説明

生体測定装置

【課題】 被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを得た上で、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを同時に行うことにより、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができる生体測定装置の提供。
【解決手段】 頭皮表面画像24a及び/又は脳表面画像24bを表示する3次元形態画像表示制御部33と、受光量情報が得られたプローブ測定関連位置を示すプローブ測定関連位置データを作成するプローブ測定関連位置データ作成部35と、電位情報が得られた電極測定関連位置を示す電極測定関連位置データを作成する電極測定関連位置データ作成部36と、プローブ測定関連位置データ及び電極測定関連位置データに基づいて、頭皮表面画像24a及び/又は脳表面画像24b中に、受光量情報と電位情報とを重畳して表示する脳活動画像表示制御部37とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非侵襲で脳活動を測定する生体測定装置に関する。特に生体の組織が正常であるか否かを診断するための酸素モニタや脳機能イメージング装置等として使用することができる生体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘモグロビン濃度が生体内部の酸素代謝機能に対応することを利用することにより、生体内部を簡便に非侵襲で計測する光生体計測方法が知られている。このような光生体計測方法では、ヘモグロビン濃度は、可視光から近赤外領域までの波長の光を生体に照射することにより、生体を透過して得られる光の量から求められる。さらに、ヘモグロビンは、酸素と結合してオキシヘモグロビンとなり、一方、酸素と離れてデオキシヘモグロビンとなる。脳内では、血流再配分作用によって活性化している部位には酸素供給が行われ、酸素と結合したオキシヘモグロビン濃度が増加することも知られている。よって、オキシヘモグロビン濃度を計測することにより、脳活動の観察に応用することができる。オキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンとは、可視光から近赤外領域にかけて異なる分光吸収スペクトル特性を有しているので、異なる2波長(例えば、780nmと850nm)の近赤外光を用いてオキシヘモグロビン濃度とデオキシヘモグロビン濃度とをそれぞれ求めることができる。
【0003】
そこで、複数の送光プローブと複数の受光プローブとを有するホルダを備える光計測装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。光計測装置では、被検体の頭皮表面上に配置した送光プローブにより、脳に近赤外光を照射するとともに、頭皮表面上に配置した受光プローブにより、脳から放出された近赤外光の光量を検出する。このようにして送光プローブと受光プローブとを用いることにより、脳の測定部位のオキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度を求める。
ここで、送光プローブと受光プローブとのプローブ間隔(チャンネル)と、脳の測定部位との関係について説明する。図7(a)は、一対の送光プローブ及び受光プローブと、脳の測定部位との関係を示す断面図であり、図7(b)は、図7(a)の平面図である。
送光プローブ12が被検体の頭皮表面の送光点Tに押し当てられるとともに、受光プローブ13が被検体の頭皮表面の受光点Rに押し当てられる。そして、送光プローブ12から光を照射させるとともに、受光プローブ13に頭皮表面から放出される光を検出させる。このとき、光は、頭皮表面の送光点Tから照射された光のうちで、バナナ形状(測定領域)を通過した光が、頭皮表面の受光点Rに到達する。これにより、測定領域の中でも、特に送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線Lの中点Mから、送光点Tと受光点Rとを被検体の頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の距離の半分の深さL/2である被検体の部位Sの受光量情報(オキシヘモグロビン濃度、デオキシヘモグロビン濃度、さらにはこれらから算出される全ヘモグロビン濃度)が得られる。
【0004】
また、複数の送光プローブと複数の受光プローブとを所定の配列で被検体の頭皮表面に密着させるために、ホルダが使用されている。ホルダには貫通孔が複数個設けられ、送光プローブと受光プローブとがそれらの貫通孔に挿入されることによって、チャンネルが一定となり、頭皮表面から特定の深度となる複数箇所の脳部位から受光量情報が得られるようになっている。
