説明

生地圧延装置及びその使用方法

【課題】一対のローラに生地が張りつくことを防止するとともに、変動可能なローラの隙間間隔を広い範囲にすることができる生地圧延装置を提供する。
【解決手段】第1のローラ11と第2のローラ12の隙間間隔を変えることが可能なローラ押圧部5と、第1のローラ11と第2のローラ12を互いに反対方向に同じ回転速度で回転させるローラ駆動部8と、第1のローラ11に打ち粉22を供給する打ち粉供給部6を設ける。ローラ押圧部5は、第1のローラ圧縮バネ34と第2のローラ圧縮バネ35と偏心カム33を設ける。ローラ駆動部8は、第1のローラ11を駆動するスプロケット15aと第2のローラ12を駆動するスプロケット15bの歯車数を同一とし、チェーン16をゆき違い方向に架けるとともにテンション調整部7を設ける。打ち粉供給部6は、打ち粉22の入った打ち粉容器21と傾斜面4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蕎麦やうどんなどの麺類や、餃子の皮やワンタン等に用いられる生地を、ローラを用いた圧延によって製造する生地圧延装置及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蕎麦やうどんなどの麺類や餃子の皮やワンタン等は、打ちたてに食するのが美味であることが知られている。特に、蕎麦やうどんでは、打ちたて、切り立て、ゆでたてに食することが味や風味の面からも極めて重要となっている。
【0003】
そして、蕎麦等を打ちたての状態等で食することができるのは、大量生産による汎用品ではなく、製造直後に販売し、その場所で食してしまうような中規模又は小規模の飲食店に限られる。したがって、蕎麦やうどんなどの麺類や餃子の皮やワンタン等の製造装置自体も、その日限りに消費してしまう程度の生産量に対応させる必要があり、あまり大規模で高価な装置は好ましくない。
【0004】
なお、蕎麦やうどんなどの麺類や餃子の皮やワンタン等に用いられている生地は、以下のようにして製造されていた。すなわち、これらの原料粉末に水等を加えて混練して生地塊を製造する。そして、製造した生地塊に、ローラ等を用いて薄く圧延して伸ばして生地を製造していた。
【0005】
このような生地の圧延装置としては特許文献1に開示されている。しかし、特許文献1の圧延装置は、消費量の少ない家庭用としては使用できるものの、業務用としては生産量が十分ではないという問題点がある。
【0006】
一方、本発明者は、特許文献2に記載のように一対のローラを用いて生地を圧延して薄く伸ばす装置をすでに開発している。この圧延装置を用いると、業務用として中規模又は小規模の飲食店にも十分に対応できる量の生地を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−178161号公報
【特許文献2】登録実用新案第3114067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載されている装置では、生地の圧延中に、一対のローラの表面に生地が張り付くという問題点があった。なお、ローラの表面に生地が張り付くか否かは、その日の温度や湿度などの気象状況にも影響されるという不安定な要素を含んでいる。そして、ローラの表面に生地が張り付くと、その除去作業が極めて煩わしく時間もかかるという問題点があった。
【0009】
さらに、原料となる粉末の生産地や収穫されてからの期間等によっては、水等を加え、混練によって得られる生地塊の硬さや粘り気にも影響されることが知られている。そして、生地塊の硬さや粘り気が変わってくると、ローラに生地が張り付くか否かの点でも変わってくる。加えて、生地塊の硬さや粘り気が変わると、一対のローラの隙間間隔を一定にした場合でも、圧延して得られる生地の厚みが大きく変動するという問題点があった。
【0010】
また、上述した特許文献2に記載の装置では、駆動源であるモータの回転力を、ギアを介して双方のローラに伝達するようにしている。ここで、ギアの噛合うことが可能な範囲は、その構造上、比較的狭い距離の範囲に限られる。そして、この範囲を越えてしまうと、ギアの噛合いが外れてしまい、モータの回転力を一方又は双方のローラに伝達することができなくなる。
【0011】
