説明

生体適合性コーティングの作製用脂肪酸トリグリセリド

本発明は、50℃より上のスリップ融点を有する脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)であって、前記混合物(a)の脂肪酸組成物が少なくとも2種類の異なる脂肪酸を含み、20〜95重量%の飽和脂肪酸および80〜5重量%の不飽和脂肪酸を含み、前記混合物(a)の少なくとも1種類の脂肪酸トリグリセリド(a1)が、同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有し、前記混合物(a)の少なくとも10重量%に相当する、脂肪酸トリグリセリドの混合物に関する。この混合物は、生体適合性、安定性および薬物放出を改善するための医療デバイスのコーティングに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、生物活性物質の制御送達のため、および/または医療デバイス、例えば、埋入用デバイスの生体適合性のコーティングのための脂肪酸トリグリセリド混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
狭窄した管腔(例えば、冠動脈のアテローム硬化性狭窄の)を拡張した後、全身性(経口または静脈内)投与を用いて抗再狭窄治療用薬剤を投与すると、多くの場合、効果が必要とされる場所での治療用薬剤の局所濃度が低すぎることから、また、高用量で投与した場合の治療用薬剤の全身性副作用のため、臨床試験における治療成績は残念なものであった。この理由のため、治療用薬剤は、処置対象の器官に局所投与されている。例えば、冠動脈狭窄の処置では、治療用薬剤は、特別なカテーテルを用いて血管壁内に注射されている。このアプローチの不都合点は、いわゆる局所処置の有効性が依然として限定的なこと(投与された治療用薬剤の5%未満しか標的器官に達しない)、および局所薬物投与による標的器官への損傷の増大である。
【0003】
別のアプローチは、埋入用デバイス(例えば、管腔内プロテーゼなど)を、治療用薬剤を含むポリマーのコーティングで被覆することである(例えば、EP−A−0623,354を参照のこと)。この方法の不都合点は、コーティングの薬物容量が限定的なこと、および接触面積が広いため治療用薬剤の放出が速すぎることが示されている。さらにまた、ほとんどのポリマーでは相当激しい重合工程が必要とされ、これにより、治療用薬剤の不活化がもたらされることがあり得、また、ほとんどのポリマーはあまり生体適合性ではなく、異物炎症応答を誘導し、さらなる過形成および再狭窄がもたらされることすらあり得る。
【0004】
WO 03/03961には、生物系油を主成分としたステントコーティングの使用が記載されている。生体適合性の改善が示され、激しい重合工程の必要性が回避されている。
【0005】
EP−1,576,970には、埋入用医療デバイスに化学的に硬化させた脂肪のコーティングを使用することが教示されており、これにより、該コーティングは、二重結合の水素化によって安定化される。このアプローチにより、化学的により安定な生成物が得られ、酸化されにくく、貯蔵寿命の改善がもたらされ、さらには、冠動脈ステントモデルへの埋入後のコーティングの分解が遅くなる。インビトロモデルでは、コーティングの質量減損と水素化の程度との間に直接的な関係が示された。より詳しくは、水素化は、トランス結合の形成を制限するため、米国特許第6,229,032号およびEP−0917,561の方法によって得られ得る。
【0006】
しかしながら、依然として、当該技術分野において、埋入用医療デバイス用コーティングの化学的安定性および柔軟性、ならびに天然油脂由来の材料でコーティングされた医療デバイスおよび医薬調製物の長期保存許容性を改善する必要性が存在する。また、当該技術分野において、インビボでの質量減損に対するコーティングの抵抗性を改善する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の概要
本発明は、医療デバイス(埋入用医療デバイス(例えばステント)など)のための代替コーティングを提供する。本発明の利点は、安定性および再現性が増大し、コーティングの変質の低減がもたらされることである。別の利点は、生物活性剤の制御放出が可能になることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)であって、前記混合物(a)のスリップ(slip)融点が50℃より上であり、前記混合物(a)の脂肪酸組成物が少なくとも2種類の異なる脂肪酸を含み、20〜95重量%の飽和脂肪酸および80〜5重量%の不飽和脂肪酸を含み(例えば、これらからからなり)、前記混合物(a)の少なくとも1種類の脂肪酸トリグリセリド(a1)が、同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有し、前記混合物(a)の少なくとも10重量%に相当する、脂肪酸トリグリセリドの混合物を提供する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による脂肪酸トリグリセリド混合物を含む、医療デバイス用の生体適合性コーティング組成物を提供する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様による脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)の調製方法であって、
−同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有する脂肪酸トリグリセリド(a1)を提供する工程、
−(a1)以外の1種類以上の脂肪酸トリグリセリドを提供する工程、および
−前記脂肪酸トリグリセリド(a1)を前記1種類以上の他の脂肪酸トリグリセリドでインターエステル化(interesterifying)する工程
を含み、
ここで、インターエステル化工程前の(a1)の量が、脂肪酸トリグリセリドの総量の10重量%より多く、(a1)以外の1種類以上の脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸組成物が少なくとも2種類の異なる脂肪酸を含み、20〜95%の飽和脂肪酸および80%〜5%の不飽和脂肪酸を含み、
インターエステル化工程は、例えば、得られる混合物が少なくとも10重量%の(a1)を含むような様式で行なわれる方法を提供する。
【0011】
第4の態様において、本発明は、その少なくとも一部の表面上に本発明の第2の態様による組成物を有する少なくとも1種類のコーティングを備える医療デバイスを提供する。第5の態様において、本発明は、かかるコーティング医療デバイスの作製方法を提供する。
【0012】
定義
本発明の状況において、トリグリセリドに関するエステル交換は、前記トリグリセリド内に最初から存在している脂肪酸鎖の少なくとも1つが、別の脂肪酸鎖で交換されることをいう。脂肪酸鎖が、一酸性もしくは二酸性脂肪またはアシルエステルに由来のものであるか、あるいは別のトリグリセリドに由来のものであるかに応じて、インターエステル化またはエステル交換のいずれかをいう。
【0013】
本明細書で用いる場合、特に記載のない限り、用語「制御放出」は、徐放、持続放出または持効放出と同義であり、一様なレベルの生物学的に活性な薬剤が、哺乳動物(特に、ヒト)の血流中および/または埋入物の周囲組織内(特に、血管壁内)に規定の時間にわたって提供されることをいう。この規定の時間は、「制御放出」が、使用される生物学的
