生分解性材料中のスリンダク製剤
疼痛及び/又は炎症の長期間にわたる効果的な治療法を提供する。標的部位又はその近傍に有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を投与することを通じて、多様な起源、例えばこれらに限定されないが、脊椎円板ヘルニア(すなわち坐骨神経痛)、脊椎すべり症、狭窄症、椎間板性背痛、及び関節痛に由来する疼痛及び/又は炎症のほか、手術に付随する疼痛を緩和することができる。生分解性ポリマー内に適切な製剤が提供されると、この緩和は少なくとも3日間、少なくとも25日間持続可能である。ある態様において、該緩和は、少なくとも50日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間又は少なくとも180日間可能である。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年3月27日出願の米国特許出願第12/413,236号“生分解性材料中のスリンダク製剤(Sulindac Formulations In A Biodegradable Material)”及び2008年4月18日出願の米国仮特許出願第61/046,246号“生分解性材料中のスリンダク製剤(Sulindac Formulations In A Biodegradable Material)”の出願日の利益を主張する。米国仮特許出願第61/046,246号及び米国特許出願第12/413,236号は、引用によって本開示に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0001] 疼痛は患者に多種多様な悪影響を及ぼしうる。痛みは、患者の活動、熟睡、家族や友人との楽しみ、及び飲食を妨害することがある。痛みは患者を怖がらせ、憂鬱な気分にもするので、そのために一般的なリハビリプログラムへの完全参加が妨げられて回復が遅れる可能性すらある。
【0003】
[0002] 適切な疼痛管理(ペインコントロール)は、多様な疾患又は状態を治療中のあらゆる人にとって最も重要なことである。適切な疼痛緩和は、患者に著しい生理学的及び心理学的利益を供与する。効果的な疼痛緩和は、医療/手術/外来患者施設からの早期退院を含む順調で楽しい回復(例えば、気分、睡眠、生活の質など)を意味するだけでなく、慢性疼痛症候群(例えば、線維筋痛症、筋肉痛など)の発症も削減しうる。
【0004】
[0003] 疼痛は、体内における損傷又は疾患の存在を合図するという重要な生物学的機能を果たし、炎症を伴うことも多い(発赤、腫脹、及び/又は灼熱感)。疼痛には急性疼痛及び神経障害痛という二つのカテゴリーがある。急性疼痛は、組織が損傷されている最中又は損傷されたときに経験する痛みのことである。急性疼痛は少なくとも二つの生理学的に有益な目的を果たす。第一に、急性疼痛は、危険な環境的刺激(例えば熱い物体又は鋭利な物体)を、その危険な刺激との接触をやめさせる反射的反応を誘発することによって警告する。第二に、反射的反応で危険な環境的刺激が効果的に回避されないか、又は別の場合に組織の傷害もしくは感染が起きた場合、急性疼痛は回復行動を促進する。例えば、傷害又は感染に伴う急性疼痛は、傷害又は感染の治癒中、損傷された領域を更なる攻撃又は使用から保護するように生体を促す。危険な環境的刺激が取り除かれるか、又は傷害もしくは感染が解消すると、その生理学的目的を果たした急性疼痛は終わる。急性疼痛とは対照的に、神経障害痛は一般に何の有益な目的も果たさない。神経障害痛は、傷害又は感染に伴う疼痛が該傷害又は感染が解消した領域で持続する場合にもたらされる。
【0005】
[0004] 適切な疼痛管理及び/又は炎症管理が必要な疼痛性の疾患又は状態は多数ある。例えば、関節リウマチ、骨関節炎、脊椎円板ヘルニア(すなわち坐骨神経痛)、手根管/足根管症候群、腰痛、下肢痛、上肢痛、がん、組織痛、及び頸部、胸部及び/又は腰部の椎骨又は椎間板、回旋腱板、関節、TMJ(顎関節)、腱、靱帯、筋肉の傷害又は修復に伴う疼痛、脊椎すべり症、狭窄症、椎間板性背痛、及び関節痛などであるが、これらに限定されない。
【0006】
[0005] 一つの特別な疼痛性疾患は坐骨神経痛である。坐骨神経痛は、非常に衰弱性であることが多い慢性疾患で、患者だけでなく、患者の家族、友人及び介護者にも多大な悪影響を及ぼしうる。坐骨神経痛は、脊髄下部(腰部)から下腿後部を通って足部に走る坐骨神経に伴う非常に疼痛性の疾患である。坐骨神経痛は一般的に脱出した椎間板から発症し、これが後に局所免疫系の活性化をもたらす。脱出した椎間板は、神経根を挟むか又は圧縮することによって神経根も損傷させうるので、その領域で更なる免疫系の活性化がもたらされる。この疼痛性疾患の効果的な治療法の開発にかなりの関心が払われてきたが、まだ今日までのところ、坐骨神経痛の現行治療法は部分的効果しか得られていない。
【0007】
[0006] 別の特別な疼痛性疾患は、脊柱管の進行性狭窄がある脊髄狭窄症で、狭窄するにつれてその内部にある神経要素は次第に混雑してくる。最終的に、脊柱管の寸法が小さくなりすぎて、神経要素を著しく圧迫するようになり、疼痛、衰弱、感覚変化、不器用及び神経系の機能不全によるその他の症状を引き起こす。該疾患は、腰痛、下肢痛、下肢衰弱、運動制限及び高い障害率をもたらし、高齢者をしばしば苦しめる。
【0008】
[0007] 脊椎すべり症も別の疼痛性疾患である。脊椎すべり症は腰椎又は頸椎の変位性疾患で、1個の椎体が別の椎体より前方に変位している。脊椎すべり症は外傷性の出来事又は脊柱の変性によって起こりうる。時として、該変位性疾患は、一つ又は複数の椎骨の骨折又は部分的虚脱又は脊柱の円板の変性に付随するか又はそれらによって発生する。このような状態に苦しむ患者は、胸部骨格構造の中等度〜重度の歪み、耐荷重能力の減退、運動性の喪失、極度かつ衰弱性の疼痛を経験することがあり、神経機能の神経学的欠損に苦しむことも多い。
【0009】
[0008] 疼痛を治療するための一つの公知クラスの薬剤はオピオイドである。このクラスの化合物は、疼痛管理のための最も効果的なタイプの薬物の一つとしてよく認識されている。残念なことに、オピオイドは全身投与されるので、患者の廃疾化、呼吸器系の抑制、便秘、並びに鎮静及び高揚といった精神活性作用などの随伴副作用に重大な懸念があり、病状回復及び運動性回復の障害となっている。さらに、これらの副作用のために、医師は典型的にはオピオイドの投与を術後最初の24時間以内に限定している。従って、標的組織部位に直接的な局所疼痛管理を提供する非麻薬性薬物の使用にかなりの関心が払われてきた。
【0010】
[0001] 医療専門家に知られている一つの薬剤はスリンダクで(Sigma社からClinoril(登録商標)として遊離酸の形態で市販されている)、これはアリールアルカン酸クラスの非ステロイド系抗炎症薬として広く認識されている。これは、下記化学式C20H17FO3Sによって表すことができる。スリンダクは、スルフィニルインデンから誘導されるプロドラッグで、体内で活性なNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)に変換される。さらに詳しくは、該薬剤は肝酵素によってスルフィドに変換されて胆汁中に排出され、その後腸から再吸収される。このことは、胃腸の副作用を軽減しつつ血中濃度を一定に維持するのに役立つと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0002] しかしながら、今日までスリンダクは、少なくとも3日間にわたって緩和を提供する徐放性製剤での疼痛及び/又は炎症の効果的な治療法としては評価されていない。そこで、このような用途のための該化合物の効果的な製剤の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0003] 疼痛及び/又は炎症を治療するために投与される、スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を含む組成物及び方法を提供する。生分解性ポリマーに入れた適切な製剤が提供されると、この緩和は少なくとも3日間、少なくとも25日間持続可能である。ある態様において、該緩和は少なくとも50日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間又は少なくとも180日間持続可能である。
【0013】
[0004] 一態様に従って、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。医薬組成物は、例えば薬物デポーの一部でありうる。薬物デポーは、(i)スリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)及び生分解性ポリマー(一つ又は複数)だけからなる;又は(ii)本質的にスリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)及び生分解性ポリマー(一つ又は複数)からなる;又は(iii)スリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)、生分解性ポリマー(一つ又は複数)及び一つ又は複数のその他の活性成分、界面活性剤、賦形剤又はその他の成分、又はそれらの組合せを含む、というものであろう。製剤中にその他の活性成分、界面活性剤、賦形剤又はその他の成分、又はそれらの組合せが存在する場合、ある態様では、これらのその他の化合物又はその組合せは、薬物デポーの20wt%未満、16wt%未満、15wt%未満、14wt%未満、13wt%未満、12wt%未満、11wt%未満、10wt%未満、9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満又は0.5wt%未満を構成する。
【0014】
[0005] 別の態様に従って、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)、及び少なくとも一つの生分解性ポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する}を含む医薬製剤を提供する。
【0015】
[0006] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、製剤の約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0016】
[0007] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する}を含む。
【0017】
[0008] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つのポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、又はD,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む}を含む。
【0018】
[0009] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を治療するための方法を提供し、前記方法は、疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するために薬物デポーを生体(例えば哺乳動物)に埋め込むことを含み、前記薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0019】
[0010] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を治療するための方法を提供し、前記方法は、スリンダク及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬組成物を生体に投与することを含み、前記スリンダクは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%を構成する。
【0020】
[0011] 様々な態様の追加の特徴及び利点は、一部は以下の記載に示され、一部は該記載から明らかであるか、又は様々な態様の実施によって学ぶことができる。様々な態様の目的及びその他の利点は、該記載及び添付の特許請求の範囲において特に指摘されている構成要素及び組合せによって認識及び達成されるであろう。
【0021】
[0012] 態様のその他の側面、特徴、利益及び利点は、ある程度、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面を考慮すれば明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】[0013] 図1は、疼痛が起こる部位、及びそれに対してスリンダクを含有する薬物デポーを局所投与できる位置となりうる患者体内のいくつかの一般的位置を示す。
【図2】[0014] 図2は、脊椎及びそれに対してスリンダクを含有する薬物デポーを局所投与できる部位の概略的背面図を示す。
【図3】[0015] 図3は、下記投与に関して、熱刺激に対する足底逃避反応の潜伏時間(反応潜時)をベースラインからのパーセンテージで表したグラフを示す。7、14、21、28、35、42、49、及び56日目におけるスリンダク0.4mg/kg/日 IP、85/15 PLGA 対照、85/15 PLGA−20%、85/15 PLGA−27%、DL−PLA−25%、100−DL−7E−30%、100−DL−7E−20%及び85/15 PLGA−30%。
【図4】[0016] 図4は、8、15、22、29、36、43、50、及び57日目におけるスリンダク0.4mg/kg/日 IP、85/15 PLGA 対照、85/15 PLGA−20%、85/15 PLGA−27%、DL−PLA−25%、100−DL−7E−30%、100−DL−7E−20%及び85/15 PLGA−30%に関する機械的閾値をベースラインからのパーセンテージで表したグラフを示す。
【図5】[0017] 図5は、例示的スリンダク製剤のセットを示す。
【図6】図6は、例示的スリンダク製剤のセットを示す。
【図7】[0018] 図7は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図8】図8は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図9】図9は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図10】図10は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図11】図11は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図12】図12は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図13】図13は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図14】図14は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図15】図15は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図16】図16は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図17】図17は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図18】図18は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図19】[0019] 図19は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図20】図20は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図21】図21は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図22】図22は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図23】図23は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図24】図24は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図25】図25は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0020] 当然のことながら、図面は正確な縮尺率で描かれているわけではない。さらに、図中の物体間の関係も正確な縮尺率ではなく、実際、サイズに関しては逆の関係を有することもある。図面は、示された各物体の構造を理解及び明確にすることを目的としているので、一部の特徴は、構造の特定の特徴を示すために誇張されていることもある。
【0024】
[0021] 本明細書及び添付の特許請求の範囲において、別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量、材料のパーセンテージ又は割合、反応条件、及びその他の数値を表すすべての数字は、すべての場合、“約”という用語によって修飾されていると理解されるべきである。従って、それとは反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示されている数値パラメーターは近似値で、本発明によって得ようとしている所望の性質に応じて変動しうる。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0025】
[0022] 発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示されている数値はなるべく正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も元来、それらの各試験測定に見出される標準偏差に必然的に由来する一定の誤差を含有している。さらに、本明細書中に開示されたすべての範囲は、その中に包含されているいずれか及びすべての部分範囲(サブレンジ)を包含すると理解されるべきである。例えば、“1〜10”という範囲は、最小値1及び最大値10の間(これらの数値を含む)にあるいずれか及びすべての部分範囲を含む。すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有するいずれか及びすべての部分範囲、例えば5.5〜10を含む。
【0026】
[0023] 定義
[0024] 本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形の“a”、“an”及び“the”は、明示的及び明白に一つの指示対象を限定していない限り、複数の指示対象も含む。従って、例えば“一つの薬物デポー”と言う場合、一つ、二つ、三つ以上の薬物デポーを含む。
【0027】
[0025] “薬物デポー”は、その中のスリンダクを身体に投与するための組成物である。従って、薬物デポーは、所望部位(例えば、患者の円板腔、脊柱管、組織、特に手術部位又はその近傍など)への埋込み及び保持を促進するための物理的構造を含みうる。薬物デポーは薬物自体も含む。
【0028】
[0026] 本明細書中では“薬物”という用語は、一般的に患者の生理学を変更する何らかの物質のことを意味する。“薬物”という用語は、本明細書中では、“治療薬”、“治療上有効な量”、及び“有効医薬成分”又は“API”という用語と互換的に使用されうる。“薬物”製剤は、別途記載のない限り、複数の治療薬を含んでよく、治療薬の組合せの例として二つ以上の薬物の組合せなどがあることは理解されるであろう。薬物は、部位への送達のために治療薬の濃度勾配を提供する。様々な態様において、薬物デポーは、標的部位から約1cmまで、約5cmまで又は約10cmまでの距離の所で、治療薬の最適な薬物濃度勾配を提供し、そしてスリンダクを含む。ある態様において、治療薬は標的部位から少なくとも1cmのところに配置される。
【0029】
[0027] “治療上有効な量”又は“有効量”は、投与された場合、薬物が炎症の抑制、疼痛及び/又は炎症又は痙直の軽減又は緩和、筋弛緩による状態の改良などの生物学的活性の変更をもたらすような量である。患者に投与される用量は、様々な要因、例えば薬物の投与後の薬物動態特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、サイズなど)、症状の程度、併用療法、治療の頻度及び所望の効果に応じて、単回投与のことも複数回投与のこともある。ある態様において製剤は即時放出用に設計される。他の態様において製剤は持続放出用に設計される。他の態様において、製剤は一つ又は複数の即時放出表面と一つ又は複数の持続放出表面を含む。
【0030】
[0028] “デポー”は、カプセル、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、マイクロファイバー粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、コーティング、マトリックス、ウェハース、ピル、ペレット、エマルジョン、リポソーム、ミセル、ゲル、又は他の薬剤送達用組成物又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。薬物デポーは、薬剤を保持及び投与するポンプを構成しうる。ある態様において、薬物デポーは薬物をデポーから放出させる孔を有する。薬物デポーは、液をデポー内に侵入させることによって薬物を外に押し出す。しかしながら、デポー内への細胞浸潤はデポーの孔径よって防止される。このように、ある態様において、デポーは、組織足場として機能して組織を成長させるようなことがあってはならない。むしろ、薬物デポーは薬物送達のためだけに利用される。ある態様において、薬物デポーの孔は250〜500ミクロン未満である。この孔径だと、細胞が薬物デポーに浸潤し、足場細胞を下ろすのが防止される。従って、この態様では、薬物は液が薬物デポーに入ると薬物デポーから溶出するが、細胞は侵入が防止される。孔がほとんど又は全くないある態様においては、薬物は酵素の作用によって、加水分解作用によって及び/又は人体内のその他の類似機序によって薬物デポーから溶出する。
【0031】
[0029] デポー用の適切な材料は、理想的には製薬学的に許容しうる生分解性及び/又は生体吸収性材料で、好ましくはFDA認可又はGRAS材料である。これらの材料は、ポリマー性又は非ポリマー性でも、合成又は天然でも、又はそれらの組合せであってもよい。
【0032】
[0030] “生分解性”という用語は、薬物デポーのすべて又は一部が、酵素の作用によって、加水分解作用によって及び/又は人体内のその他の類似機序によって、時間経過と共に分解することを含む。様々な態様において、“生分解性”は、デポー(例えばマイクロ粒子、マイクロスフェアなど)が、治療薬の放出後又は放出中に体内で非毒性成分に崩壊又は分解できることを含む。“生体浸食性”とは、デポーが、少なくとも一部は、組織周辺にみられる物質、液体との接触のため、又は細胞作用によって時間経過とともに浸食又は分解されることを意味する。“生体吸収性”とは、デポーが分解され、人体内、例えば細胞又は組織によって吸収されることを意味する。“生体適合性”とは、デポーが標的組織部位で実質的な組織刺激又は壊死を起こさないことを意味する。
【0033】
[0031] “持続放出(徐放)”及び“放出の持続”(延長放出又は制御放出とも呼ばれる)という語句は、本明細書では、ヒト又は他の哺乳動物の体内に導入され、一つ又は複数の治療薬のストリームを予め決められた期間、その予定期間の最初から最後まで所望の治療効果を達成するに足る治療レベルで連続的又は断続的に放出する一つ又は複数の治療薬のことと互換的に使用される。連続的又は断続的な放出ストリームと言う場合、薬物デポー、又はマトリックス又はそれらの成分のインビボでの生分解の結果として、又は治療薬もしくは治療薬のコンジュゲートの代謝変換又は溶解の結果として発生する放出を包含するものとする。
【0034】
[0032] “即時放出”という語句は、本明細書では、体内に導入され、投与された場所で溶解又は吸収が可能な、薬物の溶解又は吸収の遅延又は延長が意図されない一つ又は複数の治療薬のことを言うのに使用される。二つのタイプの製剤(持続放出及び即時放出)は併用することもできる。持続放出及び即時放出製剤は一つ又は複数の同じデポーに入れることができる。様々な態様において、持続放出及び即時放出製剤は別のデポーの一部であってもよい。例えば、スリンダクのボーラス又は即時放出製剤は、標的部位又はその近傍に配置でき、持続放出製剤も同じ部位又はその近傍に配置できる。従って、ボーラスが完全に利用できるようになった後でも、持続放出製剤は目的組織のために活性成分を供給し続けるであろう。
【0035】
[0033] “初期バースト”、“バースト効果”、及び“ボーラス投与”という語句は本明細書では互換的に使用され、デポーが水性液(例えば滑液、脳脊髄液など)と接触後、最初の72時間の間のデポーからの治療薬の放出のことを言う。“バースト効果”は、デポーからの治療薬の放出の増大によるものと考えられている。様々な態様において、薬物デポーは、埋込み後最初の72時間以内に治療薬の初期バースト投与が起こるように設計することができる。代替の態様では、デポー(例えばゲル)はこの初期バースト効果を回避するように設計される。
【0036】
[0034] 疾患又は状態の“治療(treating及びtreatment)”という用語は、疾患又は状態の徴候又は症状を緩和しようとして、患者(ヒト、他の正常又はそれ以外又は他の哺乳動物)に一つ又は複数の薬物を投与することを含みうるプロトコルを実行することを言う。緩和は、疾患又は状態の徴候又は症状の発現後だけでなく発現前にも起こりうる。“治療(treating及びtreatment)”という用語は、疾患又は望ましくない状態の“予防(preventing又はprevention)”も含む。さらに、“治療(treating又はtreatment)”は、徴候又は症状の完全緩和を要求せず、治癒を要求せず、具体的には患者に対してごくわずかな効果しかないプロトコルも含む。“疼痛の低減”は、疼痛の減少を含むが、疼痛の徴候又は症状の完全緩和を要求せず、治癒を要求しない。様々な態様において、疼痛の低減は疼痛のわずかな減少さえも含む。例えば、スリンダクの一つ又は複数の有効用量の投与は、坐骨神経痛、脊椎すべり症、狭窄症などに由来する疼痛及び/又は炎症の症状を予防、治療又は緩和するのに使用できる。
【0037】
[0035] “局所”送達は、一つ又は複数の薬物を、組織内、例えば神経系の神経根又は脳の領域内、又はそれにごく接近した場所(例えば約10cm以内、又は好ましくは約5cm以内)に置く送達を含む。
【0038】
[0036] “哺乳動物”という用語は“哺乳類”に分類される生物のことで、ヒト、その他の霊長類、例えばチンパンジー、類人猿、オランウータン及びサル、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
[0037] “疼痛管理薬物療法”という語句は、疼痛を完全に予防、緩和又は除去するために投与される一つ又は複数の治療薬を含む。これらには、抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛剤、麻酔薬、麻薬など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0040】
[0038] “放出速度(率)プロフィール”という語句は、一定の単位時間に放出される活性成分のパーセンテージのことを言い、例えばmg/時、mg/日、1日10%10日間などによって表される。当業者には分かる通り、放出速度プロフィールは直線でありうるが、必ずしもそうでなくてもよい。非制限的例として、薬物デポーは、スリンダクを一定期間にわたって放出するペレットでありうる。
【0041】
[0039] “固体”という用語は硬い材料を意味することを意図しているが、“半固体”はある程度の柔軟性を有し、それによってデポーを曲げて周囲組織の要件に従わせることが可能となる材料を意味することを意図している。
【0042】
[0040] “標的送達システム”という語句は、疼痛、炎症又はその他の疾患もしくは状態の治療の必要に応じて標的部位又はその近傍に置くことができる一定量の治療薬を有する一つ又は複数の薬物デポー、ゲル又はゲル中に分散されたデポーの送達を提供するシステムのことを言う。
【0043】
[0041] 略語“DLG”は、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
[0042] 略語“DL”は、ポリ(DL−ラクチド)のことである。
【0044】
[0043] 略語“LG”は、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
[0044] 略語“CL”は、ポリカプロラクトンのことである。
【0045】
[0045] 略語“DLCL”は、ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)のことである。
[0046] 略語“LCL”は、ポリ(L−ラクチド−コ−カプロラクトン)のことである。
【0046】
[0047] 略語“PGA”は、ポリグリコリドのことである。
[0048] 略語“PEG”は、ポリ(エチレングリコール)のことである。
[0049] 略語“PLGA”は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
【0047】
[0050] 略語“PLA”は、ポリラクチドのことである。
[0051] 次に、本発明のある態様について詳細に述べ、その例を添付の図面に示す。本発明を例示された態様と共に説明するが、当然のことながら、それらは本発明をそのような態様に限定することを意図したものではない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内に含まれうるあらゆる代替、変形、及び均等物もカバーするものとする。
【0048】
[0052] スリンダク
