説明

生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法

【課題】開封することなく電極等の電極部材の良否を判定でき、密封包装から取り出したときに2つのリード線が絡み合うことがなく、扱いを容易にする。
【解決手段】第1、第2の電極部材20a、20bと、第1の電極部材20aに接続する第1のリード線22a及び第2の電極部材20bに接続する第2のリード線22bが並列する状態で夫々の被覆部材が一体に固着された平行線部分29を有し、第1のリード線22aの他端がコネクタ24を介し第2の補助リード線25bと導電性材料27bと第2の電極部材20bとに接続され、第2のリード線22bの他端がコネクタ24を介し第1の補助リード線25aと導電性材料27aと第1の電極部材20aとに接続され、第1、第2のリード線22a、22bを直列接続した閉回路が形成され、平行線部分29がコイル状に巻回されて密封包装部材により密封されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動器用電極等に適用される生体用電極を生体用電極ユニットとして密封包装した包装体に係り、特に、生体用電極ユニットを包装状態から開封する前に、定期的または非定期的に、包装状態の電極の良否判定検査を簡便かつ容易に行うことができ、しかも包装状態の電極の良否について適正かつ迅速に判定することができる生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医用電子装置として、例えば医用電極については、電極を安定した状態で保存するために密封して包装状態とすることが行われている。また、このように密封された包装体として保存されている医用電極は、保存状態において開封することなく、定期的に電極の電気的な使用可能性を検査することも行われている。
【0003】
そこで、例えば、電極の電気的な使用可能性を、開封することなく定期的に検査することを可能にする、電子医療装置に使用されるシール包装された医用電極システムとしては、特許文献1に示されたシステムが知られている。この引用文献1では、(1)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 上記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 上記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段とからなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第1の使い捨て電極と、(2)-a- 平らで薄い非導電性ベース層、 -b- 上記ベース層の側に配置された患者に接触する導電性半液体のゲル層、 -c- 上記ゲル層に通電可能に接続された導電性接続手段とからなる患者の体に配置され電子医療装置に接続する第2の使い捨て電極と、(3) 上記第1および第2の電極を囲むために内部空間を形成するように構成され配置された、薄くて通常平らで柔軟性があり、完全な非ガス透過性の高分子材料で構成されたパッケージと、(4) 上記第1および第2の電極の接続手段は、上記パッケージを通って外面に延び、上記第1および第2の電極のゲル層は、それぞれの間で電気通信を行えるように対向した関係を持って方向付けられており、これによりパッケージを開封することなく、電流ループが上記第1の電極の接続手段、第1の電極のゲル層、第2の電極のゲル層、第2の電極の接続手段の間に形成されるようにしたシール包装された医用電極システムが提案されている。
【0004】
また、使い捨ての除細動器用電極の包装体としては、特許文献2に記載のものが知られている。この引用文献2には、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触するゲル層と、(3) 第1の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器に電気的に内部接続される第2端部とを備えた第1のリード線と、(4) 使用前に第1の電極を保護するために第1の電極と第1のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第1の電極の使用に先立って、第1のリード線の第2端部が除細動器に内部接続できるように、第1のリード線がパッケージから延出している構成からなる第1の使い捨て除細動器用電極が提案されている。
【0005】
また、この特許文献2には、(1) ベース層と、(2) ベース層に上塗りされた患者と接触するゲル層と、(3) 第2の電極に取り付けられて導電性ゲル層に電気的に内部接続される第1端部と、除細動器に電気的に内部接続される第2端部とを備えた第2のリード線と、(4) 使用前に第2の電極を保護するために第2の電極と第2のリード線の第1端部とを通常ガス非透過性のパッケージで覆っており、(5) パッケージの開封と第2の電極の使用に先立って、第2のリード線の第2端部が除細動器に内部接続できるように、第2のリード線がパッケージから延出している構成からなる第2の使い捨て除細動器用電極が開示されている。そして、上記第1の電極と第2の電極の導電性ゲル層は、パッケージ内で互いに電気的に内部接続されており、これにより上記第1のリード線と第2のリード線の第2端部間で電気回路を形成し、パッケージの開封に先立って上記第1の電極と第2の電極の電気特性を検査することを可能にしていることが開示されている。
