説明

生化学分析装置及び分注処理方法

【課題】生化学分析装置において、液体中に溶け込んだ気泡を効果的に除去することができる構成を提供する。
【解決手段】生化学分析装置は、脱気シリンジ82と、脱気シリンジ用モータ83と、分注シリンジ85と、分注シリンジ用モータ86と、分注部41と、第1電磁弁81と、第2電磁弁84と、制御部と、を備える。前記制御部は、脱気処理では、第1電磁弁81を制御してタンク側ポート81aを開放して供給経路68を接続し、第2電磁弁84を制御して脱気シリンジ側ポート84aを閉鎖して接続経路69を遮断する。このように、第1電磁弁81及び第2電磁弁84を制御するとともに、脱気シリンジ用モータ83を駆動することで、脱気ピストン95を移動させて脱気シリンジ82内を負圧にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学分析装置に関するものであり、詳細には、液体の脱気処理を行う構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
純水等の圧力伝達液を介して圧力を伝達して被検査液の吸引及び吐出等の処理を行う分注部を備える生化学分析装置において、負圧を発生させるための真空ポンプと中空糸膜とから構成される脱気処理装置を備えたものが従来から知られている。この種の脱気処理を開示するものとして、特許文献1及び特許文献2がある。また、真空ポンプではなくアスピレータを用いて負圧を発生させて脱気処理を行う自動分析装置が特許文献3に開示されている。
【0003】
また、中空糸膜を用いることなく脱気処理を行う分注装置を開示するものとして特許文献4がある。特許文献4は、ノズルと分注ポンプとが圧力伝達管によって接続され、前記分注ポンプで発生する吸引・吐出力を前記圧力伝達管を流通する圧力伝達液を介して前記ノズルに及ぼす分注装置において、以下の構成を開示する。即ち、分注装置は、補給槽と、切り替え弁と、補給管と、貯留槽と、制御部と、を有する。補給槽は、前記分注ポンプに前記圧力伝達液を供給する。切り替え弁は、前記分注ポンプと前記ノズルとの間の経路上に設けられる。補給管は、前記補給槽と前記切り替え弁とを接続する。貯留槽は、この補給管の途中に設けられ、前記圧力伝達液中の気泡をトラップする。制御部は、前記分注ポンプと前記切り替え弁を制御する。また、前記貯留槽は、前記切り替え弁より高所に位置し、貯留槽内部の圧力伝達液の表面に達した気泡を貯留槽内部の空気層によってトラップする。また、前記切り替え弁から前記貯留槽までの前記補給管の向きは、上向きである。更に、前記制御部は、前記圧力伝達管から前記圧力伝達液を前記分注ポンプに吸引させ、吸引された圧力伝達液を前記貯留槽を介して前記分注ポンプと前記補給槽との間で行き来させて圧力伝達液を流動させる。これによって、前記貯留槽における前記トラップを促進させて前記吸引された圧力伝達液から気泡を除去する。更に、前記切り替え弁を切り替えて、気泡が除去された圧力伝達液を前記分注ポンプから前記ノズルへ供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−174902号公報
【特許文献2】特開平3−118802号公報
【特許文献3】特開平8−160054号公報
【特許文献4】特許第3694370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のように真空ポンプを用いて脱気処理を行う場合、真空ポンプの動作時に振動が発生し、騒音の原因となったり、周辺の装置へ悪影響を与えたりするおそれがあった。また、真空ポンプ自体が高価であり、低コスト化の障害となっている面もあった。更に、中空糸膜は経年劣化するため、定期的に交換する必要があり、交換作業や新しい中空糸膜の購入等がユーザの負担となっていた。このように、特許文献1及び特許文献2で開示されるような脱気処理に関する構成には、コストの低減及びメンテナンス性の向上等の観点から改善の余地があった。
【0006】
この点、特許文献3は負圧を発生させる手段として、真空ポンプに代えてアスピレータを用いている。この構成では、真空ポンプを用いることで生じる上述の課題は解決できると考えられるが、結局のところは中空糸膜を用いているため、定期的な中空糸膜の交換が必要であった。
【0007】
ところで、タンク等の貯留槽から圧力伝達液をシリンジで吸引し、吸引した圧力伝達液を当該シリンジによって分注部に送り出す構成において、圧力伝達液をシリンジ内に吸引する際に、シリンジ内の圧力伝達液に溶け込んでいた空気が気泡となって発生することがあった。特許文献4の構成は、自然発泡を利用しており、中空糸膜の交換をする必要がないものの、その構成上、シリンジ内で発生した気泡を除去することはできなかった。従って、特許文献4の構成では、吸引作業で発生した気泡がそのまま圧力伝達液とともにノズル側に送り込まれ、分注精度を低下させるおそれがあった。高い分注精度が求められる生化学分析装置において、シリンジの吸引時に発生する気泡の除去は重要な課題の1つであり、解決が強く望まれていた。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生化学分析装置において、液体中に溶け込んだ気泡を効果的に除去することができる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下のように構成される生化学分析装置が提供される。即ち、生化学分析装置は、脱気シリンジと、脱気シリンジ用駆動部と、制御部と、を備える。前記脱気シリンジは、液体の脱気処理を行うためのものであって、脱気ピストンを有する。前記脱気シリンジ用駆動部は、前記脱気ピストンを移動させるためのものである。前記制御部は、前記脱気シリンジ用駆動部を駆動して前記脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にすることで前記脱気処理を行う。
【0011】
これにより、脱気シリンジ内を負圧にするように脱気ピストンを移動させることで、脱気シリンジ内に導入される液体に溶け込んでいた空気が気泡となって液体から出て行く形になる。従って、生化学分析装置の液体を用いる様々な作業において、液体中に溶け込んでいた空気が気泡となって液体の定量測定を阻害する事態を効果的に防止することができる。