[0053] スリンダクについて言及する場合、別途記載のない限り又は文脈から明らかでない限り、発明者らは、スリンダクの製薬学的に許容しうる塩、薬理活性誘導体、又はスリンダクの活性代謝産物のことにも言及していることは理解されよう。本明細書中では、“製薬学的に許容しうる塩”とは、開示化合物(例えばエステル又はアミン)の誘導体のうち、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩の製造によって変更されうるもののことを言う。製薬学的に許容しうる塩の例は、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などであるが、これらに限定されない。製薬学的に許容しうる塩は、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩などである。例えば、そのような従来の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、又は硝酸などの無機酸から誘導されるもの;又は酢酸、フッ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から製造される塩などである。製薬学的に許容しうるものの中には、スリンダクのラセミ混合物((+)−R及び(−)−Sエナンチオマー)又は右旋性及び左旋性異性体のそれぞれも個別に含まれる。スリンダクは、遊離酸又は遊離塩基形でも、長期作用活性のためにペグ化されていてもよい。
【0049】
[0054] 一つのよく知られた市販されているスリンダクの塩は、そのナトリウム塩(例えばSpectrum Chemicalから入手できる)又はスルフィド塩である。
【0050】
[0055] スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩は筋弛緩薬と共に投与できる。筋弛緩薬の例は(例として示すものであり、制限ではない)、塩化アルクロニウム、アトラクリウムベシレート(atracurium bescylate)、バクロフェン、カルバメート、カルボロニウム(carbolonium)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルフェネシン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、ダントロレン(dantrolene)、デカメトニウムブロミド(decamethonium bromide)、ファザジニウム(fazadinium)、ガラミントリエチオジド(gallamine triethiodide)、ヘキサフルオレニウム(hexafluorenium)、メラドラジン(meladrazine)、メフェンシン(mephensin)、メタキサロン(metaxalone)、メトカルバモール、メトクリンヨージド(metocurine iodide)、パンクロニウム、メシル酸プリジノール、スチラメート(styramate)、スキサメトニウム、スキセトニウム(suxethonium)、チオコルチコシド(thiocolchicoside)、チザニジン、トルペリゾン、ツボクアリン(tubocuarine)、ベクロニウム、又はこれらの組合せなどである。
【0051】
[0056] 薬物デポーは、スリンダクのほかにその他の治療薬を含んでいてもよい。治療薬は、様々な態様において、炎症カスケードにおけるTNF−α又はその他のタンパク質の転写又は翻訳をブロックする。適切な治療薬は、インテグリンアンタゴニスト、アルファ−4−ベータ−7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害薬、インターフェロンガンマアンタゴニスト、CTLA4−Igアゴニスト/アンタゴニスト(BMS−188667)、CD40リガンドアンタゴニスト、ヒト化抗IL−6 mAb(MRA,Tocilizumab,Chugai)、HMGB−1 mAb(Critical Therapeutics Inc.)、抗IL2R抗体(ダクリズマブ(daclizumab)、バシリシマブ(basilicimab))、ABX(抗IL−8抗体)、組換えヒトIL−10、又はHuMax IL−15(抗IL−15抗体)などであるが、これらに限定されない。
【0052】
[0057] その他の適切な治療薬は、IL−1阻害薬、例えばKineret(登録商標)(アナキンラ){これは、組換え非グリコシル化形のヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)である}、又はAMG 108{これは、IL−1の作用をブロックするモノクローナル抗体である}などである。治療薬は、グルタミン酸及びアスパラギン酸のような興奮性アミノ酸、グルタミン酸のNMDA受容体、AMPA受容体、及び/又はカイニン酸受容体への結合のアンタゴニスト又は阻害薬も含む。インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、サリドマイド(TNF−α放出阻害薬)、サリドマイド類似体(マクロファージによるTNF−α産生を削減する)、骨形成タンパク質(BMP)タイプ2及びBMP−4(TNF−αアクチベーターであるカスパーゼ8の阻害薬)、キナプリル(TNF−αをアップレギュレートするアンギオテンシンIIの阻害薬)、インターフェロン類、例えばIL−11(TNF−α受容体発現を調節する)、及びアウリン−トリカルボン酸(TNF−αを阻害する)は、炎症を低減するための治療薬として有用である。望ましい場合、上記のペグ化形も使用できると考えている。その他の治療薬の例は、NFカッパB阻害薬、例えばグルココルチコイド、抗酸化剤、例えばジチオカルバメート、及びその他の化合物、例えばスルファサラジン、クロニジン及び/又はブピバカインなどである。
【0053】
[0058] 使用に適切な治療薬の例は、抗炎症薬、鎮痛剤、又は骨誘導成長因子又はそれらの組合せなども含むが、これらに限定されない。抗炎症薬は、アパゾン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エノール酸(ピロキシカム、メロキシカム)、エトドラク、フェナメート(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、金、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド(nimesulide)、サリチレート、スルファサラジン[2−ヒドロキシ−5−[4−[C2−ピリジニルアミノ)スルホニル]アゾ]安息香酸、テポキサリン(tepoxalin)、又はトルメチン、並びに抗酸化剤、例えばジチオカルバメート、ステロイド、例えばフルオシノロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0054】
[0059] 適切な同化成長又は抗異化成長因子は、骨形成タンパク質、成長分化因子、LIM無機化タンパク質、CDMP又は前駆細胞、又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0055】
[0060] 適切な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、ブピビカイン(bupivicaine)、リドカイン、オピオイド鎮痛薬、例えばブプレノルフィン、ブトルファノール、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾシン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、フェンタニル、アルフェンタニル(alfentanil)、スフェンタニル(sufentanil)、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ケトベミドン(ketobemidone)、レボメタジル(levomethadyl)、メピリジン(mepiridine)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、アヘン、オキシコドン、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペリジン(phenoperidine)、ピリトラミド(piritramide)、デキストロプロポキシフェン、レミフェンタニル(remifentanil)、チリジン(tilidine)、トラマドール、コデイン、ジヒドロコデイン、メプタジノール(meptazinol)、デゾシン、エプタゾシン(eptazocine)、フルピルチン(flupirtine)、アミトリプチリン、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0056】
[0061] スリンダクデポーに入れられるその他の治療薬は、アルファ受容体アゴニスト(例えばアルファ−1又はアルファ−2受容体アゴニスト又はそれらの組み合わせ)などである。アルファ−1アドレナリン受容体アゴニストの例は、メトキサミン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン、メタラミノール、オキシメタゾリン、フェニレフリン、2−(アニリノメチル)イミダゾリン、シネフリン、又はそれらの組合せなどであるが、決してこれらに限定されない。
【0057】
[0062] ある態様において、アルファアドレナリン受容体アゴニストはアルファ−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。これは鎮痛薬及び/又は抗炎症薬として作用する。本用途に有用なアルファ−2アドレナリン受容体アゴニストの例は、L−ノルエピネフリン、クロニジン、デキスメデトミジン、アプラクロニジン、メチルドパ、チザニジン、ブリモニジン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、グアンファシン(guanfacine)、グアナベンズ(guanabenz)、グアノキサベンズ(guanoxabenz)、グアネチジン、キシラジン、モキソニジン、ミバゼロール(mivazerol)、リルメニジン(rilmenidine)、UK 14,304、B−HT 933、B−HT 920、オクトパミン又はこれらの組合せなどであるが、決してこれらに限定されない。
【0058】
[0063] その他のアルファアドレナリンアゴニストは、アミデフリン(amidephrine)、アミトラズ(amitraz)、アニソダミン(anisodamine)、アプラクロニジン、シラゾリン(cirazoline)、デトミジン(detomidine)、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン(etilefrine)、インダニジン、ロフェキシジン(lofexidine)、メデトミジン(medetomidine)、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミドドリン(midodrine)、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン(norfenefrine)、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、リルメニジン、ロミフィジン(romifidine)、シネフリン、タリペキソール(talipexole)、チザニジン、又はこれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0059】
[0064] スリンダクは非活性成分と共に投与してもよい。これらの非活性成分は、治療薬の担持、安定化及び放出制御といった多機能目的を有しうる。持続放出プロセスは、例えば溶液−拡散メカニズムによるものでも、又は浸食−持続プロセスによって制御されるものでもよい。典型的には、デポーは、生分解性でありうる生体適合性材料で構成された固体又は半固体製剤であろう。
【0060】
[0065] 様々な態様において、非活性成分は、組織部位内で、計画された薬物送達期間と等しい(生分解性成分の場合)又はそれより長い(非生分解性成分の場合)期間、耐久性を有する。例えば、デポー材料は、体温付近〜体温より高いが、治療薬の分解又は崩壊温度より低い融点又はガラス転移温度を有しうる。しかしながら、デポー材料の予め決められた浸食を利用して、担持された治療薬の緩徐な放出を提供することもできる。
【0061】
[0066] ある態様において、薬物デポーは生分解性でないこともある。例えば、薬物デポーは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性弾性オレフィン、コポリエステル、及びスチレン性熱可塑性エラストマー、スチール、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、非鉄金属含有量が高く鉄の相対的比率が低い金属合金、カーボンファイバー、ガラスファイバー、プラスチック、セラミック又はそれらの組合せで構成されていてもよい。典型的には、このようなタイプの薬物デポーは取り出す必要があろう。
【0062】
[0067] 場合によっては、使用後に薬物デポーを取り出す必要を回避するのが望ましいこともあろう。そのような場合、該デポーは生分解性材料で構成されうる。この目的のために利用でき、標的組織又はその近傍に配置された場合に長時間かけて分解又は崩壊することができるという特徴を有する多数の材料がある。生分解性材料の化学機能として、分解プロセスのメカニズムは、加水分解的又は酵素的な性質、又はその両方でありうる。様々な態様において、その分解は、表面で(不均一又は表面浸食)又は薬物送達システムデポー全体にわたって一様に(均一又はバルク浸食)、のいずれかで起こりうる。
【0063】
[0068] 様々な態様において、デポーは、スリンダクの即時放出又は持続放出(徐放)を提供できる生体吸収性、生体吸収性及び/又は生分解性バイオポリマーを含みうる。適切な徐放性バイオポリマーの例は、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン(polyphosphagenes)、コラーゲン、デンプン、予備ゼラチン化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、例えばアルファ酢酸トコフェロール(トコフェリル)、d−アルファコハク酸トコフェロール、D,L−ラクチド、L−ラクチド、−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。当業者には分かる通り、mPEGはPLGAの可塑剤として使用できるが、同じ効果を達成するのに他のポリマー/賦形剤を使用してもよい。mPEGは得られた製剤に展性を付与する。賦形剤の例は、mPEG、D−ソルビトール、マルトデキストラン、シクロデキストリン、PEG、MgCO3、パラフィン油、硫酸バリウム、パラフィン油、モノオレイン酸グリセロール、トリブチル−オルト−クエン酸アセチル(CAS:77−90−7)(TBO−ac)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。賦形剤は、存在する場合、例えば約0.05wt%〜約20wt%の量で存在しうる。
【0064】
[0069] 様々な態様において、薬物デポーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む。
【0065】
[0070] デポーは、所望により不活性材料を含有することもできる。例えば、緩衝剤及びpH調整剤、例えば炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又はリン酸ナトリウム;分解/放出調節剤;薬物放出調整剤;乳化剤;保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール及びフェニルエチルアルコール;溶解度調整剤;安定剤;及び/又は凝集調節剤などである。デポーを脊髄領域に配置する場合、様々な態様において、該デポーは無菌の保存剤除去材料を含みうる。
【0066】
[0071] デポーは様々なサイズ、形状及び構成であってよい。薬物デポーのサイズ、形状及び構成を決定するに当たって考慮されうるいくつかの要因がある。例えば、サイズ及び形状を考慮することにより、埋込み又は注入部位として選ばれる標的組織部位での薬物デポーの配置が容易になる。さらに、システムの形状及びサイズは、埋込み又は注入後、薬物デポーが動くのを最小限化又は防止するように選ばれるべきである。様々な態様において、薬物デポーは、球形、棒又は繊維のような円筒形、ディスク、フィルム又はシートのような平坦表面などのように成形することができる。柔軟性を考慮すれば薬物デポーの配置が容易になるであろう。様々な態様において、薬物デポーは、様々なサイズであってよい。例えば、薬物デポーは、約0.5mm〜5mmの長さ及び約0.01〜約2mmの直径を有しうる。様々な態様において、薬物デポーは、約0.005〜1.0mm、例えば0.05〜0.75mmの層厚を有しうる。
【0067】
[0072] 様々な態様において、薬物デポーがペレットで構成される場合、切開部位にそれを留置してから該部位を閉じればよい。ペレットは例えば熱可塑性材料で作ることができる。さらに、ペレットとして使用するために有益でありうる特定材料は、徐放性バイオポリマーとして上で特定された化合物などであるが、それらに限定されない。ペレットは、スリンダクをポリマーと混合し、それを押し出すことによって形成できる。
【0068】
[0073] 放射線マーカーを薬物デポー上に含めると、ユーザーはデポーを患者の標的部位に正確に配置できるようになる。これらの放射線マーカーは、ユーザーが部位におけるデポーの移動及び分解を長時間にわたって追跡することも可能にする。この態様において、ユーザーは、多数の画像診断法のいずれかを用いて、デポーを部位に正確に配置できる。そのような画像診断法は、例えばX線イメージング又は蛍光透視法などである。そのような放射線マーカーの例は、バリウム、リン酸カルシウム、及び/又は金属ビーズもしくは粒子などであるが、これらに限定されない。様々な態様において、放射線マーカーは球形又はデポーを囲むリングであろう。
【0069】
[0074] 図1に、疼痛及び/又は炎症の発生部位となりうる患者体内のいくつかの一般的位置を示す。図1に示された位置は、単に、疼痛及び/又は炎症が起こりうる多くの異なる位置の例示にすぎないことは分かるであろう。例えば、疼痛及び/又は炎症は、患者の膝21、臀部22、指23、親指24、頸部25、及び脊柱26で起こりうる。このように、患者は疼痛及び/又は炎症を被りやすく、これらの部位を標的とした疼痛管理薬物療法を必要としうる。
【0070】
[0075] ゲル
[0076] 様々な態様において、ゲルは、約1〜約500センチポアズ(cps)、1〜約200cps、又は1〜約100cpsの範囲の投与前粘度を有する。ゲルを標的部位に投与後、ゲルの粘度は増大し、ゲルは、約1×104〜約6×105ダイン/cm2、又は約2×104〜約5×105ダイン/cm2、又は約5×104〜約5×105ダイン/cm2の範囲の弾性率(ヤング率)を有することになる。
【0071】
[0077] 一態様において、デポーはスリンダクを含む付着性ゲルを含む。スリンダクはゲル全体に均一に分配されている。ゲルは、前に示したように、任意の適切なタイプのものでよいが、配置された後、標的送達部位からゲルが移動しないように十分粘稠であるべきである。ゲルは実際、標的組織部位に“粘着”又は接着すべきである。ゲルは、例えば、標的組織と接触したら、又は標的送達システムから配置されたら固化しうる。標的送達システムは、例えば、シリンジ、カテーテル、ニードル又はカニューレ又はいずれかその他の適切なデバイスでありうる。標的送達システムはゲルを標的組織部位の中又は上に注入できる。治療薬は、ゲルを標的組織部位に配置する前にゲル内に混入すればよい。様々な態様において、ゲルは二成分送達システムの一部であってよく、その二成分が混合されると化学プロセスが活性化されてゲルが形成され、標的組織への粘着又は接着が起きる。
【0072】
[0078] 様々な態様において、送達後に硬化又は硬直するゲルが提供される。典型的には、硬化ゲル製剤は、約1×104〜約3×105ダイン/cm2、又は2×104〜約2×105ダイン/cm2、又は5×104〜約1×105ダイン/cm2の範囲の投与前弾性率を有しうる。投与後の硬化ゲルは(送達後)、ゴム状稠度を有し、約1×104〜約2×106ダイン/cm2、又は約1×105〜約7×105ダイン/cm2、又は約2×105〜約5×105ダイン/cm2の範囲の弾性率を有しうる。
【0073】
[0079] 様々な態様において、ポリマーを含有するようなゲル製剤の場合、ポリマー濃度はゲルが硬化する速度に影響を与えうる(例えば、高いポリマー濃度を有するゲルは低いポリマー濃度を有するゲルより迅速に凝固できる)。様々な態様において、ゲルが硬化した場合、得られたマトリックスは固体であるが、組織の不規則な表面(例えば骨の陥凹及び/又は突起)に沿うことも可能である。
【0074】
[0080] ゲル中に存在するポリマーの割合はポリマー性組成物の粘度にも影響を及ぼしうる。例えば、ポリマーの重量パーセンテージが高い組成物は、ポリマーの重量パーセンテージが低い組成物よりも通常濃厚で粘稠である。粘度の高い組成物ほどゆっくり流れる傾向にある。そこで、場合によっては低粘度の組成物の方が好適なこともある。
【0075】
[0081] 様々な態様において、ゲルの分子量は当該技術分野で公知の多数の方法によって変化させることができる。分子量を変化させるための方法の選択は、典型的にはゲルの組成(例えば、ポリマーか非ポリマーか)によって決定される。例えば、様々な態様において、ゲルが一つ又は複数のポリマーを含む場合、重合度は、ポリマー開始剤(例えば過酸化ベンゾイル)、有機溶媒又は活性剤(例えばDMPT)、架橋剤、重合剤、及び/又は反応時間の量を変化させることによって制御することができる。
【0076】
[0082] 適切なゲルポリマーは有機溶媒に可溶であろう。溶媒中のポリマーの溶解度は、ポリマーの結晶度、疎水性、水素結合及び分子量によって変動する。低分子量ポリマーは、通常、高分子量ポリマーよりも容易に有機溶媒に溶解する。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルは、低分子量ポリマーを含むポリマー性組成物よりも迅速に凝固又は固化しやすい。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲル製剤は、低分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルより高い溶液粘度も有する傾向にある。
【0077】
[0083] ゲルを流動性ゲルであるように設計する場合、それは、ゲルに使用されるポリマーの分子量及び濃度によって、水のような低い粘度からペーストのような高い粘度まで変動させることができる。ゲルの粘度は、ポリマー性組成物を患者の組織にいずれか好都合な技術によって、例えばスプレー、刷毛塗り、点滴、注入又は塗布によって適用できるように変動させることができる。様々なゲル粘度は、組成物を適用するのに使用される技術に合わせて決定される。
【0078】
[0084] 様々な態様において、ゲルは固有粘度(“I.V.”と略し、単位はデシリットル/グラムである)を有する。これは、ゲルの分子量及び分解時間の尺度となる(例えば、高い固有粘度を有するゲルは高い分子量及び長い分解時間を有する)。典型的には、高分子量を有するゲルはより強固なマトリックスを提供し、該マトリックスは分解により時間がかかる。これに対し、低分子量を有するゲルはより迅速に分解し、より柔らかいマトリックスを提供する。様々な態様において、ゲルは、固有粘度で示すと約0.10dL/g〜約1.2dL/ g又は約0.10dL/g〜約0.40dL/gの分子量を有する。
【0079】
[0085] 様々な態様において、ゲルは約300〜約5,000センチポアズ(cp)の粘度を有することができる。他の態様において、ゲルは室温で約5〜約300cps、約10cps〜約50cps、約15cps〜約75cpsの粘度を有することができる。ゲルは、所望により、粘度増強剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、Carbopol、ポリ−(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、mPEG、PEG1000、PEG1450、PEG3350、PEG4500、PEG8000又はそれらの組合せを有していてもよい。
【0080】
[0086] ある用途にとっては高粘度を有するゲルが望ましいこともあろう。例えば、パテ様の稠度を有するゲルは、骨再生用途にはより好適でありうる。様々な態様において、ゲルにポリマーを使用する場合、ポリマー性組成物は約10wt%〜約90wt%又は約30wt%〜約60wt%のポリマーを含む。
【0081】
[0087] 様々な態様において、ゲルは、合成又は天然由来の高分子量生体適合性弾性ポリマーでできたヒドロゲルである。ヒドロゲルが持つべき望ましい性質は、人体内で機械的ストレス、特に剪断応力及び荷重に迅速に応答する能力である。
【0082】
[0088] 天然源から得られるヒドロゲルは、より生分解性及び生体適合性の傾向が高いので、インビボ用途にとって特に魅力的である。適切なヒドロゲルは、天然ヒドロゲル、例えばゼラチン、コラーゲン、シルク、エラスチン、フィブリン及び多糖由来ポリマー、例えばアガロース、及びキトサン、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、多糖類、例えば架橋カルボキシル含有多糖類、又はそれらの組合せなどである。合成ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、例えばポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350、PEG4500、PEG8000)、シリコーン、ポリオレフィン、例えばポリイソブチレン及びポリイソプレン、シリコーンとポリウレタン、ネオプレン、ニトリルのコポリマー、加硫ゴム、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アクリレート、例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)及びアクリレートとN−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、ポリアクリロニトリルとのコポリマー、又はそれらの組合せから形成されるものなどであるが、これらに限定されない。ヒドロゲル材料は、必要に応じて、更なる強度を提供するためにさらに架橋させてもよい。異なるタイプのポリウレタンの例は、熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタン、脂肪族又は芳香族ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネート−ウレタン又はシリコーンポリエーテル−ウレタン、又はそれらの組合せなどである。
【0083】
[0089] 様々な態様において、治療薬をゲルに直接混合するより、スリンダクを担持したマイクロスフェアをゲル内に分散させることもできる。一態様において、マイクロスフェアはスリンダクの持続放出を提供する。さらに別の態様において、生分解性であるゲルは、マイクロスフェアがスリンダクを放出するのを防止する。従って、マイクロスフェアは、ゲルから放出されるまでスリンダクを放出しない。例えば、ゲルは標的組織部位(例えば神経根)の周囲に配置されうる。ゲル内に分散されているのは、所望の治療薬を被包した多数のマイクロスフェアである。これらのマイクロスフェアの一部は、ひとたびゲルから放出されると分解し、スリンダクを放出する。
【0084】
[0090] マイクロスフェアは、流体とよく似て、周囲の組織タイプに応じて比較的迅速に分散できるので、スリンダクも分散される。ある態様において、マイクロスフェアの直径は、直径約10〜約200ミクロンの範囲である。ある態様において、それらは直径約20〜約120ミクロンの範囲である。状況によってはこれが望ましいかもしれないが、他の状況では、スリンダクを範囲の明確な標的部位にしっかり拘束しておく方が望ましいこともある。本発明は、治療薬の分散をこのように拘束するために付着性ゲルの使用も想定している。これらのゲルは、例えば、円板腔に、脊柱管に、又は周辺組織に配置できる。
【0085】
[0091] 薬物送達
[0092] 当業者であれば、デポーは、“カニューレ”又は“ニードル”を用いて標的部位に投与できることは分かるであろう。カニューレ又はニードルは、薬物送達デバイス、例えばシリンジ、銃型薬物送達デバイス、又は薬物を標的器官又は解剖学的領域に適用するのに適切ないずれかの医療用デバイスなどの一部でありうる。薬物デポー用デバイスのカニューレ又はニードルは、患者に対する身体的及び心理的傷害が最小限になるように設計されている。
【0086】
[0093] カニューレ又はニードルは、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性弾性オレフィン、コポリエステル、及びスチレン性熱可塑性エラストマー、スチール、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、非鉄金属含有量が高く鉄の相対的比率が低い金属合金、カーボンファイバー、ガラスファイバー、プラスチック、セラミック又はそれらの組合せなどの材料から製造できるチューブなどである。カニューレ又はニードルは、所望により一つ又は複数の先細領域を含んでいてもよい。様々な態様において、カニューレ又はニードルは面取りされていてもよい。カニューレ又はニードルは、埋込み部位に応じて患者を正確に処置するのに極めて重要な先端形状も有しうる。先端形状の例は、例えば、Trephine、Cournand、Veress、Huber、Seldinger、Chiba、Francine、Bias、Crawford、偏向チップ、Hustead、Lancet、又はTuoheyなどである。様々な態様において、カニューレ又はニードルは、ノンコアリング(non-coring)で、無用の針刺しを回避するためにそれをカバーする鞘(シース)を有していてもよい。
【0087】
[0094] 中空カニューレ又はニードルの寸法は、とりわけ埋込みの部位に左右される。例えば、硬膜上腔の幅は胸部で約3〜5mm、腰部で約5〜7mmしかない。従って、カニューレ又はニードルは、様々な態様において、これらの特定領域に合わせて設計できる。様々な態様において、カニューレ又はニードルは、経孔的アプローチを用いて、脊椎孔空間、例えば炎症を起こした神経根に沿って挿入され、その状態を治療するために薬物デポーがこの部位に埋め込まれる。典型的には、経孔的アプローチは、椎間孔を通って椎間腔に進入することを含む。