【0006】
さらに特許文献3には、医療用消耗品等において、導電性を有する内容物を電気絶縁性被膜で被包した密封包装物についての検査方法として、密封包装物のピンホールを検査するように構成した密封包装物の検査方法および装置が提案されている。
【0007】
この特許文献3に記載された密封包装物の検査方法は、(1) 血液製剤その他各種の導電性を有する内容物を、電気絶縁性被膜で被包した密封包装物を搬送しながら、その搬送路の片側に配置した導電子とその他方の側に配置した前後二つの導電子のうち内容物が存する部分における対向両面に同時に接触させつつ高電圧で密封包装物に帯電させ、(2) 導電子が接触している部分と二つの導電子のうちの少なくとも一方が接触している部分に、電流変化が起こっているか否かを検知すると共に、(3) 各導電子と密封包装物の電気絶縁性被膜との接触部の前後の側方に光ファイバーの入光端面を対面させて上記光ファイバーを介して各導電子が接触している部分にスパーク放電による発光が起こっているか否かを検知し、(4) 導電子と電気絶縁性被膜の接触部の電流変化の検知と放電による発光の有無の検知とにより、密封包装物のピンホールを確実に検出する一方、(5) 電流変化の検知と発光の有無の検知のいずれか一方のみの検知により、検知手段の不良を判別可能にしたものである。
【0008】
【特許文献1】米国特許第5402884号明細書
【特許文献2】米国特許第5579919号明細書
【特許文献3】特開2003−35626号公報
【0009】
上記特許文献1および特許文献2に記載の発明は、使い捨ての医用電極の密封包装体に関するものであって、上記密封包装された電極を使用する場合に、上記密封包装体を開封することなく、定期的に密封包装されている電極の電気特性を検査することができる特徴を備えるものである。
【0010】
しかるに、上記特許文献1および特許文献2に記載の発明においては、密封包装されている電極の電気特性を検査する手段として、電極を電子医療装置に接続するため、電極に接続されている接続手段としてのリード線の一部を、予め密封包装体の外部に導出させ、しかもこれらのリード線と共に、電極に対する検査用の導電線ないし導電片をさらに設けて、その一端を密封包装体の外部に導出させた構成からなるものである。
【0011】
このように、電極を密封包装することにより、電極面に塗着されたゲル物質と共に安全かつ適正な保存を維持することができるが、上記のように電極に対してそれぞれ接続されるリード線および検査用の導電線ないし導電片の一端を、それぞれ密封包装体の外部に導出させることから、これらリード線等の密封包装体からの引き出し個所およびリード線等の内部の密封を確実にしなければならない。このため、密封包装に際しての構成が複雑になると共に、密封包装体はリード線等が外部に引き出してあるために取扱い中などにおいてリード線等に無理な力が加わって、密封が破壊される惧れがある。
【0012】
また、特許文献3に記載の発明は、導電性を有する内容物を電気絶縁性被膜で被包した密封包装物を対象とし、この密封包装物に対して一対の電極を接触ないし近接対面させて、上記電極間に直流高電圧を印加することにより、上記内容物を被包する電気絶縁性被膜におけるピンホールの存在を、このピンホールと電極との間に発生する火花放電により検出するように構成したものである。従って、このような密封包装物の対象として、使い捨ての医用電極等に適用することは不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、生体用電極ユニットを完全に密封包装して、電極部材の劣化進行を十分にかつ確実に抑制することができると共に、この密封包装された生体用電極ユニットに対し、定期的または非定期的にそれぞれ密封状態を開封することなく、簡便かつ容易に行うことができ、しかもその良否判定を適正かつ迅速に達成することができ、密封包装から取り出す場合に扱いが容易な生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る生体用電極ユニット包装体は、生体に貼着される第1、第2の電極部材と、並列する状態でそれぞれの被覆部材が一体に固着された平行部分を有し、一端側において分離されて第1の電極部材に接続される第1のリード線及び、第2の電極部材に接続される第2のリード線と、前記第1、第2のリード線における他端側において前記第1、第2のリード線と接続されるコネクタと、前記コネクタにおける前記第1のリード線と、前記第2の電極部材との間を電気的に接続する第1の接続手段と、前記コネクタにおける前記第2のリード線と、前記第1の電極部材との間を電気的に接続する第2の接続手段と、前記第1、第2の電