説明

生体試料を作用因子でパルスし、そのようにパルスした試料を安定化させる装置、キット及び方法

本発明は生体試料をパルス剤でパルスし、その後そのようにパルスした生体試料を安定化させる装置又はキットであって、対照反応が与えられる装置又はキットに関する。本発明は医療診断分野で、特に免疫に関して適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断アッセイに使用するための装置、方法及びキットに関し、免疫分野で適用される。
【背景技術】
【0002】
導入
核酸レベル、例えばmRNAのレベルのモニタリングは生体系に対する作用因子の効果を直接確かめる上で重要である。例えば、作用因子を規定の長さの時間生体系に導入する場合、作用因子に対する生体系の反応はmRNAのレベルを測定することにより確定することができる。これは免疫をモニタリングする上で有用であり得る(例えば作用因子が抗原であり、モニタリングされるmRNAがサイトカイン、例えばインターロイキンのmRNAである)。
【0003】
個体から血液を採取し、後で作用因子を添加することによる作用因子の影響を試験することにより、血液の回収(out of circulation)と作用因子による刺激との間に変動性の遅延時間が導入される。遅延の間、血液は例えば保持温度に応じて緩徐又は迅速な化学修飾を受け得る。さらには遅延時間が変動することは、連続して採取された試料間での比較研究には根拠がないことを意味している。
【0004】
核酸を試験する場合、特に低レベルのRNA又は不安定なRNAの検出が要求される場合の主な課題はin vitroでのRNAの不安定性に起因する。RNAのほんの一部の分解であってもRNAレベルの解釈が変わる可能性がある。転写産物によっては低コピーで細胞に存在していることが知られているものもあり、転写産物によってはその3’末端に「高AU(AU-rich)」配列を有し、内因性RNアーゼによるRNAの急速な分解を促進するものもある。研究によって、RNAが試料回収後数時間以内で迅速に著しく分解することが分かっている。さらに、試料が回収されると遺伝子誘導プロセスにより、或る特定種のRNAが増大する。RNA分解及びin vitro遺伝子誘導の両方により、in vivoでの遺伝子転写産物の数の過小評価又は過大評価が生じ得る。
【0005】
したがって採取された血液に対する作用因子の効果を測定する場合、当該技術分野の課題は血液を採取した直後から起こり、抗原の導入後に再開するmRNA分解プロセスを管理することである。「前」分解が「後」分解に影響を与える可能性があるため、誤差は2つのプロセスと結び付き、このため誤差が起こる可能性が大きくなり、誤差を詳しく説明するのがより困難になる。
【0006】
当該技術分野での別の課題は生体試料を作用因子に曝露した後で、その核酸の分析を行う上で幾つかの機器が必要であることである。通常定量的な測定を行うには、少なくとも試薬ボトル、正確なピペッター、冷蔵手段が必要となる。好適な研究施設もなく、例えば個人の家、又は基本的な設備しかない診療所(surgery)で試料を採取する場合、家又は診療所は正確な基質添加を行うには適さない又は都合が悪く、さらには冷蔵施設を利用することができない場合がある。
【0007】
試料を作用因子に曝露すれば、試料中の核酸、例えばmRNAを単離及び測定する方法が数多く存在する。幾つかの方法では、転写産物のプールから低レベルの転写産物を確定することさえも可能である。しかしながらこれらの方法の中には、サンプリングの時点で生体試料に存在する転写産物(複数可)のレベル(複数可)を確定することができるものはない。冷蔵条件下であっても、生体試料の保存によりmRNAレベルが不正確になる。実際には(Indeed, in practice)、サンプリング場所とRNA分析の場所は別に設けているため、新鮮な試料の分析を実行することはできない。
【0008】
近年、PreAnalytiX(Becton DickinsonとQiagenとの共同事業)がPAXgene(商標)Blood RNA Systemを作製した。PAXgene(商標)Blood RNA System(Qiagen法とも称される)は全血検体の回収及び安定化、並びに細胞RNAの単離のための統合された標準化システムである。PreAnalytiXによれば、PAXgene(商標)Blood RNA Systemでは、血液をPAXgene(商標)Blood RNA Tubeに直接回収し、その後PAXgene(商標)Blood RNA Kitを用いてRNAを単離する。このシステムを用いて、無傷の細胞RNAを全血から取り出すことができる。
【0009】
PAXgene(商標)Blood RNA Tubeは全血の回収及び細胞RNAプロファイルの安定化のためのプラスチック製の真空管である。これらの管は細胞RNAを安定化させ、遺伝子転写のex vivo誘導を排除することができ、in vitroで通常起こる細胞RNA発現プロファイルの劇的変化を抑える添加剤(独自ブレンド(proprietary blend)の試薬)を含有している。それからPAXgene(商標)Blood RNA Kitで与えられたシリカゲル膜技術を用いてRNAを単離する。PreAnalytiXによれば、得られたRNAはin vivoでの発現プロファイルを正確に表し、広範なその後の(downstream)用途における使用に好適である。供給業者によれば、このシステムを用いて、遺伝子転写産物の正確な定量が可能である。このPAXgene(商標)Blood RNA Systemの主な欠点はPAXgene(商標)Blood RNA TubeそれぞれをPAXgene(商標)Blood RNA Kitと組合せる必要があることである(PAXgene(商標)Blood RNA Tubeの取扱説明書マニュアルを参照されたい)。しかしながらこの組合せの必要性(obliged)がシステムのさらなる改善を制限している。
【0010】
最近になって、同様に全血の回収及び細胞RNAプロファイルの安定化のためのプラスチック製の真空管であるTempus(商標)Blood RNA Tube(Applied Biosystems)が開発された。それぞれの管は細胞RNAを安定化させ、遺伝子転写のex vivo導入を排除することができ、in vitroで通常起こる細胞RNA発現プロファイルの劇的変化を抑える添加剤(独自ブレンドの試薬)を含有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の1つは生体試料を作用因子に曝露し、そのようにして曝露した試料中で核酸を安定化させる装置、キット及び方法を提供することである。
【0012】
本発明の目的の1つは生体試料を作用因子に曝露し、そのように曝露した試料中で核酸を安定化させる装置、キット及び方法であって、対照反応も与える装置、キット及び方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は生体試料を得るのと上記試料を作用因子に曝露するのとの間の時間を低減する、一定にする、又はほぼ一定にする装置、キット及び方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は試料を作用因子に曝露し、上記試料中で核酸を安定化させる時間を低減する、一定にする、又はほぼ一定にする装置、キット及び方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は試料及び/又は作用因子の量を測定する必要のない、作用因子を試料に曝露する装置、キット及び方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は作用因子及び対照物質を試料に曝露し、試料及び対照物質を作用因子に曝露して、上記試料中で核酸を安定化させる時間を一定にする又はほぼ一定にする単一装置を提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は安定化剤の量を測定する必要のない、作用因子を試料に曝露する装置、キット及び方法を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は生体試料を作用因子に曝露し、そのように曝露した試料中で核酸を安定化させ、さらなる分析のために生体試料から核酸を抽出する装置、キット及び方法を提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は生体試料を作用因子に曝露し、そのように曝露した試料中で核酸を安定化させる装置であって、対照反応も与え、ロボットによる自動化を容易にする、装置を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は上述の目的の1つ又は複数の組合せに対処する装置、キット及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一実施の形態は、液体生体試料を検査するキットであって、
液体生体試料を受け取り、前記試料を第1の物質に、その後核酸安定化剤に曝露するのに好適な容器であって、前記容器が
a)前記容器内に存在する第1の物質、
b)前記安定化剤が存在するコンテナ、
c)前記容器の内部と、前記コンテナの内部との間の接続、
d)前記接続を一時的に遮断する物理的障壁、
を含む容器と、
液体生体試料を受け取り、前記試料を対照物質に、その後核酸安定化剤に曝露するのに好適な対照容器であって、前記対照容器が
a)前記対照容器内に存在する対照物質、
b)前記安定化剤が存在する対照コンテナ、
c)前記対照容器の内部と、前記対照コンテナの内部との間の接続、
d)前記接続を一時的に遮断する物理的障壁、
を含む容器と、
を含むキットである。
【0022】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が前記容器の内面の一部又は全てに固定される、上記のようなキットである。
【0023】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が固形担体に固定される、上記のようなキットである。
【0024】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が液体である、上記のようなキットである。
【0025】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が固体である、上記のようなキットである。
【0026】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器がシリンジ針による穿刺に好適な領域を1つ又は複数含む、上記のようなキットである。
【0027】
本発明の別の実施の形態は前記領域が再封止可能な隔壁である、上記のようなキットである。
【0028】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器がシリンジを受け、その中にある内容物を前記容器又は前記対照容器の内部に送るのに好適な取り付け部を含む、上記のようなキットである。
【0029】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器がシリンジ針を受けるのに好適な取り付け部を含む、上記のようなキットである。
【0030】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器が容器からの気体/液体の流れを最小限に抑え、液体生体試料を該容器へと流すことが可能な弁を含む、上記のようなキットである。
【0031】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器が排出ガスを押し出すことができる手段を含む、上記のようなキットである。
【0032】
本発明の別の実施の形態は容器及び/又は対照容器が陰圧下にある(comprise is held under)、上記のようなキットである。
【0033】
本発明の別の実施の形態は項目d)の物理的障壁が前記容器又は前記対照容器への物理的な力の印加により開放される、上記のようなキットである。
【0034】
本発明の別の実施の形態は前記力が開放手段を前記物理的障壁に送る、上記のようなキットである。
【0035】
本発明の別の実施の形態は前記力が前記物理的障壁を不可逆的に開放する、上記のようなキットである。
【0036】
本発明の別の実施の形態は前記容器及び/又は前記対照容器が既知の容量の安定化剤をその中に分注するための表示を含む、上記のようなキットである。
【0037】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が免疫系抗原を1つ又は複数含む、上記のようなキットである。
【0038】
本発明の別の実施の形態は前記免疫系抗原がワクチン成分である、上記のようなキットである。
【0039】
本発明の別の実施の形態は前記免疫系抗原が過剰アレルギー反応を誘発する抗原である、上記のようなキットである。
【0040】
本発明の別の実施の形態は前記免疫系抗原が組織適合抗原、細菌性LPS、破傷風(tetanous)トキソイド、癌免疫療法抗原、MAGE−3、ネコアレルゲン、Feld1、臓器提供者からの抗原提示細胞、自己抗原、GAD65から選択される1つ又は複数である、上記のようなキットである。
【0041】
本発明の別の実施の形態は前記安定化剤が細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の阻害因子である、上記のようなキットである。
【0042】
本発明の別の実施の形態は細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の前記阻害因子がPAXgene(商標)又はTempus(商標)Blood RNA Tubeに見られるものである、上記のようなキットである。
【0043】
本発明の別の実施の形態は容器及び対照容器の外部が単一体を形成するように連結する、上記のようなキットである。
【0044】
本発明の別の実施の形態は液体生体試料用のアッセイ装置であって、前記試料を第1の物質及び対照物質に、その後核酸安定化剤に別々に曝露するのを容易にし、該装置が、
前記第1の物質が存在する第1のコンパートメントと、
前記対照物質が存在する第2のコンパートメントと、
前記安定化剤が存在する第3のコンパートメントと、
生体試料管用の支持部と、
を含む、アッセイ装置である。
【0045】
本発明の別の実施の形態はコンパートメントの1つ又は複数が封止され、中空針による穿刺に好適な領域を1つ又は複数含む、上記のようなアッセイ装置である。
【0046】
本発明の別の実施の形態は前記領域が再封止可能な隔壁である、上記のようなアッセイ装置である。
【0047】
本発明の別の実施の形態は移送チューブと取り外し可能に接続するための支持部をさらに含み、該移送チューブがいずれか2つのコンパートメント間、又はコンパートメントと該生体試料管との間での液体の移送に適した、両端に中空針を備えた可撓又は剛体な中空チューブを含む、上記のようなアッセイ装置である。
【0048】
本発明の別の実施の形態は上記のような該移送チューブをさらに含む、上記のようなアッセイ装置である。
【0049】
本発明の別の実施の形態は移送チューブの一方の針が圧力チューブの該中空針と平行配置で接続され、該圧力チューブが片端に前記針を備えた可撓な中空チューブを含み、コンパートメント又は生体試料管に真空又は圧力を印加し、該移送チューブを通して液体を押し出すのに適している、上記のようなアッセイ装置である。
【0050】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が前記容器の内面の一部又は全てに固定される、上記のようなアッセイ装置である。
【0051】
本発明の別の実施の形態はコンパートメントの1つ又は複数が換気口を含む、上記のようなアッセイ装置である。
【0052】
本発明の別の実施の形態は第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントが陰圧下にある、上記のようなアッセイ装置である。
【0053】
本発明の別の実施の形態は第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントが既知の容量の安定化剤をその中に分注するための表示を含む、上記のようなアッセイ装置である。
【0054】
本発明の別の実施の形態は前記第1の物質が上で規定されたようなものである、上記のようなアッセイ装置である。
【0055】
本発明の別の実施の形態は前記安定化剤が上で規定されたようなものである、上記のようなアッセイ装置である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の一態様は生体試料を保持するのに好適な容器であって、第1の物質(パルス剤(pulsing agent)であり得る)を所定量保持する、容器に関する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「パルス剤」は生体試料を曝露させ得る任意の物質を含む。物質の例としてはペプチド、核酸、抗原が挙げられる。パルス剤は物質のほかに安定化剤、指示薬、リンカー、マトリクス等の他の成分を含み得る。
【0058】
「生体試料」という用語は臨床試料(例えば細胞画分、全血、血漿、血清、尿、組織、細胞等)、農業試料、環境試料(例えば土、泥、鉱石、水、空気)、食品試料(任意の食材)、科学捜査試料又は他の可能性のある試料のような核酸/生物学的作用因子を含有する試料を意味する。「全血」とは静脈サンプリングにより回収されるような、すなわち白血球及び赤血球、血小板、血漿及びひいては感染性因子を含有する血液を意味する。感染性因子はウイルス性、細菌性又は寄生生物性であり得る。臨床試料はヒト又は動物由来であり得る。分析試料は自然状態で固体又は液体の両方であり得る。固体材料が使用される場合、初めにこれらを好適な溶液(Qiagenから販売されているRNAlater試薬であってもよい)で溶解することが明らかである。本発明によれば、この溶液は必ずしも少なくとも2つの平衡状態の(well balanced)成分を有する実際の「緩衝液」である必要はない。この溶液はNaClのみのような強い低張溶液又はアルコール等による抽出溶液であってもよい。
【0059】
容器(本明細書で反応容器としても知られる)は幾つかの方法でパルス剤を保持してもよい。本発明の一態様によれば、パルス剤を容器の内壁に固定化してもよい。容器の内壁はパルス剤が接着することができる好適なコーティングで裏打ちされていてもよい。代替的には、パルス剤を容器の内壁の一部又は全てに直接接着してもよい。かかる接着に好適なコーティング、方法及び容器材料は当該技術分野で既知である。本発明の別の態様によれば、パルス剤は固体として存在する。固体は粉末、凍結乾燥ペレット、ゲル、クリームであり得る。好適な固体組成物及びその調製方法が当該技術分野で既知である。本発明の別の態様によれば、パルス剤が固形担体に固定される。固形担体を容器の内側に接着してもよい。代替的に、固形担体は容器の内側になくてもよい。固形担体の例としては、クロマトグラフィマトリクス、磁気ビーズが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の別の態様によれば、パルス剤は液体として存在する。好適な液体組成物及びその調製方法は当該技術分野で既知である。
【0060】
実験室条件の外で分析用のパルス実験を行うには、ピペッター等の較正された測定機器が必要である。較正されていない測定装置による誤差が固有の誤差につながり、また分注における人為的な誤差が異なる試料間の誤差につながる可能性があり、これにより比較分析が根拠のないものとなる。所定量のパルス剤を供給する容器を準備することにより、さらなる機器の必要性がなくなり、人為的な測定誤差が排除される。さらに、別に対照容器を準備することにより結果の正規化が可能となり、誤差の検出が容易となる。RNAが不安定であり、循環から採取すると迅速に分解するので対照の使用が重要である。全血をパルスする際の一貫性のない遅延により結果の比較ができなくなる。パルス剤とのインキュベーション中に、パルス剤に応じて異なる(生物学的)経路が関わる。本発明が、サイトカイン、ケモカイン、転写因子及び他の遺伝子産物等のバイオマーカー又は特定のプロセスに代表的な代理マーカーのメッセンジャーRNAを定量化することによりかかる生物学的プロセスの測定を可能にする。基準値がなければ、アッセイにおけるこれらのバイオマーカーの定量化にはほとんど意味がなく、統合された対照の使用により、対照反応を迅速に行うことができる。アッセイ及び対照を比較することは、バイオマーカーの量、及び生体系に対するパルス剤の影響の意味がある。例えば、Mx1遺伝子はI型IFNの制御下にあることが一般に認められている。本発明者らはこの知識を利用して、この遺伝子産物をI型IFNの治療効果を測定する代理マーカーとして使用した。全血をI型IFNと共にインキュベートした後、Mx1遺伝子産物を定量化する。Mx1遺伝子産物の量は、正規化遺伝子産物、すなわち転写活性がIFNの作用による影響を受けない遺伝子のmRNAコピー数に対するmRNAコピー数として表すことができる。しかしこの定量化は非刺激対照条件、すなわちI型IFNなしでの同じ処理下での代理マーカーの定量化である対照反応なしでは無意味なものになる。同じ推論が任意の免疫反応に関して可能である。厳密な対照とするために、対照試料を同じ方法で処理する、すなわち同じ採取、同じインキュベーション時間及びインキュベーション温度、並びに並行処理にすることが非常に重要である。単一装置でのアッセイと対照コンパートメントとの組合せによりこれを実行するのが可能になる。
【0061】
本発明による容器の種類は生体試料の保存に好適なもののいずれかであり得る。本発明の一態様によれば、パルス剤を含有する容器が封止されている。本発明の一態様によれば、パルス剤を含有する容器はスクリューキャップ、押し込み蓋(push-on cap)、フリップキャップのような再封止手段を有する。例えば図5を参照されたい。本発明の一態様によれば、生体試料又は他の流体を容器の壁にシリンジ針を使用して穿刺することにより容器に導入することができる。容器の壁は穿刺後に再封止可能であり得るか、又は容器の壁は穿刺後に再封止することができないか、又は容器の壁が隔壁のような再封止可能な領域を備えていてもよい。例えば、図4を参照されたい。
【0062】
本発明の一態様によれば、生体試料又は他の液体を両端に針(例えば管状の針)を備えた中空チューブを含む移送チューブにより導入する。一方の針は試料を保持する試料管又は他のコンテナの隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針は容器の隔壁に穿刺するように構成されている。生体試料は針を用いて、試料管から容器へと移すことができる。チューブは可撓又は剛体であってもよい。移送チューブの形状はU字型であってもよい。例えば図22を参照されたい。
【0063】
本発明の一態様によれば、シリンジを受けるために容器に付随した1つ又は複数の取り付け部又は結合手段が取り付けられた他のコンテナにより生体試料を容器に導入することができる。例えば、容器には無針シリンジを受けることができるルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。例えば図3を参照されたい。別の例では、容器には相互関係にある(reciprocating)非ルアー型結合設計を有するコンテナと一緒になることができる非ルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。
