説明

生体関連物質の分離回収方法

【課題】電荷を有する樹脂のランダム形状化された微粒子及び凝集剤を用いて試料中の生体関連物質を分離させる方法を提供する。
【解決手段】生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる微粒子2と、生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と、前記微粒子及び凝集剤と結合することができる凝集剤2の2種以上を混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離回収方法、ならびに、これらの微粒子及び凝集剤を含む生体関連物質の分離回収用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂のランダム形状化された微粒子及び凝集剤を用いて試料中の生体関連物質を分離回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患の原因となる病原微生物又は細胞の検出、あるいは環境中に存在する微生物又は細胞の検出には、これらの微生物又は細胞が含まれる試料を回収してその回収物から検出目的とする微生物又は細胞を採取する必要がある。
しかしながら、試料から検出目的の微生物又は細胞を採取するには種々の試薬を加えて分離工程を経るため、一般には、試料を洗浄するのに遠心分離操作を行っている。また、試料が微量のときは、試料中から微生物又は細胞を採取することが困難である。したがって、試料から目的微生物又は細胞を検出するためには、これらを簡便かつ効率よく回収することが望まれる。
【0003】
他方、試料中の微生物又は細胞を検出する方法として、古典的培養法、PCR法、染色後の顕微鏡検査法などが知られている。
しかしながら、微生物又は細胞を回収して検出するには、多くの時間を必要とし、また作業が煩雑であることが多かった。また、前処理したサンプルの純度が低いためにPCR等で遺伝子を増幅してもバックグラウンドが出てしまい、検出感度が低下することもあった。
【特許文献1】特許第3914970号
【特許文献2】特表2003−520048
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、検出目的物質を得るための前処理法として、効率良く試料中の生体関連物質(微生物又は細胞等)を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、正又は負の電荷を有する樹脂の微粒子と凝集剤との組合せにより、効率よくかつ高純度で生体関連物質を試料から分離することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる微粒子2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
(2) 生体関連物質を吸着することができる凝集剤1、及び/又は前記微粒子2と結合することができる凝集剤2をさらに混合するものである、(1)に記載の方法。
(3)生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる凝集剤2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
(4)生体関連物質を吸着することができる凝集剤1をさらに混合するものである、(3)に記載の方法。
(5)生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と、該凝集剤1と結合することができる微粒子2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【0007】
(6) 前記微粒子2と結合することができる凝集剤2をさらに混合するものである、(5)に記載の方法。
(7)生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と、該凝集剤1と結合することができる凝集剤2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
(8)生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる微粒子2と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
(9)生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
(10)生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と結合することができる微粒子2と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【0008】
(11)微粒子1がイオン交換樹脂製のものである(1)から(4)、(8)及び(9)のいずれか1項に記載の方法。
(12)微粒子1が、樹脂の粉砕物である(1)から(4)、(8)、(9)及び(11)のいずれか1項に記載の方法。
(13) 微粒子1の粒径が1から180μmである(1)から(4)、(8)、(9)、(11)及び(12)のいずれか1項に記載の方法。
(14)微粒子2がイオン交換樹脂製のものである(1)、(2)、(5)、(6)、(8)及び(10)のいずれか1項に記載の方法。
(15)微粒子2が磁性粒子である(1)、(2)、(5)、(6)、(8)、(10)及び(14)のいずれか1項に記載の方法。
【0009】
(16) 微粒子2の粒径が0.1から500μmである(1)、(2)、(5)、(6)、(8)、(10)、(14)及び(15)のいずれか1項に記載の方法。
(17) 凝集剤が高分子である(2)から(16)のいずれか1項に記載の方法。
(18)試料が痰、喀痰、血液、口腔洗浄液、胃液、胸腔洗浄液、環境水、家庭排水、工場排水、飲用水、食物等洗浄液、及び生体関連物質が存在し得る道具の洗浄液からなる群から選択される少なくとも1つである、(1)から(17)のいずれか1項に記載の方法。
(19) 生体関連物質が微生物もしくは細胞又は核酸である、(1)から(18)のいずれか1項に記載の方法。
(20) 微生物がマイコバクテリウム属に属する微生物である(19)に記載の方法。
【0010】
(21) 生体関連物質が負電荷であり、かつ、微粒子1及び/又は凝集剤が正電荷である、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(22)生体関連物質が正電荷であり、かつ、微粒子1及び/又は凝集剤が負電荷である、(1)から(20)のいずれか1項に記載の方法。
(23) 沈殿物と液体成分との分離工程を行う(1)から(22)のいずれか1項に記載の方法。
(24) 磁気分離工程を行う(1)、(2)、(5)、(6)、(8)、(10)及び(14)から(23)のいずれか1項に記載の方法。
(25) (1)から(24)のいずれか1項に記載の方法により分離した分離物から生体関連物質を採取することを特徴とする生体関連物質の回収方法。
【0011】
