説明

生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法

電磁放射を用いて生物学的サンプルを処理するための方法。本発明の方法は、十分に特徴付けされ、均一かつ再現可能な正味の放射エネルギーおよび/または放射出力を、プロセスを受ける生物学的サンプルに供給可能である。加えて、本発明の方法は、治療剤および/または再輸液剤を備える成分への光誘導性損傷を最小化しながら、病原体の減少の増強を提供するように選択された波長の分布を有する電磁放射を生物学的サンプルに送達可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、本明細書における開示と矛盾しない程度までこの全体が参照により本明細書に組み込まれる、2005年7月6日に出願された米国仮出願第60/696,932号への優先権を、米国特許法第119条(e)の下で主張する。
【0002】
生物学的サンプルの収集、加工および精製は、一連の医薬療法および手順において重要なプロセスである。治療剤として使用される重要な生物学的サンプルには、全血および精製血液成分、例えば、赤血球、血小板、白血球および血漿が含まれる。輸血医学の分野においては、1種以上の全血成分は、枯渇したまたは欠乏した成分を置き換えるために、患者の血流に直接的に導入される。血液タンパク質などの血漿由来の物質の注入もまた、多数の治療的適用において決定的な役割を果たす。例えば、血漿由来の免疫グロブリンは、患者の損なわれた免疫系を補充するために一般的に提供される。輸血治療、注入治療および移植治療のための精製された生物学的サンプルの需要の増加のために、多大な研究努力が、治療剤として使用される生物学的サンプルの利用可能性、安全性および純度を改善することに現在向けられている。
【0003】
輸血治療、注入治療および移植治療の安全性および効力は、供与された生物学的サンプル中に存在するウイルス、細菌、真菌、バクテリオファージおよび原生動物などの病原性生物学的夾雑物の存在を同定すること、および/またはこの生物学的活性を減少させることに依存する。治療剤として使用されるサンプル中の病原体の存在は、治療を受けている患者の感染を引き起こすことが可能である夾雑物として危険であり、回復時間、生活の質および将来の健康に有害な影響を与え得る。さらに、生物学的サンプル中の病原性夾雑物の存在は、治療的な輸血、注入および移植の手順を受けている患者のみならず、これらの材料を日常的に取り扱い、処理および管理している医師および他の病院職員に対してもまた深刻な結果となる。
【背景技術】
【0004】
治療剤として使用される生物学的サンプルは、過去におけるよりも現在は安全であるが、ヒトの血液サンプルにおける病原体への曝露のリスクは顕著なままである。多くの有害な夾雑物が、ヒト血液の細胞内画分および細胞外画分において日常的に同定されている。例えば、献血された血液および血液成分サンプルの約20万例のうち1例にB型肝炎が夾雑しており、約190万例のうち1例にI/II型ヒト免疫不全ウイルスが夾雑しており、そして約160万例のうち1例にC型肝炎が夾雑していると見積もられている。細菌夾雑物は、献血された血液および血液成分サンプルにおいて、ウイルス夾雑物よりもさらにより一般的であり、血小板製品中で2000〜3000サンプル中1例まで高い夾雑の発生に達し得る。ドナー白血球による提供された血液成分の夾雑は、しばしば遭遇する別の問題である。
【0005】
これらの公知のリスクに加えて、ヒト血液貯蔵所は、従来的な血液スクリーニングプロトコールにおいてアッセイされない輸血感染ウイルス、E型肝炎ウイルス、ヒトヘルペスウイルス8、HTLV−2、西ナイルウイルス、A型肝炎ウイルス、TTウイルス、SEN−Vマラリア、バベシア、トリパノソーマ、およびパルボB19ウイルスを含む他の病原体で日常的に汚染されていることもまた実証されてきた。これらの夾雑物に関連するリスクの結果として、全血および血液成分は、疾患の伝染の懸念により、現在治療剤として十分に活用されていない可能性がある。
【0006】
この10年間にわたって、生物学的サンプル、とりわけ、献血された血液成分における病原性夾雑物と関連するリスクを減少させるための多数の方法が出現してきた。ドナーおよび得られた血液サンプルのスクリーニングは、病原体が夾雑した生物学的サンプルを同定および回避するための有効な方法を提供することが実証されてきた。有効なスクリーニング方法は、厳格なドナーの問診および病原体特異的アッセイ技術を組み合わせる。スクリーニングによって達成される病原体伝染の減少にも関わらず、これらの方法は、病原体夾雑物の存在と関連する問題に影響を受けやすいままである。第1に、測定可能な病原体伝染の発生は、感染を引き起こすことが可能である非常に低レベルの病原体を検出することの困難性に起因して、スクリーニングした血液サンプルに付随する。第2に、血液サンプルのスクリーニングは、使用不能と見なされる献血された血液の大量の廃棄を生じる。献血される血液の供給が限られているので、夾雑血液の廃棄は、重要な治療手順のために必要とされる血液成分の利用可能性を減少する。第3に、現在のスクリーニング方法論は、ほぼ9通りの病原体特異的アッセイに限られている。従って、ヒト血液中に存在するまだ同定されていない血液病原体は言うまでもなく、血液サンプル中に存在することが知られている多数の病原体が現在アッセイされていない。最後に、スクリーニング方法は高価かつ労力がかかり、効率よく実施されるために多くの資金の出費を必要とする。