【0088】
[0095] カニューレ又はニードルの長さのいくつかの例は、長さ約50〜150mm、例えば小児の硬膜外に使用する場合約65mm、標準成人の場合約85mm、及び肥満成人患者の場合約110mmなどであるが、これらに限定されない。カニューレ又はニードルの厚さも埋込み部位に左右される。様々な態様において、厚さは、約0.05〜約1.655mmなどであるが、これに限定されない。カニューレ又はニードルのゲージは、ヒト又は動物体内への挿入のために、最大又は最小直径でも、その中間の直径でもよい。最大直径は典型的には約14ゲージであるが、最小直径は約25ゲージである。様々な態様において、ニードル又はカニューレのゲージは約18〜約22ゲージである。
【0089】
[0096] 様々な態様において、薬物デポー及び/又はゲルと同様、カニューレ又はニードルにも皮下の部位又はその近傍の位置を示す線量放射線マーカーが含まれる。そうすると、ユーザーは、多数の画像診断法のいずれかを用いて、部位又はその近傍にデポーを正確に配置できる。そのような画像診断法は、例えばX線イメージング又は蛍光透視法などである。そのような放射線マーカーの例は、バリウム、カルシウム、及び/又は金属ビーズもしくは粒子などであるが、これらに限定されない。
【0090】
[0097] 様々な態様において、ニードル又はカニューレは、超音波、蛍光透視法、x線、又はその他の画像化技術によって視覚化できる透明又は半透明部分を含みうる。そのような態様においては、透明又は半透明部分は放射線不透過材料又は超音波応答トポグラフィーを含んでおり、該材料又はトポグラフィーが存在しないのと比べてニードル又はカニューレのコントラストが増大する。
【0091】
[0098] 薬物デポー、及び/又は薬物を投与するための医療用デバイスは滅菌可能でありうる。様々な態様において、薬物デポーの一つ又は複数の成分、及び/又は薬物投与のための医療用デバイスは、最終包装時のターミナル(終末)滅菌ステップで放射線によって滅菌される。製品のターミナル滅菌は、個々の製品コンポーネントを別々に滅菌し、滅菌環境で最終包装品にまとめることを必要とする無菌プロセスのようなプロセス由来の製品より大きい滅菌保証を提供する。
【0092】
[0099] 典型的には、様々な態様において、ガンマ線がターミナル滅菌ステップに使用される。これは、デバイスに深く透過するガンマ線からのイオン化エネルギーを利用するものである。ガンマ線は微生物の殺菌に非常に効果的で、残留物も残さず、デバイスに放射能を付与するほどのエネルギーも持たない。ガンマ線はデバイスが包装されている場合でも使用でき、ガンマ滅菌は高圧も真空条件も必要としないので、包装シール及びその他のコンポーネントはストレスを受けない。さらに、ガンマ線は、透過性の包装材料の必要性も排除する。
【0093】
[00100] 様々な態様において、電子ビーム(eビーム)放射線もデバイスの一つ又は複数のコンポーネントの滅菌に使用することができる。eビーム放射線は、一般的に低透過及び高線量率を特徴とするイオン化エネルギーの形態を含む。eビーム照射は、微生物の生殖細胞を含めて、接触により様々な化学的及び分子的結合を変更するという点でガンマ処理と類似している。eビーム滅菌用に発生させるビームは、電気の加速及び変換によって発生させた濃縮された高電荷の電子ストリームである。eビーム滅菌は、例えば薬物デポーがゲルに含まれる場合に使用できる。
【0094】
[00101] 他の方法もデポー及び/又はデバイスの一つ又は複数のコンポーネントの滅菌に使用できる。例えば、エチレンオキシドを用いたガス滅菌又はスチーム滅菌などであるが、これらに限定されない。
【0095】
[00102] キット
[00103] 様々な態様において、薬物デポー及び/又は一緒に組み合わされた医療用デバイス(薬物デポー(例えばペレット)を埋め込むのに使用される)、及び追加の部品を含みうるキットが提供される。キットは、第一のコンパートメントに薬物デポー用デバイスを含みうる。第二のコンパートメントは薬物デポーを入れたキャニスター及び局所薬物送達に必要な何らかのその他の器具を含みうる。第三のコンパートメントは、手袋、ドレープ、創傷包帯及び埋込みプロセスの滅菌性を維持するためのその他の操作手順上の備品、並びに取扱説明書を含みうる。第四のコンパートメントは追加のカニューレ及び/又はニードルを含みうる。第五のコンパートメントは放射線イメージング用の薬剤を含みうる。各用具は放射線滅菌されたプラスチック袋に別個に包装されていてよい。キットのカバーには埋込み手順のイラストが付いていてもよく、コンパートメント上には滅菌性を維持するために透明プラスチックカバーがかけられていてもよい。
【0096】
[00104] 投与
[00105] 様々な態様において、スリンダクを含有する薬物デポーは非経口投与できる。非経口投与は、静脈内、筋肉内、連続又は間欠注入、腹腔内、胸骨内、皮下、術中、髄腔内、椎間板内、椎間板周囲、硬膜外、脊椎周囲、関節内又はそれらの組合せの投与などのほか、医薬組成物をカテーテルを通じて標的部位の近くに投与する注入ポンプ、標的部位又はその近傍に挿入できる埋込み可能なミニポンプ、及び/又は1時間あたり一定量の組成物を放出できる又は間欠的なボーラス投与ができる埋込み可能な制御放出デバイス又は徐放性送達システムも含む。
【0097】
[00106] 使用に適切なポンプの一例は、SynchroMed(登録商標)(Medtronic,ミネソタ州ミネアポリス)ポンプである。該ポンプは三つの密閉チャンバを有している。一つのチャンバには電子モジュールとバッテリーが収容されている。二つ目には蠕動ポンプと薬物貯留槽が収容されている。三つ目には、医薬組成物を蠕動ポンプに押し出すのに必要な圧力を供給する不活性ガスが収容されている。ポンプに充填するために、医薬組成物が貯留槽の注入口から拡張式貯留槽に注入される。不活性ガスによって貯留槽への圧力が作り出され、その圧力で医薬組成物はフィルタを通ってポンプ室に押し出される。次に、医薬組成物はポンプ室からデバイスの外のカテーテルに汲み出される。カテーテルは医薬組成物を方向付けて標的部位に配置する。医薬組成物の送達速度はマイクロプロセッサによって制御される。こうすることによって、類似量又は異なる量の医薬組成物を連続的に、特定の時間に、又は設定された間隔で送達するためにポンプを使用することが可能になる。
【0098】
[00107] 本明細書中に記載の方法に適応させるのに適切な、可能性ある薬物送達デバイスは、下記特許に記載のものなどであるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,551,290号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、標的特異的な薬物送達用の医療用カテーテルについて記載されている;米国特許第6,571,125号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、生物学的活性薬剤を制御放出するための埋込み可能な医療用デバイスについて記載されている;米国特許第6,594,880号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、生体の選択部位に治療薬を送達するための実質内注入カテーテルシステムについて記載されている;及び米国特許第5,752,390号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、空間部位に等量の薬剤を注入するための埋込み可能なカテーテルについて記載されている。様々な態様において、ポンプは、フィードバック調節送達機能を備えたプレプログラマブル埋込み可能装置、化学物質制御放出用マイクロ貯留槽浸透圧放出システム、液体薬剤送達用小型軽量デバイス、埋込み可能な超小型注入デバイス、埋込み可能なセラミックバルブポンプアセンブリ、又は折畳み可能な液室を備えた埋込み可能注入ポンプと共に適応されうる。Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(Durect Corporation、カリフォルニア州クパチーノ)も、記載の方法に使用するのに適切な、各種のサイズ、ポンプ速度、及び持続期間で入手可能である。
【0099】
[00108] 様々な態様において、治療薬を患者の手術部位に送達するための方法を提供する。該方法は、カニューレを標的組織部位又はその近傍に挿入し、薬物デポーを患者の皮下の標的部位に埋め込み、標的部位にゲルをスプレー、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布して薬物デポーを標的部位に保持又は接着させることを含む。このようにして、薬物デポーの標的部位からの望まざる移動が削減又は排除される。
【0100】
[00109] 様々な態様において、薬物デポーを内部に分散させたゲルを所望部位に投与するには、まず、カニューレ又はニードルを皮膚及び軟組織を通って標的組織部位に挿入し、ゲルを標的部位又はその近傍に投与(例えば、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布など)すればよい。薬物デポーがゲルと別になっている態様においては、まず、カニューレ又はニードルを皮膚及び軟組織を通って注入部位に挿入し、ゲルの一つ又は複数のベース層を標的部位に投与することができる。一つ又は複数のベース層の投与後、薬物デポーをそのベース層の上又は中に埋め込めばよい。その結果、ゲルはデポーを所定の場所に保持できる又は移動を削減できる。必要ならば、次のゲル層(一つ又は複数)を薬物デポーの上に適用してデポーを包囲し、それをさらに所定の場所に保持することもできる。あるいは、薬物デポーを最初に埋め込み、その後それを所定の場所に保持するために、ゲルを薬物デポーの周囲に配置(例えば、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布など)してもよい。ゲルを使用することにより、薬物デポーの正確で精密な埋込みが、患者への最小限の身体的及び心理的傷害で達成できる。ゲルは、薬物デポーを標的部位に縫合する必要性もなくすので、患者への身体的及び心理的傷害が削減される。
【0101】
[00110] 様々な態様において、標的部位が脊椎領域を含む場合、液(例えば脊髄液など)の一部をまず標的部位からカニューレ又はニードルを通じて抜き取った後、デポーを投与(例えば、配置、点滴、注入、又は埋込みなど)することができる。標的部位は再水和する(例えば液の再補給)。すると、この水性環境がデポーからの薬物の放出を引き起こす。
【0102】
[00111] 疼痛の治療(例えば神経障害痛管理)及び/又は状態の治療(例えば坐骨神経痛)における使用にデポーが適している一つの例示的態様を図2に示す。図2に概略的に示されているのは、脊椎の背面図及び薬物デポーが挿入されうる部位である。薬物デポーは、カニューレ又はニードルを用いて皮膚34の下、脊椎部位32(例えば、脊椎円板腔、脊柱管、脊椎を囲む軟組織、神経根など)に挿入でき、一つ又は複数の薬物デポー28及び32は脊椎に沿って様々な部位に送達される。このように、いくつかの薬物デポーを埋め込むことになる場合、それらは、位置、正確な間隔、及び薬物分布が最適化されるように埋め込まれる。
【0103】
[00112] 上記のように脊椎部位が示されているが、薬物デポーは皮下の任意の部位に送達できる。例えば、少なくとも一つの筋肉、靱帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎孔空間、脊髄神経根付近、又は脊柱管などであるが、これらに限定されない。
【0104】
[00113] 本発明のスリンダクをベースにした配合処方は、医薬製剤の形態で医薬品として使用できる。製剤は、固体又は液体及び有機又は無機でありうる適切な製薬学的担体と投与する場合に形成されうるもので、非経口又は他の所望の投与に適切な形態にすることができる。当業者には周知の通り、公知の担体は、水、ゼラチン、ラクトース、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、シカリルアルコール(sicaryl alcohol)、タルク、植物油、ベンジルアルコール、ゴム、ろう、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール及び医薬品用のその他の公知担体などであるが、これらに限定されない。
【0105】
[00114] 本発明の別の態様は、疼痛及び/又は炎症に苦しむ哺乳動物の治療法に向けられており、前記方法は、治療上有効な量のスリンダクを皮下の標的部位に投与することを含む。スリンダク(又は製薬学的に許容しうる塩)は、例えば、薬物デポーとして標的組織部位に局所投与できる。
【0106】
[00115] ある態様において、スリンダクは、マイクロ粒子、マイクロスフェア、マイクロカプセル、及び/又はマイクロファイバーを含む複数のデポーに被包されている。
【0107】
[00116] ある態様において、埋込み可能な薬物デポーの製造法を提供する。該方法は、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することを含みうる。
【0108】
[00117] ある態様において、スリンダクは非経口投与に適切である。本明細書において“非経口”という用語は、胃腸管を迂回する投与様式のことで、例えば、静脈内、筋肉内、連続又は間欠注入、腹腔内、胸骨内、皮下、術中、髄腔内、椎間板内、椎間板周囲、硬膜外、脊椎周囲、関節内注射又はそれらの組合せなどである。ある態様において、注射(注入)は髄腔内で、これは脊柱管(脊髄を取り囲む髄腔内空間)への注射のことである。注射は筋肉又は他の組織にもできる。他の態様において、スリンダクは、術中に、開かれた患者の腔内に配置することによって投与される。
【0109】
[00118] 様々な態様において、スリンダクを含む薬物デポーは、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することによって製造できる。
【0110】
[00119] 生体適合性ポリマー(一つ又は複数)、治療薬(一つ又は複数)、及び所望材料から少なくとも薬物デポーの一部を形成するために様々な技術が利用できる。例えば、溶液処理技術及び/又は熱可塑性処理技術などである。溶液処理技術を使用する場合、典型的には、一つ又は複数の溶媒種を含有する溶媒系が選択される。該溶媒系は、一般的に、少なくとも一つの対象成分、例えば生体適合性ポリマー及び/又は治療薬の良溶媒である。溶媒系を構成する特別の溶媒種は、乾燥速度及び表面張力といったその他の特徴に基づいて選ぶこともできる。
【0111】
[00120] 溶液処理技術は、溶媒流延技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、溶媒噴霧技術、浸漬技術、気中懸濁を含む機械的懸濁によるコーティングを用いる技術(例えば流動コーティング)、インクジェット技術及び静電技術などである。必要な場合、所望の放出速度及び所望の厚さを得るために、上記のような技術を反復して又は組み合わせてデポーを構築してもよい。
【0112】
[00121] 様々な態様において、溶媒及び生体適合性ポリマーを含有する溶液を合わせて所望のサイズ及び形状の型に入れる。こうして、バリア層、滑沢層などを含むポリマー性部分が形成できる。所望であれば、溶液にはさらに下記の一つ又は複数:すなわちスリンダク及びその他の治療薬(一つ又は複数)及びその他の任意の添加剤、例えば放射線剤(一つ又は複数)などが溶解又は分散された形態で含まれていてもよい。この結果、溶媒除去後、これらの種を含有するポリマー性マトリックス部分が得られる。他の態様では、溶媒及び溶解又は分散形の治療薬を含有する溶液を、溶液処理技術及び熱可塑性処理技術を含む様々な技術を用いて形成できる既存のポリマー性部分に適用する。すると、治療薬はポリマー性部分に吸収される。
【0113】
[00122] デポー又はその一部を形成するための熱可塑性処理技術は、成形技術(例えば、射出成形、回転成形など)、押出成形(例えば、押出、同時押出、多層押出など)及び流延を含む。
【0114】
[00123] 様々な態様による熱可塑性処理は、一つ又は複数の段階で、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び下記の一つ又は複数:すなわちスリンダク、所望による追加の治療薬(一つ又は複数)、放射線剤(一つ又は複数)などを混合又は配合することを含む。次に、得られた混合物を埋込み可能な薬物デポーに成形する。混合及び成形操作は、そのような目的用の当該技術分野で公知の任意の従来装置を用いて実施できる。
【0115】
[00124] 熱可塑性処理中、そのような処理に付随する高温及び/又は機械的剪断などのために治療薬(一つ又は複数)が分解する可能性がある。例えば、スリンダクは、通常の熱可塑性処理条件下で実質的な分解を受けうる。そこで、処理は、治療薬(一つ又は複数)の実質的分解を防止する修正条件下で実施されるのが好ましい。当然のことながら、熱可塑性処理中に多少の分解は不可避であろうが、分解は一般的に10%以下に制限される。治療薬(一つ又は複数)の実質的分解を防止するために、処理中に制御できる処理条件としては、温度、印加剪断速度、印加剪断応力、治療薬を含有する混合物の滞留時間、及びポリマー性材料と治療薬(一つ又は複数)の混合技術などがある。
【0116】
[00125] 生体適合性ポリマーを治療薬(一つ又は複数)及び任意の追加添加剤と混合又は配合してその実質的に均一な混合物を形成する操作は、当該技術分野で知られている及びポリマー性材料を添加剤と混合するのに従来使用されている任意の装置を用いて実施できる。
【0117】
[00126] 熱可塑性材料が使用される場合、ポリマー溶融物は生体適合性ポリマーを加熱することによって形成でき、これに様々な添加剤(例えば、治療薬(一つ又は複数)、不活性成分など)を混合して混合物を形成することができる。これを行うための一般的方法は、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)の混合物に機械的剪断を加えることである。生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)をこのように混合できる装置は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトル(ross kettle)などのような装置を含む。
【0118】
[00127] 所望であれば(例えば、様々な理由の中でも特に治療薬の実質的分解を防止するために)、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び様々な添加剤のいずれかを最終の熱可塑性混合及び成形プロセスの前に予備混合することもできる。
【0119】
[00128] 例えば、様々な態様において、治療薬(存在していれば)の実質的な分解をもたらすような温度及び機械的剪断条件下で、生体適合性ポリマーを放射線剤(例えば、放射線不透剤)と予備配合する。次に、この予備配合材料を治療薬と低温及び低機械的剪断条件下で混合し、得られた混合物をスリンダク含有薬物デポーに成形する。反対に、別の態様では、生体適合性ポリマーを治療薬と低温及び低機械的剪断条件下で予備配合することもできる。次に、この予備配合材料を同じく低温及び低機械的剪断条件下で例えば放射線不透剤と混合し、得られた混合物を薬物デポーに成形する。
【0120】
[00129] 生体適合性ポリマーと治療薬とその他の添加剤の混合物を達成するのに使用される条件は、例えば、使用される特定の生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)、並びに使用される混合装置のタイプなどのいくつかの要因に依存する。
【0121】
[00130] 一例として、異なる生体適合性ポリマーは通常異なる温度で軟化して混合が促進される。例えば、デポーが、PLGA又はPLAポリマー、放射線不透剤(例えば次炭酸ビスマス)、及び熱及び/又は機械的剪断によって分解されやすい治療薬(例えばスリンダク)を含んで形成される場合、様々な態様において、PGLA又はPLAは、例えば約150℃〜170℃の温度で放射線不透剤と予備混合できる。次に治療薬を予備混合組成物と合わせ、PGLA又はPLA組成物に典型的な温度及び機械的剪断条件よりも実質的に低い条件で更なる熱可塑性処理に付す。例えば、押出機を使用する場合、典型的にはバレル温度、容量生産高を制御して剪断応力を制限すれば、治療薬(一つ又は複数)の実質的分解が防止される。例えば、治療薬と予備混合組成物は、二軸スクリュー押出機を用いて、実質的に低い温度(例えば100〜105℃)で、及び実質的に絞った容量生産高(例えば、全キャパシティの30%未満、これは一般的に200cc/分未満の容量生産高に相当する)を用いて混合/配合することができる。この処理温度はスリンダクの融点をはるかに下回っていることに注意する。なぜならば、これらの温度以上での処理は治療薬の実質的分解をもたらすからである。さらに、ある態様では、処理温度は組成物に含まれるすべての生物活性化合物(治療薬を含む)の融点より低いことにも注意する。配合後、得られたデポーを、同じく低い温度及び剪断条件下で所望の形態に成形する。
【0122】
[00131] 他の態様では、生分解性ポリマー(一つ又は複数)及び一つ又は複数の治療薬は非熱可塑性技術を用いて予備混合される。例えば、生体適合性ポリマーは一つ又は複数の溶媒種を含有する溶媒系に溶解できる。何らかの所望の薬剤(例えば、放射線不透剤、治療薬、又は放射線不透剤と治療薬の両方)も溶媒系に溶解又は分散させることができる。次に得られた溶液/分散物から溶媒を除去すれば固体材料が形成される。次に、得られた固体材料は、所望であれば、粒状化して更なる熱可塑性処理(例えば押出)に付することもできる。
【0123】
[00132] 別の例として、治療薬を溶媒系に溶解又は分散させ、次いでこれを既存の薬物デポー(既存の薬物デポーは溶液及び熱可塑性処理技術を含む様々な技術を用いて形成でき、放射線不透剤及び/又は粘度増強剤を含む様々な添加剤を含みうる)に適用(塗布)することもできる。すると治療薬は薬物デポーの上又は内部に吸収される。上記のように、得られた固体材料は、所望であれば、粒状化して更なる処理に付することもできる。
【0124】
[00133] 典型的には、押出プロセスを使用して、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)、治療薬(一つ又は複数)及び放射線不透剤(一つ又は複数)を含む薬物デポーを形成することができる。同時押出も同様に使用できる。これは、同じ又は異なる層又は領域を含む薬物デポー(例えば、即時及び/又は持続薬物放出を可能にするための液体透過性を有する一つ又は複数のポリマー性マトリックス層又は領域を含む構造)を製造するのに使用できる成形プロセスである。多領域デポーは、同時射出又は逐次射出成形技術のようなその他の処理及び成形技術によって形成することもできる。
【0125】
[00134] 様々な態様において、熱可塑性処理を経て出てきたデポー(例えば、ペレット、ストリップなど)は冷却される。冷却プロセスの例は、空気冷却(空冷)及び/又は冷却浴への浸漬などである。ある態様では、押出デポーの冷却に水浴が用いられる。しかしながら、スリンダクのような水溶性治療薬が使用される場合、浸漬時間は治療薬が浴中に不必要に失われないように最小限に維持されるべきである。
【0126】
[00135] 様々な態様において、浴から取り出した後、周囲空気又は暖気ジェットを用いて直ちに水又は水分を除去することも、デポー表面での薬物の再結晶を防止するので、埋込み又は挿入後の高用量薬物の“初期バースト”又は“ボーラス投与”が制御又は最小限化される(この放出プロフィールが所望でない場合)。
【0127】
[00136] 様々な態様において、薬物デポーは、薬物をポリマーと混合又は噴霧し、そして所望形状にデポーを成形することによって製造できる。様々な態様においては、スリンダクを使用してPLGA又はPEG550ポリマーと混合又は噴霧し、得られたデポーを押出成形し、乾燥させればよい。
【0128】
[00137] 様々な態様において、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。ある態様において、スリンダクは製剤の約5wt%〜約15wt%又は約7.5wt%〜約12.5wt%を構成する。
【0129】
[00138] ある態様において、少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLA)又はポリ(オルトエステル)(POE)又はそれらの組合せを含む。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)は、ポリグリコリド(PGA)及びポリラクチドの混合物を含みうる。ある態様では、該混合物において、ポリラクチドの方がポリグリコリドより多い。ポリマー又はポリマーの一つがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)である様々なその他の態様において、100%ポリラクチド及び0%ポリグリコリド;95%ポリラクチド及び5%ポリグリコリド;90%ポリラクチド及び10%ポリグリコリド;85%ポリラクチド及び15%ポリグリコリド;80%ポリラクチド及び20%ポリグリコリド;75%ポリラクチド及び25%ポリグリコリド;70%ポリラクチド及び30%ポリグリコリド;65%ポリラクチド及び35%ポリグリコリド;60%ポリラクチド及び40%ポリグリコリド;55%ポリラクチド及び45%ポリグリコリド;50%ポリラクチド及び50%ポリグリコリド;45%ポリラクチド及び55%ポリグリコリド;40%ポリラクチド及び60%ポリグリコリド;35%ポリラクチド及び65%ポリグリコリド;30%ポリラクチド及び70%ポリグリコリド;25%ポリラクチド及び75%ポリグリコリド;20%ポリラクチド及び80%ポリグリコリド;15%ポリラクチド及び85%ポリグリコリド;10%ポリラクチド及び90%ポリグリコリド;5%ポリラクチド及び95%ポリグリコリド;並びに0%ポリラクチド及び100%ポリグリコリドが存在する。
【0130】
[00139] ポリラクチドとポリグリコリドの両方を含む様々な態様において、少なくとも95%のポリラクチド;少なくとも90%のポリラクチド;少なくとも85%のポリラクチド;少なくとも80%のポリラクチド;少なくとも75%のポリラクチド;少なくとも70%のポリラクチド;少なくとも65%のポリラクチド;少なくとも60%のポリラクチド;少なくとも55%のポリラクチド;少なくとも50%のポリラクチド;少なくとも45%のポリラクチド;少なくとも40%のポリラクチド;少なくとも35%のポリラクチド;少なくとも30%のポリラクチド;少なくとも25%のポリラクチド;少なくとも20%のポリラクチド;少なくとも15%のポリラクチド;少なくとも10%のポリラクチド;又は少なくとも5%のポリラクチドが存在し;ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)の残りはポリグリコリドである。
【0131】
[00140] ある態様において、生分解性ポリマーは、製剤の少なくとも50wt%、製剤の少なくとも60wt%、製剤の少なくとも70wt%、製剤の少なくとも80wt%、製剤の少なくとも85wt%、製剤の少なくとも90wt%、製剤の少なくとも95wt%又は製剤の少なくとも99wt%を構成する。ある態様においては、少なくとも一つの生分解性ポリマー及びスリンダクだけが医薬製剤の成分である。
【0132】
[00141] ある態様において、少なくとも75%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも85%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも95%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、すべての粒子は約10マイクロメートル〜約2000マイクロメートルのサイズを有する。
【0133】
[00142] ある態様において、少なくとも75%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも85%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも95%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、すべての粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。
【0134】
[00143] ある態様において、スリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。前記スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成し、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する。
【0135】
[00144] ある態様において、疼痛及び/又は炎症の治療法を提供する。これらの方法は、医薬組成物を生体に投与することを含み、前記医薬組成物は、製剤の約20wt%〜約40wt%、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0136】
[00145] ある態様において、スリンダクの配合量が高いものもある。例えば、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%などである。
【0137】
[00146] ゲル中に存在するポリマーの割合はポリマー性組成物の粘度にも影響を及ぼしうる。例えば、ポリマーの重量パーセンテージが高い組成物は、ポリマーの重量パーセンテージが低い組成物よりも通常濃厚で粘稠である。粘度の高い組成物ほどゆっくり流れる傾向にある。そこで、場合によっては低粘度の組成物の方が好適なこともある。ある態様において、ポリマーは製剤の20wt%〜90wt%を構成する。
【0138】