したがって、上述した特許文献2に記載の装置では、一対のローラの変動可能な隙間間隔を広い範囲にすることができないので、製造が可能な生地の厚み範囲も制限されてくるという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、製造直後に販売し消費してしまうような中規模又は小規模のお店で用いることができるとともに、一対のローラに生地が張りつきにくく、かつ一対のローラの変動可能な隙間間隔を広い範囲にすることができる生地圧延装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記した問題点の解決を目的としており、請求項1に記載した発明は、一対の第1のローラと第2のローラとを互いに反対方向に回転させて圧延して生地を製造するローラ押圧部を有する生地製造装置において、前記第1のローラと前記第2のローラは、それぞれの隙間間隔を変えることが可能であり、前記第1のローラと前記第2のローラは、チェーンとスプロケットを用いて互いに反対方向に同じ回転速度で回転させるローラ駆動部を有しており、前記第1のローラは、前記第2のローラよりも高い位置に設置されており、前記第1のローラに傾斜面を用いて打ち粉を供給する打ち粉供給部を有していることを特徴としている。
【0014】
本発明を用いると、一対のローラに生地が張りつくことがなく、かつ一対のローラの変動可能な隙間間隔を広い範囲にすることができるので様々な厚みの生地を製造することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載した発明において、前記打ち粉供給部は、打ち粉の入った打ち粉容器と、前記打ち粉が前記第1のローラに滑り落ちる傾斜面を有しており、前記打ち粉容器には、前記打ち粉を撹拌する撹拌羽根を有していることを特徴としている。
【0016】
この撹拌羽根によって、打ち粉容器内部の打ち粉は撹拌されて固まりにくくすることができるとともに、コンスタントに略斜下方の傾斜面に向けて打ち粉の供給を続けることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載した発明において、前記ローラ駆動部は、1本のチェーンと複数個のスプロケットを有しており、前記第1のローラを駆動するスプロケットと前記第2のローラを駆動するスプロケットとは歯車数が同一であり、前記第1のローラを駆動するスプロケットと前記第2のローラ駆動するスプロケットには前記チェーンがゆき違い方向に架けられており、該チェーンにはテンション調整部が設けられていることを特徴としている。
【0018】
本発明を用いると、一対のローラを駆動するチェーンのテンションを一定に保持することができる。したがって、一対のローラの隙間間隔が大きく変動をしたような場合でも、それぞれのローラに安定した駆動力を与えることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3に記載した発明において、前記ローラ押圧部は、前記第1のローラを前記第2のローラの方向に押圧する第1のローラ圧縮バネと、前記第2のローラを前記第1のローラとは反対方向に押圧する第2のローラ圧縮バネと、前記第2のローラを第2のローラシャフト保持具及び第2のローラシャフトを介して前記第1のローラの方向に移動させる偏心カムを有していることを特徴としている。
【0020】
本発明を用いると、作業者にとって安全な構造にすることができるとともに、一対のローラの隙間間隔を容易に調整することができる。その結果、目標とする厚みの生地を安定して生産することができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、一対の第1のローラと第2のローラとを互いに反対方向に回転させて圧延して生地を製造するローラ押圧部を有する生地製造装置の使用方法において、前記第1のローラと前記第2のローラは、それぞれの隙間間隔を変えることが可能であり、前記第1のローラと前記第2のローラは、チェーンとスプロケットを用いて互いに反対方向に同じ回転速度で回転させるローラ駆動部を有しており、前記第1のローラは、前記第2のローラよりも高い位置に設置されており、前記第1のローラに傾斜面を用いて打ち粉を供給する打ち粉供給部を有しており、前記生地の圧延中も前記打ち粉を前記第1のローラに供給するとともに、2回目以降の圧延では、前記第1のローラで圧延された生地の面と前記第2のローラで圧延された生地の面を、圧延をするごとに交互に入れ替えることを特徴としている。
【0022】