に活性な薬剤(1種類または複数種)の治療濃度域に依存性であるため、数時間から2ヶ月の範囲であり得る。より具体的には、「制御放出」は、4〜24時間内での前記生物活性剤の50〜95%の放出をいうものであり得る。
【0014】
また、「制御放出」は、少なくとも10時間、20時間、さらには50時間を越える時間内での前記生物活性剤の15〜50%の放出、および/または少なくとも1週間、2週間超、さらには5週間を超える時間内での前記生物活性剤の75%の放出をいう場合があり得る。
【0015】
本明細書で用いる場合、特に記載のない限り、用語「脂肪酸」は、慣用的に、炭素数が4〜26の好ましくは非分枝の脂肪族鎖を有する飽和もしくはエチレン性のモノ−または多価の不飽和モノカルボン酸をいう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ブタ冠状動脈内への埋入7日後の、比較水素化トリグリセリド(AおよびC)または本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリド(BおよびD)でコーティングされたステントがステント留置された血管セグメントの代表的な顕微鏡写真(AおよびBは倍率25;CおよびDは倍率100)を示す。
【図2】図2は、比較水素化トリグリセリドコーティング(「Ciscoat」とよばれる)および本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドコーティング(「TRANSEST」とよばれる)に関する、ブタ冠状動脈における(E、図の左部分)損傷スコアおよび(F、図の右部分)炎症スコアを示す。
【図3】図3は、本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドコーティングからの絶対タクソール放出を示す。
【図4】図4は、本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドコーティングからのタクソール放出のパーセンテージ量を示す。
【図5】図5は、比較トリグリセリド混合物の高速液体クロマトグラフィによる屈折率の線図を示す。
【図6】図6は、本発明によるトリグリセリド混合物の代表的な実施形態の高速液体クロマトグラフィによる屈折率の線図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、医療デバイスおよび医薬調製物のコーティングに有用な新規なエステル交換脂肪酸トリグリセリド混合物に関する。
【0018】
本発明の一態様による制御されたエステル交換を使用し、安定で再現性のあるコーティングを作製することが可能であり、該コーティングはまた、驚くべき良好な柔軟性を有し、コーティング特性の改善をもたらす。
【0019】
この所見により、この材料を、例えば、ステントコーティングまたは医薬丸剤用コーティングとして使用することにより、例えば、保存中の融解のため、保存は不活化の可能性に対する感受性が大きく低下するという予期しない利点がもたらされる。
【0020】
50℃より上の融点および/またはスリップ融点を有する本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドを主成分とするコーティングにより、再現性のある均一で平滑なコーティングを得ることが可能である。
【0021】
このようなエステル交換トリグリセリドコーティングはまた、インビトロモデルにおいて、質量減損に対して非常に良好な抵抗性を示す。また、インビボでは冠動脈のブタモデ
ルにおいて、経時的なコーティングの消失(連続脂肪染色によって評価)が低速である。より大きな再現性とより低速性が組み合わされたインビトロ薬物放出により、これは、特に医療デバイスに対し、非常に信頼性のあるコーティングであることが実証された。
【0022】
さらにまた、本発明のエステル交換法を使用すると、同じ鎖上に3つの二重結合を含まないエステル交換トリグリセリドのコーティングを提供することが可能であり、そのため、このようなコーティングは、酸化されにくいため、化学的安定性もまた以前のコーティングと比べて優れている。
【0023】
本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドは、2種類以上のトリグリセリドの混合物におけるインターエステル化反応によって、好ましくは部分インターエステル化(例えば、インターエステル化反応を、出発トリアシル(triacy)グリセロールの少なくとも1種類の有意な量が依然として存在している段階で停止することにより(最も好ましくは、この残留出発トリアシルグリセロールが、同じ飽和脂肪酸残基を各位置に有するグリセロールである))によって得られ得る。
【0024】
本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドの脂肪酸組成物は、重要な要素であるが広範囲で異なり得、一方で、先行技術の混合物と比べてなお利点をもたらすものである。一般に、該エステル交換トリグリセリドの脂肪酸組成物は、20〜95重量%、好ましくは30〜80重量%、最も好ましくは40〜60重量%の飽和脂肪酸を含む。したがって、本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドの脂肪酸組成物は、通常、80〜5重量%、好ましくは70〜20重量%、最も好ましくは60〜40重量%の不飽和脂肪酸を含む。
【0025】
また、本発明の一実施形態によるエステル交換トリグリセリドのトリグリセリド組成物は広範囲で種々変化し得るが、該組成物のスリップ融点が50℃より上であり、好ましくは100℃未満、最も好ましくは70℃未満であるとともに、良好な柔軟性およびコーティング特性の改善が維持されたものであるとする。これは、本明細書において上記の脂肪組成物を有する混合物のインターエステル化によって得られ得、ここで、インターエステル化の停止後、脂肪酸トリグリセリドの少なくとも1種類は、同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の3つの位置に有するものであり、トリグリセリド混合物の少なくとも10重量%(例えば、少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%)で存在する。
【0026】
エステル交換トリグリセリドを得る主要な方法は、既に当該技術分野で知られている。本発明の一実施形態において使用される具体的な方法を、以下の実施例に記載する。最も一般的な方法は、反応が酸(トルエンスルホン酸など)または塩基(ナトリウムメトキシド)の添加によって触媒される化学的エステル交換である。典型的には、あらゆる湿分が確実に除去されることが確保されるように、乾燥および脱気プロセスがエステル交換前に行なわれる。任意選択で、触媒は、反応が円滑に進行可能となるように微細分散させる。反応は、一般的に、70℃〜120℃の温度範囲で行なわれる。反応時間は、1時間未満(例えば、30分間)であり得、24時間までであり得る。触媒は、好ましくは、反応終了後に不活化される。触媒の不活化は、典型的には、水、希無機酸(触媒が塩基の場合)、あるいは、水と二酸化炭素の混合物を添加することにより行なわれる。
【0027】
エステル交換は、制御型または非制御型(例えば、ランダム)のいずれかであり得る。典型的には、制御型エステル交換では、熱力学的平衡状態が開始点として使用され、これは、存在する、またはエステル交換によって形成された高融点のやや溶けにくいトリグリセリドを、結晶化させることによって意図的に妨げ、これらを平衡から除くものである。
【0028】
