生体電気信号検出装置
【課題】ダイナミックレンジを小さくしつつ、生体電気信号からノイズを除去する生体電気信号検出装置を提供すること。
【解決手段】生体電気信号検出装置は、ユーザに発生する電気信号を検出する電極E(ch1、GND、REFなど)と、電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段101(101cなど)とを含む複数の検出手段100(100a、100b、100cなど)と、複数の検出手段100から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段110(110aなど)とを含む。増幅手段101は、ユーザ及び電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、電極Eと差動増幅手段110との間に設けられる。
【解決手段】生体電気信号検出装置は、ユーザに発生する電気信号を検出する電極E(ch1、GND、REFなど)と、電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段101(101cなど)とを含む複数の検出手段100(100a、100b、100cなど)と、複数の検出手段100から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段110(110aなど)とを含む。増幅手段101は、ユーザ及び電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、電極Eと差動増幅手段110との間に設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電気信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の脳波や筋電を検出することが行われている。例えば、人間の頭部に接触させた電極から得られる電気信号(以降、生体電気信号という。)に基づいてコンピュータを操作する装置が知られている(特許文献1)。また、検出された生体電気信号に基づいてユーザの集中力を測定する方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−166050号公報
【特許文献2】特表2002−503505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術において、ユーザの体には種々のノイズが発生するため、生体電気信号からノイズの成分を除去しなければならない。所定周波数成分を取り除くフィルタリング処理を生体電気信号に施してノイズを除去することも考えられるが、ノイズの成分は、ユーザの生体活動による信号成分に比べて振幅が大きいので、ダイナミックレンジの大きい高コストな回路が必要になる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ダイナミックレンジを小さくしつつ、生体電気信号からノイズを除去することが可能な生体電気信号検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る生体電気信号検出装置は、ユーザに発生する電気信号を検出する電極と、当該電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段と、を含む複数の検出手段と、前記複数の検出手段から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段と、を含み、前記増幅手段は、前記ユーザ及び前記電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、前記電極と前記差動増幅手段との間に設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダイナミックレンジを小さくしつつ、生体電気信号からノイズを除去することが可能になる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記増幅手段は、前記電極と前記増幅手段との距離が、前記増幅手段と前記差動増幅手段との距離よりも短い位置に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記生体電気信号検出装置は、前記差動増幅手段の出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器を含み、前記複数の検出手段は、第1の電極及び第1の増幅手段を含む第1の検出手段と、第2の電極及び第2の増幅手段を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、前記A/D変換器の入力電圧範囲をVmin〜Vmaxとし、前記第1の増幅手段の入力インピーダンスをRiaとし、前記第2の増幅手段の入力インピーダンスをRicとし、前記第1の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt1とし、前記第2の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt2とし、前記第1の電極と前記第1の増幅手段との距離をL1とし、前記第2の電極と前記第2の増幅手段との距離をL2とし、前記第1の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal1(L1)とし、前記第2の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal2(L2)とし、前記差動増幅手段の増幅度をAvとし、前記第1の増幅手段の増幅度をAaとし、前記第2の増幅手段の増幅度をAcとし、前記第1の電極によって検出された電気信号の電圧をVch1とし、前記第2の電極によって検出された電気信号の電圧をVrefとした場合、請求項に記載の関係式(1)〜(5)を満たすように、前記第1の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、前記第2の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、が設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記増幅手段は、増幅度が1倍のアンプであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記複数の検出手段は、前記ユーザの前頭部と接触する第1の電極を含む第1の検出手段と、前記ユーザの耳と接触する第2の電極を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、前記一又は複数の差動増幅手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段との出力信号を差動増幅することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】生体電気信号検出装置が使用される様子を示す図である。
【図2】生体電気信号検出装置の外観斜視図である。
【図3】電極が検出する生体電気信号の測定波形を示す図である。
【図4】飽和した測定波形を示す図である。
【図5】電極が検出する生体電気信号を示す図である。
【図6】電極と電極との差動電圧の波形を示す図である。
【図7】本実施形態における生体電気信号検出装置の回路構成の模式図である。
【図8】差動入力部の回路構成の一例を説明するための図である。
【図9】出力信号電圧のノイズ成分と接触インピーダンスとの関係を示す図である。
【図10】電磁誘導電圧を示す回路図である。
【図11】本発明に係るバッファアンプを含む回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態の一例について図面に基づき詳細に説明する。まず、本発明に係る生体電気信号検出装置1について説明する。
【0014】
図1は、生体電気信号検出装置1が使用される様子を示す図である。図1に示すように、生体電気信号検出装置1は、例えば、ユーザHの頭部に装着される。生体電気信号検出装置1は、ユーザHの生体活動を示す生体電気信号を検出する。
【0015】
ケーブルCは、生体電気信号検出装置1から出力される生体電気信号をゲーム装置200に入力するためのものである。なお、生体電気信号検出装置1が検出する生体電気信号は、無線通信によってゲーム装置200に送られるようにしてもよい。
【0016】
生体電気信号検出装置1から検出される生体電気信号は、ゲーム装置200において、種々の用途に用いられる。例えば、ゲーム装置200に、生体電気信号の変化の特徴と、ゲーム操作と、を対応付けて記憶しておき、生体電気信号検出装置1が検出する生体電気信号が、ゲームの操作に用いられるようにしてよい。また例えば、生体電気信号の変化に応じてゲーム音楽が変更されるようにしてもよい。
【0017】
[生体電気信号検出装置の構成]
図2は、生体電気信号検出装置1の外観斜視図である。図2に示すように、生体電気信号検出装置1は、基板ボックス10、電池ボックス20、前頭部バンド30、後頭部ベルト40、及びイヤホン50を含む。
【0018】
また、本実施形態の生体電気信号検出装置1は、ユーザHに接触させる4つの電極を含む。これらの電極は、例えば、塩化銀からなる接触面や銀からなる導電材を含んで構成され、ユーザHに発生する生体電気信号を検出する。なお、本実施形態においては、導電性ジェルを介してユーザHと接触する湿式電極ではなく、ユーザHと電極の接触面が直接接触する乾式電極を想定する。また、電極材料は、上記の例に限られず、種々の材料を適用可能である。
【0019】
以降、この4つの電極を、それぞれ、電極ch1,ch2,GND,REFという。また、これらの4つの電極を、まとめて電極Eともいう。電極ch1,ch2(何れかが第1の電極)は、前頭部バンド30に配置され、ユーザHの前頭部の皮膚と接触する。電極GND,REF(第2の電極)は、イヤホン50に配置され、ユーザHの耳の皮膚と接触する。
【0020】
基板ボックス10は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの右側頭部に位置する。基板ボックス10の内部には、生体電気信号検出装置1を統括的に制御するマイコン部(図2には示さず。図7参照。)を含む基板が格納される。
【0021】
基板ボックス10の内部にあるマイコン部の制御によって、生体電気信号検出装置1は電極Eから検出した生体電気信号に対して、ノイズ除去処理、増幅処理、A/D変換処理、及び周波数解析処理等を施して外部装置(例えば、ゲーム装置200)に送信する。
【0022】
電池ボックス20は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの左側頭部に位置する。電池ボックス20は、生体電気信号検出装置1の各部に電力を供給する。電池ボックス20は、開閉自在であり、例えば、内部に複数の乾電池を格納できるようになっている。
【0023】
また、電池ボックス20は、例えば、電源スイッチ21、電源ランプ22、及び通信ランプ23を含む。電源スイッチ21は、電力の供給のオン/オフを切り替えるためのスイッチである。電源スイッチ21が操作されて電力が供給されると、電源ランプ22が点灯する。また、電源スイッチ21の操作によって、電力の供給が終了されると、電源ランプ22が消灯する。通信ランプ23は、基板ボックス10のマイコン部が外部端末(例えば、ゲーム装置200)と通信しているか否かを示すためのものである。
【0024】
前頭部バンド30は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの前頭部に位置する。前頭部バンド30の内側(即ち、ユーザHの額と接触する側)には、2つの電極ch1,ch2が配置されている。
【0025】
電極ch1は、例えば、ユーザHの右側の額(例えば、右眉の上の皮膚)と接触して、生体電気信号を検出する。一方、電極ch2は、例えば、ユーザHの左側の額(例えば、左眉の上の皮膚)と接触して、生体電気信号を検出する。
【0026】
電極ch1,ch2と、基板ボックス10に格納されるマイコン部と、は電気的に接続されている。即ち、電極ch1,ch2によって検出された生体電気信号は、基板ボックス10のマイコン部に対して送られる。なお、電極ch1,ch2と基板ボックス10のマイコン部とを電気的に接続するための配線(電極コード)は、前頭部バンド30の内部に格納されていてよい。
【0027】