(26) (25)に記載の方法により回収された生体関連物質を直接観察もしくは培養又は増幅することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
(27) 以下の性質又は機能を有する微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2からなる群から選ばれる少なくとも2つ(微粒子1と凝集剤1との組合せ、及び微粒子2と凝集剤2との組合せを除く)を含む、生体関連物質の分離用、回収用、又は検出用キット。
(a) 微粒子1:ランダム形状化されている。生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(b) 微粒子2:微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。
(c) 凝集剤1:生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(d) 凝集剤2:微粒子1、微粒子2及び凝集剤1の少なくとも1つと結合することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、生体関連物質を分離回収する方法が提供される。
本発明によれば、生体関連物質が混在している試料から、生体関連物質を効率的にかつ高純度で分離・調製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施をすることができる。
なお、本明細書において引用した文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
本発明者は、臨床サンプル等から目的の微生物又は核酸を増殖又は増幅させて検出する際、擬陽性又は擬陰性の検出結果を少なくするためにはどのようにすべきかを鋭意検討した。その結果、検出工程の前処理において効率良く目的の微生物等を分離することが重要であることを見出した。
【0014】
本発明は、以下の性質又は機能を有する微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2からなる群から選ばれる少なくとも2つ(微粒子1と凝集剤1との組合せ、及び微粒子2と凝集剤2との組合せを除く)と試料とを混合することにより、生体関連物質を分離、回収することを特徴とするものである。
(a) 微粒子1:ランダム形状化されている。生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(b) 微粒子2:微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。
(c) 凝集剤1:生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(d) 凝集剤2:微粒子1、微粒子2及び凝集剤1の少なくとも1つと結合することができる。
【0015】
一般に、微生物はその表面が正又は負に荷電しているため、微生物を分離回収するための担体として反対荷電を有する樹脂が利用されている。本発明者は、この樹脂をランダム形状の微粒子として用いることにより、微生物が効率よく微粒子に吸着し、微生物と微粒子との会合体が沈殿することを見出した。さらに、本発明においては無電荷又は正若しくは負に荷電した微粒子であって磁性又は非磁性の微粒子も使用することができ、これらの微粒子と凝集剤との組合せ及び混合順序を調節することにより、さらに効率的に生体関連物質を分離させることを見出した。
【0016】
1.微粒子
本発明において微粒子として使用される担体の材質は液体試料に対して不溶性の材質であり、正若しくは負の電荷又は無電荷の性質を有する。そして、担体の材質は、液体試料の溶媒の種類等に応じて適宜選択することができる。
本発明においては、以下の性質又は機能を有する微粒子1及び/又は微粒子2が使用される。
(a) 微粒子1:
非磁性である。
ランダム形状化されている。
負電荷又は正電荷を持つ。
生体関連物質を吸着することができる。
微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(b) 微粒子2:
磁性又は非磁性である。
無電荷であるか、あるいは負電荷又は正電荷を持つ。
微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。
キレート効果を有する場合もある。
無機化合物からなる磁性粒子、又はガラスやアルミナであってもよい。
【0017】
担体の材質としては、例えば、スチレン、クロルスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、スチレンスルホン酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、トリブロモプロピルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル等の芳香族ビニル化合物、α,β−不飽和カルボン酸のエステル類又はアミド類、α,β−不飽和ニトリル化合物、ハロゲン化ビニル化合物、共役ジエン化合物、低級脂肪酸ビニルエステル等のビニル系単量体の1種以上を重合して得られるポリマー;アガロース、デキストラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース等の多糖類の架橋体;メチル化アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン等の蛋白質の架橋体;ガラス、セラミックス等の無機材料;鉄、シリコン等の金属;これらの複合材料等が挙げられる。
粒子は非膨潤性であることが好ましいが、膨潤性であってもよい。粒子表面は多孔質であっても無孔質であってもよいが、粒子表面が多孔質である場合には無孔質である場合よりも多くの生体関連物質を吸着することができる。
【0018】
本発明において、「結合することができる」とは、結合相手との電荷の違いに応じて結合する機能又は性質を有すること、あるいは凝集剤と相互作用して結合する機能又は性質を有することを意味する。ここでいう「結合」には、一方が他方を物理的に担持する結合様式、及び水素結合の様式、配位結合の様式あるいは静電相互作用の様式が含まれる。また、「吸着することができる」とは、電荷の違いに応じて微粒子が生体関連物質を引き寄せて生体関連物質を微粒子表面に接着させることを意味する。例えば、生体関連物質の電荷が負であって微粒子の1の電荷が正のときは、プラスとマイナスの電荷により両者は引き合い、微粒子に生体関連物質が貼りつくこととなる。すなわち、生体関連物質が正電荷を有するときは、負電荷を有する微粒子が生体関連物質を吸着することができ、生体関連物質が負電荷を有するときは、正電荷を有する微粒子が生体関連物質を吸着することができる。
【0019】
したがって、上記微粒子及び凝集剤は、生体関連物質が正電荷であるか負電荷であるかにより、結合様式は以下の通りとなる(凝集剤の性質及び機能については後述する)。
(1)生体関連物質が負電荷であるとき
微粒子1及び凝集剤:正電荷
微粒子2:負電荷、無電荷
(2)生体関連物質が正電荷であるとき
