生体情報計測装置
【課題】 携帯性に優れ、長期間継続して生体情報を測定可能な生体情報測定装置を提供する。
【解決手段】 生体情報計測装置1は、装着ベルト2と、圧電素子3と、制御部とを備える構成とする。装着ベルト2は、利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する。圧電素子3としては、装着ベルト2の巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に厚さ方向に発生する電圧の値が変化する素子を用いる。そして、制御部は、圧電素子3で発生する電圧信号を取得し、該取得した電圧信号に基づいて利用者の生体情報を計測する。
【解決手段】 生体情報計測装置1は、装着ベルト2と、圧電素子3と、制御部とを備える構成とする。装着ベルト2は、利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する。圧電素子3としては、装着ベルト2の巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に厚さ方向に発生する電圧の値が変化する素子を用いる。そして、制御部は、圧電素子3で発生する電圧信号を取得し、該取得した電圧信号に基づいて利用者の生体情報を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脈拍、体温、運動量、運動強度等の生体情報を計測するための生体情報計測装置に関し、より詳細には、人間の四肢のいずれかに装着可能な携帯型の生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の健康状態を検出するために、例えば、脈拍、体温、運動量、運動強度等の生体情報を計測する機器が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、例えば手首等に装着可能な脈波検出装置が提案されている。特許文献1の脈波検出装置では、動脈を伝搬する超音波を振幅検波することにより脈波を検出している。
【0004】
また、特許文献2にも、例えば手首等に装着可能な振動検出デバイスが提案されている。特許文献2の振動検出デバイスでは、脈動のような振動に対応する電界の変化を検出することにより、測定部位に対する位置合わせをすることなく振動検出を行っている。
【0005】
さらに、従来、上記特許文献1及び2以外の生体情報計測装置としては、例えば、不整脈のある患者に対して継続的に脈拍を計測する装置が存在する。この装置では、患者の胸に電極を取り付け、かつ、文庫本サイズの心電図計測器を腰に取り付ける。また、従来、脈拍計測装置として指尖脈波を光学的に計測する装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−37360号公報
【特許文献2】特開2008−200432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2で提案されているように、従来、生体情報を計測するための携帯型の生体情報計測装置が種々提案されている。しかしながら、上述した生体情報計測装置は、一般に、生体情報を一時的に計測するものであり、携帯して実用的に生体情報を長期間継続して測定するものではない。
【0008】
また、上述した不整脈のある患者に対して継続的に脈拍を計測する装置においても、電池の容量や携帯性の問題から、通常、1〜2日程度の携帯が限界である。さらに、上述した指尖脈波を光学的に計測する装置では、計測センサは小型であり、携帯性に優れたものであるが、指先での装着の難しさや照明装置を使うことによる消費電力が大きいため、長期間携帯して脈波を計測することはできない。
【0009】
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、本発明の目的は、携帯性に優れ、より長期間継続して生体情報を測定可能な生体情報測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の生体情報計測装置は、装着ベルトと、圧電素子と、制御部とを備える構成とし、各部の構成及び機能は次のようにする。装着ベルトは、利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する。圧電素子は、装着ベルトに取り付けられ、装着ベルトの巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に、厚さ方向に発生する電圧の値が変化する。そして、制御部は、装着ベルトに取り付けられ、圧電素子で発生する電圧信号を取得し、かつ、該取得した電圧信号に基づいて利用者の生体情報を計測する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体情報計測装置では、生体情報計測時に、圧電素子及び制御部が取り付けられた装着ベルトを四肢のいずれかに巻き付け、そして、圧電素子で発生する電圧信号の変化に基づいて生体情報を計測する。すなわち、本発明の生体情報計測装置は、装着ベルトを利用者の四肢に巻き付けるだけの簡易な構成であり、利用者に対して不快感や違和感を与えることなく、生体情報計測装置を長期間継続して装着することが可能になるとともに圧電素子で計測するため消費電力が非常に小さい。それゆえ、本発明によれば、携帯性に優れ、より長期間継続して生体情報を測定することが可能な生体情報計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の脈拍計測装置で用いる圧電素子の概略側面図である。
【図3】第1の実施形態の脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図4】第1の実施形態の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図5】脈拍の計測原理を示す図である。
【図6】脈拍データの計測結果例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成図である。
【図8】第2の実施形態の脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る生体情報計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図11】第4の実施形態の生体情報計測装置における体温計測処理に関連する回路部の概略構成図である。
【図12】第4の実施形態の生体情報計測装置における体温計測処理に関連する回路部の等価回路図である。
【図13】第4の実施形態の生体情報測定装置における体温計測の原理を説明するための図である。
【図14】変形例1の脈拍計測装置の概略構成図である。
【図15】変形例2−1の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図16】変形例2−1の脈拍計測装置の第1の装着例を示す図である。
【図17】変形例2−1の脈拍計測装置の第2の装着例を示す図である。
【図18】変形例2−2の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図19】変形例2−2の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図20】変形例2−3の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図21】変形例2−3の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図22】変形例2−4の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図23】変形例2−4の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る携帯型の生体情報計測装置の各種実施形態を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本発明は下記の例に限定されない。
1.第1の実施形態:脈拍計測装置の構成例(生体情報計測装置の基本構成例)
2.第2の実施形態:表示部を備える脈拍計測装置の構成例
3.第3の実施形態:防水機能を備える脈拍計測装置の構成例
4.第4の実施形態:脈拍及び体温を計測可能な生体情報計測装置の構成例
5.各種変形例
【0014】
<1.第1の実施形態>
第1の実施形態では、本発明の生体情報計測装置の基本構成となる携帯型の脈拍計測装置について説明する。
【0015】
[脈拍計測装置の構成]
図1(a)及び(b)に、第1の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成を示す。なお
図1(a)は、脈拍計測装置の側面図であり、図1(b)は、図1(a)中のA−A断面図である。
【0016】
本実施形態の脈拍計測装置1は、装着ベルト2と、圧電素子3とを備える。なお、圧電素子3は、装着ベルト2に内蔵される。また、脈拍計測装置1は、図1(a)及び(b)には示さないが、後述するように、加速度センサ、操作部、電池、無線デバイス、アンテナ、記憶部、及び、CPU(Central Processing Unit)を備える(後述の図2参照)。
【0017】
装着ベルト2は、リング状(筒状)の第1ベルト部2aと、その内周側に設けられたリング状の第2ベルト部2bとで構成される。第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bは、ともに、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有する材料で形成される。
【0018】
なお、本実施形態では、利用者に応じて脈拍の出やすさが異なるので、利用者に適した弾性力を有する装着ベルト2を用いる。具体的には、脈拍計測装置1を装着した際に、利用者に対して最適な締め付け圧力が得られるように装着ベルト2の形成材料、径、幅及び厚さを適宜選択する。
【0019】
例えば、脈拍が出にくい利用者であれば、締め付け圧力の比較的大きな(例えば、約30〜60hPa程度)装着ベルト2を用い、脈拍が出やすい一般の利用者であれば、締め付け圧力の比較的小さな(例えば、約20〜30hPa程度)装着ベルト2を用いる。ただし、装着ベルト2の締め付け圧力が強すぎると、利用者に不快感を与えたり、血流が悪くなったりするので、これらの症状と、脈拍の検出精度とを考慮して、装着ベルト2の形成材料、径、幅及び厚さを適宜選択し、装着ベルト2の締め付け圧力を調整する。
【0020】
なお、現在、一般市場で女性向けに販売されている美脚用の締め付けストッキング・タイツにおける足首やふくらはぎ、大腿部にかかる締め付け圧力は約20〜40hpa程度であり、上記例示した本実施形態の装着ベルト2の締め付け圧力と同程度である。すなわち、上記例示した本実施形態の装着ベルト2の締め付け圧力の程度であれば、利用者に不快感や違和感を与えることなく、脈拍計測装置1を長期間継続して装着することができる。
【0021】
圧電素子3は、装着ベルト2の周回方向(巻きつけ方向)に延在するシート状の圧電素子で構成される。ここで、図2に、圧電素子3の概略側面図を示す。圧電素子3は、圧電シート3aと、その上面及び下面にそれぞれ形成された上電極3b及び下電極3cとで構成される。
【0022】
本実施形態では、圧電シート3aを、その延在方向(圧電素子3の面内方向)に、寸法(形状)が収縮または伸張した際に、圧電シート3aの厚さ方向に電圧(電界)が発生する圧電材料で形成する。すなわち、本実施形態では、変形モードが、電圧発生方向と寸法の変形方向とで直交するd31モードとなる圧電シート3aを用い、この変形特性を利用して脈拍を計測する。なお、この変形モードを利用した脈拍の計測原理については後で詳述する。
【0023】
上述のような特性を有する圧電シート3aの形成材料としては、高分子圧電フィルムを用いることができ、例えば、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF:Polyvinylidene Difluoride)等の強誘電体材料等を用いることができる。例えば、圧電シート3aの形成材料としてPVDFを用いた場合には、PVDFの一軸延伸フィルムに対して所定の分極処理を行うことにより、主たる変形モードがd31モードとなるように調整することができる。また、圧電シート3aの厚さは、例えば、必要とする脈拍の計測精度等に応じて適宜設定されるが、例えば数十〜100μm程度にすることができる。
【0024】
また、上電極3b及び下電極3cは、圧電シート3aのそれぞれ上面及び下面の略全域に渡って形成される。また、上電極3b及び下電極3cには、例えば銀(Ag)等の金属材料を用いることができる。ただし、本発明はこれに限定されず、各電極の形成材料としては、任意の導電性材料を用いることができ、例えば用途及び使用環境等に応じて適宜選択される。
【0025】
なお、上電極3b及び下電極3cは、装着ベルト2に内蔵された後述のCPU(Central Processing Unit)に接続され、脈拍計測時に圧電シート3aで発生した電圧信号は、上電極3b及び下電極3cを介してCPUに出力される。
【0026】
また、図1(b)に示す例では、圧電素子3の延在長さを装着ベルト2の周回方向の長さの約1/3程度とするが、本発明はこれに限定されない。圧電素子3の延在長さは、例えば、必要とする脈拍の検出精度に応じて適宜設定される。さらに、装着ベルト2内には上述した各種回路素子(例えば、CPU、加速度センサ、無線デバイス等)が設けられるので、圧電素子3の延在長さは、それらの各種回路素子の占有面積等も考慮して適宜設定される。
【0027】
本実施形態では、図1(b)に示すように、圧電素子3を装着ベルト2の第1ベルト部2a及び第2ベルト部2b間に挟み込むことにより、圧電素子3を装着ベルト2内に固定する。なお、図1(b)では、脈拍計測装置1の全体形状、並びに、装着ベルト2内の圧電素子3の取り付け位置をより明確にするため、圧電素子3が配置されていない第1ベルト部2a及び第2ベルト部2b間の領域には隙間があるように記載している。しかしながら、実際には、この領域では、第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bが密着している。
【0028】
また、本実施形態では、圧電素子3及び脈拍検出に必要な各種回路素子を、装着ベルト2に内蔵する構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。圧電素子3及び脈拍検出に必要な各種回路素子を、例えば、装着ベルト2の外周側又は内周側の表面に配置してもよい。この場合、上述した第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bの一方だけで装着ベルト2を構成することができ、構成がより簡易になる。
【0029】
[脈拍計測装置の回路ブロック構成]
