説明

生体成分又はその機能の測定方法及び装置

【課題】多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことを可能とする生体成分又はその機能の測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】生体成分又はその機能の測定方法は、複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光を、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタを通過させた後に、検出器により撮像することで同時に検出し、検出器により各試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各試料保持部に保持された試料混合物中の検体における分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分又はその機能の測定方法及び装置に関するものであり、より詳細には、複数の試料保持部内に保持された分子プローブと検体とを含む試料混合物からの光を撮像により同時に検出することで該試料混合物における生体成分又はその機能の存否若しくは多寡を測定するための測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分子プローブが開発され、分子プローブを利用して生体成分又はその機能を解析する技術が発展してきた。その一例として、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET:Fluorescent Resonance Energy Transfer)を利用した分子プローブがある。FRETは、同一分子又は別の分子に存在する2種類の蛍光物質のうちエネルギーを与える側の蛍光物質であるドナーとエネルギーを与えられる側の蛍光物質であるアクセプターとの間で起こるエネルギー移動である。
【0003】
図22は、FRETを利用してプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の活性を測定する方法を模式的に示す。この場合、分子プローブは、アクセプターである蛍光タンパク質(例えばYFP)とドナーである蛍光色素とを、プロテアーゼと反応する基質のペプチドで結合した構造を有している。この分子プローブでは、プロテアーゼが作用していない状態ではドナーからアクセプターにエネルギーが移動してFRETが起きるが、プロテアーゼの作用により基質が分解(切断)されることでアクセプターが外れると、ドナーとアクセプターとの間の距離が広がり、FRETが解消する。この原理を応用して、プロテアーゼ活性を測定することが可能になる。
【0004】
図23は、波長530nm付近に蛍光ピークを持つ蛍光タンパク質YFPと波長625nm付近に蛍光ピークを持つ蛍光色素とを有するプロテアーゼ活性測定用の分子プローブを用いた場合の蛍光スペクトルの一例を示す。図23の例では、ドナーである蛍光タンパク質YFPの蛍光ピーク(波長530nm付近)とアクセプターである蛍光色素の蛍光ピーク(波長625nm付近)との2個の蛍光ピークを持つ蛍光スペクトルが観測されている。この分子プローブを用いた場合、プロテアーゼが作用する前は、FRETが起きることによって波長530nm付近の蛍光強度が相対的に弱く、波長625nm付近の蛍光強度が相対的に強いが、プロテアーゼが作用した後には、FRETが消滅することによって波長530nm付近の蛍光強度が相対的に強くなり、波長625nm付近の蛍光強度が相対的に弱くなる。
【0005】
このような分子プローブを用いた測定では、典型的には、ドナーとアクセプターとの蛍光強度の比率を測定することで、生体成分又はその機能を測定することができる。例えば、上記のプロテアーゼ活性測定用の分子プローブの場合には、ドナーとアクセプターとの蛍光強度の比率は、プロテアーゼ活性と相関するため、この蛍光強度の比率を測定することで、測定対象となる生体成分のプロテアーゼの機能(活性)を測定することができる。
【0006】
又、2種類以上の分子プローブ用いて、複数の生体成分又はその機能を同時に測定する技術も開発されている(特許文献1)。例えば、FRETを利用した2種類の分子プローブを用いる場合には、通常、4個の蛍光ピークの蛍光強度を測定する必要があり、FRETを利用した3種類分子プローブを用いる場合には、通常、6個の蛍光ピークの蛍光強度を測定する必要がある。
【特許文献1】WO2006/126570
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のような蛍光スペクトルの測定は、1個の試料を測定する場合は、回折格子やプリズムを利用した蛍光分光光度計を用いて支障なく行うことが可能である。しかしながら、複数の試料を測定する場合には、試料保持部を切り換えて測定する必要がある。プレートリーダ等では、試料保持部をスキャンしながら測定できるものもあるが、測定時間の短縮には限界があり、短時間のうちに同時に複数の試料を測定することは困難である。
【0008】
又、蛍光イメージング手法を用いて複数の試料からの蛍光を同時に測定する方法もある。従来の蛍光イメージング手法では、複数の分光フィルタを切り換えて、蛍光ピーク波長付近のみの蛍光強度を測定する方法が一般的である。しかしながら、斯かる従来の蛍光イメージング手法では、測定する分子プローブの種類に応じて多種類の分光フィルタを用意し、それらを切り換えて測定する必要があり、煩雑な操作を要した。又、このような複数の分光フィルタを切り替えて使用する方法では、蛍光スペクトルを測定することは困難である。そのため、分子プローブの蛍光が正常に発生しているかの確認や、蛍光ピークの変化を測定できないなどの問題点があった。このような問題は、複数種類の分子プローブを一の又は複数の試料保持部において同時に用いるような場合にはより顕著となる。
【0009】
従って、本発明の目的は、多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことを可能とする生体成分又はその機能の測定方法及び装置を提供することである。
【0010】
又、本発明の他の目的は、複数種類の分子プローブを一の又は複数の試料保持部において同時に用いる場合でも、多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことを可能とする生体成分又はその機能の測定方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は本発明に係る生体成分又はその機能の測定方法及び装置にて達成される。要約すれば、本発明の第1の態様は、複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光を、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタを通過させた後に、検出器により撮像することで同時に検出し、前記検出器により各前記試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各前記試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする生体成分又はその機能の測定方法である。
【0012】
本発明の一実施態様によると、前記波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を変更して、該透過ピーク波長毎の前記検出器により検出された光の強度を前記試料保持部毎に求め、前記試料保持部毎に、前記分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における前記光の強度に基づいて、その試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する。
【0013】
本発明の他の実施態様によると、前記複数の試料保持部のうち1個以上に保持された前記試料混合物には、複数種類の分子プローブが含まれており、該1個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体については、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする複数種類の生体成分又はその機能を測定する。
【0014】
本発明の他の実施態様によると、前記複数の試料保持部のうち2個以上に保持された前記試料混合物に含まれる分子プローブ間の種類が異なっており、該2個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体間で、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする異なる種類の生体成分又はその機能を測定する。
【0015】
本発明の他の実施態様によると、特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における光の強度と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する。
