説明

生体電気インピーダンス測定装置

【課題】 電極間に挟まれた身体部分の姿態が変動せず、電極間の距離が明確になるようして、高い測定精度で簡便に生体電気インピーダンスを測定することができるような生体電気インピーダンス測定装置の提供。
【解決手段】 身体の1つの部位を載置する載置台と、身体の1つの部位に接触するように載置台に配置された1対の測定電流印加電極と、1対の測定電流印加電極間に位置して身体の1つの部位に接触するように載置台に配置された1対の電圧測定電極と、身体の1つの部位を1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極に押し付ける押さえ部材と、1対の測定電流印加電極に交流電流を供給する交流電流供給手段と、1対の電圧測定電極間の電圧を測定する電圧測定手段と、供給された交流電流と測定された電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する演算手段とを備えることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、身体の生体電気インピーダンスを測定する生体電気インピーダンス測定装置に関し、また、生体電気インピーダンスと共に体脂肪、体水分、脈拍、血圧等を測定する生体電気インピーダンス測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、生体電気インピーダンス測定装置としては、図1に示すように、ケーブル接続11された1対の測定電流印加電極12a、12bおよび1対の電圧測定電極13a、13bを両手、両足、または、手足等に貼り付けて測定するケーブル接続電極型のもの10や、図2に示すように、1対のグリップ21a、21bに配置された1対の測定電流印加電極22a、22bおよび1対の電圧測定電極23a、23bを両手で握って測定する手専用電極型のもの20や、または、図3に示すように台31上に配置された1対の測定電流印加電極32a、32bおよび1対の電圧測定電極33a、33b上に両足で乗って測定する足専用電極型のもの30が知られており、いずれも両手、両足、または、手足間といった身体の2つの部位に2対の電極を配置して生体電気インピーダンスを測定するものである。尚、本願明細書において、身体の1つの部位とは、関節間に挟まれた、関節が介在しない身体の連続する部分をいう。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これらの従来の生体電気インピーダンス測定装置では、両手、両足、または、手足間といった身体の2つの部位に2対の電極が配置されて生体電気インピーダンスが測定されるので、電極間に挟まれた身体部分には関節が介在し、関節において身体が曲がってしまって、電極間に挟まれた身体部分の姿態が大きく変動してしまい、生体電気インピーダンスの測定精度が低くなってしまうという問題があった。
【0004】また、両手、両足、または、手足間といった身体の2つの部位に2対の電極が配置されて生体電気インピーダンスが測定されるので、電極間の距離が被測定者毎に変動してしまって不明であり、生体電気インピーダンスの測定精度が低くなってしまうという問題があった。
【0005】そしてまた、ケーブル接続型の場合には、長いケーブルの取り扱いや身体への電極の貼り付けが面倒であるという問題があった。
【0006】本発明の目的は、上述した問題点を解消し、電極間に挟まれた身体部分の姿態が変動せず、電極間の距離が明確になるようして、高い測定精度で簡便に生体電気インピーダンスを測定することができるような生体電気インピーダンス測定装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の1つの観点によれば、身体の1つの部位を載置する載置台と、身体の1つの部位に接触するように載置台に配置された1対の測定電流印加電極と、1対の測定電流印加電極間に位置して身体の1つの部位に接触するように載置台に配置された1対の電圧測定電極と、身体の1つの部位を1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極に押し付ける押さえ部材と、1対の測定電流印加電極に交流電流を供給する交流電流供給手段と、1対の電圧測定電極間の電圧を測定する電圧測定手段と、供給された交流電流と測定された電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する演算手段とを備える生体電気インピーダンス測定装置が提供される。
【0008】本発明の1つの実施の形態によれば、載置台は、1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされ、1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の各々は、載置台に沿って湾曲している。
【0009】本発明の別の実施の形態によれば、押さえ部材は、載置台に覆い被さるように一端において前記載置台に回動自在に枢設されている。押さえ部材の前記載置台に対向する面は、載置台に配置された1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の並びに対向して延びる湾曲した溝状にされているか、または、押さえ部材の載置台に対向する面には、他の1対の測定電流印加電極および他の1対の電圧測定電極が、載置台に配置された1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極と対応して同一の順番および同一の間隔で並んで身体の1つの部位に接触するように配置され、交流電流供給手段は、載置台に配置された1対の測定電流印加電極および押さえ部材に配置された1対の測定電流印加電極を実質的に1対の測定電流印加電極として、載置台に配置された1対の測定電流印加電極および押さえ部材に配置された1対の測定電流印加電極に同時に同一の交流電流を供給し、電圧測定手段は、載置台に配置された1対の電圧測定電極および押さえ部材に配置された1対の電圧測定電極を実質的に1対の電圧測定電極として、載置台に配置された1対の電圧測定電極および押さえ部材に配置された1対の電圧測定電極間の電圧を測定し、更に、押さえ部材の前記載置台に対向する面は、載置台に配置された1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の並びに対向して延びる湾曲した溝状にされ、押さえ部材に配置された1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の各々は、押さえ部材の載置台に対向する面に沿って湾曲している。