【0007】
生物学的サンプルの夾雑に付随するリスクを減少させるための異なるアプローチには、病原体を殺傷し、かつこれらを複製不能にすることによって、生物学的サンプル中に存在する病原体の生物学的活性を減少することが含まれる。この10年間にわたって、直接的光還元、脂質膜を有するウイルスを不活化するための界面活性剤の使用、化学的処理方法および光誘導性化学的還元の技術を含む、生物学的液体中の病原体の生物学的活性を減少させるための種々の方法が出現してきた。大量の病原体不活化とのその適合性および実証された効力のために、光誘導性化学的還元および直接的光還元は、生物学的サンプルを処理するための2つのとりわけ有望な技術である。米国特許第6,277,337号、同第5,607,924号、同第5,545,516号、同第4,915,683号、同第5,516,629号、および同第5,587,490号は、血液中の病原体を不活化するための光誘導性化学的還元および直接的光還元のためのシステムおよび方法を記載している。
【0008】
光誘導性化学的還元方法において、1種以上の光増感剤の有効量が生物学的液体に加えられ、これは、引き続き連続的に混合され、かつ電磁放射を照射される。照射は光増感剤を活性化し、これによって、サンプル中に存在する病原体を殺傷し、または病原体が複製することを実質的に妨害する化学反応および/または物理的プロセスを開始する。直接光還元法において、生物学的サンプルは、病原体の破壊または不活化を直接的に提供する波長を有する電磁放射で照射される。光誘導性化学的還元法は、ある病原体還元適用においては直接的光還元よりも好ましい。なぜなら、これらの技術は、処理を受けている生物学的液体の治療成分の生物学的活性および生存度に有意な影響を与えない照射波長、放射強度および放射エネルギーとしばしば適合性であるからである。
【0009】
生物学的液体中の病原体の有効な光誘導性化学的還元は、サンプル処理の間に有効な照射および液体混合条件を達成することおよび維持することを必要とする。第1に、活性化電磁放射の波長分布は、存在する光増感剤の吸収範囲内になくてはならず、好ましくは、吸収最大の近くに集中しなくてはならない。第2に、病原体減少を受けている液体のすべての部分に供給される照射強度および放射エネルギーは、病原体の生物学的活性を所望のレベルまで減少させるために十分に大きい、サンプル中の光増感剤試薬の集団を励起するために十分でなくてはならない。最後に、液体の混合割合は、処理を受けている液体の全体の量を通して、光増感剤および放射エネルギーを均一に分配するために十分に大きくなければならない。
【0010】
光誘導性化学的還元および直接的光還元の実証されている効力にも関わらず、血液および血液成分中の病原体の生物学的活性を減少させるためのこれらの技術の十分な利点は、処理の間に生物学的サンプルを保持するために従来的な容器から生じる問題に起因して、現在は妨害されている。第1に、サンプルに送達される電磁放射の量は、これが処理の間に保持される容器の伝達特性に依存する。しかし、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)可塑剤を有するポリ(塩化ビニル)材料などの、従来的な血液バッグおよび容器において使用されている多くの材料は、紫外および可視光電磁放射への曝露の際に、光誘導性の化学的および/または物理的な変化を受けることが知られている。これらの変化は、これらの材料の伝達特性に顕著な影響を与えることが可能である。これらの望まれていない光化学的プロセスはまた、曝露時間の関数として特徴付けすることが非常に困難であり、そして特定の処理プロトコールの間にサンプルに実際に送達される放射の量を定量するための試みを著しく損なう。病原体減少処理プロセスの間に、生物学的サンプルの容器の伝達特性の変動は、達成された病原体減少の程度の正確な決定をあいまいにし、品質制御の試みを損ない、そして製品のバリデーションおよび規制認可にマイナスの影響を与える。第2に、ポリオレフィンバッグなどの生物学的サンプルのための多くの従来的な容器は、健常な細胞、組織およびタンパク質などの生物学的分子の生存度および生物学的活性を低下させる高エネルギー紫外電磁放射に対して少なくとも部分的に透明である。アーク放電ランプ、水銀蒸気蛍光ランプ、冷陰極蛍光ランプおよびエキシマーランプなどの、生物学的サンプルを処理する際に使用される多くの従来的な光源が、顕著な量の高エネルギー紫外電磁放射を発生するにつれて、病原体減少を受けている生物学的サンプルの成分は、処理の間に、少なくともある程度まで、望ましくない光誘導性の分解をしばしば受ける。