極、前記第1、第2のリード線、前記第1、第2の接続手段を備えた生体用電極ユニットを密封包装する密封包装部材とを具備し、前記第1、第2の接続手段により前記第1、第2のリード線を直列接続した閉回路が構成されると共に、前記第1、第2のリード線における平行線部分がコイル状に巻回されて前記密封包装部材により密封されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る生体用電極ユニット包装体は、生体に貼着される第1、第2の電極部材と、並列する状態でそれぞれの被覆部材が一体に固着された平行線部分を有し、一端側において分離されて第1の電極部材に接続される第1のリード線及び、第2の電極部材に接続される第2のリード線と、前記第1、第2のリード線における他端側において前記第1、第2のリード線と接続されるコネクタと、前記コネクタにおける前記第1のリード線と、前記第1の電極部材との間を電気的に接続して第1のリード線のみを含む閉回路を形成する第1の接続手段と、前記コネクタにおける前記第2のリード線と、前記第2の電極部材との間を電気的に接続して第2のリード線のみを含む閉回路を形成する第2の接続手段と、前記第1、第2の電極、前記第1、第2のリード線、前記第1、第2の接続手段を備えた生体用電極ユニットを密封包装する密封包装部材とを具備し、前記平行線部分がコイル状に巻回されて前記密封包装部材により密封されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る生体用電極ユニット包装体は、請求項2の構成において、第1の接続手段と第2の接続手段の一部を共通化して、前記1、第2のリード線を並列接続した閉回路を有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る生体用電極ユニットの良否判定検査方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて発振コイルと受信コイルとを配置し、前記発振コイルに所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイルに発生する電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る生体用電極ユニットの良否判定検査方法は、請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて検出コイルを配置し、前記検出コイルに抵抗器を介して所要の周波数の交流電圧を印加し、前記検出コイルの電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1と請求項2と請求項3に記載の生体用電極ユニット包装体によれば、生体用電極ユニットの全体を簡便にかつ容易に完全密封包装することができ、電極部材の劣化の進行を抑制して、生体用電極ユニットの有効保存期間を延長することができる。しかも、密封包装された生体用電極ユニットは、開封することなく容易かつ簡便に電極等の電極部材の良否を適正かつ迅速に判定することができる。また、第1のリード線と第2のリード線がそれぞれの被覆部材により一体に固着された平行線部分がコイル状に巻回されて密封包装部材により密封されているので、密封包装から取り出したときに2つのリード線が絡み合うことがなく、扱いが楽であるという効果がある。
【0020】
本発明の請求項4と請求項5に記載の包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法によれば、包装状態の生体用電極ユニットを開封することなく、定期的または非定期的に、電極等の電極部材の良否判定のための検査を簡便かつ容易に行うことができ、しかも電極等の電極部材の良否について適正かつ迅速に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明においては、第1の電極部材に接続された第1のリード線と第2の電極部材に接続された第2のリード線とにおける、それぞれの被覆部材同士を一体に固着した状態とし、この一体に固着された平行線部分をコイル状に巻回して密封包装部材により密封した構成を採用し、密封包装された生体用電極ユニットについて密封状態を開封することなく、電極等の電極部材の良否を適正かつ迅速に判定可能とし、密封包装から取り出す場合に扱いを容易とするという目的を達成したものである。
【実施例1】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る生体用電極ユニット包装体およびその良否判定検査方法の実施例を説明する。各図において同一の構成要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。図1は、本発明に係る生体用電極ユニット包装体の要部断面概略構成図を示すものであり、生体用電極ユニット包装体は除細動器に使用されるものである。図1において、参照符号10a、10bはそれぞれ可撓性シート電極を示し、これらの可撓性シート電極10a、10bの一側面には導電性ゲル層12a、12bを設けると共に、その他側面には非導電性部材14a、14bを粘着剤により接着させて、一対の電極部材20a、20bが構成されている。