図8は、ホルダにおける10個の送光プローブと10個の受光プローブとの位置関係を示す平面図である。ホルダ51において送光プローブ12と受光プローブ13とが行方向及び列方向に交互となるように正方格子状に配置されている。ホルダ51は、頭皮から脳までの距離が考慮されて設計されているため、被検体が成人であれば、送光プローブ12と受光プローブ13との間の距離(チャンネル)を30mmとしたものが用いられている。チャンネルが30mmである場合には、上述したようにチャンネルの中点からの深度15mm〜20mmの受光量情報が得られると考えられている。すなわち、頭皮表面から深度15mm〜20mmの位置は脳表部位にほぼ対応し、脳活動に関した受光量情報が得られる。
【0005】
このようなホルダ51では、1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させ、次に、他の1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させるように順次、送光プローブ12に光を送光させることにより、合計31箇所の脳表部位からの受光量情報を得ることができる。なお、送光プローブ12から照射された光は、隣接する受光プローブ13以外の離れた受光プローブ13でも検出されるが、ここでは説明を簡単にするため、隣接する受光プローブ13のみで検出されることとする。
そして、合計31箇所の脳表部位からの受光量情報を、数値とカラーとの対応関係を示すカラーテーブルに基づいて、カラーマッピングで表示している。このとき、脳の解剖学的構造には個人差があり、脳の形状が各人で違っているので、医師や検査技師等は、脳のどの部位から受光量情報を得たかを認識するために、核磁気共鳴画像診断装置(以下、MRIと略す)等から被検体の脳表面を示す3次元形態画像データを得ることにより、脳表面画像を表示して、脳表面画像中に受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示することも行われている。
【0006】
一方、被検体の頭皮表面の電位が神経細胞やシナプスの電気活動の集積・総和に対応することを利用することにより、生体内部を簡便に非侵襲で計測する脳波計測方法も知られている。
そこで、複数の脳波測定電極と1個の基準電極とを有するホルダを備える脳波計が開発されている。脳波計では、被検体の頭皮表面上に配置した脳波測定電極と、被検体の耳等に配置した基準電極とにより、電位差(電位情報)を検出する。
図9は、ホルダにおける12個の脳波測定電極と1個の基準電極との位置関係を示す平面図である。12個の脳波測定電極14が3×4の正方格子状に配置されている。一の脳波測定電極14と他の脳波測定電極14との間の距離は、30mmである。
このようなホルダ61では、12個の脳波測定電極14と基準電極15との電位差を同時にそれぞれ検出することにより、合計12箇所の頭皮表面部位の電位情報を得ることができる。そして、合計12箇所の頭皮表面部位の電位情報を等電位線図で表示している。
【0007】
ところで、上述したような光生体測定装置では、空間分解能が高い(例えば、20mm間隔となる)ので高次脳機能を知る上で非常に有効な手法であるが、順次、送光プローブ12に光を送光させてから合計31箇所の脳表部位からの受光量情報を得るため、時間分解能が低い(例えば、1.5秒間隔となる)という欠点がある。
一方、上述したような脳波計では、12個の脳波測定電極14と基準電極15との電位差を同時に検出することができるので時間分解能が高いが、電位情報には生体内部(低導電特性の頭蓋骨等)に起因する背景雑音やアーチファクトが混入するため、明瞭性を欠く上に、脳波測定電極14の配置数に制限があるため、空間分解能が低い(例えば、30mm間隔となる)という欠点がある。
したがって、測定の目的等に応じて、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とが使い分けられていた。
【特許文献1】特開2001−337033号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを使い分けているので、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができなかった。
そこで、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを同時に行うことも考えられるが、脳の解剖学的構造には個人差があり、脳の形状が各人で違っているため、光生体測定装置によるヘモグロビン濃度と、脳波計による神経細胞やシナプスの電気活動の集積・総和とを充分に融合することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件発明者らは、上記課題を解決するために、光生体測定装置によるヘモグロビン濃度と、脳波計による神経細胞やシナプスの電気活動の集積・総和とを充分に融合することについて検討を行った。そこで、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを得た上で、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを同時に行うことで、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができることを見出した。