【0064】
本発明の一態様によれば、個体から生体試料を直接採取するのに好適な、容器に取り付けた管状針又は皮下針により生体試料を上記容器に導入することができる。例えば図6を参照されたい。
【0065】
本発明の一態様によれば、再封止手段を開放することにより生体試料を容器に導入することができる。例えば図5を参照されたい。
【0066】
当業者に既知のように、試料の封止容器への導入により、そこから同容量の空気若しくはガスが排出されるか、又はその中での圧力が高まる。したがって容器は排出されるガスを上記容器から放出するか、又は圧力増大を調整するに好適な手段を備えていてもよい。上記手段は当該技術分野で既知であり、弁、非ドリップ式穴、通気口、布付き通気口(clothed-vents)、拡張型容器壁、上記容器内での陰圧の利用が含まれる。例えば図11の矢印31を参照されたい。
【0067】
本発明の一態様において、封止容器内の圧力は陰圧である。陰圧を利用して、生体試料を上記封止容器に導入する際の圧力の増大を緩和することができる。代替的に又は付加的に、陰圧は所定のレベルであってもよく、固定容量の生体試料の導入を可能にするように利用することができる。
【0068】
本発明の別の態様によれば、容器は第1の針(管状)(それを通して液体生体試料を容器に入れることができる)と、第2の針(それを通して陽圧又は陰圧を容器の内部に印加することができる)とを受けるのに適した上記のような封止可能な隔壁を備えている。陰(真空)圧を第2の針を通して印加すると、第1の針を通して生体試料を容器へと引き抜くことができる。好ましくは、第1の針はこれまでに記載した移送チューブの一部である。第2の針は空気(排出又は圧力)ポンプに接続されている、以下に記載の圧力チューブの一部であり得る。第1の針及び第2の針を平行配置で連結させてもよい。例えば図24を参照されたい。
【0069】
所定量のパルス剤が既に供給されている容器により、上記抗原を測定する器具を必要とせずに、個体に診断検査を行うことが可能である。さらに実験室条件の外で診断検査を行う場合、夾雑及び分注の正確性に関する問題から、定量アッセイにおいて間違った結果が得られる可能性がある。本明細書に記載のような容器はこれらの問題を克服している。
【0070】
本発明の別の態様は対照容器であり、該対照容器は生物学的パルス剤を含有する代わりに対照パルス剤(対照物質)を含有すること以外は上記のような容器であり得る。本記載のために他でも言及されるように、本明細書に記載のような容器はパルス剤を保持するために用いられ、「反応容器」と呼ばれることもあるが、本明細書に記載のような対照容器は対照パルス剤を保持するために用いられる。容器と対照容器とは独立して操作し、試料と安定化剤とを独立して受け、内部は連結されていない。しかしながら、容器と対照容器とはキットの一部として共に存在し得る。代替的に、容器及び対照容器の外面が容器と対照容器との両方を含む単一体を形成するように機械的に接続され得る。本発明の一態様によれば、対照パルス剤を含有する対照容器は封止されている。対照容器は例えばスクリューキャップ、押し込み蓋、フリップキャップのような再封止手段を有していてもよい。対照容器は剥ぎ取り(peel-back)接着シール、スナップオフシール(snap-off seal)のような壊すことのできるシールを有していてもよい。本発明の一態様によれば、対照容器の壁は隔壁等の再封止可能な領域を備えていてもよく、これを通してシリンジ針を用いて穿刺することにより物質を対照容器に導入することができる。対照容器の隔壁は穿刺後に再封止可能であってもよい。本発明の一態様によれば、生体試料又は他の液体が両端に針(例えば管状の針)を備えた上記の移送チューブにより導入される。一方の針は試料管を保持する管又は他のコンテナの隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針は対照容器の隔壁に穿刺するように構成されている。液体生体試料は針を用いて、試料管から対照容器へと移すことができる。チューブは可撓又は剛体であってもよい。移送チューブの形状はU字型であってもよい。
【0071】
本発明の一態様において、対照容器は生体試料管と流体接続している場合、生体試料管から液体生体試料を引き抜く手段を有し得る。例としてはシリンジ型のプランジャー又は陰圧を印加する任意の手段が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
対照容器が反応容器に導入された同じ生体試料の一部を受けることを理解されたい。生体試料を1つは対照容器、もう1つは反応容器と2つに分けることができることを理解されたい。代替的に、生体試料の1つのアリコートを反応容器に導入し、第2の等量のアリコートを対照容器に導入することができる。
【0073】
本発明の別の態様によれば、対照容器は第1の針(管状)(それを通して液体生体試料を対照容器に入れることができる)と、第2の針(それを通して陽圧又は陰圧を対照容器の内部に印加することができる)とを受けるのに適した上記のような封止可能な隔壁を備えている。陰(真空)圧を第2の針を通して印加すると、第1の針を通して対照容器へと生体試料を引き抜くことができる。好ましくは第1の針は前に記載の移送チューブの一部である。第2の針は空気(排出又は圧力)ポンプに接続されている以下に記載の圧力チューブの一部であり得る。第1の針及び第2の針を平行配置で連結してもよい。例えば図24を参照されたい。
【0074】
当業者によって十分理解されているように、対照パルス剤はパルス剤及び研究中のパラメータに依存する。例えばパルス剤がペプチド、ペプチドのセット又はペプチドのプールである場合、対照パルス剤は同じ長さのペプチド(単数又は複数)を含んでいてもよいが、ペプチド(複数可)の配列はランダム化しており、及び/又は既存のタンパク質又はペプチドのセグメントとは同一ではない。この対照パルス剤をパルス剤と同じ全血と共に、同じ量の作用因子、同じ容量の血液を用いて、同じ期間及び同じ温度でインキュベートする。別の例では、パルス剤はタンパク質治療剤、例えば所望の濃度まで水、リン酸緩衝生理食塩水又は生理食塩水等の賦形剤中に溶解したIFN−βであり得る。したがって対照パルス剤は賦形剤であり得る。さらなる例では、パルス剤は抗原、例えば所望の濃度まで水、リン酸緩衝生理食塩水又は生理食塩水等の賦形剤中に溶解したFeld1であり得る。したがって対照パルス剤は抗原の賦形剤であり得る。代替的には、対照容器は例えば誘導性免疫反応若しくは誘導性遺伝子発現を未処理試料と比較する場合、対照剤を欠いていてもよく又は空である。
【0075】
本発明の別の態様は本明細書に記載のような容器であって、安定化剤が存在するコンテナをさらに含み、該安定化剤がパルス剤又は上記パルス剤に曝露した生体試料に接触するのを一時的に防ぐ、容器に関する。
【0076】
本発明の一態様において、安定化剤は核酸安定化剤及び/又は細胞性のRNA分解阻害剤及び/又は遺伝子誘導阻害剤を含み、及び/又は安定化剤がPAXgene(商標)Blood RNA Tubeに見られるものと同じであり、及び/又は安定化剤がTempus(商標)Blood RNA Tubeに見られるものと同じである。作用因子及びそれらの組合せは当該技術分野で既知であり、又は当業者が推測することができる。
【0077】
PAXgene(商標)及びTempus(商標)Blood RNA Tubeに細胞RNAを安定化する添加剤を含有する溶液を供給し、遺伝子転写のex vivo誘導を排除することができる。この添加剤の性質を説明する詳細な情報は与えられていない。この目的のためのPAXgene(商標)tubeに付属されたカタログは米国特許第5,906,744号を参照する。とはいっても、この特許文献に記載の管により、当業者は本発明で行われるように全血ではなく血漿から核酸を調製することが可能となる。特に米国特許第5,906,744号の装置はプラスチック管又はガラス管、血液凝固を阻害する手段、及び全血から血漿を分離する手段を含むのが好ましい(米国特許第5,906,744号、第2欄、I.42〜43)。したがって本発明によれば、米国特許第5,906,744号に記載の内容は別の用途に関連するので、PAXgene(商標)Blood RNA Tubeの実際の内容には関連していない。
【0078】
本発明によれば、PAXgene(商標)Blood RNA Tube中に保持される溶液は第4級アミン界面活性剤を含有し得る。そのため本発明によれば、第4級アミン界面活性剤を安定化剤として使用してもよい。生体試料において核酸を安定化させるための第4級アミン界面活性剤の使用はこれまでに米国特許第5,010,183号に記載されている。この特許文献は生体材料の混合物からDNA又はRNAを精製する方法を提供している。上記方法は細胞を溶解し、混合物中で任意の夾雑したタンパク質及び脂質を可溶化して、核酸と洗剤との間で不溶性の疎水性複合体を形成するのに十分な量でRNA又はDNAを含有する混合物にカチオン性洗剤を添加する工程を含む。このようにしてRNA又はDNAを洗剤と共に含む複合体は可溶化混入物質とは分離される。最近の特許文献では、同じ発明者らが米国特許第5,010,183号に記載のような界面活性剤、及び他の市販の界面活性剤の使用により、RNAの非効率的な析出及び血液細胞の不完全な溶解が起こると述べている。このためにカチオン性界面活性剤を改良する必要があったので、米国特許第5,010,183号の発明者らが、選択された第4級アミンを含むカチオン性界面活性剤水溶液の使用を伴う、生体試料(血液を含む)からRNAを単離する新規の方法を模索した(米国特許第5,985,572号)。生体試料由来のRNAを安定化させることができる新規の水性の第4級アミン界面活性剤は国際公開第94/18156号及び国際公開第02/00599号にも記載されている。本発明のいずれかの方法で使用することができる様々な可能性のある界面活性剤の合成を上で言及した又は関連の特許文献で公開された指示に従って行うことができる。本発明の方法に使用することができる第4級アミンの一例はテトラデシルトリメチル−シュウ酸アンモニウムである(米国特許第5,985,572号)。代替的には、上記カチオン性洗剤は本発明の実施例1で示されるようにCatrimox−14(商標)であり得る(米国特許第5,010,183号)。上記生体試料の安定化に加えて、上記出願はカラムクロマトグラフィ等の従来の分離技法を用いた核酸の単離を記載している。PAXgene(商標)Blood RNA TubeとPAXgene(商標)Blood RNA kit(これはカラムクロマトグラフィにも適用される)とを組み合せなければいけないため、供給業者により、PAXgene(商標)Blood RNA Tubeに存在する化合物しか上記クロマトグラフィ法に適合することができないという印象が与えられている。
【0079】
本発明の一態様において、生体試料をパルス剤と混合したようなときまで、及び/又はユーザーが安定化剤の導入を必要とするようなときまで安定化剤が上記コンテナ内に含有されている。
【0080】
コンテナを容器に組み込んでもよく、これはワンピースユニット(one-piece unit)を形成するようにコンテナを容器と機械的に連結させてもよいことを意味する。本発明の一態様によれば、上記コンテナの内部と上記容器の内部とが接続され、その接続を遮断する物理的障壁が存在する。適時に力の印加により物理的障壁が開放され、安定化剤をそのようにパルスした生体試料と混合することが可能になる。本発明の一態様によれば、物理的障壁は印加される物理的な力に応じて可逆的に開閉する。印加される力をその物理的障壁自体に、又は安定化剤を介して物理的障壁に送ることができる。物理的障壁は任意の機械的障壁であり得る。かかる物理的障壁の例としては回転弁、開口弁、スリット弁、隔壁弁、ボール弁、フラップ弁が挙げられる。本発明の別の態様によれば、力の印加により物理的障壁を不可逆的に開放してもよい。物理的な力は任意の機械的な力であり得る。印加される力をその物理的障壁自体に(例えば図7を参照されたい)、又は安定化剤を介して物理的障壁に伝えることができる(例えば図8を参照されたい)。かかる物理的障壁の別な例としては適所を外して通したプラグ(例えば図1を参照されたい)、力の印加の際に砕ける障壁(例えば図7を参照されたい)が挙げられる。
【0081】
本発明の別の態様によれば、上記コンテナの内部と上記容器の内部とを接続し、接続の開口サイズと合わせて安定化剤の表面張力によりコンテナから容器へと安定化剤が流れるのを防ぐ。本発明のこの態様によれば、適時に安定化剤に伝わる力の印加により、コンテナから容器へと安定化剤が流れる。例えば圧搾、連続的な反転及び撹拌により力を印加することができる。
【0082】
本発明の別の態様は安定化剤が存在する対照コンテナをさらに含む、本明細書に記載のような対照容器であって、該安定化剤が対照パルス剤又は上記対照パルス剤に曝露した生体試料と接触するのを一時的に防ぐ、対照容器に関する。集積対照コンテナを備える対照容器と共に、本明細書に記載の集積コンテナを備える容器がキットの一部として共に存在し得る。代替的に、集積対照コンテナを備える対照容器の外側と共に、本明細書に記載の集積コンテナを備える容器の外側が単一装置を形成するように架橋成員を用いて連結又は接続してもよい(図19及び図20)。
【0083】
対照コンテナを対照容器に組み込んでもよく、これはワンピースユニットを形成するように対照コンテナを対照容器と機械的に連結させてもよいことを意味する。本発明の別の態様によれば、上記対照コンテナの内部と上記対照容器の内部とが接続され、その接続を遮断する物理的障壁が存在する。適時に力の印加により物理的障壁が開放され、安定化剤をそのようにパルスした生体試料と混合することが可能になる。本発明の一態様によれば、物理的障壁は印加される物理的な力に応じて可逆的に開閉する。印加される力をその物理的障壁自体に、又は安定化剤を介して物理的障壁に伝えることができる。かかる物理的障壁の例としては回転弁、開口弁、スリット弁、隔壁弁、ボール弁、フラップ弁が挙げられる。本発明の別の態様によれば、力の印加により物理的障壁を不可逆的に開放してもよい。印加される力をその物理的障壁自体に(例えば図17を参照されたい)、又は安定化剤を介して物理的障壁に伝えることができる(例えば図18を参照されたい)。かかる物理的障壁の別な例としては適所を外して通したプラグ(例えば図12を参照されたい)、力の印加の際に砕ける障壁(例えば図17を参照されたい)が挙げられる。
【0084】
本発明の別の態様によれば、上記対照コンテナの内部と上記対照容器の内部とを接続し、接続の開口サイズに合わせた安定化剤の表面張力により対照コンテナから対照容器へと安定化剤が流れるのを防ぐ。本発明のこの態様によれば、適時に安定化剤に伝わる力の印加により、対照コンテナから対照容器へと安定化剤が流れる。例えば圧搾、連続的な反転及び撹拌により力を印加することができる。安定化剤を分注するためにそれぞれコンテナ又は対照コンテナを含む、本明細書に記載のような容器又は対照容器により、特別なトレーニングを受けていない技術者はパルス剤又は対照を用いて血液をパルスし、後期での当業者による分析のためにそのようにパルスした血液を安定化させることが可能となる。このため、多くの試料を回収する必要がある場合、本明細書で開示のような容器又は対照容器により、血液をパルス及び安定化させるのに特別なトレーニングを受けていないオペレーターを採用できるので費用の削減が可能となる。さらに、容器又は対照容器により、既知の量のパルス剤及び安定化剤を上記容器内に予め供給させてもよく、このためピペッティングに関する誤差が最小になるので再現性がもたらされる。さらに、試料を上記管へと直接、又は例えばシリンジを介して引き抜くことができるので、生体試料を採取するのと上記試料をパルス抗原又は対照に曝露するのとの間の時間が大幅に削減される。さらに安定化剤の試料への導入が力の印加により簡単に達成され、それにより安定化剤をピペッティングすることによる遅延がなくなるので、生体試料をパルスするのと生体試料を安定化させるのとの間の時間を正確に設定することができる。
【0085】
本発明の別の実施の形態は、生体試料をパルス剤でパルスし、その後それに安定化剤を導入して、そのようにパルスした生体試料においてRNA成分を試験するのに好適なキットであって、上で開示されるような1つ又は複数の容器と上記安定化剤が存在する1つ又は複数のコンテナを含む、キットである。該キットは生物学的な対照パルス剤が存在する対照容器をさらに含み得る。
【0086】
キットの1つの実施の形態において、上記安定化剤が存在するコンテナはパルス剤が存在する容器には組み込まれず、及び/又は上記安定化剤が存在する対照コンテナは対照物質が存在する対照容器には組み込まれない。
【0087】
これにより、コンテナ又は対照コンテナは分離することができ、キットで安定化剤を保持するのに好適な当該技術分野の任意のコンテナであってもよい。本発明の一態様によれば、安定化剤を含有するコンテナ又は対照コンテナは封止されている。コンテナ又は対照コンテナは例えばスクリューキャップ、押し込み蓋、フリップキャップのような再封止手段を有していてもよい。コンテナ又は対照コンテナは剥ぎ取り接着シール、スナップオフシールのような壊すことのできるシールを有していてもよい。本発明の一態様によれば、コンテナ又は対照コンテナの壁は隔壁等の再封止可能な領域を備えていてもよく、シリンジ針を用いて穿刺することにより安定化剤をコンテナ又は対照コンテナから引き抜くことができる。コンテナ又は対照コンテナの隔壁は穿刺後に再封止可能であってもよい。本発明の特定の一態様によれば、コンテナ又は対照コンテナを両端に針(例えば管状の針)を備えた移送チューブと併せて使用する。一方の針はコンテナ又は対照コンテナの隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針は容器又は対照容器(下記)のそれぞれの隔壁に穿刺するように構成されている。安定化剤は移送チューブを用いて、コンテナ又は対照コンテナから容器又は対照容器それぞれへと移すことができる。チューブは可撓又は剛体であってもよい。移送チューブの形状はU字型であってもよい。コンテナ又は対照コンテナは相互(reciprocal)結合手段が取り付けられた上記の容器の連結、及び安定化剤の上記容器又は上記対照容器への移送に好適な1つ又は複数の取り付け部を含み得る。例えば、コンテナ又は対照コンテナには、上記のように上記容器に取り付けられた(例えば図9、図10及び図11を参照されたい)、又は対照容器に取り付けられた相互ルアー型取り付け部を受けることができるルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。別の例では、コンテナ又は対照コンテナには、相互関係にある非ルアー型結合設計を有する容器又は対照容器と一緒になることができる非ルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。容器の再封止手段を開放することにより安定化剤を容器又は対照容器に移すことができる。安定化剤は上述の取り付け部又は開口部のいずれかを通ってコンテナ又は対照コンテナへと排出することができる。コンテナ又は対照コンテナは任意で安定化剤を排出させながら空気を流入させる手段を有していてもよい。本発明の一態様において、コンテナ又は対照コンテナは上記コンテナ又は上記対照コンテナから安定化剤を押し出す手段を有していてもよく、例としてはシリンジ型のプランジャー、コンテナ若しくは対照コンテナの圧搾壁、又は陽圧を印加する任意の手段が挙げられるが、これらに限定されない。コンテナ又は対照コンテナは任意で分注される安定化剤の容量を確定する測定手段、例えばスケールを有する。本発明の一態様では、コンテナ又は対照コンテナは1回の使用に十分な容量の安定化剤を保持している。本発明の別の態様では、コンテナ又は対照コンテナは複数のパルス実験に十分な容量の安定化剤を保持している。
【0088】
本発明の別の態様によれば、コンテナ又は対照コンテナは第1の針(管状)(それを通して安定化剤を容器から排出することができる)と、第2の針(それを通して陽圧又は陰圧を容器の内側に印加することができる)とを受けるのに適した上記のような封止可能な隔壁を備えている。陽圧を第2の針を通して印加すると、第1の針を通して安定化剤をコンテナ又は対照コンテナへと押し出すことができる。好ましくは、第1の針はこれまでに記載した移送チューブの一部である。第2の針は空気(排出又は圧力)ポンプに接続されている、以下に記載の圧力チューブの一部であり得る。第1の針及び第2の針を平行配置で連結させてもよい。
【0089】
キットの別の実施の形態において、上記安定化剤が存在するコンテナをパルス剤が存在する容器に接続し、容器の実施の形態を上記に示す。本発明のキットの別の実施の形態では、上記安定化剤が存在する対照コンテナを対照物質が存在する対照容器に接続し、対照容器の実施の形態を上記に示す。
【0090】
任意で本発明のキットは生体試料をパルスする方法の記載を含む取扱説明書を含んでいてもよい。
【0091】
本発明の別の態様は上記パルス剤が抗原を含む、本明細書で開示のような容器、及び上記容器を含むキットに関する。本発明の一態様によれば、上記抗原は細菌性LPSである。本発明の別の態様によれば、上記抗原は免疫反応リコール抗原である。本発明の別の態様によれば、上記抗原は破傷風トキソイドである。本発明の別の態様によれば、上記抗原は癌免疫療法抗原である。本発明の別の態様によれば、上記抗原はMAGE−3である。本発明の別の態様によれば、上記抗原はネコアレルゲンである。本発明の別の態様によれば、上記抗原はFeld1である。本発明の別の態様によれば、上記抗原は臓器提供者由来の抗原提示細胞である。本発明の別の態様によれば、上記抗原は自己抗原である。本発明の別の態様によれば、上記抗原はGAD65である。
【0092】
当業者によって十分理解されているように、対照パルス剤はパルス剤及び研究中のパラメータに依存する。例えばパルス剤がペプチド、ペプチドのセット又はペプチドのプールである場合、対照パルス剤は同じ長さのペプチド(単数又は複数)を含んでいてもよいが、ペプチド(複数可)の配列はランダム化しており、及び/又は既存のタンパク質又はペプチドのセグメントとは同一ではない。対照パルス剤をパルス剤と同じ全血と共に、同じ量の作用因子、同じ容量の血液を用いて、同じ期間及び同じ温度でインキュベートする。別の例では、パルス剤はタンパク質治療剤、例えば所望の濃度まで水、リン酸緩衝生理食塩水又は生理食塩水等の賦形剤中に溶解したIFN−βであり得る。したがって対照パルス剤は賦形剤であり得る。さらなる例では、パルス剤は抗原、例えば所望の濃度まで水、リン酸緩衝生理食塩水又は生理食塩水等の賦形剤中に溶解したFeld1であり得る。したがって対照パルス剤は抗原の賦形剤であり得る。代替的には、対照容器は例えば誘導性免疫反応若しくは誘導性遺伝子発現を未処理試料と比較する場合、対照剤を欠いていてもよく又は空である。
【0093】
本発明の別の態様は、生体試料を抗原でパルスし、その後その中で核酸を安定化させて、そのようにパルス化した生体試料においてRNA成分を試験する方法に関する。該方法は試料を任意で回収、パルス及び安定化するための本明細書で開示のような容器、対照容器及び/又はキットの使用を含む。
【0094】
本発明の1つの実施の形態は液体生体試料を受ける装置であって、前記試料を第1の物質及び対照物質に、その後核酸安定化剤に別々に曝露するのを容易にし、該装置が、
第1の物質が存在する第1のコンパートメントと、
対照物質が存在する第2のコンパートメントと、
安定化剤が存在する第3のコンパートメントと、
生体試料管用の支持部と、
を含む、装置である。
【0095】
