説明

生体材料噴射ヘッド及び生体材料噴射装置

【課題】生体材料がむき出しのままノズルから噴射されてしまう。そのため、生体材料が損傷したり、生体材料に細菌が付着してしまったりする場合があるという課題がある。
【解決手段】第1の生体材料が充填される第1の圧力室63と、第2の生体材料が充填される第2の圧力室62と、第1の圧力室63の内部に圧力を発生させる第1の圧力発生部と、第2の圧力室62の内部に圧力を発生させる第2の圧力発生部と、第1の圧力発生部が発生させる圧力によって、第1の生体材料が流出される第1の流出口48と、第2の圧力発生部が発生させる圧力によって、第2の生体材料が流出される第2の流出口51と、第2の圧力室62の内部を貫通し、第1の圧力室63と第1の流出口48とを連結する流路を有する貫通部44と、を備え、第1の流出口48と第2の流出口51は、同心円状に配置され、第1の流出口48は、第2の流出口51の内側に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料噴射ヘッド及び生体材料噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の臓器や組織が病気やけがにより損傷し、外科もしくは内科的に治療が出来ない場合にはそれらの臓器や組織を移植する以外に機能を回復させるための選択肢がない場合が多い。しかし、必要な臓器や組織が必要な時に入手できることは稀である。この問題を解決するために、再生医学や組織工学などの分野では移植が必要な本人から細胞を採取し、体外で培養して組織化し、これを移植することを目的とした研究が行われている。例えば皮膚を培養して移植する治療などがすでに行われている。しかし、この方法では、細胞を平面的に幡種するため、皮膚の様々な内部構造は再生され難い。例えば光ピンセットを用いて細胞の位置を制御する方法により内部構造を再現できる可能性もあるが、移植に使用可能な大きさの組織を作るので、制御を必要とする細胞の数が膨大となり、皮膚の再生は困難と考えられる。
そこで、例えば特許文献1では、インクジェットプリンタに備えられたようなノズルから生体材料を噴射して、生体組織を構築する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2008−17798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、細胞がむき出しのままノズルから噴射されてしまう。そのため、噴射された細胞が着弾したときに細胞が損傷したり、細胞が噴射されて飛行中に乾燥したり、あるいは細胞に細菌が付着したりする場合があるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]第1の生体材料が充填される第1の圧力室と、第2の生体材料が充填される第2の圧力室と、前記第1の圧力室の内部に圧力を発生させる第1の圧力発生部と、前記第2の圧力室の内部に圧力を発生させる第2の圧力発生部と、前記第1の圧力発生部が発生させる圧力によって前記第1の生体材料が流出される第1の流出口と、前記第2の圧力発生部が発生させる圧力によって前記第2の生体材料が流出される第2の流出口と、前記第2の圧力室の内部を貫通し、前記第1の圧力室と前記第1の流出口とを連結する流路を有する貫通部と、を備え、前記第1の流出口と前記第2の流出口は、同心円状に配置され、前記第1の流出口は、前記第2の流出口の内側に配置されたことを特徴とする生体材料噴射ヘッド。
【0007】
この構成によれば、第2の生体材料が流出される第2の流出口と、第2の圧力室の内部を貫通し、第1の圧力室と第1の流出口とを連結する流路を有する貫通部と、を備え、第1の流出口と第2の流出口は、同心円状に配置され、第1の流出口は、第2の流出口の内側に配置される。
【0008】
これにより、第1の生体材料は、同心円状の内側に配置された第1の流出口から流出され、第2の生体材料は、同心円状の外側に配置された第2の流出口から流出される。このため、第1の生体材料は、第2の生体材料で覆われた状態で、ノズルから噴射される。従って、第1の生体材料は、むき出しのまま噴射されることがないので、噴射された第1の生体材料が着弾したときに第1の生体材料が損傷したり、第1の生体材料が噴射されて飛行中に乾燥したり、あるいは第1の生体材料に細菌が付着したりすることを抑制できる。