【0010】本発明の別の観点によれば、身体の1つの部位を載置する載置台と、載置台に覆い被さるように一端において載置台上に回動自在に枢設され、載置台に対向する面に、身体の1つの部位に接触するように1対の測定電流印加電極と1対の電圧測定電極とを備え、1対の電圧測定電極は1対の測定電流印加電極間に位置し、1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極を前記身体の1つの部位に押し付ける押さえ部材と、1対の測定電流印加電極に交流電流を供給する交流電流供給手段と、1対の電圧測定電極間の電圧を測定する電圧測定手段と、供給された交流電流と測定された電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する演算手段とを備える生体電気インピーダンス測定装置が提供される。
【0011】本発明の1つの実施の形態によれば、載置台は、1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされている。
【0012】本発明の別の実施の形態によれば、押さえ部材の載置台に対向する面は、1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされ、1対の測定電流印加電極および1対の電圧測定電極の各々は、押さえ部材の載置台に対向する面に沿って湾曲している。
【0013】本発明の更に別の実施の形態によれば、身体の1つの部位を位置決めする位置決め部材が備えられ、位置決め部材は位置調整可能である。
【0014】本発明の更に別の実施の形態によれば、身体の1つの部位は左右いずれか一方の前腕であるか、または、身体の1つの部位は左右いずれか一方の下腿であるか、または、身体の1つの部位は左右いずれか一方の前腕であり、位置決め部材は手で握るグリップおよび/もしくは肘を当接する肘当てである。
【0015】本発明の更に別の実施の形態によれば、演算手段は体脂肪、体水分、脈拍、または、血圧のうちの少なくとも1つを更に演算する。
【0016】本発明の更に別の実施の形態によれば、交流電流供給手段は複数の異なる周波数の交流電流を供給し、電圧測定手段は各周波数の交流電流に対応して電圧を測定し、演算手段は、供給された異なる周波数の交流電流とこれらに対応して測定された電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算するか、または、交流電流供給手段は単一の周波数の交流電流を供給し、電圧測定手段は測定された電圧の位相を更に測定し、演算手段は、供給された電流と測定された電圧との位相差を更に演算する。
【0017】本発明の更に別の実施の形態によれば、演算手段は細胞内液量対細胞外液量比、細胞外液量対体水分液量比、細胞内液量、細胞外液量、体水分液量、または、体脂肪量のうちの少なくとも1つを更に演算する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
【0019】先ず、本発明に係る生体電気インピーダンスの第1実施例について説明する。図4は、本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第1実施例の外部構成を示す斜視図である。本測定装置40は、前腕において生体電気インピーダンスを測定するものである。本測定装置40には、図4に示すように、全体がほぼ矩形の平面形状をしているハウジング41が備えられている。ハウジング41の上面の左半分には、ハウジング41の前端から後端まで直線状に延びる湾曲した溝状の載置台42と、載置台42の底部に固定的に配置された1対の測定電流印加電極43a、43bおよび1対の電圧測定電極44a、44bと、載置台42に覆い被さるように対向して延びる押さえ部材45とが備えられている。1対の測定電流印加電極43a、43bおよび1対の電圧測定電極44a、44bは、1対の測定電流印加電極43a、43b間に1対の電圧測定電極44a、44bを挟んで載置台42の長手方向に直線状に並び、各電極43a、44a、44b、43bは、載置台42の長手方向に対して垂直方向に、かつ、載置台42に沿って湾曲して延びる。押さえ部材45は上方に突出するように湾曲した溝状になっており、押さえ部材45の右端と載置台の右端とは、回動自在であるが高い摩擦係数で枢着されている。
【0020】ハウジング41の後端には、平板形状のスライド部材46が備えられている。スライド部材46は、その後端をハウジング41の後端から後方に突出させて、電極の並び43a、44a、44b、43bに沿って延び、ハウジング41内を載置台42の長手方向にスライド可能になっている。スライド部材46の後端には、載置台42に対して垂直に起立する棒状のグリップ47が備えられている。グリップ47は、ハウジング41の後方、かつ、載置台42の長手方向の延長線上に位置し、スライド部材46により、ハウジング41の後端に接する位置とハウジング41の後端から後方に離間した位置との間を載置台42の長手方向に移動可能になっている。ハウジング41の上面の右半分には、操作案内、測定状況、測定結果、演算結果等が表示される表示部48と、本測定装置40の制御命令および測定に必要な被測定者の個人パラメータ等を入力するための入力キー49aと、本測定装置40を作動させるための電源オンキー49bと、本測定装置40を停止するための電源オフキー49cとが備えられている。
【0021】図5は、図4に示した生体電気インピーダンス測定装置の内部構成を示すブロック図である。図5に示すように、本測定装置40の内部構成は、主として制御、演算およびデータの入出力を行う第1ブロックと、主として生体電気インピーダンス測定およびアナログ信号からデジタル信号への変換を行う第2ブロックとに分けられ、ハウジング41内に収容されている。
【0022】第1ブロックは、測定に関する制御、測定データの処理等を行う制御および演算装置51、制御および演算用プログラム、定数等を記憶するROM52、測定データ、演算結果、外部より読み込んだデータ、プログラム等を一時的に記憶するRAM53、測定データ、演算結果、測定に関するパラメータ等を記憶、読み出し、更新可能な不揮発性の補助記憶装置54、表示部48に接続され、操作案内、測定状況、測定結果、演算結果等を表示部48に表示させる表示装置55、測定に関するパラメータ、測定結果等を外部機器へ出力し、また、測定に関するパラメータ、測定時の制御情報、制御プログラム等を外部機器から本測定装置40へ読み込むための外部入出力インターフェイス56、外部入出力インターフェイスと外部機器とを接続するための外部インターフェイス端子57、入力キー49aに接続され、入力キー49aの押下を受けて、本測定装置40の制御命令、測定に必要な被測定者の個人パラメータ等の入力情報を生成するキー入力装置58、測定の日時等を管理するための時間情報を取得するための時計装置59、測定値、測定値から算出されたパラメータ等を電話回線を通じて他のコンピュータに送信するためのモデム内蔵の通信装置60、電源オンキー49bおよび電源オフキー49cに接続され、電源オンキー49bまたは電源オフキー49cの押下を受けて、本測定装置40の各部分への電力供給を開始または停止するための電源装置61、外部から電源装置61へ電力を供給するための電源端子62を備える。