装置の一例を図21a及び図21bに示す。本発明の一態様によれば、少なくとも1つ(例えば1つ、2つ、3つ、全て)、好ましくは全てのコンパートメントが封止されている。1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つ、全て)のコンパートメントが例えばスクリューキャップ、押し込み蓋、フリップキャップのような再封止手段を有していてもよい。1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つ、全て)のコンパートメントが剥ぎ取り接着シール、スナップオフシールのような壊すことのできるシールを有していてもよい。本発明の一態様によれば、1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つ、全て)のコンパートメントは隔壁等の再封止可能な領域を備え、それを通してシリンジ針を用いて穿刺することにより物質をコンパートメントに導入することができる。コンパートメントの隔壁は穿刺後に再封止することができる。
【0096】
特定の実施の形態によれば、1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つ、全て)のコンパートメント及び生体試料管を、例えば図22に示すように移送チューブ、すなわち両端に中空針(例えば管状の皮下注射針)を備えた中空チューブと併用する。一方の針は1つのコンパートメント(例えば第1のコンパートメント)の隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針は他のコンパートメント(例えば第3のコンパートメント)の隔壁に穿刺するように構成されている。代替的に、一方の針は1つのコンパートメント(例えば第1のコンパートメント)の隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針は(支持部により保持される)生体試料管から液体を引き抜くように構成されている。このように、2つのコンパートメント又は1つのコンパートメントと生体試料管とをチューブにより一時的に流体接続させることができる。流体接続により、例えば移送チューブを用いて安定化剤を第3のコンパートメントから第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントへと移送させることが可能になる。チューブは可撓又は剛体であってもよい。移送チューブはU字型であってもよい。
【0097】
本発明による生体試料管は生体試料の保存に好適なもののいずれかであり得る。本発明の一態様によれば、生体試料管が封止されている。本発明の一態様によれば、生体試料管はスクリューキャップ、押し込み蓋、フリップキャップのような再封止手段を有する。本発明の一態様によれば、管の壁にシリンジ針を用いて穿刺することにより生体試料を管に導入することができる。管の壁は穿刺後に再封止することができてもよく、又は管の壁は穿刺後に再封止できなくてもよく、又は試料管の壁は隔壁等の再封止可能な領域を備えていてもよい。本発明の一態様によれば、本明細書のほかの場所で記載のように、両端に針(例えば管状針)を備えた中空チューブを含む移送チューブにより導入された管から生体試料を引き抜くことができる。一方の針は試料又は他の液体を保持する試料管の隔壁に穿刺するように構成されており、もう一方の針はコンパートメントの隔壁に穿刺するように構成されている。チューブを用いて、液体生体試料を試料管からコンパートメントの1つに移すことができる。チューブは可撓又は剛体であってもよい。移送チューブはU字型であってもよい。本発明の一態様によれば、シリンジに適合した試料管に付随した1つ又は複数の取り付け部又は結合手段が取り付けられた他のコンテナにより生体試料を試料管に導入することができる。例えば、管には無針シリンジを受けることができるルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。別の例では、管には相互関係にある非ルアー型結合設計を有するコンテナと一緒になることができる非ルアー型取り付け部が取り付けられていてもよい。本発明の一態様によれば、個体から生体試料を直接採取するのに好適な、上記管に取り付けた管状針又は皮下針により生体試料を該管に導入することができる。本発明の一態様によれば、再封止手段を開放することにより生体試料を試料管に導入することができる。
【0098】
本発明の一態様において、第1のコンパートメントは生体試料管と流体接続している場合、生体試料管から第1のコンパートメントへと液体生体試料を引き抜く手段を有し得る。第2のコンパートメントは同様に、例えば移送チューブを用いて生体試料管と流体接続している場合、生体試料管から第2のコンパートメントへと液体生体試料を引き抜く手段を有し得る。かかる手段の例としては、シリンジ型プランジャーの使用、又は受取コンパートメントに陰圧、若しくは供給コンパートメントに陽圧を印加する任意の手段が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施の形態によれば、以下に記載の挿入可能な圧力チューブを用いて、コンパートメント内の圧力を制御する。第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントは一部真空下にあり得る。
【0099】
本発明の一態様において、第1のコンパートメントは第3のコンパートメントと流体接続している場合、第3のコンパートメントから第1のコンパートメントへと安定化剤を引き抜く手段を有し得る。第2のコンパートメントは同様に、例えば移送チューブを用いて第3のコンパートメントと流体接続している場合、第3のコンパートメントから第2のコンパートメントへと安定化剤を引き抜く手段を有し得る。かかる手段の例としては、シリンジ型プランジャーの使用、又は受取コンパートメントに陰圧、若しくは供給コンパートメントに陽圧を印加する任意の手段が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施の形態によれば、以下に記載の挿入可能な圧力チューブを用いて、コンパートメント内の圧力を制御する。第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントは一部真空下にあり得る。
【0100】
本発明の別の態様において、第3のコンパートメントは、例えば移送チューブを用いて第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントと流体接続している場合、第3のコンパートメントから第1のコンパートメント及び/又は第2のコンパートメントへと安定化剤を押し出す手段を有し得る。かかる手段の例としては、シリンジ型プランジャー又は第3のコンパートメントに陽圧を印加する任意の手段が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施の形態によれば、以下に記載の挿入可能な圧力チューブを用いて、コンパートメント内の圧力を制御する。第3のコンパートメントは陽圧下にあり得る。
【0101】
本発明の一態様によれば、第1のコンパートメントは滅菌されている。本発明の別の態様によれば、第2のコンパートメントは滅菌されている。本発明の別の態様によれば、第3のコンパートメントは滅菌されている。本発明の別の態様によれば、コンパートメントが全て滅菌されている。
【0102】
本発明の1つの実施の形態によれば、それぞれのコンパートメントが第1の針(それを通して液体が通過することができる)及び第2の針(それを通して陽圧又は陰圧をコンパートメントの内側に印加することができる)を受けるのに適した上記のような封止可能な隔壁を備える。陽圧を第2の針を通して印加する場合、コンパートメントから第1の針を通して液体を押し出すことができる。代替的に、陰圧を第2の針を通して印加する場合、コンパートメントへと第1の針を通して液体を引き抜くことができる。好ましくは第1の針はこれまでに記載の移送チューブの一部である。第2の針は圧力チューブの一部である。第1の針と第2の針とが平行配置で連結されていてもよい。例えば図24を参照されたい。
【0103】
必要であれば、1つ又は複数(例えば1つ、2つ、3つ、全て)のコンパートメントは任意でコンパートメント内の圧力を周囲圧力と平衡化させる通気口を備えていてもよい。通気口は一方向のみのガス流を与えるように構成された一方向弁(例えば回転弁、開口弁、スリット弁、隔壁弁、ボール弁、フラップ弁)を含み得る、例えば押し出しガスの放出が可能となり得る。
【0104】
本発明のさらなる態様によれば、装置は本明細書で試料管支持部としても知られる生体試料管用の支持部をさらに備える。試料管支持部は試料管を立位で保持する任意の好適な物理的又はそれ以外の構造であり得る。好ましい実施の形態では、試料管支持部は試料管の少なくともベース領域と相互関係にある形状を有する壁付き開口部である。
【0105】
本発明のさらなる態様によれば、装置は本明細書でチューブ支持部としても知られる生物移送チューブ用の支持部をさらに備える。チューブ支持部は移送チューブと装置との取り外し可能な接続に適した任意の好適な物理的又はそれ以外の構造であり得る。チューブ支持部により、移送中及び非使用時の移送チューブの格納が可能となる。またチューブ支持部は移送チューブの針の先端に清浄な環境を与える。好ましい実施の形態では、移送チューブ支持部は移送チューブの各端と相互関係にある形状をそれぞれ有する2つのスロットを含む。
【0106】
装置はコンパートメント及び支持要素に対する要件を与える任意の形態を取ってもよい。装置は好ましくはサイズ、重量、支持能、耐久力及びリサイクル性に関して最適であるとすることを理解されたい。本発明の好ましい実施の形態では、コンパートメントを互いに機械的に接続する。好ましくは、試料管支持部もコンパートメントと機械的に接続する。好ましくは、チューブ支持部もコンパートメントと機械的に接続する。このように接続する場合、装置は自立ユニットであるという利便性を有する単一体である。機械的接続は当該技術分野で既知の任意の好適な配置を用いて、例えばポリカーボネート、ポリプロピレン、環状オレフィンコポリマー(COC)又は同じ若しくは異なる材料の支持部と機械的に接続したガラスのような生物学的に不活性な材料の単一ブロックから形成されるコンパートメントを利用して達成することができる。
【0107】
本発明の好ましい実施の形態を図21aにおける三次元図及び図21bにおける断面で示し、この図は環状オレフィンコポリマー(COC)等の材料の固体ブロック44からなる装置30を表し、第1の物質2が存在する第1のコンパートメント32、対照物質35が存在する第2のコンパートメント34、及び安定化剤5が存在する第3のコンパートメント36を備える。コンパートメント32、34、36は固体ブロック44に与えられた円筒状の開口部であり、それぞれ少なくとも一部COCから作製されていてもよい蓋38、48、50で封止されている。代替的に、コンパートメント32、34、36はそれぞれ固体ブロック44に与えられた円筒状の開口部で固定された、好適な材料(例えばガラス、ポリプロピレン、ポリカーボネート)から作製された円筒状のバイアルからなり得る。それぞれのバイアルは蓋38、48、50でそれぞれ封止されている。蓋38、48、50はそれぞれ針を用いてコンパートメント内部へのアクセスを与える再封止可能な隔壁46、40、42を備えている。試料管支持部52が装置上に与えられている。上記試料管支持部52は試料管のベース領域を支持するように構成されている円筒状の開口部である。装置はそれぞれ移送チューブの各端と相互関係にある形状を有するスロットを2つ含むチューブ支持部54、56をさらに備えている。U字型移送チューブを用いて、試料管の内容物を第1の(パルス剤)コンパートメント32及び第2の(対照)コンパートメント34のそれぞれに移すことができる。上記コンパートメントは陰圧下にある。第3のコンパートメント36から第1のコンパートメント32及び第2のコンパートメント34のそれぞれへと安定化剤を移すのに同じ針を使用してもよい。
【0108】
他で記載のように、1つのコンパートメント又は容器から別のコンパートメント又は容器へと液体を移すのに、両端に針(例えば管状針)を備えた中空チューブを含む移送チューブを使用する。該液体は陽圧の印加により供給コンパートメント(若しくはコンテナ若しくは対照コンテナ)へと押し出されるか、又は受取コンパートメント(若しくは容器若しくは対照容器)での陰圧の印加により引き抜かれる。
【0109】
移送チューブの針は流体又は空気が針を通ってコンパートメント(容器又は対照容器)に入ることだけができるように、再封止可能な(例えばゴム又はシリコーン)隔壁に穴を開けるのに適している。針の先端は両側が尖っており斜端であるのが好ましく、芯を取り除いていなくてもよい。針は22G、23G、24G若しくは25G、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは23Gであり得る。それぞれの針を着脱可能な防水カバーで保護し、使用の前に微生物の進入を防ぐことができる。それぞれの針カバーはチューブ支持部に残り、チューブ支持部に接着させることができ、そのためU字型針を装置から持ち上げる際に、カバーがそれぞれの針から外れ、チューブ支持部内にカバーが留まる。
【0110】
針の直線部分の長さを表す、移送チューブにおける移送チューブの針の長さ(L)は同じであっても又は異なっていてもよい。その長さはコンパートメントの深さ及び移す液体の容量によって変わる。一般的指針として、一方の移送チューブの針の長さ(L1)は25mm、26mm、28mm、30mm、32mm、33mm、34mm、35mm、36mm、38mm、40mm、42mm、44mm、46mm、48mm、50mm、55mm、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは25mm〜35mm、より好ましくは30mm〜35mmであり得る。もう一方の移送チューブの針の長さ(L2)は25mm、26mm、28mm、30mm、32mm、33mm、34mm、35mm、36mm、38mm、40mm、42mm、44mm、46mm、48mm、50mm、55mm、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは40mm〜50mm、より好ましくは42mm〜46mmであり得る。管の高さ(L3)は利用可能な隙間空間に応じて変わる。一般的指針として、1つの移送チューブの長さは5mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm若しくは17mm、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは10mm〜15mm、より好ましくは12mm〜14mmであり得る。中空チューブは剛体又は可撓であってもよい。好ましくは中空チューブは剛体である。本発明の好ましい態様によれば、移送チューブはU字に曲がった長い針からなっており、第2の針が剛体の中空チューブを有する本発明の移送チューブを形成するように、尖っていない先端(non-pointed end)に接着している。剛体のチューブが用いられる場合、2つの針間の距離(D)はコンパートメント間の間隔によって変わる。本発明の好ましい態様によれば、2つの針間の距離(D)は2つの隣接コンパートメント間の距離と本質的に同じであり、これは一般的にコンパートメント及び試料支持部が2×2の正方配列で配置される場合に達成される。一般的指針として、針間の距離は20mm、22mm、24mm、26mm、28mm、30mm若しくは32mm、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは24mm〜28mm、より好ましくは26mmであり得る。
【0111】
移送チューブはロボットシステム(例えばロボットアーム又はロボットプラットフォーム)との接続に適しており、自動試料プロセシングを容易にすることができる。剛体の中空チューブを利用する場合、ロボットシステムが剛体の中空チューブを介して移送チューブと接続される。ロボットシステムの使用により、潜在的に他の刺激因子を欠いている滅菌環境においても本発明の幾つかの装置を用いて自動アッセイを行うことができる。さらに該装置が単一移送チューブの有用性により液体試薬の移送を容易にすることができる。
【0112】
コンパートメント、容器又はコンテナに対する圧力を、コンパートメント、容器又はコンテナの隔壁への挿入のために一方の端に針を備え、もう一方の端がコンパートメント、容器又はコンテナに必要とされる制御圧力を与えることができる空気ポンプへの接続に適している可撓なチューブを含む中空圧力チューブ(図23)により与えることができる。この圧力チューブの針を、溶接継ぎ手、接着継ぎ手又はクランプ等の継ぎ手により移送チューブの針の1つと機械的に接着させることができる(図24を参照されたい)。圧力チューブの針は空気又はガスが針を通ってコンパートメント、容器又はコンテナに入ること又はコンパートメント、容器又はコンテナから出ることだけができるように、再封止可能な(例えばゴム又はシリコーン)隔壁に穴を開けるのに適している。針の先端は両側が尖っており斜端であるのが好ましく、芯を取り除いていなくてもよい。針は22G、23G、24G若しくは25G、又は上述の値のいずれか2つの間の範囲にある値、好ましくは23Gであり得る。
【0113】
装置がさらなる封止コンパートメントを備えていることも本発明の範囲内である。コンパートメントは直線に沿って又は配列(例えば2×2、2×4等)で配置していてもよい。好ましくは、コンパートメント及び試料支持部を2×2の正方配列で配置し、隣接コンパートメントと試料支持部との距離は等しい。
【0114】
本発明の1つの実施の形態において、生体試料をパルスする方法は、
i)生体試料を上記容器に導入する工程、
ii)任意で上記容器を撹拌する工程、
iii)所定の期間後に安定化剤を上記容器に導入する工程、及び
iv)生体試料中の核酸レベルを試験する工程、
を含む。
【0115】
本発明の別の実施の形態は、個体に事前に免疫付与した抗原に対する個体の免疫反応を試験する方法であって、本明細書で開示のような容器の使用(ここで該パルス剤は研究中の抗原である)、並びに
a)上記個体から採取した血液試料を該容器に導入する工程、
b)任意で上記容器を撹拌する工程、
c)所定の期間後に上記核酸安定化剤を上記容器に導入する工程、及び
d)サイトカインmRNAレベルを試験する工程、
を含む、方法である。
【0116】
本発明の一態様によれば、サイトカインはIL−2、IL−4、IL−13、IFN−γの1つ又は複数である。
【0117】
本発明の別の実施の形態は抗原に対する過剰アレルギー誘発性に関して個体を試験する方法であって、本明細書で開示のような容器の使用(ここで該パルス剤は研究中の抗原である)、並びに
e)上記個体から採取した血液試料を該容器に導入する工程、
f)任意で上記容器を撹拌する工程、
g)所定の期間後に上記核酸安定化剤を上記容器に導入する工程、及び
h)IL−4のmRNAレベルを試験する工程、
を含む、方法である。
【0118】
本発明の別の実施の形態は臓器移植の拒絶反応に関して個体を試験する方法であって、本明細書で開示のような容器の使用(ここで該パルス剤は臓器提供者の組織適合抗原である)、並びに
i)上記個体から採取した血液試料を該容器に導入する工程、
j)任意で上記容器を撹拌する工程、
k)所定の期間後に上記核酸安定化剤を上記容器に導入する工程、及び
l)IL−2のmRNAレベルを試験する工程、
を含む、方法である。
【0119】
上記の方法は本発明の装置と共に使用するのに適し得る。例えば本発明の1つの実施の形態は本発明の装置を用いて生体試料管に存在する液体生体試料をパルスする方法であって、
i)U字型の針を用いて生体試料管から対照剤が存在する第2のコンパートメントへと液体生体試料を移す工程、
ii)U字型の針を用いて生体試料管からパルス剤が存在する第1のコンパートメントへと液体生体試料を移す工程、
iii)U字型の針を用いて第3のコンパートメントから生体試料管へと安定化剤を移す工程、
iv)U字型の針を用いて第3のコンパートメントから対照剤及び液体生体試料が存在する第2のコンパートメントへと安定化剤を移す工程、及び
v)U字型の針を用いて第3のコンパートメントからパルス剤及び液体生体試料が存在する第1のコンパートメントへと安定化剤を移し、それにより液体生体試料をパルス対照剤でパルスし、そのようにパルスした試料を安定化させる、移す工程、
を含む、方法である。
【0120】
上記の他の方法、すなわち個体に事前に免疫付与した抗原に対する個体の免疫反応を試験する方法、抗原に対する過剰アレルギー誘発性に関して個体を試験する方法、臓器移植の拒絶反応に関して個体を試験する方法は本発明の装置と共に使用するのに同様に適し得る。
【0121】
本発明の別の態様は抗原で生体試料をパルスし、その後生体試料中の核酸を安定化させ、そのようにパルスした安定化生体試料においてRNA成分を試験する方法であって、
A)上記のようなキット、装置及び/又は方法を用いて、上記生体試料をパルス剤でパルスし、RNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を該生体試料に添加する、パルスする工程、
B)核酸を含む析出物を形成する工程、
C)工程(B)の上記析出物を上清から分離する工程、
D)緩衝液を用いて工程(C)の上記析出物を溶解し、懸濁液を形成する、溶解する工程、
E)自動装置を用いて核酸を工程(D)の上記懸濁液から単離する工程、
F)自動装置を用いてRT−PCR用の試薬混合物を分注/分配する工程、
G)自動装置を用いて工程(F)の分注試薬混合物内で工程(E)で単離した核酸を分注/分配する工程、及び
H)自動化構成で核酸/(G)のRT−PCR試薬混合物を用いて転写産物のin vivoレベルを確定する工程、
を含む、方法に関する。
【0122】
上記の方法は任意で生体試料が曝露される本明細書に記載の対照を利用してもよい。対照は試薬を含有していないか又は対照パルス剤を含有している。該方法はパルス剤への曝露と本質的に同時に、容器を利用する方法と同一のやり方で行う。対照容器の結果は容器で得られた結果を正規化するのに用いることができる。
【0123】
生物学的サンプリング時点でのRNA分解及び/又は遺伝子誘導の阻害はin vivo転写産物レベルを確定するのに使用することができるRNAのプールを取り出すために極めて重要である。完全な形でPAXgene(商標)Blood RNA Systemを用いれば細胞RNAを精製することができるが、本発明によりこのシステム「自体」を用いても実際のin vivoレベルを測定することができないことが分かっている(実施例2を参照されたい)。
【0124】
本発明により、細胞外及び/又は細胞内のRNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を用いて、安定化生体試料から調製したRNAのプールから始めた場合にのみ核酸転写産物のin vivoレベルを測定/確定/定量することができることが示されている。これにより自動装置を用いて核酸の単離を行い、これにより自動装置を用いてRT−PCR反応に使用する試薬混合物及び単離核酸を分注し、これにより自動化構成で転写産物レベルの確定を行う。本発明によれば、このアプローチのみが再現性のあるin vivoでのRNAの定量を可能にする。誤差を避けるために上記方法で行われる工程の数を最小限まで減らす。「誤差」はピペッティング、操作、手技及び/若しくは算出による誤差、又は当業者により起こり得る任意の誤差であり得る。これに関して、本発明は一工程でRT及びPCR反応を行うことを提案している。本発明の方法はより多くの中間工程を組合せるとさらに正確になる。例えば本発明の方法において、工程(A)及び工程(B)を組合せることができる。
