説明

生体情報計測装置

【課題】カフが過度にきつく装着されることを防止すること。
【解決手段】カフ10は、膨縮可能に構成されている。カフ制御部は、ポンプ24、定排弁25、急排弁26、ポンプ駆動部28、弁駆動部29およびCPU31の組み合わせから構成されており、カフ10を制御する。カフ制御部は、カフ10の装着が開始したときに、カフ10に加えられる押圧に抗してカフ10を膨張状態に維持させ、カフ10の装着が完了したときに、カフ10に加えられる押圧に従ってカフ10を収縮させる、カフ装着補助動作を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフを用いて血圧等の生体情報を計測する生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体情報計測装置においては、計測対象の生体情報に応じて様々なセンサ等の計測手段を使用するが、例えば血圧や脈波等のような生体情報が計測対象である場合には、カフ(「マンシェット」や「腕帯」と呼ばれることもある)を使用することがある(例えば特許文献1参照)。カフは、被検者の所定部位(例えば上肢、下肢、指または足趾)に巻回することにより装着される(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。なお、「被検者」は、生体情報の計測を受ける者を意味する。
【0003】
カフは、外部からの給排気制御によって膨縮可能な空気袋を内部に備えており、所定部位に装着されるときにその空気袋でその部位を圧迫する。生体情報計測装置は、カフ圧(つまり、空気袋内部の気圧)の変動を検出することにより、血圧や脈波の計測を行う。
【0004】
カフを用いてオシロメトリック法により血圧を計測する場合には、カフを所定部位に巻回し、カフに対する空気の給排気によりカフ圧の加減圧を行い、その際に検出される脈波において、振幅増大が顕著な時のカフ圧を収縮期血圧(最高血圧)として判定し、振幅減少が顕著な時のカフ圧を拡張期血圧(最低血圧)として判定する(例えば、特許文献4参照)。なお、この手法のほかにも、振幅が最大値に対する特定の割合を超えた時のカフ圧を収縮期血圧として判定し、振幅が最大値に対する特定の割合を下回った時のカフ圧を拡張期血圧として判定する等、様々な周知技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−172098号公報
【特許文献2】特開2005−319030号公報
【特許文献3】特開2005−329162号公報
【特許文献4】特開2006−255096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カフを用いて生体情報の計測を行う場合、正確な計測値を得るためにはカフを適度なきつさで装着することが非常に重要である。
【0007】
例えばオシロメトリック法により血圧を計測する場合に、過度にゆるくカフを装着すると、カフ圧を大幅に上昇させなければ脈波を検出できないことから、計測値は実際の血圧よりも高くなりやすく、他方、過度にきつくカフを装着すると、カフ圧をあまり上昇させずとも脈波を検出できることから、計測値は実際の血圧よりも低くなりやすい。特に、例えば足趾のような末梢部位にて血圧を計測する場合には、カフを過度にきつく装着することにより、鬱血が発生し、計測精度が著しく下がる可能性があることが、知られている。
【0008】
また、被検者本人が自らカフを装着する場合も、被検者以外の者が被検者にカフを装着する場合も、装着者は「きつめ」にカフを装着しようとすることが多い。正確な計測値を得たいからである。
【0009】
しかしながら、どの程度「きつめ」にカフを装着すれば適度なきつさとなるのか、正確に判断することは装着者あるいは被検者にとって容易ではない。
【0010】
本発明の目的は、カフが過度にきつく装着されることを防止することができる生体情報計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の生体情報計測装置は、膨縮可能に構成されたカフと、前記カフを制御するカフ制御部と、を有し、前記カフ制御部は、前記カフの装着が開始したときに、前記カフに加えられる押圧に抗して前記カフを膨張状態に維持させ、前記カフの装着が完了したときに、前記カフに加えられる押圧に従って前記カフを収縮させる、カフ装着補助動作を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カフがきつく装着されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る血圧計の構成を示すブロック図
