生体用部材
【課題】 手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨を補うため、骨細胞再生にのみ作用する生理活性物質を徐放する生体用部材を提供する。
【解決手段】 ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム[β-Ca3(PO4)2])、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた多孔体に、骨形成成分が吸着されている生体用部材。前記骨形成成分は、ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、NF-κBデコイ、あるいは骨形成因子(BMP)が好ましい。
【解決手段】 ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム[β-Ca3(PO4)2])、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた多孔体に、骨形成成分が吸着されている生体用部材。前記骨形成成分は、ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、NF-κBデコイ、あるいは骨形成因子(BMP)が好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨を補うため、骨細胞再生にのみ作用する生理活性物質を徐放する生体用部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨や歯槽骨における手術や事故等により欠損した部分を補い、生体本来の機能を回復させるため、各種成分が利用され、また新たな成分が研究されてきた。これらの成分により物理的な空隙を埋めることはできるが、これらは生体にとってはあくまで異物であるため、埋設後に生体と馴染みにくく、患者にとって痛みや違和感を避けることは困難であった。
【0003】
この問題を解決し真の再生を図るには、埋設する成分が生体と同化することが望ましく、例えば非特許文献1には次のように記載されている。「近年、再生医学が脚光を浴びるなか、歯科領域においても組織細胞工学を用いた骨組織再生の研究が盛んになっている。生体組織の再生を考えるうえでは、1)担体、2)細胞、3)生体活性物質という3つの要素が必要不可欠とされている。」(729頁、左カラム19行目)「BMP、TGF、PDGFなど、さまざまな因子が骨組織再生に有用であると言われている。」(同、31行目)
【0004】
このような考え方に基づき、例えば特許文献1には「骨組織適用部位にTGF-βの持続量を送達することができ、かつそのことにより骨欠損適用部位において骨形成および新生骨組織形成を促進することができるTGF-β送達組成物」が開示されており、また特許文献2には、「トランスフォーミング成長因子(TGF)βおよびリン酸三カルシウムを含む骨誘導製剤」が開示されている。
しかしながらTGF-βは、細胞増殖や分化、アポトーシス、遊走、細胞外マトリックスの産生と分解などを調節する多彩な機能を持ち、生体の維持や修復などの調節因子として働くため骨細胞再生以外の作用も発現し、特にガンの発生や悪化に働く問題があった。このため骨細胞再生にのみ作用する生理活性物質を、徐放できる新たな生体用部材が求められていた。
【特許文献1】特開平7−2691号公報
【特許文献2】特表平8−505548号公報(特許第3347144号公報)
【特許文献3】特再表96/035430号公報
【特許文献4】特許3392143号公報
【特許文献5】WO95/11687号公報
【特許文献6】特開2005-160464号公報
【特許文献7】国際公開公報WO96/35430
【特許文献8】国際公開公報WO02/066070
【特許文献9】国際公開公報WO03/043663
【特許文献10】国際公開公報WO03/082331
【特許文献11】国際公開公報WO03/099339
【特許文献12】国際公開公報WO04/026342
【特許文献13】国際公開公報WO05/004913
【特許文献14】国際公開公報WO05/004914
【非特許文献1】Quintessence Dental Implantology, 11(6) 723-730 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させ、生体本来の機能を回復させることが可能な真の生体用部材およびその製造方法を提供することである。
さらには生理活性物質を徐放化することにより、長期にわたり安全かつ確実な再生/回復を図ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、具体的には以下の特徴を有する。
(1)多孔体に骨形成成分が吸着されている生体用部材。
(2)前記骨形成成分がポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)である、(1)記載の生体用部材。
(3)前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の重合度が15〜2000である、(2)記載の生体用部材。
(4)前記ポリリン酸の薬理学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、(2)または(3)記載の生体用部材。
(5)前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の吸着量が生体用部材質量の5質量%以内の量である、(1)〜(4)のいずれかに記載の生体用部材。
(6)前記骨形成因子がBMP-1またはBMP-7(OP-1)である、(2)〜(5)のいずれかに記載の生体用部材。
(7)前記多孔体が、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム〔β-Ca3(PO4)2〕)、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の生体用部材。
(8)さらに薬理活性成分が吸着されている、(1)〜(7)のいずれかに記載の生体用部材。
(9)さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分が転写因子のデコイ核酸または抗癌剤である、(1)〜(8)のいずれかに記載の生体用部材。
(10)さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分がNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド、シスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシンから選ばれた1種である、(1)〜(9)のいずれかに記載の生体用部材。
(11)骨または歯槽骨の欠損を補うためのものである、(1)〜(10)のいずれかに記載の生体用部材。
(12)(1)〜(11)の生体用部材の製造方法であって、多孔体を骨形成成分の5質量%以下の水溶液に含浸させる工程を有する生体用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生体用部材は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させ、生体本来の機能を回復させることが可能であり、かつ生理活性物質を徐放化することにより、長期にわたり安全かつ確実な再生/回復を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<多孔体>
本発明における多孔体は、骨または歯槽骨と生体親和性があり、多数の微少孔を有する材質であれば限定されないが、具体的には、例えばハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム[β-Ca3(PO4)2])、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックス等を挙げることができる。
【0009】
これらの中でもハイドロキシアパタイトがより好ましく、例えば下記の物性を有するものがより好ましい。下記物性を有するハイドロキシアパタイトの電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0010】
気孔率:72〜78%
気孔径:150μm〜200μm
連通部径:40μm〜70μm
圧縮強度:12MPa〜19MPa
【0011】
<骨形成成分>
本発明における骨形成成分は、骨芽細胞の増殖・分化・遊走を促進する成分であれば限定されず、例えばポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)を挙げることができる。
【0012】
ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩としては、重合度が15〜2000のポリリン酸が好ましい。また、その薬理学的に許容される塩も、生体に対する安全性が保たれるものであれば限定されないが、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩を挙げることができる。
【0013】
ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の生体用部材中の含有率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【0014】
骨形成因子(Bone morphogenetic protein: BMP) としては、現在、TGF-βスーパーファミリーに属する13種類のBMPが知られており、これらの中でもBMP-1またはBMP-7(OP-1)がより好ましい。これらの骨形成因子は試薬等として入手可能であり、文献(Science 271, 360-362.等)に記載された方法によって製造することもできる。
【0015】
骨形成因子の生体用部材中の含有率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0016】
本発明においては、さらなる薬理活性成分を吸着させることができ、薬理活性成分としては、例えば転写因子のデコイ核酸または抗癌剤を挙げることができる。
転写因子のデコイ核酸としては、例えばNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。抗癌剤としては、例えばシスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシン等を挙げることができる。
【0017】
