説明

生体成分測定装置及び生体成分測定方法

【課題】非侵襲で精度良く生体成分を測定できる生体成分測定装置及び生体成分測定方法を提供する。
【解決手段】生体成分測定装置10は、生体20の一部を載置するガイド板11と、ガイド板11の上に載置された生体内をガイド板11の幅方向に透過する光を発生する光源18と、生体20内を透過した光を受光する受光部19と、光源18と受光部19との間の光路を変更する光路変更部15a,15b,16a,16bと、制御部17とを有する。制御部17は、OCT像又は散乱光の強度等に基づいて最適光路を決定し、光源18から出射された光が最適光路を通るように光路変更部15a,15b,16a,16bを制御して、受光部19から出力される信号に基づいて生体成分を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分測定装置及び生体成分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧、血中酸素飽和度及び血糖値などの情報は患者の状態を知る上で重要であり、投薬のタイミングを判断する材料にもなる。一般的に、血中酸素飽和度や血糖値などの生体情報は生体から採取した血液により取得しており、病院に入院している糖尿病患者では血液採取用の針(採血針)が常時人体に挿入されて定期的に血液の採取が行われている。また、通院治療を行っている糖尿病患者の場合も、1日に3〜4回程度血液を採取して検査する必要がある。
【0003】
しかし、針を使った血液採取には精神的及び肉体的な苦痛を伴う。このため、非侵襲で生体成分を測定する方法が提案されている。例えば、近赤外光を指等に照射し、透過光の強度から血液中のグルコース濃度(血糖値)を測定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−291550号公報
【特許文献2】特開2000−189391号公報
【特許文献3】特開2001−087249号公報
【特許文献4】特開2005−106592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非侵襲で精度良く生体成分を測定できる生体成分測定装置及び生体成分測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれば、生体の一部を載置するガイド板と、前記ガイド板の上に載置された生体内を前記ガイド板の幅方向に透過する光を発生する光源と、前記生体内を透過した光を受光する受光部と、前記光源と前記受光部との間の光路を変更する光路変更部と、最適光路を決定し、前記光源から出射された光が前記最適光路を通るように前記光路変更部を制御して、前記受光部から出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部とを有する生体成分測定装置が提供される。
【0007】
また、開示の技術の他の一観点によれば、ガイド板の上に生体の一部を載置する工程と、最適光路を決定する工程と、前記最適光路に沿って前記ガイド板上の生体部分に光を透過させる工程と、前記生体部分を透過した光を受光する受光部の出力から生体成分を算出する工程とを有する生体成分測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の一観点に係る生体成分測定装置及び生体成分測定方法によれば、生体内に光を透過させる非侵襲な方法で、精度良く生体成分を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置を示す模式図である。
【図2】図2は、第1の光源及び第1の受光部を示す模式図である。
【図3】図3は、第1の受光部から出力された信号を処理して得た指の静脈パターンの一例を示す図である。
【図4】図4は、断層情報取得部を示す模式図である。
【図5】図5(a),(b)は、断層情報取得部により得られる断層像の一例を表した図である。
【図6】図6は、可動柱及びミラーを示す模式図である。
【図7】図7は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置による生体成分の測定方法を示すフローチャートである。
【図8】図8は、最適光路候補を模式的に示す図である。
【図9】図9は、最適光路を示すイメージ図である。
【図10】図10(a),(b)は、光路の調整を説明するイメージ図である。
【図11】図11は、第2の実施形態に係る生体成分測定装置を示す模式図である。