【図2】本発明の一実施の形態に係るカフの外観図
【図3】本発明の一実施の形態に係るカフの装着前の状態を示す図
【図4】本発明の一実施の形態に係るカフの装着時の状態を示す図
【図5】本発明の一実施の形態に係るカフ装着補助動作を説明するためのフロー図
【図6】本発明の一実施の形態に係る血圧計測実行制御動作を説明するためのフロー図
【図7】本発明の一実施の形態に係るカフ取り外し判定動作を説明するためのフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。下記の実施の形態では本発明の生体情報計測装置を血圧計に適用した場合を例として挙げるが、カフを使用するものであれば他種の生体情報計測装置にも本発明は適用可能である。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態に係る生体情報計測装置としての血圧計の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1の血圧計は、カフ10、ホース21、管22、圧力センサ23、ポンプ24、定排弁25、急排弁26、信号処理部27、ポンプ駆動部28、弁駆動部29、表示部30、演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)31、操作部32および記憶部33を有する。
【0017】
管22、圧力センサ23、ポンプ24、定排弁25、急排弁26、信号処理部27、ポンプ駆動部28、弁駆動部29、表示部30、CPU31、操作部32および記憶部33は、図示されない血圧計本体に収容されている。
【0018】
管22は、血圧計本体内部の空気路として設けられている。ホース21は、可撓性を有しており、血圧計本体とカフ10とを接続する空気路として設けられている。
【0019】
カフ10は、被検者の所定部位に巻回可能に構成された帯状体である。カフ10の具体的構成については後述する。
【0020】
圧力センサ23は、例えば半導体圧力センサを用いる圧力−電気変換器であり、管22に設けられている。圧力センサ23は、カフ10のカフ圧を電気信号に変換しこれをカフ圧信号として信号処理部27に出力することにより、カフ圧の測定を行う。圧力センサ23は継続的にカフ圧測定を行うため、生成される一連のカフ圧信号は、カフ圧の経時的変化を表す。
【0021】
信号処理部27は、増幅器、ローパスフィルタおよびアナログディジタル(A/D)変換器を有し、圧力センサ23から入力されるカフ圧信号の増幅を行い、増幅後の信号から高帯域雑音を除去する濾波を行い、濾波後の信号のA/D変換を行い、A/D変換後の信号をカフ圧データとしてCPU31に出力する。
【0022】
ポンプ24は、管22およびホース21を介してカフ10に給気することにより、カフ圧を加圧する。ポンプ駆動部28は、CPU31からの指示信号に従ってポンプ24の駆動信号をポンプ24に出力してポンプ24を駆動する制御回路を有し、ポンプ24からカフ10への給気の開始および停止を行う。
【0023】
定排弁25および急排弁26は、管22に設けられており、カフ10からの排気を制御する排気弁として機能する。定排弁25および急排弁26は、例えば電磁式の弁であり、それぞれの開口量は調整可能である。定排弁25および急排弁26は、閉鎖されているときはカフ10からの排気を防止し、開放されているときはカフ10からの排気を可能にする。定排弁25は、急排弁26に比べて、開口量が最大のときの単位時間あたりの排気量が少ない。よって、カフ圧の減圧は、通常の場合は定排弁25のみ開いて行われ、高速減圧が必要な場合は定排弁25に加えて急排弁26を開いて行われる。
【0024】
弁駆動部29は、CPU31からの指示信号に従って定排弁25および急排弁26の駆動信号を出力して定排弁25および急排弁26を駆動する制御回路を有し、定排弁25および急排弁26の開口量を制御する。
【0025】
CPU31は、記憶部33に記憶されたソフトウェアプログラムを実行することで、本実施の形態の血圧計において実行される血圧計測等の各種動作を制御する。血圧計において実行される各種動作については後述する。
【0026】
ポンプ24、ポンプ駆動部28、定排弁25、急排弁26、弁駆動部29およびCPU31の組み合わせは、カフ10に対する給排気制御を行うことによりカフ圧の制御を行うカフ制御部を構成する。また、圧力センサ23、信号処理部27およびCPU31の組み合わせは、カフ圧の測定を行うカフ圧測定部を構成する。
【0027】
操作部32は、例えば押しボタンやタッチパネル等のような入力装置であり、ユーザの入力操作に従って操作信号を生成してCPU31に出力する。
【0028】