【0016】
本発明の他の実施態様によると、特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する複数の特定の前記透過ピーク波長における光の強度の比率と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、前記生体成分は、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、補酵素、糖、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体並びにそれらの複合体、水素イオン、及び金属イオンからなるグループより選択される。又、本発明の一実施態様によれば、前記分子プローブは、単独又は複数の蛍光物質若しくは発光物質を含む成分で構成されている。又、本発明の一実施態様によれば、前記検体は、生体成分、細胞、細胞抽出液又はそれらの混合物である。又、本発明の一実施態様によれば、前記分子プローブとして蛍光物質を利用するものを用い、前記複数の試料保持部に透過光、落射光、エバネッセント光又はそれらを組み合わせて励起光を照射して、前記検出器により蛍光を検出する。更に、本発明の一実施態様によれば、前記検出器として、CCDカメラ、CMOSカメラ、又はイメージインテンシファイアを用いる。
【0018】
そして、本発明の第2の態様によれば、複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光が通過する、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタと;該波長可変液晶分光フィルタを通過した後の前記複数の試料保持部からの光を、撮像することで同時に検出する検出器と;前記検出器により各前記試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各前記試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する処理装置と;を有することを特徴とする生体成分又はその機能の測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことが可能となる。又、本発明によれば、複数種類の分子プローブを一の又は複数の試料保持部において同時に用いる場合でも、多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る生体成分又はその機能の測定方法及び装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0021】
本発明によれば、上述の問題を解決するための手段として、蛍光分光フィルタに、透過ピーク波長が固定された従来の分光フィルタではなく、波長可変液晶分光フィルタを使用する。
【0022】
即ち、本発明の一実施態様によれば、複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光を、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタを通過させた後に、検出器により撮像することで同時に検出する。そして、検出器により各試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各試料保持部に保持された試料混合物中の検体における分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する。
【0023】
波長可変液晶分光フィルタは、1933年にリオ(B.Lyot)により考案された、結晶板による干渉を利用して比較的狭い波長域の光だけを透過するリオ・フィルタの原理を応用したものである。リオ・フィルタは、透過する直線偏光の振動方向を平行にした複数個の偏光子の列の間に、光学軸が端面に平行で厚さが2nd(n=0、1、2‐‐‐)の複屈折板である結晶板(一軸結晶:例えば水晶板)を、光学軸が偏光子の振動方向に45゜をなすように配置した構成を有する。リオ・フィルタは、透過光の波長域が固定されている。これに対して、波長可変液晶分光フィルタは、複屈折板としてリオ・フィルタにおける一軸結晶の代わりに液晶セル(液晶板)を使用することで、液晶セルに対する印加電圧を変化させることにより、透過光の波長域を可変にすることができるように設計したものである。
【0024】
図3は、波長可変液晶分光フィルタの概略構成を示す。この波長可変液晶分光フィルタは、偏光子13a、13b、13c、13dと、該偏光子間に挟まれる液晶セル14a、14b、14cと、該液晶セルに電圧を印加する電圧源15a、15b、15cと、を有する。液晶セルに印加する電圧を変化させることで、リオ・フィルタにおけるnを変化させることができる。これにより、波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を変化させることができる。
【0025】
図3の例では3枚の液晶セルが4枚の直線偏光子で挟まれた構造となっている。透過波長の半値幅は、液晶セルと直線偏光子の枚数を増やすことにより狭くすることができるが、枚数が増えると透過率も低下する。又、透過波長の可変範囲も液晶セルと直線偏光子の枚数により変化するため、透過波長の可変範囲により適切な枚数を選択することが望まれる。
【0026】
現在では、各透過波長域において非常に狭い波長域の光を透過する波長可変液晶分光フィルタが得られるようになっている(特開平3−282417号公報、特開2005−115208号公報参照)。
【0027】
図4は、6枚の液晶セルを使用した波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を440nmから700nmまで20nmステップで変化させたときの、透過ピーク波長と透過率との関係を示す。
【0028】
波長可変液晶分光フィルタは所望の設定透過波長をピークとして、左右対称の波長透過特性を有しており、その半値幅は短波長ほど小さくなっている。又、短波長では透過率が小さくなる傾向がある。又、波長毎に透過特性が異なるため、透過率の補正を行うことが望ましい。
【0029】
この補正方法は、一実施態様では、次のようにすることができる。即ち、例えば波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を440nmから700nmに1nm毎に変更し、透過ピーク波長毎の透過波長スペクトルを予め測定する。そして、それらのスペクトルの面積比を計算し、ピーク波長毎に面積比を乗算することで、透過波長特性を補正することができる。
【0030】
図1は、本発明の一実施態様に係る測定装置100である波長可変液晶分光フィルタを用いた蛍光イメージング装置の一例の概略構成を示す。図1の測定装置100は、概略、光源1と、波長可変液晶分光フィルタ2と、本例では高感度冷却CCDカメラとされる検出器(撮像装置)3と、波長可変液晶分光フィルタ2の駆動装置8と、駆動装置8を制御し且つ検出器3から入力された信号を処理する処理装置(コンピュータ)11と、を有する。又、光源1から検出器3に至る光学経路において、励起光を平行光とするための光源レンズ4、所定の波長域の励起光を透過する励起フィルタ5、励起光が検出器3に入射しないように所定の波長域以外の光をカットするカットフィルタ(広帯域フィルタ)6、試料混合物から発された蛍光を検出器3の受光面に結像するためのレンズ(本例ではテレセントリックレンズ)7などが光学的に整列されて配置される。本例では、光源1から検出器3に至る光学経路は、下から上へと略垂直方向に向いている。
【0031】
そして、光源1と波長可変液晶分光フィルタ2との間、図示の例では、励起フィルタ5と波長可変液晶分光フィルタ2との間に、複数の試料保持部としてのウェル12aを有する試料容器としての測定プレート12が光学的に整列されて配置される。測定プレート12は、測定装置100の本体内に設けられたガイド、位置決め手段などの所定の装着手段を介して測定装置100の本体に対して着脱可能に装着される。測定プレート12は、光源1から検出器3に至る光学経路の光軸に略直交する平面に沿って複数のウェル12aが配列されるように配置される。
【0032】
図2(a)〜2(c)に示すように、本例では測定プレート12は2層の構造になっており、第1層12bとしての透明のアクリル板上に、第2層12cとして直径2mmの穴が3行3列で9個開けられた黒色のプラスチック板を、防水接着剤で張り合わせた構造となっている。又、本例では、各ウェル12aの深さは3mmで、容量は約10μLである。励起光が照射される側の図中下方に配置される第1層12bを透明としたのは、励起光を良く透過して、ウェル12a内の試料混合物に入射するようにするためである。より好ましくは、第2層12bの表面12b1には、励起光を拡散してウェル12a内の試料混合液に均一に入射させるための手段として、フロスト処理などが施される。一方、ウェル12aが形成される第2層12cを黒色としたのは、複数のウェル12a間を遮光して、各ウェル12a内の試料混合物間の干渉を抑制し、又各ウェル12からの光を良好に区別して検出できるようにするためである。測定プレート12は、本例では樹脂製であるが、これに限定されるものではなく、ガラスなどその他の材料で作製されてもよい。