【0125】
本発明の別の態様において、RT−PCRに必要となる試薬混合物の分注(dispension)(工程(F))の後、前又は分注と同時に核酸の分注(工程(G))を行うことができる。
【0126】
本発明の方法によれば、OD測定を行う必要がなく、核酸濃度の算出で起こる誤差が排除される。これに対して、完全PAXgene(商標)Blood RNA kitを用いると、OD測定を行う必要がある。このことも本発明による方法が後者のシステムと比較してより信頼性が高く、正確な方法であることを示している。本発明のこのより良好な正確性は表1で表される再現性研究により示されている。
【0127】
本発明の別の態様において、本発明による方法の工程(D)で形成された析出物を溶解する場合、得られた懸濁液を完全に自動化されたRNA抽出法及び分析法と組合せて使用することができる。この組合せだけが実施する方法の正確な最適化及び再現性を可能にし、またパルス後のRNAレベルの正確かつ再現性のある確定を可能にする。PAXgene(商標)Blood RNA Systemのカタログには対応する管を他の単離法と組合せて使用することはできないと記載されており、またキットの様々な構成を説明している詳細な情報は利用不可能であるので、当業者がこのPAXgene(商標)Blood RNA Systemの一部を用い、そこから新規の方法を開発することは明らかではない。
【0128】
完全に自動的なRNAの単離を可能にする商業的システムはほんのわずかしか存在しない。かかる自動核酸抽出装置の例はMagNA Pure LC Instrument(Roche Diagnostics)、AutoGenprep 960(Autogen)、ABI PrismTM 6700 Automated Nucleic Acid Workstation(Applied Biosystems)、任意でWAVE(登録商標)Fragment Collector FCW 200(Transgenomic)を有するWAVE(登録商標)Nucleic Acid Analysis System及びBioRobot 8000(Qiagen)である。
【0129】
本発明はパルス後の転写産物レベルの確定を可能にするためにこれらのシステム全てにおいて出来る限り新鮮であるか、又は安定化した材料(RNA分解が最小である)から始めることが最も重要であることを指摘している。これらのシステム全てに関する問題は、生体試料は従来の添加剤を全く又は1つだけしか含有していない管に回収し、実験室に運ばれるため、mRNAが依然として急速に分解する可能性があることである。結果として、これらの方法を用いたmRNA定量化は管に存在する転写産物の定量化をもたらすことは疑いないが、この定量化はサンプリング時点での細胞/生物学的作用因子に存在する転写産物レベルを表してはいない。この実験的証拠を本発明の実施例1の図32.2に与える。
【0130】
「定量化」という用語はRNAコピー数の正確かつ再現性のある確定を意味するが、本発明に記載のような方法によって単離したRNAを用いれば、定性的又は半定量的な研究も行うことができることは当業者にとっては自明のことである。
【0131】
「転写産物」の定義はメッセンジャーRNA(mRNA)に限定されず、当業者によって存在することが知られる他の種類のRNA分子にも関する。本発明の方法によれば、mRNA及び全RNAを抽出することができる。これによりin vivoでの核RNAの正確な推定を得ることが可能となり、遺伝子転写を評価する強力なツールが与えられる。
【0132】
「核酸」という用語は一本鎖又は二本鎖の核酸配列を表し、上記核酸はデオキシリボヌクレオチド(DNA)若しくはリボヌクレオチド(RNA)、RNA/DNAハイブリッドからなり得るか、又は増幅cDNA若しくは増幅ゲノムDNA又はそれらの組合せであり得る。本発明による核酸配列は当該技術分野で規定の任意の修飾ヌクレオチドも含み得る。
【0133】
本発明によれば、核酸は生体試料において細胞外又は細胞内に存在し得る。
【0134】
本発明の方法の工程(C)における上清からの析出物の「分離」を、遠心分離、濾過、吸収又は当業者に既知の他の手段により行うことができる。上記析出物は細胞、細胞/残屑、核酸又はそれらの組合せを含み得る。この概念の基となるのは、核酸含有作用因子(すなわち生物学的作用因子)が外部の供給源/パルス/シグナルと接触するのを止めることである。これは核酸含有作用因子を固定化、溶解及び/若しくは崩壊させることにより、又は当業者に既知の他の手段により行うことができる。
【0135】
本発明の方法の工程(D)で用いられる緩衝液は上記方法の工程(C)で得られた析出物を溶解する緩衝液であり得る。この緩衝液は核酸含有作用因子の溶解又はさらなる溶解等の付加的な効果を有し得る。
【0136】
用いられる「自動装置」は自動ピペッティング装置又は指定の作用を行うのに好適な、当業者に既知の別の自動装置であり得る。
【0137】
「RT−PCR用の試薬混合物」とは同時に起こるRT及びPCR反応に必要とされる全ての試薬を意味する(明示的に言及している場合、オリゴヌクレオチドを除く)。本発明によれば、「オリゴヌクレオチド」は例えばプライマー又はプローブに見られるような核酸の短いストレッチを含み得る。本発明によれば、この方法はマイクロアレイ又はRNアーゼ保護アッセイと組合せて使用することができる。
【0138】
前に指摘したように、血液等の生体試料の保存により、mRNAレベルの不正確な確定が起こる。実際には、サンプリング場所とRNA分析の場所は別に設けているため、新鮮な試料の分析を実行することはできない。本発明による方法により、in vivo転写産物含有量には何ら影響させず、生体試料を離れた場所から好適な実験室に運ぶことが可能となる。本発明の方法における工程(A)又は工程(B)後に生体試料の移送を行うことができる。
【0139】
通常血液試料を用いる場合、核酸を単離する前に赤血球を選択的に排除する。赤血球はヘモグロビン中で豊富にあり、その存在により粘性の高い溶解物が生じる。そのためこれらの赤血球の除去によりより改善された核酸の単離が可能となる。しかしながら本発明の方法では、核酸を含む不溶性の析出物が即座に形成され、これらの核酸が生体試料の全ての他の成分から分離されるので、この工程が排除される。このことは、他の利点のほかに、本発明の方法がほとんどの従来技術の方法と比較して優れた方法であることを示している。
【0140】
本発明によれば、本発明の方法の工程(D)で用いられる上記緩衝液はグアニジン−チオシアネート含有緩衝液であり得る。
【0141】
本発明の実施例において、PAXgene(商標)Blood RNA Tubeで形成された析出物を、MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)により与えられるような溶解緩衝液中に溶解する。そのため、本発明の方法に使用することができる緩衝液の1つがMagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)により与えられるようなグアニジン−チオシアネート含有溶解緩衝液であることが本発明で提案されている。
【0142】
MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)は全血、白血球及び末梢血リンパ球から質の高い分解されていないRNAの単離を保証するためにMagNA Pure LC Instrumentでの使用のために特別に設計されている。その製品記述によれば、得られたRNAは高感度で定量的なLightCycler RT−PCR反応及び標準的なブロックサイクラー(block cycler)RT−PCR反応、ノーザンブロット法及び他の標準的なRNAの適用に好適である。それにもかかわらず本発明により、この方法「自体」の使用では正確な転写産物レベルの確定をもたらすことができないことが分かっている。本発明はRNA単離前にRNAを安定化させる必要があることを示している(実施例1を参照されたい)。本発明はRNAを安定化させる化合物、及び自動単離/分析手順の使用の特別な組合せを記載している。
【0143】
本発明によれば、工程(D)の析出物がMagNA Pure LC mRNA Isolation Kit Iにより与えられる緩衝液等の溶解緩衝液中に溶解すれば、本発明の方法はMagNA Pure LC mRNA Isolation Kit Iに関して記載されたような手順に従い得る。溶解緩衝液中のカオトロピック塩の存在により試料が溶解された後、ビオチン標識オリゴ−dTと共にストレプトアビジン被覆磁性粒子を加え、mRNAが粒子の表面に結合する。この後に、DNアーゼ消化工程が続く。それから磁石及び幾つかの洗浄工程を用いて、mRNAを未結合物質から単離する。最終的に精製mRNAが溶出する。この単離キットにより、「自立型(walk away)」システムとして純粋なmRNAの自動単離が可能になる。この単離キットにより、遺伝子発現分析に関する全ての主要なその後の適用に好適な質及び完全性が高いmRNAの単離が可能になる。用いられる試料材料に応じて様々なプロトコルが与えられる。MagNA pure LC Instrumentの段階で直接試料を構築することができる。全血を用いる場合、試料に存在する細胞を手動で選択的に溶解する。そのためmRNA単離を後に延ばすか、又はこの機器で直接さらに処理することができる。
【0144】
本発明により、本発明の実施例において本発明による方法の工程(E)、工程(F)及び/又は工程(G)において自動装置としてのMagNA Pure LC Instrument(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)の使用により、パルス剤への曝露後、転写産物の正確なレベルを確定するのに使用することができるRNAのプールがもたらされることが分かっている。細胞残屑からmRNAを分離するために、ストレプトアビジン−ビオチンシステム又は同等のシステムによりオリゴ−dTで被覆された、磁気ビーズのようなRNA捕捉ビーズを本発明の方法に適用することができる。
【0145】
代替的に本発明によれば、ABI PrismTM 6700 Automated Nucleic Acid Workstation(Applied Biosystems)又はこの目的で使用することができる任意の他の自動装置等の他の自動装置を使用することができる。
【0146】
MagNA pure LC mRNA Isolation Kit Iのカタログ(カタログ番号3 004 015)では、このキットに用いられる緩衝液の組成を詳細に言及していない。そのため当業者が、このキットにより与えられる緩衝液によりPAXgene(商標)Blood RNA Tubeの方法により得られるペレットを溶解することが可能になると予測するのは自明のことではない。さらに当業者は、これらの管を対応するPAXgene(商標)Blood RNA Kitとだけ組合せることができると述べているPAXgene(商標)Blood RNA Tubeカタログにより与えられる情報に基づき、両方の方法を組合せることはないであろう(3頁、システムの制限(limitations of the system)を参照されたい;6頁、オーダー情報(orderinginformation)を参照されたい)。
【0147】
上記で指摘したように、血液試料を用いる場合、赤血球を本発明の方法の工程(A)の後に選択的に溶解させる。MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)の設計では、mRNAを白血球から単離する前に赤血球が溶解及び排除される可能性がある。それにもかかわらず、この工程のために、mRNA分解を回避するのに十分迅速には試料を処理することができない。本発明者らはMagNA Pure InstrumentのMagNA Pure mRNA Isolation Kitと併せてPAXgene(商標)Blood RNA Tube中に含有された安定化剤を使用することを決定した。PAXgene(商標)Blood RNA Tubeを使用することにより、MagNA Pure mRNA Isolation Kitの溶解緩衝液中に溶解することのない核酸の析出物が与えられる。これにもかかわらず、本発明者らは実際には溶解が可能であることを見出した。この見解に従って、本発明者らはPAXgene(商標)Blood RNA Tube中での安定化剤の使用と自動RNA単離システムの使用とを組合せた。本発明者らが、この組合せが可能であること、及びこの組合せが生体試料からの正確なmRNA定量化のための有力な技法を与えることを見出したことは驚くべきことである。
【0148】
本発明による方法を用いて単離したRNAは例えばRT−PCR及びNASBA(登録商標)のような核酸増幅技術、発現アレイ及び発現チップ分析、TaqMan(登録商標)技術を含む定量的RT−PCR、cDNA合成、RNアーゼ及びS1ヌクレアーゼ保護、ノーザンブロット分析、ドットブロット分析及びスロットブロット分析、並びにプライマー伸長を含む、広範のその後の適用において使用できる状態である。
【0149】
本発明者らは、リアルタイムPCR等の自動RNA単離及び自動分析法と併せてRNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物の使用により、転写産物のin vivoレベルの確定が可能になることを本発明の実施例1及び実施例2で示した。とはいっても本発明によれば、自動化構成で与えられれば、リアルタイムPCR以外の分析法を適用してもよい。
【0150】
本発明による方法の主な利点は、この方法を使用することにより少量の試料を分析することができることである。このことは少量しか利用可能でない場合、例えば新生児の血液試料を分析する場合又は失血が大量である場合、最も重要である。本発明によれば、100μlと少ない生体試料を用いてRNA定量化を行うことができる。より大量の血液(キットハンドブックによると2.5ml)が要求されるQiagen製のキット(PAXgenTM Blood RNA System)では100μlと少ない試料からのRNAの分析は不可能である。
【0151】
上述のように、本発明の一態様は生体試料をパルス剤でパルスし、その後そのようにパルスした生体試料由来の核酸を安定化させるのに好適なキットである。本発明の別の態様では、上記キットは安定化したパルス生体試料から定量化可能なRNAを単離するために付加的な成分を含む。本発明の一態様によればキットは、
自動RNA単離用の試薬、
上記混合物の自動分注を可能にする同時に起こるRT及びリアルタイムPCR反応用の試薬混合物、又はそれらの別個の化合物、
任意で上記RT−PCT反応を行うための特異的なオリゴヌクレオチド、及び
任意で自動でRNAを単離する方法、自動で試薬混合物を分注し、RT−リアルタイムPCRのために単離核酸を分注する方法、及び自動でRNAを分析する方法を説明している取扱説明書、
等の付加的な成分を含んでいてもよい。
【0152】
本発明の実施例では、本発明者らは一工程でRT−PCR反応を行うためにRoche Diagnostics, Molecular Biochemicals製の「LightcyclerのmRNAハイブリダイゼーションプローブキット」(カタログ番号3 018 954)を適用している。必要となる試薬はオリゴヌクレオチド(Biosourceにより合成された)以外は全てこのキットに含まれている。とはいっても、本発明に記載のようなリアルタイムPCRをApplied Biosystems機器等の他の機器で行うこともできる。キットは本発明による方法の工程(b)で用いることができるグアニジン−チオシアネート含有緩衝液等の緩衝液をさらに含んでいてもよい。
【0153】
生体試料におけるDNA(二本鎖又は一本鎖)の定量化/検出に本発明による方法を用いることもできる。そのため本発明は生体試料からDNAを定量化する方法であって、本発明によるRNAの定量化のために行われるように該方法を用い、RT反応が省略され、工程(a)の化合物はDNAが分解するのも防ぐ、方法にも関する。これらの核酸がRNAよりも安定であるため、その安定化はRNAのものよりも重要ではない。
【0154】
さらに本発明は、本発明による生体試料から定量可能なDNAを単離するキットであって、上記RT反応を行うための試薬混合物/化合物を欠いている、キットに関する。生体試料において正確なDNAレベルを確定する必要がある場面は予期せぬ遺伝子、病原体又は寄生生物による生体試料における感染(複数可)/夾雑(複数可)の「存在」を確定するとき、及び/又は上記感染/夾雑の「レベル」を確定するときであり得る。例えば穀類群(cereal batch)においてトランスジェニック材料の割合を確定するのに該方法を用いることができる。
【0155】
本発明は或る特定の疾患を診断するために、作用因子でパルスした後、生体試料においてin vivoでの生物学的マーカーの核酸の変化をモニタリング/検出するための本発明による装置、キット及び方法の使用にも関する。
【0156】
本発明は化合物(上記化合物は疾患を治癒する薬物の製造に用いられる)をスクリーニングするために、作用因子でパルスした後、生体試料においてin vivoでの生物学的マーカーの核酸の変化をモニタリング/検出するための本発明による装置、キット及び方法の使用にも関する。
【0157】
したがって本発明は本発明による方法により同定可能な化合物にも関する。
【0158】
疾患を治療及び/又は診断するのに本明細書で開示される装置、キット及び方法を用いることができる。治癒又は診断対象の疾患の例は免疫関連疾患である。本発明によれば、免疫関連疾患の例は自己免疫、関節リウマチ、多発性硬化症、1型真性糖尿病、癌(例えば癌免疫療法における)、免疫欠損(例えばAIDSにおける)、アレルギー、移植拒絶又は移植片対宿主疾患(GVHD)(例えば移植における)であり得る。本願に含まれる例は上記適用を詳細に説明している。そのため、免疫調節化合物又は免疫調節剤は上記疾患のうちの1つに影響を与えることができ、免疫関連転写産物又はエピトープ特異的CTL関連若しくはTヘルパーリンパ球関連の転写産物の変化が上記疾患のうちの1つの存在及び/又は状態、及び上記疾患のうちの1つの状態を示し得る免疫学的状態を示し得る。
【0159】
上記免疫関連疾患を研究するために本発明の装置、キット及び方法を用いて定量化することができる核酸は、例えばケモカイン、サイトカイン、成長因子、細胞毒性マーカー、転写因子、TNF関連サイトカイン受容体スーパーファミリーの成員及びそれらのリガンド、アポトーシスマーカー、免疫グロブリン、T細胞受容体並びに既知の又は発見される免疫系の活性化又は阻害に関連する任意のマーカーをコードする核酸であり得る。
【0160】
本発明によれば、上記核酸はIL−1ra、IL−1β、IL−2、IL−4、IL−5、IL−9、IL−10、IL−12p35、IL−12p40、IL−13、TNF−α、IFN−γ、IFN−α、TGF−β及び免疫反応に関与する又は関与しない任意のインターロイキン又はサイトカイン等のマーカーをコードし得る。β−アクチン又はGAPDH(グリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ)等のハウスキーピング遺伝子を内部マーカーとして用いることができる。
【0161】
本発明によれば、上記エピトープ特異的CTL関連又はTヘルパーリンパ球関連の転写産物は、サイトカイン、サイトカイン受容体、サイトトキシン、炎症性又は抗炎症性のメディエーター、TNF関連サイトカイン受容体スーパーファミリーの成員及びそれらのリガンド、Gタンパク質結合受容体及びそれらのリガンド、チロシンキナーゼ受容体及びそれらのリガンド、転写因子、並びに細胞内シグナル伝達経路に関与するタンパク質をコードする核酸である(be)。
【0162】
本発明によれば、上記核酸は、グランザイム、パーフォリン、プロスタグランジン、ロイコトリエン、免疫グロブリン及び免疫グロブリンスーパーファミリー受容体、Fas及びFasリガンド、T細胞受容体、ケモカイン及びケモカイン受容体、タンパク質チロシンキナーゼC、タンパク質チロシンキナーゼA、シグナル伝達兼転写活性化因子(Signal Transducer and Activator of Transcription)(STAT)、NF−kB、T−bet、GATA−3、Oct−2のいずれかに関するマーカーをコードし得る。
【0163】
本発明は、化合物の検出/モニタリング/スクリーニングのための本発明による装置、方法又はキットの使用であって、上記化合物が真核生物、原核生物、ウイルス、ファージ、寄生生物、薬剤(天然抽出物、有機分子、ペプチド、タンパク質、核酸)、治療薬物(medical treatment)、ワクチン及び移植物からなる群から選択され得る免疫調節化合物である、使用も記載している。かかる方法の使用は単一化合物の検出/モニタリング/スクリーニングに限定されない。物質群の相乗効果も研究することができる。
【0164】
本発明は、エピトープ特異的CTL又は免疫関連転写産物の検出/モニタリングのための上記のような装置、キット及び方法のいずれかの使用にも関する。
【0165】
本発明による装置、キット及び方法は、患者の免疫状態を変えやすい薬剤/治療/ワクチンによる患者の治療後のin vivo免疫反応のモニタリングに適用することもできる。本発明によれば、治療中の、又は免疫調節薬剤若しくは免疫調節治療による、若しくはワクチン(治療的又は予防的)による臨床試験に登録された患者の全血における記載の方法によるサイトカインmRNA(ケモカイン、成長因子、細胞毒性マーカー、アポトーシスマーカー、又は既知の若しくは発見される免疫系の活性化に関する任意のマーカーにまで及び得る)の検出は治療法の有効性、安全性及び/又は最終的な副作用を評価するのに使用することができる。
【0166】
本発明は免疫系に影響を与える疾患(癌、自己免疫疾患、アレルギー、移植拒絶、GVHD等)の診断/予後診断のためにin vivoで免疫状態を検出する装置、キット及び方法にも関する。
【0167】
本発明によれば、免疫系に直接的に又は(of)間接的に影響を与える疾患を患う患者の全血における記載の方法によるサイトカインmRNA(ケモカイン、成長因子、細胞毒性マーカー、アポトーシスマーカー、又は既知の若しくは発見される免疫系の活性化に関連する任意のマーカーにまで及び得る)の検出は診断又は予後診断を行う(dress)ことを目的とする。
【0168】
本発明はエピトープ特異的CTLの分析により被験者の免疫状態を変更させることができる作用因子を同定する方法であって、
(a)免疫調節剤(複数可)を被験者に適用する工程、
(b)上記被験者から全血をサンプリングする工程、
(c)上記のような装置を用いて、工程(b)の全血試料に存在する血液細胞を工程(a)で適用されるものと同一/類似及び/又は異なる免疫調節剤でパルスする工程、
(d)RNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を含む管に工程(c)のパルスした血液細胞若しくは工程(b)のパルスしていない血液細胞を回収する工程、又は上記化合物をパルスした/パルスしていない細胞に添加する工程、
(e)核酸を含む析出物を形成する工程、
(f)工程(e)の上記析出物を上清から分離する工程、
(g)緩衝液を用いて工程(f)の上記析出物を溶解させ、懸濁液を作製する、溶解させる工程、
(h)自動装置を用いて工程(g)の上記懸濁液から核酸を単離する工程、
(i)自動装置を用いてRT−PCR用の試薬混合物を分注/分配する工程、
(j)自動装置を用いて工程(i)の分注試薬混合物内で工程(h)で単離した核酸を分注/分配する工程、