あるいはまた、エステル交換トリグリセリドは、酵素を触媒として使用することにより
得られ得る。この方法は、一般的に、パーム油またはココナッツ油などに由来する天然材料を出発物質とするエステル交換の場合に適用される。酵素系エステル交換に使用される触媒の例は、当該技術分野でよく知られた1,3特異的リパーゼ(Novozyme製のものなど)である。
【0029】
本発明の状況において使用されるトリグリセリドは、油脂、より特別には生物学的油脂、例えば限定されないが、植物油または魚油であり得る。
【0030】
特別な一実施形態によれば、好ましくは精製トリグリセリドを出発材料として使用し、本発明のコーティング用のエステル交換脂肪酸トリグリセリドを作製する。このような好ましくは精製された基剤トリグリセリドの脂肪酸鎖は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0031】
好適な飽和脂肪酸は、限定されないが、酪酸(C)、吉草酸(C)、カプロン酸(C)、エナント酸(C)、カプリル酸(C)、ペラルゴン酸(C)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)およびセロチン酸(C26)からなる群より選択されるものであり得る。
【0032】
好適な不飽和脂肪酸は、限定されないが、オレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、エイコサペンタン酸(EPA)、ドコサヘキエンサン酸(DHA)、オレイン酸、パルミトレイン酸およびミリストレイン酸からなる群より選択されるものであり得る。優先的には、脂肪酸は、トランス−二重結合を含まないものである。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、エステル交換トリグリセリドは、トリグリセリド、すなわち、1つの脂肪酸鎖と2つの短い酸鎖(例えば、アセトイル(acetoyl)またはプロパノイル)を有するトリグリセリド(例えば、1,3−ジアセトパルミチンなど)、または2つの脂肪酸鎖と1つの短い酸鎖(例えば、アセトイルまたはプロパノイル)を有するトリグリセリドを含む。
【0034】
より詳しくは、限定数の二重結合(例えば、脂肪酸1つあたり3つ以下のエチレン性不飽和)を含むエステル交換トリグリセリドが想定される。一実施形態において、本発明のエステル交換トリグリセリドの脂肪酸鎖は、炭素数4〜26、好ましくは炭素数8〜24、より好ましくは炭素数12〜20の長さを有する。特に、本発明の一実施形態によるコーティングは、脂肪酸鎖が、ラウリン脂肪酸、ミリスチン脂肪酸、パルミチン脂肪酸、ステアリン脂肪酸、オレイン脂肪酸リノール脂肪酸およびアラキジン脂肪酸鎖の群から選択されるエステル交換脂肪酸を含む。一実施形態において、本発明のコーティングは、各々が3つ未満の二重結合を有する脂肪酸鎖からなるエステル交換トリグリセリドを含む。さらなる一実施形態によれば、本発明のコーティングのエステル交換脂肪酸は、飽和および/またはモノ不飽和脂肪酸鎖のみを含む。択一的な一実施形態によれば、エステル交換脂肪酸は、オレイン、リノールおよびステアリン脂肪酸鎖を含む。別の実施形態によれば、エステル交換脂肪酸は、パルミチン、オレインおよびリノール脂肪酸鎖を含む。一実施形態によれば、エステル交換脂肪酸は、3つの同一のカルボン酸鎖(トリオレイン、トリリノレイン、トリステアリンなど)を含むトリカルボン酸グリセリルエステルのランダムエステル交換によって得られ、これにより、該組成物は、出発生成物の相対比を特徴とする。この具体的な実施形態によれば、部分インターエステル化されると、得られる脂肪酸トリグリセリド混合物は依然として、3つの同一のカルボン酸鎖を有する2種類以上のトリカルボン酸グリセリルエステルを含む。例えば、該混合物は依然として、同じ飽和脂肪酸
を有する両方の脂肪酸トリグリセリドを少なくとも10重量%、および同じ不飽和脂肪酸を有する脂肪酸トリグリセリドを少なくとも6重量%含む。
【0035】
前記エステル交換トリグリセリドの脂肪酸鎖は、20〜40重量%のリノール酸、20〜40重量%のステアリン酸および20〜40重量%のオレイン酸を含む(例えば、これらからなる)ものであり得る。トリオレイン/トリステアリン/トリリノレイントリグリセリドの組合せを用いた場合、使用したトリグリセリド比とは無関係に、65℃前後の融点を有する再現性のある安定なコーティングが得られた。このコーティングのスリップ融点は62℃であった。この所見により、この材料を、例えば、ステントコーティングまたは医薬丸剤として使用することにより、例えば、保存中の融解のため、保存は不活化の可能性に対する感受性が大きく低下するという予期しない利点がもたらされる。
【0036】
別の態様によれば、本発明は、
−同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有する脂肪酸トリグリセリド(a1)を提供する工程、
−(a1)以外の1種類以上の脂肪酸トリグリセリドを提供する工程、および
−前記脂肪酸トリグリセリド(a1)を前記1種類以上の他の脂肪酸トリグリセリドでインターエステル化する工程
を含み、
ここで、インターエステル化工程前の(a1)の量が、脂肪酸トリグリセリドの総量の10重量%より多く、提供される脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸組成物は、20〜95%の飽和脂肪酸および80%〜5%の不飽和脂肪酸を含み、インターエステル化工程は、例えば、得られる混合物が少なくとも10重量%の(a1)を含むように行なわれる、本発明の第1の態様による脂肪酸トリグリセリドの混合物の調製方法を提供する。
【0037】
少なくとも10重量%の(a1)を含む混合物の生成が得られるように、インターエステル化工程または部分インターエステル化工程(出発材料の型および量に依存)は、前記インターエステル化が行なわれる温度ならびに触媒を存在させる場合はその型および量と直接相関する限定された時間(これは、当業者には理解されよう)で行なわれ得る。
【0038】
さらなる一態様によれば、本発明は、医療用途のための構造体、噴霧、皮膚用溶液、粒子、丸剤および溶液などの医薬組成物用マトリックスを提供する。
【0039】
本発明の一実施形態によるコーティング組成物は、10〜100重量%のエステル交換脂肪酸トリグリセリドを含む。生物活性剤をコーティング内に含める場合、コーティングの10〜90重量%がエステル交換トリグリセリドで構成され得る。しかしながら、他の比、例えば、前記生物活性剤化合物の量が0.1〜50重量%であるコーティングが想定される。
【0040】
一態様によれば、エステル交換トリグリセリドを使用し、医療デバイスをコーティングまたは被覆する。この医療デバイスは、例えば、管腔内プロテーゼ、ステント、シャント、カテーテル、局所薬物送達デバイス、外科用ワイヤまたはクリップであり得る。
【0041】
特別な一実施形態において、本発明は、管腔内デバイスに粘着される少なくとも1つのエステル交換トリグリセリド系コーティングが施された管腔内デバイス、特に、管腔内プロテーゼ、ステント、シャント、カテーテルまたは局所薬物送達デバイスに関する。このコーティングは、激しい重合工程を必要とせず、化学的に安定であり、生体適合性である。かなり驚くべきことに、このようなエステル交換トリグリセリドコーティングは管腔内デバイスに良好に付着し、そのため、管腔内への挿入時、コーティングの大部分が管腔内デバイス上に残留することがわかった。トリグリセリドを選択することで、コーティング
により、管腔内デバイスによって誘導される異物炎症応答が低減される。