【0033】
光源1から検出器3に至る光学経路の全体は、遮光手段としての遮光箱10内に配置されており、測定プレート12の装着又は取り外しのための開口部(図示せず)が閉じられた状態で、遮光箱10内は周辺光から実質的に完全に遮断される。
【0034】
斯かる構成の測定装置100において、光源1からの励起光は、光源レンズ4と励起フィルタ5とを通して複数のウェル12aに透過光として照射される。測定プレート12の複数のウェル12aのそれぞれには、分子プローブと検体とを含む試料混合物(サンプル溶液)が収容される。励起光が照射されることによって、各ウェル12a内の試料混合物から発生された蛍光は、波長可変液晶分光フィルタ2とカットフィルタ6とで分光され、レンズ7を通して検出器3で蛍光イメージング画像として検出される。即ち、波長可変液晶分光フィルタ2を通して検出器3によって測定プレート12の複数のウェル12aを同時に撮像する。
【0035】
この時、波長可変液晶分光フィルタ2を、処理装置11からの指示によって駆動装置8で制御することで、透過ピーク波長を必要な範囲で変化させる。これにより、検出器3は、測定プレート12からの蛍光を、波長可変液晶分光フィルタ2を透過した波長毎の画像として検出する。検出器3は、検出結果に係る画像情報信号を、ケーブル9を介して処理装置11に入力する。
【0036】
処理装置11は、波長毎に検出された画像から、ウェル12a毎に波長毎の蛍光強度を計算する。これにより、波長毎の蛍光強度の集合から、ウェル12a毎の蛍光スペクトルデータ得ることが可能になる。
【0037】
この方法によれば、従来困難であった複数の試料保持部からの蛍光の蛍光スペクトルを短時間のうちに一度に取得することが可能である。又、一の又は複数の試料保持部内で複数の分子プローブを用いることにより検体における複数の生体成分又はその機能を同時に短時間に測定することが可能となり、従来の方法と比較し格段にハイスループットな測定を実現することができる。
【0038】
ここで、量子ドット蛍光試薬を測定した場合を例にして、測定装置100による蛍光イメージング手法について更に説明する。量子ドット蛍光試薬は、染色用の蛍光物質として使用することができるものであり、一種類の励起波長で複数の蛍光波長の量子ドット蛍光試薬を励起できる点や、蛍光が安定して持続するなどの利点を有する。ここでは、量子ドット蛍光試薬として、インビトロジェン製のQdot(登録商標)ストレプトアビジン標識シリーズを用いた。又、励起フィルタ5としては、410nm〜420nmの光を透過する特性を有する光学フィルタを用いた。又、カットフィルタ6としては、励起光をカットするために、490nmより短波長の光を透過しない特性を有する光学フィルタを用いた。又、波長可変液晶分光フィルタ2は、処理装置11から駆動装置8を通して制御し、1nmステップで透過ピーク波長を440nm〜700nmの範囲で任意にコントロールできるようにした。
【0039】
図5は、測定装置100で撮像された測定プレート12の画像の一例を示しているが、図示の通りに9個のウェルのそれぞれをウェル(1)〜ウェル(9)としたとき、ウェル(1)〜ウェル(6)には、525nm〜703nmの6種類の量子ドット蛍光試薬を単独で入れた。又、ウェル(7)、ウェル(8)、ウェル(9)にはそれぞれ、2種類、3種類、4種類の量子ドット蛍光試薬を入れた。各ウェル(1)〜(9)に入れた量子ドット蛍光試薬の種類(蛍光ピーク波長)は次の通りである。ウェル(1):525nm、ウェル(2):565nm、ウェル(3):585nm、ウェル(4):605nm、ウェル(5):655nm、ウェル(6):703nm、ウェル(7):565nm,655nm、ウェル(8):525nm,585nm,655nm、ウェル(9):525nm,565nm,605nm,655nm。
【0040】
一例として、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を500nm〜700nmに10nmステップで変化させて、各ウェル(1)〜(9)からの蛍光を撮像する。又、撮像は、2秒の露光時間で行い、5nmステップで画像データを処理装置11に記憶し、各ウェル(1)〜(9)に対応する平均輝度(平均蛍光強度)を求めた。
【0041】
即ち、処理装置11は、各ウェル12aに対応した蛍光画像の平均輝度を計算するために、各ウェル12aの領域を同じ面積の円で領域指定し、円内の平均輝度を計算する。更に説明すると、図6は、処理装置11の制御態様を説明するための概略制御ブロック図である。又、図7は、処理装置11による各ウェルからの蛍光の平均輝度の計算方法の概略を示すフローチャートである。先ず、処理装置11の制御部11aは、駆動装置8に制御信号を送り、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を設定し、検出器3から複数のウェル12aを同時に撮像した画像データを受信して、処理装置11に設けられた記憶手段としてのRAM11bに記憶する(S101)。次いで、制御部11aは、各ウェル12aの領域と同じ面積の円である平均輝度を計算する領域を、本例では9ヶ所指定する(S102)。次いで、制御部11aは、例えば先ずウェル(1)について、指定領域内の検出器3により撮像された画像データの各ドット(画素)の輝度値を積算し(S103)、ドット数で除算することで平均輝度を求める(S104)。S103及びS104の処理を全ての指定領域について行い、全ての指定領域について平均輝度を求める(S105)。そして、制御部11aは、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を所定のステップ幅で変更して、S101〜S105の操作を所定の透過波長範囲にわたり繰り返す(S106)。
【0042】
処理装置11の制御部11aは、処理装置11に設けられた記憶手段としてのROM11c内に予め格納されているプログラム、データに従って各種の処理を行う。
【0043】
尚、図7のフローチャートでは、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を変更して蛍光画像を撮像するたびにウェル12a毎の平均輝度を計算するものとして示しているが、全ての画像を取得後、まとめて計算することも可能である。
【0044】
上述のようにして、ウェル12a毎に波長毎の平均輝度(平均蛍光強度)のデータを取得することが可能である。尚、本明細書では、測定装置100において、上述のようにして求められた波長毎の平均輝度(平均蛍光強度)を「蛍光強度」とも呼ぶ。そして、このようにして取得された各ウェル12aの位置の波長毎の蛍光強度のデータから、各ウェル12aの位置の蛍光スペクトルを求めることができる。
【0045】
図8は、ウェル(1)〜ウェル(6)の蛍光スペクトルを示す。蛍光強度は、各ウェルの蛍光ピーク波長における蛍光強度を100とした相対強度で示した。ウェル(1)〜ウェル(6)にはそれぞれ、525nm、565nm、585nm、605nm、655nm、703nmの蛍光ピーク波長を有する量子ドット蛍光試薬が入っており、各ウェルの波長毎の蛍光強度は、各量子ドット蛍光試薬の蛍光ピーク波長とほぼ一致した結果が得られた。
【0046】
図9は、ウェル(7)の蛍光スペクトルを示す。ウェル(7)には、565nmと655nmの蛍光ピーク波長を有する量子ドット蛍光試薬が入っており、565nmと655nm付近に2個の蛍光ピークを有するスペクトルが得られた。この結果は、測定した量子ドット蛍光試薬の蛍光パターンと一致した結果であった。
【0047】
同様に、図10は、ウェル(8)の蛍光スペクトルを示す。ウェル(8)には525nm、585nm及び655nmの蛍光ピークを有する3種類の量子ドット蛍光試薬が入っており、それぞれに対応した波長に蛍光ピークが観測された。又、図11は、ウェル(9)の蛍光スペクトルを示す。ウェル(9)には525nm、565nm、605nm及び655nmの蛍光ピークを有する4種類の量子ドット蛍光試薬が入っており、それぞれに対応した蛍光ピークが観測された。
【0048】
このように波長可変液晶分光フィルタ2を用いた測定装置100により、複数の試料保持部からの蛍光の蛍光スペクトルを、波長毎に取得される2次元の画像として測定することが可能である。そして、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を変更して、該透過ピーク波長毎の検出器3により検出された光の強度を試料保持部毎に求め、試料保持部毎に、分子プローブに対応する特定の透過ピーク波長における光の強度に基づいて、その試料保持部に保持された試料混合物中の検体における分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することができる。
【0049】