ここでデコイ(decoy)とは英語で「おとり」の意味であり、ある物質が本来結合あるいは作用すべきものと似せた構造を有するものをデコイと呼んでいる。ゲノム遺伝子上の結合領域に結合する転写因子のデコイとしては、主として該結合領域と同じ塩基配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドが用いられている(特許文献1〜3)。
【0018】
このようなオリゴヌクレオチドから成るデコイの共存下では、転写因子の分子のうちの一部は、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合せずに、オリゴヌクレオチドデコイに結合する。このため、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合する転写因子の分子数が減少し、その結果、転写因子の活性が低下することになる。
【0019】
この場合、オリゴヌクレオチドは、本物のゲノム遺伝子上の結合領域の偽物(おとり)として機能して転写因子を結合するため、デコイと呼ばれる。NF-κBに対するオリゴヌクレオチドデコイも種々知られており、それらの薬理効果も種々知られている(特許文献4〜12)。さらにまた、NF-κBの結合配列(結合領域)は、種々の文献、例えば「分子細胞生物学辞典」(東京化学同人、1997年発行)の891頁などにおいて公知となっている。具体的な結合配列としては、配列番号1(RはAまたはG; YはCまたはT; HはA,CまたはTを意味する。)、より具体的には、例えば配列番号2又は配列番号3などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
デコイは、一般的に結合配列(結合領域またはコンセンサス配列、コア配列とも称される)の両端にヌクレオチドが連結されている。該ヌクレオチド部分は付加配列と呼ばれる場合がある。各末端の該ヌクレオチド部分は、1以上の塩基からなり、好ましくは1〜20ヌクレオチド、より好ましくは1〜10ヌクレオチド、最も好ましくは1〜7ヌクレオチドからなってよい。
【0021】
デコイは主として二本鎖オリゴヌクレオチドであり、これを構成する二本鎖は完全に相補的な配列からなるものであることが好ましいが、1または数個(好ましくは1または2個)の非相補的な塩基対を含んでいても、それに転写因子が結合し得る限り、本明細書中のデコイに包含される。すなわち、5’-5’末端付加配列-結合配列-3’末端付加配列-3‘という構成からなるセンス鎖オリゴヌクレオチドと、それに完全に相補的なアンチセンス鎖ヌクレオチドとからなる二本鎖オリゴヌクレオチドが典型的なデコイの構成として挙げられる。さらにまた、5’末端付加配列と3’末端付加配列との間に複数の結合配列がタンデムに直接または1または数個のヌクレオチドを挟んで連結されている複数の転写因子結合部位を有する二本鎖オリゴヌクレオチドもまた、デコイとして挙げることができる。
【0022】
さらにまた、デコイは、1つ以上の修飾された塩基を含有していてもよい。例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、メトキシエチルホスホエート、モルホリノホスホロアミデード、ペプチド核酸(peptide nucleic acid: PNA)、ロックド核酸(locked nucleic acid: LNA)ジニトロフェニル(DNP)化およびO-メチル化などの修飾された塩基を含んでいてもよい。場合によっては(例えば、O-メチル化、DNP化など)は、リボヌクレオシドに対する修飾であるが、本発明においては、オリゴヌクレオチド中の修飾するデオキシリボヌクレオシドを、リボヌクレオシドとしてオリゴヌクレオチドを合成し、該塩基を修飾することが可能である。中でも、ホスホロチオエート化された塩基(すなわち、ヌクレオシド間の結合がホスホロチオエート結合であること)を含有することがより好ましい。オリゴヌクレオチドを構成する塩基の全てが修飾されていてもよく、いずれか1つ以上の塩基が修飾されていてもよい。
【0023】
本発明に用いる好ましいNFκBデコイの例としては、配列番号4、配列番号5の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるもの、配列番号6、配列番号7の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるもの、および配列番号8、配列番号9の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるものが挙げられる。
【0024】
さらにまた、デコイは二本のオリゴヌクレオチド鎖で構成されるものに限定されることはない。一本のオリゴヌクレオチド鎖であっても、結合配列とその相補的配列とを含有しこれらの配列が分子内に二本鎖部分を形成しているような、リボン型デコイまたはステイプル型デコイと呼ばれるものも、該二本鎖部分に転写因子が結合する限り、本明細書にいうデコイに含まれうる。
【0025】
デコイまたはデコイ候補のオリゴヌクレオチドが転写因子に結合するか否かは結合活性試験により確認することができる。NFκBについての結合活性試験は、例えば、TransAM NF-κB p65 Transcription Factor Assay Kit(商品名、ACTIVE MOTIF社)を用いて、添付の資料に基づいて、または当業者が日常的に行う程度のプロトコルの改変により、容易に実施することができる。
【0026】
また、転写因子のデコイ核酸または抗癌剤の含有率も限定されないが、通常は生体用部材中5質量%以下が好ましい。
【0027】
<製造方法>
本発明の生体用部材の製造方法は、多孔体を骨形成成分の水溶液に含浸させる工程を有するものであり、前記水溶液中の骨形成成分の濃度は5質量%以下にする。前記含浸工程では、多孔体に骨形成成分が吸着されやすくするため、脱気してもよい。その後、必要に応じて、脱水工程、乾燥工程を付加することができる。
【0028】
<用途および使用方法>
本発明の生体用部材は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させる際に使用するものであり、欠損部の形状、大きさ(面積、容量)等の状況に応じ、多様な使用法/形態供給が可能であり限定されないが、通常は、顆粒状あるいはブロック状で供給される。顆粒品の場合、そのまま欠損部に必要量を押圧充填してもよいし、蒸留水や生理食塩水等でスラリー状とし欠損部に塗りつけ充填してもよい。ブロック品の場合、欠損部の形状に合わせて加工後に嵌め込む。
【0029】
続いて実施例を掲げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0030】
<実施例で用いたデコイ配列>
本発明の実施例では、配列番号4、5の相補的二本鎖からなるNFκBデコイを用いた(該二本鎖オリゴヌクレオチド中の全ての塩基間結合はホスホロチオエート化結合である)。
【0031】
さらにNFκBデコイ以外のデコイとして、具体的には、例えば次のセンス鎖およびその相補鎖からなる二本鎖デコイを挙げることができるが、これらに限定されない。
(1) E2Fデコイオリゴヌクレオチド
配列番号10
(2) AP-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号11
(3) Ets-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号12
(4) STAT-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号13
(5) STAT-6デコイオリゴヌクレオチド
配列番号14
(6) GATA-3デコイオリゴヌクレオチド
配列番号15
【0032】
実施例1(ハイドロキシアパタイトへのポリリン酸ナトリウムの吸着と徐放)
1%および5%ポリリン酸ナトリウム水溶液中にブロック状のハイドロキシアパタイト(商品名;ネオボーン、株式会社エム・エム・ティー社製)を沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、アスピレーター〔条件;−0.1MPa(メガパスカル)〕を用いて120分間脱気した。
ポリリン酸ナトリウム水溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、3600rpmで2分間遠心脱水し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、37℃で3日間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、本発明の生体用部材であるポリリン酸吸着ハイドロキシアパタイトを得た。
1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトには、ミリグラムあたり1.8μgのポリリン酸が吸着しており、5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトには、ミリグラムあたり10.8μgのポリリン酸が吸着していた。
【0033】
ハイドロキシアパタイトの吸着したポリリン酸の定量方法は、以下の通りである。ポリリン酸が吸着したハイドロキシアパタイトを100 mg取り、完全に破砕してから0.1mlの蒸留水中で1時間超音波処理して、吸着したポリリン酸を完全に溶出した。
その後10,000xgで5分間遠心分離し、その上澄みを20μl取り、2N−塩酸を480μl加えて酸加水分解を行った。加水分解後のサンプル0.3 mlに、アスコルビン酸:モリブデン酸アンモニウム=1:6の溶液を0.7 ml加えて37℃で1時間保温後、820 nmでの吸光度を測定して、リン酸濃度を定量することで吸着したポリリン酸濃度をリン酸残基あたりのモル濃度で算出した。
なお、リン酸定量におけるスタンダードは、0, 0.033, 0.067, 0.1, 0.133, 0.167, 0.2 mMのリン酸水素ナトリウムを標準溶液とし、それぞれの吸光度、0, 0.197, 0.371, 0.503, 0.610, 0.683, 0.729から検量線を作成し、リン酸濃度を求めた。また、溶出実験後のそれぞれのフラクション中のポリリン酸濃度も、加水分解後に上記のモリブデン酸を用いる方法で定量した。
【0034】
ポリリン酸の吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;BioLogic Duo Flow、バイオラッド社製)を用いて毎分0.1 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は溶出液としてフラクションコレクター(商品名;Model 2110、バイオラッド社製)で0.25mlずつ分取した。
【0035】