本発明を用いると、打ち粉の供給が続いている第1のローラで圧延される生地の面を、圧延をするごとに反対側の面(前回の圧延では、第2のローラで圧延された面)に入れ替えることによって、第2のローラと生地との張り付きを完全に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係わる生地圧延装置を用いると、一対のローラに生地が張りつくことがなく、ローラの変動可能な隙間間隔を広い範囲にすることができるので様々な厚みの生地を製造することができる。
【0024】
加えて、本発明の生地圧延装置は、構造が簡単であり、部品数も少なくコンパクトであるために低価格で製造をすることができることや、作業者にとっても安全な構造であるという特長がある。
【0025】
さらに加えて、本発明の生地圧延装置を用いると、十分な生産量を得ることができるので中規模又は小規模の飲食店で使用をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】生地圧延装置の概略図である。
【図2】ローラ押圧部の説明図である。
【図3】テンション調整部の説明図である。
【図4】打ち粉供給部の説明図である。
【図5】本発明に係わる生地圧延装置の使用状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下において、図1〜図5を用いて、本発明に係わる生地圧延装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0028】
1.生地圧延装置の概略
図1は、本発明に係わる生地圧延装置1の概略図である。この生地圧延装置1は、製造直後の打ちたてに食することができる中規模又は小規模の飲食店(蕎麦店等)で用いられことを目的としており、装置全体としてもコンパクトな構造をしている。
【0029】
そして、図1に示すように、右側の作業者2が立った状態で蕎麦やうどんなどの麺類や、餃子の皮やワンタン等に用いられる生地の圧延操作をするものである。以下において、図1に示すように、作業者2から本発明に係わる生地圧延装置1を見た場合において、近い位置を手前側、遠い位置を奥側と呼ぶことにする。
【0030】
図1において、本発明に係わる生地圧延装置1は、奥側の比較的高い位置に打ち粉供給部6、その手前側(右側)に傾斜面4があり、さらにその手前側(右側)に生地を圧延するローラ押圧部5を有している。すなわち、打ち粉供給部6をローラ押圧部5よりも高い位置に設けるとともに、打ち粉供給部6とローラ押圧部5との間には打ち粉22が滑り落ちるための傾斜面4を設けるようにした。
【0031】
ローラ押圧部5は、一対のローラ(第1のローラ11、第2のローラ12)を用いて生地を圧延する部分である。ここで、第1のローラ11の第1のローラシャフト13には、スプロケット15aが図示されていない螺子によって固定されている。一方、第2のローラ12の第2のローラシャフト14には、スプロケット15bが図示されていない螺子によって固定されている。
【0032】
ローラ駆動部8は、モータ18とチェーン16とスプロケット15a〜dを用いて、一対の第1のローラ11と第2のローラ12とを駆動するようにした。スプロケット15aとスプロケット15bとは、一本のチェーン16がゆき違い方向に架けられている。したがって、第1のローラ11と第2のローラ12とは、チェーン16とスプロケット15a,bを用いたローラ駆動部8によってそれぞれが反対方向に回転することができる。
【0033】
ここで、スプロケット15aとスプロケット15bの歯車数を同一にすることによって、第1のローラ11と第2のローラ12の回転速度が同一になるようにした。したがって、チェーン16とスプロケット15a、bを用いることによって、第1のローラ11及び第2のローラ12の駆動部分をコンパクトな構造にすることができる。
【0034】
なお、第1のローラ11及び第2のローラ12は、図示されていないスイッチよって、モータ18の回転方向を変えることができ、正転方向(生地を圧延する方向)及び逆転方向(生地を圧延する方向とは反対の方向)に回転することができる。したがって、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間部分に異物が挟まったような場合でも、それぞれのローラを逆転方向に回転させることによってその異物を簡単に取り除くことができる。
【0035】
2.ローラ押圧部