【0023】
このように構成された一対の電極部材20a、20bは、セパレータ16を介して上記導電性ゲル層12a、12bを相互に対向させて接合離反可能に接合する。また、上記可撓性シート電極10a、10bの一端部には、圧着ピン18a、18bを介してリード線22a、22bの一端が電気的に接続されている。なお、参照符号15a、15bは、上記可撓性シート電極10a、10bとリード線22a、22bとのそれぞれの接続部を覆う非導電性部材を示す。
【0024】
図2に示す通り、リード線22a、22bは、並列する状態でそれぞれ絶縁状態でお互いの被覆部材同士が一体に固着された平行線部分29を有し、端部において、被覆部材にて被覆されたリード線22aと被覆部材にて被覆されたリード線22bに分離されて、リード線22aは電極部材20aに電気的に接続され、リード線22bは電極部材20bに電気的に接続されている。リード線22a、22bは、例えば全長が1m50cm程度であるとき、被覆部材により一体に固着された平行線部分29の長さは1m程度とすることができる。リード線22a、22bは、電極部材20a、20bに接続された端部とは異なる端部においても分離されてコネクタ24に結合されている。
【0025】
参照符号25a、25bは、生体用電極ユニットの良否判定検査に用いるための補助リード線を示し、図2に示すように補助リード線25aはコネクタ24内においてリード線22bに接続され、補助リード線25bはコネクタ24内においてリード線22aに接続されている。補助リード線25aは他端側において、電極部材20aの導電性ゲル層12aとセパレータ16との間に設けられた導電性材料27aに電気的に接続されている。また、補助リード線25bは他端側において、電極部材20bの導電性ゲル層12bとセパレータ16との間に設けられた導電性材料27bに電気的に接続されている。導電性材料27a(27b)としては、金属系のシートや導電塗料、より好ましくはカーボン粉末を溶剤に混ぜたカーボン塗料やカーボンシート、カーボン織布などのカーボン系の導電性材料を用いる。導電性材料27a(27b)はセパレータ16に貼着または塗布されるものであるが、この構成としては、図3(a)に示すように1枚のセパレータ16の表面に導電性材料27aを設け、裏面に導電性材料27bを設けたもの、図3(b)に示すように1枚のセパレータ16の表面に導電性材料27a、27bを並べて設け、これを中央から折り返したもの、更に、図3(c)に示すように2枚のセパレータ16、16の一方に導電性材料27aを設け、他方に導電性材料27bを設け裏返して重ねたたものを用いることができる。
【0026】
ここに、補助リード線25a(25b)は非導電性材料により複数の金属細線を被覆したものを採用し、補助リード線25a(25b)と導電性材料27a(27b)との電気的接続に際しては、図4に示されているように非導電性材料を剥いで露出させた複数の金属細線Mをセパレータ16上に広げ、この金属細線Mに導電性材料27a(27b)を被せる。導電性材料27a(27b)がシートの場合は、補助リード線25a(25b)をピン等を用いて導電性材料27a(27b)に、かしめて接続することができる。補助リード線25a(25b)と導電性材料27a(27b)は、コネクタ24におけるリード線22a(22b)と電極部材20a(20b)との間を電気的に接続する第1の(第2の)接続手段を構成する。
【0027】
以上の通りの構成によって、上記第1、第2の接続手段によりリード線22a、22bを直列接続した閉回路が構成される。この閉回路にあっては、例えば電極部材20aからリード線22a側へ電流が流れる場合に電流は、リード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22aを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25bへ到り、更に導電性材料27bと電極部材20bを介してリード線22b側へ流れ、再びリード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22bを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25aを通過して、導電性材料27aから電極部材20aへ到るよう閉回路が構成されている(図2参照)。このとき、リード線22a、22bにおける平行線部分29において電流は、リード線22a、22bを同一方向へ流れることになる。そして、上記リード線22a、22bにおける平行線部分29は、外部磁界により起電力を発生し得るようにコイル状に巻回されて、上記接合した一対の電極部材20a、20bの一側面に配置されて、生体用電極ユニット全体が非磁性体で非導電性の密封包装材26により密封包装されて、本発明に係る生体用電極ユニット包装体30が構成される。係る構成により、リード線22a、22bの部分が、図5(a)に示されている直列接続されたコイルL1、L2として機能する閉回路が完成する。上記密封包装材26としては、各種の医療用資材を密封包装する公知の各種包装材料を適用することができる。この実施例によれば、リード線22a、22bが一体に固着された平行線部分29がコイル状に巻回されて密封包装部材26により密封されているので、密封包装から取り出したときに2つのリード線が絡み合うことがなく、扱いが楽である。