すなわち、本発明の生体測定装置は、被検体の頭皮表面上に配置される送光プローブと受光プローブと脳波測定電極と、基準電極とを有するホルダと、前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する受光量情報を得る送受光部制御部と、前記脳波測定電極と基準電極との電位差を検出するように制御することで、脳活動に関する電位情報を得る電極制御部とを備える生体測定装置であって、前記被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを取得して、表示装置に頭皮表面画像及び/又は脳表面画像を表示する3次元形態画像表示制御部と、前記頭皮表面上における送光プローブ及び受光プローブの配置位置を示すプローブ配置位置データを取得して、当該プローブ配置位置データに基づいて、前記受光量情報が得られたプローブ測定関連位置を示すプローブ測定関連位置データを作成するプローブ測定関連位置データ作成部と、前記頭皮表面上における脳波測定電極の配置位置を示す電極配置位置データを取得して、当該電極配置位置データに基づいて、前記電位情報が得られた電極測定関連位置を示す電極測定関連位置データを作成する電極測定関連位置データ作成部と、前記頭皮表面画像及び/又は脳表面画像中に、前記プローブ測定関連位置データに基づいて、前記受光量情報を重畳して表示するとともに、前記電極測定関連位置データに基づいて、前記電位情報を重畳して表示する脳活動画像表示制御部とを備えるようにしている。
【0010】
ここで、「被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データ」とは、核磁気共鳴画像診断装置(以下、MRIと略す)やCT画像等により作成された被検体の映像データから、頭皮表面と脳表面とを示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データのことをいう(図4参照)。
本発明の生体測定装置によれば、3次元形態画像表示制御部は、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを取得する。そして、3次元形態画像表示制御部は、3次元形態画像データに基づいて、頭皮表面画像又は脳表面画像を表示する。これにより、医師や検査技師等は、脳の解剖学的構造に個人差があるが、計測しようとする被検体自身の頭皮表面又は脳表面を正確に認識することができるようになる。
【0011】
また、医師や検査技師等は、ホルダを被検体の頭皮表面上に配置する。このとき、送光プローブと受光プローブと脳波測定電極とが被検体の頭皮表面上に配置されることになる。
プローブ測定関連位置データ作成部は、頭皮表面上における送光プローブ及び受光プローブの配置位置を示すプローブ配置位置データを取得して、プローブ配置位置データに基づいて、受光量情報が得られたプローブ測定関連位置を示すプローブ測定関連位置データを作成する。例えば、医師や検査技師等が、表示装置に表示された頭皮表面画像中の送光プローブ及び受光プローブの配置位置の対応位置を入力装置等で指定することで、プローブ測定関連位置データ作成部は、プローブ配置位置データを取得する。そして、プローブ測定関連位置データ作成部は、プローブ測定関連位置として、脳表面上において、送光プローブの配置位置と受光プローブの配置位置とを結んだ線の垂直二等分線と交差する位置を算出する。
また、電極測定関連位置データ作成部は、頭皮表面上における脳波測定電極の配置位置を示す電極配置位置データを取得して、電極配置位置データに基づいて、電位情報が得られた電極測定関連位置を示す電極測定関連位置データを作成する。例えば、医師や検査技師等が、表示装置に表示された頭皮表面画像中の脳波測定電極の配置位置の対応位置を入力装置等で指定することで、電極測定関連位置データ作成部は、電極配置位置データを取得する。そして、電極測定関連位置データ作成部は、電極測定関連位置として、頭皮表面上において、脳波測定電極の配置位置を算出する。
【0012】
次に、送受光部制御部は、送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する受光量情報を得る。また、電極制御部は、脳波測定電極と基準電極との電位差を検出するように制御することで、脳活動に関する電位情報を得る。