図1に示すように、作業者2から見て打ち粉供給部6の手前側にはローラ押圧部5を設けるようにした。ここでローラ押圧部5は、第1のローラ11と第2のローラ12を用いた一対のローラで構成されている。ここで、第1のローラ11と第2のローラ12とは、それぞれの隙間間隔を変えることができるようにするとともに、それぞれのローラの隙間間隔をガタつきがなく安定した状態で保持できるように、一定方向の押圧を加えるようにしたものである。
【0036】
第1のローラ11や第2のローラ12としては、木製、石製、金属製などいろいろな材質のものを使用することができる。例えば、木製のローラは軽く、熱伝導率が低いために生地との断熱性が高いという特長があり、硬い木材である紫檀材や黒檀材などを用いることが好ましい。また、紫檀材や黒檀材は美しいと感じさせることや、木のぬくもりを感じさせるために、蕎麦店等において作業を見つめるお客様に、いわゆるなつかしさや安心感を与えることができる。
【0037】
一方、石製のローラは水分を吸収しにくいことや変形しにくいという特長があり、金属製のローラは丈夫で加工しやすく比較的安価であるという特長がある。したがって、目的とする生地の製造条件や使用条件、ローラ製造時のコスト等によって、適宜、使用するローラの材質を選択することができる。
【0038】
作業者2から見て、奥側の第1のローラ11を傾斜面4の下端よりもやや低い位置に、手前側の第2のローラ12を第1のローラ11よりもさらに低い位置に設けるようにした(図1、2、4)。すなわち、第1のローラ11は、第2のローラ12よりも床面9から高い位置に設置するようにした。
【0039】
第1のローラ11の中心軸として第1のローラシャフト13があり、第1のローラシャフト13は第1のローラシャフト保持具36に回転可能な状態で保持されている。そして、第1のローラシャフト保持具36を、第1のローラ圧縮バネ34を用いることによって、第2のローラ12方向に一定の圧力で押圧するようにしている。ここで、ねじ構造をした取っ手38を回すことによって、ローラ圧縮バネ34による押圧力を調整できるようにした(図2a)。
【0040】
このローラ圧縮バネ34を用いることによって、枠体39のスライド溝40a内において、一定の力を加えれば、第1のローラ11は第2のローラ12とは反対方向(図2aにおいて略右上方向)に移動させることができる。したがって、誤って作業者2の指が第1のローラ11と第2のローラ12との間に挟まれたような場合でも、ローラ圧縮バネ34によっていわゆるゆとりが生じる構造をしているので、作業者2は安全に指を引き抜くことができる。すなわち、作業者2にとっても安全な構造となっている。
【0041】
第2のローラ12の中心軸として第2のローラシャフト14があり、第2のローラシャフト14は第2のローラシャフト保持具37に回転可能な状態で保持されている。そして、枠体39のスライド溝40b内において、第2のローラシャフト保持具37を一対の第2のローラ圧縮バネ35a,bによって、第1のローラ11とは反対の方向(略左下方向)に押圧するようにした(図2a、b)。
【0042】
すなわち、作業者2がレバー31を押し上げていない状態では、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔を最大のままで保持することができる。したがって、後述するように、大きな生地塊72の場合でも安定して圧延をすることができる(図5a,b)。
【0043】
ここで、作業者2がレバー31を押し上げることによって、偏心カム33を介して第2のローラ12を第1のローラ11の方向に平行移動させることができるようにした。ここで、偏心カム33は、第2のローラシャフト保持具37を第1のローラ11の方向に押して移動させ、それに伴って第2のローラシャフト14及び第2のローラ12は第1のローラ11の方向に平行移動する(図2b)。すなわち、作業者2がレバー31を押し上げることによって、第2のローラ12を第1のローラ11の方向に平行移動させることができる。
【0044】
なお、レバー31にはストッパ機構32が取り付けられているので、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔を一定の寸法のままで保持することができる。ここで、上述したように第2のローラシャフト保持具37には一対の第2のローラ圧縮バネ35a,bが取り付けられており、第1のローラ11とは反対の方向(図1における作業者2のいる手前側の方向)に常に押圧されているので、生地の圧延中に第2のローラシャフト保持具37や第2のローラ12がガタつくこともなく、目標とする厚みの生地を安定して生産することができる。
【0045】