微粒子1及び凝集剤:負電荷
微粒子2:正電荷、無電荷
【0020】
本発明において、微粒子1及び微粒子2はイオン交換樹脂製のものを使用することができる。負電荷を有する樹脂として陽イオン交換樹脂、正電荷を有する樹脂として陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。イオン交換樹脂とは、イオン交換可能な酸性基(陽イオン交換基)又は塩基性基(陰イオン交換基)をもつ不溶性樹脂であり、三次元的網目構造の樹脂に共有結合でイオン交換基が保持された形態となっている。イオン交換基(イオン交換樹脂)としては、例えば-SO3H(強酸性基)、-COOH(弱酸性基)などの負電荷を有する交換基、あるいは-CH2-N+(CH3)2(C2H4OH)(強塩基性基)、-CH2-N+H(CH3)2などの正電荷を有する交換基が挙げられる。
最も一般的なイオン交換樹脂の構造はスチレン・ジビニルベンゼンの共重合体からなる母体を持つものである。ポリスチレン長鎖分子がジビニルベンゼンの架橋により立体的網目構造の樹脂を形成する。このため、イオン交換樹脂はビーズ状の粒子構造を形成し、その内部は広い表面積を有する。
【0021】
イオン交換樹脂は、市販品、例えば陽イオン交換樹脂としてダウエックス50W(ダウケミカル)、アンバーライトIRC50(ローム・アンド・ハース)、ダイヤイオンWK100(三菱化学)また陰イオン交換樹脂としてダウエックス22(ダウケミカル)、アンバーライトIRA67(ローム・アンド・ハース)、デュオライトA7(ケムテックス)、ダイヤイオンHPA25(三菱化学)を使用することもできる。
【0022】
本発明において、微粒子1は、ランダム形状化された微粒子(「トラップ粒子」ともいう)を使用する。「ランダム形状」とは、全体の粒子が球形のように一律に整った形状となっておらず、不整の任意形状を意味する。ランダム形状の微粒子1は、原料(例えば樹脂)から微粒子を製造する工程においてランダムに成形するよう制御することができるが、成形工程によって得られた成形粒子又は市販品の樹脂を物理的に粉砕することによりランダム形状化したものが好ましい。
本発明の好ましい態様において、一般的イオン交換クロマトグラフィー等に使用される樹脂(主に直径1mm程度の粒状樹脂)を粉砕することにより、粒径を小さくするとともに、形状をランダムにすることができる。これにより、粒子内部の広い表面積が露出し、生体関連物質を効率よく吸着することが可能となる。
樹脂を粉砕する方法は、乳鉢を用いて手動で粉砕する方法、又はミキサー若しくはビーズミルなどの機械を用いて粉砕する方法がある。また、市販の粉砕機(型名:MIC−30、奈良機械製作所)を使用して粉砕することもできる。
【0023】
微粒子2は、磁性又は非磁性であり、電荷は無電荷であってもよく、負電荷又は正電荷を持つものでもよい。微粒子2は、電荷の違いにより、あるいは凝集剤との相互作用により、微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。また、微粒子2の形状は任意であり、ランダム形状であっても球状のものであってもよく、特に限定されるものではない。なお、微粒子2は、キレート効果を有していてもよく、そのような効果を有する微粒子2を使用することも可能である。
微粒子の粒径は、微粒子1の場合は、下限が1μm程度、好ましくは50μm程度であり、上限が180μm程度、好ましくは100μm程度である。より好ましくは、1μm〜180μm、さらに好ましくは50〜100μmである。微粒子2の場合は、下限が0.1μm程度、好ましくは1μm程度であり、上限が500μm程度、好ましくは200μm程度である。より好ましくは、0.1〜500μm、さらに好ましくは1〜200μmである。
微粒子の粒径が上記範囲のときは、微粒子と試料との会合体が自然沈殿するため、試料中の生体関連物質を溶液から分離する際、遠心操作を不要にすることができる。
【0024】
2.生体関連物質及び試料
本発明において「生体関連物質」とは、試料中に含まれる分離、回収又は検出の対象となる物質であり、微生物、ウイルス、細胞、核酸、多糖、タンパク質、低分子などのあらゆる生体物質を意味する。
【0025】
微生物には真菌及び真正細菌及び古細菌が含まれる。真菌としては、例えば、サッカロマイセス属、アスペルギルス属、カンジダ属などが挙げられる。真正細菌としては、例えば、マイコバクテリウム属、エッシェリヒア属、バチルス属、リステリア属、ビブリオ属、サルモネラ属、シュードモナス属、スタフィロコッカス属、マイコプラズマ属、リケッチア属、クラミジア属などに属する微生物が挙げられる。古細菌としては、例えば、サーモプラズマ属、ハロバクテリウム属、メタノバクテリウム属などが挙げられる。具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ種、アスペルギルス・ニデュランス種、カンジダ・アルビカンス種、マイコバクテリウム・ツベルクローシス種、マイコバクテリウム・アビウム種、マイコバクテリウム・イントラセルラー種、マイコバクテリウム・カンサシー種、エッシェリヒア・コリ種 、バチルス・セレウス種、バチルス・アンスラシス種、リステリア・モノサイトゲネス種、ビブリオ・パラヘモリティカス種、ビブリオ・コレラ種、サルモネラ・チフス種、シュードモナス・エレギノーサ種、スタフィロコッカス・アウレウス属、マイコプラズマ・ニューモニア種、リケッチア・プロワツェキイ種、クラミジア・トラコマチス種などを例示し得る。
【0026】
ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス科、バクテリオファージ科、レトロウイルス科などが挙げられる。具体的には、アデノウイルス、T7様ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ノロウイルス、ヒトロタウイルス、インフルエンザウイルスなどを例示し得る。
また、細胞は動物細胞、植物細胞、昆虫細胞のいずれも含まれる。
核酸としては、DNA、RNA、人工核酸などが挙げられる。
多糖としては、デンプン、グリコーゲン、キチン、カラギーナンなどが挙げられる。
タンパク質としては、抗体、酵素、色素タンパク質などが挙げられる。
低分子としては、ヌクレオチド三リン酸又はデオキシヌクレオチド三リン酸などのヌクレオチド、グルコース又はガラクトースなどの糖、グルタミン酸又はリジンなどのアミノ酸、フルオロセイン又はエチジウムブロマイドなどの色素、エピネフリン又はペプチドホルモン又はステロイドなどのホルモンが挙げられる。
但し、上記生体関連物質は例示であり、これらの物質に限定されるものではない。
【0027】
試料はこれらの生体関連物質を含む限り特に限定されるものではなく、例えば、
(i) 痰、喀痰、唾液、口腔洗浄液、胃液、胸腔洗浄液、血液、血清、血漿、糞便、尿、髄液、精液等の臨床材料、
(ii) 細胞溶解液、組織溶解液、細胞培養物、組織培養物等の生物材料、
(iii) 家庭排水、工業排水などの排水、
(iv) 海洋水、河川水、池水、湖水、地下水などの環境水、
(v) 飲用水、食物等洗浄液、及び生体関連物質が存在し得る道具の洗浄液、