脳活動画像表示制御部は、頭皮表面画像及び/又は脳表面画像中に、プローブ測定関連位置データに基づいて、受光量情報を重畳して表示するとともに、電極測定関連位置データに基づいて、電位情報を重畳して表示する。例えば、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、脳表面画像中に受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、頭皮表面画像中に電位情報を等電位線図で重畳して表示する。これにより、医師や検査技師等は、脳の解剖学的構造に個人差があるが、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを融合することができ、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の生体測定装置によれば、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを得た上で、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを同時に行うことにより、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができる。
【0014】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の生体測定装置は、前記ホルダは、複数の送光プローブと複数の受光プローブと複数の脳波測定電極と1個の基準電極とを有するようにしてもよい。
本発明の生体測定装置によれば、被検体の脳表面全面に関して、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができる。
また、本発明の生体測定装置は、前記プローブ測定関連位置は、前記頭皮表面上において、送光プローブの配置位置と受光プローブの配置位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置とするか、或いは、前記脳表面上において、送光プローブの配置位置と受光プローブの配置位置とを結んだ線の垂直二等分線と交差する位置とするようにしてもよい。
また、本発明の生体測定装置は、前記電極測定関連位置は、前記頭皮表面上において、脳波測定電極の配置位置とするか、或いは、前記脳表面上において、前記頭皮表面における脳波測定電極の配置位置からの垂線と交差する位置とするようにしてもよい。
【0015】
そして、本発明の生体測定装置は、前記脳活動画像表示制御部は、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、前記受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、前記電位情報を等電位線図で重畳して表示するようにしてもよい。
本発明の生体測定装置によれば、カラーマッピングと等電位線図とで表示するので、医師や検査技師等は、正確に区別することができる。
さらに、本発明の生体測定装置は、前記3次元形態画像表示制御部は、表示装置に頭皮表面画像と脳表面画像とを一体的に表示し、前記脳活動画像表示制御部は、前記頭皮表面画像又は脳表面画像中に、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、前記受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、前記受光量情報がカラーマッピングで表示された画像と異なる画像中に、数値とカラーとの対応関係を示す第二カラーテーブルに基づいて、前記電位情報をカラーマッピングで重畳して表示するようにしてもよい。
本発明の生体測定装置によれば、頭皮表面画像と脳表面画像とに表示するので、医師や検査技師等は、正確に区別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である生体測定装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、ホルダにおける10個の送光プローブと10個の受光プローブと12個の脳波測定電極14と1個の基準電極15との位置関係を示す平面図である。
生体測定装置1は、被検体の頭皮表面上に配置されるホルダ11と、発光部2と、光検出部3と、生体測定装置1全体の制御を行う制御部(コンピュータ)20と、MRI6とにより構成される。
【0018】
ホルダ11は、10個の送光プローブ12と、10個の受光プローブ13と、12個の脳波測定電極14と、1個の基準電極15とを有する。
10個の送光プローブ12と10個の受光プローブ13とは、縦方向と横方向とに交互となるように固定されている。10個の送光プローブ12は、光を出射するものであり、一方、10個の受光プローブ13は、光強度を検出するものである。なお、送光プローブ12と受光プローブ13との間の距離は、30mmである。
12個の脳波測定電極14は、3×4の正方格子状に固定されている。一方、1個の基準電極15は、被検体の耳等に固定されるようになっている。脳波測定電極14は、基準電極15との電位差を検出するものである。そして、12個の脳波測定電極14は、後述する電極制御部32に検出信号(電位情報)を出力する。なお、脳波測定電極14と脳波測定電極14との間の距離は、30mmである。
