説明

生体系のグループ内の疾病の生物学的プロファイルに対する多成分天然産物混合物の影響を決定するための方法、並びに天然産物に基づく医薬品の開発及び品質管理

本発明は、疾病の生物学的プロファイルに対する多成分天然産物混合物の影響を決定するための方法であって、(a)多変量解析を使用して、疾病の症状を有する生体系のグループの生物学的プロファイルを生体系の参照(すなわち健康な)グループの生物学的プロファイルと比較することによって、疾病の生物学的プロファイルを決定するステップと、(b)多変量解析を使用して、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記多成分混合物の一連のサンプルの影響を決定するステップであって、この一連のサンプルにおいて、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの濃度が異なるところのステップと、(c)多変量解析を使用して、ステップ(b)において前記疾病の生物学的プロファイルに対する所望の影響を示した前記多成分混合物のサンプルの組成を決定する組成と、(d)多変量解析を使用して、ステップ(c)において決定された前記組成内で、有効な天然成分又は天然成分のグループ及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するステップとを含む方法を提供する。本発明はまた、医薬品を調製するための方法であって、ステップ(d)において識別された有効な天然成分又は天然成分のグループが前記疾病の前記微生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされる個々の濃度で組み合わされるところの方法を提供する。本発明はさらに、多成分混合物の成分を設計及び制御するための方法であって、該混合物の少なくとも一つの天然成分の濃度は、該混合物の少なくとも一つの天然成分が前記疾病の生物学的プロファイルに対する影響を有することを保証するように調節されているところの方法を提供する。本発明はまた、天然産物に基づく医薬品における使用のために、天然産物の繁殖、栽培、又はポストハーベスト処理のためのツールとして本発明の方法を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生命科学の分野並びに健康及び疾病の領域、特に疾病の予防、治療又は治癒の計画及び製品の開発に関する。
【背景技術】
【0002】
新規な医薬品を開発するために製薬会社によって慣用的に適用されてきた還元法的(reductionistic)アプローチと対照的に、本発明は生命有機体への全体論的(holistic)アプローチに基づく。
【0003】
生命有機体へのそのような全体論的アプローチは例えば、最も初期の時代から薬草医薬品(herbal medicine)、例えば伝統的な漢方薬(Traditional Chinese Medicine,TCM)を適用することに基づいてきた。薬草医薬品に基づくアプローチにおける重要な開始点は、全ての健康な有機体が均衡にあるということである。均衡は、身体と心との間の複雑な相互作用であると考えられ、それは生化学的成分観点から我々の肉体的身体のエネルギー的なシステム制御まで及ぶすべてのレベルで反映される。内部不均衡は、多種多様の要因から生じ、そして短い摂動から慢性病過程まで及ぶ状態の過多をもたらしうる。さらに、TCMのようなアプローチでは、各ヒトの独自性が認識され、そして多成分治療に基づく最適な結果を得るために個別化された薬剤を開発するための必要性を推進する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一見したところでは、「西洋の」医学的アプローチは、これと非常に違うように見えるかもしれない。しかしながら、最近の十年間に生命科学において生じたゲノミクスにおける改革は、診断及び治療上のより全体論的な見解についての相当な支持を提供した。その上、個別化された医薬品の問題は、なかんずく薬理ゲノム学における新しい洞察によって、相当な注目をいま受けている。ホメオスタシスの原理は1世紀以上の間、西洋の生理学の基礎であったけれども、生体系の巨大な複雑さは健康と疾病の間の差を生ずる単一のターゲットだけを識別し且つ影響を及ぼすことを試みることに向けた薬剤の研究をしばしば推進した。このアプローチは、多くの有力な薬を確かに与えたが、また大きな欠点を明らかにした。事実、人々は、しばしば複雑な経路の一部であり且つ反応のカスケード及びフィードバック・ループに関与する単一のタンパク質と相互に作用することによってシステムに影響を及ぼすことを試みる。現実は、ほとんどの疾病が、単一のターゲットを治療することが部分的な治療(症状の減少)を提供し且つたいていの場合治癒しないことを意味する多因子であるということである。この意識は新しくないが、該系の上記複雑さを与える代替の経路を見つけることは不可能だった。
【0005】
しかしながら、複雑な混合物の非常に詳細なプロファイリング、及び生物学的システム、例えばイン ビトロシステム(例えば細胞培養)及びイン ビボシステム(例えば動物モデル、ヒト)における複雑な多成分誘発された変化(生物学的効果)の事後測定を可能にする方法がいま開発された。この方法において、複雑な混合物、例えば天然産物又はその抽出物及び混合物(栄養補助食品製品、機能性食品製品、薬草医薬品、他の天然化合物及び生体液を含む)における複数の成分と生きている生体系との相互作用が、生物統計学及びバイオインフォマティックスのような技術が適用されるところの特定の一組のステップを使用して、非常に効果的に測定されうる。そのような測定によって、疾病の生物学的プロファイルに対する多成分混合物の影響が有利に決定されうる。その上、そのような測定は、多成分混合物内の有効な成分の識別を可能にし、及び疾病の生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度が識別されうる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、生体系のグループ内の疾病の生物学的プロファイルに対する多成分天然産物混合物の影響を決定するための方法であって、
(a)多変量解析を使用して、疾病の症状を有する生体系のグループの生物学的プロファイルを生体系の参照(すなわち健康な)グループの生物学的プロファイルと比較することによって、前記疾病の生物学的プロファイルを決定するステップと、
(b)多変量解析を使用して、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記多成分混合物の一連のサンプルの影響を決定するステップであって、この一連のサンプルにおいて、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの濃度が異なるところのステップと、
