説明

生物学的に活性なペプチドVAPEEHPTLLTEAPLNPK誘導体

式VAPEEHPTLLTEAPLNPKを有する、ペプチドCMS−010から誘導されたペプチドを、医薬組成物としてのその使用と共に開示する。また、CMS−010に由来するペプチドを供し、該ペプチドを医薬上許容される担体と混合することを含む、医薬組成物を製造するための方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、短いペプチドおよびその使用に関する。特に、本発明は生物学的活性を持つ短いペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
ペプチドは、病気の治療用に、および医薬組成物として当該分野で知られている。例えば、米国特許第6,191,113号は平滑筋細胞の成長についての阻害活性を有し、従って、アテローム性動脈硬化症、血管形成術後の再狭窄、血管移植後の管腔狭窄、および平滑筋肉腫のような平滑筋細胞の成長に関連する病理学的疾患を予防および治療するのに有用なペプチドを開示する。米国特許第6,184,208号は、上皮成長ゾーンおよび毛髪成長の重量獲得活性のような生理学的プロセスを変調することが見出されたもう1つのペプチドを開示する。さらに、PCT出願WO 03/006492および米国特許出願第10/237,405号は、ある種のペプチドおよびそれらの医薬組成物が生物学的に活性であって、免疫応答を変調できることを示唆する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、生物学的活性を有する短いペプチドまたは複数ペプチドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
本発明の1つの態様は、生物学的活性を含むことが見出された、18アミノ酸−含有ペプチドCMS−010(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(配列番号1)から誘導されたペプチドに関し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。テスト目的では、これらのペプチドの試料はL−アミノ酸で化学的に合成した。本発明のさらなる態様は、配列番号2ないし31から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなる単離されたまたは精製されたペプチドを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010(配列番号1)の配列を含まない。もう1つの態様は配列番号2ないし31から選択されるペプチドを含む実質的に純粋なペプチドに関し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。
【0005】
本発明のもう1つの態様は、配列番号2ないし31から選択される配列を含む、それより実質的になる、またはそれよりなるペプチドの投与であり、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まず、ここに、該投与の効果は免疫細胞形質転換の抑制、NK細胞活性の抑制、NK細胞活性の増強、イン・ビボでの抗体形成の抑制、細胞増殖の抑制、腫瘍成長の抑制、腎炎の抑制、および蛋白血症の減少よりなる群から選択される。いくつかの実施形態において、免疫細胞形質転換の抑制はイン・ビトロにおけるConAによるT−リンパ球形質転換の抑制である。いくつかの実施形態において、免疫細胞形質転換の抑制は、イン・ビボでのT−リンパ球形質転換の抑制である。いくつかの実施形態において、細胞増殖の抑制はイン・ビボでの肉腫細胞の発生の抑制である。いくつかの実施形態において、腎炎の抑制は抗−腎臓エピトープ抗体による腎炎の抑制である。
【0006】
本発明のさらなる態様は、L−アミノ酸よりなる配列番号2ないし31から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなるペプチドに関し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。いくつかの実施形態において、配列番号2ないし31より選択される配列を含み、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドは実質的に純粋な形態であり、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。
【0007】
本発明のもう1つの態様は、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを含む医薬組成物に関し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。いくつかの実施形態において、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを含む医薬組成物は、L−アミノ酸よりなるペプチドを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。
【0008】
本発明のなおもう1つの態様は、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを供し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まず、次いで、該ペプチドを医薬上許容される担体と混合することを特徴とする、医薬組成物の製法である。
【0009】
本発明のさらにもう1つの態様は、医薬上有効量の、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを投与することを含むヒト病気の効果を低下させる方法であり、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。いくつかの実施形態において、該ヒトは細胞増殖性および/または免疫学的障害に罹っている。いくつかの実施形態において、該細胞増殖性障害は癌、肉腫および/または腫瘍である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、医薬上有効量の、配列番号2ないし31から選択させる配列を含むペプチドを投与することを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まないことを特徴とする、個体の免疫系を変調する方法である。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、医薬化合物としての、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であり、ここに、該ペプチドは、ペプチドCMS−010の配列を含まない。いくつかの実施形態において、ペプチドは細胞増殖性障害および/または免疫学的障害の形態である病気状態を治療するのに用いられる。いくつかの実施形態において、治療すべき細胞増殖性障害は肉腫である。
【0012】
本発明のなおもう1つの態様は、免疫系モジュレーターとしての、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であり、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。いくつかの実施形態において、免疫系の変調はNK細胞活性の増強または抑制である。
【0013】
本発明のさらなる態様は、栄養補強剤としての、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であり、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。
【0014】
本発明のもう1つの態様は、当該ペプチドに操作可能に連結された増強分子を含む、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの増強された誘導体を含む分子であり、ここに、該増強分子は該ペプチドの治療効果を増強させ、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない。
【0015】
5つの図面の各々は、ペプチドをステロイド分子に連結させるための例示的化学反応を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好ましい実施形態の詳細な記載
I.緒言
配列VAPEEHPTLLTEAPLNPKを有するペプチドCMS−010(配列番号1)は、生物学的免疫−調節活性を有することが見出され(米国特許出願第10/178,684号)、ヒト使用のための治療的潜在能力を有する。本発明は、生物学的活性を有するCMS−010の断片および誘導体に関する。特別な実施形態において、本発明は、その配列が配列番号2ないし31として与えられる断片および誘導体を含む。いくつかの実施形態において、断片は置換および/またはさらなる分子基を有するか、またはVAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の機能的誘導体であり得る。CMS−010断片および誘導体の使用は細胞および組織の調整を含む。CMS−010断片および誘導体は医薬製剤および栄養補強剤に配合することができる。
【0017】
本発明を実施するもう1つの方法として、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドのアミノまたはカルボキシル末端にさらなるアミノ酸を付加することは可能であろうと理解され、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。そのような実施形態において、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドは本明細書中に記載された治療または機能的特性の1つまたは複数を維持し、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。例えば、いくつかの実施形態において、その生物学的機能に影響することなく、1または2のアミノ酸を開示されたペプチドに付加することができる。いくつかの実施形態において、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)のいくつかの部分を含有する小さな分子は、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)に由来する配列の単一ストレッチを含む。他の実施形態において、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)のいくらかの部分を含有するより小さな分子は、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の別々の非連続部分に由来する配列2以上のストレッチを含む。例えば、いくつかの実施形態において、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)のいくらかの部分を含有するより小さな分子は、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)における2つの配列の間で見出されたいずれの介入配列も無くして、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)のN−末端近くに見出される配列、ならびにVAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)のC−末端近くに見出される配列を含む。さらなる実施形態において、3または4のアミノ酸を付加し、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の断片(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体よりなる群から選択されるペプチドの機能を依然として維持することも可能である。これらは全て同一ペプチドの変種という。さらに、同一機能クラス内のもう1つに代えての1つのアミノ酸の保存的置換のようなペプチドの誘導体を用いて、本発明のもう1つの態様を実施することができる。例えば、非−極性または疎水性側鎖を有するペプチドは、生物学的活性を低下させることなく、もう1つに代えて1つの側鎖を置換することが可能であろう。いくつかの実施形態において、CMS−010のペプチド断片は、元のペプチド断片の活性を依然として保有しつつ、配列から排除された1、2またはそれ以上のアミノ酸を有することができる。例えば、長さが10アミノ酸であるCMS−010のペプチド断片は、配列中のN−末端からの5番目のアミノ酸無くして再度合成される。かくして、得られた変種は長さがただ9つのアミノ酸であり、元の配列中のN−末端から6番目のアミノ酸に共有結合したN−末端から4番目のアミノ酸を有し、なお依然として、10アミノ酸を持つ元のペプチド断片と同一の活性を有する。2以上のアミノ酸がCMS−010のペプチド断片の配列から排除されるいくつかの実施形態において、排除されるアミノ酸は元のペプチド断片配列において相互に隣接する。2以上のアミノ酸がCMS−0
10のペプチド断片の配列から排除された他の実施形態において、アミノ酸は元の配列において相互に隣接しないが、むしろ、短縮された変種ペプチドに残るアミノ酸によって元の配列中の相互から分離される。3以上のアミノ酸がCMS−010のペプチド断片から排除される追加の実施形態において、元のペプチド断片配列から排除されたいくつかのアミノ酸は相互に隣接し、他方、元の配列から排除された1つまたは複数のアミノ酸は、排除される元の配列からのいずれの他のアミノ酸にも隣接しない。本発明の追加の実施形態において、リンカー/スペーサー配列をペプチドに挿入して、変種を形成することができるが、該変種は本実験で用いる元のペプチドとしてのそれらの活性部位を依然として保有する。これらはやはりペプチドの変種と考えられる。本明細書中で用いるペプチドアナログは、天然アミノ酸構造を模倣するアミノ酸分子を有するペプチド、例えば、異なる骨格構造、D−アミノ酸置換を持つアナログを含む。さらなる実施例として、ペプチドを合成するのに用いられるアミノ酸はそれらのL光学異性形であるが、D−形態で置換された配列におけるアミノ酸の1つまたは複数を持つペプチドは同様な生物学的活性を有することができる。特許請求の範囲で用いる用語「機能的誘導体」は、ペプチドの断片、変種、アナログまたは化学的誘導体を含むことを意味する。
【0018】
「実質的に純粋なペプチド」とは、純度が少なくとも10%w/w、より好ましくは20%、なおより好ましくは40%、かなりより好ましくは60%、はるかにより好ましくは90%純度を超えるペプチドをいう。最も好ましい実施形態において、純度は99%よりも大きい。実質的に純粋なペプチドを用いて、後に記載する複合体混合物であり得る医薬および栄養処方を調製することができる。
【0019】
「変調」とは、本発明のペプチドの投与、または該ペプチドへの暴露によって媒介される細胞に対する効果をいい、ここに、細胞へのペプチドの投与または暴露は細胞の活性の変化を引き起こす。該変化は細胞の活性を増強し、または抑制することができる。細胞の活性の増強または抑制は細胞の分裂および複製の速度の増強または抑制、細胞の他のエレメントへの反応の増強または抑制、および/または細胞からの蛋白質または化合物の生成および/または分泌の速度の増強または抑制であり得る。
【0020】
「細胞増殖」とは、存在する細胞の数の増加をいい、それは細胞の形質転換または不死化によるものであり得る。細胞増殖障害は、限定されるものではないが、癌、良性成長、腫瘍および肉腫を含み、いずれかの数の細胞を含むことができる。「免疫学的障害」とは、免疫細胞または免疫系の他の部分の機能不全または有害機能をいう。そのような障害は、細胞または分子の活性の抑制、または細胞または分子の活性の増強によって引き起こされ得る。
【0021】
医薬処方における、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドの使用は、免疫学的障害または病気に対する可能な処置として使用することができ、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。該処方は、他のペプチドを含めた、他の活性なまたは不活性な構成要素と混合された、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなるペプチドを有することができ、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まず、例えば、2ないし数個(例えば、3ないし5の)ペプチドを他の成分と共に、またはそれなくして同一処方に加えることができる。別法として、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドを用いて、本明細書中でリストされていないペプチドと共に処方を調製することができ、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。それらは、静脈内、筋肉内、皮内、皮下または経皮の形態で投与することができる。投与の態様は、問題の器官に直接的に導かれる動脈内注射であってもよい。投与の他の態様は経皮、粉末またはスプレーとしての吸入、および当業者によ
って知られた他の送達形態である。処方は経口投与することもでき、経口摂取後にペプチドの胃での消化を妨げるように用いることができる担体、または当該分野で公知のいずれかの他の担体(例えば、リポソームのような経皮送達用の担体)を含有することができる。
【0022】
本明細書中で用いるように、用語「ハイブリッドペプチド」は、前記で特定した配列を有する元の生物学的に活性なペプチドまたはその機能的誘導体に挿入されたさらなるペプチドを含有するが、依然として実質的に同様な活性を保有するペプチドをいうのに用いられる。さらなるペプチドは、例えば、ハイブリッド蛋白質の外部または細胞への分泌用のシグナルとしての1つまたは複数の原核生物または真核生物細胞によって認識されるアミノ酸配列を含有するリーダーペプチドを含む。分泌は直接的分泌、または分泌小胞を通じる間接的なものであっても良い。
