説明

生物ミネラルの製造方法およびその製造装置

【課題】 原料の加熱と、ろ過によって十分に有害物質を除去し、安全性の高い生物ミネラルを製造することができる生物ミネラルの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 生物体を粉砕する第1の粉砕装置100と、粉砕された粉体を加熱する加熱装置200と、加熱された灰化された粉体と液体との混合液をろ過するろ過装置300と、該ろ過装置300で抽出されたろ過液を強制的に水分を蒸発させる蒸発装置400と、水分が除去された残留物をパウダー状に粉砕する第2の粉砕装置500とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物体を燃焼させることで生物由来のミネラルを製造する方法に関し、特に、生物体に含有する不純物を十分に除去することが可能な生物ミネラルの製造方法およびその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に多種類のミネラルが生物体の生体活動に必要で且つ有用な鉱物質として知られているが、このミネラルを摂取する場合、動物とりわけ人体においては食品から摂取されるのが通常である。しかしながら、一般の食生活から人体に必要なすべてのミネラルを不足なく摂取することは事実上困難であるため、ミネラル不足による人の健康障害の治療や予防には、化学合成により人工的に製造されたミネラルを補給することが多い。しかし、この方法では、生体内吸収が悪く、大半が糞尿と共に排泄され、あるいは異物として拒否反応をもたらす等の不都合がある。
【0003】
一方、ミネラルは大地や水中、海水中から植物又は食物連鎖によって動植物を食した動物を介して人体に吸収されるのが最も自然であるが、これらの動植物には必ずしも必要量のミネラルが含有しているとは限らず、さらに多くの動植物がミネラル以外の無機質又は有機質の人体にとっての有毒物や有害物質を多量に含んでいる場合もあるため、十分なミネラルを人の食生活のみから安全に摂取することも困難である。
【0004】
このため、従来より、有効なミネラルを含む植物や動物を燃焼灰化してミネラルを抽出採取する方法が試みられているが、採取されるミネラルが単一のミネラルにとどまったり、採取されるミネラルの種類と量が不安定であるという理由から、十分な実用化に至っていないのが現状である。
【0005】
このような問題を解消するため、特許文献1に開示されるように、人体への吸収率が高く安全な生物由来の「生物ミネラルの製造方法」が提案されている。
この特許文献1の「生物ミネラルの製造方法」では、一種類以上のミネラルを含む生物体を、上記ミネラルのうち抽出採取すべきミネラルがガス化して消失する加熱上限温度以下の温度で加熱することによって生物体の有機質成分を除去させ、上記採取すべきミネラルを蒸留させて抽出採取する生物ミネラルの製造方法において、予め決められた単一の種類の又は複数種類組合されてなる生物体より特定のミネラルを、そのミネラルを抽出できる加熱上限温度で加熱して抽出採取し、これとは別に上記生物体より他の種類のミネラルを当該ミネラルを抽出できる加熱上限温度で加熱することによって抽出採取し、両ミネラルを混合することで、少なくとも加熱点以上の加熱上限温度を有するミネラルを確実に抽出採取し、それ以下のミネラルを残存させない明確さや含有ミネラルの安定性をもたらし、さらに特定のミネラルを多く含む原料生物体より、より純度の高いミネラルを抽出して混合できるので、比較的正確な混合比の生物混合ミネラルを得ることができる、としている。
【特許文献1】特許第3084687号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で提案されている生物ミネラルの製造方法によれば、原料を加熱上限温度で加熱することにより有害物質をガス化して除去し、原料を灰化して精製抽出するとしているものの、ただ単に加熱上限温度で原料を加熱するだけでは、原料を均一に灰化することに時間がかかるという問題がある。のみならず、加熱だけで有害物質を除去することは困難である。そして、このように製造された生物ミネラルは安全性の面からすると十分でないといった問題がある。
【0007】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、比較的短時間で有害物質を十分に除去し、安全性の高い高純度の生物ミネラルを製造することができる生物ミネラルの製造方法およびその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成するため、複数種類のミネラルを含有する生物体を加熱して抽出採取する生物ミネラルの製造方法において、前記生物体を粉砕して粉体とする第1の粉砕工程と、前記粉体を灰化させるまで加熱する加熱工程と、前記灰化された粉体に液体を混合して混合された混合液をろ過するろ過工程と、前記ろ過されたろ過液を蒸発させる蒸発工程と、前記蒸発させた後に残留する残留物を粉砕する第2の粉砕工程と、を備えたことを特徴とする生物ミネラルの製造方法を提供するものである。