【0009】
[適用例2]更に、前記貫通部に前記第1の流出口を有するリング形状部が形成されたことを特徴とする上記生体材料噴射ヘッド。
【0010】
この構成によれば、同心円状に配置され、内側にあるリング形状部の外側が円形状であることから、外側に配置された第2の流出口の内側が円形状となる。従って、第2の流出口の内側から流出される第1の生体材料の全体を覆う可能性が高くなる。
【0011】
[適用例3]更に、前記貫通部を保持する保持部が備えられたことを特徴とする上記生体材料噴射ヘッド。
この構成によれば、貫通部が損傷することを抑制できる。
【0012】
[適用例4]上記生体材料噴射ヘッドを具備した生体材料噴射装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施例について図面に従って説明する。
(第1実施例)
本実施例では、火傷やけがなどによって損傷した指、手などの皮膚を、損傷した部位に向かって生体材料を噴射することによって再生する生体材料噴射装置について説明する。
【0014】
図1は、本実施例における生体材料噴射装置100の外観斜視図である。ベース103には2本のレール106,112が備えられる。スライドベース105は、レール106,112をD1に示す方向にスライドすることができる。スライドベース105には、キャリッジ移動用モータ115、従動ローラ107が備えられる。
【0015】
キャリッジ移動用モータ115によって駆動される駆動ローラ114と従動ローラ107には、ベルト108が備えられる。ベルト108にはキャリッジ111が固定される。キャリッジ111を貫通するガイド軸120は、レール106の図面右側でスライドベース105に備えられた支持部121と、レール112の図面左側でスライドベース105に備えられた支持部122によって固定される。
【0016】
キャリッジ移動用モータ115が回転することによって、ベルト108が回転し、キャリッジ111は、ガイド軸120に沿ってD2に示す方向に移動することができる。
【0017】
キャリッジ111には、幹細胞を含む第1の生体材料が収容された生体材料カートリッジ130と、コラーゲンを含む第2の生体材料が収容された生体材料カートリッジ131が搭載される。生体材料カートリッジ130,131は、キャリッジ111に搭載されたり、キャリッジ111から取り外されたりすることができる。
【0018】
スライドベース105には、ボールナット支持部116が固定される。ボールナット支持部116には、ボールナット117が備えられる。
【0019】
ボールナット117とボールネジ軸118とは噛み合って備えられる。スライドベース移動用モータ101によってボールネジ軸118が時計周りまたは反時計周りに回転されると、スライドベース105は、レール106,112に沿ってD1に示す方向に移動する。
【0020】
キャリッジ111の図面下方向には、生体材料噴射ヘッド(不図示)が備えられる。生体材料噴射ヘッドからは、生体材料カートリッジ130,131から供給された第1の生体材料と第2の生体材料とが図面下方向に噴射される。
【0021】
ベース103に備えられた制御ボックス104内には、スライドベース移動用モータ101、キャリッジ移動用モータ115を制御するためのモータ駆動回路(不図示)と、制御ケーブル102を介して、生体材料噴射ヘッドから生体材料を噴射するための制御を行うヘッド駆動回路(不図示)とが備えられる。
【0022】
制御ボックス104には、ボタン操作などによる操作部119、液晶パネルなどからなる表示部123が備えられる。操作部119から入力された数値に基づいて、モータ駆動回路の制御によって、キャリッジ111は方向D1の位置と方向D2の位置を指定することができる。
【0023】
ヘッド駆動回路によって、キャリッジ111に備えられた生体材料噴射ヘッドから生体材料が、テーブル109に置かれた指110の損傷した部位に向かって噴射される。キャリッジ111が方向D1と方向D2に移動しながら、生体材料噴射ヘッドから生体材料を噴射することができる。
【0024】
次に、本実施例における生体材料噴射ヘッドについて説明する。図2は、本実施例における生体材料噴射ヘッド1を分解したときの外観斜視図である。生体材料噴射ヘッド1は、リザーバ形成基板10,17、振動板20、流路形成基板40、ノズルプレート50を積層することにより形成される。