【0042】
一実施形態によれば、エステル交換トリグリセリドのコーティングは、治療用薬剤を含む。したがって、特別な一実施形態において、本発明は、1種類以上の治療用薬剤の局所徐放がもたらされるのを可能にするエステル交換トリグリセリドコーティングが施された新規な管腔内デバイスを提供する。この目的を達成するため、本発明の一実施形態による管腔内デバイスは、治療用薬剤を含むマトリックスが、エステル交換トリグリセリドで形成されていることを特徴とする。
【0043】
本発明の特別な実施形態では、生物活性剤の制御送達用のコーティングが使用される。生物活性剤という用語には、治療用または予防用化合物、1種類以上の他の化合物との組合せで個々に投与されるか、または局所に存在させると治療または予防効果をもたらす化合物、同定目的における使用のための化合物などが含まれる。
【0044】
一実施形態によれば、コーティングは、体内腔に挿入されると治療用薬剤の放出を遅延させるものである。
【0045】
また、治療用薬剤は、コーティングの一成分ではなく、任意の化学結合手法によってコーティングと化学的に結合されていてもよい。治療用薬剤は、例えば、脂肪酸基またはグリセロール基に化学的結合されたものであり得る。
【0046】
また、本発明の一実施形態によるデバイスでは、治療用薬剤は、エステル交換トリグリセリドと混合されたものであり得る。コーティング物質に可溶性である場合、治療用薬剤を該物質に溶解させることができ、またはコーティング物質に可溶性でない場合は、該物質中に分散させることができ、より特別には、治療用薬剤が液状か固形かという事実に応じて乳化または懸濁させることができる。
【0047】
治療用薬剤は、新生内膜過形成抑制薬、血小板阻害薬、平滑筋細胞脱分化抑制薬、平滑筋細胞増殖抑制薬、および平滑筋細胞遊走抑制薬の群から選択されるものであり得る。
【0048】
より具体的な治療用薬剤は、ビンブラスチン、シロリムス、ミトキサントロン、タクロリムス、パクリタキセル、サイトカラシン、ラトランクリンおよびエベロリムス、ならびにこれらの薬物の前駆物質、類縁化合物および/または誘導体からなる群より選択される薬物であり得る。
【0049】
また、デフェロキサミン、ゲルダナマイシン、ニゲリシン、ペニトレム、パキシリン、ベルクロゲン、KT5720、KT5823、アニソマイシン、ケレリトリンクロライド、ゲニステイン、パルテノライド、トリコスタチンA、T2トキシン、ゼアラレノン、インターフェロン、エピサロン−D、Ca−イオノフォア、4ブロモCaイオノフォア、アフラトキシン、アフィディコリン、ブレフェルディンA、セルレニン、クロモマイシンA3、シトリニン、サイクロピアゾン酸、フォルソコリン、フマギリン、フモニシンB1、B2、ヒペリシン、K252、ミコフェノール酸、オクラトキシンA、およびオリゴマイシンからなる群より選択され得るか、またはさらに、ミコフェノール酸、ミコフェノレート・モフェティル、ミゾリビン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンおよび他のコルチコステロイド類、certican(商標)、tritolide(商標)、methotrexate(商標)、benidipine(商標)、ascomycin(商標)、wortmannin(商標)、LY 294002、Camptothecin(商標)、Topotecan(商標)、ヒドロキシ尿素、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダクリズマブ、アザチオプリン、gemcitabine(商標)、ならびにこれらの薬物の前駆物質、誘導体および類縁化合物からなる群より選択され得る。治療用薬
剤として、抗血栓、抗炎症、抗有糸分裂、抗血管新生および/または抗再狭窄いずれかの作用を有する、ある種の物質(タンパク質)をコードする遺伝子も同様に使用され得る。
【0050】
治療用薬剤は、種々の効果を有するものであり得、これに関連して、免疫抑制薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗遊走剤、抗線維剤、アポトーシス促進薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗腫瘍薬、抗体、抗血栓薬、抗血小板剤、IIb/IIIa遮断薬、抗ウイルス剤、抗癌剤、化学療法薬、血栓溶解薬、血管拡張薬、抗生物質、成長因子拮抗薬、フリーラジカルスカベンジャ、放射線不透過剤、抗血管新生剤、血管新生薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイトカイン阻害剤、酸化窒素供与体、およびサイトカイン活性薬の中から選択されるものであり得る。また、薬物の併用も使用され得る。
【0051】
本発明の一実施形態により管腔内デバイス上に施されるコーティングには、治療用薬剤およびトリグリセリドコーティングに加えて、他の物質を含めてもよい。例えば、コーティングに安定化のために、なんらかの物質、特に、なんらかの天然または合成ポリマー系物質、結合剤、増粘剤などを添加することが可能である。しかしながら、かかる物質の量は、エステル交換トリグリセリドコーティングの生体適合性の改善をできるだけ高く維持するため、コーティング組成物全体の好ましくは80重量%未満、より好ましくは50重量%未満、最も好ましくは20重量%未満に維持される。
【0052】
コーティングからの治療用薬剤の放出を制御または調整するため、このコーティングの上面にトップコーティング、特に、同じまたは異なる生体適合性エステル交換トリグリセリド組成物のトップコーティングを施してもよい。しかしながら、トップコーティングはまた、異なる化学組成のものであってもよい。治療用薬剤が送達される速度は、施されるコーティングの厚み、コーティングにおけるエステル交換トリグリセリドに対する治療用薬剤の比によって、または種々の薬物濃度の多層コーティングを施すことによってさらに制御され得る。本発明の一実施形態によるデバイスでは、治療用薬剤の放出は、一定の安定性レベルおよび融点またはスリップ融点を有する適切な生体適合性エステル交換トリグリセリドの選択によってさらに制御され得る。
【0053】
本発明の一実施形態による埋入用デバイスのエステル交換トリグリセリドコーティングは、好ましくは、治療用薬剤に対して有害が影響を及ぼすことなく治療用薬剤がエステル交換トリグリセリドと溶融状態で混合され得るように、100℃未満、より好ましくは70℃未満融点を有する。
【0054】
また、治療用薬剤は、溶媒を用いてコーティング中に溶解させてもよい。溶融状態の治療用薬剤、エステル交換トリグリセリド混合物と、揮発性溶媒(例えば限定されないが、アセトン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチルなど)との混合物が作製され得る。エステル交換トリグリセリド混合物とエマルジョンを形成するエタノールもまた使用され得る。
【0055】
さらなる一態様において、本発明は、管腔内デバイスに、エステル交換トリグリセリドを含む少なくとも1種類のコーティングを施すことを含む、管腔内デバイス、特に、管腔内プロテーゼ、ステント、シャント、カテーテルまたは局所薬物送達デバイスに、生体適合性の増大をもたらす方法に関する。
【0056】
この方法の特別な一実施形態によれば、エステル交換トリグリセリド混合物を含むコーティングは、管腔内デバイスに粘着されるマトリックス中の内包された治療用薬剤を含む。本発明のこの態様によれば、マトリックスは、前記治療用薬剤を含む生体適合性エステル交換トリグリセリド混合物であって、流動可能な状態でデバイス上に適用される該混合物によって形成されたものである。