【0023】第2ブロックは、ROM52またはRAM53に記憶された制御プログラムにより決められた周波数の交流信号を発生させる交流信号発生装置63、交流信号発生装置63から出力される交流信号をROM52またはRAM53に記憶された制御プログラムにより決められた実効値の交流信号にするための交流電流出力装置64、被測定者を流れる電流を検出して、基準電流検出信号として出力する基準電流検出装置65、交流電流出力装置64から基準電流検出装置65を介して供給される交流電流を出力するための1対の交流電流出力端子66a、66b、基準電流検出装置65の出力であるアナログ信号をデジタル信号に変換する第1A/D変換装置67、被測定者の2ヶ所の電位信号を入力するための1対の電圧測定端子68a、68b、1対の電圧測定端子68a、68b間の電位信号の差分信号を出力する電位差検出装置69、電位差検出装置69の出力であるアナログ信号をデジタル信号に変換する第2A/D変換装置70を備える。1対の交流電流出力端子66a、66bは1対の測定電流印加電極43a、43bに接続され、1対の電圧測定端子68a、68bは1対の電圧測定電極44a、44bに接続されている。
【0024】図6は、図4に示した生体電気インピーダンス測定装置の測定手順および動作の概要を示すフローチャートである。ステップ1で、被測定者が電源オンキー49bを押下すると、ステップ2で、本測定装置40内部の初期化が行われ、ステップ3で、図7に示す初期画面が表示部48に表示される。ステップ4で、被測定者の個人パラメータである性別、身長、体重、年齢が既に入力されているかどうかが判断され、既に入力されている場合には、ステップ8に進む。まだ入力されていない場合には、ステップ5に進み、個人パラメータ入力用画面が表示部48に表示される。ステップ6で、被測定者が入力キー49aを押下して個人パラメータを入力すると、ステップ7で、初期画面が再び表示部48に表示される。ステップ8に進み、被測定者が入力キー49aを押下して「1」を入力すると、ステップ9で、個人パラメータ入力画面が表示部48に表示され、ステップ10で、個人パラメータの変更が有る場合には、被測定者は入力キー49aを押下して個人パラメータを変更し、ステップ11に進む。ステップ11で、被測定者は、載置台42を左方にし、表示部48等を右方にして測定位置につく。そして、押さえ部材45を回動して載置台42に覆い被さらないようにし、適宜、スライド部材46を前後にスライドさせてグリップ47の位置を調整し、手でグリップ45を握り、前腕を載置台42に載置して、前腕を2対の電極43a、44a、44b、43bに接触させる。載置台42に載置する前腕は左右どちらの前腕でも良いが、操作性の点からは、左の前腕を左方に位置する載置台42に載置し、右手で押さえ部材45を開閉したり、右方に位置する入力キー49aを操作したりするのが良い。それから、押さえ部材45を載置台42に覆い被せるように回動して、押さえ部材45と載置台42との間に前腕を挟んで、押さえ部材45で前腕を2対の電極に上方から押し付けるようにし、入力キー49aを押下して測定開始の指示を入力する。本測定装置40では、載置台42は湾曲した溝状になっており、2対の電極43a、44a、44b、43bは載置台42に沿って湾曲し、更に、押さえ部材45は湾曲した溝状になっており、高い摩擦係数で載置台42に枢着されている押さえ部材45で前腕を2対の電極43a、44a、44b、43bに上方から押し付けるので、被測定者は、前腕を2対の電極43a、44a、44b、43bに密接させて載置することができる。押さえ部材45は、また、測定中、前腕を同一の姿態で載置台42に載置可能にする機能も果たす。そしてまた、グリップ47が備えられ、グリップ47は手の向きおよび位置を定める位置決め部材としての機能を果たすので、被測定者は、測定中および次回以降の測定において、前腕を常に同一の姿態で載置台42上に載置することができる。ステップ12では、生体電気インピーダンスが以下のように測定される。すなわち、ROM52に予め記憶されるか、または、補助記憶装置54や外部入出力インターフェイス56からRAM53に記憶された測定制御パラメータに基づいて交流信号発生装置63に出力信号周波数が設定され、交流信号発生装置63からの出力信号は交流電流出力装置64に出力される。測定制御パラメータに基づいて交流電流出力装置64の定電流出力回路に出力電流値が設定され、交流電流出力装置64からの出力は、基準電流検出装置65、1対の交流電流出力端子66a、66b、1対の測定電流印加電極43a、43bを順に介して被測定者に印加される。この時、被測定者に流れる電流は基準電流検出装置65により検出され、そのアナログ信号の出力は第1A/D変換装置67によりデジタル信号に変換される。そして、そのデジタル信号の出力はRAM53に記憶される。同時に、被測定者の2ヶ所の電位信号は、1対の電圧測定電極44a、44b、1対の電圧測定端子68a、68bを順に介して電位差検出装置69に入力され、電位差検出装置69により、入力された電位信号の差分信号が第2A/D変換装置70に出力される。第2A/D変換装置70では、アナログ信号である差分信号がデジタル信号に変換され、そのデジタル信号の出力はRAM53に記憶される。このようにして、生体電気インピーダンスが、測定制御パラメータに基づき周波数Fi(i=1、2、…、n)について繰り返し測定される。
【0025】続いてステップ13に進み、ステップ12で測定された生体電気インピーダンス測定値から、生体電気インピーダンスベクトル軌跡およびそれに関するパラメータが算出される。
【0026】通常、生体電気インピーダンスは、図8に示すような、細胞外液抵抗Re、細胞内液抵抗Ri、細胞膜容量Cmから成る集中定数による等価回路で表されるが、実際には、生体を構成する個々の細胞が、その形状や性質の差異により、それぞれ定数の異なる回路で表されるため、その集合体である生体では、集中定数による等価回路を測定した場合のように、生体電気インピーダンスベクトル軌跡は半円とならずに、コール−コールの円弧則に従う円弧となるとされている。
【0027】従って、一般に、生体電気インピーダンスは、図9に示すような円弧状の軌跡を描くことになる。ここで、X軸は生体電気インピーダンスのレジスタンス成分を表し、Y軸は生体電気インピーダンスのリアクタンス成分を表す。生体電気インピーダンスのリアクタンス成分は容量性なので負の値をとるため、生体電気インピーダンスベクトル軌跡は、X軸の下方に位置し、また、求める生体電気インピーダンスベクトル軌跡は円弧であるという仮定から、周波数F1、F2、…、FNの各々における生体電気インピーダンス測定値Z1、Z2、…、ZNは、ある円の円周上にある。ここで、円の中心のX座標をa、円の中心のY座標をb、円の半径をrとすると、生体電気インピーダンス測定値を通る円の方程式は式1のように表される。
