説明

生分解性ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法

【課題】末端にオリゴ(ポリヒドロキシ酸)を含むポリオキシアルキレン化合物を用いて生分解性ポリオキシアルキレン誘導体を工業的規模で簡便に得ることの可能な製造方法を提供すること。
【解決手段】下記一般式(2):


で表される生分解性ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生理活性を有するタンパク質、ポリペプチド、合成化合物、及び天然資源より抽出された化合物等が数多く発見されている。それらの医薬品への応用が盛んに研究されており、薬物等の生理活性物質の副作用を低減させ、薬物の標的部位への選択的送達性を向上させる目的で薬物送達システム(DDS)の開発が行われている。かかるDDSとして、例えば、タンパク製剤等におけるポリペプチドをポリエチレングリコール等の親水性ポリマーにて修飾する方法、あるいはリポソーム又は高分子ミセル等の微粒子で薬剤等を包含する方法等が検討されている。これらの方法では血中滞留性を高めるだけでなく、ターゲット部位での薬剤の徐放を目的としてポリマー中に生分解性ユニットであるペプチドやポリ乳酸等を導入したポリマーが使用されている。
【0003】
また、体内で薬物を徐放後、生体内で酵素的又は非酵素的に加水分解を受け、無毒な成分に分解、代謝・吸収させる目的で、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の生分解性ポリマーが広く用いられている。これらのポリマーは、具体的には、複数の成分をゲル化させ架橋ポリマーを形成し、薬物放出デバイス、縫合糸・骨固定剤、止血剤、組織癒着防止剤等に使用されている。
【0004】
このような架橋ポリマーとして、例えば、次のようなものが知られている。例えば、特許文献1には、外科的癒着防止、薬物の送達等を意図して、1級アミノ基若しくはチオール基(−SH)等の複数の求核性基を含む合成ポリペプチド又はポリエチレングリコールと、スクシンイミジル基のような求電子性基を有する親水性又は疎水性ポリマーとを混合せしめた架橋性ポリマー組成物が報告されている。
【0005】
また、特許文献2には、外科的手術中の体内での止血・接着材料、組織癒着防止剤を意図して、複数のチオール基(−SH)含有化合物を含む第1成分と、複数のチオール反応性基含有化合物を含む第2成分とを含み、第1成分又は第2成分の少なくとも1つがポリアルキレンオキシドであり、互いに反応してゲル形成する組成物が開示されているが、ポリ乳酸等の生分解性基は導入されていない。
【0006】
更に、特許文献3には、2官能性ポリエチレングリコール(α−、ω−)や、ビスフェノールAビスエポキシドに2官能性ポリエチレングリコールが結合した4つの水酸基(α−、ω−、ビスフェノールAリンカー上の2つ水酸基)を有する化合物に、ポリ乳酸、ポリグリコール酸のようなオリゴ(ポリヒドロキシ酸)を導入後、その末端にアクリル基を導入したポリマー化合物が報告されている。
【特許文献1】特表2000−502380号公報
【特許文献2】特表2002−541923号公報
【特許文献3】米国特許第5,410,016号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらポリオキシアルキレン誘導体の製造においては、一般的に、ポリマー中に生分解性ユニットを有しなければ、官能基の導入反応に使用する触媒を特段の困難なく選択することが可能であるが、生分解性ユニットを有する場合には使用する触媒の種類によって生分解性ユニットが切断されるため触媒を選択する際に制約を受ける。また、生分解性ユニットにはポリ乳酸のような末端が2級水酸基を有するものがあり、カプロラクトン、グリコール酸等の末端が1級水酸基を有するものに比べて、反応性が悪く、そのため種々の官能基を導入する場合には触媒の選択が特に重要になる。
【0008】
生分解性ユニットを有するポリマーの製造方法として、例えば、上記特許文献3には、オリゴ(ポリヒドロキシ酸)−ポリオキシアルキレンをトリエチルアミン存在下にアクリル酸クロリドと反応させて、アクリル−オリゴ(ポリヒドロキシ酸)−ポリオキシアルキレンを製造する方法が開示されているが、この方法では副生するトリエチルアミン塩酸塩の濾過が非常に遅く濾面上で冷却され固化し、濾過できなくなるという問題があり、工業的な製造には不向きである。また、温度を上げて濾過を行った場合には、アクリル基の重合反応を惹起し、また濾液中に溶出してトリエチルアミン塩酸塩が製品中へ混入する等の問題を生ずる。
【0009】
このように、従来の生分解性ユニットを有するポリマーの製造方法においては、触媒選択に制約を受け、また精製が煩雑で不純物が混入する等の問題があり、生分解性ユニットを有するポリマーを工業的規模で簡便に得ることのできる製造方法の創製が望まれている。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は末端にオリゴ(ポリヒドロキシ酸)を含むポリオキシアルキレン化合物を用いて生分解性ポリオキシアルキレン誘導体を工業的規模で簡便に得ることの可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される生分解性ポリオキシアルキレン化合物と、式(I)〜(IV)で表される化合物との反応を、特定触媒存在下に行なうことで従来の上記問題を生ずることなく下記一般式(2)で表される生分解性ポリオキシアルキレン誘導体を工業的規模で簡便に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]下記一般式(1)で表される生分解性ポリオキシアルキレン化合物(以下、化合物(1)という)と、下記式(I)〜(IV)で表される化合物(以下、化合物(I)〜(IV)という)とをアルカリ性固体塩存在下に反応させる、下記一般式(2)で表される生分解性ポリオキシアルキレン誘導体(以下、化合物(2)という)の製造方法。
【0013】
【化1】