【0019】
発光部2は、コンピュータ20から入力された駆動信号により10個の送光プローブ12のうちから選択される1個の送光プローブ12に光を送光する。上記光としては、近赤外光(例えば、780nmと850nm)が用いられる。
光検出部3は、10個の受光プローブ13で受光した近赤外光(例えば、780nmと850nm)を個別に検出することにより、10個の受光信号(受光量情報)をコンピュータ20に出力する。
【0020】
MRI6は、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを作成する。具体的には、まず、被検体の頭皮表面と脳表面とを撮影することにより、3方向の2次元画像を示す形態映像データを取得する。ここで、形態映像データは、MR信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルから構成される。そして、頭皮表面を示す形態映像データを抽出することにより、頭皮表面形態画像データを作成するとともに、脳表面を示す形態映像データを抽出することにより、脳表面形態画像データを作成することで、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを作成する(図4参照)。
なお、上述した抽出する方法としては、例えば、MR信号の強度情報や位相情報等の数値を有する複数のピクセルを用いることにより、領域拡張法、領域併合法、ヒューリスティック法等の画像領域分割方法、境界要素を連結して領域を抽出する方法、閉曲線を変形させて領域を抽出する方法等を利用する方法等が挙げられる。このように形態映像データを抽出することにより、頭皮表面形態画像データ及び脳表面形態画像データを取得するので、鮮明な画像データを取得することができる。
【0021】
コンピュータ20においては、CPU21を備え、さらにメモリ25と、モニタ画面23a等を有する表示装置23と、入力装置22であるキーボード22aやマウス22bとが連結されている。
また、CPU21が処理する機能をブロック化して説明すると、発光部2及び光検出部3を制御する送受光部制御部31と、脳波測定電極14及び基準電極15を制御する電極制御部32と、3次元形態画像表示制御部33と、ポインタ表示制御部34と、プローブ測定関連位置データ作成部35と、電極測定関連位置データ作成部36と、受光量情報及び電位情報を表示する脳活動画像表示制御部37とを有する。
また、メモリ25には、3次元形態画像データが記憶されるようになっている。3次元形態画像データは、上述したように、MRI6により作成された被検体の映像データから、頭皮表面及び脳表面を示す映像データを抽出することにより作成された3次元画像データである(図4参照)。
【0022】
ここで、図3は、本発明に係る生体測定装置1により表示されたモニタ画面23aの一例を示す図である。モニタ画面23aには、脳表面画像24bが表示されている。
脳表面画像24b中には、受光量情報がカラーマッピングで重畳されて表示されるとともに、電位情報が等電位線図で重畳されて表示されている。これにより、医師や検査技師等は、脳の解剖学的構造に個人差があるが、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを融合することができる。
【0023】
送受光部制御部31は、発光部2に駆動信号を出力する発光制御部42と、光検出部3からの受光信号(受光量情報)を受ける光検出制御部43とを有する。
発光制御部42は、送光プローブ12に光を送光する駆動信号を発光部2に出力する制御を行う。例えば、まず、1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させ、次に、他の1個の送光プローブ12に光を0.15秒間送光させるように順次、送光プローブ12に光を送光させる駆動信号を発光部2に出力する。
光検出制御部43は、10個の受光プローブ13から検出された10個の受光量情報を光検出部3から受ける制御を行う。
電極制御部32は、12個の脳波測定電極14から検出された12個の電位情報を受ける制御を行う。
【0024】
3次元形態画像表示制御部33は、MRI6から被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを取得してメモリ25に記憶させ、3次元形態画像データに基づいて、頭皮表面画像24aと脳表面画像24bとをモニタ画面23aに表示する制御を行う(図4参照)。これにより、医師や検査技師等は、脳の解剖学的構造に個人差があるが、被検体自身の頭皮表面と脳表面とを正確に認識することができるようになっている。また、医師や検査技師等が入力装置22を用いて、所望の方向から見た頭皮表面画像24aと脳表面画像24bとなるように、方向を変更して表示することができるようにもなっている。なお、3次元形態画像データは、別に設けられたMRIから記憶媒体等を用いて取得されてもよい。