【0023】
本明細書中で用いるように、用語「より実質的になる」とは、カルボキシルおよび/またはアミノ末端におけるさらなるアミノ酸と共に、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなり、かつ本明細書中で供された該ペプチドの活性の1つまたは複数を有するペプチドまたはポリペプチドをいい、ここに、該ペプチドは、CMS−010の配列を含まない。かくして、非限定的な実施例として、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなるペプチド(該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の活性が、細胞増殖性または免疫学的障害または病気を治療しおよび/または予防することにある場合、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれを含むペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)「より実質的になる」ペプチドまたはポリペプチドは、そのペプチドに関して本明細書中で供された障害または病気を治療および/または予防する活性を保有し、かつ細胞増殖性または免疫学的障害を治療または予防する該ペプチドまたはポリペプチドの能力を実質的に低下させる、または前記障害または病気のための治療、および/またはその予防体としてのペプチドの基本的かつ新規な特徴に対する重要な変化を構成する(1つまたは複数の生物学的に活性な分子への付着による修飾前の)それ自体における、およびそれ自体のいずれの特徴も保有しないであろう。かくして、これまでの実施例において、細胞増殖性または免疫学的障害を治療しおよび/または予防する以外の一次的活性を有し、かつ配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなる、またはそれよりなる(しかし、CMS−010の配列を含まない)全長の天然に生じるポリペプチドは、その配列全長の天然に生じるポリペプチドに含まれる、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド「より実質的になる」ペプチドまたはポリペプチドを構成しないであろう。同様に、これまでの実施例において、細胞増殖性または免疫学的障害を治療または予防する以外の一次的活性を有するが、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなるペプチド(しかし、CMS−010の配列を含まない)のアミノ酸配列を含む遺伝子工学により作成されたペプチドまたはポリペプチドは、その配列が遺伝子工学により作成されたペプチドまたはポリペプチドに含まれる、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(しかし、CMS−010の配列を含まない)「より実質的になる」ペプチドまたはポリペプチドを構成しないであろう。
【0024】
当業者であれば、ペプチドまたはポリペプチドが、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)ペプチドの断片および誘導体に関して本明細書中で供された、細胞増殖性または免疫学的障害を治療し、または予防するためのアッセイを用い、該ペプチドまたはポリペプチドの活性を測定することによって、これまでの定義下で、配列番号2
ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)より実質的になるか否かを容易に決定することができる。
【0025】
好ましい実施形態において、用語「より実質的になる」は、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドに加えて5アミノ酸未満の残基を有するペプチドまたはポリペプチドをいうこともでき、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。より好ましい実施形態において、同一用語は、配列番号2ないし31から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドに加えて2アミノ酸残基を持つペプチドをいい、ここに、該ペプチドはCMD−010の配列を含まない。なおより好ましい実施形態において、同一用語は、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドに加えて1つのアミノ酸残基を持つペプチドをいい、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。
【0026】
医薬処方は公知の医薬担体のいずれかを含むことができる。適当な担体の実施例は当業者に知られた標準的な医薬上許容される担体のいずれかを含む。これらは、限定されるものではないが、生理食塩水、水、油および水混合物またはトリグリセリドエマルジョンを含めたエマルジョン、および他のタイプの剤、充填剤、被覆された錠剤およびカプセル剤を含む。適当な担体は、医薬組成物の投与の態様に基づいて選択することができる。
【0027】
配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなる群から選択されるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、および皮下移植を介して投与することができる。該ペプチドは、修飾することなく、または遅延放出形態にて、あるいは胃腸保護を行って、または行うことなく、通常の形態の錠剤、カプセル、懸濁液、溶液などのような経口投与のいずれかの形態で投与することもできる。該ペプチドは、さらに、経皮促進デバイスの有りまたは無しにて、軟膏、クリーム、ゲルなどのような局所適用のいずれかの形態で適用することができる。また、該ペプチドは、その遺伝子配列に解釈することもでき、それ自体にて、あるいは他のペプチド配列と組み合わせて、発現系にクローン化して、本明細書中に記載されたペプチドの活性を利用する得られたペプチド分子を生じさせることができる。
【0028】
各ペプチドの用量は体重1kg当たり1ngないし10gであり得る。好ましい用量は投与の注射態様ではkg当たり10ngないし10mg、より好ましくはkg当たり1μgないし1mgである。しかしながら、効果的な用量は体重kg当たり1ngと低くすることができる。というのは、ペプチドの1つまたは複数は、正常な生理学的応答のカスケードを誘導する受容体を通じて操作することができるからである。別法として、ペプチドの1つまたは複数は反応の全カスケードについての丁度開始剤であり得る。経口摂取では、該量は体重kg当たり1日につき1ngないし10g、より好ましくは体重kg当たり1日につき0.1μgないし1g、なおより好ましくは1日につき1μgないし10mgである。
【0029】
II.遺伝子治療および治療の方法
前記ペプチドに基づく遺伝子治療は、これらのペプチドの1つをコードする核酸配列を設計することによって行われる。該核酸は化学的に合成し、プロモーターに操作可能に連結させ、発現ベクターにクローン化することができる。次いで、発現ベクターは、ヒト細胞における発現についての遺伝子治療の形態でヒト身体に投与される。本明細書中で用いる用語「遺伝子ベクター」はこれらの発現ベクターを含む。遺伝子治療で用いることができるベクターはアデノ−関連ウイルス(Mizuno,M.et al.(1998).
Jpn J Cancer Res 89,76−80)、LNSXベクター(Miller,A.D.et al.(1993)Methods Enzymol 217,581−599)およびレンチウイルス(Goldman,M.J.et al.(1997)Hum Gene Ther 8,2261−2268)を含む。
【0030】
ペプチド送達のための他のビヒクルは、宿主生物の健康に対する有意な有害効果無くして、それにペプチドを投与することが望まれる宿主生物において複製することができる生物に導入することができる所望のペプチドをコードする発現ベクターを含む。例えば、発現ベクターは、それにペプチドを投与することが望まれる宿主生物に対して病原性でない生物に導入することができる。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、それにペプチドが投与されるべき宿主生物の健康に対して有意な有害効果を有しない細菌または真菌生物において所望のペプチドを生じさせる。例えば、所望のペプチドをコードする発現ベクターは、乳酸菌、E.coli、または酵母のような生物において所望のペプチドを生じさせる発現ベクターであり得る。1つの実施形態において、発現ベクターは、哺乳動物腸で通常見出される微生物、または哺乳動物消化管によって許容される微生物において所望のペプチドを生じさせる。所望のペプチドが発現され得る微生物種のいくつかは、限定されるものではないが、L.acidophilus、L.amylovorus、L.casei、L.crispatus、L.gallinarum、L.gasseri、L.johnsonii、L.paracasei、L.plantarum、L.reuteri、L.rhamnosusその他のようなLactobacillus種;B.adolescentis、B.animalus、B.bifidum、B.breve、B.infantis、B.lactis、B.longumその他のようなBifidobacterium種;Enterococcus faecalisまたはEnt.facium;Sporolactobacillus inulinus;Bacillus subtilisまたはBacillus cereus;Escherichia coli;Propionibacterium freudenreichia;またはSaccharomyces cerevisiaeまたはSaccharomyces boulardiiを含む。
【0031】
化学的に合成された、あるいは限定されるものではないが、cDNA分子を生じさせるためのmRNAの逆転写を含めた他の手段によって生じさせた、本発明のペプチドのいずれかをコードする核酸配列は、当業者が精通した遺伝子工学の方法によって所望の生物への遺伝子導入のために発現ベクターに取り込まれる。発現ベクターはDNAベクターまたはRNAベクターであり得る。例えば、発現ベクターはプラスミドまたはウイルス遺伝子エレメントに基づくことができる。発現ベクターは染色体外で複製するベクター、または染色体に組み込まれるベクターであり得る。
【0032】
発現ベクターは本発明のペプチドをコードする核酸に操作可能に連結されたプロモーターを含む。プロモーターは誘導性プロモーターまたは構成的プロモーターのような調節可能なプロモーターであり得る。いくつかの実施形態において、プロモーターは所望のレベルのペプチド発現を生じさせるように選択することができる。加えて、所望ならば、発現ベクターはペプチドの生成、提示および/または分泌を促進するための他の配列を含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドをコードする核酸は、ペプチドの分泌を指令する核酸配列に操作可能に連結される。例えば、本発明のペプチドをコードする核酸はシグナルペプチドをコードする核酸に操作可能に連結させることができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドをコードするように作成された発現ベクターは、Lactobacillus種およびBacillus subtilisのような、哺乳動物の正常な腸フローラをなす細菌種において本発明のペプチドを発現させ
るのに適合される発現ベクターであり得る。そのような発現ベクターの実施例は、各々、Casasに対する米国特許第6,100,388号、およびBelliniに対する米国特許第5,728,571号で見出すことができる。これらの書類は、ここに明示的に引用してその全体を援用する。当該ペプチドを投与すべき宿主生物の健康に対して有害でない生物における本発明のペプチドの発現を容易とするいずれの発現ベクターを用いることもできると認識される。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明のペプチドをコードするように作成された発現ベクターは、ヒト腸で集落を形成でき、下痢のある種の形態を治療するのに用いられる、Saccharomyces cerevisiae;または好ましくはSaccharomyces boulardiiのような哺乳動物腸によってよく許容される酵母種において本発明のペプチドを発現するのに適合される発現ベクターであり得る。異種蛋白質およびペプチドを構成的に発現し、高度に安定であり、かくして、有糸分裂および減数分裂の間に子孫細胞によく伝達される酵母発現ベクターを用いることができ、これは、高レベルの組換え蛋白質分泌を指令するシグナルペプチドまたは複数ペプチドについてのコーディング配列を含むことができる。そのような酵母ベクターの実施例は、ここに明示的に引用してその全体を援用する、Jang et al.に対する米国特許第6,391,585号に与えられている。
【0035】
本発明のペプチドをコードする発現ベクターは、その中で、当該分野で公知の技術を介してペプチドを発現することが意図される生物に導入することができる。これらの技術は、例えば、化学的にコンピテントな細菌細胞、エレクトロポレーションまたは酢酸リチウム形質転換(酵母用)の使用を介して細菌、酵母または他の微生物を形質転換する伝統的方法、ならびにこれらの手法で御しがたい細菌種の形質転換における最近の進歩を含む。いくつかの実施形態において、発現ベクターは、その開示をここに引用してその全体を援用する、Leer et al.(WO 95/35389)によって開示された方法を用いる形質転換では扱い難いことが知られている乳酸細菌に導入される。導入された配列は微生物染色体DNAに組み込むことができ、あるいは染色体外DNAエレメントとして残ることもできる。
【0036】
次いで、発現ベクターを含有するこの遺伝子工学作成微生物を消化管、膣、器官などに接種して、維持された免疫療法を達成することができる。いくつかの実施形態において、本発明のペプチドを発現する生物は不活性形態または好ましくは生きた形態で摂取される。腸においては、これらの微生物は該ペプチドを生成し、分泌によって、または微生物の溶解によって、それらを管腔に放出し、あるいはペプチドを宿主に提示し、それにより、ペプチドは宿主生物に対してそれらの意図された効果を生じさせる。他の実施形態において、ペプチドは、鼻通路、膣、または小腸の粘膜において宿主に提示される。
【0037】
治療のもう1つの方法は、ヒト身体中の細胞へ特異的核酸を送達するための手段としてのリポソーム使用である。(配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)をコードする核酸を含有する発現ベクターのような)核酸を、Gao,X.and Huang,L.(1995)Gene Ther 2,710−722および米国特許第6,207,456号に記載されているように、細胞摂取および染色体組込みを刺激する環境に送達する。別法として、該ペプチドそれ自体はリポソームにカプセル化し、米国特許第6,245,427号に記載された方法を用いて直接的に送達することができる。前記で示した全ての科学的刊行物および特許はここに引用してその全体を援用する。
【0038】
前記した遺伝子治療および治療の方法で有用な核酸配列は、これらのペプチドおよびそ
の機能的誘導体をコードする配列を含む。多数の核酸配列のいずれか1つを用いて、縮重コドン系に基づいてこれらのペプチドおよびそれらの誘導体をコードさせることができる。
【0039】
以下の文献をここに引用してその全体を援用する。
1.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China.1993,7:134−135Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Methodology of pharmacological experiment.People’s Health Publishing House.1991,1221−1234
2.Principle of new drug research in pre−clinic issued by Ministry of Health,People’s Republic of China.1993,7:140
3.Jinsheng He,Ruizhu Li,Tingyi Zong.The
study on MTT reduction method of testing NK cell activity.China Immunology Journal.1996,1(6):336−358
4.Qian Wang.Modern medical experiment method.People’s Health Publiching House.1998,482−483
5.Principle of new drug research in pre−clinic issued by Ministry of Health,People’s Republic of China.1993,7:141
6.Principle of new drug research in pre−clinic issued by Ministry of Health,People’s Republic of China.1993,7:132−133
7.Principle of new drug research in pre−clinic issued by Ministry of Health,People’s Repucblic of China.1993,7:128−129
8.Yuanpei Zhang,Huaide Su.Pharmalogical
experiment(second edition).People’s Health Publishing House.1998,137−138
9.Jiatai Li,clinical pharmacology(second edition).People’s Health Publishing House.1998,1338−1339.