【0009】
以上の構成において、前記粉体を加熱する際に、異なる温度で2段階加熱させることが望ましく、また、前記混合液を複数回ろ過することで、ろ過液を抽出することが望ましい。
【0010】
また、本発明は、上記の目的を達成するため、複数種類のミネラルを含有する生物体を加熱して抽出採取するための生物ミネラルの製造装置において、前記生物体を粉砕して粉体とする第1の粉砕手段と、前記粉砕装置で粉砕された粉体を灰化するまで加熱する加熱手段と、前記加熱手段で灰化された粉体に液体を混合して混合された混合液をろ過するろ過手段と、前記ろ過手段でろ過したろ過液を蒸発させる蒸発手段と、前記蒸発手段で蒸発させた後に残留する残留物を粉砕する第2の粉砕手段と、を備えたことを特徴とする生物ミネラルの製造装置を提供するものである。
【0011】
以上の構成において、前記ろ過手段は、直列に接続された複数のろ過装置からなることが望ましく、また、前記加熱手段は、前記粉体を異なる温度で2段階加熱することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生物体を粉砕して粉体とし、この粉体を灰化させるまで加熱し、灰化された粉体に液体を混合して混合された混合液をろ過し、ろ過されたろ過液を蒸発させ、蒸発させた後に残留する残留物を粉砕するようにしたので、生物体に含有する不純物を加熱とろ過によって十分に除去することができ、安全性の高い高純度の生物ミネラルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本実施の形態に係る生物ミネラルの製造方法および生物ミネラルの製造装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る生物ミネラルの製造方法が適用される生物ミネラルの製造装置の概略構成図である。
この生物ミネラルの製造装置10は、原料となる海草(又は海藻)や草木を粉砕して粉体にする第1の粉砕装置100と、この第1の粉砕装置100で粉砕された粉体を加熱して不純物を取り除く加熱装置200と、この加熱装置200で加熱されて不純物が取り除かれた粉体と後述する液体タンク305から供給される高温水とを混合させた混合液をろ過するろ過装置300と、このろ過装置300から得られたろ過液を蒸発させる蒸発装置400と、この蒸発装置400から得られた残留物をさらに粉砕して微粉体にする第2の粉砕装置500とから構成されている。
【0014】
第1の粉砕装置100は、原料となる海草(又は海藻)や草木等を粉砕して粉体状にするものであり、原料を投入集積するホッパ102と、その下部に設置される粉砕機101とからなる。ホッパ102に投入された原料は粉砕機101で粉体になるまで粉砕され、粉砕された粉体は加熱装置200に送り込まれる。
【0015】
加熱装置200は、前述したように、第1の粉砕装置100から送り込まれた粉体を加熱して粉体に含まれる不純物を取り除く装置である。この加熱装置200内に粉体と窒素ガスおよび脱酸度剤を混入させて加熱装置200内を無酸素状態にし、粉体を加熱する。加熱装置200内では粉体を300〜500℃の温度で加熱する1次加熱と、1次加熱の加熱温度よりも高い温度(600〜800℃)でさらに粉体を加熱する2次加熱が行なわれる。1次加熱により、加熱装置200で発生する不純物、例えば、農薬,タール,ヨウ素等の不純物を取り除き、2次加熱で完全に灰化した粉体とする。そして、2次加熱で完全に灰化した粉体は、ろ過装置300へ送られる。
【0016】
ろ過装置300は、加熱装置200で灰化された粉体に高温水を混合しその混合液をろ過するろ過装置であって、4段にわたって混合液をろ過する1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304と、1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304に高温水を供給するための液体タンク305と、1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304から取り出されるろ過液を貯留する貯留タンク306とから構成されている。
【0017】