[00147] 様々な態様において、ゲルの分子量は当該技術分野で公知の多数の方法によって変えることができる。ポリマーの分子量は、活性成分の放出速度プロフィール及び/又は送達期間を調節するために変えることができる。一般に、ポリマーの分子量が増大するにつれて下記の一つ又は複数の事項が発生する。すなわち、バースト指数が低くなる、放出プロフィールが平坦になる及び/又は送達期間が長くなる。分子量を変化させるための方法の選択は、典型的にはゲルの組成によって決定される(例えば、ポリマーか非ポリマーか)。例えば、様々な態様において、ゲルが一つ又は複数のポリマーを含む場合、重合度は、ポリマー開始剤(例えば過酸化ベンゾイル)、有機溶媒又は活性剤(例えばDMPT)、架橋剤、重合剤、及び/又は反応時間の量を変化させることによって制御することができる。非制限的例として、ポリマー構成は50:50PLGA〜100PLAを含み、分子量範囲は0.45〜0.8dL/gでありうる。
【0139】
[00148] 適切なゲルポリマーは有機溶媒に可溶でありうる。溶媒中のポリマーの溶解度は、ポリマーの結晶度、疎水性、水素結合及び分子量に応じて変動する。低分子量ポリマーは、通常、高分子量ポリマーよりも容易に有機溶媒に溶解する。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルは、低分子量ポリマーを含むポリマー性組成物よりも迅速に凝固又は固化しやすい。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲル製剤は、低分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルより溶液粘度も高い傾向にある。
【0140】
[00149] 当業者には分かる通り、異なる末端基を有するポリマーのブレンドを有する埋込み可能な弾性デポー組成物を使用すると、得られる製剤は低いバースト指数及び調節された送達期間を有するようになる。例えば、酸(例えばカルボン酸)及びエステル末端基(例えばラウリル、メチル又はエチルエステル末端基)を有するポリマーが使用できる。
【0141】
[00150] さらに、ポリマーを形成する様々なモノマーのコモノマー比(例えば所定のポリマーについてL/G/CL又はG/CL比)を変えることによって、調節されたバースト指数と送達期間を有するデポー組成物が得られる。例えば、L/G比50:50のポリマーを有するデポー組成物は約2日間〜約1ヶ月間の範囲の短い送達期間を有しうる;L/G比65:35のポリマーを有するデポー組成物は約2ヶ月間の送達期間を有しうる;L/G比75:25又はL/CL比75:25のポリマーを有するデポー組成物は約3ヶ月〜約4ヶ月間の送達期間を有しうる;L/G比85:15のポリマー比を有するデポー組成物は約5ヶ月間の送達期間を有しうる;L/CL比25:75のポリマー又はPLAを有するデポー組成物は6ヶ月間以上の送達期間を有しうる;CL/G/L(Gは50%超及びLは10%超)のターポリマーを有するデポー組成物は約1ヶ月間の送達期間を有しうる;そしてCL/G/L(Gは50%未満及びLは10%未満)のターポリマーを有するデポー組成物は6ヶ月間までの期間を有しうる。一般に、CL含有量に比べてG含有量の増大は送達期間を短くするが、G含有量に比べてCL含有量の増大は送達期間を長くする。
【0142】
[00151] このようにして、異なる分子量、末端基及びコモノマー比を持つポリマーのブレンドを有するデポー組成物は、低いバースト指数及び調節された送達期間を有するデポー製剤を創製するのに使用できる。
【0143】
[00152] これらの医薬製剤を投与するに際しては三角包囲(triangulation)法が有効であろう。従って、医薬製剤を含む複数(少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個など)の薬物デポーを標的組織部位(疼痛発生源又は疼痛発生部位としても知られる)の周囲に、標的組織部位が領域内、すなわち製剤2個の場合はその間、又は複数個セットの製剤によって周囲が定められているエリア内のいずれかに入るように配置すればよい。
【0144】
[00153] ある態様において、製剤はわずかに硬く、様々な長さ、幅、直径などを有する。例えば、ある製剤は0.50mmの直径及び4mmの長さを有しうる。粒子サイズは、乳鉢と乳棒、ジェット乾燥又はジェット粉砕などの技術によって変更できることに注意すべきである。
【0145】
[00154] ある態様において、スリンダクは5〜15mg/日、又は7〜12mg/日又は8〜10mg/日の速度で少なくとも3〜25日間放出される。ある態様において、この放出速度は少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間持続する。
【0146】
[00155] ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された625〜2025ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された945〜1620ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された1080〜1325ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。
【0147】
[00156] 標的部位を三角包囲する複数部位にスリンダクを埋め込む場合、ある態様においては、各部位におけるスリンダクの全量は総ミリグラム数の一部(分割したもの)となる。例えば、1296ミリグラムの単回用量を一つの部位に、又は648ミリグラムの二つの分割用量を二つの部位に、又は432ミリグラムの三つの分割用量を組織部位を三角包囲する三つの部位に埋め込むことができる。総用量を生体に有害と思われる量未満に制限することが重要である。しかしながら、ある態様においては、複数の部位がある場合、各部位は単回の適用で投与されるはずの総用量より少ない量しか含有ないだろうが、各部位は独立した放出プロフィールを有することになるので、持続放出が十分な時間にわたって起こるのを確保するために、バイオポリマーの濃度及び物質はそれに応じて調整されるべきであることを覚えておくのは重要なことである。
【0148】
[00157] 本発明の一態様において、スリンダク及び該用量は、約0.001μg/日〜約100mg/日である。さらなるスリンダクの用量は、約0.001μg/日〜約200mg/日;約0.001μg/日〜約100mg/日;約0.001μg/日〜約1mg/日;約0.001μg/日〜約500μg/日;約0.001μg/日〜約100μg/日;約0.025μg/日〜約75μg/日;約0.025μg/日〜約65μg/日;約0.025μg/日〜約60μg/日;約0.025μg/日〜約55μg/日;約0.025μg/日〜約50μg/日;約0.025μg/日〜約45μg/日;約0.025μg/日〜約40μg/日;約0.025μg/日〜約35μg/日;約0.005μg/日〜約30μg/日;約0.005μg/日〜約25μg/日;約0.005μg/日〜約20μg/日;及び約0.005μg/日〜約15μg/日などである。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01μg/日〜約15μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約10μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約5μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約20μg/日である。別の態様において、スリンダクは9.6μg/日を放出する薬物デポーで投与される。
【0149】
[00158] ある態様において、スリンダク又はスリンダクとポリマーを含む薬物デポーが提供される。該ポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン、又はグリコリド−カプロラクトンの一つ又は複数である。
【0150】
[00159] スリンダクの効力は要因が複雑である。スリンダクは強力な分子ではないので、ある態様において、活性成分が約9.6mg/日の速度で所望期間送達できるように十分なスリンダクを提供するのが望ましい。例えば、例示的製剤は、85/15 PLGA 7E+10% mPEG550)中に20%のスリンダク及び100DL 7E中に20%のスリンダクを含む。
【0151】
[00160] 一つの例示的な投与計画において、ラットに0.96μg/日、135日間の持続放出を提供する生分解性ポリマー中の十分なスリンダクを投与する。この期間に投与されるスリンダクの総量は約129.6μgとなる。別の例示的な投与計画において、ヒトに9.6μg/日、135日間の持続放出を提供する生分解性ポリマー中の十分なスリンダクを投与する。この期間に投与されるスリンダクの総量は約1296μgとなる。第三の例示的な投与計画において、動物に2mg/kg/日のスリンダクを少なくとも15日間投与する。
【0152】
[00161] 本発明を一般的に記載してきたが、本発明は下記実施例への下記言及を通じて一層容易に理解できるであろう。下記実施例は例示のために提供されるものであって、特に明記されない限り本発明を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0153】
[00162] 実施例1:例示的製剤
[00163] いくつかの製剤を創製し、以下の表1、表2及び表4にまとめた。
[00164]
【0154】
【表1】
【0155】
[00165] 表1の中のポリマーに関するコードは以下のように説明される。最初の数字はDL−ラクチド(例えばポリラクチド)のグリコリド(例えばポリグリコリド)に対するモノマーのモルパーセント比を表す。最初の数字の後に続く文字コードはポリマーを意味しており、ポリマーの識別子である。ポリマーの文字コードに続く第二の数字は標的IV(固有粘度)指示子で、範囲の中点を10倍したものである(単位dl/g)。いくつかのIV指示子の意味を表3に示す。
【0156】
[00166]
【0157】
【表2】
【0158】
[00167] ポリマーコード内の最後の文字は末端基指示子である。例えば、“E”はエステル末端基を表し、“A”は酸末端基を表す。
[00168] 例えば、100 DL 7Eは、0.60〜0.80dL/gの固有粘度を有するポリマーであり、エステル末端基を有する100%のポリ(DL−ラクチド)を含有する。Lakeshore Biomaterials社(アラバマ州バーミングハム)から入手できる。
【0159】
[00169] 図5及び5の表2に例示的スリンダク製剤のセットを示す。
[00170] スリンダクの薬物配合量は0.4wt%〜30wt%の範囲であった。ポリマーは、PLGA 85/15、75/25、又は50/50、DL、POE、又はDL−PLAなどであった。賦形剤は、mPEG、PEG、mPEG入り硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、パラフィン油、PEG、モノオレイン酸グリセロール、TBO−AC、又は賦形剤なしなどである。賦形剤は、0.001wt%〜、又は0.01wt%〜50wt%、5〜25wt%、又は5〜12wt%の重量パーセンテージで加えることができる。
【0160】
[00171] インビトロ溶出プロフィール(図7〜16に示す)は、約3〜150日にわたって得られた。このことは、例えば坐骨神経痛のような状態における疼痛及び/又は炎症の治療に有用でありうる。
【0161】
[00172] スリンダク製剤の別のバッチ(図17〜18に示す)及びそれらのそれぞれのインビトロ溶出プロフィールが約40〜90日間にわたって示されている。このことは、例えば坐骨神経痛のような状態における疼痛及び/又は炎症の治療に有用でありうる。
【0162】
実施例2:ラットにおける試験
[00173] 発明者らは、ラットの絞扼性神経損傷モデル(Chronic Constriction Injury Model)で5ヶ月間のスリンダク/ポリマー薬物デポーの効能を評価した。動物モデルはBennettモデル(Wistarラット)であった。目的:5ヶ月間のポリマースリンダク溶出デポーが、神経障害痛のラットモデルにおいて、疼痛関連行動反応を改良できるかどうかを調査する。
【0163】
[00174] 実験デザイン:4本のクロム処理されたガット縫合糸を1mm間隔で大腿中央部の総坐骨神経に緩く巻き付けた。各動物は、表4に記載された投与に従って試験物質又は対照物質の処置を受けた。
【0164】
[00175]
【0165】
【表3】
【0166】
[00176] これまで、発明者らは57日間にわたって本試験を実施してきた。以下の二つの試験、すなわち(1)7、14、21、28、35、42、49、及び56日目にHargreaves試験;及び(2)8、15、22、29、36、43、50、及び57日目にvon Frey試験を採用した。これらの試験の結果を図3〜6にまとめた。記載された期間のスリンダクの効能が示されている。これらの結果を図3及び4にまとめた。
【0167】
[00177] 熱性痛覚過敏に関する疼痛行動反応(ベースラインのパーセンテージとして測定)(図3)によれば、0.4mg/kg/日で腹腔内送達されたスリンダクは、非配合ポリマーデポー(85/15 PLGA 対照)と比較した場合、一貫して行動応答を低減したことを示している。全6個のスリンダク配合ポリマーデポーは、非配合デポーと比較した場合、少なくとも一つの時点で疼痛行動応答を低減することができた。ほとんどの製剤は、埋込み時の薬物の初期バースト後、どこかの時点で効能の低下を経験した。しかしながら、27% 85/15 PLGA及び25% DL−PLAは、疼痛をともかく低減するのに数週間かかった。
【0168】
[00178] 機械的アロディニア(異痛)に関する疼痛行動反応(ベースラインのパーセンテージとして測定)によれば、0.4mg/kg/日で腹腔内送達されたスリンダクは、非配合ポリマーデポー(85/15 PLGA 対照)と比較した場合、行動応答を低減したことを示している。全6個のスリンダク配合ポリマーデポーは、非配合デポーと比較した場合、疼痛行動応答を低減することができた。しかしながら、各製剤は、この効果を示すのに数週間かかった。
【0169】
[00179] これらの結果は、様々な薬物配合量のスリンダクは、57日以上の期間、疼痛を軽減、防止、又は治療できることを示している。
[00180] 実施例3
目的:これらの研究の目的は、生分解性ポリマー剤形からのインビボにおける薬物溶出速度を評価し、それを以前に作成されたインビトロデータと比較することであった。
【0170】
研究1:
[00181] 実験法のまとめ:本研究には70匹のラットを使用した。一つのグループは肥満ラットを使用して、正常組織対脂肪組織からの薬物放出がいかに異なるかを調べた。どのラットにも皮下(SQ)インプラントを埋め込んだ。活性ポリマー(薬物含有)を埋め込まれた全ラットは、2個の活性インプラントと、その2個の活性インプラントの間に1個のビヒクルのみのインプラントの埋込みを受けた。2個の活性インプラントは背側正中線の左側に埋め込まれたが、ポリマーのみ(対照)は活性インプラントの間、背側正中線の右側に埋め込まれた。ビヒクルのみの6匹のラットにも、三つ(3個)のインプラントを埋め込んだ。これらのビヒクルのみのラットは、炎症反応を低減しうる全身レベルのスリンダクが全くない状態で、2、4、及び8週目におけるポリマーに対する局所反応を調べるためのものであった。ポリマーペレットは、まず背側正中線の皮膚切開を行い、鈍的切開により側部にSQポケットを創出することによって埋め込んだ。ペレットは開口シリンジを用いて配置された。皮膚の切開部分はスキンステープルを用いて閉じた。埋込み部位は、タトゥーマシンを用いてラインで仕切った(インプラントが注入された正中線の反対側)。埋込み後、ラットを回復させ、予め決められた様々な時点で犠死させた。剖検時、残っている剤形を確認し、その一部を回収した。剤形の回収部分を秤量し、薬物含有量を分析した。死亡時、血液サンプルを心穿刺によって回収し、更なる薬物分析のために血清を単離した。
【0171】
【表4】
【0172】
[00182] 研究2:
実験法のまとめ:本研究には84匹のラットを使用した。グループ2は、Zucker(遺伝性肥満)ラットを使用して、正常組織対脂肪組織からの薬物放出がいかに異なるかを調べた。Zuckerラットには二つの部位にインプラントを埋め込んだ。第一の埋込み部位は背側正中線から約3cm離れた首の基部であった。第二の埋込み部位は後肢のちょうど頭方の側腹部であった。
【0173】
[00183] 残りの群はすべてSprague Dawleyラットを使用した。各ラットに2又は3個の皮下(SQ)インプラントを埋め込んだ(1動物あたり2部位)。各群(1〜4)に異なる活性配合ポリマー製剤を投与した。グループ8〜10には非配合(対照)ポリマー製剤を投与した(1動物あたり3部位)。
【0174】
[00184] ポリマーペレットは、背側正中線の皮膚切開(約2cm長)を行い、鈍的切開により側部にSQポケット(約1cm×1cm)を創出することによって埋め込んだ。ペレットは鉗子を用いて配置された。皮膚の切開部分はスキンステープルを用いて閉じた。ラットを埋込み処置から回復させ、予定のスケジュールに従って、3、7、14、21、28、及び66日目に犠死させた。剖検時、残っている剤形を確認し、一部を回収した。剤形の回収部分を秤量し、薬物含有量を分析した。死亡時、血液サンプルを心穿刺によって回収し(約1mL)、EDTAチューブに移した。EDTA中の血漿を将来の薬物分析のために単離した。
【0175】
【表5】
【0176】
[00185] 各スリンダク製剤を5個ずつ製造し、表5に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
[00186] 各製剤のインビボ対インビトロにおける溶出プロフィールを図19〜21に示す。スリンダクの配合量は20wt%からスタートして25wt%及び30wt%と増加させた。各製剤はスリンダクを約55〜65日間にわたって放出した。図19で、20%のスリンダクを配合した薬物デポーは約35%〜45%の薬物を放出し、一部は60日間以上放出した。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が60日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。インビボ溶出データ(グループ2)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。約3日間の初期バースト期間後、30%〜40%の薬物が溶出した。
【0179】
[00187] 図20では、薬物デポーは25%のスリンダクを配合していた。放出速度は25%スリンダク配合の方が20%スリンダク配合(図19)よりも高かった。最初の数日以内にスリンダクの初期バーストがあった(10〜20%放出)。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が60日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。55〜65日間の終了時点で60〜70%のスリンダクが薬物デポーから溶出していた。インビボ溶出データ(グループ3及び5)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。約3日間の初期バースト期間後55日間の終了時点で、約50%〜約70%の薬物が溶出していた。
【0180】
[00188] 図21では、30%のスリンダクという高い薬物配合量を薬物デポーに使用した。30%のスリンダクを配合した薬物デポーは、55日以上〜60日以上の期間の後、薬物デポーから約85%〜98%の薬物を放出した。放出プロフィールは20日以降はほぼ一貫したままであった。最初の数日以内にスリンダクの初期バーストがあった(約20%〜約55%)。要約すると、薬物デポーの配合量が20%から30%に増加すると、溶出された全薬物の%は、30%までの薬物配合量で100%もの高さにまで増加した。
【0181】
[00189] 図22は、肥満ラット及び平均体重ラットにおけるインビボの血漿中濃度及びインビトロの日放出(daily release)プロフィールを示している。下のグラフは上のグラフの拡大図で、低い方の血漿中濃度の範囲を示している。12個のペレットを埋め込んだが(これは一般的にヒト用量の2倍(6個のペレットが一般的にヒト用量に相当する))、スリンダクの血漿中濃度は比較的低かった。最初の4日以内に初期バーストがあり(Cmaxは約90ng/ml〜300ng/ml)、その後12日目以降55日間以上比較的一貫した放出が見られた。スリンダクのインビトロ日放出は、薬物デポーから約5mcg〜約7mcg/日であった。放出は55日間以上であった。40mcg/日もの高さのボーラス用量の初期バースト効果が最初の3日間におけるピークによって示されている製剤の一つで見られた。
【0182】
実施例4
[00190] 表6に記載されている下記製剤を製造した。
【0183】
【表7】
【0184】
[00191] インビボ対インビトロの溶出プロフィールを図23に示す。薬物デポー中のスリンダク配合量は20wt%であった。各製剤はスリンダクを約57日間にわたって放出した。図23では、20%のスリンダクを配合した薬物デポーは約10%〜20%の薬物を最初の数日間に放出した後、約57日間、約30%〜45%の薬物を放出した。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が57日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。インビボ溶出データ(グループ1及び2)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。55日間の後、35%〜45%の薬物が溶出していた。
【0185】
[00192] 実施例5
[00193] 表7に記載されている下記製剤を製造した。
【0186】
【表8】
【0187】
【表9】
【0188】
[00194] 表7及び8の溶出プロフィールを図24に示す。スリンダク薬物デポーは、最初の3日間に用量の10〜20%を日ベースで溶出という初期バースト効果を有し、およそ5日目以降は定常的で一貫性のあるスリンダクの放出が見られた。約55日間の後、20%〜50%のスリンダクが薬物デポーから溶出した。インビボ溶出データ(グループ3及び4)は、薬物デポーをラットから取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。55日間の後、約50%〜55%の薬物が薬物デポーから溶出していた。
【0189】
[00195] 図25は、肥満ラット及び平均体重ラットにおけるインビボの血漿中濃度及びインビトロの日放出(daily release)プロフィールを示している。12個のペレットを埋め込んだが(これは一般的にヒト用量の2倍(6個のペレットが一般的にヒト用量に相当する))、スリンダクの血漿中濃度は比較的低かった。最初の3日以内に初期バーストがあり(Cmaxは約40ng/ml〜180ng/ml)、その後12日目以降55日間以上比較的一貫した放出が見られた。スリンダクのインビトロ日放出は、薬物デポーから約5mcg〜約40mcg/日であった。放出は100日間以上であった。210mcg/日もの高さのボーラス用量の初期バースト効果が最初の3日間におけるピークによって示されている製剤の一つで見られた。
【0190】
[00196] 本明細書中に記載されている様々な態様に対し、本明細書中の教示の精神又は範囲から離れることなく多様な変更及び変形が可能であることは当業者には明白であろう。従って、様々な態様は、本教示の範囲内で、様々な態様のその他の変更及び変形もカバーするものとする。
【符号の説明】
【0191】
21 膝
22 臀部
23 指
24 親指
25 頸部
26 脊柱
28 薬物デポー
30 脊椎部位
32 薬物デポー
34 皮膚
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2009年3月27日出願の米国特許出願第12/413,236号“生分解性材料中のスリンダク製剤(Sulindac Formulations In A Biodegradable Material)”及び2008年4月18日出願の米国仮特許出願第61/046,246号“生分解性材料中のスリンダク製剤(Sulindac Formulations In A Biodegradable Material)”の出願日の利益を主張する。米国仮特許出願第61/046,246号及び米国特許出願第12/413,236号は、引用によって本開示に援用する。
【背景技術】
【0002】
[0001] 疼痛は患者に多種多様な悪影響を及ぼしうる。痛みは、患者の活動、熟睡、家族や友人との楽しみ、及び飲食を妨害することがある。痛みは患者を怖がらせ、憂鬱な気分にもするので、そのために一般的なリハビリプログラムへの完全参加が妨げられて回復が遅れる可能性すらある。
【0003】
[0002] 適切な疼痛管理(ペインコントロール)は、多様な疾患又は状態を治療中のあらゆる人にとって最も重要なことである。適切な疼痛緩和は、患者に著しい生理学的及び心理学的利益を供与する。効果的な疼痛緩和は、医療/手術/外来患者施設からの早期退院を含む順調で楽しい回復(例えば、気分、睡眠、生活の質など)を意味するだけでなく、慢性疼痛症候群(例えば、線維筋痛症、筋肉痛など)の発症も削減しうる。
【0004】
[0003] 疼痛は、体内における損傷又は疾患の存在を合図するという重要な生物学的機能を果たし、炎症を伴うことも多い(発赤、腫脹、及び/又は灼熱感)。疼痛には急性疼痛及び神経障害痛という二つのカテゴリーがある。急性疼痛は、組織が損傷されている最中又は損傷されたときに経験する痛みのことである。急性疼痛は少なくとも二つの生理学的に有益な目的を果たす。第一に、急性疼痛は、危険な環境的刺激(例えば熱い物体又は鋭利な物体)を、その危険な刺激との接触をやめさせる反射的反応を誘発することによって警告する。第二に、反射的反応で危険な環境的刺激が効果的に回避されないか、又は別の場合に組織の傷害もしくは感染が起きた場合、急性疼痛は回復行動を促進する。例えば、傷害又は感染に伴う急性疼痛は、傷害又は感染の治癒中、損傷された領域を更なる攻撃又は使用から保護するように生体を促す。危険な環境的刺激が取り除かれるか、又は傷害もしくは感染が解消すると、その生理学的目的を果たした急性疼痛は終わる。急性疼痛とは対照的に、神経障害痛は一般に何の有益な目的も果たさない。神経障害痛は、傷害又は感染に伴う疼痛が該傷害又は感染が解消した領域で持続する場合にもたらされる。
【0005】
[0004] 適切な疼痛管理及び/又は炎症管理が必要な疼痛性の疾患又は状態は多数ある。例えば、関節リウマチ、骨関節炎、脊椎円板ヘルニア(すなわち坐骨神経痛)、手根管/足根管症候群、腰痛、下肢痛、上肢痛、がん、組織痛、及び頸部、胸部及び/又は腰部の椎骨又は椎間板、回旋腱板、関節、TMJ(顎関節)、腱、靱帯、筋肉の傷害又は修復に伴う疼痛、脊椎すべり症、狭窄症、椎間板性背痛、及び関節痛などであるが、これらに限定されない。
【0006】
[0005] 一つの特別な疼痛性疾患は坐骨神経痛である。坐骨神経痛は、非常に衰弱性であることが多い慢性疾患で、患者だけでなく、患者の家族、友人及び介護者にも多大な悪影響を及ぼしうる。坐骨神経痛は、脊髄下部(腰部)から下腿後部を通って足部に走る坐骨神経に伴う非常に疼痛性の疾患である。坐骨神経痛は一般的に脱出した椎間板から発症し、これが後に局所免疫系の活性化をもたらす。脱出した椎間板は、神経根を挟むか又は圧縮することによって神経根も損傷させうるので、その領域で更なる免疫系の活性化がもたらされる。この疼痛性疾患の効果的な治療法の開発にかなりの関心が払われてきたが、まだ今日までのところ、坐骨神経痛の現行治療法は部分的効果しか得られていない。
【0007】
[0006] 別の特別な疼痛性疾患は、脊柱管の進行性狭窄がある脊髄狭窄症で、狭窄するにつれてその内部にある神経要素は次第に混雑してくる。最終的に、脊柱管の寸法が小さくなりすぎて、神経要素を著しく圧迫するようになり、疼痛、衰弱、感覚変化、不器用及び神経系の機能不全によるその他の症状を引き起こす。該疾患は、腰痛、下肢痛、下肢衰弱、運動制限及び高い障害率をもたらし、高齢者をしばしば苦しめる。
【0008】
[0007] 脊椎すべり症も別の疼痛性疾患である。脊椎すべり症は腰椎又は頸椎の変位性疾患で、1個の椎体が別の椎体より前方に変位している。脊椎すべり症は外傷性の出来事又は脊柱の変性によって起こりうる。時として、該変位性疾患は、一つ又は複数の椎骨の骨折又は部分的虚脱又は脊柱の円板の変性に付随するか又はそれらによって発生する。このような状態に苦しむ患者は、胸部骨格構造の中等度〜重度の歪み、耐荷重能力の減退、運動性の喪失、極度かつ衰弱性の疼痛を経験することがあり、神経機能の神経学的欠損に苦しむことも多い。
【0009】
[0008] 疼痛を治療するための一つの公知クラスの薬剤はオピオイドである。このクラスの化合物は、疼痛管理のための最も効果的なタイプの薬物の一つとしてよく認識されている。残念なことに、オピオイドは全身投与されるので、患者の廃疾化、呼吸器系の抑制、便秘、並びに鎮静及び高揚といった精神活性作用などの随伴副作用に重大な懸念があり、病状回復及び運動性回復の障害となっている。さらに、これらの副作用のために、医師は典型的にはオピオイドの投与を術後最初の24時間以内に限定している。従って、標的組織部位に直接的な局所疼痛管理を提供する非麻薬性薬物の使用にかなりの関心が払われてきた。
【0010】
[0001] 医療専門家に知られている一つの薬剤はスリンダクで(Sigma社からClinoril(登録商標)として遊離酸の形態で市販されている)、これはアリールアルカン酸クラスの非ステロイド系抗炎症薬として広く認識されている。これは、下記化学式C20H17FO3Sによって表すことができる。スリンダクは、スルフィニルインデンから誘導されるプロドラッグで、体内で活性なNSAID(非ステロイド系抗炎症薬)に変換される。さらに詳しくは、該薬剤は肝酵素によってスルフィドに変換されて胆汁中に排出され、その後腸から再吸収される。このことは、胃腸の副作用を軽減しつつ血中濃度を一定に維持するのに役立つと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[0002] しかしながら、今日までスリンダクは、少なくとも3日間にわたって緩和を提供する徐放性製剤での疼痛及び/又は炎症の効果的な治療法としては評価されていない。そこで、このような用途のための該化合物の効果的な製剤の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0003] 疼痛及び/又は炎症を治療するために投与される、スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を含む組成物及び方法を提供する。生分解性ポリマーに入れた適切な製剤が提供されると、この緩和は少なくとも3日間、少なくとも25日間持続可能である。ある態様において、該緩和は少なくとも50日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間又は少なくとも180日間持続可能である。