図2に、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、一時的に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりの溶出量は、平均で約0.06 nmolであった。これに対して、溶出液が5 ml以上では溶出量はほぼ安定しており、溶出液1μlあたり0.01〜0.02 nmolの範囲でポリリン酸が溶出されていた。溶出量は、溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が13 mlを超えた付近でも0.01 nmol以上の溶出量を維持していた。
したがって、ハイドロキシアパタイトに吸着したポリリン酸は、過剰の残留したポリリン酸の溶出パターン(一時的に溶出量の高い状態になっているピーク)とは異なり、かなりゆっくりしたスピードで放出されていることが分かった。
【0036】
図3に、5%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の20 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりのポリリン酸溶出量は0.025〜0.4 nmolで大幅に変動した。これに対して、溶出液が20 〜60 mlでは、ポリリン酸の溶出量はほぼ安定しており、溶出液(生理食塩水)1μlあたり0.01〜0.02 nmolが溶出されていた。溶出液の流量が20 ml以上では、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様のスピードでポリリン酸が放出されており、吸着したポリリン酸が40 mlの流量の間で安定して放出されたと考えられる。その後、溶出量は溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が 100 ml付近でも0.005 nmol以上の溶出量があった。
【0037】
図4に、10%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の13 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、1%もしくは5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりのポリリン酸溶出量は0.03〜1.0 nmolで大幅に変動した。これに対して、溶出液が15 〜61 mlでは、ポリリン酸の溶出量はほぼ安定しており、溶出液(生理食塩水)1μlあたり0.003〜0.019 nmolが溶出されていた。溶出液の流量が15 ml以上では、1%もしくは5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様のスピードでポリリン酸が放出されており、吸着したポリリン酸が46 mlの流量の間で安定して放出されたと考えられる。
【0038】
実施例2(ハイドロキシアパタイトへのタンパク質(BSA)の吸着と徐放)
本発明の好適対象であるBMP-1あるいはBMP-7はタンパク質であることから、ハイドロキシアパタイトへのタンパク質の吸着徐放実験には、一般的なタンパク質としてウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社製)を用いた。2 mg/mlのBSA水溶液中に328mgのブロック状のハイドロキシアパタイトを沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、真空ポンプを用いて10分間脱気した。
BSA溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、8,000 xgで5分間遠心分離し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、42℃で1時間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、タンパク質吸着ハイドロキシアパタイトとした。BSA溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトにはミリグラムあたり1.21μgのBSAが吸着していた。
なお、吸着量は吸着処理前のBSA溶液の280 nmでの吸光度から吸着後に残ったBSA溶液の吸光度を差し引きすることで算出した。BSA溶液の吸光度は2 mg/mlで0.555であった。
【0039】
BSAの吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;BioLogic Duo Flow、バイオラッド社製)を用いて毎分0.2 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は、UV検出器において連続的(1秒ごと)に280 nmの吸光度を測定し、BSAの溶出量を定量した。
【0040】
図5に、BSA溶液を用いて吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたBSA量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の2.5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたBSAが溶出され、ポリリン酸の場合と同様に溶出量は36 ngまで上昇し、一時的に溶出量の高い状態になっているピークが見られた。
これに対して、溶出液が2.5 ml以上では、溶出量はほぼ安定し、溶出液(生理食塩水)3.333μlあたり6〜13 ngの狭い範囲でBSAが溶出されている。溶出量は溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が12 mlまでこの溶出量を維持していた。
したがって、ハイドロキシアパタイトに吸着したBSAは、過剰の残留したBSAが流出した後、比較的安定したスピードでBSAを放出していることが分かった。BSAは、一般的なタンパク質の性質を備えた代表的な物質であり、BMP-1あるいはBMP-7もタンパク質であることから、ハイドロキシアパタイトにおけるBMP-1あるいはBMP-7の吸着と徐放は、BSAの吸着と徐放の結果によって明らかである。
【0041】
実施例3(ハイドロキシアパタイトへの核酸(DNA)の吸着と徐放)
ハイドロキシアパタイトへの核酸の吸着徐放実験には、一般的な核酸としてサケ精巣由来のDNA(デオキシリボ核酸ナトリウム、サケ精巣由来(繊維状)、生化学用、和光純薬社製)を長音波処理し、平均100〜200塩基対程度の長さに分解したものを用いた。
1mg/mlのDNA溶液中に150 mgのブロック状のハイドロキシアパタイトを沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、真空ポンプを用いて10分間脱気した。DNA溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、8,000 xgで5分間遠心分離し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、42℃で1時間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、DNA吸着ハイドロキシアパタイトとした。DNA溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトにはミリグラムあたり0.2 μgのDNAが吸着していた。
なお、吸着量は吸着処理前のDNA溶液の254 nmでの吸光度から吸着後に残ったDNA溶液の吸光度を差し引きすることで算出した。DNA溶液の吸光度は1 mg/mlで20であった。
【0042】
DNAの吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;Biologic、バイオラッド社製)を用いて毎分0.2 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は、UV検出器において連続的(1秒ごと)に254 nmの吸光度を測定し、DNAの溶出量を定量した。なお、DNA濃度は1吸光度unit=50μg/mlとした。
【0043】
図6に、DNA溶液を用いて吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたDNA量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の3.5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたDNAが溶出され、溶出量が不安定で極端に高い状態になっているピークが見られた。この時の溶出量は最高で約1.6 ngであった。
これに対して、溶出液が3.5 ml以上では、溶出量はほぼ安定しており、溶出量12 mlまでの変動は0.3〜0.8 ngの間であった。溶出量は、溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が11 mlを超えた付近でも0.4 ngの溶出量を維持しており、ハイドロキシアパタイトに吸着したDNAは、過剰の残留したDNAが溶出した(溶出がピークとして観察された)後、ゆっくりとした一定のスピードで放出されていることが分かった。
【0044】
実施例4(NF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイトからの経時的溶出試験)
<方法>
実施例1と同様に、所定濃度のNF-κBデコイ/PBS(リン酸緩衝液)溶液を調製し、ハイドロキシアパタイトを沈め、脱気、脱水、乾燥させて、NF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイトを得た。
PBS(1mL)にNF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイト1mg又は10mgを沈め、1,5,10,30,60および120分後に吸光度計(HITACHI製、型式:3010)で吸光度(260nm)を測定し、その後,脱気条件下で氷中に2時間放置した後の吸光度を測定した。結果を表1〜表4に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0045】
実施例5
(材料および方法)
1.材料
実験動物には,ニュージーランドホワイトラビット8羽(2-2.5 kg)を用いた。材料には薬剤流出型人工骨(ポリリン酸吸着ハイドロキシアパタイト、ポリリン酸濃度1,5,25%、以下P-IPHAと略す)および連通多孔性ハイドロキシアパタイト(登録商標 NEOBONE,コバレントマテリアル、以下IPHAと略す)を用い,材料をシリンダー状(直径 3 mm,高さ 5 mm)に成形して、試料とした(図7)。