(c)多変量解析を使用して、ステップ(b)において前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の影響を示した前記多成分混合物の前記サンプルの組成を決定するステップと、
(d)多変量解析を使用して、ステップ(c)において決定された前記組成内で、有効な天然成分又は天然成分のグループ、及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するステップと
を含む方法に関する。
【0007】
本発明の好ましい実施態様では、多成分混合物は、効能及び安全性(治癒又は治療)の両方を考慮して生体系の疾病状態の展開を治癒する又は防ぐために最適な活性に向けて最適化される。
【0008】
従って、本発明はまた、ステップ(d)に引き続き、多成分天然産物混合物のセットがステップ(d)で得られた情報に基づき調製されるところのステップ(e)が行われ、前記混合物は前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を示すことが期待され、それによってステップ(e)に引き続き、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記影響が、多変量解析を使用して、ステップ(e)で調製された前記一組の多成分混合物について決定されるところのステップ(f)が行われるところの本発明に従う方法に関する。
【0009】
従って、本発明はまた、疾病の生物学的プロファイルに対する多成分天然産物混合物の影響を決定するための方法であって、
(a)多変量解析を使用して、疾病の症状を有する生体系のグループの生物学的プロファイルを生体系の参照(すなわち健康な)グループの生物学的プロファイルと比較することによって、前記疾病の生物学的プロファイルを決定するステップと、
(b)多変量解析を使用して、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記多成分混合物の一連のサンプルの影響を決定するステップであって、この一連のサンプルにおいて、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの濃度が異なるところのステップと、
(c)多変量解析を使用して、ステップ(b)において前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の影響を示した前記多成分混合物の前記サンプルの組成を決定するステップと、
(d)多変量解析を使用して、ステップ(c)において決定された前記組成内で、有効な天然成分又は天然成分のグループ、及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するステップと
(e)ステップ(d)で得られた情報に基づき一組の多成分天然産物混合物を調製するステップであって、前記混合物は前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を示すことが期待されるところのステップと、
(f)ステップ(e)で調製された前記一組の多成分混合物の前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記影響を決定するステップと、
を含む方法に関する。
【0010】
本発明の他の好ましい実施態様では、ステップ(g)において、ステップ(e)で調製された1以上の多成分混合物が選択され、該混合物はステップ(f)において前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の且つ改善された影響を示す。すなわち、ステップ(g)において選択された1以上の多成分混合物は、ステップ(e)で調製された前記他の多成分混合物と比較されたとき、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する改善された影響を示す。
【0011】
本発明の他の魅力的な実施態様では、ステップ(g)で得られた前記選択された多成分混合物の前記1以上は、1以上の更なる成分を前記混合物に添加することによって調製され、その後前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記調製された混合物の前記影響が、多変量解析を使用して決定される。
【0012】
本発明の他の有利点は、多成分天然産物混合物は定義された品質範囲内で開発されうるという事実である。これは非常に重要である。なぜならば、個々の天然成分又は天然成分のグループの品質が、適正農業基準の実施にも拘わらず、栽培の間、例えば種々の天候条件によって局地的に異なりうるからである。1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループが所望の品質でなかった場合、多成分混合物は、疾病の生物学的プロファイルに対する所望の影響を有するように、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループに関して調節されうる。これは例えば、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの必要とされる濃度を得るために、個々の1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの量を調節することによって確立されることができ、多成分混合物が疾病の生物学的プロファイルに対する所望の影響を有するだろうことを保証する。
【0013】
従って、本発明の好ましい実施態様では、前記混合物の少なくとも一つの天然成分又は天然成分のグループの濃度は、前記混合物の少なくとも一つの天然成分又は天然成分のグループが前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を有することを保証するように調節される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従い、天然産物に基づく医薬品の開発及び品質制御が非常に魅力的に確立されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の文脈では、多成分天然産物混合物は、天然成分又は天然成分のグループの混合物として定義され、該成分は化学合成によって生成されるのではなくて、天然過程によって生成される。多成分薬草混合物は例えば2以上の薬草を含み、そのような薬草は例えば多くの種々の成分の数からなってよい。