【0013】
[0004] 一態様に従って、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。医薬組成物は、例えば薬物デポーの一部でありうる。薬物デポーは、(i)スリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)及び生分解性ポリマー(一つ又は複数)だけからなる;又は(ii)本質的にスリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)及び生分解性ポリマー(一つ又は複数)からなる;又は(iii)スリンダク(あるいは一つ又は複数のその製薬学的に許容しうる塩)、生分解性ポリマー(一つ又は複数)及び一つ又は複数のその他の活性成分、界面活性剤、賦形剤又はその他の成分、又はそれらの組合せを含む、というものであろう。製剤中にその他の活性成分、界面活性剤、賦形剤又はその他の成分、又はそれらの組合せが存在する場合、ある態様では、これらのその他の化合物又はその組合せは、薬物デポーの20wt%未満、16wt%未満、15wt%未満、14wt%未満、13wt%未満、12wt%未満、11wt%未満、10wt%未満、9wt%未満、8wt%未満、7wt%未満、6wt%未満、5wt%未満、4wt%未満、3wt%未満、2wt%未満、1wt%未満又は0.5wt%未満を構成する。
【0014】
[0005] 別の態様に従って、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)、及び少なくとも一つの生分解性ポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する}を含む医薬製剤を提供する。
【0015】
[0006] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、製剤の約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0016】
[0007] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する}を含む。
【0017】
[0008] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーを提供する。該埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つのポリマー{少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、又はD,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む}を含む。
【0018】
[0009] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を治療するための方法を提供し、前記方法は、疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するために薬物デポーを生体(例えば哺乳動物)に埋め込むことを含み、前記薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0019】
[0010] 別の態様に従って、疼痛及び/又は炎症を治療するための方法を提供し、前記方法は、スリンダク及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬組成物を生体に投与することを含み、前記スリンダクは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%を構成する。
【0020】
[0011] 様々な態様の追加の特徴及び利点は、一部は以下の記載に示され、一部は該記載から明らかであるか、又は様々な態様の実施によって学ぶことができる。様々な態様の目的及びその他の利点は、該記載及び添付の特許請求の範囲において特に指摘されている構成要素及び組合せによって認識及び達成されるであろう。
【0021】
[0012] 態様のその他の側面、特徴、利益及び利点は、ある程度、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面を考慮すれば明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】[0013] 図1は、疼痛が起こる部位、及びそれに対してスリンダクを含有する薬物デポーを局所投与できる位置となりうる患者体内のいくつかの一般的位置を示す。
【図2】[0014] 図2は、脊椎及びそれに対してスリンダクを含有する薬物デポーを局所投与できる部位の概略的背面図を示す。
【図3】[0015] 図3は、下記投与に関して、熱刺激に対する足底逃避反応の潜伏時間(反応潜時)をベースラインからのパーセンテージで表したグラフを示す。7、14、21、28、35、42、49、及び56日目におけるスリンダク0.4mg/kg/日 IP、85/15 PLGA 対照、85/15 PLGA−20%、85/15 PLGA−27%、DL−PLA−25%、100−DL−7E−30%、100−DL−7E−20%及び85/15 PLGA−30%。
【図4】[0016] 図4は、8、15、22、29、36、43、50、及び57日目におけるスリンダク0.4mg/kg/日 IP、85/15 PLGA 対照、85/15 PLGA−20%、85/15 PLGA−27%、DL−PLA−25%、100−DL−7E−30%、100−DL−7E−20%及び85/15 PLGA−30%に関する機械的閾値をベースラインからのパーセンテージで表したグラフを示す。
【図5】[0017] 図5は、例示的スリンダク製剤のセットを示す。
【図6】図6は、例示的スリンダク製剤のセットを示す。
【図7】[0018] 図7は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図8】図8は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図9】図9は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図10】図10は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図11】図11は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図12】図12は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図13】図13は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図14】図14は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図15】図15は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図16】図16は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図17】図17は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図18】図18は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出プロフィールを示す。
【図19】[0019] 図19は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図20】図20は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図21】図21は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図22】図22は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図23】図23は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図24】図24は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【図25】図25は、例示的スリンダク製剤のインビトロ溶出対インビボ溶出のプロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0020] 当然のことながら、図面は正確な縮尺率で描かれているわけではない。さらに、図中の物体間の関係も正確な縮尺率ではなく、実際、サイズに関しては逆の関係を有することもある。図面は、示された各物体の構造を理解及び明確にすることを目的としているので、一部の特徴は、構造の特定の特徴を示すために誇張されていることもある。
【0024】
[0021] 本明細書及び添付の特許請求の範囲において、別途記載のない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている成分の量、材料のパーセンテージ又は割合、反応条件、及びその他の数値を表すすべての数字は、すべての場合、“約”という用語によって修飾されていると理解されるべきである。従って、それとは反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に示されている数値パラメーターは近似値で、本発明によって得ようとしている所望の性質に応じて変動しうる。最低限でも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮し、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0025】
[0022] 発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に示されている数値はなるべく正確に報告されている。しかしながら、いずれの数値も元来、それらの各試験測定に見出される標準偏差に必然的に由来する一定の誤差を含有している。さらに、本明細書中に開示されたすべての範囲は、その中に包含されているいずれか及びすべての部分範囲(サブレンジ)を包含すると理解されるべきである。例えば、“1〜10”という範囲は、最小値1及び最大値10の間(これらの数値を含む)にあるいずれか及びすべての部分範囲を含む。すなわち、1以上の最小値及び10以下の最大値を有するいずれか及びすべての部分範囲、例えば5.5〜10を含む。
【0026】
[0023] 定義
[0024] 本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形の“a”、“an”及び“the”は、明示的及び明白に一つの指示対象を限定していない限り、複数の指示対象も含む。従って、例えば“一つの薬物デポー”と言う場合、一つ、二つ、三つ以上の薬物デポーを含む。
【0027】
[0025] “薬物デポー”は、その中のスリンダクを身体に投与するための組成物である。従って、薬物デポーは、所望部位(例えば、患者の円板腔、脊柱管、組織、特に手術部位又はその近傍など)への埋込み及び保持を促進するための物理的構造を含みうる。薬物デポーは薬物自体も含む。
【0028】
[0026] 本明細書中では“薬物”という用語は、一般的に患者の生理学を変更する何らかの物質のことを意味する。“薬物”という用語は、本明細書中では、“治療薬”、“治療上有効な量”、及び“有効医薬成分”又は“API”という用語と互換的に使用されうる。“薬物”製剤は、別途記載のない限り、複数の治療薬を含んでよく、治療薬の組合せの例として二つ以上の薬物の組合せなどがあることは理解されるであろう。薬物は、部位への送達のために治療薬の濃度勾配を提供する。様々な態様において、薬物デポーは、標的部位から約1cmまで、約5cmまで又は約10cmまでの距離の所で、治療薬の最適な薬物濃度勾配を提供し、そしてスリンダクを含む。ある態様において、治療薬は標的部位から少なくとも1cmのところに配置される。
【0029】
[0027] “治療上有効な量”又は“有効量”は、投与された場合、薬物が炎症の抑制、疼痛及び/又は炎症又は痙直の軽減又は緩和、筋弛緩による状態の改良などの生物学的活性の変更をもたらすような量である。患者に投与される用量は、様々な要因、例えば薬物の投与後の薬物動態特性、投与経路、患者の状態及び特徴(性別、年齢、体重、健康、サイズなど)、症状の程度、併用療法、治療の頻度及び所望の効果に応じて、単回投与のことも複数回投与のこともある。ある態様において製剤は即時放出用に設計される。他の態様において製剤は持続放出用に設計される。他の態様において、製剤は一つ又は複数の即時放出表面と一つ又は複数の持続放出表面を含む。
【0030】
[0028] “デポー”は、カプセル、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、マイクロファイバー粒子、ナノスフェア、ナノ粒子、コーティング、マトリックス、ウェハース、ピル、ペレット、エマルジョン、リポソーム、ミセル、ゲル、又は他の薬剤送達用組成物又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。薬物デポーは、薬剤を保持及び投与するポンプを構成しうる。ある態様において、薬物デポーは薬物をデポーから放出させる孔を有する。薬物デポーは、液をデポー内に侵入させることによって薬物を外に押し出す。しかしながら、デポー内への細胞浸潤はデポーの孔径よって防止される。このように、ある態様において、デポーは、組織足場として機能して組織を成長させるようなことがあってはならない。むしろ、薬物デポーは薬物送達のためだけに利用される。ある態様において、薬物デポーの孔は250〜500ミクロン未満である。この孔径だと、細胞が薬物デポーに浸潤し、足場細胞を下ろすのが防止される。従って、この態様では、薬物は液が薬物デポーに入ると薬物デポーから溶出するが、細胞は侵入が防止される。孔がほとんど又は全くないある態様においては、薬物は酵素の作用によって、加水分解作用によって及び/又は人体内のその他の類似機序によって薬物デポーから溶出する。
【0031】
[0029] デポー用の適切な材料は、理想的には製薬学的に許容しうる生分解性及び/又は生体吸収性材料で、好ましくはFDA認可又はGRAS材料である。これらの材料は、ポリマー性又は非ポリマー性でも、合成又は天然でも、又はそれらの組合せであってもよい。
【0032】
[0030] “生分解性”という用語は、薬物デポーのすべて又は一部が、酵素の作用によって、加水分解作用によって及び/又は人体内のその他の類似機序によって、時間経過と共に分解することを含む。様々な態様において、“生分解性”は、デポー(例えばマイクロ粒子、マイクロスフェアなど)が、治療薬の放出後又は放出中に体内で非毒性成分に崩壊又は分解できることを含む。“生体浸食性”とは、デポーが、少なくとも一部は、組織周辺にみられる物質、液体との接触のため、又は細胞作用によって時間経過とともに浸食又は分解されることを意味する。“生体吸収性”とは、デポーが分解され、人体内、例えば細胞又は組織によって吸収されることを意味する。“生体適合性”とは、デポーが標的組織部位で実質的な組織刺激又は壊死を起こさないことを意味する。
【0033】
[0031] “持続放出(徐放)”及び“放出の持続”(延長放出又は制御放出とも呼ばれる)という語句は、本明細書では、ヒト又は他の哺乳動物の体内に導入され、一つ又は複数の治療薬のストリームを予め決められた期間、その予定期間の最初から最後まで所望の治療効果を達成するに足る治療レベルで連続的又は断続的に放出する一つ又は複数の治療薬のことと互換的に使用される。連続的又は断続的な放出ストリームと言う場合、薬物デポー、又はマトリックス又はそれらの成分のインビボでの生分解の結果として、又は治療薬もしくは治療薬のコンジュゲートの代謝変換又は溶解の結果として発生する放出を包含するものとする。
【0034】
[0032] “即時放出”という語句は、本明細書では、体内に導入され、投与された場所で溶解又は吸収が可能な、薬物の溶解又は吸収の遅延又は延長が意図されない一つ又は複数の治療薬のことを言うのに使用される。二つのタイプの製剤(持続放出及び即時放出)は併用することもできる。持続放出及び即時放出製剤は一つ又は複数の同じデポーに入れることができる。様々な態様において、持続放出及び即時放出製剤は別のデポーの一部であってもよい。例えば、スリンダクのボーラス又は即時放出製剤は、標的部位又はその近傍に配置でき、持続放出製剤も同じ部位又はその近傍に配置できる。従って、ボーラスが完全に利用できるようになった後でも、持続放出製剤は目的組織のために活性成分を供給し続けるであろう。
【0035】
[0033] “初期バースト”、“バースト効果”、及び“ボーラス投与”という語句は本明細書では互換的に使用され、デポーが水性液(例えば滑液、脳脊髄液など)と接触後、最初の72時間の間のデポーからの治療薬の放出のことを言う。“バースト効果”は、デポーからの治療薬の放出の増大によるものと考えられている。様々な態様において、薬物デポーは、埋込み後最初の72時間以内に治療薬の初期バースト投与が起こるように設計することができる。代替の態様では、デポー(例えばゲル)はこの初期バースト効果を回避するように設計される。
【0036】
[0034] 疾患又は状態の“治療(treating及びtreatment)”という用語は、疾患又は状態の徴候又は症状を緩和しようとして、患者(ヒト、他の正常又はそれ以外又は他の哺乳動物)に一つ又は複数の薬物を投与することを含みうるプロトコルを実行することを言う。緩和は、疾患又は状態の徴候又は症状の発現後だけでなく発現前にも起こりうる。“治療(treating及びtreatment)”という用語は、疾患又は望ましくない状態の“予防(preventing又はprevention)”も含む。さらに、“治療(treating又はtreatment)”は、徴候又は症状の完全緩和を要求せず、治癒を要求せず、具体的には患者に対してごくわずかな効果しかないプロトコルも含む。“疼痛の低減”は、疼痛の減少を含むが、疼痛の徴候又は症状の完全緩和を要求せず、治癒を要求しない。様々な態様において、疼痛の低減は疼痛のわずかな減少さえも含む。例えば、スリンダクの一つ又は複数の有効用量の投与は、坐骨神経痛、脊椎すべり症、狭窄症などに由来する疼痛及び/又は炎症の症状を予防、治療又は緩和するのに使用できる。
【0037】
[0035] “局所”送達は、一つ又は複数の薬物を、組織内、例えば神経系の神経根又は脳の領域内、又はそれにごく接近した場所(例えば約10cm以内、又は好ましくは約5cm以内)に置く送達を含む。
【0038】
[0036] “哺乳動物”という用語は“哺乳類”に分類される生物のことで、ヒト、その他の霊長類、例えばチンパンジー、類人猿、オランウータン及びサル、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウシ、ウマなどを含むが、これらに限定されない。
【0039】
[0037] “疼痛管理薬物療法”という語句は、疼痛を完全に予防、緩和又は除去するために投与される一つ又は複数の治療薬を含む。これらには、抗炎症薬、筋弛緩薬、鎮痛剤、麻酔薬、麻薬など、及びそれらの組合せが含まれる。
【0040】
[0038] “放出速度(率)プロフィール”という語句は、一定の単位時間に放出される活性成分のパーセンテージのことを言い、例えばmg/時、mg/日、1日10%10日間などによって表される。当業者には分かる通り、放出速度プロフィールは直線でありうるが、必ずしもそうでなくてもよい。非制限的例として、薬物デポーは、スリンダクを一定期間にわたって放出するペレットでありうる。
【0041】
[0039] “固体”という用語は硬い材料を意味することを意図しているが、“半固体”はある程度の柔軟性を有し、それによってデポーを曲げて周囲組織の要件に従わせることが可能となる材料を意味することを意図している。
【0042】
[0040] “標的送達システム”という語句は、疼痛、炎症又はその他の疾患もしくは状態の治療の必要に応じて標的部位又はその近傍に置くことができる一定量の治療薬を有する一つ又は複数の薬物デポー、ゲル又はゲル中に分散されたデポーの送達を提供するシステムのことを言う。
【0043】
[0041] 略語“DLG”は、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
[0042] 略語“DL”は、ポリ(DL−ラクチド)のことである。
【0044】
[0043] 略語“LG”は、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
[0044] 略語“CL”は、ポリカプロラクトンのことである。
【0045】
[0045] 略語“DLCL”は、ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)のことである。
[0046] 略語“LCL”は、ポリ(L−ラクチド−コ−カプロラクトン)のことである。
【0046】
[0047] 略語“PGA”は、ポリグリコリドのことである。
[0048] 略語“PEG”は、ポリ(エチレングリコール)のことである。
[0049] 略語“PLGA”は、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)のことである。
【0047】
[0050] 略語“PLA”は、ポリラクチドのことである。
[0051] 次に、本発明のある態様について詳細に述べ、その例を添付の図面に示す。本発明を例示された態様と共に説明するが、当然のことながら、それらは本発明をそのような態様に限定することを意図したものではない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の範囲内に含まれうるあらゆる代替、変形、及び均等物もカバーするものとする。
【0048】
[0052] スリンダク
[0053] スリンダクについて言及する場合、別途記載のない限り又は文脈から明らかでない限り、発明者らは、スリンダクの製薬学的に許容しうる塩、薬理活性誘導体、又はスリンダクの活性代謝産物のことにも言及していることは理解されよう。本明細書中では、“製薬学的に許容しうる塩”とは、開示化合物(例えばエステル又はアミン)の誘導体のうち、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩の製造によって変更されうるもののことを言う。製薬学的に許容しうる塩の例は、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;カルボン酸のような酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などであるが、これらに限定されない。製薬学的に許容しうる塩は、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩などである。例えば、そのような従来の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、又は硝酸などの無機酸から誘導されるもの;又は酢酸、フッ酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から製造される塩などである。製薬学的に許容しうるものの中には、スリンダクのラセミ混合物((+)−R及び(−)−Sエナンチオマー)又は右旋性及び左旋性異性体のそれぞれも個別に含まれる。スリンダクは、遊離酸又は遊離塩基形でも、長期作用活性のためにペグ化されていてもよい。
【0049】
[0054] 一つのよく知られた市販されているスリンダクの塩は、そのナトリウム塩(例えばSpectrum Chemicalから入手できる)又はスルフィド塩である。
【0050】
[0055] スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩は筋弛緩薬と共に投与できる。筋弛緩薬の例は(例として示すものであり、制限ではない)、塩化アルクロニウム、アトラクリウムベシレート(atracurium bescylate)、バクロフェン、カルバメート、カルボロニウム(carbolonium)、カリソプロドール(carisoprodol)、クロルフェネシン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン(cyclobenzaprine)、ダントロレン(dantrolene)、デカメトニウムブロミド(decamethonium bromide)、ファザジニウム(fazadinium)、ガラミントリエチオジド(gallamine triethiodide)、ヘキサフルオレニウム(hexafluorenium)、メラドラジン(meladrazine)、メフェンシン(mephensin)、メタキサロン(metaxalone)、メトカルバモール、メトクリンヨージド(metocurine iodide)、パンクロニウム、メシル酸プリジノール、スチラメート(styramate)、スキサメトニウム、スキセトニウム(suxethonium)、チオコルチコシド(thiocolchicoside)、チザニジン、トルペリゾン、ツボクアリン(tubocuarine)、ベクロニウム、又はこれらの組合せなどである。
【0051】
[0056] 薬物デポーは、スリンダクのほかにその他の治療薬を含んでいてもよい。治療薬は、様々な態様において、炎症カスケードにおけるTNF−α又はその他のタンパク質の転写又は翻訳をブロックする。適切な治療薬は、インテグリンアンタゴニスト、アルファ−4−ベータ−7インテグリンアンタゴニスト、細胞接着阻害薬、インターフェロンガンマアンタゴニスト、CTLA4−Igアゴニスト/アンタゴニスト(BMS−188667)、CD40リガンドアンタゴニスト、ヒト化抗IL−6 mAb(MRA,Tocilizumab,Chugai)、HMGB−1 mAb(Critical Therapeutics Inc.)、抗IL2R抗体(ダクリズマブ(daclizumab)、バシリシマブ(basilicimab))、ABX(抗IL−8抗体)、組換えヒトIL−10、又はHuMax IL−15(抗IL−15抗体)などであるが、これらに限定されない。
【0052】
[0057] その他の適切な治療薬は、IL−1阻害薬、例えばKineret(登録商標)(アナキンラ){これは、組換え非グリコシル化形のヒトインターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)である}、又はAMG 108{これは、IL−1の作用をブロックするモノクローナル抗体である}などである。治療薬は、グルタミン酸及びアスパラギン酸のような興奮性アミノ酸、グルタミン酸のNMDA受容体、AMPA受容体、及び/又はカイニン酸受容体への結合のアンタゴニスト又は阻害薬も含む。インターロイキン−1受容体アンタゴニスト、サリドマイド(TNF−α放出阻害薬)、サリドマイド類似体(マクロファージによるTNF−α産生を削減する)、骨形成タンパク質(BMP)タイプ2及びBMP−4(TNF−αアクチベーターであるカスパーゼ8の阻害薬)、キナプリル(TNF−αをアップレギュレートするアンギオテンシンIIの阻害薬)、インターフェロン類、例えばIL−11(TNF−α受容体発現を調節する)、及びアウリン−トリカルボン酸(TNF−αを阻害する)は、炎症を低減するための治療薬として有用である。望ましい場合、上記のペグ化形も使用できると考えている。その他の治療薬の例は、NFカッパB阻害薬、例えばグルココルチコイド、抗酸化剤、例えばジチオカルバメート、及びその他の化合物、例えばスルファサラジン、クロニジン及び/又はブピバカインなどである。
【0053】
[0058] 使用に適切な治療薬の例は、抗炎症薬、鎮痛剤、又は骨誘導成長因子又はそれらの組合せなども含むが、これらに限定されない。抗炎症薬は、アパゾン、セレコキシブ、ジクロフェナク、ジフルニサル、エノール酸(ピロキシカム、メロキシカム)、エトドラク、フェナメート(メフェナム酸、メクロフェナム酸)、金、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニメスリド(nimesulide)、サリチレート、スルファサラジン[2−ヒドロキシ−5−[4−[C2−ピリジニルアミノ)スルホニル]アゾ]安息香酸、テポキサリン(tepoxalin)、又はトルメチン、並びに抗酸化剤、例えばジチオカルバメート、ステロイド、例えばフルオシノロン、コルチゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0054】
[0059] 適切な同化成長又は抗異化成長因子は、骨形成タンパク質、成長分化因子、LIM無機化タンパク質、CDMP又は前駆細胞、又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0055】
[0060] 適切な鎮痛剤は、アセトアミノフェン、ブピビカイン(bupivicaine)、リドカイン、オピオイド鎮痛薬、例えばブプレノルフィン、ブトルファノール、デキストロモラミド(dextromoramide)、デゾシン、デキストロプロポキシフェン、ジアモルフィン、フェンタニル、アルフェンタニル(alfentanil)、スフェンタニル(sufentanil)、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ケトベミドン(ketobemidone)、レボメタジル(levomethadyl)、メピリジン(mepiridine)、メタドン、モルヒネ、ナルブフィン、アヘン、オキシコドン、パパベレタム(papaveretum)、ペンタゾシン、ペチジン、フェノペリジン(phenoperidine)、ピリトラミド(piritramide)、デキストロプロポキシフェン、レミフェンタニル(remifentanil)、チリジン(tilidine)、トラマドール、コデイン、ジヒドロコデイン、メプタジノール(meptazinol)、デゾシン、エプタゾシン(eptazocine)、フルピルチン(flupirtine)、アミトリプチリン、カルバマゼピン、ガバペンチン、プレガバリン、又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0056】