この方法によれば、同じ試料保持部に複数種類の蛍光試薬が混在する場合でも、蛍光スペクトルを測定することで、蛍光試薬の分布を調べることができる。従って、複数の試料保持部のうち1個以上に保持された試料混合物に複数種類の分子プローブが含まれている場合に、該1個以上の試料保持部に保持された試料混合物中の検体について、複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする複数種類の生体成分又はその機能を測定することができる。又、複数の試料保持部においてそれぞれ異なる種類の蛍光試薬が用いられる場合でも、一度にそれぞれの試料保持部における蛍光試薬の分布を調べることができる。従って、複数の試料保持部のうち2個以上に保持された試料混合物に含まれる分子プローブ間の種類が異なっている場合に、該2個以上の試料保持部に保持された試料混合物中の検体間で、複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする異なる種類の生体成分又はその機能を測定することができる。
【0050】
尚、測定装置100において、光源1としてはLED、ハロゲン、クリプトン、メタルハライド、水銀、キセノン、レーザーなどを使用できる。
【0051】
又、本例では、検出器3としてCCDカメラを使用しているが、検出器3としては、CMOSカメラ、イメージインテンシファイアなどの、その他の光検出器(光電変換素子)を使用することも可能である。
【0052】
又、光源1から検出器3に至る光学経路において、例えば、カットフィルタ6は、図1に示すように波長可変液晶分光フィルタ2よりも検出器3側(本例では波長可変液晶分光フィルタ2とレンズ7との間)に配置してもよいし、図20に示すように波長可変液晶分光フィルタ2よりも測定プレート12側に配置してもよい。即ち、光源1から検出器3に至る光学経路における各光学部品は、本例と実質的に同じ機能を達成できるのであれば、その配列順序等は適宜に変更可能である。
【0053】
又、励起光は、上述のように透過光として照射する方法、落射光として上部又は斜めから照射する方法、エバネッセント光として照射(エバネッセント照明)する方法、又はこれらを組み合わせた方法によって照射することができる。
【0054】
例えば、図21は、測定プレート12に、光源1からの励起光を斜めからの落射光として照射し、生じた蛍光をテレセントリックレンズ7を通し、波長可変液晶分光フィルタ2で分光して、高感度冷却CCDカメラとされる検出器3で撮像する装置の例を示す。この場合には、ウェル12a内の試料混合物に励起光を透過光として照射する必要がないため、測定プレート12の底面(例えば、図2に示すような層構成の場合は第1層12bの表面12b1)は透明である必要はない。又、光源1は斜めから光を照射しているので、分子プローブに均一に励起光を照射するため、測定プレート12から検出器3に至る直線に対して左右の両側に光源を設けた構造になっている。又、図21の例では、試料混合物から発された蛍光を平行光として波長可変液晶分光フィルタ2を透過させるために、測定プレート12から検出器3に至る光学経路において、波長可変液晶分光フィルタ2よりも前(即ち、測定プレート12側)に、テレセントリックレンズ7を設置している。
【0055】
又、エバネッセント照明を利用する場合は、例えば、次のような構成とする。即ち、図2に示すような層構成の測定プレート12の第1層12bをBK−7のようなガラス材料で作製する。そして、その測定プレート12の底面12b1側から斜めに、全ウェル12aに光が当たるように、又第1層12bの上面(第2層12c側の面)で光が全反射するような角度で、励起光を照射する。
【0056】
又、測定プレート12は本例の構成に限定されるものではなく、任意にウェル12aの径などの大きさを変更したり、ウェル12aの数を変更したりすることで、より多くの検体又はより少ない検体を測定できるようにしてもよい。
【0057】
更に、本例では、複数の試料保持部を有する試料容器は、測定装置の本体に対して着脱可能に装着されるものであるが、試料容器は測定装置に固定されていてもよい。
【0058】
次に、本発明に従って測定し得る生体成分又はその機能について説明する。
【0059】
「生体成分」とは、生体内に存在する全ての成分のことであり、より詳細には、生体内おいて機能的又は構造的な役割を担って存在する全ての成分である、例えば、核酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、補酵素、糖、糖鎖、又はそれらの誘導体及び複合体(例えば、糖タンパク質、糖脂質など)、各種酵素(例えば、核酸分解酵素、核酸修飾酵素、核酸合成酵素、タンパク質分解酵素、タンパク質修飾酵素、糖鎖分解酵素、糖ヌクレオチド合成酵素又は糖転移酵素)、酵素反応の基質(例えば、タンパク質、核酸、脂質、糖など)、水素イオン、金属イオン、その他の生体内物質が含まれる。
【0060】
「生体成分の機能」とは、生体成分に関わる全ての機能のことであり、より詳細には、生体成分同士の化学反応、その他の生体成分同士の相互作用を含む全ての生体反応が含まれる。生体成分の機能には、生体反応以外にも、ある生体成分の作用により関連する他のある生体成分の量が変わる(例えば、カルシウムイオン濃度変化、プロトンの濃度変化であるpH変化など)などの生体内状態変化を引き起こす全ての機能が含まれる。生体成分の機能の典型例としては、タンパク質、核酸、脂質、糖質などに対する分解、転移、付加、合成を行う酵素反応や、生体内物質の濃度変化、細胞内局在変化などが挙げられる。
【0061】
「分子プローブ」は、測定対象となる生体成分又はその機能の存否若しくは多寡(より詳細には、生体成分の有無若しくは濃度又は生体成分の機能(活性)の有無若しくは大小:これを以下単に「生体成分の活性又は濃度」ともいう)の状態の相違に応じて、蛍光・発光の有無又は強度の状態が相違し、斯かる蛍光・発光の有無又は強度の相違から上記測定対象の状態の相違を測定することを可能とする分子である。分子プローブは、1種類の分子で当該分子プローブとしての機能を発揮するものであってもよいし、複数種類の分子が協働して当該分子プローブとしての機能を発揮するものであってもよい。
【0062】
分子プローブとしては、代表的には、蛍光分子間(蛍光タンパク質間、有機蛍光分子間、蛍光タンパク質と有機蛍光分子間など)、又は蛍光分子(蛍光タンパク質、有機蛍光分子など)と量子ドット間のFRETを利用した分子プローブが挙げられる。この場合、上記蛍光分子(蛍光タンパク質、有機蛍光分子など)や量子ドットなどの蛍光物質は、測定対象となる生体成分又はその相互作用パートナー(測定対象となる生体成分の機能により存否若しくは多寡の状態が変化する関連生体成分と相互作用をするものを含む)に結合される。又、この場合、FRETを生起する一対の蛍光物質(蛍光分子、量子ドットなど)は、当初、1種類の分子上に全てが結合されていても、複数種類の分子上に分けて結合されていてもよい。
【0063】
又、分子プローブは、液体中などの流動状態においても、又は基盤などの支持体に固定した状態においても、使用することができる。例えば、分子プローブを測定プレートのウェルに固定する方法は、利用可能な任意の方法を用いることができる。
【0064】
「蛍光物質」としては、適宜に任意のもの利用可能であるが、例えば、FRETを利用した分子プローブに使用する第1の蛍光物質としては、BFP、CFP、GFP、YFP、RFPを代表とする蛍光タンパク質とその変異体、量子ドット蛍光試薬などが好適に利用可能である。又、特に、FRETを利用する場合に、上記の如き第1の蛍光物質と対をなす第2の蛍光物質としては、FRETが起こるような蛍光物質であれば如何なるものでも利用可能であるが、Alexa dye、BODIPY、Cy、dye、quencherなどが好適に利用可能である。
【0065】
FRETを利用した分子プローブによって、典型的には、生体成分の機能としての生体反応、例えば、タンパク質同士、タンパク質と核酸、核酸同士、タンパク質と糖鎖などの結合や解離反応、或いは、酵素反応を測定することができる。
【0066】
例えば、第1、第2の蛍光物質(ドナー及びアクセプター)を有する分子プローブにタンパク質、核酸、糖鎖などの生体成分が含まれる場合に、タンパク質分解酵素、核酸分解酵素、糖鎖分解酵素で処理することでその生体成分が切断され、FRETが解消されることを検出することによって、酵素活性を測定することができる。
【0067】
又、酵素が転移酵素である場合には、分子プローブとして、第1の蛍光物質に第2の蛍光物質で標識されていない基質が結合された第1の分子プローブと、第2の蛍光物質で標識された基質である第2の分子プローブとから成るものを用い、第2の分子プローブの基質が転移酵素によって転移された結果生じるFRETを検出することによって、酵素活性を測定することができる。
【0068】
このような分子プローブに含まれる生体成分としてのペプチドは、生体内においてそれ自体機能しているものでも、タンパク質の機能領域等に相当するペプチド部分でもよい。又、このペプチドは、特定のタンパク質の機能ドメイン又は機能領域に相当する配列など、タンパク質の一部であってもよい。このようなペプチドとしては、例えば、タンパク質分解酵素の認識配列、タンパク質リン酸化酵素の認識配列、糖転移酵素の認識配列、核酸結合配列など、ある生体成分によって認識され、該生体成分との相互作用が期待されるものであって、その結果としてFRETに影響を及ぼすものであれば任意のものが利用可能である。