(k)自動化構成で工程(j)の分注溶液においてエピトープ特異的CTL関連の転写産物のin vivoレベルを検出/モニタリング/分析する工程、及び
(l)上記被験者の免疫状態を変更させることができる作用因子を同定する工程、
を含み、工程(a)の作用因子が被験者に既に存在する場合には工程(a)が省略される、方法も記載している。
【0169】
本発明は少なくとも上記の工程(c)の実行を可能にする成分を含むキットにも関する。キットは他の工程の1つ又は複数を実行するのを可能にするための付加的な試薬及び取扱説明書を含有していてもよい。本明細書で為される開示は所望のキットを構築するのに要求される成分を当業者に示している。
【0170】
本発明によれば、免疫調節剤(複数可)は上記被験者において疾患の場合、又は移植物が存在する場合に存在し得る。本発明では、「エピトープ特異的CTL関連転写産物」はサイトカイン、サイトカイン受容体、サイトトキシン(グランザイム、パーフォリン等)、TNF関連サイトカイン受容体スーパーファミリーの成員及びそれらのリガンド(例えばFas及びFasリガンド)又は他の細胞受容体をコードする転写産物であり得る。
【0171】
本発明は被験者の免疫状態を変更させることができる作用因子を同定する方法であって、
(a)免疫調節剤(複数可)を被験者に適用する工程、
(b)上記被験者から全血をサンプリングする工程、
(c)上記のような装置又はキットを用いて、工程(b)の全血試料に存在する血液細胞を工程(a)で適用されるものと同一/類似及び/又は異なる免疫調節剤でパルスする工程、
(d)RNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を含む管に工程(c)のパルスした血液細胞若しくは工程(b)のパルスしていない血液細胞を回収する工程、又は上記化合物をパルスした/パルスしていない細胞に添加する工程、
(e)核酸を含む析出物を形成する工程、
(f)工程(e)の上記析出物を上清から分離する工程、
(g)緩衝液を用いて工程(f)の上記析出物を溶解させ、懸濁液を作製する、溶解させる工程、
(h)自動装置を用いて工程(g)の上記懸濁液から核酸を単離する工程、
(i)自動装置を用いてRT−PCR用の試薬混合物を分注/分配する工程、
(j)自動装置を用いて工程(i)の分注試薬混合物内で工程(h)で単離した核酸を分注/分配する工程、
(k)自動化構成で工程(j)の分注溶液において免疫関連の転写産物のin vivoレベルを検出/モニタリング/分析する工程、及び
(l)上記被験者の免疫状態を変更させることができる作用因子を同定する工程、
を含み、工程(a)の作用因子が被験者に既に存在する場合には工程(a)が省略される、方法も記載している。
【0172】
本発明は少なくとも上記の工程(c)の実行を可能にする成分を含むキットにも関する。キットは他の工程の1つ又は複数を実行するのを可能にするための付加的な試薬及び取扱説明書を含有していてもよい。本明細書で為される開示は所望のキットを構築するのに要求される成分を当業者に示している。
【0173】
本発明では、「免疫関連転写産物」は例えばサイトカイン(複数可)、ケモカイン(複数可)、成長因子、細胞毒性マーカー、転写因子、TNF関連サイトカイン受容体スーパーファミリーの成員及びそれらのリガンド、又は既知の若しくは発見される免疫系の活性化に関連する任意のマーカーをコードする転写産物であり得る。本発明によれば、免疫調節剤(複数可)は上記被験者において疾患の場合、又は移植片が存在する場合に存在し得る。本発明による被験者はヒト又は動物起源の両方であり得る。
【0174】
本発明は被験者において免疫系に影響を与える臨床状態を診断/予後診断/モニタリングする方法であって、
(a)上記被験者から全血をサンプリングする工程、
(b)上記のような装置又はキットを用いて、工程(a)の全血試料に存在する血液細胞を被験者に存在するものと同一/類似及び/又は異なる免疫調節剤でパルスする工程、
(c)RNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を含む管に工程(b)のパルスした血液細胞を回収する工程、又は上記化合物をパルスした細胞に添加する工程、
(d)核酸を含む析出物を形成する工程、
(e)工程(d)の上記析出物を上清から分離する工程、
(f)緩衝液を用いて工程(e)の上記析出物を溶解させ、懸濁液を作製する、溶解させる工程、
(g)自動装置を用いて工程(f)の上記懸濁液から核酸を単離する工程、
(h)自動装置を用いてRT−PCR用の試薬混合物を分注/分配する工程、
(i)自動装置を用いて工程(h)の分注試薬混合物内で工程(g)で単離した核酸を分注/分配する工程、
(j)自動化構成で工程(i)の分注溶液において免疫関連の転写産物のin vivoレベルを検出/モニタリング/分析する工程、
(k)免疫関連の転写産物のin vivoレベルの変化を検出/モニタリングする工程、及び
(l)免疫系に影響を与える疾患を診断/予後診断/モニタリングする工程、
を含む、方法も提供する。
【0175】
本発明では、「臨床状態」は様々な疾患又は移植物の存在等の被験者の身体状態の任意の変化である。
【0176】
本発明は少なくとも上記の工程(c)の実行を可能にする成分を含むキットにも関する。キットは他の工程の1つ又は複数を実行するのを可能にするための付加的な試薬及び取扱説明書を含有していてもよい。本明細書で為される開示は所望のキットを構築するのに要求される成分を当業者に示している。
【0177】
他で特に規定のない限り、本明細書で用いられる技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の通常の技術を有する者(当業者)により共通して理解されるものと同じ意味を有する。例示となる方法及び材料を以下に記載するが、本明細書に記載のものと同様の又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することができる。本明細書で言及される刊行物及び他の参考文献は全てその全体が参照により援用される。抵触の場合には、定義を含む本明細書により抵触の調整が行われる。さらに、材料、方法及び実施例は例示的なものにすぎず、限定を意図しない。本発明の他の特徴及び利点は以下の図面、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明による容器及び方法の一例を示す図である。図1aは抗原粒子2が存在する容器1を示す。容器にはシリンジ針用の進入の再封止手段3が取り付けられている。コンテナ4も容器1の一部である。安定化剤5はコンテナに存在しており、容器1の内部とコンテナ4の内部との間の接続が物理的障壁、この場合プラグ25により一時的に遮断されている。物理的な力を伝え、プラグを取り外す手段がプランジャー28の形で与えられている。この例では、プランジャーがキャップ23で蓋されている。図1bでは、生体試料24をシリンジ針6により進入の再封止手段3を貫いて容器へと導入させ、生体試料24が抗原2に曝露される。図1cでは、プランジャーキャップ23が取り外される(26)。図1dでは、シャフト7を導入し、それに圧力を印加することで(27)、プランジャー28にプラグ25を押し出させ、コンテナ4から離す。プラグ25が離れると、安定化剤5が容器1へと放出され、生体試料24及び抗原2と混合される。
【図2】図2は抗原2が存在する本発明による容器1の一例を示す図である。ここで示すように容器は蓋が開いていても(7)、又は閉塞部(closures)、若しくは試料若しくは安定化剤を導入する手段(その例を図3〜図6で示している)が取り付けられていてもよい。容器1の本体は安定化剤が図7及び図8で示されるように存在するコンテナを含んでいてもよい。 図3は、図2で示される種類の容器に適した取り付け部の一例を示す図である。容器の上部7には、シリンジ11で相互ルアー型取り付け部を受けることができるルアー型取り付け部8が取り付けられている。シリンジは本発明の実施形態による生体試料又は安定化剤を含有していてもよい。 図4は、図2で示される種類の容器に適した取り付け部の一例を示す図である。容器の上部7にはシリンジ針を受けることができる再封止可能な隔壁9が取り付けられている。シリンジは本発明の実施形態による生体試料又は安定化剤を含有していてもよい。 図5は、図2で示される種類の容器に適した取り付け部の一例を示す図である。容器の上部7にはスクリューキャップ10を受ける手段が取り付けられている。 図6は、図2で示される種類の容器に適した取り付け部の一例を示す図である。容器の上部7には皮下シリンジ針19が取り付けられている。個体から試料を直接採取するのに容器を使用することができる。 図7は、例えば図2〜図6で示される容器及び取り付け部と組合せて使用することができる容器1の本体の一例を示す図である。抗原2が存在する容器1は安定化剤5が存在するコンテナ12を含む。コンテナの壁は全体又は一部15或る特定の力が印加されると粉砕する材料からなっている。コンテナには、尖った先端14に付随する下降性領域13を含む、コンテナの一部又は全てを粉砕する使用者からの力を伝える手段が取り付けられている。領域13が下降すると、尖った先端14が粉砕性材料15と接触し、材料の粉砕が起こり、そのためコンテナと容器との間の物理的障壁が取り除かれ、使用者が決めた時間で安定化剤を容器1に流入させることが可能になる。 図8は、例えば図2〜図6で示される容器及び取り付け部と組合せて使用することができる容器1の本体の一例を示す図である。抗原2が存在する容器1は安定化剤5が存在するコンテナ16を含む。コンテナの内部と容器との間の接続17は力の印加によって破壊される(breachable)隔壁18により物理的に遮断されている。コンテナ16の壁に圧力をかけると、圧力が隔壁に伝わり、隔壁が破壊され(breech)、このようにして安定化剤5が容器1に進入する。
【図3】図9は、容器と接続していない、本発明のコンテナ20の一例を示す図である。安定化剤5はコンテナ20に存在し、コンテナ20には、相互取り付け部を有する容器との接続に好適なルアー型取り付け部22が取り付けられている(例えば図3及び図11に示されるように)。コンテナ20の壁に圧力をかけることができ、コンテナに力を印加すると安定化剤が放出される。 図10は、容器と接続していない、本発明のコンテナ29の一例を示す図である。安定化剤5はコンテナ29に存在し、コンテナ29には、相互取り付け部を有する容器との接続のためにルアー型取り付け部22が取り付けられている(例えば図3及び図11に示されるように)。容器にはさらにプランジャー30が取り付けられており、そこに力を印加することにより、安定化剤5が放出される。 図11は、ルアー型取り付け部8及び今回、容器から空気を排気させる弁31が取り付けられた容器1を含む、本発明によるキットの一例を示す図である。キットは図10で示したものと同様の、安定化剤5が存在するコンテナ29も含む。容器の取り付け部8はコンテナ22の取り付け部と連結することができる。
【図4】図12a〜図12dは、本発明による対照容器及び方法の一例を示す図である。図12aは対照物質35が存在する対照容器37を示す。対照容器には、シリンジ針用の進入の再封止手段3’が取り付けられている。対照コンテナ4’も対照容器37の一部であり、安定化剤5’は対照コンテナに存在しており、対照容器37の内部と対照コンテナ4’の内部との間の接続は物理的障壁、この場合プラグ25’により一時的に遮断されている。物理的な力を伝え、プラグを取り外す手段がプランジャー28’の形で与えられている。この例では、プランジャーがキャップ23’で蓋されている。図12bでは、生体試料24をシリンジ針6’により進入の再封止手段3’を貫いて対照容器へと導入させ、生体試料24が対照物質35に曝露される。図12cでは、プランジャーキャップ23’が取り外される(26’)。図12dでは、シャフト7’を導入し、それに圧力を印加することで(27’)、プランジャー28’にプラグ25’を押し出させ、コンテナ4’から離す。プラグ25’が離れると、安定化剤5’が対照容器37へと放出され、生体試料24及び対照物質35と混合される。
【図5】図13は、対照物質35が存在する本発明による対照容器37の一例を示す図である。ここで示すように対照容器37は蓋が開いていても(7’)、又は閉塞部、若しくは試料若しくは安定化剤を導入する手段(その例を図14〜図16で示している)が取り付けられていてもよい。対照容器37の本体は安定化剤が図17及び図18で示されるように存在する対照コンテナ12’、16’を含んでいてもよい。 図14は、図13で示される種類の対照容器に適した取り付け部の一例を示す図である。対照容器35の上部7’には、シリンジ11’で相互ルアー型取り付け部を受けることができるルアー型取り付け部8’が取り付けられている。シリンジは本発明の実施形態による生体試料又は安定化剤を含有していてもよい。 図15は、図13で示される種類の対照容器に適した取り付け部の一例を示す図である。対照容器37の上部7’にはシリンジ針を受けることができる再封止可能な隔壁9’が取り付けられている。シリンジは本発明の実施形態による生体試料又は安定化剤を含有していてもよい。 図16は、図37で示される種類の対照容器37に適した取り付け部の一例を示す図である。対照容器37の上部7’にはスクリューキャップ10’を受ける手段が取り付けられている。 図17は、例えば図14〜図16で示される対照容器及び取り付け部と組合せて使用することができる対照容器37の本体の一例を示す図である。対照物質35が存在する対照容器37は安定化剤5’が存在する対照コンテナ12’を含む。対照容器の壁は全体又は一部15’或る特定の力が印加されると粉砕する材料からなっている。対照コンテナには、尖った先端14’に付随する下降性領域13’を含む、対照コンテナの一部又は全てを粉砕する使用者からの力を伝える手段が取り付けられている。領域13’が下降すると、尖った先端14’が粉砕性材料15’と接触し、材料の粉砕が起こり、そのため対照コンテナと対照容器との間の物理的障壁が取り除かれ、使用者が決めた時間に安定化剤を対照容器37に流入させることが可能になる。 図18は、例えば図14〜図16で示される対照容器及び取り付け部と組合せて使用することができる対照容器37の本体の一例を示す図である。対照物質35が存在する対照容器37は安定化剤5が存在する対照コンテナ16’を含む。対照コンテナの内部と対照容器37との間の接続は力の印加によって破壊される隔壁18’により物理的に遮断されている。対照コンテナ16’の壁に圧力をかけると、圧力が隔壁に伝わり、隔壁が破壊され、このようにして安定化剤5が対照容器37に進入する。
【図6】図19は、架橋成員70により図7に記載の容器1と外で接続されている図17に記載の対照容器37を含む、本発明の装置の一例を示す図である。この装置は生体試料を安定化剤5の前に第1の物質2及び対照物質35に別々に送達させる。反応試料及び対照試料が並んだ状態に保たれるので、対照試料と反応試料とが混合することにより生じ得る誤差は避けられる。 図20は、架橋成員70により図8に記載の容器1と外で機械的に接続されている図18に記載の対照容器37を含む、本発明の装置の一例を示す図である。この装置は生体試料を安定化剤5の前に第1の試料2及び対照物質35に別々に送達させる。反応試料及び対照試料が並んだ状態に保たれるので、対照試料と反応試料とが混合することにより生じ得る誤差は避けられる。
【図7】図21aは、液体生体試料を受け取るための本発明の装置30の一例の概略図である。この装置は上記試料を第1の物質及び対照物質に、その後核酸安定化剤に別々に曝露するのを容易にする(the devicecomprising)。この装置は第1の物質2が存在する第1のコンパートメント32と、対照物質35が存在する第2のコンパートメント34と、安定化剤5が存在する第3のコンパートメント36と、円筒状の開口部である生体試料管用の支持部52とを含む。それぞれのコンパートメントは固体材料ブロック44の開口部として形成される。それぞれのコンパートメントは皮下注射用の管状針のような中空針を用いて破壊し得る封止可能な隔壁38、40、42を備えた蓋46、48、50により封止されている。この装置はさらに移送チューブ用の支持部を備えており、該支持部は移送チューブの針の先端を受け取るように適合した2つのスロット54、56の形を取っている。 図21bは、A−A’ラインに沿った本発明の装置の断面を示す。これは第2の(対照)コンパートメント34及び第3の(安定化剤)コンパートメント36の内容物を詳細に示している。
【図8】図22は、中空の細長いチューブ64を含む、本発明の移送チューブ60の断面図を示す。ここでチューブの各端は中空の(例えば管状の又は皮下注射)針62、66を備えている。移送チューブ60は一方の針62からチューブ64を通ってもう一方の針66へと液体を流すことができるように構成されている。示された実施形態では、針62、66の長さは異なっている。 図23は、中空の可撓性の細長いチューブ82を含む、本発明の圧力チューブ88の断面図を示す。ここで管の一方の端は中空の(例えば管状の又は皮下注射)針80と接続され、もう一方の端85は(圧力又は排出)気体媒質(例えば空気)ポンプ86の排気口(outlet)連結部87と接続するのに適している。圧力チューブ88は容器又はコンパートメントの隔壁に穴を開け、気体媒質(例えば空気)の排出又は導入によりその中で異なる圧力を生じさせるように構成されている。
【図9】図24は、本発明の圧力チューブ88及び移送チューブ60を含む複合セットの断面図を示す。1つ又は複数のジョイント84を用いて、移送チューブ60の一方の針62を圧力チューブ88の針80に接続し、これにより針62、80の両方が平行配置になる。このため、針62、80の両方で同時に隔壁に穴が開けられる。 図25は、寸法を示した、本発明の移送チューブ60の断面図を示す。Dは2つの針62、66の間の最小距離を表す。L1は一方の針、特に直線部分の長さであり、L2はもう一方の針、特に直線部分の長さであり、L3は針62、66の直線部分からチューブ64に向かって伸びる第1の仮想直線65の距離であり、この距離L3は針の直線部分の終点67と、第2の仮想直線63(該第2の仮想直線63はチューブ64の上部から横に伸びている(intersects))が第1の仮想直線65と交差する点69とで規定される。
【図10】図26は、使用中の図21aで示された装置30の一例を示す図である。液体生体試料(例えば血液、尿)を含む生体試料管58を管支持部52に挿入する。移送チューブ60の一方の端を隔壁61を通して生体試料管58に挿入し、もう一方の端を隔壁40を通して第2の(対照)コンパートメント34に挿入する。液体生体試料を生体試料管58から移送チューブ60に沿って矢印の方向に第2のコンパートメント34へと流し、ここで液体生体試料は対照物質35と接触する。圧力チューブ88(図示せず)の使用により液体生体試料を押し出すことができ、圧力チューブの針で第2のコンパートメント34の隔壁38に穴を開け、真空を生じさせるか、又は生体試料管58の隔壁61に穴を開け、その中の圧力を増大させることができる。 図27は、使用中の図21aで示された装置30の一例を示す図である。移送チューブを取り外し、第2のコンパートメント34にあった移送チューブ60の端を第1のコンパートメント32に位置するように隔壁38を通して再挿入しているが、生体試料管58にあった移送チューブ60の端はそのままにする。液体生体試料を生体試料管58から移送チューブ60を通して矢印の方向に第1のコンパートメント32へと流し、ここで液体生体試料は第1の物質2(パルス剤)と接触する。圧力チューブ88(図示せず)の使用により液体生体試料を押し出すことができ、圧力チューブの針で第1のコンパートメント32の隔壁40に穴を開け、真空を生じさせるか、又は生体試料管58の隔壁61に穴を開け、その中の圧力を増大させることができる。
【図11】図28を示し、使用中の図21aで示された装置30の一例を示す図である。これまで生体試料管58と接触していた移送チューブ60の端を隔壁42を通して第3の(安定化剤)コンパートメント36に挿入し、移送チューブ60のもう一方の端を隔壁61を通して生体試料管58に挿入するように、移送チューブ60を取り外し再挿入することによる、液体生体試料の移送の後の移送チューブ60の洗浄を示す。液体安定化剤5を第3のコンパートメント36から移送チューブ60を通して矢印の方向に生体試料管58へと流し、ここで廃棄として又はさらなる処理のために液体安定化剤を保存する。圧力チューブ88(図示せず)の使用により液体安定化剤5を押し出すことができ、圧力チューブの針で第3のコンパートメント36の隔壁42に穴を開け、その中の圧力を増大させるか、又は生体試料管58の隔壁61に穴を開け、真空を生じさせることができる。洗浄後、試料をインキュベートさせることに留意する。インキュベート期間及び温度はパルス剤、試料、並びに試薬の容量及び濃度を含む幾つかの因子によって変わる。一般的指針としては、37℃で30分〜16時間、最も一般的には2時間〜4時間インキュベーションを行うことができる。
【図12】図29は、使用中の図21aで示された装置30の一例を示す図である。一方の端を隔壁42を通して第3の(安定化剤)コンパートメント36へと挿入し、もう一方の端を隔壁40を通して第2の(対照)コンパートメント34に挿入するように、移送チューブ60を取り外し、再挿入する。液体安定化剤5を第3のコンパートメント36から移送チューブ60を通して矢印の方向に第2のコンパートメント34へと流し、ここで液体安定化剤は生体試料と対照物質2との混合物と接触する。圧力チューブ88(図示せず)の使用により液体安定化剤5を押し出すことができ、圧力チューブの針で第3のコンパートメント36の隔壁42に穴を開け、その中の圧力を増大させるか、又は第2のコンパートメント34の隔壁40に穴を開け、真空を生じさせることができる。 図30は、一方の端を隔壁42を通して第3の(安定化剤)コンパートメント36へと挿入し、もう一方の端を隔壁38を通して第1の(パルス反応)コンパートメント32に挿入するように、移送チューブ60を取り外し、再挿入する。液体安定化剤を第3のコンパートメント36から移送チューブ60を通して矢印の方向に第1のコンパートメント32へと流し、ここで液体安定化剤は生体試料と第1の物質35との混合物と接触する。圧力チューブ88(図示せず)の使用により液体安定化剤5を押し出すことができ、圧力チューブの針で第3のコンパートメント36の隔壁42に穴を開け、その中の圧力を増大させるか、又は第1のコンパートメント32の隔壁38に穴を開け、真空を生じさせることができる。一連の流れ(sequence)の最後には、第1のコンパートメント及び第2のコンパートメントの両方が生体試料及び安定化剤を受けている。移送チューブ60及び用いられる場合には圧力チューブ88はロボットにより、例えば或る程度自由に動くロボットアームの使用により又はX−Yロボットテーブルにより作動することができる。ロボットによる作動が用いられる場合、移送チューブは通常、移送チューブ60を掴み、正確に配置することができる剛体チューブ64を含む。
【図13】図31は、所与の実施例で従う戦略を示す。図31.1は破傷風トキソイドに対する免疫反応のex vivoモニタリングを示す図である。図31.2は実施例3で従う戦略を示す図である。図31.3は実施例4で従う戦略を示す図である。図31.4は実施例5で従う戦略を示す図である。
【図14】図31は、所与の実施例で従う戦略を示す。図31.1は破傷風トキソイドに対する免疫反応のex vivoモニタリングを示す図である。図31.2は実施例3で従う戦略を示す図である。図31.3は実施例4で従う戦略を示す図である。図31.4は実施例5で従う戦略を示す図である。