図3に、脈拍計測装置1の信号処理系の回路ブロック構成を示す。脈拍計測装置1の信号処理系は、上述した圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、電池6(電源部)と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU10(制御部)とを備える。
【0030】
なお、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9及びCPU10は、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、外部から操作可能となるように、装着ベルト2に取り付けられる。なお、操作部5の取り付け位置は、操作性を考慮して設定される。各部の構成及び機能は、次の通りである。
【0031】
加速度センサ4は、3次元加速度センサで構成し、主に、利用者の動作を検出する。また、加速度センサ4は、CPU10に接続され、検出した信号(アナログ信号)をCPU10に出力する。この検出信号は、利用者が静止状態(装着した四肢が動いていない状態)にあるか否かを判定するために用いられる。また、本実施形態では、加速度センサ4の検出信号を継続して監視することにより、利用者の運動量や運動強度の時系列変化もモニタすることができる。
【0032】
なお、加速度センサ4としては、利用者が静止状態にあるか否かを検出できる程度の精度を有し、かつ、装着ベルト2内に埋め込むことができる程度のサイズ及び重量を有する3次元加速度センサであれば、任意の加速度センサを用いることができる。
【0033】
操作部5は、例えば、ボタン等の操作子で構成される。操作部5は、利用者が操作部5に対して例えば脈拍計測装置1の電源ON/OFF操作や計測データの送信操作などの所定操作を行った際に、その所定操作に対応する信号(操作信号)を生成する。また、操作部5は、CPU10に接続され、生成した操作信号をCPU10に出力する。
【0034】
電池6は、CPU10の駆動電源であり、例えばボタン型の電池等で構成される。なお、電池6を例えば非接触で充電可能な電池等で構成してもよい。
【0035】
無線デバイス7は、外部の例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に脈拍の計測データを、例えばBluetooth(登録商標)等の方式で無線送信する際に、計測データに対して例えば変調処理等の所定の処理を施す。そして、無線デバイス7は、アンテナ8に接続され、所定の処理が施された脈拍の計測データを、アンテナ8を介して、外部の情報処理装置に送信する。
【0036】
記憶部9は、CPU10に接続され、CPU10で取得した脈拍の計測データを記憶する。なお、記憶部9は、例えば、不揮発性半導体メモリ等で構成される。
【0037】
CPU10は、脈拍計測装置1の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置である。また、CPU10は、脈拍の計測データの取得、記憶及び出力動作を行う。
【0038】
なお、本実施形態では、CPU10において、取得した脈拍の計測データから、所定期間における脈拍の平均値、最大値、最小値、データ取得率等を算出(データ解析)するようにしてもよい。この場合、CPU10に、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を設け、上述のような脈拍データの解析に必要な計測データを一時的にそのRAMやROMに格納してもよい。また、取得する計測データの量が少ない場合にはその計測データをRAMやROMに継続して記憶するようにしてもよい。この場合には、記憶部9を設けなくてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、CPU10は、取得及び/又は解析した脈拍データを、無線デバイス7及びアンテナ8からなる通信デバイスを介して外部の情報処理装置に送信することができる。これらの脈拍データは、圧電素子3で発生する電圧信号を取得する度(リアルタイム)に外部の情報処理装置に送信するようにしてもよいし、定期的に送信するようにしてもよい。また、取得した脈拍データを外部の情報処理装置に送信する場合、上述した脈拍データのデータ解析は、外部の情報処理装置で行ってもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、圧電素子3及び加速度センサ4からCPU10に入力される計測データはアナログデータであるので、CPU10は、入力されるアナログデータをデジタルデータに変換するAD(Analog-to-Digital)変換機能を備える。ただし、入力されるアナログデータを直接、外部の情報処理装置等に送信する場合には、AD変換機能を備えなくてもよい。
【0041】
本実施形態では、脈拍計測装置1の装着期間中、CPU10は、連続して圧電素子3で発生する電圧信号(計測データ)を取得してもよい。しかしながら、脈拍計測中に利用者が何らかの動作(例えば運動、会話等)を行うと、圧電素子3で発生する電圧信号には脈拍信号成分だけでなく様々なノイズ成分が含まれ、精度良く脈拍信号成分を検出することが困難になる。
【0042】
それゆえ、本実施形態では、CPU10は、加速度センサ4の出力信号に基づいて、利用者が静止状態(装着した四肢が動いていない状態)にあるか否かを判定し、利用者が静止状態にあると判断されたときのみ、圧電素子3から電圧信号を取得する。すなわち、本実施形態では、CPU10は、利用者が静止状態にあるときのみ、自動的に圧電素子3から電圧信号を取得する。この場合、取得した電圧信号に含まれるノイズ成分は少なくなり、脈拍信号成分を精度良く検出することができる。
【0043】
なお、通常の日常生活では、一般的に3分間に数秒以上は静止状態がある。それゆえ、本実施形態の脈拍計測装置1において、利用者が静止状態にあるときのみ、自動的に圧電素子3から電圧信号をCPU10で取得した場合、1日当たり、480区分の脈拍の統計的な計測データ(平均、最大、最小、データ収集率)を得ることができる。この場合、各区分のデータを連続的に取得できると共に取得するデータ量がより少なくなり、データ解析の処理量も小さくすることができる。
【0044】
また、脈拍計測装置1の装着期間中、圧電素子3から電圧信号を連続して取得する場合、CPU10は、同時に、装着期間中に加速度センサ4の検出信号も連続して取得することが好ましい。この場合、取得した加速度センサ4の検出信号の時系列の特性から静止状態にある期間を特定することができ、圧電素子3から取得した電圧信号の時系列データから特定された静止状態期間のデータを抽出して、脈拍データを解析することができる。この場合も、解析に用いる電圧信号に含まれるノイズ成分は少なくなり、脈拍信号成分を精度良く検出することができる。
【0045】
[脈拍計測装置の装着例]
図4に、脈拍計測装置1の装着例を示す。なお、図4では、脈拍計測装置1を手首に装着する例を示す。ただし、本実施形態の脈拍計測装置1は、人間の手首(橈骨動脈上、尺骨動脈上)だけでなく、上腕部(上腕動脈上)、足首(後脛骨上)、膝(膝窩動脈上)、又は、足の表裏(足背動脈上)にも同様に装着可能である。
【0046】
脈拍計測装置1を手首に装着する際には、脈拍計測装置1の装着ベルト2の開口部に指先から手を入れ、その後、脈拍計測装置1を手首の所定位置までずらす。すなわち、例えば、スポーツ時にリストバンドを手首に装着する際の動作と同じ要領で脈拍計測装置1を手首に装着する。
【0047】
この際、図4に示すように、手首のくるぶし100(豆状骨)より、腕の付け根側に脈拍計測装置1を装着することが好ましい。このように、脈拍計測装置1で手首のくるぶし100を覆わないようにすることにより、脈拍計測装置1の装着箇所の手首全体に渡って、均一な締め付け圧力を与えることができる。この結果、脈拍の検出精度を向上させることができる。
【0048】
[脈拍の計測原理]
次に、本実施形態の脈拍計測装置1における脈拍の計測原理を、図5を参照しながら説明する。
【0049】
脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した状態で脈拍が発生すると、脈拍計測装置1は、その開口部の中心軸CXに対して半径方向(図5中の矢印A1方向)に膨張する。これにより、脈拍計測装置1内の圧電素子3は、装着ベルト2の周回方向(図5中の矢印A2方向)に引っ張られ伸張する。本実施形態では、圧電素子3に用いる圧電シートを、その延在方向に収縮または伸張した際に、圧電シートの厚さ方向に電圧(電界)が発生する圧電材料で形成している。それゆえ、圧電素子3が装着ベルト2の周回方向(図5中の矢印A2方向)に伸張した際には、圧電素子3の厚さ方向に電圧が発生する(電圧が上昇する)。
【0050】
その後、脈拍が無くなると、脈拍計測装置1及び圧電素子3は、元の形状に戻り、圧電素子3の厚さ方向の電圧も低下する。脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した状態では、脈拍の周期で、上述した圧電素子3の厚さ方向の電圧変動が繰り返される。
【0051】
すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、脈拍の周期に対応する周期で電圧が最大値(ピーク)となる波形の電圧信号が圧電素子3から出力される。本実施形態では、このようにして脈拍を計測する。ここで、図6(a)〜(c)に、実際に計測される脈拍データの一例を示す。
【0052】
図6(a)は、利用者が静止状態にあるときに圧電素子3から検出される電圧信号(脈波信号)の特性図である。なお、図6(a)中の特性の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。図6(a)から明らかなように、圧電素子3から出力される電圧信号(脈波信号)では、所定間隔(脈波ピーク間隔Δp)で電圧のピークが現れる。この電圧のピークが脈拍発生時のタイミングに対応する。
【0053】
図6(b)は、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の1日単位の変化を示す特性図である。なお、図6(b)中の特性の横軸は時刻であり、横軸は脈波ピーク間隔Δpの1分間当たりの平均値である。図6(b)から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置1を1日装着して、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の変化を測定すると、例えば昼間、活動している間(例えば10時から18時)は脈泊が早くなる(脈波ピーク間隔Δpが小さくなる)。一方、夜間、睡眠中(例えば23時から6時)は、脈拍が遅くなる(脈波ピーク間隔Δpが大きくなる)という結果が得られる。すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、従来から知られている日常生活の1日単位のバイオリズムを精度良く計測できることが分かる。
【0054】
また、図6(c)は、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の1週間単位の変化を示す特性図である。なお、図6(c)中の特性の横軸は曜日(時刻)であり、横軸は脈波ピーク間隔Δpの1分間当たりの平均値である。図6(c)から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置1を1週間装着して、脈波ピーク間隔Δpの変化を測定すると、図6(b)に示す1日単位の脈波ピーク間隔Δpの変化が、日毎に繰り返された結果(図6(c)中の太実線)が得られる。すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、1週間単位のバイオリズムも精度良く計測できることが分かる。
【0055】
なお、本実施形態の脈拍計測装置1において、図6(a)に示す電圧のピーク値は、利用者毎により変動する。それゆえ、本実施形態では、電圧のピーク値の利用者毎のばらつきを低減するために、図6(a)に示す電圧信号の電圧値を所定の基準値で正規化してもよい。この場合、具体的には、利用者が、まず、脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した際(初期状態)に、力を抜いた状態(静止状態)で脈拍計測を行う。次いで、この状態の計測データを基準値(正常値)とし、この基準値に基づいて、その後に計測される脈拍データを正規化する。
【0056】
上述のように、本実施形態では、脈拍計測装置1を長期間継続して装着することができ、さらに、図6(a)〜(c)に示すように、長期間、精度良く脈拍変化も監視することができる。それゆえ、本実施形態では、日常のバイオリズムや健康状況を長期間継続して監視することができるので、本実施形態の脈拍計測装置1は、予防医療のツールとして用いることができる。
【0057】
また、本実施形態の脈拍計測装置1は、加速度センサ4を備え、利用者の動作を監視することができる。それゆえ、本実施形態では、利用者に与えられる運動量や運動強度の変化特性も長期間監視することができる。それゆえ、本実施形態では、利用者の健康状態をより詳細に監視することができ、例えば、運動負荷による不整脈の早期発見も可能になる。
【0058】
さらに、本実施形態の脈拍計測装置1では、圧電素子3の延在方向(装着ベルト2の周回方向)の伸縮により変化する圧電素子3の厚さ方向の電圧信号の特性により脈拍を検出する。それゆえ、本実施形態では、圧電素子3が動脈上に配置されていなくても(血管から直接、圧力が印加されなくても)精度よく脈拍を計測することができる。すなわち、本実施形態では、脈拍計測装置1を装着する際の圧電素子3の位置合わせが不要であり、また、脈拍計測中に脈拍計測装置1がずれても、脈拍を確実に計測することができる。
【0059】
また、本実施形態の脈拍計測装置1は、装着ベルト2を利用者の四肢のいずれかに巻き付けるだけの簡易な構成であるので、利用者に不快感や違和感を与えることなく、脈拍計測装置1をより長期間継続して装着することができる。すなわち、本実施形態では、非常に携帯性に優れた脈拍計測装置1を提供することができる。
【0060】
<2.第2の実施形態>
図7(a)及び(b)に、第2の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成を示す。図7(a)は、脈拍計測装置の概略断面図であり、図7(b)は、図7(a)中の矢印Bの方向から見た脈拍計測装置の上面図である。また、図8に、第2の実施形態の脈拍計測装置20の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図7(a)及び(b)、並びに、図8に示す脈拍計測装置20の構成において、図1(a)及び(b)、並びに、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0061】
本実施形態の脈拍計測装置20は、図7(a)及び(b)に示すように、装着ベルト2と、圧電素子3と、表示部22とを備える。さらに、脈拍計測装置20は、図8に示すように、加速度センサ4と、操作部5と、電池6と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU21とを備える。
