説明

生体温熱冷却装置

【課題】発熱リスクを伴わずに生体に設定した表面温度で接触的、持続的に長時間に加えることで局所の生体深部の加温精度が高められ、温熱療法の療法確立と応用が広がる。接触的な温熱が即座に冷却に切り替えられ、その冷却が接触的、持続的に任意の設定時間で加えられることで精度の高いアイシングまたは温熱と冷却を繰り返すコントラストセラピーが可能となる。
【解決手段】本発明の生体温冷装置は生体に接触し生体を一定表面温度で設定時間を持続的に近赤外線LEDにより深部を温熱する。深部温熱と同時に生体表面をペルチェ素子により電子的に冷却する。あるいは深部温熱と表面冷却が各々設定された時間で交互に温熱と冷却を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体に接触して近赤外線温熱、ペルチェ素子により電子冷却を生体に加えることができる生体への温熱、冷却治療、理学療法、または健康美容技術に関するものである。
【0002】
【特許文献1】特許開平2009−207605号公報
【特許文献2】実用新案公開平6−459公報
【背景技術】
【0003】
近年、LED開発の飛躍的な発展により従来ランプまたはレーザなどで行われていた光線による温熱は近赤外線を発生するLEDで可能となった。近赤外線の波長は光の中で生体への最大の浸透性をもち、また静脈認証などに知られるように血管に吸収される。血管または筋肉の平滑筋に吸収されることも科学的に検証されている。このような理由で近赤外線を利用した温熱治療機器は常識的となり、LEDから発生する近赤外線を光学的に集光して加温効率を高めたり(特許開平2009−207605)、LEDから発生する近赤外線の光を遠赤外線に変換する(実用新案公開平6−459)などの応用治療機器が存在する。目覚ましいLED技術の発展は数W以上の高出力近赤外線LEDの市販化となり波長、出力でランプ、レーザに十分置き換えられるレベルになった。しかしながら効率の良いLEDといえども高出力化は大きな発熱も伴う。LED光の生体への非接触照射ではその発熱は問題ならずいわゆるランプタイプの治療機器は諸外国においてすでに市販化されている。温熱治療に対局する冷却療法は伝統的には温罨ぽうに対する冷罨ぽうとして知られ、スポーツ医学などでは温熱シップ、冷水アイシングなどとして普及している。温水、冷水を組み合わせた療法は諸外国では理学療法の一つであるコントラストセラピーとしても知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDの発生波長、出力、コストなどに飛躍的な発展が進んでいる。レーザなどに比べて生体浸透性の高い近赤外線LEDは市販されている。現在近赤外線LED温熱器として、生体に接触して照射してLEDの発熱が問題となるほどの高出力のものはなく発生出力の問題から生体への応用は限られる。ランプ照射のような非接触的なLEDによる近赤外線温熱では照射時間が長くなると生体表面温度が上昇し連続的な長時間の照射加温は困難である。照射部位への冷気吹き付けなどで冷却は可能であるが温度制御が正確に欠くこと、生体の乾燥をともない生理的に良い治療環境とは点で不十分である。また従来の冷水、冷タオル、アイスパックなどによる冷却治療は生体に接触し冷却はできるものの、生体表面温度を一定に持続的に保持することを保証するものではない。諸外国で常識的な温水、冷水により一定時間毎に生体に温熱、冷却を加えるコントラストセラピーも同様であり、一定の温熱温度、冷却温度それらを保持する時間の精度に欠ける。結果的に療法の効果測定と療法の術式の確立に困難をきたしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するための第一の発明は、近赤外線LED温熱源、ペルチェ素子を冷却源として透光素材を介して生体に接触し生体を近赤外線光温熱、ペルチェ素子電子冷却する装置である。第2の発明は温熱、冷却の温度制御するための温度センサーが透光材中あるいは生体と接する透光材表面に設置され、発熱するLED素子の冷却を伴い近赤外線LED温熱またはペルチェ素子電子冷却単独で、あるいは近赤外線LED温熱とペルチェ素子電子冷却が同時に、あるいは各々設定された時間で交互に近赤外線LED温熱とペルチェ素子電子冷却などの制御ができるように温度と時間の制御器を有する装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明品は高出力LED素子からの発熱による生体への火傷などのリスクを伴わずに高出力の近赤外線照射し、生体表面に近似したセンサー温度の設定値を持続的に保持する生体への温熱が可能である。結果的に局所の生体深部の加温精度が高められ、温熱療法の療法確立と応用が広がる。またペルチェ素子による電子冷却に切り替えられ近赤外線温熱部位を即座に冷却することが可能である。