説明

生分解性樹脂積層体およびその製造方法

【課題】生分解性の特性を維持しつつ、加工性にも優れた、生分解性樹脂を含有してなる積層体を提供する。
【解決手段】生分解性樹脂を含有してなる樹脂層を有する生分解性樹脂積層体であって、積層体のヒートシール強度が10N/15mm以上である積層体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂を含有する樹脂層を有する積層体およびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料品や医薬品などの包装資材や積層紙で作られたカップ、トレー、カートンに代表される積層体の加工品は広く使用されている。このような加工品は、耐水性、耐薬品性、防水性、表面平滑性、光沢性、保香性、加工性等を向上させるため、紙単独で使用する場合よりも、紙の片面あるいは両面にプラスチックを積層して使用する場合が多い。紙に積層するプラスチックとしては、一般にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等が用いられており、プラスチック以外にアルミニウム箔を積層する場合もある。
【0003】
ポリオレフィン等の汎用樹脂は燃焼の際の発熱量が高いことから、使用後に廃棄されたプラスチック製品を焼却処理すると、焼却炉を傷めるおそれがある。そのため、一般的にはプラスチック製品は埋め立てられているが、プラスチックは分解せずにそのままの形で残るため、埋立処理場の寿命短縮が問題視されている。また、ゴミとして自然環境中に散乱した場合においても分解性が乏しいため、環境汚染や景観を損ねる原因となっている。
【0004】
また、近年の環境問題の意識の高まりから、積層紙の中でも牛乳パックなどは回収するシステムが構築され、紙の再利用が進んでいるが、その他の積層紙についてはほとんど進まず焼却処理されているのが実情である。この回収は積層紙をアルカリ水溶液中に浸漬し、ポリオレフィンをはがすという非常に面倒で人手とコストを要する工程となるためである。
【0005】
これらの事情を背景に、生分解性樹脂を積層紙に応用する試みがなされており、例えば特許文献1には、鎖長延長剤(カップリング剤)を用い特定の粘度範囲まで高分子量化した生分解性の脂肪族ポリエステルの積層体が開示されている。更に、特許文献2では、カップリング剤を使用せずに加工中の樹脂圧を制御することにより積層体を得る方法が開示されている。
【特許文献1】特開平6−171050号公報
【特許文献2】特開2006−272712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討によれば、特許文献1に開示されている方法で樹脂を製造し、積層紙に適用する場合において、実用的な接着強度を得るためには比較的高温で成形する必要があり、特に鎖長延長剤の作用にてウレタン結合が導入されている樹脂を用いると、ウレタン結合の熱分解により、発煙や発泡という現象を引き起こし、成形できないという問題が明らかとなった。同様に、特許文献2に開示されている方法においても、いまだ満足の行く成形条件が見出されていないのが現状である。したがって、より詳細な製造条件を設定することが望まれていた。
【0007】
また、従来のポリオレフィン系の積層体は香気成分の吸着が問題となっており、逆に、香気成分に対して吸着性が少なく保香性に優れたポリエチレンテレフタレート系の積層体では、ヒートシール性が不足するという問題があった。そのためこれらを両立する性能を持った積層紙の開発が待ち望まれていた。
【0008】
そこで本発明は、生分解性の特性を維持しつつ加工性にも優れた、生分解性樹脂を含有してなる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の物性の樹脂を採用することによって、優れた加工性が得られることを見出した。また、特定の種類の樹脂を採用することで、優れた加工性と保香性とを両立できることも見出した。
【0010】
本発明の第一の態様は、生分解性樹脂を含有してなる樹脂層を有する生分解性樹脂積層体であって、下記方法(A)で測定された積層体のヒートシール強度が、10N/15mm以上である積層体を提供して前記課題を解決するものである。
(方法(A):設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で2つの前記積層体の前記樹脂層面同士を接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作成し、引張り速度300mm/minでテンシロン型万能試験機によりヒートシール強度を測定する。)
【0011】
この発明によれば、生分解性と加工性に優れた積層体を提供することができる。
【0012】
この態様において、更に下記方法(B)で測定された積層体のヒートシール強度が、4N/15mm以上であることが好ましい。
(方法(B):設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で積層体の樹脂層とクラフト紙とを接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作成し、引張り速度300mm/minでテンシロン型万能試験機によりヒートシール強度を測定する。)
【0013】
このようにすることによって、より加工性に優れた積層体を提供することができる。
【0014】
この態様において、樹脂層は、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルである生分解性樹脂からなる、または、該脂肪族ポリエステルと他の生分解性樹脂との樹脂組成物からなることが好ましい。
【0015】
ここで、「からなる」とは、樹脂の種類としての他の樹脂成分を含まないことを言い、生分解性樹脂中に意図せずに含まれている微量の他の樹脂成分や、樹脂中に含まれる任意の添加剤成分は含有されていてもよいものとする。
【0016】
このようにすることによって、優れた加工性と保香性を両立した積層体とすることができる。
【0017】
また、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂は、ポリ乳酸または脂肪族・芳香族系ポリエステルであることが好ましい。
【0018】
このようにすることによって、より加工性に優れた積層体とすることができる。
【0019】
また、脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量は0.90質量%以下であることが好ましい。
【0020】
このようにすることによって、より加工性に優れた積層体を提供することができる。
【0021】
また、樹脂層は、酸化防止剤および/または滑剤を含むことが好ましく、滑剤としては、脂肪酸金属塩であり、脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸が炭素数12以上30以下の炭素鎖を有し、前記脂肪酸金属塩を構成する金属が周期表の第3周期から第4周期のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、遷移金属類のいずれかであることがより好ましい。
【0022】
このようにすることによって、より加工性に優れた積層体とすることができる。
【0023】
また、積層体は、基材を有することが好ましく、基材としては、紙、不織布、ポリ乳酸フィルム、ポリグリコール酸フィルムから選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
【0024】
このようにすることによって、特に生分解性に優れた積層体とすることができる。
【0025】
本発明の第二の態様は、少なくともジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルを含有してなる樹脂層を有する積層体の製造方法であって、樹脂層が、以下の(1)〜(6)を満たす条件で、押出コーティング法により成形されることを特徴とする、積層体の製造方法を提供して前記課題を解決するものである。
(1)樹脂層におけるジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの配合量が、樹脂層に含まれる生分解性樹脂全量を100質量部として、65質量部以上。
(2)溶融押出機のダイスの温度が230℃以上300℃以下。
(3)前記ダイス直下の樹脂温度が前記ダイス設定温度の±35℃。
(4)基材に樹脂層をラミネートするために、基材と樹脂層を冷却ロールとニップロールとの間で押圧する際のニップ圧が0.2MPa以上0.45MPa以下。
(5)前記ダイス出口から前記冷却ロールに接触するまでの距離であるエアギャップが50mm以上120mm以下。
(6)原料樹脂のMI(メルトインデックス;190℃、2.16Kg荷重)が3g/10min以上20g/10min以下であり、ダイス出口における溶融樹脂のMIが6g/10min以上35g/10min以下。
【0026】
この発明によれば、優れた加工性と保香性を両立した、高品質な積層体を効率よく製造することができる。
【0027】
この態様において、脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量は0.90質量%以下であることが好ましい。
【0028】
このようにすることによって、より加工性を優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、生分解性を有しながらも優れた加工性を有する、包装材料用途に適した積層体を提供することができる。また、生分解性樹脂成分をジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルや該脂肪族ポリエステルを含む組成物とすれば、香気成分に対する保香性にも優れることから、特に食品包装材料用途に適した積層体とすることができる。更に、本発明の第2の態様によれば、加工時の発煙や、モーター負荷、冷却ロールへの張り付き等が低減できるため、加工中の臭気や接着力の不足などの従来からの課題であった問題を克服しつつ、効率的に高品質の積層体を製造することができる。
【0030】
本発明のこのような作用および利得は、次に説明する発明を実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の生分解性樹脂積層体(以下単に積層体とも言う。)は、少なくとも生分解性樹脂を含有してなる樹脂層を有するものである。以下、まず樹脂層となる生分解性樹脂について説明し、その後、それを用いた本発明の積層体について詳細に説明する。
【0032】
(1)生分解性樹脂
樹脂層の主成分となる生分解性樹脂としては、生分解性を有する樹脂であれば制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの生分解性樹脂も用いることができる。また、生分解性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の組み合わせ、および比率で併用してもよい。更に、生分解性樹脂は、一部または全てがバイオマス資源から得られる原料を用いて製造されたものであってもよい。
【0033】
生分解性樹脂としては、具体的には、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族・芳香族ポリエステル、4−ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアスパラギン酸等のポリアミノ酸樹脂、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリエーテル樹脂、セルロースおよびプルラン等の多糖類、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。中でも、成形加工性が良好であるため、脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0034】
なお、生分解性樹脂は、これらの例に限定されるわけではなく、その製造方法も、公知のいずれの技術を用いて製造してもよく、市販の生分解性樹脂を用いてもよい。例えば、脂肪族ポリエステル樹脂、脂肪族・芳香族ポリエステルを例に挙げるならば、三菱化学社製GS Pla(登録商標)、昭和高分子社製ビオノーレ(登録商標)、三井化学社製レイシア(登録商標)、BASF社製エコフレックス(登録商標)、ノバモント社製マタビー(登録商標)等が挙げられる。
【0035】
本発明において好ましい脂肪族ポリエステルとしては、より具体的には、主たる構成成分が脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸であるものや、ポリ乳酸、ポリカプロラクタムのように脂肪族オキシカルボン酸が主たる構成成分であるものが例示される。好ましくは、主たる構成成分が脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のものである。
【0036】
すなわち、本発明において生分解性樹脂に好適な脂肪族ポリエステルは、ジオール単位(ジオールまたはその誘導体から形成される構成単位)と、ジカルボン酸単位(ジカルボン酸またはその誘導体から形成される構成単位)とを必須の構成単位とする。ここで、ジオール単位およびジカルボン酸単位については、それぞれ本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。また、ジオール単位およびジカルボン酸単位は、いずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0037】
中でも、ジオール単位としては、下記式(I)で表わされるジオールまたはその誘導体(以下適宜、ジオールおよびその誘導体を「ジオール成分」という。)から形成されるものが好ましく、ジカルボン酸単位としては下記式(II)で表わされるジカルボン酸またはその誘導体(以下適宜、ジカルボン酸およびその誘導体を「ジカルボン酸成分」という。)から形成されるものが好ましい。
【0038】
【化1】

【0039】
(式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基を表わす。また、式(II)において、Rは、2価の脂肪族炭化水素基を表わし、nは0または1を表わす。)
【0040】
式(I)において、Rは、鎖中に酸素原子を有していてもよい2価の脂肪族炭化水素基であり、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。また、分岐鎖を有していても、有していなくてもよい。
【0041】
の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、Rが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rの炭素数は通常2以上、また、通常10以下、好ましくは6以下である。一方、Rが脂環式炭化水素基である場合、Rの炭素数は通常3以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
【0042】
式(I)のジオールの誘導体の例としては、酢酸とのエステル化合物などが挙げられる。
【0043】
上記式(I)で表されるジオールおよびその誘導体の具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が好適に挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、特に1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0044】
式(II)において、Rは2価の脂肪族炭化水素基であり、鎖状脂肪族炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。また、分岐鎖を有していても、有していなくてもよい。
【0045】
の炭素数も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2以上、また、通常48以下である。但し、Rが鎖状脂肪族炭化水素基である場合、Rとしては、−(CH−で表わされる2価の鎖状脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、mは通常1以上、また、通常10以下、好ましくは6以下の整数である。
【0046】
また、Rが脂環式炭化水素基である場合、Rの炭素数は、通常3以上、好ましくは4以上、また、通常10以下、好ましくは8以下である。
【0047】
上記式(II)のジカルボン酸の誘導体の例としては、上記式(II)のジカルボン酸の低級アルコールエステルや酸無水物などが挙げられる。中でも、炭素数1〜4の低級アルコールエステルもしくは酸無水物が好ましい。
【0048】
上記式(II)で表されるジカルボン酸およびその誘導体の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、へプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカンニ酸、テトラデカン二酸、ペンタデカンニ酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、マレイン酸、フマル酸、1,6−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の通常、炭素数が2以上48以下の鎖状あるいは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの誘導体、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル等の低級アルコールとのエステル、無水コハク酸、無水アジピン酸等の酸無水物も挙げられる。中でも、得られる脂肪族ポリエステルの物性の面から、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの酸無水物、およびこれらの低級アルコールとのエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。
【0049】
上記式(II)で表されるジカルボン酸およびその誘導体は、原料が石油由来でも植物由来でもよい。COの排出量の削減に寄与できることから特には植物由来のものであることが好ましい。例えば、ジカルボン酸およびその誘導体の原料としては、植物原料から変換されたコハク酸またはこれらの酸無水物、およびこれらの低級アルコールとのエステルが好ましい。
【0050】
本発明に用いられる生分解性樹脂として好適な脂肪族ポリエステルには、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記のジオール単位およびジカルボン酸単位以外の他の構成単位を含有させるようにしてもよい。
【0051】
ジオール単位およびジカルボン酸単位以外の他の構成単位としては、例えば、脂肪族オキシカルボン酸単位が挙げられる。この脂肪族オキシカルボン酸単位としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族オキシカルボン酸およびその誘導体(以下適宜、「脂肪族オキシカルボン酸成分」という。)により形成される構成単位であれば特に限定はなく、環状のものも、鎖状のものも使用できる。
【0052】
脂肪族オキシカルボン酸成分としては、例えば、α,ω−ヒドロキシカルボン酸、α−ヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、これらのオキシカルボン酸のエステルやラクトン類、ラクチド、あるいはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であってもよい。
【0053】
ラクトン類の具体例としては、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトン等のラクトン;4−メチルカプロラクトン、2,2,4−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン等のメチル化ラクトンなどが挙げられる。