【0014】
式中、Zは2〜10個の水酸基を有する化合物の残基を示し、Yは単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)(CH−(但し、pは1≦p≦5)、−C(=O)(CHC(=O)O−(但し、qは2又は3)、−(CHNHC(=O) (CH−、及び−(CHNHC(=O) (CH−から選択される基を示し、Xはカルボキシル基、マレイミド基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、及び3,3−ジエトキシプロポキシ基から選択される基を示し、Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、a、bはそれぞれ1≦a≦500、0≦b≦500であり、m1及びm2はそれぞれ独立に5〜2000であり、m3は0〜2000であり、n1、n2はそれぞれ1≦n1≦5、0≦n2≦1であり、k1、k2、k3はそれぞれ、0≦k1≦8、0≦k2≦8、1≦k3≦10であり、かつ2≦k1+k2+k3≦10である。
【0015】
【化2】




【0016】
式中、E及びEは−(CH(但し、Qはハロゲン原子を示し、rは1〜5である。)を示すか、あるいはEとEとが一緒になってアルキレン基を示し、Pはビニル基、2−プロペニル基、p−ニトロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ベンゾトリアゾールオキシ基、スクシンイミジルオキシ基、及び−(CH(但し、Q及びrは上記と同義である。)から選択される基を示し、Qはハロゲン原子を示す。
【0017】
【化3】




【0018】
式中、Z、Y、X、R、AO、a、b、m1、m2、m3、n1、n2、k1、k2及びk3は上記定義と同義であり、Gは上記式(I)〜(IV)で表される化合物に由来の残基を示す。但し、2≦k3の場合、少なくとも1つのGは水素原子であってもよい。
【0019】
[2]aが1≦a≦300であり、かつbが0である、上記[1]記載の製造方法。
[3]k1が0である、上記[1]又は[2]記載の製造方法。
[4]k2が0である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]k1、k3がそれぞれ1≦k1≦4、1≦k3≦2である、上記[4]記載の製造方法。
[6]アルカリ性固体塩が炭酸カリウム又は酢酸カリウムである、上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]式(I)で表される化合物が下記式(I−1)で表される化合物である、上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。式中、tは1〜2である。
【0020】
【化4】