【0012】
前記の生化学分析装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この生化学分析装置は、分注シリンジと、分注シリンジ用駆動部と、分注部と、第1切替弁と、第2切替弁と、を備える。前記分注シリンジは、分注ピストンを有し、前記脱気処理が行われた前記液体を圧力伝達液として吸引する。前記分注シリンジ用駆動部は、分注ピストンを移動させるためのものである。前記分注部は、前記分注シリンジから送り出された前記圧力伝達液を介して圧力を伝達して対象液体を吸引及び吐出する。前記第1切替弁は、前記脱気シリンジに前記液体を供給するための供給経路に配置される。前記第2切替弁は、前記脱気シリンジと前記分注シリンジとを接続するための接続経路に配置される。そして、前記制御部は、前記脱気処理においては、前記第1切替弁を制御して前記供給経路を開放し、前記第2切替弁を制御して前記接続経路を閉鎖するとともに、前記脱気シリンジ用駆動部を駆動することで、前記脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にする制御を行う。
【0013】
これにより、分注シリンジによる液体の吸引時に、分注シリンジ内が負圧になっても、脱気処理で既に液体中から空気が抜けているので、気泡の発生量を微量又はゼロとすることができる。このように、分注シリンジ内での気泡の発生を抑制できるので、気泡が分注部内に侵入して分注精度の低下を招く事態を効果的に防止でき、分注処理を精密に行うことができる。
【0014】
前記の生化学分析装置においては、前記接続経路は、水平方向又は水平方向よりも下方向を向くように前記脱気シリンジから延びるように構成されることが好ましい。
【0015】
これにより、脱気シリンジ内の液体で発生した気泡が接続経路に入り込むことを効果的に防止できる。
【0016】
前記の生化学分析装置においては、前記脱気ピストンは、前記脱気シリンジの内壁に接触する部分の少なくとも一部が、前記脱気シリンジ内の前記接続経路との接続部分よりも上方に位置できるように構成されていることが好ましい。
【0017】
これにより、脱気シリンジ内の前記接続部分近傍の内壁に付着しているおそれのある気泡を、脱気ピストンを上方に移動させることで削ぎ取ることができる。従って、分注シリンジの吸引作業において、脱気シリンジと接続経路との接続部分近傍の内壁に付着している気泡が分注シリンジ内に吸引される事態を効果的に防止できる。
【0018】
前記の生化学分析装置においては、前記第1切替弁は、大気側に接続する大気側接続部を有することが好ましい。
【0019】
これにより、分注シリンジの吸引時に脱気シリンジ内を大気圧にすることで、分注シリンジによる脱気シリンジ内の液体の吸引をスムーズに行うことができる。
【0020】
前記の生化学分析装置においては、前記制御部は、前記脱気シリンジ内に貯留されている前記液体の液面の高さが所定以下になると、脱気シリンジ内の空気を前記大気側接続部から排出するように脱気シリンジ用駆動部を制御することが好ましい。
【0021】
これにより、液面を十分な高さに保つことができるので、液面近傍に多く存在する気泡の接続経路への侵入を効果的に防止できる。
【0022】
前記の生化学分析装置においては、前記制御部は、脱気シリンジ内に貯留されている液体が前記大気側接続部を通過して排出されるまで脱気ピストンが移動するように脱気シリンジ用駆動部を制御することが好ましい。
【0023】
これにより、脱気シリンジ内に貯まった全ての空気を脱気シリンジ外に確実に排出することができる。
【0024】
前記の生化学分析装置においては、前記脱気シリンジ内に貯留される前記液体の液面を検出する液面検出部を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、脱気シリンジ内に現実に貯留されている液体の貯留量を正確に把握でき、当該貯留量に応じて脱気ピストンを適切な位置に移動させることができる。
【0026】
本発明の第2の観点によれば、以下の4つのステップを含む分注処理方法が提供される。即ち、第1ステップでは、脱気シリンジに液体を供給するための供給経路を開放するとともに、前記脱気シリンジと分注シリンジとを接続するための接続経路を閉鎖する。第2ステップでは、脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にすることで液体の脱気処理を行う。第3ステップでは、前記脱気処理が行われた前記液体を、前記分注シリンジが有する分注ピストンを移動させて当該分注シリンジに吸引する。第4ステップでは、前記分注シリンジから送り出されてきた前記液体を介して圧力を伝達して対象液体を吸引及び吐出する分注処理を行う。
【0027】
これにより、脱気処理において、液体に溶け込んでいる空気は、脱気シリンジ内が負圧になることで気泡となって液体から出て行く形になる。従って、分注シリンジによる液体の吸引時に、分注シリンジ内が負圧になっても、脱気処理で既に液体中から空気が抜けているので、気泡の発生量を微量又はゼロとすることができる。このように、分注シリンジ内での気泡の発生を抑制できるので、気泡が分注部内に侵入して分注精度の低下を招く事態を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る生化学分析装置の全体的な構成を示した模式平面図。
【図2】分注部及び吸引吐出機構の構成を概略的に示した模式図。
【図3】分注部及び吸引吐出機構の電気的構成を示したブロック図。
【図4】脱気シリンジによる空気の排出の様子を示した模式図。
【図5】分注処理時及び脱気処理時の吸引吐出機構及び分注部の各部の制御を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る生化学分析装置1の全体的な構成を示した模式平面図である。
【0030】
この図1に示すように、本実施形態の生化学分析装置1は本体11を備え、この本体11の内部には反応槽21及び検体試薬庫22が配置されている。
【0031】