【0040】
III.配列番号2ないし31およびその機能的誘導体を含み、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該試薬はCMS−010の配列を含まない)へのペプチドコンジュゲーション、およびそれを含む処方
本発明の生物学的に活性なペプチドは他の生物学的に効果的なまたは有用な分子にコンジュゲートして、さらなる効果または用途を提供し、またはそれらの治療的効果を増強させることができる。多くの潜在的コンジュゲーティング分子、それらの生物学的効果およびペプチドへの分子のコンジュゲーションのための方法は当該分野で知られている。他の候補コンジュゲーションパートナーでは、本ペプチドをそれにコンジュゲートさせるための化学反応は、過度な実験無くして当業者によって推測できる。効果的分子を以下に記載する。どのようにして本発明による種々のペプチドをそれらの効果的な分子にコンジュゲートできるか、および得られたコンジュゲーション産物の生物学的特性の特別な実施例が記載される。本発明の他のペプチドを同様な反応においてコンジュゲートすることもできる。
【0041】
配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド断片は特定の細胞または細胞型に対して区別される治療効果を有することができ、ここに、該ペプチド断片はCMS−010の配列を含まない。ペプチド薬物に分子をコンジュゲートする1つの重要な目的は、治療すべき個体の身体内の特定の位置または区画へペプチドを標的化することである。このようにして、ペプチド薬物およびその効果は、それに対してそれが意図した治療効果を有する細胞または細胞型の位置に濃縮させることができる。これは、同様なモラー量の遊離した未コンジュゲーテッドペプチドが有するであろう効果を増大させることができる。逆に、その治療活性部位に標的化されるコンジュゲーテッドペプチド薬物の用量は、薬物の遊離した未コンジュゲーテッド形態からの同一治療効果を得るのに必要な用量よりも有意に低くできる。
【0042】
その活性が最も望まれる部位へペプチド薬物を標的化するもう1つの有利な効果は、望まない副作用の低下である。特定の細胞または組織型の変化を行うために投与されるペプチド薬物もまた、時々、有害効果を伴って、個体内の他の場所で作用し得る。標的化分子へのコンジュゲーションを介して活性の所望の位置へペプチドを標的化することによって、個体における他の箇所のペプチドの濃度および引き続いての副作用を低下させることができる。
【0043】
配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチドは、個体の身体全体の種々の位置に標的化するための種々の分子にコンジュゲートさせることができ、ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない。ペプチドを所望の位置に標的化するための以下に記載するコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通した他のコンジュゲーション技術のいずれも、本発明のペプチドのいずれかで使用することができる。例えば、抗−B型肝炎薬物の肝臓細胞への選択的送達は示されている(ここに引用してその全体を援用する、Fiume et al.,Ital J Gestroenterol Hepatol,29(3):275,1997)。この研究においては、研究者は、B型肝炎ウイルスに対して活性な、アデニンアラビノシドモノホスフェート(ara−AMP)、リン酸化ヌクレオシドアナログをラクトサミン化ヒトアルブミン、ガラクトシド−末端マクロ分子にコンジュゲートさせた。肝臓細胞は、高い親和性でもって末端ガラクトシド残基と相互作用する受容体蛋白質を発現する。この受容体への結合を介して、コンジュゲートされた薬物は肝臓細胞によって選択的に摂取されるであろう。吸収の後、コンジュゲートされた薬物はリソソームに送達され、そこで、コンジュゲートされた薬物の2つの成分の間の結合は切断され、その活性な形態のara−AMPを放出する。前記引用の研究において、コンジュゲートされた薬物は慢性B型肝炎感染を持つ患者を治療するのに遊離ara−AMPと同程度効果的であったが、遊離ara−AMPの投与が引き起こす神経毒性のような臨床的副作用を引き起こさなかった。そのようなアプローチを、本発明のペプチドのいずれかで用いることができる。
【0044】
同一研究チームによる前記したものに対する関連研究において(Di Stefano
et al.,Biochem.Pharmacol.,61(4):459,2001)、抗−癌化学療法剤である5−フルオロ−2−デオキシウリジン(FUdR)をラクトサミン化ポリ−L−リシンにコンジュゲートして、該化合物を肝臓に標的化し、肝臓ミクロ転移を治療した。薬物は、FUdRおよび標的化分子の間の結合を切断する肝臓細胞によって選択的に摂取される。次いで、遊離FUdRの一部は肝臓細胞を出て、局所化された治療濃度の抗−癌剤が作り出される。この濃度は、肝臓に浸潤した転移性細胞に対する薬理学的活性が十分である。該薬物は肝臓で選択的に濃縮されるため、コンジュゲートした薬物の用量は遊離した未コンジュゲーテッド化合物の最小薬理学的活性用量よりも有
意に小さくできる。この戦略は本発明のペプチドのいずれでも利用することができる。例えば、ラクトサミン化ポリ−L−リシンの、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択された配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)へのコンジュゲーションは、肝臓細胞に関与する細胞増殖性障害を治療または予防するのに必要な用量を有意に低下できた。
【0045】
身体内の特定の組織または細胞型への化合物の標的化は、多数の異なる組織または細胞型で達成されている。例えば、腫瘍細胞は、しばしば、ボンベシン、黄体ホルモン−放出ホルモン、およびソマトスタチンのような、それらの表面の異常に高レベルのペプチドホルモン受容体を発現する。1つの研究において、抗−癌化合物であるパクリタキセル(タキソール)は、オクトレオチド、ソマトスタチンのアナログと薬物をコンジュゲートさせることによって、高密度でソマトスタチン受容体を発現するホルモン−分泌腫瘍細胞に選択的に標的化された。オストレオチド−コンジュゲーテッドタキソールは丁度遊離タキソールと同程度に効果的であったが、正常な細胞に対する毒性は低下していた(Huang
et al.,Chem.Biol.,7(7):453,2000)。本発明のペプチドをペプチドホルモン受容体のアナログにコンジュゲートさせるためのHuang et al.の技術を用い、アゴニストは、高レベルのその特定のペプチドホルモン受容体を発現する細胞を特異的に標的化する処置を作り出すであろう。このアプローチは、いずれかの数のペプチドホルモン受容体を過剰発現する標的細胞に適合させることができる。薬物を特定の組織型に標的化するもう1つの実施例において、ポリ(L−アスパラギン酸)を担体分子として用いて、薬物送達を特異的に結腸細胞に標的化した(Leopold
et al.,J.Pharmacokinet.Biopharm.,23(4):397、1995)。
【0046】
特定の細胞または組織型へのペプチド薬物の特異的標的化を超えて、担体分子への、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該配列はCMS−010の配列を含まない)のコンジュゲーションは、ペプチド薬物の送達を増強させ、それにより、それらの治療効果を増加させ、またはそうでなければ改良する他の方法を提供することができる。後に記載されるコンジュゲーション技術のいずれかは、当業者が精通する他の技術に関して、本発明のペプチドのいずれでも用いることができる。いずれの薬物の有効性も、もし化合物がその標的に効果的に送達できなければ障害となるであろう。薬物は、代謝プロセッシングまたは分解による活性の実質的喪失無くして、その活性の部位へ能動的にまたはそうでなくして輸送されなければならない。ペプチド薬物はペプチダーゼの活性に従い、高度に荷電された分子として、血液−脳関門のような脂質細胞膜および内皮細胞膜を横切る輸送が困難であり得る。他の分子へのコンジュゲーションは、分解からペプチド保護し、通常は該化合物を排除するであろう細胞または解剖学的区画へのペプチド薬物の吸収を促進する方法を提供する。
【0047】
通常はそれからそれらが排除されるであろう身体内の位置へペプチドを接近させることによって、コンジュゲーション技術は薬物の投与のための新しい経路を開くことができる。その化学が以下の実施例5に詳細に記載され、ここに引用してその全体が一体化されるPatel et al.,Bioconjugate Chem.,8(3):434,1997において、研究者は優れた鎮痛剤であることが知られたペプチド薬物、ヘプタペプチドデルトルフィンを、ペプチドが血液−脳関門を横切るのを可能とするように特異的に設計された有機分子にコンジュゲートさせた。これは、脳内脳室注射による代わりに薬物が静脈内投与されるのを可能とする。
【0048】
Patel et al.における担体分子は、ペプチドが関門を横切るのを可能とす
るに加えて、血液−脳関門を含む内皮細胞を特異的に標的化するように設計された。血液脳関門を含めた、身体全体の内皮細胞膜は、配列特異性、およびそれらの表面に提示される膜−結合エンドペプチダーゼの濃度に関して不均一である。分子の設計はこの特徴を利用して、担体分子およびその輸送体の標的化を可能とする。該分子は、その遊離末端が、血液脳関門のエンドペプチダーゼと優先的に相互作用するであろうジペプチドArg−Proでキャップされた3つの脂肪酸鎖を含有する。次いで、親油性遊離酸鎖によって、荷電ペプチド薬物分子の輸送が可能とされる。かくして、ジペプチド−キャップドトリグリセリド分子は標的化、および血液脳関門を横切っての輸送を共に可能とする。
【0049】
コンジュゲーション方法はペプチド薬物の活性のキネティックスも増強させることができる。ペプチドの活性のキネティックスを増強させるための以下に記載するコンジュゲーション技術ならびに当業者が精通した他のコンジュゲーション技術のいずれも、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択された配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)で用いることができる。Patel et al.は、鎮痛剤ペプチドのコンジュゲートした形態は血流から脳に進入できるのみならず、同様に遊離ペプチドと比較して維持された作用を有したことを見出した。静脈内投与された薬物は治療効果を有するのにより長い時間を要したが、効果はより長く継続し、頭蓋内注射された遊離ペプチドの効果よりもゆっくりと減少した。研究者らは、コンジュゲートしたペプチド分子は血清中で顕著に安定性であるが、脳内脳室に注射した場合に効果を有しないことを見出し、これは、担体分子が、血流から脳へのその輸送の間に分解し、除去されるようであることを示す。彼らは、コンジュゲートを輸送し、担体分子を分解するのに必要な時間が改変されたキネティックスの原因でないかと考えた。遅延のメカニズムにかかわらず、臨床的状況において、コンジュゲートされたペプチド分子の静脈内安定性、および延長された開始および薬物の効果の活性は、それが頻度低く投与できることを意味する。頻度のより低い、かくして、より便宜な投与スケジュールは治療オプションとしての薬物の現実的価値を高める。
【0050】
当業者に明らかなように、Patel et al.の技術および手法は、本発明のペプチドのいずれも含めた限定されたサイズ範囲内に入るいずれのペプチドの送達にも容易に適合させることができる。例えば、VAPEEHPTLLTEAPLNPKの断片(CMS−010)のような細胞増殖性または免疫学的障害を治療しおよび/または予防する本発明のペプチドは、Patel et al.によって用いられる同一分子にコンジュゲートさせることができた。脳に影響する感染を持つ個体の治療において、コンジュゲートした分子はVAPEEHPTLLTEAPLNPKの断片(CMS−010)が血流から脳に接近することを可能とし、VAPEEHPTLLTEAPLNPKの断片(CMS−010)が脳中の細胞または組織に対してそれらの効果を発揮することを可能とするであろう。担体分子の標的化を変化させる修飾もまたそのような個人に明らかであろう。担体分子の標的化特徴は、脂肪酸鎖の末端においてジペプチドマスクを含む2つのアミノ酸の同一性の関数である。Arg−Proジペプチドは血液脳関門の内皮膜の表面に見出される膜−結合エンドペプチダーゼの組と優先的に相互作用する。他の内皮細胞および膜は他のジペプチド組合せによって潜在的に標的化できるであろう。
【0051】
コンジュゲーションは、消化管を通じて、または経皮的に効果的に吸収できるペプチド薬物を作り出すために研究者によってやはり用いられてきた。以下に記載する吸収を増強させるためのコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通した他のコンジュゲーション技術のいずれかを用いて、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の吸収を増強させることができる。Kramer
et al.は、ペプチド薬物を胆汁酸にカップリングさせるための手法を記載する。該化合物の経口送達に続いてのコンジュゲートした分子についての吸収速度は、ペプチド