上述したように、本発明に係わるローラ押圧部5は、作業者2にとって安全な構造であるとともに、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔を自由に調整することができる。その結果、目標とする厚みの生地を安定して生産することができる。
【0046】
3.ローラ駆動部
ローラ駆動部8は、モータ18と1本のチェーン16と複数個のスプロケット15a〜d等を用いて構成されている(図1)。そして、スプロケット15aとスプロケット15bとは歯車数が同一であり、チェーン16がゆき違い方向に架けられているようにした。したがって、第1のローラ11と第2のローラ12とは、それぞれが反対方向に同一の回転速度で回転することができる。
【0047】
上述したように、第1のローラシャフト13と第2のローラシャフト14とは、第1のローラシャフト保持具36及び第2のローラシャフト保持具37を介して、枠体39のスライド溝40a,b内において移動することができるようにした。
【0048】
そして、第1のローラシャフト13にはスプロケット15aが、第2のローラシャフト14にはスプロケット15bがそれぞれ図示されていない螺子によって取り付けられている。したがって、スプロケット15aとスプロケット15bとは、それぞれが略左右方向に一定の距離の範囲で移動できる構造となっている。
【0049】
そこで、本発明に係わる生地圧延装置1では、スプロケット15aとスプロケット15bが略左右方向に一定の距離の範囲で移動をしたような場合でも、それぞれのスプロケットに安定した駆動力を与えることが可能なローラ駆動部8の開発が重要になる。
【0050】
本発明に係わる生地圧延装置1では、スプロケット15aとスプロケット15bが一定の距離の範囲で移動をしたような場合でも、それぞれに駆動力を伝達するチェーン16に一定のテンションがかかるようなテンション調整部7を設けるようにした(図3a,b)。
【0051】
テンション調整部7は、スプロケット15dとスプロケット固定治具53とガイド棒52a,bとテンションバネ54等で構成されている。スプロケット固定治具53には回転可能なスプロケット15dが取り付けられており、スプロケット固定治具53は一対のガイド棒52a,bに沿って左右方向に移動可能な構造にした。
【0052】
また、スプロケット15dには、チェーン16がかけられている。スプロケット固定治具53には、左方向に押圧するためのテンションバネ54が設けられている(図3a,b。ただし、図3bではスプロケット15dを省略して記載した。)。スプロケット15dが取り付けられているスプロケット固定治具53は、このテンションバネ54によって、チェーン16に常に一定のテンションがかけられるように左右方向に移動することができる。
【0053】
すなわち、スプロケット固定治具53に取り付けられているスプロケット15dは、チェーン16に一定のテンションを与えるように左右方向に移動することができる。したがって、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔の変動によってチェーン16のテンションが低下したような場合には、スプロケット15dは左方向に動くことによってチェーン16のテンションを増加させることができる。
【0054】
一方、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔の変動によってチェーン16のテンションが増加したような場合には、スプロケット15dは右方向に動くことによってチェーン16のテンションを減少させることができる。
【0055】
したがって、このテンション調整部7によって、一対のローラの隙間間隔が大きく変動をしたような場合でも、それぞれのローラに安定した駆動力を与えることができる。そして、上述した特許文献2のようにギアを用いていない構造なので、一対のローラの隙間間隔の変動によりギアが外れて、モータ18からの駆動力を各ローラに伝達することができなくなるという問題点を解決することができる。
【0056】
上述したように、本発明を用いると、一対のローラをそれぞれが反対方向に同一の回転速度で回転させることができるとともに、それぞれのローラを駆動するチェーン16のテンションを一定の範囲に保持することができる。したがって、一対のローラの隙間間隔が大きく変動をしたような場合でも、それぞれのローラに安定した駆動力を与えることができる。
【0057】
4.打ち粉供給部