記憶部33は、例えば半導体記憶装置であり、CPU31により実行されるソフトウェアプログラムや信号処理部27から取得されたカフ圧データ等を記憶する。
【0029】
表示部30は、例えば液晶表示装置であり、CPU31からの指示信号に従って画面に種々の情報を表示する。
【0030】
以上が本実施の形態の血圧計の構成であるが、上記構成は種々変更して実施することができる。
【0031】
例えば、血圧計は、CPU31からの指示信号に従って用紙等に種々の情報を印字する例えばプリンタ等の印字部をさらに有してもよい。また、血圧計は、種々の情報の授受のために他の機器と通信可能に接続するための通信部をさらに有してもよい。また、血圧計は、血圧計測時に同期音を出力したり異常検出時にアラーム音を出力したりするための音声出力部をさらに有してもよい。
【0032】
また、例えば、上記構成では2つの排気弁が用いられているが、排気弁は1つでも3つ以上でもよい。さらに、上記構成では、主たる排気手段として定排弁25を用い、補助的な排気手段として急排弁26を用いているが、例えばカフ10の空気容量が大きい場合には、補助的な排気手段として、急排弁26を用いる代わりに、ポンプ24を逆回転させる等、別の手段を用いてもよい。
【0033】
次いで、カフ10の構成について説明する。カフ10は、足趾(特に母趾)への巻回装着に適した構成を有しており、具体的には、図2に示すように、空気袋11および面ファスナ12、13を有する。
【0034】
空気袋11は、C字状に湾曲し、かつ、非加圧状態であっても(換言すれば、ポンプ24から積極的な給気をしなくとも)内部に空気を収容して自然に膨らんだ形状を維持するように、予め形成された、変形自在な樹脂製の袋である。湾曲状に形成されているため、足趾へのカフ10の巻回を容易に行うことができる。また、非加圧状態でも自然に膨らんだ形状を維持するため、ポンプ24を駆動しなくても空気を内部に収容して一定のカフ圧を保つことができるため、後述するカフ装着補助動作を簡略化することができる。
【0035】
なお、空気袋11が自然に膨らんだ形状を維持するために、空気袋11の内部にスポンジ等を予め挿入しておいてもよいが、カフ10の構成をより簡略化し、かつ、空気袋11の収縮性を低下させないために、空気袋11の内部は中空であることが望ましい。
【0036】
空気袋11の外周面には開口部(図示せず)が形成されており、ここにホース21が挿入されている。ホース21を介して空気が空気袋11に導入されると、空気袋11は湾曲形状を維持したまま膨張するとともに、カフ圧は上昇する。ホース21を介して空気が空気袋11から排出されると、空気袋11は湾曲形状を維持したまま収縮するとともに、カフ圧は低下する。
【0037】
面ファスナ12は、空気袋11の外周面を覆って設けられた帯状体であり、その中央部には開口部(図示せず)が形成されており、ここをホース21が貫通している。面ファスナ13は、面ファスナ12の一端から延在して設けられた帯状体であり、面ファスナ13に貼り合わせて固定可能であり、また、面ファスナ13からの剥離も可能である。
【0038】
上記構成を有するカフ10の巻回装着方法としては、例えば、最初にカフ10を手で一旦伸開させ(図3参照)、内周面側に足趾を配置した後にカフ10をC字状に復元させて足趾をカフ10で包囲し、カフ10で足趾を一定程度圧迫した状態で面ファスナ12、13を貼り合わせることによりカフ10を足趾に固定する(図4参照)。
【0039】
以上がカフ10の構成であるが、上記構成は血圧計測対象部位等に応じて種々変更して実施することができる。
【0040】
次いで、本実施の形態の血圧計において実行されるカフ装着補助動作について説明する。カフ装着補助動作は、被検者本人または被検者とは別の者が被検者にカフ10を装着しようとするときに、過度にきつい装着が行われないようにカフ圧の自動制御を実行する動作である。
【0041】
図5は、カフ装着補助動作の一例を説明するためのフロー図である。
【0042】
カフ装着補助動作がスタートする際の初期状態では、ポンプ24は駆動されておらず、定排弁25および急排弁26は開放されている。カフ10は非加圧状態であるが、前述のとおり、カフ10は、非加圧状態下で自然に膨らんだ状態を維持する形状であるため、一定のカフ圧を有しており、したがって、外部から押圧が加えられたり変形によって容量が変化したりするとカフ圧は上昇したり低下したりする。
【0043】
カフ装着補助動作が開始されると、カフ圧の測定が開始される(ステップS101)。カフ圧の測定は、圧力センサ23がカフ圧信号をカフ圧に基づいて生成し、信号処理部27がカフ圧信号からカフ圧データを生成してCPU31に出力することによって、行われる。
【0044】