【0062】
なお、圧電素子3、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9及びCPU10は、上記第1の実施形態と同様に、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。さらに、表示部22は、装着ベルト2の一部に取り付けられ、情報表示画面が利用者から見やすくなるような位置に配置される。
【0063】
図7(a)及び(b)、並びに、図8に示す脈拍計測装置20の構成と、図1(a)及び(b)、並びに、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成との比較から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置20は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、表示部22を追加した構成となる。本実施形態では、表示部22を追加したこと及びCPU21に表示部22の制御機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様であるので、ここでは、CPU21及び表示部22についてのみ説明する。
【0064】
CPU21は、上記第1の実施形態と同様に、脈拍計測装置20の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置であり、脈拍の計測データの取得、記憶及び出力動作を行う。また、本実施形態では、CPU21は、さらに表示部22に接続され、例えば、リアルタイムの脈拍関連計測データおよび脈拍計測動作のON/OFF状態、計測時間、計測データの送信状況等の脈拍の計測状況に関する情報を表示部22に出力する。
【0065】
表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示機器で構成される。表示部22は、CPU21から入力された脈拍の計測状況に関する情報を表示する。
【0066】
上述のように、本実施形態の脈拍計測装置20は、表示部22を追加したこと、及び、CPU21に表示部22の制御機能を追加したこと以外は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様の構成である。また、本実施形態では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
さらに、本実施形態では、表示部22を介して脈拍の計測状況に関する情報を利用者に提供することができるので、使用時の利便性を向上させることができる。
【0068】
<3.第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、脈拍計測装置に対して防水対策を施していないので、例えば、入浴時等には、脈拍計測装置を外す必要がある。そこで、本実施形態では、防水機能を備える脈拍計測装置の構成例を説明する。
【0069】
図9に、第3の実施形態に係る脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図9に示す脈拍計測装置30の構成において、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、本実施形態の脈拍計測装置30の外観構成は、上記第1の実施形態(図1(a)及び(b))と同様であるので、ここでは、その図示は省略する。
【0070】
本実施形態の脈拍計測装置30は、圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU10と、電源部31と、防水部材35(防水封止部材)とを備える。なお、加速度センサ4、操作部5、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9、CPU10、及び、電源部31は、装着ベルト2内に取り付けられる。ただし、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。
【0071】
そして、本実施形態では、圧電素子3以外の各部を防水部材35で封止し、防水対策を施す。防水部材35としては、例えば、防水樹脂材料を用いることができる。なお、防水樹脂材料で圧電素子3も封止すると、防水部材35が圧電素子3の伸縮の妨げとなり、脈拍の検出精度が低下するおそれがあるので、本実施形態では、圧電素子3以外の各部を防水部材35で封止する。
【0072】
また、本実施形態では、CPU10の駆動電源を防水部材35で封止するので、電池交換はできない。それゆえ、本実施形態では、CPU10の電源部31を、2次電池32、充電回路33、及び、非接触充電コイル34で構成し、外部から非接触で充電可能な電源構成とする。本実施形態では、外部から電磁誘導作用により非接触充電コイル34に電力を励起し、その励起した電力を、充電回路33を介して2次電池32に充電する。
【0073】
上述のように、本実施形態の脈拍計測装置30において、防水部材35を設けたこと、及び、CPU10の駆動電源を非接触で充電可能な電源部31で構成したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
さらに、本実施形態では、防水対策を施したので、例えば、入浴時等においても、脈拍計測装置30を装着して脈拍計測を行うことができる。それゆえ、本実施形態では、より詳細に、日常の健康状況を監視することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、さらに、上記第2の実施形態で説明した表示部22を備える構成にしてもよい。この場合には、使用時の利便性をさらに向上させることができる。
【0076】
<4.第4の実施形態>
上記第1〜第3の実施形態では、圧電素子3を用いて脈拍を計測する生体情報計測装置を説明したが、上記各種実施形態で用いた圧電素子3は、その厚さ方向の容量が温度により変化するという特徴を有する。すなわち、上述した圧電素子3では、脈拍だけでなく、体温も計測可能である。そこで、第4の実施形態では、上述した圧電素子3を用いて、脈拍及び体温の両方を計測可能とする携帯型の生体情報計測装置の構成例について説明する。
【0077】
[生体情報計測装置の構成]
図10に、第4の実施形態に係る生体情報計測装置の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図10に示す生体情報計測装置40の構成において、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、本実施形態の生体情報計測装置40の外観構成は、上記第1の実施形態(図1(a)及び(b))と同様であるので、ここでは、その図示は省略する。
【0078】
本実施形態の生体情報計測装置40は、圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、電池6と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU41と、抵抗42(定抵抗素子)とを備える。なお、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9、CPU41、及び、抵抗42は、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。
【0079】
図10に示す生体情報計測装置40の構成と、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成との比較から明らかなように、本実施形態の生体情報計測装置40は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、CPU10及び圧電素子3間に、さらに、抵抗42を追加した構成となる。また、本実施形態では、CPU41に体温の演算機能を追加した。本実施形態の生体情報計測装置40において、抵抗42を追加したこと、及び、CPU41に体温の演算機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様であるので、ここでは、主に、CPU41及び抵抗42の構成及び機能についてのみ説明する。
【0080】
CPU41は、上記第1の実施形態と同様に、生体情報計測装置40の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置である。また、本実施形態では、CPU41は、圧電素子3との接続端子を2つ有し、一方の接続端子が第1信号線SL1を介して圧電素子3の出力端子に直接接続され、他方の接続端子が第2信号線SL2を介して抵抗42に接続される。
【0081】
また、本実施形態では、CPU41は、生体情報の計測モードを、脈拍計測モード及び体温計測モード間で切り換える機能を有し、時分割で脈拍及び体温を計測する。すなわち、本実施形態では、脈拍及び体温を別のタイミングで計測する。なお、脈拍計測モード及び体温計測モードの各計測期間、並びに、各モードの切替周期は、例えば、用途等に応じて適宜設定される。
【0082】
抵抗42は、体温を計測するために設けた抵抗素子であり、抵抗値一定の抵抗素子である。本実施形態では、抵抗42を、CPU41及び圧電素子3間を直接繋ぐ第1信号線SL1に対して並列に接続する。具体的には、抵抗42の一方の端子を圧電素子3に接続し、他方の端子をCPU41の上記他方の接続端子に接続する。
【0083】
図11に、本実施形態の生体情報計測装置40におけるCPU41と圧電素子3とのより具体的な接続関係を示す。本実施形態では、CPU41の一方の接続端子は第1信号線SL1を介して圧電素子3の上電極3bに直接接続され、他方の接続端子は途中に抵抗42が設けられた第2信号線SL2を介して圧電素子3の上電極3bに接続される。なお、本実施形態では、圧電素子3の下電極3cを接地する。
【0084】
[生体情報の計測手法]
(1)脈拍の計測手法
最初に、本実施形態の生体情報計測装置40における脈拍の計測手法について説明する。まず、CPU41は、生体情報の計測モードを脈拍計測モードに設定する。この際、CPU41は、第1信号線SL1のみを導通状態にする。次いで、CPU41は、上記第1の実施形態と同様にして、圧電素子3で発生する電圧信号(図6(a))を第1信号線SL1を介して取得し、該取得した電圧信号に基づいて脈拍測定を行う。
【0085】
(2)体温の計測原理及び計測手法
次に、本実施形態の生体情報計測装置40における体温の計測原理及び計測手法を、図12及び13を参照しながら説明する。なお、図12は、図11に示すCPU41及び圧電素子3間の接続回路部の等価回路図、すなわち、体温計測に関連する回路部の等価回路図である。また、図13(a)及び(b)は、それぞれ、体温計測時にCPU41から抵抗42に出力する電圧パルス信号Va、及び、圧電素子3から出力される応答信号Vbの波形図であり、各波形の横軸は時間tであり、縦軸は電圧である。
【0086】
圧電素子3は、上述のように温度Tにより、その厚さ方向の容量が変化するので、圧電素子3は可変容量コンデンサC(T)として表すことができる。それゆえ、CPU41から第2信号線SL2を介して圧電素子3に至る回路部の等価回路では、図12に示すように、抵抗42(抵抗値R:一定)及び可変容量コンデンサC(T)からなる積分回路が構成される。
【0087】
本実施形態において体温を計測する際には、まず、CPU41は、生体情報の計測モードを体温計測モードに設定する。この際、CPU41は、第1信号線SL1及び第2信号線SL2の両方を導通状態にする。
【0088】
次いで、CPU41は、図13(a)に示すような所定の周期及び振幅を有する矩形状の電圧パルス信号Vaを第2信号線SL2に出力する。すなわち、CPU41は、矩形状の電圧パルス信号Vaを抵抗42及び可変容量コンデンサC(T)からなる積分回路に出力する。
【0089】
次いで、CPU41は、第1信号線SL1を介して圧電素子3で発生する電圧信号の応答特性(応答信号Vb)を取得する。この際、CPU41で得られる応答信号Vbの波形では、図13(b)に示すように、ハイレベル及びロウレベル間の遷移期間(立ち上がり期間及び立下り期間)の傾きが緩やかになる。
【0090】
いま、電圧パルス信号Vaの振幅をVとすると、この遷移期間Δtにおける応答信号Vbの変化は、Vb=V・{1−exp[−t/(R・C(T))]}で表され、遷移期間Δtは、積分回路の時定数R・C(T)により変化する。それゆえ、体温が変化して圧電素子3の容量C(T)が変化すると、応答信号Vbの遷移期間Δtが変化する。
【0091】
そこで、本実施形態では、矩形状の電圧パルス信号Vaを抵抗42を介して圧電素子3に印加した際に圧電素子3から出力される応答信号Vbの遷移期間Δtと、体温との関係を示すデータ(体温参照データ)を測定し、その体温参照データを例えばCPU41等に格納しておく。
【0092】
そして、体温計測時に、CPU41は、圧電素子3から出力される応答信号Vbの時間変化をモニタし、ハイレベル及びロウレベル間の遷移期間Δtを算出する。次いで、CPU41は、算出した遷移期間Δtに対応する体温を体温参照データから取得する。本実施形態では、このようにして体温を計測する。
【0093】
上述のように、本実施形態では、抵抗42を新たに設けたこと、及び、CPU41に体温の演算機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、脈拍計測モードにおいて、上記第1の実施形態と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
さらに、本実施形態では、利用者の体温情報も長期間継続して計測することができる。それゆえ、本実施形態では、日常の健康状況を長期間継続してより詳細に監視することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、脈拍及び体温の両方を計測する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本実施形態の生体情報計測装置40を体温のみを計測する体温計測装置として用いてもよい。また、本実施形態では、さらに、上記第2の実施形態で説明した表示部22及び/又は上記第3の実施形態で説明した防水機能を備える構成にしてもよい。この場合は温度変化等により利用者の入浴時か否かの認識も可能になる。
【0096】
<5.各種変形例>
本発明の生体情報計測装置の構成は、上述した各種実施形態の構成に限定されない。ここでは、各種変形例について説明する。
【0097】
[変形例1]
上述のように、利用者によって脈拍の出やすさが異なり、好適な締め付け圧力も利用者毎に異なる。この問題に、より柔軟に対応するため、例えば、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、さらに、装着ベルト2の周回方向の長さを可変にし、締め付け圧力を適宜調整可能にする機構を設けてもよい。変形例1では、その一構成例を説明する。