後頭部ベルト40は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの後頭部に位置する。後頭部ベルト40は、バックル41を含み、長さが調節可能になっている。
【0028】
ユーザHは、電極ch1,ch2と前頭部とが隙間なく接触するように、後頭部ベルト40の長さを調整する。つまり、ユーザHは、頭のサイズに合わせて生体電気信号検出装置1を装着し、前頭部に配置される電極ch1,ch2の位置をずれないようにすることができる。
【0029】
イヤホン50は、ユーザHの耳に装着される。イヤホン50は、電極REF,GNDと、アンプ基板51と、を含む。電極REF及び電極GNDは、ユーザHがイヤホン50を装着(挿入)した場合に、ユーザHの耳の皮膚と接触する位置に配置される。
【0030】
例えば、電極REFは、ユーザHの右耳の皮膚と接触し、右耳周辺の生体電気信号を検出する。また例えば、電極GNDは、ユーザHの左耳の皮膚と接触し、左耳周辺の生体電気信号を検出する。
【0031】
アンプ基板51は、サウンドバッファ等を含み、楽曲や音声等の出力を制御する。イヤホン50から出力される楽曲や音声のデータは、例えば、基板ボックス10のマイコン部の制御により、ゲーム装置200から取得されるようにしてよい。
【0032】
また、基板ボックス10のマイコン部と、電極REF,GND及びアンプ基板51と、は電気的に接続されている。なお、基板ボックス10のマイコン部と電極GNDとを電気的に接続するための配線(電極コード)は、電池ボックス20及び前頭部バンド30の内部に格納されていてよい。
【0033】
[電極から得られる生体電気信号]
次に、電極Eから得られる生体電気信号について説明する。電極Eは、ユーザHの皮膚と接触し、接触箇所の周辺の電位変化を検出する。
【0034】
本実施形態においては、電極ch1,ch2は、ユーザHの額と接触することにより、ユーザHの脳の神経細胞や、額周辺の筋肉の電位の集計を検出する。例えば、ユーザHが目を動かしたり、瞳を瞬いた場合等には、電極ch1と電極ch2から所定の周波数成分の生体電気信号が強く検出される。また例えば、ユーザHが興奮した場合には脳の神経細胞が活性化するので、安静時よりも生体電気信号の大きな電位の変化が検出される。
【0035】
一方、電極GND,REFは、ユーザHの耳と接触することにより、ユーザHの耳周辺の筋肉の電位の集計を検出する。電極GNDから検出する生体電気信号は、ユーザHの基準電圧を示すものとして用いられる。電極REFから検出される生体電気信号は、例えば、電極ch1,ch2から検出される生体電気信号から、ノイズ成分を除去するために用いられる。
【0036】
ここで、生体電気信号に含まれるノイズについて説明する。例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を使用する際の周囲の環境に起因して、生体電気信号には種々のノイズが含まれる。例えば、ユーザHに帯電する静電気の変動によって発生するノイズが、一例として挙げられる。
【0037】
また例えば、ユーザHの周囲の機器(例えば、商用電源)からユーザHの体に静電誘導されるハムノイズが発生する。例えば、ユーザHが家庭用電気コンセントの近くにいる場合、ユーザHは、この家庭用電気コンセントから発生する磁場の影響を受けて、ノイズが発生する。
【0038】
上記のようなノイズは、ユーザHの頭の全体にほぼ均一に乗っていることが知られている。つまり、電極Eから検出される生体電気信号は、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分と、ノイズ信号の成分と、が合算されたものである。
【0039】
図3は、電極Eが検出する生体電気信号の測定波形を示す図である。なお、電極ch1及び電極ch2が検出する生体電気信号は、共に同様の波形を示すため、ここでは電極ch1を例に挙げて説明する。図3に示すように、電極ch1が検出する生体電気信号の測定波形(図3の実線)は、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分(図3の点線)と、ユーザHの体に発生するノイズ信号の成分(図3の一点鎖線)と、が合算されたものである。
【0040】
なお、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度は、数十μV〜数百μVであり、ノイズ信号の信号強度は、数百mV程度であることが知られているが、図3では、説明の都合上、これらの縮尺を一致させていない。
【0041】
ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号を検出して、ゲーム装置200のゲーム操作等に用いるためには、電極Eから検出される生体電気信号からノイズ成分を除去しなければならない。
【0042】
ここで、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の周波数は、ノイズ信号の周波数(例えば、50Hz程度)に比べて低周波(例えば、2Hz〜40Hz程度)であることが知られている。したがって、生体電気信号検出装置1は、電極ch1が検出する生体電気信号を、デジタルデータに変換してフィルタリング処理を行うことによってノイズの周波数成分を除去することも考えられる。
【0043】
ただし、上記のように、ノイズ信号の信号強度は、ユーザHの生体活動による生体電気信号の信号強度に比べて大きいので、デジタルデータで表現可能な振幅を示すダイナミックレンジが足りない可能性がある。A/D変換を行う際にダイナミックレンジが不足する場合には、図3に示す測定波形が飽和するため、ノイズ成分を除去することができなくなる。
【0044】
図4は、飽和した測定波形を示す図である。図4に示すように、測定波形の振幅に比べてダイナミックレンジが不足した場合、測定波形が飽和してノイズ成分が分からなくなるため、フィルタリング処理でノイズを除去することができなくなってしまう。
【0045】
ノイズ信号成分をデジタルフィルタで除去する場合、ノイズ信号は数百mV程度であるので、例えば、入力電圧範囲の幅が500mV(以降、ピークトゥピーク電圧Vp−pという。)のA/D変換器が必要となる。
【0046】
また、ユーザHの生体活動を解析するためには、A/D変換の量子化幅aを、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度に合わせる必要がある。即ち例えば、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度のオーダー(例えば、数十μV〜数百μV)に合わせて、量子化幅aを0.1μVとすることが考えられる。この場合、量子化幅を0.1μVとすると、5*106ステップが必要となる。即ち、この場合、量子化ビット数bが23ビット以上である高いダイナミックレンジのA/D変換器が必要となる。
【0047】
上記の例の場合、ダイナミックレンジの小さなA/D変換器(例えば、量子化ビット数bが10ビット)を用いた場合、図4のように測定波形が飽和し、ノイズ成分を除去することができなくなる。例えば、量子化幅aを0.1μVとした場合、量子化ビット数bが10ビットの比較的小さなダイナミックレンジのA/D変換器では、ピークトゥピーク電圧Vp−pが102.4μVとなるため、数百mVの強さのノイズ信号の波形が飽和してしまう。
【0048】
そこで、本実施形態においては、電極ch1が検出する生体電気信号と、電極REFが検出する生体電気信号と、に基づいてノイズ信号を打ち消すことによって、小さなダイナミックレンジのA/D変換器を用いたとしても、ノイズを除去できるようにしている。
【0049】
図5は、電極REFが検出する生体電気信号を示す図である。図5に示すように、電極REFが検出する生体電気信号も、電極ch1が検出する生体電気信号と同様に、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分(図5の点線)と、ユーザHの体に発生するノイズ信号の成分(図5の一点鎖線)と、が合わさったものである。
【0050】
しかし、電極REFは、筋肉の動きや神経細胞の活動の影響が比較的少ない耳に配置される。即ち、電極REFは、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の変化が比較的少ない位置に配置されている。本実施形態においては、電極REFが検出する生体電気信号のうち、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分を略零であるとみなしている。別の言い方をすれば、電極REFが検出する生体電気信号は、略すべてノイズ成分であるとみなしている。
【0051】
したがって、電極ch1が検出する生体電気信号と、電極REFが検出する生体電気信号と、の差をとることによって、電極ch1が検出する生体電気信号からノイズ成分が除去される。即ち、これらの差動電圧は、ユーザHの右前頭部の生体活動による電気信号を示すものといえる。
【0052】
図6は、電極ch1と電極REFとの差動電圧の波形を示す図である。即ち、図6に示す波形は、図3に示す実線の波形から図5に示す実線波形を引いた差分の波形である。図6に示すように、ノイズ成分が除去されて、ユーザHの右前頭部の生体活動による電気信号を得ることができる。
【0053】
なお、上記では、電極ch1を例に挙げて説明したが、電極ch2が検出する生体電気信号も図3と同じような波形を示すので、電極ch2が検出する生体電気信号も、電極REFが検出する生体電気信号を用いてノイズ成分を打ち消すことができる。なお、電極GNDが検出する生体電気信号の波形は、図5に示す電極REFの波形と同様である。
【0054】
このように、生体電気信号検出装置1は、電極REFが検出する生体電気信号を用いてノイズ成分を打ち消すことができる。次に、生体電気信号検出装置1の回路構成について説明する。
【0055】
[生体電気信号検出装置の回路構成]
図7は、本実施形態における生体電気信号検出装置1の回路構成の模式図である。図7に示すように、生体電気信号検出装置1は、検出部100a,100b,100c,100d、差動増幅部110a,110b、フィルタ部120a,120b、増幅部130a,130b、マイコン部140を含む。これらの構成要素は、電池ボックス20に格納された乾電池によって駆動するようにしてよい。
【0056】
また、検出部100a,100dは、前頭部バンド20に含まれ、検出部100b,100cは、イヤホン50に含まれる。他の構成要素は、基板ボックス10に含まれる。
【0057】
検出部100a,100b,100c,100d(以降、これらをまとめて検出部100ともいう。)は、それぞれ電極ch1,GND,REF,ch2を含んで構成され、ユーザHに発生する生体電気信号を検出する。
【0058】
差動増幅部110a,110b(以降、これらをまとめて差動増幅部110ともいう。)は、複数の検出部100から出力される信号のうちの2つを差動増幅するものであり、例えば、所定の増幅度を有するオペアンプを含んで構成される。
【0059】
差動増幅部110aは、検出部100aの検出信号からノイズ成分を除去する(打ち消す)ように、検出部100aの検出信号と検出部100cの検出信号とを差動増幅する。また、差動増幅部110bは、検出部100dの検出信号からノイズ成分を除去する(打ち消す)ように、検出部100dの検出信号と検出部100cの検出信号とを差動増幅する。
【0060】
フィルタ部120a,120b(以降、これらをまとめてフィルタ部120ともいう。)は、差動増幅部110の出力信号の所定の周波数成分(ノイズ信号の周波数成分)を除去する。フィルタ部120は、A/D変換器を含むデジタルフィルタであってもよい。即ち、フィルタ部120は、差動増幅部110によって除去しきれなかったノイズ成分を除去するためのものである。
【0061】
例えば、フィルタ部120は、ケーブルや人体に誘導される外来電磁ノイズ(例えば、40Hz以上のノイズ)を除去するためのローパスフィルタ(例えば、8次の多段ローパスフィルタ)を含む。また例えば、フィルタ部120は、ユーザHの静電気変動や電極Eの接触箇所で発生する低周波ノイズ(例えば、2Hz以下のノイズ)を除去するためのハイパスフィルタ(例えば、4次の多段ハイパスフィルタ)を含む。
【0062】
なお、フィルタ部120は、高周波ノイズ及び低周波ノイズを除去して、ユーザHの生体活動による信号成分(例えば、2Hz〜40Hzの信号成分)のみを通過させるバンドパスフィルタであってもよい。フィルタ部120が取り出す電気信号の周波数帯域は、ユーザHに発生する電気信号のノイズの周波数に応じて適宜変更可能であってよい。
【0063】