【0011】
前述から、治療剤としての生物学的液体の安全かつ有効な使用を保証する電磁放射を用いてこれらの生物学的液体を処理するための方法およびデバイスについての明確な必要性が存在することが認識される。具体的には、病原体の直接的および/または光誘導性化学的減少を受ける生物学的サンプルに、再現可能かつ十分に特徴付けされた放射エネルギーが供給されることを保証する方法、デバイスおよびデバイスの構成要素が必要とされている。加えて、治療剤の活性および生存度に有害な影響を与えることが可能である電磁放射に対して、治療剤を備える生物学的サンプルの成分を曝露を回避または最小化する方法、デバイスおよびデバイスの構成要素が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,277,337号
【特許文献2】米国特許第5,607,924号
【特許文献3】米国特許第5,545,516号
【特許文献4】米国特許第4,915,683号
【特許文献5】米国特許第5,516,629号
【特許文献6】米国特許第5,587,490号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
(発明の概要)
本発明は、電磁放射を用いてサンプルを処理するための方法、デバイスおよびデバイスの構成要素を提供する。本発明は、従来的な病原体減少処理プロセスと比較して、改善された病原体減少の有効性を提供し、かつ処理された生物学的サンプルから誘導される治療剤および再輸液剤の生物学的活性および生存度を最適化する、生物学的サンプル中の病原体の生物学的活性を減少させるための方法およびシステムを提供する。
【0013】
治療剤または再輸液剤としての使用のために安全かつ有効であるように、生物学的サンプルを処理するための方法およびデバイスを提供することが本発明の1つの目的である。電磁放射を用いる治療を受けている生物学的サンプルに、再現可能かつ均一な正味の放射エネルギーおよび/または放射出力を供給可能な方法およびデバイスを提供することが本発明のさらに1つの目的である。正確に定量、計算および/または予測が可能である放射出力および正味の放射エネルギーを有する電磁放射を用いて生物学的サンプルを処理するための方法およびデバイスを提供することがさらに本発明の1つの目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、本発明は、生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法を提供し、ここで、このサンプルは、処理プロセスの全体を通して電磁放射に対する容器の曝露の間に実質的に一定である、吸光係数、吸収断面積、および伝達のパーセンテージなどの光学的特性を有する容器中に供給される。本明細書の文脈において、「実質的に一定な」吸光係数、吸収断面積、および伝達のパーセンテージは、ある適用のために、所定の処理プロセスにわたって約10%未満、好ましくは約5%未満変化する。本発明のこの態様の一実施形態において、血液または血液成分などの生物学的サンプルは、ポリマー材料および可塑剤などの少なくとも1種の添加剤を備えた容器中に提供され、ここで、容器を構成するポリマー材料および添加剤の組み合わせは、生物学的サンプル中での病原体の直接的光還元を提供する波長の分布、および/または病原体の減少を生じる光化学反応を誘導可能である波長の分布などの選択された波長の分布を有する電磁放射を少なくとも部分的に伝達可能である。
【0015】
本発明のこの態様において、生物学的サンプルを有する容器は、電磁スペクトルの可視領域および/または紫外領域の波長を有する電磁放射などの電磁放射に曝露される。選択された波長の分布を有する電磁放射は、容器によって少なくとも部分的に伝達され、容器中に保持された生物学的サンプル(および/またはその中に供給される添加剤)と相互作用し、これによって、サンプル中に存在する病原体を減少させる。本発明のこの態様において、容器を構成するポリマー材料および添加剤の組み合わせの物理的、化学的および光学的特性は、選択された波長の分布を有する電磁放射の容器による伝達は、所定の処理プロトコールのための全体の処理プロトコール(すなわち、電磁放射に対する曝露時間)の間に実質的に一定である。本発明のこの態様の容器の実質的に一定の伝達特徴は、紫外および/または可視電磁放射への曝露の際に、選択された波長の分布を有する光についてポリマー材料および添加剤の組み合わせの吸光係数(または代替的には伝達のパーセンテージ)の有意な光誘導性変化を受けない、ポリマー材料および添加剤の組み合わせの選択によって提供される。