【0016】
生体系は、ヒト及び全ての種類の動物を含む。動物が用いられるとき、生体系のグループは動物の一つの特定のタイプから適切に選択される。
【0017】
本発明に従う方法は、ユニークなアプローチによって複数のターゲット介在を適切に実行するために、そのような介在の効果の測定及び製品の開発の測定を可能にし、有効な成分の生物学的プロファイルを明らかにする。それ故に、本発明は、TCM及び西洋医薬で使用される2つの相補的アプローチとの間の重要な橋渡し機能を提供する。なぜならば、それは、単一の薬物のような単純な摂動の効果の他に、また例えば薬草医薬品製品及び機能性食品製品のような多成分混合物を使用する複雑な摂動を明らかにしうる。このユニークなアプローチは、多次元薬物学(MDP)と呼ばれ、そして生物学システムがメタボリックデータ及び他のプロファイルデータ、例えばジェネティック及び/又はプロテオミックデータを測定し且つ統合することによって研究されるところのシステム生物学アプローチを使用する。
【0018】
本発明に従う、生物学的効果及び特に相乗的多成分効果の決定が、介入計画における薬草医薬品製品の例によって示される。そのような効果の決定は、哺乳類系における生物学的及び協働作用的効果に制限されず、生命の同じポートフォリオに由来する複雑な混合物を用いて、全てのありうる形の生体系に対処しうる。
【0019】
本発明は特定の型の疾病に制限されないが、生物学的プロファイルが決定されることができ且つ予防的用途において等しく適用されることができる任意の疾病を包含する。
【0020】
本発明の相当な有利点は、試験された多成分混合物の効能及び安全性の両方にそれが科学的な根拠を提供するという事実にある。
【0021】
本発明の方法は、複雑な多成分混合物の特徴(TCM製品の場合、哺乳動物系におけるこれら製品の効果)が、患者に対する生物学的効果及びTCMの効果を明らかにすることを可能にする。
【0022】
本発明に従う方法のさらに非常に重要な観点は、それが添加剤を含む全ての生物学的効果及び協働作用的効果の測定を可能にするということである。
【0023】
健康及び疾病研究において、例えば対照グループ(参照グループ)及び患者グループ(生物学的プロファイルを有する疾病の症状を有するグループ)からの血漿サンプルの体液プロファイルは、出来るだけ多くの成分を測定するために使用されることができ、且つ基礎となる生物学的機構におけるより良い洞察を得るために、新規なバイオマーカー/代理マーカーを検出するために、毒物学又は薬理学的応答を予測するために、又は新規な介在経路を開発するために、2つのグループ間の単一成分における又は成分のパターンにおける違いについて評価される。本明細書の文脈では、バイオマーカーは、正常な生物学的プロセス、病原性プロセス又は治療的介在に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定され且つ評価される特徴として定義される。バイオマーカーは、遺伝子、転写物、タンパク質、代謝物、(微量)元素又はそれら成分の任意の組み合わせでありうる。
【0024】
直接的に又は非線形若しくは線形多次元圧縮後の動的モデリングのためにパターンを使用することの本発明の概念は、成分パターンに基づく系記述を使用して動的プロセスを研究することのユニークな途を開く。そのような研究では、例えば薬物介在経路を介した摂動は、多次元的方法で監視され且つ評価されることができ、及び時系列分析、時間的整経及び非線形ダイナミック技術のような方法が適用されうる。本発明の方法で生成されたデータの評価ではまた、医学的診断及び臨床化学を記述する患者の臨床的調査資料からの情報、又は挙動(behavior)、知識、心理学的、社会的などのレベル上の疾病研究データのような他のデータ及び他のソースからの情報の追加が重要でありうる。これらデータは、患者を分類するために又はサブクラス若しくは他の関連した観察を発見するために、本発明に従う方法によって生成されたデータセットに含まれるか又はリンクされうる。特に、新規な薬草医薬品の設計において、動物モデルが生物活性、例えば代謝症候群(肥満、2型糖尿病、高血圧症及び他のCV関連疾病)の研究におけるインスリン抵抗性の尺度を与えるためにしばしば好まれる。新規な混合物が研究されるとき、薬草混合物の組成及びそのモデルにおける生物学的応答プロファイルとそのようなデータの直接相関が、本発明の好ましい実施態様である。混合物がヒト又は獣医用途の場合の動物において安全であると既に証明されているとき、ヒトのバイオマーカープロファイルは評価のために直接的に使用されうる。
【0025】
本発明の適用は、臨床評価、診断適用及び市販後調査を含む生物医薬品又は薬剤発見の全過程を促進するために、メタボロミクス、プロテオミクス及び/又は生体液の他の成分プロファイルを使用する際に、種々様々の新規なアプローチを生成する。該生成されたプロファイルは、なかんずく毒物学評価(予測的毒物学)、バイオマーカー/代理マーカー又はバイオマーカー/代理マーカーパターン発見、タンパク質ターゲット検証、動物モデルの比較及びこれらをヒト研究に関連付けること、典型的には代謝物質及び/又はタンパク質レベルでのフェノタイピング、応答(responder)/非応答(non-responder)評価、動物モデル、例えば形質転換のモデルの検証のための基礎となる生物学的プロセスにおけるより良い洞察を得るためにまず第1に使用されることができ、代謝物レベルデータをシステム生物学における他のレベル、例えば遺伝子、mRNA、RNAi及びタンパク質データに関連づけるための能力を提供する。
【0026】
本発明に従う方法は成分のパターンを生成し、そして該使用された多変量解析は、所定の状況又は研究のために、関連した成分のパターンを生成する。現代の生物学、及び関連する栄養補助の、製薬の及びバイオテクノロジーの産業では、科学研究並びに工業的発見及び開発工程を推進するために、これは、重大な新しいパラダイムである。基礎的な理解は、生物学一般及び特に疾病過程が本来的に多因子であり、及びそれ故にそのような過程の理解は多数の成分に基づく記述又は理解を要求することである。ほとんどの場合、開発過程は例えば、効能のための又は患者グループから対照グループを区別するための単一のバイオマーカーで評価された単一のターゲットに基づく。しかしながら、本発明は、多因子パターン並びに多因子入力変数への多因子応答によって多因子の疾病を記述するための能力における突破口、例えば組み合わせ治療(化学療法)又は薬草医薬品、機能性食品及び栄養補助応答の評価における突破口の生成を可能にする方法を提供する。
【0027】