【0046】
2.表面構造の観察
5%P-IPHAおよびIPHA表面性状を確認するため、表面にPt-Pd蒸着を施した後、走査型電子顕微鏡(JSM-6300型,日本電子データム、以下SEMと略す)を用い,試料表面に対して45度の角度で観察した。
【0047】
3.骨形成能の評価
動物の左側大腿骨を露出させた後,ラウンドバーにて皮質骨を穿通させ、ドリルバー(直径3mm)にて深さ5mmまで骨窩を2ヵ所形成し、規定の骨欠損を用意した。この骨窩にP-IPHAおよびIPHAをそれぞれ埋入した(図8)。
【0048】
埋入後,筋膜はポリ乳酸製吸収性糸にて,皮膚弁は絹糸にてそれぞれ縫合し,創部を閉鎖した。以上の外科的処置はいずれも,塩酸メデトミジン1.0 mg/ml(登録商標ドミトール,明治製薬)1.0 ml/kgの筋肉内注射およびペントバルビタールナトリウム50 mg/ml(登録商標ネンブタール,大日本製薬)0.5 ml/kgの静脈内注射による全身麻酔とエピネフリン含有2 %リドカイン(登録商標キシロカイン,藤沢薬品工業)による局所麻酔を併用して行った。感染防止のため,術後1週間はエンロフロキサシン製剤(登録商標バイトリル,日本バイエル) 0.5 ml/dayを筋注した。埋入1週後,同様の処置を右側に行った。その2週後(左側処置から3週後)動物にペントバルビタールナトリウムおよび血液凝固阻止剤(登録商標ノボ・ヘパリン注1000,日本ヘキスト・マリオン・ルセル)2500単位を静注,開胸を行い,心膜を剥離した後,心室から大動脈より生理的食塩水および10%中性ホルマリンを注入して灌流固定した。その後,両側大腿骨を摘出,固定液中に48時間浸漬した。
【0049】
搾取した大腿骨を硬組織薄切機(硬組織用カッティング・マシン BS-3000,EXAKT PPARATEBAU製)を用いて切断してトリミングを行い、試料を含む各骨窩の組織ブロックを得た。これらを,急速脱灰溶液(登録商標KC-X,塩野義製薬)に3日間浸漬させて脱灰し,アルコールによる脱水とキシレンによる透徹を経て,パラフィン包埋した。次いで,ミクロトームを用いて約5μm厚の組織切片を作製,ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を施して光顕的に観察した。組織形態計測はHE染色標本をデジタル化してパーソナルコンピュータに取り込み,画像解析ソフト(Image J, National Institutes of Health製)を用いて,皮質骨欠損部における気孔内組織面積に占める新生骨の割合を骨面積率として算出した(図9)。骨面積率の値は一元配置分散分析およびTukey HSDの多重比較検定を用い,有意水準5%にて統計学的に解析した(n=4)。
【0050】
(結果)
I.走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
SEMによる試料表面構造の観察では,P-IPHAおよびIPHAともに気孔や連通孔の形状は相似していた(図10,11)。また表面性状はP-IPHAはIPHAと比べやや滑沢であった(図12)。
【0051】
II.組織学的観察
光顕観察において,埋入2週後ではいずれの群においても試料の気孔内は新生骨や線維性組織で満たされ,新生された骨表面では,立方形の骨芽細胞様細胞の配列もみられた。また,気孔内に形成された骨組織は気孔表面に直接接触していた。とくに5%および25%P-IPHA群では皮質骨欠損中央部で新生骨の顕著な形成がみられた(図13,14,15,16)。
【0052】
埋入3週後ではすべての群で、試料内部の気孔内は多くの骨組織により占められ、成熟した骨芽細胞様細胞などが観察された(図17,18,19,20)。
【0053】
III.骨形成能の評価
組織形態計測の結果を図20,21に示した。埋入2週後における骨面積率はIPHA、1,5,25%P-IPHA群でそれぞれ36.0%,39.8%,37.7%,50.9%であり,25%P-IPHA群の値がIPHA群の値に比べ有意に高かった(P<0.05)(図21)。なお観察期間2週では5%P-IPHA群は骨折のためn数が不足したため統計処理から除外した。埋入3週後における骨面積率では,IPHA、1,5,25%P-IPHA群でそれぞれ61.2%,56.2%,65.2%,66.7%であり,各群間の値に有意差はみられなかった(図22)。
【0054】
(考察)
試料表面にポリリン酸が吸着されることによる連通孔部の閉鎖等の所見は見られなかったことから、P-IPHAはIPHAと同様の連通多孔性構造を持ち、同等の骨伝導能を有しているものと考えられる。
観察期間2週後において25%P-IPHAがIPHAに対して有意に高い骨形成を示した。埋入から2週目の時期は肉芽組織形成の後、石灰化が始まり骨形成の初期である。リン酸は未分化幹細胞を骨芽細胞へと分化させる骨誘導能を持つことが知られている。そのため試料埋入時、局所のリン酸濃度が高まることで組織修復期に凝集する骨髄細胞に含まれる未分化な幹細胞が骨芽細胞へ分化することが促進され,骨形成が促進されたものと考えられる。一方,観察期間3週後ではいずれの群でも骨形成の有意な差は見られなかった。これは今回の実験モデルのような閉鎖型骨欠損では,試料によるスペースメイキングが確実に行われていることで周囲からの骨伝導によりほぼすべての骨形成が行われ、成熟したものと考えられる。
以上より新規に開発した薬剤流出人工骨(P-IPHA)は吸着されたポリリン酸による骨形成促進効果を具備しており,また吸着ポリリン酸による連通孔部の形状的変化もみられないことから、優れた骨伝導および骨誘導能をもつ骨移植材と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】好ましい物性を有するハイドロキシアパタイトの表面を写した電子顕微鏡写真である。
【図2】ハイドロキシアパタイトに1%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図3】ハイドロキシアパタイトに5%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図4】ハイドロキシアパタイトに10%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図5】ハイドロキシアパタイトに吸着したタンパク質の徐放を示したグラフである(実施例2)。
【図6】ハイドロキシアパタイトに吸着したDNAの徐放を示したグラフである(実施例3)。
【図7】実施例5で用いた試料の外観を示す写真。
【図8】実施例5の試験方法を説明するための写真。
【図9】皮質骨欠損部における気孔内組織面積に占める新生骨の割合の計測方法を説明するための図。
【図10】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図11】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図12】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図13】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図14】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図15】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図16】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図17】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図18】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図19】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図20】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図21】観察期間2週後における組織形態計測の結果を示した図。
【図22】観察期間3週後における組織形態計測の結果を示した図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨を補うため、骨細胞再生にのみ作用する生理活性物質を徐放する生体用部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、骨や歯槽骨における手術や事故等により欠損した部分を補い、生体本来の機能を回復させるため、各種成分が利用され、また新たな成分が研究されてきた。これらの成分により物理的な空隙を埋めることはできるが、これらは生体にとってはあくまで異物であるため、埋設後に生体と馴染みにくく、患者にとって痛みや違和感を避けることは困難であった。
【0003】
この問題を解決し真の再生を図るには、埋設する成分が生体と同化することが望ましく、例えば非特許文献1には次のように記載されている。「近年、再生医学が脚光を浴びるなか、歯科領域においても組織細胞工学を用いた骨組織再生の研究が盛んになっている。生体組織の再生を考えるうえでは、1)担体、2)細胞、3)生体活性物質という3つの要素が必要不可欠とされている。」(729頁、左カラム19行目)「BMP、TGF、PDGFなど、さまざまな因子が骨組織再生に有用であると言われている。」(同、31行目)
【0004】
このような考え方に基づき、例えば特許文献1には「骨組織適用部位にTGF-βの持続量を送達することができ、かつそのことにより骨欠損適用部位において骨形成および新生骨組織形成を促進することができるTGF-β送達組成物」が開示されており、また特許文献2には、「トランスフォーミング成長因子(TGF)βおよびリン酸三カルシウムを含む骨誘導製剤」が開示されている。
しかしながらTGF-βは、細胞増殖や分化、アポトーシス、遊走、細胞外マトリックスの産生と分解などを調節する多彩な機能を持ち、生体の維持や修復などの調節因子として働くため骨細胞再生以外の作用も発現し、特にガンの発生や悪化に働く問題があった。このため骨細胞再生にのみ作用する生理活性物質を、徐放できる新たな生体用部材が求められていた。
【特許文献1】特開平7−2691号公報
【特許文献2】特表平8−505548号公報(特許第3347144号公報)
【特許文献3】特再表96/035430号公報
【特許文献4】特許3392143号公報
【特許文献5】WO95/11687号公報
【特許文献6】特開2005-160464号公報
【特許文献7】国際公開公報WO96/35430
【特許文献8】国際公開公報WO02/066070
【特許文献9】国際公開公報WO03/043663
【特許文献10】国際公開公報WO03/082331
【特許文献11】国際公開公報WO03/099339