【0028】
図2は、前述した生体用電極ユニット包装体30における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示すものである。すなわち、前述した一対の電極部材20a、20bにおいて、それぞれ導電性ゲル層を対向させると共に、セパレータ16を介して相互に接合する。次いで、上記各電極部材20a、20bからそれぞれ導出されるリード線22a、22bと補助リード線25a、25bとをコネクタ24において前述の通りの接続関係にて接続し、補助リード線25a、25bの非導電性材料を剥いで露出させた複数の金属細線Mをセパレータ16上に広げ、この金属細線Mに導電性材料27a、27bを被せることによりリード線22a、22bを直列接続した1つの閉回路を形成する。そして、上記リード線22a、22bにおける平行線部分29を、図示のように一定方向に巻回して、上記一対の電極部材20a、20bの一側面に配置する。補助リード線25a、25bは、長さが短いものであり、図1に示すように電極部材20a、20bの端部からコネクタ24間に配置される。このようにセッティングした生体用電極ユニットは、図1に示すように、全体を密封包装材26により密封包装される。
【0029】
次に、上記構成からなる生体用電極ユニット包装体30に対する生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等の良否判定検査方法について説明する。
【0030】
図6は、前述した本発明に係る生体用電極ユニット包装体30を、開封することなく、定期的または非定期的に、包装状態にある生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等について良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の一実施例を示すものである。すなわち、本実施例の検査方法を実施する装置は、図6において、上記生体用電極ユニット包装体30に対し、リード線22a、22bにおける平行線部分29を一定方向に巻回して形成されたコイルと同心的に、その上方位置および下方位置にそれぞれ発振コイル32と受信コイル36とを対向配置し、上記発振コイル32を発振器34に接続して所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、上記受信コイル36をオシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38に接続して発生する電圧(起電力)を検出するように構成される。可撓性シート電極10a、10b等が劣化すると、内部抵抗が高くなるため、上記受信コイル36に発生する電圧(起電力)は高くなる。従って、前述したように構成することにより、上記オシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38の電圧(起電力)検出出力に基づいて、可撓性シート電極10a、10b等の良否判定が可能となる。
【0031】
次に、上記一対の電極部材20a、20bを含む閉回路の内部抵抗の変化に対して、上記受信コイル36に発生する電圧の変化の一例を具体例で説明する。なお、上記内部抵抗を可変するために、上記閉回路中に直列に可変抵抗器を挿入して測定した。
上記リード線22a、22bにおける平行線部分29は、直径約100mm、巻回数5ターンのコイル形状とし、上記発振コイル32と受信コイル36とをそれぞれ直径約120mm、巻回数20ターンのコイルとして構成し、上記コイル32と36とを約20mm離間させて対向配置し、これらコイル32と36との間に厚さ約10mmの生体用電極ユニット包装体30を、上記リード線22a、22bにおける平行線部分29を一定方向に巻回して形成されたコイルが上記コイル32、36と同心的となるように挿入配置した。また、上記発振コイル32、上記受信コイル36および上記生体用電極ユニット包装体30は、それぞれの相対位置がずれないように適宜の治具等で固定した。このようにして、上記発振コイル32に対して発振器34により周波数500KHz、出力(p−p)2Vの電圧を印加した。
【0032】
正常状態においては、上記生体用電極ユニットにおける一対の電極部材20a、20bを含む1つの閉回路の内部抵抗は約4Ωであるが、可撓性シート電極10a、10b等の劣化により、電気的特性の低下に伴って上記内部抵抗が増大する。そこで、上記生体用電極ユニットにおける閉回路中に挿入した上記可変抵抗器を0〜25Ω(トータルの内部抵抗は4〜29Ω)の範囲で変化させ、その時のオシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38により検出される電圧(起電力)について測定した結果、図7に示すように、内部抵抗の増大に伴って検出電圧が増大(200〜600mV)する特性が得られた。