カフ圧測定が開始されると、CPU31は、信号処理部27から順次入力される一連のカフ圧データから、カフ圧上昇の有無を判定する(ステップS102)。最初の測定値からの上昇幅が例えば0.25mmHg以上となったときに、CPU31は、カフ圧が上昇したと判定する。このように、初期状態からのカフ圧の上昇を検知することができるため、被検者へのカフ10の装着が開始したことを検知することができる。
【0045】
カフ圧が上昇した場合、CPU31は、被検者へのカフ10の装着が開始したことを認識することができる。この場合、CPU31は、定排弁25および急排弁26を両方とも閉鎖させる指示信号を弁駆動部29に出力する。弁駆動部29は、指示信号に従って、定排弁25および急排弁26の双方の開口量をゼロとして、定排弁25および急排弁26を閉鎖する(ステップS103)。
【0046】
このように、被検者へのカフ10の装着が開始すると、定排弁25および急排弁26が閉鎖され、カフ10からの排気が防止される。これにより、カフ10が被検者の所定部位に押し当てられる際に所定部位からの押圧が加えられても、カフ10は、収縮せずに、この押圧に抗して膨張状態を維持することができる。
【0047】
さらに、カフ10が非加圧状態でも自然に膨らんだ状態を維持するよう形成されているため、カフ10の装着が開始したときに、ポンプ24からの給気を行わずにカフ10の膨張状態を形成することができる。本実施の形態のような足趾用のカフ10や手指用あるいは小児用のカフのように小径のカフが用いられる場合には、ポンプ24からの積極的な給気がなくてもカフ10の膨張状態を容易に形成することができる。
【0048】
なお、カフ10の「膨張状態」は、前述したカフ10の「自然に膨らんだ状態」とは異なる。つまり、後者は、カフ10の空気袋11が低張力で膨らみ、外部から力が加えられれば容易に収縮し潰れ得る状態であるのに対し、前者は、カフ10の空気袋11が高張力で膨らみ、外部から力が加えられても容易に収縮せず潰れない状態である。
【0049】
ステップS103にて定排弁25および急排弁26を閉鎖した後、CPU31は、信号処理部27から引き続き順次入力される一連のカフ圧データから、カフ圧がさらに上昇したか否かを判定する(ステップS104)。
【0050】
さらなるカフ圧の上昇があった場合には(ステップS104:YES)、CPU31は、ステップS103にてカフ10の装着が開始したと認識したのは正しかったと判定することができる。この場合、カフ装着補助動作はステップS106に進む。
【0051】
さらなるカフ圧の上昇がない場合には(ステップS104:NO)、CPU31は、ステップS103にてカフ10の装着が開始したと認識したのは誤っていたと判定することができる。この場合、CPU31は、定排弁25および急排弁26を初期状態と同様に開放させるために指示信号を弁駆動部29に出力して(ステップS105)、カフ装着補助動作はステップS101に戻る。これにより、カフ10の装着開始を誤認識したときに、カフ装着補助動作を再度始めから実行することができる。
【0052】
ステップS106では、CPU31は、定排弁25のみを僅かに開放させる指示信号を弁駆動部29に出力する。弁駆動部29は、指示信号に従って、急排弁26の開口量をゼロに維持したまま、定排弁25の開口量を所定値として、定排弁25を僅かに開放する。
【0053】
そして、CPU31は、カフ10から所定量の排気が行われるまで、定排弁25の開口量を調整することによりカフ圧の変化速度を制御しながらカフ10からの排気を行う(ステップS107、S108)。ここで、CPU31は、定排弁25の開口量を、カフ圧の変化速度が一定範囲内に保たれるようにカフ圧の変化速度に従ってフィードバック制御する。
【0054】
なお、ステップS108での判定閾値としては、予め定められた固定の値を採用してもよいし、検出されたカフ圧の上昇幅に基づいて算出された値を採用してもよいし、他の適切な値を採用することもできる。
【0055】
CPU31は、カフ10から所定量の排気が行われたとき、定排弁25を再度閉鎖させるために指示信号を弁駆動部29に出力する(ステップS109)。
【0056】
ステップS106〜S109の動作により、カフ10の膨張状態を維持させながらも、カフ10内部の空気をある程度逃がすことができる。このため、カフ10の装着が完了してカフ10を膨張状態から解放させたときに、カフ10の装着状態が不十分なきつさとなるのを回避し、適度なきつさのカフ装着を実現することができる。さらに、カフ圧の変化速度を制御することから、これをより確実に実現することができる。
【0057】