【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、反応触媒としてアルカリ性固体塩を使用するため、末端に2級水酸基を有する場合にも生分解性ユニットを切断することなく容易に官能基を導入することが可能である。また、トリエチルアミン等を使用する場合と異なり容易に濾過でき、しかもポリマー中に触媒が残存することがない。したがって、本発明の製造方法は工業スケールでの製造に有利であり、従来よりも高品質の生分解性ポリオキシアルキレン誘導体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本明細書において使用する、各式中の記号の定義を説明する。
Zは2〜10個の水酸基を有する化合物の残基を示すが、その構造は直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよい。
本明細書において、2〜10個の水酸基を有する化合物の残基とは、該化合物の水酸基を置換する全ての基(k1、k2及びk3で括られた括弧部分)を除いた残りの部分で構成される基を意味する。
2〜10個の水酸基を有する化合物としては、例えば、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン等のポリグリセリン化合物や、エチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール等を挙げることができる。中でも、水酸基数が2〜8のアルコールが好ましく、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールがより好ましい。
【0023】
YはXを連結するための基であるが、単結合であってもよく、その場合、XがAO基に直接結合する。
また、Yは炭素数1〜6のアルキレン基、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)(CH−、−C(=O)(CHC(=O)O−、−(CHNHC(=O)(CH−、−(CHNHC(=O)(CH−から選択される基であってもよい。炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基、イソブチレン基、シクロブチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、シクロペンチレン基、ヘキサメチレン基、シクロへキシレン基等が挙げられ、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよい。中でも、炭素数が1〜3である、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基等が好適である。
Yが−C(=O)(CH−基である場合、pは1≦p≦5であるが、好ましくは1≦p≦2である。また、Yが−C(=O)(CHC(=O)O−基である場合、qは2≦q≦3である。
Yとしては、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、トリメチレン基、−(CHNHC(=O) (CH−、−(CHNHC(=O)(CH−、−C(=O)(CHC(=O)O−が好適である。
【0024】
Xはカルボキシル基、マレイミド基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、3,3−ジエトキシプロポキシ基から選択される基である。中でも、カルボキシル基、マレイミド基が好適である。なお、Xが水酸基、アミノ基、チオール基である場合、式(I)〜(IV)で表される化合物と反応するため好ましくない。
【0025】
Rは炭素数1〜6の炭化水素基である。かかる炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロ
ペンチル基、シクロへキシル基等が挙げられ、直鎖状、分岐状及び環状のいずれの形態であってもよい。中でも、メチル基、エチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が好適であり、特にメチル基が好適である。
【0026】
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシブチレン基等が挙げられ、直鎖状及び分岐状のいずれの形態であってもよい。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等の炭素数2又は3のオキシアルキレン基が好適であり、特にオキシエチレン基が好ましい。
(AO)m1〜3で表されるポリオキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン基は1種のみでもよいが、2種以上のオキシアルキレン基が組み合わされていてもよい。2種以上のオキシアルキレン基が組み合わされる場合、組み合わせ方は特に限定されず、ポリオキシアルキレン基はブロック状であってもランダム状であってもよい。また、全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の含有比率が低いと水溶性が低下する場合があるので、全オキシアルキレン基に対するオキシエチレン基の含有比率を50〜100モル%とすることが好ましい。
m1、m2はそれぞれ独立に5〜2000であるが、好ましくは30〜1000である。m3は0〜2000であるが、好ましくは0〜1500である。なお、m1、m2及びm3は、アルキレンオキシドの平均付加モル数を示す。
【0027】
a及びbはそれぞれ1≦a≦500、0≦b≦500であり、好ましくは1≦a≦300、0≦b≦300であり、より好ましくは1≦a≦50、0≦b≦50である。
また、[−C(=O)(CHn1O(CHCHO)n2−]及び[−C(=O)CH(CH)O−]はブロック状に結合していることが好ましい。
b=0である場合は末端に2級水酸基を有するが、かかる2級水酸基は反応し難いため所望の官能基を導入することが困難になる。本発明においては、そのような場合においても所望の官能基を導入できる点で特に有効である。
【0028】
n1及びn2はそれぞれ1≦n1≦5、0≦n2≦1であるが、n2=0の場合、n1は1又は5が好ましく、またn1=0の場合、n2=1が好ましい。
【0029】
k1、k2及びk3はそれぞれ0≦k1≦8、0≦k2≦8、1≦k3≦10であり、かつ2≦k1+k2+k3≦10であるが、k1、k2及びk3はそれぞれ、好ましくは1≦k1≦4、0≦k2≦4、1≦k3≦8である。また、k1+k2+k3は、好ましくは2≦k1+k2+k3≦8、より好ましくは2≦k1+k2+k3≦4である。
本発明に係る化合物(2)を、ゲル化等により架橋ポリマーを形成し、薬物放出デバイス、縫合糸・骨固定剤、止血剤、組織癒着防止剤等に使用する場合には、k1=k2=0、2≦k3≦10の化合物が好ましく、より好ましくは4≦k3≦8である。また、この場合、a及びbはそれぞれ、1≦a≦300、0≦b≦300、2≦a+b≦300であることがより好ましく、1≦a≦50、0≦b≦50、4≦a+b≦50であることが更に好ましい。
一方、本発明に係る化合物(2)を、血中滞留性を高め、ターゲット部位での薬剤の徐放を目的とするポリマーとして使用する場合には、1≦k1≦4、1≦k2≦4、1≦k3≦2の化合物が好ましく、より好ましくは2≦k1≦4、2≦k2≦4、1≦k3≦2であり、更に好ましくはk1=2、k2=2、k3=1である。また、この場合、a及びbは、1≦a≦9、0≦b≦9であることが好ましく、1≦a≦5、b=0であることがより好ましい。
【0030】
及びEは−(CHを示すか、あるいはEとEとが一緒になってアルキレン基を示すが、Qにおけるハロゲン原子としてはヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子が好適であり、より好ましくは臭素原子又は塩素原子である。また、rは1〜5であるが、好ましくは1〜3である。
また、EとEとが一緒になって形成されるアルキレン基としては、炭素数1〜5のアルキレン基が好適であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、1,1’−ジメチルエチレン等の直鎖状、分岐状のものが挙げられる。中でも、エチレン基、トリメチレン基、イソプロピレン基等の炭素数1〜3のアルキレン基が好適である。
【0031】
このようなアルキレン基を有する化合物としては、例えば、下記式(I−1)で表される化合物が好ましく(tは1〜2)、具体的には、下記式(I−2)の無水コハク酸又は下記式(I−3)の無水グルタル酸である。
【0032】
【化5】