【0028】
(X−a)2+(Y−b)2=r2 (式1)
a、b、rは、式1に、周波数F1、F2、…、FNにおける生体電気インピーダンス測定値Z1、Z2、…、ZNを代入することにより求められる。
【0029】また、式1から、Xは以下のように表される。


【0030】そして、式2より、式1で表される円とX軸との交点R0、Rinf(R0>Rinf)は、以下のように求められる。


【0031】更に、式3および式4より、図8の等価回路におけるReおよびRiは以下のように求められる。
【0032】
Re=R0 (式5)
Ri=R0・Rinf/(R0−Rinf) (式6)
特性周波数Fcにおける生体電気インピーダンスベクトルZcは、リアクタンス成分、すなわちY軸成分の絶対値が最大になる点であるから、その場合のレジスタンス成分であるX座標値およびリアクタンス成分であるY座標値は以下のように算出される。
【0033】X=a (式7)
Y=b−r (式8)
ここで、RcはZcのレジスタンス成分、XcはZcのリアクタンス成分とすると、Zcは以下のように表される。
【0034】
Zc=Rc+jXc=a+j(b−r) (式9)
また、Z(ω)はωにおける生体電気インピーダンスベクトル、τ、βは定数とすると、コール−コールの円弧則から、任意の角周波数ωにおける生体電気インピーダンスベクトルは以下のように表される。


【0035】更に、τ=1/ωcとして、式10は以下のように表される。


【0036】ここで、ωc=2πFcであるから、先に測定された生体電気インピーダンス測定値を用いて、Fcおよびβが求められる。
【0037】上述のように生体電気インピーダンス測定値から求められた生体電気インピーダンスベクトル軌跡およびそれに関するパラメータR0およびRinf、ReおよびRi、Zc、Rc、Xc、Fc等に基づいて、細胞外液量、細胞内液量、体水分液量(細胞外液量と細胞内液量との和)、体脂肪量、除脂肪量(体重と体脂肪量との差)等の身体成分量が算出され、また、算出された身体成分量から、細胞内液量対細胞外液量比、細胞外液量対体水分液量比、体水分液量比から求められる脱水状態、体脂肪の割合等が算出される。
【0038】それから、ステップ14に進み、測定値および測定値から算出された結果が表示部48に表示される。ステップ15では、測定値および測定値から算出された結果等が、補助記憶装置54に記憶されるか、または、外部入出力インターフェイス56を介して外部機器へ送信される。その後、ステップ16に進み、被測定者が入力キー49aを押下して、再測定の指示を入力した場合は、ステップ11から再度測定がやり直される。ステップ16で、被測定者が再測定の指示を入力せず、ステップ17で、入力キー49aを押下して、グラフ表示を指示した場合は、過去に求められた測定値および測定値から算出された結果が表示部48にグラフ表示される。そして、ステップ18で、被測定者が電源オフキー49cを押下すると、一連の測定は終了し、本測定装置40は停止する。
【0039】上述したステップ8で、被測定者が入力キー49aを押下して、「2」を入力した場合には、ステップ19で、表示に関連するデータおよびパラメータ等が補助記憶装置54から読み出され、ステップ17に進み、上述したように所定のデータが表示部48にグラフ表示される。そして、ステップ18で、上述したように本測定装置40は停止する。
【0040】ステップ8で、被測定者が入力キー49aを押下して、「3」を入力した場合には、ステップ20で、送信に関連するデータおよびパラメータ等が補助記憶装置54から読み出され、ステップ21で、所定のデータが、電話回線を介して、外部の他のデータ処理装置に送信される。所定のデータは、例えば、上述した生体電気インピーダンス測定により測定された測定値(生体電気インピーダンス、電圧、位相差、測定日時等)、その測定値から算出されたパラメータ(R0、Rinf、Re、Ri、Zc、Rc、Xc、Fc等)、身体成分量(細胞内液量、細胞外液量、体水分液量、除脂肪量、体脂肪量等)、むくみ指標値(細胞外液量、細胞内液量対細胞外液量比、細胞外液量対体水分液量比等)、個人パラメータ(識別番号、名前、性別、年齢、身長、体重等)等である。それから、ステップ18で、上述したように本測定装置40は停止する。
【0041】尚、上述したステップ12およびステップ13では、複数の周波数の交流電流について測定および演算が実施されるが、より簡易に、単一の周波数の交流電流についてのみ測定および演算が実施されても良い。その場合には、ステップ12では、生体電気インピーダンス、および、生体電気インピーダンス測定時に被測定者へ印加された交流電流の位相と被測定者から測定された電圧の位相との間の位相差が単一の周波数F1についてのみ測定される。
【0042】ステップ13では、F1の周波数における生体電気インピーダンス測定値Z1からレジスタンス成分値R1およびリアクタンス成分値X1が求められ、それらの値が、図10に示されるF1=50kHzの場合の例に示されるような予め求められたレジスタンス成分およびリアクタンス成分の正常値の範囲内にあるか否かが判定される。そして、もし、正常値の範囲内にないならば、生体電気インピーダンス測定値から、生体電気インピーダンスベクトル軌跡に関するパラメータが以下に基づいて算出される。
【0043】すなわち、生体電気インピーダンスの電気的特性については、第1実施例の場合と同様である。生体電気インピーダンスベクトル軌跡は円弧であるという仮定から、周波数F1における生体電気インピーダンス測定値Z1は、図11に示すように、ある円の円周上にある。ここで、X軸は生体電気インピーダンスのレジスタンス成分を表し、Y軸は生体電気インピーダンスのリアクタンス成分を表す。
【0044】任意の角周波数ωFにおける生体電気インピーダンスベクトルは、ω0、βは定数として、式12のように表される。


【0045】更に、β=1として、式12は以下のように表される。


【0046】そして、生体電気インピーダンスおよび位相差の測定値、測定された電圧と印加された交流電流とから求められる抵抗値とに基づいて、体水分液量、除脂肪量、体脂肪量等の身体成分量が算出され、また、算出された身体成分量から体脂肪の割合等が算出される。