が試料に含まれる。「生体関連物質が存在し得る道具の洗浄液」とは、生体関連物質の存在を確認したい箇所を拭き取った道具の洗浄液、又は生体関連物質の存在を確認したい箇所を洗い流した洗浄液を意味し、例えば、調理用包丁の洗浄液、拭き取りクロス(台布巾)で物を拭き取った後の洗浄液などが挙げられる。
【0028】
本発明において、試料を懸濁又は溶解する溶液は、上記生体関連物質に対して用いられる通常の緩衝液であればよく、例えばリン酸緩衝液、生理食塩水、蒸留水、培地などを使用することができる。
臨床材料や生物材料を懸濁又は溶解する場合は、塩濃度が生理的条件に比較的近く細胞等に対して穏和な緩衝液が好ましい。このような緩衝液としては、例えばHEPES、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水、蒸留水、培地等を挙げることができる。
排水や環境水を懸濁又は溶解する場合は、特に吸着阻害物質の阻害効果を緩和させる性質の緩衝液が好ましい。このような緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液、トリス緩衝液、生理食塩水、蒸留水、クエン酸、EDTA等を挙げることができる。
【0029】
3.凝集剤
本発明において使用される凝集剤1及び凝集剤2は以下の性質を有するものである。
凝集剤1:生体関連物質、微粒子2及び凝集剤2の少なくとも1つと結合する。高分子である。
凝集剤2:微粒子1、微粒子2及び凝集剤1の少なくとも1つと結合する。高分子である。
高分子は、分子量は100万〜2000万、好ましくは200万から400万であり、例えば大明化学工業製のものが挙げられる。
凝集剤の濃度は、下限が0.01mg/ml程度、好ましくは0.1mg/ml程度であり、上限が100mg/ml程度、好ましくは10mg/ml程度である。より好ましくは、0.1〜10mg/ml、さらに好ましくは0.1から1mg/mlである。
【0030】
4.分離方法及び回収方法
本発明の方法は、上記微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2から選ばれる少なくとも2つと試料とを混合することを特徴とする。
生体関連物質、微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2の前記性質及び機能を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
また、生体関連物質の電荷と微粒子及び凝集剤の電荷との関係を表2に示す。表2は、以下の基準を満たすように電荷を組み合わせたものである。
微粒子及び凝集剤の電荷は、微粒子2と凝集剤2が相反する電荷(正と負の電荷)とならないようにする。また、粒子1又は凝集剤1と凝集剤2とが同じ電荷とならないようにする。
【0033】
【表2】

【0034】
表2において、「+」は正電荷、「−」は負電荷、「0」は無電荷であることを意味する。
さらに、生体関連物質と、微粒子及び凝集剤との結合様式を図1に示す。図1において、生体関連物質、微粒子及び凝集剤のそれぞれの間を結んだ直線は、両者が結合できることを意味する。すなわち、微粒子1と凝集剤1は生体関連物質と相互作用し、微粒子2と凝集剤2は生体関連物質と相互作用しないという関係にある。
したがって、本発明において利用可能な微粒子と凝集剤との組合せは、図2に示す通りとなる。
【0035】
第一の態様は、微粒子1が生体関連物質を吸着させるとともに、微粒子2と微粒子1とが結合する態様である(図2の1番)。凝集剤をさらに混合することにより、生体関連物質の沈殿効率を高めることができる。例えば、凝集剤1を混合することにより、さらに混合凝集剤1が微粒子2と結合する(図2の7番)。なお、凝集剤1は生体関連物質と結合し得る。また、凝集剤2を混合することにより、凝集剤2が微粒子1及び微粒子2と結合し(図2の8番)、凝集剤1及び凝集剤2の両者を混合することにより、凝集剤1は生体関連物質、微粒子2及び凝集剤2と結合し、凝集剤2は微粒子1、微粒子2及び凝集剤1と結合する(図2の11番)。
【0036】
第二の態様は、微粒子1が生体関連物質を吸着させるとともに、凝集剤2と微粒子1とが結合する態様である(図2の3番)。凝集剤1をさらに混合することにより、凝集剤2は凝集剤1及び微粒子1と結合し、生体関連物質の沈殿効率を高めることができる(図2の9番)。
【0037】
第三の態様は、微粒子2と凝集剤1とが結合するとともに、凝集剤1が生体関連物質と結合する態様である(図2の4番)。凝集剤2をさらに混合することにより、凝集剤1は生体関連物質、微粒子2及び凝集剤2と結合し、生体関連物質の沈殿効率を高めることができる(図2の10番)。
【0038】
第四の態様は、凝集剤1と生体関連物質とが結合するとともに、凝集剤2と凝集剤1とが結合する態様である(図2の6番)。微粒子1及び2を使用しなくても、凝集剤同士の反応及び凝集剤1と生体関連物質との相互作用により、生体関連物質の沈殿効率を高めることができる。
【0039】
但し、本発明においては、生体関連物質と微粒子及び/又は凝集剤とが一体として何らかの結合態様を取ることが必要である。したがって、微粒子1及び凝集剤1はいずれも生体関連物質を吸着/結合することができても、微粒子1と凝集剤1とは結合しないため、生体関連物質、微粒子1及び凝集剤1との間で一体的結合関係を形成しない態様となる(図2の3番)。また、微粒子2及び凝集剤2は互いに結合することができても、いずれも生体関連物質を吸着/結合することはできないため、生体関連物質、微粒子2及び凝集剤2との間で一体的結合関係を形成しない態様となる(図2の5番)。このような態様は、本発明の態様から除くこととする。
【0040】
微粒子1、微粒子2、試料及び凝集剤を混合する順序は特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。例えば、上記第一の態様の場合、微粒子1、微粒子2、試料及び凝集剤を同時に混合することができる。また、微粒子1と試料とを混合した後に、微粒子2を混合し、その後、得られる混合物に凝集剤を混合することができる。あるいは、微粒子2と試料とを混合した後に、微粒子1を混合し、その後、得られる混合物に凝集剤を混合してもよい。第二〜第四の態様も、第一の態様に準じて、混合順序を任意に設定することができる。
【0041】
「混合」とは、微粒子、試料及び凝集剤が接触するように操作することを意味し、一方(例えば微粒子)に他方(例えば試料)を添加する行為が含まれる。もちろん、微粒子1用ノズル、微粒子2用ノズル、試料用ノズル、凝集剤用ノズルを設けて、自動化により混合操作を制御することもできる。
【0042】
本発明において、混合順序の態様を例示すると、以下の通りとなる。
(1) 微粒子1と、微粒子2と、試料とを混合する。この混合物に、凝集剤1及び/又は凝集剤2をさらに混合することができる。
(2) 微粒子1と、凝集剤2と、試料とを混合する。この混合物に、凝集剤1をさらに混合することができる。
(3) 凝集剤1と、微粒子2と、試料とを混合する。この混合物に、凝集剤2をさらに混合することができる。
(4) 凝集剤1と、凝集剤2と、試料とを混合する。
(5) 微粒子1と、微粒子2と、試料とを混合し、得られる混合物を凝集剤で処理する。