【0033】
【化6】



【0034】
はビニル基、2−プロペニル基、p−ニトロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ベンゾトリアゾールオキシ基、スクシンイミジルオキシ基、及び−(CHから選択される基を示すが、中でも、2−プロペニル基、ビニル基、p−ニトロフェノキシ基、スクシンイミジルオキシ基が好適である。なお、ベンゾトリアゾールオキシ基は下記式(P−1)で表される基であり、スクシンイミジルオキシ基は下記式(P−2)で表される基であり、また−(CHにおける記号の定義は上記と同義である。
【0035】
【化7】



【0036】
はハロゲン原子を示すが、ヨウ素原子、臭素原子又は塩素原子が好適であり、より好ましくは臭素原子又は塩素原子である。
【0037】
Gは化合物(I)〜(IV)に由来の残基を示すが、例えば、下記式(i)〜(iv)で表される基が挙げられ、下記式(i)〜(iv)はそれぞれ化合物(I)〜(IV)に対応する残基である。なお、2≦k3の場合、Gは少なくとも1つが水素原子であってもよいが、全てが化合物(I)〜(IV)に由来の残基であることが好ましい。
【0038】
【化8】



【0039】
また、化合物(I−1)に由来の残基としては、例えば、下記式(i−1)で表される基が挙げられる。式中、tは上記定義と同義である。
【0040】
【化9】