【0016】
本発明のこの態様の方法は、容器の光学的特性、例えば、伝達のパーセンテージおよび/または生物学的サンプルの処理の前の吸光係数を測定するステップまたはさもなくば特徴付けるステップ、ならびに、生物学的サンプルの処理の間に容器に供給される電磁放射の放射出力を連続的に、定期的に、または断続的にモニターするステップをさらに備え得る。本発明のこの態様において、容器の伝達のパーセンテージ(または代替的には吸光係数)は処理前の波長の関数として特徴付けられ、処理の間に生物学的サンプルに供給される放射エネルギーおよび/または放射出力を決定および/または制御するために光源の測定された放射出力、放射エネルギーまたは両方と組み合わせて使用される。実質的に一定出力を供給する電磁放射の供給源の使用は、正確に予測され、計算され、および/または制御される病原体の減少の選択された程度を達成するために必要とされる曝露時間を可能にする。
【0017】
電磁放射への曝露の間に実質的に一定である第1の波長の分布に対応する、吸光係数およびパーセンテージ伝達などの光学的特性を示す、ポリマー材料および1種以上の添加剤の組み合わせを備える容器を利用する本発明の方法の顕著な利点は、これらの方法が、処理の間にサンプルに実際に送達される正味のエネルギーの正確な特徴付けおよび/または測定を可能にすることである。本発明のこの特色は、病原体減少の選択された程度を達成するために不十分であり、かつ病原体減少の選択された程度を達成するために必要とされるものよりも大きな正味の放射エネルギーおよび/または放射出力に対して生物学的サンプルを過剰曝露することを回避するため、例えば、治療剤を備える生物学的サンプルの成分の損傷および/または分解を生じる放射出力および/または放射エネルギーに対するサンプルの曝露を回避するために有用である。
【0018】
本発明のこの態様の容器のために有用なポリマー性材料および添加剤は、血液および血液成分などの生物学的サンプル中の病原体を減少させるために有用である、放射出力、正味の放射エネルギー、および入射波長への曝露の際に、ならびに曝露時間の間に、第1の波長の分布の電磁放射の伝達および/または吸光係数のパーセンテージの顕著な変化(すなわち、約10%未満またはより好ましくはある適用において約5%未満)を示さない。有用な材料は、良好な光分解安定性を示し、従って、化学組成の変化、ならびに電磁放射、特に紫外および可視電磁放射の吸収によって誘導される物理的状態に対して抵抗性であるポリマー材料および添加剤の組み合わせを備える。この重要な機能性は、本発明の方法において有用である、ポリマー材料および添加剤を含む容器の組成、物理的状態、結合スキーム、および濃度の適切な選択によって達成され、そして生物学的サンプルのための従来的な容器、例えば、病原体減少のために有用である電磁放射を伝達する、DEHP可塑剤を有するポリ(塩化ビニル)材料の能力を減少させる紫外放射の吸収の際に顕著な光化学的に誘導された変化を受ける、これらの材料を備えるものを超えた顕著な改善を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
例示的な実施形態において、ポリマー材料および添加剤を備える、本発明のこの態様の容器は、30分間までの長さの曝露時間を使用して、約0.1Jcm−2〜約24Jcm−2の範囲にわたって選択される正味の放射エネルギーへの曝露の際に、第1の分布の電磁放射の伝達および/または吸光係数のパーセンテージの約10%未満の変化を示す。
【0020】
本発明のこの態様の一実施形態において、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリ−n−ブチルなどの1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)は、電磁放射を用いて血液および血液成分のサンプルを処理するために有用な光学的、機械的および毒物学的(toxological)な特性を有する容器のための材料を提供する。第1に、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)は、直接的光還元法および/または光誘導性化学的還元法のために有用である電磁放射に対応する、約285ナノメートルから約500ナノメートルまでの範囲の波長を有する電磁放射を効果的に伝達する容器のための材料を提供する。この範囲の波長を有する電磁放射は、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン(生物学的サンプル中では結合状態または非結合状態である)などのいくつかの光増感剤によって効率的に吸収される。