【0033】
従って、本実施例によれば、上記電圧(起電力)検出手段38により検出される電圧(起電力)の検出値が所要の基準値以下であれば、可撓性シート電極10a、10b等は適正と判定し、また上記検出値が所要の基準値より増大した際には、可撓性シート電極10a、10b等の不良と判定するように設定することができる。上記検出値は、生体用電極ユニットの種類および発振コイル、受信コイル等の検査方法を実施する装置等によって異なるため、上記基準値は適切な値に設定される。
【0034】
前述した生体用電極ユニット包装体30の良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の実施例においては、上記発振コイル32および上記受信コイル36を、上記生体用電極ユニット包装体30と同心的に上方および下方に配置したが、各コイル32、36の配置はこれに限定されることはない。例えば、上記発振コイル32および上記受信コイル36の両コイルを上下方向に近接させ、これら近接させた両コイルを、上記生体用電極ユニット包装体30の上方または下方のいずれかに近接させて配置してもよい。この場合も、上記両コイル32、36および生体用電極ユニット包装体30のそれぞれの相対位置がずれないように適宜の治具等で固定する。なお、このような構成例の場合は、前述した実施例に比べて、上記内部抵抗の変化に対する上記受信コイル36に発生する電圧(起電力)の変化が小さくなる。
【0035】
次に、上記包装状態にある生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等について、良否判定を行うための検査方法を実施する装置構成の別の実施例について、図8に基づいて説明する。前述の実施例においては、発振コイル32、受信コイル36の二つのコイルを使用したが、本実施例においては、一つのコイルを使用する。すなわち、図8において、上記生体用電極ユニット包装体30の上方に近接させると共に、上記生体用電極ユニット包装体30との相対位置がずれないようにして、検出コイル40を配置する。この検出コイル40の端子40aは抵抗器42を介して発振器34に接続され、端子40bは直接発振器34に接続される。上記発振器34は、所要の周波数、電圧からなる交流電圧を上記抵抗器42を介して上記検出コイル40に印加する。さらに、上記検出コイル40の上記端子40a、40bは、オシロスコープ等の電圧(起電力)検出手段38に接続されて、上記両端子間の電圧を検出するように構成される。
【0036】
このように構成することにより、前述したように、可撓性シート電極10a、10b等が劣化すると、上記一対の電極部材20a、20bを含む1つの閉回路の内部抵抗が高くなるため、上記検出コイル40の端子電圧が高くなる。従って、本実施例によれば、上記検出手段38の検出出力に基づいて、可撓性シート電極10a、10b等の良否判定が可能となる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明に係る生体用電極ユニット包装体の第2の実施例を説明する。この第2の実施例にあっては、図9に示すようにコネクタ24におけるリード線22a、22bと補助リード線25a、25bの接続関係が第1の実施例と異なっている。すなわち、補助リード線25aはコネクタ24内においてリード線22aに接続され、補助リード線25bはコネクタ24内においてリード線22bに接続されている。また、導電性材料27a、27bはカーボンシートとし、それぞれに補助リード線25a、25bをピン等で、かしめて接続して、導電性ゲル層12a、12b上に載置されているが、第1の実施例と同様に構成することもできる。これ以外の構成は、第1の実施例と同一である。
【0038】
以上の通りの接続により、上記第1の接続手段である補助リード線25aと導電性材料27aにより、リード線22aのみを含む閉回路が構成され、また、上記第2の接続手段である補助リード線25bと導電性材料27bにより、リード線22bのみを含む閉回路が構成される。つまり、独立した閉回路が2つ形成される。リード線22aのみを含む閉回路にあっては、例えば電極部材20aからリード線22a側へ電流が流れる場合に電流は、リード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22aを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25aと導電性材料27aとを介して電極部材20aへ戻る。一方、リード線22bのみを含む閉回路にあっては、例えば電極部材20bからリード線22b側へ電流が流れる場合に電流は、リード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22bを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25bと導電性材料27bとを介して電極部材20bへ戻る。このとき、リード線22a、22bにおける平行線部分29において電流は、リード線22a、22bを同一方向へ流れることになる。