【0057】
エステル交換トリグリセリド混合物が充分に低い粘度を有する場合(加熱後)、これは、溶融状態でデバイス上に適用され得る。しかしながら、通常、好ましくは溶媒が利用され、これは、デバイス上にコーティングを施す前にエステル交換トリグリセリドと混合され、溶媒とエステル交換トリグリセリドの混合物をデバイス上に適用した後、溶媒を蒸発させる。
【0058】
エステル交換トリグリセリド混合物が溶媒に可溶性である場合、溶媒中のエステル交換トリグリセリドの溶液を作製した後、まずエステル交換トリグリセリド中に含めていない治療用薬剤を添加することができる。エステル交換トリグリセリドが可溶性でない場合は、均一な混合物、特にエマルジョンを最初に作製する。あるいはまた、治療用薬剤を最初に溶媒に溶解または分散させた後、これをエステル交換トリグリセリドと混合してもよい。
【0059】
本発明の特別な一実施形態による方法は、以下の工程:
a)プロテーゼの洗浄、脱気および乾燥
b)抗酸化性溶液中へのプロテーゼの浸漬、およびその乾燥(例えば、風乾による)、
c)エステル交換トリグリセリド混合物と溶媒のエマルジョンまたは溶液の作製
d)プロテーゼ本体への治療用薬剤含有エステル交換トリグリセリド/溶媒のエマルジョンまたは溶液の適用(例えば、ディップコーティングまたはスプレーコーティングまたは任意の他のコーティング方法を使用)
e)溶媒が蒸発するまで乾燥(例えば、風乾による)
f)任意選択で、先の工程を多数回反復、最終的に、異なる治療用薬剤を使用
g)プロテーゼをさらに乾燥(例えば、滅菌層流中で、エステル交換トリグリセリドコーティングが固化するまで。また、この工程は、真空チャンバ内で行なってもよい)
を含む。
【0060】
任意選択で、この方法は、1種類以上の治療用薬剤を、工程(c)で得られたエマルジョン/溶液に溶解する工程をさらに含む。治療用物質に必要なことは、溶媒/エステル交換トリグリセリドエマルジョンまたは溶液全体に分散させるだけであり、その結果、これは、溶媒/エステル交換トリグリセリドエマルジョンとの真の溶液、または溶媒/エステル交換トリグリセリドエマルジョンもしくは溶液中の微粒子状で溶液もしくは分散状態のいずれかとなり得る。
【0061】
エステル交換トリグリセリドは、例えば、EPAおよび任意選択でDHAで富化されたものであってよい。また、α−トコフェロールおよび/またはその誘導体をエステル交換トリグリセリドに添加することが可能である。あるいは、治療上活性な基(不飽和脂肪酸基など)を含むエステル交換トリグリセリドが選択され得るか、または治療用薬剤をエステル交換トリグリセリドに、任意の化学結合手法を用いて結合させ得る。このようにしてエステル交換トリグリセリドに既に治療用薬剤が供給されている場合、なんらさらに治療用薬剤を付加する必要はないが、それでもさらなる治療用薬剤を付加させることが可能である。
【0062】
乾燥後、生体適合性エステル交換トリグリセリドを含むか、または任意の他のコーティング材料で構成されたトップコートを、ディップコーティング、スプレーコーティングなどのコーティング手法、または任意の他の同等のコーティング方法によって付加してもよい。
【0063】
乾燥後、得られたコーティングプロテーゼは、そのように使用してもよく、さらに乾燥および滅菌してもよい。保存時の生体適合特性を維持するため、得られたコーティングプ
ロテーゼの光保護および真空パッケージングするのがよい。
【0064】
本発明の一実施形態による生体適合性のエステル交換トリグリセリドをプロテーゼ被覆薬物と充分に接触させて含めることにより、プロテーゼの拡張中、薬物がプロテーゼの弾性のマトリックス中に保持されることが可能になり、また、埋入後の薬物の投与が遅延される。
【0065】
プロテーゼが金属性の表面を有するものであろうと、ポリマー系表面を有するものであろうと、任意の本発明の方法が使用され得る。また、本発明の方法は、単純にプロテーゼを溶液(エマルジョン)中に浸漬すること、または溶液(エマルジョン)をプロテーゼ上に噴霧することにより実施され得るため、極めて単純である。プロテーゼ上に含める薬物の量は、限定されないが、異なる薬物濃度および/または異なるコーティング適用法の使用および/または溶媒の使用量により容易に制御され得る。薬物が送達される速度は、一定の安定性レベルおよび融点の適切なトリグリセリドの組合せの選択によって、および溶液中のエステル交換トリグリセリドに対する薬物に比によって制御され得る。放出速度は、さらなるバリアコーティングまたは種々の薬物濃度の多層コーティングを使用することによりさらに制御され得る。さらに、この系により、異なる治療用薬剤の使用が可能になる。手術では、本発明により作製されるプロテーゼによって薬物が体内腔内に、プロテーゼを体内腔の選択した部分に経管腔的に導入し、プロテーゼを体内腔と接触した状態で放射状に拡張させることにより送達され得る。経管腔送達は、プロテーゼ送達用に設計されたカテーテルによって行なわれ得、放射状の拡張は、プロテーゼのバルーン拡張、プロテーゼの自己拡張または自己拡張とバルーン拡張の組合せによって行なわれ得る。
【0066】
したがって、本発明は、治療上有意な適用量の薬物または遺伝子が失われることなく、選択された体内腔または導管に送達され拡張され得るプロテーゼを提供する。また、本発明は、管腔または導管の組織への薬物または遺伝子の徐放を可能にする、薬物または遺伝子を含むプロテーゼを提供する。
【0067】
本発明に従って使用されるプロテーゼの基本構造は、事実上任意のプロテーゼ設計であり得、例えば、自己拡張型またはバルーン拡張可能型、および金属またはポリマー系材料製のものであり得る。したがって、US−A−4.733.665およびUS−A−5.603.721に開示されたものなどの金属プロテーゼ設計が、本発明において使用され得る。また、局所薬物送達が最適化されるように特別な表面処理がなされた、または特別な設計のプロテーゼが、本発明に特に適している(例えば:DE199 16 086 A1、EP O 950 386 A2、EP 1 132 058 A1、WO 01/66036 A2、WO 98/23228、US 5.902.266、US 5.843.172、その内容は、引用により本明細書に組み込まれる)。プロテーゼの表面には、特に、治療用薬剤の負荷量を増大させるため、および/または放出を遅滞させるために、コーティング材料が満たされ得る穿孔またはくぼみが設けられたものであってもよい。コーティングを施した後、穴またはくぼみのそばのプロテーゼの表面をふき取り、または洗浄してコーティング材料を除去してもよい。したがって、本発明には、プロテーゼを被覆する連続コーティングだけでなく、不連続な局所コーティングまたは局所コーティングとその上面に適用される連続トップコーティングとの組合せもまた包含される。さらに、コーティングは、プロテーゼの表面上に適用されたものである必要はない。例えば、多孔質プロテーゼが使用される場合、コーティングはプロテーゼの細孔内に存在していてもよい。プロテーゼは、該設計に適した物性を有する事実上任意の生体適合性材料で作製されたものであり得る。例えば、タンタル、ニチノール、コバルトクロムおよびステンレス鋼は、かかる設計の多くに好適であることが示されており、本発明において使用され得る。また、生体内安定性または生体内吸収性ポリマー、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリセタール、ポリ(乳酸)、ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(ブチレンテ