【特許文献12】国際公開公報WO04/026342
【特許文献13】国際公開公報WO05/004913
【特許文献14】国際公開公報WO05/004914
【非特許文献1】Quintessence Dental Implantology, 11(6) 723-730 2004.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させ、生体本来の機能を回復させることが可能な真の生体用部材およびその製造方法を提供することである。
さらには生理活性物質を徐放化することにより、長期にわたり安全かつ確実な再生/回復を図ることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、具体的には以下の特徴を有する。
(1)多孔体に骨形成成分が吸着されている生体用部材。
(2)前記骨形成成分がポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)である、(1)記載の生体用部材。
(3)前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の重合度が15〜2000である、(2)記載の生体用部材。
(4)前記ポリリン酸の薬理学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、(2)または(3)記載の生体用部材。
(5)前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の吸着量が生体用部材質量の5質量%以内の量である、(1)〜(4)のいずれかに記載の生体用部材。
(6)前記骨形成因子がBMP-1またはBMP-7(OP-1)である、(2)〜(5)のいずれかに記載の生体用部材。
(7)前記多孔体が、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム〔β-Ca3(PO4)2〕)、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の生体用部材。
(8)さらに薬理活性成分が吸着されている、(1)〜(7)のいずれかに記載の生体用部材。
(9)さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分が転写因子のデコイ核酸または抗癌剤である、(1)〜(8)のいずれかに記載の生体用部材。
(10)さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分がNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド、シスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシンから選ばれた1種である、(1)〜(9)のいずれかに記載の生体用部材。
(11)骨または歯槽骨の欠損を補うためのものである、(1)〜(10)のいずれかに記載の生体用部材。
(12)(1)〜(11)の生体用部材の製造方法であって、多孔体を骨形成成分の5質量%以下の水溶液に含浸させる工程を有する生体用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の生体用部材は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させ、生体本来の機能を回復させることが可能であり、かつ生理活性物質を徐放化することにより、長期にわたり安全かつ確実な再生/回復を図ることができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<多孔体>
本発明における多孔体は、骨または歯槽骨と生体親和性があり、多数の微少孔を有する材質であれば限定されないが、具体的には、例えばハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム[β-Ca3(PO4)2])、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックス等を挙げることができる。
【0009】
これらの中でもハイドロキシアパタイトがより好ましく、例えば下記の物性を有するものがより好ましい。下記物性を有するハイドロキシアパタイトの電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0010】
気孔率:72〜78%
気孔径:150μm〜200μm
連通部径:40μm〜70μm
圧縮強度:12MPa〜19MPa
【0011】
<骨形成成分>
本発明における骨形成成分は、骨芽細胞の増殖・分化・遊走を促進する成分であれば限定されず、例えばポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)を挙げることができる。
【0012】
ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩としては、重合度が15〜2000のポリリン酸が好ましい。また、その薬理学的に許容される塩も、生体に対する安全性が保たれるものであれば限定されないが、例えば、ナトリウム塩またはカリウム塩を挙げることができる。
【0013】
ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の生体用部材中の含有率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは3質量%以下である。
【0014】
骨形成因子(Bone morphogenetic protein: BMP) としては、現在、TGF-βスーパーファミリーに属する13種類のBMPが知られており、これらの中でもBMP-1またはBMP-7(OP-1)がより好ましい。これらの骨形成因子は試薬等として入手可能であり、文献(Science 271, 360-362.等)に記載された方法によって製造することもできる。
【0015】
骨形成因子の生体用部材中の含有率は、5質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下である。
【0016】
本発明においては、さらなる薬理活性成分を吸着させることができ、薬理活性成分としては、例えば転写因子のデコイ核酸または抗癌剤を挙げることができる。
転写因子のデコイ核酸としては、例えばNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。抗癌剤としては、例えばシスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシン等を挙げることができる。
【0017】
ここでデコイ(decoy)とは英語で「おとり」の意味であり、ある物質が本来結合あるいは作用すべきものと似せた構造を有するものをデコイと呼んでいる。ゲノム遺伝子上の結合領域に結合する転写因子のデコイとしては、主として該結合領域と同じ塩基配列を有する二本鎖オリゴヌクレオチドが用いられている(特許文献1〜3)。
【0018】
このようなオリゴヌクレオチドから成るデコイの共存下では、転写因子の分子のうちの一部は、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合せずに、オリゴヌクレオチドデコイに結合する。このため、本来結合すべきゲノム遺伝子上の結合領域に結合する転写因子の分子数が減少し、その結果、転写因子の活性が低下することになる。
【0019】
この場合、オリゴヌクレオチドは、本物のゲノム遺伝子上の結合領域の偽物(おとり)として機能して転写因子を結合するため、デコイと呼ばれる。NF-κBに対するオリゴヌクレオチドデコイも種々知られており、それらの薬理効果も種々知られている(特許文献4〜12)。さらにまた、NF-κBの結合配列(結合領域)は、種々の文献、例えば「分子細胞生物学辞典」(東京化学同人、1997年発行)の891頁などにおいて公知となっている。具体的な結合配列としては、配列番号1(RはAまたはG; YはCまたはT; HはA,CまたはTを意味する。)、より具体的には、例えば配列番号2又は配列番号3などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
デコイは、一般的に結合配列(結合領域またはコンセンサス配列、コア配列とも称される)の両端にヌクレオチドが連結されている。該ヌクレオチド部分は付加配列と呼ばれる場合がある。各末端の該ヌクレオチド部分は、1以上の塩基からなり、好ましくは1〜20ヌクレオチド、より好ましくは1〜10ヌクレオチド、最も好ましくは1〜7ヌクレオチドからなってよい。
【0021】
デコイは主として二本鎖オリゴヌクレオチドであり、これを構成する二本鎖は完全に相補的な配列からなるものであることが好ましいが、1または数個(好ましくは1または2個)の非相補的な塩基対を含んでいても、それに転写因子が結合し得る限り、本明細書中のデコイに包含される。すなわち、5’-5’末端付加配列-結合配列-3’末端付加配列-3‘という構成からなるセンス鎖オリゴヌクレオチドと、それに完全に相補的なアンチセンス鎖ヌクレオチドとからなる二本鎖オリゴヌクレオチドが典型的なデコイの構成として挙げられる。さらにまた、5’末端付加配列と3’末端付加配列との間に複数の結合配列がタンデムに直接または1または数個のヌクレオチドを挟んで連結されている複数の転写因子結合部位を有する二本鎖オリゴヌクレオチドもまた、デコイとして挙げることができる。
【0022】
さらにまた、デコイは、1つ以上の修飾された塩基を含有していてもよい。例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート、ボラノホスフェート、メトキシエチルホスホエート、モルホリノホスホロアミデード、ペプチド核酸(peptide nucleic acid: PNA)、ロックド核酸(locked nucleic acid: LNA)ジニトロフェニル(DNP)化およびO-メチル化などの修飾された塩基を含んでいてもよい。場合によっては(例えば、O-メチル化、DNP化など)は、リボヌクレオシドに対する修飾であるが、本発明においては、オリゴヌクレオチド中の修飾するデオキシリボヌクレオシドを、リボヌクレオシドとしてオリゴヌクレオチドを合成し、該塩基を修飾することが可能である。中でも、ホスホロチオエート化された塩基(すなわち、ヌクレオシド間の結合がホスホロチオエート結合であること)を含有することがより好ましい。オリゴヌクレオチドを構成する塩基の全てが修飾されていてもよく、いずれか1つ以上の塩基が修飾されていてもよい。
【0023】