【0039】
そして図1と図9に示す通り、上記リード線22a、22bにおける平行線部分29が外部磁界により起電力を発生し得るコイル状に巻回されて、上記接合した一対の電極部材20a、20bの一側面に配置されて、生体用電極ユニット全体が非磁性体で非導電性の密封包装材26により密封包装されて、本発明に係る生体用電極ユニット包装体30が構成される。係る構成により、リード線22a、22bの部分が、図5(b)に示されている独立したコイルL1、L2として作用する2つの閉回路が完成する。本実施例においても、リード線22a、22bが一体に固着された平行線部分29がコイル状に巻回されて密封包装部材26により密封されているので、密封包装から取り出したときに2つのリード線が絡み合うことがなく、扱いが楽である。このように構成された生体用電極ユニット包装体30に対する生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等の良否判定検査方法については、図6乃至図8を用いて第1の実施例に係る生体用電極ユニット包装体30に対する検査方法として説明したものと同様であるから、その詳細説明は省略する。
【実施例3】
【0040】
次に、本発明に係る生体用電極ユニット包装体の第3の実施例を説明する。この第3の実施例にあっては、第2の実施例に係る生体用電極ユニット包装体について変更を行い、図10に示される通り、第1の接続手段と第2の接続手段の一部を共通化して、リード線22a、22bを並列接続した閉回路を有することを特徴とする。すなわち、第1の接続手段である補助リード線25aと導電性材料27a、また、第2の接続手段である補助リード線25bと導電性材料27bの内、補助リード線25aと補助リード線25bとの中央部分を電気的に一本の電路25により構成する。
【0041】
そして図1と図10に示す通り、上記リード線22a、22bにおける平行線部分29が外部磁界により起電力を発生し得るコイル状に巻回されて、上記接合した一対の電極部材20a、20bの一側面に配置して、生体用電極ユニット全体を非磁性体で非導電性の密封包装材26により密封包装して、本発明に係る生体用電極ユニット包装体30を構成する。係る構成により、リード線22a、22bの部分がコイルL1、L2として作用し、全体として図5(c)に示されているように上記コイルL1、L2を並列接続して、接続点を電路25によって接続した閉回路が完成する。
【0042】
この回路においては、電流が例えば電路25を流れて補助リード線25a、25bに分岐し、その一方の電流は、電極部材20aからリード線22a側へ流れ、リード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22aを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25aを介して電路25へ戻る。他方補助リード線25bへ分岐した電流は、電極部材20bからリード線22b側へ流れ、リード線22a、22bにおける平行線部分29にてリード線22bを介してコネクタ24へ到り、補助リード線25bを介して電路25へ戻る。このとき、リード線22a、22bにおける平行線部分29において電流は、リード線22a、22bを同一方向へ流れることになる。
【0043】
本実施例においても、リード線22a、22bが平行線部分29がコイル状に巻回されて密封包装部材26により密封されているので、密封包装から取り出したときに2つのリード線が絡み合うことがなく、扱いが楽である。このように構成された生体用電極ユニット包装体30に対する生体用電極ユニットの可撓性シート電極10a、10b等の良否判定検査方法については、図6乃至図8を用いて第1の実施例に係る生体用電極ユニット包装体30に対する検査方法として説明したものと同様であるから、その詳細説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る生体用電極ユニット包装体の第1の実施例を示す要部断面概略構成図。
【図2】本発明の第1の実施例に係る生体用電極ユニット包装体における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示す概略斜視図。
【図3】本発明に係る生体用電極ユニット包装体に用いられる導電性材料をセパレータに配置する場合の構成例を示す平面図。
【図4】本発明に係る生体用電極ユニット包装体に用いられる補助リード線と導電性材料とを電気的接続する場合の接続例を示す平面図。
【図5】本発明に係る生体用電極ユニット包装体におけるリード線を巻回して構成されるコイルを含む閉回路の回路図を示すもので、(a)は第1の実施例の回路図、(b)は第2の実施例の回路図、(c)は第3の実施例の回路図。
