説明

生体状態推定装置及びコンピュータプログラム

【課題】 人の状態をより正確に把握する技術を提供する。
【解決手段】 生体信号の時系列波形から周波数の時系列波形を求め、さらに、周波数傾きの時系列波形を求める。この傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトル密度の値の較差及び回帰直線間の傾きの違いに基づき、各回帰直線全体における分岐現象を示す折れ点数を求め、その折れ点数に基づいた形状得点を付与し、回帰直線毎の領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、判定基準点を求め、その時系列変化から人の状態を判定する。得点を求める構成であるため、客観的にかつ正確に状態判定を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を採取し、所定状態との相対変化から生体の状態を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転中の運転者の生体状態を監視することは、近年、事故予防策等として注目されている。本出願人は、特許文献1〜3において、シートクッション部に圧力センサを配置し、臀部脈波を採取して分析し、入眠予兆現象を判定する手法を開示している。
【0003】
具体的には、脈波の時系列波形を、それぞれ、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により、極大値と極小値を求める。そして、5秒ごとに極大値と極小値を切り分け、それぞれの平均値を求める。求めた極大値と極小値のそれぞれの平均値の差の二乗をパワー値とし、このパワー値を5秒ごとにプロットし、パワー値の時系列波形を作る。この時系列波形からパワー値の大域的な変化を読み取るために、ある時間窓Tw(180秒)について最小二乗法でパワー値の傾きを求める。次に、オーバーラップ時間Tl(162秒)で次の時間窓Twを同様に計算して結果をプロットする。この計算(移動計算)を順次繰り返してパワー値の傾きの時系列波形を得る。一方、脈波の時系列波形をカオス解析して最大リアプノフ指数を求め、上記と同様に、平滑化微分によって極大値を求め、移動計算することにより最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形を得る。
【0004】
そして、パワー値の傾きの時系列波形と最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形が逆位相となっており、さらには、パワー値の傾きの時系列波形で低周波、大振幅の波形が生じている波形を、入眠予兆を示す特徴的な信号と判定し、その後に振幅が小さくなったポイントを入眠点と判定している。
【0005】
また、特許文献4として、内部に三次元立体編物を挿入した空気袋(エアパック)を備え、このエアパックを人の背部に対応する部位に配置し、エアパックの空気圧変動を測定し、得られた空気圧変動の時系列データから人の生体信号を検出し、人の生体の状態を分析するシステムを開示している。また、非特許文献1及び2においても、腰腸肋筋に沿うようにエアパックセンサを配置して人の生体信号を検出する試みを報告している。このエアパックの空気圧変動は、心臓の動きに伴う下行大動脈の揺れによるものであり、特許文献1及び2の臀部脈波を利用する場合よりも、心臓の動きにより近い状態変化を捉えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−344612号公報
【特許文献2】特開2004−344613号公報
【特許文献3】WO2005/092193A1公報
【特許文献4】特開2007−90032号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「原著・指尖容積脈波情報を用いた入眠予兆現象計測法の開発」藤田悦則(外8名)、人間工学 Vol41、No.4(’05)
【非特許文献2】「非侵襲型センサによって測定された生体ゆらぎ信号の疲労と入眠予知への応用」、落合直輝(外6名)、第39回日本人間工学会 中国・四国支部大会 講演論文集、平成18年11月25日発行、発行所:日本人間工学会 中国・四国支部事務局
【非特許文献3】「非侵襲生体信号センシング機能を有する車両用シートの試作」、前田慎一郎(外4名)、第39回日本人間工学会 中国・四国支部大会 講演論文集、平成18年11月25日発行、発行所:日本人間工学会 中国・四国支部事務局
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4及び非特許文献1〜3の技術は、上記したように、パワー値の傾きの時系列波形と最大リアプノフ指数の傾きの時系列波形が逆位相となり、かつ、パワー値の傾きの時系列波形で低周波、大振幅の波形が生じた時点をもって入眠予兆現象と捉えている。
【0009】
また、本出願人は、特願2009−237802として次のような技術も提案している。すなわち、生体信号測定手段により得られる生体信号の時系列波形から周波数の時系列波形を求め、この周波数の時系列波形から求められる周波数傾き時系列波形と周波数変動時系列波形を用いた技術であり、周波数傾き時系列波形の正負、周波数傾き時系列波形の積分波形の正負、周波数傾き時系列波形と周波数変動時系列波形とを重ねて出力した場合における逆位相の出現(逆位相の出現が入眠予兆を示す)等を組み合わせて人の状態を判定する技術である。
【0010】
本出願人は、上記のように生体信号を用いた人の状態を把握する技術を提案しているが、人の状態をより正確に把握する技術の提案が常に望まれている。また、人の状態を把握する手法が複数あれば、それらを併用することにより、さらに、正確に人の状態を把握することが可能となる。本発明は上記に鑑みなされたものであり、生体信号を新たな分析方法を用いて分析し、人の状態を把握する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここで、人の恒常性はゆらぎで維持され、その周波数帯域はVLF領域とULF領域にあるとされている。一方、心疾患の一つである心房細動において、心・循環系のゆらぎの特性が切り替わるところは、0.0033Hzと言われており、0.0033Hz近傍のゆらぎの変化を捉えることで、恒常性維持に関する情報が得られる。そこで、本発明者は、まず、0.0033Hz近傍の0.0035Hz(計算の便宜上0.0033Hzではなく0.0035Hzとした)を中心とした長周期領域(低周波帯域)についての解析を行うことに着目した。一方、本発明者の実験により、長周期領域よりも、短い周期の領域において、人のストレスに対する適応状態や、快適あるいは不快と感じる状態により、変化する特徴的なゆらぎが、0.01Hzを中心とした中周期領域(中周波帯域)と、0.0225Hzを中心とした短周期領域(高周波帯域)に出現することを見出し、これらのゆらぎの状態の変化を追跡することで、体調や感覚に関する生体の状態(全身状態)を推定できると考え、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の生体状態推定装置は、生体信号測定手段により採取した生体信号を用いて、生体の状態を推定する生体状態推定装置であって、前記生体信号測定手段により得られる所定の測定時間における生体信号の時系列波形から、周波数の時系列波形を求める周波数演算手段と、前記周波数演算手段により得られた前記生体信号の周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に前記周波数の傾きを求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる前記周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する周波数傾き時系列解析演算手段と、前記周波数傾き時系列解析演算手段から得られる所定時間範囲における周波数傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトル密度と周波数との関係を示す解析波形を所定時間範囲毎に出力する周波数解析手段と、前記周波数解析手段により出力される各解析波形について、所定周期領域毎に回帰直線を求める回帰直線演算手段と、前記周期領域毎に求められる各回帰直線を、その傾きに基づいて領域得点を付与すると共に、隣接する周波数領域における回帰直線間のパワースペクトル密度の値の較差及び回帰直線間の傾きの違いに基づき、各回帰直線全体における分岐現象を示す折れ点数を求め、その折れ点数に基づいた形状得点を付与し、前記領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、各解析波形についての判定基準点を求める判定基準点算出手段と、前記判定基準点算出手段により求められる前記各解析波形の判定基準点の時系列の変化を基に、生体の状態を推定する状態推定手段とを具備することを特徴とする。
【0013】
前記回帰直線演算手段は、分析対象の解析波形を、長周期領域、中周期領域及び短周期領域に分けて、前記回帰直線を求めることが好ましい。前記回帰直線演算手段は、前記長周期領域、中周期領域及び短周期領域のそれぞれにおいて設定した前記解析波形の重心を前記回帰直線の中心として求めることが好ましい。前記回帰直線演算手段は、前記長周期領域においては、前記回帰直線の中心を境界として、ULF領域とVLF領域にさらに分けてそれぞれについて回帰直線を求め、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線の各傾きの積が所定値以下か否かを判定し、所定値以下の場合には前記ULF領域及びVLF領域の各回帰直線を採用し、所定値を上回る場合には前記長周期領域の全体における前記回帰直線を採用することが好ましい。
【0014】
前記判定基準点算出手段は、前記領域得点として、前記各領域における各回帰直線の傾きを略水平状態、上向き及び下向きの3つに分け、略水平状態の得点を基準として、上向きの場合と下向きの場合とで得点を増減させる構成であることが好ましい。前記判定基準点算出手段は、前記形状得点として、前記折れ点数が少ないほど高得点を付与する構成であることが好ましい。前記判定基準点算出手段は、前記折れ点数を、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以上の場合、及び、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって2つの回帰直線の傾きの角度の違いが予め設定した所定角度以上の場合に、それぞれ折れ点としてカウントする構成とすることが好ましい。
【0015】
前記状態推定手段は、比較対象の前後2つの時間範囲における解析波形の判定基準点間において、次式:機能点=後時間範囲の判定基準点+(後時間範囲の判定基準点−前時間範囲の判定基準点)×n、(但し、nは補正係数)により求められる機能点を時系列に求め、機能点の時系列変化から、生体の状態を推定する構成であることが好ましい。前記周波数演算手段は、前記生体信号の時系列波形におけるゼロクロス点を用いて周波数の時系列波形を求めるゼロクロス検出手段と、前記生体信号の時系列波形のピーク点を用いて周波数の時系列波形を求めるピーク検出手段とのいずれか少なくとも一方の手段を備えることが好ましい。
前記状態推定手段は、前記ゼロクロス検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第1の判定基準点と、前記ピーク検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第2の判定基準点とを用い、前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求め、生体の状態を推定する構成であることが好ましい。
【0016】
前記状態推定手段は、前記座標同士を結んだ座標時系列変化線が、1/fの傾きに近似した変化傾向であると判定された場合には快適と判定し、上下方向に変化していると判定された場合には不快と判定する構成とすることが好ましい。
【0017】
前記状態推定手段は、前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとった座標系を象限毎に、活性・適応領域、活性・抵抗領域、耐性・抵抗領域、耐性・適応領域に区分し、異なる測定時間において求められた複数の前記座標時系列変化線同士を比較した場合に、比較対象の前記座標時系列変化線の全体の移動方向により、体調を推定する手段を有することが好ましい。
【0018】
前記座標時系列変化線の全体の主な移動方向が、
活性・適応領域及び耐性・適応領域間である場合に、体調良好と推定し、
活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合に、通常状態と推定し、
耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合に、体調の急変のおそれのある状態と推定する構成とすることが好ましい。
さらに、ピーク検出手段を用いた周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に周波数の平均値を求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力する周波数変動演算手段を有し、前記状態推定手段は、前記ゼロクロス検出手段を用いた周波数の時系列波形から求められる前記機能点に対応する指標を一方の軸にとると共に、前記周波数変動演算手段により求められる周波数変動時系列波形の所定の時間幅における変化量に対応する指標を他方の軸にとり、前記機能点と前記変化量とから求められる座標の時系列変化を求め、感覚に関する生体の状態を推定する構成とすることが好ましい。
【0019】
また、本発明のコンピュータプログラムは、生体信号測定手段により採取した生体信号を用いて、生体の状態を推定する生体状態推定装置に設定されるコンピュータプログラムであって、前記生体信号測定手段により得られる所定の測定時間における生体信号の時系列波形から、周波数の時系列波形を求める周波数演算手順と、前記周波数演算手順により得られた前記生体信号の周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に前記周波数の傾きを求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる前記周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する周波数傾き時系列解析演算手順と、前記周波数傾き時系列解析演算手順から得られる所定時間範囲における周波数傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトル密度と周波数との関係を示す解析波形を所定時間範囲毎に出力する周波数解析手順と、前記周波数解析手順により出力される各解析波形について、所定周期領域毎に回帰直線を求める回帰直線演算手順と、前記周期領域毎に求められる各回帰直線を、その傾きに基づいて領域得点を付与すると共に、隣接する周波数領域における回帰直線間のパワースペクトル密度の値の較差及び回帰直線間の傾きの違いに基づき、各回帰直線全体における分岐現象を示す折れ点数を求め、その折れ点数に基づいた形状得点を付与し、前記領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、各解析波形についての判定基準点を求める判定基準点算出手順と、前記判定基準点算出手順により求められる前記各解析波形の判定基準点の時系列の変化を基に、生体の状態を推定する状態推定手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0020】
前記回帰直線演算手順は、分析対象の解析波形を、長周期領域、中周期領域及び短周期領域に分けて、前記回帰直線を求めることが好ましい。前記回帰直線演算手順は、前記長周期領域、中周期領域及び短周期領域のそれぞれにおいて設定した前記解析波形の重心を前記回帰直線の中心として求めることが好ましい。前記回帰直線演算手順は、前記長周期領域においては、前記回帰直線の中心を境界として、ULF領域とVLF領域にさらに分けてそれぞれについて回帰直線を求め、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線の各傾きの積が所定値以下か否かを判定し、所定値以下の場合には前記ULF領域及びVLF領域の各回帰直線を採用し、所定値を上回る場合には前記長周期領域の全体における前記回帰直線を採用する構成とすることが好ましい。
【0021】
前記判定基準点算出手順は、前記領域得点として、前記各領域における各回帰直線の傾きを略水平状態、上向き及び下向きの3つに分け、略水平状態の得点を基準として、上向きの場合と下向きの場合とで得点を増減させる構成であることが好ましい。
【0022】
前記判定基準点算出手順は、前記形状得点として、前記折れ点数が少ないほど高得点を付与する構成であることが好ましい。
【0023】
