説明

生体成分測定装置

【課題】生体内の生体成分量を精度よく測定する。
【解決手段】生体内に挿入されるセンサ部2と、センサ部2に近接して生体内に配置され生体内に存在する生体成分との相互作用によって励起光が照射されると生体成分の量に応じた蛍光を発生する蛍光物質に向けて照射する励起光を発する発光部7とを備え、センサ部2に、蛍光物質から発せられた蛍光を検出し電気信号に変換する受光素子が設けられている生体成分測定装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体内のグルコース値のような生体成分を測定するために、生体内に挿入する光ファイバの先端付近に、グルコースと反応することで励起光により蛍光を発生するようになる蛍光物質を配置し、光ファイバの基端側に接続した光源から照射した励起光を蛍光物質に照射し、光ファイバを介して戻る蛍光を光ファイバの基端側に接続した光検出器により測定する装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/090596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の測定装置では、蛍光物質の発生する微弱な蛍光を光ファイバによって伝送した後に光検出器により検出するので、検出される蛍光は光ファイバ等の光学系を通過する間に減衰してしまい、精度よく測定することができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、生体内の生体成分量を精度よく測定することができる生体成分測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、生体内に挿入されるセンサ部と、該センサ部に近接して生体内に配置され生体内に存在する生体成分との相互作用によって励起光が照射されると前記生体成分の量に応じた蛍光を発生する蛍光物質に向けて照射する励起光を発する発光部とを備え、前記センサ部に、前記蛍光物質からの蛍光を検出し電気信号に変換する受光素子が設けられている生体成分測定装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、センサ部を生体内に挿入すると、センサ部の周囲には生体内に存在する生体成分が流動しており、センサ部に近接して生体内に配置された蛍光物質が生体成分との相互作用によって変性して、発光部から発せられた励起光によって生体成分の量に応じた蛍光が発生するようになる。発生した蛍光はセンサ部に設けられた受光素子により検出され、電気信号に変換されて出力される。これにより、光ファイバによって蛍光を伝送する場合と比較して、蛍光の減衰が発生せず、生体内の生体成分量を精度よく測定することができる。
【0008】
上記発明においては、前記蛍光物質を含む蛍光部材が、前記受光素子の受光面に隣接して配置されていてもよい。
このようにすることで、蛍光部材から発生した蛍光を発生直後に受光素子によって検出することができ、微弱な蛍光も効率的に検出して、生体成分量を精度よく測定することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記受光素子の受光面に、前記励起光を遮蔽し前記蛍光を透過するフィルタが配置されていてもよい。
このようにすることで、発光部から発せられて受光素子の受光面に向かう励起光はフィルタによって遮断されるので、強度の強い励起光によって微弱な蛍光の検出が阻害されるのを防止して、生体成分量を精度よく測定することができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記センサ部が生体内に挿入された状態で体表に配置される外部装置を備え、該外部装置の体表に接触させられる面に、前記発光部が配置されていてもよい。
このようにすることで、体表に配置した発光部から生体内に入射させた励起光により、蛍光物質を励起して蛍光を検出することができる。発熱しやすい発光部を体外に配置することができ、蛍光物質の特性の熱による変化を防止して、生体成分量を精度よく測定することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記発光部が、前記蛍光部材に対して間隔をあけて前記センサ部に配置されていてもよい。
このようにすることで、センサ部を体内に挿入して、発光部を作動させると、蛍光部材に対して間隔をあけて近接した位置から励起光が照射される。これにより、比較的小さい駆動電流による発光量でも蛍光物質を励起して蛍光を発生させ、生体成分を検出することが可能となり、消費電力の低減、発熱の低減等を図ることができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記センサ部が生体内に挿入された状態で前記発光部が体外に配置され、該発光部から発せられた励起光を前記センサ部に導く光ファイバを備えていてもよい。
このようにすることで、発熱する発光部を蛍光部材から離れた体外に配置することができ、蛍光部材が加熱されることを防止して、生体成分量を精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生体内の生体成分量を精度よく測定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体成分測定装置を示す模式的な全体構成図である。
【図2】図1の生体成分測定装置のセンサ部の先端部の構造を示す模式的な縦断面図である。
【図3】図1の生体成分測定装置の回路図である。
【図4】図1の生体成分測定装置の第1の変形例を示すセンサ部の先端部の模式的な縦断面図である。
【図5】図1の生体成分測定装置の第2の変形例を示す回路図である。