本体11の正面には、タッチパネル式のディスプレイ(表示部、入力部)14が配置されている。このディスプレイ14は測定の進捗等を表示可能に構成されているほか、ユーザが前記ディスプレイ14のタッチパネルに触れることにより、測定条件の設定、測定の開始/中止の指示等、各種の操作を行うことができる。
【0032】
反応槽21は平面視で円形となるように構成されるとともに、反応容器としてのキュベット2を周方向に等間隔で並べて複数セットできるように構成されている。キュベット2は、透明な合成樹脂により、一端を開放させた細長い形状の容器に成形されている。また、このキュベット2は、使用後には廃棄されるいわゆるディスポーザブル式のキュベットとされている。反応槽21は、反応槽駆動部としての図略の駆動モータによって、所定時間毎に所定のピッチ角度ずつ間欠的に回転駆動される。
【0033】
検体試薬庫22には、円形の回転トレイ24が配置されている。この回転トレイ24には、検体(対象液体、被検査液)を収容した検体容器3と、試薬(対象液体)を収容した試薬容器としての試薬ボトル4と、を周方向に並べて複数セットできるように構成している。
【0034】
前記検体試薬庫22の上側は蓋カバー25によって覆われている。従って、ユーザは、装置が停止している状態で前記蓋カバー25を取り外すことで、検体容器3及び試薬ボトル4をセットしたり交換したりできるようになっている。また、前記検体試薬庫22には図略の保冷装置が備えられており、回転トレイ24にセットされた試薬及び検体を適切な温度に保持できるようになっている。
【0035】
前記回転トレイ24の外周面に対面するようにして、本体11の内部にはバーコードリーダ(読取部)28が配置されている。このバーコードリーダ28は、検体容器3及び試薬ボトル4に付されたバーコード(識別表示部)の内容を読み取ることで、セットされた検体容器3及び試薬ボトル4を識別できるようになっている。
【0036】
前記回転トレイ24は、検体試薬庫駆動部としての図略の駆動モータによって回転駆動される。この駆動モータにより回転トレイ24を適宜回転させて、複数の検体及び試薬の中から所望のものを後述の分注部41に供給できるようになっている。また、所望の検体容器3又は試薬ボトル4がバーコードリーダ28に対面するように駆動モータを制御することで、回転トレイ24の任意の位置にセットされている検体容器3及び試薬ボトル4のバーコードを読み取って識別できるようになっている。
【0037】
前記反応槽21の側部には測光部(吸光度測定部)31が備えられている。この測光部31は光源部32と受光部33とを備えている。光源部32は、反応槽21にセットされた状態のキュベット2が周方向で所定の場所(測光位置p)に位置しているときに、当該キュベット2に対して光(例えば、白色ハロゲン光)を照射する。受光部33は、キュベット2を通過した光を入射させ、その強度を測定する。また、光源部32は、特定の波長を透過させる図略のフィルタを複数備えており、このフィルタを図略の駆動モータにより切り換えることで、特定の波長の光に関する吸光度を測定できるようになっている。
【0038】
前記本体11は、検体試薬庫22の検体や試薬を吸引して反応槽21のキュベット2に所定量吐出するための分注部(検体分注部、試薬分注部)41を備えている。この分注部41は、上下方向に配置されたアーム旋回軸42と、このアーム旋回軸42の上端に取り付けられた旋回アーム43と、この旋回アーム43の先端に下向き突出状に設けられるピペット44と、を備えている。
【0039】
前記アーム旋回軸42には昇降機構65及び旋回機構66(何れも図1において省略)が連結されており、旋回アーム43及びピペット44を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面及び蓋カバー25の上面には、前記ピペット44の旋回に伴ってその先端が描く軌跡に沿うように、円弧溝26が形成されている。
【0040】
前記円弧溝26は平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(分注位置q)と、検体試薬庫22と、を接続するように形成されている。ピペット44の先端は、旋回機構66によって、この円弧溝26の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で昇降機構65を駆動することで、ピペット44の先端を検体容器3、試薬ボトル4、又はキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0041】
分注部41のピペット44は、後述する吸引吐出機構70(図1において省略)に本体11内部で接続されており、検体容器3の検体や試薬ボトル4の試薬を反応槽21のキュベット2に吐出する動作が可能になっている。また、前記円弧溝26の中途部にはピペット洗浄部61が備えられ、このピペット洗浄部61によって、ピペット44内の余分な検体や試薬を排出したり、ピペット44を洗浄したりできるようになっている。
【0042】
また、前記本体11は、キュベット2に分注された試薬や検体を撹拌するための撹拌部51を備えている。この撹拌部51は、上下方向に配置された撹拌部旋回軸52と、この撹拌部旋回軸52の上端に取り付けられた撹拌部旋回アーム53と、この撹拌部旋回アーム53の先端に下向き突出状に設けられる撹拌棒54と、を備えている。
【0043】
前記撹拌部旋回軸52には図示しない昇降機構及び旋回機構が備えられており、撹拌部旋回アーム53及び撹拌棒54を昇降させたり旋回させたりすることができる。本体11の上面には、前記撹拌部旋回アーム53の旋回に伴って撹拌棒54の先端が描く軌跡に沿うように、撹拌部円弧溝27が形成されている。
【0044】
前記撹拌部円弧溝27は、平面視において、前記反応槽21の周方向の所定の場所(撹拌位置r)と、反応槽21の側部に設けられた撹拌洗浄部62と、を接続するように設けられている。撹拌棒54の先端は、前記旋回機構によって、この撹拌部円弧溝27の内部を移動するようになっている。また、所定の位置で前記昇降機構を駆動することで、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部へ上方から挿入できるようになっている。
【0045】