【図6】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法を実施する装置構成の一実施例を示す概略説明図。
【図7】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査を行う場合における生体用電極ユニットが形成する閉回路の内部抵抗と検出電圧(起電力)との関係を示す特性線図。
【図8】本発明に係る包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法を実施する装置構成の別の実施例を示す概略説明図。
【図9】本発明の第2の実施例に係る生体用電極ユニット包装体における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示す概略斜視図。
【図10】本発明の第3の実施例に係る生体用電極ユニット包装体における生体用電極ユニットの包装に際してのセッティング状態を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0045】
10a、10b 可撓性シート電極
12a、12b 導電性ゲル層
14a、14b 非導電性部材
15a、15b 非導電性部材
16 セパレータ
18a、18b 圧着ピン
20a、20b 電極部材
22a、22b リード線
24 コネクタ
25 導電路
25a、25b 補助リード線
26 密封包装材
27a、27b 導電性材料
29 平行線部分
30 生体用電極ユニット包装体
32 発振コイル
34 発振器
36 受信コイル
38 電圧(起電力)検出手段
40 検出コイル
40a、40b 端子
42 抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に貼着される第1、第2の電極部材と、
並列する状態でそれぞれの被覆部材が一体に固着された平行線部分を有し、一端側において分離されて第1の電極部材に接続される第1のリード線及び、第2の電極部材に接続される第2のリード線と、
前記第1、第2のリード線における他端側において前記第1、第2のリード線と接続されるコネクタと、
前記コネクタにおける前記第1のリード線と、前記第2の電極部材との間を電気的に接続する第1の接続手段と、
前記コネクタにおける前記第2のリード線と、前記第1の電極部材との間を電気的に接続する第2の接続手段と、
前記第1、第2の電極、前記第1、第2のリード線、前記第1、第2の接続手段を備えた生体用電極ユニットを密封包装する密封包装部材とを具備し、
前記第1、第2の接続手段により前記第1、第2のリード線を直列接続した閉回路が構成されると共に、前記平行線部分がコイル状に巻回されて前記密封包装部材により密封されていることを特徴とする生体用電極ユニット包装体。
【請求項2】
生体に貼着される第1、第2の電極部材と、
並列する状態でそれぞれの被覆部材が一体に固着された平行線部分を有し、一端側において分離されて第1の電極部材に接続される第1のリード線及び、第2の電極部材に接続される第2のリード線と、
前記第1、第2のリード線における他端側において前記第1、第2のリード線と接続されるコネクタと、
前記コネクタにおける前記第1のリード線と、前記第1の電極部材との間を電気的に接続して第1のリード線のみを含む閉回路を形成する第1の接続手段と、
前記コネクタにおける前記第2のリード線と、前記第2の電極部材との間を電気的に接続して第2のリード線のみを含む閉回路を形成する第2の接続手段と、
前記第1、第2の電極、前記第1、第2のリード線、前記第1、第2の接続手段を備えた生体用電極ユニットを密封包装する密封包装部材とを具備し、
前記平行線部分がコイル状に巻回されて前記密封包装部材により密封されていることを特徴とする生体用電極ユニット包装体。
【請求項3】
第1の接続手段と第2の接続手段の一部を共通化して、前記1、第2のリード線を並列接続した閉回路を有することを特徴とする請求項2に記載の生体用電極ユニット包装体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて発振コイルと受信コイルとを配置し、前記発振コイルに所要の周波数、電圧からなる交流電圧を印加し、前記受信コイルに発生する電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の生体用電極ユニット包装体に対し、前記リード線を巻回して形成したコイルに近接させて検出コイルを配置し、前記検出コイルに抵抗器を介して所要の周波数の交流電圧を印加し、前記検出コイルの電圧を検出することにより、電極部材等の良否判定を可能とすることを特徴とする包装された生体用電極ユニットの良否判定検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−209432(P2007−209432A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30679(P2006−30679)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】