【0054】
オキシカルボン酸としては、例えば、下記式(III)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸が挙げられる。
【0055】
【化2】

【0056】
(式(III)において、Rは、上記の式(II)におけるRと同様の置換基を表わす。)
【0057】
上記式(III)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸の中では、下記式(IV)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸が好ましい。
【0058】
【化3】

(式(IV)において、Rは、水素原子または炭素数1〜10の直鎖もしくは分岐アルキル基を表わす。)
【0059】
中でも特に、下記式(V)で表わされる脂肪族オキシカルボン酸が、重合反応性向上効果が認められる点で好ましい。
【0060】
【化4】

(式(V)において、pは、0または1〜10の整数を表わし、好ましくは0または1〜5の整数を表わす。)
【0061】
オキシカルボン酸、特に、脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、4−ヒドロキシシクロヘキサンカルボン酸、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルボン酸等も挙げられる。また、更には、これらの低級アルキルエステル、分子内エステルなどの誘導体も挙げられる。
【0062】
これらの化合物に光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。
【0063】
これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸である。なお、乳酸の形態としては、30〜95質量%の水溶液が、容易に入手することができるので好ましく使用される。
【0064】
これら脂肪族オキシカルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0065】
脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位を含有する場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100質量部に対して、通常0.1質量部以上、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、また、通常100質量部以下、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲の下限を下回ると柔軟性の付与や重合反応性の向上に対する添加効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると本発明の積層体の製造時における臭気が問題になったり、結晶化温度の低温化により離ロール性が悪くなったりするおそれがある。
【0066】
また、脂肪族ポリエステルには、3官能基以上を有する多官能成分単位として、3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位および脂肪族多価オキシカルボン酸単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の単位を存在させることも好ましい。これにより、脂肪族ポリエステルの溶融張力が向上し、積層体への加工性を向上させることができる。なお、多官能成分単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0067】
多官能成分単位を形成する3官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基2個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に有するタイプと、(ii)カルボキシル基1個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に有するタイプとに分かれるが、いずれのタイプも使用可能である。(i)のタイプの具体例としてはリンゴ酸等から形成される構成単位が挙げられ、(ii)のタイプの具体例としてグリセリン酸等から形成される構成単位が挙げられる。
【0068】
同様に、多官能成分単位を形成する4官能の脂肪族オキシカルボン酸単位は、(i)カルボキシル基3個とヒドロキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプと、(ii)カルボキシル基2個とヒドロキシル基2個とを同一分子中に共有するタイプと、(iii)ヒドロキシル基3個とカルボキシル基1個とを同一分子中に共有するタイプとに分かれるが、いずれのタイプも使用可能である。具体例としてはクエン酸や酒石酸から形成される単位が挙げられる。
【0069】
多官能成分単位を使用する場合、その使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、脂肪族ジカルボン酸単位100モルに対し、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上、また、通常5モル以下、好ましくは2.5モル以下、より好ましくは1モル以下用いるようにする。この範囲の下限を下回ると、本発明の積層体を押出ラミネートによって製造する場合、製造時における溶融膜のネックイン(押出機のT−ダイから出た溶融膜の幅が基材と接するまでの空間で狭くなる現象を言い、T−ダイ出口の溶融膜の幅と基材上にラミネートされたラミネート膜の幅との差で示す。)が大きくなったり、耳部の膜厚と中心部の厚みの差が大きくなり、安定した製品が得られなかったりするという問題がある。また、上限を上回ると反応中ゲル化する可能性が増大したり、押出機のモーターへの負荷が著しく増加し、成形性が劣ったりするなどの問題があるので好ましくない。
【0070】
脂肪族ポリエステルの製造方法は、ポリエステルの製造に関する公知の方法が採用できる。また、この際の重縮合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。また、通常は、エステル化反応を進行させた後、減圧操作を行うことによって更に重合度を高めることができる。
【0071】
脂肪族ポリエステルの製造時に、ジオール単位を形成するジオール成分とジカルボン酸単位を形成するジカルボン酸成分とを反応させる場合には、製造される脂肪族ポリエステルが目的とする組成を有するようにジオール成分およびジカルボン酸成分の使用量を設定する。通常は、ジオール成分とジカルボン酸成分とは実質的に等モル量である。但し、この際、ジオール成分の使用量は、エステル化反応中の留出があることから、通常は1〜20モル%過剰に用いられる。
【0072】
本発明に好適な脂肪族ポリエステルに脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位等の必須成分以外の成分(任意成分)を含有させる場合、その脂肪族オキシカルボン酸単位や多官能成分単位もそれぞれ目的とする組成となるように、それぞれに対応する化合物(モノマーやオリゴマー)を反応に供するようにする。このとき、上記の任意成分を反応系に導入する時期および方法に制限はなく、本発明に好適な脂肪族ポリエステルを製造できる限り任意である。
【0073】
例えば脂肪族オキシカルボン酸を反応系に導入する時期および方法は、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1)予め触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で混合する方法、(2)原料仕込み時触媒を系に導入すると同時に混合する方法、などが挙げられる。
【0074】
多官能成分単位を形成する化合物の導入時期は、重合初期の他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込むようにしてもよく、または、エステル交換反応後、減圧を開始する前に仕込むようにしてもよいが、他のモノマーやオリゴマーと同時に仕込む方が工程の簡略化の点で好ましい。
【0075】
脂肪族ポリエステルは、通常、触媒の存在下で製造される。触媒としては、公知のポリエステルの製造に用いることのできる触媒を、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に選択することができる。その例を挙げると、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、アンチモン、スズ、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の金属化合物が好適である。中でもゲルマニウム化合物、チタン化合物が好適である。
【0076】
触媒として使用できるゲルマニウム化合物としては、例えば、テトラアルコキシゲルマニウム等の有機ゲルマニウム化合物、酸化ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物などが挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウムおよびテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。
【0077】
触媒として使用できるチタン化合物としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート等のテトラアルコキシチタンなどの有機チタン化合物が挙げられる。中でも、価格や入手の容易さなどから、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネートなどが好ましい。
【0078】
また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。なお、触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0079】
触媒の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、使用するモノマー量に対して、通常0.0005質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、また、通常3質量%以下、好ましくは1.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると触媒の効果が現れないおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり得られるポリマーが著しい着色を生じたり耐加水分解性が低下したりするおそれがある。
【0080】
触媒の導入時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に導入しておいてもよく、減圧開始時に導入してもよい。原料仕込み時に乳酸やグリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸単位を形成するモノマーやオリゴマーと同時に導入するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましく、特には、重合速度が大きくなるという点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して導入する方法が好ましい。
【0081】
脂肪族ポリエステルを製造する際の温度、重合時間、圧力などの反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。但し、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応および/またはエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。また、反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下である。更に、反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、中でも常圧が好ましい。また、反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは4時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合量の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
【0082】
また、ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル反応および/またはエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力が、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.03×10Pa以上、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下で行うことが望ましい。また、この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。更に、反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。反応温度が高すぎると、不飽和結合の過剰生成が起こり、不飽和結合が要因となるゲル化が起こり、重合の制御が困難になることがある。
【0083】
脂肪族ポリエステルの製造時には、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできる。その量は、通常、脂肪族ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合やウレタン結合が通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、脂肪族ポリエステル樹脂を本発明の積層体に使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、脂肪族ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは、0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が、0.55モル%以下、好ましくは0.3モル%以下、より好ましくは0.12モル%以下、更に好ましくは0.05モル%以下である。脂肪族ポリエステル100質量部あたりに換算すると、0.9質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。カーボネート結合量やウレタン結合量は、HNMRや13CNMR等のNMR測定により算出される。ウレタン結合量の上限値を上回ると、積層体の製造時にウレタン結合の分解のため、ダイス出口からの溶融膜から発煙や臭気が問題、溶融膜中に発泡による膜切れが起こり、安定的に成形できないことがある。
【0084】
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
【0085】
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイノシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルペニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
【0086】
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルの製造は従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
【0087】
より具体的には、ジオールとジカルボン酸(またはその無水物)とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。重量平均分子量(Mw)の測定方法は溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でのGPC測定法である。重量平均分子量は単分散ポリスチレンによる換算値である。
【0088】
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアネートを用いて更に高分子量化をする場合には、ジオールとジカルボン酸からなる重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーが好ましい。重量平均分子量が20,000以下であると、高分子量化するためのジイソシアネートの使用量が多くなり、耐熱性が低下し好ましくない。ジイソシアネートに由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するウレタン結合を有するポリエステルが製造される。
【0089】
鎖延長時の圧力は、通常、0.01MPa以上、1MPa以下、好ましくは、0.05MPa以上、0.5MPa以下、より好ましくは、0.07MPa以上、0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
【0090】
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは、150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
【0091】
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上であり、より好ましくは、5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは、30分以下、最も好ましくは、15分以下である。時間が短すぎる場合には、添加効果が発現しなくなる傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
【0092】
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。
【0093】
珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシシラン等が例示される。
【0094】
本発明に使用する生分解性樹脂として好ましい脂肪族ポリエステルの融点は、85℃〜200℃である。融点が85℃未満では紙カップおよび紙トレー等の用途において温かい飲食品を入れた時の耐熱性が不十分であり、積層した脂肪族ポリエステル組成物が剥離したり、溶融したりあるいは接合部が剥離したりするため好ましくない。逆に、融点が200℃を越えると積層体をカップやサック、トレー、袋などへの2次加工する際にヒートシール温度を高く設定する必要があり好ましくない。好ましくは融点が90〜150℃であり、更に好ましくは融点が100〜140℃である。結晶化温度は70〜100℃が好適である。下限値を下回ると積層体を押出成形する場合に冷却ロールへの貼りつきなどの問題が生じ、これを回避するために冷却ロールの温度を低温に設定する必要がある。更に製袋や、自動包装機、カップ製造機などの2次加工する際にも接着までに時間がかかるため好ましくない。また、98℃以上であると、ダイ出口から基材に接地するまでのエアギャップの間で溶融膜の固化が始まり、基材との接着力が弱くなるという問題がある。
【0095】
脂肪族ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以上、好ましくは30000以上、また、通常200000以下である。数平均分子量が上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体の製造時における溶融膜特性に劣るおそれがあり、例えば、ネックインが大きくなるおそれがある。他方、上限を上回ると溶融粘度が高くなり、押出機のモーター負荷が高くなることから、積層体の製造が困難になるおそれがある。数平均分子量(Mn)の測定方法は溶媒をクロロホルムとし、測定温度40℃でのGPC測定法である。数平均分子量は単分散ポリスチレンによる換算値である。