本発明に従い、好ましくは少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が、疾病のプロファイルを決定するためにステップ(a)において使用される。より好ましくは、2以上のスペクトル技術が使用されるが、特別な検出技術例えば、分離技術((ナノ)−HPLC、エレクトロマイグレーションに基づく方法)と組み合わせたレーザー誘導蛍光及び電気化学検出が同様に含まれる。最も好ましくは、ステップ(a)において疾病のプロファイルを決定するために、少なくとも核磁気共鳴技術及び/又はマススペクトロメトリー技術が使用される。
【0028】
ステップ(a)において決定されるべき生物学的プロファイルは好ましくは、メタボリック、ジェネティック及び/又はプロテオミックプロファイルの1以上を含む。これらプロファイルの任意の組み合わせが使用されうる。好ましくは、そのような組み合わせは1以上のメタボリックプロファイルを含む。より好ましくは、生物学的プロファイルが、メタボリック、ジェネティック及びプロテオミックプロファイルを含む。
【0029】
ステップ(a)において、好ましくは、生物学的プロファイルが、体液の少なくとも一つの型又は組織の少なくとも一つの型について決定される。より好ましくはステップ(a)において、生物学的プロファイルが、体液の少なくとも二つの異なる型について決定される。
【0030】
ステップ(a)において生物学的プロファイルが、1以上の下記バイオマーカー;遺伝子、転写物、タンパク質、代謝物及び(微量)元素を使用して決定される。
【0031】
ステップ(b)において、好ましくは、疾病の生物学的プロファイルに対する多成分混合物の一連のサンプルの影響を決定するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される。より好ましくは、2以上のスペクトル技術が使用され、最も好ましくは少なくとも核磁気共鳴技術及び/又はマススペクトロメトリー技術が使用される。タンパク質プロファイリングの場合、他の技術、例えばゲルに基づく電気泳動技術が同様に含まれる。
【0032】
ステップ(c)において、好ましくは、サンプルの組成を決定するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される。より好ましくは、2以上のスペクトル技術が使用され、最も好ましくは少なくとも核磁気共鳴技術及び/又はマススペクトロメトリー技術が使用される。ステップ(c)において、組成が(c)において決定されるところのサンプルの数が、好ましくは少なくとも2、より好ましくは5〜100の範囲である。
【0033】
ステップ(d)において、好ましくは、有効な成分又は成分のグループ及び疾病の生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される。より好ましくは、2以上のスペクトル技術が使用される。最も好ましくは、ステップ(d)において、少なくとも核磁気共鳴技術及びマススペクトロメトリー技術が使用される。
【0034】
ステップ(f)において、好ましくは、有効な成分又は成分のグループ及び疾病の生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される。より好ましくは、2以上のスペクトル技術が使用される。最も好ましくは、ステップ(e)において、少なくとも核磁気共鳴技術及びマススペクトロメトリー技術が使用される。
【0035】
本発明に従い使用されるべき多成分混合物は、疾病の生物学的プロファイルに対する(潜在的な)効果を有する任意の多成分混合物でありうる。そのような多成分混合物は任意の天然産物でありうる。そのような混合物の適切な例は、栄養補助食品製品、機能性食品製品、薬草、藻類、微生物及び菌の医薬品製品又は生体液(の抽出物)を含む。好ましくは、多成分天然産物混合物は薬草の混合物である。
【0036】
ステップ(a)〜(d)及び(f)(e)の各々において、好ましくは、少なくとも1つのスペクトル技術が使用される。適切には、核磁気共鳴技術(NMR)又はマススペクトロメトリー技術(MS)が使用されることができ、それによって後者の技術が小さい分子化合物の制限された数に焦点を合わせる。NMRアプローチは、高濃度で存在する化合物の信頼できる情報のみをそれらが典型的に提供するという点で制限される。一方、グローバル又は収束マススペクトロメトリー技術は高濃度を要求しないが、幅広いスクリーニングレベルで又は生物学的プロファイルの制限された部分のみの情報を提供しうる。本明細書で使用される場合、語「小さい分子」及び「代謝物」は、互換的に使用される。小さい分子及び代謝物は、脂質、ステロイド、アミノ酸、有機酸、胆汁酸、エイコサノイド、ペプチド、炭水化物及び微量元素を含むが、これらに制限されない。
【0037】
それ故に、ステップ(a)〜(d)及び(f)(e)の各々において、好ましくは、少なくとも核磁気共鳴技術及び/又はマススペクトロメトリー技術が使用され、好ましくは、タンパク質プロファイリングの分野(プロテオミクス)におけるマススペクトロメトリーである。
【0038】
小さい分子の状況が例として議論される。NMRのためのサンプル調製は一般に、凍結乾燥及びDO中での再構成を使用し、非常に簡単でありうる。なぜならば、焦点はより高い濃度の成分、すなわち典型的な濃度 >100ナノグラム/mLにあるからである。MSについて、固相抽出及び液/液抽出から、例えばアフィニティに基づく方法又はGC−MS並びにLC−MSの両方について誘導体化手順を使用するより特定の方法に渡る様々なサンプル調製アプローチが使用されうる。
【0039】
ステップ(a)〜(d)及び(f)(e)の各々において、MS、NMR、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、キャピラリー電気泳動(CE)、及び低又は高解像度モードにおけるハイフネーテッドマススペクトロメトリーの任意の既知の方式、例えばLC−MS、GC−MS、CE−MS、LC−UV、MS−MS、MSなどを含む(しかしこれらに制限されない)1以上のプラットフォームから得られたスペクトルのデータが使用される。典型的なプロファイルデータはまた、より多くの成分特異的検出器、例えばレーザー誘導蛍光及び電気化学的検出を使用することによって得られうる。
【0040】
本明細書で使用されるとき、語「スペクトルのデータ」は、任意のスペクトルの又はクロマトグラフの技術からのデータを含む。スペクトルの技術は、共鳴スペクトロスコピー、マススペクトロスコピー、及び光学スペクトロスコピーを含むが、これらに制限されない。クロマトグラフの技術は、液相クロマトグラフィー、気相クロマトグラフィー及び電気泳動を含むが、これらに制限されない。
【0041】