増幅部130a,130b(以降、これらをまとめて増幅部130ともいう。)は、所定の増幅度を有するオペアンプを含んで構成される。増幅部130は、フィルタ部120を通過し、所定周波数成分がカットされた生体電気信号を増幅してマイコン部140に出力する。なお、増幅部130における電気信号の増幅度は、任意の値であってよい。例えば、ユーザHの生体に関する電気信号は数μVであるので、この電気信号を数Vまで増幅させるための増幅度(例えば、106倍)が設定されていてよい。
【0064】
マイコン部140は、マイクロプロセッサやメモリ、アナログ形式の出力電気信号をデジタル形式に変換するA/D変換器、各種入出力インタフェース等を含んで構成される。マイコン部140は、差動増幅部110及びフィルタ部120によってノイズが除去され、かつ、増幅部130によって増幅された生体電気信号を取得する。
【0065】
また例えば、マイコン部140は、生体電気信号を周波数分析するようにしてよい。例えば、マイコン部140は、周波数ごとに生体電気信号の信号強度を測定して出力信号として、図示しない出力端子とケーブルCを介してゲーム装置200に対して出力する。
【0066】
生体電気信号検出装置1は、上記のような回路構成に基づいてノイズ成分を除去する。ただし、電極EとユーザHとの間に発生する接触インピーダンスは、電極Eの位置や時間経過に応じて異なるので、差動増幅部110に入力される生体電気信号に含まれるノイズ成分の大きさが異なり、差動電圧によってノイズを除去しきれなくなる可能性がある。
【0067】
即ち、複数の電極EとユーザHとの接触インピーダンスの大きさに差があった場合、差動増幅部110がノイズ成分を除去する効果が減少する。本実施形態においては、検出部100に含まれる電極Eとして、乾式電極が用いられる。したがって、電極EとユーザHとの間には、湿式電極を使用する場合に比べて大きな接触インピーダンスが発生する。つまり、接触インピーダンスのばらつきを考慮しなければ、差動増幅部110がノイズを除去しきれなくなってしまい、図4のように波形が飽和する可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態における生体電気信号検出装置1は、複数の電極Eの接触インピーダンスの大きさにばらつきがあったとしても、差動増幅部110がノイズ成分を除去する効果が減少しない構成になっている。以降、この構成について詳細に説明する。
【0069】
まず、接触インピーダンスと、差動増幅部110のノイズ除去能力と、の関係について説明する。なお、差動増幅部110aと差動増幅部110bとは、同様の構成を有するので、以降では差動増幅部110aを例に挙げて説明する。
【0070】
[差動増幅部のノイズ除去能力]
図8は、差動増幅部110aの回路構成の一例を説明するための図である。ユーザHの皮膚と接触する電極Eは、ユーザの汗や皮脂等に起因して接触インピーダンスが発生する。図8では、電極ch1,GND,REFとユーザHとの接触インピーダンスを、それぞれ接触インピーダンスRt1,Rtg,Rt2とする。なお、接触インピーダンスRt1,Rtg,Rt2は、数十kΩ〜数MΩ程度であることが一般的に知られている。
【0071】
また、図8では、ユーザHの体に発生するノイズを発生ノイズVnoise0とする。先述のように、外来電磁ノイズは、ユーザHの頭全体にほぼ均一に発生するため、発生ノイズVnoise0を、図8に示すように電極ch1,GND,REFに対応する位置に示す。また、発生ノイズVnoise0の電圧をノイズ電圧Vcomm(コモンモードノイズ電圧)とする。なお、電極GNDは、ユーザHの生体活動による電気信号を検出するが、この成分を略零とし、記載を省略する。
【0072】
また、ここでは説明の都合上、回路に電磁誘導ノイズ(詳細後述)は発生しないものとして説明する。差動増幅部110aに含まれるオペアンプ111aの入力インピーダンスRiを、図8のように模式的に示す。
【0073】
図3〜図6を参照して説明したように、電極ch1が検出する生体電気信号の電圧Vch1は、ユーザHの生体活動による生体電気信号(信号Vcreature1とし、この電圧をVcreate1とする。)と、ノイズ成分(例えば、電圧Vcomm)と、の両者が合算されたものである。
【0074】
また、電極REFが検出する生体電気信号の電圧Vrefは、ユーザHの生体活動による生体電気信号(信号Vcreature2とし、この電圧をVcreate2とする。)と、ノイズ成分と、の両者が合算されたものである。
【0075】
オペアンプ111aは、電極ch1と電極REFとの差動電圧を検出し、ノイズ成分を除去する。ここで、電極ch1からオペアンプ111a側に流れる電流I1、及び、オペアンプ111aの負側入力信号電圧V1は、以下の式によって表される。
(1)I1=V1/Ri1
(2)V1=Vcomm+Vcreate1−Rt1*I1
【0076】
上記の式(1)及び式(2)から、負側入力信号電圧V1は、以下の式によって表される。
(3)V1=Ri1*(Vcomm+Vcreate1)/(Ri1+Rt1)
【0077】
一方、電極REFからオペアンプ111a側に流れる電流I2、及び、オペアンプ111aの正側入力信号電圧V2は、以下の式によって表される。
(4)I2=V2/Ri1
(5)V2=Vcomm+Vcreate2−Rt2*I2
【0078】
上記の式(4)及び式(5)から、正側入力信号電圧V2は、以下の式によって表される。
(6)V2=Ri1*(Vcomm+Vcreate2)/(Ri1+Rt2)
【0079】
また、オペアンプ111aの出力信号電圧V01は、オペアンプ111aの増幅度Av、式(3)及び式(6)に基づいて、以下の式で表される。
(7)V01=Av*(V2−V1)=Av*Ri1*(1/(Ri1+Rt2)−1/(Ri1+Rt1))*Vcomm+Av*Ri1*(Vcreate2/(Ri1+Rt2)−(Vcreate1/(Ri1+Rt1))
【0080】
式(7)で示されるように、出力信号電圧V01は、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差が小さければ小さいほど、ノイズ成分(式(7)のうちの「Av*Ri1*(1/(Ri1+Rt2)−1/(Ri1+Rt1))*Vcomm」の成分)の絶対値が小さくなる。即ち、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差が小さければ小さいほど、差動増幅部110によるノイズ成分の除去性能が向上することになる。
【0081】
図9は、出力信号電圧V0のノイズ成分と接触インピーダンスとの関係を示す図である。図9に示す例は、例えば、ノイズ電圧Vcommを100mV、増幅度Avを2*104、及び接触インピーダンスRt2を104Ωとし、入力インピーダンスRi及び接触インピーダンスRt1を変化させた場合に、式(7)によって得られる出力信号電圧V01のノイズ成分を示している。
【0082】
図9に示すように、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の値の差が小さいほど(図9の場合、が104Ωに近いほど)、出力信号電圧V01のノイズ成分が小さくなる。また、入力インピーダンスRi1が、接触インピーダンスRt1及び接触インピーダンスRt2に比べて大きくなるほど、出力信号電圧V01のノイズ成分が小さくなる。
【0083】
したがって、入力インピーダンスRi1を、接触インピーダンスのオーダー(数十kΩ〜数MΩ)に比べて極めて大きく(例えば、1GΩ以上)すれば、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差によらず、ノイズ成分の除去能力は担保される。例えば、入力インピーダンスRi1を、接触インピーダンスRt1,Rt2の100倍以上にすれば、接触インピーダンスRt1が接触インピーダンスRt2の2倍であっても、式(7)に示すように、オペアンプ111aの差動入力によってノイズの振幅を数十分の一に収めることができる。
【0084】
しかしながら、差動増幅部110は基板ボックス10に格納されているため、図8に示す電極Eと入力インピーダンスRi1とを接続する配線は、一定の距離(例えば、基板ボックス10と、前頭部バンド30又はイヤホン50と、の距離)がある。したがって、図8に示す回路に外来ノイズ(例えば、電磁誘導によるノイズ)が発生してしまう可能性がある。
【0085】
例えば、図8に示す電極ch1の検出信号を差動増幅部110aに伝達するための配線と、電極GNDの検出信号を差動増幅部110aに伝達するための配線と、によって囲まれる領域に外部からの電磁波が貫く場合、この領域には電磁誘導ノイズ(外来ノイズ)が発生する。例えば、電極ch1と差動増幅部110との距離L0が大きくなればなるほど、この領域の面積(以降、面積S(L0)とする。)は大きくなる。
【0086】
ここで、ユーザHの周囲の機器(例えば、商用電源)からの外来電磁波の磁束密度をB(T)とすると、電極ch1の配線及び電極GNDの配線によって発生する電磁誘導電圧V(L0)は、磁束の時間変化に基づいて以下の式によって表される。
(8)V(L0)=−d(B*S(L0))/dt
【0087】
上記の式(8)から、電極ch1と入力インピーダンスRiとの距離L0が長くなると、面積S(L0)が大きくなるため電磁誘導電圧V(L0)が高くなる。
【0088】
図10は、電磁誘導電圧を示す回路図である。図10は、図8の回路のうち、接触インピーダンスRt1と入力インピーダンスRi1のみを示している。図10に示すように、入力インピーダンスRiの両端の電圧は、(Ri1/(Rt1+Ri1))*V(L0)で表される。即ち、入力インピーダンスRiが大きくなると、この電磁誘導電圧V(L0)が、負側入力信号電圧V1に及ぼす影響が大きくなる。
【0089】
また、他にも、電極Eから差動増幅部110までの配線が一定の長さがある場合、配線とユーザHの間で静電結合ノイズ等が発生する。つまり、高い入力インピーダンスRi1のために高感度なアンテナのようにノイズを拾ってしまう可能性がある。したがって、本発明に係る生体電気信号検出装置1は、このノイズの発生を抑制するようにしている。
【0090】
[発生ノイズを低減するバッファアンプ]
本発明に係る生体電気信号検出装置1の検出部100は、上記のような高い入力インピーダンスに基づくノイズの発生を防ぐためにバッファアンプ(増幅手段)を含むようにしている。このバッファアンプは、図8のオペアンプ111aと同様に、差動増幅部110によるノイズ除去の効果が低下しないように、ユーザH及び電極ch1,ch2,REFの接触インピーダンス(例えば、数十kΩ)より高い入力インピーダンス(例えば、1GΩ以上)を有する。
【0091】
バッファアンプは、電極Eで検出される電気信号を増幅させる。また、バッファアンプは、電極Eと差動増幅部110との間に配置される。例えば、バッファアンプは、電極Eとバッファアンプとの距離が、バッファアンプと差動増幅美110との距離よりも短い位置に設けられる。別の言い方をすれば、例えば、バッファアンプは、バッファアンプの入力インピーダンスを含む回路に発生する外来ノイズの成分によって、差動増幅部110の出力電圧が飽和しないような位置(例えば、電極Eの直後)に配置される。
【0092】
図11は、本発明に係るバッファアンプを含む回路構成の一例を示す図である。図11に示すように、電極ch1,REFと、オペアンプ101と、の間に、バッファアンプ101a,101c(以降、電極Eの直後に配置されるバッファアンプをまとめてバッファアンプ101という。)が配置されている。
【0093】
バッファアンプ101a,101cの増幅度は、例えば、互いに略同程度(例えば、1)に設定される。バッファアンプ101a,101cの増幅度は、接触インピーダンスよりも高い入力インピーダンスが得られる範囲で設定されていてよい。
【0094】
図11では、バッファアンプ101aの入力インピーダンスをRia(>接触インピーダンスR1t)とし、バッファアンプ101cの入力インピーダンスをRic(>接触インピーダンスR2t)とする。また、図11に示す回路に発生する電磁誘導ノイズの電圧を、ノイズ電圧Vei1及びノイズ電圧Vei2とする。また、電磁誘導ノイズや静電結合ノイズ等、回路に発生するノイズを含めてノイズVnoise1及びノイズVnoise2とする。
【0095】
例えば、電極ch1とバッファアンプ101aとの距離L1に基づいて、ノイズ電圧Vei1は、−d(B*S(L1))/dtで表される。また例えば、電極REFとバッファアンプ101cとの距離L2に基づいて、ノイズ電圧Vei2は、−d(B*S(L2))/dtで表される。
【0096】