第2に、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)は、血液処理のために有用である波長を有する電磁放射への曝露の際に、伝達のパーセンテージおよび吸光係数の顕著な変化を受けない、容器のための材料を提供する。例えば、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル(約38%重量の濃度を有する)と組み合わせたポリ(塩化ビニル)の使用は、血液または血液成分の処理の間に、約285ナノメートルから約365ナノメートルまでの範囲にわたる波長を有する電磁放射に対応する伝達のパーセンテージの10%未満の変化を示す容器を提供する。第3に、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)は、酸素ガス(O)および二酸化炭素ガス(CO)に関して透過性である容器を提供し、これは、特定の血液製剤および血液成分、例えば、血小板を含有する血液成分および製剤を保存するために有用である。さらに、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせて、ポリ(塩化ビニル)を備える容器の、酸素および二酸化炭素に関する透過性は、血液および血液成分を処理するために有用である電磁放射への曝露後に顕著に減少しない。この態様はまた、血小板を含有する血液および血液成分が、病原体減少処理プロセスの間に使用される同じ容器中に保存されることを可能にし、これによって、透過性の保存容器への光処理後の余分なサンプル移動ステップを回避する。最後に、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)は非毒性物質であり、それゆえに、これらの材料から作られる容器は、電磁放射を用いる処理の間、または処理後の保存の間に、生物学的サンプルに毒性因子を放出しない。従って、1種以上のクエン酸可塑剤と組み合わせたポリ(塩化ビニル)を備える容器中で処理および保存された、血液および血液成分などの生物学的サンプルは、治療剤および/または再輸液剤として患者に安全に投与される可能性がある。
【0021】
別の態様において、本発明は、処理を受ける生物学的サンプルが、処理の間に生物学的サンプルを保持することに加えて、入射電磁放射をフィルターにかけるための光学的成分として働く容器中に供給される、生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法を提供する。本発明のこの態様において、容器は、光学フィルタリングエレメントを備える。一実施形態において、例えば、容器は、入射電磁放射の一部を吸収および/または散乱可能である1種以上の材料を備え、これによって、特定の波長の光が、処理を受けている生物学的サンプルと相互作用することを少なくとも部分的に妨害する。
【0022】
本発明のこの態様の一実施形態において、生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法は、生物学的サンプルを保持する容器を提供するステップを備え、ここでこの容器は、ポリマー材料および少なくとも1種の光学フィルタリング添加剤、例えば、サンプルを損傷または分解可能である電磁放射などの望ましくない電磁放射を吸収および/または分散可能であるポリマーネットワーク中に固定化された添加剤を備える。本発明のこの実施形態において、添加剤の組成および濃度、ならびに容器の厚さは、第1の波長の分布を有する電磁放射が容器によって伝達されるのに対して、第2の波長の分布を有する電磁放射の伝達は実質的に妨害されるように選択される。本明細書の文脈において、「第2の波長の分布を有する電磁放射の伝達が実質的に妨害される」とは、約10%未満、およびある適用については約5%未満である伝達のパーセンテージをいう。血液および血液成分における病原体を減少させるために有用である一実施形態において、第1の波長の分布は、直接的に、および/または1種以上の光増感剤と関連する光化学反応を介して、病原体の減少を開始可能である電磁放射に対応し、そして第2の波長の分布は、細胞、タンパク質およびオルガネラなどの生物学的サンプルの有益な成分を損傷または分解可能である電磁放射に対応する。この方法は、電磁放射に容器を曝露し、容器を構成する添加剤の光学的促成の結果として、第2の波長の分布を有する電磁放射の伝達が実質的に妨害されるステップをさらに備える。対照的に、第1の波長の分布を有する電磁放射は、容器によって伝達され、生物学的サンプルの成分と相互作用し、これによって、生物学的サンプル中の病原体を減少させる。従って、本発明のこの態様において使用される容器は、これ自体、光学フィルターとして機能し、治療剤および/または再輸液剤を備える成分などの生物学的サンプルの成分を損傷可能な電磁放射の伝達を最小化しながら、病原体の減少を開始するために有用な電磁放射の伝達を可能にする。
【0023】