【0047】続いて、本発明に係る生体電気インピーダンスの第2実施例について説明する。図12は、本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第2実施例の外部構成を示す斜視図であり、図12において図4と同一の機能を果たす部分には同一符号を付している。本測定装置80も、上述した第1実施例と同様に、前腕において生体電気インピーダンスを測定するものである。本測定装置80では、図12に示すように、第1実施例のスライド部材46に代わって、平板形状のスライド部材81が、ハウジング41の前端に備えられている。スライド部材81は、その半円形状をした前端をハウジング41の前端から前方に突出させて、電極の並び43a、44a、44b、43bに沿って延び、ハウジング41内を載置台42の長手方向にスライド可能になっている。また、第1実施例のグリップ部材47に代わって、載置台42に対して垂直に起立する肘当て壁82aがスライド部材81の前端に備えられ、また、円形の肘当てパッド82bがスライド部材81の上面の前部に備えられている。肘当て壁82aおよび肘当てパッド82bは、ハウジング41の前方、かつ、載置台42の長手方向の延長線上に位置し、スライド部材81により、ハウジング41の前端に当接する位置とハウジング41の前端から前方に離間した位置との間を載置台42の長手方向に移動可能になっている。他の外部構成および内部構成は、上述した第1実施例の構成と同様である。
【0048】本実施例の測定手順および動作の概要は、上述した第1実施例の測定手順および動作の概要とほぼ同様であり、再度、図6を参照して相違点のみを説明すると、ステップ11で、被測定者は、適宜、肘当て壁82aおよび肘当てパッド82bの位置を調整し、肘を肘当て壁82aおよび肘当てパッド82bに当接し、載置台42上の2対の電極43a、44a、44b、43bが前腕に接触するように前腕を載置台42上に載置する。本測定装置80では、肘当て壁82aおよび肘当てパッド82bは肘の位置を定める位置決め部材としての機能を果たすので、被測定者は、測定中および次回以降の測定において、前腕を常に同一の姿態で載置台42上に載置することができる。
【0049】次に、本発明に係る生体電気インピーダンスの第3実施例について説明する。図13は、本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第3実施例の外部構成を示す斜視図であり、図13において図4と同一の機能を果たす部分には同一符号を付している。本測定装置85も、上述した第1実施例と同様に、前腕において生体電気インピーダンスを測定するものである。本測定装置85では、図13に示すように、1対の測定電流印加電極86a、86bおよび1対の電圧測定電極87a、87bは、第1実施例のように載置台42に配置されるのではなく、押さえ部材45の載置台42に対向する面の頂部に固定的に配置されている。1対の測定電流印加電極86a、86bおよび1対の電圧測定電極87a、87bは、1対の測定電流印加電極86a、86b間に1対の電圧測定電極87a、87bを挟んで押さえ部材45の長手方向に直線状に並び、各電極86a、87a、87b、86bは、押さえ部材45の長手方向に対して垂直方向に、かつ、押さえ部材45の載置台に対向する面に沿って湾曲して延びる。他の外部構成は、上述した第1実施例の構成と同様である。
【0050】本実施例の内部構成は、上述した第1実施例の内部構成とほぼ同様であり、再度、図5を参照して相違点のみを説明すると、1対の交流電流測定端子66a、66bは、1対の測定電流印加電極86a、86bに接続され、また、1対の電位測定端子68a、68bは、1対の電圧測定電極87a、87bに接続されている。
【0051】本実施例の測定手順および動作の概要は、上述した第1実施例の測定手順および動作の概要とほぼ同様であり、再度、図6を参照して相違点のみを説明すると、ステップ11で、被測定者は、押さえ部材45を載置台42に覆い被せるように回動して、押さえ部材45と載置台42との間に前腕を挟んで、前腕を押さえ部材45に配置された2対の電極86a、87a、87b、86bに接触させ、押さえ部材45で押さえ部材45に配置された2対の電極86a、87a、87b、86bを前腕に上方から押し付けるようにする。本測定装置80では、押さえ部材45の載置台42に対向する面は湾曲した溝状になっており、押さえ部材45に配置された2対の電極86a、87a、87b、86bは載置台42に沿って湾曲し、高い摩擦係数で枢着されている押さえ部材45で押さえ部材45に配置された2対の電極86a、87a、87b、86bを前腕に上方から押し付けるので、被測定者は、前腕を2対の電極86a、87a、87b、86bに密接させて載置することができる。
【0052】ステップ12では、交流電流出力装置64からの出力は、基準電流検出装置65、交流電流出力端子66a、66b、1対の測定電流印加電極86a、86bとを順に介して被測定者に印加される。また、被測定者の2ヶ所の電位信号は、1対の電圧測定電極87a、87b、1対の電圧測定端子68a、68bを順に介して電位差検出装置69に入力され、電位差検出装置69により、入力された電位信号の差分信号が第2A/D変換装置70に出力される。
【0053】更に、本発明に係る生体電気インピーダンスの第4実施例について説明する。図14は、本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第4実施例の外部構成を示す斜視図であり、図14において図4と同一の機能を果たす部分には同一符号を付している。本測定装置90も、上述した第1実施例と同様に、前腕において生体電気インピーダンスを測定するものである。本測定装置90では、図14に示すように、第1実施例と同様に載置台に配置された1対の測定電流印加電極91a、91bおよび1対の電圧測定電極92a、92bに加えて、更にもう1対の測定電流印加電極91’a、91’bおよび更にもう1対の電圧測定電極92’a、92’bが、押さえ部材45の載置台42に対向する面の頂部に固定的に配置されている。押さえ部材45に配置された各電極91’a、92’a、92’b、91’bは、載置台42に配置された対応する各電極91a、92a、92b、91bに対向して配置され、押さえ部材45の長手方向に直線状に並び、1対の押さえ部材45の長手方向に対して垂直方向に、押さえ部材45の載置台42に対向する面に沿って湾曲して延びる。他の外部構成は、上述した第1実施例の構成と同様である。
【0054】本実施例の内部構成は、上述した第1実施例の内部構成とほぼ同様であり、再度、図5を参照して相違点のみを説明すると、1対の交流電流測定端子86a、86bは、載置台に配置された1対の測定電流印加電極91a、91bと共に押さえ部材45に配置された1対の測定電流印加電極91’a、91’bにも接続され、これら2対の測定電流印加電極91a、91’a、91b、91’bには、これら2対の測定電流印加電極91a、91’a、91b、91’bを実質的に1対の測定電流印加電極として、1対の交流電流測定端子66a、66bを介して同時に同一の交流電流供給が供給される。同様に、1対の電位測定端子66a、66bは、載置台42に配置された1対の電圧測定電極92a、92bと共に押さえ部材45に配置された1対の電圧測定電極92’a、92’bにも接続され、これら2対の電圧測定電極92’a、92’b間の電圧は、これら2対の電圧測定電極92a、92’a、92b、92’bを実質的に1対の電圧測定電極として測定される。