単独と比較して有意に増強される(J.Biol.Chem.,269(14):10621,1994)。Toth et al.(J.Med.Chem.,42(19):4010,1999)は、吸収速度を増大させ、かつ抗−癌ペプチドのその活性部位への送達を増強させるための、抗−腫瘍特性を持つペプチド薬物のリポアミノ酸(LAA)またはリポ多糖(LS)へのコンジュゲーションを記載する。それらの研究において、強い抗−増殖性特性を示すが、損なわれたファルマコキネティックスを有するソマトスタチンの誘導体をLAAまたはLSいずれかにコンジュゲートさせる。得られたコンジュゲート薬物は皮膚および腸上皮を横切る吸収プロフィールを改良し、腫瘍細胞に対して依然として活性でありつつ、分化に対する抵抗性を増加させた。これらの技術は、本発明のペプチドのいずれかとのコンジュゲーションで非常に有用であろう。腸上皮を横切る分子の吸収速度を増加させることによって、ペプチドのより多くを血流に送達し、治療すべき個体に対してその効果を発揮させることができる。
【0052】
また、コンジュゲーションを用いて、ペプチド薬物の維持された放出を提供することもできる。維持された放出を供するためのコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通した他のコンジュゲーション技術のいずれかを用いて、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の維持された放出を供することができる。Patel et al.の業績において前記で分かるように、ペプチド薬物の維持された送達はコンジュゲーション方法で達成することができる。もう1つの実施例はKim et al.(Biomaterials,23:2311,2002)の仕事であり、そこでは、生分解性ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLGA)マイクロスフィアへのマイクロカプセル化前に、組換えヒト表皮成長因子(rhEGF)がポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされた。PLGAにおけるマイクロカプセル化は、種々の成長因子および形態形成性蛋白質を送達するためにいくつかのグループによって用いられてきた(Meinel et al.,J.Controlled
Rel.,70:193,2001)。PEGへのコンジュゲーションを通じて、rhEGFは、未コンジュゲーテッド遊離rhEGFと比較して、PLGAとのミセル形成の間に、水溶性凝集体への形成に対して、および水−有機相界面への吸着に対して抵抗性となった。コンジュゲートされたホルモンでの処方の薬物動態が改良され、遊離ホルモンとよりも長く継続し、より定常的であって、かつ総じてより大きな薬物活性を示し、これは、研究者が推測するには、PEGにコンジュゲートしたホルモンの増強された物理的安定性によるものである。同様な戦略を使用して、本発明のポリペプチドのいずれかの維持放出処方を作成できよう。例えば、以下の実施例1で見られるように、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の特定の断片および誘導体は優れた抗−増殖性および免疫調節効果を呈する。PEGをこのペプチドにコンジュゲートさせ、コンジュゲートさせた薬物をPLGAマイクロスフィアに取り込むことによって、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の断片および誘導体の抗−増殖性および免疫−調節効果はより長く継続でき、より安定であり得る。というのは、薬物の用量は、それがそのPEGコンジュゲートから放出されるにつれ、より均一であり、感染の部位へのペプチド薬物のより一定な送達を確実とする。
【0053】
ペプチド薬物の延長された放出はその活性を有意に増強させることができる。以下に記載するペプチドの延長された放出を提供するコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通する他のコンジュゲーション技術のいずれかを用いて、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含み、実質的にそれよりなり、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の延長された放出を供することができる。Oldham et al.(Int.J.Oncology,16:125,2000)は、薬物の新しい形態に対する抗癌剤パクリタキセル、ポリ(L−グルタミン酸)にコンジュゲートしたパクリタキセル(PG−TXL)を比較する。
PG−TXLは、遊離パクリタキセルと比較した優れた抗−腫瘍活性を有するように見え、これは、薬物が薬物動態学特性を有し、作用の優れた方法でさえあり得ることを示唆する。しかしながら、研究者は、PG−TXLが、遊離薬物と同一の作用メカニズムによってその効果を奏し、微小管サブユニットの重合を乱すことによって細胞周期阻止を誘導することを見出した。エビデンスは、コンジュゲートした薬物の優れた抗−腫瘍活性がコンジュゲートからの遊離薬物の連続的かつ定常的放出から生起し、遊離ペプチドの当量と比較してより長時間その治療濃度を維持することを示唆する。感染と戦う特性を持つ本発明のペプチドへのポリ(L−グルタミン酸)テイルの付加は、同様に、それらの特性を増強させ得るであろう。
【0054】
ペプチドの酵素分解は、いくつかの場合において、薬物としてのペプチドの有効性を低下させ得る。以下に記載するペプチドの酵素分解を低下させるためのコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通する他のコンジュゲーション技術のいずれかを用いて、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の酵素分解を低下させることができる。研究者らは、腸における管腔に分泌されたプロテアーゼならびに膜−結合ペプチダーゼからペプチドを保護するために多数のアプローチを開発した。後者は全ての粘膜組織の表面に見出され、その交差は、しばしば、ペプチド薬物の進入経路である。Bernkop−Schurch et al.(J.Drug Target,7:55,1999)は、ペプシンの阻害剤を含有するペプチド薬物処方の創製を報告する。ペプスタチンのアナログをムコ接着性ポリマーに共有結合させ;この新規なペプシン阻害剤はインスリンを含有する錠剤に含めた。消化を刺激する実験室条件下でのインキュベーションの後、制御錠剤からのインスリンの全ては代謝され、他方、該阻害剤を含有する錠剤からのインスリンのほぼ50%が分解から保護された。もう1つの実験において、同一のグループは、生物学的に活性なペプチドの分解を阻害する毒性副作用を通常は引き起こす用量にてプロテアーゼ阻害剤を利用した(Bernkop−Schnurch et al.,Adv.Drug Del.Rev.,52:127,2001)。このアプローチは、甲殻綱動物および他の生物で見出される主要構造多糖であるキチンから抽出されたセルロースに関連するアミノ多糖であるキトサンを利用する。ペプチダーゼ阻害剤をキトサンにコンジュゲートさせ、かつこのコンジュゲートした分子をペプチド薬物の処方に含めることによって、消化管プロテアーゼの有意な阻害が観察され、遊離プロテアーゼ阻害剤の投与では予測される副作用なくして、ペプチドの生物学的利用性を増加させた。該研究においては、種々のプロテアーゼ阻害剤が、単独で、および組み合わされて、キトサン担体へのコンジュゲーションのために利用された。キトサン−EDTAコンジュゲートが、活性のためにある種のプロテアーゼによって必要とされるミネラル補因子に結合することによって同様に内因性プロテアーゼを阻害した。当業者に容易に明らかなように、担体分子およびエフェクター部位の間の非常に多数の可能な組合せを作りだして、ペプチド処方に対する有益な特性を供することができ、そのいずれも、本発明のペプチドで用いるのに容易に適合させることができよう。キトサンに結合したプロテアーゼ阻害剤を用いるペプチドの経口送達用の処方を作成することによって、本発明のペプチドの経口送達を筋肉内注射の代わりに用いることができよう。このアプローチは、このペプチドおよびその誘導体についてのなおより大きなレベルの生物学的利用性を作り出すために、この処方において、(前記パラグラフで議論した)配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなる。ペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010配列を含まない)のより吸収可能なコンジュゲーテッドバージョンを用いることを排除しない。
【0055】
もう1つの分子によってある位置に標的化されることに加えて、ペプチドそれ自体は標的とする分子として働くことができる。後に記載する所望の位置へ分子を標的化するペプチドを用いるためのコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通した他のコンジュゲ
ーション技術のいずれも、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドがCMS−010の配列を含まない)で用いることもできる。例えば、研究者らは、抗癌薬物ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)を取り、それを標的化目的でペプチドにコンジュゲートした。DFMOは種々の腫瘍細胞型を殺すにおいて効果的な高度に細胞傷害性剤である。しかしながら、それは身体から迅速に排出されるため、その治療価値は制限される。この研究において、DFMOは、αメラノトロピンの特定の断片、およびヒトメラノーマ細胞系上のメラノトロピン受容体に優先的に結合することが示された2つのアミノ酸置換を含有する該断片のアナログにコンジュゲートされた(Suli−Vargha
et al.,J.Pharm.Sci.,86:997,1997)。アミノペプチダーゼによるペプチド断片からのDFMOの遊離を容易とするために、薬物は該ペプチドのN−末端にコンジュゲートされた。研究者らは、コンジュゲートされた薬物が未コンジュゲッテッド薬物単独よりもメラノーマ細胞を殺傷するにおいてより効果的であることを見出した。
【0056】
本発明のペプチドの効果は、ペプチドそれ自体における固有の標的化能力に部分的にはよるものであろう。例えば、αメラノトロピン断片のように、本発明の特定のペプチドは、細胞の区別されるタイプの表面に見出されるある種の受容体に結合することができる。そのペプチドをコンジュガントとして用いることによって、薬物を、薬物で治療すべき個体の身体内の細胞の位置に標的化することができよう。
【0057】
コンジュゲートとしてのペプチドは標的化以外の機能を発揮することができる。以下に記載するペプチドの治療的有効性を増強するためのコンジュゲーション技術、ならびに当業者が精通した他のコンジュゲーション技術のいずれかを用いて、配列番号2ないし31およびその機能的誘導体から選択される配列を含む、実質的にそれよりなる、またはそれよりなるペプチド(ここに、該ペプチドはCMS−010の配列を含まない)の治療的有効性を増強させることもできる。Fitzpatrick et al.は、2つの分子の間のペプチドスペーサーを用いることによってコンジュゲートされた抗癌剤を改良した(Anticancer Drug Design,10:1,1995)。メトトレキセートは、腫瘍細胞に対する活性によってその摂取を増強させるためにヒト血清アルブミン(HSA)に既にコンジュゲートされている。一旦細胞によって摂取されると、メトトレキセートのいくらかはリソソーム中の酵素によってコンジュゲートから遊離され、ついで、その細胞傷害性効果を発揮することができる。4アミノ酸リンカーペプチドを、メトトレキセート、およびリソソーム酵素によって容易に消化されるHSAの間に挿入することによって、コンジュゲート分子から細胞内で生じた活性メトトレキセートの量を増加させた。本発明のペプチドは、特定の酵素との特定の相互作用を介してそれらの効果を発揮させることができる。薬物およびその担体分子の間のリンカーセグメントとして、またはもう1つのリンカーセグメントに加えて、コンジュゲートされた分子に本発明のペプチドを取り込むことによって、薬物動態を改変することができる。これは、引き続いて、コンジュゲートからの薬物分子放出の速度を減少させまたは増加させる、プロテアーゼの活性に対してより抵抗性またはより感受性であるプロドラッグを作り出すことができる。前記したコンジュゲーテッド化学療法剤の実施例で見られるように、薬物分子送達のその速度の変化は、薬物の有効性を大いに増強させることができる。
【0058】
特定の細胞に対する薬物の効果は、細胞の活性化状態、または細胞近くのまたは細胞内の他の分子シグナルの存在に依存して変化させることができる。いくつかの場合において、薬物が効果を有するためには、もう1つの分子またはシグナルが存在する必要がある。Damjancic et al.(Exp.Clin.Endocrin.,95:315,1990)が、欠乏した内因性グルココルチコイド合成を持つ患者に対するヒト心房ナトリウム利尿性ペプチド(hANP)の効果を調べた。ペプチドは、グルココルチコ
イド療法の中断の間に、またはデキサメタゾンを用いる療法の引き続いての再開の間に患者に与えられた。患者は、ペプチドホルモンが同時デキサメタゾン治療の間に認められた場合にのみ、利尿およびナトリウム排出の増加に伴ってhANPに応答した。グルココルチコイド療法の中断の間でのhANPでの処置は効果を有しなかった。同時ステロイドホルモン投与の効果は、ペプチドの活性を増強することもできる。Zhu et al.(Acta Pharm.Sinica,28:166,1993)からの報告において、鎮痛剤ペプチドキオトルフィン(KTP)の活性は、ペプチド単独の作用と比較して、短いリンカーセグメントを介するヒドロコルチゾンへのコンジュゲーションによって有意に増強された。ヒドロコルチゾン単独の投与では効果は観察されなかった。