(6) 微粒子1と、試料とを混合し、得られる混合物を凝集剤で処理する。
(7) 微粒子2と、試料とを混合し、得られる混合物を、凝集剤で処理する。
上記(5)〜(7)において使用される凝集剤は、凝集剤1のみ又は凝集剤2のみであってもよく、両者を併用してもよい。
【0043】
本発明においては、上記(1)の態様が、生体関連物質の沈殿効率が高い点で好ましい。
本発明では、上述した微粒子及び/又は凝集剤(微粒子等ともいう)と試料液とを接触させて、試料液中の生体関連物質を微粒子等に吸着/結合させ、吸着物(凝集塊)を沈殿させる。試料液と微粒子等との接触は、試料液中の生体関連物質が均一に微粒子等と接触できる条件であればよく、例えば静置、又はゆっくりとした攪拌混合などが挙げられる。静置又はゆっくりとした撹拌混合は、生体関連物質が微粒子等に対して均一に吸着又は結合することができ、操作が簡単である点で好ましい。
微粒子と試料とを混合する場合には、微粒子と試料液とが充分に混合接触可能となるように条件を設定する。例えば、微粒子が10〜100mgのときは、試料液は1〜50mlとすることができる。また混合時間は、生体関連物質が微粒子に吸着して凝集する時間、例えば10秒間〜12時間、好ましくは30秒間から5分間である。
微粒子と生体関連物質が沈殿すると、沈殿物は液体成分から分離する(固-液分離する)。本発明においては分離後の生体関連物質が回収される。回収する方法は、微粒子と生体関連物質との沈殿物から生体関連物質を採取すればよい。採取方法は特に限定されるものではないが、例えば液体部分を除去して凝集沈殿した沈殿物を採取する方法、沈殿物を磁性分離する方法、沈殿物をフィルターに通して生体関連物質を回収する方法などが挙げられる。
【0044】
本発明においては、磁性の微粒子2を用いたときは、磁性粒子を用いて磁気分離工程又は回収工程を採用することができる。この方法は、後述する検出工程に応じて適宜選択する。例えば、核酸を抽出してPCR法で検出する場合は、微粒子を混合する前、混合中又は混合後に磁性粒子を添加することができる。磁性粒子としては、例えばマグネタイト、ラテックス磁気ビーズ、フェライト、鉄粉などの有機又は無機金属化合物が挙げられる。
【0045】
検出工程で核酸を用いる場合は生体関連物質をトラップ粒子から剥がす(除去する)ことが好ましい。トラップ粒子から生体関連物質を剥がすためには溶出操作を行う。溶出操作は、特定の緩衝液によるpHショック、又はカオトロピック塩、又は高い塩濃度、又は熱を与えればよい。あるいは、グアニジン系の溶解液(例えばグアニジンチオシアネート)をトラップ粒子と磁性粒子と生体関連物質との会合体に加えると、溶出操作と同様の効果がある。
【0046】
磁性粒子を除く操作を行なった後、生体関連物質とトラップ粒子を含んだまま核酸抽出工程を行う。あるいは、磁性粒子とトラップ粒子を溶出物から分離した後、溶出物からの核酸抽出精製工程を行う。核酸抽出工程は、フェノール−クロロホルムを用いた手法、カラムを用いた手法、スピンカラムを用いた手法など手法は問わないが、磁性粒子を用いた核酸抽出方法が好ましい。磁性粒子を用いた核酸抽出方法を行う場合、核酸抽出操作の前に磁性の微粒子2を除去することが好ましい。磁性の微粒子2を除去する方法は、トラップ粒子から生体関連物質を剥がす溶出操作によって、トラップ粒子から生体関連物質を溶出した後、磁性分離、又は沈殿と上清の分離、又はフィルター分離のいずれかによって行うことができる。
【0047】
核酸は、グアニジンの存在下ではトラップ粒子のアミンなどの官能基には作用できない環境であるため、特定の試薬の添加環によって核酸抽出用の磁性粒子のみにDNA及び/又はRNAが吸着する。更にB/F分離するとトラップ粒子は磁性がないので液中に残る。少量のトラップ粒子の持込み(凝集反応系試験管等への残存)は、核酸吸着粒子の洗浄工程を繰り返すことで回避できる。
【0048】
ところで、試料中には、生体関連物質が正電荷のもの及び負電荷のものが混在する場合がある。本発明においては、このような正、負の電荷が混在する生体関連物質が含まれる試料であっても、正電荷を有する微粒子及び/又は凝集剤、並びに負電荷を有する微粒子及び/又は凝集剤を併用することで、それぞれの電荷の生体関連物質を分離することが可能である。例えば、初めに負電荷の生体関連物質を分離するために正電荷を有する微粒子及び/又は凝集剤を用いて生体関連物質を分離回収し、その後正電荷の生体関連物質を分離するために負電荷を有する微粒子及び/又は凝集剤を用いて生体関連物質を分離回収することができる。
また、回収工程において試料液から生体関連物質を回収した後であっても、微粒子には、一部の生体関連物質が弱く吸着している場合がある。そこで、微粒子に吸着した生体関連物質を更に回収するために、微粒子に吸着した生体関連物質を分離するための脱着液を微粒子に接触させることが好ましい。
ここで用いられる脱着液としては、pHとイオン強度の観点から生体関連物質に対して穏和な化合物であって、微粒子と生体関連物質との吸着を相対的に低下させるものであればよい。例えば、塩化ナトリウム溶液、界面活性剤、キレート剤、緩衝液などを挙げることができる。
脱着液は、生体関連物質を回収した後の微粒子と均一に混合し得る量であればよく、例えば微粒子100mgあたり0.1〜1ml、好ましくは0.2〜0.5mlである。脱着時間は、例えば10秒〜30分、好ましくは1〜10分である。
【0049】
5.検出方法
本発明は、上記方法により回収された生体関連物質を(i)直接観察する、(ii)培養する、又は(iii)増幅することを特徴とする生体関連物質の検出方法を提供する。
生体関連物質が細胞又は細菌の場合は、回収された生体関連物質を目視等により直接観察することができる。あるいは、回収された生体関連物質を培地に培養して増殖させ、存在を観察することができる。生体関連物質が核酸の場合は、PCR等により増幅させ、増幅産物を確認すればよい。
【0050】
例えば、マイコバクテリウム属に属する細菌(結核菌又は抗酸菌)を検出する場合は、試料を喀痰、胃液、気管洗浄液、血液、尿、便、組織片とし、これらからの菌の回収工程、及び菌の検出工程を経る。検出系は、培養検査(薬剤感受性検査及び鑑別・同定検査を含む)、塗抹検査、遺伝子検査の3種類に大別される(結核菌検査指針2007 日本結核予防会 抗酸菌検査法検討委員会 編)。
【0051】
培養検査は、主として小川培地又はその変法による検査とMGITシステムによる検査が行われている。
「小川培地」とは、培地基中の燐酸塩をKH2PO4のみとした卵培地であり、現在わが国で最もよく使われている培地である。菌の分離培養には、基汁100mlに対し1〜3gのKH2PO4を含む培地(1〜3%小川培地)を用いる。本発明においては、喀痰などの臨床材料由来の生体関連物質を強アルカリ溶液で前処理した後、処理物を小川培地に接種し、菌の増殖を観察する。培養した陽性検体について、薬剤感受性検査、及び/又はイムノクロマト法、及び/又は他の培地での生育検査、遺伝子検査によって鑑別・同定を行う。
【0052】