前記判定基準点算出手順は、前記折れ点数を、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以上の場合、及び、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって2つの回帰直線の傾きの角度の違いが予め設定した所定角度以上の場合に、それぞれ折れ点としてカウントする構成であることが好ましい。
【0024】
前記状態推定手順は、比較対象の前後2つの時間範囲における解析波形の判定基準点間において、次式:
機能点=後時間範囲の判定基準点+(後時間範囲の判定基準点−前時間範囲の判定基準点)×n、(但し、nは補正係数)
により求められる機能点を時系列に求め、機能点の時系列変化から、生体の状態を推定する構成であることが好ましい。
【0025】
前記周波数演算手順は、前記生体信号の時系列波形におけるゼロクロス点を用いて周波数の時系列波形を求めるゼロクロス検出手順と、前記生体信号の時系列波形のピーク点を用いて周波数の時系列波形を求めるピーク検出手順とのいずれか少なくとも一方の手順を備えることが好ましい。
【0026】
前記状態推定手順は、前記ゼロクロス検出手順を用いた周波数の時系列波形から得られる第1の判定基準点と、前記ピーク検出手順を用いた周波数の時系列波形から得られる第2の判定基準点とを用い、
前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとり、
第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求め、生体の状態を推定することが好ましい。
【0027】
前記状態推定手順は、前記座標同士を結んだ座標時系列変化線が、1/fの傾きに近似した変化傾向であると判定された場合には快適と判定し、上下方向に変化していると判定された場合には不快と判定することが好ましい。
【0028】
前記状態推定手順は、前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとった座標系を象限毎に、活性・適応領域、活性・抵抗領域、耐性・抵抗領域、耐性・適応領域に区分し、異なる測定時間において求められた複数の前記座標時系列変化線同士を比較した場合に、比較対象の前記座標時系列変化線の全体の移動方向により、体調を推定することが好ましい。
【0029】
前記座標時系列変化線の全体の主な移動方向が、
活性・適応領域及び耐性・適応領域間である場合に、体調良好と推定し、
活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合に、通常状態と推定し、
耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合に、体調の急変のおそれのある状態と推定することが好ましい。
さらに、ピーク検出手順を用いた周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に周波数の平均値を求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力する周波数変動演算手順を有し、前記状態推定手順は、前記ゼロクロス検出手順を用いた周波数の時系列波形から求められる前記機能点に対応する指標を一方の軸にとると共に、前記周波数変動演算手順により求められる周波数変動時系列波形の所定の時間幅における変化量に対応する指標を他方の軸にとり、前記機能点と前記変化量とから求められる座標の時系列変化を求め、感覚に関する生体の状態を推定することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、生体信号の時系列波形から周波数の時系列波形を求め、さらに、周波数傾きの時系列波形を求めて周波数解析する手段を有する。このような傾き時系列解析を施すことで、3〜5分間の長周期の成分からなる時系列波形を作り、短時間の計測データでありながら、24時間分の時系列波形を周波数解析した結果と同様の傾向を示すデータを得ることができる。そして、周波数解析波形を所定周期領域毎に、好ましくは、長周期領域、中周期領域及び短周期領域に区分し、それらについて回帰直線を求め、その結果を、所定の基準を用いて得点化し、それらの時系列変化を捉えることで、体調及び感覚に関する状態を推定することができる。なお、感覚とは、状態が変化したときに相対的に感じるものであり、状態が変化することで快適感あるいは不快感を生じることになる。従って、例えば不快状態が継続すると、不快状態が普通と感じるようになり、人はそれに適応したということになる。これらの状態変化を捉えるために、周波数解析波形の時系列変化を把握することが重要となる。
【0031】
すなわち、傾き時系列波形を用いることで、短時間の計測で、24時間程度の長時間の計測をしなければ特徴が現れない0.5Hz近傍に心房、心室及び大動脈の揺れ具合の体表脈波を捉えることができ、生体の状態推定を行う上で有効であり、長周期領域の変化を捉えることで、生体の恒常性維持機能に関する変化を中心的に捉えることができ、中周期領域及び短周期領域の変化を捉えることで、病変等によって生じる生体内環境の変化に対するストレスや快・不快状態に関する変化を推定することができる。そして、現在の状態推定はもとより、将来起こりえる体調の急変シグナルをも捉えることも可能である。この際、上記した回帰直線を求めて得点化する手法は、これらの変化を顕著に捉えるのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態において用いた生体信号測定手段を示した図である。
【図2】図2は、上記実施形態に係る生体信号測定手段の他の態様を示した図である。
【図3】図3は、上記生体信号測定手段をシートに組み込む過程を示した図である。
【図4】図4は、本発明の一の実施形態に係る生体状態推定装置の構成を示した図である。
【図5】図5は、生体信号測定手段から得られる出力信号から、ゼロクロス検出手段により時系列波形を求める方法と、ピーク検出手段により時系列波形を求める方法を説明するための図である。
【図6】図6(a)〜(e)は、状態推定手段によって作成される座標時系列変化線の作成方法を説明するための図である。
【図7】図7(a)〜(e)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図8】図8(a)〜(e)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図9】図9(a)〜(e)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図10】図10(a)〜(e)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図11】図11(a)〜(d)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図12】図12(a)〜(d)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図13】図13(a)〜(h)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図14】図14(a)〜(h)は、試験例1における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図15】図15(a)〜(b)は、試験例1における体調変化度を示したグラフである。
【図16】図16は、試験例1の測定結果に基づく座標時系列変化線を示した図である。
【図17】図17(a)は、試験例1の被験者の官能評価を示した図であり、図17(b)は座標時系列変化線を用いた全身状態の判定手法を説明するための図である。
【図18】図18(a)〜(e)は、試験例2における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図19】図19(a)〜(e)は、試験例2における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図20】図20(a)〜(e)は、試験例2における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図21】図21(a)〜(e)は、試験例2における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図22】図22は、試験例2における体調変化度を示したグラフである。
【図23】図23は、試験例2の測定結果に基づく座標時系列変化線を示した図である。
【図24】図24は、試験例2の被験者の官能評価を示した図である。
【図25】図25は、試験例2の被験者の覚醒誘導姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図26】図26は、試験例2の被験者のリラックス姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図27】図27(a)〜(f)は、試験例3における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図28】図28(a)〜(f)は、試験例3における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図29】図29(a)〜(f)は、試験例3における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図30】図30(a)〜(f)は、試験例3における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図31】図31(a)〜(b)は、試験例3における体調変化度を示したグラフである。
【図32】図32は、試験例3の測定結果に基づく座標時系列変化線を示した図である。
【図33】図33は、試験例3の被験者の官能評価を示した図である。
【図34】図34は、試験例3の被験者の覚醒誘導姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図35】図35は、試験例3の被験者のリラックス姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図36】図36(a)〜(f)は、試験例4における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図37】図37(a)〜(f)は、試験例4における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図38】図38(a)〜(f)は、試験例4における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図39】図39(a)〜(f)は、試験例4における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図40】図40(a)〜(b)は、試験例4における体調変化度を示したグラフである。
【図41】図41は、試験例4の測定結果に基づく座標時系列変化線を示した図である。
【図42】図42は、試験例4の被験者の官能評価を示した図である。
【図43】図43は、試験例4の被験者の脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図44】図44は、試験例4の被験者の頭部加速度を示した図である。
【図45】図45は、試験例4の被験者の頭部加速度を示した図であり、図44の続きである。
【図46】図46は、試験例4の被験者の頭部加速度及び他の指標を合わせて示した図である。
【図47】図47(a)〜(f)は、試験例5における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図48】図48(a)〜(f)は、試験例5における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図49】図49(a)〜(f)は、試験例5における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図50】図50(a)〜(f)は、試験例5における解析波形及び算出した機能点を示した図である。
【図51】図51(a)〜(b)は、試験例5における体調変化度を示したグラフである。
【図52】図52は、試験例5の測定結果に基づく座標時系列変化線を示した図である。
【図53】図53は、試験例5の被験者の官能評価を示した図である。
【図54】図54は、試験例5の被験者の覚醒誘導姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図55】図55は、試験例5の被験者のリラックス姿勢における脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示した図である。
【図56】図56は、試験例6における各被験者の機能点の分布を示した図である。
【図57】図57は、試験例6における被験者別の機能点の得点の平均値と標準偏差の分布を示した図である。
【図58】図58は、試験例6において健常、未病、病気と判定された被験者の割合を示した図である。
【図59】図59は、試験例6において自己申告による体調別に、健常、未病、病気と判定された割合を示した図である。
【図60】図60は、試験例6の被験者の急変リスクの割合を示した図である。
【図61】図61(a)〜(c)は試験例7の判定手法を説明するための図である。
【図62】図62(a)〜(c)は試験例7の判定結果を示した図である。
【図63】図63(a)〜(c)は試験例7の判定結果を示した図である。
【図64】図64(a)〜(c)は試験例7の判定結果を示した図である。
【図65】図65(a)〜(c)は試験例7の判定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態に係る生体状態推定装置60の分析対象である生体信号である体表脈波、ここでは心部揺動波(人の上体の背部から検出される心房と心室の動き及び大動脈の揺動に伴う体表脈波であり、心臓の動きが直接的に反映される生体信号)を採取する生体信号測定手段1を示した図であり、図3は、該生体信号測定手段1を自動車用のシート100に組み込む過程を示した図である。まず、この生体信号測定手段1について説明する。生体信号測定手段1は、三次元立体編物10、三次元立体編物支持部材15、フィルム16、板状発泡体21,22、振動センサ30を有して構成される。
【0034】
三次元立体編物10は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0035】
一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、2つのグランド編地間に編み込んだものである。本実施形態では、三次元立体編物の固体振動、特に、連結糸の弦振動を検出するものであるため、連結糸はモノフィラメントから構成することが好ましいが、採取する生体信号の種類に応じて共振周波数を調整するため、連結糸もマルチフィラメントから構成することもできる。
【0036】
また、三次元立体編物10は、厚み方向の荷重−たわみ特性が、測定板上に載置して直径30mm又は直径98mmの加圧板で加圧した際に、荷重100Nまでの範囲で、人の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性に近似したバネ定数を備えることが好ましい。具体的には直径30mmの加圧板で加圧した際の当該バネ定数が0.1〜5N/mmの範囲、又は、直径98mmの加圧板で加圧した際の当該バネ定数が1〜10N/mmであるものを用いることが好ましい。人の臀部の筋肉の荷重−たわみ特性に近似していることにより、三次元立体編物と筋肉とが釣り合い、心拍、呼吸、心房や大動脈の揺動などの生体信号が伝播されると、三次元立体編物が人の筋肉と同様の振動を生じることになり、生体信号を大きく減衰させることなく伝播できる。
【0037】
このような三次元立体編物としては、例えば、以下のようなものを用いることができる。なお、各三次元立体編物は、必要に応じて複数枚積層して用いることもできる。
【0038】
(1)製品番号:49076D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・300デシテックス/288fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と700デシテックス/192fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸との撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0039】
(2)製品番号:49011D(住江織物(株)製)
材質:
グランド編地(縦糸)・・・600デシテックス/192fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
グランド編地(横糸)・・・300デシテックス/72fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