【0059】
これらの研究の結果は、コンジュゲーテッド分子としての、または処方における成分としてのステロイドホルモンの能力は生物学的に活性なペプチドの活性を可能とし、または増強させることができることを示す。本発明のペプチドのいずれも、ステロイドホルモンへのコンジュゲーション、またはステロイドホルモンの共適用によって変調し、または活性化することもできる。Zhu et al.技術は、本発明のペプチドへのステロイド分子のコンジュゲーションに容易に適合させることができる。図1ないし5も、また、本発明のペプチドのいずれかへステロイドホルモンを連結させるための段階的合成反応の実施例を提供する。
【0060】
前記で示した実施例は、本発明のペプチドのいずれかの有用性および活性を増加させる例示的な方法を提供する。この分野におけるさらなる発展は、効果的なペプチド−ベースの臨床的治療に対するバリアーを克服するのを助ける。当業者に明らかなように、ペプチド生化学、医薬研究および臨床試験で用いるために開発された技術、試薬およびプロトコルは本発明のペプチドのいずれにも全て容易に適用することができる。
【0061】
実施例
背景
VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)の配列内では、いくつかのアミノ酸は他のものよりも生物学的活性につき非常に重要であり得ると予測された。本発明のいくつかの実施形態において、VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)内の活性な部位/複数部位を見出すことによって、ペプチドの活性に寄与しない配列中のアミノ酸は、生物学的活性分子をより短くすることができるように除去することができる。ペプチドの異なる活性部位の組換えを行って、修飾された生物学的活性を有する新しいペプチド分子を得ることもできる。生物学的活性ペプチド分子の短縮化は、生物学的および経済的重要性双方を有することができる。より短い配列を有することによって、ペプチドの生物学的特性を修飾し、そのような修飾が、修飾された生物学的半減期、受容体親和性、または副作用プロフィールのような潜在的治療的利点を有することができる。また、より短いペプチドは生成するのがより安価であり、生成コストを低減させることができる。
【0062】
VAPEEHPTLLTEAPLNPK(CMS−010)内の活性な部位を決定するために、我々は一連の切断実験を行った。CMS−010を、アミノ末端からカルボキシル末端へペプチド結合の各々を切断した。我々は、もし活性部位が切断されると、ペプチドの得られた対の生物学的活性は減少し、消失し、または幾分修飾されると予測する(生物学的活性の活性化/不活化)。活性な部位/複数部位をCMS−010内で突き止めた後、ペプチドの新しい組を、異なる活性部位の組合せによって構築することができる。
【0063】
切断された、または組換えペプチドの組を、有力な治療としてのヒトへのまたは生物学的な用途を有する生物活性を有するものとして我々の実験で同定した。ペプチドのこの組を以下の表1に掲げる。我々の知見は、表1後の実施例で報告する。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1
イン・ビトロにおいてConAによって誘導されたマウスT−リンパ球形質転換に対するペプチドの効果
1.1.材料
1.1.1.ペプチド
関連する全てのアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA
1.1.2 対照および他の試薬
生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.,Ltd,PR China。RPMI−1640培養基および胎児ウシ血清(FBS):Gibcol Co.,USA。MTTおよびConA:Sigma Co.,USA
1.2 動物
BALB/cマウス(H−2,SPF,6ないし8週齢、体重18ないし22g:Military Medical Academy of Science,PR China。
【0066】
1.3 方法[1]
健康なマウスから脾臓を無菌的に摘出し、注射針を用いて10%FBS RPMI−1640溶液に手動により分散させた。分散させた細胞懸濁液をさらに100−ゲージ150μm直径ステンレス鋼シーブを通してさらに篩った。脾臓細胞懸濁液を4×10/mLの密度に調製し、100μL/ウェルにて96−ウェル細胞培養プレートにアリコートした。ペプチドを純なRPMI−1640に溶解させた。グループ分けの設計を以下に掲げる。
【0067】
ペプチド群:100μL作用ペプチド溶液+75μL脾臓細胞懸濁液+25μL ConA作用溶液
ConA対照群:100μL RPMI−1640+75μL脾臓細胞懸濁液+25μL ConA作用溶液
陰性対照群:125μL RPMI−1640+75μL脾臓細胞懸濁液
ウェル中のConAの最終濃度は5μg/mLであった。ウェル中のペプチドの最終濃度は80μg/mL、16μg/mL、3.2μg/mL、0.64μg/mL、および0.128μg/mLであった。各ペプチド群が3つの平行ウェル、および対照群のための8または12のウェルを含んだ。細胞を37℃、5%COにて68時間インキュベートした。MTT方法を用いて、ELISAリーダーにて630nmで参照した各ウェルのOD570nmの数値を得た。
【0068】
1.4 結果
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
1.5 結論
CMS−010.26、CMS−010.32およびCMS−010.105は、適当な濃度において、ConA陽性対照と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビトロにてConAによって誘導されたマウスT−リンパ球形質転換を抑制することができることが見出された。
【0072】
実施例2
イン・ビボにおけるマウスT−リンパ球形質転換およびNK細胞活性に対するペプチドの効果
2.1 材料
2.1.1 ペプチド
関連する全てのアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA
2.1.2 対照および他の試薬
サイクロスポリンA:Novartis Pharma AG.,Switzerland。生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.Ltd,PR
China。RPMI−1640培養基および胎児ウシ血清(FBS):GIBCOL,USA。MTTおよびConA:Sigma Co.,USA
2.1.3 動物
BALB/cマウス(H−2、SPF、6ないし8週齢、体重18ないし22g、50%雌および50%雄):Military Medical Academy of Science,PR China。
【0073】
2.2 方法
2.2.1 動物のグループ分けおよび投与
全ての動物は2つのペプチド群(200μg/kg/日および50μg/kg/日)、サイクロスポリンA群(10mg/kg/日)および生理食塩水群(0.5mL/日)にランダム化した。各群は10匹のマウスを含み、そこでは、半分が雌であって半分が雄であった。全てのテスト物質を0.5mL生理食塩水に溶解させ、1日1回20日間、腹腔内投与した。T−リンパ球形質転換およびNK細胞活性を、最後の注射直後の日に調べた。
【0074】
2.2.2 T−リンパ球形質転換[1−2]
最後のテスト物質投与の後の日に、マウスを頸部脱臼によって犠牲にした。脾臓を無菌的に摘出し、注射針を用いて10%FBS RPMI−1640溶液に手動で分散させた。分散させて細胞懸濁液を、さらに、100ゲージ150μm直径のステンレス鋼シールを通して篩い、4×10/mLに調製した。細胞懸濁液を、以下の設計にて、96ウェル細胞培養プレート、100μL/ウェルに摂取した。
【0075】
アッセイウェル:100μL細胞懸濁液+100μL ConA
対照ウェル:100μL細胞懸濁液+100μL RPMI−1640
4つのアッセイおよび4つの対照ウェルを各動物につき設定した。プレートを37℃、5%COにて68時間インキュベートした。次いで、MTTを加え、プレートを、ELISAリーダーにて、630nmにおいて参照するOD570nmで読んだ。刺激指数SI(%)=(アッセイウェルOD/対照ウェルOD)×100%
2.2.3 NK細胞活性に対するペプチドの効果[3−5]
YAC−1標的細胞を対数期までもってゆき、1×10/mLの密度に調製した。マウス脾臓細胞を前記セクション2.2.2に調製し、4×10/mLの密度に調製し、エフェクター細胞として用いた。細胞懸濁液を96ウェル細胞培養プレートに以下のように摂取した:
エフェクター細胞ウェル:100μL脾臓細胞懸濁液+100μL RPMI−1640
アッセイウェル:100μL脾臓細胞懸濁液+100μL YAC−1細胞懸濁液
標的細胞ウェル:100μL YAC−1細胞懸濁液+100μL RPMI−1640
3つのアッセイウェルおよび3つのエフェクター細胞ウェルを各動物につき設計し、12の標的細胞ウェルを細胞培養プレート当たり設定した。プレートを37℃、5%COにて4時間インキュベートし、次いで、MTTを加え、プレートを、ELISAリーダーにて、630nmにて参照するOD570nmで読んだ。NK細胞活性(%)=1−[(アッセイウェルOD−エフェクター細胞ウェルOD)/標的細胞ウェルOD]×100%
2.3 結果
2.3.1 T−リンパ球形質転換の実験
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
【表6】

【0079】
【表7】

【0080】
2.3.2 NK細胞活性の実験
【0081】
【表8】

【0082】
【表9】

【0083】
2.4 結論
適当な用量において、CMS−010.04、CMS−010.12、CMS−010.14、CMS−010.24、CMS−010.25、CMS−010.26、およびCMS−010.28は、生理食塩水対照と比較して統計学的に有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてマウスT−リンパ球形質転換を抑制することが判明した。
【0084】
適当な用量において、CMS−010.24、CMS−010.26、およびCMS−010.28は、生理食塩水対照と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてマウスNK細胞活性を抑制することが判明した。
【0085】
適当な用量において、CMS−010.11、CMS−010.13、およびCMS−010.14は、生理食塩水対照と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてマウスNK細胞活性を増強することが判明した。
【0086】
実施例3
イン・ビボにおけるマウス抗体形成に対するペプチドの効果
3.1 材料
3.1.1 ペプチド
関係する全てのアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA。
【0087】
3.1.2 対照および他の試薬
サイクロスポリンA:Novartis Pharma AG.,Switzerland。生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.Ltd.,PR China。
3.1.3 動物
BALB/cマウス(H−2、SPF、6ないし8週齢、体重18ないし22g、50%雌および50%雄):Military Medical Academy of Science,PR China。
【0088】
3.2方法
3.2.1 動物のグループ分けおよびテスト物質の投与
マウスを3つの群:ペプチド(200μg/kg/日)、サイクロスポリンA(10mg/kg/日)、および生理食塩水(0.5mL)にランダム化した。各群は12匹のマウス、6匹の雌および6匹の雄を含んだ。テスト物質を0.5mLの生理食塩水に溶解させ、20連続日の間、1日当たり1回腹腔内適用した。
【0089】
3.2.2 抗体の生起および定量[7]
ヒツジ赤血球細胞(SRBC)を生理食塩水で2%(v/v)に再懸濁させ、0.2mLの再懸濁させた細胞溶液をテスト物質投与から16日に各マウスに腹腔内適用した。最後のテスト物質投与後の日に、血液を内眼角から収集し、血清滲出のために1時間室温に放置した。10分間の200gにおける遠心の後、ノーマル生理食塩水で血清を200倍希釈した。
【0090】
補体作用溶液の調製のために、10用量の真正なモルモット血清を1容量の遠心−充填SRBCに加えた。この混合物を4℃にて30分間穏やかに振盪した。次いで、10分間の200gにおける遠心によってSRBCを除去した。10容量のノーマル生理食塩水を上清に加えて、作用補体溶液を得た。
【0091】
マウス抗体力価のアッセイのために、0.2mLの1%SRBC懸濁液を各マウスからの1mLの希釈された氷冷マウス血清に加えた。次いで、1mLの作用補体溶液を加え、混合物を37℃にて20分間インキュベートした。各試料を氷上で10分間冷却することによって、反応を停止させた。次いで、試料を200gにおいて10分間遠心して、上清を得た。1mLのこの上清に、3mLのDrabkin溶液を加え、室温にて10分間放置し、次いで、OD540nmを測定した。OD540nmにおける参照溶解−50の数値は、SRBCの半分を生理食塩水で置き換え、未溶解SRBCの遠心除去を行わない以外は、試料として正確な手法に従うことによって決定した。試料血清指標(HC50)=試料のOD540nm/溶解−50 OD540nm×200。