【0025】
本実施例におけるリザーバ形成基板10,17、振動板20、流路形成基板40、ノズルプレート50は、シリコン基板をフォトリソグラフ法によりマスクパターンを形成して、エッチングすることによってパターニングして形成される。
【0026】
振動板20には、導電性を有する上側電極24,27と下側電極23,28とが備えられた圧電素子22,30が搭載される。上側電極24,27は、導電性を有するリード電極25,26に導電線(不図示)によってそれぞれ接続される。リザーバ形成基板10,17には、駆動配線(不図示)によってリード電極25,26に接続された駆動IC12,14が搭載される。駆動IC12,14からの信号によって、圧電素子22,30が選択的に駆動される。
【0027】
リザーバ形成基板10,17には、空洞11,16、溝部13,15が形成される。振動板20には、空洞21,29が形成される。
【0028】
流路形成基板40には、空洞41,43,45,47が形成される。流路形成基板40には、空洞41と空洞43とを連結する溝部42及び空洞45と空洞47とを連結する溝部46が形成される。流路形成基板40には、空洞43に突き出すように形成された貫通部44が備えられる。
【0029】
ノズルプレート50には、第2の流出口51が形成される。ノズルプレート50における第2の流出口51と反対側の面には、ノズル開口(不図示)が形成される。
【0030】
リザーバ形成基板10,17、振動板20、流路形成基板40、ノズルプレート50を積層したとき、圧電素子22と空洞43、圧電素子30と空洞45、貫通部44と第2の流出口51とは、それぞれ対向する位置に配置される。
【0031】
図3は、図2のノズルプレート50に示した一点鎖線E1の位置における生体材料噴射ヘッド1の断面図である。圧電素子22、30は、リザーバ形成基板10,17に形成された溝部13、15にそれぞれ配置される。本実施例における圧電素子22,30は、図面上下方向に撓む方向に振動する。
【0032】
リザーバ60は、リザーバ形成基板10、振動板20、流路形成基板40を積層したときに形成され、図2の空洞11、21、41から形成される。同様に、リザーバ61は、リザーバ形成基板17、振動板20、流路形成基板40を積層したときに形成され、図2の空洞16、29、47から形成される。
【0033】
第1の圧力室63は、振動板20と流路形成基板40とノズルプレート50とを積層したときに、図2の空洞45によって形成される空間である。同様に、第2の圧力室62は、振動板20と流路形成基板40とノズルプレート50とを積層したときに、図2の空洞43によって形成される空間である。
【0034】
また、リザーバ形成基板10、振動板20、流路形成基板40を積層したときに、図2の溝部46によって、リザーバ61と第1の圧力室63とを連結する供給路(不図示)が形成される。同様に、図2の溝部42によって、リザーバ60と第2の圧力室62とを連結する供給路(不図示)が形成される。
【0035】
第1の圧力室63と第2の圧力室62との間には、貫通部44が形成される。図4は貫通部44の外観斜視図である。貫通部44には、円筒状の空洞である第1の流出口48が形成され、第1の圧力室63と第1の流出口48とを流路として連結する溝部441が形成される。
【0036】
第1の流出口48と、第2の流出口51とは、中心軸Pを中心として同心円状に配置される。第1の流出口48は、第2の流出口51の内側に配置される。
【0037】
貫通部44における第1の流出口48が形成された厚さL1は、流路形成基板40の厚さL2と同じである。貫通部44における溝部441が形成された厚さL3は、厚さL1より短い。従って、溝部441が形成された貫通部44とノズルプレート50との隙間L4が形成される(図3のL4参照)。
【0038】
貫通部44の幅L5は、ノズルプレート50に形成された第2の流出51の直径D1(図3参照)より短い。また、幅L5と直角方向で第1の流出口48が形成された外縁における図3に示す幅L6は、第2の流出口51の直径D1より短い。従って、貫通部44と第2の流出口51との間には、図3、図4に示すように隙間が形成される。
【0039】