【0069】
又、タンパク質同士、タンパク質と核酸、核酸同士、タンパク質と糖鎖などの結合反応に関しては、一方の生体成分を第2の蛍光物質で標識せずに第1の蛍光物質に結合させた分子プローブを調製し、この分子プローブと結合パートナーとなる第2の蛍光物質で標識した生体成分を接触させ、FRETの低い状態から高い状態への変化を測定することにより、両生体分子の結合又は相互作用の存在を判断することができる。
【0070】
又、例えば、生体成分との結合(金属イオンをキレートするなども含め)によりその蛍光特性が変化する環境依存型蛍光色素を適切なスペーサー分子等を用いて量子ドットなどの蛍光物質に結合させた分子プローブを用いて、該生体成分の濃度変化をFRET変化検出法に適応することも可能である。更に、例えば、量子ドットなどの第1の蛍光物質と、第2の蛍光物質としてのpH感受性の蛍光色素とを結合した分子プローブを用いて、pHに応じた蛍光スペクトルの変化により、生体成分又はその機能としてpHを測定することができる。
【0071】
尚、分子プローブは、FRETを利用せずに、単独の蛍光物質(蛍光分子、量子ドットなど)を利用したものであってもよく、この場合も、該蛍光物質は、測定対象となる生体成分又はその相互作用パートナーに結合される。例えば、抗体に蛍光物質を標識したものなどが利用可能である。
【0072】
一方、分子プローブは、蛍光物質を利用せずに、発光物質を利用したものであってもよい。一例として、蛍ルシフェラーゼ標識プローブを分子プローブとした、DNAの測定が挙げられる。この場合、測定装置100において、励起光を照射するための光源1は設けなくてよい。
【0073】
ここで、測定装置100を用いて試料混合物から発された光を検出した結果に基づいて生体成分又はその機能を測定する方法は、大別して2種類のパターンに分類できる。
【0074】
第1のパターンは、検出された複数(典型的には2個)の特定波長における光強度の比率が、生体成分の活性又は濃度に相関するパターンである。図12は、第1のパターンの一例として、FRETを利用する分子プローブを用いた場合の蛍光スペクトルの一例を示す。この例では、ドナー(第1の蛍光物質)のピーク1と、アクセプター(第2の蛍光物質)のピーク2との2個の蛍光ピークが観測される。そして、測定対象となる生体成分の活性又は濃度に応じて、観測されるピーク1とピーク2の平均輝度(蛍光強度)が変化する。図12中に実線、破線、2点鎖線で示す3個の蛍光スペクトルは、生体成分の活性又は濃度を3段階に変化させた場合のものである。
【0075】
この場合、次のようにして、生体成分又はその機能を測定することができる。
【0076】
先ず、図13のフローチャートに示すように、特定の分子プローブに関し、複数の特定波長の光強度比と、生体成分の活性又は濃度との関係を予め求める。より具体的には、先ず、特定の分子プローブを含む所望の測定系において、測定対象となる生体成分の活性又は濃度を所望の範囲内の適切な値に設定し、所望の波長範囲における波長と平均輝度との関係(蛍光スペクトル)を、図7を参照して説明したのと同様にして求める(S201)。次いで、得られた波長と平均輝度との関係から、ピーク1とピーク2の平均輝度をそれぞれ求める(S202)。次いで、ピーク2の平均輝度をピーク1の平均輝度で除算してピーク比率を求める(S203)。生体成分の活性又は濃度を所望の範囲で変化させて、S201〜S203の処理を繰り返し、所望の数のピーク比率データを得る(S204)。そして、得られた所望の数のピーク比率データから、相関式やテーブルデータとして、生体成分の活性又は濃度とピーク比率との関係を求める(S205)。この関係は、測定装置100において、処理装置11の制御部11aが演算制御することによって求めることができ、ROM11cに記憶させておくことができる。
【0077】
次に、検体の測定においては、図14のフローチャートに示すように、予め求められた関係と、検体に関して測定された複数の特定波長の光強度比との比較結果に基づいて、検体における生体成分又はその機能を測定する。より具体的には、先ず、特定の分子プローブと検体とを含む試料混合物について、所望の波長範囲における波長と平均輝度との関係(蛍光スペクトル)を、図7を参照して説明したようにして求める(S301)。次いで、処理装置11の制御部11aは、得られた波長と平均輝度との関係から、ピーク1とピーク2の平均輝度をそれぞれ求める(S302)。次いで、制御部11aは、ピーク2の平均輝度をピーク1の平均輝度で除算してピーク比率を求める(S303)。そして、制御部11aは、予め求められてROM11bに記憶されている関係と、検体について測定されたピーク比率とを比較することによって、当該検体における測定対象となる生体成分の活性又は濃度を求める(S304)。
【0078】
尚、図13及び図14の例では、ピーク比率自体と、生体成分の活性又は濃度との関係から、生体成分の活性又は濃度を求めているが、ピーク比率の変化量と、生体成分の活性又は濃度との関係から、生体成分の活性又は濃度を求めてもよい。この場合、所定の期間でのピーク比率の変化量と、生体成分の活性又は濃度との関係を予め求めておき、検体についても同じ所定期間でのピーク比率の変化量を測定し、予め求められた関係と比較することによって、検体における生体成分の活性又は濃度を求めることができる。このように変化量から生体成分の活性又は濃度を測定する場合は、一定間隔をあけて複数回(例えば2回)の測定を行い、その複数回の測定値間における変化量と、予め求められた関係とを比較すればよい。該一定間隔の間は、測定プレート12は、測定装置100の内部又は外部のいずれにあってもよい。又、複数回の測定における各回の測定値は、処理装置11のRAM11aに記憶しておき、所望の数の測定値が得られたときに、制御部11aによって生体成分の活性又は濃度を計算するようにすることができる。
【0079】
又、図13及び図14の例では、ピーク1とピーク2とのピーク比率から生体成分の活性又は濃度を計算しているが、得られる蛍光スペクトルが複数の蛍光ピークを有する場合であっても、後述する第2のパターンの場合と同様にして、複数の蛍光ピークのそれぞれ又はいずれか(本例ではピーク1及び/又はピーク2)のピーク高さ又はその変化から、生体成分の活性又は濃度を計算してもよい。
【0080】
次に、第2のパターンは、検出されたある特定波長における光強度が、生体成分の活性又は濃度に相関するパターンである。図15は、第2のパターンの一例として、蛍光ピークが1個の分子プローブを用いた場合の蛍光スペクトルの一例を示す。この例では、蛍光ピークは1個だけ観測される。そして、測定対象となる生体成分の活性又は濃度に応じて、観測されるピークの平均輝度(蛍光強度)が変化する。図15中に実線、破線、2点鎖線で示す3個の蛍光スペクトルは、生体成分の活性又は濃度を3段階に変化させた場合のものである。
【0081】
この場合、次のようにして、生体成分又はその機能を測定することができる。
【0082】
先ず、図16のフローチャートに示すように、特定の分子プローブに関し、特定波長の光強度比と、生体成分の活性又は濃度との関係を予め求める。より具体的には、先ず、特定の分子プローブを含む所望の測定系において、測定対象となる生体成分の活性又は濃度を所望の範囲内の適切な値に設定し、所望の波長範囲における波長と平均輝度との関係(蛍光スペクトル)を、図7を参照して説明したのと同様にして求める(S401)。次いで、得られた波長と平均輝度との関係から、ピークの平均輝度を求める(S402)。生体成分の活性又は濃度を所望の範囲で変化させて、S401〜S402の処理を繰り返し、所望の数のピークの平均輝度(即ち、ピーク高さ)のデータを得る(S403)。そして、得られた所望の数のピークの平均輝度データから、相関式やテーブルデータとして、生体成分の活性又は濃度とピークの平均輝度との関係を求める(S404)。この関係は、測定装置100において、処理装置11の制御部11aが演算制御することによって求めることができ、ROM11cに記憶させておくことができる。
【0083】
次に、検体の測定においては、図17のフローチャートに示すように、予め求められた関係と、検体に関して測定された特定波長の光強度比との比較結果に基づいて、検体における生体成分又はその機能を測定する。より具体的には、先ず、特定の分子プローブと検体とを含む試料混合物について、所望の波長範囲における波長と平均輝度との関係(蛍光スペクトル)を、図7を参照して説明したようにして求める(S501)。次いで、処理装置11の制御部11aは、得られた波長と平均輝度との関係から、ピークの平均輝度を求める(S502)。そして、制御部11aは、予め求められてROM11bに記憶されている関係と、検体について測定されたピークの平均輝度(即ち、ピーク高さ)とを比較することによって、当該検体における測定対象となる生体成分の活性又は濃度を求める(S503)。
【0084】