本発明のこの態様において、容器を構成する添加剤の組成および濃度の選択は、どの波長の光が伝達、吸収および/または分散されるかなどの容器の光学的伝達特性を、少なくとも部分的に決定する。本発明のこの態様における有用な容器は、直接的または間接的に病原体減少を開始可能である波長を有する電磁放射、例えば、約285ナノメートルから約550ナノメートルの間の波長を有する光を伝達し、かつ治療剤および/または再輸液剤を備える生物学的サンプルの成分の生存度および/または生物学的活性を低下させる波長を有する電磁放射、例えば、約285ナノメートル未満の波長を有する光の伝達を実質的に妨害する添加剤を備える。
【0024】
血小板を含有する血液または血液成分サンプル中の病原体減少のために有用な例示的実施形態において、光学フィルタリング適用のための添加剤は、非毒性であり、COおよびOに関して血小板保存のための容器の透過性を実質的に減少させず、ならびに容器の有益な機械的特性(例えば、強度、柔軟性および耐久性)にマイナスの影響を与えない。光学フィルタリング機能を提供する本発明の方法における有用な添加剤には、約200ナノメートル〜約270ナノメートルの波長範囲にわたる波長を有する光を吸収する、チロシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、およびトリプトファンなどのアミノ酸、ペプチド、ならびに/またはタンパク質が含まれる。アミノ酸、ペプチド、およびタンパク質添加剤は、コポリマーのポリマー成分として提供されてもよく、ここで、これらは、コポリマーのネットワーク中の他のポリマー材料に共有結合されている。その代わりに、アミノ酸、ペプチドおよびタンパク質添加剤は、ポリマーネットワーク中に分散されかつ固定化された添加材料として提供されてもよいが、必ずしもネットワークに共有結合されなくてもよい。本発明のこの態様におけるアミノ酸、ペプチドおよび/またはタンパク質添加剤の使用は、血液および血液成分サンプルの光誘導性分解に対して保護するために特に有用である。なぜなら、これらの添加剤の吸収スペクトルは、これらのサンプル中の多くのタンパク質のスペクトルと顕著に重複し、従って、容器中のアミノ酸、ペプチドおよび/またはタンパク質添加剤は、さもなくばサンプル中に存在するタンパク質によって吸収される光の伝達を実質的に妨害する。有用な添加剤はまた、コポリマーまたは分散相のいずれかの型でポリマーネットワーク中に固定化された核酸および/またはオリゴヌクレオチドを含み、そして合成および天然に存在する色素および染料を含む。
【0025】
広範な種々のポリマー材料が本発明の方法において有用であり、これらには、熱可塑性材料、熱硬化性材料、強化プラスチック材料、および複合ポリマー材料が含まれるがこれらに限定されない。加えて、広範な種々の添加剤が本発明の方法において有用であり、これらには、可塑剤、光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤、難燃剤、離型剤、核化剤、色素および他の光吸収剤から選択されるが含まれるがこれらに限定されない。本発明の容器は、繊維、粒子材料、および他の構造増強剤のような他の材料をさらに備えてもよい。
【0026】
本発明の容器中の添加剤の濃度は、少なくとも部分的に、生物学的サンプルのための容器の光学的伝達特性を確立する。光吸収剤、色素およびクエン酸可塑剤などの添加剤の濃度が高くなるにつれて、容器によって供給される光学的フィルタリングの程度が大きくなる。加えて、添加剤の濃度は、容器の光分解安定性に影響を与える可能性がある(すなわち、電磁放射への曝露の間に実質的に一定の伝達特性を提供する能力)。血液および血液成分サンプル中の病原体の直接的光還元と光誘導性化学還元の両方のために有用である本発明の一実施形態において、ポリ(塩化ビニル)中のクエン酸可塑剤の濃度は、約25%〜約50%重量、好ましくはある適用のためには約38%重量の範囲にわたって選択される。
【0027】
本発明の方法は、血小板含有血液成分および/または血漿含有血液成分を含むがこれらに限定されない血液成分中の病原体を減少するための特に有用である。血小板含有血液成分および/または血清含有血液成分を処理する例示的な方法は、約285nm〜約365nmの範囲にわたって選択される波長の分布を有する電磁放射へのこれらの材料の曝露を伴う。選択的に、本発明のこの態様の方法は、生物学的サンプルに1種以上の添加剤、例えば、光増感剤、増強剤、安定剤、保存剤、希釈剤または抗凝固剤などを加えるステップを備える。病原体の光誘導性化学還元の方法を備える本発明の一実施形態において、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンが、電磁放射への曝露の前に、血小板含有血液成分および/または血清含有血液成分に供給される。
【0028】