ステップS110では、CPU31は、信号処理部27から順次入力される一連のカフ圧データに基づいて、カフ圧が安定化したか否かを判定する。例えば、カフ圧の実質変動が一定期間(例えば4秒間)にわたって生じなかった場合に、CPU31は、カフ圧が安定化したと判定する。これにより、カフ10の装着が完了したことを検知することができる。
【0058】
一定期間内に顕著なカフ圧変動が発生せず、カフ圧が安定化した場合には(ステップS110:YES)、CPU31は、カフ10の装着が成功裏に完了したと認識することができる。この場合、カフ装着補助動作はステップS111に進む。
【0059】
なお、ここでは、脈拍に起因するカフ圧変動は顕著なカフ圧変動として判定されないように判定閾値を適切に設定することが望ましい。これにより、カフ装着完了判定をより正確に行うことができる。
【0060】
一定期間内に顕著なカフ圧変動が生じ、カフ圧が安定化しなかった場合には(ステップS110:NO)、CPU31は、カフ10の装着が成功裏に完了しなかったと認識することができる。この場合、CPU31は、定排弁25および急排弁26を初期状態と同様に開放させるために指示信号を弁駆動部29に出力して(ステップS105)、カフ装着補助動作はステップS101に戻る。このように、カフ10の装着が完了しなかったときに、つまり、カフ10の装着のやり直しが必要なときに、カフ装着補助動作を再度始めから実行することができる。
【0061】
ステップS111では、CPU31は、定排弁25および急排弁26を両方とも開放させる指示信号を弁駆動部29に出力する。これにより、定排弁25および急排弁26が開放する。カフ10は被検者の所定部位からの押圧を受けているため、定排弁25および急排弁26を開放させるだけでカフ10から排気させることができる。この結果、カフ10は、膨張状態を維持せず、所定部位からの押圧に従って収縮して、被検者の所定部位に密着しなくなる。
【0062】
よって、カフ装着補助動作は、適度なきつさでのカフ10の装着状態を実現して終了する。
【0063】
図6は、本実施の形態の血圧計において実行される血圧計測実行制御動作の一例を説明するためのフロー図である。
【0064】
本実施の形態の血圧計は、ステップS201にて前述のカフ装着補助動作を実行した後、ステップS202にて血圧の計測を実行する。血圧計測の動作としては、特許文献4に記載されたもの等、任意の周知技術を採用することができる。
【0065】
そして、血圧計測の実行後、CPU31は、カフ取り外し判定を実行する(ステップS203)。カフ取り外し判定の結果、カフ10が取り外されていると判定された場合には(ステップS204:YES)、血圧計測実行制御動作はステップS201に戻り、カフ10が取り外されていないと判定された場合には(ステップS204:NO)、CPU31は、再度カフ取り外し判定を実行する。
【0066】
すなわち、CPU31は、カフ装着補助動作が一度実行され、その後血圧計測が実行された場合には、カフ10が取り外されない限り、次のカフ装着補助動作を実行させない。これにより、同じ被検者に対して繰り返しカフ装着補助動作が実行されるのを回避することができる。
【0067】
図7は、本実施の形態の血圧計において実行されるカフ取り外し判定動作の一例を説明するためのフロー図である。
【0068】
ステップS301では、CPU31は、信号処理部27から順次入力される一連のカフ圧データに基づいて、カフ圧が顕著に低下してその後に僅かに上昇したか否かを判定する。「カフ圧が顕著に低下してその後に僅かに上昇」は、一般的なカフの取り外しが行われるときに通常発生するカフ圧の変動挙動であるため、これを判定基準として採用することにより、カフ10の取り外しを一定レベル以上の精度で検知することができる。所定期間内にこのカフ圧変動挙動が検知されなかった場合には(ステップS301:NO)、CPU31は、カフ10は取り外されていないと判定する(ステップS304)。
【0069】
なお、この変動挙動を正確に検知するためには、適切な判定閾値を、カフ10の寸法等、様々な要素に基づいて適切に設定することが望ましい。
【0070】
所定期間内にこのカフ圧変動挙動が検知された場合には(ステップS301:YES)、CPU31は、信号処理部27から順次入力される一連のカフ圧データに基づいて、カフ圧が安定化したか否かを判定する(ステップS302)。例えば、カフ圧の実質変動が一定期間(例えば4秒間)にわたって生じなかった場合に、CPU31は、カフ圧が安定化したと判定する。これにより、カフ10の取り外しが完了したことを検知することができる。
【0071】
一定期間内に顕著なカフ圧変動が発生せず、カフ圧が安定化した場合には(ステップS302:YES)、CPU31は、カフ10は取り外されたと判定する(ステップS303)。