尚、図16及び図17の例では、ピーク高さ自体と、生体成分の活性又は濃度との関係から、生体成分の活性又は濃度を求めているが、ピーク高さの変化量と、生体成分の活性又は濃度との関係から、生体成分の活性又は濃度を求めてもよい。この場合、所定の期間でのピーク高さの変化量と、生体成分の活性又は濃度との関係を予め求めておき、検体についても同じ所定期間でのピーク高さの変化量を測定し、予め求められた関係と比較することによって、検体における生体成分の活性又は濃度を求めることができる。
【0085】
いずれの場合も、図6に示すように、制御部11aは、測定結果に係る情報を処理装置のRAM11aなどの記憶手段に記憶させたり、処理装置11の表示部11dにおいて表示させたり、通信制御部11eを介して通信可能に処理装置11に接続された表示装置、プリンタ、ホスト機器に送信してそれぞれ表示、プリント、記憶などさせたりすることができる。各種設定の入力、測定の開始又は停止などの処理装置11の制御部11aに対する指示は、処理装置11の入力部11fによって行うことができる。
【0086】
又、分子プローブが蛍光物質を利用する場合において、分子プローブと検体とを含む試料混合物に励起波長を照射するタイミングは、該試料混合物をインキュベートしている間、又はインキュベートの後のいずれであってもよい。リアルタイムで何らかの活性、反応を見たい場合は、インキュベート中に励起波長を照射するのが好ましく、最終的な活性の確認を行うのであれば、インキュベート後に励起波長を照射すればよい。
【0087】
又、いずれの場合も、複数の分子プローブを使用する場合には、それぞれの分子プローブ毎に上述のような計算を実施する必要がある。
【0088】
この点、本発明によれば、試料保持部毎に種類の異なる分子プローブを用いるような場合でも、測定装置100を用いて試料保持部毎の蛍光スペクトルを別々に同時に測定することができるため、分子プローブから発される光のパターンがどのように変化しても対応できるという利点がある。
【0089】
尚、分子プローブからの光のピークがどの波長に出現するかが予め分かっている場合には、必ずしも上述した各パターンの例のようにスペクトルを測定する必要はなく、ピークが発現する波長のみの平均輝度を測定するだけで、検体における測定対象の生体成分の活性又は濃度を計算することが可能である。このような場合でも波長可変液晶分光フィルタを使用することで、分子プローブの種類が変わっても分光フィルタを交換する必要がないという利点がある。
【0090】
上述のように、典型的には、それ自体又はその機能が測定対象となる生体成分は、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、補酵素、糖、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体並びにそれらの複合体、水素イオン、及び金属イオンからなるグループより選択される。より詳しくは、それ自体又はその機能が測定対象となる生体成分としては、カスパーゼ3、カスパーゼ9、カテプシンB、カテプシンD、カテプシンE、トリプシン、セパラーゼ、DNase、DNAポリメラーゼなどの酵素が挙げられる。
【0091】
又、検体としては、単離された又は混合された状態の生体成分、細胞、細胞抽出物又はそれらの混合物が挙げられる。
【0092】
以下、本発明に従う更に具体的な実施例を参照して、本発明の効果について更に説明する。
【0093】
実施例1
本実施例では、図1に示す全体構成を有する波長可変液晶分光フィルタ2を用いた測定装置100において、光源1として中心波長480nmの光を発する超高輝度LED光源を用いた。光源1からの光は、測定プレート12のウェル12a内の試料混合物に平行光を照射するための光源レンズ4を通した後、励起フィルタ5で470nm〜480nmの波長の光を透過させるようにした。励起フィルタ5を通過した光は、9個のウェル12aを有する測定プレート12に入射する。
【0094】
測定プレート12のウェル12a内に分子プローブと検体とを含む試料混合物を収容し反応させて、該試料混合物から発される蛍光を測定する。測定プレート12のウェル12aから発生した蛍光は、波長可変液晶分光フィルタ2を通過し、500nm以下の波長の光をカットする広帯域フィルタ7を通過し、更に平行光を検出器(本実施例では高感度冷却CCDカメラ)3の受光面に投影するためのテレセントリックレンズ7を通過して、検出器3により蛍光イメージングとして検出される。検出器3によって撮像した画像の情報は、接続手段としてのUSBケーブル9により処理装置(コンピュータ)11に送られ、画像データとして保存及び処理される。波長可変液晶分光フィルタ2は、処理装置11に接続された駆動装置8により、その透過ピーク波長がコントロールされる。
【0095】
そして、本実施例では、この測定装置100を用いて、複数の生体成分又はその機能を同時に測定する。本実施例では、分子プローブとしては、FRETを応用したプロテアーゼ活性分析用の分子プローブを用いた。又、本実施例では、そのプロテアーゼ活性分析用の分子プローブとしては、図18に示すように、次の2種類の分子プローブ1及び2の混合物を使用した。即ち、分子プローブ1は、ドナーとしての蛍光タンパク質GFPと、アクセプターとしての波長570nmに蛍光ピークを持つ蛍光物質1とを有して構成された分子プローブである。又、分子プローブ2は、ドナーとしての蛍光タンパク質であるRFPと、アクセプターとしての波長670nm付近に蛍光ピークを持つ蛍光物質2とを有して構成された分子プローブである。分子プローブ1は、カスパーゼ3が作用すると蛍光物質1が蛍光タンパク質GFPから外れ、FRETが解消する特性を有する。又、分子プローブ2は、トリプシンが作用すると蛍光物質2が蛍光タンパク質RFPから外れ、FRETが解消する特性を有する。
【0096】
従って、本実施例では、各分子プローブのドナー側の蛍光ピーク波長における蛍光強度と、アクセプター側の蛍光ピーク波長における蛍光強度との比率を測定することで、各分子プローブに対応した酵素活性を測定することが可能になる。
【0097】
本実施例における分子プローブ1と分子プローブ2を用いたカスパーゼ3とトリプシンの活性測定方法は次の通りである。本実施例の測定装置100でイメージングにより蛍光スペクトルを測定する場合、先ず、2種類の分子プローブ1及び2(溶液)を測定プレート12の9個のウェル12aのそれぞれに入れ、次いでカスパーゼ3とトリプシンの活性を測定する検体(溶液)をそれぞれのウェル12aに添加して試料混合物(混合液)を調製した後、この測定プレート12を37℃で1時間程度インキュベートする。次いで、測定プレート12を測定装置100にセットし、励起光として波長が470nm〜480nmの光を照射する。これにより、測定プレート12のウェル12a内の試料混合物に励起光が照射されて、分子プローブ1及び2から蛍光が発される。続いて、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を500nmから5nmステップで700nmまで変化させ、複数のウェル12aから発される蛍光を、波長毎の2次元の画像として測定する。
【0098】
図5に示すような波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長毎に得られる画像から、図7を参照して説明したようにして、各ウェル12aに対応した蛍光画像の平均輝度を計算する。本実施例では、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を最初は500nmに設定し、蛍光画像を測定して保存する。続いて、波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を505nmに設定し、蛍光画像を測定して保存する。この操作を波長可変液晶分光フィルタ2の透過ピーク波長を500nmから700nmまで5nmステップで変更するたびに繰り返して行い、取得された波長毎の画像から各ウェル12aの位置に対応する波長毎の平均輝度(蛍光スペクトル)を得る。
【0099】
図19は、本実施例に従って得られた蛍光スペクトルの一例を示す。図19の例では、分子プローブ1については、蛍光タンパク質GFPの蛍光ピーク(1)と蛍光物質1の570nm付近の蛍光ピーク(2)が測定され、又分子プローブ2については、蛍光タンパク質RFPの蛍光ピーク(3)と蛍光物質2の670nm付近の蛍光ピーク(4)が測定される。
【0100】
分子プローブ1はカスパーゼ3の活性が高いとFRETが解消するため、アクセプターである蛍光物質1の570nm付近の蛍光ピーク(2)が小さくなり、ドナーであるGFPの蛍光ピーク(1)が相対的に大きくなる。従って、カスパーゼ3の活性を求める場合、(2)のピーク高さを(1)のピーク高さで除算した値が、カスパーゼ3の活性に比例することになる。
【0101】
同様に、分子プローブ2はトリプシンの活性が高いとFRETが解消するため、アクセプターである蛍光物質2の670nm付近の蛍光ピーク(4)が小さくなり、ドナーであるRFPの蛍光ピーク(3)が相対的に大きくなる。従って、トリプシンの活性を求める場合、(4)のピーク高さを(3)のピーク高さで除算した値が、トリプシンの活性に比例することになる。この計算を9個のウェル12aについて得られた各蛍光スペクトルに基づいて同時に行うことで、9個の検体における2種類のプロテアーゼの酵素活性の測定を同時に行うことが可能となる。