本実施例における第1の圧力発生部は、駆動IC14、上側電極27、下側電極28、リード電極26、圧電素子30とから構成される。圧電素子30が駆動IC14によって駆動されると、圧電素子30が振動板20を振動させることにより、第1の圧力室63の体積が変化して内部に圧力を発生させる。
【0040】
すると、B1に示すように、生体材料カートリッジ130から供給された第1の生体材料が、リザーバ61を流れる。第1の生体材料は、図2の溝部46によって形成された供給路を流れ、第1の圧力室63に流れる。B2、B3に示すように、第1の生体材料は、第1の圧力室63から貫通部44に形成された溝部441を流れ、第1の流出口48から流出される。
【0041】
本実施例における第2の圧力発生部は、駆動IC12、上側電極24、下側電極23、リード電極25、圧電素子22とから構成される。圧電素子22が駆動IC12によって駆動されると、圧電素子22が振動板20を振動させることにより、第2の圧力室62の体積が変化して内部に圧力を発生させる。
【0042】
すると、A1に示すように、生体材料カートリッジ131から供給された第2の生体材料が、リザーバ60を流れる。第2の生体材料は、図2の溝部42によって形成された供給路を流れ、第2の圧力室62に流れる。A2、A3に示すように、第2の生体材料は、第2の流出口51から流出される。
【0043】
従って、第1の流出口48から流出された第1の生体材料は、第2の流出口51から流出された第2の生体材料に覆われた状態で、ノズル開口53から噴射される。
【0044】
以上、本実施例で説明した生体材料噴射ヘッド1は、幹細胞を含む第1の生体材料が充填される第1の圧力室63と、コラーゲンを含む第2の生体材料が充填される第2の圧力室62と、第1の圧力室63の内部に圧力を発生させる第1の圧力発生部と、第2の圧力室62の内部に圧力を発生させる第2の圧力発生部と、第1の圧力発生部が発生させる圧力によって第1の生体材料が流出される第1の流出口48と、第2の圧力発生部が発生させる圧力によって第2の生体材料が流出される第2の流出口51と、第2の圧力室62の内部を貫通し、第1の圧力室63と第1の流出口48とを連結する流路を有する貫通部44と、を備え、第1の流出口48と第2の流出口51は、同心円状に配置され、第1の流出口48は、第2の流出口51の内側に配置される。
【0045】
これにより、第1の生体材料は、同心円状の内側に配置された第1の流出口48から流出され、第2の生体材料は、同心円状の外側に配置された第2の流出口51から流出される。このため、第1の生体材料は、第2の生体材料で覆われた状態で、ノズル開口53から噴射される。従って、第1の生体材料は、むき出しのまま噴射されることがないので、噴射された第1の生体材料が着弾したときに第1の生体材料が損傷したり、第1の生体材料が噴射されて飛行中に乾燥したり、あるいは第1の生体材料に細菌が付着したりすることを抑制できる。
【0046】
(第2実施例)
第2実施例では、貫通部にリング形状部を形成した場合について説明する。図5は、リング形状部を形成した貫通部44aの外観斜視図である。第2実施例における生体材料噴射ヘッドは、第1実施例で説明した生体材料噴射ヘッド1に備えられた貫通部44を貫通部44aに置き換えたもので、その他の構成は、第1実施例と同じである。
【0047】
図5に示すように、貫通部44aには、円筒状の空洞である第1の流出口48aと第1の流出口48aの外縁が円形状であるリング形状部が形成される。貫通部44aには、第1の圧力室63と第1の流出口48aとを流路として連結する溝部441aが形成される。
【0048】
第1実施例で説明したように、貫通部44aにおける図面上下方向の厚さL1は、流路形成基板40の図面上下方向の厚さL2と同じである。溝部441aが形成されている貫通部44aと、ノズルプレート50との隙間L4が形成される。
【0049】
貫通部44aのリング形状部の外縁の直径D2は、ノズルプレート50に形成された第2の流出口51の直径D1(図3参照)より短い。従って、図5に示すように、貫通部44aと第2の流出口51との間には隙間が形成される。
【0050】
以上、本実施例で説明した生体材料噴射ヘッドは、貫通部44aに第1の流出口48aを有するリング形状部が形成される。
【0051】