【図15】図31は、所与の実施例で従う戦略を示す。図31.1は破傷風トキソイドに対する免疫反応のex vivoモニタリングを示す図である。図31.2は実施例3で従う戦略を示す図である。図31.3は実施例4で従う戦略を示す図である。図31.4は実施例5で従う戦略を示す図である。
【図16】図31は、所与の実施例で従う戦略を示す。図31.1は破傷風トキソイドに対する免疫反応のex vivoモニタリングを示す図である。図31.2は実施例3で従う戦略を示す図である。図31.3は実施例4で従う戦略を示す図である。図31.4は実施例5で従う戦略を示す図である。
【図17】図32.1は、末梢血中のIFN−γ及びIL−10のmRNAの自然産生に関するRT−PCR結果を示す図である。述べられているように6人の異なる健常なボランティア(カラム1〜カラム6)の全血及びPBMCから全RNAを抽出した。全血:試料回収後すぐに0.6mlの全血を6mlのCatrimox−14(商標)と混合した。それから試料を12000gで5分間遠心分離した。得られた核酸ペレットを水で慎重に洗浄し、1mlのTripure(商標)に溶解した。その後Tripure(商標)の製造業者の取扱説明書に従ってRNA抽出を行った。PBMC:標準的な手順に従って、15mlのヘパリン添加静脈血から細胞を調製し、RNA抽出のために1mlのTripure(商標)に溶解した。記載のように(Stordeur et al., (1995)、Pradier et al., (1996))、1μgの全RNAから全ての試料でIFN−γ、IL−10及びハウスキーピング遺伝子HPRTのRT−PCRを行った。
【図18】図32.2は、全血におけるIFN−γ及びIL−10のmRNA安定性に関するリアルタイムPCR結果を示す図である。クエン酸静脈血の試料を健常なドナーから回収した。血液回収後すぐに及び5時間まで1時間ごと、この試料からの100μlのアリコートを900μlのCatrimox−14(商標)と混合した。それぞれのアリコートを採取する間、血液試料は簡単に室温に維持した。得られた核酸ペレット(図13.1の説明文を参照されたい)を「MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I」(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)からの300μlの溶解緩衝液に溶解した。製造業者の取扱説明書に従いMagNA Pure LC Instrument(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)を用いてmRNAを抽出した(最終溶出容量:100μl)。5μlのmRNA調製物から始めて、「Lightcycler−RNA Master Hybridisation Probes Kit」(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)に記載の標準的な手順に従って一工程で逆転写及びリアルタイムPCRを行った。プライマー配列及びプローブ配列並びにPCR条件はStordeur et al, J Immunol Methods, 259 (1-2): 55-64, 2002)に記載されている。縦軸は、1β−アクチンの1×107コピー当たりのmRNAコピー数、横軸は血液回収後の時間を示す。
【図19】図33を示し、本発明により提案された方法と比較したPreAnalytiXにより示唆された全血からのRNA抽出法の模式的な比較を示す図である。 PAXgene Tubeにおける血液サンプリング=2.5mlの血液+6.9mlの安定化剤、そこから本発明者らは、1)Qiagen抽出のために4.7ml(1.25mlの血液を含有する)又は2)MagNA Pure抽出のために0.4ml(0.11mlの血液を含有する)を採取した。遠心分離後、核酸ペレットは1)と2)各々以下の通りであった:1)PAXgene+Qiagenキット・・・水で洗浄し、PAXgene blood RNA Kit(Qiagen)の緩衝液BRIに溶解した。全RNAの抽出をPAXgene blood RNA Kitハンドブックに記載のように行った。 ↓光学密度で測定される全RNA濃度。500ng(濃度に応じて様々な容量)を逆転写に使用した。この逆転写及びリアルタイムPCRを(Stordeur et al., J Immunol Methods, 259(1-2): 55-64, 2002)に記載のように行った。結果:表3.1を参照されたい推奨手順2)PAXgene+MagNA Pure・・・MagNA Pure mRNA isolation kitに含有される溶解緩衝液に溶解した。抽出をRocheにより推奨されるようにMagNA Pure instrumentで行った。 ↓mRNA濃度を測定する必要はない。5μlを、LC RNA Masterハイブリダイゼーションキット(Roche)を用いて一工程で行った逆転写及びリアルタイムPCRに使用した。リアルタイムPCR条件は(Stordeur et al., J Immunol Methods, 259(1-2): 55-64, 2002)に記載の通りであった結果:表3.2を参照されたい提案手順
【図20】図34を示し、破傷風トキソイドによるサイトカイン血液mRNAのex vivo誘導を示す図である。破傷風トキソイド(10μg/ml、Aventis)を7年前に破傷風に対するワクチン接種を行った健常なボランティアから回収した500μlの全血に添加した。37℃で5% CO雰囲気で様々な期間の後、PAXgene tubeに含有された1.4mlの試薬を添加した。300μlの得られた溶解物を、MagNA Pure instrumentで全mRNAを単離するのに用い、本発明に記載のようにRT−PCRを行った。図は、縦軸は、アクチンmRNAコピー100万個当たりのmRNAコピー数を示し、横軸は時間を示す。
【図21】図35を示し、LPSによる全血刺激後のIL−1β及びIL−1RAのmRNA動態を示す図である。200μlのヘパリン添加血液を、0時間(培養開始時)、0.5時間、1時間、2時間及び6時間、10ng/mlのLPSと共にインキュベートした。培養の終了時に、500μlのPAXgene(商標)tubeの試薬を全細胞溶解及び核酸析出のために添加した。それからIL−1β、IL−1RA及びβ−アクチンのmRNAのRT及びリアルタイムPCRを本発明で記載のように一工程で行った。結果をβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのmRNAコピー数で表す。5つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。図は、横軸は、LPS添加後の時間を示す。
【図22】図36を示し、線形回帰:開始時の血液容量でのmRNAコピー数。様々な全血容量(X軸、20μl〜200μlの範囲)を10ng/mlのLPSの存在下で6時間培養した。培養終了時に、IL−1β及びβ−アクチンのmRNAのRT及びリアルタイムPCRを本発明で記載のように行った。Y軸は生の(raw)コピー数を表す。線は線形回帰によるものである。6つの代表的な実験のうちの1つを示す。図は、横軸は、血液容量を示す。
【図23】図37を示し、破傷風トキソイドによる全血刺激後のmRNAサイトカイン動態を示す図である。少なくとも5年前に破傷風に対するワクチン接種を行った5人の健常なボランティアからヘパリン添加血液を採取した。それぞれのドナーで、200μlの全血アリコートを、0時間(培養開始時)、4時間、8時間、16時間、24時間及び48時間、10μg/mlの破傷風トキソイドと共にインキュベートした。培養の終了時に、PAXgene(商標)tubeに含有された500μlの試薬を添加し、本発明の方法を用いて様々な転写産物を定量した。結果をβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのmRNAコピー数で表す。5つの独立した実験の平均及び平均の標準誤差を示す。
【図24】図38を示し、LPSの静脈注射後の血液サイトカインmRNAのin vivo調節を示す図である。5人の健常なボランティアに4ng/kgのLPSを単回投与により注射した。LPS注射の10分前、0.5時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後及び6時間後、2.5mlの血液試料をPAXgene(商標)tubeに採取した。本発明の方法に従ってサイトカインmRNAの定量化を行った。結果をβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのmRNAコピー数で表す。それぞれの時点での平均及び平均の標準誤差を示す。図は、横軸は、LPS注射後の時間を示す。
【図25】図39を示し、抗破傷風ワクチン応答の追跡調査を示す図である。抗破傷風リコールを受ける6人の健常なボランティアが選択された。10μg/mlの破傷風トキソイドを用いて(黒円(full circles))又は用いずに(白円(open circles))20時間培養した全血からIL−2のmRNAレベルを定量化し、リコール時(0日目)、リコールの14日前、3日後、7日後、14日後、21日後及び90日後(X軸)、定量化を行った。結果をβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのmRNAコピー数(Y軸)で表す。6つのパネルのそれぞれ(1〜6と数字が付けられている)は6人の異なるドナーからの個々のデータを表す(1つのパネル当たり1つのドナー)。図は、横軸は、ワクチン投与前/後の日数を示す。
【図26】図40を示し、血液サイトカインmRNA発現を分析するための実施例7、実施例8、実施例9、実施例10及び実施例11で従う手順の概要を示す図である。・試験される潜在的な免疫モジュレータ(抗原、アレルゲン、細胞、生体異物・・・)の存在下での全血試料のインキュベーション・PAXgene tubeに含有される試薬を用いた、血液細胞溶解及びmRNA安定化・自動装置(Magna Pure instrument(Roche Diagnostics))を用いた、一工程RT−PCRのための自動mRNA抽出及び反応混合物の調製・Lightcycler instrument(Roche Diagnostics)を用いたリアルタイムPCRによるサイトカインmRNAレベルの定量化
【図27】図41を示し、MagNA Pureでの自動mRNA抽出及び試薬混合物調製:開始生体材料の量と実測コピー数との間の直接的な相関関係を示す図である。Y軸は生のコピー数を表す。線は線形回帰によるものである。図は、縦軸は、mRNAコピー数を示し、横軸は、PBMC数を示す。
【図28】図42を示し、MagNA Pureでの自動mRNA抽出及び試薬混合物調製:開始生体材料の量と実測コピー数との間の直接的な相関関係を示す図である。Y軸は生のコピー数を表す。線は線形回帰によるものである。
【図29】図43を示し、癌免疫療法に登録した患者の症例レポートの要約を示す図である。1999年7月に黒色腫と診断された。2001年8月に、複数転移が明らかになり、2002年4月の精巣摘除(orchydectomy)の直後、癌ワクチンを受けるために患者を登録した。ワクチン接種はアジュバントと組合せたMAGE−3精製タンパク質(黒色腫細胞により特異的に発現される抗原)の数回の注射からなっていた。*1999年7月:右肩甲骨の黒色腫。切除*2001年8月:SC M+ 腕、背部、腹部、右精巣*2002年4月:右精巣摘出*2002年4月:ワクチン接種前点検*2002年5月:ワクチンプログラム開始
【図30】図44を示し、ワクチン接種プロトコル及びリアルタイムPCRによる免疫反応のモニタリングの概略図である。全血をin vitroで刺激し、MAGE−3に対する免疫反応を評価した。患者は3回のワクチン注射を受け、9週間、1週間に1回血液試料を採取した。200μlのそれぞれの患者の全血試料のアリコートを10μg/mlのMAGE−3タンパク質又は陰性対照として10μg/mlのTRAP(熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)抗原)の存在下でインキュベートした。培養終了時に、PAXgene tubeに含有された試薬を添加し、実施例6に記載のようにIL−2のmRNAを定量化した。結果を図45に示す。* 患者番号3は抗MAGE−3ワクチン(MAGE−3+アジュバント)の3回の注射を受けた ↓* 9週間、1週間に1回、ヘパリン添加血液 ↓* MAGE−3又はTRAP抗原との200μlの全血の一晩インキュベーション ↓* Magna Pure及びLightcyclerを用いたmRNA抽出及びRT−PCR
【図31】図45を示し、患者番号3におけるMAGE−3ワクチン接種後の全血におけるIL−2のmRNAを示す図である。MAGE−3ワクチンの追加免疫(boost)の後、MAGE−3刺激全血においてより高いIL−2のmRNAレベルが見られる。Y軸はβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのIL−2のmRNAコピー数を表し、X軸は血液試料を採取した週を表す。ワクチン注射液を0週目、2週目及び6週目に投与した。黒色の棒グラフ(solid columns)はMAGE−3の存在下でインキュベートした全血に関するものであり、斜線棒グラフ(hatched columns)はTRAPの存在下でインキュベートした全血に関するものである。
【図32】図46を示し、全血のin vitro刺激:アレルゲンに対する免疫反応の評価を表す図である。アレルゲンとの全血インキュベーション後のIL−4のmRNA定量化に関して実験を行った。ネコにアレルギー性の被験者と2人の健常な被験者とから血液試料を採取した。それから全血を様々な培養時間で、ネコアレルゲン(すなわちFeld1)の非存在下又は存在下でインキュベートし、その終わりにPAXgene tubeに含有された試薬を添加し、実施例6に記載のようにIL−4のmRNAを定量化した。結果を図47に示す。* ネコにアレルギー性の患者又は非アレルギー性の対照 ↓* ヘパリン添加血液 ↓* +ネコアレルゲン(Feld1) ↓* 様々な培養期間後、+PAXgene tubeの試薬 ↓* MagNA Pure及びLightcyclerを用いたmRNA抽出及びRT−PCR
【図33】図47を示し、全血のin vitro刺激:Feld1に対する免疫反応の評価を表す図である。Feld1アレルゲンはアレルギー性ではない被験者と比較して、ネコに対してアレルギー性の被験者由来の全血においてより高いIL−4のmRNAレベルを有意に誘導する。Y軸はβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのIL−4のmRNAコピー数を表し、X軸は様々なインキュベーション時間を表す。緑色の棒グラフはアレルゲンと共にインキュベートした正常な全血に見られるIL−4のmRNAレベルを表し、赤色の棒グラフ(Feld1の存在下でインキュベートした血液)及び黄色の棒グラフ(Feld1を用いずにインキュベートした血液)はアレルギー性の被験者の全血に見られるIL−4のmRNAレベルを表す。非アレルゲン性+アレルゲン(1)、非アレルゲン性+アレルゲン(2)、アレルゲン性+アレルゲン、アレルゲン性、非アレルゲンを示す。
【図34】全血のin vitro刺激:Feld1に対する用量応答 図48を示し、この全血系におけるFeld1に対する免疫反応が特異的で用量依存性であることを示す図である。アレルギー性の被験者由来の全血を2時間、1)漸増濃度のFeld1の存在下で(斜線の棒グラフ)、2)10μg/mlの別のアレルゲンであるβ−ラクトグロブリン(BLG)の存在下で(水平破線の棒グラフ)、3)架橋IgEの存在下で(点線の棒グラフ)インキュベートした。Y軸はβ−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのIL−4のmRNAコピー数を表す。
【図35】Feld1による全血刺激後のIL−4のmRNAレベルが健常な対照と比較してアレルギー性の患者でより高い 図49を示し、Feld1による全血刺激後のIL−4のmRNAレベルが健常な対照と比較してネコに対してアレルギー性の患者でより高くなっていることを示す図である。スライド9〜スライド11に記載の実験を10人の健常な被験者(CTR棒グラフ)及び10人のネコに対してアレルギー性の患者(ALL棒グラフ)由来の血液試料で繰り返した。全血試料を2時間、10μgのFeld1の存在下で、又は陽性対照としての架橋IgEの存在下でインキュベートした。平均及び平均の標準誤差を示す。図は、縦軸は、相対的なIL−4のmRNAコピー数を示す。健常な対照とネコにアレルギー性の患者を示す。
【図36】図50を示し、全血のin vitro刺激:GAD65に対するT細胞応答の評価を示す図である。精製GAD65タンパク質との全血インキュベーション後のIL−2のmRNA定量化のために行った実験の概略図である。6人の1型糖尿病患者から、及び5人の健常な被験者から血液試料を採取した。それから全血を18時間、10μg/mlのGAD65を用いて又は用いずにインキュベートし、それからPAXgene tubeに含有された試薬を添加することにより培養を停止させた。その後実施例6に記載のように、IL−2のmRNAレベルを定量化した。結果を図51に示す。* 1型糖尿病患者又は健常な対照 ↓* ヘパリン添加血液 ↓* 18時間、+GAD65 ↓* +PAXgene tubeの試薬 ↓* MagNA Pure及びLightcyclerを用いたmRNA抽出及びIL−2のmRNAに関するRT−PCR
【図37】図51を示し、全血のin vitro刺激:GAD65に対するT細胞応答の評価を示す図である。1型糖尿病患者由来の全血が健常な被験者と比較してGAD65刺激後により高いIL−2のmRNAレベルを示す。結果をβ−アクチンに対して補正した後でGAD65を用いず培養した全血で見られたコピー数に比べて算出されたIL−2のmRNAコピー数で表す。対数尺度を用いる。平均及び平均の標準誤差を示す。健常なドナー:CTR棒グラフ、自己免疫糖尿病患者:PAT棒グラフ。図は、縦軸は、IL−2のmRNAの相対的コピー数(対数尺度)を示す。
【図38】図52を示し、アロ反応性の免疫反応のモニタリング:全血+樹状細胞系におけるIL−2のmRNAの定量化を示す図である。アロ反応性のT細胞応答を評価するために関連性のない樹状細胞(DC)との全血インキュベーション後のIL−2のmRNA定量化のために実験を行った。2人の関連性のない健常なボランティア(MT及びMA)由来の樹状細胞をIL−4及びGM−CSFの存在下でin vitroで発生させた。それぞれのドナー由来の全血試料を他のドナーの樹状細胞集団の存在下で(1)又はドナー自身の樹状細胞の存在下で(2)培養した。両者のドナー由来の全血試料(3)及び両方の樹状細胞集団(4)を混合した。12時間のインキュベーション後、PAXgene tubeに含有された試薬を添加することにより培養を停止させた。その後実施例6に記載のように、IL−2のmRNAレベルを定量化した。結果を図53に示す。英語は、ヘパリン添加血液、、樹状細胞、健常なボランティア、12時間のインキュベート等を示す。
【図39】図53を示し、アロ反応性の免疫反応のモニタリング:全血+樹状細胞系におけるIL−2のmRNAの定量化を示す図である。全血におけるIL−2のmRNA定量化によるアロ反応性のT細胞応答の評価である。β−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのIL−2のmRNAコピー数を示す。条件は左から順に(from left to right):ドナーMA由来の全血単独、ドナーMA由来の全血+ドナーMA由来のDC、ドナーMA由来の全血+ドナーMT由来のDC、ドナーMT由来の全血単独、ドナーMT由来の全血+ドナーMT由来のDC、ドナーMT由来の全血+ドナーMA由来のDC、ドナーMT由来の全血+ドナーMA由来の全血、ドナーMT由来のDC+ドナーMA由来のDC。図は、縦軸は、β−アクチンのmRNAコピー100万個当たりのIL−2のmRNAコピー数を示す。
【実施例】
【0179】
実施例1:末梢血におけるサイトカインmRNAの自然産生の分析
末梢血細胞により合成されたサイトカインmRNAの定量化により、「末梢の免疫則(statute)」を推定することが可能になる。しかしながら、mRNAがヌクレアーゼ消化に対して保護されており、遺伝子転写が阻害されている新鮮な全血試料からしか正確な定量を行うことができない。この注記(note)で述べているように、シュウ酸テトラデシルトリメチルアンモニウム等の界面活性剤試薬の使用により、正確な定量が可能になっている。末梢血で自然に産生されたIL−10及びIFN−γのmRNAの定量化のためにRT−PCRを行った。この結果は同じ個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)と比較して全血において顕著に高いIFN−γ転写産物レベルを示したが、IL−10のmRNAでは有意な差は観察されなかった。血液中で観察されたより多量のIFN−γのmRNAは少なくともmRNA分解に起因し得る。リアルタイムPCR技法を用いて、実際に血液のIFN−γのmRNAがin vitroで迅速に分解され、t1/2が室温でおよそ1時間に相当することが実証され得る。
【0180】
最近になってHartelet al.が末梢血中のサイトカインmRNAの自然産生に対する細胞精製手順の影響を分析した(Hartel etal., 2001)。Hartel et al.は新鮮な状態で単離した末梢血単核細胞(PBMC)が同じ個体から新鮮な状態で回収した全血よりも高いレベルのIL−2、IL−4及びTNF−αのmRNAを発現したが、IFN−γのmRNAレベルでは差異が観察されなかったことを示した。6人の異なる個体におけるIFN−γの比較を行い、異なる結果を見出した。全てのドナーの全血においてIFN−γのmRNAの強い発現が観察されたが、この発現はPBMCでは明らかに低減している(図32.1)。Hartel et al.の実験が定量的リアルタイムPCR法を使用していたにも関わらず、得られた結果とHartelet al.の実験の結果とのこの差異は、全血から全RNAを単離するのに用いられた手順に関係し得る。Hartelet al.は等張の塩化アンモニウム処理により2時間以内に溶血したヘパリン添加血液を使用した。本発明の方法では、抗凝血剤の使用を避け、血液と直接混合するCatrimox−14(商標)(Qiagen, Westburg, Leusden, The Netherlands)と呼ばれるカチオン性界面活性剤であるシュウ酸テトラデシルトリメチルアンモニウムを使用した(Dahle and Macfarlane, (1993)、Schmidt et al., (1995))。さらにこの試薬は試料回収後すぐに核酸析出及びヌクレアーゼ阻害を誘導する。これにより、in vivoでのmRNA状態に最も近いと考えられる全RNA調製物が与えられる。このことは、3’非翻訳領域に位置する高AU配列により内因性ヌクレアーゼに対して感受性となるサイトカインmRNAに特に重要である。リアルタイムPCR法を用いて、実際末梢血のIFN−γのmRNAが自然にかつ迅速に分解され、そのレベルが血液回収の1時間後には既におよそ50%低減することが実際に観察された。しかしながら、IL−10のmRNAレベルが血液サンプリング後、少なくとも5時間は安定であることが見出されたため、全てのサイトカインでこの現象が当てはまるとは限らない(図32.2)。さらにPBMCのIL−10のmRNAレベルと比較して、全血のIL−10のmRNAレベルに有意な差は見られなかった(図32.1)。
【0181】