標準のスペクトロスコピーの方法でのように、スペクトルのプロファイルが得られるなら、主要な必要なステップは、強度次元並びにスペクトルの又はクロマトグラフの次元の両方においてスペクトルにおける小さなシフトを調節することである。シフトは、装置因子、環境条件に又は成分の変化する濃度(尿分析においてしばしば起きる)によりうる。例として、NMR化学シフトにおける変化がしばしば生じ且つ説明される必要があるが、単一のプロファイル(定量次元)の強度(すなわちピーク面積)における再現性及び標準化は典型的に非常に満足できるものである。これは、ピーク強度(イオン存在率)次元がプロファイルに存在する各成分についてカリブラント(calibrant)の不足の故に注意深く調節される又は標準化される必要があるところのMSと対照的である。ハイフネーテッド技術では、分離方法(GC、LC又はエレクトロマイグレーションによる技術、例えばキャピラリー電気泳動(CE))の再現性は、同様に注意深く評価される必要がある。この点で、近赤外線スペクトルのプロファイルは印象的であり、いずれかの次元における修正はほとんど要求されない。
【0042】
データプロファイルの修正がパターン認識解析に付されたとき、一般に、スペクトルの(変わりやすい)次元における小さな機器シフトは別の成分を表すとして間違って解釈されるだろう。この問題に対処する直接的な方法は、解析間の小さなスペクトルのシフトにもかかわらず、所与のピークがそのビンのままであることを保証するために十分な程度にスペクトルが解像度において減少されるところのビンニング(binning)技術を使用することによる。例えば、NMRでは、化学シフト軸はデスクレタイズされ(be descretized)及び粗くビンされてよく、及びMSではスペクトルの正確性が整数原子質量単位価に丸められてよい。しかしながら、NMRについて部分的線形適合又はMSについて他の調製手順のような、より微妙な手続きが好まれる。
【0043】
初期データ前処理後に、スペクトルのプロファイルが、パターン認識(多変量解析)のためにセットされる。
【0044】
体液プロファイルを生成するために種々の技術を使用するための能力は、複数の多変量解析によって最適に使用され、及び同じ系の種々の体液(例えば、血漿及び尿又血漿及びCSF)の測定を可能にして、システム生物学への新規な洞察、例えば血漿及び尿プロファイルを比較したときの血液脳関門の効果を明らかにする。従って、ステップ(a)〜(d)の各々において、好ましくは、複数の多変量解析が使用される。
【0045】
本発明は、階層的手順でデータを処理するために多変量解析の複数のステップ(ステップ(a)〜(d)及び(f))を利用するスペクトルのデータ処理の方法を提供する。ステップ(a)〜(d)及び(f)の各々において、第1の多変量解析は、複数のデータセットについて使用されることができて、それらの間の差及び/又は類似性の1以上のセットを識別し、その後、第2の多変量解析は、差(又は類似性)のこれらセットの少なくとも1つと複数のデータセットの1以上との間の相関(及び/又は反相関、即ち負の相関)を決定するために使用されうる。ステップ(a)において、疾病の生物学的プロファイルの決定がまた、該相関に基づきうる。
【0046】
本明細書で使用される場合、語「データセット」は、1以上のスペクトルの測定に関連付けられたスペクトルのデータをいう。例えば、スペクトル技術がNMRである場合、データセットは1以上のNMRスペクトルを含みうる。スペクトル技術がUVペクトロスコピーである場合、データセットは1以上のUV放射又は吸収スペクトルを含みうる。同様に、スペクトル技術がMSである場合、データセットは1以上のマススペクトルを含みうる。スペクトル技術がクロマトグラフィー−MS技術(例えば、LC−MS、GC−MSなど)である場合、データセットは1以上のマスクロマトグラムを含みうる。代替的に、クロマトグラム又は再構築されたTICクロマトグラムのデータセット。さらに、語「データセット」は、生のスペクトルのデータ及び前処理されたデータ(例えば、ノイズを除去すること、ベースライン、ピーク検出など)の両方を含むことが理解されるべきである。
【0047】
その上、本明細書で使用される場合、語「データセット」は、1以上のスペクトルの測定に関連づけられたスペクトルのデータの全て又はサブセットを実質的にいってよい。例えば、異なるサンプル起源(疾病の症状を有するグループのサンプル(実験グループサンプル)対参照すなわち健康グループのサンプル(対照グループサンプル))のスペクトルの測定に関連づけられたデータは、異なるデータセットにグループ化されうる。結果として、第1のデータセットは実験グループサンプル測定をいってよく、及び第2のデータセットは対照グループサンプル測定をいってよい。さらに、データセットは、関連すると考慮された何らかの他の分類に基づきグループ化されたデータをいってよい。
【0048】
本発明はまた、相関の2以上の階層レベルでデータを処理するために多変量解析を利用するスペクトルのデータ処理の方法を提供する。ステップ(a)〜(d)及び(f)の各々において、第1レベルの相関でデータセット間の相関(及び/又は反相関)を識別するために複数のデータセットについて多変量解析が使用されることができ、その後、多変量解析は、第2レベルの相関でデータセット間の相関(及び/又は反相関)を識別するために使用されることができる。ステップ(a)において、生物学系の生物学的プロファイルの決定がまた、相関の1以上のレベルで識別された相関に基づきうる。
【0049】
本発明に従い、ステップ(a)〜(d)及び(f)の各々におけるスペクトルのデータ処理は、階層手順においてデータセットを処理するために多変量解析の複数のステップを利用して実行されることができ、それによって、多変量解析ステップの1以上がさらに、相関の2以上の階層レベルでデータを処理することを含む。例えば、ステップ(a)〜(d)の各々において、第1の多変量解析は、複数のデータセットについて使用されることができて、それらの間の差及び/又は類似性の1以上のセットを識別する;第2の多変量解析は、差(又は類似性)の第1セットと1以上のデータセットとの間の第1レベルの相関(及び/又は反相関)を決定するために使用されうる;そして第2の多変量解析は、差(又は類似性)の第1セットと1以上のデータセットとの間の第2レベルの相関(及び/又は反相関)を決定するために使用されうる。ステップ(a)では、疾病の生物学的プロファイルの決定は、相関の1以上のレベルで識別された相関に基づきうる。
【0050】