「MGIT」(Mycobacteria Growth Indicator Tube)法とは、抗酸菌の迅速検出法の1つである。液体培地を含む試験管の中には、培地中の溶存酸素に感受性の蛍光化合物が混合されており、紫外線照射によりその蛍光を検出することができる。活発に呼吸する抗酸菌が存在すると酸素が消費されるため、紫外線照射によりオレンジ色蛍光が観察される。
【0053】
塗抹検査は、わが国での多くの場合、喀痰を均等化・遠心集菌した試料をスライドガラス等に塗布し、染色操作を行うことで抗酸菌の有無を顕微鏡によって確認する検査である。アジア・アフリカ諸国では遠心集菌を行わずに染色操作を行う場合もある。顕微鏡検査では、本発明において沈殿させた沈殿物、又は回収された生体関連物質を顕微鏡で直接観察する。走査電子顕微鏡を使用すると、微粒子の表面に付着した菌を観察することができる。光学顕微鏡を使用するときは、チール・ネールゼン(Ziehl-Neelsen)染色、又はオーラミンO染色、又はアクリジンオレンジ染色のいずれか又は2法以上を行う。これらの染色により、抗酸菌が存在する染色されるため、その染色具合により存在を観察することができる。
【0054】
遺伝子検査では、核酸増幅法及びDNA−DNAハイブリダイゼーションを組み合わせたコバスアンプリコア・マイコバクテリウム(ロシュ・ダイアグノスティクス)がわが国で唯一診療保険点数が認められたキットである。検出目的の核酸に対応したプライマーを設計して適当な増幅サイクルで増幅する。増幅産物に相補的な蛍光ラベルDNAプローブをハイブリダイズし、その後検出装置又は電気泳動により存在を確認することができる。PCR法は、当分野において周知技術であり、当業者であれば、プライマーの設計及び合成、並びにサイクル条件の設定は適宜なし得る。この他、標的DNAをPCR法によって増幅させると共に蛍光色素と消光物質を持つTaqManプローブを用いて検出するリアルタイムPCR法、標的RNAを逆転写酵素によってDNAを合成してRNAポリメラーゼによってRNAを反復合成させる増幅法であるTMA(Transcription Mediated Amplification)法、標的RNAを逆転写酵素及びRNAポリメラーゼによる逆転写及び転写反応を繰り返す増幅法である、TRC(Transcription-Reverse Transcription)法、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いたLAMP(Loop-mediated isothermal AMPlification)法など多くの遺伝子検査法が開発されている。例えば、PCRは「コバス アンプリコア マイコバクテリウム」(ロシュ・ダイアグノスティクス)、リアルタイムPCRは「コバス TaqMan MTB」(ロシュ・ダイアグノスティクス)、TMAは「DNAプローブFR−MTB」(Gen−Probe、富士レビオ)、TRCは「結核菌群rRNA検出試薬 TRCRapid M.TB」(東ソー)などのキットを使用することが可能である。
なお、上記3種類の検出法は、マイコバクテリウム属細菌の検出に限定されるものではない。
【0055】
6.キット
本発明は、以下の性質を有する微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2からなる群から選ばれる少なくとも2つ(微粒子1と凝集剤1との組合せ、及び微粒子2と凝集剤2との組合せを除く)を含む、生体関連物質の分離用、回収用、又は検出用キットを提供する。
(a) 微粒子1:ランダム形状化されている。生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(b) 微粒子2:微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。
(c) 凝集剤1:生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(d) 凝集剤2:微粒子1、微粒子2及び凝集剤1の少なくとも1つと結合することができる。
【0056】
本発明においては、使用される微粒子1はランダム形状化された担体(樹脂等)であるが、粉砕前の成形された担体をキットに含めることができる。この場合、ユーザは、担体の使用に際して適宜粉砕処理すればよい。
また、本発明のキットには、試料を溶解又は懸濁するための緩衝液、試料と微粒子1又は微粒子2との混合順序、凝集剤の混合量やその順序を記載した説明書、さらには、生体関連物質の検出用器具、例えばMGIT法を想定するときは溶存酸素に感受性を有する蛍光化合物を含有させた試験管、PCRによる検出を想定するときはPCR用の緩衝液やプライマー、古典的検出を想定するときは小川培地、光学顕微鏡検査を想定するときはチール・ネールゼン染色液を含めることができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
大腸菌の吸着プロトコル
(i) 菌液の調製
常法に従ってLB培地で培養した大腸菌(Escherichia coli)の菌体濃度をバクテリアカウンター(エルマ)を用いて測定し、生理食塩水で1×103 cells/mlになるように調製した。
(ii) SS-M粒子での吸着
(i)で調製した菌液1mlを1.5ml遠心チューブ(アシスト)に採取し、陰イオン交換樹脂の粉砕粒子であるSS-M粒子(1g/5ml)100μlを加えた。静かに3分間転倒混和した(約90回の転倒混和)。
(iii) 凝集剤の添加
凝集剤であるTC-833を10mg/ml、1mg/ml、または0.1mg/mlの濃度のものをそれぞれ別々に用意した(ii)の遠心チューブに100μlずつ添加した。比較対照として凝集剤を加えずに(iv)へ進める試験も同時に行った。
(iv) 鉄粉の添加
鉄粉を加え、静かに転倒混和を30秒間行った(30秒間で約15回の転倒混和)。
(v) 沈降
5〜6分静置し、粒子を沈降させた。その際、チューブの壁面に粒子が張り付いている場合、チューブ立てに立てたまま遠心チューブを回して粒子を壁面から落とした。
(vi) 上清と沈殿の分離
遠心チューブの蓋を静かに開け、なるべく沈降している粒子を吸引しないように静かに上のほうから上清を0.3mlの沈殿が残るように採取した。採取した上清は、新しい遠心チューブに保存した。
(vii) コントロールの作製
上記(i)で作製した103cfu/mlのサンプル0.1mlをLB寒天培地に塗布し、これをコントロールとした。
(viii) 寒天培地への塗布
(vi)で採取した上清から各上清と沈殿の合計の10分の1量および10分の3量をLB寒天培地に塗布し、37度で培養した。
(ix) 検出
培養後、各LB寒天培地のコロニー数を測定し、コントロールのコロニー数を100%として各工程の吸着率を算出した(表3)。
【0058】
【表3】

表3は、菌体をまいてから88時間後の結果を示す。この結果から、大腸菌の収集について、微粒子1および凝集剤1の添加によって回収した菌体を微粒子2で分離することで、90%以上の菌体を分離することができた。
【実施例2】
【0059】
抗酸菌の吸着プロトコル MGIT
(i) 培地の成分の除外
培養した非定型抗酸菌(M.Kansasii)含有溶液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに取り、遠心分離機(「チビタン」(商品名、テックジャム社製))で遠心してペレットにした。上清を取り除き、チューブに1mlの生理食塩水を加え、ペレットを完全に溶解した。