撹拌部51の撹拌棒54には図示しない駆動モータが連結されており、撹拌棒54の先端をキュベット2の内部に挿入した状態で撹拌棒54を回転駆動することで、キュベット2の内容物を撹拌できるようになっている。また、前記撹拌洗浄部62では、撹拌後に試薬等が付着した撹拌棒54を洗浄できるように構成されている。
【0046】
前記本体11の上面にはキュベットストッカ71が備えられている。このキュベットストッカ71は前記反応槽21のほぼ直上方の位置に配置されるとともに、空のキュベット2を立てた状態で多数並べてストックできるようになっている。また、前記反応槽21の近傍にはダストポッド74が備えられて、使用済のキュベット2を廃棄可能に構成されている。
【0047】
更に、前記本体11はキュベット搬送部75を備えている。このキュベット搬送部75は、キュベット2を挟んで保持することが可能なアーム機構76を備え、前記反応槽21、前記キュベットストッカ71及び前記ダストポッド74の間でキュベット2を搬送できるように構成されている。
【0048】
具体的には、前記キュベット搬送部75は、キュベットストッカ71上の空のキュベット2を1個掴んで取り出し、前記窓部72から反応槽21に差し込んでセットできるようになっている。またキュベット搬送部75は、反応槽21にセットされている使用済のキュベット2を掴んで前記窓部72を通じて取り出し、前記ダストポッド74に投下して廃棄できるようになっている。
【0049】
次に、図2、図3及び図4を参照して、分注部41による液体の吸引吐出を可能にする吸引吐出機構70の詳細な構成について説明する。図2は、分注部41及び吸引吐出機構70の構成を概略的に示した模式図である。図3は、分注部41及び吸引吐出機構70の電気的構成を示したブロック図である。図4は、脱気シリンジ82による空気の排出の様子を示した模式図である。
【0050】
図2に示すように、吸引吐出機構70は、タンク80と、第1電磁弁81と、脱気シリンジ82と、脱気シリンジ用モータ83と、液面検出センサ91と、第2電磁弁84と、分注シリンジ85と、分注シリンジ用モータ86と、を備えている。
【0051】
また、図3に示すように、生化学分析装置1は、分注部41による液体の吸引吐出を行うために、吸引吐出機構70及び分注部41の各部を制御する制御部90を備えている。制御部90は、演算部としてのCPU、記憶部としてのメモリ等を備えており、第1電磁弁81、脱気シリンジ用モータ83、第2電磁弁84及び分注シリンジ用モータ86が電気的に接続されている。また、制御部90は、アーム旋回軸42の昇降機構65及び旋回機構66と電気的に接続されており、アーム旋回軸42を適宜のタイミングで動作させることができるように構成されている。更に、制御部90には、液面検出センサ91からの検出信号が入力されており、この液面検出センサ91の検出信号に基づいた吸引吐出機構70の制御が可能になっている。
【0052】
次に、吸引吐出機構70が備える各部の構成について説明していく。貯留槽としてのタンク80は、圧力伝達液としての純水(液体)100を貯留するためのものである。このタンク80は、本体11の外側に配置されており、ホースや配管等を介して本体11内の第1電磁弁81に接続されている。なお、以下の説明では、タンク80に貯留されている純水100の流れる方向に着目して、タンク80側を上流側、純水100を吐出する分注部41側を下流側と称することがある。
【0053】
第1電磁弁(第1切替弁)81は3ポート式に構成されており、タンク側ポート81aと、大気開放ポート81bと、脱気シリンジ接続ポート81cと、を有している。タンク側ポート81aは、制御部90からの動作信号を受信した時(通電時)に開放されるNC(Nomal Close)ポートであり、タンク80から純水100を輸送するための供給経路68が接続されている。大気開放ポート81bは、通電時に閉鎖状態となるNO(Nomal Open)ポートであり、通電していないときは脱気シリンジ82内部を大気側に繋げるように開放されている。脱気シリンジ接続ポート81cは、常時開いているCOM(Common)ポートであり、脱気シリンジ82の内部に配管等を介して接続されている。
【0054】
本実施形態では、タンク80とタンク側ポート81aを接続する配管と、脱気シリンジ接続ポート81cと脱気シリンジ82を接続する配管と、によって、タンク80から脱気シリンジ82に純水100を供給するための供給経路68が形成されている。また、大気開放ポート81bには配管が接続されており、この配管は、大気開放ポート81bに接続されている側と反対側の端部が開放されて大気側に接続されている。更に、この配管の端部近傍には、後述する脱気シリンジ82の排気処理に付随して排水される廃液を回収するための図略の廃液タンク(廃液系)が配置されている。なお、排気処理の詳細については後述する。
【0055】
脱気シリンジ82は、純水100内に含まれる空気を脱気するためのものである。本実施形態の脱気シリンジ82は、脱気筒部94と脱気ピストン95を有している。脱気ピストン95は、脱気シリンジ用駆動部としての脱気シリンジ用モータ83に接続されており、この脱気シリンジ用モータ83の駆動によって脱気筒部94内を上下方向に移動可能に構成されている。この脱気シリンジ用モータ83が制御部90により適宜のタイミングで駆動されることで、脱気シリンジ82内への水の吸引や排気処理等が行われる。なお、脱気シリンジ82の脱気処理の詳細については後述する。
【0056】
脱気筒部94の側面の上下方向中央部近傍には配管接続部98が形成されており、この配管接続部98が、脱気シリンジ82と後述の接続経路69との接続部分とされている。配管接続部98には接続配管99の上流側が接続されており、この接続配管99の下流側端部は第2電磁弁84に接続されている。接続配管99は、脱気筒部94から離れるに従って下方に傾斜した後、水平方向に折れ曲がり、そのまま第2電磁弁84に接続されている。配管接続部98は、接続配管99と第2電磁弁84の接続部分よりも上方に位置するように構成されている。
【0057】
また、図4に示すように、本実施形態の脱気シリンジ82において、脱気ピストン95は、脱気筒部94に対面する脱気ピストン95の側面部分(脱気筒部94との接触部分)の上端が配管接続部98よりもやや上方の位置まで移動できるように、その移動ストロークが設定されている。
【0058】