本発明に用いる好ましいNFκBデコイの例としては、配列番号4、配列番号5の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるもの、配列番号6、配列番号7の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるもの、および配列番号8、配列番号9の相補的二本鎖オリゴヌクレオチドからなるものが挙げられる。
【0024】
さらにまた、デコイは二本のオリゴヌクレオチド鎖で構成されるものに限定されることはない。一本のオリゴヌクレオチド鎖であっても、結合配列とその相補的配列とを含有しこれらの配列が分子内に二本鎖部分を形成しているような、リボン型デコイまたはステイプル型デコイと呼ばれるものも、該二本鎖部分に転写因子が結合する限り、本明細書にいうデコイに含まれうる。
【0025】
デコイまたはデコイ候補のオリゴヌクレオチドが転写因子に結合するか否かは結合活性試験により確認することができる。NFκBについての結合活性試験は、例えば、TransAM NF-κB p65 Transcription Factor Assay Kit(商品名、ACTIVE MOTIF社)を用いて、添付の資料に基づいて、または当業者が日常的に行う程度のプロトコルの改変により、容易に実施することができる。
【0026】
また、転写因子のデコイ核酸または抗癌剤の含有率も限定されないが、通常は生体用部材中5質量%以下が好ましい。
【0027】
<製造方法>
本発明の生体用部材の製造方法は、多孔体を骨形成成分の水溶液に含浸させる工程を有するものであり、前記水溶液中の骨形成成分の濃度は5質量%以下にする。前記含浸工程では、多孔体に骨形成成分が吸着されやすくするため、脱気してもよい。その後、必要に応じて、脱水工程、乾燥工程を付加することができる。
【0028】
<用途および使用方法>
本発明の生体用部材は、手術や事故等により欠損した骨や歯槽骨の部分を補い再生させる際に使用するものであり、欠損部の形状、大きさ(面積、容量)等の状況に応じ、多様な使用法/形態供給が可能であり限定されないが、通常は、顆粒状あるいはブロック状で供給される。顆粒品の場合、そのまま欠損部に必要量を押圧充填してもよいし、蒸留水や生理食塩水等でスラリー状とし欠損部に塗りつけ充填してもよい。ブロック品の場合、欠損部の形状に合わせて加工後に嵌め込む。
【0029】
続いて実施例を掲げ、本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【実施例】
【0030】
<実施例で用いたデコイ配列>
本発明の実施例では、配列番号4、5の相補的二本鎖からなるNFκBデコイを用いた(該二本鎖オリゴヌクレオチド中の全ての塩基間結合はホスホロチオエート化結合である)。
【0031】
さらにNFκBデコイ以外のデコイとして、具体的には、例えば次のセンス鎖およびその相補鎖からなる二本鎖デコイを挙げることができるが、これらに限定されない。
(1) E2Fデコイオリゴヌクレオチド
配列番号10
(2) AP-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号11
(3) Ets-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号12
(4) STAT-1デコイオリゴヌクレオチド
配列番号13
(5) STAT-6デコイオリゴヌクレオチド
配列番号14
(6) GATA-3デコイオリゴヌクレオチド
配列番号15
【0032】
実施例1(ハイドロキシアパタイトへのポリリン酸ナトリウムの吸着と徐放)
1%および5%ポリリン酸ナトリウム水溶液中にブロック状のハイドロキシアパタイト(商品名;ネオボーン、株式会社エム・エム・ティー社製)を沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、アスピレーター〔条件;−0.1MPa(メガパスカル)〕を用いて120分間脱気した。
ポリリン酸ナトリウム水溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、3600rpmで2分間遠心脱水し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、37℃で3日間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、本発明の生体用部材であるポリリン酸吸着ハイドロキシアパタイトを得た。
1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトには、ミリグラムあたり1.8μgのポリリン酸が吸着しており、5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトには、ミリグラムあたり10.8μgのポリリン酸が吸着していた。
【0033】
ハイドロキシアパタイトの吸着したポリリン酸の定量方法は、以下の通りである。ポリリン酸が吸着したハイドロキシアパタイトを100 mg取り、完全に破砕してから0.1mlの蒸留水中で1時間超音波処理して、吸着したポリリン酸を完全に溶出した。
その後10,000xgで5分間遠心分離し、その上澄みを20μl取り、2N−塩酸を480μl加えて酸加水分解を行った。加水分解後のサンプル0.3 mlに、アスコルビン酸:モリブデン酸アンモニウム=1:6の溶液を0.7 ml加えて37℃で1時間保温後、820 nmでの吸光度を測定して、リン酸濃度を定量することで吸着したポリリン酸濃度をリン酸残基あたりのモル濃度で算出した。
なお、リン酸定量におけるスタンダードは、0, 0.033, 0.067, 0.1, 0.133, 0.167, 0.2 mMのリン酸水素ナトリウムを標準溶液とし、それぞれの吸光度、0, 0.197, 0.371, 0.503, 0.610, 0.683, 0.729から検量線を作成し、リン酸濃度を求めた。また、溶出実験後のそれぞれのフラクション中のポリリン酸濃度も、加水分解後に上記のモリブデン酸を用いる方法で定量した。
【0034】
ポリリン酸の吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;BioLogic Duo Flow、バイオラッド社製)を用いて毎分0.1 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は溶出液としてフラクションコレクター(商品名;Model 2110、バイオラッド社製)で0.25mlずつ分取した。
【0035】
図2に、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、一時的に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりの溶出量は、平均で約0.06 nmolであった。これに対して、溶出液が5 ml以上では溶出量はほぼ安定しており、溶出液1μlあたり0.01〜0.02 nmolの範囲でポリリン酸が溶出されていた。溶出量は、溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が13 mlを超えた付近でも0.01 nmol以上の溶出量を維持していた。
したがって、ハイドロキシアパタイトに吸着したポリリン酸は、過剰の残留したポリリン酸の溶出パターン(一時的に溶出量の高い状態になっているピーク)とは異なり、かなりゆっくりしたスピードで放出されていることが分かった。
【0036】
図3に、5%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の20 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりのポリリン酸溶出量は0.025〜0.4 nmolで大幅に変動した。これに対して、溶出液が20 〜60 mlでは、ポリリン酸の溶出量はほぼ安定しており、溶出液(生理食塩水)1μlあたり0.01〜0.02 nmolが溶出されていた。溶出液の流量が20 ml以上では、1%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様のスピードでポリリン酸が放出されており、吸着したポリリン酸が40 mlの流量の間で安定して放出されたと考えられる。その後、溶出量は溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が 100 ml付近でも0.005 nmol以上の溶出量があった。
【0037】
図4に、10%ポリリン酸ナトリウム水溶液において吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたポリリン酸量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の13 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたポリリン酸が溶出され、1%もしくは5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様に溶出量の高い状態になっているピークが見られる。
このときの溶出液1μlあたりのポリリン酸溶出量は0.03〜1.0 nmolで大幅に変動した。これに対して、溶出液が15 〜61 mlでは、ポリリン酸の溶出量はほぼ安定しており、溶出液(生理食塩水)1μlあたり0.003〜0.019 nmolが溶出されていた。溶出液の流量が15 ml以上では、1%もしくは5%ポリリン酸ナトリウム水溶液で吸着処理をした場合と同様のスピードでポリリン酸が放出されており、吸着したポリリン酸が46 mlの流量の間で安定して放出されたと考えられる。
【0038】
実施例2(ハイドロキシアパタイトへのタンパク質(BSA)の吸着と徐放)
本発明の好適対象であるBMP-1あるいはBMP-7はタンパク質であることから、ハイドロキシアパタイトへのタンパク質の吸着徐放実験には、一般的なタンパク質としてウシ血清アルブミン(BSA、シグマ社製)を用いた。2 mg/mlのBSA水溶液中に328mgのブロック状のハイドロキシアパタイトを沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、真空ポンプを用いて10分間脱気した。
BSA溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、8,000 xgで5分間遠心分離し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、42℃で1時間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、タンパク質吸着ハイドロキシアパタイトとした。BSA溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトにはミリグラムあたり1.21μgのBSAが吸着していた。