連結糸・・・・・・・・・800デシテックス/1fのポリエチレンテレフタレートモノフィラメント
【0040】
(3)製品番号:49013D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/108fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0041】
(4)製品番号:69030D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・450デシテックス/144fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸の2本の撚り糸
裏側のグランド編地・・・450デシテックス/144fのポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸と350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・350デシテックス/1fのポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
【0042】
(5)旭化成せんい(株)製の製品番号:T24053AY5−1S
【0043】
板状発泡体21,22は、ビーズ発泡体により構成することが好ましい。ビーズ発泡体としては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンのいずれか少なくとも一つを含む樹脂のビーズ法による発泡成形体が用いることができる。ビーズ発泡体からなる板状発泡体21,22は、個々の微細なビーズを構成している発泡により形成された球状の樹脂膜の特性により、微小な振幅を伴う生体信号を膜振動として伝播する。この膜振動が三次元立体編物に弦振動として伝わり、これらの膜振動と弦振動が重畳され、生体信号は、膜振動と弦振動が重畳されることによって増幅された機械振動として、後述する振動センサ30により検出される。従って、生体信号の検出が容易になる。
【0044】
板状発泡体21,22をビーズ発泡体から構成する場合、発泡倍率は25〜50倍の範囲で、厚さがビーズの平均直径以下に形成されていることが好ましい。例えば、30倍発泡のビーズの平均直径が4〜6mm程度の場合では、板状発泡体21,22の厚さは3〜5mm程度にスライスカットする。これにより、板状発泡体21,22に柔らかな弾性が付与され、振幅の小さな振動に共振した固体振動を生じやすくなる。なお、板状発泡体21,22は、本実施形態のように、三次元立体編物10を挟んで両側に配置されていても良いが、いずれか片側、好ましくは、シートバック側のみに配置した構成とすることもできる。
【0045】
ここで、三次元立体編物10は、幅40〜100mm、長さ100〜300mmの範囲の短冊状のものが用いられる。この大きさのものだと、三次元立体編物10に予備圧縮(連結糸に張力が発生する状態)を生じやすくなり、人と三次元立体編物10との間で平衡状態が作りやすい。本実施形態では、人が背部が当接した際の違和感軽減のため、脊柱に対応する部位を挟んで対象に2枚配設するようにしている。三次元立体編物10を簡単に所定位置に配置するようにするため、図1に示したように、三次元立体編物10は三次元立体編物支持部材15に支持させた構成とすることが好ましい。三次元立体編物支持部材15は、板状に成形され、脊柱に対応する部位を挟んで対称位置に、縦長の配置用貫通孔15a,15aが2つ形成されている。三次元立体編物支持部材15は、上記板状発泡体21,22と同様に、板状に形成されたビーズ発泡体から構成することが好ましい。三次元立体編物支持部材15をビーズ発泡体から構成する場合の好ましい発泡倍率、厚さの範囲は上記板状発泡体21,22と同様である。但し、生体信号により膜振動をより顕著に起こさせるためには、三次元立体編物10,10の上下に積層される板状発泡体21,22の厚さが、三次元立体編物支持部材15の厚さよりも薄いことが好ましい。
【0046】
三次元立体編物支持部材15に形成した配置用貫通孔15a,15aに、2つの三次元立体編物10,10を挿入配置した状態で、三次元立体編物10,10の表側及び裏側にフィルム16,16を積層する。本実施形態では、配置用貫通孔15a,15aの周縁部にフィルム16,16の周縁部を貼着して積層する。なお、配置用貫通孔15a,15aの形成位置(すなわち、三次元立体編物10,10の配設位置)は、心房と心室及び大動脈(特に、「下行大動脈」)の拍出に伴う動きによって生じる揺れ及び大動脈弁の動きを検知可能な領域に相当する位置とすることが好ましい。この結果、三次元立体編物10,10は、上下面が板状発泡体21,22によりサンドイッチされ、周縁部が三次元立体編物支持部材15によって取り囲まれており、板状発泡体21,22及び三次元立体編物支持部材15が共振箱(共鳴箱)の機能を果たす。なお、大動脈の壁は、動脈の中でも弾力性に富んでおり、心臓から直接送り出される血液の高い圧力を受け止めることができ、また、心臓の左心室からでたばかりのところには逆流防止の弁である大動脈弁がある。このため、三次元立体編物の位置を上記の位置にすると、生体の定常性維持のための脳と自律神経系の負のフィードバック機構の動きをよく捉えることができる。
【0047】
また、三次元立体編物支持部材15よりも、三次元立体編物10,10の方が厚いものを用いることが好ましい。つまり、三次元立体編物10,10を配置用貫通孔15a,15aに配置した場合には、三次元立体編物10,10の表面及び裏面が、該配置用貫通孔15a,15aよりも突出するような厚さ関係とする。これにより、フィルム16,16の周縁部を配置用貫通孔15a,15aの周縁部に貼着すると、三次元立体編物10,10は厚み方向に押圧されるため、フィルム16,16の反力による張力が発生し、該フィルム16,16に固体振動(膜振動)が生じやすくなる。一方、三次元立体編物10,10にも予備圧縮が生じ、三次元立体編物の厚さ形態を保持する連結糸にも反力による張力が生じて弦振動が生じやすくなる。なお、フィルム16,16は、三次元立体編物10,10の表側及び裏側の両側に設けることが好ましいが、いずれか少なくとも一方に設けた構成とすることも可能である。
【0048】
三次元立体編物10,10の連結糸は、一対のグランド編地間に掛け渡されるため、いわばコイル状に巻かれた長い弦となり、上下の節点に共振箱(共鳴箱)の機能を果たすフィルム16,16及び板状発泡体21,22が配設されている。心拍変動に代表される生体信号は、低周波であるため、このような長い弦と多数の節点を備えた共振システムにより増幅される。つまり、連結糸の弦振動が多数の節点を介してフィルム16,16の膜振動及び板状発泡体21,22のビーズの膜振動を起こさせ、これらが重畳して作用し、増幅される。なお、三次元立体編物の連結糸の節点間の間隔、すなわち、連結糸の配置密度は高いほど好ましい。
【0049】
また、フィルム16,16を板状発泡体21,22側に予め貼着して一体化しておき、板状発泡体21,22を三次元立体編物支持部材15に積層するだけで、フィルム16,16を三次元立体編物10,10の表側及び裏側に配置できる構成とすることも可能である。但し、三次元立体編物10,10に予備圧縮を付与するためには、上記のように、フィルム16,16を三次元立体編物支持部材15の表面に固着することが好ましい。また、図1のように、三次元立体編物10毎に対応してフィルムを配設するのではなく、図2に示したように、2つの三次元立体編物10,10を両方とも覆うことのできる大きさのフィルム16を用いるようにしてもよい。
【0050】
フィルム16,16としては、例えば、心拍変動を捉えるには、ポリウレタンエラストマーからなるプラスチックフィルム(例えば、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」)を用いることが好ましい。但し、フィルム16,16は固有振動数が合致すれば共振による膜振動を生じるため、これに限るものではなく、採取する対象(心拍、呼吸、心房や心室及び大動脈の揺動等)に応じた固有振動数を有するものを使用することが好ましい。例えば、後述の試験例で示したように、伸縮性の小さい素材、例えば、熱可塑性ポリエステルからなる不織布(例えば、帝人(株)製のポリエチレンナフタレート(PEN)繊維(1100dtex)から形成した2軸織物(縦:20本/inch、横:20本/inch))を用いることも可能である。また、例えば、伸度2 0 0 % 以上、1 0 0 % 伸長時の回復率が8 0 % 以上である弾性繊維不織布( 例えば、K B セーレン( 株) 製、商品名「エスパンシオーネ」) を用いることも可能である。
【0051】
振動センサ30は、上記したフィルム16,16を積層する前に、いずれか一方の三次元立体編物10に固着して配設される。三次元立体編物10は一対のグランド編地と連結糸とから構成されるが、各連結糸の弦振動がグランド編地との節点を介してフィルム16,16及び板状発泡体21,22に伝達されるため、振動センサ30は感知部30aを三次元立体編物10の表面(グランド編地の表面)に固着することが好ましい。振動センサ30としては、マイクロフォンセンサ、中でも、コンデンサ型マイクロフォンセンサを用いることが好ましい。本実施形態では、マイクロフォンセンサを配置した部位(すなわち、三次元立体編物10を配置した配置用貫通孔15a)の密閉性を考慮する必要がないため、マイクロフォンセンサのリード線の配線は容易に行うことができる。本実施形態では、上記したように、生体信号に伴う人の筋肉及び骨格を介した体表面の振動は、三次元立体編物10だけでなく、板状発泡体21,22、フィルム16にも伝播され、それらが振動(弦振動、膜振動)して重畳されて増幅する。よって、振動センサ30は、三次元立体編物10に限らず、振動伝達経路を構成する板状発泡体21,22及びフィルム16に、その感知部30aを固定することもできる。なお、本実施形態では、三次元立体編物10、三次元立体編物支持部材15、板状発泡体21,22、フィルム16が生体信号を機械的に増幅させるため、これらが機械的増幅デバイスを構成する。
【0052】
上記した生体信号測定手段1は、例えば、図3に示したように、自動車用シート100のシートバックフレーム110に被覆される表皮120の内側に配置される。なお、配置作業を容易にするため、生体信号測定手段1を構成する三次元立体編物10、三次元立体編物支持部材15、フィルム16、板状発泡体21,22、振動センサ30等は予めユニット化しておくことが好ましい。
【0053】
上記した生体信号測定手段1は、三次元立体編物10と三次元立体編物10の周辺に積層される板状発泡体21,22とを備えた機械的増幅デバイス、好ましくは、三次元立体編物10と板状発泡体21,22との間にフィルム16が配設された機械的増幅デバイスを有し、この機械的増幅デバイスに振動センサが取り付けられた構成である。心拍、呼吸、心房や心室及び大動脈の揺動などの人の生体信号による体表面の微小振動は、板状発泡体21,22、フィルム16及び三次元立体編物10に伝播されるが、板状発泡体21,22及びフィルム16では膜振動を生じ、三次元立体編物には糸の弦振動を生じさせる。
【0054】
さらに言えば、三次元立体編物10は、一対のグランド編地間に連結糸が配設されてなるが、人の筋肉の荷重−たわみ特性に近似した荷重−たわみ特性を備えている。従って、三次元立体編物10を含んだ機械的増幅デバイスの荷重−たわみ特性を筋肉のそれに近似させたものにして、それを筋肉に隣接して配置されることで、筋肉及び三次元立体編物間の内外圧差が等しくなり、心拍、呼吸、心房や心室及び大動脈の揺動などの生体信号を正確に伝えることができ、これにより、三次元立体編物10を構成する糸(特に、連結糸)に弦振動を生じさせることができる。また、三次元立体編物10に積層された板状発泡体21,22、好ましくはビーズ発泡体は、ビーズの有する柔らかな弾性と小さな密度により各ビーズに膜振動が生じやすい。フィルム16は、周縁部を固定し、人の筋肉の荷重−たわみ特性に近似する三次元立体編物で弾性支持することにより、所定の張力が生じるため、膜振動が生じやすい。すなわち、生体信号測定手段1によれば、心拍、呼吸、心房や心室及び大動脈の揺動などの生体信号により、筋肉の荷重−たわみ特性に近似する荷重−たわみ特性をもつ機械的増幅デバイス内の板状発泡体21,22やフィルム16に膜振動が生じると共に、人の筋肉の荷重−たわみ特性に近似した荷重−たわみ特性を有する三次元立体編物10に弦振動が生じる。そして、三次元立体編物10の弦振動は再びフィルム16等の膜振動に影響を与え、これらの振動が重畳して作用する。その結果、生体信号に伴って体表面から入力される振動は、弦振動と膜振動との重畳によって増幅された固体振動として直接振動センサ30により検出されることになる。
【0055】
本発明で使用する生体信号測定手段1としては、従来のように密閉袋内の空気圧変動を検出する構成としたものを用いることも可能であるが、体積と圧力が反比例関係にあるため、密閉袋の体積を小さくしないと圧力変動を検出しにくい。これに対し、上記した生体信号測定手段1によれば、空気圧変動ではなく、上記のように、機械的増幅デバイス(三次元立体編物10、板状発泡体21,22、フィルム16)に伝播される増幅された固体振動を検出するものであるため、その容積(体積)が検出感度の観点から制限されることはほとんどなく、心拍、呼吸、心房や心室及び大動脈の揺動等に伴う振幅の小さな振動を感度良く検出できる。このため、多様な体格を有する人に対応できる。従って、上記生体信号測定手段1は、乗物用シートのように、多様な体格を有する人が利用し、さらに多様な外部振動が入力される環境下においても感度良く生体信号を検出できる。また、密閉構造を作る必要がないため、製造工程が簡素化され、製造コストも下げることができ、量産に適している。
【0056】
なお、上記した生体信号測定手段1は、シート100の表皮120の内側に組み込んでいるが、表皮120の表面に後付で取り付けるシート用クッションに組み込むようにしてもよい。但し、後付で取り付ける場合は、三次元立体編物が体重により予備圧縮が生じやすいように、シートと三次元立体編物との間に、硬い面を設けることが、例えば、面剛性の高い三次元立体編物、あるいは、ポリプロピレンなどの合成樹脂製の厚さ1〜2mm程度のプレートを挿入するなどすることが好ましい。例えば、柔らかい圧縮特性をもつシートの場合、三次元立体編物が予備圧縮されず、そのために生体信号が反射されずに吸収されてしまうが、上記のような硬い面を設けることにより、このようなシート側の圧縮特性のばらつきが吸収され、振幅の大きな生体信号がとりやすくなる。
【0057】
次に、生体状態推定装置60の構成について図4に基づいて説明する。生体状態推定装置60は、周波数演算手段610、周波数傾き時系列解析演算手段620、周波数解析手段630、回帰直線演算手段640、判定基準点算出手段650及び状態推定手段660を有して構成される。生体状態推定装置60は、コンピュータから構成され、周波数演算手段610により周波数演算手順が実行され、周波数傾き時系列解析演算手段620により周波数傾き時系列解析演算手順が実行され、周波数解析手段630により周波数解析手順が実行され、回帰直線演算手段640により回帰直線演算手順が実行され、判定基準点算出手段650により判定基準点算出手順が実行され、状態推定手段660により状態推定手順が実行される。なお、コンピュータプログラムは、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO(光磁気ディスク)、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体へ記憶させて提供することもできるし、通信回線を通じて伝送することも可能である。
【0058】
周波数演算手段610は、生体信号測定手段1の振動センサ30から得られ出力信号の時系列データ(APW)、好ましくは、フィルタリング処理(例えば、体動などにより生じた周波数成分を除去するフィルタリング処理)された所定の周波数領域の時系列データにおける周波数の時系列波形を求める。
【0059】
周波数演算手段610には、生体信号測定手段1の振動センサから得られる出力信号の時系列波形において、正と負との切り替わり地点(以下、「ゼロクロス点」という)を用いて周波数の時系列波形を求める方法(以下、「ゼロクロス検出手段」という)と、生体信号測定手段1の振動センサから得られる出力信号の時系列波形を平滑化微分して極大値(ピーク点)を用いて時系列波形を求める方法(以下、「ピーク検出手段」という)の2つの方法がある。
【0060】
ゼロクロス検出手段は、APWの基本周波数の変動の様子を捉えるのに適し、ピーク検出手段は心拍数すなわちAPWの複合波、例えば心拍数としてカウントされる高周波成分の周波数変動と基本周波数の変動の様子を捉えるのに適している。そして、ゆらぎ解析には、ゼロクロス検出手段・ピーク検出手段により求められた時系列波形に傾き時系列解析を適用することにした。
【0061】