【0041】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法で使用する化合物(1)は、例えば、ポリオキシエチレンの水酸基に3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、カプロラクトン、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、1,4−ジオキサン−2オン等のモノマーが付加した、ランダム共重合体又はブロック共重合体である。化合物(1)がランダム共重合体の場合、生分解性部位を有する分子鎖の末端には1級水酸基又は2級水酸基を有しており、すなわち末端に1級水酸基又は2級水酸基する化合物の混合物となる。また、化合物(1)の生分解性部位は、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸から選択される少なくとも1種である。
【0042】
なお、化合物(1)は公知の方法により製造できるが、例えば、ポリオキシアルキレン−ポリラクチド誘導体やポリオキシアルキレン−カプロラクトン誘導体等である場合、ポリオキシアルキレン誘導体を有機溶媒中、オクチル酸錫(2−エチルヘキサン酸錫)存在下、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンやカプロラクトン等のモノマーを重合させ、その後、晶析等を行うことによって製造することができる。
【0043】
本発明においては、化合物(1)をアルカリ性固体塩存在下に化合物(I)〜(IV)と反応させる。その場合、これらの化合物を全て投入し反応させてもよいが、化合物(1)にアルカリ性固体塩存在下、化合物(I)〜(IV)を加えて反応させることが好ましい。また、化合物(1)は反応前に十分に脱水処理を行なうことが望ましい。
【0044】
アルカリ性固体塩は触媒として機能し、水に溶解して水溶液にした場合のpHがアルカリ性を示すものである。アルカリ性固体塩としては、反応時において化合物(1)中のラクチドやカプロラクトン等の生分解性部位の結合を切断しないものであれば特に制限なく使用でき、水に溶解して水溶液にした場合のpHが好ましくは7.1〜13、より好ましくはpH7.1〜11となるものが使用される。
具体的には、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩、リン酸塩、酢酸塩等が挙げられ、具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、リン酸水素二カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。中でも、炭酸カリウム、酢酸カリウムが好ましく、炭酸カリウムがより好ましい。
【0045】
触媒としてリン酸カリウムやリン酸ナトリウムを使用した場合には、化合物(1)中の生分解性部位の結合が切断されるために好ましくない。リン酸水素ナトリウムの場合には反応が不十分になり、反応率が低下する恐れがある。また、金属ナトリウム、金属リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム又はt−ブトキシカリウムを使用した場合には、これらのモル数と化合物(1)の水酸基のモル数との比が1:1であれば反応するが、反応率が低い。また、これらの触媒のモル数を化合物(1)の水酸基のモル数よりも過剰に使用した場合には、アルカリ性が強すぎるために、化合物(1)中の生分解性部位の結合が切断されるために好ましくない。
【0046】
アルカリ性固体塩の使用量は、全水酸基当量、すなわち、「化合物(1)の1モル当たりの水酸基数×化合物(1)のモル数」に対して、好ましくは0.1〜1000倍モルである。1000倍モル以下であると反応時において攪拌が容易になるので好ましく、1〜300倍モルがより好ましく、1〜50倍モルが更に好ましい。
【0047】
化合物(1)と、化合物(I)〜(IV)との仕込み量は、化合物(I)〜(IV)が過剰となるように設定することが望ましい。なぜなら、化合物(I)〜(IV)が過剰である場合には後述の精製工程において未反応物を簡便に除去することが可能であるが、化合物(1)が過剰である場合には未反応の化合物(1)が残存するため、再結晶や晶析等の方法により除去することが困難になるからである。
かかる観点から、化合物(1)と、化合物(I)〜(IV)の仕込みモル比は、全水酸基当量、すなわち、「化合物(1)の1モル当たりの水酸基数×化合物(1)のモル数」に対して、好ましくは1〜100倍モル、より好ましくは1.1〜50倍モル、更に好ましくは1.1〜30倍モルである。
【0048】
なお、化合物(I)〜(IV)としては、(メタ)アクリル酸ハライド、上記式(I−2)の無水コハク酸、上記式(I−3)の無水グルタル酸、上記式(II)のジスクシンイミジルカーボナート、上記式(III)のN,N’−カルボニルジイミダゾールが好適に使
用される。
【0049】
上記反応は、有機溶媒の存在下に行なうことができる。有機溶媒としては、化合物(I)〜(IV)と反応可能な官能基(例えば、水酸基)を有しないもの(例えば、エタノールやメタノール等のアルコール類)であれば特に制限なく使用することができる。かかる有機溶剤としては、例えば、エステル類(例えば、酢酸エチル等の酢酸エステル)、ハロゲン溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム等)、炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類)等が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン等の炭化水素類が好ましく、トルエンがより好ましい。なお、ジクロロメタン等のハロゲン溶媒でも反応性に問題はないが、低沸点であるため作業上好ましくない。
溶媒の使用量は、化合物(I)に対して、好ましくは0.1〜100重量倍、より好ましくは1〜20重量倍である。
【0050】
反応温度は20〜140℃、好ましくは30〜120℃である。反応時間は1時間以上であり、好ましくは2〜100時間、より好ましくは2〜50時間である。
【0051】
このようにして、化合物(1)と化合物(I)〜(IV)とを結合させ、所望の官能基を導入した化合物(2)を生成させることができる。
【0052】
反応終了後、精製工程を行う。すなわち、反応液からアルカリ性固体塩を濾過した後、濾液を濃縮又は貧溶媒に投入して結晶化するなどの工程を行なう。これにより、反応液からアルカリ性固体塩を濾過により容易に除去することができ、しかも高純度かつ高収率で化合物(2)を得ることができる。
濾過に使用する濾材は、被処理液の不溶物を除去することができるものであれば特に制限はなく、通常は保留粒子細孔径が1〜10μmで耐溶媒性を有する紙、ガラス等の各種の材質のフィルターを使用することができる。濾過方法には制限なく、例えば、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過等の方法を用いることができる。
なお、得られた濾液を冷却するだけでも結晶化させることができるが、溶媒の種類によって化合物(2)が十分に析出せず溶液中に残存し、収率が低下する可能性がある。そのため、濾液に貧溶媒を用いて、好ましくは10℃以下に冷却すれば十分に結晶化させることが可能になり、良好な収率で結晶を得ることができる。また、蒸留等により有機溶媒を除去して結晶化してもよく、必要により再結晶、再沈殿や晶析等を行なってもよい。
【0053】
結晶化に使用する有機溶媒としては、目的物である化合物(2)を溶解するが、過剰に存在する未反応の化合物(I)〜(IV)を溶解しないか、あるいは溶解度の低い溶媒が好ましい。かかる有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、クロロホルム、アセトニトリル等が挙げられ、これらは化合物(2)の良溶媒である。