[0061] スリンダクデポーに入れられるその他の治療薬は、アルファ受容体アゴニスト(例えばアルファ−1又はアルファ−2受容体アゴニスト又はそれらの組み合わせ)などである。アルファ−1アドレナリン受容体アゴニストの例は、メトキサミン、メチルノルエピネフリン、ノルエピネフリン、メタラミノール、オキシメタゾリン、フェニレフリン、2−(アニリノメチル)イミダゾリン、シネフリン、又はそれらの組合せなどであるが、決してこれらに限定されない。
【0057】
[0062] ある態様において、アルファアドレナリン受容体アゴニストはアルファ−2アドレナリン受容体アゴニストを含む。これは鎮痛薬及び/又は抗炎症薬として作用する。本用途に有用なアルファ−2アドレナリン受容体アゴニストの例は、L−ノルエピネフリン、クロニジン、デキスメデトミジン、アプラクロニジン、メチルドパ、チザニジン、ブリモニジン、キシロメタゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリン、グアンファシン(guanfacine)、グアナベンズ(guanabenz)、グアノキサベンズ(guanoxabenz)、グアネチジン、キシラジン、モキソニジン、ミバゼロール(mivazerol)、リルメニジン(rilmenidine)、UK 14,304、B−HT 933、B−HT 920、オクトパミン又はこれらの組合せなどであるが、決してこれらに限定されない。
【0058】
[0063] その他のアルファアドレナリンアゴニストは、アミデフリン(amidephrine)、アミトラズ(amitraz)、アニソダミン(anisodamine)、アプラクロニジン、シラゾリン(cirazoline)、デトミジン(detomidine)、エピネフリン、エルゴタミン、エチレフリン(etilefrine)、インダニジン、ロフェキシジン(lofexidine)、メデトミジン(medetomidine)、メフェンテルミン、メタラミノール、メトキサミン、ミドドリン(midodrine)、ナファゾリン、ノルエピネフリン、ノルフェネフリン(norfenefrine)、オクトパミン、オキシメタゾリン、フェニルプロパノールアミン、リルメニジン、ロミフィジン(romifidine)、シネフリン、タリペキソール(talipexole)、チザニジン、又はこれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0059】
[0064] スリンダクは非活性成分と共に投与してもよい。これらの非活性成分は、治療薬の担持、安定化及び放出制御といった多機能目的を有しうる。持続放出プロセスは、例えば溶液−拡散メカニズムによるものでも、又は浸食−持続プロセスによって制御されるものでもよい。典型的には、デポーは、生分解性でありうる生体適合性材料で構成された固体又は半固体製剤であろう。
【0060】
[0065] 様々な態様において、非活性成分は、組織部位内で、計画された薬物送達期間と等しい(生分解性成分の場合)又はそれより長い(非生分解性成分の場合)期間、耐久性を有する。例えば、デポー材料は、体温付近〜体温より高いが、治療薬の分解又は崩壊温度より低い融点又はガラス転移温度を有しうる。しかしながら、デポー材料の予め決められた浸食を利用して、担持された治療薬の緩徐な放出を提供することもできる。
【0061】
[0066] ある態様において、薬物デポーは生分解性でないこともある。例えば、薬物デポーは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性弾性オレフィン、コポリエステル、及びスチレン性熱可塑性エラストマー、スチール、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、非鉄金属含有量が高く鉄の相対的比率が低い金属合金、カーボンファイバー、ガラスファイバー、プラスチック、セラミック又はそれらの組合せで構成されていてもよい。典型的には、このようなタイプの薬物デポーは取り出す必要があろう。
【0062】
[0067] 場合によっては、使用後に薬物デポーを取り出す必要を回避するのが望ましいこともあろう。そのような場合、該デポーは生分解性材料で構成されうる。この目的のために利用でき、標的組織又はその近傍に配置された場合に長時間かけて分解又は崩壊することができるという特徴を有する多数の材料がある。生分解性材料の化学機能として、分解プロセスのメカニズムは、加水分解的又は酵素的な性質、又はその両方でありうる。様々な態様において、その分解は、表面で(不均一又は表面浸食)又は薬物送達システムデポー全体にわたって一様に(均一又はバルク浸食)、のいずれかで起こりうる。
【0063】
[0068] 様々な態様において、デポーは、スリンダクの即時放出又は持続放出(徐放)を提供できる生体吸収性、生体吸収性及び/又は生分解性バイオポリマーを含みうる。適切な徐放性バイオポリマーの例は、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(アルファ−ヒドロキシ酸)のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート、ポリオルトエステル、ポリアスピリン、ポリホスファゲン(polyphosphagenes)、コラーゲン、デンプン、予備ゼラチン化デンプン、ヒアルロン酸、キトサン、ゼラチン、アルギネート、アルブミン、フィブリン、ビタミンE類似体、例えばアルファ酢酸トコフェロール(トコフェリル)、d−アルファコハク酸トコフェロール、D,L−ラクチド、L−ラクチド、−カプロラクトン、デキストラン、ビニルピロリドン、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA−g−PLGA、PEGT−PBTコポリマー(ポリアクティブ)、メタクリレート、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、PEO−PPO−PEO(プルロニック)、PEO−PPO−PAAコポリマー、PLGA−PEO−PLGA、PEG−PLG、PLA−PLGA、ポロキサマー407、PEG−PLGA−PEGトリブロックコポリマー、SAIB(スクロースアセテートイソブチレート)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。当業者には分かる通り、mPEGはPLGAの可塑剤として使用できるが、同じ効果を達成するのに他のポリマー/賦形剤を使用してもよい。mPEGは得られた製剤に展性を付与する。賦形剤の例は、mPEG、D−ソルビトール、マルトデキストラン、シクロデキストリン、PEG、MgCO3、パラフィン油、硫酸バリウム、パラフィン油、モノオレイン酸グリセロール、トリブチル−オルト−クエン酸アセチル(CAS:77−90−7)(TBO−ac)又はそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。賦形剤は、存在する場合、例えば約0.05wt%〜約20wt%の量で存在しうる。
【0064】
[0069] 様々な態様において、薬物デポーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−ε−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−ε−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む。
【0065】
[0070] デポーは、所望により不活性材料を含有することもできる。例えば、緩衝剤及びpH調整剤、例えば炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又はリン酸ナトリウム;分解/放出調節剤;薬物放出調整剤;乳化剤;保存剤、例えば塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チメロサール、メチルパラベン、ポリビニルアルコール及びフェニルエチルアルコール;溶解度調整剤;安定剤;及び/又は凝集調節剤などである。デポーを脊髄領域に配置する場合、様々な態様において、該デポーは無菌の保存剤除去材料を含みうる。
【0066】
[0071] デポーは様々なサイズ、形状及び構成であってよい。薬物デポーのサイズ、形状及び構成を決定するに当たって考慮されうるいくつかの要因がある。例えば、サイズ及び形状を考慮することにより、埋込み又は注入部位として選ばれる標的組織部位での薬物デポーの配置が容易になる。さらに、システムの形状及びサイズは、埋込み又は注入後、薬物デポーが動くのを最小限化又は防止するように選ばれるべきである。様々な態様において、薬物デポーは、球形、棒又は繊維のような円筒形、ディスク、フィルム又はシートのような平坦表面などのように成形することができる。柔軟性を考慮すれば薬物デポーの配置が容易になるであろう。様々な態様において、薬物デポーは、様々なサイズであってよい。例えば、薬物デポーは、約0.5mm〜5mmの長さ及び約0.01〜約2mmの直径を有しうる。様々な態様において、薬物デポーは、約0.005〜1.0mm、例えば0.05〜0.75mmの層厚を有しうる。
【0067】
[0072] 様々な態様において、薬物デポーがペレットで構成される場合、切開部位にそれを留置してから該部位を閉じればよい。ペレットは例えば熱可塑性材料で作ることができる。さらに、ペレットとして使用するために有益でありうる特定材料は、徐放性バイオポリマーとして上で特定された化合物などであるが、それらに限定されない。ペレットは、スリンダクをポリマーと混合し、それを押し出すことによって形成できる。
【0068】
[0073] 放射線マーカーを薬物デポー上に含めると、ユーザーはデポーを患者の標的部位に正確に配置できるようになる。これらの放射線マーカーは、ユーザーが部位におけるデポーの移動及び分解を長時間にわたって追跡することも可能にする。この態様において、ユーザーは、多数の画像診断法のいずれかを用いて、デポーを部位に正確に配置できる。そのような画像診断法は、例えばX線イメージング又は蛍光透視法などである。そのような放射線マーカーの例は、バリウム、リン酸カルシウム、及び/又は金属ビーズもしくは粒子などであるが、これらに限定されない。様々な態様において、放射線マーカーは球形又はデポーを囲むリングであろう。
【0069】
[0074] 図1に、疼痛及び/又は炎症の発生部位となりうる患者体内のいくつかの一般的位置を示す。図1に示された位置は、単に、疼痛及び/又は炎症が起こりうる多くの異なる位置の例示にすぎないことは分かるであろう。例えば、疼痛及び/又は炎症は、患者の膝21、臀部22、指23、親指24、頸部25、及び脊柱26で起こりうる。このように、患者は疼痛及び/又は炎症を被りやすく、これらの部位を標的とした疼痛管理薬物療法を必要としうる。
【0070】
[0075] ゲル
[0076] 様々な態様において、ゲルは、約1〜約500センチポアズ(cps)、1〜約200cps、又は1〜約100cpsの範囲の投与前粘度を有する。ゲルを標的部位に投与後、ゲルの粘度は増大し、ゲルは、約1×104〜約6×105ダイン/cm2、又は約2×104〜約5×105ダイン/cm2、又は約5×104〜約5×105ダイン/cm2の範囲の弾性率(ヤング率)を有することになる。
【0071】
[0077] 一態様において、デポーはスリンダクを含む付着性ゲルを含む。スリンダクはゲル全体に均一に分配されている。ゲルは、前に示したように、任意の適切なタイプのものでよいが、配置された後、標的送達部位からゲルが移動しないように十分粘稠であるべきである。ゲルは実際、標的組織部位に“粘着”又は接着すべきである。ゲルは、例えば、標的組織と接触したら、又は標的送達システムから配置されたら固化しうる。標的送達システムは、例えば、シリンジ、カテーテル、ニードル又はカニューレ又はいずれかその他の適切なデバイスでありうる。標的送達システムはゲルを標的組織部位の中又は上に注入できる。治療薬は、ゲルを標的組織部位に配置する前にゲル内に混入すればよい。様々な態様において、ゲルは二成分送達システムの一部であってよく、その二成分が混合されると化学プロセスが活性化されてゲルが形成され、標的組織への粘着又は接着が起きる。
【0072】
[0078] 様々な態様において、送達後に硬化又は硬直するゲルが提供される。典型的には、硬化ゲル製剤は、約1×104〜約3×105ダイン/cm2、又は2×104〜約2×105ダイン/cm2、又は5×104〜約1×105ダイン/cm2の範囲の投与前弾性率を有しうる。投与後の硬化ゲルは(送達後)、ゴム状稠度を有し、約1×104〜約2×106ダイン/cm2、又は約1×105〜約7×105ダイン/cm2、又は約2×105〜約5×105ダイン/cm2の範囲の弾性率を有しうる。
【0073】
[0079] 様々な態様において、ポリマーを含有するようなゲル製剤の場合、ポリマー濃度はゲルが硬化する速度に影響を与えうる(例えば、高いポリマー濃度を有するゲルは低いポリマー濃度を有するゲルより迅速に凝固できる)。様々な態様において、ゲルが硬化した場合、得られたマトリックスは固体であるが、組織の不規則な表面(例えば骨の陥凹及び/又は突起)に沿うことも可能である。
【0074】
[0080] ゲル中に存在するポリマーの割合はポリマー性組成物の粘度にも影響を及ぼしうる。例えば、ポリマーの重量パーセンテージが高い組成物は、ポリマーの重量パーセンテージが低い組成物よりも通常濃厚で粘稠である。粘度の高い組成物ほどゆっくり流れる傾向にある。そこで、場合によっては低粘度の組成物の方が好適なこともある。
【0075】
[0081] 様々な態様において、ゲルの分子量は当該技術分野で公知の多数の方法によって変化させることができる。分子量を変化させるための方法の選択は、典型的にはゲルの組成(例えば、ポリマーか非ポリマーか)によって決定される。例えば、様々な態様において、ゲルが一つ又は複数のポリマーを含む場合、重合度は、ポリマー開始剤(例えば過酸化ベンゾイル)、有機溶媒又は活性剤(例えばDMPT)、架橋剤、重合剤、及び/又は反応時間の量を変化させることによって制御することができる。
【0076】
[0082] 適切なゲルポリマーは有機溶媒に可溶であろう。溶媒中のポリマーの溶解度は、ポリマーの結晶度、疎水性、水素結合及び分子量によって変動する。低分子量ポリマーは、通常、高分子量ポリマーよりも容易に有機溶媒に溶解する。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルは、低分子量ポリマーを含むポリマー性組成物よりも迅速に凝固又は固化しやすい。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲル製剤は、低分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルより高い溶液粘度も有する傾向にある。
【0077】
[0083] ゲルを流動性ゲルであるように設計する場合、それは、ゲルに使用されるポリマーの分子量及び濃度によって、水のような低い粘度からペーストのような高い粘度まで変動させることができる。ゲルの粘度は、ポリマー性組成物を患者の組織にいずれか好都合な技術によって、例えばスプレー、刷毛塗り、点滴、注入又は塗布によって適用できるように変動させることができる。様々なゲル粘度は、組成物を適用するのに使用される技術に合わせて決定される。
【0078】
[0084] 様々な態様において、ゲルは固有粘度(“I.V.”と略し、単位はデシリットル/グラムである)を有する。これは、ゲルの分子量及び分解時間の尺度となる(例えば、高い固有粘度を有するゲルは高い分子量及び長い分解時間を有する)。典型的には、高分子量を有するゲルはより強固なマトリックスを提供し、該マトリックスは分解により時間がかかる。これに対し、低分子量を有するゲルはより迅速に分解し、より柔らかいマトリックスを提供する。様々な態様において、ゲルは、固有粘度で示すと約0.10dL/g〜約1.2dL/ g又は約0.10dL/g〜約0.40dL/gの分子量を有する。
【0079】
[0085] 様々な態様において、ゲルは約300〜約5,000センチポアズ(cp)の粘度を有することができる。他の態様において、ゲルは室温で約5〜約300cps、約10cps〜約50cps、約15cps〜約75cpsの粘度を有することができる。ゲルは、所望により、粘度増強剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びその塩、Carbopol、ポリ−(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ−(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ゼラチン、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、mPEG、PEG1000、PEG1450、PEG3350、PEG4500、PEG8000又はそれらの組合せを有していてもよい。
【0080】
[0086] ある用途にとっては高粘度を有するゲルが望ましいこともあろう。例えば、パテ様の稠度を有するゲルは、骨再生用途にはより好適でありうる。様々な態様において、ゲルにポリマーを使用する場合、ポリマー性組成物は約10wt%〜約90wt%又は約30wt%〜約60wt%のポリマーを含む。
【0081】
[0087] 様々な態様において、ゲルは、合成又は天然由来の高分子量生体適合性弾性ポリマーでできたヒドロゲルである。ヒドロゲルが持つべき望ましい性質は、人体内で機械的ストレス、特に剪断応力及び荷重に迅速に応答する能力である。
【0082】
[0088] 天然源から得られるヒドロゲルは、より生分解性及び生体適合性の傾向が高いので、インビボ用途にとって特に魅力的である。適切なヒドロゲルは、天然ヒドロゲル、例えばゼラチン、コラーゲン、シルク、エラスチン、フィブリン及び多糖由来ポリマー、例えばアガロース、及びキトサン、グルコマンナンゲル、ヒアルロン酸、多糖類、例えば架橋カルボキシル含有多糖類、又はそれらの組合せなどである。合成ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール、アクリルアミド、例えばポリアクリル酸及びポリ(アクリロニトリル−アクリル酸)、ポリウレタン、ポリエチレングリコール(例えばPEG3350、PEG4500、PEG8000)、シリコーン、ポリオレフィン、例えばポリイソブチレン及びポリイソプレン、シリコーンとポリウレタン、ネオプレン、ニトリルのコポリマー、加硫ゴム、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、アクリレート、例えばポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)及びアクリレートとN−ビニルピロリドン、N−ビニルラクタム、ポリアクリロニトリルとのコポリマー、又はそれらの組合せから形成されるものなどであるが、これらに限定されない。ヒドロゲル材料は、必要に応じて、更なる強度を提供するためにさらに架橋させてもよい。異なるタイプのポリウレタンの例は、熱可塑性又は熱硬化性ポリウレタン、脂肪族又は芳香族ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリカーボネート−ウレタン又はシリコーンポリエーテル−ウレタン、又はそれらの組合せなどである。
【0083】
[0089] 様々な態様において、治療薬をゲルに直接混合するより、スリンダクを担持したマイクロスフェアをゲル内に分散させることもできる。一態様において、マイクロスフェアはスリンダクの持続放出を提供する。さらに別の態様において、生分解性であるゲルは、マイクロスフェアがスリンダクを放出するのを防止する。従って、マイクロスフェアは、ゲルから放出されるまでスリンダクを放出しない。例えば、ゲルは標的組織部位(例えば神経根)の周囲に配置されうる。ゲル内に分散されているのは、所望の治療薬を被包した多数のマイクロスフェアである。これらのマイクロスフェアの一部は、ひとたびゲルから放出されると分解し、スリンダクを放出する。
【0084】
[0090] マイクロスフェアは、流体とよく似て、周囲の組織タイプに応じて比較的迅速に分散できるので、スリンダクも分散される。ある態様において、マイクロスフェアの直径は、直径約10〜約200ミクロンの範囲である。ある態様において、それらは直径約20〜約120ミクロンの範囲である。状況によってはこれが望ましいかもしれないが、他の状況では、スリンダクを範囲の明確な標的部位にしっかり拘束しておく方が望ましいこともある。本発明は、治療薬の分散をこのように拘束するために付着性ゲルの使用も想定している。これらのゲルは、例えば、円板腔に、脊柱管に、又は周辺組織に配置できる。
【0085】
[0091] 薬物送達
[0092] 当業者であれば、デポーは、“カニューレ”又は“ニードル”を用いて標的部位に投与できることは分かるであろう。カニューレ又はニードルは、薬物送達デバイス、例えばシリンジ、銃型薬物送達デバイス、又は薬物を標的器官又は解剖学的領域に適用するのに適切ないずれかの医療用デバイスなどの一部でありうる。薬物デポー用デバイスのカニューレ又はニードルは、患者に対する身体的及び心理的傷害が最小限になるように設計されている。
【0086】
[0093] カニューレ又はニードルは、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエーテル(アミド)、PEBA、熱可塑性弾性オレフィン、コポリエステル、及びスチレン性熱可塑性エラストマー、スチール、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、非鉄金属含有量が高く鉄の相対的比率が低い金属合金、カーボンファイバー、ガラスファイバー、プラスチック、セラミック又はそれらの組合せなどの材料から製造できるチューブなどである。カニューレ又はニードルは、所望により一つ又は複数の先細領域を含んでいてもよい。様々な態様において、カニューレ又はニードルは面取りされていてもよい。カニューレ又はニードルは、埋込み部位に応じて患者を正確に処置するのに極めて重要な先端形状も有しうる。先端形状の例は、例えば、Trephine、Cournand、Veress、Huber、Seldinger、Chiba、Francine、Bias、Crawford、偏向チップ、Hustead、Lancet、又はTuoheyなどである。様々な態様において、カニューレ又はニードルは、ノンコアリング(non-coring)で、無用の針刺しを回避するためにそれをカバーする鞘(シース)を有していてもよい。
【0087】
[0094] 中空カニューレ又はニードルの寸法は、とりわけ埋込みの部位に左右される。例えば、硬膜上腔の幅は胸部で約3〜5mm、腰部で約5〜7mmしかない。従って、カニューレ又はニードルは、様々な態様において、これらの特定領域に合わせて設計できる。様々な態様において、カニューレ又はニードルは、経孔的アプローチを用いて、脊椎孔空間、例えば炎症を起こした神経根に沿って挿入され、その状態を治療するために薬物デポーがこの部位に埋め込まれる。典型的には、経孔的アプローチは、椎間孔を通って椎間腔に進入することを含む。
【0088】
[0095] カニューレ又はニードルの長さのいくつかの例は、長さ約50〜150mm、例えば小児の硬膜外に使用する場合約65mm、標準成人の場合約85mm、及び肥満成人患者の場合約110mmなどであるが、これらに限定されない。カニューレ又はニードルの厚さも埋込み部位に左右される。様々な態様において、厚さは、約0.05〜約1.655mmなどであるが、これに限定されない。カニューレ又はニードルのゲージは、ヒト又は動物体内への挿入のために、最大又は最小直径でも、その中間の直径でもよい。最大直径は典型的には約14ゲージであるが、最小直径は約25ゲージである。様々な態様において、ニードル又はカニューレのゲージは約18〜約22ゲージである。
【0089】
[0096] 様々な態様において、薬物デポー及び/又はゲルと同様、カニューレ又はニードルにも皮下の部位又はその近傍の位置を示す線量放射線マーカーが含まれる。そうすると、ユーザーは、多数の画像診断法のいずれかを用いて、部位又はその近傍にデポーを正確に配置できる。そのような画像診断法は、例えばX線イメージング又は蛍光透視法などである。そのような放射線マーカーの例は、バリウム、カルシウム、及び/又は金属ビーズもしくは粒子などであるが、これらに限定されない。
【0090】
[0097] 様々な態様において、ニードル又はカニューレは、超音波、蛍光透視法、x線、又はその他の画像化技術によって視覚化できる透明又は半透明部分を含みうる。そのような態様においては、透明又は半透明部分は放射線不透過材料又は超音波応答トポグラフィーを含んでおり、該材料又はトポグラフィーが存在しないのと比べてニードル又はカニューレのコントラストが増大する。
【0091】
[0098] 薬物デポー、及び/又は薬物を投与するための医療用デバイスは滅菌可能でありうる。様々な態様において、薬物デポーの一つ又は複数の成分、及び/又は薬物投与のための医療用デバイスは、最終包装時のターミナル(終末)滅菌ステップで放射線によって滅菌される。製品のターミナル滅菌は、個々の製品コンポーネントを別々に滅菌し、滅菌環境で最終包装品にまとめることを必要とする無菌プロセスのようなプロセス由来の製品より大きい滅菌保証を提供する。
【0092】
[0099] 典型的には、様々な態様において、ガンマ線がターミナル滅菌ステップに使用される。これは、デバイスに深く透過するガンマ線からのイオン化エネルギーを利用するものである。ガンマ線は微生物の殺菌に非常に効果的で、残留物も残さず、デバイスに放射能を付与するほどのエネルギーも持たない。ガンマ線はデバイスが包装されている場合でも使用でき、ガンマ滅菌は高圧も真空条件も必要としないので、包装シール及びその他のコンポーネントはストレスを受けない。さらに、ガンマ線は、透過性の包装材料の必要性も排除する。
【0093】
[00100] 様々な態様において、電子ビーム(eビーム)放射線もデバイスの一つ又は複数のコンポーネントの滅菌に使用することができる。eビーム放射線は、一般的に低透過及び高線量率を特徴とするイオン化エネルギーの形態を含む。eビーム照射は、微生物の生殖細胞を含めて、接触により様々な化学的及び分子的結合を変更するという点でガンマ処理と類似している。eビーム滅菌用に発生させるビームは、電気の加速及び変換によって発生させた濃縮された高電荷の電子ストリームである。eビーム滅菌は、例えば薬物デポーがゲルに含まれる場合に使用できる。
【0094】
[00101] 他の方法もデポー及び/又はデバイスの一つ又は複数のコンポーネントの滅菌に使用できる。例えば、エチレンオキシドを用いたガス滅菌又はスチーム滅菌などであるが、これらに限定されない。
【0095】
[00102] キット
[00103] 様々な態様において、薬物デポー及び/又は一緒に組み合わされた医療用デバイス(薬物デポー(例えばペレット)を埋め込むのに使用される)、及び追加の部品を含みうるキットが提供される。キットは、第一のコンパートメントに薬物デポー用デバイスを含みうる。第二のコンパートメントは薬物デポーを入れたキャニスター及び局所薬物送達に必要な何らかのその他の器具を含みうる。第三のコンパートメントは、手袋、ドレープ、創傷包帯及び埋込みプロセスの滅菌性を維持するためのその他の操作手順上の備品、並びに取扱説明書を含みうる。第四のコンパートメントは追加のカニューレ及び/又はニードルを含みうる。第五のコンパートメントは放射線イメージング用の薬剤を含みうる。各用具は放射線滅菌されたプラスチック袋に別個に包装されていてよい。キットのカバーには埋込み手順のイラストが付いていてもよく、コンパートメント上には滅菌性を維持するために透明プラスチックカバーがかけられていてもよい。
【0096】
[00104] 投与
[00105] 様々な態様において、スリンダクを含有する薬物デポーは非経口投与できる。非経口投与は、静脈内、筋肉内、連続又は間欠注入、腹腔内、胸骨内、皮下、術中、髄腔内、椎間板内、椎間板周囲、硬膜外、脊椎周囲、関節内又はそれらの組合せの投与などのほか、医薬組成物をカテーテルを通じて標的部位の近くに投与する注入ポンプ、標的部位又はその近傍に挿入できる埋込み可能なミニポンプ、及び/又は1時間あたり一定量の組成物を放出できる又は間欠的なボーラス投与ができる埋込み可能な制御放出デバイス又は徐放性送達システムも含む。
【0097】
[00106] 使用に適切なポンプの一例は、SynchroMed(登録商標)(Medtronic,ミネソタ州ミネアポリス)ポンプである。該ポンプは三つの密閉チャンバを有している。一つのチャンバには電子モジュールとバッテリーが収容されている。二つ目には蠕動ポンプと薬物貯留槽が収容されている。三つ目には、医薬組成物を蠕動ポンプに押し出すのに必要な圧力を供給する不活性ガスが収容されている。ポンプに充填するために、医薬組成物が貯留槽の注入口から拡張式貯留槽に注入される。不活性ガスによって貯留槽への圧力が作り出され、その圧力で医薬組成物はフィルタを通ってポンプ室に押し出される。次に、医薬組成物はポンプ室からデバイスの外のカテーテルに汲み出される。カテーテルは医薬組成物を方向付けて標的部位に配置する。医薬組成物の送達速度はマイクロプロセッサによって制御される。こうすることによって、類似量又は異なる量の医薬組成物を連続的に、特定の時間に、又は設定された間隔で送達するためにポンプを使用することが可能になる。
【0098】
[00107] 本明細書中に記載の方法に適応させるのに適切な、可能性ある薬物送達デバイスは、下記特許に記載のものなどであるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,551,290号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、標的特異的な薬物送達用の医療用カテーテルについて記載されている;米国特許第6,571,125号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、生物学的活性薬剤を制御放出するための埋込み可能な医療用デバイスについて記載されている;米国特許第6,594,880号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、生体の選択部位に治療薬を送達するための実質内注入カテーテルシステムについて記載されている;及び米国特許第5,752,390号(出願人Medtronic、この特許の全開示内容は引用によって本明細書に援用する)、空間部位に等量の薬剤を注入するための埋込み可能なカテーテルについて記載されている。様々な態様において、ポンプは、フィードバック調節送達機能を備えたプレプログラマブル埋込み可能装置、化学物質制御放出用マイクロ貯留槽浸透圧放出システム、液体薬剤送達用小型軽量デバイス、埋込み可能な超小型注入デバイス、埋込み可能なセラミックバルブポンプアセンブリ、又は折畳み可能な液室を備えた埋込み可能注入ポンプと共に適応されうる。Alzet(登録商標)浸透圧ポンプ(Durect Corporation、カリフォルニア州クパチーノ)も、記載の方法に使用するのに適切な、各種のサイズ、ポンプ速度、及び持続期間で入手可能である。