【図12】図12は、第2の実施形態に係る生体成分測定装置による生体成分の測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0011】
従来から、人体(例えば指)に近赤外光を照射し、人体を透過した光の強度から血液中のグルコース濃度(血糖値)を算出する方法が知られている。
【0012】
しかし、この方法では、皮膚の表層に存在するメラニン及びしみ等、並びに皮下脂肪よりも深部に存在する脂肪、骨、筋肉及び動脈等が光を散乱させる散乱要因となる。光が散乱要因の多い光路を通ると、SN比(信号とノイズとの比)が小さくなって測定精度が低下する。従って、光を照射して生体成分(グルコース濃度等)を測定する方法では、光の散乱要因ができるだけ少ない光路を選択することが重要になる。
【0013】
また、生体成分の測定では、例えば糖尿病患者に対する血液中のグルコース濃度の測定のように、1日に複数回の測定が必要とされることがある。このような場合に、測定のたびに測定位置が変わると、光の散乱状態が変化して測定結果にばらつきが生じる。従って、常に同じ条件(同じ光路)で生体成分を測定することが重要である。
【0014】
以下の実施形態では、非侵襲で精度良く生体成分を測定できる生体成分測定装置及び生体成分測定方法について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置を示す模式図である。なお、図1中の白抜き矢印及び破線の矢印は光の経路を示している。
【0016】
生体成分測定装置10は、ガイド板11と、第1の光源12と、第1の受光部13と、断層情報取得部14と、可動柱15a,15bと、ミラー16a,16bと、制御部17と、第2の光源18と、第2の受光部19とを有する。制御部17は、例えばコンピュータを用いて実現される。また、制御部17は、各種操作キーや表示装置を備えた操作パネル17aを備えている。
【0017】
ガイド板11は例えばアクリル又はガラス等により形成された透明な板であり、生体成分測定時には、ガイド板11の上に生体の検査部位を接触させる。本実施形態では、ガイド板11の上に被検者の指20を載置するものとする。
【0018】
ガイド板11の下方には、第1の光源12及び第1の受光部13がガイド板11の幅方向(図1中の指20の幅方向と同じ方向)に離隔して配置されている。本実施形態では、第1の光源12、第1の受光部13及び制御部17により測定部位特徴形状取得部を構成する。
【0019】
図2は、第1の光源12及び第1の受光部13を示す模式図である。
【0020】
本実施形態では、第1の光源12として近赤外光を出射する発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を使用し、第1の受光部13として電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)等のイメージセンサを使用する。
【0021】
第1の光源12は、制御部17から所定の信号が送られてくると、ガイド板11上の指20に向けて例えば波長が700nm〜1200nmの近赤外光を照射する。この波長の近赤外光は、生体組織内に進入しやすく、且つ血液中のヘモグロビンに吸収されやすいという性質を有する。従って、指20に近赤外光を照射し、指20で反射された近赤外光を第1の受光部13で受光して、第1の受光部13から出力される信号を制御部17で信号処理すると、静脈の模様を示す静脈パターンが得られる。図3に、第1の受光部13から出力された信号を処理して得た指の静脈パターンの一例を示す。
【0022】
静脈パターンは各人に固有の生体情報であり、個人を特定する個人認証に使用することができる。本実施形態では第1の光源12及び第1の受光部13を使用して取得する静脈パターンを測定部位特徴形状として使用するが、例えば指20の輪郭像や指紋の模様を取得して測定部位特徴形状としてもよい。
【0023】
図1のように、断層情報取得部14も、ガイド板11の下方に配置される。断層情報取得部14は光源、受光素子及び信号処理部等(いずれも図示せず)を有し、光の干渉性を利用して生体内部の断層像を取得する公知のOCT(Optical Coherence Tomography:光断層撮影技術)を用いて、生体の断層情報を取得する。
【0024】
図4は、断層情報取得部14を示す模式図である。断層情報取得部14は、制御部17から送られてくる所定の信号に応じて動作を開始する。そして、ガイド板11の上に載置された指20の様々な深さの断層像を取得し、断層情報として制御部17に伝達する。制御部17に伝達される断層情報には、皮膚表面の凹凸(指紋や傷)、汗腺、毛根、皮脂腺及びやコラーゲン層等の散乱要因の位置及び大きさの情報が含まれる。