【0092】
3.3 結果
【0093】
【表10】

【0094】
3.4 結論
適当な用量におけるCMC 010.26は、生理食塩水対照群と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてマウス抗体形成を抑制することが判明した。
【0095】
実施例4
イン・ビボにおけるKMマウス−移植S180肉腫細胞の成長速度に対するペプチドの効果
4.1 材料
4.1.1 ペプチド
全ての関与するアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA
4.1.2 対照および他の試薬
生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.Ltd.,PR China。アドリアマイシン:Zhejiang Haizheng Pharmaceutical Co.,Ltd.,PR China。
【0096】
4.1.3 動物
健康な雌KMマウス(SPF、6ないし8週齢、体重18ないし22g):Military Medical Academy of Science,PR China。
【0097】
4.2 方法
4.2.1 動物のグループ分け、テスト物質の投与および腫瘍細胞の移植[8]
180肉腫細胞を6ないし8日間でKMマウスに腹腔内移植し、腹水液を無菌的に収集した。細胞の濃度を10%FBS RPMI−1640でmL当たり1×10に調整し、肉腫担持マウスモデルを開発するために、0.2mLの細胞懸濁液をアームピットを通して各KMマウスに注射した。S180肉腫細胞を移植したマウスを5つの群:ペプチド(2つの群:50μg/kg/日および10μg/kg/日)、アドリアマイシン(2mg/kg/日)、シクロホスファミド(40mg/kg/日)、および生理食塩水(0.5mL/日)にランダム化した。テスト物質の腹腔内注射は腫瘍移植直後の日に開始し、20連続日の間、1日当たり1回継続した。
【0098】
4.2.2 肉腫発生決定
最後のテスト物質投与後の日に、肉腫をマウスから摘出し、重量を測定した。3つの面(A、B、C)上の各肉腫の直径をノギスによって測定した。肉腫の容量は式:V=(1/6)πABCによって計算した。腫瘍成長阻害指標は式:腫瘍成長阻害因子=(対照群の腫瘍重量−処理群の腫瘍重量)/対照群の腫瘍重量×100%によって計算した。
【0099】
4.3 結果
【0100】
【表11】

【0101】
【表12】

【0102】
4.4 結論
適当な用量において、CMS−010.103、CMS−010.02、CMS−010.03、CMS−010.04、CMS−010.05、CMS−010.07、CMS−010.08、CMS−010.09、CMS−010.11、CMS−010.13、CMS−010.14、CMS−010.15、CMS−010.16、CMS−0
10.17、CMS−010.18、CMS−010.19、CMS−010.20、CMS−010.21、CMS−010.22、CMS−010.23、CMS−010.24、CMS−010.25、CMS−010.27、CMS−010.29、CMS−010.31、およびCMS−010.32は、ノーマル生理食塩水対照群と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてKMマウス−移植S180肉腫細胞の発生を抑制することが判明した。
【0103】
実施例5
ウサギにおける馬杉腎炎に対するペプチドの効果
5.1 材料
5.1.1 ペプチド
関連する全てのアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA。
【0104】
5.1.2 対照および他の試薬
デキサメタゾンリン酸ナトリウム注射:Tianjin Jinyao Aminophenal Ltd.,PR China。生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.Ltd.,PR China。BCGワクチン:Beijing
Institute of Biological Products,PR China。ラノリン:Tianjin第6化学製品工場、PR China。流動パラフィン:Tianjin第6化学製品工場、PR China。血清BUNについての診断試薬:BECKMAN443350,USA。血清クレアチニンについての診断試薬:BECKMAN 443340,USA。
【0105】
5.1.3 動物
1匹の雄ヒツジ(8月齢):Department of Laboratory Animal,Tianjin Medical University,PR China。ウサギ(MDA、雄、2ないし2.5kg):Beijing Fuhao Breed Farm,PR China。
【0106】
5.2 方法[9−10]
5.2.1 ヒツジ抗−ウサギ腎臓皮質抗血清の調製
5.2.1.1 ウサギ腎臓皮質抗原の調製
健康なウサギを耳介静脈内注射によって4mL/kg 25%ウレタンで麻酔し、全身ヘパリン化のために1250U/kgのヘパリンを静脈内注射した。ウサギ腹部を無菌的に切開し、腎臓動脈および静脈を露出させた。腎臓動脈をカテーテル処理し、腎臓静脈を切り離した。腎臓を、腎臓組織が灰色に変化するまで生理食塩水で圧注した。次いで、腎臓を切除した。腎臓皮質を摘出し、0.5容量の氷冷生理食塩水中にホモゲナイズし、次いで、−20℃にて貯蔵した。
【0107】
5.2.1.2 ヒツジ抗血清の調製
7.5mLの腎臓皮質ホモゲネートを2.5mLのフロイントの完全アジュバントと混合した(5mg/mLのBCGワクチンと共に、1:5の比率の流動パラフィンに対するラノリン)。完全な乳化の後、抗原を5つの異なる背側位置において、位置当たり1mL、2週間ごとに1回、合計3ラウンドの注射にてヒツジに抗原を注射した。4番目の免疫化で出発し、5gの腎臓皮質を1容量の生理食塩水でホモゲナイズし、ヒツジの5つの位置に、位置当たり1mL、2週間毎に1回筋肉内注射した。ヒツジ抗−ウサギ腎臓皮質抗体の力価を、2週間後のベースで二重免疫拡散によってモニターした。力価が1:32に到達すると、ヒツジ抗血清を頚動脈から収集した。ヒツジ抗血清を等容量のウサギ赤血球細胞と混合し、抗−ウサギ赤血球細胞抗体の除去のために4℃にて12時間置いた。次いで、抗血清を遠心によって収集し、56℃に置いて、補体およびプロテアーゼを不活化し
た。抗血清を−20℃で貯蔵した。
【0108】
5.2.2 動物のグループ分け、テスト物質の投与、および馬杉腎炎モデルの確立
22匹の健康なウサギを5つの群:ペプチド(107.3μg/kg/日および58.5μg/kg/日、群当たり4匹のウサギ)、デキサメタゾン(0.1mg/kg/日、4匹のウサギ)、生理食塩水処理(1m/日、7匹のウサギ)、および正常な健康(3ウサギ)にランダム化した。ウサギにおける病気状態の確立の前に、血清BUN、クレアチニンおよび尿蛋白の24時間にわたる測定を各ウサギにつき行った。もしこれらの測定において異常性がなければ、馬杉腎炎モデルは、耳介静脈を介し、注射当たり0.5mL、30分ごとに1回の注射、ウサギ当たり合計4回の注射にて、ヒツジ抗−ウサギ腎臓皮質抗血清の静脈内注射によって、実験ウサギにおいて確立した。正常な健康(対照)ウサギ群に同様にして生理食塩水を注射した。耳介静脈を介するテスト物質の静脈内投与は、抗血清の注射後の日に開始し、1日1回、注射当たり1mLで30連続日行った。
【0109】
5.2.3 治療効果のモニタリング
5.2.3.1 尿蛋白の定量
尿は1週間当たり1回24時間にわたって各ウサギから収集し、蛋白質含有量はスルホサリチル酸方法によって測定した。
【0110】
5.2.3.2 病理学的調査
馬杉腎炎ウサギからのヒツジ抗−ウサギ腎臓皮質IgG抗体のクリアランスに対するペプチドの効果の観察のために、最後のテスト物質投与後の日に、窒息によってウサギを犠牲にし、ウサギ腎臓を切除し、フリーズ−エッジし、次いで、ヒツジIgGの存在について免疫蛍光染色した。各糸球体の蛍光−陽性領域をカウントした。ウサギ当たり30の糸球体を調べ、糸球体当たりの平均陽性領域を計算した。
【0111】
5.2.3.3 統計学
統計学的有意性はSPSSソフトウェアのt−検定によって決定した。
【0112】
5.3 結果
【0113】
【表13】

【0114】
【表14】

【0115】
5.4 結論
CMS−010.26は、生理食塩水処理対照群と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、馬杉腎炎ウサギにてイン・ビボにおいて、蛋白血症の酷さを減少させ、ヒツジ抗−ウサギ腎臓皮質抗体のクリアランスを促進できることが判明した。
【0116】
実施例6
イン・ビボにおけるHeymann腎炎ラットに対するペプチドの効果
6.1 材料
6.1.1 ペプチド
用いた全てのアミノ酸はL形のものであった:CS Bio Co.,USA。
【0117】
6.1.2 対照および他の試薬
デキサメタゾンリン酸ナトリウム注射:Tianjin Jinyao Aminophenal Ltd.,PR China。生理食塩水:OTSUKA Pharmaceutical Co.Ltd.,PR China。BCGワクチン:Beijing
Institute of Biological Products。ラノリン:Tianjin化学製品の第6工場、PR China。流動パラフィン:Tianjin化学製品の第6工場、PR China。血清BUNについての診断試薬:BECKMAN 443350,USA。血清クレアチニについての診断試薬:BECKMAN 443340,USA。
【0118】
6.1.3 動物
Wistarラット(SPF、6ないし8週齢、体重150ないし200g):Beijing Vital River Laboratory Animal Co.,Ltd.,PR China。
【0119】
6.2 方法[11−12]
6.2.1 ラット腎臓ホモゲネートの調製
健康なWistarラット腹部を無菌的に切開した。門静脈および下大静脈を露出した。門静脈をカテーテル処理し、下大静脈を切り離した。腎臓組織が灰色に変化するまで、腎臓を生理食塩水によって圧注した。腎臓を摘出し、腎臓皮質を担持した。次いで、腎臓皮質を氷上でホモゲナイズし、−20℃で貯蔵した。
【0120】
6.2.2 ラット腎臓皮質抗原の調製
ラノリンを1:2v/v比率で流動パラフィンと混合し、振盪しつつ70℃まで加熱し、次いで、オートクレーブ処理した。十分なBCGワクチンをラノリン/パラフィン混合物に加えて、3mg/mLのワクチン濃度を生じさせ、フロイントの完全アジュバントを形成した。腎臓皮質ホモゲネート、フロイントの完全アジュバント、および生理食塩水を乳鉢処理しつつ完全に乳化されるまで1:1:2に比率で混合した。
【0121】
6.2.3 動物のグループ分けおよびモデルの確立
20匹の健康なWistarラットを2つの群:ペプチド(200μg/kg/日)および生理食塩水処理(2mL/日)にランダム化した。2mLの抗原を各ラットに、2週間ごとに1回、合計5ラウンドの注射にて、腹腔内注射した。腹腔内注射によるテスト物質の投与を第三免疫化の後の日に開始し、実験の最後まで1日当たり1回行った。
【0122】
6.2.4効力のモニタリング
6.2.4.1 尿蛋白の定量
尿蛋白の定量はモデル確立の第3週において開始した。尿試料は2週間毎に1回24時間にわたって各ラットから収集し、スルホサリチル酸方法によって尿蛋白含有量を定量した。
【0123】
6.2.5 統計学
SPSSソフトウェアを用いるt−検定によって試料値を比較した。
【0124】
6.3結果

【0125】
【表15】

【0126】
6.4 結論
適当な用量において、CMS−010.26は、生理食塩水処理群と比較して統計学的有意性をもって(P<0.05)、イン・ビボにてHeymann腎炎ラットにおける蛋白血症の重症度を低下させることが判明した。
【0127】
実施例1ないし6の文献
1.Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Methodology of pharmacological experiment.People’s Health Publishing House.2002,1:1426−1428
2.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China.1993,7:134−135
3.Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Method
ology of pharmacological experiment.People’s Health Publiching House.2002,1:1429
4.Jinsheng He,Ruizhu Li,Tingyi Zong.The
study on MTT reduction method of testing NK cell activity.China Immunology Journal.1996,1(6):356−358
5.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China,1993,7:128−129