【0096】
本発明に好適に使用される脂肪族ポリエステルのメルトインデックス(MI;190℃、2.16Kg荷重)は、通常の下限は0.1g/10min以上、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは3g/10min以上、更に好ましくは4g/10min以上である。また、20g/10min以下、好ましくは15g/10min以下である。メルトインデックスが上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体製造時におけるモーター負荷が著しく増大し、加工機が停止することがあり、他方、上限を上回ると230℃以上高温成形時に、溶融膜の安定性(ネックインの増大、サージングの発生)が悪化することがあるので好ましくない。
【0097】
更に、ダイス出口から溶融した状態で出た脂肪族ポリエステルのメルトインデックス(MI;190℃、2.16Kg荷重)は、通常の下限は6g/10min以上、好ましくは8g/10min以上、より好ましくは10g/10min以上、更に好ましくは12g/10min以上である。また、35g/10min以下、好ましくは30g/10min以下である。メルトインデックスが上記範囲の下限を下回ると本発明の積層体製造時におけるモーター負荷が著しく増大し、加工機が停止することがあり、他方、上限を上回ると230℃以上高温成形時に、溶融膜の安定性(ネックインの増大、サージングの発生)が悪化することがあるので好ましくない。
【0098】
また、本発明に好適に使用される脂肪族ポリエステル中には不飽和結合を含有させることもでき、不飽和結合には、二重結合の他、三重結合も包含される。このような不飽和結合を有する構造単位には不飽和ジカルボン酸類や不飽和ジオール類等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の代表例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ−シス−フタル酸(ナディック酸)、ダイマー酸などが挙げられる。
【0099】
ポリマーの製造工程で生成する不飽和結合基も有用である。生成メカニズムは明らかではないが、主鎖の熱分解による末端ビニル基の生成や多官能成分として加えているリンゴ酸等の脱水によるフマル酸あるいはマレイン酸等への変換反応による不飽和結合の生成が考えられる。これら不飽和結合の種類は単独であってもよいし、2種以上で任意の割合でポリマー中に含有する形態であってもよい。
【0100】
本発明の積層体に使用する脂肪族ポリエステル中に含まれる不飽和結合量は通常100μmol/g以下、好ましくは80μmol/g以下、より好ましくは60μmol/g以下、更に好ましくは30μmol/g以下、最も好ましくは20μmol/g以下である。また通常3μmol/g以上、より好ましくは5μmol/g以上である。不飽和結合の量が下限値以下であると、分岐を発生させる際に、効率よく分岐させることが困難で、溶融張力を高めることができなくなる。逆に、上限値を超えると著しいゲル化を引き起こし、積層体を製造することができなくなることがある。不飽和結合量は、HNMRや13CNMR等のNMR測定により算出される。
【0101】
また、本発明の積層体に使用する脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量は、0.90質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.50質量%以下、更に好ましくは、0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下であり、特には、脂肪族ポリエステルが実質的にウレタン結合を含まないことが好ましい。ウレタン結合量が多すぎると、ウレタン結合の熱分解により、発煙や発泡という現象を引き起こし、成形しにくくなる傾向がある。
【0102】
(2−1)積層体原料および積層体の製造方法
上述の生分解性樹脂は、樹脂層として積層されることにより積層体とされる。樹脂層には、その他の樹脂が含有されていてもよい。
【0103】
その他の樹脂としては、例えば、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリブテンなどが挙げられる。これらを使用する場合、1種類以上の樹脂を任意の組み合わせおよび比率で併用することができる。
【0104】
これら脂肪族ポリエステル以外の樹脂を併用する場合、樹脂層が含有する全樹脂成分100質量部に対し、生分解性樹脂の割合が、通常50質量部以上、好ましくは70質量部以上となるようにする。生分解性樹脂の量が増えれば、本発明の積層体の分解速度が速くなり、また、分解後の崩形性が向上するからである。
【0105】
本発明の積層体の樹脂層の樹脂成分は、分解性の観点からは、好ましくは、生分解性樹脂のみからなることが好ましい。具体的には、樹脂層は、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルのみからなるか、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルと、それ以外の生分解性樹脂との樹脂組成物からなることが好ましく、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルのみからなる方がより好ましい。ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂としては、ポリ乳酸や、脂肪族・芳香族ポリエステルが好ましい。
【0106】
ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルと、それ以外の生分解性樹脂との樹脂組成物を樹脂層に使用する場合、加工性の観点からは、樹脂層におけるジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの配合量が、樹脂層に含まれる生分解性樹脂全量を100質量部として、65質量部以上であることが好ましく、より好ましくは70質量部以上、更には75質量部以上、特には90質量部以上であることが好ましい。例えば、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル70質量%と、ポリ乳酸または脂肪族・芳香族ポリエステルであるエコフレックス(登録商標)を30質量%含有する樹脂組成物は、完全な生分解性樹脂組成物でありながらも、成形加工時のネックインが極めて小さく、加工性に優れた樹脂であるため、樹脂層に特に好ましい樹脂組成物である。
【0107】
本発明の積層体は、各種用途に加工するために、基材を有していることが好ましい。基材としては、通常、ヒートシール性の食品包材における外層材等として使用される樹脂製のフィルム体やシート体、アルミ箔と樹脂フィルムの積層体、不敷布、セロハン、合成紙、紙等が挙げられる。基材としての樹脂フィルムや樹脂シート体としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド等の合成樹脂基材のみならず、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステル樹脂製のフィルムやシート体も使用することができる。
【0108】
中でも、本発明の積層体の基材は、紙、不織布、ポリ乳酸フィルム、ポリグリコール酸フィルムから選ばれるものであることが好ましい。基材として、生分解性である脂肪族ポリエステル樹脂製のフィルムやシート体、紙等を使用する場合、得られる積層フィルムは全体として生分解性となり、環境に配慮した包材を形成することができる。具体的な紙基材には、クラフト紙、模造紙、ロール紙、中質紙、ボード、グラシン紙、パーチメント、アート紙、板目紙、ダンボール原紙などの板紙を挙げることができる。これらの紙基体の坪量(日本工業規格 JIS P8124)は、紙質によっても異なるが、一般に10〜1000g/m、特に30〜700g/mの範囲にあることが好ましい。
【0109】
また、本発明の積層体の構成層としては、例えば、印刷層やガスバリアー層など、他の樹脂層も任意に設定することができ、多層構造をとることも可能である。ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルを含有する層が積層体の片面の最外層または両面の最外層にあることが好ましい。特に、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート共重合体である。
【0110】
樹脂層以外の樹脂を含む層を設ける場合、樹脂としては、上述の生分解性樹脂および/またはその他の樹脂を任意の組み合わせおよび比率で使用することができる。但し、積層体の分解速度や分解後の崩形性の観点からは、基材や樹脂層を含む積層体全体が含有する全樹脂成分に対する生分解性樹脂の割合が、50質量%以上、好ましくは70質量%以上となるように他の樹脂層を設けることが好ましい。
【0111】
本発明の積層体を得る方法は、特定の物性値を満たせば、通常行われている方法でよく、特に限定されるものではない。例えば、「最新ラミネート加工便覧」(1989年 加工技術研究会)に記載されている公知技術が採用できる。その加工方法を列挙すると(1)ある層に水溶性または水分散タイプの接着剤を塗り、湿った状態で他の層の張り合わせが行われ、その後乾燥、巻き取りが行われるウェットラミネーション方法、(2)接着剤を加熱(120℃〜160℃)して溶かしてある層に塗り、他の層を貼り合わせ、その後瞬間冷却することによって接着剤を固めて接着するホットメルトラミネーション方法、(3)樹脂を溶融させ、Tダイなどのスリットダイからフィルム上に押出したものを基材に塗る押出コーティング方法、(4)樹脂を溶融させ、Tダイなどのスリットダイからフィルム上に押出したものをある層に塗り、サンド繰出し機と呼ばれるアンワインダーから別の層を供給して、同時に貼り合わせる方法である押出ラミネーション方法、(5)Tダイや丸ダイにて数種の樹脂を押出し、1工程で多層フィルムが製造できる共押出成形ラミネーション法、(6)有機溶剤に溶解させた接着剤をある層の表面に塗り、乾燥させて、他の層を積層するドライラミネーション法、(7)ウレタン系の接着剤を溶剤無しに加熱して溶解させてある層に塗り、これと別の層を加熱ロールによって圧着させて積層体を得るノンソルベントラミネーション法、(8)ある層にホットメルト型、熱硬化型、熱可塑型の接着剤を含浸または塗工しておき、他の層を加熱ロールにて圧着させるサーマルラミネーション法などの加工技術を用いることができる。
【0112】
ドライラミネートの場合の接着剤としては、ポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート、ポリエステルポリウレタンポリイソシアネート等の末端にイソシアネート基を組み込んだような一液反応型や、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール等のポリエステル系樹脂あるいはポリエーテルポリウレタンポリオール等のポリエーテル系樹脂の水酸基を持った主剤とイソシアネート基を持つ硬化剤とを混合して用いる二液反応型のウレタン系が挙げられる。これら接着剤の塗布量としては1〜5g/m程度が好ましい。
【0113】
本発明の積層体の製造方法としては、上述した生分解性樹脂、必要に応じて添加される他の樹脂、滑剤、酸化防止剤、改質剤、核剤などの後述する所望の添加剤を配合した樹脂組成物を、ハンガーコートタイプT−ダイを有する押出機を用いて基材上に押出積層する方法(押出コーティング法)や、上述した本発明の生分解性樹脂をインフレ成形やTダイフィルム成形法によりフィルムとした後に接着剤や火炎処理により積層体を得る方法が好ましく、生産性や得られる積層体の物性の観点からは、押出コーティング法が特に好ましい。押出コーティング法を用いる場合には、ポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂の溶融押出コーティング・ラミネート用に通常使用される溶融押出コーティング・ラミネート装置を用いることができる。
【0114】
樹脂組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押出機、単軸スクリュー押出機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することもできる。
【0115】
図1は、本発明の積層体の製造に使用される溶融押出コーティング・ラミネート装置100の概略図である。但し、本発明の積層体は、必ずしも図1に記載された処理や部品を全て含む条件で製造される必要はなく、適宜、工程を増やしたり、減らしたりすることができる。
【0116】
図示の装置100は、基材繰出部11から繰り出され、アンカーコート部12を経てラミネート部に供給される基材供給系統10と、オートローダーやドライヤーなどを備えたホッパー21から供給される原料樹脂を溶融混練しつつ押出搬送する加熱シリンダー22内スクリュー部と、クロスヘッド部(図示せず)と、アダプター部23とダイス部24とを有する押出機25からなる溶融樹脂供給系統20と、基材上に溶融押出された樹脂層と基材とを押圧ラミネートするラミネート加工部系統30とを有している。
【0117】
基材供給系統10の基材繰出部11に設置された基材は、アンカーコート部12においてアンカーコート層を付与され、コロナ放電処理が行われる。この処理は必須ではないが、樹脂層との接着性を高めることができる点で好ましい。同様の目的のために、フレームプラズマ処理、クロム酸処理等の化学エッチング処理、オゾン・紫外線処理等の表面処理、サンドブラスト等の表面凹凸処理をすることともできる。また、アンカーコート層用の接着剤としては、ウレタン系、イミン系、ブタジエン系、チタネート系等の接着剤が挙げられる。
【0118】
一方、溶融樹脂供給系統20においては、生分解性樹脂を含有する樹脂層の原料が、ホッパー21に投入され、押出機25内で溶融混練される。生分解性樹脂は、比較的吸湿性が高いものが多く、また脂肪族ポリエステル等は加水分解性もあるので水分管理が必要であり、予め樹脂を熱風乾燥機、真空乾燥器等により除湿乾燥しておくことが好ましい。また、押出機25に樹脂ペレットを投入する際には、窒素雰囲気下であることが好ましく、また、ホッパー21がホッパードライヤーを完備していることも好ましい。樹脂の脱水の観点からは、ベント式2軸押出機によって成膜を行うと、脱水効果が高く乾燥工程を省略できるため、効率的な成膜が可能である。
【0119】
投入される原料樹脂の水含有量は、質量比で該ポリエステルに対して下限は特に限定されないが、通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは1ppm以上、最も好ましくは10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは800ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するため生分解性樹脂の着色やブツの生成等の劣化が引き起こされる傾向がある。一方、多すぎる場合には、成形加工中加水分解により分子量が低下し、適切な溶融粘度が得られず、溶融膜が安定しないことがある。
【0120】
水含有量(水分量)の測定方法としては、水分気化装置(三菱化学社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定する方法が挙げられる。
【0121】
樹脂層の加工温度は、樹脂の種類により異なるが、例えば本発明の樹脂層に好ましいジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル樹脂を用いる場合、溶融押出機内のシリンダーの入り口温度を100℃〜230℃、押出機25のダイス24の設定温度を230℃〜300℃、ダイス24直下の樹脂温度をダイス設定温度の±35℃に設定することが好ましい。脂肪族ポリエステル樹脂やそれと他の樹脂との組成物の樹脂温度が通常のポリエチレンの溶融押出温度である320℃以上というような高温状態となると、樹脂の粘度が低くなりすぎてダイス24より均一な厚みの溶融樹脂層として押出すことができない。
【0122】
押出機25内で溶融混練された樹脂は、所定の厚みになるように、ダイス24から、基材上に押出コーティングされる。ダイス24としてはハンガーコート型、共押出用ダイなどを使用することができる。その際、厚みが厚い場合はタッチロール、エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分けることにより均一な厚みとする。ダイリップの間隔は、通常0.2〜3.0mmとするが、成膜状況によりこれに限定されることはない。
【0123】
溶融押出を行う場合、Tダイから押出されたフィルムがダイ出口の幅より狭くなるネックインと呼ばれる現象や、フィルムの両サイドが中央部より厚い耳(エッジビード)と呼ばれる部分が生じる場合がある。これらを改善するためにロッド棒やインナーディッケルをダイス24内部に配置するのが好ましい。これにより溶融樹脂の流量を変更し、エッジビードを低減することができる。またリップの間隔を調整して成形品の厚み分布を良くする場合もある。
【0124】
ロッド棒としては、断面形状が丸型、三角型、Y字型のものが使用されるが、特に旗付きロッド棒と称される形状のものが好ましく使用される。このような旗付きロッド棒を装着することによって、ダイス押出口に供給される樹脂膜の巾を減少させた状態でダイス押出口から押出すことにより、また、その結果として、押出直後の溶融樹脂膜の耳部の蛇行(サージング)を防止し、安定したラミネート加工を行うことが可能となる。このような誘導板をダイス押出口部に設置することにより、溶融状態の樹脂膜層の側縁部を位置決めしつつ溶融状態の樹脂膜の両側縁部の膜厚を膜中央部と等しい厚みに制御する機能を有している。
【0125】
ダイス24出口から溶融膜として出てきた樹脂層は、オゾン処理を経た後、ラミネート加工部系統30において、所定のエアギャップGを介して、ニップロール31と冷却ロール32との間で基材と圧着される。汎用樹脂である低密度ポリエチレン(LDPE)ではエアギャップGは通常120mmに設定されており、そのエアギャップG中で空気中の酸素によりLDPEの酸化を促進させ、表面の濡れ性を向上させることにより接着性を高めることが公知の技術である。しかし、脂肪族ポリエステルを使用して積層体を製造する際には、溶融膜表面の酸化による接着力の効果は少ない。本発明者が鋭意検討した結果、生分解性樹脂として脂肪族ポリエステルを使用する場合、エアギャップGの間隔を狭くすることによって著しく接着力が向上することを見出した。エアギャップGの上限値は120mm以下、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下であり、その下限値は50mm以上、より好ましくは60mm以上である。上限値を上回ると樹脂温度が低下しすぎるため、基材との接着性を低下させるので好ましくなく、また、酸化が促進され酸化臭などの臭気の発生が問題となる。逆に、下限値を下回ると、オゾン発生装置などの溶融膜処理装置の設置が困難となり、また、冷却ロール32とダイス24が近くに位置するため、冷却ロール32の温度管理が困難となって好ましくない。
【0126】
ダイス24出口から押出された溶融膜と基材を接着させるために圧力がかけられるニップロール31は、ゴム製、セラミック製などのロールであり、溶融樹脂の接着を防ぐ点からはシリコンゴム製のニップロールが好ましい。また、ニップロール31の硬さは、用いる基材の種類によって任意に選択されるが、ニップ圧は所望の積層体の接着力を得るために任意に調整できる。本発明でのニップ圧の下限値は0.2MPa以上であり、好ましくは0.4MPa以上である。また、上限値は0.5MPa以下、好ましくは0.45MPa以下である。下限値を下回ると、接着力が弱く、積層体として実用的ではない。また上限値を上回るとニップロール31が変形し、接触面積が広くなることで単位面積あたりの圧力が低下し、接着力が充分でないことがある。また溶融樹脂と基材と冷却ロール32との接触位置も接着力を左右するため極めて重要である。接触位置は溶融樹脂が基材に接触する前に冷却ロール32に接触すると樹脂が冷却固化され、接着力が得られない。好ましくは基材と冷却ロール32が同時に接触する。