【0025】
図5(a),(b)は、断層情報取得部14により得られる断層像の一例を表した図である。
【0026】
図5(a)は皮膚の表層部分の横断層像である。図5(a)からわかるように、断層情報取得部14により得られる断層像から指紋の模様を識別することができる。また、図5(b)は皮膚の表面近傍の縦断面像である。この図5(b)からわかるように、断層情報取得部14により得られる断層像から汗腺やコラーゲン層を識別することができる。
【0027】
図6は、可動柱15a,15b及びミラー16a,16bを示す模式図である。
【0028】
図6に示すように、ガイド板11の幅方向の両側部には、ガイド板11の長さ方向に延びるガイドレール31a,31bが設けられている。可動柱15a,15bはその長手方向を垂直にして配置され、制御部17により制御される駆動部(図示せず)により駆動されて、ガイドレール31a,31bの上を移動する。
【0029】
可動柱15aにはミラー16aが取り付けられており、可動柱15bにはミラー16bが取り付けられている。これらのミラー16a,16bは、制御部17により制御される駆動部(図示せず)により駆動されて、角度が変化する。なお、制御部17からの信号に応じてミラー16a,16bが可動柱15a,15bの高さ方向に移動するようにしてもよい。
【0030】
図1のように、ミラー16aの下方には第2の光源18が配置され、ミラー16bの下方には第2の受光部19が配置されている。これらの第2の光源18及び第2の受光部19は、生体成分の測定に使用される。
【0031】
第2の光源18は、制御部17から所定の信号が送られてくると、ミラー16aに向けて光を出射する。第2の光源18には例えばレーザーダイオード(LD)が使用され、可視光域から赤外光域までの波長領域内の2以上の波長の光を出射する。但し、第2の光源18から出射される光は、グルコースに吸収されやすい波長の光を含む。本実施形態では、第2の光源18から、波長が940nmの光と、波長が1060nmの光とが出射されるものとする。
【0032】
第2の光源18は1つの発光素子で形成されている必要はなく、例えば複数の発光素子により形成されていてもよい。その場合は、例えば複数の発光素子で発生した光をカプラにより混合し、光ファイバを介して出射するようにしてもよい。
【0033】
第2の光源18から出射された光は、ミラー16aで反射され、指20を幅方向に透過してミラー16bに到達し、更にミラー16bで反射されて第2の受光部19に向かう。光が指20を透過する際には、指20の内部を通る血液中のグルコースにより、特定の波長の光が吸収される。
【0034】
第2の受光部19は、1又は複数の受光素子を有し、ミラー16bで反射された光を受光する。第2の受光部19には、例えばInGaAsフォトディテクタ(PD)を用いることができる。第2の受光部19は、波長ごとに光量に応じた信号を制御部17に出力する。
【0035】
図7は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置による生体成分の測定方法を示すフローチャートである。
【0036】
まず、ステップS11において、被検者の指20をガイド板11の上に載置する。そして、操作パネル17aを介して制御部17に測定の開始を指示する。
【0037】
なお、指20のガイド板11に対する圧力が検査のたびに変化すると精度の良い測定が困難になる。そのため、ガイド板11に感圧素子を設けて指20の圧力を検出し、指20がガイド板11に過度に強く押し当てられたときには操作パネル17aの表示部に注意を促すメッセージを表示するようにしてもよい。
【0038】
次に、ステップS12において、制御部17は、第1の光源12に所定の信号を出力して第1の光源12を点灯させる。これにより、第1の光源12から出射された近赤外光は、ガイド板11を透過して指20の内部に進入する。このとき、近赤外光の一部は、静脈を流れる血液中のへモグロビンに吸収される。そして、指20の内部で反射された近赤外光がガイド板11を透過し、第1の受光部13で受光される。制御部17は、第1の受光部13から出力される信号を処理して、指20の静脈パターン(測定部位特徴形状)を取得する。
【0039】
次に、ステップS13において、制御部17は1回目の測定であるか否かを判定する。具体的には、制御部17は、ステップS12において取得した静脈パターンが、制御部17内に既に登録されているか否かを調べる。登録されていない場合は1回目の測定である(YES)と判定し、ステップS14に移行する。また、既に登録されている場合は否(NO)と判定し、ステップS20に移行する。