【0102】
以上のように、本実施例によれば、複数のウェル12aに複数の分子プローブと検体を入れ、波長可変液晶分光フィルタ2を用いて、蛍光イメージングにより波長毎の画像を全てのウェル12aについて取得する。又、取得された画像から各ウェル12aについての波長と平均輝度との関係(蛍光スペクトル)を求め、各分子プローブに特異的なドナーとアクセプターとのそれぞれに対応する蛍光ピーク波長における平均輝度(即ち、ピーク高さ)を求める。そして、各分子プローブに特異的なアクセプターに対応する蛍光ピーク波長におけるピーク高さを、ドナーに対応する蛍光ピーク波長におけるピーク高さで除算することで、複数種類の酵素活性の同時測定が可能となる。
【0103】
この方法の利点は、波長毎の蛍光強度を測定することで、分子プローブの種類が変わっても、その都度その分子プローブの種類に対応した蛍光分光フィルタを用意する必要がなく、例えば試料保持部毎に蛍光特性の異なる分子プローブを使用するような場合であっても極めて簡便、短時間に測定を行うことが可能になる。又、分子プローブによっては、測定条件により蛍光特性が変化する場合もあり、そのような場合でも異なる蛍光分光フィルタを別途容易する必要がなく、最適な波長の蛍光強度を使用して生体成分の活性又は濃度を計算することが可能になる。
【0104】
本実施例では、2種類の分子プローブを使用し、2種類のプロテアーゼ活性を測定しているが、分子プローブの種類の数は、測定対象となる生体成分又はその機能に対応して任意に設定することができ、測定精度等に鑑みれば、好ましくは、分子プローブは1種類から3種類程度である。
【0105】
1種類の分子プローブを使用する場合には、励起波長は分子プローブに最適な領域を選択して使用すれば良いし、蛍光を測定する範囲も使用する分子プローブに最適な波長を使用すれば良い。
【0106】
複数の分子プローブを使用する場合の励起波長と蛍光波長の選択は重要である。FRETを利用した分子プローブは、通常ドナーとアクセプターの2個の蛍光波長のピークが生じる。そのため、FRETを利用した2種類の分子プローブを使用する場合には、4個の蛍光ピークが生じることになる。本実施例では、GFPの蛍光ピークが約515nmに、蛍光物質1の蛍光ピークが約565nmに、RFPの蛍光ピークが約600nmに、蛍光物質2の蛍光ピークが約675nmにあり、各蛍光ピークは重ならない。従って、全ての蛍光ピークを的確に測定することが可能である。このように、使用するドナーとアクセプターの蛍光ピーク波長はできるだけ重ならないように分子プローブを設計することが重要である。又、本実施例では、470nm〜480nmの狭帯域フィルタを使用して1帯域の励起光を照射しているが、これはGFPとRFPの両方の蛍光タンパク質が、470nm〜480nmの光で励起可能であるためである。
【0107】
3種類の生体成分又はその機能を測定するFRETを利用した3種類の分子プローブのドナー及びアクセプターとしては、例えば、次のような組み合わせが使用可能である。GFP(ドナー:蛍光ピーク波長510nm)−蛍光物質(アクセプター:蛍光ピーク波長617nm)、YFP(ドナー:蛍光ピーク波長530nm)−蛍光物質(アクセプター:蛍光ピーク波長647nm)、RFP(ドナー:蛍光ピーク波長560nm)−蛍光物質(アクセプター:蛍光ピーク波長680nm)などの組み合わせである。この場合にも、470nm〜480nmの狭帯域フィルタを使用して1帯域の励起光で照射することで測定を行うことが可能である。
【0108】
又、使用する蛍光物質によっては1個の帯域の励起波長だけでは適正な励起ができない場合もある。その場合には、励起光を切り換えて測定することもできる。例えば、ドナーとして蛍光タンパクのBFPを使用する場合には、励起波長は384nmなどを使用することができる。励起光の切り替えは、当業者には明らかな利用可能な任意の方法を用いて光学フィルタを切り替えて光源から試料容器への光学経路中に配置することで行うことができる。
【0109】
又、前述したように、分子プローブは本実施例のようなFRETを利用して測定するもの以外に、単独の蛍光物質を使用した分子プローブ、発光物質を利用した分子プローブなども利用できる。発光物質を利用した分子プローブの場合には、励起光を照射する必要はない。
【0110】
以上説明したように、本発明によれば、従来困難であった多検体における生体成分又はその機能の測定を同時に短時間に行うことが可能となる。更に言えば、本発明によれば、複数の分子プローブを一の又は複数の検体に対して同時に用いて、一の又は複数の検体における複数の生体成分又はその機能を同時に測定する場合でも、多検体を同時に短時間に測定することが可能となり、よりハイスループットな成分と機能の測定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明に係る測定装置の一実施例の概略構成図である。
【図2】本発明に係る測定装置の一実施例において用いられる測定プレートを示す(a)平面図、(b)側面図、及び(c)斜視図である。
【図3】本発明に係る測定装置において用いられる波長可変液晶分光フィルタの一例の模式図である。
【図4】波長可変液晶分光フィルタの透過波長と透過率との関係の一例を示すグラフ図である。
【図5】本発明に従って撮像された測定プレートのウェルの画像の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る測定装置の一実施例における制御態様を示すブロック図である。
【図7】平均輝度の計算方法を説明するためのフローチャート図である。
【図8】本発明に係る測定装置の一実施例において得られた複数のウェルについての蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図9】本発明に係る測定装置の一実施例において得られた複数種類の蛍光物質を収容したウェルについての蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図10】本発明に係る測定装置の一実施例において得られた複数種類の蛍光物質を収容したウェルについての蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図11】本発明に係る測定装置の一実施例において得られた複数種類の蛍光物質を収容したウェルについての蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図12】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第1のパターンを説明するためのグラフ図である。
【図13】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第1のパターンを説明するためのフローチャート図である。
【図14】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第1のパターンを説明するためのフローチャート図である。
【図15】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第2のパターンを説明するためのグラフ図である。
【図16】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第2のパターンを説明するためのフローチャート図である。
【図17】本発明に係る測定装置を用いた生体成分又はその機能の測定方法の第2のパターンを説明するためのフローチャート図である。
【図18】分子プローブの一例の機能を説明するための模式図である。
【図19】本発明に係る測定装置の一実施例において得られたFRETを利用した複数の分子プローブを用いた場合の蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【図20】本発明に係る測定装置の他の実施例の概略構成図である。
【図21】本発明に係る測定装置の他の実施例の概略構成図である。
【図22】分子プローブの一例の機能を説明するための模式図である。
【図23】FRETを利用した分子プローブを用いた場合の蛍光スペクトルの一例を示すグラフ図である。
【符号の説明】
【0112】
1 光源
2 波長可変液晶分光フィルタ
3 検出器
4 光源レンズ
5 励起フィルタ
6 カットフィルタ
7 レンズ
8 駆動装置
9 ケーブル
10 遮光箱
11 処理装置
100 測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光を、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタを通過させた後に、検出器により撮像することで同時に検出し、前記検出器により各前記試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各前記試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする生体成分又はその機能の測定方法。
【請求項2】