多変量解析の適切な方式は例えば、主成分分析(「PCA」)、判別分析(「DA」)、PCA-DA、因子分析、標準相関(「CC」)、部分的最小二乗法(「PLS」)、予測的線形判別分析(「PLDA」)及びニューラルネットワーク、マルチレベル/マルチウェイ/マルチブロック分析、反復ターゲット分析、一般的なプロクラステス(procrustes)分析、サポートベクターマシン(「SVM」)、パラファック(parafac)及びパターン認識技術を含む。
【0051】
上記された多変量解析技術の使用は、当業者に周知である。より詳細な記述について、例えば係属中の米国仮特許出願第60/312,145号(生物学的システムをプロファイリングするための方法及びシステム)が参照され、その全内容が参照することによって本明細書に取り込まれる。
【0052】
データから最大値を抽出するために、上に概説されたような多変量解析ツールが、追加の統計的及びインフォーマティックス計画と協力して使用されうる。一旦、例えば代謝物存在率における統計的に有意な差が、サンプルのグループ間で決定され且つ定量されると、目的は、結果の基礎となる生物学的理由及び文脈を理解することになる。第1のステップは、データスペクトルにおいて観察され且つサンプル間で有意な差であると多変量解析によって明らかにされた代謝成分を識別することである。そのような識別は典型的に、既知の代謝成分スペクトル及び構造の様々なデータベースを尋ねることを含む。次のステップは、公的及び民間データベースの探索を通じて分子の相互作用に関する既存の知識を掘り起こすことである。これは、メタボロミック(metabolomic)プロファイル結果において観察された関連及び挙動を説明するにおける幾分の前進を与える。しかしながら、メタボリック、ゲノミック、プロテオミック及び相互作用データベースのほとんどが定常状態における生化学的イベントを表すので、累進的に複雑になる分析的及び数学的ツールが、支離滅裂な生物学的手がかりを、例えば病理学的過程を説明するためによりよく適している動的モデルへと統合するために必要である。
【0053】
確かに、線形及び非線形多変量解析の両方は、既存のデータベース又は文献の掘り起こしを通じて説明されないだろう生体分子成分間の統計的に有意な関連を明らかにしうる。
【0054】
本発明の方法の好ましい実施態様は下記ステップを含む:
1.関連するサンプル、例えば体液(血漿、尿、CSF、だ液、関節液など)が選択される。
2.生物学プロファイリングの幅が選択される;転写物、タンパク質、代謝物など。
3.サンプルは、生物学的プロファイルを決定するために使用されるべきスペクトル技術(例えば、GCMS、LCMS、CEMS、MS/MS組み合わせ、様々なNMR方法論、ゲルに基づく電気泳動技術など)に基づき調製される。
4.プロファイルは、脂質、ステロイド、胆汁酸、エイコサノイド、(ニューロ)ペプチド、ビタミン、有機酸、神経伝達物質、アミノ酸、炭水化物、イオン性有機物、ヌクレオシド、無機物、生体異物などをカバーし、好ましくはペプチドを含むメタボロミクスの場合、スペクトル技術、ゲルに基づく技術、NMRプロファイル及び好ましくはMSアプローチを使用して決定される。また、単一の実験において主要な高濃度成分を記述するための包括的なMSプロファイルが含まれることができ、それはしばしばNMRプロファイルに加えてシステムのバランス/ホメオスタシスの良い指標である。
5.得られたデータは、好ましくは、PCA−DA、線形及び非線形技術に基づくマルチブロック/マルチウェイ多変量解析並びに部分線形フィットアルゴリズムと組み合わせて、オランダ特許出願第1016034号明細書に記載された技術を使用して前処理される。
6.4の結果は、他の関連したデータソース、例えば病歴、臨床化学記録、医療記述、及び行動的、社会的、心理学的データなどと組み合わされる。
7.動的疾病の(非線形系又は線形)ダイナミクスは、プロファイリング成分の一つ又はプロファイリング成分の任意の組み合わせを使用することによって、好ましくは非線形圧縮及び動的モデリング技術の組み合わせを使用することによって研究される。
【0055】
本発明の概念は、下記の局面に適切に基づく。NMR及びハイフネーテッドマススペクトル技術(GC−、LC−、−CE−MS/MS、ICPMS)の組み合わせによる複雑な混合物、例えば体液のプロファイリング、マルチブロック/マルチウェイ多変量解析に先立つデータ前処理/スケーリングとの組み合わせの評価、生成された機器データセットと他の関連するデータセットとの組み合わせ、一つの系からの複数のサンプルから発生し、しかし異なる体液プロファイルを介したデータセットのリンク化、及び非線形ダイナミクスの全ての方式を研究するための能力。
【0056】
生物活性成分又は活性成分のグループが検出されそして所望の効果のための成分制限が明らかになる場合、該知識が混合物又は新規な薬草医薬品を設計するために使用されうる。
【0057】
従って、本発明はまた、天然産物に基づく医薬品を調製するための方法であって、ステップ(d)において識別された有効な複数の天然成分又は天然成分の複数のグループが疾病の微生物学的プロファイルに対する所望の影響を有するために必要とされる個々の濃度で組み合わされるところの方法に関する。
【0058】
本発明はまた、天然産物に基づく医薬品を調製するために、ステップ(e)において調製された多成分混合物を使用する方法に関する。本発明はまた、天然産物に基づく医薬品を調製するために、ステップ(e)において調製された一組の混合物からステップ(g)において選択された多成分混合物を使用する方法に関する。
【0059】
本発明はまた、食品用途において、ステップ(e)において調製された多成分混合物を使用する方法に関する。本発明はまた、食品用途において、ステップ(g)において選択された多成分混合物を使用する方法に関する。適切な食品用途は、栄養補助食品及び機能性食品を含む。本発明はまた、食品製品の安全性を決定するために適切に使用されうる。
【0060】
本発明はさらに、ステップ(e)において調製された多成分混合物を含む医薬品に関する。
【0061】
薬草製品のような混合物における生物活性パターンの検出はまた、集中された品質管理、又は効率的且つ十分に制御された製品を可能にする植物の最適化された生産を可能にする。これは、天然産物の品質制御の現在の状態における重大なステップ且つ主なボトルネックである。スペクトル技術は、混合物の成分の制御のために示唆されたけれども(例えば、国際公開公報W00047922号(Dunn等))、成分の濃度変化又は製品における多成分間の成分比における変化を生物学的活性とリンクできないことは、濃度−効果制御の強制的な必要性を禁止する。それ故に、多成分製品のプロファイリングと生物学的応答のプロファイリングとの両方が実行されることができ、そのように得られた両プロファイルが関連されうる故に、本発明は大進歩である。それ故に、本発明はまた、多成分混合物を設計し且つ多成分混合物の組成を制御するための方法であって、該混合物の少なくとも1つの天然成分又は天然成分の少なくとも1つのグループの濃度は、該混合物の天然成分又は天然成分のグループの少なくとも1つの濃度が疾病の生物学的プロファイルに対する所望の影響を有することを保証するように調節されるところの方法に関する。該多成分混合物は、例えば植物に含まれることができ、その品質が、高い品質製品を生産するために制御され且つ調節されている。