【0040】
なお、ステップS13における判定方法は上述の方法に限定されない。例えば、初回の測定であるか否かをユーザが操作パネル17aの操作キーを操作して入力するようにしてもよい。また、例えば、予め制御部17にユーザごとの名前や指紋情報又はパスワード等の個人情報を登録しておき、名前や指紋情報又はパスワード等による個人認証を行って、過去に測定を行ったことがある被検者か否かを判定するようにしてもよい。
【0041】
ステップS14において、制御部17はステップS12で取得した静脈パターンを登録(記憶)する。この場合に、静脈パターンと名前等の被検者の個人情報とを関連付けて記憶することが好ましい。
【0042】
次に、ステップS15に移行し、制御部17は断層情報取得部14に断層情報の取得(OCT測定)を指示する。これにより、断層情報取得部14は、指20の様々な深さの断層像を撮像し、断層情報として制御部17に伝達する。この断層情報には、皮膚表面の凹凸(指紋や傷)、汗腺、毛根、皮脂腺及びやコラーゲン層等の光の散乱要因となる部位の位置及び大きさの情報が含まれている。
【0043】
断層情報取得部14が指20の断層像を取得する際の走査範囲は、例えば基準位置から指20の長さ方向に3cmまでの範囲とする。また、深さの範囲は特に限定しないが、例えばガイド板11の表面から上方に数mmまでの範囲とする。
【0044】
次に、ステップS16に移行し、制御部17は、断層情報に基づき、生体成分の測定を行うのに最適な光路(以下、「最適光路」という)を決定する。以下、その方法について説明する。
【0045】
制御部17には、予め複数(例えば数100又はそれ以上)の最適光路候補が登録されている。図8は、最適光路候補を模式的に示す図である。この図8に矢印で示すように、最適光路候補には、位置及び角度が異なる複数のパターンが存在する。これらの最適光路候補は、いずれも光が指20の真皮層内の静脈を通るように設定される。
【0046】
制御部17は、断層情報を参照することによって傷、汗腺、毛根、皮脂腺及びコラーゲン層等の散乱要因の分布状況を把握し、上述した複数の最適光路候補のうちから最も散乱要因の少ない光路を最適光路として選択する。
【0047】
図9は、最適光路を示すイメージ図である。図9中の太線は指20の輪郭と静脈パターンとを表しており、小円は散乱要因を表している。また、図9中の矢印は、最適光路を表している。この図9のように、制御部17は、複数の最適光路候補のうちから散乱要因が最も少ない光路を最適光路として選択する。
【0048】
このようにして最適光路が決定された後、ステップS17に移行し、制御部17は最適光路を静脈パターン(測定部位特徴形状)に関連付けて記憶する。最適光路を静脈パターンに関連付けることにより、次回測定時にガイド板11に載せた指20の位置が初回測定時からずれていたとしても、登録されている静脈パターンと次回測定時の静脈パターンとを比較することによりずれ量がわかる。これにより、新たに断層情報を取得しなくても、初回測定時と同じ位置(最適光路)に光を通すことが可能になる。なお、ずれ量が大きい場合は、操作パネル17aの表示部に指の位置をずらすようにメッセージを表示するようにしてもよい。
【0049】
次に、ステップS18において、制御部17は、第1の光源18から出射された光が最適光路を通って第2の受光部19に到達するように、可動柱15a,15bの位置、及びミラー16a,16bの角度等を変更して光路を調整する。
【0050】
図10(a),(b)は、光路の調整を説明するイメージ図である。図10(a)のように可動柱15a,15bの位置を個別に調整し、それに応じて図10(b)のようにミラー16a,16bの角度を個別に調整することにより、最適光路に光を通すことができる。
【0051】
このようにして光路の調整を行った後、ステップS19に移行して、制御部17は第2の光源18から光を出射させ、第2の受光部19から出力される信号に基づいて生体成分(グルコース濃度)を測定する。すなわち、制御部17は、第2の受光部19が受光した光の波長毎の強度を調べ、それらの強度の比からグルコース濃度を演算する。グルコースによる光の吸収量は光の波長に関係するので、上述の如く波長が異なる複数の光の強度の比からグルコース濃度を演算することができる。生体成分の測定結果は、例えば操作パネル17aに設けられた表示部に表示し、且つ測定日時の情報とともに制御部17に記憶する。
【0052】