6.Yuanpei Zhang,Huaide Su.Pharmacological experiment (second edition).People’s Health Publishing House.1998,137−138
7.Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Methodology of pharmacological experiment.People’s Health Publishing House.2002,1:1429
8.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China.1993,7:137−139
9.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China.1993,7:96
10.Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Methodology of pharmacological experiment.People’s Health Publishing House.2002,1:1227−1228
11.Principles of Pre−clinical Research of New Drugs,People’s Republic of China.1993,7:97
12.Shuyun Xu,Rulian Bian,Xiu Chen.Methodology of pharmacological experiment.People’s Health Publishing House.2002,1:1227
【0128】
実施例7
遺伝子工学により作成したLactobacillus細菌種を介するペプチドの送達
以下に、本発明のペプチドを前記した宿主に送達するための1つの例示的方法を提供する。CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)およびその機能的誘導体よりなる群から選択されるペプチド(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)をコードするDNA配列は化学的手段によって合成され、このDNA配列は、当業者が精通した遺伝子工学の標準的技術を用いて発現ベクターに挿入される。発現ベクターはLactobacilliで機能する構成的プロモーター、DNA配列の特異的5’ないし3’向きでの導入のためのマルチプルクローニング部位、ならびに抗生物質に対する耐性を付与して(クローニング手法を助ける)選択マーカー遺伝子を含有し、シグナルペプチド配列のような、ペプチドの生成および/または分泌を助けるための他の配列を含むこともできる。そのようなベクターの実施例は、ここに引用してその全体を援用するPavlaに対する米国特許第5,592,908号によって供される。簡単に述べれば、この特許は、Lactobacillus種で機能するいくつかの公知のプロモーター、ならびに該細菌において新規なプロモーターを発見するための方法を議論し、そのいずれも、Lactobacilliにおいてペプチドを発現させるために本発明のペプチドをコードする核酸に操作可能に連結させることができる。前記引用の米国特許第5,529
,908号に記載されたLactobacillus lactisにおいて活性な16ないし35のほとんど疎水性のアミノ酸を含むペプチドのような単一ペプチドをコードする核酸は、該シグナルペプチドをコードする核酸が本発明のペプチドをコードする核酸に対して枠内にあるように、プロモーターおよび本発明のペプチドをコードする核酸の間に入れられる。
【0129】
ペプチドのコーディング配列に加えて、合成されたDNA配列は、該DNAの発現ベクターへの連結およびクローニングを助けるための配列を含むことができる。例えば、ベクターのマルチプルクローニング部位で見出されたものに対応する制限酵素認識部位は、配列をベクター内に適当な向きにクローン化することができるように、配列の5’および3’末端にて合成されたDNAに取り込むことができる。該ベクターおよび合成されたDNAは共に特定の制限酵素で消化し、次いで、精製する。ベクターおよび合成されたDNAでの連結反応に続いて、E.coliの適当な株に形質転換される。形質転換された細菌を、それに対してベクターが抵抗性を付与する抗生物質を含有する培地上で平板培養する。形質転換された細菌のコロニーを成長培養およびプラスミド調製手法のために選択し;正しい向きでの合成されたDNAの存在を確認する。
【0130】
次いで、この発現ベクターをL.acidophilusのようなLactobacillus種の細菌宿主細胞に形質転換する。形質転換された細胞はベクター配列内で見出される選択マーカーによって選択され、ペプチドの分泌は、ウェスターンブロットを行い、成長培地に存在するペプチドのゲル電気泳動または他の標準的技術を行うことによって確認することができる。細菌の形質転換されたコロニーを選択し、それを用いて、遺伝子工学作成細菌の大規模な培養を調製する。所望のペプチドを発現する遺伝子工学作成細菌の培養を増殖させ、その少なくとも一部分を消化管、膣、気管または細菌がそこで複製可能な宿主生物の他の領域に投与する。所望により、細菌培養を種々の方法で処理して、宿主による腸消費用の補充物を生成することができる。これらの処理は、溶液、溶媒、分散媒体、遅延剤、エマルジョンなどのような、担体剤と細菌とを組み合わせるのに加えて、細菌の凍結乾燥または保存の他の方法を含む。補充物を調製するためのこれらの剤の使用は当該分野でよく知られている。例えば、細菌を用いて、ペプチドを発現する生物が宿主生物の腸で集落を形成するように、ヒト消費のための培養した乳製品または他の食料を作成することができる。乳酸菌の特異的株をヨーグルト、キムチ、チーズおよびバターのような食品に取り込むための多数の異なる方法が、ここに引用してその全体を援用する、Ohに対する米国特許第6,036,952号に開示されている。多数の経路のうちの1つを介する細菌の消費に際して、作成された生物は腸で集落を形成でき、本発明のペプチドの腸の粘膜層を介する提示および/または吸収を可能とする。
【0131】
実施例8
Bacillus subtilisの遺伝子工学作成形態を通じてのペプチドの送達
以下に、前記した宿主に本発明のペプチドを送達するためのもう1つの例示的方法を提供する。CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)およびその機能的誘導体よりなる群から選択されるペプチド(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)をコードするDNA配列は化学的手段によって合成され、このDNA配列を、全ての技術が当該分野で知られている遺伝子工学の技術を介して発現ベクターに挿入する。選択された発現ベクターはE.coliおよびB.Subtilis双方で増殖でき、かつ形質転換された細菌のコロニーを選択するための抗生物質耐性遺伝子を含有する、pTZ18R(Pharmacia,Piscataway,NJ)のようなシャトルベクターを含む。このベクターは、B.subtilisのSac B遺伝子に由来するプロモーターのようなB.subtilisで活性な構成的プロモーター、ならびに細菌細胞からの発現された異種蛋白質の効果的な抽出を指令するB.subtilisで活性なシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有することができる。そのようなベ
クターの実施例は、その開示をここに引用してその全体を援用する、Fahnestockに対する米国特許第6,268,169号に開示されている。簡単に述べれば、前記で詳細を述べたように、本発明のペプチドをコードするDNAを制限酵素部位および/または他の配列にて合成して、当業者が精通した技術を介してDNAのクローニングを容易とする。E.coliへの形質転換、平板培養、選択、およびプラスミドストックを作成するためのプラスミドの増殖の後に、次いで、該プラスミドをB.subtilisに形質転換し、形質転換体を平板培養培地中で抗生物質に対する耐性に選択する。
【0132】
遺伝子工学作成B.subtilisにおけるペプチド生成、およびそれからのペプチド分泌は、SDS−PAGE分析またはウェスターンブロッティング後におけるオートラジオグラフィー検出用のペプチドの放射性標識のような、当業者に良く知られた技術を用いて確認する。
【0133】
遺伝子工学作成細菌の培養を増殖させ、その少なくとも一部分を消化管、膣、気管、または細菌がそこで複製することができる宿主生物の他の領域に投与する。
【0134】
実施例9
遺伝子工学により作成されたSaccharomyces酵母種を介するペプチドの送達
以下に、前記した宿主へ本発明のペプチドを送達するためのもう1つの例示的方法を掲げる。CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)およびその機能的誘導体よりなる群から選択されるペプチド(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)をコードするDNA配列を化学的手段によって合成し、このDNA配列を、全ての技術が当該分野で知られている遺伝子工学の技術を介して発現ベクターに挿入される。選択された発現ベクターは、pADH1のような構成的酵母プロモーター、酵母およびE.coli双方におけるベクターの複製用の部位、選択目的でプロトトロピーを栄養要求性酵母突然変異体に付与する遺伝子または複数遺伝子、マルチプルクローニング部位(MCS)および、所望により、単一ペプチドをコードする配列を含む、安定に維持された酵母蛋白質発現ベクターを含む。このようなベクターは商業的に入手可能であって、当該分野で良く知られているか、あるいは標準的技術を用いて容易に構築することができる。合成されたDNAの酵母ベクターへの挿入の後、E.coliへの形質転換、形質転換されたE.coliの選択された培地への平板培養、形質転換された細菌コロニーの選択、および該コロニーからの細菌の成長培養からのプラスミドDNAの調製の後、ベクターを酢酸リチウム形質転換またはエレクトロポレーションのような良く知られた技術を介してSaccharomyces cerevisiaeに形質転換する。形質転換につき選択されるSaccharomyces cerevisiaeの株は、最小培地プレート上で増殖させるためにプラスミド上の遺伝子を必要とする突然変異体栄養要求株である。形質転換された酵母コロニーは、ベクターに供された遺伝子を欠く成長培地上で酵母を平板培養することによって単離される。ベクターおよびその選択遺伝子を受領し、かつその遺伝子産物を発現している酵母のみが最小培地上でコロニーまで成長できるであろう。ペプチド分泌の確認は、ウェスターンブロットを行い、増殖基に存在するペプチドのゲル電気泳動または他の標準的技術を行うことによって得ることができる。
【0135】
酵母の形質転換されたコロニーを選択し、これを用いて大規模な培養を調製する。所望のペプチドを発現する遺伝子工学作成酵母の培養を増殖させ、少なくともその一部を消化管、膣、気管、またはそこで細菌が複製することができる宿主生物の他の領域に投与する。所望により、酵母培養は種々の方法で処理して、宿主による腸消費についての補充物を生成することができる。これらの処理は、溶液、溶媒、分散媒体、遅延剤、エマルジョンなどのような、担体剤と細菌とを組み合わせることに加えて、凍結乾燥、または酵母を維持する他の方法を含む。補充物を調製するためのこれらの剤の使用は当該分野で良く知ら
れている。もう1つの実施形態において、形質転換された酵母は、ヨーグルトおよびケフィールのような発酵乳製品のような食料製品の作成において、当業者に公知の技術によって用いられる。これらの食料品における生きた乳酸菌培養に関して、形質転換された酵母は少なくとも一過的に腸で集落を形成し、腸管腔を介して宿主にペプチドを提示するように働く。
【0136】
実施例10
ペプチドの特定の位置への標的化
以下に、身体内の特定の区画、器官、細胞型または位置へ本発明のペプチドを選択的に送達する例示的方法を供する。この場合、細胞増殖障害は、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)およびその機能的誘導体の断片よりなる群から選択されるペプチド(ここに、該断片はCMS−010の断片を含まない)を個体の腎臓中の組織に標的化することによって治療される。例えば、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体は、当該分野で知られた化学反応を介する共有結合によって低分子量(LMW)リソソーム、腎臓組織において特異的に濃縮される商業的に入手可能な蛋白質部位に連結される。LMWリソソームへの分子のコンジュゲーションを達成するための技術は記載されている(Folgert et al.,Br.J.Pharmacology,136:1107,2002)。蛋白質またはペプチドを相互にコンジュゲートさせるための一般的技術もまた当該分野の文献で教示される(Fischer et al.,Bioconj.Chem.,12:825,2001)。次いで、新しく作成されたコンジュゲートしたペプチド試料を、カチオン交換FPLCおよび/またはグラジエント遠心のようなクロマトグラフィー方法によって連結プロセスで用いる化学試薬から精製する。一旦精製されれば、コンジュゲートしたペプチドは腎炎細胞増殖性障害についての療法を必要とする個体に投与される。その抗−増殖性活性のため、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的断片は、それらおよびLMWリソソームの間のリンクによって腎臓組織に優先的に標的化され、これは、腎臓の近位細管の細胞に対するLMWリソソームの親和性によって腎臓組織に選択的に濃縮される。この優先的送達は,CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体それ自体のモラー等量のそれと比較してより大きな抗−増殖性効果を可能とする。逆に、それは、あるレベルの抗−増殖性活性を達成するのに必要なペプチド薬物の量を低下することができる。