このようにすれば、同心円状に配置され、第2の流出口51の内側にある第1の流出口48aを有するリング形状部の外側49が円形状であることから、外側に配置された第2の流出口51の内側が円形状となる。従って、第2の流出口51の内側から流出される第1の生体材料の全体を覆う可能性が高くなる。
【0052】
(第3実施例)
第3実施例では、貫通部を保持する保持部を備えた生体材料噴射ヘッドについて説明する。図6は、第3実施例における生体材料噴射ヘッド1bを分解したときの外観斜視図である。
【0053】
第3実施例における生体材料噴射ヘッド1bは、第1実施例における生体材料噴射ヘッド1の図2のノズルプレート50を、図6のノズルプレート50bに置き換えたものであり、その他の構成は生体材料噴射ヘッド1と同じである。
【0054】
図6に示すように、ノズルプレート50bの第2の流出口51bには、保持部52が形成される。
【0055】
図7(a)は、ノズルプレート50bを流路形成基板40側から見た図である。図7(b)は、図7(a)の一点鎖線におけるノズルプレート50bの断面図である。図7(c)は、ノズルプレート50bを流路形成基板40の反対側から見た図である。ノズルプレート50bの第2の流出口51bには、保持部52が形成される。ノズルプレート50bの第2の流出口51bの反対側には、ノズル開口53bが形成される。
【0056】
図8は、本実施例における図6のノズルプレート50bにおける一点鎖線E2における位置での生体材料噴射ヘッド1bの断面図である。貫通部44aは、保持部52と接着剤などにより接合される。従って、貫通部44aは保持部52によって保持される。
【0057】
図9は、図6のノズルプレート50bの第2の流出口51bに形成された保持部52を説明する図で、流路形成基板40側から見た図である。保持部52は、第2の流出口51bの中央に形成された円盤状部材520、円盤状部材520を支持する支持部521,522,523から構成される。円盤状部材520には、直径D3の円筒状の空洞R1が形成され、直径D3の長さは、貫通部44aに形成された第1の流出口48a(図5参照)の直径と同じである。
【0058】
円盤状部材520の周囲には、支持部521,522,523によって仕切られた空間R2,R3,R4が形成される。
【0059】
図10は、貫通部44aと保持部52を第1の生体材料と第2の生体材料が流れる様子を説明する図である。生体材料カートリッジ130から供給された第1の生体材料は、図8のB1に示すように、リザーバ61、図6の溝部46によって形成された供給路を流れる。図8、図10のB2、B3に示すように、第1の生体材料は、第1の圧力室63を流れ、貫通部44aに形成された溝部441aを流れて、第1の流出口48a、保持部52に形成された図9の空洞R1から流出される。
【0060】
生体材料カートリッジ131から供給された第2の生体材料は、図8のA1に示すように、リザーバ60、図6の溝部42によって形成された供給路を流れる。図8のA2に示すように、第2の生体材料は、第2の圧力室62を流れる。そして、図10の矢印A5、A6に示す第2の生体材料は、空間R2、R3からそれぞれ流出される。矢印A7、A8に示す第2の生体材料は、空間R4から流出される。
【0061】
以上、本実施例で説明した生体材料噴射ヘッド1bは、リング形状部を保持する保持部52が備えられる。このようにすれば、第1の生体材料と第2の生体材料が噴射されるときに、貫通部44aが振動することを抑制できる。このため、貫通部44aが損傷することを抑制できる。また、これにより、振動により、噴射される第1の生体材料や第2の生体材料の量が変化したり、噴射速度が変化したりすることを抑制できる。
【0062】
(第4実施例)
第4実施例では、貫通部を貫通する貫通孔によって流路を形成した生体材料噴射ヘッドについて説明する。
【0063】
図11は、第4実施例における貫通部44cの外観斜視図である。貫通部44cには、貫通孔441cが形成される。これにより、貫通孔441を流路として、第1の圧力室63と第1の流出口48cとを連結することができる。
【0064】
このようにすれば、貫通部と流路形成基板との接合面が劣化することを抑制することができる。
【0065】
(変形例)
第1実施例から第4実施例では、第2の圧力室を貫通する貫通部について説明したが、第2の圧力室に連結された流路内を貫通する貫通部を設けてもよい。図12は、第2の圧力室に連結された流路内を貫通する貫通部を設けた生体材料噴射ヘッド1dの断面図である。