【0099】
[00108] 様々な態様において、治療薬を患者の手術部位に送達するための方法を提供する。該方法は、カニューレを標的組織部位又はその近傍に挿入し、薬物デポーを患者の皮下の標的部位に埋め込み、標的部位にゲルをスプレー、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布して薬物デポーを標的部位に保持又は接着させることを含む。このようにして、薬物デポーの標的部位からの望まざる移動が削減又は排除される。
【0100】
[00109] 様々な態様において、薬物デポーを内部に分散させたゲルを所望部位に投与するには、まず、カニューレ又はニードルを皮膚及び軟組織を通って標的組織部位に挿入し、ゲルを標的部位又はその近傍に投与(例えば、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布など)すればよい。薬物デポーがゲルと別になっている態様においては、まず、カニューレ又はニードルを皮膚及び軟組織を通って注入部位に挿入し、ゲルの一つ又は複数のベース層を標的部位に投与することができる。一つ又は複数のベース層の投与後、薬物デポーをそのベース層の上又は中に埋め込めばよい。その結果、ゲルはデポーを所定の場所に保持できる又は移動を削減できる。必要ならば、次のゲル層(一つ又は複数)を薬物デポーの上に適用してデポーを包囲し、それをさらに所定の場所に保持することもできる。あるいは、薬物デポーを最初に埋め込み、その後それを所定の場所に保持するために、ゲルを薬物デポーの周囲に配置(例えば、刷毛塗り、点滴、注入、又は塗布など)してもよい。ゲルを使用することにより、薬物デポーの正確で精密な埋込みが、患者への最小限の身体的及び心理的傷害で達成できる。ゲルは、薬物デポーを標的部位に縫合する必要性もなくすので、患者への身体的及び心理的傷害が削減される。
【0101】
[00110] 様々な態様において、標的部位が脊椎領域を含む場合、液(例えば脊髄液など)の一部をまず標的部位からカニューレ又はニードルを通じて抜き取った後、デポーを投与(例えば、配置、点滴、注入、又は埋込みなど)することができる。標的部位は再水和する(例えば液の再補給)。すると、この水性環境がデポーからの薬物の放出を引き起こす。
【0102】
[00111] 疼痛の治療(例えば神経障害痛管理)及び/又は状態の治療(例えば坐骨神経痛)における使用にデポーが適している一つの例示的態様を図2に示す。図2に概略的に示されているのは、脊椎の背面図及び薬物デポーが挿入されうる部位である。薬物デポーは、カニューレ又はニードルを用いて皮膚34の下、脊椎部位32(例えば、脊椎円板腔、脊柱管、脊椎を囲む軟組織、神経根など)に挿入でき、一つ又は複数の薬物デポー28及び32は脊椎に沿って様々な部位に送達される。このように、いくつかの薬物デポーを埋め込むことになる場合、それらは、位置、正確な間隔、及び薬物分布が最適化されるように埋め込まれる。
【0103】
[00112] 上記のように脊椎部位が示されているが、薬物デポーは皮下の任意の部位に送達できる。例えば、少なくとも一つの筋肉、靱帯、腱、軟骨、脊椎円板、脊椎孔空間、脊髄神経根付近、又は脊柱管などであるが、これらに限定されない。
【0104】
[00113] 本発明のスリンダクをベースにした配合処方は、医薬製剤の形態で医薬品として使用できる。製剤は、固体又は液体及び有機又は無機でありうる適切な製薬学的担体と投与する場合に形成されうるもので、非経口又は他の所望の投与に適切な形態にすることができる。当業者には周知の通り、公知の担体は、水、ゼラチン、ラクトース、デンプン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、シカリルアルコール(sicaryl alcohol)、タルク、植物油、ベンジルアルコール、ゴム、ろう、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール及び医薬品用のその他の公知担体などであるが、これらに限定されない。
【0105】
[00114] 本発明の別の態様は、疼痛及び/又は炎症に苦しむ哺乳動物の治療法に向けられており、前記方法は、治療上有効な量のスリンダクを皮下の標的部位に投与することを含む。スリンダク(又は製薬学的に許容しうる塩)は、例えば、薬物デポーとして標的組織部位に局所投与できる。
【0106】
[00115] ある態様において、スリンダクは、マイクロ粒子、マイクロスフェア、マイクロカプセル、及び/又はマイクロファイバーを含む複数のデポーに被包されている。
【0107】
[00116] ある態様において、埋込み可能な薬物デポーの製造法を提供する。該方法は、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することを含みうる。
【0108】
[00117] ある態様において、スリンダクは非経口投与に適切である。本明細書において“非経口”という用語は、胃腸管を迂回する投与様式のことで、例えば、静脈内、筋肉内、連続又は間欠注入、腹腔内、胸骨内、皮下、術中、髄腔内、椎間板内、椎間板周囲、硬膜外、脊椎周囲、関節内注射又はそれらの組合せなどである。ある態様において、注射(注入)は髄腔内で、これは脊柱管(脊髄を取り囲む髄腔内空間)への注射のことである。注射は筋肉又は他の組織にもできる。他の態様において、スリンダクは、術中に、開かれた患者の腔内に配置することによって投与される。
【0109】
[00118] 様々な態様において、スリンダクを含む薬物デポーは、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することによって製造できる。
【0110】
[00119] 生体適合性ポリマー(一つ又は複数)、治療薬(一つ又は複数)、及び所望材料から少なくとも薬物デポーの一部を形成するために様々な技術が利用できる。例えば、溶液処理技術及び/又は熱可塑性処理技術などである。溶液処理技術を使用する場合、典型的には、一つ又は複数の溶媒種を含有する溶媒系が選択される。該溶媒系は、一般的に、少なくとも一つの対象成分、例えば生体適合性ポリマー及び/又は治療薬の良溶媒である。溶媒系を構成する特別の溶媒種は、乾燥速度及び表面張力といったその他の特徴に基づいて選ぶこともできる。
【0111】
[00120] 溶液処理技術は、溶媒流延技術、スピンコーティング技術、ウェブコーティング技術、溶媒噴霧技術、浸漬技術、気中懸濁を含む機械的懸濁によるコーティングを用いる技術(例えば流動コーティング)、インクジェット技術及び静電技術などである。必要な場合、所望の放出速度及び所望の厚さを得るために、上記のような技術を反復して又は組み合わせてデポーを構築してもよい。
【0112】
[00121] 様々な態様において、溶媒及び生体適合性ポリマーを含有する溶液を合わせて所望のサイズ及び形状の型に入れる。こうして、バリア層、滑沢層などを含むポリマー性部分が形成できる。所望であれば、溶液にはさらに下記の一つ又は複数:すなわちスリンダク及びその他の治療薬(一つ又は複数)及びその他の任意の添加剤、例えば放射線剤(一つ又は複数)などが溶解又は分散された形態で含まれていてもよい。この結果、溶媒除去後、これらの種を含有するポリマー性マトリックス部分が得られる。他の態様では、溶媒及び溶解又は分散形の治療薬を含有する溶液を、溶液処理技術及び熱可塑性処理技術を含む様々な技術を用いて形成できる既存のポリマー性部分に適用する。すると、治療薬はポリマー性部分に吸収される。
【0113】
[00122] デポー又はその一部を形成するための熱可塑性処理技術は、成形技術(例えば、射出成形、回転成形など)、押出成形(例えば、押出、同時押出、多層押出など)及び流延を含む。
【0114】
[00123] 様々な態様による熱可塑性処理は、一つ又は複数の段階で、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び下記の一つ又は複数:すなわちスリンダク、所望による追加の治療薬(一つ又は複数)、放射線剤(一つ又は複数)などを混合又は配合することを含む。次に、得られた混合物を埋込み可能な薬物デポーに成形する。混合及び成形操作は、そのような目的用の当該技術分野で公知の任意の従来装置を用いて実施できる。
【0115】
[00124] 熱可塑性処理中、そのような処理に付随する高温及び/又は機械的剪断などのために治療薬(一つ又は複数)が分解する可能性がある。例えば、スリンダクは、通常の熱可塑性処理条件下で実質的な分解を受けうる。そこで、処理は、治療薬(一つ又は複数)の実質的分解を防止する修正条件下で実施されるのが好ましい。当然のことながら、熱可塑性処理中に多少の分解は不可避であろうが、分解は一般的に10%以下に制限される。治療薬(一つ又は複数)の実質的分解を防止するために、処理中に制御できる処理条件としては、温度、印加剪断速度、印加剪断応力、治療薬を含有する混合物の滞留時間、及びポリマー性材料と治療薬(一つ又は複数)の混合技術などがある。
【0116】
[00125] 生体適合性ポリマーを治療薬(一つ又は複数)及び任意の追加添加剤と混合又は配合してその実質的に均一な混合物を形成する操作は、当該技術分野で知られている及びポリマー性材料を添加剤と混合するのに従来使用されている任意の装置を用いて実施できる。
【0117】
[00126] 熱可塑性材料が使用される場合、ポリマー溶融物は生体適合性ポリマーを加熱することによって形成でき、これに様々な添加剤(例えば、治療薬(一つ又は複数)、不活性成分など)を混合して混合物を形成することができる。これを行うための一般的方法は、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)の混合物に機械的剪断を加えることである。生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)をこのように混合できる装置は、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、高速ミキサー、ロスケトル(ross kettle)などのような装置を含む。
【0118】
[00127] 所望であれば(例えば、様々な理由の中でも特に治療薬の実質的分解を防止するために)、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び様々な添加剤のいずれかを最終の熱可塑性混合及び成形プロセスの前に予備混合することもできる。
【0119】
[00128] 例えば、様々な態様において、治療薬(存在していれば)の実質的な分解をもたらすような温度及び機械的剪断条件下で、生体適合性ポリマーを放射線剤(例えば、放射線不透剤)と予備配合する。次に、この予備配合材料を治療薬と低温及び低機械的剪断条件下で混合し、得られた混合物をスリンダク含有薬物デポーに成形する。反対に、別の態様では、生体適合性ポリマーを治療薬と低温及び低機械的剪断条件下で予備配合することもできる。次に、この予備配合材料を同じく低温及び低機械的剪断条件下で例えば放射線不透剤と混合し、得られた混合物を薬物デポーに成形する。
【0120】
[00129] 生体適合性ポリマーと治療薬とその他の添加剤の混合物を達成するのに使用される条件は、例えば、使用される特定の生体適合性ポリマー(一つ又は複数)及び添加剤(一つ又は複数)、並びに使用される混合装置のタイプなどのいくつかの要因に依存する。
【0121】
[00130] 一例として、異なる生体適合性ポリマーは通常異なる温度で軟化して混合が促進される。例えば、デポーが、PLGA又はPLAポリマー、放射線不透剤(例えば次炭酸ビスマス)、及び熱及び/又は機械的剪断によって分解されやすい治療薬(例えばスリンダク)を含んで形成される場合、様々な態様において、PGLA又はPLAは、例えば約150℃〜170℃の温度で放射線不透剤と予備混合できる。次に治療薬を予備混合組成物と合わせ、PGLA又はPLA組成物に典型的な温度及び機械的剪断条件よりも実質的に低い条件で更なる熱可塑性処理に付す。例えば、押出機を使用する場合、典型的にはバレル温度、容量生産高を制御して剪断応力を制限すれば、治療薬(一つ又は複数)の実質的分解が防止される。例えば、治療薬と予備混合組成物は、二軸スクリュー押出機を用いて、実質的に低い温度(例えば100〜105℃)で、及び実質的に絞った容量生産高(例えば、全キャパシティの30%未満、これは一般的に200cc/分未満の容量生産高に相当する)を用いて混合/配合することができる。この処理温度はスリンダクの融点をはるかに下回っていることに注意する。なぜならば、これらの温度以上での処理は治療薬の実質的分解をもたらすからである。さらに、ある態様では、処理温度は組成物に含まれるすべての生物活性化合物(治療薬を含む)の融点より低いことにも注意する。配合後、得られたデポーを、同じく低い温度及び剪断条件下で所望の形態に成形する。
【0122】
[00131] 他の態様では、生分解性ポリマー(一つ又は複数)及び一つ又は複数の治療薬は非熱可塑性技術を用いて予備混合される。例えば、生体適合性ポリマーは一つ又は複数の溶媒種を含有する溶媒系に溶解できる。何らかの所望の薬剤(例えば、放射線不透剤、治療薬、又は放射線不透剤と治療薬の両方)も溶媒系に溶解又は分散させることができる。次に得られた溶液/分散物から溶媒を除去すれば固体材料が形成される。次に、得られた固体材料は、所望であれば、粒状化して更なる熱可塑性処理(例えば押出)に付することもできる。
【0123】
[00132] 別の例として、治療薬を溶媒系に溶解又は分散させ、次いでこれを既存の薬物デポー(既存の薬物デポーは溶液及び熱可塑性処理技術を含む様々な技術を用いて形成でき、放射線不透剤及び/又は粘度増強剤を含む様々な添加剤を含みうる)に適用(塗布)することもできる。すると治療薬は薬物デポーの上又は内部に吸収される。上記のように、得られた固体材料は、所望であれば、粒状化して更なる処理に付することもできる。
【0124】
[00133] 典型的には、押出プロセスを使用して、生体適合性ポリマー(一つ又は複数)、治療薬(一つ又は複数)及び放射線不透剤(一つ又は複数)を含む薬物デポーを形成することができる。同時押出も同様に使用できる。これは、同じ又は異なる層又は領域を含む薬物デポー(例えば、即時及び/又は持続薬物放出を可能にするための液体透過性を有する一つ又は複数のポリマー性マトリックス層又は領域を含む構造)を製造するのに使用できる成形プロセスである。多領域デポーは、同時射出又は逐次射出成形技術のようなその他の処理及び成形技術によって形成することもできる。
【0125】
[00134] 様々な態様において、熱可塑性処理を経て出てきたデポー(例えば、ペレット、ストリップなど)は冷却される。冷却プロセスの例は、空気冷却(空冷)及び/又は冷却浴への浸漬などである。ある態様では、押出デポーの冷却に水浴が用いられる。しかしながら、スリンダクのような水溶性治療薬が使用される場合、浸漬時間は治療薬が浴中に不必要に失われないように最小限に維持されるべきである。
【0126】
[00135] 様々な態様において、浴から取り出した後、周囲空気又は暖気ジェットを用いて直ちに水又は水分を除去することも、デポー表面での薬物の再結晶を防止するので、埋込み又は挿入後の高用量薬物の“初期バースト”又は“ボーラス投与”が制御又は最小限化される(この放出プロフィールが所望でない場合)。
【0127】
[00136] 様々な態様において、薬物デポーは、薬物をポリマーと混合又は噴霧し、そして所望形状にデポーを成形することによって製造できる。様々な態様においては、スリンダクを使用してPLGA又はPEG550ポリマーと混合又は噴霧し、得られたデポーを押出成形し、乾燥させればよい。
【0128】
[00137] 様々な態様において、スリンダク(スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成する)、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。ある態様において、スリンダクは製剤の約5wt%〜約15wt%又は約7.5wt%〜約12.5wt%を構成する。
【0129】
[00138] ある態様において、少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLA)又はポリ(オルトエステル)(POE)又はそれらの組合せを含む。ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)は、ポリグリコリド(PGA)及びポリラクチドの混合物を含みうる。ある態様では、該混合物において、ポリラクチドの方がポリグリコリドより多い。ポリマー又はポリマーの一つがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)である様々なその他の態様において、100%ポリラクチド及び0%ポリグリコリド;95%ポリラクチド及び5%ポリグリコリド;90%ポリラクチド及び10%ポリグリコリド;85%ポリラクチド及び15%ポリグリコリド;80%ポリラクチド及び20%ポリグリコリド;75%ポリラクチド及び25%ポリグリコリド;70%ポリラクチド及び30%ポリグリコリド;65%ポリラクチド及び35%ポリグリコリド;60%ポリラクチド及び40%ポリグリコリド;55%ポリラクチド及び45%ポリグリコリド;50%ポリラクチド及び50%ポリグリコリド;45%ポリラクチド及び55%ポリグリコリド;40%ポリラクチド及び60%ポリグリコリド;35%ポリラクチド及び65%ポリグリコリド;30%ポリラクチド及び70%ポリグリコリド;25%ポリラクチド及び75%ポリグリコリド;20%ポリラクチド及び80%ポリグリコリド;15%ポリラクチド及び85%ポリグリコリド;10%ポリラクチド及び90%ポリグリコリド;5%ポリラクチド及び95%ポリグリコリド;並びに0%ポリラクチド及び100%ポリグリコリドが存在する。
【0130】
[00139] ポリラクチドとポリグリコリドの両方を含む様々な態様において、少なくとも95%のポリラクチド;少なくとも90%のポリラクチド;少なくとも85%のポリラクチド;少なくとも80%のポリラクチド;少なくとも75%のポリラクチド;少なくとも70%のポリラクチド;少なくとも65%のポリラクチド;少なくとも60%のポリラクチド;少なくとも55%のポリラクチド;少なくとも50%のポリラクチド;少なくとも45%のポリラクチド;少なくとも40%のポリラクチド;少なくとも35%のポリラクチド;少なくとも30%のポリラクチド;少なくとも25%のポリラクチド;少なくとも20%のポリラクチド;少なくとも15%のポリラクチド;少なくとも10%のポリラクチド;又は少なくとも5%のポリラクチドが存在し;ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)の残りはポリグリコリドである。
【0131】
[00140] ある態様において、生分解性ポリマーは、製剤の少なくとも50wt%、製剤の少なくとも60wt%、製剤の少なくとも70wt%、製剤の少なくとも80wt%、製剤の少なくとも85wt%、製剤の少なくとも90wt%、製剤の少なくとも95wt%又は製剤の少なくとも99wt%を構成する。ある態様においては、少なくとも一つの生分解性ポリマー及びスリンダクだけが医薬製剤の成分である。
【0132】
[00141] ある態様において、少なくとも75%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも85%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも95%の粒子は約10マイクロメートル〜約200マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、すべての粒子は約10マイクロメートル〜約2000マイクロメートルのサイズを有する。
【0133】
[00142] ある態様において、少なくとも75%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも85%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、少なくとも95%の粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。ある態様において、すべての粒子は約20マイクロメートル〜約180マイクロメートルのサイズを有する。
【0134】
[00143] ある態様において、スリンダク、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む医薬製剤を提供する。前記スリンダクは製剤の約20wt%〜約40wt%を構成し、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーは前記製剤の少なくとも80wt%を構成する。
【0135】
[00144] ある態様において、疼痛及び/又は炎症の治療法を提供する。これらの方法は、医薬組成物を生体に投与することを含み、前記医薬組成物は、製剤の約20wt%〜約40wt%、及び少なくとも一つの生分解性ポリマーを含む。
【0136】
[00145] ある態様において、スリンダクの配合量が高いものもある。例えば、少なくとも40wt%、少なくとも50wt%、少なくとも60wt%、少なくとも70wt%、少なくとも80wt%、少なくとも90wt%などである。
【0137】
[00146] ゲル中に存在するポリマーの割合はポリマー性組成物の粘度にも影響を及ぼしうる。例えば、ポリマーの重量パーセンテージが高い組成物は、ポリマーの重量パーセンテージが低い組成物よりも通常濃厚で粘稠である。粘度の高い組成物ほどゆっくり流れる傾向にある。そこで、場合によっては低粘度の組成物の方が好適なこともある。ある態様において、ポリマーは製剤の20wt%〜90wt%を構成する。
【0138】
[00147] 様々な態様において、ゲルの分子量は当該技術分野で公知の多数の方法によって変えることができる。ポリマーの分子量は、活性成分の放出速度プロフィール及び/又は送達期間を調節するために変えることができる。一般に、ポリマーの分子量が増大するにつれて下記の一つ又は複数の事項が発生する。すなわち、バースト指数が低くなる、放出プロフィールが平坦になる及び/又は送達期間が長くなる。分子量を変化させるための方法の選択は、典型的にはゲルの組成によって決定される(例えば、ポリマーか非ポリマーか)。例えば、様々な態様において、ゲルが一つ又は複数のポリマーを含む場合、重合度は、ポリマー開始剤(例えば過酸化ベンゾイル)、有機溶媒又は活性剤(例えばDMPT)、架橋剤、重合剤、及び/又は反応時間の量を変化させることによって制御することができる。非制限的例として、ポリマー構成は50:50PLGA〜100PLAを含み、分子量範囲は0.45〜0.8dL/gでありうる。
【0139】
[00148] 適切なゲルポリマーは有機溶媒に可溶でありうる。溶媒中のポリマーの溶解度は、ポリマーの結晶度、疎水性、水素結合及び分子量に応じて変動する。低分子量ポリマーは、通常、高分子量ポリマーよりも容易に有機溶媒に溶解する。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルは、低分子量ポリマーを含むポリマー性組成物よりも迅速に凝固又は固化しやすい。高分子量ポリマーを含むポリマー性ゲル製剤は、低分子量ポリマーを含むポリマー性ゲルより溶液粘度も高い傾向にある。
【0140】
[00149] 当業者には分かる通り、異なる末端基を有するポリマーのブレンドを有する埋込み可能な弾性デポー組成物を使用すると、得られる製剤は低いバースト指数及び調節された送達期間を有するようになる。例えば、酸(例えばカルボン酸)及びエステル末端基(例えばラウリル、メチル又はエチルエステル末端基)を有するポリマーが使用できる。
【0141】
[00150] さらに、ポリマーを形成する様々なモノマーのコモノマー比(例えば所定のポリマーについてL/G/CL又はG/CL比)を変えることによって、調節されたバースト指数と送達期間を有するデポー組成物が得られる。例えば、L/G比50:50のポリマーを有するデポー組成物は約2日間〜約1ヶ月間の範囲の短い送達期間を有しうる;L/G比65:35のポリマーを有するデポー組成物は約2ヶ月間の送達期間を有しうる;L/G比75:25又はL/CL比75:25のポリマーを有するデポー組成物は約3ヶ月〜約4ヶ月間の送達期間を有しうる;L/G比85:15のポリマー比を有するデポー組成物は約5ヶ月間の送達期間を有しうる;L/CL比25:75のポリマー又はPLAを有するデポー組成物は6ヶ月間以上の送達期間を有しうる;CL/G/L(Gは50%超及びLは10%超)のターポリマーを有するデポー組成物は約1ヶ月間の送達期間を有しうる;そしてCL/G/L(Gは50%未満及びLは10%未満)のターポリマーを有するデポー組成物は6ヶ月間までの期間を有しうる。一般に、CL含有量に比べてG含有量の増大は送達期間を短くするが、G含有量に比べてCL含有量の増大は送達期間を長くする。
【0142】
[00151] このようにして、異なる分子量、末端基及びコモノマー比を持つポリマーのブレンドを有するデポー組成物は、低いバースト指数及び調節された送達期間を有するデポー製剤を創製するのに使用できる。
【0143】
[00152] これらの医薬製剤を投与するに際しては三角包囲(triangulation)法が有効であろう。従って、医薬製剤を含む複数(少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個など)の薬物デポーを標的組織部位(疼痛発生源又は疼痛発生部位としても知られる)の周囲に、標的組織部位が領域内、すなわち製剤2個の場合はその間、又は複数個セットの製剤によって周囲が定められているエリア内のいずれかに入るように配置すればよい。
【0144】
[00153] ある態様において、製剤はわずかに硬く、様々な長さ、幅、直径などを有する。例えば、ある製剤は0.50mmの直径及び4mmの長さを有しうる。粒子サイズは、乳鉢と乳棒、ジェット乾燥又はジェット粉砕などの技術によって変更できることに注意すべきである。
【0145】
[00154] ある態様において、スリンダクは5〜15mg/日、又は7〜12mg/日又は8〜10mg/日の速度で少なくとも3〜25日間放出される。ある態様において、この放出速度は少なくとも50日間、少なくとも90日間、少なくとも100日間、少なくとも135日間、少なくとも150日間、又は少なくとも180日間持続する。
【0146】
[00155] ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された625〜2025ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された945〜1620ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。ある態様の場合、バイオポリマーと共に製剤化された1080〜1325ミリグラムのスリンダクがヒトの標的組織部位又はその近傍に埋め込まれる。
【0147】
[00156] 標的部位を三角包囲する複数部位にスリンダクを埋め込む場合、ある態様においては、各部位におけるスリンダクの全量は総ミリグラム数の一部(分割したもの)となる。例えば、1296ミリグラムの単回用量を一つの部位に、又は648ミリグラムの二つの分割用量を二つの部位に、又は432ミリグラムの三つの分割用量を組織部位を三角包囲する三つの部位に埋め込むことができる。総用量を生体に有害と思われる量未満に制限することが重要である。しかしながら、ある態様においては、複数の部位がある場合、各部位は単回の適用で投与されるはずの総用量より少ない量しか含有ないだろうが、各部位は独立した放出プロフィールを有することになるので、持続放出が十分な時間にわたって起こるのを確保するために、バイオポリマーの濃度及び物質はそれに応じて調整されるべきであることを覚えておくのは重要なことである。
【0148】
[00157] 本発明の一態様において、スリンダク及び該用量は、約0.001μg/日〜約100mg/日である。さらなるスリンダクの用量は、約0.001μg/日〜約200mg/日;約0.001μg/日〜約100mg/日;約0.001μg/日〜約1mg/日;約0.001μg/日〜約500μg/日;約0.001μg/日〜約100μg/日;約0.025μg/日〜約75μg/日;約0.025μg/日〜約65μg/日;約0.025μg/日〜約60μg/日;約0.025μg/日〜約55μg/日;約0.025μg/日〜約50μg/日;約0.025μg/日〜約45μg/日;約0.025μg/日〜約40μg/日;約0.025μg/日〜約35μg/日;約0.005μg/日〜約30μg/日;約0.005μg/日〜約25μg/日;約0.005μg/日〜約20μg/日;及び約0.005μg/日〜約15μg/日などである。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01μg/日〜約15μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約10μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約5μg/日である。別の態様において、スリンダクの用量は、約0.01〜約20μg/日である。別の態様において、スリンダクは9.6μg/日を放出する薬物デポーで投与される。
【0149】
[00158] ある態様において、スリンダク又はスリンダクとポリマーを含む薬物デポーが提供される。該ポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン、又はグリコリド−カプロラクトンの一つ又は複数である。
【0150】
[00159] スリンダクの効力は要因が複雑である。スリンダクは強力な分子ではないので、ある態様において、活性成分が約9.6mg/日の速度で所望期間送達できるように十分なスリンダクを提供するのが望ましい。例えば、例示的製剤は、85/15 PLGA 7E+10% mPEG550)中に20%のスリンダク及び100DL 7E中に20%のスリンダクを含む。