【0055】本実施例の測定手順および動作の概要は、上述した第1実施例の測定手順および動作の概要とほぼ同様であり、再度、図6を参照して相違点のみを説明すると、ステップ11で、被測定者は、押さえ部材45を載置台42に覆い被せるように回動して、押さえ部材45と載置台42との間に前腕を挟み、前腕を押さえ部材45に配置された2対の電極91’a、92’a、92’b、91’bに接触させて、押さえ部材45で前腕を載置台42に配置された2対の電極91a、92a、92b、91bに上方から押し付け、また、前腕に押さえ部材45に配置された2対の電極91’a、92’a、92’b、91’bを上方から押し付けるようにする。本測定装置90では、押さえ部材45の載置台42に対向する面は湾曲した溝状になっており、押さえ部材45に配置された2対の電極91’a、92’a、92’b、91’bは載置台42に沿って湾曲し、高い摩擦係数で枢着されている押さえ部材45で押さえ部材45に配置された2対の電極91’a、92’a、92’b、91’bを前腕に上方から押し付けるので、被測定者は、前腕を2対の電極91’a、92’a、92’b、91’bに密接させて載置することができる。加えて、実質的に1対の測定電流印加電極として機能する2対の測定電流印加電極91a、91b、91’a、91’bが載置台42と押さえ部材45とに配置され、また、実質的に1対の電圧測定電極として機能する2対の電圧測定電極92a、92b、92’a、92’bが載置台42と押さえ部材45とに配置されて、身体に接触する電極の表面積が大きくされているので、高周波の電流が身体に印加された場合であっても、電流は身体の深部に流れ、高い精度で生体電気インピーダンスを測定することができる。
【0056】ステップ12では、交流電流出力装置64からの出力は、基準電流検出装置65、交流電流出力端子66a、66b、実質的に1対の測定電流印加電極として機能する載置台42に配置された1対の測定電流印加電極91a、91bおよび押さえ部材45に配置された1対の測定電流印加電極91’a、91’bとを順に介して被測定者に印加される。また、被測定者の2ヶ所の電位信号は、実質的に1対の電圧測定電極として機能する載置台42に配置された1対の電圧測定電極92a、92bおよび押さえ部材45に配置された1対の電圧測定電極92’a、92’b、1対の電圧測定端子68a、68bを順に介して電位差検出装置69に入力され、電位差検出装置69により、入力された電位信号の差分信号が第2A/D変換装置70に出力される。
【0057】以上、本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第1実施例から第4実施例を説明したが、本発明の実施例はそれらの実施例に限定されることはない。
【0058】例えば、上述した実施例はいずれも前腕において生体電気インピーダンスを測定するものであるが、下腿といったような身体の他の1つの部位において測定するようにしても良い。肝要なのは、電極間に挟まれた身体部分に関節が介在しないように、2対の電極を身体のいずれか1つの部位のみに配置することであり、これによって、電極間に挟まれた身体部分の姿態の変動は小さくなる。
【0059】また、上述した実施例は位置決め部材としてグリップまたは肘当ての一方を備えているが、グリップと肘当てとの両方を備えても良く、これによって、より確実に電極間に挟まれた身体部分を同一の姿態に保持できるようになる。上述した実施例では、グリップを載置台に対して垂直に起立させているが、グリップを載置台に対して水平、かつ、載置台の長手方向に対して垂直に設けても良い。この場合、前腕の手のひらの延長線上に位置する体毛の少ない部分を電極に接触させて測定できるので、高い測定精度で生体電気インピーダンスを測定することができる。前腕ではなく下腿において生体電気インピーダンスを測定する装置の場合は、位置決め部材として踵当てを備えるようにしても良い。
【0060】そしてまた、上述した実施例では、細胞外液量、細胞内液量、体水分液量(細胞外液量と細胞内液量との和)、体脂肪量、除脂肪量(体重と体脂肪量との差)、細胞内液量対細胞外液量比、細胞外液量対体水分液量比、体水分液量比から求められる脱水状態、体脂肪の割合等が算出されるが、脈拍や血圧が算出されても良い。
【0061】加えて、上述した実施例では、載置台を溝状にしているが、身体の1つの部位を載置し易く、身体と電極との接触が良ければ、溝状に限定されず、平板状等であっても良い。同様に、上述した実施例では、押さえ部材を溝状にしているが、身体の1つの部位を押さえ易く、押え部材に電極が配置されている場合においては身体と電極との接触が良ければ、溝状に限定されず、平板状等であっても良い。
【0062】更に、上述した実施例では、押さえ部材と載置台とを高い摩擦係数で枢着して、押え部材が容易に回動してしまわないようにしているが、押さえ部材の枢着されている端部に対向する端部と載置台の端部とをラッチ部材等で解除自在に固定するようにしても良い。この場合、身体の大きさは個人差があるので、ラッチ部材は上下方向に位置調整可能になっているのが良い。また、押え部材をゴムバンドのような弾性を有する部材から形成し、その一端を載置台に完全に固定し、対向する他端を載置台にラッチ部材等で解除自在に固定するようにしても良く、或いは、押え部材を布地のような自由に曲げられる部材から形成し、その一端を載置台に完全に固定し、押え部材を身体に巻きつけて、対向する他端を押え部材に解除自在にホック等で固定するようにしても良い。
【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の生体電気インピーダンス測定装置では、前腕や下腿といった身体の1つの部位に2対の電極が配置されて生体電気インピーダンスが測定されるので、電極間に挟まれた身体部分に関節は介在せず、電極間に挟まれた身体部分の姿態は殆ど変動しない。また、位置決め部材が備えられているので、より確実に電極間に挟まれた身体部分を同一の姿態に保持可能である。そしてまた、2対の電極は載置台上に固定的に配置されるので、電極間の距離は被測定者毎に変動せず常に一定で明確である。更に、押さえ部材が備えられ、また、電極が配置された面が湾曲した溝状になっており、その面に沿って電極も湾曲しているので、身体の1つの部位を電極に密接させて載置することができる。押さえ部材は、また、電極間に挟まれた身体部分を同一の姿態に保持可能にする機能も果たす。加えて、実質的に1対の測定電流印加電極として機能する2対の測定電流印加電極が載置台および押さえ部材に配置され、また、実質的に1対の電圧測定電極として機能する2対の電圧測定電極が載置台および押さえ部材に配置され、身体に接触する電極の表面積が大きくされているので、高周波の電流が身体に印加された場合であっても、電流は身体の深部に流れる。従って、高い測定精度で生体電気インピーダンスを測定することが可能である。