液面検出部としての液面検出センサ91は、脱気シリンジ82内に貯留されている純水100の液面が所定位置より上方にあるか否かを検出するために、脱気筒部94の上部近傍に配置されている。本実施形態の液面検出センサ91は、光源としてのLED92と、受光素子93としてのフォトダイオードを有しており、非接触型センサとして構成されている。
【0059】
第2電磁弁(第2切替弁)84は、第1電磁弁81と同様に3ポート式に構成されており、脱気シリンジ側ポート84aと、ピペット側ポート84bと、分注シリンジ接続ポート84cと、を有している。脱気シリンジ側ポート84aは、制御部90からの動作信号を受信した時(通電時)に開放されるNCポートであり、脱気シリンジ82内から純水100を輸送するための前記接続配管99が接続されている。ピペット側ポート84bは、通電時に閉鎖されるNOポートであり、ピペット44(分注部41)に純水100を輸送するための配管が接続されている。分注シリンジ接続ポート84cは常時開いているCOMポートであり、配管等を介して分注シリンジ85の内部と接続されている。本実施形態では、接続配管99と、この分注シリンジ接続ポート84cに接続される配管と、によって接続経路69が形成されている。
【0060】
分注シリンジ85は、分注に用いる圧力伝達液としての純水100を分注部41に供給する。この分注シリンジ85は、分注筒部96と分注ピストン97を有している。分注ピストン97は、分注シリンジ用駆動部としての分注シリンジ用モータ86に接続されており、この分注シリンジ用モータ86の駆動によって、分注筒部96内を上下方向に移動可能に構成されている。図2に示すように、本実施形態の吸引吐出機構70は、接続経路69を介して脱気シリンジ82の内部と分注シリンジ85の内部が接続されるように構成されている。
【0061】
なお、脱気シリンジ82は、分注シリンジ85よりも多くの純水100を貯留できるように構成されている。本実施形態の脱気シリンジ82は、脱気シリンジ82の脱気ピストン95を1回動作させた場合に、ピペット44の洗浄処理を含んだ分注処理を数回程度行うのに必要な純水100の量を貯留できる内容積を有している。
【0062】
この構成で、本実施形態の生化学分析装置1は、検体容器3の検体や試薬ボトル4の試薬を吸引し、反応槽21のキュベット2へ吐出する動作を行う。次に、図5を参照して、脱気シリンジ82による脱気処理及び分注部41による分注処理の詳細について説明する。図5は、分注処理時及び脱気処理時の吸引吐出機構70及び分注部41の各部の制御を示したフローチャートである。ディスプレイ14によって検体又は試薬の自動分析が指示されると、図5のフローチャートが開始される。
【0063】
図5のフローが開始されると、制御部90は、まず、脱気ピストン95が所定量上昇するように脱気シリンジ用モータ83を駆動する(S101)。次に、制御部90は、大気開放ポート81bを閉鎖するとともに、第1電磁弁81のタンク側ポート81aを開放し、タンク80から脱気シリンジ82までの経路を接続する(S102)。なお、図5のフローの開始時点では、(NCポートである)第2電磁弁84の脱気シリンジ側ポート84aは閉鎖状態になっている。
【0064】
次に、制御部90は脱気ピストン95が所定量下降するように脱気シリンジ用モータ83を駆動する(S103)。本実施形態においては、タンク80は脱気シリンジ82よりも下方に配置されており、タンク80と、脱気シリンジ82との間に高低差がある。また、タンク80と、脱気シリンジ82を結ぶ供給経路68が細長く構成されていることに加え、シリンジ容量に比べ多くの純水100を脱気シリンジ82側に一度に吸引する必要があるため、大きな吸引力が必要となる。そこで、上述したように、脱気ピストン95を下降させることで脱気シリンジ82内を負圧にし、タンク80側から純水100を吸引する吸引力を発生させて、脱気シリンジ82内に純水100を導入するのである。なお、このとき脱気シリンジ82内では、純水100に溶け込んでいた空気が気泡となることがある。生成された気泡は、浮力により、脱気シリンジ82内を液面に向かって上昇していく。
【0065】
脱気ピストン95が下方に移動し、所定量の純水100が脱気シリンジ82内に供給されたところで、制御部90は、第1電磁弁81の大気開放ポート81bを開放し、大気側と脱気シリンジ82内を接続する(S104)。この結果、脱気シリンジ82内が大気圧になる。
【0066】
次に、制御部90は第2電磁弁84の脱気シリンジ側ポート84aを開放するとともに、ピペット側ポート84bを閉鎖し、脱気シリンジ82の内部と分注シリンジ85の内部を接続する(S105)。
【0067】
続いて、制御部90は、分注ピストン97が所定量下降するように分注シリンジ用モータ86を駆動する(S106)。分注ピストン97が下方に移動することで、分注シリンジ85内が負圧になるので、脱気シリンジ82から純水100を吸引するための吸引力が発生する。この吸引力によって、脱気シリンジ82内の純水100が分注シリンジ85内に流入する。このとき、分注シリンジ85に流入する純水100は、上述したように脱気シリンジ82で予め脱気されたものであるので、分注シリンジ85内に負圧が発生しても、分注シリンジ85内の純水100から気泡が発生することを防止することができる。
【0068】
次に、制御部90は、第2電磁弁84の脱気シリンジ側ポート84aを閉鎖するとともに、ピペット側ポート84bを開放する(S107)。そして、分注ピストン97が所定量上昇するように分注シリンジ用モータ86を駆動し、純水100をピペット44(分注部41)からピペット洗浄部61(ピペット44外部)に吐出する(S108)。このピペット44外部に吐出される純水100によってピペット44内部が洗浄される。なお、本実施形態では、図5のフロー開始時でのピペット44の待機位置がピペット洗浄部61上に位置するように分注部41の待機位置が設定されている。
【0069】