電極ch1からバッファアンプ101a側に流れる電流I11、及び、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V11は、以下の式によって表される。なお、下記に示すVtotal1(L1)は、第1の検出手段(検出部100a)を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズである。例えば、Vtotal1(L1)は、ノイズ電圧Vel1や、静電結合ノイズの電圧が加算されたものである。また、電圧Vch1は、電極ch1で検出する電気信号の電圧である。即ち、電圧Vch1は、電圧Vcommと電圧Vcreate1を合算したものである。
(9)V11=I11*Ria
(10)V11=Vtotal1(L1)+Vch1−Rt1*I11
【0097】
式(9)及び式(10)から、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V11は、以下の式によって表される。
(11)V11=Ria*(Vtotal1(L1)+Vch1)/(Ria+Rt1)
【0098】
一方、電極REFからバッファアンプ101c側に流れる電流I21、及び、バッファアンプ101cの正側入力信号電圧V21は、以下の式によって表される。なお、下記に示すVtotal2(L2)は、第2の検出手段(検出部100c)を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズである。例えば、Vtotal2(L2)は、ノイズ電圧Vel2や、静電結合ノイズの電圧が加算されたものである。また、電圧Vrefは、電極REFで検出する電気信号の電圧である。即ち、電圧Vrefは、電圧Vcommと電圧Vcreate2を合算したものである。
(12)V21=I21*Ric
(13)V21=Vtotal2(L2)+Vref−Rt2*I21
【0099】
式(12)及び式(13)から、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V21は、以下の式によって表される。
(14)V21=Ric*(Vtotal2(L2)+Vref)/(Ric+Rt2)
【0100】
バッファアンプ101aの増幅度をAaすると、オペアンプ111aの負側入力電圧V12は、Aa*V11となる。また、バッファアンプ101cの増幅度をAcとすると、オペアンプ111cの正側入力電圧V22は、Ac*V21となる。
【0101】
したがって、オペアンプ111aの出力信号電圧V02は、増幅度Av、式(11)及び式(14)に基づいて以下の式で表される。
(15)V02=Av*(V21−V11)=Av*(Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vref)/(Ric+Rt2)−Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vch1)/(Ria+Rt1))
【0102】
出力信号電圧V02が、生体電気信号検出装置1のA/D変換器の入力電圧範囲Vmin〜Vmaxの範囲に収まるようにすれば、波形が飽和することなく、フィルタ部120で残存ノイズを取り除くことができる。なお、先述のように、A/D変換器の入力電圧範囲Vmin〜Vmaxは、例えば、生体電気信号検出装置1に含まれるA/D変換器の量子化幅a、量子化ビット数b、及び所定の最低入力電圧に基づいて決定される。
【0103】
したがって、下記の式を満たすように、バッファアンプ101aの位置及び入力インピーダンスRiaと、バッファアンプ101cの位置及び入力インピーダンスRicと、が設定される。
(16)Vmin<Av*(V22−V12)<Vmax
(17)V22=Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vch1)/(Ric+Rt2)
(18)V12=Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vref)/(Ria+Rt1)
【0104】
式(16)〜(18)の関係式を満たすことによって、差動増幅部110の出力信号が入力電圧範囲内に収まる。したがって、この出力信号が、後段のA/D変換器で変換した場合に波形が飽和することがなくなるので、フィルタリング処理で残存ノイズを確実に除去することができる。
【0105】
なお、増幅度Av,Aa,Acは、上記の式(16)〜(18)を満足するように設定されていてよい。また、式(17)の「Ric/(Ric+Rt2)」、及び、式(18)の「Ria/(Ria+Rt1)」は、それぞれ1と近似して距離L1や距離L2が決定されてもよい。
【0106】
また、バッファアンプ101a,101cが、それぞれ電極ch1,REFの直後に配置されるので、入力インピーダンスRia及び入力インピーダンスRicは、電極ch1,REFの直後にあることになる。即ち、距離L1と距離L2が略零であるので、電磁誘導ノイズや静電結合ノイズの発生を軽減することができる。
【0107】
数値例を挙げて説明すると、距離L1及び距離L2が略零であり、
増幅度Av=Aa=Ac=1
Vtotal1(L1)=1.2mV
Vtotal1(L2)=1mV
Rt1=10kΩ
Rt2=15kΩ
Vcomm=300mV
Vcreate1=500μV
Vcreate2=100μV
とした場合、入力インピーダンスRic及び入力インピーダンスRiaを100MΩに設定すると、差動増幅部110から出力される電圧Av*(V22−V12)が、615μV程度になる。この大きさは、Vcreate1及びVcreate2と同程度のオーダーである。したがって、入力電圧範囲の大きさが数百μVであっても、差動増幅部110から出力される電圧が飽和することがなくなる。
【0108】
なお、オペアンプ111aは、バッファアンプ101aとバッファアンプ101cとの2つの出力電気信号を差動増幅させる。オペアンプ111aの入力インピーダンスは、図11では図示していないが、バッファアンプ101の入力インピーダンスよりも小さくてよい。即ち、バッファアンプ101によって接触インピーダンスによるノイズ除去性能の低下を防ぐことができるので、オペアンプ111aの入力インピーダンスを高く設定する必要がなくなる。図8のようにオペアンプ111aの入力インピーダンスが高い場合、この入力インピーダンスを含む回路に発生する電磁誘導ノイズや静電結合ノイズの影響を大きく受けることになるが、図11の回路では、この影響を低減させることができる。
【0109】
また、バッファアンプ101の出力インピーダンス側の回路でも外来ノイズが発生することが考えられるが、バッファアンプ101の増幅度を1倍とすることによって、入力インピーダンスを高く、かつ、出力インピーダンスを低くすることができるので、このノイズの発生を軽減することができる。
【0110】
上記では検出部100a,100b,100c、及び、差動増幅部110aの構成を例に挙げて説明したが、検出部100dが検出する生体電気信号についても同様のノイズ除去処理が行われる。即ち、検出部100dの電極ch2の直後に高入力インピーダンスのバッファアンプ101を配置し、差動増幅部100bで生体電気信号を差増増幅させる。これにより、検出部100dが検出するノイズ成分を検出部100cの成分で打ち消すことができ、かつ、バッファアンプ101の高入力インピーダンスに起因するノイズを抑えることができる。
【0111】
[実施形態のまとめ]
以上のように、生体電気信号検出装置1は、差動増幅部110が電極Eの差動電圧を出力するため、ユーザHの体に発生するノイズを除去することができる。また、電極ch1,ch2,REFの直後に配置されるバッファアンプ101の入力インピーダンスが、接触インピーダンスに比べて高いので、接触インピーダンスのばらつきによる差動増幅部110によるノイズ除去性能の低下を抑えることができる。また、電極Eの直後にバッファアンプ101を配置することによって、高い入力インピーダンスRi2を使用してもノイズの発生を抑えることができる。
【0112】
したがって、ダイナミックレンジが比較的小さいA/D変換器を用いても測定波形を飽和させることなく、フィルタ部120で残存ノイズを確実に除去することができる。また、電導性ジェルをふき取ったりする手間がかかる湿式電極ではなく、取り扱いが簡単な乾式電極を用いることができる。
【0113】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、電極(検出部)の数を4つとしたが、差動電圧を検出するために複数個の電極が、生体電気信号検出装置1に配置されていればよく、電極の数は4つに限られない。差動増幅部は、検出部の数に合わせた数が配置されていればよい。
【0114】
また例えば、生体電気信号検出装置を頭部に装着させる場合を説明したが、ユーザの体と電極を接触させるものであればよく、手や足に装着させるものであってよい。
【符号の説明】
【0115】
1 生体電気信号検出装置、10 基板ボックス、20 電池ボックス、21 電源スイッチ、22 電源ランプ、23 通信ランプ、30 前頭部バンド、40 後頭部ベルト、41 バックル、50 イヤホン、51 アンプ基板、E,ch1,ch2,GND,REF 電極、100,100a,100b,100c,100d 検出部、101a,101c バッファアンプ、110,110a,110b 差動増幅部、111a オペアンプ、120,120a,120b フィルタ部、130,130a,130b 増幅部、140 マイコン部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体電気信号検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の脳波や筋電を検出することが行われている。例えば、人間の頭部に接触させた電極から得られる電気信号(以降、生体電気信号という。)に基づいてコンピュータを操作する装置が知られている(特許文献1)。また、検出された生体電気信号に基づいてユーザの集中力を測定する方法(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−166050号公報
【特許文献2】特表2002−503505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような技術において、ユーザの体には種々のノイズが発生するため、生体電気信号からノイズの成分を除去しなければならない。所定周波数成分を取り除くフィルタリング処理を生体電気信号に施してノイズを除去することも考えられるが、ノイズの成分は、ユーザの生体活動による信号成分に比べて振幅が大きいので、ダイナミックレンジの大きい高コストな回路が必要になる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、ダイナミックレンジを小さくしつつ、生体電気信号からノイズを除去することが可能な生体電気信号検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る生体電気信号検出装置は、ユーザに発生する電気信号を検出する電極と、当該電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段と、を含む複数の検出手段と、前記複数の検出手段から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段と、を含み、前記増幅手段は、前記ユーザ及び前記電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、前記電極と前記差動増幅手段との間に設けられることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ダイナミックレンジを小さくしつつ、生体電気信号からノイズを除去することが可能になる。