【0062】
薬草製品のような混合物における生物活性パターンの検出はまた、集中された品質管理又は効率的且つ十分に制御された製品を可能にする植物の最適化された生産を可能にする。
【0063】
生物活性成分の全部又は一部が検出され且つ最適な影響のための組成制限が明らかである場合、該知識が合成的に得られた成分の混合物を設計するために使用されうる。後者の場合、医薬製剤が生成されうる。
【0064】
本発明はまた、天然産物に基づく医薬品における使用のために、天然産物の繁殖プログラム、適正農業基準/適正製造基準(GAP/GMP)プロトコル及びポストハーベスト処理を設定するために、本発明の方法を使用する方法に関する。
【実施例】
【0065】
本発明に従う方法が図1に図式的に記載される。システム生物学アプローチによって生成されたようなフィンガープリントに基づく本発明に従う薬草医薬品のための典型的な実験は、下記のステップに基づく。
1.好ましくは組成において有意な変化を有する、混合物又は一組の種々の薬草混合物の多数のバッチは、図1の左側にバッチ1〜nで示されるように、プロファイリング技術、例えばNMR又はマススペクトルによって測定される(フィンガープリントされる)。
2.動物モデルへの又は人体試験での投与後のそれらバッチの効果のプロファイルが、治療されていない(疾病動物及び野生型の両方、又は健康な対象/患者を含む)又は他の方法で治療されるために選択される参照グループと同様に測定される。
3.参照グループは疾病のバイオマーカープロファイルを提供し、及び他の実験は疾病パターンに対する混合物の影響を提供し且つまた他の効果を明らかにする。さらに、人体試験における臨床終了点、又は細胞モデル及び/又は動物モデルにおいて測定された典型的な生物学的結果は、多成分混合物の評価のために使用されうる。これは、特定の疾病グループに対する効果の証明を与える。対照グループが利用可能でない場合、比較分析が臨床終了点又は仮説への最適の生物学的効果を明らかにするために使用されうる。
4.混合物成分のパターン及び全ての他の情報、例えば臨床の終了点又は他のモデル(細胞に基づく又は動物モデル)における何らかの生物学的効果をまた含む効果プロファイルの(非)線形多変量相関は、生物学的効果への責任がある成分のパターンの検出を可能にする。
5.薬草医薬品を設計する際に、該製品の組成は変化されることができ、動物モデルにおける生物学的応答又は疾病バイオマーカーフィンガープリントに基づく評価が、効能及び安全性を最適化するために使用されうる。図2では、動物実験の読み出した情報の例が与えられ、インスリン抵抗性に対する薬草混合物の効果及び肝臓安全性を測定する。モデルにおける肝臓酵素(ALAT)を介して測定される場合に、異なる組成は、異なる効能(インスリン抵抗性)を与え、且つ異なる安全性プロファイルを示す。さらに、図3に示されるように、各混合物のバイオマーカーフィンガープリントが評価されることができ、その中では該混合物のうちの1つの多変量解析が、時間の関数として対照(疾病)グループと比較して与えられる。明らかに該効果は治療の4週間に現れ、及び該データの更なる解析は成分特異的な生物学的経路又は系通信特異的情報を与える。図2及び3に関連付けられた実験の結果間の相関性は、成分又は成分のグループが生物学的効果に責任を有する情報を提供する。最適化は、該混合物の成分の識別有り又は無しで実行されうる。
6.最適な多成分混合物を設計した後、該混合物のフィンガープリントは、4で得られた情報に基づき制御されうる。多成分混合物、例えば薬草医薬品のプロファイリングは、分離方法を用いて実行されうるが、より好ましくはスペクトル技術、たとえば直接注入を用いるNMR又はマススペクトロメトリー技術あるいはGC/MS及びLC/MS方法論である。薬草医薬品製品の複雑さの故にしばしば好まれる高解像度力及びユニーク識別力があるならば、直接フィンガープリンティング計画に基づくフーリエ変換マススペクトロメトリーが特に魅力的である。
7.植物を成長及び生産する場合、記述された発明は、そのような植物の生産/栽培の条件の最適な選択、及び生産の品質管理のために使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】生物活性プロファイリング発見の模式図である。
【図2】インスリン抵抗性に対する種々の薬草混合物の効果のグラフである。
【図3】血漿におけるLCMSプロファイルの多変量解析の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体系のグループ内の疾病の生物学的プロファイルに対する多成分天然産物混合物の影響を決定するための方法であって、
(a)多変量解析を使用して、疾病の症状を有する生体系のグループの生物学的プロファイルを生体系の参照(すなわち健康な)グループの生物学的プロファイルと比較することによって、前記疾病の生物学的プロファイルを決定するステップと、
(b)多変量解析を使用して、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記多成分混合物の一連のサンプルの影響を決定するステップであって、この一連のサンプルにおいて、1以上の天然成分又は天然成分の1以上のグループの濃度が異なるところのステップと、
(c)多変量解析を使用して、ステップ(b)において前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の影響を示した前記多成分混合物の前記サンプルの組成を決定するステップと、