【0025】
ポインタ表示制御部34は、モニタ画面23aにポインタ24cを表示するとともに、マウス22bから出力された操作信号に基づいて、モニタ画面23aに表示されたポインタ24cを移動したり、ポインタ24cで位置を指定したりする制御を行う。
プローブ測定関連位置データ作成部35は、頭皮表面上における送光プローブ12及び受光プローブ13の配置位置を示すプローブ配置位置データを取得して、プローブ配置位置データに基づいて、受光量情報が得られたプローブ測定関連位置を示すプローブ測定関連位置データを作成する制御を行う。例えば、医師や検査技師等は、モニタ画面23aに表示された頭皮表面画像24a中の20箇所をポインタ24cで指定することで、プローブ測定関連位置データ作成部35は、プローブ配置位置データを取得する。そして、プローブ測定関連位置データ作成部35は、プローブ測定関連位置として、脳表面上において、送光プローブ12の配置位置と受光プローブ13の配置位置とを結んだ線の垂直二等分線と交差する位置を算出する。
【0026】
電極測定関連位置データ作成部36は、頭皮表面上における脳波測定電極14の配置位置を示す電極配置位置データを取得して、電極配置位置データに基づいて、電位情報が得られた電極測定関連位置を示す電極測定関連位置データを作成する制御を行う。例えば、医師や検査技師等は、モニタ画面23aに表示された頭皮表面画像24a中の12箇所をポインタ24cで指定することで、電極測定関連位置データ作成部36は、電極測定関連位置データを取得する。そして、電極測定関連位置データ作成部36は、電極測定関連位置として、頭皮表面上において、脳波測定電極14の配置位置を算出する。
脳活動画像表示制御部37は、脳表面画像24b中に、プローブ測定関連位置データに基づいて、受光量情報を重畳して表示するとともに、電極測定関連位置データに基づいて、電位情報を重畳して表示する制御を行う。例えば、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、脳表面画像24b中に受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、脳表面画像24b中に電位情報を等電位線図で重畳して表示する。これにより、医師や検査技師等は、脳の解剖学的構造に個人差があるが、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを融合することができる。
【0027】
次に、生体測定装置1により、受光量情報と電位情報とを測定する測定方法について説明する。図5a及び図5bは、生体測定装置1による測定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、3次元形態画像表示制御部33は、MRI6から被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを取得して、3次元形態画像データに基づいて、頭皮表面画像24aと脳表面画像24bとをモニタ画面23aに表示する(図4参照)。
次に、ステップS102の処理において、医師や検査技師等は、披検体の頭皮表面上にホルダ11を配置する。
【0028】
次に、ステップS103の処理において、医師や検査技師等は、頭皮表面画像24a中の20箇所をポインタ24cで指定する。
次に、ステップS104の処理において、プローブ測定関連位置データ作成部35は、プローブ配置位置データを取得して、プローブ測定関連位置として、脳表面上において、送光プローブ12の配置位置と受光プローブ13の配置位置とを結んだ線の垂直二等分線と交差する位置を算出する。
次に、ステップS105の処理において、医師や検査技師等は、頭皮表面画像24a中の12箇所をポインタ24cで指定する。
次に、ステップS106の処理において、電極測定関連位置データ作成部36は、電極測定関連位置データを取得して、電極測定関連位置として、脳表面上において、頭皮表面における脳波測定電極14の配置位置からの垂線と交差する位置を算出する。
【0029】
次に、ステップS107の処理において、医師や検査技師等は、測定を開始するか否かを判断する。測定を開始しないと判断したときには、ステップS107の処理を繰り返す。
一方、測定を開始すると判断したときには、ステップS108の処理において、3次元形態画像表示制御部33は、3次元形態画像データに基づいて、脳表面画像24bをモニタ画面23aに表示する。
【0030】
次に、ステップS109の処理において、光を送光する送光プローブを示す送光プローブ番号パラメータn=0とする。
次に、ステップS110の処理において、発光制御部42及び光検出制御部43は、発光部2に駆動信号を出力するとともに、光検出部3からの受光信号(受光量情報)を受ける。
次に、ステップS111の処理において、送光プローブ番号パラメータn=9であるか否かを判定する。