すなわち、ゼロクロス検出手段のよる傾き時系列波形を絶対値処理した波形は、交感神経の出現状態を反映し、ピーク検出手段によるものは、副交感神経の出現状態を反映している。そこで、ゼロクロス検出手段を、自律神経系の制御で対処されるストレス適応と、その結果となる体調を表す指標に用いることにした。一方、快適又は不快と感じることにより生じる興奮と鎮静、あるいは満足と不満足という感覚(快・不快の感覚)に連動するものとしては、主に心拍数の周波数変動に連動するピーク検出手段による周波数変動の時系列波形と、覚醒と睡眠に連動するゼロクロス検出手段による傾き時系列波形の周波数分析によるゆらぎ波形を得点化したものとを併せて指標化した。
【0062】
ゼロクロス検出手段(ゼロクロス手順)は、まず、ゼロクロス点を求めたならば、それを例えば5秒毎に切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形のゼロクロス点間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する(図5の[1]のステップ)。そして、この5秒毎に得られる周波数Fをプロットすることにより、周波数の時系列波形を求める(図5の[2]のステップ)。ピーク検出手段(ピーク検出手順)は、例えば、SavitzkyとGolayによる平滑化微分法により極大値を求める。次に、例えば5秒ごとに極大値を切り分け、その5秒間に含まれる時系列波形の極大値であるピーク点(波形の山側頂部)間の時間間隔の逆数を個別周波数fとして求め、その5秒間における個別周波数fの平均値を当該5秒間の周波数Fの値として採用する(図5の[1]のステップ)。そして、この5秒毎に得られる周波数Fをプロットすることにより、周波数の時系列波形を求める(図5の[2]のステップ)。
【0063】
周波数傾き時系列解析演算手段620は、周波数演算手段610によって、ゼロクロス検出手段又はピーク検出手段を用いて得られた生体信号測定手段1の振動センサの出力信号の周波数の時系列波形(APW)から、所定の時間幅の時間窓を設定し、時間窓毎に最小二乗法により振動センサの出力信号の周波数の傾きを求め、その時系列波形を出力する構成である。具体的には、まず、ある時間窓Tw1における周波数の傾きを最小二乗法により求めてプロットする(図5の[3],[5]のステップ)。次に、オーバーラップ時間Tl(図5の[6]のステップ)で次の時間窓Tw2を設定し、この時間窓Tw2における周波数の傾きを同様に最小二乗法により求めてプロットする。この計算(移動計算)を順次繰り返し、出力信号の周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する(図5の[8]のステップ)。なお、時間窓Twの時間幅は180秒に設定することが好ましく、オーバーラップ時間Tlは162秒に設定することが好ましい。これは、本出願人による上記特許文献3(WO2005/092193A1公報)において示したように、時間窓Twの時間幅及びオーバーラップ時間Tlを種々変更して行った睡眠実験から、特徴的な信号波形が最も感度よく出現する値として選択されたものである。
【0064】
周波数解析手段630は、周波数傾き時系列解析演算手段620から得られる周波数傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトルを求める手段である。
【0065】
回帰直線演算手段640は、周波数解析手段630により出力される解析波形(ゆらぎ波形)について、所定の周期領域(周波数範囲)毎に回帰直線を求める手段である。
【0066】
回帰直線演算手段640における所定の周波数領域毎とは、上記のように、人の恒常性を維持するゆらぎがVLF領域及びULF領域に存在することから、本実施形態では、これらの領域内で所定の周期領域を設定した。具体的には、恒常性維持に関係する全体的な状態を示す0.0033Hz近傍の0.0035Hzを中心とした長周期領域(低周波帯域)と、末梢系に対応するバリアーの反応のようなストレスに対する適応状態や快・不快の状態に関係する0.01Hzを中心とした中周期領域(中周波帯域)及び0.0225Hzを中心とした短周期領域(高周波帯域)である。0.01Hzを中心とした中周期領域(中周波帯域)及び0.0225Hzを中心とした短周期領域(高周波帯域)は、ストレスに対する適応状態や快・不快の状態に関係するゆらぎが振幅の大きな変動を生み、これが分岐現象をつくることになるので、振幅変動の大きいところを統計的に調べて結果見出したものである。そこで、本実施形態では、これらの中心周波数が中央値となる範囲として、長周期領域を、0.0035Hzを中心とした0.001Hz〜0.006Hzの範囲に、中周期領域を、0.01Hzを中心とした0.006Hz〜0.015Hzに、短周期領域を、0.015Hz〜0.03Hzにそれぞれ設定した。
【0067】
回帰直線演算手段640は、上記した各周期領域において、それぞれの中心周波数を中央値として最小二乗法により回帰直線を求める。
【0068】
また、回帰直線演算手段640は、ULF領域とVLF領域との境界である0.0035Hz(なお、ULF領域とVLF領域の境界は0.0033Hzとされているが、本実施形態では、計算の便宜上0.0035Hzに設定している。)から、長周期領域をさらに2つに分け、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線をそれぞれ求める手段を有している。
【0069】
従って、回帰直線演算手段640は、長周期領域では、長周期領域全体で0.0035Hzを中心とした1本の回帰直線を求める演算と、ULF領域及びVLF領域の各回帰直線を求める演算とを実行する。そして、さらに、回帰直線演算手段640は、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線の各傾きの積が所定値以下か否かを判定し、所定値以下の場合にはULF領域及びVLF領域の各回帰直線を採用し、所定値を上回る場合には長周期領域の全体における0.0035Hzを中心とした回帰直線を採用する。
【0070】
これは、長周期領域は、入眠予兆現象など、特に人が全身状態を大きく変えようとする場合に生じるため、前兆現象としては、眠気となって現れてくる。そうすると、VLF領域は1/fとなり、1本の回帰直線で表される。ところが、これから睡眠が迫ってくる切迫した状態になると、VLF領域が大きくなってくる。そうなると、V字形、逆V字形が生じ、これが切迫した眠気となって現れる。そのため、常に、0.0035Hzを中心とした1本の回帰直線のみとすると、眠気へ進む状態変化の過渡期を広く捉えることになるため、眠気の強弱が分からなくなる。そこで、ULF領域及びVLF領域の2本の回帰直線を求める構成としたものである。
【0071】
判定基準点算出手段650は、回帰直線演算手段640により上記周期領域毎に求められる各回帰直線を、その傾きに基づいて領域得点を付与すると共に、各回帰直線全体の形状得点を求め、この領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、生体の状態を推定するための判定基準点を算出する。
【0072】
領域得点は、各回帰直線の傾きに応じた得点である。各回帰直線の傾きを略水平状態、上向き及び下向きの3つに分けて付与する。下向きの場合には略水平状態の得点よりも高い得点を付与し、上向きの場合には略水平状態の得点よりも低い得点を付与する。傾きが上向きの場合には、自律神経系の制御が亢進している状態であり、傾きが下向きの場合には、自律神経系の制御が安定している状態であるため、略水平状態を基準として、前者を低くし、後者を高くしたものである。回帰直線の傾きが略水平状態であるか否かは、例えば、水平に対して±1〜±10度の範囲に収まった場合に略水平状態と判定するように設定できる。なお、略水平状態は、自律神経系の制御の方向性が定まっておらず、混沌としている状態あるいは強制的な精神面でのコントロールが入っているような耐えている状態を示すと考えられる。
【0073】
形状得点は、回帰直線演算手段640により求められた各回帰直線を併せた全体の形状に関する得点である。隣接する各回帰直線の端部同士を相互に仮想的に結んだ仮想接続線を想定すると、隣接する2つの回帰直線がほぼ一直線になる場合もあれば、隣接する2つの回帰直線の傾きの違い及びパワースペクトル密度の値の違いにより、いずれか少なくとも一方の回帰直線と仮想接続線との間で折れ点が生じる場合もある。この折れ点は分岐現象であり、その数は、本出願人が先に提案した特願2011−43428に開示の試験結果によれば、健康で覚醒・リラックス・安定状態では1つ又はゼロであり、健康であっても眠気があったり、疲労状態であったりする場合には、折れ点の数が増加し、同様に、病気の状態でも折れ点の数が増加することが分かっている。そこで、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以上の場合、及び、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって2つの回帰直線の傾きの角度の違いが予め設定した所定角度以上の場合に、それぞれ折れ点としてカウントする。なお、隣接する2つの回帰直線のパワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって、2つの回帰直線の傾きの角度の違いが、予め設定した所定角度以内の場合には、一直線とみなし、両者間に折れ点はないと判定する。
【0074】
形状得点は、本実施形態では折れ点数が少ないほど高得点となるように設定している。例えば、折れ点が3箇所の場合:0点、折れ点が2箇所の場合:1点、折れ点が1箇所の場合:2点、折れ点がない場合:3点というように設定する。なお、これはあくまで一例であり、このように設定することで、健康でリラックスして安定状態にあるほど得点が高くなるが、例えば、それが逆になるように設定することも可能である。
【0075】
状態推定手段660は、判定基準点算出手段650により求められる各解析波形(ゆらぎ波形)の判定基準点の時系列の変化を基に、生体の状態を推定する。判定基準点は、上記したように、恒常性維持、ストレスに対する適応状態や快・不快の状態、疲労、未病、病気及び健常等の体調に関する状態(ここで、これらを含めて「全身状態」という)に関係するゆらぎ波形の周波数を一定基準のもとで得点化したものである。従って、その得点の時系列変化は、全身状態がどのように変化したかを推定でき、さらに、その傾向から、今後起こりえる状態の変化の可能性、特に、現在の恒常性維持の状態から急変を推定できる。状態推定手段660は、このような判定基準点の時系列の変化を捉え、状態の変化を推定できるものであれば、その手法は限定されるものではないが、本実施形態では、体調の変化の推定及び全身状態の変化の推定に適する次の2つの手法を用いた。
【0076】
A)体調の変化の推定に適する状態推定手段660:
比較対象の前後2つの時間範囲における解析波形の判定基準点間において、次式:
機能点=後時間範囲の判定基準点+(後時間範囲の判定基準点−前時間範囲の判定基準点)×n、(但し、nは補正係数)
により求められる機能点を時系列に求めていく手段である。
【0077】
なお、n(補正係数)は、解析対象とする周波数領域(周波数帯)の数で決定する。本実施形態では、長周期領域、中周期領域及び短周期領域の3つの周波数領域での変化を捉えているため、n=3に設定した。
【0078】
また、ここで用いる判定基準点は、領域得点と形状得点とを合わせた得点である。領域得点は、恒常性を維持するためのゆらぎの安定度を示すものであり、形状得点は、分岐現象から健康状態や病気状態などを推定し、同定するものであるため、機能点はそれらを合わせた得点を用いて求めることが好ましい。この機能点の時系列変化は、好調の場合にはプラス側で推移し、不調の場合にはマイナス側で推移する。従って、好調、不調の時間的変化を容易に判定することができる。なお、この手段において、ゼロクロス検出手段により周波数時系列波形を求めた場合には、交感神経に関係した恒常性維持に関する変化の状態が得られ、ピーク検出手段により周波数時系列波形を求めた場合では、副交感神経に関係した恒常性維持に関する変化の状態が得られる。全身状態は、自律神経系の制御によって恒常性の維持が保たれ、交感神経と副交感神経のバランスで制御の様子と全身状態が変化していく。
【0079】
B)全身状態の変化の推定に適する状態推定手段660:
交感神経系の活動状態を示すゼロクロス検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第1の判定基準点と、副交感神経系の活動状態を示すピーク検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第2の判定基準点とを用い、第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる全身状態の変化の様子を座標の時系列変化として求める手段である。
【0080】
第1の判定基準点と第2の判定基準点とを併せた時系列変化は、次のように求められる。例えば、ゼロクロス検出手段を用いて得られる第1判定基準点を横軸とし、ピーク検出手段を用いて得られる第2判定基準点を縦軸とする。ゼロクロス検出手段を用いた周波数傾き時系列波形は、上記のように交感神経の状態を表し、そのピーク検出手段を用いた周波数傾き時系列波形は、上記のように、副交感神経の状態を表す。そこで、交感神経優位で副交感神経の働きが小さい状態、副交感神経優位で交感神経の働きが小さい状態、及びこれらの中間状態を座標系に示した。
【0081】
具体的には、交感神経優位で副交感神経の働きが小さい領域を活性・抵抗領域とし、副交感神経優位で交感神経の働きが小さい場合を耐性・適応領域とした。交感神経亢進の状態から機能が低下し副交感神経優位の状態に変化する過程の中間状態を耐性・抵抗領域とし、副交感神経優位の状態から交感神経が亢進し交感神経優位の状態に変化する過程の中間状態を活性・適応領域とした。そして座標系の4つの象限が、これらに対応するように、座標系を設定した(図6(e)参照)。
【0082】
状態推定手段660は、所定の時間幅での解析波形(ゆらぎ波形)毎に求められる第1の判定基準点及び第2の判定基準点を用いて、上記のように設定した座標系にプロットし、それらを時系列に結んだ座標時系列変化線を作成する。具体的には、まず、初期値としては、測定最初の時間幅における第1及び第2の判定基準点からそれぞれ求められた各機能点を用いる。この初期値の座標を基準として、時間幅毎に求められる第1及び第2の判定基準点に用いた回帰直線の傾きを利用して次の座標をプロットし、全ての座標を結び、座標時系列変化線を作成する。本実施形態では、例えば、初期値から次の時間幅に関する座標をプロットする場合、当該時間幅において得られる回帰直線の傾きについて、座標上の移動幅を傾き毎に設定し、プロット位置を求める。すなわち、回帰直線が略水平状態の場合はいずれの場合もゼロとして、いずれの方向にも動かさず、上向きの場合又は下向きの場合にはプロット位置を移動させる。本実施形態では、ゼロクロス検出手段による得られた回帰直線では、上向きの場合に−1移動し、下向きの場合に+1移動するように設定すると共に、ピーク検出手段により得られた回帰直線では、上向きの場合に+1移動し、下向きの場合に−1移動するように設定した。これにより、座標時系列変化線が作成される。
【0083】
図6は、本実施形態における状態推定手段660によって作成される座標時系列変化線の具体的な作成方法である。
【0084】
まず、初期位置をプロットする。例えば、ゼロクロス検出手段を用いた第1の判定基準点から求めた機能点が+2で、ピーク検出手段を用いた第2の判定基準点から求めた機能点が+4であるとすると、横軸(X軸)=+2、縦軸(Y軸)=+4の座標を初期位置としてプロットする(図6(e))。
【0085】
次に、4.8〜30minまでの解析波形の回帰直線に基づいて、30分後の全身状態を示す位置に座標を移動する。ゼロクロス検出手段を用いた解析波形の長周期領域の回帰直線は下向きであるためX軸に+1、中周期領域の回帰直線は上向きであるためX軸に−1、短周期領域の回帰直線は下向きであるためX軸に+1と順に動かす(図6(a))。ピーク検出手段を用いた解析波形の長周期領域の回帰直線は下向きであるためY軸に−1、中周期領域の回帰直線は下向きであるためY軸に−1、短周期領域の回帰直線は略水平であるため0と順に動かす(図6(c))。その結果、図6(e)に示したように、30分後の全身状態の位置が求められる。
【0086】
次に、16.8〜36.6minの解析波形の回帰直線に基づいて、37分後の全身状態を示す位置に座標を移動する。ゼロクロス検出手段を用いた解析波形の長周期領域の回帰直線は上向きであるためX軸に−1、中周期領域の回帰直線は上向きであるためX軸に−1、短周期領域の回帰直線は下向きであるためX軸に+1と順に動かす(図6(b))。ピーク検出手段を用いた解析波形の長周期領域の回帰直線は下向きであるためY軸に−1、中周期領域の回帰直線は下向きであるためY軸に−1、短周期領域の回帰直線は下向きであるためY軸に−1と順に動かす(図6(d))。その結果、図6(e)に示したように、37分後の全身状態の位置が求められる。そして、初期位置、30分の全身状態を示す位置、37分の全身状態を示す位置の各座標を結ぶと座標時系列変化線が作成される。
【0087】