一方、ステップS13において1回目の測定ではないと判定した場合は、ステップS20に移行する。そして、ステップS20において、制御部17は登録情報、すなわち被検者の静脈パターン(測定部位特徴形状)とそれに関連付けされた最適光路の情報とを読み出す。その後、ステップS18に移行し、前述したように静脈パターンとそれに関連付けされた最適光路の情報とに基づいて可動柱15a,15bの位置及びミラー16a,16bの角度を調整し、ステップS19で生体成分を測定する。
【0053】
本実施形態では、採血針を挿す等の苦痛を被験者に与えることなく、非侵襲で生体成分の測定を行うことができる。また、本実施形態では、生体を傷付けることなく光学的な方法で生体成分を測定するので、使用場所が病院のような医療施設に限定されず、自宅や公共施設等で使用することができる。
【0054】
更に、本実施形態では、断層情報取得部14により生体の断層情報を取得し、その断層情報に基づいて散乱要因の分布を調べ、散乱要因が少ない光路を光が通るように可動柱15a,15bの位置及びミラー16a,16bの角度を調整する。これにより、SN比の低下が回避され、生体成分を精度良く測定することができる。
【0055】
更にまた、本実施形態に係る生体成分測定装置10は、最適光路を静脈パターン等の測定部位特徴形状に関連付けて記憶するので、常に同じ位置に光を通すことができる。このため、生体成分の経時的変化を調べる場合に、測定結果の信頼性が高い。
【0056】
なお、本実施形態では、第2の光源18及び第2の受光部19をいずれもガイド板11の下方に配置しているが、第2の光源18及び第2の受光部19の少なくとも一方をガイド板11の上方に配置してもよい。
【0057】
また、本実施形態ではミラー16a,16bが取り付けられた可動柱15a,15bがガイドレール31a,31bに沿って移動するものとしているが、これらのミラー16a,16b、可動柱15a,15b及びガイドレール31a,31bは必須ではない。例えば、第2の光源18を可動柱15aに取り付けることにより、ミラー16aを省略することができる。更に、例えばガイド板11の幅方向の一方の側にガイド板11に沿って多数の発光素子(第2の光源)を配列し、他方の側にガイド板11に沿って多数の受光素子(第2の受光部)を配列することにより、可動柱15a,15b及びガイドレール16a,16bを省略することができる。
【0058】
更にまた、本実施形態では、2回目以降の測定のときにはステップS14〜S17の処理を省略する。しかし、前回測定時からある程度(例えば半年以上)時間が経過している場合は、初回測定時と同じようにステップS14〜ステップS17の処理を実行するようにしてもよい。
【0059】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る生体成分測定装置を示す模式図である。本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、断層情報取得部14に替えて散乱光センサ41を有することにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様である。このため、図11において、図1と同一物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0060】
図11のように、本実施形態に係る生体成分測定装置40では、ガイド板11の下方に散乱光センサ41が配置されている。この散乱光センサ41は、第2の光源18から出射された光が指20の内部を透過するときの散乱光を受光し、受光量に応じた信号を制御部17に出力する。散乱光センサ41として、フォトディテクタ(PD)又はCCD等を使用することができる。
【0061】
図12は、本実施形態に係る生体成分測定装置による生体成分の測定方法を示すフローチャートである。
【0062】
まず、ステップS21において、被検者の指20をガイド板11の上に載置する。そして、操作パネル17aを介して制御部17に測定の開始を指示する。
【0063】
次に、ステップS22に移行し、制御部17は、第1の光源12に所定の信号を出力して第1の光源12を点灯させる。これにより、第1の光源12から出射された近赤外光は、ガイド板11を透過して指20の内部に進入する。そして、指20の内部で反射された近赤外光がガイド板11を透過し、第1の受光部13で受光される。制御部17は、第1の受光部13から出力される信号を処理して、指20の静脈パターン(測定部位特徴形状)を取得する。
【0064】