【0064】そしてまた、本発明の生体電気インピーダンス測定装置では、載置台上に前腕や下腿といった身体の1つの部位を載置することにより、2対の電極が身体に配置されることとなるので、長いケーブルを取り扱ったり、身体へ電極を貼り付けたりする必要はない。従って、測定が非常に簡便である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術のケーブル接続電極型の生体電気インピーダンス測定装置を示す概要図である。
【図2】従来技術の手専用電極型の生体電気インピーダンス測定装置を示す概要図である。
【図3】従来技術の足専用電極型の生体電気インピーダンス測定装置を示す概要図である。
【図4】本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第1実施例の外部構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示した生体電気インピーダンス測定装置の内部構成を示すブロック図である。
【図6】図4に示した生体電気インピーダンス測定装置の測定手順および動作の概要を示すフローチャートである。
【図7】図4に示した生体電気インピーダンス測定装置の表示部に表示される初期画面を示す図である。
【図8】生体電気インピーダンスを表す等価回路図である。
【図9】生体電気インピーダンスベクトル軌跡を表すグラフ図である。
【図10】予め求められている生体電気インピーダンスのレジスタンス成分とリアクタンス成分の正常値の範囲を示すグラフ図である。
【図11】生体電気インピーダンスベクトル軌跡を示すグラフ図である。
【図12】本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第2実施例の外部構成を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第3実施例の外部構成を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る生体電気インピーダンス測定装置の第4実施例の外部構成を示す斜視図である。
【符号の簡単な説明】
10、20、30、40、80、85、90 生体電気インピーダンス測定装置
11 ケーブル
12a、12b、22a、22b、32a、32b、43a、43b、86a、86b、91a、91b、91’a、91’b 測定電流印加電極
13a、13b、23a、23b、33a、33b、44a、44b、87a、87b、92a、92b、92’a、92’b 電圧測定電極
21a、21b、47 グリップ
31 台
41 ハウジング
42 載置台
46、81 スライド部材
48 表示部
49a 入力キー
49b 電源オンキー
49c 電源オフキー
51 演算および制御装置
52 ROM
53 RAM
54 補助記憶装置
55 表示装置
56 外部入出力インターフェイス
57 外部インターフェイス端子
58 キー入力装置
59 時計装置
60 通信装置
61 電源装置
62 電源端子
63 交流信号発生装置
64 交流電流出力装置
65 基準電流検出装置
66a、66b 交流電流出力端子
67 第1A/D変換装置
68a、68b 電圧測定端子
69 電位差検出装置
70 第2A/D変換装置
82a 肘当て壁
82b 肘当てパッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 身体の1つの部位を載置する載置台と、前記身体の1つの部位に接触するように前記載置台に配置された1対の測定電流印加電極と、前記1対の測定電流印加電極間に位置して前記身体の1つの部位に接触するように前記載置台に配置された1対の電圧測定電極と、前記身体の1つの部位を前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極に押し付ける押さえ部材と、前記1対の測定電流印加電極に交流電流を供給する交流電流供給手段と、前記1対の電圧測定電極間の電圧を測定する電圧測定手段と、供給された前記交流電流と測定された前記電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する演算手段とを備えることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項2】 請求項1に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記載置台は、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされ、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の各々は、前記載置台に沿って湾曲している生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項3】 請求項1もしくは請求項2に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記押さえ部材は、前記載置台に覆い被さるように一端において前記載置台に回動自在に枢設されている生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項4】 請求項3に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面には、他の1対の測定電流印加電極および他の1対の電圧測定電極が、前記載置台に配置された前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極と対応して同一の順番および同一の間隔で並んで前記身体の1つの部位に接触するように配置され、前記交流電流供給手段は、前記載置台に配置された前記1対の測定電流印加電極および前記押さえ部材に配置された前記1対の測定電流印加電極を実質的に1対の測定電流印加電極として、前記載置台に配置された前記1対の測定電流印加電極および前記押さえ部材に配置された前記1対の測定電流印加電極に同時に同一の交流電流を供給し、前記電圧測定手段は、前記載置台に配置された前記1対の電圧測定電極および前記押さえ部材に配置された前記1対の電圧測定電極を実質的に1対の電圧測定電極として、前記載置台に配置された前記1対の電圧測定電極および前記押さえ部材に配置された前記1対の電圧測定電極間の電圧を測定する生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項5】 