状態推定手段660は、このようにして座標時系列変化線を作成したならば、各座標時系列変化線が主にいずれの領域に含まれるかを判定する。すなわち、活性・抵抗領域(図中「フーフー」で表示した象限(フーフー領域))、耐性・適応領域(図中「ユウユウ」で表示した象限(ユウユウ領域))、耐性・抵抗領域(図中「ヘトヘト」で表示した象限(ヘトヘト領域))、活性・適応領域(図中「ハツラツ」で表示した象限(ハツラツ領域))のいずれに含まれるかを判定する(図17(b)に示した座標参照)。活性・抵抗領域(フーフー領域)であれば、交感神経優位で安定し、攻撃性の高い状態が続いていると判定し、耐性・適応領域(ユウユウ領域)であれば、副交感神経優位で安定しリラックスした状態が続いていると判定し、耐性・抵抗領域(ヘトヘト領域)であれば、交感神経の機能低下が生じながら副交感神経優位な状態に変化していきつつある、だるく憂鬱感を感じる領域と判定し、活性・適応領域(ハツラツ領域)であれば、交感神経が亢進して副交感神経優位な状態から交感神経優位な状態に移行しつつある、集中度が高く緊張した状態と判定する。
【0088】
ここで、図17(b)では、各象限に45度の斜線を設定している。この斜線上が、上記した領域の特徴が最も現れている部分である。例えば、所定の計測時間にわたって交感神経活動が副交感神経活動よりも明確に優位な状態が継続して続けば、フーフー領域の45度の斜線上に座標がプロットされる。しかし、実際には、交感神経優位の中で様々な副交感神経活動が行われ、かつ、交感神経活動及び副交感神経活動が共に変化するため、斜線上にプロットされるとは限らず、ハツラツ領域の特徴が混在したり、ヘトヘト領域の特徴が混在したりする。このため、45度の斜線で各領域を区切ることにより、例えば、フーフー領域の中で斜線の右上側に座標がプロットされる場合には、その時点では、フーフー領域の特徴が高いながらもハツラツ領域の特徴が混在しているということであり、逆に左下側に座標がプロットされる場合には、フーフー領域の特徴が高いながらもヘトヘト領域の特徴が混在しているということである。
なお、図17(b)及び後述の各試験例の判定結果(図16、図23、図32、図41、図52)において示した座標系では、横軸のプラス側を「適応」、マイナス側を「抵抗」と設定し、縦軸のプラス側を「活性」、マイナス側を「耐性」と設定しているが、これを、心理学上の用語で表現すると次のようになる。すなわち、交感神経活動に関連する横軸は、プラス方向に値が大きくなるほど「プラスの「発揮」大」となり、マイナス方向に値が大きくなるほど「マイナスの「発揮」大」となる。副交感神経活動に関連する縦軸は、プラス方向に値が大きくなるほど「プラスの「求められている」大」となり、マイナス方向に値が大きくなるほど「マイナスの「求められている」大」となる。そして、座標原点(0,0)に近づくほど、「発揮」及び「求められている」はいずれも小さくなる。このように心理学上の用語で設定すると、例えば、「ハツラツ領域」は「プラスの「発揮」大」でかつ「プラスの「求められている」大」の領域となり、「ハツラツ」あるいは「集中・高揚・緊張・喜び」として表現した領域の意味合いにマッチする。
【0089】
状態推定手段660は、それぞれの座標時系列変化線について、1/fの傾きに近似した変化傾向であると判定された場合には快適と判定し、上下方向に変化していると判定された場合には不快と判定するように設定することもできる。例えば、活性・抵抗領域において、座標時系列変化線の傾きが1/f傾きに近いほど、攻撃性の高いというベース状態の中でも、快適感が高いため比較的リラックスした傾向にあると推定でき、逆に、耐性・適応領域において上下方向に伸びる座標時系列変化線であれば、リラックスしたベース状態の中でも不快感が高いため機能低下が生じていると推定でき、より細かな状態推定に役立つ。
【0090】
一方、状態推定手段660は、ある状態(ある時間帯)において求めたある一つの座標時系列変化線と、他の状態(他の時間帯)において求めた他の座標時系列変化線との全体の主な移動方向を判定する。
【0091】
そして、主な移動方向が、活性・適応領域及び耐性・適応領域間である場合に、体調良好の中で疲労が進行している状態で、健康的な疲労感と安定化傾向を示すと推定し、活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合には、比較的おだやかな状態変化となって通常状態と推定し、耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合には、急激な変化・変動に伴うリバウンド、つまり体調の急変の可能性が示唆される状態と推定する。これらの領域は、上記したように、交感神経、副交感神経の状態に対応して設定した領域であり、活性・適応領域及び耐性・適応領域間で移動する場合は、副交感神経優位の安定状態と、交感神経の亢進が行われている状態との間での移動であるため、リラックス状態の中でハツラツとした状態があるため、体調が良好で元気な状態での変化と推定できる。活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間で移動する場合は、交感神経優位の状態と副交感神経優位の状態とが切り替わるものであるため、大きな変動を伴わず、比較的ゆっくりとした状態の切り替わりを示し、通常の体調や感覚の切り替わり範囲であり、通常状態における変化と推定できる。耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合には、ヘトヘト感を感じる状態とハツラツとした感覚を感じる状態との急激な変化であり、急激な変化に体調がついて行かず、体調自体が急変のおそれのある状態と推定できる。なお、「主な移動方向」とは、座標時系列変化線が、複数の領域を跨って移動したりする場合もあるため、Y軸に沿った移動量又は斜めの仮想軸に沿った移動量が、他の軸に沿った移動量よりも大きいことをいう。
【0092】
以下、試験例に基づき、判定手段660における判定方法をさらに詳細に説明する。
【0093】
(試験例1)
図1に示した生体信号測定手段1を、(株)デルタツーリング製、シートクッションである商品名「ツインランバー」の背部の裏側に積層し、自動車用シートに取り付け、被験者を着座させ、座位姿勢での心房や心室及び大動脈の揺動による生体信号、いわゆる体表脈波(以下、「心部揺動波」というが、「APW」と略記する場合もある)を採取した。なお、生体信号測定手段1を構成する板状発泡体21,22及び三次元立体編物支持部材15は、ビーズの平均直径が約5mmで、厚さ3mmにスライスカットしたビーズ発泡体を用いた。三次元立体編物10は、住江織物(株)製、製品番号:49011Dで、厚さ10mmのものであった。フィルム16は、シーダム株式会社製、品番「DUS605−CDR」を用いた。被験者は、70歳代の健康な男性である。また、上記自動車用シートを助手席に搭載して、停止状態の静的条件下で測定する試験と、その後自動車を走行させながら測定した実車走行試験とを行った。
【0094】
生体信号測定手段1から得られた心部揺動波を周波数演算手段610においてゼロクロス(0x)検出手段及びピーク(peak)検出手段を適用して処理し、それぞれについて周波数の時系列波形を求め、各周波数の時系列波形を、周波数傾き時系列解析演算手段620により処理して周波数の傾きの時系列波形を求めた。次に、周波数解析手段630は、各周波数傾き時系列波形を周波数解析し、それぞれパワースペクトルを求め、横軸に周波数(対数値)を、縦軸にパワースペクトル密度(対数値)をとって解析波形(ゆらぎ波形)を表示した。
【0095】
図7及び図8は、静的条件下で行った試験の結果であり、図7は、ゼロクロス検出手段を適用して得られた結果であり、図8は、ピーク検出手段を適用して得られた結果である。図7及び図8の(a)は、測定開始4.8〜30.3minの解析波形であり、(b)は4.8〜19.8minの解析波形であり、(c)は5.1〜24.9minの解析波形であり、(d)は10.2〜30.3minの解析波形であり、(a)〜(d)の各図に記載の得点は、判定基準点算出手段650により求められた判定基準点であり、(e)はそれらから求めた機能点を示す。
【0096】
なお、この判定基準点の領域得点を求める際、回帰直線が、水平に対して±4.5度以内の場合を略水平状態とした。また、隣接する2つの回帰直線のパワースペクトル密度の値の較差が対数値で0.2以内であって、2つの回帰直線の傾きの角度の違いが15度以内の場合には、一直線とみなし、両者間に折れ点はないと判定する。また、領域得点は、略水平状態で1点を基準として、上向きの場合には0点、下向きの場合には2点とした。形状得点は、折れ点の箇所がない場合に3点、折れ点が1箇所の場合に2点、折れ点が2箇所の場合に1点、折れ点が3箇所の場合に3点と設定した。
【0097】
これにより、ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点を求める図7(a)の解析波形では、長周期領域、中周期領域及び短周期領域共に、回帰直線が下向きであるため、領域得点が2+2+2=6点となり、折れ点が3箇所であるため、形状得点が0点となる。従って、その第1判定基準点は両者を合わせた6点となる。図7(b)の解析波形では、長周期領域、中周期領域及び短周期領域共に、回帰直線が下向きであるため、領域得点が2+2+2=6点となり、折れ点が0箇所であるため、形状得点が3点となる。従って、その第1判定基準点は両者を合わせた9点となる。図7(c)の解析波形では、長周期領域が下向き、中周期領域が上向き、短周期領域が略水平状態であるため、領域得点が2+0+1=3点となり、折れ点が3箇所であるため形状得点が0点で、第1判定基準点は3点となる。図7(d)の解析波形では、長周期領域が下向き、中周期領域が上向き、短周期領域が上向きであるため、領域得点が2+0+0=2点となり、折れ点が3箇所であるため形状得点が0点で、第1判定基準点は2点となる。
【0098】
一方、ピーク検出手段を用いた第2判定基準点を求める図8(a)の解析波形では、長周期領域、中周期領域及び短周期領域共に、回帰直線が下向きであるため、領域得点が2+2+2=6点となり、折れ点が3箇所であるため、形状得点が0点となる。従って、その第2判定基準点は両者を合わせた6点となる。図8(b)の解析波形では、長周期領域が略水平状態、中周期領域及び短周期領域共に、回帰直線が下向きであるため、領域得点が1+2+2=5点となり、折れ点が1箇所であるため、形状得点が2点となる。従って、その第2判定基準点は両者を合わせた7点となる。図8(c),(d)の解析波形は、いずれも、長周期領域、中周期領域及び短周期領域共に下向きであるため、領域得点が2+2+2=6点となり、折れ点が3箇所であるため形状得点が0点で、第2判定基準点はいずれも6点となる。
【0099】
図9〜図10は、「小谷SA〜与島PA」間を走行した際の試験結果であり、図9は、ゼロクロス検出手段を適用して得られた結果であり、図9(a)〜(d)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第1判定基準点を示し、(e)は、第1判定基準点を用いて求めた機能点を示す。図10は、ピーク検出手段を適用して得られた結果であり、図10(a)〜(d)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第2判定基準点を示し、(e)は、第2判定基準点を用いて求めた機能点を示す。
【0100】
図11〜図12は、「与島PA〜山越」間を走行した際の試験結果であり、図11は、ゼロクロス検出手段を適用して得られた結果であり、図11(a)〜(c)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第1判定基準点を示し、(d)は、第1判定基準点を用いて求めた機能点を示す。図12は、ピーク検出手段を適用して得られた結果であり、図12(a)〜(c)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第2判定基準点を示し、(d)は、第2判定基準点を用いて求めた機能点を示す。
【0101】
図13〜図14は、「山越〜石鎚山SA」間を走行した際の試験結果であり、図13は、ゼロクロス検出手段を適用して得られた結果であり、図13(a)〜(g)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第1判定基準点を示し、(h)は、第1判定基準点を用いて求めた機能点を示す。図14は、ピーク検出手段を適用して得られた結果であり、図14(a)〜(g)に示した得点は、領域得点と形状得点とを合わせた第2判定基準点を示し、(h)は、第1判定基準点を用いて求めた機能点を示す。
【0102】
図15(a)は、状態推定手段660により、図7、図9、図11及び図13のゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点から機能点を求め、それを時系列にプロットした図である。
【0103】
例えば、静的状態では、図7(e)に示したように、まず、初期値は、「前時間範囲の判定基準点」として「4.8〜19.8min」の第1判定基準点を用い、「後時間範囲の判定基準点」として「4.8〜30.3min」の第1判定基準点を用いる。これを上記式にあてはめると、6+(6−9)×3=−3点が機能点となる。25分の機能点は、「前時間範囲の判定基準点」として「4.8〜19.8min」の第1判定基準点を用い、「後時間範囲の判定基準点」として「5.1〜24.9min」の第1判定基準点を用いる。これを上記式にあてはめると、25分の機能点は、3+(3−9)×3=−15点となる。30分の機能点は、「前時間範囲の判定基準点」として「5.1〜24.9min」の第1判定基準点を用い、「後時間範囲の判定基準点」として「10.2〜30.3min」の第1判定基準点を用いる。これを上記式にあてはめると、30分の機能点は、2+(2−3)×3=−1点となる。
【0104】
「小谷SA〜与島PA」間を走行した際の機能点は、図9(e)に示したように、初期値=−6点、40分=6点、50分=3点となる。「与島PA〜山越」間を走行した際の機能点は、図11(d)に示したように、初期値=−4点、40分=−4点となる。「山越〜石鎚山SA」間を走行した際の機能点は、図13(h)に示したように、初期値=6点、40分=20点、50分=4点、60分=15点、70分=−19点、80分=10点となる。
【0105】
図15(b)は、状態推定手段660により、図8、図10、図12及び図14のピーク検出手段を適用した第2判定基準点から機能点を求め、それを時系列にプロットした図である。求め方は上記と同様であり、静的状態の機能点は、図8(e)に示したように、初期値=3点、25分=3点、30分=8点となる。「小谷SA〜与島PA」間を走行した際の機能点は、図10(e)に示したように、初期値=11点、40分=−3点、50分=7点となる。「与島PA〜山越」間を走行した際の機能点は、図12(d)に示したように、初期値=5点、40分=13点となる。「山越〜石鎚山SA」間を走行した際の機能点は、図14(h)に示したように、初期値=2点、40分=6点、50分=19点、60分=15点、70分=−15点、80分=19点となる。
【0106】
図15(a)から、ゼロクロス検出手段を利用して求めた機能点は、走行前の静的状態ではマイナス側すなわち不調側で推移している。しかし、走行を始めると、プラス側すなわち好調側で機能点が推移している。従って、この被験者は、ゼロクロス検出手段を利用して求めた機能点の推移から、走行状態で交感神経が活性化され好調になる傾向があると言える。
【0107】
図15(b)では、走行前の静的状態及び走行中も含め、ピーク検出手段を利用して求めた機能点は、ほぼプラス側すなわち好調側で推移しており、全体としてリラックスしていると言える。
【0108】
但し、「山越〜石鎚山SA」間を走行した際の70分においては、ゼロクロス検出手段を利用して求めた機能点及びピーク検出手段を利用して求めた機能点のいずれも−15点であり、70分において、不調の程度が大きくなっていることわかる。
【0109】
一方、図16は、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めた図である。求め方は、図6で説明したとおりであり、静的状態、「小谷SA〜与島PA」間の走行時、「与島PA〜山越」間の走行時、「山越〜石鎚山SA」間の走行時について、それぞれ座標時系列変化線を座標系上に描画した。
【0110】
例えば、静的状態では、初期位置として、図7及び図8の初期値の機能点の座標:(ゼロクロス検出手段を利用して求めた機能点,ピーク検出手段を利用して求めた機能点)=(−3,3)をプロットする。次に、「4.8〜19.8min」では、X軸方向に+3、Y軸方向に−2移動し、20分後の全身状態の位置を(0,1)にプロットする。次に、「5.1〜24.9min」では、X軸方向に0、Y軸方向に−3移動し、25分後の全身状態の位置を(0,−2)にプロットする。次に、「10.2〜30.3min」では、X軸方向に−1、Y軸方向に−3移動し、30分後の全身状態の位置を(−1,−5)にプロットする。そして、これらの座標を結び、静的状態における座標時系列変化線が作成される。
【0111】
同様に、「小谷SA〜与島PA」間の走行時、「与島PA〜山越」間の走行時、「山越〜石鎚山SA」間の走行時について座標時系列変化線を作成する。