制御部90は、第2電磁弁84をS107の処理で制御した状態に保ちつつ、ピペット44が検体容器3又は試薬ボトル4の所定位置まで移動するように、昇降機構65及び旋回機構66を制御してアーム旋回軸42を動作させる(S109)。ピペット44が検体容器3又は試薬ボトル4の所定位置まで移動したところで、検体容器3内の検体又は試薬ボトル4内の試薬を所定量吸引するために、分注ピストン97が下降するように分注シリンジ用モータ86を駆動する(S110)。このとき、検体又は試薬は必要量よりも若干多い目に吸引する。また、このS110の処理では、ピペット44内で純水100と検体又は試薬の間に微量のダミーエアが入るように一定量の空気を吸い込んだ状態で吸引動作が行われる。このダミーエアが純水100と検体又は試薬との間に介在することによって、ピペット44内で純水100と検体又は試薬が混じり合うことを防止できる。
【0070】
次に、制御部90は、ピペット44内に試薬又は検体を吸引した状態で、ピペット44が分注位置qまで移動するように、昇降機構65及び旋回機構66を制御してアーム旋回軸42を動作させる(S111)。分注位置qに到達したところで、制御部90は、分注ピストン97が所定量上昇するように分注用シリンジモータを駆動して、吸引していた検体又は試薬をキュベット2に必要量吐出する(S112)。
【0071】
以上の処理によって、キュベット2に必要量の検体又は試薬が吐出されたことになり、分注処理が完了する。次の検体又は試薬の分注処理が残っている場合は、S101の処理に戻って同様の処理が行われる。なお、S112の処理でピペット44内に残った検体又は試薬は、S101、又はS102の処理など適宜のタイミングで純水100とともに外部に吐出される。
【0072】
次に、脱気シリンジ82における排気処理について説明する。本実施形態の制御部90は液面検出センサ91の検出信号を監視し、脱気シリンジ82内の純水100の液面が所定位置より低くなっている場合に排気処理を行うように構成されている。以下に具体的な処理について説明していく。
【0073】
本実施形態の制御部90は、第2電磁弁84の脱気シリンジ側ポート84aの閉鎖(図5のS107の処理)を行った後に、脱気シリンジ82の排気処理を開始する。なお、排気処理を開始する時点では、NCポートであるタンク側ポート81aは閉鎖状態となっており、NOポートである大気開放ポート81bは開放状態になっている。
【0074】
また、制御部90は、純水100の液面の高さが所定以下になったことを示した検出信号を受信したときから脱気シリンジ用モータ83の駆動量をカウント(記憶)する。そして、制御部90は、記憶した駆動量及び脱気シリンジ82の内部形状等に基づいて、純水100の液面の高さを算出するように構成されている。
【0075】
排気処理の開始時点で、脱気シリンジ82内の液面の高さが所定以下になっている場合に、制御部90は脱気シリンジ用モータ83を駆動し、図4に示すように脱気ピストン95を上方に移動させる。脱気ピストン95が移動することによって、脱気シリンジ82内に留まっていた空気は、第1電磁弁81の大気開放ポート81bを通って外側へ抜け出ていく。脱気シリンジ82の上昇によって、液面の高さは上昇していき、やがて純水100が第1電磁弁81の大気開放ポート81bを通過して、大気開放ポート81bに接続される配管まで達する。配管まで達した純水100は、配管の端部に配置される前記廃液タンクに回収されることになる。このように、本実施形態では、脱気シリンジ内の純水100が大気開放ポート81bを通過して外側にオーバーフローするまで脱気ピストン95を上方に移動させるように脱気シリンジ用モータ83の駆動量が制御されている。
【0076】
また、本実施形態では、上記の排気処理時において制御部90が脱気シリンジ用モータ83の駆動量を適宜制御し、脱気ピストン95が脱気筒部94の内壁に接触する接触部分の上端が、配管接続部98より上方の位置となるまで、脱気ピストン95を移動させるようになっている。なお、脱気シリンジ用モータ83の駆動量は、排気処理開始時に算出した液面の高さに応じて決定される。
【0077】
ところで、脱気処理で発生した気泡のうちの一部は、純水100の液面まで到達せずに、液内で脱気筒部94の内壁に長時間付着していることがある。このように脱気筒部94の内壁付近に留まっている気泡は、S106の処理等によって生じる分注シリンジ85の吸引力によって分注シリンジ85内に導入されてしまうおそれがある。しかしながら、本実施形態では、上記排気処理時に制御部90が脱気シリンジ用モータ83を制御し、脱気ピストン95が、その側面部分が配管接続部98に対面する位置まで上方に移動するようになっている。従って、配管接続部98近傍の内壁に気泡が付着しているような場合であっても、当該気泡は脱気ピストン95の移動によって削ぎ取られ、強制的に上方に押し出されるような形になる。これによって、液面まで上昇せずに脱気筒部94の内壁に付着している気泡が分注シリンジ85内に吸引される事態を効果的に防止できる。
【0078】
なお、制御部90が脱気シリンジ用モータ83を駆動する駆動量は、液面検出センサ91の検出信号に基づいて決定される。例えば、検出信号を受信した後の分注シリンジ用モータ86の駆動量や、分注シリンジ用モータ86が停止するまでのカウント量等に基づいて適宜の方法で設定される。
【0079】
以上に示したように、本実施形態の生化学分析装置1は、以下のように構成される。即ち、生化学分析装置1は、脱気シリンジ82と、脱気シリンジ用モータ83と、制御部90と、を備える。脱気シリンジ82は、純水100の脱気処理を行うためのものであり、脱気ピストン95を有する。脱気シリンジ用モータ83は、脱気ピストン95を移動させる。制御部90は、脱気シリンジ用モータ83を駆動して脱気ピストン95を移動させて脱気シリンジ82内を負圧にすることで前記脱気処理を行う。
【0080】
これにより、純水100に予め溶け込んでいた空気が、脱気シリンジ82内が負圧になることで気泡となって純水100から出て行く形になる。従って、生化学分析装置1の液体を用いる様々な作業において、液体中に溶け込んでいた空気が気泡となって液体の定量測定を阻害する事態を効果的に防止することができる。
【0081】