本発明の方法において有用である容器は、生物学的サンプルを処理することのために有用である任意の容量、サイズ、形状および表面積を有してもよい。本発明の容器には、バッグ、可撓性容器、折り畳み式容器、チューブ、反応槽、チャンバー、バケット、トラフ、および生物学的材料を処理する当分野で公知であるこれらのすべての等価物などの液体容器が含まれる。本発明の方法において有用である容器は、ポリマー材料および添加剤から完全に製造されてもよい。その代わりに、本発明の方法は、ポリマー材料および添加剤を備える別々の部分的に透明な領域を有する容器と適合可能である。本発明の容器は、容器の複数の表面の電磁放射への曝露を介して照射を可能にする、複数の部分的に透明な領域を有してもよい。
【0029】
本方法において有用である容器は、バーコード、記入されたラベルまたは手書きの注意書などの識別印を提供されてもよい。選択的に、本方法において有用な容器は、処理の間に、液体を含む生物学的サンプルを混合するために、攪拌機、ミキサー、液体ポンプ、再循環器またはスターラーなどの液体混合手段に選択的に接続されてもよい。選択的に、本方法において有用である容器は、密度遠心分離機、水簸チャンバー、光反応器、洗浄チャンバーおよびガムブロ(Gambro)(登録商標)BCT(登録商標),レイクウッド(Lakewood),CO,USAから利用可能であるコべ(COBE)(登録商標)スペクトラ(Spectra)(商標)またはトリマ(TRIMA)(登録商標)アフェレーシス装置などの血液処理装置に組み込まれてもよい。本発明の方法は、少なくとも部分的に透明な固定容量容器中に含まれる液体、特に生物学的液体の処理のために適切である。この文脈において、固定容量容器という用語は、強固なまたは柔軟な材料から作られてもよい閉じた空間をいう。本発明の方法およびデバイスはまた、流通反応器を備えた容器を通して流れる液体、特に生物学的液体の処理に適用可能である。一実施形態において、液体は、流通反応器の照射された部分における液体の滞留時間を確立するために選択される流速で流通反応器を通して流され、存在する病原体の生物学的活性の所望の程度の減少を提供する。流通反応器中の液体流動条件は、層流成分、乱流成分、または層流成分と乱流成分の両方の混合を有してもよい。
【0030】
本発明の方法はまた、血液またはその成分などの生物学的サンプル中に存在する白血球の生物学的活性を減少するために有用である。一般的に白血球減少と呼ばれる、白血球の生物学的活性を減少することは、免疫応答または自己免疫応答の抑制が、血液に由来する治療剤の投与のために所望されるときに、しばしば所望される。例えば、白血球の生物学的活性の減少は、患者またはドナーの白血球が存在しているときに、赤血球、血小板および/または血漿の輸血を含むプロセスにおいて有益であり得る。例示的な実施形態において、白血球減少処理を受けている生物学的サンプルは、選択された処理手順における電磁放射への一定時間の曝露の間に実質的に一定である光学的伝達特性を有する容器に提供される。本発明はまた、サンプル中に存在する白血球の生物学的活性を減少可能である電磁放射への曝露を提供しながら、有害な高エネルギー紫外電磁放射へのサンプルの成分の曝露を最小化する光学フィルタリングを提供する容器中に生物学的サンプルが保持される方法を含む。
【0031】
本発明の方法およびデバイスは、これによって生物学的サンプルが電磁照射に曝露される任意のプロセスに広く適用可能である。一実施形態において、本発明の方法は、従来的な病原体減少方法を超えて、改善された血液製剤品質を提供する、赤血球含有血液成分、血小板含有血液成分、血漿含有成分、白血球含有成分、および血液由来の1種以上のタンパク質を含有する溶液などの血液または血液成分中の病原体の生物学的活性を減少する方法を備える。別の実施形態において、本発明は、静脈内医薬または腹腔溶液などの治療剤として投与される、液体中の病原体の生物学的活性を減少させる方法を提供する。
【0032】
別の態様において、本発明は、(1)容器がポリマー材料および少なくとも1種の添加剤を備え、この容器が1つの波長の分布を有する電磁放射を伝達する、生物学的サンプルを保持する容器を提供することと、(2)この波長の分布を有する電磁照射が容器によって伝達され、かつ少なくとも部分的に生物学的サンプルによって吸収され、これによって、生物学的サンプル中の病原体を減少させる、電磁放射に容器を暴露することとの各ステップを備える、生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法を提供し、ここで、波長の分布を有する電磁放射の容器による伝達は、電磁放射への曝露の間に実質的に一定である。一実施形態において、添加剤は、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリ−n−ブチルなどの1種以上のクエン酸可塑剤である。
【0033】