【0098】
図14に、変形例1の脈拍計測装置の概略構成を示す。なお、図14に示す脈拍計測装置45の構成において、図1(b)に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0099】
この例の脈拍計測装置45は、装着ベルト2と、圧電素子3と、圧力調整部材46とを備える。なお、圧電素子3は、上記各種実施形態と同様に、装着ベルト2に内蔵される。また、圧力調整部材46は、装着ベルト2の一部に取り付けられ、利用者が操作可能な位置に取り付けられる。この例の脈拍計測装置45において、圧力調整部材46を設けたこと以外は、上記第1の実施形態と同様の構成であるので、ここでは、圧力調整部材46についてのみ説明する。
【0100】
圧力調整部材46は、リング状に変形された装着ベルト2の一方の短部を固定し、他方の短部付近を装着ベルト2の延在方向(図14中の矢印A3)に沿ってスライド可能な機能を備える。さらに、圧力調整部材46は、脈拍計測装置45の装着時に、装着ベルト2の他方の短部付近を所望の位置で固定するための固定機能を備える。すなわち、圧力調整部材46は、装着ベルト2の他方の短部付近の固定位置を変えることにより、締め付け圧力(装着ベルト2の巻き付け長さ)を調整する構造を有する。
【0101】
このような圧力調整部材46としては、例えば、装着ベルト2の他方の短部付近を厚さ方向に挟み込むことにより装着ベルト2を固定し、その固定位置を変えることにより、締め付け圧力を調整する構造の部材を用いることができる。また、装着ベルト2の他方の短部付近に複数の穴を設け、その穴に棒状部材を挿入することにより装着ベルト2を固定し、棒状部材を挿入する穴の位置を変えることにより締め付け圧力を調整する構造の部材を用いてもよい。なお、これらの部材は金属製部材であってもよいし、プラスチック製の部材を用いてもよい。さらに、圧力調整部材46としては、面ファスナー(例えばマジックテープ(登録商標)など)を用いてもよい。
【0102】
なお、この例の構成は、上記第1の実施形態だけでなく、第2〜4の実施形態に対しても同様に適用可能である。ただし、上記第2の実施形態では、装着ベルト2の一部に表示部22を設ける(図7(a))ので、変形例1を第2の実施形態に適用する場合には、表示部22に圧力調整部材46の機構を加えるようにしてもよい。
【0103】
また、この例では、装着ベルト2の巻き付け長さを変えて締め付け圧力を調整するので、装着ベルト2としては、例えば、布等からなる非弾力性のベルトを用いることができる。
【0104】
上述のように、この例の脈拍計測装置45は、圧力調整部材46を追加したこと以外は、上記各種実施形態の脈拍計測装置(又は生体情報計測装置)と同様の構成である。また、この例では、上記各種実施形態と同様にして生体情報を計測することができる。それゆえ、この例では、上記各種実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
さらに、この例では、圧力調整部材46により締め付け圧力を自由に調整することができる。それゆえ、この例では、脈拍の出やすさの違いの影響を受けることなく、あらゆる利用者に適用可能になる。
【0106】
[変形例2]
上記変形例1では、好適な締め付け圧力を得るために装着ベルト2の巻き付け長さを任意に調整できる圧力調整部材46を装着ベルト2に設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、装着ベルト2とは別個に、締め付け圧力を強化するための補助部材(以下、サポーターという)を設けてもよい。変形例2では、そのようなサポーターの種々の構成例を説明する。
【0107】
(1)変形例2−1
図15に、変形例2−1の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例のサポーター51は、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有する材料で形成されたリング状(筒状)部材で構成される。
【0108】
図16に、この例のサポーター51の第1の装着例を示す。なお、図16では、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター51を適用した例を示す。この第1の装着例では、脈拍計測装置20を覆うように、サポーター51を装着する。
【0109】
上記第2の実施形態の脈拍計測装置20では、上述のように、装着ベルト2の一部に表示部22(剛体)を設けるので、利用者の手首の太さ等の違いにより、利用者によっては、装着箇所において、均一に締め付け圧力を印加することが難くなる場合も生じる。この場合、脈拍を計測精度が低下するおそれもある。
【0110】
しかしながら、第1の装着例のように、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター51で例えば手首等を加圧することにより、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター51の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0111】
また、サポーター51の装着手法は、図16に示す例に限定されない。図17(a)及び(b)に、この例のサポーター51の第2の装着例を示す。なお、図17(a)及び(b)では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1に対してサポーター51を適用した例を示す。
【0112】
図17(a)に示す第2の装着例では、脈拍計測装置1のくるぶし100側に、サポーター51を装着する。なお、この際、くるぶし100を覆わないようにサポーター51を装着することが好ましい。また、図17(b)に示す第2の装着例では、脈拍計測装置1の腕の付け根側に、サポーター51を装着する。
【0113】
この第2の装着例では、脈拍計測装置1の近くにサポーター51を装着して脈拍計測装置1付近の血管を若干加圧することにより、脈拍を出やすくする。
【0114】
(2)変形例2−2
図18に、変形例2−2の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例のサポーター52は、ベルト部52aと、複数の保持部52bとで構成される。
【0115】
ベルト部52aは、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有するリング状部材で構成される。なお、この例のベルト部52aの幅及び厚さは、保持部52bの厚さ及び幅より小さくてもよい。
【0116】
各保持部52bは、例えば金属やプラスチック等からなる板状部材で構成される。そして、この例では、複数の保持部52bを全て同じ構成にする。また、複数の保持部52bは、ベルト部52aに取り付けられ、ベルト部52aの周回方向に沿って、等間隔で配置される。この際、各保持部52bの厚さ方向と、ベルト部52aの径方向とが一致するように複数の保持部52bをベルト部52aに取り付ける。
【0117】
図19に、この例のサポーター52の装着例を示す。なお、図19に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター52を適用した例を示す。
【0118】
図19に示す装着例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター52を装着する。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター52で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター52の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0119】
また、この例のサポーター52を、上記変形例2−1で説明した第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も上記変形例2−1と同様の効果が得られる。
【0120】
(3)変形例2−3
図20(a)及び(b)に、変形例2−3の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。なお、図20(a)及び(b)は、それぞれ、後述の第1保持部53a及び第2保持部53b間を閉じたとき及び開けたときの様子を示す図である。
【0121】
この例のサポーター53は、第1保持部53aと、第2保持部53bと、締め付け部材53cとで構成される。
【0122】
第1保持部53aは、円弧状の板状部材であり、例えば金属やプラスチック等の剛性材料で形成される。また、第1保持部53aの延在方向における一方の端部は、締め付け部材53cの一方の端部に取り付けられる。
【0123】
第2保持部53bは、第1保持部53aと同様に、円弧状の板状部材であり、例えば金属やプラスチック等の剛性材料で形成される。また、第2保持部53bの延在方向における一方の端部は、締め付け部材53cの他方の端部に取り付けられる。なお、この際、第2保持部53bの内周側の面と、第1保持部53aの内周側の面とが対向するように、第2保持部53bを締め付け部材53cに取り付ける。これにより、利用者の四肢のいずれかが挿入される円形状の開口部が画成される。
【0124】
締め付け部材53cは、例えばばね等の弾性部材からなる締め付け金具で構成される。
【0125】
このような構成のサポーター53において、サポーター53を利用者の四肢のいずれかに装着する際には、図20(b)に示すように、利用者が第1保持部53a及び第2保持部53b間の距離を広げる(図20(b)中の矢印A4)。そして、利用者は、広げた第1保持部53a及び第2保持部53b間の空間に四肢のいずれかを挿入する。
【0126】
図21に、この例のサポーター53の装着例を示す。なお、図21に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター53を適用した例を示す。
【0127】
図21に示す例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター53を装着する。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター53で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター53の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0128】
なお、この例のサポーター53を、上記変形例2−1で説明した第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も上記変形例2−1と同様の効果が得られる。
【0129】
(4)変形例2−4
図22に、変形例2−4の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例では、サポーター54を、面ファスナーで構成する。なお、サポーター54を利用者の四肢のいずれかに装着する際には、サポーター54を四肢のいずれかに巻き付け、面ファスナーの延在方向(サポーター54の周回方向)の一方の端部付近の下面領域と、それと対向する他方の端部付近の上面領域とを重ね合わせる。
【0130】
図23に、この例のサポーター54の装着例を示す。なお、図23に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター54を適用した例を示す。
【0131】
図23に示す例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター54を巻き付ける。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター54で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。また、この例では、サポーター54の巻き付け長さを任意に調整することができるので、より最適な締め付け圧力で脈拍を計測することが可能になる。
【0132】
なお、この例のサポーター54を、上述した変形例2−1の第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も変形例2−1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0133】
1,20,30,40…脈拍計測装置、2…装着ベルト、3…圧電素子、4…加速度センサ、5…操作部、6…電池、7…無線デバイス、8…アンテナ、9…記憶部、10,21,41…CPU、22…表示部、31…電源部、32…2次電池、33…充電回路、34…非接触充電コイル、35…防水部材、42…抵抗、51〜54…サポーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、脈拍、体温、運動量、運動強度等の生体情報を計測するための生体情報計測装置に関し、より詳細には、人間の四肢のいずれかに装着可能な携帯型の生体情報計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の健康状態を検出するために、例えば、脈拍、体温、運動量、運動強度等の生体情報を計測する機器が種々提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
特許文献1には、例えば手首等に装着可能な脈波検出装置が提案されている。特許文献1の脈波検出装置では、動脈を伝搬する超音波を振幅検波することにより脈波を検出している。
【0004】
また、特許文献2にも、例えば手首等に装着可能な振動検出デバイスが提案されている。特許文献2の振動検出デバイスでは、脈動のような振動に対応する電界の変化を検出することにより、測定部位に対する位置合わせをすることなく振動検出を行っている。
【0005】
さらに、従来、上記特許文献1及び2以外の生体情報計測装置としては、例えば、不整脈のある患者に対して継続的に脈拍を計測する装置が存在する。この装置では、患者の胸に電極を取り付け、かつ、文庫本サイズの心電図計測器を腰に取り付ける。また、従来、脈拍計測装置として指尖脈波を光学的に計測する装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−37360号公報
【特許文献2】特開2008−200432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び2で提案されているように、従来、生体情報を計測するための携帯型の生体情報計測装置が種々提案されている。しかしながら、上述した生体情報計測装置は、一般に、生体情報を一時的に計測するものであり、携帯して実用的に生体情報を長期間継続して測定するものではない。
【0008】