【0112】
この図から、各状態間において、座標時系列変化線の主な移動方向は、活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間であり、通常状態と推定できる。被験者の官能評価を示したものが図17(a)であるが、官能評価値の移動方向は、座標時系列変化線の移動方向に符合する。
【0113】
一方、座標時系列変化線を個別に見ると、いずれも、初期位置よりも縦軸に沿って低下する傾向にある。これは、疲労が蓄積され、睡眠状態に移行する過程で体がリラックスしていくことにより、副交感神経優位の状態に推移していくためである。この推移の仕方は、図17(a)の官能評価値の推移と同様である。
【0114】
さらに細かく見ると、静的状態では、フーフー領域とハツラツ領域が混在した状態から、ヘトヘト領域とユウユウ領域が混在した状態に変化しており、試験のために乗車した直後は元気な状態であったが、車の中で静的状態でデータ測定している間に疲労が蓄積されたものと判定できる。「与島PA〜山越」間では、フーフー領域の中でハツラツ領域の特徴が混在した状態からヘトヘト領域が混在した状態に変化しており、走行により交感神経活動が活発化しているが、徐々に疲労が蓄積されてきたと判定できる。「小谷SA〜与島PA」間の走行時は、フーフー領域とハツラツ領域が混在した状態の中で推移しており、総じて交感神経優位の状態が維持されているが、縦軸にほぼ垂直に低下していることから、疲労の蓄積が生じたものと判定できる。
【0115】
ここで、静的状態で19分頃からと、「山越〜石鎚山SA」間において、被験者は30分過ぎから睡眠状態になった(観察者の視察及び測定後の被験者の自己申告)。静的状態では拘束感の高い状態での睡眠で質の悪い睡眠となり、座標時系列変化線は垂直に近い状態で下降していき、眠たいのに疲労感が残るものになっている。一方、「山越〜石鎚山SA」間の座標時系列変化線を見ると、ハツラツ領域から次第にユウユウ領域の特徴が大きくなる傾向で、30分過ぎ以降は、1/fに近い傾きになっており、このことから、被験者がリラックスして質のよい睡眠に至ったことを示している。但し、40.2分以降からは、傾きの乱れが生じており、若干寝起きが悪く疲労感が残るやや質の悪い睡眠に変化していることがわかる。図17(a)の官能評価値を見ると、「山越〜石鎚山SA」間では、満足度が上昇しており、睡眠の効果が現れたものと考えられる。
【0116】
(試験例2)
図1に示した生体信号測定手段1を、(株)デルタツーリング製、シートクッションである商品名「ツインランバー」の背部の裏側に積層し、自動車用シートに取り付け、被験者を着座させ、座位姿勢(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))で心房や心室及び大動脈の揺動による生体信号(以下、「心部揺動波」というが、「APW」と略記する場合もある)を採取した。また、シートバックを通常の座位姿勢(覚醒誘導姿勢)よりも大腿部と脊柱の開度を広げた座位姿勢(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))でも生体信号(APW)を採取した。生体信号測定手段1のその他の構成は、試験例1のものと同じである、また、被験者は40歳代の健康な男性である。なお、図25及び図26は、試験中に測定した脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示したものであり、図25は覚醒誘導姿勢の結果を、図26はリラックス姿勢の結果を示し、覚醒誘導姿勢では試験中、被験者は覚醒状態であり、リラックス姿勢では、試験中盤と終盤において睡眠状態であった。
【0117】
図18〜図21の(a)は、測定開始4.8〜30.3minの解析波形であり、(b)は4.8〜19.8minの解析波形であり、(c)は5.1〜24.9minの解析波形であり、(d)は10.2〜30.3minの解析波形であり、各図に記載の得点は、判定基準点算出手段650により求められた判定基準点である。
【0118】
(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図18(a)では3点、図18(b)では6点、図18(c)では3点、図18(d)では3点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図19(a)では4点、図19(b)では4点、図19(c)では3点、図19(d)では4点であった。
【0119】
(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図20(a)では4点、図20(b)では5点、図20(c)では9点、図20(d)では6点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図21(a)では3点、図21(b)では8点、図21(c)では7点、図21(d)では4点であった。
【0120】
図22は、状態推定手段660により、図18及び図20のゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点かから求めた機能点、並びに、図19及び図21のピーク検出手段を適用した第2判定基準点から求めた機能点を、それぞれ時系列にプロットした図である。求め方は試験例1と同様であり、いずれも概ね−5点から+5点の範囲であり、通常の状態の中でのゆらぎの範囲に収まっている。また、リラックス姿勢でのゼロクロス検出手段による機能点では、25分で+20点以上となり、体調の回復過程であることもわかる。従って、この被験者は、全体としては通常の健康状態であるが、寝ることにより体調(疲労)の回復も図られることがわかる。なお、実験は、睡眠状態をリラックス姿勢で行い、覚醒状態を覚醒誘導姿勢で行ってAPWを採取した。また、睡眠から覚醒、すなわち、リラックス姿勢から覚醒誘導姿勢の順で行った。
【0121】
図23は、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めた図である。求め方は、試験例1と同様であり、「覚醒誘導姿勢」と「リラックス姿勢」の2つの状態での座標時系列変化線を描画した。
【0122】
その結果、概ね、座標時系列変化線の主な移動方向は、活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間であり、通常状態と推定できる。
【0123】
一方、座標時系列変化線を個別に見ると、いずれも、初期位置よりも縦軸に沿って低下する傾向にある。これは、疲労が蓄積され、睡眠状態に移行する過程で体がリラックスしていくことにより、副交感神経優位の状態に推移していくためである。
【0124】
さらに詳細には、覚醒誘導姿勢は、フーフー領域とヘトヘト領域の特徴が混在した領域で変化しており、交感神経優位の状態から副交感神経優位に移行する過程と判定できる。また、座標時系列変化線の変化量が小さく、疲労感の少ない状態で覚醒誘導姿勢での実験が行われたことがわかる。一方リラックス姿勢における座標時系列変化線は、ユウユウ領域でありながら、ヘトヘト領域の特徴に近いところで推移しており、基本的体調がやや不調気味といえるが、座標時系列変化線の傾きは、1/fに近く、比較的質のよい睡眠がとれ、リラックス状態を併用しながら機能回復の途上にあると判定できる。がわかる。
【0125】
(試験例3)
20歳代男性被験者について、試験例2と同じ条件で、通常の座位姿勢(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))及び大腿部と脊柱の開度を広げた座位姿勢(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))で生体信号(APW)を採取した。なお、図34及び図35は、試験中に測定した脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示したものであり、図34は覚醒誘導姿勢の結果を、図35はリラックス姿勢の結果を示すが、これらの図から、被験者は、いずれも前半は若干うとうとしている傾向が見られるが、後半は覚醒していることがわかる。
【0126】
図27〜図30の(a)は、測定開始4.8〜19.8minの解析波形であり、(b)は4.8〜30minの解析波形であり、(c)は20.1〜39.9minの解析波形であり、(d)は30〜49.8minの解析波形であり、(e)は40.2〜60minの解析波形である。各図(a)〜(e)に記載の得点は、判定基準点算出手段650により求められた判定基準点である。また、各図の(f)は算出した機能点を示す。
【0127】
(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図27(a)では6点、図27(b)では4点、図27(c)では5点、図27(d)では6点、図27(e)では8点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図28(a)では4点、図28(b)では4点、図28(c)では7点、図28(d)では7点、図28(e)では4点であった。
【0128】
(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図29(a)では7点、図29(b)では4点、図29(c)では2点、図29(d)では8点、図29(e)では3点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図30(a)では6点、図30(b)では4点、図30(c)では2点、図30(d)では1点、図30(e)では4点であった。
【0129】
図31(a)は、状態推定手段660により、図27及び図29のゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点から求めた機能点を、及び、図31(b)は、状態推定手段660により、図28及び図30のピーク検出手段を適用した第2判定基準点から求めた機能点を、それぞれ時系列にプロットした図である。求め方は試験例1と同様である。
【0130】
ゼロクロス検出手段を用いた結果を見ると、覚醒誘導姿勢では徐々に機能点が高くなっており、交感神経が徐々に活性化されている。リラックス姿勢では、中途で急激に機能点が高くなったものの測定終了時点では急低下しており、交感神経の活動の上下動が大きい。これは、被験者がリラックスできずにリラックス姿勢を維持することにより生じた局部的な痛みに耐えているものといえる。この点を、ピーク検出手段を用いた結果に照らすと、覚醒誘導姿勢では副交感神経の機能が機能点が徐々に低下しており、交感神経優位の中で過ごしていることがわかる。一方、リラックス姿勢では、前半は耐えている状態が続いているが、50分以降で機能点の急激な立ち上がりを示し、疲労感は伴うものの副交感神経優位の中でリラックスしていったものと推定できる。
【0131】
図32は、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めた図である。求め方は、試験例1と同様であり、「覚醒誘導姿勢」と「リラックス姿勢」の2つの状態での座標時系列変化線を描画した。
【0132】
その結果、概ね、座標時系列変化線の主な移動方向は、フーフー領域とヘトヘト領域との混在範囲からヘトヘト領域とユウユウ領域の混在範囲であるため、通常状態の移動方向に近いが、全体としてだるさを感じている体調不調気味であると判定できる。実際、この被験者は、若干風邪気味であり、試験翌日には発熱し、インフルエンザに罹患していることがわかった。
【0133】
一方、座標時系列変化線を個別に見ると、2つの座標時系列変化線のうち、覚醒誘導姿勢においては、ヘトヘト領域とユウユウ領域の中で変化しており、最初にほぼ垂直に急低下し、不快の徴候を示すが、その後1/fに近い傾きになっている。被験者は、1/fのゆらぎを示す中盤で睡眠に入っており、その後は覚醒しているが、覚醒状態でもリラックスしていることがわかる。これに対し、リラックス姿勢では、フーフー領域とヘトヘト領域の混在範囲において、初期位置に対して縦軸に沿って上昇する方向に変化しており、リラックス方向ではなく、緊張方向への変化であるため、リラックス姿勢ではこの被験者は何かに耐えており、リラックスできていない状態が40分から50分の間で継続したことを示している。
【0134】
図33は、覚醒誘導姿勢及びリラックス姿勢において、測定前後で行った官能評価の結果である。官能評価において、覚醒誘導姿勢ではリラックス方向に変化しているが、リラックス姿勢では逆方向に変化しており、図32の測定結果から判断される変化と符合している。
【0135】
(試験例4)
図36〜図46は試験例3と同じ20歳代男性被験者のデータである。このうち、図36及び図37は、インフルエンザ発症時のデータであるが、これは、試験例3の図27及び図28と同じデータである。比較しやすくするために再掲している。図38及び図39は、インフルエンザが治癒し、十分に体力が回復した後(試験例3の測定日から2週間経過後)に、覚醒誘導姿勢で測定した健常時のデータである。
【0136】
図40(a)は、状態推定手段660により、図36及び図38のゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点かから求めた機能点を、並びに、図40(b)は、状態推定手段660により、図37及び図39のピーク検出手段を適用した第2判定基準点から求めた機能点を、それぞれ時系列にプロットした図である。求め方は試験例1と同様である。
【0137】
ゼロクロス検出手段を用いた結果を見ると、インフルエンザ発症時は、試験例3で説明したように徐々に機能点が高くなっており、交感神経が徐々に活性化されている。健常時は基本的に機能点が高いが、50分で急低下している。この点について、図43の他の指標によるデータを見ると、約50分を境に、睡眠から深睡眠に移行していることがわかるが、図40(a)の機能点の急低下は、この事象に対応しているものと推定できる。従って、機能点が所定以上急低下した場合に、このような状態変化が現れたと状態推定手段660が判定するように設定できる。なお、深睡眠に移行したか否かは、図44〜図46に示した頭部加速度の変化が他と比較して著しく小さく安定していることからもわかる。
【0138】
図40(b)のピーク検出手段を用いた結果では、インフルエンザ発症時では副交感神経の機能が機能点が徐々に低下しており、交感神経優位の中で過ごしていることがわかる。一方、健常時では、機能点にほとんど変化がない。これは、試験中、被験者が、浅睡眠、睡眠、深睡眠と、段階を経た本格的な眠りに入ったためと考えられる。
【0139】
図41は、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めた図である。求め方は、試験例1と同様であり、「インフルエンザ発症時」と「健常時」の2つの状態での座標時系列変化線を描画した。
【0140】
まず、座標時系列変化線の主な移動方向であるが、これは、2つの測定時点が2週間と大きくあき、体調の基準(健常時、インフルエンザ発症時)が全く異なるためであり、この移動方向をもって体調の変化を見ることはできない。
【0141】
そこで、個別に座標時系列変化線を見ると、インフルエンザ発症時は、上記のように、最初にほぼ垂直に急低下し、不快の徴候を示し、その後睡眠に入っているが、耐性・抵抗領域(ヘトヘト領域)から耐性・適応領域(ユウユウ領域)に跨って推移しており、基本的な体調が不調気味であることがわかる。
【0142】
これに対し、健常時には、前半は1/fに近い傾きで低下しながら、50分以降は上向きになっており、すなわち、ユウユウ領域の中でハツラツ領域の特徴が徐々に大きくなり、質の高い睡眠により、体力が早期に回復したことを示す。
【0143】
なお、図43に示した各指標の中で、特に、本出願人が先に特願2010−244832として提案した0.0017Hz、0.0035Hz、0.0053Hzの3つの信号の分布率から状態を判定する手法による図を見ると、0.0017Hzの分布率が急低下し、かつ0.053Hzの分布率が急上昇する変化を示す部分がある。この部分は、状態の急変を示すシグナルであり、22分から25分、入眠点の直前、45分前後に見られる。このうち、入眠点の直前のシグナルは、すぐに入眠に入るタイミングが切迫したことのシグナルという意味で「切迫睡眠現象」と定義した。そして、その前に生じた22分〜25分のシグナルは、入眠直前の「切迫睡眠現象」が現れることを予兆したシグナルであるため「切迫睡眠予兆現象」と定義した。また、45分前後は上記のように深睡眠への移行シグナルと考えられる。
【0144】
図43の指尖容積脈波傾き時系列信号では、5分〜10分の間、10分〜15分の間でそれぞれパワー値の傾き時系列変動と歳代リアプノフ指数の傾きの時系列変動が逆位相を示す領域がある。これは、本出願人により、そのような状態を示す信号を入眠予兆現象として捉えることは既に公知であり、入眠点よりもほぼ10分〜20分前に現れる。指尖容積脈波の傾き時系列信号では、このような入眠予兆現象を捉えられるものの、入眠点により近い時点で特徴的な現象(上記の「切迫睡眠現象」「切迫睡眠予兆現象」)を明確に捉えることは困難であった。しかし、上記のように0.0017Hz、0.0035Hz、0.0053Hzの3つの信号の分布率の時系列変化を見ることで、「切迫睡眠現象」「切迫睡眠予兆現象」を示す特徴的なシグナルを捉えられることがわかった。また、それだけでなく、睡眠後においても、0.0017Hzの分布率が急低下し、かつ0.053Hzの分布率が急上昇すると、状態の変化(睡眠から深睡眠への変化)が捉えられることがわかった。