なお、吸着量は吸着処理前のBSA溶液の280 nmでの吸光度から吸着後に残ったBSA溶液の吸光度を差し引きすることで算出した。BSA溶液の吸光度は2 mg/mlで0.555であった。
【0039】
BSAの吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;BioLogic Duo Flow、バイオラッド社製)を用いて毎分0.2 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は、UV検出器において連続的(1秒ごと)に280 nmの吸光度を測定し、BSAの溶出量を定量した。
【0040】
図5に、BSA溶液を用いて吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたBSA量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の2.5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたBSAが溶出され、ポリリン酸の場合と同様に溶出量は36 ngまで上昇し、一時的に溶出量の高い状態になっているピークが見られた。
これに対して、溶出液が2.5 ml以上では、溶出量はほぼ安定し、溶出液(生理食塩水)3.333μlあたり6〜13 ngの狭い範囲でBSAが溶出されている。溶出量は溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が12 mlまでこの溶出量を維持していた。
したがって、ハイドロキシアパタイトに吸着したBSAは、過剰の残留したBSAが流出した後、比較的安定したスピードでBSAを放出していることが分かった。BSAは、一般的なタンパク質の性質を備えた代表的な物質であり、BMP-1あるいはBMP-7もタンパク質であることから、ハイドロキシアパタイトにおけるBMP-1あるいはBMP-7の吸着と徐放は、BSAの吸着と徐放の結果によって明らかである。
【0041】
実施例3(ハイドロキシアパタイトへの核酸(DNA)の吸着と徐放)
ハイドロキシアパタイトへの核酸の吸着徐放実験には、一般的な核酸としてサケ精巣由来のDNA(デオキシリボ核酸ナトリウム、サケ精巣由来(繊維状)、生化学用、和光純薬社製)を長音波処理し、平均100〜200塩基対程度の長さに分解したものを用いた。
1mg/mlのDNA溶液中に150 mgのブロック状のハイドロキシアパタイトを沈め、ハイドロキシアパタイトの内部にまで水溶液を浸透させる目的で、真空ポンプを用いて10分間脱気した。DNA溶液が完全に浸透した状態で、水溶液中よりハイドロキシアパタイトを取り出し、8,000 xgで5分間遠心分離し、ハイドロキシアパタイト内に残った水溶液を取り除いた。上記操作の後、42℃で1時間ハイドロキシアパタイトを乾燥させ、DNA吸着ハイドロキシアパタイトとした。DNA溶液で吸着処理をしたハイドロキシアパタイトにはミリグラムあたり0.2 μgのDNAが吸着していた。
なお、吸着量は吸着処理前のDNA溶液の254 nmでの吸光度から吸着後に残ったDNA溶液の吸光度を差し引きすることで算出した。DNA溶液の吸光度は1 mg/mlで20であった。
【0042】
DNAの吸着したハイドロキシアパタイトを1mlの生理食塩水に浸し、ハイドロキシアパタイトの内部に生理食塩水が浸透するように10分間脱気した。生理食塩水が完全に浸透したハイドロキシアパタイトを直径1cm、長さ2cmのガラス製カラムの内部にセットし、中圧液体クロマトグラフィー(商品名;Biologic、バイオラッド社製)を用いて毎分0.2 mlの流速でカラムに生理食塩水を流した。カラムを通過した生理食塩水は、UV検出器において連続的(1秒ごと)に254 nmの吸光度を測定し、DNAの溶出量を定量した。なお、DNA濃度は1吸光度unit=50μg/mlとした。
【0043】
図6に、DNA溶液を用いて吸着処理を行ったハイドロキシアパタイトから徐放されたDNA量の変化をグラフに示した。カラムにおける溶出初期の3.5 mlにおいては、過剰に吸着(ハイドロキシアパタイト内に残留)されたDNAが溶出され、溶出量が不安定で極端に高い状態になっているピークが見られた。この時の溶出量は最高で約1.6 ngであった。
これに対して、溶出液が3.5 ml以上では、溶出量はほぼ安定しており、溶出量12 mlまでの変動は0.3〜0.8 ngの間であった。溶出量は、溶出液の流量に依存して少しずつ低下しているが、流量が11 mlを超えた付近でも0.4 ngの溶出量を維持しており、ハイドロキシアパタイトに吸着したDNAは、過剰の残留したDNAが溶出した(溶出がピークとして観察された)後、ゆっくりとした一定のスピードで放出されていることが分かった。
【0044】
実施例4(NF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイトからの経時的溶出試験)
<方法>
実施例1と同様に、所定濃度のNF-κBデコイ/PBS(リン酸緩衝液)溶液を調製し、ハイドロキシアパタイトを沈め、脱気、脱水、乾燥させて、NF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイトを得た。
PBS(1mL)にNF-κBデコイ吸着ハイドロキシアパタイト1mg又は10mgを沈め、1,5,10,30,60および120分後に吸光度計(HITACHI製、型式:3010)で吸光度(260nm)を測定し、その後,脱気条件下で氷中に2時間放置した後の吸光度を測定した。結果を表1〜表4に示す。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0045】
実施例5
(材料および方法)
1.材料
実験動物には,ニュージーランドホワイトラビット8羽(2-2.5 kg)を用いた。材料には薬剤流出型人工骨(ポリリン酸吸着ハイドロキシアパタイト、ポリリン酸濃度1,5,25%、以下P-IPHAと略す)および連通多孔性ハイドロキシアパタイト(登録商標 NEOBONE,コバレントマテリアル、以下IPHAと略す)を用い,材料をシリンダー状(直径 3 mm,高さ 5 mm)に成形して、試料とした(図7)。
【0046】
2.表面構造の観察
5%P-IPHAおよびIPHA表面性状を確認するため、表面にPt-Pd蒸着を施した後、走査型電子顕微鏡(JSM-6300型,日本電子データム、以下SEMと略す)を用い,試料表面に対して45度の角度で観察した。
【0047】
3.骨形成能の評価
動物の左側大腿骨を露出させた後,ラウンドバーにて皮質骨を穿通させ、ドリルバー(直径3mm)にて深さ5mmまで骨窩を2ヵ所形成し、規定の骨欠損を用意した。この骨窩にP-IPHAおよびIPHAをそれぞれ埋入した(図8)。
【0048】
埋入後,筋膜はポリ乳酸製吸収性糸にて,皮膚弁は絹糸にてそれぞれ縫合し,創部を閉鎖した。以上の外科的処置はいずれも,塩酸メデトミジン1.0 mg/ml(登録商標ドミトール,明治製薬)1.0 ml/kgの筋肉内注射およびペントバルビタールナトリウム50 mg/ml(登録商標ネンブタール,大日本製薬)0.5 ml/kgの静脈内注射による全身麻酔とエピネフリン含有2 %リドカイン(登録商標キシロカイン,藤沢薬品工業)による局所麻酔を併用して行った。感染防止のため,術後1週間はエンロフロキサシン製剤(登録商標バイトリル,日本バイエル) 0.5 ml/dayを筋注した。埋入1週後,同様の処置を右側に行った。その2週後(左側処置から3週後)動物にペントバルビタールナトリウムおよび血液凝固阻止剤(登録商標ノボ・ヘパリン注1000,日本ヘキスト・マリオン・ルセル)2500単位を静注,開胸を行い,心膜を剥離した後,心室から大動脈より生理的食塩水および10%中性ホルマリンを注入して灌流固定した。その後,両側大腿骨を摘出,固定液中に48時間浸漬した。
【0049】
搾取した大腿骨を硬組織薄切機(硬組織用カッティング・マシン BS-3000,EXAKT PPARATEBAU製)を用いて切断してトリミングを行い、試料を含む各骨窩の組織ブロックを得た。これらを,急速脱灰溶液(登録商標KC-X,塩野義製薬)に3日間浸漬させて脱灰し,アルコールによる脱水とキシレンによる透徹を経て,パラフィン包埋した。次いで,ミクロトームを用いて約5μm厚の組織切片を作製,ヘマトキシリン・エオジン染色(HE染色)を施して光顕的に観察した。組織形態計測はHE染色標本をデジタル化してパーソナルコンピュータに取り込み,画像解析ソフト(Image J, National Institutes of Health製)を用いて,皮質骨欠損部における気孔内組織面積に占める新生骨の割合を骨面積率として算出した(図9)。骨面積率の値は一元配置分散分析およびTukey HSDの多重比較検定を用い,有意水準5%にて統計学的に解析した(n=4)。
【0050】
(結果)
I.走査型電子顕微鏡(SEM)による観察
SEMによる試料表面構造の観察では,P-IPHAおよびIPHAともに気孔や連通孔の形状は相似していた(図10,11)。また表面性状はP-IPHAはIPHAと比べやや滑沢であった(図12)。
【0051】
II.組織学的観察
光顕観察において,埋入2週後ではいずれの群においても試料の気孔内は新生骨や線維性組織で満たされ,新生された骨表面では,立方形の骨芽細胞様細胞の配列もみられた。また,気孔内に形成された骨組織は気孔表面に直接接触していた。とくに5%および25%P-IPHA群では皮質骨欠損中央部で新生骨の顕著な形成がみられた(図13,14,15,16)。
【0052】
埋入3週後ではすべての群で、試料内部の気孔内は多くの骨組織により占められ、成熟した骨芽細胞様細胞などが観察された(図17,18,19,20)。
【0053】
III.骨形成能の評価
組織形態計測の結果を図20,21に示した。埋入2週後における骨面積率はIPHA、1,5,25%P-IPHA群でそれぞれ36.0%,39.8%,37.7%,50.9%であり,25%P-IPHA群の値がIPHA群の値に比べ有意に高かった(P<0.05)(図21)。なお観察期間2週では5%P-IPHA群は骨折のためn数が不足したため統計処理から除外した。埋入3週後における骨面積率では,IPHA、1,5,25%P-IPHA群でそれぞれ61.2%,56.2%,65.2%,66.7%であり,各群間の値に有意差はみられなかった(図22)。
【0054】
(考察)
試料表面にポリリン酸が吸着されることによる連通孔部の閉鎖等の所見は見られなかったことから、P-IPHAはIPHAと同様の連通多孔性構造を持ち、同等の骨伝導能を有しているものと考えられる。