Catrimox−14(商標)溶解後に得られた核酸ペレット(図32.1の説明文を参照されたい)をChomczynski and Sacchi (1987)に記載のグアニジウム/チオシアネート溶液、及びその市販版、例えばTripure(商標)(RocheDiagnostics, Molecular Biochemicals, Brussels, Belgium)に溶解することができ、これによりこの界面活性剤の使用が特に容易になる。これはCatrimox−14(商標)による第1の工程以外は、RNA単離手順が全血及び細胞で同じであることを意味している。代替的に、PAXgene(商標)Blood RNA Tube(Qiagen, Westburg, Leusden, The Netherlands)をCatrimox−14(商標)の代わりに用いることができる。この場合、図32.2の説明文でCatrimox−14(商標)に関して記載されたように、得られたペレットを「MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I」の溶解緩衝液に溶解することができる。ヒト単核血液細胞によるIL−10のmRNAの自然産生の特徴付け(Stordeur et al., (1995))及びOKT3モノクローナル抗体によるin vivoでの組織因子のmRNA誘導のモニタリング(Pradier et al., (1996))はCatrimox−14の使用が上手くいった2つの例である。イオノフォアA23187+ホルボールミリスチン酸アセテートの全血への添加後にも強いIL−2のmRNA誘導が観察され(データ図示せず)、全血でのin vitro研究でそれを利用することが提案された。
【0182】
本実施例で為された観察により、末梢血サイトカインmRNAを正確に定量化するために、出来る限り迅速に溶解した全血からRT−PCRを行なうことの重要性が強調されている。この目的のために、リアルタイムRT−PCRと共にCatrimox−14又はPAXgene(商標)Blood RNA Tubeに含有された添加剤等の試薬の使用が今日までの最良な手順を表していると考えられる。こうすることにより、イオノマイシン又はフィトヘムアグルチニン等のin vitroでの強い刺激を使用せずに末梢血細胞の自然状態の研究が可能になる。
【0183】
実施例2:PAXgene(商標)Blood RNA Systemと提案されている本発明による方法との比較
「PAXgene(商標)Blood RNA System」とは「PAXgene(商標)Blood RNA Tube」と「PAXgene(商標)Blood RNA Kit」との組合せを意味する。「Qiagen法」とは「PAXgene(商標)Blood RNA Kit」を意味する。
【0184】
Stordeur et al, J Immunol Methods, 259 (1-2): 55-64, 2002に記載の実験証拠に基づき、本発明は全血からmRNAを単離する新規の手順を提案しており、これにより容易でかつ再現性のある方法を用いて、in vivo転写産物レベルを決定することが可能である。PAXgene(商標)blood RNA System及び本発明による方法を図33で概略的に比較している。
【0185】
材料及び方法:
PAXgene(商標)Blood RNA System(Qiagen)により推奨されるように、PAXgene(商標)Blood RNA Tubeに直接回収した末梢静脈血で全ての実験を行った(すなわち2.5mlの血液を6.9mlの未知の試薬を含有する管内に真空回収した)。溶解完了後、管の内容物を2つの他の管に移した:4.7mlをPAXgene blood RNA kitに使用し、0.4mlをMagNA Pure抽出に使用した。溶解物の残りを廃棄した。これらの2つの管を2000gで10分間遠心分離し、上清を廃棄した。それから核酸ペレットを、
a)(PAXgene(商標)Blood RNA Tube+PAXgene(商標)Blood RNA Kit)対応する取扱説明書マニュアルに推奨されるように、全RNA抽出のためにBR1緩衝液に溶解させる前に水で洗浄した。PAXgene(商標)Blood RNA Systemの手順は以下の通りである:血液試料(2.5ml)をPAXgene Blood RNA Tubeに回収し、所望に応じて室温で保存又は移動してもよい。RNA単離を遠心分離工程から始め、PAXgene Blood RNA Tube内で核酸をペレット化させた。ペレットを洗浄し、プロテイナーゼKを添加することにより、タンパク質消化が起こる。アルコールを添加することにより、結合条件を調整し、試料をPAXgene(商標)Blood RNA Kitにより与えられるようなスピンカラムに適用した。短時間の遠心分離の間に、PAXgene(商標)Blood RNA Kitにより与えられるようなシリカゲル膜にRNAが選択的に結合し、混入物質は通過する。洗浄工程の後、RNAが最適化した緩衝液に溶出する。IFN−γ及びβ−アクチンのmRNAの逆転写及びリアルタイムPCRを、Stordeur et al.(「リアルタイムPCRによるサイトカインmRNAの定量化(CytokinemRNA Quantification by Real Time PCR)」J Immunol Methods,259 (1-2): 55-64, 2002)に記載のように実施した。
b)(PAXaene(商標)Blood RNA Tube++MagNA Pure LC mRNA Isolation Kit I)MagNA Pure mRNA Isolation Kitの300μlの溶解緩衝液に溶解した。それから最終溶出容量100μlでmRNAの抽出及び精製をRoche Diagnostics, Molecular Biochemicalsの取扱説明書に従いMagNA Pure LC Instrumentで行った。逆転写及びリアルタイムPCRを、5μlのmRNA調製物から始めて、「Lightcycler−RNA Master Hybridisation Probes Kit」(Roche Diagnostics, Molecular Biochemicals)に記載の標準的な手順に従って一工程で実施した。
【0186】
結果:
PAXgene(商標)Blood RNA Tube(PAXgene(商標)Blood RNA System)と組合せたQiagenにより推奨される抽出法と、同様にPAXgene(商標)Blood RNA Tubeと組合せたMagNA Pure LC Instrument抽出法との比較を行った。両方の方法において、PAXgene(商標)blood RNA Tubeの使用により、血液細胞由来のRNAを安定化させることができる。結果を表1.1及び表1.2に挙げる。この実験の結果はMagNA Pure LC Techniqueでより良好な再現性を示している(β−アクチンに対して補正したIFN−γのmRNAコピー数の変動係数はそれぞれMagNA Pure LCでは16%に対してQiagenでは26%である)。
【0187】
興味深いことには、MagNA Pure抽出はQiagen法で用いられるものよりも少ない開始血液容量から行ったことに留意する(Qiagenでの1.25mlに対してMagNA Pureでは0.11ml)。Qiagen法をこのような少ない容量で行っていた場合、RNA濃度を測定すること、さらには逆転写を行うことが不可能になる。このことは本発明に記載の技法の別の利点:非常に少ない容量の血液(約100μl)でmRNAを定量化することができることを強調している。
【0188】
結論:
実施例2はMagNA Pure LC mRNA Isolation Kit Iと組合せてPAXgene(商標)Blood RNA Tubeを使用することができること、又はより正確にはこのキットに含有された溶解緩衝液にPAXgene(商標)Blood RNA Tubeからの析出物を溶解することができることを示しており、この溶解緩衝液はキットの他の成分と共に使用する必要がある。
【0189】
本実施例では、他の組合せとは対照的に、本発明に記載のような組合せだけが正確な/本当のin vivo転写産物の定量化をもたらすことが証明されている。
【0190】
実施例3:破傷風トキソイドに対する免疫反応のex vivoモニタリング
実施例3では、血液ドナーに免疫付与されているとされる(7年前にワクチン接種したため)抗原(すなわち破傷風トキソイド)を用いて血液をex vivoで刺激する。RT−PCRを該方法に従って行う(図31.1)。ボランディアの免疫系の抗原に対して反応する能力の読み出し(read out)としてサイトカインmRNAを測定する。IL−2、IL−4、IL−13及びIFN−γのmRNAを選択的に分析するが、それらの対応するmRNAの定量により潜在的な反応性タンパク質を全て分析することができる。実施例3の結果を図34に示す。一般的に本実施例で従った戦略を図31.2に示すように概略的に表し得る。
【0191】
可能性のある適用例:癌免疫療法
数年前から、癌免疫療法に対する基礎的な戦略がワクチン接種により展開されてきた。実際、遺伝学及び免疫学の発展により腫瘍細胞の表面に対して発現する多くの成長腫瘍抗原を同定することが可能になっている。これらの抗原が主要な組織適合性複合体(HLA)に関連するペプチドの形態下で腫瘍細胞の表面に提示される。腫瘍抗原と見なされ得る抗原の例は、Fong and Engleman (Annu. Rev. Immunol. 2000.18:245-273)に記載されている。抗癌ワクチン接種の原理は最も免疫原性的な方法(mostimmunogenic way immunogenic)に従い、患者の免疫系(system immune)に対してこれらの抗原を提示することからなる。このことは、添加剤の存在下での抗原又は対応するペプチドの注射から自己抗原提示細胞(例えば樹状細胞)上でのペプチドの提示へと移る。抗癌ワクチン接種(vaccination anti-cancer vaccination)の最終的な目的は腫瘍の退縮であるが、特に限られた治療手段(limited window of treatment)からしか恩恵を受けることができない進行期の疾患における患者の症例において抗癌ワクチン接種の有効性の確定は依然として困難である。このことが抗癌ワクチン接種が特にアジュバント療法として又は予防のフレームワークにおいて興味深いものであり得る理由である。したがってこれらのワクチンの投与方法を特定し、より良好に未来の治療プロトコルを規定するのを助けることを可能にする黙示的な(implied)生物学的機構を発見するために実験的な抗癌ワクチン接種の免疫学的効果を評価する、感度が高くかつ正確なモニタリング技法を開発することが非常に重要である。これらのワクチンの免疫学的有効性を測定することの難しさは本質的にin vivoでの細胞免疫反応を検出するのに十分な感度があるアッセイがないことにある。これまでに用いられてきた技法は抗原の存在下で長期間患者のPBMCの徹底したin vitro培養、及びリンパ球の元の機能的特性の変更を誘導しやすい同時刺激を包含していた。このため抗原の存在下での広範なin vitroインキュベーション後にそれらの機能的状態の可逆性が与えられることから、腫瘍抗原に指向性を有するリンパ球前駆体のアネルギー状態又は耐性状態の分析は非常に困難である。他方で、低頻度のエピトープ特異的CTL前駆体の検出に用いられるMHC−ペプチド複合体の四量体に基づく技法は通常、腫瘍特異的リンパ球の検出に対する感度を欠いている。さらにこれらの技法はこれらのリンパ球の機能的反応性に関する情報を何ら与えない。
【0192】
例えば抗原によるin vitroでの非常に短期間の刺激の後、所与の抗原に対するリンパ球の元の機能的反応性を検出することができる程に十分感度が高い技法だけが抗癌ワクチン接種プロトコルの有効性の実際の評価を可能にする。
【0193】
近年(Kammula, U. S., Marincola, F. M., and Rosenberg, S. A. (2000)「腫瘍ペプチドワクチン接種後の黒色腫患者における免疫反応性のリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応評価(Real-time quantitative polymerase chain reaction assessment ofimmune reactivity in melanoma patents after tumor peptide vaccination)」. J. Natl. Cancer Inst. 92: 1336-44)、PBMCの短期間のin vitro刺激(2時間)に関連するサイトカインmRNAの検出が腫瘍抗原を用いてワクチン接種を受けている患者のPBMCにおいてエピトープ特異的(specifiq)CTLを検出することが可能であったことが示されている。とはいっても本発明によれば、この短時間のex vivoパルスは必須というわけではない。
【0194】
実施例4:ドナーの組織適合抗原によるレシピエントの免疫系の活性化の検出
実施例4において、ドナー由来の臓器(例えば肝臓、腎臓、骨髄等)をレシピエントに移植する。レシピエントの全血を本発明によるRNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を含む管に回収する。該方法に従ってRT−PCRを行う。ドナーの組織適合抗原によるレシピエントの免疫系の活性化の読み出しとしてサイトカインmRNAを測定する(図31.3)。
【0195】
実施例5:ドナーの組織適合抗原に対するレシピエントの免疫系反応性の検出
実施例5において、ドナー由来の臓器(例えば肝臓、腎臓、骨髄等)をレシピエントに移植する。レシピエントの全血を管に回収し、ドナーの組織適合抗原と共にex vivoでインキュベートする。本発明によるRNA分解及び/又は遺伝子誘導を阻害する化合物を血液に添加する。該方法に従いRT−PCRを行う。ドナーの組織適合抗原によるレシピエントの免疫系反応の読み出しとしてサイトカインmRNAを測定する(図31.4)。
【0196】
適用例:臓器移植後の拒絶反応のモニタリング
移植物の拒絶反応のモニタリングは本質的に患者の尿若しくは血液(腎臓移植の場合、血中尿素窒素(BIN)又はクレアチニン)において、又は移植臓器の生検の分析時に測定されるマーカーの検出を基にしている。しかしながら拒絶機構が既に十分に進んでいる場合しかこれらの指示因子は検出されない。実際、移植拒絶反応は移植臓器の悪化に先行する免疫学的機構の結果である。移植臓器が損傷を受ける前にこれらの免疫学的機構を検出することにより、より早期に免疫抑制治療を適合させることにより、移植臓器の喪失を大きく低減することが可能になる。他方で、拒絶反応の無症候性エピソード(臨床的兆候が誘発されない)自体が移植後に頻繁に発生することも認識されている。これらの拒絶反応の無症候性エピソード(episodes sub-slinical rejection episodes)は慢性的な拒絶反応の原因となり得る。幾人かの研究者(authors)が臓器拒絶反応の早発性免疫学的(immunologiques)マーカーの検出、特にレシピエントの循環中でのドナーのアロ抗原に指向性を有するアロ反応性のTリンパ球の検出を研究している。方法には本質的に、混合培養物と様々な方法(ELISA、ELISPOT、フローサイトメトリ等)によるレシーバーのリンパ球の増殖の連続測定、又はサイトカイン産生の測定との関連性が含まれる。近年になって、他の研究者が早期に拒絶反応機構の誘起を示しやすいリンパ球活性化マーカーパターンの特性化を試みている(looked on)。感度が高い定量的PCR法によりT活性化した(グランザイムB、パーフォリン、様々なサイトカイン)活性化細胞毒性Tリンパ球により発現される遺伝子のmRNAの検出が拒絶反応の誘起を測定する優れたツールであることが分かっている。この目的のために本発明によれば、様々な種類のサイトカインをコードするメッセンジャーを研究することができ、選択的標的はIL−2、IFN−γ、IL−4、IL−5、グランザイム、パーフォリン及びFasFas−リガンドであり得る。
【0197】
実施例6:リアルタイムPCRを用いた全血における免疫モニタリング
実施例6において、mRNAレベルでサイトカイン合成の誘導の測定を可能にする全血における方法を記載する。この方法の新しいところ(originality)は血液回収のためのmRNA安定剤を含有するPAXgene(商標)tubeと、mRNA抽出及びRT−PCR試薬混合物調製のための自動システムとしてのMagNA Pure(商標)instrumentと、転写産物レベルの正確かつ再現性のある定量化のためのLightcycler(商標)でのリアルタイムPCR法との組合せに存する。本実施例は初めに、この方法が全血に細菌性リポ多糖(LPS)を添加する際のIL(インターロイキン)−1β及びIL−1受容体アンタゴニスト(IL−1RA)mRNAの誘導を測定するのに適切であることを示している。本実施例はさらに、このアプローチがリコール抗原に対するin vitro免疫反応モデルとして破傷風トキソイドと共にインキュベートした全血においてT細胞由来のサイトカインをコードするmRNAの産生を検出するのに好適でもあることを示している。最終的に本実施例は、この方法により健常なボランディアにおいてLPSの注射後のIL−1β及びIL−1RAの誘導、及び破傷風ワクチンによるリコール免疫付与の際のIL−2の誘導の検出が可能であったので、この方法をin vivoで炎症及びT細胞応答を評価するのに首尾よく使用することができることを示している。
【0198】
材料及び方法
in vivo研究のための血液回収
末梢血のmRNAレベルの正確な定量のために、即時の細胞溶解及び核酸析出のために2.5mlの血液試料をPAXgene(商標)tubeに採取した。mRNAはこの血液溶解物中で最大5日間安定であり、管はmRNA抽出まで室温を維持した。
【0199】
in vitro全血培養
in vitroでの全血LPS刺激又は破傷風トキソイドの再抗原投与(rechallenge)を200μlのヘパリン添加全血で行い、遅くとも血液回収の4時間後に開始した。全細胞溶解及びmRNA安定化を誘導する、500μlのPAXgene(商標)tubeの試薬を添加することにより培養を停止させた。これにより、in vitro及びin vivo研究の両方で同じmRNA抽出プロトコルを使用することが可能になった。
【0200】
mRNA抽出
PAXgene(商標)tubeにおいて又は全血培養の終了時に得られた血液溶解物を簡単に混合し、その後5分間の最大速度(装置によって12000g〜16000g)での遠心分離のために、300μlのアリコートを1.5ml容のエッペンドルフ管に移した。上清を廃棄し、MagNA Pure(商標)mRNA抽出キット(Roche Applied Science)に含有される300μlの溶解緩衝液中でボルテックスすることにより核酸ペレットを完全に溶解させた。それから製造業者の取扱説明書に従って(「mRNA I細胞」Rocheのプロトコル、最終溶出容量100μl)、MagNA Pure(商標)instrument(Roche Applied Science)においてこのキットを用いて300μlのこの溶液からmRNAを抽出した。ノーザンブロット分析によりこれまでに抽出mRNAの質が文書に記録されていた(documented)(Roche Applied Science、非公開データ)。
【0201】
リアルタイムPCR及び試薬混合物調製
「Lightcycler(商標)−RNA Master Hybridisation Probes」Kit(Roche Applied Science)に記載の標準的な手順に従い、逆転写及びリアルタイムPCRを一工程で行った。さらに正確には、1)最大20μlのHO;2)7.5μlのRNA Master Hybridisation Probe 2.7倍濃度(RNA Master Hybridisation Probes Kit(RocheApplied Science));3)1.3μlの50mM Mn(OAc);4)1μl、2μl又は3μlの6ピコモル/μl フォワードプライマー及びリバースプライマー(mRNA標的に応じて最終濃度300nM、600nM又は900nM;各mRNA標的に特異的な条件は、表2で列挙されるIL−2及びIL−4を除いて、Stordeur et al, J Immunol Methods, 259 (1-2): 55-64, 2002に完全に記載されている);5)1μlの4ピコモル/μl TaqManプローブ(最終濃度200nM);6)5μlの精製mRNA又は標準希釈物を含有する20μlの最終容量でRT−PCR反応を行った。mRNAを逆転写させる61℃での20分間のインキュベーション期間、次いで95℃で30秒間の最初の変性工程の後、温度サイクルを開始した。各サイクルは95℃、0秒及び60℃、20秒からなっており、蛍光をこの第2の工程の終了時に読み出した(F1/F2チャネル、色調補正なし)。全部で45サイクル行った。イントロン配列に及ぶように全てのプライマーを選択し、そのためゲノムDNAの増幅は不可能であった。
【0202】
試薬、オリゴヌクレオチド及び試料を全て含有するRT−PCR反応混合物を、MagNA Pure(商標)instrumentによりLightcycler(商標)で使用したキャピラリー中に直接完全に調製した。これらのキャピラリーの上部の蓋を閉め、遠心分離した後、一工程RT−PCRのためにLightcycler(商標)に導入した。このようにして全てのRT−PCR成分のサンプリングは完全に自動化され、手動によるサンプリング誤差が避けられる。
【0203】
結果をβ−アクチンmRNA(β−アクチンmRNAコピー100万個当たりのサイトカインmRNAのコピー数)に対して正規化されたコピー数として表した。それぞれの試料で、検量線からCt値(「Arithmetic Fit点分析」)を用いて機器ソフトウェアによりmRNAコピー数を算出した。この検量線はStordeur et al, J Immunol Methods, 259 (1-2): 55-64, 2002に記載のように段階希釈した精製DNAから行ったそれぞれのPCRで作成した。
【0204】
実験的な内毒素血症
実験前少なくとも10日間、全く薬剤を摂取しなかった5人の健常な男性ボランディア(21歳齢〜28歳齢)はLPS(大腸菌、ロットG由来;United States Pharmacopeial Convention, Rockville, MD;4ng/kg体重)の単回投与により静脈注射を受けた。LPS注射の10分前、並びに0.5時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後及び6時間後、2.5mlの血液試料をPAXgene(商標)tubeに回収した。in vitro研究のために、健常な個体から採取した、200μlのヘパリン添加全血を、5%CO雰囲気下、37℃で0時間(培養開始時)、0.5時間、1時間、2時間及び6時間、10ng/ml LPS(血清型0128:B12の大腸菌由来、Sigma-Aldrich, Bornem, Belgium)と共にインキュベートした。
【0205】
抗破傷風のリコールワクチン接種
前回の破傷風トキソイドワクチン接種が少なくとも5年前である健常なボランディア(2人の男性、4人の女性、27歳齢〜53歳齢)が筋肉内ワクチンリコール(Tevax, Smith Kline Beecham Biologicals, Rixensart, Belgium)を受けた。投与した日、投与の14日前、投与の3日後、7日後、14日後、21日後及び90日後にヘパリン添加血液管を採取した。200μlの血液を、10μg/ml 破傷風トキソイド(Dr. E. Trannoy, Aventis Pasteur, Lyon, Franceから寄贈された)を用いて又は用いずに、5%CO雰囲気下、37℃で20時間、インキュベートした。