【0145】
図44〜図46の頭部加速度の変化を見ると、前後の加速度と比較して、頭部の動揺が大きくなったり、逆に小さくなったりする変化の出現した時点が、図43で捉えられる上記の事象が出現した時点にほぼ一致している。具体的には、図46でまとめて示したように、指尖容積脈波の時系列変動で捉えられる入眠予兆現象のときには、頭部動揺を示す図形が大きく乱れている。これに対し、APWによる分布率の時系列信号で捉えられる切迫睡眠予兆現象は、頭部動揺の図形の面積が小さくなり動きが小さくなっており、切迫睡眠現象では再び図形の面積が大きくなるが、その直後から面積は小さくなり、45分前後の深睡眠の移行時では極めて面積が小さくなっている。これらのことから、指尖容積脈波又はAPWで捉えた信号を分析して判定できる現象は、頭部動揺という外観的な変化から推定できる現象と一致していることがわかる。
【0146】
(試験例5)
40歳代男性被験者について、試験例2,3と同じ条件で、通常の座位姿勢(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))及び大腿部と脊柱の開度を広げた座位姿勢(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))でも生体信号(APW)を採取した。なお、図54及び図55は、試験中に測定した脳波、指尖容積脈波、心拍による解析結果を示したものであり、図54は覚醒誘導姿勢の結果を、図55はリラックス姿勢の結果を示すが、これらの図から、被験者は、いずれも試験中浅い眠りに陥った状態であった。
【0147】
図47〜図50の(a)は、測定開始4.8〜19.8minの解析波形であり、(b)は4.8〜30minの解析波形であり、(c)は20.1〜39.9minの解析波形であり、(d)は30〜49.8minの解析波形であり、(e)は40.2〜60minの解析波形である。各図(a)〜(e)に記載の得点は、判定基準点算出手段650により求められた判定基準点である。また、各図の(f)は算出した機能点を示す。
【0148】
(覚醒誘導姿勢(図では「覚醒姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図47(a)では7点、図47(b)では6点、図47(c)では6点、図47(d)では6点、図47(e)では4点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図48(a)では8点、図48(b)では3点、図48(c)では3点、図48(d)では1点、図48(e)では3点であった。
【0149】
(リラックス姿勢(図では「寝姿勢」と表示))
ゼロクロス検出手段を用いた第1判定基準点は、図49(a)では5点、図49(b)では4点、図49(c)では4点、図49(d)では4点、図49(e)では4点であった。ピーク検出手段を用いた第2判定基準点は、図50(a)では7点、図50(b)では3点、図50(c)では3点、図50(d)では6点、図50(e)では4点であった。
【0150】
図51(a)は、状態推定手段660により、図47及び図49のゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点かから求めた機能点を、並びに、図51(b)は、状態推定手段660により、図48及び図50のピーク検出手段を適用した第2判定基準点から求めた機能点を、それぞれ時系列にプロットした図である。求め方は試験例1と同様である。
【0151】
ゼロクロス検出手段を用いた結果を見ると、覚誘導醒姿勢ではいずれも第1判定基準点の大きな変化はなく、交感神経のゆらぎの少ない睡眠状態での変化と考えられる。ピーク検出手段では、リラックス姿勢では、50分までは副交感神経の上昇がみられ、睡眠でリラックスしていったことが認められるが、残りの10分間は、機能点の低下がみられ、寝ることで疲れが生じた様相を示している。一方、覚醒誘導姿勢では、40分までは機能点の上昇が認められ、その後、若干の低下後、再び機能点の上昇が認められる。これは睡眠により機能が回復してリラックスしていった状態と判断される。
【0152】
図52は、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めた図である。求め方は、試験例1と同様であり、「覚醒誘導姿勢」と「リラックス姿勢」の2つの状態での座標時系列変化線を描画した。
【0153】
その結果、概ね、座標時系列変化線の主な移動方向は、縦軸に沿った方向であり、体調良好と推定できる。
【0154】
一方、座標時系列変化線を個別に見ると、2つの座標時系列変化線のうち、覚醒誘導姿勢において、右肩上がりの傾きになっており、ユウユウ領域においてヘトヘト領域の特徴を示す範囲から、ハツラツ領域の特徴を示す範囲に近づいており、睡眠によって徐々にリラックスした後、機能回復していったことがわかる。これに対し、リラックス姿勢では、ユウユウ領域においてヘトヘト領域の特徴を示す範囲の中で変化しており、睡眠の後、1/fに近いゆらぎの中で急降下を示し、その後、若干1/fに近くなっている。これは、睡眠したにも拘わらずあまり疲労がとれなかったことを示している。つまり、この被験者は、覚醒誘導姿勢では、リラックスして睡眠し、機能回復できたが、リラックス姿勢ではあまりリラックスできず、疲れがとれなかったと言える。
【0155】
(試験例6)
図1に示した生体信号測定手段1を、(株)デルタツーリング製、シートクッションである商品名「ツインランバー」の背部の裏側に積層し、トラックの運転席に取り付け、運転中の被験者の心房や心室及び大動脈の揺動による生体信号(以下、「心部揺動波」というが、「APW」と略記する場合もある)を採取した。被験者数は、延べ153名であった。
【0156】
図56は、状態推定手段660により、ゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点から求めた各被験者の機能点の分布を示した図である。横軸は機能点の点数で縦軸は人数を示す。点数が高いほど、適応性、対応性、快適性が高く、点数が低いほど、適応性、対応性、快適性が低下し、疲労の度合いが高くなっていることを示す。また、それぞれの実験の際にその時点の体調を各被験者に「好調」・「普通」・「不調」の3つに分けて自己申告させたが、得点分布を示す各棒グラフには、この自己申告による体調別の人数も併せて表示した。
【0157】
その結果、「好調」の被験者は得点の高い範囲における分布率が高く、「不調」の被験者は得点の低い範囲における分布率が高い傾向にあり、「普通」は、3点前後を中心に分布していた。「好調」と自己申告した被験者の平均点は7.38点、「普通」と自己申告した被験者の平均点は3.54点、「不調」と自己申告した被験者の平均点は1.92点であった。従って、「好調」と自己申告した被験者ほど得点が高く、「不調」と自己申告した被験者ほど得点が低いことから、状態推定手段660により求めた機能点と体調とは正の相関を示すことがわかる。
【0158】
図57は、図56を別の視点から解析したもので、被験者別の機能点の得点の平均値と標準偏差の分布図を示す。ここに、傾向別に被験者を二つの群、GroupA(高適応力グループ)、GroupB,C(低適応力グループ)に分けられる。低適応力と判定された運転手は外部変動に適応する際に基本となる1/fのゆらぎ直線に崩れが生じ、得点のバラツキが大きくなる。つまり、危険回避する際に、リラックスして集中力が高い状態で対応できずに、あわてたり、あせったりし、その危険回避能力にバラツキがでる可能性が示唆される。そして、体調は、不調と自己申告している例が多い。しかし、ここで「不調」と回答している運転手は自覚があるため、注意深く対処できる可能性があるが、自覚していない運転手は、想定外のことが起きた場合はエラーをする可能性が高くなる。ここに、外部からのコントロールを必要とする運転手がいることになる。
【0159】
図58は、状態推定手段660により健常、未病、病気と判定された被験者の割合を示した図である。状態推定手段660は、ゼロクロス検出手段を適用した第1判定基準点の高低に、分岐現象を示す折れ点数に基づいた形状得点を参照し、所定の閾値を設定し、所定以上の得点の場合に「健常」、所定以下の得点の場合に「病気」、その間の得点を「未病」として設定した。図58に示したように、「健常」と判定された割合は41%、「未病」と判定された割合は42%、「病気」と判定された割合は17%であった。
【0160】
図59は、自己申告による体調(好調、普通、不調)別に、健常、未病、病気と判定された割合を示した図である。「普通」や「好調」と申告している運転手は「未病」の確率が高く、「不調」と申告している運転手は病気の確率が高いことが推察され、状態推定手段660による判定が自己申告に対応していることがわかる。
【0161】
図60は、状態推定手段660により推測した急変リスクの割合を示した図である。急変リスクの判定は、試験例1〜4と同様に、状態推定手段660により、第1の判定基準点に基づく指標を横軸(X軸)に、第2の判定基準点に基づく指標を縦軸(Y軸)にとり、第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求めることにより行った。すなわち、この座標時系列変化線の移動方向により判定した。図60において、星印1つの領域は、主な移動方向が活性・適応領域及び耐性・適応領域間で体調良好と推定される場合であり、星印2つの領域は、主な移動方向が活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合で通常状態と推定される場合であり、星印3つの領域は、主な移動方向が耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間で体調の急変のおそれのある状態と推定される場合である。その結果、33%の被験者が急変のおそれのある状態と推定された。
【0162】
(試験例7)
次に、人がどう感じているのかという感覚の変化、知覚感覚器の変化の様子を主として捉える方法について説明する。ここでは、試験例1のデータを用い、状態推定手段660により、次のような処理を行った。その結果が、図62(c)、図63(c)、図64(c)及び図65(c)である。これらの図は、図16に示された結果を加味すると共に、ゼロクロス検出手段を周波数解析して得られた機能点(図62〜図65の(a))と、ピーク検出手段により得られた周波数変動の時系列波形(図62〜図65の(b))から求められるグラフの変化量(傾き)とを用いて示したものである。
【0163】
ここで、周波数変動の時系列波形は、上記した周波数演算手段610により得られた時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に周波数の平均値を求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力したものである。本発明の生体状態推定装置のコンピュータプログラムである周波数変動演算手順により実行される周波数変動演算手段により求められる。ピーク検出手段による周波数変動の時系列波形は、心拍数の周波数変動に連動しているため、周波数変動の時系列波形の変化量(傾き)が増加、減少、停滞のいずれであるかにより、心拍数が増加、減少、停滞のいずれであるかを高い感度で容易に判定でき、人がそのときに感じている知覚(この知覚は、心拍数の増減を色濃く反映しているため)をより直接的に反映する指標である。
【0164】
そこで、この試験例7では、状態推定手段660が、交感神経の出現状態が反映されるゼロクロス検出手段による周波数解析結果から求めた上記の機能点と、ピーク検出手段による周波数変動の時系列波形による判定結果を加味した状態推定を行った。図61(a)〜(c)に基づき、その演算方法を説明する。
【0165】
図61は、試験例1の静的状態におけるデータを用いたものである。まず、図16から、静的状態の座標時系列変化線がいずれの位置で変化しているかを判定する。ここでは、「活性・適応領域(ハツラツ領域)」及び「耐性・適応領域(ユウユウ領域)」の属する右側の象限の場合には、「満足側(ポジティブ側)」と判定し、「活性・抵抗領域(フーフー領域)」及び「耐性・抵抗領域(ヘトヘト領域)」の属する左側の象限の場合には、「不満側(ネガティブ側)」と判定する。図16は、ゼロクロス検出手段及びピーク検出手段の両方から求められる周波数解析結果を利用して求めた座標時系列変化線であり、自律神経活動に従った測定時における基本的な状態変化が現れている。そこで、この図16から判定できる状態変化を参照情報として捉え、人がそのときに感じている知覚をより直接的に反映する指標である周波数変動の時系列波形の変化量(傾き)を加味した座標を作成する。
【0166】
図16の静的状態の座標時系列変化線は、不満側に片寄っているため、不満側での変化がベースになる。この情報により、人の自律神経系の活動のベースになっている象限を捉え、図61(c)の座標系の中では、基本的には左側の象限への変化となる。そして、ゼロクロス検出手段を周波数解析して得られた機能点を横軸に、ピーク検出手段により得られた周波数変動の時系列波形の所定時間幅における変化量(傾き)を縦軸にとっていく。
【0167】
まず、初期位置は、縦軸をゼロとして、静的状態におけるゼロクロス検出手段を用いた周波数解析から、初期位置の機能点−3点(図61(a)参照)を図61(c)の座標系にプロットする。次に、25分における機能点((5〜20min(4.8〜19.8min)vs5〜25min(5.1〜24.9min))−15点分を横軸に沿って移動し、図61(b)のピーク検出手段により得られた周波数変動の時系列波形の変化量(傾き)を判定する。測定開始から被験者の状態がある程度安定するまでの最初の5〜7分程度は無視する。すると、この図61(b)では、7分過ぎから5分間程度傾きが上昇しており、その近似線Aを求め、この近似線Aの傾きa(tanθ=0.839)に近似線Aの時間幅240秒を掛け合わせ、それを100で割った値2.014を求める。同様に、近似線B、近似線C、近似線Dの25分までの値を求め、合計する。ここでは、(近似線A:2.014)+(近似線B:−5.187)+(近似線C:6.277)+(近似線D:−7.797)=−4.69となる。つまり、25分における縦軸方向は、初期位置よりも−4.69目盛りを移動させる。その結果、図61(c)に示したように、25分の座標(−18,−4.69)が求まる。次に、30分では、機能点が−1で、図61(b)の25分過ぎの傾きが、近似線Dの傾きと近似線Eの傾きに相当するため、それらを計算すると−2.62となる。よって、25分の座標から、(−1,−2.62)分移動させ、30分の座標(−19,−7.31)を求める。そして、各座標を連結すると、図61(c)に示した座標の変化線が求められる。図61(c)から、本試験例の判定によれば、この被験者は、不満側の憂鬱領域に変化していることがわかる。
【0168】
図16の結果では、フーフー領域とハツラツ領域が混在した状態から、ヘトヘト領域とユウユウ領域が混在した状態に変化しているが、被験者が実際に知覚している気分は、憂鬱な気分がより強いことがわかる。
図62〜図65が、図16の静的状態、「小谷SA〜与島PA」間の走行時、「与島PA〜山越」間の走行時、「山越〜石鎚山SA」間の走行時にそれぞれ対応する。
【0169】
まず、図62の静的状態であるが、これは、図61における判定方法の説明で用いたものと全く同様であり、図63〜図65の表示に合わせて再掲したものである。詳細は、図61で説明したとおりである。
【0170】
図63(a)〜(c)は、「小谷SA〜与島PA」間の走行時の解析結果であり、不満側からスタートして、憂鬱とリラックスの中間の通常の気分の中で比較的落ち着いている状態から、次第に集中度が高くなりやや満足側に移行していることがわかる。
【0171】
図64(a)〜(c)は、「与島PA〜山越」間の走行時の解析結果であり、不満側からスタートして、徐々にイライラ感が強くなっていくことがわかる。
【0172】
図65(a)〜(c)は、「山越〜石鎚山SA」間の走行時の結果であり、満足側からスタートして、集中とリラックスの中で、走行実験が行われていることがわかる。
【0173】