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記増幅手段は、前記電極と前記増幅手段との距離が、前記増幅手段と前記差動増幅手段との距離よりも短い位置に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記生体電気信号検出装置は、前記差動増幅手段の出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器を含み、前記複数の検出手段は、第1の電極及び第1の増幅手段を含む第1の検出手段と、第2の電極及び第2の増幅手段を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、前記A/D変換器の入力電圧範囲をVmin〜Vmaxとし、前記第1の増幅手段の入力インピーダンスをRiaとし、前記第2の増幅手段の入力インピーダンスをRicとし、前記第1の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt1とし、前記第2の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt2とし、前記第1の電極と前記第1の増幅手段との距離をL1とし、前記第2の電極と前記第2の増幅手段との距離をL2とし、前記第1の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal1(L1)とし、前記第2の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal2(L2)とし、前記差動増幅手段の増幅度をAvとし、前記第1の増幅手段の増幅度をAaとし、前記第2の増幅手段の増幅度をAcとし、前記第1の電極によって検出された電気信号の電圧をVch1とし、前記第2の電極によって検出された電気信号の電圧をVrefとした場合、請求項に記載の関係式(1)〜(5)を満たすように、前記第1の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、前記第2の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、が設定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記増幅手段は、増幅度が1倍のアンプであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記複数の検出手段は、前記ユーザの前頭部と接触する第1の電極を含む第1の検出手段と、前記ユーザの耳と接触する第2の電極を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、前記一又は複数の差動増幅手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段との出力信号を差動増幅することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】生体電気信号検出装置が使用される様子を示す図である。
【図2】生体電気信号検出装置の外観斜視図である。
【図3】電極が検出する生体電気信号の測定波形を示す図である。
【図4】飽和した測定波形を示す図である。
【図5】電極が検出する生体電気信号を示す図である。
【図6】電極と電極との差動電圧の波形を示す図である。
【図7】本実施形態における生体電気信号検出装置の回路構成の模式図である。
【図8】差動入力部の回路構成の一例を説明するための図である。
【図9】出力信号電圧のノイズ成分と接触インピーダンスとの関係を示す図である。
【図10】電磁誘導電圧を示す回路図である。
【図11】本発明に係るバッファアンプを含む回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態の一例について図面に基づき詳細に説明する。まず、本発明に係る生体電気信号検出装置1について説明する。
【0014】
図1は、生体電気信号検出装置1が使用される様子を示す図である。図1に示すように、生体電気信号検出装置1は、例えば、ユーザHの頭部に装着される。生体電気信号検出装置1は、ユーザHの生体活動を示す生体電気信号を検出する。
【0015】
ケーブルCは、生体電気信号検出装置1から出力される生体電気信号をゲーム装置200に入力するためのものである。なお、生体電気信号検出装置1が検出する生体電気信号は、無線通信によってゲーム装置200に送られるようにしてもよい。
【0016】
生体電気信号検出装置1から検出される生体電気信号は、ゲーム装置200において、種々の用途に用いられる。例えば、ゲーム装置200に、生体電気信号の変化の特徴と、ゲーム操作と、を対応付けて記憶しておき、生体電気信号検出装置1が検出する生体電気信号が、ゲームの操作に用いられるようにしてよい。また例えば、生体電気信号の変化に応じてゲーム音楽が変更されるようにしてもよい。
【0017】
[生体電気信号検出装置の構成]
図2は、生体電気信号検出装置1の外観斜視図である。図2に示すように、生体電気信号検出装置1は、基板ボックス10、電池ボックス20、前頭部バンド30、後頭部ベルト40、及びイヤホン50を含む。
【0018】
また、本実施形態の生体電気信号検出装置1は、ユーザHに接触させる4つの電極を含む。これらの電極は、例えば、塩化銀からなる接触面や銀からなる導電材を含んで構成され、ユーザHに発生する生体電気信号を検出する。なお、本実施形態においては、導電性ジェルを介してユーザHと接触する湿式電極ではなく、ユーザHと電極の接触面が直接接触する乾式電極を想定する。また、電極材料は、上記の例に限られず、種々の材料を適用可能である。
【0019】
以降、この4つの電極を、それぞれ、電極ch1,ch2,GND,REFという。また、これらの4つの電極を、まとめて電極Eともいう。電極ch1,ch2(何れかが第1の電極)は、前頭部バンド30に配置され、ユーザHの前頭部の皮膚と接触する。電極GND,REF(第2の電極)は、イヤホン50に配置され、ユーザHの耳の皮膚と接触する。
【0020】
基板ボックス10は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの右側頭部に位置する。基板ボックス10の内部には、生体電気信号検出装置1を統括的に制御するマイコン部(図2には示さず。図7参照。)を含む基板が格納される。
【0021】
基板ボックス10の内部にあるマイコン部の制御によって、生体電気信号検出装置1は電極Eから検出した生体電気信号に対して、ノイズ除去処理、増幅処理、A/D変換処理、及び周波数解析処理等を施して外部装置(例えば、ゲーム装置200)に送信する。
【0022】
電池ボックス20は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの左側頭部に位置する。電池ボックス20は、生体電気信号検出装置1の各部に電力を供給する。電池ボックス20は、開閉自在であり、例えば、内部に複数の乾電池を格納できるようになっている。
【0023】
また、電池ボックス20は、例えば、電源スイッチ21、電源ランプ22、及び通信ランプ23を含む。電源スイッチ21は、電力の供給のオン/オフを切り替えるためのスイッチである。電源スイッチ21が操作されて電力が供給されると、電源ランプ22が点灯する。また、電源スイッチ21の操作によって、電力の供給が終了されると、電源ランプ22が消灯する。通信ランプ23は、基板ボックス10のマイコン部が外部端末(例えば、ゲーム装置200)と通信しているか否かを示すためのものである。
【0024】
前頭部バンド30は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの前頭部に位置する。前頭部バンド30の内側(即ち、ユーザHの額と接触する側)には、2つの電極ch1,ch2が配置されている。
【0025】
電極ch1は、例えば、ユーザHの右側の額(例えば、右眉の上の皮膚)と接触して、生体電気信号を検出する。一方、電極ch2は、例えば、ユーザHの左側の額(例えば、左眉の上の皮膚)と接触して、生体電気信号を検出する。
【0026】
電極ch1,ch2と、基板ボックス10に格納されるマイコン部と、は電気的に接続されている。即ち、電極ch1,ch2によって検出された生体電気信号は、基板ボックス10のマイコン部に対して送られる。なお、電極ch1,ch2と基板ボックス10のマイコン部とを電気的に接続するための配線(電極コード)は、前頭部バンド30の内部に格納されていてよい。
【0027】
後頭部ベルト40は、例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を装着した場合にユーザHの後頭部に位置する。後頭部ベルト40は、バックル41を含み、長さが調節可能になっている。
【0028】
ユーザHは、電極ch1,ch2と前頭部とが隙間なく接触するように、後頭部ベルト40の長さを調整する。つまり、ユーザHは、頭のサイズに合わせて生体電気信号検出装置1を装着し、前頭部に配置される電極ch1,ch2の位置をずれないようにすることができる。
【0029】
イヤホン50は、ユーザHの耳に装着される。イヤホン50は、電極REF,GNDと、アンプ基板51と、を含む。電極REF及び電極GNDは、ユーザHがイヤホン50を装着(挿入)した場合に、ユーザHの耳の皮膚と接触する位置に配置される。
【0030】
例えば、電極REFは、ユーザHの右耳の皮膚と接触し、右耳周辺の生体電気信号を検出する。また例えば、電極GNDは、ユーザHの左耳の皮膚と接触し、左耳周辺の生体電気信号を検出する。
【0031】
アンプ基板51は、サウンドバッファ等を含み、楽曲や音声等の出力を制御する。イヤホン50から出力される楽曲や音声のデータは、例えば、基板ボックス10のマイコン部の制御により、ゲーム装置200から取得されるようにしてよい。
【0032】
また、基板ボックス10のマイコン部と、電極REF,GND及びアンプ基板51と、は電気的に接続されている。なお、基板ボックス10のマイコン部と電極GNDとを電気的に接続するための配線(電極コード)は、電池ボックス20及び前頭部バンド30の内部に格納されていてよい。
【0033】
[電極から得られる生体電気信号]
次に、電極Eから得られる生体電気信号について説明する。電極Eは、ユーザHの皮膚と接触し、接触箇所の周辺の電位変化を検出する。
【0034】
本実施形態においては、電極ch1,ch2は、ユーザHの額と接触することにより、ユーザHの脳の神経細胞や、額周辺の筋肉の電位の集計を検出する。例えば、ユーザHが目を動かしたり、瞳を瞬いた場合等には、電極ch1と電極ch2から所定の周波数成分の生体電気信号が強く検出される。また例えば、ユーザHが興奮した場合には脳の神経細胞が活性化するので、安静時よりも生体電気信号の大きな電位の変化が検出される。
【0035】
一方、電極GND,REFは、ユーザHの耳と接触することにより、ユーザHの耳周辺の筋肉の電位の集計を検出する。電極GNDから検出する生体電気信号は、ユーザHの基準電圧を示すものとして用いられる。電極REFから検出される生体電気信号は、例えば、電極ch1,ch2から検出される生体電気信号から、ノイズ成分を除去するために用いられる。
【0036】
ここで、生体電気信号に含まれるノイズについて説明する。例えば、ユーザHが生体電気信号検出装置1を使用する際の周囲の環境に起因して、生体電気信号には種々のノイズが含まれる。例えば、ユーザHに帯電する静電気の変動によって発生するノイズが、一例として挙げられる。
【0037】
また例えば、ユーザHの周囲の機器(例えば、商用電源)からユーザHの体に静電誘導されるハムノイズが発生する。例えば、ユーザHが家庭用電気コンセントの近くにいる場合、ユーザHは、この家庭用電気コンセントから発生する磁場の影響を受けて、ノイズが発生する。
【0038】
上記のようなノイズは、ユーザHの頭の全体にほぼ均一に乗っていることが知られている。つまり、電極Eから検出される生体電気信号は、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分と、ノイズ信号の成分と、が合算されたものである。
【0039】
図3は、電極Eが検出する生体電気信号の測定波形を示す図である。なお、電極ch1及び電極ch2が検出する生体電気信号は、共に同様の波形を示すため、ここでは電極ch1を例に挙げて説明する。図3に示すように、電極ch1が検出する生体電気信号の測定波形(図3の実線)は、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分(図3の点線)と、ユーザHの体に発生するノイズ信号の成分(図3の一点鎖線)と、が合算されたものである。
【0040】
なお、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度は、数十μV〜数百μVであり、ノイズ信号の信号強度は、数百mV程度であることが知られているが、図3では、説明の都合上、これらの縮尺を一致させていない。
【0041】
ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号を検出して、ゲーム装置200のゲーム操作等に用いるためには、電極Eから検出される生体電気信号からノイズ成分を除去しなければならない。
【0042】