これらの良溶媒で結晶化する場合、溶解温度は好ましくは0〜120℃、より好ましくは20〜70℃である。
有機溶媒の使用量は結晶に対して、好ましくは1〜100重量倍、より好ましくは2〜50重量倍である。
【0054】
また、結晶化する場合、良溶媒のみに溶解した後、冷却して結晶化させてもよいし、貧溶媒を加えて結晶化させてもよい。良溶媒に溶解後、貧溶媒を加えて結晶化させる場合、目的物である化合物(2)のみを結晶化させ、未反応の化合物(I)〜(IV)を混合溶媒に溶解させたままの状態にすることの可能な溶媒比率にするのが好ましい。なお、溶媒比率は使用する溶媒により適宜選択することができる。
【0055】
結晶化の具体的な方法として、以下の方法を挙げることができる。
(A)反応液を濾過しアルカリ性固体塩を除去した後の溶液を、そのまま冷却するか、あるいは濾過後の溶液に少なくとも1種の溶媒、すなわち、良溶媒である酢酸エチル、アセトン、トルエン等を加えて溶解した後、冷却することにより目的物である化合物(2)を析出させる。
但し、この方法の場合、溶媒の種類や化合物(1)の分子量が3,000以下であるような場合には、化合物(2)が十分に結晶化しない場合がある。
(B)反応液を濾過しアルカリ性固体塩を除去した後の溶液に、貧溶媒であるエーテル又は炭素数5〜8の脂肪族炭化水素を用いて化合物(2)の結晶を析出させるか、あるいは濾過後の溶液に、良溶媒である酢酸エチル、アセトン、トルエン等を加えて溶解した後、貧溶媒であるエーテル又は炭素数5〜8の脂肪族炭化水素を用いて化合物(2)の結晶を析出させる。
(C)反応液を濾過しアルカリ性固体塩を除去した後の溶液に、目的物である化合物(2)が析出しない量の貧溶媒であるエーテル又は炭素数5〜8の脂肪族炭化水素の溶媒を組み合わせて溶解した後、冷却するか、あるいは濾過後の溶液に、少なくとも1種の良溶媒である酢酸エチル、アセトン、トルエン等を加え、目的物である化合物(2)が析出しない量の貧溶媒であるエーテル又は炭素数5〜8の脂肪族炭化水素の溶媒を組み合わせて溶解した後、冷却する。
【0056】
このように、目的物である化合物(2)を高純度、かつ高収率で得るには、化合物(1)の分子量や、使用する化合物(I)〜(IV)に応じて、上記(A)〜(C)の方法、溶媒の種類、温度等を適宜選択すればよい。
【0057】
なお、貧溶媒として使用する炭素数5〜8の脂肪族炭化水素は特に制限がなく、例えば、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,3,3−トリメチルブタン、オクタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、3−エチルヘキサン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン等を使用することができる。中でも、ヘキサン、ヘプタンが好ましい。
【0058】
本発明の方法により製造された化合物(2)は、公知の方法を用いて、活性基であるGを、さらに官能基変換することができる。例えば、末端にカルボン酸を有するGの場合、N−ヒドロキシスクシンイミドとDCC(1,1’−ジシクロヘキシルカルボジイミド)を用いて、N−ヒドロキシスクシンイミド化でき、さらにはアミノ基等を有する化合物と反応させることができる。
例えば、化合物(2)のGはこれらの官能基変換を行うことにより、末端がチオール基、アミノ基、アセタール基、アルデヒド基等の化合物に変換することができる。
本発明の方法により製造された化合物(2)及びその誘導体は、ゲル化等により架橋ポリマーを形成することが可能であり、医療分野において、薬物放出デバイス、縫合糸・骨固定剤、止血剤、組織癒着防止剤等に使用することができる。
また、血中滞留性を高め、ターゲット部位での薬剤の徐放を目的とするポリマーとして使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(製造例1)
3L四つ口フラスコに、メトキシポリエチレングリコール(450g,0.0225mol;SUNBRIGHT MEH−20T(日本油脂製:分子量20000))、トルエン(1200g)を入れ攪拌し、110℃に昇温した後、脱水した(トルエン50g留去)。90℃に冷却後、脱水トルエン(9g)に溶解した2−エチルヘキサン酸錫(0.81g)、続いて、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(9.73g,0.0675mol)を加えた。110℃に昇温後、6時間反応を行った。
反応終了後、40℃まで冷却し、酢酸エチル(1070mL)、ヘキサン(1500mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、ヘキサン(1500mL)を加え、攪拌した。結晶濾過後、減圧下にて乾燥し、メトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(3量体)(448g)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)
【0061】
(製造例2)
3L四つ口フラスコに、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール(300g,0.03mol;SUNBRIGHT PTE−10000(日本油脂製:分子量10000))、トルエン(900g)を入れ攪拌し、110℃に昇温した後、脱水した(トルエン100g留去)。90℃に冷却後、脱水トルエン(20g)に溶解した2−エチルヘキサン酸錫(4.32g)、続いて、3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(58.38g,0.405mol)を加えた。110℃に昇温後、10時間反応を行った。
反応終了後、40℃まで冷却し、酢酸エチル(900mL)、ヘキサン(2700mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、ヘキサン(2700mL)を加え、攪拌した。結晶濾過後、減圧下にて乾燥し、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(4量体)(305.7g)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)
【0062】
(実施例1)
500mL四つ口フラスコに、製造例1で得られたメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(30g,0.0015mol)、トルエン(200g)を入れ攪拌し、110℃に昇温した後、脱水した(トルエン37g留去)。60℃に冷却後、無水グルタル酸(1.53g,0.0134mol)、炭酸カリウム(3.1g,0.0225mol)を入れ、60℃にて27時間反応を行った。
反応終了後、不溶物を濾過し、40℃まで冷却した後、酢酸エチル(100mL)、ヘキサン(350mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、2−プロパノール(700mL)を加え、再結晶を行った。結晶濾過後、さらに1回再結晶を繰り返した後、結晶を濾過した。結晶をヘキサン(700mL)にて洗浄後、濾過した。結晶を減圧下にて乾燥し、メトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(3量体)−グルタレート(26.7g)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、1.97(−COCHCHCO−,quint)、2.47(−COCCHCO−,m)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)