【図6】図5の生体成分測定装置のセンサ部の先端部の構造を示す模式的な縦断面図である。
【図7】図1の生体成分測定装置の第3の変形例を示す模式的な全体構成図である。
【図8】図7の生体成分測定装置のセンサ部の先端部の構造を示す模式的な縦断面図である。
【図9】図7の生体成分測定装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る生体成分測定装置1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体成分測定装置1は、図1に示されるように、体外から表皮Aを貫通して真皮領域Bまで到達するように体内に挿入されるセンサ部2と、該センサ部2に接続され体外に配置される体外装置(外部装置)3とを備えている。
【0016】
センサ部2には、図2に示されるように、その先端に側面に開口する開口部2aが設けられ、該開口部2a内に、該開口部2aを閉塞するように配置され蛍光物質を含有する蛍光部材4と、該蛍光部材4よりもセンサ部2の内側に配置され蛍光部材4から発せられた蛍光を検出するフォトダイオード(PD:受光素子)5と、該フォトダイオード5と蛍光部材4との間に配置されたフィルタ6とを備えている。
【0017】
蛍光部材4は、透明性、もしくは半透明性を有するベース材料内に蛍光物質を含有して構成されている。ベース材料としては、真皮領域B内に流動する間質液を浸透させることができる材料、例えば、含水し易いハイドロゲルを挙げることができる。
【0018】
蛍光物質としては、測定しようとする生体成分の量、すなわち、間質液中の生体成分濃度に応じた強度の蛍光を発生する蛍光色素が選択される。生体成分としてグルコースを測定したい場合には、グルコースとの相互作用により蛍光を発生するようになる物質、例えば、ルテニウム錯体、蛍光フェニルボロン酸またはタンパクと結合したフルオレセイン等のグルコースと可逆結合する物質を用いることができる。
【0019】
フォトダイオード5は、蛍光物質から発せられる蛍光の波長を含む波長帯域に感度を有し、検出する蛍光をその強度に応じた電流に変換するようになっている。フィルタ6は、後述するLED7からの励起光の波長帯域の光を遮断し、蛍光の波長帯域を含む波長帯域の光を透過する波長特性を有している。
【0020】
体外装置3は、図1に示されるように、センサ部2を表皮Aから刺してその先端を真皮領域Bに到達させた状態で、表皮Aの外表面に接触配置されるケース8を備えている。このケース8の表皮Aに接触する面には、励起光を発生するLED(発光部)7が配置されている。また、このケース8は、表皮Aの外面に粘着テープ9等によって固定されるようになっている。
【0021】
LED7は、センサ部2が体内に挿入された状態で、表皮Aや真皮領域B等の生体組織を挟んで、センサ部2の先端に設けられた開口部2aに対向する位置に配置されている。また、LED7は、図3に示されるように、ケース8内に配置されているLED駆動回路10によって駆動されるようになっている。
【0022】
また、体外装置3は、センサ部2を貫通して配される配線11によりフォトダイオード5に接続され電流信号を電圧信号に変換するIV変換回路12と、該IV変換回路12に接続され、電圧信号をディジタル信号に変換するAD変換回路13とを備えている。また、体外装置3には、これらの回路を駆動するバッテリ14が備えられている。
【0023】
体外装置3は、得られたディジタル信号値を外部に送信する送信部(図示略)を持っていてもよいし、ディジタル信号値を記憶する記憶部(図示略)を持っていてよい。あるいは、得られたディジタル信号値を表示する表示部(図示略)を備えていてもよい。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る生体成分測定装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る生体成分測定装置1を用いて生体内の生体成分、例えば、グルコース濃度を測定するには、図1に示されるように、表皮Aの外面からセンサ部2を刺して、センサ部2の先端を真皮領域Bに到達させる。このとき、センサ部2に接続されたケース8のLED7が設けられている表面を表皮Aの外面に密着させる。
【0025】
この状態で、LED駆動回路10を作動させてLED7を駆動し、励起光を表皮A外から真皮領域B内に入射させる。
真皮領域Bに配置されたセンサ部2の先端に設けられた蛍光部材4には、図2に示されるように、真皮領域B内に流動する間質液が浸透するので、蛍光部材4内に含有されている蛍光物質が間質液内のグルコースと結合して、グルコース濃度に応じた強度の蛍光を発するように変性する。
【0026】
したがって、LED7から発せられた励起光が蛍光部材4に入射されると、蛍光物質からはグルコース濃度に応じた強度の蛍光が発せられる。発生した蛍光は、フィルタ6を透過してフォトダイオード5により検出され、強度に応じた電流信号が出力される。そして、電流信号は、IV変換回路12によって電流信号に応じた電圧信号に変換され、AD変換回路13によってディジタル信号に変換される。
【0027】
このように、本実施形態に係る生体成分測定装置1によれば、センサ部2の先端に配置したフォトダイオード5によって、蛍光物質から発せられた蛍光を発生直後に検出するので、蛍光の伝送時の減衰を抑制して、グルコース濃度を精度よく測定することができるという利点がある。また、センサ部2の先端に配したフォトダイオード5によって蛍光強度を電流信号に変換するので、センサ部2を介して蛍光を導光せずに済み、センサ部2を細径化することができる。
【0028】