【0072】
なお、ここでは、脈拍に起因するカフ圧変動も顕著なカフ圧変動として判定するように判定閾値を適切に設定することが望ましい。これにより、カフ取り外し判定をより正確に行うことができる。
【0073】
一定期間内に顕著なカフ圧変動が生じ、カフ圧が安定化しなかった場合には(ステップS302:NO)、CPU31は、カフ10が未だ取り外されていないと判定する(ステップS304)。
【0074】
本実施の形態の血圧計は、このようにしてカフ取り外し判定を実行し、次のカフ装着補助動作に進むことができる。
【0075】
以上説明したように、本実施の形態によれば、カフ10の装着が開始したときに、カフ10に加えられる押圧に抗してカフ10を膨張状態に維持させ、カフ10の装着が完了したときに、カフ10に加えられる押圧に従ってカフ10を収縮させる、カフ装着補助動作を実行する。これにより、カフ10の装着者が自ら判断しなくても、カフ10が過度にきつく装着されるのを確実に防止することができ、ひいては、血圧等の生体情報の計測精度を向上させることができる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記実施の形態において説明した装置の構成および動作は例であり、これらを本発明の範囲において部分的に変更、追加および削除できることは明らかである。
【符号の説明】
【0077】
10 カフ
11 空気袋
12、13 面ファスナ
21 ホース
22 管
23 圧力センサ
24 ポンプ
25 定排弁
26 急排弁
27 信号処理部
28 ポンプ駆動部
29 弁駆動部
30 表示部
31 CPU
32 操作部
33 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨縮可能に構成されたカフと、前記カフを制御するカフ制御部と、を有し、
前記カフ制御部は、前記カフの装着が開始したときに、前記カフに加えられる押圧に抗して前記カフを膨張状態に維持させ、前記カフの装着が完了したときに、前記カフに加えられる押圧に従って前記カフを収縮させる、カフ装着補助動作を実行する、
生体情報計測装置。
【請求項2】
前記カフ制御部は、前記カフからの排気を制御する排気弁を有し、前記カフの装着が開始したときに、前記排気弁を閉鎖し、前記カフの装着が完了したときに、前記排気弁を開放する、
請求項1記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記カフ制御部は、前記カフへの給気を行うポンプをさらに有し、
前記カフは、空気を内部に収容した状態を前記ポンプから給気されずに維持するよう形成され、
前記カフ制御部は、前記カフの装着が開始したときに、前記ポンプを駆動せず前記排気弁を閉鎖する、
請求項2記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
前記カフ制御部は、前記ポンプを駆動せず前記排気弁を開放している間にカフ圧の上昇があったときに、前記ポンプを駆動せず前記排気弁を閉鎖する、
請求項3記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
前記カフ制御部は、前記カフの装着が開始したときに、前記排気弁を閉鎖してカフ圧を上昇させた後、前記排気弁を一旦開放することにより前記カフから所定量の排気を行ってから、前記排気弁を再度閉鎖する、
請求項2記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
前記カフ制御部は、カフ圧の変化速度を制御しつつ、前記カフからの所定量の排気を行う、
請求項5記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
前記カフ制御部は、前記排気弁を閉鎖してカフ圧を上昇させた後、カフ圧が安定化してから前記排気弁を開放する、
請求項2記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記カフ制御部は、前記カフが取り外されたか否かを判定し、カフ装着補助動作を一度実行した後に前記カフが取り外されたと判定するまでは次のカフ装着補助動作を実行しない、
請求項1記載の生体情報計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−41684(P2011−41684A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191805(P2009−191805)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】