また、上述した不整脈のある患者に対して継続的に脈拍を計測する装置においても、電池の容量や携帯性の問題から、通常、1〜2日程度の携帯が限界である。さらに、上述した指尖脈波を光学的に計測する装置では、計測センサは小型であり、携帯性に優れたものであるが、指先での装着の難しさや照明装置を使うことによる消費電力が大きいため、長期間携帯して脈波を計測することはできない。
【0009】
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、本発明の目的は、携帯性に優れ、より長期間継続して生体情報を測定可能な生体情報測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の生体情報計測装置は、装着ベルトと、圧電素子と、制御部とを備える構成とし、各部の構成及び機能は次のようにする。装着ベルトは、利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する。圧電素子は、装着ベルトに取り付けられ、装着ベルトの巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に、厚さ方向に発生する電圧の値が変化する。そして、制御部は、装着ベルトに取り付けられ、圧電素子で発生する電圧信号を取得し、かつ、該取得した電圧信号に基づいて利用者の生体情報を計測する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生体情報計測装置では、生体情報計測時に、圧電素子及び制御部が取り付けられた装着ベルトを四肢のいずれかに巻き付け、そして、圧電素子で発生する電圧信号の変化に基づいて生体情報を計測する。すなわち、本発明の生体情報計測装置は、装着ベルトを利用者の四肢に巻き付けるだけの簡易な構成であり、利用者に対して不快感や違和感を与えることなく、生体情報計測装置を長期間継続して装着することが可能になるとともに圧電素子で計測するため消費電力が非常に小さい。それゆえ、本発明によれば、携帯性に優れ、より長期間継続して生体情報を測定することが可能な生体情報計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態の脈拍計測装置で用いる圧電素子の概略側面図である。
【図3】第1の実施形態の脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図4】第1の実施形態の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図5】脈拍の計測原理を示す図である。
【図6】脈拍データの計測結果例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成図である。
【図8】第2の実施形態の脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る生体情報計測装置の信号処理系の回路ブロック構成図である。
【図11】第4の実施形態の生体情報計測装置における体温計測処理に関連する回路部の概略構成図である。
【図12】第4の実施形態の生体情報計測装置における体温計測処理に関連する回路部の等価回路図である。
【図13】第4の実施形態の生体情報測定装置における体温計測の原理を説明するための図である。
【図14】変形例1の脈拍計測装置の概略構成図である。
【図15】変形例2−1の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図16】変形例2−1の脈拍計測装置の第1の装着例を示す図である。
【図17】変形例2−1の脈拍計測装置の第2の装着例を示す図である。
【図18】変形例2−2の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図19】変形例2−2の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図20】変形例2−3の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図21】変形例2−3の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【図22】変形例2−4の脈拍計測装置で用いるサポーターの外観図である。
【図23】変形例2−4の脈拍計測装置の装着例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る携帯型の生体情報計測装置の各種実施形態を、図面を参照しながら下記の順で説明する。ただし、本発明は下記の例に限定されない。
1.第1の実施形態:脈拍計測装置の構成例(生体情報計測装置の基本構成例)
2.第2の実施形態:表示部を備える脈拍計測装置の構成例
3.第3の実施形態:防水機能を備える脈拍計測装置の構成例
4.第4の実施形態:脈拍及び体温を計測可能な生体情報計測装置の構成例
5.各種変形例
【0014】
<1.第1の実施形態>
第1の実施形態では、本発明の生体情報計測装置の基本構成となる携帯型の脈拍計測装置について説明する。
【0015】
[脈拍計測装置の構成]
図1(a)及び(b)に、第1の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成を示す。なお
図1(a)は、脈拍計測装置の側面図であり、図1(b)は、図1(a)中のA−A断面図である。
【0016】
本実施形態の脈拍計測装置1は、装着ベルト2と、圧電素子3とを備える。なお、圧電素子3は、装着ベルト2に内蔵される。また、脈拍計測装置1は、図1(a)及び(b)には示さないが、後述するように、加速度センサ、操作部、電池、無線デバイス、アンテナ、記憶部、及び、CPU(Central Processing Unit)を備える(後述の図2参照)。
【0017】
装着ベルト2は、リング状(筒状)の第1ベルト部2aと、その内周側に設けられたリング状の第2ベルト部2bとで構成される。第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bは、ともに、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有する材料で形成される。
【0018】
なお、本実施形態では、利用者に応じて脈拍の出やすさが異なるので、利用者に適した弾性力を有する装着ベルト2を用いる。具体的には、脈拍計測装置1を装着した際に、利用者に対して最適な締め付け圧力が得られるように装着ベルト2の形成材料、径、幅及び厚さを適宜選択する。
【0019】
例えば、脈拍が出にくい利用者であれば、締め付け圧力の比較的大きな(例えば、約30〜60hPa程度)装着ベルト2を用い、脈拍が出やすい一般の利用者であれば、締め付け圧力の比較的小さな(例えば、約20〜30hPa程度)装着ベルト2を用いる。ただし、装着ベルト2の締め付け圧力が強すぎると、利用者に不快感を与えたり、血流が悪くなったりするので、これらの症状と、脈拍の検出精度とを考慮して、装着ベルト2の形成材料、径、幅及び厚さを適宜選択し、装着ベルト2の締め付け圧力を調整する。
【0020】
なお、現在、一般市場で女性向けに販売されている美脚用の締め付けストッキング・タイツにおける足首やふくらはぎ、大腿部にかかる締め付け圧力は約20〜40hpa程度であり、上記例示した本実施形態の装着ベルト2の締め付け圧力と同程度である。すなわち、上記例示した本実施形態の装着ベルト2の締め付け圧力の程度であれば、利用者に不快感や違和感を与えることなく、脈拍計測装置1を長期間継続して装着することができる。
【0021】
圧電素子3は、装着ベルト2の周回方向(巻きつけ方向)に延在するシート状の圧電素子で構成される。ここで、図2に、圧電素子3の概略側面図を示す。圧電素子3は、圧電シート3aと、その上面及び下面にそれぞれ形成された上電極3b及び下電極3cとで構成される。
【0022】
本実施形態では、圧電シート3aを、その延在方向(圧電素子3の面内方向)に、寸法(形状)が収縮または伸張した際に、圧電シート3aの厚さ方向に電圧(電界)が発生する圧電材料で形成する。すなわち、本実施形態では、変形モードが、電圧発生方向と寸法の変形方向とで直交するd31モードとなる圧電シート3aを用い、この変形特性を利用して脈拍を計測する。なお、この変形モードを利用した脈拍の計測原理については後で詳述する。
【0023】
上述のような特性を有する圧電シート3aの形成材料としては、高分子圧電フィルムを用いることができ、例えば、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF:Polyvinylidene Difluoride)等の強誘電体材料等を用いることができる。例えば、圧電シート3aの形成材料としてPVDFを用いた場合には、PVDFの一軸延伸フィルムに対して所定の分極処理を行うことにより、主たる変形モードがd31モードとなるように調整することができる。また、圧電シート3aの厚さは、例えば、必要とする脈拍の計測精度等に応じて適宜設定されるが、例えば数十〜100μm程度にすることができる。
【0024】
また、上電極3b及び下電極3cは、圧電シート3aのそれぞれ上面及び下面の略全域に渡って形成される。また、上電極3b及び下電極3cには、例えば銀(Ag)等の金属材料を用いることができる。ただし、本発明はこれに限定されず、各電極の形成材料としては、任意の導電性材料を用いることができ、例えば用途及び使用環境等に応じて適宜選択される。
【0025】
なお、上電極3b及び下電極3cは、装着ベルト2に内蔵された後述のCPU(Central Processing Unit)に接続され、脈拍計測時に圧電シート3aで発生した電圧信号は、上電極3b及び下電極3cを介してCPUに出力される。
【0026】
また、図1(b)に示す例では、圧電素子3の延在長さを装着ベルト2の周回方向の長さの約1/3程度とするが、本発明はこれに限定されない。圧電素子3の延在長さは、例えば、必要とする脈拍の検出精度に応じて適宜設定される。さらに、装着ベルト2内には上述した各種回路素子(例えば、CPU、加速度センサ、無線デバイス等)が設けられるので、圧電素子3の延在長さは、それらの各種回路素子の占有面積等も考慮して適宜設定される。
【0027】
本実施形態では、図1(b)に示すように、圧電素子3を装着ベルト2の第1ベルト部2a及び第2ベルト部2b間に挟み込むことにより、圧電素子3を装着ベルト2内に固定する。なお、図1(b)では、脈拍計測装置1の全体形状、並びに、装着ベルト2内の圧電素子3の取り付け位置をより明確にするため、圧電素子3が配置されていない第1ベルト部2a及び第2ベルト部2b間の領域には隙間があるように記載している。しかしながら、実際には、この領域では、第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bが密着している。
【0028】
また、本実施形態では、圧電素子3及び脈拍検出に必要な各種回路素子を、装着ベルト2に内蔵する構成を説明したが、本発明はこれに限定されない。圧電素子3及び脈拍検出に必要な各種回路素子を、例えば、装着ベルト2の外周側又は内周側の表面に配置してもよい。この場合、上述した第1ベルト部2a及び第2ベルト部2bの一方だけで装着ベルト2を構成することができ、構成がより簡易になる。
【0029】
[脈拍計測装置の回路ブロック構成]
図3に、脈拍計測装置1の信号処理系の回路ブロック構成を示す。脈拍計測装置1の信号処理系は、上述した圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、電池6(電源部)と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU10(制御部)とを備える。
【0030】
なお、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9及びCPU10は、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、外部から操作可能となるように、装着ベルト2に取り付けられる。なお、操作部5の取り付け位置は、操作性を考慮して設定される。各部の構成及び機能は、次の通りである。
【0031】
加速度センサ4は、3次元加速度センサで構成し、主に、利用者の動作を検出する。また、加速度センサ4は、CPU10に接続され、検出した信号(アナログ信号)をCPU10に出力する。この検出信号は、利用者が静止状態(装着した四肢が動いていない状態)にあるか否かを判定するために用いられる。また、本実施形態では、加速度センサ4の検出信号を継続して監視することにより、利用者の運動量や運動強度の時系列変化もモニタすることができる。
【0032】
なお、加速度センサ4としては、利用者が静止状態にあるか否かを検出できる程度の精度を有し、かつ、装着ベルト2内に埋め込むことができる程度のサイズ及び重量を有する3次元加速度センサであれば、任意の加速度センサを用いることができる。
【0033】
操作部5は、例えば、ボタン等の操作子で構成される。操作部5は、利用者が操作部5に対して例えば脈拍計測装置1の電源ON/OFF操作や計測データの送信操作などの所定操作を行った際に、その所定操作に対応する信号(操作信号)を生成する。また、操作部5は、CPU10に接続され、生成した操作信号をCPU10に出力する。
【0034】
電池6は、CPU10の駆動電源であり、例えばボタン型の電池等で構成される。なお、電池6を例えば非接触で充電可能な電池等で構成してもよい。
【0035】
無線デバイス7は、外部の例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に脈拍の計測データを、例えばBluetooth(登録商標)等の方式で無線送信する際に、計測データに対して例えば変調処理等の所定の処理を施す。そして、無線デバイス7は、アンテナ8に接続され、所定の処理が施された脈拍の計測データを、アンテナ8を介して、外部の情報処理装置に送信する。
【0036】
記憶部9は、CPU10に接続され、CPU10で取得した脈拍の計測データを記憶する。なお、記憶部9は、例えば、不揮発性半導体メモリ等で構成される。
【0037】
CPU10は、脈拍計測装置1の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置である。また、CPU10は、脈拍の計測データの取得、記憶及び出力動作を行う。
【0038】
なお、本実施形態では、CPU10において、取得した脈拍の計測データから、所定期間における脈拍の平均値、最大値、最小値、データ取得率等を算出(データ解析)するようにしてもよい。この場合、CPU10に、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を設け、上述のような脈拍データの解析に必要な計測データを一時的にそのRAMやROMに格納してもよい。また、取得する計測データの量が少ない場合にはその計測データをRAMやROMに継続して記憶するようにしてもよい。この場合には、記憶部9を設けなくてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、CPU10は、取得及び/又は解析した脈拍データを、無線デバイス7及びアンテナ8からなる通信デバイスを介して外部の情報処理装置に送信することができる。これらの脈拍データは、圧電素子3で発生する電圧信号を取得する度(リアルタイム)に外部の情報処理装置に送信するようにしてもよいし、定期的に送信するようにしてもよい。また、取得した脈拍データを外部の情報処理装置に送信する場合、上述した脈拍データのデータ解析は、外部の情報処理装置で行ってもよい。