【0127】
冷却ロール32の種類は目的の樹脂層の表面概観を得るために任意に選択することができる。例えば、鏡面仕上げの有無や、セミマットロール、マットロールなどがある。好ましくはセミマットロール、更にはマットロールなどが積層体の張り付きの程度が少ないため好ましく使用される。冷却ロール32の温度は10℃以上35℃以下が好ましい。上限を超えて設定すると積層体が冷却ロール32に張り付きやすく、成形速度の高速化が困難となる。また下限値を下回ると冷却ロール32に水滴が付くことがあり好ましくない。
【0128】
積層体を製造する加工速度は上記のように選択された操業条件に厳密に制御することにより、加工速度は20m/分以上、更には180m/分という通常の商業的規模での製造が可能である。その結果、ヒートシール性に優れ、高速充填可能な食品包材を形成することができる。
【0129】
本発明の積層体には、酸化防止剤、滑剤、改質剤、核剤などの各種添加剤を含有させることもできる。特には、樹脂層には、酸化防止剤および/または滑剤を含有させることが好ましい。
【0130】
本発明の積層体に添加する酸化防止剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、BHT、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H、3H,5H)−トリオン、カルシウムジエチルビス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスホネート、ビス(2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメチルフェニル)エタン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’―ジイルビスホスフォナイト、ビス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)−6−メチルフェニル]エチルエステル亜りん酸、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジファスファイト等のリン系酸化防止剤、3−ヒドロキシ−5,7−ジ−tert−ブチル−フラン−2−オンとキシレンの反応生成物等のラクトン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0131】
酸化防止剤の使用量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは800ppm以下である。この範囲の下限を下回ると酸化防止剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、酸化防止剤のブリードアウト、ラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。なお、本明細書において「ppm」とは、質量を基準とした比率を表わす。
【0132】
酸化防止剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、生分解性樹脂と酸化防止剤とを混合して、積層体の樹脂層に酸化防止剤を含有させるようにする。例えば、酸化防止剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。酸化防止剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なためである。
【0133】
マスターバッチ中の酸化防止剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。酸化防止剤の含有量が少なすぎると、製造費が高くなり、また含有量が多すぎると、生分解性樹脂と酸化防止剤の分散性が不良となるため、酸化防止剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
【0134】
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する生分解性樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
【0135】
滑剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。滑剤は、ラミネート製造時の吐出安定性、モーター負荷低減、結晶化温度の高温化、成形安定性向上等のために添加される。また、成形性を付与する以外に、ロール金型に接触する層に用いると、層に粘着やべたつきが生じるのを防止することができ、離ロール性の向上や、際立ったロール汚れを防止するのに役立つ。
【0136】
その具体例としては、パラフィン油、固形パラフィン等のパラフィン、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール類、脂肪酸の金属塩類、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド類等、カルナウバワックス、モンタンワックス等のワックス類などが挙げられ、中でも脂肪酸金属塩が特に好ましい。
【0137】
上記脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘニン酸アミド、ジメチトール油アミド、ジメチルラウリン酸アミド、ジメチルステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビス−12ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド、N,N’−ジステアリルテレフタル酸アミド、N−ブチル−N’ステアリル尿素、N−プロピル−N’ステアリル尿素、N−アリル−N‘ステアリル尿素、N−ステアリル−N’ステアリル尿素等が挙げられる。
【0138】
脂肪酸金属塩としては、炭素数が12以上で30以下であるものが特に好ましい。また金属種としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素のカルボン酸塩が好ましい。特に好ましくは周期表の第3から第4周期のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、遷移金属類が特に好ましい。最も好ましくは第3から第4周期のアルカリ土類金属類が好適に選ばれる。上記の中でアルカリ金属類のカルボン酸塩は使用量にもよるが、樹脂を劣化させることがあり、製造中、あるいは成形後の耐加水分解性や機械物性等を悪化させることがある。脂肪酸の炭素数が上記の下限以下であると成形時に発煙やロール汚れ、ブリードアウトが問題となることがあり、上限以上であると成形時の熱分解等により、臭気が問題となるので好ましくない。
【0139】
上記の脂肪酸金属塩の例としては、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸水素カリウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸銀、ラウリン酸リチウム、ミリスチン酸リチウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸水素カリウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸銀、ミリスチン酸アルミニウム、パルチミン酸リチウム、パルチミン酸カリウム、パルチミン酸マグネシウム、パルチミン酸カルシウム、パルチミン酸亜鉛、パルチミン酸銅、パルチミン酸鉛、パルチミン酸タリウム、パルチミン酸コバルト、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、オレイン酸鉛、オレイン酸タリウム、オレイン酸銅、オレイン酸ニッケル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸タリウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸ニッケル、ステアリン酸ベベリウム、イソステアリン酸ナトリウム、イソステアリン酸カリウム、イソステアリン酸マグネシウム、イソステアリン酸カルシウム、イソステアリン酸バリウム、イソステアリン酸アルミニウム、イソステアリン酸亜鉛、イソステアリン酸ニッケル、ベヘニン酸ナトリウム、ベヘニン酸カリウム、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸バリウム、ベヘニン酸アルミニウム、ベヘニン酸亜鉛、ベヘニン酸ニッケル、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カリウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸バリウム、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸ニッケル,モンタン酸リチウム、オクチル酸ナトリウム、オクチル酸リチウム、オクチル酸マグネシウム、オクチル酸カルシウム、オクチル酸バリウム、オクチル酸アルミニウム、オクチル酸タリウム、オクチル酸鉛、オクチル酸ニッケル、オクチル酸ベベリウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸バリウム、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸タリウム、12−ヒドロキシステアリン酸鉛、12−ヒドロキシステアリン酸ニッケル、12−ヒドロキシステアリン酸ベベリウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸リチウム、セバシン酸マグネシウム、セバシン酸カルシウム、セバシン酸バリウム、セバシン酸アルミニウム、セバシン酸タリウム、セバシン酸鉛、セバシン酸ニッケル、セバシン酸ベベリウム、ウンデシレン酸ナトリウム、ウンデシレン酸リチウム、ウンデシレン酸マグネシウム、ウンデシレン酸カルシウム、ウンデシレン酸バリウム、ウンデシレン酸アルミニウム、ウンデシレン酸タリウム、ウンデシレン酸鉛、ウンデシレン酸ニッケル、ウンデシレン酸ベベリウム、リシノール酸ナトリウム、リシノール酸リチウム、リシノール酸マグネシウム、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸アルミニウム、リシノール酸タリウム、リシノール酸鉛、リシノール酸ニッケル、リシノール酸ベベリウム等が挙げられる。上記の中でもステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛が好適に用いられる。
【0140】
なお、滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。更に滑剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは5000ppm以下、更に好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは800ppm以下である。この範囲の下限を下回ると滑剤としての添加効果であるモーター負荷の低減や吐出安定性の寄与効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、滑剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生やラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。
【0141】
滑剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と滑剤とを混合して、積層体の樹脂層に滑剤を含有させるようにする。滑剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、滑剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
【0142】
マスターバッチ中の滑剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。滑剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まり、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と滑剤の分散性が不良となるため、滑剤の効果を最大限に引き出すことはできない。マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されないが、通常は使用する樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが分散性の向上の観点から好ましい。
【0143】
改質剤(カルボキシル基反応性改質剤)は、特開平11−80522号公報に記載されているように、耐加水分解性を向上することが知られている。本発明の積層体に用いる改質剤としては、生分解性樹脂がその炭素鎖の末端に有するカルボキシル基(カルボキシ末端)を封止することが可能な化合物であれば任意のものを用いることができ、例えば、ポリマーのカルボキシル末端の封止剤として用いられているものを任意に用いることができる。
【0144】
また、本発明に使用する改質剤としては、樹脂の末端を封止するのみではなく、熱分解や加水分解などで生成する末端カルボン酸や乳酸やギ酸などの酸性低分子化合物のカルボキシル基も封止することができるものが好ましい。更に、熱分解や加水分解などで生成する酸性低分子化合物中の水酸基末端も封止できる化合物であることが更に好ましい。
【0145】
改質剤は、多官能のものであってもよく、単官能のものであってもよい。多官能の改質剤は生分解性樹脂の主鎖が切断した際、溶融張力等の物性を維持できるという利点や、改質剤が分岐点となり溶融張力の向上が認められ、成形性(ネックインなど)が向上するという利点がある。また、単官能の改質剤は多官能タイプよりも分子量や立体障害が少ないため、速やかに生分解性樹脂の末端と反応し、封止ができるという利点を有する。
【0146】
このような改質剤としては、例えば、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、エポキシド化合物およびオキサゾリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0147】
カルボジイミド化合物は、分子中に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物(ポリカルボジイミド化合物を含む)であり、このようなカルボジイミド化合物は、例えば、触媒として有機リン系化合物または有機金属化合物を用いて、イソシアネート化合物を70℃以上の温度で、無溶媒または不活性溶媒中で脱炭酸縮合反応させることにより合成することができる。
【0148】
カルボジイミド化合物は単独で使用することもできるが、複数の化合物を混合して使用することもできる。
【0149】
本発明においては、ポリカルボジイミド化合物を用いることが好ましく、その重合度は、下限が通常2以上、好ましくは4以上であり、上限が通常40以下、好ましくは、30以下である。重合度が低いと、基材樹脂粒子製造時にカルボジイミド化合物が揮散し効果が低くなる傾向がある。一方、重合度が大きすぎると組成物中における分散性が不十分となり、効率よく末端封止効果が得られないことがある。
【0150】
工業的に入手可能なポリカルボジイミドとしては、例えば、カルボジライト(登録商標)HMV−8CA(日清紡績社製)、カルボジライト(登録商標)LA−1(日清紡績社製)、スタバクゾールP(ラインケミー社製)、スタバクゾールP100(ラインケミー社製)などが例示できる。
【0151】
イソシアネート化合物としては、例えば、シクロヘキシルイソシアネート、n−ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、2,6ージイソプロピルフェニルイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイノシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,4,6−トリイソプロピルペニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0152】
エポキシド化合物としては、ブチルフェニルグリシジルエーテル、レゾルシングリシジルエーテル、ヒドロキノングリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、N−グリシジルフタルイミド、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはノボラック型エポキシ樹脂、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0153】
オキサゾリン化合物としては、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0154】
この他、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物等のエポキシ化合物、オキサジン化合物なども、改質剤として挙げられる。これらの中でも、エポキシ化合物およびカルボジイミド化合物が好ましい。
【0155】
上記改質剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0156】
本発明の積層体では、使用する用途に応じて適度にカルボキシル末端や酸性低分子化合物の封止を行えばよく、封止の程度はその用途に応じて任意である。具体的なカルボキシル末端や酸性低分子化合物の封止の程度としては、耐加水分解性を向上させる観点から、本発明の積層体の樹脂層の酸価が、通常50μeq/g以下、好ましくは30μeq/g以下、より好ましくは20μeq/gである。ここで、「eq」は「mol」を表わす単位である。樹脂層の酸価は、本発明の積層体を適当な溶媒に溶解させた後、濃度既知の水酸化ナトリウムなどのアルカリ化合物溶液で滴定することにより測定したり、NMRにより測定したりすることができる。本明細書においては、酸価(AV値)は以下の測定条件により測定されたものを言う。
【0157】
試料0.5gを精秤し、ベンジルアルコール25mLが入った試験管に入れ、195℃の加熱浴で9分間加熱し、試料を溶解させる。試料が完全に溶解したことを確認し、氷水中で30秒〜40秒冷却した後、エチルアルコール2mLを加える。攪拌しながら、試料溶液中にpH電極を入れ、0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール溶液(10%メタノール液)を用い電位差滴定による中和滴定を開始する。
【0158】
一方、試料が溶解されていないブランクサンプルを調製し、上記方法と同様に滴定を実施し、ブランク値とする。
【0159】
上記滴定結果より、下記式を用いて酸価(AV値:μeq/g)を計算する。
【0160】
【数1】

A:測定滴定値(mL)
B:ブランク測定値(mL)
F:0.01N水酸化ナトリウムのベンジルアルコール液の力価
W:試料質量(g)
【0161】
なお、本明細書においては、測定装置としては、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製オートタイトレーターAUT−50)を用いた。
【0162】