ここで、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の周波数は、ノイズ信号の周波数(例えば、50Hz程度)に比べて低周波(例えば、2Hz〜40Hz程度)であることが知られている。したがって、生体電気信号検出装置1は、電極ch1が検出する生体電気信号を、デジタルデータに変換してフィルタリング処理を行うことによってノイズの周波数成分を除去することも考えられる。
【0043】
ただし、上記のように、ノイズ信号の信号強度は、ユーザHの生体活動による生体電気信号の信号強度に比べて大きいので、デジタルデータで表現可能な振幅を示すダイナミックレンジが足りない可能性がある。A/D変換を行う際にダイナミックレンジが不足する場合には、図3に示す測定波形が飽和するため、ノイズ成分を除去することができなくなる。
【0044】
図4は、飽和した測定波形を示す図である。図4に示すように、測定波形の振幅に比べてダイナミックレンジが不足した場合、測定波形が飽和してノイズ成分が分からなくなるため、フィルタリング処理でノイズを除去することができなくなってしまう。
【0045】
ノイズ信号成分をデジタルフィルタで除去する場合、ノイズ信号は数百mV程度であるので、例えば、入力電圧範囲の幅が500mV(以降、ピークトゥピーク電圧Vp−pという。)のA/D変換器が必要となる。
【0046】
また、ユーザHの生体活動を解析するためには、A/D変換の量子化幅aを、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度に合わせる必要がある。即ち例えば、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の信号強度のオーダー(例えば、数十μV〜数百μV)に合わせて、量子化幅aを0.1μVとすることが考えられる。この場合、量子化幅を0.1μVとすると、5*106ステップが必要となる。即ち、この場合、量子化ビット数bが23ビット以上である高いダイナミックレンジのA/D変換器が必要となる。
【0047】
上記の例の場合、ダイナミックレンジの小さなA/D変換器(例えば、量子化ビット数bが10ビット)を用いた場合、図4のように測定波形が飽和し、ノイズ成分を除去することができなくなる。例えば、量子化幅aを0.1μVとした場合、量子化ビット数bが10ビットの比較的小さなダイナミックレンジのA/D変換器では、ピークトゥピーク電圧Vp−pが102.4μVとなるため、数百mVの強さのノイズ信号の波形が飽和してしまう。
【0048】
そこで、本実施形態においては、電極ch1が検出する生体電気信号と、電極REFが検出する生体電気信号と、に基づいてノイズ信号を打ち消すことによって、小さなダイナミックレンジのA/D変換器を用いたとしても、ノイズを除去できるようにしている。
【0049】
図5は、電極REFが検出する生体電気信号を示す図である。図5に示すように、電極REFが検出する生体電気信号も、電極ch1が検出する生体電気信号と同様に、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分(図5の点線)と、ユーザHの体に発生するノイズ信号の成分(図5の一点鎖線)と、が合わさったものである。
【0050】
しかし、電極REFは、筋肉の動きや神経細胞の活動の影響が比較的少ない耳に配置される。即ち、電極REFは、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の変化が比較的少ない位置に配置されている。本実施形態においては、電極REFが検出する生体電気信号のうち、ユーザHの生体活動によって発生する生体電気信号の成分を略零であるとみなしている。別の言い方をすれば、電極REFが検出する生体電気信号は、略すべてノイズ成分であるとみなしている。
【0051】
したがって、電極ch1が検出する生体電気信号と、電極REFが検出する生体電気信号と、の差をとることによって、電極ch1が検出する生体電気信号からノイズ成分が除去される。即ち、これらの差動電圧は、ユーザHの右前頭部の生体活動による電気信号を示すものといえる。
【0052】
図6は、電極ch1と電極REFとの差動電圧の波形を示す図である。即ち、図6に示す波形は、図3に示す実線の波形から図5に示す実線波形を引いた差分の波形である。図6に示すように、ノイズ成分が除去されて、ユーザHの右前頭部の生体活動による電気信号を得ることができる。
【0053】
なお、上記では、電極ch1を例に挙げて説明したが、電極ch2が検出する生体電気信号も図3と同じような波形を示すので、電極ch2が検出する生体電気信号も、電極REFが検出する生体電気信号を用いてノイズ成分を打ち消すことができる。なお、電極GNDが検出する生体電気信号の波形は、図5に示す電極REFの波形と同様である。
【0054】
このように、生体電気信号検出装置1は、電極REFが検出する生体電気信号を用いてノイズ成分を打ち消すことができる。次に、生体電気信号検出装置1の回路構成について説明する。
【0055】
[生体電気信号検出装置の回路構成]
図7は、本実施形態における生体電気信号検出装置1の回路構成の模式図である。図7に示すように、生体電気信号検出装置1は、検出部100a,100b,100c,100d、差動増幅部110a,110b、フィルタ部120a,120b、増幅部130a,130b、マイコン部140を含む。これらの構成要素は、電池ボックス20に格納された乾電池によって駆動するようにしてよい。
【0056】
また、検出部100a,100dは、前頭部バンド20に含まれ、検出部100b,100cは、イヤホン50に含まれる。他の構成要素は、基板ボックス10に含まれる。
【0057】
検出部100a,100b,100c,100d(以降、これらをまとめて検出部100ともいう。)は、それぞれ電極ch1,GND,REF,ch2を含んで構成され、ユーザHに発生する生体電気信号を検出する。
【0058】
差動増幅部110a,110b(以降、これらをまとめて差動増幅部110ともいう。)は、複数の検出部100から出力される信号のうちの2つを差動増幅するものであり、例えば、所定の増幅度を有するオペアンプを含んで構成される。
【0059】
差動増幅部110aは、検出部100aの検出信号からノイズ成分を除去する(打ち消す)ように、検出部100aの検出信号と検出部100cの検出信号とを差動増幅する。また、差動増幅部110bは、検出部100dの検出信号からノイズ成分を除去する(打ち消す)ように、検出部100dの検出信号と検出部100cの検出信号とを差動増幅する。
【0060】
フィルタ部120a,120b(以降、これらをまとめてフィルタ部120ともいう。)は、差動増幅部110の出力信号の所定の周波数成分(ノイズ信号の周波数成分)を除去する。フィルタ部120は、A/D変換器を含むデジタルフィルタであってもよい。即ち、フィルタ部120は、差動増幅部110によって除去しきれなかったノイズ成分を除去するためのものである。
【0061】
例えば、フィルタ部120は、ケーブルや人体に誘導される外来電磁ノイズ(例えば、40Hz以上のノイズ)を除去するためのローパスフィルタ(例えば、8次の多段ローパスフィルタ)を含む。また例えば、フィルタ部120は、ユーザHの静電気変動や電極Eの接触箇所で発生する低周波ノイズ(例えば、2Hz以下のノイズ)を除去するためのハイパスフィルタ(例えば、4次の多段ハイパスフィルタ)を含む。
【0062】
なお、フィルタ部120は、高周波ノイズ及び低周波ノイズを除去して、ユーザHの生体活動による信号成分(例えば、2Hz〜40Hzの信号成分)のみを通過させるバンドパスフィルタであってもよい。フィルタ部120が取り出す電気信号の周波数帯域は、ユーザHに発生する電気信号のノイズの周波数に応じて適宜変更可能であってよい。
【0063】
増幅部130a,130b(以降、これらをまとめて増幅部130ともいう。)は、所定の増幅度を有するオペアンプを含んで構成される。増幅部130は、フィルタ部120を通過し、所定周波数成分がカットされた生体電気信号を増幅してマイコン部140に出力する。なお、増幅部130における電気信号の増幅度は、任意の値であってよい。例えば、ユーザHの生体に関する電気信号は数μVであるので、この電気信号を数Vまで増幅させるための増幅度(例えば、106倍)が設定されていてよい。
【0064】
マイコン部140は、マイクロプロセッサやメモリ、アナログ形式の出力電気信号をデジタル形式に変換するA/D変換器、各種入出力インタフェース等を含んで構成される。マイコン部140は、差動増幅部110及びフィルタ部120によってノイズが除去され、かつ、増幅部130によって増幅された生体電気信号を取得する。
【0065】
また例えば、マイコン部140は、生体電気信号を周波数分析するようにしてよい。例えば、マイコン部140は、周波数ごとに生体電気信号の信号強度を測定して出力信号として、図示しない出力端子とケーブルCを介してゲーム装置200に対して出力する。
【0066】
生体電気信号検出装置1は、上記のような回路構成に基づいてノイズ成分を除去する。ただし、電極EとユーザHとの間に発生する接触インピーダンスは、電極Eの位置や時間経過に応じて異なるので、差動増幅部110に入力される生体電気信号に含まれるノイズ成分の大きさが異なり、差動電圧によってノイズを除去しきれなくなる可能性がある。
【0067】
即ち、複数の電極EとユーザHとの接触インピーダンスの大きさに差があった場合、差動増幅部110がノイズ成分を除去する効果が減少する。本実施形態においては、検出部100に含まれる電極Eとして、乾式電極が用いられる。したがって、電極EとユーザHとの間には、湿式電極を使用する場合に比べて大きな接触インピーダンスが発生する。つまり、接触インピーダンスのばらつきを考慮しなければ、差動増幅部110がノイズを除去しきれなくなってしまい、図4のように波形が飽和する可能性がある。
【0068】
そこで、本実施形態における生体電気信号検出装置1は、複数の電極Eの接触インピーダンスの大きさにばらつきがあったとしても、差動増幅部110がノイズ成分を除去する効果が減少しない構成になっている。以降、この構成について詳細に説明する。
【0069】
まず、接触インピーダンスと、差動増幅部110のノイズ除去能力と、の関係について説明する。なお、差動増幅部110aと差動増幅部110bとは、同様の構成を有するので、以降では差動増幅部110aを例に挙げて説明する。
【0070】
[差動増幅部のノイズ除去能力]
図8は、差動増幅部110aの回路構成の一例を説明するための図である。ユーザHの皮膚と接触する電極Eは、ユーザの汗や皮脂等に起因して接触インピーダンスが発生する。図8では、電極ch1,GND,REFとユーザHとの接触インピーダンスを、それぞれ接触インピーダンスRt1,Rtg,Rt2とする。なお、接触インピーダンスRt1,Rtg,Rt2は、数十kΩ〜数MΩ程度であることが一般的に知られている。
【0071】
また、図8では、ユーザHの体に発生するノイズを発生ノイズVnoise0とする。先述のように、外来電磁ノイズは、ユーザHの頭全体にほぼ均一に発生するため、発生ノイズVnoise0を、図8に示すように電極ch1,GND,REFに対応する位置に示す。また、発生ノイズVnoise0の電圧をノイズ電圧Vcomm(コモンモードノイズ電圧)とする。なお、電極GNDは、ユーザHの生体活動による電気信号を検出するが、この成分を略零とし、記載を省略する。
【0072】
また、ここでは説明の都合上、回路に電磁誘導ノイズ(詳細後述)は発生しないものとして説明する。差動増幅部110aに含まれるオペアンプ111aの入力インピーダンスRiを、図8のように模式的に示す。
【0073】
図3〜図6を参照して説明したように、電極ch1が検出する生体電気信号の電圧Vch1は、ユーザHの生体活動による生体電気信号(信号Vcreature1とし、この電圧をVcreate1とする。)と、ノイズ成分(例えば、電圧Vcomm)と、の両者が合算されたものである。
【0074】
また、電極REFが検出する生体電気信号の電圧Vrefは、ユーザHの生体活動による生体電気信号(信号Vcreature2とし、この電圧をVcreate2とする。)と、ノイズ成分と、の両者が合算されたものである。
【0075】
オペアンプ111aは、電極ch1と電極REFとの差動電圧を検出し、ノイズ成分を除去する。ここで、電極ch1からオペアンプ111a側に流れる電流I1、及び、オペアンプ111aの負側入力信号電圧V1は、以下の式によって表される。
(1)I1=V1/Ri1
(2)V1=Vcomm+Vcreate1−Rt1*I1
【0076】
上記の式(1)及び式(2)から、負側入力信号電圧V1は、以下の式によって表される。
(3)V1=Ri1*(Vcomm+Vcreate1)/(Ri1+Rt1)
【0077】