また、本実施形態の生化学分析装置1は、分注シリンジ85と、分注シリンジ用モータ86と、分注部41と、第1電磁弁81と、第2電磁弁84と、を備える。分注シリンジ85は、分注ピストン97を有しており、脱気処理が行われた純水100を圧力伝達液として吸引する。分注シリンジ用モータ86は、分注ピストン97を移動させる。分注部41は、分注シリンジ85から送り出された純水100を介して圧力を伝達して検体又は試薬を吸引及び吐出する。第1電磁弁81は、脱気シリンジ82に純水100を供給するための供給経路68に配置される。第2電磁弁84は、脱気シリンジ82と分注シリンジ85とを接続するための接続経路69に配置される。そして、制御部90は、脱気処理においては、第1電磁弁81を制御してタンク側ポート81aを開放して供給経路68を接続し、第2電磁弁84を制御して脱気シリンジ側ポート84aを閉鎖して接続経路69を遮断する。このように、第1電磁弁81及び第2電磁弁84を制御するとともに、脱気シリンジ用モータ83を駆動することで、脱気ピストン95を移動させて脱気シリンジ82内を負圧にする制御を行う。
【0082】
これにより、分注シリンジ85による純水100の吸引時に、分注シリンジ85内が負圧になっても、脱気処理で既に純水100中から空気が抜けているので、気泡は発生しないか、発生してもその発生量は微量なものとなる。このように、分注シリンジ85内での気泡の発生を抑制できるので、気泡が分注部41内に侵入して分注精度の低下を招く事態を効果的に防止でき、分注処理を精密に行うことができる。
【0083】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、接続経路69は、水平方向又は水平方向よりも下方向を向くように脱気シリンジ82から延びるように構成される。
【0084】
これにより、脱気シリンジ82内の純水100で発生した気泡が接続経路69に入り込むことを効果的に防止できる。
【0085】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、脱気ピストン95は、脱気シリンジ82が有する脱気筒部94の内壁に接触する部分が、脱気シリンジ82内の配管接続部98よりも上方に位置できるように構成されている。
【0086】
これにより、脱気シリンジ82内の配管接続部98の内壁に付着しているおそれのある気泡を、脱気ピストン95を上方に移動させることで削ぎ取ることができる。従って、分注シリンジ85の吸引時において、脱気筒部94内の配管接続部98近傍の内壁に付着している気泡が分注シリンジ85内に吸引される事態を効果的に防止できる。
【0087】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、第1電磁弁81は、大気側に接続する脱気シリンジ接続ポート81cを有する。
【0088】
これにより、分注シリンジ85の吸引時に脱気シリンジ82内を大気圧にすることで、分注シリンジ85による脱気シリンジ内の純水100の吸引をスムーズに行うことができる。
【0089】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、制御部90は、脱気シリンジ82内に貯留されている純水100の液面の高さが所定以下になると、脱気シリンジ82内の空気を大気開放ポート81bから排出するように脱気シリンジ用モータ83を制御する。
【0090】
これにより、液面を十分な高さに保つことができるので、液面近傍に多く存在する気泡の接続経路69への侵入を効果的に防止できる。
【0091】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、制御部90は、脱気シリンジ82内に貯留されている純水100が大気開放ポート81bを通過して排出されるまで脱気ピストン95が移動するように脱気シリンジ用モータ83を制御する。
【0092】
これにより、脱気シリンジ82内に貯まった全ての空気を脱気シリンジ82外に確実に排出することができる。
【0093】
また、本実施形態の生化学分析装置1においては、脱気シリンジ82内に貯留される純水100の液面を検出する液面検出センサ91を備える。
【0094】
これにより、脱気シリンジ82内に現実に貯留されている純水100の貯留量を正確に把握でき、当該貯留量に応じて脱気ピストン95を適切な位置に移動させることができる。本実施形態では、必要以上に純水100が外部に排出されないように、脱気ピストンの位置が上方に行き過ぎないように脱気シリンジ用モータ83が制御されている。
【0095】
以上に本発明の実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0096】
上記実施形態では、脱気シリンジ82の排気処理時に、脱気シリンジ82内部の純水100が大気開放ポート81bを通過して、脱気シリンジ82の外側に配置される廃液タンクに回収されるように構成されているが、この構成は適宜変更できる。例えば、排気処理において、脱気シリンジ82内の純水100を脱気シリンジ82外にオーバーフローさせない構成とすることもできる。この場合、脱気シリンジ82の外側に溢れ出す廃液を回収するための廃液タンク(廃液系)を上記実施形態から省略することができる。
【0097】
また、上記実施形態の吸引吐出機構70の構成から液面検出センサ91を省略することもできる。この場合、例えば、以下のようにして液面の高さを把握して脱気シリンジ用モータ83の駆動量を制御することができる。即ち、制御部90は、脱気シリンジ82の内部の形状、脱気ピストン95の移動量(脱気シリンジ用モータ83の駆動量)等から脱気シリンジ82内に貯留されている純水100の液面を計算する。そして、その計算結果に基づいて、制御部90が脱気シリンジ用モータ83を適宜のタイミングで制御するのである。この構成によっても、脱気シリンジ82内の液面の高さを所定位置より高く保つことが可能である。
【0098】
また、上記実施形態では、排気処理時に常に脱気筒部94との接触部分が配管接続部98より上方になる位置まで脱気ピストン95が移動するように構成されているが、この構成は事情に応じて適宜変更することができる。例えば、制御部90が、脱気ピストンが配管接続部98の位置に関係なく、液面の高さのみに基づいて脱気ピストン95が移動するように脱気シリンジ用モータ83の駆動量を制御する構成とすることもできる。また、前記排気処理を行うにあたって数回に1回、脱気筒部94との接触部分が配管接続部98より上方になる位置まで脱気ピストン95が移動するように脱気シリンジ用モータ83の駆動量を制御する構成とすることもできる。
【0099】