改質剤の使用量は、生分解性樹脂を100質量部として、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上、また、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、特に好ましくは2質量部以下である。この範囲の下限を下回ると末端封止の効果が現れないおそれや成形性(溶融膜のネックイン、サージング等)の向上が認められないことがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎるおそれ、積層体製造時におけるモーター負荷の増加、ゲル化の発生、加工時の発煙および製品中からの臭気の発生がある。
【0163】
また、上記の使用量の範囲内において、改質剤は、定量的にポリエステル酸末端を封止する量を加えればよいが、積層体製造時における熱分解で生じた末端基の封止と溶融張力向上効果や長期安定性とを発現するためには、ポリエステル末端に対して改質剤を過剰に存在させることが望ましい。なお、ここで改質剤を過剰に存在させるとは、基質樹脂(即ち、生分解性樹脂および適宜使用されるその他の樹脂)の酸価以上に改質剤を加えることをいう。
【0164】
本発明の積層体に改質剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、生分解性樹脂と改質剤とを混合して、積層体の樹脂層に改質剤を含有させるようにする。例えば、改質剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。含有量が目的濃度となるように混合して希釈することができるためである。
【0165】
マスターバッチ中の改質剤の含有量に制限はないが、通常は0.5質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。改質剤の含有量が少なすぎると、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、ゲル化が進行しやすくなる傾向がある。
【0166】
マスターバッチとして採用される樹脂は特に限定されず、カルボジイミドを含有する市販マスターバッチでもよいが、使用する生分解性樹脂と同様の樹脂を用いて製造されたマスターバッチが好ましい。
【0167】
本発明の積層体には、積層体製造時の結晶化温度を制御し、成形時の加工性改善するために核剤を含有させてもよい。核剤の添加により、結晶化温度の高温化や離ロール性の向上が期待できる。核剤は無機系核剤および有機系核剤のいずれをも使用することができ、単独でもよいし、2種以上を任意の割合で複合し添加してもよい。
【0168】
無機系核剤の具体例としては、タルク、カオリン、モンモリロナイト、合成マイカ、クレー、ゼオライト、シリカ、グラファイト、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウムおよびフェニルホスホネートの金属塩などを挙げることができる。また、これらの無機系核剤は、組成物中での分散性を高めるために、有機物で修飾されていてもよい。
【0169】
一方、有機系核剤の具体例としては、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カルシウム、安息香酸マグネシウム、安息香酸バリウム、テレフタル酸リチウム、テレフタル酸ナトリウム、テレフタル酸カリウム、シュウ酸カルシウム、ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ミリスチン酸カルシウム、オクタコサン酸ナトリウム、オクタコサン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、トルイル酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸亜鉛、アルミニウムジベンゾエート、カリウムジベンゾエート、リチウムジベンゾエート、ナトリウムβ−ナフタレート、ナトリウムシクロヘキサンカルボキシレートなどの有機カルボン酸金属塩;p−トルエンスルホン酸ナトリウム、スルホイソフタル酸ナトリウムなどの有機スルホン酸塩;ステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、パルチミン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)等のカルボン酸アミド;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプロピレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、高融点ポリ乳酸等のポリマー;エチレン−アクリル酸またはメタクリル酸コポリマーのナトリウム塩、スチレン−無水マレイン酸コポリマーのナトリウム塩などのカルボキシル基を有する重合体のナトリウム塩またはカリウム塩(いわゆるアイオノマー);ベンジリデンソルビトールおよびその誘導体、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等のリン化合物金属塩;および2,2−メチルビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム;ポリエチレンワックスなどを挙げることができる。
【0170】
核剤の平均粒径は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で任意である。通常50μm以下、好ましくは10μm以下であることが望ましい。また、2次凝集や取り扱い作業性の点から、通常0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上であるのが望ましい。平均粒径が上記範囲の上限を超える場合には、結晶化温度の高温化には効果がなく好ましくない。また、核剤の平均粒径が上記範囲の下限未満となった場合には、製造費が高くなり、また取り扱いが困難となるので好ましくない。
【0171】
核剤の好ましい配合量は、生分解性樹脂を100質量部として、通常0.01質量部以上、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、特に好ましくは0.2質量部以上、また、通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1.2質量部以下である。この範囲の下限を下回ると結晶化温度の高温化への効果が現れないおそれや、成形時における離ロール性の悪化のおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎるおそれや、成形時のロール汚れが問題となる。
【0172】
本発明の積層体には、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、上記の酸化防止剤、滑剤、改質剤および核剤以外の添加剤を含有させるようにしてもよい。例えば、紫外線吸収剤、光安定剤(耐光剤)、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、可塑剤、着色剤、充填剤、相溶化剤、難燃剤等が挙げられる。特に、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、相溶化剤、結晶核剤、充填剤のいずれか1種類以上の使用剤を10ppm以上含むことが好ましい。
【0173】
耐光剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、デカンニ酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドトキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系安定剤が挙げられる。
【0174】
耐光剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に異なる種類の耐光剤を組み合わせて用いるのが有効であり、更に、紫外線吸収剤と組み合わせて用いることが有効である。また、中でも、ヒンダードアミン系安定剤と紫外線吸収剤との組み合わせが有効である。
【0175】
更に、耐光剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂に対して、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下である。この範囲の下限を下回ると耐光剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、耐光剤のブリードアウトやロール汚れ、成形加工時の発煙が生じたりするおそれがある。
【0176】
耐光剤を含有させる具体的な方法に制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と耐光剤とを混合して、積層体の樹脂層に耐光剤を含有させるようにする。耐光剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、耐光剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
【0177】
マスターバッチ中の耐光剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。耐光剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まることから、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と耐光剤の分散性が不良となるため、耐光剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
【0178】
紫外線吸収剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられる。
【0179】
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に異なる種類の紫外線吸収剤を組み合わせて用いるのが有効である。
【0180】
また、紫外線吸収剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100ppm以上、好ましくは200ppm以上、また、通常5質量%以下、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。この範囲の下限を下回ると紫外線吸収剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、紫外線吸収剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生やラミネート製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。
【0181】
紫外線吸収剤を含有させる具体的な方法も制限はないが、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と紫外線吸収剤とを混合して、積層体の樹脂層に紫外線吸収剤を含有させるようにする。紫外線吸収剤を目的濃度となるように混合して希釈することができ、簡便なことから、紫外線吸収剤を高濃度で含むマスターバッチを使用するのが好ましい。
【0182】
マスターバッチ中の紫外線吸収剤の含有量に制限はないが、通常は1質量%以上、また、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。紫外線吸収剤の含有量が少なすぎると、製造費が高まることから、マスターバッチとして使用するには適切でなく、また含有量が多すぎると、樹脂と紫外線吸収剤の分散性が不良となるため、紫外線吸収剤の効果を最大限に引き出すことはできない。
【0183】
相溶化剤は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その具体例としては、樹脂の末端または主鎖に、エステル基、カルボン酸無水物、アミド基、エーテル基、シアノ基、不飽和炭化水素基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、芳香族炭化水素基などを反応させたものが挙げられる。
【0184】
相溶化剤としては、例えば、脂肪族ポリエステルと、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等の芳香族系ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、SEBS(ポリスチレン−block−ポリ(エチレン−co−ブチレン)−block−ポリスチレン)、SEPS、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン13、ナイロン4、ナイロン4−6、ナイロン5−6、ナイロン12、ナイロン10−12、アラミド等のポリアミド系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメレングリコール、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等とのグラフト共重合体、ブロック共重合体、マルチブロック共重合体、ランダム共重合体なども挙げられる。
【0185】
相溶化剤としては、上記の共重合体以外にも、ブレンドする異なる樹脂の構造の両方を同一分子中に含む化合物も挙げられる。
【0186】
また、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、SEBS、SEPS、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン12、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル等のアクリル樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール、ポリテトラメレングリコールのポリマー分子の末端または側鎖に、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アルキル基、アルキレン基と反応可能な官能基を有するポリマーなども挙げられる。
【0187】
相溶化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。特に、本発明の積層体において、樹脂層(即ち、生分解性樹脂および適宜使用されるその他の樹脂)が2種以上の樹脂から構成される場合には、相溶化剤の使用は特に好適である。また、積層体が2種以上の樹脂からそれぞれの層を形成する多層体の場合においてもこの相溶化剤が使用できる。あるいは異種層の間にこの相溶化剤を有する樹脂層を有してもよい。
【0188】
相溶化剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。この範囲の下限を下回ると相溶化剤の効果である接着力が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎることや、生分解性を悪化させることがある。相溶化剤も、通常は、積層体製造時のいずれかの工程において、樹脂と相溶化剤とを混合して、積層体の樹脂層に相溶化剤を含有させるようにする。
【0189】
また、本発明の積層体を帯電防止性に優れたものとするために、上記した樹脂層に帯電防止効果が発現される帯電防止効果のある混合物を添加することも好ましい。該混合物としては、界面活性剤型のノニオン系、カチオン系、アニオン系が好適に選択される。帯電防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。ノニオン系に代表される帯電防止剤はグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルジエタノールアミン、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン脂肪酸エステルアルキルジエタノールアマイド類があり、中でもアルキルジエタノールアミン類が帯電防止効果の発現性の点から好ましい。カチオン系に代表される帯電防止剤はテトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などが選ばれる。また、アニオン系ではアルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェートが挙げられ、中でも、アルキルベンゼンスルホン酸塩は基材樹脂との混練性、帯電防止効果の発現性の点から好ましい。
【0190】
帯電防止剤の使用量も本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1000ppm以上、好ましくは3000ppm以上、また、通常50000ppm以下、好ましくは20000ppm以下、より好ましくは10000ppm以下である。この範囲の下限を下回ると帯電防止剤の効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなりすぎたり、組成物の耐熱性が劣ったり、帯電防止剤のブリードアウトや発煙、臭気の発生や積層体製造時のロール汚れが生じたりするおそれがある。帯電防止剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0191】
帯電防止剤の配合量が少なすぎる場合は実質的な帯電防止性向上効果が認められず、多すぎると得られる積層体の表面にべたつきが発生し、ブリードアウトが問題となる。また成形中に発生する臭気や発煙も問題となる。好ましい帯電防止性能は、その積層体において表面固有抵抗が1×10〜5×1013Ω/□、より好ましくは1×10〜1×1012Ω/□の値を示すものである。抵抗率測定計を用い、JIS−K6911準拠して測定する。
【0192】
樹脂と帯電防止剤との混合順序、混合方法などには特に限定はないが、該混合物含有率の高いマスターバッチ、例えば該混合物の含有率が5〜20質量%のマスターバッチを調製し、これと樹脂とを混合する方法が該混合物を均一に分散させやすいという点から好ましい。また、混合方法については、混練性等の観点から二軸押出機を使用することが好ましい。また、積層体の樹脂層に塗布型帯電防止剤を使用してもよい。
【0193】
充填剤としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。その例としては、着色するための顔料、耐熱性や剛性を高めるフィラー、更に加工安定剤などが挙げられる。
【0194】
顔料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、無機系の顔料であっても、有機系の顔料であってもよい。無機系の顔料の具体例としては、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄等のクロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、鉄黒、べんがら等の酸化物、群青等のケイ酸塩、またはチャンネルブラック、ローラーブラック、ディスク、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック等を挙げることができる。また、有機系の顔料の具体例としては、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、またはフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系等の多環式顔料等を挙げることができる。
【0195】
また、従来公知の各種フィラーや機能性添加剤を配合して組成物とし、積層体に添加することもできる。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤などを添加することができる。フィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これらは1種または2種以上の混合物として用いることもできる。
【0196】