一方、電極REFからオペアンプ111a側に流れる電流I2、及び、オペアンプ111aの正側入力信号電圧V2は、以下の式によって表される。
(4)I2=V2/Ri1
(5)V2=Vcomm+Vcreate2−Rt2*I2
【0078】
上記の式(4)及び式(5)から、正側入力信号電圧V2は、以下の式によって表される。
(6)V2=Ri1*(Vcomm+Vcreate2)/(Ri1+Rt2)
【0079】
また、オペアンプ111aの出力信号電圧V01は、オペアンプ111aの増幅度Av、式(3)及び式(6)に基づいて、以下の式で表される。
(7)V01=Av*(V2−V1)=Av*Ri1*(1/(Ri1+Rt2)−1/(Ri1+Rt1))*Vcomm+Av*Ri1*(Vcreate2/(Ri1+Rt2)−(Vcreate1/(Ri1+Rt1))
【0080】
式(7)で示されるように、出力信号電圧V01は、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差が小さければ小さいほど、ノイズ成分(式(7)のうちの「Av*Ri1*(1/(Ri1+Rt2)−1/(Ri1+Rt1))*Vcomm」の成分)の絶対値が小さくなる。即ち、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差が小さければ小さいほど、差動増幅部110によるノイズ成分の除去性能が向上することになる。
【0081】
図9は、出力信号電圧V0のノイズ成分と接触インピーダンスとの関係を示す図である。図9に示す例は、例えば、ノイズ電圧Vcommを100mV、増幅度Avを2*104、及び接触インピーダンスRt2を104Ωとし、入力インピーダンスRi及び接触インピーダンスRt1を変化させた場合に、式(7)によって得られる出力信号電圧V01のノイズ成分を示している。
【0082】
図9に示すように、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の値の差が小さいほど(図9の場合、が104Ωに近いほど)、出力信号電圧V01のノイズ成分が小さくなる。また、入力インピーダンスRi1が、接触インピーダンスRt1及び接触インピーダンスRt2に比べて大きくなるほど、出力信号電圧V01のノイズ成分が小さくなる。
【0083】
したがって、入力インピーダンスRi1を、接触インピーダンスのオーダー(数十kΩ〜数MΩ)に比べて極めて大きく(例えば、1GΩ以上)すれば、接触インピーダンスRt1と接触インピーダンスRt2の差によらず、ノイズ成分の除去能力は担保される。例えば、入力インピーダンスRi1を、接触インピーダンスRt1,Rt2の100倍以上にすれば、接触インピーダンスRt1が接触インピーダンスRt2の2倍であっても、式(7)に示すように、オペアンプ111aの差動入力によってノイズの振幅を数十分の一に収めることができる。
【0084】
しかしながら、差動増幅部110は基板ボックス10に格納されているため、図8に示す電極Eと入力インピーダンスRi1とを接続する配線は、一定の距離(例えば、基板ボックス10と、前頭部バンド30又はイヤホン50と、の距離)がある。したがって、図8に示す回路に外来ノイズ(例えば、電磁誘導によるノイズ)が発生してしまう可能性がある。
【0085】
例えば、図8に示す電極ch1の検出信号を差動増幅部110aに伝達するための配線と、電極GNDの検出信号を差動増幅部110aに伝達するための配線と、によって囲まれる領域に外部からの電磁波が貫く場合、この領域には電磁誘導ノイズ(外来ノイズ)が発生する。例えば、電極ch1と差動増幅部110との距離L0が大きくなればなるほど、この領域の面積(以降、面積S(L0)とする。)は大きくなる。
【0086】
ここで、ユーザHの周囲の機器(例えば、商用電源)からの外来電磁波の磁束密度をB(T)とすると、電極ch1の配線及び電極GNDの配線によって発生する電磁誘導電圧V(L0)は、磁束の時間変化に基づいて以下の式によって表される。
(8)V(L0)=−d(B*S(L0))/dt
【0087】
上記の式(8)から、電極ch1と入力インピーダンスRiとの距離L0が長くなると、面積S(L0)が大きくなるため電磁誘導電圧V(L0)が高くなる。
【0088】
図10は、電磁誘導電圧を示す回路図である。図10は、図8の回路のうち、接触インピーダンスRt1と入力インピーダンスRi1のみを示している。図10に示すように、入力インピーダンスRiの両端の電圧は、(Ri1/(Rt1+Ri1))*V(L0)で表される。即ち、入力インピーダンスRiが大きくなると、この電磁誘導電圧V(L0)が、負側入力信号電圧V1に及ぼす影響が大きくなる。
【0089】
また、他にも、電極Eから差動増幅部110までの配線が一定の長さがある場合、配線とユーザHの間で静電結合ノイズ等が発生する。つまり、高い入力インピーダンスRi1のために高感度なアンテナのようにノイズを拾ってしまう可能性がある。したがって、本発明に係る生体電気信号検出装置1は、このノイズの発生を抑制するようにしている。
【0090】
[発生ノイズを低減するバッファアンプ]
本発明に係る生体電気信号検出装置1の検出部100は、上記のような高い入力インピーダンスに基づくノイズの発生を防ぐためにバッファアンプ(増幅手段)を含むようにしている。このバッファアンプは、図8のオペアンプ111aと同様に、差動増幅部110によるノイズ除去の効果が低下しないように、ユーザH及び電極ch1,ch2,REFの接触インピーダンス(例えば、数十kΩ)より高い入力インピーダンス(例えば、1GΩ以上)を有する。
【0091】
バッファアンプは、電極Eで検出される電気信号を増幅させる。また、バッファアンプは、電極Eと差動増幅部110との間に配置される。例えば、バッファアンプは、電極Eとバッファアンプとの距離が、バッファアンプと差動増幅美110との距離よりも短い位置に設けられる。別の言い方をすれば、例えば、バッファアンプは、バッファアンプの入力インピーダンスを含む回路に発生する外来ノイズの成分によって、差動増幅部110の出力電圧が飽和しないような位置(例えば、電極Eの直後)に配置される。
【0092】
図11は、本発明に係るバッファアンプを含む回路構成の一例を示す図である。図11に示すように、電極ch1,REFと、オペアンプ101と、の間に、バッファアンプ101a,101c(以降、電極Eの直後に配置されるバッファアンプをまとめてバッファアンプ101という。)が配置されている。
【0093】
バッファアンプ101a,101cの増幅度は、例えば、互いに略同程度(例えば、1)に設定される。バッファアンプ101a,101cの増幅度は、接触インピーダンスよりも高い入力インピーダンスが得られる範囲で設定されていてよい。
【0094】
図11では、バッファアンプ101aの入力インピーダンスをRia(>接触インピーダンスR1t)とし、バッファアンプ101cの入力インピーダンスをRic(>接触インピーダンスR2t)とする。また、図11に示す回路に発生する電磁誘導ノイズの電圧を、ノイズ電圧Vei1及びノイズ電圧Vei2とする。また、電磁誘導ノイズや静電結合ノイズ等、回路に発生するノイズを含めてノイズVnoise1及びノイズVnoise2とする。
【0095】
例えば、電極ch1とバッファアンプ101aとの距離L1に基づいて、ノイズ電圧Vei1は、−d(B*S(L1))/dtで表される。また例えば、電極REFとバッファアンプ101cとの距離L2に基づいて、ノイズ電圧Vei2は、−d(B*S(L2))/dtで表される。
【0096】
電極ch1からバッファアンプ101a側に流れる電流I11、及び、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V11は、以下の式によって表される。なお、下記に示すVtotal1(L1)は、第1の検出手段(検出部100a)を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズである。例えば、Vtotal1(L1)は、ノイズ電圧Vel1や、静電結合ノイズの電圧が加算されたものである。また、電圧Vch1は、電極ch1で検出する電気信号の電圧である。即ち、電圧Vch1は、電圧Vcommと電圧Vcreate1を合算したものである。
(9)V11=I11*Ria
(10)V11=Vtotal1(L1)+Vch1−Rt1*I11
【0097】
式(9)及び式(10)から、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V11は、以下の式によって表される。
(11)V11=Ria*(Vtotal1(L1)+Vch1)/(Ria+Rt1)
【0098】
一方、電極REFからバッファアンプ101c側に流れる電流I21、及び、バッファアンプ101cの正側入力信号電圧V21は、以下の式によって表される。なお、下記に示すVtotal2(L2)は、第2の検出手段(検出部100c)を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズである。例えば、Vtotal2(L2)は、ノイズ電圧Vel2や、静電結合ノイズの電圧が加算されたものである。また、電圧Vrefは、電極REFで検出する電気信号の電圧である。即ち、電圧Vrefは、電圧Vcommと電圧Vcreate2を合算したものである。
(12)V21=I21*Ric
(13)V21=Vtotal2(L2)+Vref−Rt2*I21
【0099】
式(12)及び式(13)から、バッファアンプ101aの正側入力信号電圧V21は、以下の式によって表される。
(14)V21=Ric*(Vtotal2(L2)+Vref)/(Ric+Rt2)
【0100】
バッファアンプ101aの増幅度をAaすると、オペアンプ111aの負側入力電圧V12は、Aa*V11となる。また、バッファアンプ101cの増幅度をAcとすると、オペアンプ111cの正側入力電圧V22は、Ac*V21となる。
【0101】
したがって、オペアンプ111aの出力信号電圧V02は、増幅度Av、式(11)及び式(14)に基づいて以下の式で表される。
(15)V02=Av*(V21−V11)=Av*(Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vref)/(Ric+Rt2)−Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vch1)/(Ria+Rt1))
【0102】
出力信号電圧V02が、生体電気信号検出装置1のA/D変換器の入力電圧範囲Vmin〜Vmaxの範囲に収まるようにすれば、波形が飽和することなく、フィルタ部120で残存ノイズを取り除くことができる。なお、先述のように、A/D変換器の入力電圧範囲Vmin〜Vmaxは、例えば、生体電気信号検出装置1に含まれるA/D変換器の量子化幅a、量子化ビット数b、及び所定の最低入力電圧に基づいて決定される。
【0103】
したがって、下記の式を満たすように、バッファアンプ101aの位置及び入力インピーダンスRiaと、バッファアンプ101cの位置及び入力インピーダンスRicと、が設定される。
(16)Vmin<Av*(V22−V12)<Vmax
(17)V22=Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vch1)/(Ric+Rt2)
(18)V12=Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vref)/(Ria+Rt1)
【0104】
式(16)〜(18)の関係式を満たすことによって、差動増幅部110の出力信号が入力電圧範囲内に収まる。したがって、この出力信号が、後段のA/D変換器で変換した場合に波形が飽和することがなくなるので、フィルタリング処理で残存ノイズを確実に除去することができる。
【0105】
なお、増幅度Av,Aa,Acは、上記の式(16)〜(18)を満足するように設定されていてよい。また、式(17)の「Ric/(Ric+Rt2)」、及び、式(18)の「Ria/(Ria+Rt1)」は、それぞれ1と近似して距離L1や距離L2が決定されてもよい。
【0106】
また、バッファアンプ101a,101cが、それぞれ電極ch1,REFの直後に配置されるので、入力インピーダンスRia及び入力インピーダンスRicは、電極ch1,REFの直後にあることになる。即ち、距離L1と距離L2が略零であるので、電磁誘導ノイズや静電結合ノイズの発生を軽減することができる。
【0107】
数値例を挙げて説明すると、距離L1及び距離L2が略零であり、
増幅度Av=Aa=Ac=1
Vtotal1(L1)=1.2mV
Vtotal1(L2)=1mV
Rt1=10kΩ
Rt2=15kΩ
Vcomm=300mV
Vcreate1=500μV