請求項3に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面は、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の並びに対向して延びる湾曲した溝状にされている記載の生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項6】 請求項4に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面は、前記載置台に配置された前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の並びに対向して延びる湾曲した溝状にされ、前記押さえ部材に配置された前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の各々は、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面に沿って湾曲している生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項7】 身体の1つの部位を載置する載置台と、前記載置台に覆い被さるように一端において前記載置台上に回動自在に枢設され、前記載置台に対向する面に、前記身体の1つの部位に接触するように1対の測定電流印加電極と1対の電圧測定電極とを備え、前記1対の電圧測定電極は前記1対の測定電流印加電極間に位置し、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極を前記身体の1つの部位に押し付ける押さえ部材と、前記1対の測定電流印加電極に交流電流を供給する交流電流供給手段と、前記1対の電圧測定電極間の電圧を測定する電圧測定手段と、供給された前記交流電流と測定された前記電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する演算手段とを備えることを特徴とする生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項8】 請求項7に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記載置台は、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされている生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項9】 請求項7もしくは請求項8に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面は、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の並びに沿って延びる湾曲した溝状にされ、前記1対の測定電流印加電極および前記1対の電圧測定電極の各々は、前記押さえ部材の前記載置台に対向する面に沿って湾曲している生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項10】 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記身体の1つの部位を位置決めする位置決め部材を備え、該位置決め部材は位置調整可能である生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項11】 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記身体の1つの部位は左右いずれか一方の前腕である生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項12】 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記身体の1つの部位は左右いずれか一方の下腿である生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項13】 請求項10に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記身体の1つの部位は左右いずれか一方の前腕であり、前記位置決め部材は手で握るグリップおよび/もしくは肘を当接する肘当てである生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項14】 請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記演算手段は体脂肪、体水分、脈拍、または、血圧のうちの少なくとも1つを更に演算する生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項15】 請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記交流電流供給手段は複数の異なる周波数の交流電流を供給し、前記電圧測定手段は各周波数の交流電流に対応して電圧を測定し、前記演算手段は、供給された異なる周波数の前記交流電流とこれらに対応して測定された前記電圧とに基づいて生体電気インピーダンスを演算する生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項16】 請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の生体電気インピーダンス測定装置において、前記交流電流供給手段は単一の周波数の交流電流を供給し、前記電圧測定手段は測定された前記電圧の位相を更に測定し、前記演算手段は、供給された前記電流と測定された前記電圧との位相差を更に演算する生体電気インピーダンス測定装置。
【請求項17】 請求項15もしくは請求項16に記載の生体電気インピーダンス測定において、前記演算手段は細胞内液量対細胞外液量比、細胞外液量対体水分液量比、細胞内液量、細胞外液量、体水分液量、または、体脂肪量のうちの少なくとも1つを更に演算する生体電気インピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図6】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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