、信号処理部23からの信号に基づいて心拍数などを算出する。
【0021】
振動検出部21を、マットレス13の長手方向に沿った振動を検出するように配置する理由は、試験用荷重変動計測器を用いて横たわった状態の生体(人)の心拍による振動を計測した以下の試験の結果に基づく。図3は、横たわった状態の生体(人)の心拍による振動を方向ごとに計測した試験結果を示すグラフである。生体(人)が荷重変動計測器に横たわって乗った状態で、生体(人)に対して図1のX方向、Y方向、Z方向の荷重変動(振動)を計測し、それぞれをX振動、Y振動、Z振動とする。この計測試験により、生体の心拍による振動については、生体の長手方向(頭部から臀部への方向、図1のY方向)の振動成分が最も大きいことがわかる。生体の心拍による振動について生体の長手方向の振動成分が最も大きいという結果は、仰向け、うつぶせ、側臥いずれの姿勢でも同様である。生体の心拍による振動について生体の長手方向の振動成分が最も大きいのは、生体の心臓の拍動により、心臓から血液が上方向(頭部方向)へ拍出され、血液が拍出される際に反作用で下方向(臀部方向)に力を受けて心臓が生体の長手方向(頭部から臀部への方向)に沿って振動するためと考えられる。
【0022】
上記試験結果からわかるように、心拍による生体の長手方向の振動は他の方向成分より大きいため、マットレス13上に横たわった生体からマットレス13へは、生体(特に胴体)の長手方向に沿った振動が伝搬する。生体がベッド10の長手方向に沿って横たわった姿勢である場合、心臓の拍動によってマットレス13には主に長手方向(図1のY方向)に沿った振動が伝搬する。マットレス13に生じた長手方向の振動は、マットレス13およびヘッドボード12に挟持された振動検出部21により検出される。
【0023】
実施例に係る生体情報検出装置20により心拍振動信号を検出した結果を、生体情報検出装置20を従来のように配置して心拍振動信号を検出した結果と比較して以下に示す。図4は、実施例に係る生体情報検出装置20により検出した心拍振動信号を示すグラフである。図5は、比較例に係り、生体情報検出装置30の振動検出部31を、生体の下部かつマットレス13の下部に配置して検出した心拍振動信号を示すグラフである。図6は、比較例に係り、生体情報検出装置30の振動検出部31を、生体の下部かつマットレス13の下部に配置したところを示す説明図である。図6(a)はベッド10を上方から見た図、図6(b)はベッド10を側方から見た図である。
【0024】
実施例では、図1のように、生体情報検出装置20の振動検出部21は、マットレス13の長手方向に沿った振動を検出するように、マットレス13とヘッドボード12の間に挟持されるが、比較例では、図6のように、生体情報検出装置30の振動検出部31は、生体の下部かつマットレス13の下部に配置される。比較例に係る生体情報検出装置30の振動検出部31は、実施例と同様に有機圧電フィルムであり、フィルム面に垂直な方向の振動を検出する。比較例では、有機圧電フィルムのフィルム面がマットレス13の下面に沿うように配置されるため、振動検出部31はマットレス13の高さ方向(図6のZ方向)に沿う振動を検出する。比較例に係る生体情報検出装置30について、信号線32、信号処理部33、生体情報算出部34の構成および動作は、実施例に係る生体情報検出装置20の信号線22、信号処理部23、生体情報算出部24とそれぞれ同一である。
【0025】
図4と図5を比較すると、実施例に係る生体情報検出装置20による心拍振動信号(図4)は、比較例に係る生体情報検出装置30による心拍振動信号(図5)より振幅が大きい。これは、実施例に係る生体情報検出装置20の振動検出部21が生体の長手方向(マットレス13の長手方向)に沿った振動を検出するように配置されているためである。
【0026】
このように、実施例の生体情報検出装置20によれば、振動検出部21により生体の長手方向に沿った振動が検出されるため、生体の心拍による振動は生体の長手方向に沿う成分の振幅が最も大きいことから、生体の心拍によって生じる振動を効率よく検出することができる。
【0027】
また、実施例では、生体から生じる振動は生体の長手方向に沿った振動が効率よく検出されることから、図1のY方向の振動を検出するように振動検出部21を配置したが、図3の試験結果から図1のX方向の振動でも生体から生じる振動が検出されることが明らかであるため、X方向つまり生体の右肩と左肩を結ぶ軸の方向の振動に基づいて信号を出力するように振動検出部21を配置してもよい。
【0028】
また、実施例に係る生体情報検出装置20は、ヘッドボード12とマットレス13の間に挟持されるため、マットレス13の上や、マットレス13とベッドフレーム11の間に配置される場合と比較して、マットレス13上に横たわる生体に違和感を与えない。また、通気性のために孔が設けられたベッドフレームや、金属ワイヤが格子状に配置されたワイヤハンモック状のベッドフレームを備えたベッドにも問題なく取り付けられる。
【0029】
また、振動検出部21がヘッドボード12とマットレス13の間に挟持されるため、振動検出部21と信号線22との接続部に応力が集中するのを避けられる。
【0030】
実施例に係る生体情報検出装置20によれば、生体の情報(移動、呼吸、心拍数など)を調べることができ、ベッド10に配置してベッド10上に寝ている生体の睡眠状態(長さ、深さなど)を推定することなどに利用できる。
【0031】
実施例に係る生体情報検出装置20は、ベッドに限らず椅子や車両用シートなどにも適用可能である。この場合、生体情報検出装置20は、生体の長手方向(生体の頭部から臀部への方向)の心拍振動を検出するように配置される。
【符号の説明】
【0032】
10 ベッド
11 ベッドフレーム
12 ヘッドボード(ボード部材)
13 マットレス
20 生体情報検出装置
21 振動検出部
22 信号線
23 信号処理部
24 生体情報算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の長手方向に沿った振動を検出し前記振動に基づいて信号を出力する振動検出部と、
前記振動検出部により出力された前記信号を処理する信号処理部と、
前記信号処理部により処理された前記信号に基づいて生体情報を算出する生体情報算出部と、を備えることを特徴とする生体情報検出装置。
【請求項2】
前記振動検出部は、ベッドフレームと前記ベッドフレームの長手方向の片側端部に設けられたボード部材と前記ベッドフレームの上に載置されたマットレスを備えるベッドの前記ボード部材と前記マットレスの間に挟持されて前記マットレスの長手方向に沿った振動を検出することを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記振動検出部は、ベッドフレームと前記ベッドフレームの上に載置されたマットレスを備えるベッドの前記マットレスの長手方向の端部に内蔵されて前記マットレスの長手方向に沿った振動を検出することを特徴とする請求項1に記載の生体情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147528(P2011−147528A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9850(P2010−9850)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】