レフタレート)コポリマーなどおよび/または生体内吸収性金属合金で作製されたプロテーゼも本発明において使用され得る。プロテーゼ表面は洗浄し、製造中に導入され得る汚染物質を含まないようにするのがよいが、プロテーゼ表面には、本発明において適用されるコーティングを保持するための特別な表面処理は必要とされない。
【0068】
埋入用デバイス、より特別には管腔内デバイスのコーティングの状況では、選択されるエステル交換トリグリセリドは、好ましくは生体適合性であり、プロテーゼが埋入されたときの血管壁に対する刺激が最小限であるものであるのがよい。溶液中のエステル交換トリグリセリド/溶媒の溶液またはエマルジョンに対する治療用物質の比は、治療用物質がプロテーゼ上に固着される際のエステル交換トリグリセリドの有効性、およびコーティングが治療用物質を血管または体内導管の組織に放出する速度に依存する。コーティング物質は、治療用物質をプロテーゼ上に保持する際の有効性が比較的不充分な場合には、より多くが必要とされ得、また、非常に可溶性の治療用物質の溶出を制限する溶出マトリックスを提供するために、より多くのコーティング物質が必要とされ得る。したがって、エステル交換トリグリセリド/溶媒の溶液またはエマルジョンに対する治療用物質の比は、広範囲が適切であり得、特に、重量比は、約100:1〜1:100の範囲である。
【0069】
別の態様によれば、本発明は、生物活性物質の経皮、経腸または非経口送達のための、1種類以上の生物活性物質を含有するものであり得る微粒子および巨大粒子を作製するためのエステル交換トリグリセリド混合物の使用に関する。さらにまた、これらは、生物活性物質を管腔内に、例えば、気管支内、子宮内および鞘内に送達するために使用され得る。また、この実施形態では、薬物放出を最適化するために、類似または異なる化学組成で作製されたトップコーティングの使用が採用され得る。さらにまた、薬物放出を最適化するために、異なる薬物濃度を含む多層の使用が採用され得る。
【0070】
特別な一実施形態において、(非化学的)脂肪変換法、すなわち、分別結晶が使用され、これは、分別または不凍化(winterizing)ともいわれる。不凍化は、低温すなわち「冬」の温度を利用して油を2つの成分:オレイン(元の油よりも低い融点を有する液状画分)とステアリン(高融点を有する固形画分)に分画または分離する方法である。これは、医療デバイスのコーティングに重要であり得ることが想定される。
【0071】
分別に適した天然油は、例えば限定されないが、ココナッツ油、パーム油およびパーム核油である。
【0072】
パーム油は、油やし種E.Guineensisの果実の果肉から得られる。パーム油は、室温で半固形であり、これは、飽和レベルがほぼ50パーセントであることによってもたらされる特徴である。パーム油(およびその製品)は、広い高温範囲で酸化および熱に対して良好な抵抗性を有する。実際、多くの場合で、パーム油は、ダイズ油およびキャノーラなどの従来の硬化種油の100パーセント代用品として使用されている。パーム油の典型的な脂肪酸組成を示す。
【0073】
【表1】

【0074】
パーム油の主な利点は、同じ融点を有する硬化油とは異なり、現在心臓疾患の危険因子と認められているトランス脂肪酸を含まないことである。
【0075】
パームオレインは、制御された温度で結晶化を行なった後のパーム油の分別によって得られる液体画分である。パームオレインの物理的特性は、パーム油のものと異なる。これは、温暖な気候では完全に液状の画分であり、狭い範囲のグリセリドを有する。その平均的な脂肪酸組成は、パルミチン酸(41%)、オレイン酸(42%)およびリノール酸(12%)である。
【0076】
パームステアリンは、制御された温度で結晶化を行なった後のパーム油の分別によって得られる、もっと固形の画分である。したがって、これは、パームオレインの副生成物である。パームステアリンは、ショートニングやペーストリおよびパン用マーガリンなどの製品の天然の充分に硬い脂肪成分の非常に有用な供給源である。その平均的な脂肪酸組成は、パルミチン酸(57%)、オレイン酸(29%)およびリノール酸(7%)である。
【0077】
分別条件を変えることにより、この2つの画分の相対収率は変化し得る。分別は、異なる特性の生成物、特にパーム中間画分が得られるように変更され得る。分別により、種々の等級のオレインおよびステアリンが得られ得、必要とされる特性を有する等級を選択することが可能になる。
【0078】
分別結晶によって得られる典型的なパーム油およびパーム油画分のヨウ素価および融点を以下の表にまとめる。
【0079】
【表2】

【0080】
一実施形態において、不凍化手順は、固形画分を使用し、微粒子および巨大粒子で埋入用デバイスにコーティングが施されるように使用され得る。例えば、上記に示したパームステアリンの特性に鑑みると、パームステアリンは、埋入用デバイス用コーティングとして使用され得る。さらなる一実施形態によれば、不凍化手順は、液状画分を用いて生体適合性のコーティングが施されるように使用され得る。
【0081】
さらにあるいはまた、本発明のエステル交換トリグリセリドは、化学的硬化または水素化に供され得る。最も特別には、水素化は、トランス結合の形成を制限するために、米国特許第6,229,032号およびEP−0917,561に記載のようにして行なわれ得る。
【0082】
したがって、本発明の一態様によれば、2つまたは3つの油変換方法(水素化、エステル交換またはインターエステル化、および分別結晶)を組み合わせて最適な最終生成物を得る(例えば、流動的は組成を有する原料を、生体適合性、化学的安定性および薬物放出特性に関してほぼ一定の特性を有する生成物に変換する)。
【実施例1】
【0083】
実施例1:グリセリド混合物の化学的エステル交換
以下の出発材料を使用した。
【0084】
【表3】

【0085】
以下のエステル交換手順に従った。必要量のトリステアリン、トリオレインおよびトリリノレインを、70℃の真空炉内に1時間投入する。
【0086】
1.0.01gのNaOMeを出発材料に添加し、次いで、混合物を110℃まで加熱し、連続的に1時間撹拌する。
【0087】
2.この溶液を、分液漏斗を用いて熱水で洗浄する。
3.この溶液を、80℃の炉内で0.2μmフィルターにて濾過する。
【0088】
4.得られた生成物を、70℃の真空炉内に2時間投入する。
上記のプロトコルによって3種類の異なるエステル交換生成物が作製された。
【0089】
【表4】

【0090】
融点(MP)を、DSC(デジタル走査熱量測定)によるグラフ内の最大ピークとして測定した。
【0091】
また、これらのエステル交換トリグリセリドのスリップ融点も測定し、約62℃であった。
【実施例2】
【0092】
実施例2:エステル交換トリグリセリドでコーティングされたステント
実施例1のエステル交換生成物AP060を使用し、ステントをディップコーティングにより、以下の手順に従ってコーティングした。
【0093】
1.エステル交換トリグリセリドを450vol%のアセトンと混合し、55℃まで加熱し、均一な溶液が得られるまで連続的に撹拌した。
【0094】
2.バルーンカテーテル上に備えられた滅菌ステント(Nexus II、3.5×15mm、Occam International BV(Biosensors)、Eindhoven、The Netherlands)を、均一な溶液中に5秒間浸漬させた。
3.溶媒(アセトン)室温で蒸発させた。
【0095】
エステル交換トリグリセリドコーティングを有するステント(異なる倍率)および比較の非コーティングステントの光学顕微鏡解析を行なった。エステル交換トリグリセリドコーティングステントについて、上記のプロトコルを使用すると、非常に薄くて均一なコーティングが得られることが確認された。