観察期間2週後において25%P-IPHAがIPHAに対して有意に高い骨形成を示した。埋入から2週目の時期は肉芽組織形成の後、石灰化が始まり骨形成の初期である。リン酸は未分化幹細胞を骨芽細胞へと分化させる骨誘導能を持つことが知られている。そのため試料埋入時、局所のリン酸濃度が高まることで組織修復期に凝集する骨髄細胞に含まれる未分化な幹細胞が骨芽細胞へ分化することが促進され,骨形成が促進されたものと考えられる。一方,観察期間3週後ではいずれの群でも骨形成の有意な差は見られなかった。これは今回の実験モデルのような閉鎖型骨欠損では,試料によるスペースメイキングが確実に行われていることで周囲からの骨伝導によりほぼすべての骨形成が行われ、成熟したものと考えられる。
以上より新規に開発した薬剤流出人工骨(P-IPHA)は吸着されたポリリン酸による骨形成促進効果を具備しており,また吸着ポリリン酸による連通孔部の形状的変化もみられないことから、優れた骨伝導および骨誘導能をもつ骨移植材と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】好ましい物性を有するハイドロキシアパタイトの表面を写した電子顕微鏡写真である。
【図2】ハイドロキシアパタイトに1%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図3】ハイドロキシアパタイトに5%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図4】ハイドロキシアパタイトに10%吸着したポリリン酸の徐放を示したグラフである(実施例1)。
【図5】ハイドロキシアパタイトに吸着したタンパク質の徐放を示したグラフである(実施例2)。
【図6】ハイドロキシアパタイトに吸着したDNAの徐放を示したグラフである(実施例3)。
【図7】実施例5で用いた試料の外観を示す写真。
【図8】実施例5の試験方法を説明するための写真。
【図9】皮質骨欠損部における気孔内組織面積に占める新生骨の割合の計測方法を説明するための図。
【図10】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図11】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図12】試料表面の走査型顕微鏡(SEM)写真。
【図13】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図14】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図15】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図16】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図17】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図18】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図19】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図20】試料表面の光学顕微鏡写真(左側写真の倍率40倍)。
【図21】観察期間2週後における組織形態計測の結果を示した図。
【図22】観察期間3週後における組織形態計測の結果を示した図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔体に骨形成成分が吸着されている生体用部材。
【請求項2】
前記骨形成成分がポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)である、請求項1記載の生体用部材。
【請求項3】
前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の重合度が15〜2000である、請求項2記載の生体用部材。
【請求項4】
前記ポリリン酸の薬理学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項2または3記載の生体用部材。
【請求項5】
前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の吸着量が生体用部材質量の5質量%以内の量である、請求項1〜4のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項6】
前記骨形成因子がBMP-1またはBMP-7(OP-1)である、請求項2〜5のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項7】
前記多孔体が、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム〔β-Ca3(PO4)2〕)、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項8】
さらに薬理活性成分が吸着されている、請求項1〜7のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項9】
さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分が転写因子のデコイ核酸または抗癌剤である、請求項1〜8のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項10】
さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分がNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド、シスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシンから選ばれた1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項11】
骨または歯槽骨の欠損を補うためのものである、請求項1〜10のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項12】
請求項1〜11の生体用部材の製造方法であって、多孔体を骨形成成分の5質量%以下の水溶液に含浸させる工程を有する生体用部材の製造方法。
【請求項1】
多孔体に骨形成成分が吸着されている生体用部材。
【請求項2】
前記骨形成成分がポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩、あるいは骨形成因子(BMP)である、請求項1記載の生体用部材。
【請求項3】
前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の重合度が15〜2000である、請求項2記載の生体用部材。
【請求項4】
前記ポリリン酸の薬理学的に許容される塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項2または3記載の生体用部材。
【請求項5】
前記ポリリン酸またはその薬理学的に許容される塩の吸着量が生体用部材質量の5質量%以内の量である、請求項1〜4のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項6】
前記骨形成因子がBMP-1またはBMP-7(OP-1)である、請求項2〜5のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項7】
前記多孔体が、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、β-TCP(リン酸三カルシウム〔β-Ca3(PO4)2〕)、珊瑚、炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化珪素、セラミックスから選ばれた1種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項8】
さらに薬理活性成分が吸着されている、請求項1〜7のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項9】
さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分が転写因子のデコイ核酸または抗癌剤である、請求項1〜8のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項10】
さらに薬理活性成分が吸着されており、前記薬理活性成分がNF-κBデコイオリゴヌクレオチド、E2Fデコイオリゴヌクレオチド、AP-1デコイオリゴヌクレオチド、Ets-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-1デコイオリゴヌクレオチド、STAT-3デコイオリゴヌクレオチド、STAT-6デコイオリゴヌクレオチド、GATA-3デコイオリゴヌクレオチド、シスプラチン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ラパマイシンから選ばれた1種である、請求項1〜9のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項11】
骨または歯槽骨の欠損を補うためのものである、請求項1〜10のいずれかに記載の生体用部材。
【請求項12】
請求項1〜11の生体用部材の製造方法であって、多孔体を骨形成成分の5質量%以下の水溶液に含浸させる工程を有する生体用部材の製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図21】
【図22】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図21】
【図22】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2008−132303(P2008−132303A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195813(P2007−195813)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(500097119)株式会社エム・エム・ティー (7)
【出願人】(502124248)リジェンティス株式会社 (6)
【出願人】(500409323)アンジェスMG株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(500097119)株式会社エム・エム・ティー (7)
【出願人】(502124248)リジェンティス株式会社 (6)
【出願人】(500409323)アンジェスMG株式会社 (34)
【Fターム(参考)】
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