次に、ステップS23において、制御部17は1回目の測定であるか否か、すなわちステップS22において取得した静脈パターンが制御部17内に既に登録されているか否かを調べる。取得した静脈パターンが登録されていない場合は1回目の測定である(YES)と判定し、ステップS24に移行する。また、取得した静脈パターンが既に登録されている場合は否(NO)と判定し、ステップS30に移行する。
【0065】
ステップS24において、制御部17はステップS22で取得した静脈パターンを登録(記憶)する。この場合に、静脈パターンと名前等の被検者の個人情報とを関連付けて記憶することが好ましい。
【0066】
次に、ステップS25に移行し、制御部17は最適光路の探索を行う。すなわち、制御部17は予め登録されている複数の最適光路候補(図8参照)を順番に読み出し、読み出した最適光路候補毎に可動柱15a,15bの位置及びミラー16a,16bの角度を調整する。そして、第2の光源18から出射された光をそれらの最適光路候補に実際に通し、最適光路候補毎に散乱光センサ41で散乱光の強度を測定する。
【0067】
光路内に散乱要因が多いほど、散乱光センサ41で検出される散乱光の強度が高くなる。本実施形態では、登録されている最適光路候補に全て光を通した後、散乱光の強度が最も低い最適光路候補を最適光路とする。
【0068】
このようにして最適光路が決定された後、ステップS27に移行し、制御部17は最適光路を静脈パターン(測定部位特徴形状)に関連付けて記憶する。その後、ステップS28に移行し、制御部17は、第1の光源18から出射された光が最適光路を通って第2の受光部19に到達するように、可動柱15a,15bの位置、及びミラー16a,16bの角度等を変更して光路を調整する。
【0069】
次いで、ステップS29に移行して、制御部17は第2の光源18から光を出射させ、第2の受光部19から出力される信号に基づいて生体成分(グルコース濃度)を算出する。その生体成分の算出結果(測定結果)は、例えば操作パネル17aに設けられた表示部に表示し、測定日時の情報とともに制御部17に記憶する。
【0070】
一方、ステップS23において1回目の測定ではないと判定した場合は、ステップS30に移行する。そして、ステップS30において、制御部17は登録情報、すなわち被検者の静脈パターン(測定部位特徴形状)とそれに関連付けされた最適光路の情報とを読み出す。その後、ステップS28に移行し、前述したように静脈パターンとそれに関連付けされた最適光路の情報とに基づいて可動柱15a,15bの位置及びミラー16a,16bの角度を調整し、ステップS29で生体成分を測定する。
【0071】
第1の実施形態では、OCTにより断層像を取得する断層情報取得部14を使用しているため、装置構成が複雑になり、コストが高くなることが考えられる。これに対し、本実施形態では、比較的安価なフォトディテクタ又はCCDにより形成される散乱光センサ41を使用するので、第1の実施形態に比べて装置コストが低減されるという利点がある。また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、生体成分を非侵襲で精度良く測定することができるという効果を奏する。
【0072】
以上の諸実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0073】
(付記1)生体の一部を載置するガイド板と、
前記ガイド板の上に載置された生体内を前記ガイド板の幅方向に透過する光を発生する光源と、
前記生体内を透過した光を受光する受光部と、
前記光源と前記受光部との間の光路を変更する光路変更部と、
最適光路を決定し、前記光源から出射された光が前記最適光路を通るように前記光路変更部を制御して、前記受光部から出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部と
を有することを特徴とする生体成分測定装置。
【0074】
(付記2)前記ガイド板の下に配置されて前記ガイド板の上に載置された生体部分の3次元断層像を取得する断層像取得部を有し、
前記制御部は前記断層像取得部で取得した前記3次元断層像に基づいて前記最適光路を決定することを特徴とする付記1に記載の生体成分測定装置。
【0075】
(付記3)前記制御部は、前記3次元断層像を参照し、予め登録された複数の最適光路候補のうちから光を散乱させる散乱要因が少ない光路を前記最適光路とすることを特徴とする付記2に記載の生体成分測定装置。
【0076】
(付記4)前記ガイド板の下に配置されて前記生体内で散乱された光を検出する散乱光検出部を有し、