【0137】
実施例11
ペプチドのその活性な部位への送達の増強
以下に、神経活性ペプチドの脳への送達を増加させる例示的方法を掲げる。脳のニューロンによって発現される受容体に対するその効果を発揮する本発明のペプチドは当業者に知られた科学的方法によって合成される。別法として、前記例で詳細を記載したように、それは作成された微生物によって発現させ、そのような生物の培養から回収することができる。純粋な形態で一旦得られれば、該ペプチドを一連の有機化学反応で利用して、ペプチドに結合したトリグリセライドエステルコンジュゲーテッド部位を作り出す。コンジュゲーテッド部位はペプチドの末端カルボキシル炭素とのアミド結合を介して本発明のペプチドに連結された第四級置換炭素中心よりなる。第四級炭素中心に結合した他の3つの基は、16炭素脂肪酸鎖への炭素エステル結合よりなる。脂肪酸鎖それ自体は、該鎖をより親水性とし、それらを血液−脳関門内皮細胞膜に特異的に標的化する、ペプチドマスクとして知られた、末端ジペプチド基で終了する。この合成のための手法は、Patel et al.,Bioconjugate Chem.,8(3):434,1997に詳細に説明されており、これは、当業者が精通した共通の試薬および機器を利用する。
【0138】
一旦末梢位置にて個体に導入されるが、化合物は循環系を介して身体全体を移動し、血液の関門の内皮膜と相互作用する。血液−脳関門の上皮層を横切っての分子の輸送の間におけるジペプチドマスクおよび脂質鎖の段階的分解の結果、本発明のペプチドが脳区画に放出される。そこで、ペプチドはニューロンの表面の受容体と相互作用して、脳機能に対してその効果を発揮することができる。担体部位の同時分解を伴う、薬物が脳血液関門に到達し、脳に輸送されるのに必要な時間は薬物の活性のキネティックスを変化させ、遊離ペプチドの脳内脳室注射と比較してより安定でより長い継続効果を作り出す。
【0139】
実施例12
酵素分解に対して耐性であるペプチド処方の作成
以下に、消化管の表面に,および表面に沿って見出されるプロテアーゼおよびペプチダーゼの活性に対して耐性である経口投与用の生物学的に活性なペプチドの処方を作り出す例示的方法を掲げる。この実施例において、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)およびその機能的誘導体よりなる群から選択されるペプチド(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)を、患者への経口投与用の医薬処方を作成するのに利用する。Larionova et al.,(Int.J.Pharma.,189:171,1999)に記載されているように、該ペプチドは可溶性澱粉およびプロテアーゼ阻害剤であるアプロチニン、すなわち、種々の管腔内に分泌されたおよび刷子縁膜−結合プロテアーゼの強力な阻害剤とでのミクロ粒子の作成で用いる。簡単に述べれば、可溶性澱粉、該プロテアーゼ阻害剤アプロチミンおよび本発明のペプチドを水性緩衝液に溶解させる。可溶性澱粉、アプロチニン、およびペプチドの比率は当業者が精通した実験的方法によって決定される;例えば、Larionova et al.はイン・ビトロ刺激消化アッセイを利用して、彼らの実験で用いた蛋白質についての最も効果的な比率および調製条件を決定した。水性溶液は、5%Span−80、ノニオン界面活性剤を含有するシクロヘキサン中で機械的攪拌下で乳化される(1:3比率,v/v)。クロロホルム中の塩化テレフタロイル溶液をエマルジョンに加え、攪拌を30分間継続し、その間に、澱粉分子はアプロチニンおよびペプチドと架橋する。そのプロセスで作成されたミクロ粒子を、順次、シクロヘキサン、2%v/vTween85洗剤を含む95%エタノール溶液、95%エタノール溶液および水で洗浄する。ミクロ粒子を水に再懸濁し、凍結乾燥する。凍結乾燥した乾燥物は治療を必要とする個体への蛍光送達のためにゼラチンカプセルに入れることができる。
【0140】
一旦消化されれば、化合物はゼラチンカプセルが溶解するにつれて放出される。ミクロ粒子は澱粉分子に対するαアミラーゼの作用によって小腸で分解され、アプロチミンおよび本発明のペプチドを徐々に放出することに導く。ペプチドと同一時点および位置における優れたプロテアーゼ阻害剤アプロチニンの同時放出はペプチドの酵素分解を減少させ、腸膜を通じての吸収で利用できる無傷ペプチドの割合を増加させる。
【0141】
前記した方法およびデータ、およびある場合にはCMS−010ペプチド(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)の断片およびその機能的誘導体の特別な例を用いて本発明を記載してきたが、これは例に過ぎず、本発明に対する限定として捉えられるべきではないことが理解される。また、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体は本発明の特別な実施形態を表し、本発明の同一原理は、CMS−010の断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体の生物学的機能に影響することなく、修飾された他の機能的に同等なペプチドにも適用できることも理解されるべきである。例えば、CMS−010のペプチド断片(VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体の同等体は、保存的アミノ酸置換(すなわち、疎水性、親水性、正にまたは負に荷電した基のような、同一生化学タイプ内の残基を
有するもう1つのアミノ酸によって置き換えられたV、A、P、E、H、L、A、N、KまたはTのいずれか1つ)を有するものを含む。CMS−010のペプチド断片VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体の同等ペプチドのもう1つの実施例は、同一生物学的活性を保有する、1または1アミノ酸より長いもののような、わずかにより長いペプチドである。さらに、CMS−010の断片は、(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体の医学的適用についての前記した病気または障害は細胞増殖性および免疫学的障害および/または病気を特異的に引用するが、これらの医学的適用は非限定的例のみとして用いられ、特許請求の範囲の範囲を限定するように用いるべきではない。いずれかの免疫および/または細胞増殖性障害および/または病気を持つ正常な個人または患者の免疫系を変調するための、健康食品補充物として用いられるもののような、CMS−010の断片VAPEEHPTLLTEAPLNPK)(ここに、該断片はCMS−010の配列を含まない)およびその機能的誘導体の多の可能な/意図した使用があるのは明瞭である。いずれのそのような使用も本発明の範囲内に入る。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、ペプチドを共有結合でエストロン分子に連結させるための一連の化学反応を示す。
【図2】図2は、図1におけるのと同一の結合を作り出すための第二の別の組の反応を示す。
【図3】図3は、ペプチドを共有結合でエストラジオールの分子に連結させるように設計された一連の化学反応を含む。
【図4】図4は、図3と同一の結合を作り出すための第二の一連の化学反応を含む。
【図5】図5は、ヒドロコルチゾンの分子へ共有結合を介してペプチドを連結させる方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2ないし31から選択されるペプチドを含む単離されたまたは精製されたペプチドであって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列番号を含まないことを特徴とする該ペプチド。
【請求項2】
配列番号:2ないし31から選択されたペプチドより実質的になる単離されたまたは精製されたペプチドであって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まないことを特徴とする該ペプチド。
【請求項3】
配列番号2ないし31から選択されるペプチドよりなる単離されたまたは精製されたペプチド。
【請求項4】
該ペプチドの投与の効果が、免疫細胞形質転換の抑制、NK細胞活性の抑制、NK細胞活性の増強、イン・ビボでの抗体形成の抑制、細胞増殖の抑制、腫瘍成長の抑制、腎炎の抑制、および蛋白血症の減少よりなる群から選択される効果を含む請求項1記載のペプチド。
【請求項5】
該免疫細胞形質転換が、イン・ビトロにおけるConAによるT−リンパ球形質転換およびイン・ビボにおけるT−リンパ球形質転換よりなる群から選択される請求項4記載のペプチド。
【請求項6】
該細胞増殖がイン・ビボでの肉腫細胞の発生である請求項4記載のペプチド。
【請求項7】
該腎炎が抗−腎臓エピトープ抗体の活性によって引き起こされる請求項4記載のペプチド。
【請求項8】
該ペプチドがL−形アミノ酸よりなる請求項1ないし7いずれか記載のペプチド。
【請求項9】
該ペプチドが実質的に純粋な形態である請求項1ないし7いずれか記載のペプチド。
【請求項10】
配列番号2ないし31から選択されるペプチド配列を含むペプチドを含む医薬組成物であって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まないことを特徴とする該医薬組成物。
【請求項11】
L−形アミノ酸よりなる配列番号2ないし31からの配列を含むペプチドを含み、ここに、該ペプチドがペプチドCMS−010の配列を含まない請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを供し、次いで、該ペプチドを医薬上許容される担体と混合することを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、医薬組成物の製法。
【請求項13】
医薬上有効量の、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドを投与することを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、ヒト病気の効果を低下させる方法。
【請求項14】
該ヒトが細胞増殖障害および免疫学的障害よりなる群から選択される疾患に罹った請求項13記載の方法。
【請求項15】
該細胞増殖性障害が癌、肉腫および腫瘍よりなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項16】
医薬上有効量の、請求項2ないし31から選択されるペプチド配列を含むペプチドを投与することを含み、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、個体の免疫系を変調する方法。
【請求項17】
医薬化合物としての配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、該使用。
【請求項18】
該化合物が細胞増殖性障害および免疫学的障害よりなる群から選択される病気状態を治療するのに用いられる請求項17記載の使用。
【請求項19】
該細胞増殖性障害が肉腫である請求項18記載の使用。
【請求項20】
免疫系モジュレーターとしての、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、該使用。
【請求項21】
該変調がNK細胞活性増強およびNK細胞活性抑制よりなる群から選択される請求項20記載の使用。
【請求項22】
栄養補給剤としての、配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの使用であって、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、該使用。
【請求項23】
配列番号2ないし31から選択される配列を含むペプチドの増強された誘導体を含む分子であって、該増強された誘導体は該ペプチドに操作可能に連結された増強分子を含み、該増強分子は該ペプチドの治療効果を増強し、ここに、該ペプチドはペプチドCMS−010の配列を含まない、該分子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−501642(P2008−501642A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509950(P2007−509950)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004419
【国際公開番号】WO2005/105832
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(505473983)シィ・エム・エス・ペプチド・パテント・ホールディング・カンパニー・リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】CMS PEPTIDES PATENT HOLDING COMPANY LIMITED
【Fターム(参考)】