上記実施形態では、圧力伝達液として純水100を用いているが、圧力を伝達できる液体であれば適宜のものを採用することができる。検体又は試薬によっては食塩水を圧力伝達液として採用することもできる。
【0100】
また、上記実施形態の構成に加えて、ピペット44の洗浄を行うために、分注シリンジよりも純水100を多く貯留できるように構成された洗浄用シリンジを更に備える構成に変更することもできる。
【0101】
また、タンク80への純水100の供給方法は、適宜の方法を採用することができる。例えば、生化学分析装置1の外側に配置される純水供給装置とタンク80をホース等を介して接続する構成に変更することもできる。
【0102】
本発明は、図1で示したディスポーザブル式のいわゆる小型の分析装置のみならず大型の分析装置にも適用することができる。なお、上述したように、本実施形態の構成は真空ポンプを用いることなく脱気処理を行うことができるので、真空ポンプの振動を原因とする他装置への影響を抑制できる。従って、本発明は、周辺に他の装置が設置されることが多い小型の生化学分析装置に適用することが特に有効である。
【0103】
また、本発明は、圧力伝達液(純水100)以外の液体の脱気処理に適用することができる。例えば、反応容器などを洗浄する洗浄水の脱気処理にも本発明を適用できる。また、上記実施形態で説明した、試料を個別の容器中で反応させるように構成されたいわゆるディスクリート方式の生化学分析装置以外にも本発明を適用することができる。例えば、試料並びに試薬をチューブに流し、この間に化学反応を進行させるように構成されるコンティニュアス・フロー方式の生化学分析装置における試薬(液体)の脱気処理にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 生化学分析装置
41 分注部
81 第1電磁弁(第1切替弁)
82 脱気シリンジ
83 脱気シリンジ用モータ(脱気シリンジ用駆動部)
84 第2電磁弁(第2切替弁)
85 分注シリンジ
86 分注シリンジ用モータ(分注シリンジ用駆動部)
90 制御部
91 液面検出センサ(液面検出部)
100 純水(液体、圧力伝達液)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱気ピストンを有し、液体の脱気処理を行う脱気シリンジと、
前記脱気ピストンを移動させる脱気シリンジ用駆動部と、
前記脱気シリンジ用駆動部を駆動して前記脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にすることで前記脱気処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生化学分析装置であって、
分注ピストンを有し、前記脱気処理が行われた前記液体を圧力伝達液として吸引する分注シリンジと、
前記分注ピストンを移動させる分注シリンジ用駆動部と、
前記分注シリンジから送り出された前記圧力伝達液を介して圧力を伝達して対象液体を吸引及び吐出する分注部と、
前記脱気シリンジに前記液体を供給するための供給経路に配置される第1切替弁と、
前記脱気シリンジと前記分注シリンジとを接続するための接続経路に配置される第2切替弁と、
を備え、
前記制御部は、前記脱気処理において、
前記第1切替弁を制御して前記供給経路を開放し、前記第2切替弁を制御して前記接続経路を閉鎖するとともに、前記脱気シリンジ用駆動部を駆動することで、前記脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にする制御を行うことを特徴とする生化学分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生化学分析装置であって、
前記接続経路は、水平方向又は水平方向よりも下方向を向くように前記脱気シリンジから延びるように構成されることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の生化学分析装置であって、
前記脱気ピストンは、前記脱気シリンジの内壁に接触する部分の少なくとも一部が、前記脱気シリンジ内の前記接続経路との接続部分よりも上方に位置できるように構成されていることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載の生化学分析装置であって、
前記第1切替弁は、大気側に接続する大気側接続部を有することを特徴とする生化学分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の生化学分析装置であって、
前記制御部は、前記脱気シリンジ内に貯留されている前記液体の液面の高さが所定以下になると、脱気シリンジ内の空気を前記大気側接続部から排出するように脱気シリンジ用駆動部を制御することを特徴とする生化学分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の生化学分析装置であって、
前記制御部は、脱気シリンジ内に貯留されている液体が前記大気側接続部を通過して排出されるまで脱気ピストンが移動するように脱気シリンジ用駆動部を制御することを特徴とする生化学分析装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の生化学分析装置であって、
前記脱気シリンジ内に貯留される前記液体の液面を検出する液面検出部を備えることを特徴とする生化学分析装置。
【請求項9】
脱気シリンジに液体を供給するための供給経路を開放するとともに、前記脱気シリンジと分注シリンジとを接続するための接続経路を閉鎖する第1ステップと、
脱気ピストンを移動させて前記脱気シリンジ内を負圧にすることで液体の脱気処理を行う第2ステップと、
前記脱気処理が行われた前記液体を、前記分注シリンジが有する分注ピストンを移動させて当該分注シリンジに吸引する第3ステップと、
前記分注シリンジから送り出されてきた前記液体を介して圧力を伝達して対象液体を吸引及び吐出する分注処理を行う第4ステップと、
を含むことを特徴とする分注処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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