【0063】
(実施例2)
500mL四つ口フラスコに、製造例1で得られたメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(30.0g,0.0015mol)、トルエン(200g)を入れ攪拌し、110℃に昇温した後、脱水した(トルエン41g留去)。60℃に冷却後、炭酸カリウム(8.3g,0.06mol)を入れ、続いて、アクリル酸クロリド(1.4g,0.015mol)を滴下し、18時間反応を行った。
反応終了後、濾過し、40℃まで冷却後、酢酸エチル(100mL)、ヘキサン(350mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、2−プロパノール(600mL)を加え、再結晶を行った。結晶濾過後、さらに1回再結晶を繰り返した後、結晶を濾過した。結晶をヘキサン(600mL)にて洗浄後、濾過した。結晶を減圧下にて乾燥し、メトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(3量体)−アクリレート(25.5g)を得た。H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)、5.80−6.50(C=C−、3H)
【0064】
(実施例3)
500mL四つ口フラスコに、製造例2で得られたペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(50.0g,0.0043mol)、トルエン(300g)を入れ攪拌し、110℃に昇温した後、脱水した(トルエン40g留去)。60℃に冷却後、無水グルタル酸(29.2g,0.256mol)、炭酸カリウム(47.1g,0.341mol)を入れ、60℃にて16.5時間反応を行った。さらに、無水グルタル酸(19.5g)、炭酸カリウム(31.4g)を入れ、8時間反応を行った。
反応終了後、不溶物を濾過し、40℃まで冷却後、酢酸エチル(550mL)、ヘキサン(300mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、酢酸エチル(650mL)に溶解後、ヘキサン(300mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、同様に、酢酸エチル(650mL)に溶解後、不溶物があったため、5A濾紙、GF75にて濾過後、ヘキサン(600mL)を加え、晶析させた。結晶をヘキサン(600mL)にて洗浄後、濾過した。結晶を減圧下にて乾燥し、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(4量体)−テトラグルタレート(41.0g)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、1.97(−COCHCHCO−,quint)、2.47(−COCCHCO−,m)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)
【0065】
(比較例1)
500mL四つ口フラスコに、製造例1で得られたメトキシポリエチレングリコール−ポリラクチド(30.0g,0.0015mol)、塩化メチレン(150g)を入れ攪拌し、溶解した。溶解後、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(0.40g,0.0039mol)を入れ、続いて、無水グルタル酸(0.26g,0.00225mol)を加え、0℃にて12時間反応を行った。さらに、トリエチルアミン(4.0g)を入れ、続いて、無水グルタル酸(2.6g)を加え、12時間反応を行った。不溶物を濾過し、ジエチルエーテル(300mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、減圧下にて乾燥した(27.2g)。
【0066】
(比較例2)
500mL四つ口フラスコに、製造例2で得られたペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(50.0g,0.0043mol)、塩化メチレン(250g)を入れ攪拌し、溶解した。溶解後、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(4.52g,0.0447mol)を入れ、続いて、アクリル酸クロリド(2.34g,0.0258mol)を加え、0℃にて12時間反応を行った。
反応終了後、トリエチルアミン塩酸塩を濾過し、ジエチルエーテル(500mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、結晶を減圧下にて乾燥し、ペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(4量体)−テトラアクリレート(45.1g)を得た。
H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)、5.80−6.50(C=C−、3H)
【0067】
(比較例3)
500mL四つ口フラスコに、製造例2で得られたペンタエリスリトール ポリエチレングリコール−ポリラクチド(50.0g,0.0043mol)、塩化メチレン(250g)を入れ攪拌し、溶解した。溶解後、0℃まで冷却した。トリエチルアミン(4.52g,0.0447mol)を入れ、続いて、p−ニトロフェニルクロロホルメート(5.20g,0.0258mol)を加え、0℃にて12時間反応を行った。
反応終了後、トリエチルアミン塩酸塩を濾過し、ジエチルエーテル(500mL)を加え、晶析させた。結晶を濾過後、結晶を減圧下にて乾燥し、ペンタエリスリトール−ポリラクチド(4量体)−テトラ−p−ニトロフェニルカーボネート(45.1g)を得た。H−NMR(CDCl,400MHz)
δ1.45−1.61(m,−CH(C)O−)、3.38(s,−OC)、3.40−3.90(m,−(CO)n−)、4.20−4.40(m,−COC(=O)−)、5.08−5.23(m,−C(CH)O−)、7.39、8.25(m,−C=C−C=C(NO)−C=C−)
【0068】
次に、実施例1〜3および比較例1〜3で最終的に得られた化合物について、H−NMRを測定した。その結果、実施例1〜3においては目的物が得られていたが、比較例1については、δ1.97(−COCHCHCO−,quint)、2.47(−COCCHCO−,m)のグルタル酸由来のピークが見られず、目的物が得られなかった。
一方、比較例2及び3については、アクリル基のピーク(δ5.80−6.50(C=C−、3H))、及びp−ニトロフェニル基のオルト位、メタ位のピーク(δ7.39(m)、8.25(m))より目的物が得られたことを確認できたが、δ1.43(t)、δ3.16(q)のピークより、トリエチルアミン塩酸塩が残存していることが分かった。
【0069】
次に、実施例1〜3及び比較例2〜3について、濾過時間を測定した。濾過には、ブフナーロート(φ110mm)、5A濾紙(ADVANTEC製)を使用した。それぞれの濾過速度の測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
表1より、実施例1〜3では5A濾紙のみの場合でも濾過時間が全て1分前後と濾過は良好であったのに対し、比較例2〜3においては濾過が遅いため濾面で固化し、15.0分経過後も濾過が出来なかった。
すなわち、比較例2〜3の場合はトリエチルアミン塩酸塩が目詰まりし、本発明でのアルカリ固体塩を用いた実施例1〜3の場合と比較し、非常に遅い結果であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】