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物質量に対して、通常1〜80質量%であり、好ましくは3〜70質量%、より好ましくは5〜60質量%である。無機系フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持つものもあり、これらの無機系フィラーを特に多量に含むバイオマス由来のポリエステル組成物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機系フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能するので、グリーンプラとしての有意性を高める。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加した積層体とすることは、本発明の積層体の有用性を高めることになる。
【0197】
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これ等は1種または2種以上の混合物として使用することもできる。有機系フィラーの添加量は、全組成物質量に対して、通常0.01〜70質量%である。特にこの有機系フィラー系の充填剤は、ポリエステル組成物の生分解後に、その有機系フィラーが、土壌に残り、土壌改良剤、堆肥としての役割も果たすので、グリーンプラとしての役割を高める。
【0198】
充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。また、充填剤の使用量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、生分解性樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、また、通常50質量部以下、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。この範囲の下限を下回ると添加効果が小さくなるおそれがあり、上限を上回ると製造費が高くなったり、成形加工性を悪化させたりするおそれがある。これらの充填剤は、本発明の積層体の製造時のどの工程において積層体の樹脂層に含有させるようにしてもよい。
【0199】
その他、上述のように、ブロッキング防止剤、離型剤、防曇剤、結晶核剤、着色剤、難燃剤などを添加剤として用いてもよい。これらはいずれも、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、また、その使用量も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。更に、これらの添加剤はいずれも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
【0200】
本発明の積層体の樹脂層の厚みは特に限定されないが、一般に5μm以上300μmが好ましい。また使用用途によりヒートシール強度が求められる場合には10μm以上50μm以下が好ましく、その樹脂層の厚みムラも20%以内にするのが好ましい。下限値を下回ると、ヒートシール強度が不十分にあることがあり好ましくない。また上限値を上回ると、製袋や充填包装などの2次加工する際に成形時間が長くなり、成形サイクルが長くなる。また厚みムラが上限値を上回るとヒートシール部分の強度にムラが生じ好ましくない。
【0201】
(2−2)積層体の物性
<ヒートシール強度>
本発明の積層体はヒートシール強度が高い特徴を有し、2次加工がしやすいので高速自動包装機や自動充填機への適性がある。本発明の積層体の樹脂層同士のヒートシール強度は、少なくとも10N/15mm以上有しているが、その上限としては、25N/15mm以下が好ましい。下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着力が弱く、破袋するなど包装資材として実用的ではない。また上限値を上回る場合にはシール圧力、シール時間、シール温度を通常より高く設定する必要があり、2次加工時の生産性を低下させることがあり好ましくない。
【0202】
樹脂層とクラフト紙のヒートシール強度は少なくとも4N/15mm以上有しているが、その上限としては、10N/15mm以下が好ましい。下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着力が弱く、破袋するなど包装資材として実用的ではない。更に、クラフト紙などの基材表面にコロナ処理を必要とするので煩雑な操作となり好ましくない。また上限値を上回る場合にはシール圧力、シール時間、シール温度を通常より高く設定する必要があり、2次加工時の生産性を低下させることがあり好ましくない。
【0203】
なお、ここで言うヒートシール強度とは、設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で樹脂層同士、または樹脂層とクラフト紙とを接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作成し、引張り速度300mm/minでテンシロン型万能試験機によりヒートシール強度を測定した時の値である。
【0204】
本発明の積層体のヒートシール発現温度は110℃以上であればよく、特に上限値は設定されない。この温度以下であると、ヒートシール時間の延長やヒートシール圧力の高圧化を必要とし、更にシール強度が得られないことがあり好ましくない。
【0205】
<接着強度>
本発明の積層体が基材層を有する場合、基材と樹脂層との接着強度の下限値は0.1N以上であり、より好ましくは0.3N以上、最も好ましくは0.8N以上である。また好ましい上限値は2.0N以下である。好ましい下限値を下回ると、とても弱い力で剥離が進行し、その剥離形式も界面剥離であって接着力が弱く、積層体として実用的ではない。上限値を上回ると紙繊維がフィルムに残るいわゆる紙剥けを起こしながらの剥離になるものの、実用上特に問題とはならない。
【0206】
<保香性>
本発明の積層体において、樹脂層の生分解性樹脂をジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルとすると、各種臭い成分に対して保香性を有する積層体とすることができる。臭い成分としては低分子量のテルペン類、アンモニア等の含窒素化合物等の悪臭原因物質が挙げられる。その原理は、一般的に溶解度パラメータで説明されることが知られているが、それだけでは完全ではなく、結晶性などを考慮する必要があり、完全に理解されているわけではない。
【0207】
一般に、積層体では、多層構造とすることやガスバリアー層を設定することにより、保香性を付与することがある。本発明の積層体においては、生分解性樹脂として、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルを採用すると、高い保香性を有し、ガスバリアー層を省略することができるので好ましい。
【0208】
保香性の指標は香気成分であるリモネンに対する透過係数(g/m/day)で示す。透過係数の範囲は600g/m/day以下、好ましくは400g/m/day以下、より好ましくは200g/m/day以下である。通常の下限値の範囲は10g/m/day以上、より好ましくは50g/m/day以上、更に好ましくは100g/m/day以上である。上限値を上回ると、臭気成分が積層体を通して外界に放出することがあり、好ましくない。また下限値未満の数値は通常の成形条件では達成できず、延伸処理、樹脂層の肉厚化など工程を複雑化するので好ましくない。
【0209】
<吸着性>
本発明の積層体において、樹脂層の生分解性樹脂をジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルとすると、各種臭い成分に対する吸着性も低減することができる。臭い成分としては低分子量のテルペン類やビタミンなどの薬効成分の樹脂への吸着量が小さいものが好ましい。保香性と同様、一般的に溶解度パラメータで説明されることが知られているがそれだけでは完全ではなく、結晶性などを考慮する必要があり完全に理解されているわけではない。
【0210】
吸着性試験(下記実施例の吸着性試験方法を参照)における吸着量の範囲は、好ましくは5000ppm以下、より好ましくは4000ppm以下である。通常の下限値の範囲は100ppm以上、より好ましくは2000ppm以上、更に好ましくは3000ppm以上である。
【0211】
この積層体を包装材とした時にこの上限値を上回ると、積層体の樹脂層への香気成分の吸着量が多いため、被包装物からの香気成分量を減少させるので好ましくない。また下限値未満の数値は通常の成形条件では達成できず、延伸処理、樹脂層の肉厚化など工程を複雑化するので好ましくない。
【0212】
<水蒸気透過性>
本発明の積層体の水蒸気透過性は構成によって異なるが、紙と、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルとからなる積層紙の場合、1000g/m/24hr以上4000g/m/24hr以下である。この積層体を包装材とした時にこの上限値を上回ると、被包装材からの水分量を著しく低下させるので好ましくない。また下限値を下回る場合には通常の成形条件では達成できず、延伸処理、樹脂層の肉厚化など工程を複雑化するので好ましくない。なお、水蒸気透過性の測定値は、JIS Z0208に記載の透湿カップ法に準拠し、樹脂層20μmの積層体を温度40℃、湿度90%RHで測定した値である。
【0213】
(2−3)積層体の利用
<2次加工>
本発明で得られた積層体は各種包装資材や製袋、カップ、トレー、カートン等に2次加工が可能である。各種の加工は、従来の紙、プラスチック積層紙の場合と同じ方法、すなわち、包装資材としては三方シール自動製袋機、センターシール自動製袋機、スタンディングパウチ自動製袋機などの自動製袋機やピロー型自動充填包装機、三方シール充填包装機、四方シール充填包装機などの自動充填包装機を用いて行うことができ、製袋としては平袋、角底袋、亀の甲底袋などの各種形状に加工することができる。更に紙カップ成形機、打抜機、サック貼機、製函機等の装置を用いて加工することもできる。これらの加工機において積層体の接着方法は公知の技術で採用されるが、一般的にヒートシール法、インパルスシール法、超音波シール法、高周波シール法、ホットエアシール法、フレームシール法などが採用される。
【0214】
本発明の積層体のヒートシール温度は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、ヒートシール発現温度以上であればよく、特に上限値は設定されないが、通常は250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。下限値を下回ると接着されないことがあり好ましくない。また上限値を上回るとシール部の近傍も加熱によって樹脂が溶け出し、樹脂層の膜圧が薄肉化し、シール強度が低下するおそれがある。
【0215】
本発明の積層体のヒートシール圧力は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、0.05MPa以上、好ましくは0.1MPa以上であればよい。上限値は0.5MPa以下、好ましくは0.4MPa以下、より好ましくは0.3MPa以下である。下限値を下回ると接着されないことがあり好ましくない。また上限値を上回るとシールの端部の膜圧が薄肉化し、シール強度が低下するおそれがある。
【0216】
本発明の積層体のヒートシール時間は接着法により異なるが、シールバーを有する加熱式ヒートシール試験機を使用した場合、0.25秒以上、好ましくは0.5秒以上であればよい。上限値は3秒以下、好ましくは2秒以下、より好ましくは1.5秒以下である。下限値を下回ると接着されないことがあり好ましくない。また上限値を上回るとシールの端部の膜圧が薄肉化やシール強度が低下するおそれがある。
【0217】
<具体的な用途>
本発明にかかる積層体は、加工することによって、包装容器資材、農業・土木・水産用資材などに用いられる。
【0218】
包装容器資材としては、例えば、ショッピングバッグ、各種製袋、ビデオやオーディオ等の磁気テープカセット製品包装材、フレキシブルディスク包装材、製版用材、包装用バンド、粘着テープ、テープ、ヤーン、コップ、トレー、カートン、弁当箱、惣菜用容器、食品・菓子包装材、食品用ラップ材、化粧品・香粧品用ラップ材、おむつ、生理用ナプキン、医薬品用ラップ材、製薬用包装資材,肩こりや捻挫等に適用される外科用貼付薬用包装資材など食品、電子、医療、薬品、化粧品等の各種包装材が挙げられる。
【0219】
農業・土木・水産用資材としては、例えば、農業用・園芸用フィルム、農薬品用ラップフィルム、温室用フィルム、肥料用袋、育苗ポット、防水シート、土嚢用袋、建築用フィルム、雑草防止シート、テープやヤーンからなる植生ネットなどの農業・土木・水産分野で用いられる資材が挙げられる。その他、ゴミ袋、コンポストバッグとしても用途も挙げられ、広範囲における材料として好適に使用し得る。
【0220】
特に、樹脂層の生分解性樹脂をジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルとすると、上述のように高い保香性、吸着性を有することから、清酒、ジュース類、菓子類などの内装材、包装資材として好ましい。また、悪臭成分を外界に漏らさないことから、耐水性で臭気を漏らさないごみ袋などにも好適である。更に、高い水蒸気透過性も有することから、お弁当、おにぎり等の食品の包装資材にも好適に用いられる。本発明の積層体を用いることによって、温かい食品を包装した場合に発生する水蒸気を効果的に逃がし、中身の食品類のべたつきを防止して食感を保つことができる。
【0221】
<紙リサイクル>
本発明の積層体において、生分解性樹脂が脂肪族ポリエステルの場合、樹脂層と紙とからなる積層紙を回収する際には、アルカリ溶液に積層紙を浸漬することにより、脂肪族ポリエステルが紙よりも早く分解されるため、開繊した紙繊維を容易に回収することができる。ポリエチレンフィルムの場合は分解しないため、フィルムと紙繊維を分別する必要があり困難であったが、脂肪族ポリエステルを用いた本発明の構成の積層体とすることにより、低コストに容易に紙リサイクルを行うことが可能である。なお、この際、分解を促進するため、脂肪族ポリエステルの分解を促進する酵素を作用させてもよい。
【実施例】
【0222】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」とは、特に断り書きのない限り「質量部」を表わす。また、各実施例および比較例における積層体の物性は、下記手順で測定したものである。
【0223】
<メルトインデックス(MI)>
JIS K7210に基づき、メルトインデクサーを用いて190℃、荷重2.16kgにて測定した。単位はg/10minである。
<還元粘度(ηsp/c)>
ポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t)/t・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
【0224】
H−NMR>
試料約30mgを外径5mmのNMR試料管にはかり取り、重クロロホルム0.75mLに加えて溶かした。これについて、Bruker社製AVANCE400核磁気共鳴装置を用い、室温でH−NMRスペクトルを測定した。化学シフトの基準は、TMSを0.00ppmとした。
【0225】
<溶融膜の外観と安定性>
ダイス出口から溶融膜の状態の目視を実施した。
◎:溶融膜が透明で、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡がない正常な状態である。
またサージングも極めて少ない。
○:溶融膜が透明で、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡が少なく、成形に問題ないレベルでサージングも許容される範囲内である。
△:溶融膜が不透明で、FE(フィッシュアイ)や異物が多い状態である。またサージングも多い。
×:溶融膜がFE(フィッシュアイ)や異物が多いもしくは、気泡が多く膜割れが多発し、運転できない状態である。
【0226】
<臭気>
ダイス出口からの発煙の状態と臭気の官能試験を実施した。
○:発煙が少なく、鼻や目につく刺激臭がない。
△:発煙が多少あるが鼻や目につく刺激臭が少しあるが、作業上問題にならないレベル。
×:発煙があり、鼻や目につく刺激臭がある。
【0227】
<離ロール性>
冷却ロールからの張り付き具合を観測した。
◎:溶融膜が透明で、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡がない正常な状態である。
またサージングも極めて少ない。
○:溶融膜が透明で、FE(フィッシュアイ)や異物、気泡が少なく、成形に問題ないレベルでサージングも許容される範囲内である。
△:溶融膜が不透明で、FE(フィッシュアイ)や異物が多い状態である。またサージングも多い。
×:溶融膜がFE(フィッシュアイ)や異物が多いもしくは、気泡が多く膜割れが多発し、運転できない状態である。
【0228】
<ネックインN.I.>
積層体の厚みムラを考慮して厚み精度±3μmの範囲になるようにトリミングを実施し、製品有効幅を測定した。
◎:95%以上
○:80%以上
△:75%以上
×:成形体が得られず
【0229】
<成形性総合評価>
溶融膜の概観と安定性、臭気、離ロール性、NIを総合的に判断した。
◎:極めて良好な成形性である。
○:良好な成形性である。
△:多少問題点はあるが成形可能なレベルである。
×:成形性に深刻な問題がある。
【0230】
<接着強度>
樹脂層と紙基材間の接着強度を、剥離角度180°、剥離速度300mm/min、試験片幅15mmで剥離した時の強度で示し、また樹脂層と紙の剥離の様子を観察した。
A:界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。
B:実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、少しの紙剥けがある紙の凝集破壊が観測された
C:樹脂と紙基材との接着強度は弱いレベルであり、界面剥離が観測された。
【0231】
<ヒートシール強度>
JIS Z 1526に準じてヒートシール強度を求めた。試験片の作成およびヒートシール強度の測定に関してはサンプルの状態調節として23℃ 50%RH下で1日以上静置したものを使用した。
試験片としては、樹脂層の膜圧が20μmの平坦部を使用し、縦、横15cmに切り出し、樹脂層部分をあわせるようにして一端をヒートシーラーにてヒートシールし、幅15mmの短冊形に切り出したものを用いた。この時フィルムの流れ方向に直角にシールしたものを縦シール強度とした。逆にフィルムの流れ方向に平行にシールしたものを横シール強度とした。
ヒートシールは、シールバー幅5mmの片面加熱バーシーラーを使用して、シール温度150℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒で行った。
ヒートシール強度は、テンシロン型万能試験機にて剥離角度を180度とし、引張り速度300mm/minにおいて加重を測定した値(N/15mm)である。
【0232】
<紙とのヒートシール強度>
上述の樹脂層同士のヒートシール強度測定条件と同様に、樹脂層とクラフト紙とを重ねてヒートシールを行い、ヒートシール強度を測定した。
【0233】
(製造例1:重縮合用触媒の調製)
撹拌装置付きのガラス製ナス型フラスコに、酢酸マグネシウム・4水和物を62.0質量部入れ、更に250質量部の無水エタノール(純度99%以上)を加えた。更にエチルアシッドホスフェート(モノエステル体とジエステル体の混合質量比は45:55)を41.0質量部加え、23℃で撹拌を行った。15分後に酢酸マグネシウムが完全に溶解したことを確認後、テトラ−n−ブチルチタネートを75.0質量部添加した。更に10分間撹拌を継続し、均一混合溶液を得た。この混合溶液をナス型フラスコに移し、60℃のオイルバス中でエバポレーターによって減圧下で濃縮を行った。約1時間後に殆どのエタノールが留去され、半透明の粘稠な液体が残った。オイルバスの温度を更に80℃まで上昇させ、667Paの減圧下で更に濃縮を行った。粘稠な液体は表面から徐々に粉体状へと変化し、約2時間後には完全に粉体化した。その後、窒素を用いて常圧に戻し、室温まで冷却し、淡黄色粉体を得た。得られた触媒の金属元素分析値は、チタン原子含有量が10.3質量%、Mg原子含有量が6.8質量%、リン原子含有量が7.8質量%であり、モル比としては、Ti/P=0.85、Mg/P=1.1であった。また、エタノール溶媒を除く原料総質量に対して39%の製造時質量減少率が認められた。更に、粉体状の触媒を1,4−ブタンジオールに溶解させ、チタン原子として34000ppmとなるように調製した。1,4−ブタンジオール中における保存安定性は良好であり、窒素雰囲気下40℃で保存した触媒溶液は少なくとも40日間析出物の生成は認められなかった。また、この触媒溶液のpHは6.1であった。なお、本触媒液においては、エタノール、ブタノールや1,4−ブタンジオールのアルコキシド基由来の吸収がNMR上で観測されず、本触媒のチタン金属には有機アルコキシド基が結合していないことが判明した。