送光プローブ番号パラメータn=9でないと判定したときには、ステップS112の処理において、n=n+1とし、ステップS110の処理に戻る。
一方、送光プローブ番号パラメータn=9であると判定したときには、ステップS113の処理において、脳活動画像表示制御部37は、プローブ測定関連位置データに基づいて、脳表面画像24b中に、受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示する。
次に、ステップS114の処理において、医師や検査技師等は、測定を終了するか否かを判断する。測定を終了しないと判断したときには、ステップS109の処理に戻る。
【0031】
一方、ステップS115の処理において、電極制御部32は、12個の脳波測定電極14から検出された12個の検出信号(電位情報)を受ける。
次に、ステップS116の処理において、脳活動画像表示制御部37は、電極測定関連位置データに基づいて、脳表面画像24b中に、電位情報を等電位線図で重畳して表示する。
次に、ステップS117の処理において、医師や検査技師等は、測定を終了するか否かを判断する。測定を終了しないと判断したときには、ステップS115の処理に戻る。
一方、ステップS114、S117の処理において、測定を終了すると判断したときには、本フローチャートを終了させる。
以上のように、生体測定装置1によれば、被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを得ているので、光生体測定装置による測定と、脳波計による測定とを同時に行うことにより、空間分解能が高く、かつ、時間分解能が高い測定を行うことができる。
【0032】
(他の実施形態)
(1)上述した生体測定装置1では、脳表面画像24b中に受光量情報と電位情報とを重畳して表示する構成を示したが、頭皮表面画像中に受光量情報と電位情報とを重畳して表示するような構成としてもよい(図6参照)。
(2)上述した生体測定装置1では、脳表面画像24b中に受光量情報と電位情報とを重畳して表示する構成を示したが、脳表面画像中に受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、頭皮表面画像中に電位情報を等電位線図で重畳して表示するような構成としてもよい。なお、頭皮表面画像と脳表面画像が一体的に表示されるときには、頭皮表面画像は、半透明で表示されるようにすればよい。
(3)上述した生体測定装置1では、脳表面画像24b中に受光量情報と電位情報とを重畳して表示する構成を示したが、脳表面画像中に受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、数値とカラーとの対応関係を示す第二カラーテーブルに基づいて、頭皮表面画像中に電位情報をカラーマッピングで重畳して表示するような構成としてもよい。なお、頭皮表面画像と脳表面画像が一体的に表示されるときには、頭皮表面画像は、半透明で表示されるようにすればよい。
【0033】
(4)上述した生体測定装置1では、脳活動画像表示制御部37は、受光量情報と電位情報とをサンプリング時間で表示する構成を示したが、受光量情報と電位情報とを任意の期間における平均値で表示するような構成としてもよい。
(5)上述した生体測定装置1では、10個の送光プローブ12と、10個の受光プローブ13と、12個の脳波測定電極14と、1個の基準電極15とを有するホルダ11を示したが、異なる数、例えば20個の送光プローブと、20個の受光プローブと、24個の脳波測定電極と、1個の基準電極とを有するホルダとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、生体の組織が正常であるか否かを診断するための酸素モニタや脳機能イメージング装置等として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態である生体測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ホルダにおける10個の送光プローブと10個の受光プローブと12個の脳波測定電極14と1個の基準電極との位置関係を示す平面図である。
【図3】本発明に係る生体測定装置により表示されたモニタ画面の一例を示す図である。
【図4】3次元形態画像データを示す図である。
【図5a】生体測定装置1による測定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図5b】生体測定装置1による測定方法の一例について説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明に係る生体測定装置により表示されたモニタ画面の他の一例を示す図である。
【図7】一対の送光プローブ及び受光プローブと、脳の測定部位との関係を示す図である。
【図8】ホルダにおける10個の送光プローブと10個の受光プローブとの位置関係を示す平面図である。