図1に示すように、作業者2から見て奥側の高い位置には打ち粉供給部6を設けるようにした。この打ち粉供給部6は、打ち粉22の入った打ち粉容器21と、その右側面に設置した撹拌用モータ61によって回転する撹拌羽根62と傾斜面4を有している(図4)。この撹拌羽根62によって、打ち粉容器21内部の打ち粉22は撹拌されて固まりにくくすることができるとともに、コンスタントに略斜下方の傾斜面4に向けて打ち粉22の供給を続けることができる。
【0058】
打ち粉容器21の材質としては樹脂製、金属製、木製などを用いることができる。ここで、透明の樹脂製、例えばアクリル製の打ち粉容器21を用いると作業者2は内部の打ち粉22の量を見ることができる。作業者2は、目視によって打ち粉容器21内の打ち粉22が減少したと確認されたような場合には、打ち粉容器21に打ち粉22を補給することができる。
【0059】
打ち粉容器21と傾斜面4との間には、3ミリメートル程度の隙間(図示なし)を設けるようにした。したがって、打ち粉容器21内部の打ち粉22は、この隙間から傾斜面4に沿って斜下方向に位置する第1のローラ11に向けて重力に従い滑り落ちる形で落下していく。ここで、傾斜面4の材質としては、打ち粉22が付着しにくい材質、例えば、アクリル製の板や金属製の板を用いることが好ましい。
【0060】
傾斜面4よりもやや低い位置に第1のローラ11を設け、第1のローラ11よりもさらに低い位置に第2のローラ12を設けるようにした(図1、4)。すなわち、床面9からの位置は、第1のローラ11が第2のローラ12よりも高い位置に設けるようにした。そして、図4に示すように、生地を圧延する準備段階において、第1のローラ11と第2のローラ12とが接触した状態で回転させておく。
【0061】
傾斜面4を滑り落ちてきた打ち粉22は、図4に示すように第1のローラ11の頂上部(最も高い位置)付近に落下させることによって、最初に第1のローラ11の表面に付着する。第2のローラ12は、第1のローラ11よりも低い位置にあることや、第1のローラ11と第2のローラ12とが接触した状態で回転していることなどから、第1のローラ11の表面に付着した打ち粉22は、転写されて第2のローラ12の表面にも付着する。
【0062】
なお、第1のローラ11や第2のローラ12に付着できなかった余分な打ち粉22は、そのまま装置フレーム3の内部に落下するので、それを回収して再利用をすることができる。
【0063】
したがって、生地を圧延する準備段階において、第1のローラ11と第2のローラ12との表面に、打ち粉22が十分に付着した状態となっている。このように、第1のローラ11と第2のローラ12との表面には、あらかじめ打ち粉22を十分な状態で付着させておくことによって圧延中に生地がそれぞれのローラの表面に張り付きにくくすることができる。
【0064】
なお、後述するように、生地の圧延中においても打ち粉供給部6の運転を続けることは可能であり、打ち粉22を第1のローラ11に供給することをそのまま続けることができる。
【0065】
上述したように、第1のローラ11及び第2のローラ12の表面には、あらかじめ十分な打ち粉を付着させておくことができるので、圧延中、ローラに生地が張り付くことがない。また、一対のローラの表面には、重力に従う形で傾斜面を滑り落ちた打ち粉を付着させることができるので、さしたる制御装置も不要であり、安価でコンパクトな生地製造装置1を提供することができる。
【0066】
5.生地製造装置の運転
以下において、本発明に係わる生地製造装置1を用いて、蕎麦用の生地を製造する場合について詳細に説明をする。
【0067】
最初に、蕎麦用の生地を圧延する準備段階として、作業者2はレバー31を持ち上げて、第1のローラ11と第2のローラ12とが接触した状態で1分間程度空運転をして、第1のローラ11と第2のローラ12との表面に十分な量の打ち粉22を付着させておく(図4)。
【0068】
生地の圧延中においても打ち粉供給部6を運転することは可能であり、本実施例では打ち粉22を第1のローラ11に供給することをそのまま続けるようにした。そして、作業者2は、レバー31を下げて第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔を目的とする寸法に設定する。
【0069】
第1のローラ11と第2のローラ12の上にそば粉と水等で混練した生地塊72を載せた状態にする。そうすると、生地塊72は第1のローラ11と第2のローラ12の回転力によって圧延されていき、当初は厚めの生地73aが垂下する(図5(a))。ここで、第1のローラ11と第2のローラ12との表面には、打ち粉22が十分な状態で付着されているので、圧延中にそれぞれのローラの表面に生地73aが張り付くことはない。