【0206】
結果
全血に細菌性LPSを添加した際のIL−1β及びIL−1RAのmRNAの測定
図35で示されるように、全血へのLPS(10ng/ml)の添加により、IL−1β及びIL−1RAのmRNAの迅速な誘導がもたらされた。LPS添加の30分後〜60分後でも既に明らかであるが、この誘導により添加後6時間でIL−1β及びIL−1RAそれぞれにおいて47倍及び22倍のmRNAレベルの増大が得られた。曲線パターンが両方のサイトカインmRNA量の迅速かつ持続的な増大を示唆している。mRNA定量化に関するシステムの正確性を評価するために、20μl〜200μlの範囲の様々な容量のLPSで刺激した全血由来のβ−アクチン及びIL−1βに関してmRNAを定量した。図36に示されるように、実際にβ−アクチン及びIL−1βの両方のmRNAコピー数を開始容量の血液と直接相関した。
【0207】
破傷風トキソイドに対するin vitro反応
この方法がT細胞応答の分析に好適であり得るか否かを決定するために、全ての個体が小児期にワクチン接種した際に十分に確立されたリコール抗原である破傷風トキソイドの添加後の全血培養物のサイトカインmRNAレベルを定量化した。この抗原との全血のインキュベーション後のIFN−γ、IL−2、IL−4及びIL−13のmRNAの迅速かつ一時的な誘導が見出された(図37)。それぞれのサイトカインに対する応答の振幅を比較すると、IL−2のmRNAの誘導が最も顕著であるように思われた。実際、トキソイドの存在下でのインキュベーションの16時間後のIL−2のmRNAコピー数の全体的な増大は図37に示す5つの独立実験でおよそ220倍であったのに対し、同じ実験でのIL−4及びIFN−γのmRNAの最大の増大は5倍を超えていなかった。したがってIL−2のmRNAの定量化はT細胞応答を評価する、この全血系において最も感度の高いパラメータであると考えられる。表3で与えられるデータは、この試験において破傷風トキソイドに対する応答の振幅がおそらくは最後のワクチンリコール時に応じてかなりの変動性であることを示している。事実上、IL−2のmRNAの誘導は新生児の臍帯血に破傷風トキソイドを添加した後には観察されず、以前に初回抗原刺激を受けた(primed)T細胞及び非ナイーブT細胞だけがこのアッセイにおいて応答することができることが示されている(表3)。
【0208】
LPSの静脈注射後の全血におけるIL−1RA及びIL−1βのmRNAの誘導
in vivoでのサイトカイン誘導の検出方法の第1の適用として、低用量(4ng/kg)の細菌性リポ多糖を注射した健常なボランディア由来の一連の血液試料を分析した。IL−1RA及びIL−1βのmRNAの両方のはっきりした誘導が観察された(図38)。IL−1βのmRNAの誘導は、エンドトキシン投与の30分後〜60分後には既にIL−1βのmRNAが検出されていたので迅速であり、また6時間後にはIL−1βのmRNAレベルが注射前の値に戻っていたため一時的なものであった。IL−1βのmRNAと比較して反応速度が遅れていたがIL−1RAのmRNAも誘導されていた。
【0209】
リコールワクチン接種後の抗破傷風トキソイド免疫反応の検出
in vitro実験により、IL−2のmRNAが抗破傷風トキソイド応答をモニタリングするのに最も感度が高いパラメータであったことが示唆されたので、このパラメータがin vivoでのリコールワクチン接種の際の全血における破傷風トキソイドに対するT細胞応答の変化を分析するのに選択された。この目的のために、ワクチンの投与前及びワクチンの投与後の幾つかの時点で、破傷風トキソイドの存在又は非存在下で全血インキュベーションを行った。図39に示されるように、抗原に曝露した全血におけるIL−2のmRNAの産生がワクチン接種した個体全てにおいて有意に増大した。IL−2のmRNA誘導はワクチン接種の7日後には既に明らかであり、14日目又は21日目で最大レベルに達した。個体間の変動は抗破傷風免疫の基礎的状態の差異に関係するものであると考えられる(表3も参照されたい)。in vitroでの再刺激をせずに測定されたIL−2のmRNAレベルが有意に変わらなかったため、ワクチン接種後で全血において測定されるIL−2応答は免疫付与抗原に特異的であった(表3)。
【0210】
考察
リアルタイムPCRはPCR産物と結合する蛍光性分子を用いて、PCRプロセスの際に単位複製配列の集積を直接モニタリングすることができることからそのように呼ばれている。これにより、それぞれの試料に対して蛍光曲線が作成され、較正標準と得られた蛍光曲線との比較により、試料の(c)DNAコピー数の決定が可能となる。特異性を高めるために、蛍光性分子は2つのプライマー間に位置する、PCR産物の配列に相補的なオリゴヌクレオチドであり得る。本願に記載のような新規の方法により、先行技術の方法を用いても不可能であった、生体試料において核酸を感度が高くかつ正確に定量化する方法が提供される。本願はin vivo状況を代表する精製細胞又は組織からサイトカインmRNAを定量化することによりこの方法を説明している。
【0211】
RT−PCR分析に全血を用いることで直面する問題の1つがRNA抽出に先行する細胞溶解である。血漿及び赤血球に存在するタンパク質量が多いため、全血からRNAを単離する方法の大多数はRNA抽出を行なう前に分析するmRNAの潜在的な細胞源の精製、又は赤血球の排除を伴う。これらの中間工程はmRNA分解及び/又は遺伝子誘導に、そのためmRNAレベルの変化に関連する可能性がある。さらに、血液を採取するという単純な操作(fact)によっても幾らかのmRNAの分解を引き起こす可能性がある。このことは、3’非翻訳領域に位置する高AU配列による内因性ヌクレアーゼに対して感受性であるサイトカインmRNAで特に当てはまる。実際に血液回収の1時間後には既に末梢血IFN−γのmRNAレベルがおよそ50%低減したことがこれまでに示された(Stordeur et al., (2002) J. Immunol Meth. 261 :195)。全細胞溶解、及び同時に核酸析出を誘導する、Catrimox−14(商標)(Qiagen, Westburg, Leusden, The Netherlands)と呼ばれるカチオン性界面活性剤であるシュウ酸テトラデシルトリメチルアンモニウム等の第4級アミン界面活性剤を用いて、これを回避することができる。本実施例により、驚くべきことにPAXgene(商標)tubeを用いて得られた核酸析出物をグアニジウム/チオシアネート溶液中に溶解することができることが観察される。上記溶液の例はmRNA単離MagNA Pure(商標)LCキット(Roche Applied Science)で与えられる溶解緩衝液である。このことが、PCR反応混合物の成分全ての自動調製によるMagNA Pure(商標)instrumentの高い再現性及び正確性を利用して、本発明者らにPAXgene(商標)tubeとMagNA Pure(商標)instrumentとを併用することを促した。
【0212】
興味深いことに、本願の方法は、in vivoでのエンドトキシン抗原投与の際に全血においてサイトカイン遺伝子誘導の検出に首尾よく適用され、これにより全身炎症反応をモニタリングするのに本願の方法を用いることができることが実証された。in vivo抗原投与の後のIL−1応答の一時的形質は血液へのLPSのin vitro添加後のIL−1のmRNAの持続的増大とは対照的である。このことはin vivoでのLPSの迅速なクリアランスだけでなく、接着分子及びケモカイン受容体の上方調節に関連する、in vivoでのサイトカイン産生細胞の再分布にも関連し得る。この全血における方法の別の可能な適用は破傷風トキソイドをワクチン接種した個体においてin vitroで再び抗原投与した後で観察されるIL−2のmRNAの明らかな誘導により示唆されるような、ワクチン接種時のT細胞応答のモニタリングである。このことが細胞の単離が困難であり得る大規模なワクチン接種研究を、特に幾つかの新規のワクチンが評価段階である発展途上国において良好な条件下で体系づけるのに特に興味深いものであり得る。ワクチン試験におけるこの方法の適用性をさらに研究するために、B型肝炎に対する最初のワクチン接種の際のT細胞応答の読み出しとしてこの方法がすぐに試験されるであろう。
【0213】
血液の開始容量とmRNAコピー数との間の直接的な相関関係(図36)がこの方法を用いた結果の発現にmRNA濃度を測定することが絶対に必要であるわけではないことを示唆している。しかしながら、試料容量の小さい変動によっても定量誤差が引き起こされる可能性があるため、β−アクチン等のハウスキーピング遺伝子の同時測定により測定されるコピー数を補正することが好ましい。ハウスキーピング遺伝子の発現が刺激の或る特定の条件下で変わり得るため、これは依然として最適なものではない。そのためmRNA抽出前に外部標準を試料に添加することが可能である。IL−2に関してT細胞の場合等でサイトカインの細胞源が十分に確立されている場合、サイトカイン遺伝子のコピー数を対応する細胞型、例えば後者の例ではCD3において特異的に発現した遺伝子をコードするコピー数で補正するのが適切であり得る。同様に、様々な研究所で作製したデータの比較を容易にするために、リアルタイムPCRによるサイトカインmRNA定量化のための較正器の国際標準化を進展させるべきである。全血におけるサイトカインmRNA測定は新規のワクチン及び免疫療法の評価に要求される先天性の適応免疫反応のモニタリングに有用である。
【0214】
実施例7:MagNA Pureでの自動化したmRNA抽出及び試薬混合物調製:開始生体材料の量と実測コピー数との間の直接的な相関関係
本実施例で従う手順を図40に要約する。システムの正確性を示すために、開始細胞数でのmRNAコピー数の線形回帰を算出した(図41)。mRNAを様々な末梢血単核細胞(PBMC)数(100000個〜600000個の範囲の細胞、X軸)から抽出し、β−アクチンmRNAに関して一工程RT−リアルタイムPCRを、本実施例6の「材料及び方法」の項に記載のように行った。この実験をβ−アクチン及びTNF−αのmRNAに関してPBMCで(図42、パネルB及びパネルD)、並びにβ−アクチンmRNAに関して全血で(図42、パネルA)及びCD4精製T細胞で(図42、パネルC)繰り返した。
【0215】
実施例8:癌免疫療法
本実施例で従う手順を図40に要約する。該方法を癌ワクチンにより誘導された免疫反応のモニタリングに適用した。図43、図40及び図41は黒色腫患者を用いてこの分野で得られた結果を示している。
【0216】
実施例9:アレルギー
本実施例で従う手順を図40に要約する。それから該方法をアレルギーに適用した。関連アレルゲンとのアレルギー性被験者の全血のin vitroインキュベーションにより誘導された応答を、リアルタイムPCRを用いたIL−4のmRNA定量化により分析した。図46、図47、図48及び図49はこの分野で得られた結果を示している。
【0217】
実施例10:自己免疫
本実施例で従う手順を図40に要約する。それから該方法を自己免疫に適用した。この全血系を用いたIL−2のmRNA定量化を、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)に対するT細胞応答を評価するのに適用し、自己抗原は1型自己免疫糖尿病における自己反応性T細胞の標的であった。図40及び図41はこの分野で得られた結果を示している。
【0218】
実施例11:移植
本実施例で従う手順を図40に要約する。それから該方法を移植に適用した。アロ反応性の非T細胞との全血インキュベーション後のリアルタイムPCRによるIL−2のmRNA定量化により、アロ反応性のT細胞応答をモニタリングする従来の混合リンパ球の反応(MLR)に対する代替手段が与えられる。図52及び図53はこの分野で得られた結果を示している。
【0219】
本発明はその詳細な説明と併せて説明されているが、上述の記載は例示的なものであり、添付の特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものとしては意図されないことを理解されたい。他の態様、利点及び変形は以下の特許請求の範囲内にある。
【0220】
表1.Qiagen法とMagNA Pure LC抽出法との比較
1.1. QiagenのmRNA抽出法。同じ血液試料に由来する血液mRNAを9回抽出した。
【表1−1】

【0221】
1.2. MagNA Pure LC(キット+機器)mRNA抽出法。同じ血液試料に由来する血液mRNAを9回抽出した。
【表1−2】

【0222】
表2.(リアルタイム)PCR1のためのオリゴヌクレオチド
【表2】

【0223】
1.完全な説明に関しては、Stordeur et al, J Immunol Methods, 259 (1-2): 55-64, 2002を参照されたい。
2.F、R及びPはそれぞれ、フォワードプライマー及びリバースプライマー及びプローブを示す。数字はIL−2に関してはGenebankアクセッション番号X01586及びIL−4に関してはNM_000589からの配列位置を示す。
3.フォワードプライマー(F)及びリバースプライマー(R)の最終濃度。
4.検量線を「従来の」PCRにより調製された段階希釈のPCR産物から作成し、これに関する特定条件は以下の通りであった:95℃で20秒の変性、58℃で20秒のアニーリング及び72℃で45秒の伸長、全部で35サイクル。MgCl2の最終濃度は1.5mMであった。
【0224】
表3.
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体生体試料用のアッセイ装置(30)であって、前記試料を第1の物質(2)及び対照物質(35)に、その後核酸安定化剤(5)に別々に曝露するのを容易にし、該装置が、
前記第1の物質(2)が存在する第1のコンパートメント(32)と、
前記対照物質(35)が存在する第2のコンパートメント(34)と、
前記安定化剤(5)が存在する第3のコンパートメント(36)と、
生体試料管用の支持部(52)と、
を含む、アッセイ装置。
【請求項2】
コンパートメント(32、34、36)の1つ又は複数が封止され、中空針による穿刺に好適な領域を1つ又は複数含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記領域が再封止可能な隔壁(40、42、46)である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
移送チューブ(60)と取り外し可能に接続するための支持部(54、56)をさらに含み、該移送チューブがいずれか2つのコンパートメント間、又はコンパートメントと該生体試料管との間での液体の移送に適した、両端に中空針(62、66)を備えた可撓又は剛体な中空チューブ(64)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
請求項4で規定のような該移送チューブ(60)をさらに含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
移送チューブの一方の針(62)が圧力チューブ(88)の該中空針(80)と平行配置で接続され、該圧力チューブが片端に前記針(80)を備えた可撓な中空チューブ(82)を含み、コンパートメント又は生体試料管に真空又は圧力を印加し、該移送チューブを通して液体を押し出すのに適している、請求項4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記第1の物質(2)が前記第1のコンパートメント(32)の内面の一部又は全てに固定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
コンパートメント(32、34、36)の1つ又は複数が換気口を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
第1のコンパートメント(32)及び/又は第2のコンパートメント(34)が陰圧下にある、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
第1のコンパートメント(32)及び/又は第2のコンパートメント(34)が既知の容量の安定化剤をその中に分注するための表示を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の物質(5)が免疫系抗原を1つ又は複数含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記免疫系抗原がワクチン成分である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記免疫系抗原が過剰アレルギー反応を誘発する抗原である、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記免疫系抗原が組織適合抗原、細菌性LPS、破傷風トキソイド、癌免疫療法抗原、MAGE−3、ネコアレルゲン、Feld1、臓器提供者からの抗原提示細胞、自己抗原、GAD65から選択される1つ又は複数である、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記安定化剤(35)が細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の阻害因子である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の前記阻害因子がPAXgene(商標)又はTempus(商標)Blood RNA Tubeに見られるものである、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
液体生体試料を検査するキットであって、
液体生体試料を受け取り、前記試料を第1の物質(2)に、その後核酸安定化剤に曝露するのに好適な容器(1)であって、前記容器が
a)前記容器(2)内に存在する第1の物質(1)、
b)前記安定化剤(35)が存在するコンテナ(4、12、16)、
c)前記容器(2)の内部と、前記コンテナ(4、12、16)の内部との間の接続、
d)前記接続を一時的に遮断する物理的障壁(25、15、18)、
を含む容器と、
液体生体試料を受け取り、前記試料を対照物質に、その後核酸安定化剤に曝露するのに好適な対照容器(37)であって、前記対照容器が
a)前記対照容器(37)内に存在する対照物質(35)、
b)前記安定化剤(35’)が存在する対照コンテナ(4’、12’、16’)、
c)前記対照容器(37)の内部と、前記対照コンテナ(4’、12’、16’)の内部との間の接続、
d)前記接続を一時的に遮断する物理的障壁(15’、18’、25’)、
を含む容器と、
を含むキット。
【請求項18】
前記第1の物質(2)が前記容器(1)の内面の一部又は全てに固定される、請求項17に記載のキット。
【請求項19】
前記第1の物質(2)が固形担体に固定される、請求項17に記載のキット。
【請求項20】
前記第1の物質(1)が液体である、請求項17〜19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
前記第1の物質(1)が固体である、請求項17〜19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項22】
容器(1)及び/又は対照容器(37)がシリンジ針による穿刺に好適な領域を1つ又は複数含む、請求項17〜21のいずれか一項に記載のキット。
【請求項23】
前記領域が再封止可能な隔壁である、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
容器(1)及び/又は対照容器(37)がシリンジを受け、その中にある内容物を前記容器(1)又は前記対照容器(37)の内部に送るのに好適な取り付け部を含む、請求項17〜23のいずれか一項に記載のキット。
【請求項25】
容器(1)及び/又は対照容器(37)がシリンジ針を受けるのに好適な取り付け部を含む、請求項17〜24のいずれか一項に記載のキット。
【請求項26】
容器(1)及び/又は対照容器(37)が容器からの気体/液体の流れを最小限に抑え、液体生体試料を該容器へと流すことが可能な弁を含む、請求項17〜25のいずれか一項に記載のキット。
【請求項27】
容器(1)及び/又は対照容器(37)が排出ガスを押し出すことができる手段を含む、請求項17〜26のいずれか一項に記載のキット。
【請求項28】
容器(1)及び/又は対照容器(37)が陰圧下にある、請求項17〜27のいずれか一項に記載のキット。
【請求項29】
項目d)の物理的障壁(15、18、25、15’、18’、25’)が前記容器又は前記対照容器への物理的な力の印加により開放される、請求項17〜28のいずれか一項に記載のキット。
【請求項30】
前記力が開放手段を前記物理的障壁(15、18、25、15’、18’、25’)に送る、請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記力が前記物理的障壁(15、18、25、15’、18’、25’)を不可逆的に開放する、請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記容器(1)及び/又は前記対照容器(37)が既知の容量の安定化剤をその中に分注するための表示を含む、請求項17〜31のいずれか一項に記載のキット。
【請求項33】
前記第1の物質(2)が免疫系抗原を1つ又は複数含む、請求項17〜32のいずれか一項に記載のキット。
【請求項34】
前記免疫系抗原がワクチン成分である、請求項32に記載のキット。
【請求項35】
前記免疫系抗原が過剰アレルギー反応を誘発する抗原である、請求項32に記載のキット。
【請求項36】
前記免疫系抗原が組織適合抗原、細菌性LPS、破傷風トキソイド、癌免疫療法抗原、MAGE−3、ネコアレルゲン、Feld1、臓器提供者からの抗原提示細胞、自己抗原、GAD65から選択される1つ又は複数である、請求項32に記載のキット。
【請求項37】
前記安定化剤が細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の阻害因子である、請求項17〜36のいずれか一項に記載のキット。
【請求項38】
細胞性のRNA分解及び/又は遺伝子誘導の前記阻害因子がPAXgene(商標)又はTempus(商標)Blood RNA Tubeに見られるものである、請求項17〜37のいずれか一項に記載のキット。
【請求項39】
容器(1)及び対照容器(37)の外部が単一体を形成するように連結する、請求項17〜38のいずれか一項に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図17】
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【公表番号】特表2012−505639(P2012−505639A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531366(P2011−531366)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064030
【国際公開番号】WO2010/043271
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(507338138)
【Fターム(参考)】