前記波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を変更して、該透過ピーク波長毎の前記検出器により検出された光の強度を前記試料保持部毎に求め、前記試料保持部毎に、前記分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における前記光の強度に基づいて、その試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記複数の試料保持部のうち1個以上に保持された前記試料混合物には、複数種類の分子プローブが含まれており、該1個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体については、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする複数種類の生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項4】
前記複数の試料保持部のうち2個以上に保持された前記試料混合物に含まれる分子プローブ間の種類が異なっており、該2個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体間で、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする異なる種類の生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項1又は2に記載の測定方法。
【請求項5】
特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における光の強度と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項6】
特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する複数の特定の前記透過ピーク波長における光の強度の比率と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項7】
前記生体成分は、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、補酵素、糖、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体並びにそれらの複合体、水素イオン、及び金属イオンからなるグループより選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項8】
前記分子プローブは、単独又は複数の蛍光物質若しくは発光物質を含む成分で構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項9】
前記検体は、生体成分、細胞、細胞抽出液又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項10】
前記分子プローブとして蛍光物質を利用するものを用い、前記複数の試料保持部に透過光、落射光、エバネッセント光又はそれらを組み合わせて励起光を照射して、前記検出器により蛍光を検出することを特徴とする請求項1〜9のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項11】
前記検出器として、CCDカメラ、CMOSカメラ、又はイメージインテンシファイアを用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかの項に記載の測定方法。
【請求項12】
複数の試料保持部に保持された、蛍光物質又は発光物質を利用した分子プローブと検体とを含む試料混合物から発された光が通過する、透過光の波長域が可変である波長可変液晶分光フィルタと、
該波長可変液晶分光フィルタを通過した後の前記複数の試料保持部からの光を、撮像することで同時に検出する検出器と、
前記検出器により各前記試料保持部に対応して検出された光の強度に基づいて、各前記試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定する処理装置と、
を有することを特徴とする生体成分又はその機能の測定装置。
【請求項13】
前記処理装置は、前記波長可変液晶分光フィルタの透過ピーク波長を変更させて、該透過ピーク波長毎の前記検出器により検出された光の強度を前記試料保持部毎に求め、前記試料保持部毎に、前記分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における前記光の強度に基づいて、その試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体における前記分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記複数の試料保持部のうち1個以上に保持された前記試料混合物には、複数種類の分子プローブが含まれており、前記処理装置は、該1個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体については、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする複数種類の生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項12又は13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記複数の試料保持部のうち2個以上に保持された前記試料混合物に含まれる分子プローブ間の種類が異なっており、前記処理装置は、該2個以上の試料保持部に保持された前記試料混合物中の前記検体間で、前記複数種類の分子プローブのそれぞれが対象とする異なる種類の生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項12又は13に記載の測定装置。
【請求項16】
前記処理装置は、特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する特定の前記透過ピーク波長における光の強度と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係を記憶しており、該関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項12〜15のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項17】
前記処理装置は、特定の分子プローブに関して予め求められた、その分子プローブに対応する複数の特定の前記透過ピーク波長における光の強度の比率と、該特定の分子プローブが対象とする生体成分又はその機能の存否若しくは多寡との関係を記憶しており、該関係に基づいて、その分子プローブが対象とする生体成分又はその機能を測定することを特徴とする請求項12〜15のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項18】
前記生体成分は、タンパク質、酵素、ペプチド、アミノ酸、補酵素、糖、糖鎖、脂質、核酸、それらの誘導体並びにそれらの複合体、水素イオン、及び金属イオンからなるグループより選択されることを特徴とする請求項12〜17のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項19】
前記分子プローブは、単独又は複数の蛍光物質若しくは発光物質を含む成分で構成されていることを特徴とする請求項12〜18のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項20】
前記検体は、生体成分、細胞、細胞抽出液又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項12〜19のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項21】
前記分子プローブが蛍光物質を利用するものであり、前記複数の試料保持部に透過光、落射光、エバネッセント光又はそれらを組み合わせて励起光を照射する光源を有し、前記検出器は蛍光を検出することを特徴とする請求項12〜20のいずれかの項に記載の測定装置。
【請求項22】
前記検出器は、CCDカメラ、CMOSカメラ、又はイメージインテンシファイアであることを特徴とする請求項12〜21のいずれかの項に記載の測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−58304(P2009−58304A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224795(P2007−224795)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【出願人】(303035709)株式会社オプセル (24)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】