【0070】
なお、打ち粉22を第1のローラ11に供給することを続けながら生地を圧延しているので、第1のローラ11によって圧延された生地の面には、第2のローラ12によって圧延された生地の面よりも、より多くの打ち粉22が付着している。
【0071】
そして、図1に示す装置フレーム3の内部には、あらかじめ十分な打ち粉22が敷かれており、圧延された厚めの生地73aはそのまま打ち粉22の上に落下するようにした。
【0072】
次に、図5(b)に示すように、作業者2は下部コロ44a〜dの上に巻取棒71を載せた状態にする。そして、装置フレーム3内部の打ち粉22の上に落下した生地73aの一方の端をつまみ上げて、巻取棒71に生地73aを巻き取っていく。
【0073】
次に、前回と同様に、作業者2はレバー31を持ち上げて、第1のローラ11と第2のローラ12とが接触した状態で1分間程度空運転をして、第1のローラ11と第2のローラ12との表面には十分な量の打ち粉22を付着させる(図4)。そして、作業者2はレバー31を少し下げて、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間間隔を前回よりも狭い寸法に調整する。前回よりも、生地の厚みが薄くなるように圧延をするためである。
【0074】
次に、巻取棒71に巻き取った生地73aを上部コロ42a〜dに載せた状態にする(図5(c))。この際に、図5(b)に示すような巻取棒71に巻取った状態とは、巻取棒71の左右を反対方向にして上部コロ42a〜dに載せた状態にするのが好ましい(図5(c))。
【0075】
すなわち、2回目以降の圧延では、第1のローラ11で圧延された生地の面と第2のローラ12で圧延された生地の面を、圧延をするごとに交互に入れ替えるようにする。圧延中においても打ち粉22の供給が続いている第1のローラ11で圧延される生地の面を、圧延をするごとに反対側の面(前回の圧延では、第2のローラ12で圧延された面)に交互に入れ替えることによって、第2のローラ12と生地との張り付きをより完全に防止することができる。
【0076】
それから、生地73aの端をつまんで下方向に押し下げて、第1のローラ11と第2のローラ12との隙間部分に生地73aが噛み合うようにする。この状態でローラ駆動部8を動かして、第1のローラ11と第2のローラ12を回転させる。そうすると、生地73aは第1のローラ11と第2のローラ12により圧延されて、前回よりもさらに薄くなった生地73bが垂下していき(図5(c))、そのまま打ち粉22の上に落下する。
【0077】
次に、(図5(d))に示すように、作業者2は下部コロ44a〜dの上に巻取棒71を載せた状態にする。そして、装置フレーム3の内部の打ち粉22の上に落下した生地73bの一方の端をつまみ上げて巻取棒71に巻き取っていく。
【0078】
上述した、(図5(c)、(d))の工程を複数回繰り返すことによって、目的とする蕎麦用の薄い生地を製造することができる。なお、本実施例では蕎麦用の生地を製造する場合についての説明をしたが、うどんなどの麺類や餃子の皮やワンタン等に用いられる生地の圧延にも同様に用いることができる。
【0079】
上述したように、本発明の生地圧延装置1を用いると、重力を用いて打ち粉22を一対のローラの表面に付着させることができるので、圧延中、それぞれのローラに生地が張りつくことがない。また、一対のローラの隙間間隔の変動範囲を大きくすることができるので生地厚みの調整も容易にすることができる。
【0080】
加えて、本発明の生地圧延装置は、構造が簡単であり、部品数も少なくコンパクトであるために低価格で製造することができることや、作業者にとっても安全な構造となっている。
【0081】
さらに加えて、本発明の生地圧延装置を用いると、十分な生産量を確保することができるので、いわゆる打ちたての状態で食することができる中規模又は小規模の飲食店で使用をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、蕎麦やうどんなどの麺類や餃子の皮やワンタン等に用いられる生地を圧延によって製造する装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 生地圧延装置
2 作業者
3 装置フレーム
4 傾斜面