(ii) サンプルの希釈
上記(i)で培地を生理食塩水に置き換えたM.Kansasiiを生理食塩水で10-6および10-7に希釈した。
(iii) サンプルの調製
上記(ii)で希釈したM.Kansasii 1mlとNALC(N-Acetyl-L-Cystein)-NaOH-PBS 9mlを15mlの遠心チューブに入れた。
(iv) SS-M粒子での吸着
陰イオン交換樹脂の粉砕粒子であるSS-M粒子(1g/5ml)100ulを(iii)で調製したサンプルの入った遠心チューブに加え、静かに転倒混和を3分間行った(3分間で約90回の転倒混和)。
(v) 凝集剤の添加
凝集剤であるTC-833(1mg/ml)(大明化学工業製)100μlを加え、静かに転倒混和を30秒間行った(30秒間で約15回の転倒混和)。
【0060】
(vi) 鉄粉の添加
鉄粉(0.2g/ml)100μlを加え、静かに転倒混和を30秒間行った(30秒間で約15回の転倒混和)。
(vii) 沈降
15mlの遠心チューブを垂直に立て、5〜6分静置し、粒子を沈降させた。その際、チューブの壁面に粒子が張り付いている場合、チューブ立てに立てたまま遠心チューブを回して粒子を壁面から落とした。
(viii) 上清と沈殿の分離
遠心チューブの蓋を静かに開け、なるべく沈降している粒子を吸引しないように静かに上のほうから上清を9ml除去した。除去した上清は、新しい遠心チューブに保存した。
(ix)コントロールの作製
上記(ii)で作製した10-7に希釈したサンプル500μl又はDW500μlに「SS-M」「TC-833(1mg/ml)」「鉄粉」それぞれ100μlを加えたものを作製した(計8種類)。10-7に希釈したサンプルを含む溶液を陽性コントロール、蒸留水(DW)を含む溶液を陰性コントロールとした。
(x) MGITの準備
MGIT本体にMGITの取扱説明書に従ってサプリメント2種を加えた。
【0061】
(xi) MGITへの菌の添加
上記(viii)で分離した沈殿をよくピペッティングしてほぐした後、サプリメントを加えたMGITに菌含有溶液を500μl添加した。
(xii) MGITへの上清の添加
上記(viii)で沈殿と分離した上清の500μl、をサプリメント含有MGITに添加した。
(xiii) MGITへのコントロールの添加
上記(ii)で希釈したサンプルを500μlずつ、サプリメントを加えたMGITに添加した。
上記(ix)で作製した陽性及び陰性コントロールの全量を、サプリメントを加えたMGITに添加した。
(xiv) MGITでの培養
上記(xiii)で調製したサンプルを37℃の恒温槽に入れてインキュベートし、2〜3日後から42日までMGIT専用の陽性判定装置バクテックマイクロMGIT(BD)測定し、培養を始めてからの陽性判定が示されるまでの日数を記録した。42日後までに陽性判定が得られなかった場合を陰性とした。さらに上述の方法で操作を行った粒子法と指針(結核菌検査指針2007 日本結核予防会抗酸菌検査法検討委員会編)に記述された遠心法で濃縮された濃縮産物の陽性検出結果を3回ずつ比較した。遠心濃縮法の操作は、結核菌検査指針2007に記載された手順に従った。
【0062】
結果を図3、4、および5に示す。図3から、微粒子1、凝集剤1、および微粒子2が抗酸菌の生育やMGIT法での検出に影響を及ぼさないことが示された。図4から分かるとおり、上清から陰性の結果が得られたため、微粒子1、凝集剤1、および微粒子2を用いた抗酸菌の濃縮効率が高いことが示された。また、図5に示されるとおり、遠心濃縮法では陽性と陰性判定の結果が不安定であるのに対し、粒子濃縮法では安定し、かつ遠心濃縮法よりも短期間で陽性判定日数が得られた。
【実施例3】
【0063】
抗酸菌の吸着プロトコル 小川培地試験
(i) 培地の成分の除外
培養した非定型抗酸菌(M.Kansasii)およびBCG(弱毒化M.bovis)含有溶液1mlを1.5mlエッペンドルフチューブに取り、遠心分離機(「チビタン」(商品名、テックジャム社製))で遠心してペレットにした。上清を取り除き、チューブに1mlの生理食塩水を加え、ペレットを完全に溶解した。
(ii) サンプルの希釈
上記(i)で培地を生理食塩水に置き換えた抗酸菌を生理食塩水で10-6および10-7に希釈した。
(iii) サンプルの調製
上記(ii)で希釈した抗酸菌 1mlとNALC(N-Acetyl-L-Cystein)-NaOH-PBS 9mlを15mlの遠心チューブに入れた。
(iv) SS-M粒子での吸着
陰イオン交換樹脂の粉砕粒子であるSS-M粒子(1g/5ml)100μlを(iii)で調製したサンプルの入った遠心チューブに加え、静かに転倒混和を3分間行った(3分間で約90回の転倒混和)。
(v) 凝集剤の添加
凝集剤であるTC-833(1mg/ml)(大明化学工業製)100μlを加え、静かに転倒混和を30秒間行った(30秒間で約15回の転倒混和)。
【0064】
(vi) 鉄粉の添加
鉄粉(0.2g/ml)100μlを加え、静かに転倒混和を30秒間行った(30秒間で約15回の転倒混和)。
(vii) 沈降
15mlの遠心チューブを垂直に立て、5〜6分静置し、粒子を沈降させた。その際、チューブの壁面に粒子が張り付いている場合、チューブ立てに立てたまま遠心チューブを回して粒子を壁面から落とした。
(viii) 上清と沈殿の分離
遠心チューブの蓋を静かに開け、なるべく沈降している粒子を吸引しないように静かに上のほうから上清を9ml除去した。除去した上清は、新しい遠心チューブに保存した。
(ix) 小川培地への菌の添加
上記(viii)で分離した沈殿をよくピペッティングしてほぐした後、小川培地に菌含有溶液を100μl添加した。
(x) 小川培地への上清の添加
上記(viii)で沈殿と分離した上清の100μl若しくは300μlを小川培地に添加した。
【0065】
(xi) 小川培地での培養
上記(xiii)で調製したサンプルを37℃の恒温槽に入れて42日間インキュベートし、小川培地に対するコロニーが占める割合を記録した。42日後までにコロニーが得られなかった場合を陰性とした。さらに上述の方法で操作を行った粒子法と指針(結核菌検査指針2007 日本結核予防会抗酸菌検査法検討委員会編)に記述された遠心法で濃縮された濃縮産物の陽性検出結果を10-7に希釈したM.kansasiiについて3回ずつ比較した。遠心濃縮法の操作は、結核菌検査指針2007に記載された手順に従った。
結果を図6および図7に示す。図6から、コロニーの形成が沈殿に集中しており、高い濃縮効果であることが示された。また、粒子を除去しなくても培養に用いることが可能であった。また、図7から、菌濃度が低い条件において、指針で定められた遠心濃縮法と比較して非常に高い濃縮効果を示した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】生体関連物質、微粒子及び凝集剤の結合関係を示す図である。
【図2】生体関連物質、微粒子及び凝集剤の結合の態様を示す図である。
【図3】M.kansasiiのMGITでの生育に対する微粒子1、凝集剤1、および微粒子2の影響を示す図である。