【0066】
生体材料噴射ヘッド1dは、流路形成基板40とノズルプレート50dの間に、シリコン基板から形成された1枚の基板70が設けられる。基板70には、第1の圧力室63のノズル開口53d側に連結される流路72、第2の圧力室62のノズル開口53d側に連結される流路71が設けられる。
【0067】
流路72内の圧力は、第1の圧力室63の圧力と同じになり、流路71内の圧力は、第2の圧力室62の圧力と同じになる。
【0068】
更に、基板70には、第1の流出口48dを有し、流路71の内部を貫通する貫通部44dが形成される。第1の流出口48dが、基板70に形成された第2の流出口51dと同心円状に配置される。第1の流出口48dは、第2の流出口51dの内側に配置される。
【0069】
第1実施例から第4実施例、変形例で説明した生体材料噴射ヘッドは、圧電素子が撓むことで振動する方式であったが、圧電素子を形成するために積層する方向と平行な方向に伸縮する方式の圧電素子などを用いてもよい。あるいは、静電気を用いて圧力室に形成された振動板を振動させる方式であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】生体材料噴射装置の外観斜視図。
【図2】第1実施例における生体材料噴射ヘッドを分解したときの外観斜視図。
【図3】生体材料噴射ヘッドの断面図。
【図4】貫通部の外観斜視図。
【図5】リング形状部を形成した貫通部の外観斜視図。
【図6】第3実施例における生体材料噴射ヘッドを分解したときの外観斜視図。
【図7】(a)は、ノズルプレートを流路形成基板側から見た図、(b)は、ノズルプレートの断面図、(c)は、ノズルプレートを流路形成基板の反対側から見た図。
【図8】第3実施例における生体材料噴射ヘッドの断面図。
【図9】第2の流出口に形成された保持部を説明する図。
【図10】貫通部と保持部を流れる第1の生体材料と第2の生体材料が流れる様子を説明する図。
【図11】第4実施例における貫通部の外観斜視図。
【図12】第2の圧力室に連結された流路内を貫通する貫通部を設けた生体材料噴射ヘッドの断面図。
【符号の説明】
【0071】
1,1b…生体材料噴射ヘッド、12,14…駆動IC、22,30…圧電素子、23,28…下側電極、24,27…上側電極、25,26…リード電極、44,44a…貫通部、48,48a…第1の流出口、51…第2の流出口、52…保持部、62…第2の圧力室、63…第1の圧力室。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の生体材料が充填される第1の圧力室と、
第2の生体材料が充填される第2の圧力室と、
前記第1の圧力室の内部に圧力を発生させる第1の圧力発生部と、
前記第2の圧力室の内部に圧力を発生させる第2の圧力発生部と、
前記第1の圧力発生部が発生させる圧力によって前記第1の生体材料が流出される第1の流出口と、
前記第2の圧力発生部が発生させる圧力によって前記第2の生体材料が流出される第2の流出口と、
前記第2の圧力室の内部を貫通し、前記第1の圧力室と前記第1の流出口とを連結する流路を有する貫通部と、を備え、
前記第1の流出口と前記第2の流出口は、同心円状に配置され、前記第1の流出口は、前記第2の流出口の内側に配置されたことを特徴とする生体材料噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載された生体材料噴射ヘッドであって、
更に、前記貫通部に前記第1の流出口を有するリング形状部が形成されたことを特徴とする生体材料噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された生体材料噴射ヘッドであって、
更に、前記貫通部を保持する保持部が備えられたことを特徴とする生体材料噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に生体材料噴射ヘッドを具備したことを特徴とする生体材料噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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