任意の設定時間で設定温度が持続的に加えられることで精度の高いアイシングまたは温熱と冷却の繰り返しを行うコントラストセラピーが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の生体に対する近赤外線LED温熱、電子冷却装置は1の熱伝導性のよい100の金属プリント基板上にパターン配置された複数の近赤外線LED素子層の発熱側に良好な熱伝導を保つように5の熱伝導性接着剤またはグリースを介してなどで2のペルチェ素子の104の冷却側に接触している。ペルチェ素子の103の発熱側は4の冷却チャンバーで冷却される。冷却チャンバーは101のクーラント入口と102のクーラント出口を経由して循環する液体クーラントにより徐熱される。液体クーラントはファン‐ラジエータで冷却される。LED素子層で発生した近赤外光は3の透光材を介して6の生体に接触照射される。生体に接触する透光材層のセンターの表面あるいは表面に近い透光材中に設置された7の温度センサーは11の温度・時間の制御器に接続されている。8の近赤外線LED温熱とペルチェ素子電子冷却装置は9の温度・時間制御器、9のLED電源と10のペルチェ電源に電気的に接続されている。7の温度・時間制御器はセンサーで測定した温度を設定した温度に制御すべくLED電源とペルチェ電源のON/OFFまたは出力レベルを制御し、設定温度と設定温度を保持する時間を制御する。
【0008】
<他の実施形態>
実施の最良の形態で示された装置が複数組み合わされた装置は一度に広範囲の近赤外線LED温熱と電子冷却が可能である。また実施の最良の形態で示された装置でLED出力を数100W、電子冷却を数KWとした大型の装置も実施可能である。
【実施例】
【0009】
1個あたり0.5から1Wの光出力で波長840nmの近赤外線LED素子を複数が熱伝導性のよい金属プリント基板上にパターン配置されている。ペルチェ素子はLED素子の総合出力に応じて10−100W程度のペルチェ素子となる。ペルチェ素子は気体−液体の熱交換器で冷却されたクーラントがペルチェ素子の発熱側に熱伝導性グリースを介して接触している冷却チャンバーに循環する。金属基板には熱伝導性の高いサファイア透光材が熱伝導性グリースを介して接触している。または金属基板に断熱性が少ない透光性シリコンゴムが形成されている。近赤外線光を反射する白色ウレタン樹脂コーティングされた1−2mm角程度の白金温度センサーがサファイアの場合は生体に接する表面にエポキシ樹脂などで設置されている。透光材がシリコンゴムの場合は生体に接する表面近くのゴム内に設置されている。生体深部の温度制御は不可能であるが近赤外線が照射される生体の表面温度を生体表面温度に近い30−40度前後に設定して1ヶ所当たり数分照射する。生体冷却はセンサー設定温度を2−5度C程度で1ヶ所当たり数分保持する。近赤外線を照射しないで2−5度Cの冷却と近赤外線を照射して設定温度を10−40度で、冷却30秒、近赤外線照射30秒を繰り返すコントラストセラピーのモードなどで施術される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】近赤外線LEDを生体に対する温熱源、ペルチェ素子を生体とLED素子に対する冷却源として熱伝導性の高い透光素材あるいは断熱性の低い柔軟な透光素材透光材を介して生体に接触し生体を近赤外線光により温熱、ペルチェ素子により電子冷却する装置の断面図でありLED素子の発熱面は接着性伝熱剤を介してペルチェ素子の冷却サイドに接している。ペルチェ素子の発熱側はヒートシンク、液体または気体流体による冷却が行われる。
【図2】近赤外線LED温熱とペルチェ素子電子冷却装置の外観図である。
【図3】LED素子の配置パターンの一例である。センターに7の温度センサーが配置される。
【図4】近赤外線LED温熱とペルチェ素子電子冷却装置と温度・時間制御器、LED電源、ペルチェ電源との電気的接続概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線LEDを生体に対する温熱源、ペルチェ素子を生体とLED素子発熱防止の冷却源として熱伝導性の高い透光素材あるいは断熱性の低い柔軟な透光素材透光材を介して生体に接触し近赤外線温熱、ペルチェ素子により電子冷却する装置
【請求項2】
上記請求項1の装置において温熱、冷却の温度制御をするための温度センサーが透光材中あるいは生体と接する透光材表面に設置され、近赤外線LEDとペルチェ素子のON/OFF、投入電力レベルを調整し、生体表面温度に近似するセンサー温度の制御とその温度の保持時間を制御する時間制御器、制御の各種、光温熱、電子冷却、電子冷却しながらの近赤外線温熱、あるいは各々設定された時間で交互に近赤外線温熱とペルチェ素子電子冷却モードプログラムが付加された装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−152243(P2011−152243A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14884(P2010−14884)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(304042009)ナノオプテック有限会社 (6)
【Fターム(参考)】