5 ローラ押圧部
6 打ち粉供給部
7 テンション制御部
8 ローラ駆動部
9 床面
11 第1のローラ
12 第2のローラ
13 第1のローラシャフト
14 第2のローラシャフト
15a,b,c,d,e スプロケット
16 チェーン
18 モータ
21 打ち粉容器
22 打ち粉
31 レバー
32 ストッパ機構
33 偏心カム
34 第1のローラ圧縮バネ
35a,b 第2のローラ圧縮バネ
36 第1のローラシャフト保持具
37 第2のローラシャフト保持具
38 取っ手
40a,b スライド溝
41a,b 上部コロ保持金具
42a,b,c,d 上部コロ
43a,b 下部コロ保持金具
44a,b,c,d 下部コロ
51 スプロケット
52a,b ガイド棒
53 スプロケット固定治具
54 テンションバネ
61 撹拌用モータ
62 撹拌羽根
71 巻取棒
72 生地塊
73a,b 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1のローラと第2のローラとを互いに反対方向に回転させて圧延して生地を製造するローラ押圧部を有する生地製造装置において、
前記第1のローラと前記第2のローラは、それぞれの隙間間隔を変えることが可能であり、
前記第1のローラと前記第2のローラは、チェーンとスプロケットを用いて互いに反対方向に同じ回転速度で回転させるローラ駆動部を有しており、
前記第1のローラは、前記第2のローラよりも高い位置に設置されており、
前記第1のローラに傾斜面を用いて打ち粉を供給する打ち粉供給部を有している
ことを特徴とする生地製造装置。
【請求項2】
前記打ち粉供給部は、
打ち粉の入った打ち粉容器と、
前記打ち粉が前記第1のローラに滑り落ちる傾斜面を有しており、
前記打ち粉容器には、前記打ち粉を撹拌する撹拌羽根を有している
ことを特徴とする請求項1記載の生地製造装置。
【請求項3】
前記ローラ駆動部は、
1本のチェーンと複数個のスプロケットを有しており、
前記第1のローラを駆動するスプロケットと前記第2のローラを駆動するスプロケットとは歯車数が同一であり、
前記第1のローラを駆動するスプロケットと前記第2のローラ駆動するスプロケットには前記チェーンがゆき違い方向に架けられており、
該チェーンにはテンション調整部が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の生地製造装置。
【請求項4】
前記ローラ押圧部は、
前記第1のローラを前記第2のローラの方向に押圧する第1のローラ圧縮バネと、
前記第2のローラを前記第1のローラとは反対方向に押圧する第2のローラ圧縮バネと、
前記第2のローラを第2のローラシャフト保持具及び第2のローラシャフトを介して前記第1のローラの方向に移動させる偏心カムを有している
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の生地製造装置。
【請求項5】
一対の第1のローラと第2のローラとを互いに反対方向に回転させて圧延して生地を製造するローラ押圧部を有する生地製造装置の使用方法において、
前記第1のローラと前記第2のローラは、それぞれの隙間間隔を変えることが可能であり、
前記第1のローラと前記第2のローラは、チェーンとスプロケットを用いて互いに反対方向に同じ回転速度で回転させるローラ駆動部を有しており、
前記第1のローラは、前記第2のローラよりも高い位置に設置されており、
前記第1のローラに傾斜面を用いて打ち粉を供給する打ち粉供給部を有しており、
前記生地の圧延中も前記打ち粉を前記第1のローラに供給するとともに、
2回目以降の圧延では、前記第1のローラで圧延された生地の面と前記第2のローラで圧延された生地の面を、圧延をするごとに交互に入れ替える
ことを特徴とする生地製造装置の使用方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165706(P2012−165706A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30275(P2011−30275)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【特許番号】特許第4905903号(P4905903)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(501391467)有限会社並木藤 (1)
【Fターム(参考)】