【0234】
[製造例2:脂肪族ポリエステル樹脂の製造]
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計および減圧用排気口を備えた反応容器に、原料としてコハク酸100質量部、1,4−ブタンジオール88.5質量部、リンゴ酸0.37質量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら2.5時間かけて230℃まで昇温してエステル化反応を行った。その後、前記の触媒溶液を添加した。添加量は得られるポリエステル樹脂あたりチタン原子として50ppmとなる量とした。その後250℃まで昇温しながら減圧下で6.5時間反応させて白色のポリエステル樹脂を得た。最終到達減圧度は0.07×10Paであった。得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5であり、得られたポリエステルの酸価は35μeq/tであった。MIは3g/10minであった。
【0235】
[製造例3:添加剤マスターバッチの製造]
ラミネート成形時に各種添加剤を任意の濃度で樹脂に添加できるように、各実施例および比較例において、使用する添加剤のマスターバッチ(MB)を予め製造した。樹脂は、各実施例および比較例で使用する樹脂をそれぞれ用いた(表1および表2の樹脂の欄参照)。使用した添加剤は表1及び表2のとおりである。具体的には、各種添加剤MBの濃度が1質量%になるように樹脂99質量部と各種添加剤1質量部をドライブレンドし、混錬温度を190℃とし、2軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレットを得、80℃、窒素気流下の熱風乾燥機にて乾燥させることによって、各種添加剤のMBを得た。
【0236】
【表1】

【0237】
【表2】

【0238】
[生分解性樹脂積層体の作成]
(実施例1)
ステアリン酸カルシウム(CaSt)の最終濃度が500ppmになるように、脂肪族ポリエステルのAZ91T(三菱化学社製 GS−Pla(MI=3))95質量部とCaStのMB5質量部をドライブレンドしておき、スクリュウ径40mmφの単軸押出機に幅360mmのハンガーコート型のTダイを用い、シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)280℃、ダイス部温度280℃に設定し、樹脂を押出し、押出機回転数100rpmで吐出一定とし溶融膜の安定を待った。安定後、ダイス直下の樹脂温度(260℃)、樹脂圧(9.6MPa)、原料樹脂のMI(6g/10min)およびダイス出口における溶融樹脂のMI(9g/min)を計測し、膜安定性、および臭気を観察した。その結果を表1に示す。
基材としてクラフト紙(70g/m)を速度50m/minで繰り出し、コロナ処理(55W/m)を施し、これに、膜厚20μmとなるよう繰り出し速度および押出機回転数を微調整しながら樹脂の溶融膜を積層することによって積層体を得た。エアギャップは120mmとし、冷却ロールにはマットロールを使用し、冷却温度を30℃とし、ニップロール圧は0.4MPaに設定した。成形時の冷却ロールからの離ロール性を表1にまとめた。得られた積層体は23℃恒温室に2日間静置後、接着強度、剥離の様子、ラミネート層同士のヒートシール強度の測定とラミネート層とクラフト紙とのヒートシール強度を測定した。積層体の物性評価結果についても表1に示す。
【0239】
ラミネート成形時には溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付いたものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧は9.6MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであり、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は12(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は7(N/15mm)であった。
【0240】
(実施例2)
実施例1のCaStをステアリン酸マグネシウム(MgSt)に変更し、ニップ圧を0.4MPaから0.25MPaに変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付いたものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧は9.7MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは9.5g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、少しの紙剥けがある紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は10(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8(N/15mm)であった。
【0241】
(実施例3)
実施例1のCaStをステアリン酸亜鉛(ZnSt)に変更し、エアギャップを120mmから90mmに変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付いたものの、作業上特に問題ないレベルであった。また、押出機の樹脂圧は9.6MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは9.5g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は18(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は7(N/15mm)であった。
【0242】
(実施例4)
実施例3のAZ91Tを製造例2で得た脂肪族ポリエステルに変更した以外は実施例3と同様に積層体を作成した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。また、押出機の樹脂圧は実施例1〜3よりも高いものの、10MPaで一定であり吐出安定性も優れていることから作業上特に問題ないレベルであった。溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは4g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは11.5g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は17(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8(N/15mm)であった。
【0243】
(実施例5)
実施例4のZnStの最終濃度を500ppmから800ppmに変更し、エアギャップを90mmから120mmに変更し、それ以外は実施例4と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。押出機の樹脂圧は実施例1〜3よりも高いものの、9.8MPaで一定であり吐出安定性も優れていることから作業上特に問題ないレベルであった。溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは4g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは12g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、わずかに紙剥けを起こす凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は14(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は7(N/15mm)であった。
【0244】
(実施例6)
実施例3に酸化防止剤A(Irganox1330(チバガイギー社製))MBを追加し、その最終添加濃度が800ppmとなるように配合し、実施例3と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付いたものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧は9.6MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6.5g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは15g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は19(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は6(N/15mm)であった。
【0245】
(実施例7)
実施例4のZnStMBを酸化防止剤A(Irganox1330(チバガイギー社製))MBに変更し、その最終添加濃度が800ppmとなるように配合し、実施例4と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明性が高く、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。特に、臭気は本実施例中の中で一番なく、9.7MPaで一定であり吐出安定性も優れていた。溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは4.0g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは18g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は19(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8であった。
【0246】
(実施例8)
実施例6の樹脂温度を260℃から220℃になるようにシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)190℃、C2(ダイス側温度)230℃、ダイス部温度235℃に設定し、実施例6と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。また押出機の樹脂圧12MPaで一定であり吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6.5g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは7g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、わずかに紙剥けを伴う紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は10(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は5(N/15mm)であった。
【0247】
(実施例9)
実施例6の樹脂温度を260℃から280℃になるようにシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)240℃、C2(ダイス側温度)280℃、ダイス部温度295℃に設定し、実施例6と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付くものの、作業上特に問題ないレベルであった。また、また押出機の樹脂圧8.5MPaで一定であり吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6.5g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは20g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、わずかに紙剥けを伴う紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は18(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は7(N/15mm)であった。
【0248】
(実施例10)
実施例7にZnStの最終濃度を500ppmになるようにZnStマスターバッチを添加し、更に樹脂温度を260℃から220℃になるようにシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)190℃、C2(ダイス側温度)230℃、ダイス部温度235℃に設定し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。また押出機の樹脂圧9.9MPaで一定であり吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6.2g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは25g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、わずかに紙剥けを伴う紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は15(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は7(N/15mm)であった。
【0249】
(実施例11)
実施例10の樹脂温度を260℃から280℃になるようにシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)240℃、C2(ダイス側温度)285℃、ダイス部温度300℃に設定し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。また、また押出機の樹脂圧8.4MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6.2g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは28g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、わずかに紙剥けを伴う紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は19(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8(N/15mm)であった。
【0250】
(実施例12)
脂肪族ポリエステルであるビオノーレ1010(昭和高分子社製(MI=11)、ウレタン結合量0.94質量%)を、スクリュウ径40mmφの単軸押出機に幅360mmのハンガーコート型のTダイを用い、シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)220℃、C2(ダイス側温度)260℃、ダイス部温度260℃に設定し、樹脂を押出し、押出機回転数100rpmで吐出一定とし溶融膜の安定を待った。安定後、ダイス直下の樹脂温度(240℃)、樹脂圧を計測し、膜安定性、および臭気を観察した。臭気は多少鼻に付いたものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧は10MPaで一定であり、吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは11g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは17g/10minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、部分的に界面剥離が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は10(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は5(N/15mm)であった。
【0251】
(実施例13)
実施例7の酸化防止剤AであるIrganox1330を酸化防止剤B(IrganoxHP2410(チバガイギー社製))に変更し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。結果は実施例7とほぼ同様であり、積層体として実用的なものであった。
【0252】
(実施例14)
実施例7の酸化防止剤AであるIrganox1330を酸化防止剤C(Irganox3114(チバガイギー社製))に変更し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。結果は実施例7とほぼ同様であり、積層体として実用的なものであった。
【0253】
(実施例15)
実施例7のエアギャップを120mmに変更し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。加工状況は、耳ゆれが少なく、成膜性は良好であり、成形加工性は実施例7と同等なものであった。実施例7と比較して、多少ネックインが大きくなるものの、積層体として実用的なものであった。樹脂層同士のヒートシール強度は12(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は6.5(N/15mm)であった。
【0254】
(実施例16)
製造例2の脂肪族ポリエステル68部に、酸化防止剤A(Irganox1330(チバガイギー社製))の1%MB7部とポリ乳酸(レイシアH−400、三井化学社製)25部をドライブレンドし、混錬温度を190℃にて、2軸押出機にてストランド状に押出し、ペレタイザーによりペレットを得た。これを80℃、窒素気流下の熱風乾燥機にて乾燥させることによって樹脂組成物を得た。この樹脂組成物をスクリュウ径40mmφの単軸押出機に幅360mmのハンガーコート型のTダイを用い、シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)220℃、C2(ダイス側温度)260℃、ダイス部温度275℃に設定し、樹脂を押出し、押出機回転数100rpmで吐出一定とし溶融膜の安定を待った。安定後、ダイス直下の樹脂温度(270℃)、樹脂圧(9.6MPa)を計測し、原料樹脂のMI(6.6g/10min)およびダイス出口における溶融樹脂のMI(12g/min)を計測し、膜安定性、および臭気を観察した。また、この樹脂を用いて実施例7と同様にラミネート成形した。結果を表2に示す。加工状況は、耳ゆれが少なく、成膜性は良好であり、成形加工性は実施例7と同等なものであった。また、ネックインが小さく加工安定性も良好であり、積層体として実用的なものであった。樹脂層同士のヒートシール強度は12(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は6.5(N/15mm)であった。得られた積層体の樹脂平均厚みは20μmであり、厚み精度±5μmの範囲における製品有効幅は97%であった。ネックインの評価は◎であった。
【0255】
(実施例17)