【0040】
さらに、本実施形態では、圧電素子3及び加速度センサ4からCPU10に入力される計測データはアナログデータであるので、CPU10は、入力されるアナログデータをデジタルデータに変換するAD(Analog-to-Digital)変換機能を備える。ただし、入力されるアナログデータを直接、外部の情報処理装置等に送信する場合には、AD変換機能を備えなくてもよい。
【0041】
本実施形態では、脈拍計測装置1の装着期間中、CPU10は、連続して圧電素子3で発生する電圧信号(計測データ)を取得してもよい。しかしながら、脈拍計測中に利用者が何らかの動作(例えば運動、会話等)を行うと、圧電素子3で発生する電圧信号には脈拍信号成分だけでなく様々なノイズ成分が含まれ、精度良く脈拍信号成分を検出することが困難になる。
【0042】
それゆえ、本実施形態では、CPU10は、加速度センサ4の出力信号に基づいて、利用者が静止状態(装着した四肢が動いていない状態)にあるか否かを判定し、利用者が静止状態にあると判断されたときのみ、圧電素子3から電圧信号を取得する。すなわち、本実施形態では、CPU10は、利用者が静止状態にあるときのみ、自動的に圧電素子3から電圧信号を取得する。この場合、取得した電圧信号に含まれるノイズ成分は少なくなり、脈拍信号成分を精度良く検出することができる。
【0043】
なお、通常の日常生活では、一般的に3分間に数秒以上は静止状態がある。それゆえ、本実施形態の脈拍計測装置1において、利用者が静止状態にあるときのみ、自動的に圧電素子3から電圧信号をCPU10で取得した場合、1日当たり、480区分の脈拍の統計的な計測データ(平均、最大、最小、データ収集率)を得ることができる。この場合、各区分のデータを連続的に取得できると共に取得するデータ量がより少なくなり、データ解析の処理量も小さくすることができる。
【0044】
また、脈拍計測装置1の装着期間中、圧電素子3から電圧信号を連続して取得する場合、CPU10は、同時に、装着期間中に加速度センサ4の検出信号も連続して取得することが好ましい。この場合、取得した加速度センサ4の検出信号の時系列の特性から静止状態にある期間を特定することができ、圧電素子3から取得した電圧信号の時系列データから特定された静止状態期間のデータを抽出して、脈拍データを解析することができる。この場合も、解析に用いる電圧信号に含まれるノイズ成分は少なくなり、脈拍信号成分を精度良く検出することができる。
【0045】
[脈拍計測装置の装着例]
図4に、脈拍計測装置1の装着例を示す。なお、図4では、脈拍計測装置1を手首に装着する例を示す。ただし、本実施形態の脈拍計測装置1は、人間の手首(橈骨動脈上、尺骨動脈上)だけでなく、上腕部(上腕動脈上)、足首(後脛骨上)、膝(膝窩動脈上)、又は、足の表裏(足背動脈上)にも同様に装着可能である。
【0046】
脈拍計測装置1を手首に装着する際には、脈拍計測装置1の装着ベルト2の開口部に指先から手を入れ、その後、脈拍計測装置1を手首の所定位置までずらす。すなわち、例えば、スポーツ時にリストバンドを手首に装着する際の動作と同じ要領で脈拍計測装置1を手首に装着する。
【0047】
この際、図4に示すように、手首のくるぶし100(豆状骨)より、腕の付け根側に脈拍計測装置1を装着することが好ましい。このように、脈拍計測装置1で手首のくるぶし100を覆わないようにすることにより、脈拍計測装置1の装着箇所の手首全体に渡って、均一な締め付け圧力を与えることができる。この結果、脈拍の検出精度を向上させることができる。
【0048】
[脈拍の計測原理]
次に、本実施形態の脈拍計測装置1における脈拍の計測原理を、図5を参照しながら説明する。
【0049】
脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した状態で脈拍が発生すると、脈拍計測装置1は、その開口部の中心軸CXに対して半径方向(図5中の矢印A1方向)に膨張する。これにより、脈拍計測装置1内の圧電素子3は、装着ベルト2の周回方向(図5中の矢印A2方向)に引っ張られ伸張する。本実施形態では、圧電素子3に用いる圧電シートを、その延在方向に収縮または伸張した際に、圧電シートの厚さ方向に電圧(電界)が発生する圧電材料で形成している。それゆえ、圧電素子3が装着ベルト2の周回方向(図5中の矢印A2方向)に伸張した際には、圧電素子3の厚さ方向に電圧が発生する(電圧が上昇する)。
【0050】
その後、脈拍が無くなると、脈拍計測装置1及び圧電素子3は、元の形状に戻り、圧電素子3の厚さ方向の電圧も低下する。脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した状態では、脈拍の周期で、上述した圧電素子3の厚さ方向の電圧変動が繰り返される。
【0051】
すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、脈拍の周期に対応する周期で電圧が最大値(ピーク)となる波形の電圧信号が圧電素子3から出力される。本実施形態では、このようにして脈拍を計測する。ここで、図6(a)〜(c)に、実際に計測される脈拍データの一例を示す。
【0052】
図6(a)は、利用者が静止状態にあるときに圧電素子3から検出される電圧信号(脈波信号)の特性図である。なお、図6(a)中の特性の横軸は時間であり、縦軸は電圧である。図6(a)から明らかなように、圧電素子3から出力される電圧信号(脈波信号)では、所定間隔(脈波ピーク間隔Δp)で電圧のピークが現れる。この電圧のピークが脈拍発生時のタイミングに対応する。
【0053】
図6(b)は、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の1日単位の変化を示す特性図である。なお、図6(b)中の特性の横軸は時刻であり、横軸は脈波ピーク間隔Δpの1分間当たりの平均値である。図6(b)から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置1を1日装着して、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の変化を測定すると、例えば昼間、活動している間(例えば10時から18時)は脈泊が早くなる(脈波ピーク間隔Δpが小さくなる)。一方、夜間、睡眠中(例えば23時から6時)は、脈拍が遅くなる(脈波ピーク間隔Δpが大きくなる)という結果が得られる。すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、従来から知られている日常生活の1日単位のバイオリズムを精度良く計測できることが分かる。
【0054】
また、図6(c)は、脈波ピーク間隔Δp(脈周期)の1週間単位の変化を示す特性図である。なお、図6(c)中の特性の横軸は曜日(時刻)であり、横軸は脈波ピーク間隔Δpの1分間当たりの平均値である。図6(c)から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置1を1週間装着して、脈波ピーク間隔Δpの変化を測定すると、図6(b)に示す1日単位の脈波ピーク間隔Δpの変化が、日毎に繰り返された結果(図6(c)中の太実線)が得られる。すなわち、本実施形態の脈拍計測装置1では、1週間単位のバイオリズムも精度良く計測できることが分かる。
【0055】
なお、本実施形態の脈拍計測装置1において、図6(a)に示す電圧のピーク値は、利用者毎により変動する。それゆえ、本実施形態では、電圧のピーク値の利用者毎のばらつきを低減するために、図6(a)に示す電圧信号の電圧値を所定の基準値で正規化してもよい。この場合、具体的には、利用者が、まず、脈拍計測装置1を四肢のいずれかに装着した際(初期状態)に、力を抜いた状態(静止状態)で脈拍計測を行う。次いで、この状態の計測データを基準値(正常値)とし、この基準値に基づいて、その後に計測される脈拍データを正規化する。
【0056】
上述のように、本実施形態では、脈拍計測装置1を長期間継続して装着することができ、さらに、図6(a)〜(c)に示すように、長期間、精度良く脈拍変化も監視することができる。それゆえ、本実施形態では、日常のバイオリズムや健康状況を長期間継続して監視することができるので、本実施形態の脈拍計測装置1は、予防医療のツールとして用いることができる。
【0057】
また、本実施形態の脈拍計測装置1は、加速度センサ4を備え、利用者の動作を監視することができる。それゆえ、本実施形態では、利用者に与えられる運動量や運動強度の変化特性も長期間監視することができる。それゆえ、本実施形態では、利用者の健康状態をより詳細に監視することができ、例えば、運動負荷による不整脈の早期発見も可能になる。
【0058】
さらに、本実施形態の脈拍計測装置1では、圧電素子3の延在方向(装着ベルト2の周回方向)の伸縮により変化する圧電素子3の厚さ方向の電圧信号の特性により脈拍を検出する。それゆえ、本実施形態では、圧電素子3が動脈上に配置されていなくても(血管から直接、圧力が印加されなくても)精度よく脈拍を計測することができる。すなわち、本実施形態では、脈拍計測装置1を装着する際の圧電素子3の位置合わせが不要であり、また、脈拍計測中に脈拍計測装置1がずれても、脈拍を確実に計測することができる。
【0059】
また、本実施形態の脈拍計測装置1は、装着ベルト2を利用者の四肢のいずれかに巻き付けるだけの簡易な構成であるので、利用者に不快感や違和感を与えることなく、脈拍計測装置1をより長期間継続して装着することができる。すなわち、本実施形態では、非常に携帯性に優れた脈拍計測装置1を提供することができる。
【0060】
<2.第2の実施形態>
図7(a)及び(b)に、第2の実施形態に係る脈拍計測装置の概略構成を示す。図7(a)は、脈拍計測装置の概略断面図であり、図7(b)は、図7(a)中の矢印Bの方向から見た脈拍計測装置の上面図である。また、図8に、第2の実施形態の脈拍計測装置20の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図7(a)及び(b)、並びに、図8に示す脈拍計測装置20の構成において、図1(a)及び(b)、並びに、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0061】
本実施形態の脈拍計測装置20は、図7(a)及び(b)に示すように、装着ベルト2と、圧電素子3と、表示部22とを備える。さらに、脈拍計測装置20は、図8に示すように、加速度センサ4と、操作部5と、電池6と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU21とを備える。
【0062】
なお、圧電素子3、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9及びCPU10は、上記第1の実施形態と同様に、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。さらに、表示部22は、装着ベルト2の一部に取り付けられ、情報表示画面が利用者から見やすくなるような位置に配置される。
【0063】
図7(a)及び(b)、並びに、図8に示す脈拍計測装置20の構成と、図1(a)及び(b)、並びに、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成との比較から明らかなように、本実施形態の脈拍計測装置20は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、表示部22を追加した構成となる。本実施形態では、表示部22を追加したこと及びCPU21に表示部22の制御機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様であるので、ここでは、CPU21及び表示部22についてのみ説明する。
【0064】
CPU21は、上記第1の実施形態と同様に、脈拍計測装置20の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置であり、脈拍の計測データの取得、記憶及び出力動作を行う。また、本実施形態では、CPU21は、さらに表示部22に接続され、例えば、リアルタイムの脈拍関連計測データおよび脈拍計測動作のON/OFF状態、計測時間、計測データの送信状況等の脈拍の計測状況に関する情報を表示部22に出力する。
【0065】
表示部22は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等の表示機器で構成される。表示部22は、CPU21から入力された脈拍の計測状況に関する情報を表示する。
【0066】
上述のように、本実施形態の脈拍計測装置20は、表示部22を追加したこと、及び、CPU21に表示部22の制御機能を追加したこと以外は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様の構成である。また、本実施形態では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
さらに、本実施形態では、表示部22を介して脈拍の計測状況に関する情報を利用者に提供することができるので、使用時の利便性を向上させることができる。
【0068】
<3.第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態では、脈拍計測装置に対して防水対策を施していないので、例えば、入浴時等には、脈拍計測装置を外す必要がある。そこで、本実施形態では、防水機能を備える脈拍計測装置の構成例を説明する。
【0069】
図9に、第3の実施形態に係る脈拍計測装置の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図9に示す脈拍計測装置30の構成において、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、本実施形態の脈拍計測装置30の外観構成は、上記第1の実施形態(図1(a)及び(b))と同様であるので、ここでは、その図示は省略する。
【0070】
本実施形態の脈拍計測装置30は、圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU10と、電源部31と、防水部材35(防水封止部材)とを備える。なお、加速度センサ4、操作部5、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9、CPU10、及び、電源部31は、装着ベルト2内に取り付けられる。ただし、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。