【図4】微粒子1、凝集剤1、および微粒子2を用いてM.kansasiiを濃縮し、MGITによる検出結果を示す図である。
【図5】指針となっている遠心濃縮法、並びに微粒子1、凝集剤1、および微粒子2を用いた粒子濃縮法によるM.kansasii濃縮物のMGITによる検出結果の比較を示した図である。
【図6】微粒子1、凝集剤1、および微粒子2を用いてBGC(弱毒化M.bovis)およびM.kansasiiを濃縮し、小川培地による検出結果を示す図である。
【図7】指針となっている遠心濃縮法と微粒子1、凝集剤1、および微粒子2を用いた粒子濃縮法によるM.kansasii濃縮物のMGITによる検出結果の比較を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる微粒子2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項2】
生体関連物質を吸着することができる凝集剤1、及び/又は前記微粒子2と結合することができる凝集剤2をさらに混合するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる凝集剤2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項4】
生体関連物質を吸着することができる凝集剤1をさらに混合するものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と、該凝集剤1と結合することができる微粒子2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項6】
前記微粒子2と結合することができる凝集剤2をさらに混合するものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と、該凝集剤1と結合することができる凝集剤2と、試料とを混合することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項8】
生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、該微粒子1と結合することができる微粒子2と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項9】
生体関連物質を吸着することができるランダム形状化された微粒子1と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項10】
生体関連物質を吸着することができる凝集剤1と結合することができる微粒子2と、試料との混合物を、凝集剤で処理することを特徴とする、試料中の生体関連物質の分離方法。
【請求項11】
微粒子1がイオン交換樹脂製のものである請求項1から4、8及び9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
微粒子1が、樹脂の粉砕物である請求項1から4、8、9及び11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
微粒子1の粒径が1から180μmである請求項1から4、8、9、11及び12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
微粒子2がイオン交換樹脂製のものである請求項1、2、5、6、8及び10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
微粒子2が磁性粒子である請求項1、2、5、6、8、10及び14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
微粒子2の粒径が0.1から500μmである請求項1、2、5、6、8、10、14及び15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
凝集剤が高分子である請求項2から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
試料が痰、喀痰、血液、口腔洗浄液、胃液、胸腔洗浄液、環境水、家庭排水、工場排水、飲用水、食物等洗浄液、及び生体関連物質が存在し得る道具の洗浄液からなる群から選択される少なくとも1つである、1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
生体関連物質が微生物もしくは細胞又は核酸である、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
微生物がマイコバクテリウム属に属する微生物である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
生体関連物質が負電荷であり、かつ、微粒子1及び/又は凝集剤が正電荷である、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
生体関連物質が正電荷であり、かつ、微粒子1及び/又は凝集剤が負電荷である、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
沈殿物と液体成分との分離工程を行う請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
磁気分離工程を行う請求項1、2、5、6、8、10及び14から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の方法により分離した分離物から生体関連物質を採取することを特徴とする生体関連物質の回収方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法により回収された生体関連物質を直接観察もしくは培養又は増幅することを特徴とする生体関連物質の検出方法。
【請求項27】
以下の性質又は機能を有する微粒子1、微粒子2、凝集剤1及び凝集剤2からなる群から選ばれる少なくとも2つ(微粒子1と凝集剤1との組合せ、及び微粒子2と凝集剤2との組合せを除く)を含む、生体関連物質の分離用、回収用、又は検出用キット。
(a) 微粒子1:ランダム形状化されている。生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(b) 微粒子2:微粒子1、凝集剤1及び凝集剤2の少なくとも1つと結合することができる。
(c) 凝集剤1:生体関連物質を吸着することができる。微粒子2及び/又は凝集剤2と結合することができる。
(d) 凝集剤2:微粒子1、微粒子2及び凝集剤1の少なくとも1つと結合することができる。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−247244(P2009−247244A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96753(P2008−96753)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】