[式中、
Zは2〜10個の水酸基を有する化合物の残基を示し、
Yは単結合又は炭素数1〜6のアルキレン基、−C(=O)−、−C(=O)O−、−C(=O)(CH−(但し、pは1≦p≦5)、−C(=O)(CHC(=O)O−(但し、qは2又は3)、−(CHNHC(=O) (CH−、及び
−(CHNHC(=O) (CH−から選択される基を示し、
Xはカルボキシル基、マレイミド基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、及び3,3−ジエトキシプロポキシ基から選択される基を示し、
Rは炭素数1〜6の炭化水素基を示し、
AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、
a、bはそれぞれ1≦a≦500、0≦b≦500であり、
m1及びm2はそれぞれ独立に5〜2000であり、
m3は0〜2000であり、
n1、n2はそれぞれ1≦n1≦5、0≦n2≦1であり、
k1、k2、k3はそれぞれ、0≦k1≦8、0≦k2≦8、1≦k3≦10であり、かつ2≦k1+k2+k3≦10である。]
で表される生分解性ポリオキシアルキレン化合物と、
下記式(I)〜(IV):
【化2】




[式中、
及びEは−(CH(但し、Qはハロゲン原子を示し、rは1〜5である。)を示すか、あるいはEとEとが一緒になってアルキレン基を示し、
はビニル基、2−プロペニル基、p−ニトロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、ベンゾトリアゾールオキシ基、スクシンイミジルオキシ基、及び−(CH(但し、Q及びrは上記と同義である。)から選択される基を示し、
はハロゲン原子を示す。]
で表される化合物とをアルカリ性固体塩存在下に反応させる、下記一般式(2):
【化3】




[式中、Z、Y、X、R、AO、a、b、m1、m2、m3、n1、n2、k1、k2及びk3は上記定義と同義であり、Gは上記式(I)〜(IV)で表される化合物に由来の残基を示す。但し、2≦k3の場合、少なくとも1つのGは水素原子であってもよい。]で表される生分解性ポリオキシアルキレン誘導体の製造方法。
【請求項2】
aが1≦a≦300であり、かつbが0である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
k1が0である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
k2が0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
k1、k3がそれぞれ1≦k1≦4、1≦k3≦2である、請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ性固体塩が炭酸カリウム又は酢酸カリウムである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
式(I)で表される化合物が下記式(I−1)で表される化合物である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。
【化4】



(式中、tは1〜2である。)

【公開番号】特開2008−106269(P2008−106269A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255313(P2007−255313)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】