【0071】
そして、本実施形態では、圧電素子3以外の各部を防水部材35で封止し、防水対策を施す。防水部材35としては、例えば、防水樹脂材料を用いることができる。なお、防水樹脂材料で圧電素子3も封止すると、防水部材35が圧電素子3の伸縮の妨げとなり、脈拍の検出精度が低下するおそれがあるので、本実施形態では、圧電素子3以外の各部を防水部材35で封止する。
【0072】
また、本実施形態では、CPU10の駆動電源を防水部材35で封止するので、電池交換はできない。それゆえ、本実施形態では、CPU10の電源部31を、2次電池32、充電回路33、及び、非接触充電コイル34で構成し、外部から非接触で充電可能な電源構成とする。本実施形態では、外部から電磁誘導作用により非接触充電コイル34に電力を励起し、その励起した電力を、充電回路33を介して2次電池32に充電する。
【0073】
上述のように、本実施形態の脈拍計測装置30において、防水部材35を設けたこと、及び、CPU10の駆動電源を非接触で充電可能な電源部31で構成したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
さらに、本実施形態では、防水対策を施したので、例えば、入浴時等においても、脈拍計測装置30を装着して脈拍計測を行うことができる。それゆえ、本実施形態では、より詳細に、日常の健康状況を監視することができる。
【0075】
なお、本実施形態では、さらに、上記第2の実施形態で説明した表示部22を備える構成にしてもよい。この場合には、使用時の利便性をさらに向上させることができる。
【0076】
<4.第4の実施形態>
上記第1〜第3の実施形態では、圧電素子3を用いて脈拍を計測する生体情報計測装置を説明したが、上記各種実施形態で用いた圧電素子3は、その厚さ方向の容量が温度により変化するという特徴を有する。すなわち、上述した圧電素子3では、脈拍だけでなく、体温も計測可能である。そこで、第4の実施形態では、上述した圧電素子3を用いて、脈拍及び体温の両方を計測可能とする携帯型の生体情報計測装置の構成例について説明する。
【0077】
[生体情報計測装置の構成]
図10に、第4の実施形態に係る生体情報計測装置の信号処理系の回路ブロック構成を示す。なお、図10に示す生体情報計測装置40の構成において、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。また、本実施形態の生体情報計測装置40の外観構成は、上記第1の実施形態(図1(a)及び(b))と同様であるので、ここでは、その図示は省略する。
【0078】
本実施形態の生体情報計測装置40は、圧電素子3と、加速度センサ4と、操作部5と、電池6と、無線デバイス7と、アンテナ8と、記憶部9と、CPU41と、抵抗42(定抵抗素子)とを備える。なお、加速度センサ4、操作部5、電池6、無線デバイス7、アンテナ8、記憶部9、CPU41、及び、抵抗42は、装着ベルト2内に取り付けられる。また、操作部5は、上記第1の実施形態と同様に、外部から操作可能となるように装着ベルト2に取り付けられる。
【0079】
図10に示す生体情報計測装置40の構成と、図3に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成との比較から明らかなように、本実施形態の生体情報計測装置40は、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、CPU10及び圧電素子3間に、さらに、抵抗42を追加した構成となる。また、本実施形態では、CPU41に体温の演算機能を追加した。本実施形態の生体情報計測装置40において、抵抗42を追加したこと、及び、CPU41に体温の演算機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様であるので、ここでは、主に、CPU41及び抵抗42の構成及び機能についてのみ説明する。
【0080】
CPU41は、上記第1の実施形態と同様に、生体情報計測装置40の動作全般を制御する制御装置及び演算処理装置である。また、本実施形態では、CPU41は、圧電素子3との接続端子を2つ有し、一方の接続端子が第1信号線SL1を介して圧電素子3の出力端子に直接接続され、他方の接続端子が第2信号線SL2を介して抵抗42に接続される。
【0081】
また、本実施形態では、CPU41は、生体情報の計測モードを、脈拍計測モード及び体温計測モード間で切り換える機能を有し、時分割で脈拍及び体温を計測する。すなわち、本実施形態では、脈拍及び体温を別のタイミングで計測する。なお、脈拍計測モード及び体温計測モードの各計測期間、並びに、各モードの切替周期は、例えば、用途等に応じて適宜設定される。
【0082】
抵抗42は、体温を計測するために設けた抵抗素子であり、抵抗値一定の抵抗素子である。本実施形態では、抵抗42を、CPU41及び圧電素子3間を直接繋ぐ第1信号線SL1に対して並列に接続する。具体的には、抵抗42の一方の端子を圧電素子3に接続し、他方の端子をCPU41の上記他方の接続端子に接続する。
【0083】
図11に、本実施形態の生体情報計測装置40におけるCPU41と圧電素子3とのより具体的な接続関係を示す。本実施形態では、CPU41の一方の接続端子は第1信号線SL1を介して圧電素子3の上電極3bに直接接続され、他方の接続端子は途中に抵抗42が設けられた第2信号線SL2を介して圧電素子3の上電極3bに接続される。なお、本実施形態では、圧電素子3の下電極3cを接地する。
【0084】
[生体情報の計測手法]
(1)脈拍の計測手法
最初に、本実施形態の生体情報計測装置40における脈拍の計測手法について説明する。まず、CPU41は、生体情報の計測モードを脈拍計測モードに設定する。この際、CPU41は、第1信号線SL1のみを導通状態にする。次いで、CPU41は、上記第1の実施形態と同様にして、圧電素子3で発生する電圧信号(図6(a))を第1信号線SL1を介して取得し、該取得した電圧信号に基づいて脈拍測定を行う。
【0085】
(2)体温の計測原理及び計測手法
次に、本実施形態の生体情報計測装置40における体温の計測原理及び計測手法を、図12及び13を参照しながら説明する。なお、図12は、図11に示すCPU41及び圧電素子3間の接続回路部の等価回路図、すなわち、体温計測に関連する回路部の等価回路図である。また、図13(a)及び(b)は、それぞれ、体温計測時にCPU41から抵抗42に出力する電圧パルス信号Va、及び、圧電素子3から出力される応答信号Vbの波形図であり、各波形の横軸は時間tであり、縦軸は電圧である。
【0086】
圧電素子3は、上述のように温度Tにより、その厚さ方向の容量が変化するので、圧電素子3は可変容量コンデンサC(T)として表すことができる。それゆえ、CPU41から第2信号線SL2を介して圧電素子3に至る回路部の等価回路では、図12に示すように、抵抗42(抵抗値R:一定)及び可変容量コンデンサC(T)からなる積分回路が構成される。
【0087】
本実施形態において体温を計測する際には、まず、CPU41は、生体情報の計測モードを体温計測モードに設定する。この際、CPU41は、第1信号線SL1及び第2信号線SL2の両方を導通状態にする。
【0088】
次いで、CPU41は、図13(a)に示すような所定の周期及び振幅を有する矩形状の電圧パルス信号Vaを第2信号線SL2に出力する。すなわち、CPU41は、矩形状の電圧パルス信号Vaを抵抗42及び可変容量コンデンサC(T)からなる積分回路に出力する。
【0089】
次いで、CPU41は、第1信号線SL1を介して圧電素子3で発生する電圧信号の応答特性(応答信号Vb)を取得する。この際、CPU41で得られる応答信号Vbの波形では、図13(b)に示すように、ハイレベル及びロウレベル間の遷移期間(立ち上がり期間及び立下り期間)の傾きが緩やかになる。
【0090】
いま、電圧パルス信号Vaの振幅をVとすると、この遷移期間Δtにおける応答信号Vbの変化は、Vb=V・{1−exp[−t/(R・C(T))]}で表され、遷移期間Δtは、積分回路の時定数R・C(T)により変化する。それゆえ、体温が変化して圧電素子3の容量C(T)が変化すると、応答信号Vbの遷移期間Δtが変化する。
【0091】
そこで、本実施形態では、矩形状の電圧パルス信号Vaを抵抗42を介して圧電素子3に印加した際に圧電素子3から出力される応答信号Vbの遷移期間Δtと、体温との関係を示すデータ(体温参照データ)を測定し、その体温参照データを例えばCPU41等に格納しておく。
【0092】
そして、体温計測時に、CPU41は、圧電素子3から出力される応答信号Vbの時間変化をモニタし、ハイレベル及びロウレベル間の遷移期間Δtを算出する。次いで、CPU41は、算出した遷移期間Δtに対応する体温を体温参照データから取得する。本実施形態では、このようにして体温を計測する。
【0093】
上述のように、本実施形態では、抵抗42を新たに設けたこと、及び、CPU41に体温の演算機能を追加したこと以外の構成は、上記第1の実施形態と同様である。また、本実施形態では、脈拍計測モードにおいて、上記第1の実施形態と同様にして脈拍を計測することができる。それゆえ、本実施形態では、上記第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
さらに、本実施形態では、利用者の体温情報も長期間継続して計測することができる。それゆえ、本実施形態では、日常の健康状況を長期間継続してより詳細に監視することができる。
【0095】
なお、本実施形態では、脈拍及び体温の両方を計測する例を説明したが、本発明はこれに限定されない。本実施形態の生体情報計測装置40を体温のみを計測する体温計測装置として用いてもよい。また、本実施形態では、さらに、上記第2の実施形態で説明した表示部22及び/又は上記第3の実施形態で説明した防水機能を備える構成にしてもよい。この場合は温度変化等により利用者の入浴時か否かの認識も可能になる。
【0096】
<5.各種変形例>
本発明の生体情報計測装置の構成は、上述した各種実施形態の構成に限定されない。ここでは、各種変形例について説明する。
【0097】
[変形例1]
上述のように、利用者によって脈拍の出やすさが異なり、好適な締め付け圧力も利用者毎に異なる。この問題に、より柔軟に対応するため、例えば、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1において、さらに、装着ベルト2の周回方向の長さを可変にし、締め付け圧力を適宜調整可能にする機構を設けてもよい。変形例1では、その一構成例を説明する。
【0098】
図14に、変形例1の脈拍計測装置の概略構成を示す。なお、図14に示す脈拍計測装置45の構成において、図1(b)に示す上記第1の実施形態の脈拍計測装置1の構成と同様の構成には、同じ符号を付して示す。
【0099】
この例の脈拍計測装置45は、装着ベルト2と、圧電素子3と、圧力調整部材46とを備える。なお、圧電素子3は、上記各種実施形態と同様に、装着ベルト2に内蔵される。また、圧力調整部材46は、装着ベルト2の一部に取り付けられ、利用者が操作可能な位置に取り付けられる。この例の脈拍計測装置45において、圧力調整部材46を設けたこと以外は、上記第1の実施形態と同様の構成であるので、ここでは、圧力調整部材46についてのみ説明する。
【0100】
圧力調整部材46は、リング状に変形された装着ベルト2の一方の短部を固定し、他方の短部付近を装着ベルト2の延在方向(図14中の矢印A3)に沿ってスライド可能な機能を備える。さらに、圧力調整部材46は、脈拍計測装置45の装着時に、装着ベルト2の他方の短部付近を所望の位置で固定するための固定機能を備える。すなわち、圧力調整部材46は、装着ベルト2の他方の短部付近の固定位置を変えることにより、締め付け圧力(装着ベルト2の巻き付け長さ)を調整する構造を有する。
【0101】
このような圧力調整部材46としては、例えば、装着ベルト2の他方の短部付近を厚さ方向に挟み込むことにより装着ベルト2を固定し、その固定位置を変えることにより、締め付け圧力を調整する構造の部材を用いることができる。また、装着ベルト2の他方の短部付近に複数の穴を設け、その穴に棒状部材を挿入することにより装着ベルト2を固定し、棒状部材を挿入する穴の位置を変えることにより締め付け圧力を調整する構造の部材を用いてもよい。なお、これらの部材は金属製部材であってもよいし、プラスチック製の部材を用いてもよい。さらに、圧力調整部材46としては、面ファスナー(例えばマジックテープ(登録商標)など)を用いてもよい。
【0102】
なお、この例の構成は、上記第1の実施形態だけでなく、第2〜4の実施形態に対しても同様に適用可能である。ただし、上記第2の実施形態では、装着ベルト2の一部に表示部22を設ける(図7(a))ので、変形例1を第2の実施形態に適用する場合には、表示部22に圧力調整部材46の機構を加えるようにしてもよい。
【0103】
また、この例では、装着ベルト2の巻き付け長さを変えて締め付け圧力を調整するので、装着ベルト2としては、例えば、布等からなる非弾力性のベルトを用いることができる。
【0104】
上述のように、この例の脈拍計測装置45は、圧力調整部材46を追加したこと以外は、上記各種実施形態の脈拍計測装置(又は生体情報計測装置)と同様の構成である。また、この例では、上記各種実施形態と同様にして生体情報を計測することができる。それゆえ、この例では、上記各種実施形態と同様の効果が得られる。
【0105】
さらに、この例では、圧力調整部材46により締め付け圧力を自由に調整することができる。それゆえ、この例では、脈拍の出やすさの違いの影響を受けることなく、あらゆる利用者に適用可能になる。
【0106】
[変形例2]
上記変形例1では、好適な締め付け圧力を得るために装着ベルト2の巻き付け長さを任意に調整できる圧力調整部材46を装着ベルト2に設ける例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、装着ベルト2とは別個に、締め付け圧力を強化するための補助部材(以下、サポーターという)を設けてもよい。変形例2では、そのようなサポーターの種々の構成例を説明する。
【0107】
(1)変形例2−1
図15に、変形例2−1の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例のサポーター51は、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有する材料で形成されたリング状(筒状)部材で構成される。
【0108】
図16に、この例のサポーター51の第1の装着例を示す。なお、図16では、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター51を適用した例を示す。この第1の装着例では、脈拍計測装置20を覆うように、サポーター51を装着する。
【0109】
上記第2の実施形態の脈拍計測装置20では、上述のように、装着ベルト2の一部に表示部22(剛体)を設けるので、利用者の手首の太さ等の違いにより、利用者によっては、装着箇所において、均一に締め付け圧力を印加することが難くなる場合も生じる。この場合、脈拍を計測精度が低下するおそれもある。