(d)多変量解析を使用して、ステップ(c)において決定された前記組成内で、有効な天然成分又は天然成分のグループ、及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(d)に引き続き、一組の多成分天然産物混合物がステップ(d)で得られた情報に基づき調製されるところのステップ(e)が行われ、前記混合物は前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を示すことが期待され、それによってステップ(e)に引き続き、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記影響が、多変量解析を使用して、ステップ(e)で調製された前記一組の多成分混合物について決定されるところのステップ(f)が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(e)で調製された前記一組の多成分混合物から、1以上の多成分混合物がステップ(g)において選択され、該選択された多成分混合物は、前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する所望の及び改善された影響を示すところの請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(a)において、前記疾病の前記プロファイルを決定するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(b)において、前記疾病サンプルの前記生物学的プロファイルに対する前記多成分混合物の前記一連のサンプルの前記影響を決定するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)において、前記サンプルの前記組成を決定するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)において、前記有効な成分及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(f)において、前記有効な成分及び前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する影響を有するために必要とされるそれらの個々の濃度を識別するために、少なくとも1つのスペクトル技術、少なくとも1つのエレクトロマイグレーションに基づく技術、又は少なくとも1つのクロマトグラフ技術が使用される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2以上のスペクトル技術が使用される、請求項2〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも核磁気共鳴技術及びマススペクトロメトリー技術が使用される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的プロファイルが、メタボリック、ジェネティック及び/又はプロテオミックプロファイルの1以上を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的プロファイルが、メタボリック、ジェネティック及びプロテオミックプロファイルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多成分混合物が栄養補助食品製品、機能性食品製品、薬草医薬品又は生体液(の抽出物)を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)において前記生物学的プロファイルが、体液の少なくとも一つの型について決定される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)において前記生物学的プロファイルが、組織の少なくとも一つの型について決定される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
(a)において前記生物学的プロファイルが、体液の少なくとも二つの異なる型について決定される、請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
(a)において前記生物学的プロファイルが、1以上の下記バイオマーカー;遺伝子、転写物、タンパク質、代謝物及び(微量)元素を使用して決定される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
組成が(c)において決定されるところのサンプルの数が少なくとも2である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
組成が(c)において決定されるところのサンプルの数が5〜100の範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多成分天然産物混合物が薬草混合物である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
天然産物に基づく医薬品を調製するための方法であって、請求項1〜20のいずれか一項に記載のステップ(d)において識別された前記有効な複数の天然成分又は天然成分の複数のグループが、前記疾病の前記微生物学的プロファイルに対する所望の影響を有するために必要とされる前記個々の濃度で組み合わされるところの方法。
【請求項22】
天然産物に基づく医薬品を調製するために、請求項2〜20のいずれか一項に記載のステップ(e)において調製された又は請求項3〜20のいずれか一項に記載されたステップ(g)において選択された多変量混合物を使用する方法。
【請求項23】
食品用途において、請求項2〜20のいずれか一項に記載のステップ(e)において調製された又は請求項3〜20のいずれか一項に記載されたステップ(g)において選択された多変量混合物を使用する方法。
【請求項24】
請求項2〜20のいずれか一項に記載のステップ(e)において調製された又は請求項3〜20のいずれか一項に記載されたステップ(g)において選択された多成分混合物を含む医薬品。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法において、前記混合物の少なくとも一つの天然成分又は天然成分のグループの濃度は、前記混合物の少なくとも一つの天然成分又は天然成分のグループが前記疾病の前記生物学的プロファイルに対する前記所望の影響を有することを保証するように調節されるところの方法。
【請求項26】
天然産物に基づく医薬品における使用のために、天然産物の繁殖プログラム、適正農業基準/適正製造基準(GAP/GMP)プロトコル及びポストハーベスト処理を設定するために、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−510132(P2007−510132A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525291(P2006−525291)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000616
【国際公開番号】WO2005/024420
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】