これらの結果を図16の結果と対比すると、いずれもほぼ類似の領域にある一方で、試験例1の判定が積分情報の結果としての傾向を示し、試験例7の判定が、変化していく傾向を示しているため、より被験者が感じている感覚に近く、被験者の知覚がより強く反映され、人の主観的な気分を判定する上では、試験例7の判定の方が、被験者の実際の感覚に近いと言える。但し、試験例1により得られる図16の方が、交感神経及び副交感神経の様子を同じ手法で反映しているため、体調に関する全身状態の客観的な情報を得る場合には、図16の手法の方が好ましいと言える。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、自動車などの乗物のシートに生体信号測定手段を配置して、乗員の眠気などの状態を推定する場合に限らず、家庭内に配置される椅子、事務用椅子等に生体信号測定手段を配置して状態推定を行うことに適用することもできる。また、病院や介護施設におけるベッドなどの寝具に生体信号測定手段を配置し、背部の体表脈波(APW)を捉え、上記した生体信号測定装置により解析して、人の状態推定を行うことに適用することもできる。これにより、寝ている人(特に、病人、介護を要する人)の健康状態を表示手段のモニタに示される画面により容易に把握することができる。また、背部のAPWに限らず、生体信号測定手段を胸部及び腹部にも当接し、胸部及び腹部からの体表脈波を採取し、背部のAPWと併せて解析することで上記のような、様々な部位に発生する状態の変化を伴う病気等の判定、さらには、好き・嫌いの五感に関する状態変化、好悪感情の変化の判定等にも用いることができる。
【0175】
また、本発明は、人に限らず、恒温動物等の動物の体表面に生体信号測定手段を当接し、採取される生体信号のゆらぎ及び心拍変動を、体調、病気の判断、好悪感情変化の判定等に利用することも可能である。
【符号の説明】
【0176】
1 生体信号測定手段
10 三次元立体編物
15 三次元立体編物支持部材
15a 配置用貫通孔
16 フィルム
21,22 板状発泡体
30 振動センサ
100 シート
110 シートバックフレーム
120 表皮
60 生体状態推定装置
610 周波数演算手段
620 周波数傾き時系列解析演算手段
630 周波数解析手段
640 回帰直線演算手段
650 判定基準点算出手段
660 状態推定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号測定手段により採取した生体信号を用いて、生体の状態を推定する生体状態推定装置であって、
前記生体信号測定手段により得られる所定の測定時間における生体信号の時系列波形から、周波数の時系列波形を求める周波数演算手段と、
前記周波数演算手段により得られた前記生体信号の周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に前記周波数の傾きを求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる前記周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する周波数傾き時系列解析演算手段と、
前記周波数傾き時系列解析演算手段から得られる所定時間範囲における周波数傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトル密度と周波数との関係を示す解析波形を所定時間範囲毎に出力する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段により出力される各解析波形について、所定周期領域毎に回帰直線を求める回帰直線演算手段と、
前記周期領域毎に求められる各回帰直線を、その傾きに基づいて領域得点を付与すると共に、隣接する周波数領域における回帰直線間のパワースペクトル密度の値の較差及び回帰直線間の傾きの違いに基づき、各回帰直線全体における分岐現象を示す折れ点数を求め、その折れ点数に基づいた形状得点を付与し、前記領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、各解析波形についての判定基準点を求める判定基準点算出手段と、
前記判定基準点算出手段により求められる前記各解析波形の判定基準点の時系列の変化を基に、生体の状態を推定する状態推定手段と
を具備することを特徴とする生体状態推定装置。
【請求項2】
前記回帰直線演算手段は、分析対象の解析波形を、長周期領域、中周期領域及び短周期領域に分けて、前記回帰直線を求める請求項1記載の生体状態推定装置。
【請求項3】
前記回帰直線演算手段は、前記長周期領域、中周期領域及び短周期領域のそれぞれにおいて設定した前記解析波形の重心を前記回帰直線の中心として求める請求項2記載の生体状態推定装置。
【請求項4】
前記回帰直線演算手段は、前記長周期領域においては、前記回帰直線の中心を境界として、ULF領域とVLF領域にさらに分けてそれぞれについて回帰直線を求め、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線の各傾きの積が所定値以下か否かを判定し、所定値以下の場合には前記ULF領域及びVLF領域の各回帰直線を採用し、所定値を上回る場合には前記長周期領域の全体における前記回帰直線を採用する請求項2又は3記載の生体状態推定装置。
【請求項5】
前記判定基準点算出手段は、前記領域得点として、前記各領域における各回帰直線の傾きを略水平状態、上向き及び下向きの3つに分け、略水平状態の得点を基準として、上向きの場合と下向きの場合とで得点を増減させる構成である請求項1〜4のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
【請求項6】
前記判定基準点算出手段は、前記形状得点として、前記折れ点数が少ないほど高得点を付与する構成である請求項1〜5のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
【請求項7】
前記判定基準点算出手段は、前記折れ点数を、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以上の場合、及び、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって2つの回帰直線の傾きの角度の違いが予め設定した所定角度以上の場合に、それぞれ折れ点としてカウントする請求項1〜6のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
【請求項8】
前記状態推定手段は、比較対象の前後2つの時間範囲における解析波形の判定基準点間において、次式:
機能点=後時間範囲の判定基準点+(後時間範囲の判定基準点−前時間範囲の判定基準点)×n、(但し、nは補正係数)
により求められる機能点を時系列に求め、機能点の時系列変化から、生体の状態を推定する請求項1〜7のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
【請求項9】
前記周波数演算手段は、前記生体信号の時系列波形におけるゼロクロス点を用いて周波数の時系列波形を求めるゼロクロス検出手段と、前記生体信号の時系列波形のピーク点を用いて周波数の時系列波形を求めるピーク検出手段とのいずれか少なくとも一方の手段を備える請求項1〜8のいずれか1に記載の生体状態推定装置。
【請求項10】
前記状態推定手段は、前記ゼロクロス検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第1の判定基準点と、前記ピーク検出手段を用いた周波数の時系列波形から得られる第2の判定基準点とを用い、
前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとり、
第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求め、生体の状態を推定する請求項9記載の生体状態推定装置。
【請求項11】
前記状態推定手段は、前記座標同士を結んだ座標時系列変化線が、1/fの傾きに近似した変化傾向であると判定された場合には快適と判定し、上下方向に変化していると判定された場合には不快と判定する請求項10記載の生体状態推定装置。
【請求項12】
前記状態推定手段は、前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとった座標系を象限毎に、活性・適応領域、活性・抵抗領域、耐性・抵抗領域、耐性・適応領域に区分し、異なる測定時間において求められた複数の前記座標時系列変化線同士を比較した場合に、比較対象の前記座標時系列変化線の全体の移動方向により、体調を推定する手段を有する請求項11記載の生体状態推定装置。
【請求項13】
前記座標時系列変化線の全体の主な移動方向が、
活性・適応領域及び耐性・適応領域間である場合に、体調良好と推定し、
活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合に、通常状態と推定し、
耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合に、体調の急変のおそれのある状態と推定する請求項11記載の生体状態推定装置。
【請求項14】
さらに、ピーク検出手段を用いた周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に周波数の平均値を求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力する周波数変動演算手段を有し、
前記状態推定手段は、前記ゼロクロス検出手段を用いた周波数の時系列波形から求められる前記機能点に対応する指標を一方の軸にとると共に、前記周波数変動演算手段により求められる周波数変動時系列波形の所定の時間幅における変化量に対応する指標を他方の軸にとり、
前記機能点と前記変化量とから求められる座標の時系列変化を求め、感覚に関する生体の状態を推定する請求項8記載の生体状態推定装置。
【請求項15】
生体信号測定手段により採取した生体信号を用いて、生体の状態を推定する生体状態推定装置に設定されるコンピュータプログラムであって、
前記生体信号測定手段により得られる所定の測定時間における生体信号の時系列波形から、周波数の時系列波形を求める周波数演算手順と、
前記周波数演算手順により得られた前記生体信号の周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に前記周波数の傾きを求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる前記周波数の傾きの時系列変化を周波数傾き時系列波形として出力する周波数傾き時系列解析演算手順と、
前記周波数傾き時系列解析演算手順から得られる所定時間範囲における周波数傾き時系列波形を周波数解析し、パワースペクトル密度と周波数との関係を示す解析波形を所定時間範囲毎に出力する周波数解析手順と、
前記周波数解析手順により出力される各解析波形について、所定周期領域毎に回帰直線を求める回帰直線演算手順と、
前記周期領域毎に求められる各回帰直線を、その傾きに基づいて領域得点を付与すると共に、隣接する周波数領域における回帰直線間のパワースペクトル密度の値の較差及び回帰直線間の傾きの違いに基づき、各回帰直線全体における分岐現象を示す折れ点数を求め、その折れ点数に基づいた形状得点を付与し、前記領域得点及び形状得点の少なくとも一方を用いて、各解析波形についての判定基準点を求める判定基準点算出手順と、
前記判定基準点算出手順により求められる前記各解析波形の判定基準点の時系列の変化を基に、生体の状態を推定する状態推定手順と
をコンピュータに実行させるコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記回帰直線演算手順は、分析対象の解析波形を、長周期領域、中周期領域及び短周期領域に分けて、前記回帰直線を求める請求項15記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記回帰直線演算手順は、前記長周期領域、中周期領域及び短周期領域のそれぞれにおいて設定した前記解析波形の重心を前記回帰直線の中心として求める請求項16記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記回帰直線演算手順は、前記長周期領域においては、前記回帰直線の中心を境界として、ULF領域とVLF領域にさらに分けてそれぞれについて回帰直線を求め、ULF領域の回帰直線及びVLF領域の回帰直線の各傾きの積が所定値以下か否かを判定し、所定値以下の場合には前記ULF領域及びVLF領域の各回帰直線を採用し、所定値を上回る場合には前記長周期領域の全体における前記回帰直線を採用する請求項16又は17記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記判定基準点算出手順は、前記領域得点として、前記各領域における各回帰直線の傾きを略水平状態、上向き及び下向きの3つに分け、略水平状態の得点を基準として、上向きの場合と下向きの場合とで得点を増減させる請求項15〜18のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記判定基準点算出手順は、前記形状得点として、前記折れ点数が少ないほど高得点を付与する請求項15〜19のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記判定基準点算出手順は、前記折れ点数を、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以上の場合、及び、隣接する周期領域の2つの回帰直線間において、パワースペクトル密度の値の較差が所定以内であって2つの回帰直線の傾きの角度の違いが予め設定した所定角度以上の場合に、それぞれ折れ点としてカウントする請求項15〜20のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
前記状態推定手順は、比較対象の前後2つの時間範囲における解析波形の判定基準点間において、次式:
機能点=後時間範囲の判定基準点+(後時間範囲の判定基準点−前時間範囲の判定基準点)×n、(但し、nは補正係数)
により求められる機能点を時系列に求め、機能点の時系列変化から、生体の状態を推定する請求項15〜21のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
前記周波数演算手順は、前記生体信号の時系列波形におけるゼロクロス点を用いて周波数の時系列波形を求めるゼロクロス検出手順と、前記生体信号の時系列波形のピーク点を用いて周波数の時系列波形を求めるピーク検出手順とのいずれか少なくとも一方の手順を備える請求項15〜22のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項24】
前記状態推定手順は、前記ゼロクロス検出手順を用いた周波数の時系列波形から得られる第1の判定基準点と、前記ピーク検出手順を用いた周波数の時系列波形から得られる第2の判定基準点とを用い、
前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとり、
第1の判定基準点と第2の判定基準点とから求められる座標の時系列変化を求め、生体の状態を推定する請求項23記載のコンピュータプログラム。
【請求項25】
前記状態推定手順は、前記座標同士を結んだ座標時系列変化線が、1/fの傾きに近似した変化傾向であると判定された場合には快適と判定し、上下方向に変化していると判定された場合には不快と判定する請求項24記載のコンピュータプログラム。
【請求項26】
前記状態推定手順は、前記第1の判定基準点に基づく指標を一方の軸に、前記第2の判定基準点に基づく指標を他方の軸にとった座標系を象限毎に、活性・適応領域、活性・抵抗領域、耐性・抵抗領域、耐性・適応領域に区分し、異なる測定時間において求められた複数の前記座標時系列変化線同士を比較した場合に、比較対象の前記座標時系列変化線の全体の移動方向により、体調を推定する請求項25記載のコンピュータプログラム。
【請求項27】
前記座標時系列変化線の全体の主な移動方向が、
活性・適応領域及び耐性・適応領域間である場合に、体調良好と推定し、
活性・抵抗領域及び耐性・適応領域間である場合に、通常状態と推定し、
耐性・抵抗領域及び活性・適応領域間である場合に、体調の急変のおそれのある状態と推定する請求項25記載のコンピュータプログラム。
【請求項28】
さらに、ピーク検出手順を用いた周波数の時系列波形において、所定のオーバーラップ時間で設定した所定の時間窓毎に周波数の平均値を求める移動計算を行い、時間窓毎に得られる周波数の平均値の時系列変化を周波数変動時系列波形として出力する周波数変動演算手順を有し、
前記状態推定手順は、前記ゼロクロス検出手順を用いた周波数の時系列波形から求められる前記機能点に対応する指標を一方の軸にとると共に、前記周波数変動演算手順により求められる周波数変動時系列波形の所定の時間幅における変化量に対応する指標を他方の軸にとり、
前記機能点と前記変化量とから求められる座標の時系列変化を求め、感覚に関する生体の状態を推定する請求項23記載のコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【図46】
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【公開番号】特開2012−239480(P2012−239480A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108909(P2011−108909)
【出願日】平成23年5月14日(2011.5.14)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】