Vcreate2=100μV
とした場合、入力インピーダンスRic及び入力インピーダンスRiaを100MΩに設定すると、差動増幅部110から出力される電圧Av*(V22−V12)が、615μV程度になる。この大きさは、Vcreate1及びVcreate2と同程度のオーダーである。したがって、入力電圧範囲の大きさが数百μVであっても、差動増幅部110から出力される電圧が飽和することがなくなる。
【0108】
なお、オペアンプ111aは、バッファアンプ101aとバッファアンプ101cとの2つの出力電気信号を差動増幅させる。オペアンプ111aの入力インピーダンスは、図11では図示していないが、バッファアンプ101の入力インピーダンスよりも小さくてよい。即ち、バッファアンプ101によって接触インピーダンスによるノイズ除去性能の低下を防ぐことができるので、オペアンプ111aの入力インピーダンスを高く設定する必要がなくなる。図8のようにオペアンプ111aの入力インピーダンスが高い場合、この入力インピーダンスを含む回路に発生する電磁誘導ノイズや静電結合ノイズの影響を大きく受けることになるが、図11の回路では、この影響を低減させることができる。
【0109】
また、バッファアンプ101の出力インピーダンス側の回路でも外来ノイズが発生することが考えられるが、バッファアンプ101の増幅度を1倍とすることによって、入力インピーダンスを高く、かつ、出力インピーダンスを低くすることができるので、このノイズの発生を軽減することができる。
【0110】
上記では検出部100a,100b,100c、及び、差動増幅部110aの構成を例に挙げて説明したが、検出部100dが検出する生体電気信号についても同様のノイズ除去処理が行われる。即ち、検出部100dの電極ch2の直後に高入力インピーダンスのバッファアンプ101を配置し、差動増幅部100bで生体電気信号を差増増幅させる。これにより、検出部100dが検出するノイズ成分を検出部100cの成分で打ち消すことができ、かつ、バッファアンプ101の高入力インピーダンスに起因するノイズを抑えることができる。
【0111】
[実施形態のまとめ]
以上のように、生体電気信号検出装置1は、差動増幅部110が電極Eの差動電圧を出力するため、ユーザHの体に発生するノイズを除去することができる。また、電極ch1,ch2,REFの直後に配置されるバッファアンプ101の入力インピーダンスが、接触インピーダンスに比べて高いので、接触インピーダンスのばらつきによる差動増幅部110によるノイズ除去性能の低下を抑えることができる。また、電極Eの直後にバッファアンプ101を配置することによって、高い入力インピーダンスRi2を使用してもノイズの発生を抑えることができる。
【0112】
したがって、ダイナミックレンジが比較的小さいA/D変換器を用いても測定波形を飽和させることなく、フィルタ部120で残存ノイズを確実に除去することができる。また、電導性ジェルをふき取ったりする手間がかかる湿式電極ではなく、取り扱いが簡単な乾式電極を用いることができる。
【0113】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記実施形態においては、電極(検出部)の数を4つとしたが、差動電圧を検出するために複数個の電極が、生体電気信号検出装置1に配置されていればよく、電極の数は4つに限られない。差動増幅部は、検出部の数に合わせた数が配置されていればよい。
【0114】
また例えば、生体電気信号検出装置を頭部に装着させる場合を説明したが、ユーザの体と電極を接触させるものであればよく、手や足に装着させるものであってよい。
【符号の説明】
【0115】
1 生体電気信号検出装置、10 基板ボックス、20 電池ボックス、21 電源スイッチ、22 電源ランプ、23 通信ランプ、30 前頭部バンド、40 後頭部ベルト、41 バックル、50 イヤホン、51 アンプ基板、E,ch1,ch2,GND,REF 電極、100,100a,100b,100c,100d 検出部、101a,101c バッファアンプ、110,110a,110b 差動増幅部、111a オペアンプ、120,120a,120b フィルタ部、130,130a,130b 増幅部、140 マイコン部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに発生する電気信号を検出する電極と、当該電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段と、を含む複数の検出手段と、
前記複数の検出手段から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段と、
を含み、
前記増幅手段は、前記ユーザ及び前記電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、前記電極と前記差動増幅手段との間に設けられることを特徴とする生体電気信号検出装置。
【請求項2】
前記増幅手段は、前記電極と前記増幅手段との距離が、前記増幅手段と前記差動増幅手段との距離よりも短い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の生体電気信号検出装置。
【請求項3】
前記生体電気信号検出装置は、前記差動増幅手段の出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器を含み、
前記複数の検出手段は、第1の電極及び第1の増幅手段を含む第1の検出手段と、第2の電極及び第2の増幅手段を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、
前記A/D変換器の入力電圧範囲をVmin〜Vmaxとし、
前記第1の増幅手段の入力インピーダンスをRiaとし、
前記第2の増幅手段の入力インピーダンスをRicとし、
前記第1の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt1とし、
前記第2の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt2とし、
前記第1の電極と前記第1の増幅手段との距離をL1とし、
前記第2の電極と前記第2の増幅手段との距離をL2とし、
前記第1の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal1(L1)とし、
前記第2の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal2(L2)とし
前記差動増幅手段の増幅度をAvとし、
前記第1の増幅手段の増幅度をAaとし、
前記第2の増幅手段の増幅度をAcとし、
前記第1の電極によって検出された電気信号の電圧をVch1とし、
前記第2の電極によって検出された電気信号の電圧をVrefとした場合、
下記の関係式(1)〜(5)を満たすように、前記第1の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、前記第2の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体電気信号検出装置。
(1)Ria>Rt1
(2)Ric>Rt2
(3)Vmin<Av*(V12−V22)<Vmax
(4)V12=Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vch1)/(Ric+Rt2)
(5)V22=Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vref)/(Ria+Rt1)
【請求項4】
前記増幅手段は、増幅度が1倍のアンプであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の生体電気信号検出装置。
【請求項5】
前記複数の検出手段は、前記ユーザの前頭部と接触する第1の電極を含む第1の検出手段と、前記ユーザの耳と接触する第2の電極を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、
前記一又は複数の差動増幅手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段との出力信号を差動増幅することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の生体電気信号検出装置。
【請求項1】
ユーザに発生する電気信号を検出する電極と、当該電極で検出される電気信号を増幅させる増幅手段と、を含む複数の検出手段と、
前記複数の検出手段から出力される信号のうちの2つを差動増幅する一又は複数の差動増幅手段と、
を含み、
前記増幅手段は、前記ユーザ及び前記電極の接触インピーダンスより高い入力インピーダンスを有し、前記電極と前記差動増幅手段との間に設けられることを特徴とする生体電気信号検出装置。
【請求項2】
前記増幅手段は、前記電極と前記増幅手段との距離が、前記増幅手段と前記差動増幅手段との距離よりも短い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の生体電気信号検出装置。
【請求項3】
前記生体電気信号検出装置は、前記差動増幅手段の出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換器を含み、
前記複数の検出手段は、第1の電極及び第1の増幅手段を含む第1の検出手段と、第2の電極及び第2の増幅手段を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、
前記A/D変換器の入力電圧範囲をVmin〜Vmaxとし、
前記第1の増幅手段の入力インピーダンスをRiaとし、
前記第2の増幅手段の入力インピーダンスをRicとし、
前記第1の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt1とし、
前記第2の電極と前記ユーザとの接触インピーダンスをRt2とし、
前記第1の電極と前記第1の増幅手段との距離をL1とし、
前記第2の電極と前記第2の増幅手段との距離をL2とし、
前記第1の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L1が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal1(L1)とし、
前記第2の検出手段を含む回路に発生するノイズであって、距離L2が増加すると大きくなるノイズの電圧をVtotal2(L2)とし
前記差動増幅手段の増幅度をAvとし、
前記第1の増幅手段の増幅度をAaとし、
前記第2の増幅手段の増幅度をAcとし、
前記第1の電極によって検出された電気信号の電圧をVch1とし、
前記第2の電極によって検出された電気信号の電圧をVrefとした場合、
下記の関係式(1)〜(5)を満たすように、前記第1の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、前記第2の増幅手段の位置及び入力インピーダンスと、が設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体電気信号検出装置。
(1)Ria>Rt1
(2)Ric>Rt2
(3)Vmin<Av*(V12−V22)<Vmax
(4)V12=Ac*Ric*(Vtotal2(L2)+Vch1)/(Ric+Rt2)
(5)V22=Aa*Ria*(Vtotal1(L1)+Vref)/(Ria+Rt1)
【請求項4】
前記増幅手段は、増幅度が1倍のアンプであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の生体電気信号検出装置。
【請求項5】
前記複数の検出手段は、前記ユーザの前頭部と接触する第1の電極を含む第1の検出手段と、前記ユーザの耳と接触する第2の電極を含む第2の検出手段と、を少なくとも含み、
前記一又は複数の差動増幅手段は、前記第1の検出手段と前記第2の検出手段との出力信号を差動増幅することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の生体電気信号検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−55588(P2012−55588A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203723(P2010−203723)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]