【0151】
[00160] 一つの例示的な投与計画において、ラットに0.96μg/日、135日間の持続放出を提供する生分解性ポリマー中の十分なスリンダクを投与する。この期間に投与されるスリンダクの総量は約129.6μgとなる。別の例示的な投与計画において、ヒトに9.6μg/日、135日間の持続放出を提供する生分解性ポリマー中の十分なスリンダクを投与する。この期間に投与されるスリンダクの総量は約1296μgとなる。第三の例示的な投与計画において、動物に2mg/kg/日のスリンダクを少なくとも15日間投与する。
【0152】
[00161] 本発明を一般的に記載してきたが、本発明は下記実施例への下記言及を通じて一層容易に理解できるであろう。下記実施例は例示のために提供されるものであって、特に明記されない限り本発明を制限することを意図したものではない。
【実施例】
【0153】
[00162] 実施例1:例示的製剤
[00163] いくつかの製剤を創製し、以下の表1、表2及び表4にまとめた。
[00164]
【0154】
【表1】
【0155】
[00165] 表1の中のポリマーに関するコードは以下のように説明される。最初の数字はDL−ラクチド(例えばポリラクチド)のグリコリド(例えばポリグリコリド)に対するモノマーのモルパーセント比を表す。最初の数字の後に続く文字コードはポリマーを意味しており、ポリマーの識別子である。ポリマーの文字コードに続く第二の数字は標的IV(固有粘度)指示子で、範囲の中点を10倍したものである(単位dl/g)。いくつかのIV指示子の意味を表3に示す。
【0156】
[00166]
【0157】
【表2】
【0158】
[00167] ポリマーコード内の最後の文字は末端基指示子である。例えば、“E”はエステル末端基を表し、“A”は酸末端基を表す。
[00168] 例えば、100 DL 7Eは、0.60〜0.80dL/gの固有粘度を有するポリマーであり、エステル末端基を有する100%のポリ(DL−ラクチド)を含有する。Lakeshore Biomaterials社(アラバマ州バーミングハム)から入手できる。
【0159】
[00169] 図5及び5の表2に例示的スリンダク製剤のセットを示す。
[00170] スリンダクの薬物配合量は0.4wt%〜30wt%の範囲であった。ポリマーは、PLGA 85/15、75/25、又は50/50、DL、POE、又はDL−PLAなどであった。賦形剤は、mPEG、PEG、mPEG入り硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、パラフィン油、PEG、モノオレイン酸グリセロール、TBO−AC、又は賦形剤なしなどである。賦形剤は、0.001wt%〜、又は0.01wt%〜50wt%、5〜25wt%、又は5〜12wt%の重量パーセンテージで加えることができる。
【0160】
[00171] インビトロ溶出プロフィール(図7〜16に示す)は、約3〜150日にわたって得られた。このことは、例えば坐骨神経痛のような状態における疼痛及び/又は炎症の治療に有用でありうる。
【0161】
[00172] スリンダク製剤の別のバッチ(図17〜18に示す)及びそれらのそれぞれのインビトロ溶出プロフィールが約40〜90日間にわたって示されている。このことは、例えば坐骨神経痛のような状態における疼痛及び/又は炎症の治療に有用でありうる。
【0162】
実施例2:ラットにおける試験
[00173] 発明者らは、ラットの絞扼性神経損傷モデル(Chronic Constriction Injury Model)で5ヶ月間のスリンダク/ポリマー薬物デポーの効能を評価した。動物モデルはBennettモデル(Wistarラット)であった。目的:5ヶ月間のポリマースリンダク溶出デポーが、神経障害痛のラットモデルにおいて、疼痛関連行動反応を改良できるかどうかを調査する。
【0163】
[00174] 実験デザイン:4本のクロム処理されたガット縫合糸を1mm間隔で大腿中央部の総坐骨神経に緩く巻き付けた。各動物は、表4に記載された投与に従って試験物質又は対照物質の処置を受けた。
【0164】
[00175]
【0165】
【表3】
【0166】
[00176] これまで、発明者らは57日間にわたって本試験を実施してきた。以下の二つの試験、すなわち(1)7、14、21、28、35、42、49、及び56日目にHargreaves試験;及び(2)8、15、22、29、36、43、50、及び57日目にvon Frey試験を採用した。これらの試験の結果を図3〜6にまとめた。記載された期間のスリンダクの効能が示されている。これらの結果を図3及び4にまとめた。
【0167】
[00177] 熱性痛覚過敏に関する疼痛行動反応(ベースラインのパーセンテージとして測定)(図3)によれば、0.4mg/kg/日で腹腔内送達されたスリンダクは、非配合ポリマーデポー(85/15 PLGA 対照)と比較した場合、一貫して行動応答を低減したことを示している。全6個のスリンダク配合ポリマーデポーは、非配合デポーと比較した場合、少なくとも一つの時点で疼痛行動応答を低減することができた。ほとんどの製剤は、埋込み時の薬物の初期バースト後、どこかの時点で効能の低下を経験した。しかしながら、27% 85/15 PLGA及び25% DL−PLAは、疼痛をともかく低減するのに数週間かかった。
【0168】
[00178] 機械的アロディニア(異痛)に関する疼痛行動反応(ベースラインのパーセンテージとして測定)によれば、0.4mg/kg/日で腹腔内送達されたスリンダクは、非配合ポリマーデポー(85/15 PLGA 対照)と比較した場合、行動応答を低減したことを示している。全6個のスリンダク配合ポリマーデポーは、非配合デポーと比較した場合、疼痛行動応答を低減することができた。しかしながら、各製剤は、この効果を示すのに数週間かかった。
【0169】
[00179] これらの結果は、様々な薬物配合量のスリンダクは、57日以上の期間、疼痛を軽減、防止、又は治療できることを示している。
[00180] 実施例3
目的:これらの研究の目的は、生分解性ポリマー剤形からのインビボにおける薬物溶出速度を評価し、それを以前に作成されたインビトロデータと比較することであった。
【0170】
研究1:
[00181] 実験法のまとめ:本研究には70匹のラットを使用した。一つのグループは肥満ラットを使用して、正常組織対脂肪組織からの薬物放出がいかに異なるかを調べた。どのラットにも皮下(SQ)インプラントを埋め込んだ。活性ポリマー(薬物含有)を埋め込まれた全ラットは、2個の活性インプラントと、その2個の活性インプラントの間に1個のビヒクルのみのインプラントの埋込みを受けた。2個の活性インプラントは背側正中線の左側に埋め込まれたが、ポリマーのみ(対照)は活性インプラントの間、背側正中線の右側に埋め込まれた。ビヒクルのみの6匹のラットにも、三つ(3個)のインプラントを埋め込んだ。これらのビヒクルのみのラットは、炎症反応を低減しうる全身レベルのスリンダクが全くない状態で、2、4、及び8週目におけるポリマーに対する局所反応を調べるためのものであった。ポリマーペレットは、まず背側正中線の皮膚切開を行い、鈍的切開により側部にSQポケットを創出することによって埋め込んだ。ペレットは開口シリンジを用いて配置された。皮膚の切開部分はスキンステープルを用いて閉じた。埋込み部位は、タトゥーマシンを用いてラインで仕切った(インプラントが注入された正中線の反対側)。埋込み後、ラットを回復させ、予め決められた様々な時点で犠死させた。剖検時、残っている剤形を確認し、その一部を回収した。剤形の回収部分を秤量し、薬物含有量を分析した。死亡時、血液サンプルを心穿刺によって回収し、更なる薬物分析のために血清を単離した。
【0171】
【表4】
【0172】
[00182] 研究2:
実験法のまとめ:本研究には84匹のラットを使用した。グループ2は、Zucker(遺伝性肥満)ラットを使用して、正常組織対脂肪組織からの薬物放出がいかに異なるかを調べた。Zuckerラットには二つの部位にインプラントを埋め込んだ。第一の埋込み部位は背側正中線から約3cm離れた首の基部であった。第二の埋込み部位は後肢のちょうど頭方の側腹部であった。
【0173】
[00183] 残りの群はすべてSprague Dawleyラットを使用した。各ラットに2又は3個の皮下(SQ)インプラントを埋め込んだ(1動物あたり2部位)。各群(1〜4)に異なる活性配合ポリマー製剤を投与した。グループ8〜10には非配合(対照)ポリマー製剤を投与した(1動物あたり3部位)。
【0174】
[00184] ポリマーペレットは、背側正中線の皮膚切開(約2cm長)を行い、鈍的切開により側部にSQポケット(約1cm×1cm)を創出することによって埋め込んだ。ペレットは鉗子を用いて配置された。皮膚の切開部分はスキンステープルを用いて閉じた。ラットを埋込み処置から回復させ、予定のスケジュールに従って、3、7、14、21、28、及び66日目に犠死させた。剖検時、残っている剤形を確認し、一部を回収した。剤形の回収部分を秤量し、薬物含有量を分析した。死亡時、血液サンプルを心穿刺によって回収し(約1mL)、EDTAチューブに移した。EDTA中の血漿を将来の薬物分析のために単離した。
【0175】
【表5】
【0176】
[00185] 各スリンダク製剤を5個ずつ製造し、表5に示す。
【0177】
【表6】
【0178】
[00186] 各製剤のインビボ対インビトロにおける溶出プロフィールを図19〜21に示す。スリンダクの配合量は20wt%からスタートして25wt%及び30wt%と増加させた。各製剤はスリンダクを約55〜65日間にわたって放出した。図19で、20%のスリンダクを配合した薬物デポーは約35%〜45%の薬物を放出し、一部は60日間以上放出した。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が60日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。インビボ溶出データ(グループ2)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。約3日間の初期バースト期間後、30%〜40%の薬物が溶出した。
【0179】
[00187] 図20では、薬物デポーは25%のスリンダクを配合していた。放出速度は25%スリンダク配合の方が20%スリンダク配合(図19)よりも高かった。最初の数日以内にスリンダクの初期バーストがあった(10〜20%放出)。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が60日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。55〜65日間の終了時点で60〜70%のスリンダクが薬物デポーから溶出していた。インビボ溶出データ(グループ3及び5)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。約3日間の初期バースト期間後55日間の終了時点で、約50%〜約70%の薬物が溶出していた。
【0180】
[00188] 図21では、30%のスリンダクという高い薬物配合量を薬物デポーに使用した。30%のスリンダクを配合した薬物デポーは、55日以上〜60日以上の期間の後、薬物デポーから約85%〜98%の薬物を放出した。放出プロフィールは20日以降はほぼ一貫したままであった。最初の数日以内にスリンダクの初期バーストがあった(約20%〜約55%)。要約すると、薬物デポーの配合量が20%から30%に増加すると、溶出された全薬物の%は、30%までの薬物配合量で100%もの高さにまで増加した。
【0181】
[00189] 図22は、肥満ラット及び平均体重ラットにおけるインビボの血漿中濃度及びインビトロの日放出(daily release)プロフィールを示している。下のグラフは上のグラフの拡大図で、低い方の血漿中濃度の範囲を示している。12個のペレットを埋め込んだが(これは一般的にヒト用量の2倍(6個のペレットが一般的にヒト用量に相当する))、スリンダクの血漿中濃度は比較的低かった。最初の4日以内に初期バーストがあり(Cmaxは約90ng/ml〜300ng/ml)、その後12日目以降55日間以上比較的一貫した放出が見られた。スリンダクのインビトロ日放出は、薬物デポーから約5mcg〜約7mcg/日であった。放出は55日間以上であった。40mcg/日もの高さのボーラス用量の初期バースト効果が最初の3日間におけるピークによって示されている製剤の一つで見られた。
【0182】
実施例4
[00190] 表6に記載されている下記製剤を製造した。
【0183】
【表7】
【0184】
[00191] インビボ対インビトロの溶出プロフィールを図23に示す。薬物デポー中のスリンダク配合量は20wt%であった。各製剤はスリンダクを約57日間にわたって放出した。図23では、20%のスリンダクを配合した薬物デポーは約10%〜20%の薬物を最初の数日間に放出した後、約57日間、約30%〜45%の薬物を放出した。インビトロのデータは一般的にインビボのデータと相関し、最初の3日間にスリンダクの初期バーストがあった後、より一貫した放出が57日まであった(インビトロ溶出の測定にはPBS及びSDS入りPBSを使用)。インビボ溶出データ(グループ1及び2)は、薬物デポーを取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。55日間の後、35%〜45%の薬物が溶出していた。
【0185】
[00192] 実施例5
[00193] 表7に記載されている下記製剤を製造した。
【0186】
【表8】
【0187】
【表9】
【0188】
[00194] 表7及び8の溶出プロフィールを図24に示す。スリンダク薬物デポーは、最初の3日間に用量の10〜20%を日ベースで溶出という初期バースト効果を有し、およそ5日目以降は定常的で一貫性のあるスリンダクの放出が見られた。約55日間の後、20%〜50%のスリンダクが薬物デポーから溶出した。インビボ溶出データ(グループ3及び4)は、薬物デポーをラットから取り出し、薬物デポーに残っている%薬物を測定することによって得た。55日間の後、約50%〜55%の薬物が薬物デポーから溶出していた。
【0189】
[00195] 図25は、肥満ラット及び平均体重ラットにおけるインビボの血漿中濃度及びインビトロの日放出(daily release)プロフィールを示している。12個のペレットを埋め込んだが(これは一般的にヒト用量の2倍(6個のペレットが一般的にヒト用量に相当する))、スリンダクの血漿中濃度は比較的低かった。最初の3日以内に初期バーストがあり(Cmaxは約40ng/ml〜180ng/ml)、その後12日目以降55日間以上比較的一貫した放出が見られた。スリンダクのインビトロ日放出は、薬物デポーから約5mcg〜約40mcg/日であった。放出は100日間以上であった。210mcg/日もの高さのボーラス用量の初期バースト効果が最初の3日間におけるピークによって示されている製剤の一つで見られた。
【0190】
[00196] 本明細書中に記載されている様々な態様に対し、本明細書中の教示の精神又は範囲から離れることなく多様な変更及び変形が可能であることは当業者には明白であろう。従って、様々な態様は、本教示の範囲内で、様々な態様のその他の変更及び変形もカバーするものとする。
【符号の説明】
【0191】
21 膝
22 臀部
23 指
24 親指
25 頸部
26 脊柱
28 薬物デポー
30 脊椎部位
32 薬物デポー
34 皮膚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーであって、前記埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの重量を基にして約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と、前記スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間放出することができる少なくとも一つの生分解性ポリマーとを含む埋込み可能な薬物デポー。
【請求項2】
前記スリンダクが、薬物デポーの約5wt%〜約15wt%を構成する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項3】
前記少なくとも一つの生分解性ポリマーが、薬物デポーの少なくとも60wt%を構成する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項4】
前記薬物デポーが坐骨神経痛の疼痛を軽減、防止又は治療するために使用される、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項5】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項6】
少なくとも一つの生分解性ポリマーがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含み、前記ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)はポリグリコリド及びポリラクチドの混合物を含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項7】
前記混合物が、ポリグリコリドより多くのポリラクチドを含み、スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3〜180日間にわたって放出する、請求項6に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項8】
前記スリンダクがスリンダクナトリウムを含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項9】
薬物デポーが、(i)皮下の部位でボーラス用量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩;及び(ii)少なくとも50日間にわたる有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を放出する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項10】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーが、前記薬物デポーの少なくとも80wt%を構成する、請求項1に記載の疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポー。
【請求項11】
疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーであって、前記埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と少なくとも一つのポリマーとを含み、前記少なくとも一つのポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、又はD,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトンの一つ又は複数を含み、そして前記薬物デポーはスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間にわたって放出することができる埋込み可能な薬物デポー。
【請求項12】
疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するための方法であって、前記方法は、そのような治療を必要とする患者に、疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するために薬物デポーを埋め込むことを含み、前記薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と少なくとも一つの生分解性ポリマーとを含み、そして前記薬物デポーはスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間にわたって放出することができる方法。
【請求項13】
前記スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩が、薬物デポーの約5wt%〜約15wt%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーが、薬物デポーの少なくとも60wt%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つの生分解性ポリマーがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含み、前記ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)はポリグリコリド及びポリラクチドの混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、ポリグリコリドより多くのポリラクチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スリンダクがスリンダクナトリウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
一つ又は複数の薬物デポーが、疼痛発生源を三角包囲する複数の部位に埋め込まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポーの製造法であって、前記方法は、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、そして該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することを含む方法。
【請求項1】
疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーであって、前記埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの重量を基にして約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と、前記スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間放出することができる少なくとも一つの生分解性ポリマーとを含む埋込み可能な薬物デポー。
【請求項2】
前記スリンダクが、薬物デポーの約5wt%〜約15wt%を構成する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項3】
前記少なくとも一つの生分解性ポリマーが、薬物デポーの少なくとも60wt%を構成する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項4】
前記薬物デポーが坐骨神経痛の疼痛を軽減、防止又は治療するために使用される、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項5】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項6】
少なくとも一つの生分解性ポリマーがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含み、前記ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)はポリグリコリド及びポリラクチドの混合物を含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項7】
前記混合物が、ポリグリコリドより多くのポリラクチドを含み、スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3〜180日間にわたって放出する、請求項6に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項8】
前記スリンダクがスリンダクナトリウムを含む、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項9】
薬物デポーが、(i)皮下の部位でボーラス用量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩;及び(ii)少なくとも50日間にわたる有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を放出する、請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポー。
【請求項10】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)又はポリ(オルトエステル)又はそれらの組合せを含み、前記少なくとも一つの生分解性ポリマーが、前記薬物デポーの少なくとも80wt%を構成する、請求項1に記載の疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポー。
【請求項11】
疼痛及び/又は炎症を、そのような治療を必要とする患者において軽減、防止又は治療するための埋込み可能な薬物デポーであって、前記埋込み可能な薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と少なくとも一つのポリマーとを含み、前記少なくとも一つのポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、D−ラクチド、D,L−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、又はD,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトンの一つ又は複数を含み、そして前記薬物デポーはスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間にわたって放出することができる埋込み可能な薬物デポー。
【請求項12】
疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するための方法であって、前記方法は、そのような治療を必要とする患者に、疼痛及び/又は炎症を軽減、防止又は治療するために薬物デポーを埋め込むことを含み、前記薬物デポーは、薬物デポーの約20wt%〜約40wt%の量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩と少なくとも一つの生分解性ポリマーとを含み、そして前記薬物デポーはスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩を少なくとも3日間にわたって放出することができる方法。
【請求項13】
前記スリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩が、薬物デポーの約5wt%〜約15wt%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記生分解性ポリマーが、薬物デポーの少なくとも60wt%を構成する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの生分解性ポリマーが、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリラクチド、ポリグリコリド、D−ラクチド、L−ラクチド、D,L−ラクチド、D,L−ラクチド−カプロラクトン、グリコリド−カプロラクトン、D,L−ラクチド−グリコリド−カプロラクトン又はそれらの組合せを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも一つの生分解性ポリマーがポリ(乳酸−コ−グリコール酸)を含み、前記ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)はポリグリコリド及びポリラクチドの混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記混合物が、ポリグリコリドより多くのポリラクチドを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記スリンダクがスリンダクナトリウムを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
一つ又は複数の薬物デポーが、疼痛発生源を三角包囲する複数の部位に埋め込まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の埋込み可能な薬物デポーの製造法であって、前記方法は、生体適合性ポリマーと治療上有効量のスリンダク又はその製薬学的に許容しうる塩とを組み合わせ、そして該組合せから埋込み可能な薬物デポーを形成することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公表番号】特表2011−517699(P2011−517699A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505247(P2011−505247)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/041042
【国際公開番号】WO2009/129510
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/041042
【国際公開番号】WO2009/129510
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(591007804)メドトロニック,インコーポレイテッド (243)
【住所又は居所原語表記】710Medtronic Parkway,Minneapolis,Minnesota 55432,U.S.A
【出願人】(506298792)ウォーソー・オーソペディック・インコーポレーテッド (366)
【Fターム(参考)】
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