製造例2の脂肪族ポリエステル63部に、酸化防止剤A(Irganox1330(チバガイギー社製))の1%MB7部とポリ乳酸(レイシアH−400、三井化学社製)30部を添加して、ポリ乳酸30質量%の樹脂組成物を得た。これを、実施例16と同様に成形した。結果を表2に示す。加工状況は、耳ゆれが少なく、成膜性は良好であった。また、ネックインが小さく加工安定性も良好であった。結果は実施例15とほぼ同様であり、積層体として実用的なものであった。得られた積層体の樹脂平均厚みは20μmであり、厚み精度±5μmの範囲における製品有効幅は97%であった。ネックインの評価は◎であった。
【0256】
(実施例18)
実施例17のポリ乳酸を変性PBT(エコフレックス、BASF社製、ウレタン結合量0.45質量%)に変更した以外は、実施例17と同様に成形した。結果を表2に示す。この時の加工状況は、耳ゆれが少なく、成膜性は良好であった。また、ネックインが小さく加工安定性も良好であった。結果は実施例17とほぼ同様であり、積層体として実用的なものであった。得られた積層体の樹脂平均厚みは20μmであり、厚み精度±5μmの範囲における製品有効幅は98%であった。ネックインの評価は◎であった。
【0257】
(比較例1)
脂肪族ポリエステルであるビオノーレ1010(昭和高分子社製(MI=11)、ウレタン結合量0.94質量%)を、スクリュウ径40mmφの単軸押出機に幅360mmのハンガーコート型のTダイを用い、シリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)280℃、ダイス部温度285℃に設定し、樹脂を押出し、押出機回転数100rpmで吐出一定とし溶融膜の安定を待った。安定後、ダイス直下の樹脂温度262℃、樹脂圧(9.7MPa)を計測し、膜安定性、および臭気を観察した。結果を表1に示す。溶融膜の安定中から、溶融膜に気泡が入り(発泡)、膜割れを起こすこと、更にダイス近傍では溶融樹脂からの発煙が多く、刺激臭もひどいことから成形を中止した。原料樹脂のMIは11g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは38g/minであった。なお、ビオノ−レ1010は、コハク酸と1,4−ブタンジオールの主原料からなる重合体をヘキサメチレンジイソシアネートで鎖延長した脂肪族ポリエステルである。
【0258】
(比較例2)
実施例2の添加剤MBを除き、ニップ圧を0.25MPaから0.15MPaに変更した以外は実施例2と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡、発煙もなく成形安定性に優れていた。臭気は多少鼻に付くものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧は11MPaであったが樹脂圧やモーター負荷の電流値が安定せず、吐出安定性は良くなかった。また溶融膜のサージングもあった。原料樹脂のMIは4g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは38g/minであった。冷却ロールからの離ロール性は悪く、長時間の成形は困難であった。樹脂と紙基材との接着力は界面剥離が起こり接着強度は低いものであった。樹脂層同士のヒートシール強度は8(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8(N/15mm)であった。
【0259】
(比較例3)
実施例3のZnStの最終濃度を500ppmから5000ppmに変更し、ニップ圧を0.25MPaから0.15MPaに変更した以外は実施例3と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡の発生もなく成形安定性に優れていた。発煙は多少多く、かつ臭気も多少鼻に付くものの、作業上特に問題ないレベルであった。また押出機の樹脂圧10MPaで一定であり吐出安定性も優れ、溶融膜のサージングも少なかった。原料樹脂のMIは6g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは18g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は実使用上問題ないレベルであるが、界面剥離せず、紙の凝集破壊が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は6(N/15mm)であり、かつ樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は8(N/15mm)であった。また、離ロール性は非常に優れていたが、ロール汚れが運転後15分程度で顕著に現れていた。
【0260】
(比較例4)
実施例1のCaStをLiStに変更した以外は実施例1と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜の安定中、溶融膜に気泡が入り(発泡)、膜割れを起こし、分子量が低下することが観測され、ラミネート成形ができず中止した。また、その時の押出機の樹脂圧は8.9MPaであった。原料樹脂のMIは6g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは40g/minであった。
【0261】
(比較例5)
実施例7のニップ圧を0.4MPaから0.15MPaに変更した以外は実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明性が高く、気泡、発煙、臭気もなく成形安定性に優れていた。特に、臭気は本実施例中で一番少なく、樹脂圧は9MPaで一定であり吐出安定性も優れていた。溶融膜のサージングも少なかった。しかしながら樹脂と紙基材との間では界面剥離が起こり、接着強度は低いものであった。樹脂層同士のヒートシール強度は6(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は6(N/15mm)であった。
【0262】
(比較例6)
原料樹脂を低密度ポリエチレンである、日本ポリエチレン社製ノバテックスLC720(MI=9.5)に変更し、実施例1におけるシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)295℃、ダイス部温度300℃に設定し、樹脂温度が270℃になるように変更した。結果を表1に示す。樹脂圧は7.2MPaで一定であり吐出安定性も優れていた。樹脂層同士のヒートシール強度は8(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は1(N/15mm)以下であった。
【0263】
(比較例7)
実施例7の樹脂温度を260℃から325℃になるようにシリンダー設定温度をC1(ホッパー側温度)230℃、C2(ダイス側温度)295℃、ダイス部温度300℃に設定し、実施例7と同様にラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡もなく成形安定性に優れていた。但し、発煙と臭気は本実施例中で一番悪かった。また、押出機の樹脂圧は7.6MPaで一定で吐出安定性には優れているものの、溶融膜のサージングも大きく、ネックインも大きく耳部が厚く、厚みムラもあり、接着力も中央部と端部で大きな差があるものであった。原料樹脂のMIは6g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは38g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は弱いレベルであり、界面剥離が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は6(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は5(N/15mm)であった。
【0264】
(比較例8)
実施例7の酸化防止剤Aの最終濃度を800ppmから5000ppmに変更し、ラミネート成形を実施した。結果を表1に示す。溶融膜は透明で、ブツ、気泡もなく成形安定性に優れていた。但し、発煙がひどいものであった。また、押出機の樹脂圧は7.0MPaで一定で吐出安定性には優れているものの、溶融膜のサージングも大きく、ネックインも大きく耳部が厚く、厚みムラもあり、接着力も中央部と端部で大きな差があるものであった。原料樹脂のMIは7g/10minであり、ダイス出口における溶融樹脂のMIは35g/minであった。樹脂と紙基材との接着強度は弱いレベルであり、界面剥離が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は9(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は5(N/15mm)であった。
【0265】
(比較例9)
実施例16の製造例2の脂肪族ポリエステル53部に、酸化防止剤A(Irganox1330)の1%MB7部とポリ乳酸(レイシアH−400、三井化学社製)40部を添加して、ポリ乳酸30質量%の樹脂組成物を得た。これを実施例16と同様に成形した。結果を表2に示す。加工状況は、耳ゆれが少なく、成膜性は良好であった。また、ネックインが小さく加工安定性も良好であった。結果は実施例16とほぼ同様であり、積層体として実用的なものであった。得られた積層体の樹脂平均厚みは20μmであり、厚み精度±5μmの範囲における製品有効幅は97%であった。ネックインの評価は◎であった。樹脂と紙基材との接着強度は弱いレベルであり、界面剥離が観測された。樹脂層同士のヒートシール強度は9(N/15mm)であり、樹脂層とクラフト紙とのヒートシール強度は2(N/15mm)であった。
【0266】
(比較例10)
実施例18の変性PBT(エコフレックス、BASF社製、ウレタン結合量0.45質量%)を45質量%に変更した樹脂組成物を得た。これを実施例17と同様にて成形した。結果を表2に示す。発煙と臭気が非常に悪く、溶融膜の安定中、溶融膜に気泡が入り(発泡)、膜割れを起こし、分子量が低下することが観測された。これはエコフレックス中に含まれるウレタン結合の分解によると思われる。
【0267】
[積層体の包装材としての性能試験]
上記作成した積層体の中から、実施例6、実施例7および比較例6の積層体について、包装材としての性能試験を行った。評価方法および結果は下記のとおりである。
【0268】
<保香性試験>
50mlのサンプル瓶に香気成分(D−リモネン、和光純薬工業社製)を5g入れ、サンプル瓶の上部に樹脂層を下にした積層体で蓋をするようにして、23℃、50%RHの恒温室で静置した。経時により、香気成分の減少量を測定し、以下の式にて透過係数を求めた。結果は表3に示す。
1日あたりの減少量(g)/有効面積(m)=透過係数(g/m/day)
【0269】
<吸着性試験>
保香性試験後の積層体のフィルム部分を有機溶剤にて抽出し、GC(ガスクロマトグラフィー)にて香気成分量を下記の記載方法にて定量した。
試料約1.5(±0.5)gを加熱脱着管(GERSTEL社製TDS管)に充填し、両端に石英ウール(GLSciences社製)を詰めた。このTDS管を40℃の加熱脱着装置(GERSTEL社製TDS3)に挿入し、管内をヘリウムで置換した。その後、TDS管を60℃/minの速度で280℃まで昇温し、この温度で10分間熱抽出を行った。この加熱期間中、石英ウールを充填したGC注入(GERSTEL社製CIS4)を−150℃に冷却することにより、試料より発生した揮発成分を捕集した。GC注入口で冷却捕集した成分は、捕集部分(CIS4)を320℃まで急速に加熱することにより気化させてGCカラムに導入した。
別途検量線作成用に、定量用標準溶液として、へキサン(和光純薬、試薬特級)を溶媒として、D−リモネンの約800μg/mL溶液および8000μg/mL溶液を調整し、これらの溶液1μLを、石英ウールを充填したTDS管に添加し、280℃で5分間のDTEサンプリングをしたのち、試料と同条件でGC/IIS測定により検量線を作成した。この検量線を用いて、積層体が吸着した香気成分量を定量した。結果を表3に示す。
【0270】
<生分解性試験>
30cm×30cm×10cmのプラスチック製の密閉容器に園芸用土を6cmほどの高さまで入れ、4cm×4cmの試験片を土に乗せ、その上に約1cmの高さになるように土を乗せた。それを50℃、90%RHの恒温恒湿器に入れ、経時ごとに積層紙の質量変化と形状変化を測定した。結果は表3に示す。
◎:1ヶ月でフィルム部分に穴が空き、ほとんどフィルムの形状をなさない。
×:1ヶ月たってもフィルム部分の形状が維持されている状態。
【0271】
【表3】

【0272】
表3より明らかなように、本発明の積層体は、比較例6の積層体と比較して、透過係数や吸着量が非常に少なく、生分解性に優れており、包装材に適した積層体であることがわかる。
【0273】
<臭気官能試験>
実施例6、実施例7、比較例6で得た積層体について、それぞれの積層体を10cm×11cmの三方シール袋をヒートシール機にて成形し、そこにリモネン0.5gを脱脂綿1gにしみこませたサンプル瓶を準備し、袋に詰めて上部をヒートシールし経時変化ごとに臭気の官能試験を実施した。
結果、ポリエチレンを樹脂層とする積層体からはがリモネン臭が強く感じられた。しかし実施例6と実施例7の脂肪族ポリエステル製の樹脂層を有する積層体ではリモネン臭が抑えられていた。次に、香気成分を取り出し、袋に新鮮な空気を入れ、臭気の官能試験を実施した。樹脂層がポリエチレン製のものはリモネン臭が非常に強く感じられ、樹脂にリモネンが吸着されている様子であった。一方、樹脂層が脂肪族ポリエステル製のものは樹脂層がポリエチレン製に比べるとリモネン臭が低減されていた。
【0274】
<悪臭度の官能試験>
実施例7、比較例6で得た積層体を角底袋に成形し、そこに水気のある茶殻、コーヒーカス、野菜屑、魚の内臓物などの生ごみ5gを入れ、上部をヒートシールし経時変化ごとに悪臭度の官能試験を実施した。
結果、比較例6のポリエチレンを樹脂層とする積層体は悪臭がひどく感じられた一方、実施例7の樹脂層が脂肪族ポリエステル製のものでは悪臭が抑えられていた。
【0275】
<水蒸気透過性試験>
実施例7、比較例6で得た積層体をパルス式ヒートシール機にて10cm×11cmのセンターシール袋を作成し、炊き立てのご飯で作ったおにぎりを包装した。これを60分間静置した後、開封して確認したところ、樹脂層がポリエチレン製の袋には水滴が多く付着しており、中身のおにぎりが湿って型崩れしやすくなっていた。一方、樹脂層が脂肪族ポリエステル製の袋は水滴がポリエチレン製のものより少なく、中身のおにぎりの形状も保持されており、おいしく感じられた。
【0276】
以上、現時点において、最も実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う生分解性樹脂積層体およびその製造方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】本発明の生分解性樹脂積層体の製造に用いられる溶融押出コーティング・ラミネート装置100の一実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0278】
G エアギャップ
10 基材供給系統
11 基材繰出部
12 アンカーコート部
20 溶融樹脂供給系統
21 ホッパー
22 加熱シリンダー
23 アダプター部
24 ダイス部
25 押出機
30 ラミネート加工部系統
31 ニップロール
32 冷却ロール
100 溶融押出コーティング・ラミネート装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂を含有してなる樹脂層を有する生分解性樹脂積層体であって、下記方法(A)で測定された前記積層体のヒートシール強度が、10N/15mm以上である積層体。
(方法(A):設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で2つの前記積層体の前記樹脂層面同士を接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作成し、引張り速度300mm/minでテンシロン型万能試験機によりヒートシール強度を測定する。)
【請求項2】
下記方法(B)で測定された前記積層体のヒートシール強度が、4N/15mm以上である請求項1に記載の積層体。
(方法(B):設定温度150℃、シールバー幅5mm、シール圧力0.1MPa以上、シール時間0.5秒〜1.1秒の条件で、ヒートシール試験機で積層体の樹脂層とクラフト紙とを接着させ、15mm幅の短冊形状の試験片を作成し、引張り速度300mm/minでテンシロン型万能試験機によりヒートシール強度を測定する。)
【請求項3】
前記樹脂層が、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルである生分解性樹脂からなる、または、該脂肪族ポリエステルと、ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂との樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記ジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂が、ポリ乳酸または脂肪族・芳香族系ポリエステルであることを特徴とする請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量が0.90質量%以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂層が、酸化防止剤および/または滑剤を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記滑剤が脂肪酸金属塩であり、前記脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸が炭素数12以上30以下の炭素鎖を有し、前記脂肪酸金属塩を構成する金属が周期表の第3周期から第4周期のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、遷移金属類のいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
基材を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材が、紙、不織布、ポリ乳酸フィルム、ポリグリコール酸フィルムから選ばれる少なくとも1種を含むものであることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
少なくともジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルを含有してなる樹脂層を有する積層体の製造方法であって、前記樹脂層が、以下の(1)〜(6)を満たす条件で、押出コーティング法により成形されることを特徴とする、積層体の製造方法。
(1)樹脂層におけるジカルボン酸とジオールを主成分とする脂肪族ポリエステルの配合量が、樹脂層に含まれる生分解性樹脂全量を100質量部として、65質量部以上。
(2)溶融押出機のダイスの温度が230℃以上300℃以下。
(3)前記ダイス直下の樹脂温度が前記ダイス設定温度の±35℃。
(4)基材に樹脂層をラミネートするために、基材と樹脂層を冷却ロールとニップロールとの間で押圧する際のニップ圧が0.2MPa以上0.45MPa以下。
(5)前記ダイス出口から前記冷却ロールに接触するまでの距離であるエアギャップが50mm以上120mm以下。
(6)原料樹脂のMI(メルトインデックス;190℃、2.16Kg荷重)が3g/10min以上20g/10min以下であり、ダイス出口における溶融樹脂のMIが6g/10min以上35g/10min以下。
【請求項11】
前記脂肪族ポリエステル中のウレタン結合量が0.90質量%以下であることを特徴とする請求項10に記載の積層体の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−51210(P2009−51210A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198279(P2008−198279)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】