【図9】ホルダにおける12個の脳波測定電極と1個の基準電極との位置関係を示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
1:生体測定装置
11:ホルダ
12:送光プローブ
13:受光プローブ
14:脳波測定電極
15:基準電極
22:入力装置
23:表示装置
31:送受光部制御部
32:電極制御部
33:3次元形態画像表示制御部
35:プローブ測定関連位置データ作成部
36:電極測定関連位置データ作成部
37:脳活動画像表示制御部
T:送光点
R:受光点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の頭皮表面上に配置される送光プローブと受光プローブと脳波測定電極と、基準電極とを有するホルダと、
前記送光プローブが頭皮表面に光を照射するとともに、前記受光プローブが頭皮表面から放出される光を検出するように制御することで、脳活動に関する受光量情報を得る送受光部制御部と、
前記脳波測定電極と基準電極との電位差を検出するように制御することで、脳活動に関する電位情報を得る電極制御部とを備える生体測定装置であって、
前記被検体の頭皮表面と脳表面との位置関係を示す3次元形態画像データを取得して、表示装置に頭皮表面画像及び/又は脳表面画像を表示する3次元形態画像表示制御部と、
前記頭皮表面上における送光プローブ及び受光プローブの配置位置を示すプローブ配置位置データを取得して、当該プローブ配置位置データに基づいて、前記受光量情報が得られたプローブ測定関連位置を示すプローブ測定関連位置データを作成するプローブ測定関連位置データ作成部と、
前記頭皮表面上における脳波測定電極の配置位置を示す電極配置位置データを取得して、当該電極配置位置データに基づいて、前記電位情報が得られた電極測定関連位置を示す電極測定関連位置データを作成する電極測定関連位置データ作成部と、
前記頭皮表面画像及び/又は脳表面画像中に、前記プローブ測定関連位置データに基づいて、前記受光量情報を重畳して表示するとともに、前記電極測定関連位置データに基づいて、前記電位情報を重畳して表示する脳活動画像表示制御部とを備えることを特徴とする生体測定装置。
【請求項2】
前記ホルダは、複数の送光プローブと複数の受光プローブと複数の脳波測定電極と1個の基準電極とを有することを特徴とする請求項1に記載の生体測定装置。
【請求項3】
前記プローブ測定関連位置は、前記頭皮表面上において、送光プローブの配置位置と受光プローブの配置位置とを頭皮表面に沿って最短距離で結んだ線の中点の位置とするか、或いは、前記脳表面上において、送光プローブの配置位置と受光プローブの配置位置とを結んだ線の垂直二等分線と交差する位置とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生体測定装置。
【請求項4】
前記電極測定関連位置は、前記頭皮表面上において、脳波測定電極の配置位置とするか、或いは、前記脳表面上において、前記頭皮表面における脳波測定電極の配置位置からの垂線と交差する位置とすることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の生体測定装置。
【請求項5】
前記脳活動画像表示制御部は、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、前記受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、
前記電位情報を等電位線図で重畳して表示することを特徴とする請求項2〜請求項4の何れかに記載の生体測定装置。
【請求項6】
前記3次元形態画像表示制御部は、表示装置に頭皮表面画像と脳表面画像とを一体的に表示し、
前記脳活動画像表示制御部は、前記頭皮表面画像又は脳表面画像中に、数値とカラーとの対応関係を示す第一カラーテーブルに基づいて、前記受光量情報をカラーマッピングで重畳して表示するとともに、
前記受光量情報がカラーマッピングで表示された画像と異なる画像中に、数値とカラーとの対応関係を示す第二カラーテーブルに基づいて、前記電位情報をカラーマッピングで重畳して表示することを特徴とする請求項2〜請求項4の何れかに記載の生体測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図5a】
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【図5b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−119660(P2010−119660A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296849(P2008−296849)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】