【0096】
また、コーティング後にステントを拡張した。これは、最悪条件の場合である室温で行なった(通常、ステントは、コーティングがより柔軟になる37℃において拡張される)。
【0097】
この例は、ステントがエステル交換トリグリセリドコーティングでコーティングされ得ることを示す。エステル交換トリグリセリドコーティングは、ステント拡張時、薄片化(flaking)し始めない。
【実施例3】
【0098】
実施例3:エステル交換トリグリセリドコーティングにおける引掻試験
1cmの総表面積を有するステンレス鋼プレート(316LVM)を、実施例2で作製した溶液中に浸漬させた。浸漬後、プレートを室温まで放冷した。シリンジニードルを用いて手作業でかき傷をつけた。このかき傷を、光学顕微鏡によって検査した。
【0099】
コーティング材料は、そのコーティングにニードルでかき傷をつけると、押しのけられることが確認された。ほぼ全部の材料がプレート上に残留した。層間剥離または薄片は観察されなかった。
【実施例4】
【0100】
実施例4:エステル交換トリグリセリドコーティングの生体適合性試験
エステル交換トリグリセリド(ロット番号AP060−実施例1参照)を55℃まで加熱した。連続的に撹拌しながら、均一な溶液が得られるまでアセトンを添加した。4つのステンレス鋼ステントをこの溶液中に浸漬させた後、風乾させた。
【0101】
対照として、2つのステントを、水素化トリグリセリドおよびアセトンを含有する溶液中に50℃で浸漬させることにより、水素化トリグリセリドでディップコーティングによってコーティングした。
【0102】
ステント(3.0×15mmおよび3.5×15mm)を、ブタの冠状動脈内に無作為に埋入した。ステント埋入の7日後、動物を屠殺した。すべてのステント留置血管を開いた(patent)。
組織病理学検査
エステル交換トリグリセリド(TRANSEST)でコーティングしたステントが留置された血管において、中膜は大きく圧迫されていたが、わずかに少数の内弾性板が裂けており、ステント埋入によって誘導された損傷は中等度であった(図1;B、Dおよび図2E)。
【0103】
TRANSESTステント群の炎症応答は低く、1つのステント支柱だけ、炎症性細胞で覆われていた(図1;B、Dおよび図2F)。
【0104】
各支柱部位の動脈損傷を、各支柱が貫通している解剖学的構造によって調べた。0(損傷なし)〜3(大きな損傷)の数値を割り当てた。
【0105】
0=内弾性板(IEL)および中膜が無傷、または中膜が圧迫されているが<50%;
1=IELが裂けているか、または中膜が圧迫されているが>50%;
2=IELおよび中膜が裂けているが、外弾性板(EEL)は無傷;
3=IEL、中膜およびEELが裂けている。
【0106】
ステントフィラメント部位ごとに炎症反応を注意深く調べ、炎症性細胞を探し、以下のとおりにスコアリングした。
【0107】
1=ステントフィラメント周囲にリンパ組織(histiolymphocytic)浸潤がまばらに存在;
2=ステントフィラメントを覆うリンパ組織浸潤が、より密に存在するが、異物肉芽腫または巨細胞はない;
3=炎症性細胞および/または巨細胞が散在、また中膜に侵入。
【0108】
ステント支柱周囲には、重症な血栓症形成は観察されなかった。
水素化トリグリセリド(Ciscoat)でコーティングしたステントが留置された血
管では、中膜が大きく圧迫されており、一部の内弾性板は裂けており、ステント埋入により誘導された損傷は、TRANSESTステントの場合よりも大きく(0.88±0.25対0.61±0.07;図1;A、Cおよび図2;E)、炎症スコアが高いという結果になった(1.16±0.07対1.05±0.12;図;A、Cおよび図2;F)。
結論:
この試験により、ステント埋入の7日間後において、エステル交換トリグリセリドでコーティングされたステントの生体適合性能が示され、これは、水素化トリグリセリド対照群と同等である。
【実施例5】
【0109】
実施例5:酵素的エステル交換トリグリセリドコーティングによる薬物放出
エステル交換トリグリセリド混合物を、以下の手順を用いて作製した。
【0110】
−30重量%のトリステアリン、30重量%のトリオレイン、40重量%のトリリノレインを、70℃の真空炉内に1時間投入する。
【0111】
−混合物を75℃で30分間撹拌する。
−1%の1,3特異的リパーゼ(リポザイム)を混合物に、75℃で1時間添加する。
【0112】
−Whatman no.4フィルタにて濾過する。
得られた混合物のスリップ融点は60℃であった。
【0113】
5重量%のパクリタキセル(タクソール)およびアセトンを、このトリグリセリド混合物に添加し、50℃まで加熱し、均一になるまで撹拌した。ステンレス鋼試料をこの溶液中に浸漬させた後、風乾させた。試料を5mlの放出媒体(0.02%(w/v)アジ化ナトリウムを含むPBS)中に37℃で入れ、振とう台にて連続的に振とうさせた。異なる時点において、試料を、新鮮放出媒体が入った新たなバイアル内に入れた。先のバイアルの媒体をHPLCで解析し、放出されたパクリタキセルの濃度を調べた。試験後、残留パクリタキセルをステンレス鋼試料上のコーティングから、コーティングをアセトン溶解させること(50℃)により遊離させた。累積放出曲線および相対放出曲線を、それぞれ図3および図4に示す。
【0114】
図4に示されるように、5週間後、薬物の75%が放出された。しかしながら、インビボの状況では、トリグリセリドが血管壁の平滑筋細胞によって代謝されるため、残留分の25%もまた放出される。この実施例は、薬物がエステル交換トリグリセリドと混合され得ること、およびエステル交換トリグリセリドが薬物放出能を有することを示す。
【実施例6】
【0115】
実施例6:化学的エステル交換
この実施例では、2つの成分:トリステアリン(70重量%)およびトリオレイン(30重量%)のみのブレンド(混合物)を作製した。スリップ融点(SMP)およびHPLC線図を、出発ブレンド(比較、下記表のTR031)、および0.05gのNaMeOの存在下で2時間の反応時間後に得られたエステル交換脂肪酸トリグリセリド混合物(下記表のTR032)について測定した。
【0116】
【表5】

【0117】
HPLC測定は、AOCS Official Method Ce 5b−89に従って行なった。
【0118】
比較ブレンドTR031のHPLC屈折率の線図(図5)では、ピークが2つだけ見られ、2つの出発成分(OOO、すなわちトリオレイン(保持時間は約10.3分間)、およびSSS、すなわちトリステアリン(保持時間は約21分間))に相当する。また、ピーク面積を計算した。以下の表を参照のこと。
【0119】
【表6】

【0120】
TR032のHPLC屈折率の線図(図6)では、2つの主剤成分(OOOおよびSSS)に相当するピークの他に2つのさらなるピーク、すなわち、OOS、SOOおよびOSO(すなわち、ジオレイルステアリルグリセロール)が保持時間およそ13分のピークに、ならびにSOS、OSS、SSO(すなわち、オレイルジステアリルグリセロール)が保持時間16.4のピークに見られる。ピーク面積を計算した。以下の表を参照のこと。これは、エステル交換反応が起こったことを示す。