【0110】
しかしながら、第1の装着例のように、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター51で例えば手首等を加圧することにより、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター51の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0111】
また、サポーター51の装着手法は、図16に示す例に限定されない。図17(a)及び(b)に、この例のサポーター51の第2の装着例を示す。なお、図17(a)及び(b)では、上記第1の実施形態の脈拍計測装置1に対してサポーター51を適用した例を示す。
【0112】
図17(a)に示す第2の装着例では、脈拍計測装置1のくるぶし100側に、サポーター51を装着する。なお、この際、くるぶし100を覆わないようにサポーター51を装着することが好ましい。また、図17(b)に示す第2の装着例では、脈拍計測装置1の腕の付け根側に、サポーター51を装着する。
【0113】
この第2の装着例では、脈拍計測装置1の近くにサポーター51を装着して脈拍計測装置1付近の血管を若干加圧することにより、脈拍を出やすくする。
【0114】
(2)変形例2−2
図18に、変形例2−2の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例のサポーター52は、ベルト部52aと、複数の保持部52bとで構成される。
【0115】
ベルト部52aは、例えばゴム、布製ゴム等の弾力性及びフレキシブル性を有するリング状部材で構成される。なお、この例のベルト部52aの幅及び厚さは、保持部52bの厚さ及び幅より小さくてもよい。
【0116】
各保持部52bは、例えば金属やプラスチック等からなる板状部材で構成される。そして、この例では、複数の保持部52bを全て同じ構成にする。また、複数の保持部52bは、ベルト部52aに取り付けられ、ベルト部52aの周回方向に沿って、等間隔で配置される。この際、各保持部52bの厚さ方向と、ベルト部52aの径方向とが一致するように複数の保持部52bをベルト部52aに取り付ける。
【0117】
図19に、この例のサポーター52の装着例を示す。なお、図19に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター52を適用した例を示す。
【0118】
図19に示す装着例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター52を装着する。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター52で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター52の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0119】
また、この例のサポーター52を、上記変形例2−1で説明した第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も上記変形例2−1と同様の効果が得られる。
【0120】
(3)変形例2−3
図20(a)及び(b)に、変形例2−3の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。なお、図20(a)及び(b)は、それぞれ、後述の第1保持部53a及び第2保持部53b間を閉じたとき及び開けたときの様子を示す図である。
【0121】
この例のサポーター53は、第1保持部53aと、第2保持部53bと、締め付け部材53cとで構成される。
【0122】
第1保持部53aは、円弧状の板状部材であり、例えば金属やプラスチック等の剛性材料で形成される。また、第1保持部53aの延在方向における一方の端部は、締め付け部材53cの一方の端部に取り付けられる。
【0123】
第2保持部53bは、第1保持部53aと同様に、円弧状の板状部材であり、例えば金属やプラスチック等の剛性材料で形成される。また、第2保持部53bの延在方向における一方の端部は、締め付け部材53cの他方の端部に取り付けられる。なお、この際、第2保持部53bの内周側の面と、第1保持部53aの内周側の面とが対向するように、第2保持部53bを締め付け部材53cに取り付ける。これにより、利用者の四肢のいずれかが挿入される円形状の開口部が画成される。
【0124】
締め付け部材53cは、例えばばね等の弾性部材からなる締め付け金具で構成される。
【0125】
このような構成のサポーター53において、サポーター53を利用者の四肢のいずれかに装着する際には、図20(b)に示すように、利用者が第1保持部53a及び第2保持部53b間の距離を広げる(図20(b)中の矢印A4)。そして、利用者は、広げた第1保持部53a及び第2保持部53b間の空間に四肢のいずれかを挿入する。
【0126】
図21に、この例のサポーター53の装着例を示す。なお、図21に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター53を適用した例を示す。
【0127】
図21に示す例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター53を装着する。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター53で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。ただし、サポーター53の締め付け圧力は脈拍計測装置20の締め付け圧力以上とする。
【0128】
なお、この例のサポーター53を、上記変形例2−1で説明した第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も上記変形例2−1と同様の効果が得られる。
【0129】
(4)変形例2−4
図22に、変形例2−4の生体情報計測装置で用いるサポーターの概略構成を示す。この例では、サポーター54を、面ファスナーで構成する。なお、サポーター54を利用者の四肢のいずれかに装着する際には、サポーター54を四肢のいずれかに巻き付け、面ファスナーの延在方向(サポーター54の周回方向)の一方の端部付近の下面領域と、それと対向する他方の端部付近の上面領域とを重ね合わせる。
【0130】
図23に、この例のサポーター54の装着例を示す。なお、図23に示す装着例は、上記変形例2−1で説明した第1の装着例(図16)に対応し、上記第2の実施形態の脈拍計測装置20に対してサポーター54を適用した例を示す。
【0131】
図23に示す例では、脈拍計測装置20を覆うように、この例のサポーター54を巻き付ける。これにより、上記変形例2−1と同様に、脈拍計測装置20の上からさらにサポーター54で加圧することができる。この結果、この例においても、締め付け圧力の均一性を向上させることができ、確実に精度よく脈拍を計測することが可能になる。また、この例では、サポーター54の巻き付け長さを任意に調整することができるので、より最適な締め付け圧力で脈拍を計測することが可能になる。
【0132】
なお、この例のサポーター54を、上述した変形例2−1の第2の装着例(図17(a)及び(b))と同様にして、装着してもよい。この場合も変形例2−1と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0133】
1,20,30,40…脈拍計測装置、2…装着ベルト、3…圧電素子、4…加速度センサ、5…操作部、6…電池、7…無線デバイス、8…アンテナ、9…記憶部、10,21,41…CPU、22…表示部、31…電源部、32…2次電池、33…充電回路、34…非接触充電コイル、35…防水部材、42…抵抗、51〜54…サポーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する装着ベルトと、
前記装着ベルトに取り付けられ、前記装着ベルトの巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に厚さ方向に発生する電圧の値が変化する圧電素子と、
前記装着ベルトに取り付けられ、前記圧電素子で発生する電圧信号を取得し、かつ、該取得した電圧信号に基づいて前記利用者の生体情報を計測する制御部とを備える生体情報計測装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記装着ベルトの巻きつけ方向の伸張又は収縮に起因して前記圧電素子で発生する電圧信号の振幅変動に基づいて、脈拍を計測することを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記利用者の動作を検出する3次元加速度センサを備え、
前記制御部が、前記3次元加速度センサの検出信号に基づいて、前記利用者が静止状態にあるか否かを判別し、前記利用者が静止状態にあるときのみ、前記圧電素子で発生する電圧信号を取得することを特徴とする請求項2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、かつ、前記圧電素子と前記制御部との間に電気的に接続されて配置された定抵抗素子を備え、
前記制御部が、前記抵抗素子を介して前記圧電素子に所定のパルス信号を出力し、その際に前記圧電素子に発生する電圧信号の応答特性に基づいて、体温を計測することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記制御部で計測した生体情報を外部機器に無線送信するための通信デバイスを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記圧電素子で発生した電圧信号を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、非接触充電可能な電源部と、
前記装着ベルトに取り付けられた前記圧電素子以外の構成部を内部に封止する防水封止部材とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記装着ベルトが、弾力性及びフレキシブル性を有するリング状部材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記装着ベルトの締め付け長さを調整することにより、締め付け圧力を調整する圧力調整部材を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項10】
さらに、前記装着ベルトとは別個に設けられ、締め付け圧力を調整する補助部材を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項1】
利用者の四肢のいずれかに巻きつけて装着する装着ベルトと、
前記装着ベルトに取り付けられ、前記装着ベルトの巻きつけ方向に伸張又は収縮した際に厚さ方向に発生する電圧の値が変化する圧電素子と、
前記装着ベルトに取り付けられ、前記圧電素子で発生する電圧信号を取得し、かつ、該取得した電圧信号に基づいて前記利用者の生体情報を計測する制御部とを備える生体情報計測装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記装着ベルトの巻きつけ方向の伸張又は収縮に起因して前記圧電素子で発生する電圧信号の振幅変動に基づいて、脈拍を計測することを特徴とする請求項1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記利用者の動作を検出する3次元加速度センサを備え、
前記制御部が、前記3次元加速度センサの検出信号に基づいて、前記利用者が静止状態にあるか否かを判別し、前記利用者が静止状態にあるときのみ、前記圧電素子で発生する電圧信号を取得することを特徴とする請求項2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、かつ、前記圧電素子と前記制御部との間に電気的に接続されて配置された定抵抗素子を備え、
前記制御部が、前記抵抗素子を介して前記圧電素子に所定のパルス信号を出力し、その際に前記圧電素子に発生する電圧信号の応答特性に基づいて、体温を計測することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項5】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記制御部で計測した生体情報を外部機器に無線送信するための通信デバイスを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項6】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記圧電素子で発生した電圧信号を記憶する記憶部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項7】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、非接触充電可能な電源部と、
前記装着ベルトに取り付けられた前記圧電素子以外の構成部を内部に封止する防水封止部材とを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項8】
前記装着ベルトが、弾力性及びフレキシブル性を有するリング状部材であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項9】
さらに、前記装着ベルトに取り付けられ、前記装着ベルトの締め付け長さを調整することにより、締め付け圧力を調整する圧力調整部材を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【請求項10】
さらに、前記装着ベルトとは別個に設けられ、締め付け圧力を調整する補助部材を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の生体情報計測装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−183177(P2012−183177A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47940(P2011−47940)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(306015490)株式会社キットヒット (2)
【出願人】(508217180)株式会社 ライフインターフェイス (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(306015490)株式会社キットヒット (2)
【出願人】(508217180)株式会社 ライフインターフェイス (2)
【Fターム(参考)】
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