前記制御部は前記散乱光検出部の出力に基づいて前記最適光路を決定することを特徴とする付記1に記載の生体成分測定装置。
【0077】
(付記5)前記制御部は、予め登録された複数の最適光路候補のうちから前記散乱光検出部で検出される光量が少ない光路を前記最適光路とすることを特徴とする付記4に記載の生体成分測定装置。
【0078】
(付記6)更に、前記ガイド板の上に載置された生体の測定部位特徴形状として静脈パターン、生体の輪郭像及び指紋の模様のうちのいずれかを取得する測定部位特徴形状取得部を有し、
前記制御部は、最適光路の位置を前記測定部位特徴形状に関連付けて記憶することを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【0079】
(付記7)ガイド板の上に生体の一部を載置する工程と、
最適光路を決定する工程と、
前記最適光路に沿って前記ガイド板上の生体部分に光を透過させる工程と、
前記生体部分を透過した光を受光する受光部の出力から生体成分を算出する工程と
を有することを特徴とする生体成分測定方法。
【0080】
(付記8)前記最適光路を決定する工程では、
前記ガイド板の下に配置された断層像取得部により前記ガイド板上の生体部分の3次元断層像を取得し、
前記3次元断層像から光を散乱させる散乱要因が少ない光路を抽出して最適光路とすることを特徴とする付記7に記載の生体成分測定方法。
【0081】
(付記9)前記最適光路を決定する工程では、
予め登録された複数の最適光路候補のうちから前記ガイド板の下に配置された散乱光検出部で検出される散乱光の強度が少ない光路を抽出して最適光路とすることを特徴とする付記7に記載の生体成分測定方法。
【符号の説明】
【0082】
10,40…生体成分測定装置、11…ガイド板、12…第1の光源、13…第1の受光部、14…断層情報取得部、15a,15b…可動柱、16a,16b…ミラー、17…制御部、17a…操作パネル、18…第2の光源、19…第2の受光部、20…指、31a,31b…ガイドレール、41…散乱光センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の一部を載置するガイド板と、
前記ガイド板の上に載置された生体内を前記ガイド板の幅方向に透過する光を発生する光源と、
前記生体内を透過した光を受光する受光部と、
前記光源と前記受光部との間の光路を変更する光路変更部と、
最適光路を決定し、前記光源から出射された光が前記最適光路を通るように前記光路変更部を制御して、前記受光部から出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部と
を有することを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項2】
前記ガイド板の下に配置されて前記ガイド板の上に載置された生体部分の3次元断層像を取得する断層像取得部を有し、
前記制御部は前記断層像取得部で取得した前記3次元断層像に基づいて前記最適光路を決定することを特徴とする請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記ガイド板の下に配置されて前記生体内で散乱された光を検出する散乱光検出部を有し、
前記制御部は前記散乱光検出部の出力に基づいて前記最適光路を決定することを特徴とする請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
更に、前記ガイド板の上に載置された生体の測定部位特徴形状として静脈パターン、生体の輪郭像及び指紋の模様のうちのいずれかを取得する測定部位特徴形状取得部を有し、
前記制御部は、最適光路の位置を前記測定部位特徴形状に関連付けて記憶することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
ガイド板の上に生体の一部を載置する工程と、
最適光路を決定する工程と、
前記最適光路に沿って前記ガイド板上の生体部分に光を透過させる工程と、
前記生体部分を透過した光を受光する受光部の出力から生体成分を算出する工程と
を有することを特徴とする生体成分測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−22338(P2013−22338A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161591(P2011−161591)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】