【0121】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)であって、前記混合物(a)のスリップ融点が50℃より上であり、前記混合物(a)の脂肪酸組成物が少なくとも2種類の異なる脂肪酸を含み、20〜95重量%の飽和脂肪酸および80〜5重量%の不飽和脂肪酸からなり、前記混合物(a)の少なくとも1種類の脂肪酸トリグリセリド(a1)が、同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有し、前記混合物(a)の少なくとも10重量%に相当する、脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項2】
前記混合物(a)の各脂肪酸残基が4〜26個の炭素原子を含む、請求項1に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項3】
前記混合物(a)の不飽和脂肪酸組成物が、1種類以上のモノ不飽和脂肪酸および/または1種類以上の多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1または2に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項4】
スリップ融点が70℃未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項5】
前記混合物(a)が、少なくとも10重量%のトリステアリルグリセロール、トリパルミチルグリセロール、トリラウリルグリセロールまたはトリミリスチルグリセロールを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項6】
前記混合物(a)の脂肪酸組成物が、リノール酸、オレイン酸およびステアリン酸からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項7】
前記混合物(a)の脂肪酸組成物が1〜40%のオレイン酸および1〜40%のリノール酸からなるが、オレイン酸とリノール酸の総量は5〜80%の範囲であるものとする、請求項6に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項8】
前記混合物の脂肪酸鎖の組成物が、20〜40%のリノール酸、20〜40%のステアリン酸および20〜40%のオレイン酸からなる、請求項6に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項9】
前記混合物(a)の少なくとも1種類の脂肪酸トリグリセリド(a2)が、同じ不飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有し、前記混合物(a)の少なくとも6重量%に相当する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項10】
少なくとも1種類の脂肪酸トリグリセリド(a3)の1つまたは2つの酸残基が、2〜26個の炭素原子を含む、請求項1に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物。
【請求項11】
エステル交換トリグリセリドを含む、医療デバイス用の生体適合性コーティング組成物であって、前記エステル交換トリグリセリドが請求項1〜10のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)からなる、生体適合性コーティング組成物。
【請求項12】
前記組成物が、さらに、少なくとも1種類の生物学的に活性な化合物を含む、請求項11に記載の生体適合性コーティング組成物。
【請求項13】
前記生物活性化合物の含量が、前記コーティング組成物の0.01〜50重量%である、請求項11または12に記載の生体適合性コーティング組成物。
【請求項14】
前記活性化合物が、免疫抑制薬、抗炎症薬、抗増殖薬、抗遊走剤、抗線維剤、アポトーシス促進薬、カルシウムチャネル遮断薬、抗腫瘍薬、抗体、抗血栓薬、抗血小板剤、IIb/IIIa遮断薬、抗ウイルス剤、抗癌剤、化学療法薬、血栓溶解薬、血管拡張薬、抗生物質、成長因子拮抗薬、フリーラジカルスカベンジャ、放射線不透過剤、抗血管新生剤、血管新生薬、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、サイトカイン阻害剤、酸化窒素供与体、およびサイトカイン活性薬からなる群より選択される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の生体適合性コーティング組成物。
【請求項15】
−同じ飽和脂肪酸残基をグリセロール部分の各位置に有する脂肪酸トリグリセリド(a1)を提供する工程、
−(a1)以外の1種類以上の脂肪酸トリグリセリドを提供する工程、および
−前記脂肪酸トリグリセリド(a1)を前記1種類以上の他の脂肪酸トリグリセリドでインターエステル化する工程
を含み、
ここで、インターエステル化工程前の(a1)の量が、脂肪酸トリグリセリドの総量の10重量%より多く、提供される脂肪酸トリグリセリドの脂肪酸組成物は、20〜95%の飽和脂肪酸および80%〜5%の不飽和脂肪酸を含み、インターエステル化工程は、例えば、得られる混合物が少なくとも10重量%の(a1)を含むように行なわれる、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の脂肪酸トリグリセリドの混合物(a)の調製方法。
【請求項16】
インターエステル化工程が触媒の存在下で行なわれ、触媒の量が、脂肪酸トリグリセリドの重量に対して、重量基準で(in weight)0.1〜10%の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インターエステル化触媒が塩基または酵素触媒である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
インターエステル化工程が、70〜120℃の範囲の温度および/または1〜24時間の範囲の時間で実施される、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項11〜14のいずれか1項に記載のコーティング組成物を有する少なくとも1種類のコーティングが施された医療デバイス。
【請求項20】
管腔内プロテーゼ、ステント、シャント、カテーテル、局所薬物送達デバイス、外科用ワイヤまたはクリップからなる群より選択される、請求項19に記載の医療デバイス。
【請求項21】
−医療デバイスを提供する工程、
−前記医療デバイスを、請求項11〜14のいずれか1項に記載のコーティング組成物を有するコーティングでコーティングする工程、
を含む、請求項19または請求項20に記載の医療デバイスの作製方法。
【請求項22】
コーティング工程が、前記医療デバイスを、溶媒中の前記コーティング組成物の溶液中に浸漬すること、または前記コーティング組成物を前記医療デバイス上に噴霧することにより実施される、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−537640(P2009−537640A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510364(P2009−510364)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004464
【国際公開番号】WO2007/131802
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(505330882)ジスコート・ナムローゼ・フエンノートシャップ (2)
【氏名又は名称原語表記】ZISCOAT N.V.
【Fターム(参考)】