1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304には、それぞれポンプ307とソレノイドバルブ308が直列に直線状で接続されており、加熱装置200に1次ろ過装置301が接続され、1次ろ過装置に2次ろ過装置が接続され、2次ろ過装置に3次ろ過装置が接続され、3次ろ過装置に4次ろ過装置304が接続され、4次ろ過装置304が末端のろ過装置となる構成となっている。そして、前段のろ過装置から後段のろ過装置に送出される混合液に液体タンク305からの高温水をそれぞれ供給する。なお、前段のろ過装置から後段のろ過装置に送出される混合液に含まれる滓(残渣)は各ろ過装置301〜304の底部に沈殿しつつ冗談のろ過装置から下段のろ過装置に流れ込み、最終的に4次ろ過装置304からポンプ307とソレノイドバルブ308を介して外部に放出される。
【0018】
また、1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304には、それぞれのろ過装置から排出される混合液をろ過するフィルタ309と、フィルタ309によってろ過されたろ過液を貯留タンク306に送出するポンプ310と、このポンプ310の開閉制御を行なうソレノイドバルブ311と、からなるろ過機構がそれぞれ接続されている。なお、ポンプ307及びソレノイドバルブ308を電子制御することにより、各ろ過装置301〜304における混合液が移動する量を調節することができ、また、ポンプ310とソレノイドバルブ311を電子制御することで、各ろ過装置301〜304から抽出されるろ過液の量を調節することができる。
【0019】
このように、それぞれのろ過装置にろ過機構を接続するようにしたため、上段のろ過装置で充分にろ過できなかった混合液を下段のろ過装置でろ過することができ、もって均一品質のろ過液を短時間で大量に貯留タンク306に取り出すことができる。
なお、1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304は、本実施形態では4つとなっているが1つ以上であればその数に限定されるものではない。また、各ろ過装置の接続形態についても、直列形式であればどのような接続形態でもよく、上記に限定されるものではない。
【0020】
蒸発装置400は、ろ過装置300から取り出され貯留タンク306に貯留されたろ過液を加熱して蒸発させる装置であり、貯留タンク306に貯留されているろ過液をポンプ401とソレノイドバルブ402を介して所定量取り出し、これを加熱して蒸発させる。貯留タンク306に貯留されているろ過液には、液体と共に粉体も含まれているため、蒸発装置400によってこの液体のみが蒸発し、その結果、乾燥した粉体が残る。
【0021】
第2の粉砕装置500は、この蒸発装置400で得られた粉体を更に細かく粉砕して微粉体とする装置であり、そのために粉砕機501を備えている。この粉砕機501は、第1の粉砕装置100が備える粉砕機101と同様、もしくは、粉砕機100で得られる粉体よりも細かい粉体を得ることができる粉砕機である。このように、第2の粉砕装置500で微粉砕することで、生物ミネラルを得ることができる。
【0022】
次に、図2を参照して、この生物ミネラルの製造装置を用いた生物ミネラルの製造方法について説明する。
図2は、生物ミネラルの製造方法のフローチャートを示した図である。図に従って生物ミネラルを製造する方法を説明する。
【0023】
<粉砕工程>
まず、予め計量された原料(海草や草木)を第1の粉砕装置100のホッパ102に随時投入する(ステップS100)。投入された原料は、第1の粉砕装置100が備える粉砕機101によって粉砕されて粉体状となり、加熱装置200へ送り込まれる。
【0024】
<加熱工程>
次に、加熱装置200では、得られた粉体を2段階の加熱温度で加熱する(ステップS101)。まず、加熱装置200へ粉体と共に窒素ガス(N2ガス)および脱酸度剤(カーボンパウダー(CO2)やシリコン(SiO2))を混入させて加熱装置200内を無酸素状態にし、粉体を300〜500℃の温度で加熱する(一次加熱)。
一次加熱では、大量の煙やタールが発生し、これを除去する。一次加熱では、原料である海草に含まれる塩分によって粉体が固形化しているため、加熱が均一化していない。このため、一次加熱後に固形化している粉体を粗破砕する。
【0025】
そして、一次加熱の加熱温度よりも高い温度(600〜800℃)でさらに粉体を加熱する(二次加熱)。二次加熱によって粉体を均一に加熱することができ、完全に灰化した粉体となり、ろ過装置300へ送られる。
【0026】
<ろ過工程>
次に、加熱装置200から送出された灰化した粉体と、液体タンク305からの予め計量された高温水とを1次ろ過装置301へ送り込んで粉体と高温水との混合液とし、ろ過を開始する(ステップS103)。
【0027】