また、LED7から発せられた励起光の内の一部は蛍光部材4を通過するが、蛍光部材4とフォトダイオード5との間に設けられたフィルタ6により遮断され、フォトダイオード5への到達が阻止される。これにより、フォトダイオード5には、蛍光物質から発生した蛍光を検出し易くなるので、間質液内に含まれるグルコース濃度を、蛍光の強度として精度よく測定することができる。
【0029】
さらに、本実施形態に係る生体成分測定装置1によれば、センサ部2にLED7を設けることなく、体外に配置されるケース8に設けているので、LED7によって蛍光物質を加熱させずに済む。蛍光物質の蛍光特性は熱により変動するが、本実施形態によれば、蛍光特性を変動させることなく、精度よくグルコース濃度を測定することができるという利点がある。
【0030】
なお、本実施形態においては、LED7からの光を表皮Aの外部から生体内に入射させることとしたが、これに代えて、図4に示されるように、センサ部2の長手方向に沿って配置した光ファイバ15を介して伝送し、センサ部2の先端に配置した光ファイバ15の射出端15aから蛍光部材4に向けて射出することにしてもよい。このようにすることで、励起光の減衰を低減でき、消費電力の低減を図ることができる。
【0031】
また、本実施形態においては、図5および図6に示されるように、センサ部2の先端に、蛍光部材4に対して間質液の流動する隙間Cを空けて、LED7を配置してもよい。蛍光部材4に近接してLED7を配置すれば、LED7から発生する励起光の強度は低くてよいので、消費電力の問題および発熱の問題も解消することができる。また、蛍光部材4とLED7との間を流動する間質液によっても蛍光部材4の加熱を抑制することができる。さらに、センサ部2先端にLED7を配置することで、LED7に沿って光ファイバではなく配線16を配置すれば足り、センサ部2の細径化を図ることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、図7〜図9に示されるように、センサ部2の先端に蛍光部材4を備えていない生体成分測定装置20を構成してもよい。すなわち、図8に示されるように、センサ部2の先端の開口部2aに、該開口部2aを閉塞するように配置されたフィルタ6と、該フィルタ6内に配置されたフォトダイオード5とを備えている。
【0033】
このような生体成分測定装置20によりグルコース濃度を測定するには、生体内の測定部位、例えば、図7に示されるように、表皮A下の真皮領域Bに切開等によって予め蛍光物質を含む蛍光部材21を埋入しておき、センサ部2の先端の開口部2aが蛍光部材21内に配置されるようにセンサ部2を刺す。この状態で、LED7から励起光を発生し、蛍光部材21に向けて照射すると、蛍光部材21が、グルコース濃度に応じた強度の蛍光を発生する。
【0034】
この場合に、蛍光部材21の設置スペースが小径のセンサ部2の先端部に限られないので、センサ部2の周囲の真皮領域B内に大きな蛍光部材32を配置することができる。その結果、励起光により発生する蛍光量が多くなり、フォトダイオード5により、検出される蛍光量のS/N比を改善して検出精度を向上することができるという利点がある。
【0035】
また、受光素子としてフォトダイオード5を採用したが、他の任意の受光素子を採用してもよい。また、発光部としてLED7を採用したが、他の任意の発光部を採用してもよい。また、生体成分としてグルコースの濃度を測定する場合について説明したが、これに代えて、他の任意の生体成分を測定する生体成分測定装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1,20 生体成分測定装置
2 センサ部
3 体外装置(外部装置)
4 蛍光部材
5 フォトダイオード(受光素子)
6 フィルタ
7 LED(発光部)
15 光ファイバ
15a 射出端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に挿入されるセンサ部と、
該センサ部に近接して生体内に配置され生体内に存在する生体成分との相互作用によって励起光が照射されると生体成分の量に応じた蛍光を発する蛍光物質に向けて照射する励起光を発生する発光部とを備え、
前記センサ部に、前記蛍光物質からの蛍光を検出し電気信号に変換する受光素子が設けられている生体成分測定装置。
【請求項2】
前記蛍光物質を含む蛍光部材が、前記受光素子の受光面に隣接して配置されている請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記受光素子の受光面に、前記励起光を遮蔽し前記蛍光を透過するフィルタが配置されている請求項1または請求項2に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
前記センサ部が生体内に挿入された状態で体表に配置される外部装置を備え、
該外部装置の体表に接触させられる面に、前記発光部が配置されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
前記発光部が、前記蛍光部材に対して間隔をあけて前記センサ部に配置されている請求項2または請求項3に記載の生体成分測定装置。
【請求項6】
前記センサ部が生体内に挿入された状態で前記発光部が体外に配置され、該発光部から発せられた励起光を前記センサ部に導く光ファイバを備えている請求項1から請求項4のいずれかに記載の生体成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−75750(P2012−75750A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225183(P2010−225183)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】