1次ろ過装置301では、ろ過液がフィルタ309を通して取り出されると共に、ろ過できなかった混合液が2次ろ過装置302へ送られ、ここに更に、液体タンク305からの予め計量された高温水を加えフィルタ309を通してろ過液を取り出す。この工程を各ろ過装置で繰り返し、残りの残渣液が4次ろ過装置304で取り出される。これら1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304でのろ過工程において、加熱装置200内に混入される脱酸素剤が取り除かれる。
【0028】
1次ろ過装置301〜4次ろ過装置304から取り出されたろ過液は、貯留タンク306に貯留され、貯留タンク306内で所定時間滞留させることにより、ろ過液に含まれる粉体を沈殿させる。
【0029】
<蒸発工程〜第2の粉砕工程>
蒸発装置400では、貯留タンク306に貯留されているろ過液と沈殿した粉体をポンプ401とソレノイドバルブ402を介して所定量取り出し、加熱して水分を蒸発させる(ステップS104)。水分の蒸発後に残存する物質が高純度のミネラルであり、これらをさらに第2の粉砕装置500によってパウダー状に粉砕する(ステップS105)。
【0030】
このように、本実施形態によれば、加熱装置において1次加熱と2次加熱といった異なる温度で原料を加熱することにより、農薬やタール、ヨウ素と有害物質を除去して原料を均一に加熱して灰化することができ、複数段のろ過装置により均一品質のろ過液を取り出すとともに脱酸素剤等の不要物質を取り除くことができ、また、取り出されたろ過液を蒸発させることにより、純度の高いミネラルを抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】生物ミネラル製造装置の構成を示した概略図である。
【図2】生物ミネラルの製造方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
10 生物ミネラル製造装置
100 第1の粉砕装置
101 粉砕機
102 ホッパ
200 加熱装置
300 ろ過装置
301 一次ろ過装置
302 二次ろ過装置
303 三次ろ過装置
304 四次ろ過装置
305 液体タンク
306 貯留タンク
307 ポンプ
308 ソレノイドバルブ
309 フィルタ
310 ポンプ
311 ソレノイドバルブ
400 蒸発装置
401 ポンプ
402 ソレノイドバルブ
500 第2の粉砕装置
501 粉砕機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のミネラルを含有する生物体を加熱して抽出採取する生物ミネラルの製造方法において、
前記生物体を粉砕して粉体とする第1の粉砕工程と、
前記粉体を灰化させるまで加熱する加熱工程と、
前記灰化された粉体に液体を混合して混合された混合液をろ過するろ過工程と、
前記ろ過されたろ過液を蒸発させる蒸発工程と、
前記蒸発させた後に残留する残留物を粉砕する第2の粉砕工程と、
を備えたことを特徴とする生物ミネラルの製造方法。
【請求項2】
前記粉体を加熱する際に、異なる温度で2段階加熱させることを特徴とする請求項1記載の生物ミネラルの製造方法。
【請求項3】
前記混合液を複数回ろ過することで、ろ過液を抽出することを特徴とする請求項1記載の生物ミネラルの製造方法。
【請求項4】
複数種類のミネラルを含有する生物体を加熱して抽出採取するための生物ミネラルの製造装置において、
前記生物体を粉砕して粉体とする第1の粉砕手段と、
前記粉砕装置で粉砕された粉体を灰化するまで加熱する加熱手段と、
前記加熱手段で灰化された粉体に液体を混合して混合された混合液をろ過するろ過手段と、
前記ろ過手段でろ過したろ過液を蒸発させる蒸発手段と、
前記蒸発手段で蒸発させた後に残留する残留物を粉砕する第2の粉砕手段と、
を備えたことを特徴とする生物ミネラルの製造装置。
【請求項5】
前記ろ過手段は、直列に接続された複数のろ過装置からなることを特徴とする請求項4に記載の生物ミネラルの製造装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記粉体を異なる温度で2段階加熱することを特徴とする請求項4記載の生物ミネラルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−165449(P2009−165449A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10440(P2008−10440)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(508021130)
【Fターム(参考)】