別の態様において、本発明は、(1)容器がポリマー材料および少なくとも1種の添加剤を備え、この添加剤の組成および濃度が、第1の波長の分布を有する電磁放射が容器によって伝達され、第2の波長の分布を有する電磁放射の伝達が実質的に妨害され、第1の波長の分布を有する電磁放射が生物学的サンプルの病原体減少を開始可能であり、そして第2の波長の分布を有する電磁放射が生物学的サンプルを損傷可能である、生物学的サンプルを保持する容器を提供することと、(2)第2の波長の分布の電磁放射の伝達が実質的に妨害され、第1の波長の分布を有する電磁放射が容器によって伝達され、かつ生物学的サンプルによって少なくとも部分的に吸収され、これによって生物学的サンプル中の病原体を減少させる、電磁放射に容器を曝露することとの各ステップを備える、生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法を提供する。一実施形態において、添加剤は、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリ−n−ブチルなどの1種以上のクエン酸可塑剤である。一実施形態において、添加剤は、チロシン、ヒスチジン、フェニルアラニンおよびトリプトファン、またはこれらのアミノ酸を含有するペプチドおよび/またはタンパク質の1種以上である。
【0034】
図面に言及する際に、同じ数値は、1つより多くの図面に現れる同じエレメントおよび同じ数字が同じエレメントに言及することを示す。加えて、本明細書中以後、以下の定義が適用される:
「クエン酸可塑剤」とは、増強された可撓性、柔軟性、伸長性、耐衝撃性、またはこれらの組み合わせを含む、提供される所望の機械的、物理的、化学的、および光学的特性を提供するために、ポリ(塩化ビニル)などのポリマー材料に加えられる、クエン酸のアルコールエステルなどのクエン酸エステルをいう。治療剤を備える生物学的サンプルを処理するための方法およびデバイスにおいて有用であるクエン酸可塑剤は非毒性である。例示的なクエン酸可塑剤には、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、およびクエン酸アセチルトリ−n−ブチルが含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
「電磁放射」および「光」という用語は、本明細書において同義語として使用され、電場および磁場の波をいう。本発明の方法のために有用である電磁放射には、紫外光、可視光、またはこれらの任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。本発明の方法において使用される電磁放射の波長分布の選択は、処理を受けている生物学的サンプルに供給される1種以上の光感受性材料の吸収スペクトル、波長の関数としての生物学的サンプルの成分の伝達、吸収および/もしくは分散係数、生物学的サンプルの成分に対して有害である電磁放射の波長、またはこれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない多数の要因に基づく可能性がある。例示的な方法は、液体に供給される光増感物質によって実質的に吸収され、かつ液体の少なくとも一部の中で液体これ自体によって実質的に伝達される波長の分布によって特徴付けられる電磁放射を使用する。赤血球含有血液成分を処理するために有用な本発明の例示的な方法およびデバイスは、電磁スペクトルの可視領域における波長を有する電磁放射を使用する。例えば、赤血球含有血液成分を処理ため、および電磁スペクトルの可視領域における光を吸収する光増感物質を利用するために有用である本発明の一態様において、約400nm〜約800nmの範囲にわたって選択される波長の分布を有する電磁放射が利用される。血漿および血小板含有血液成分を処理するために有用である本発明の例示的な方法およびデバイスは、電磁スペクトルの紫外領域の波長を有する電磁放射を使用する。例えば、血漿および血小板含有血液成分を処理するため、および7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを備える光増感物質を利用するために有用であり得る本発明の一態様において、約285nm〜約365nmの範囲にわたって選択される波長の分布を有する電磁放射が利用される。当業者に理解されるように、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンなどの光増感物質の吸収スペクトルは、タンパク質などの特定の液体成分の存在下で変化する可能性があり、本発明の方法は、光増感物質を有する生物学的サンプルに供給される電磁放射の適切な波長の分布の選択において、光増感物質の吸収スペクトルのこの変化を考慮に入れてもよい。
【0036】
「正味の放射エネルギー」とは、液体処理プロセスまたは液体処理プロセスの組み合わせの間に液体に送達される放射エネルギーの全体量をいう。正味の放射エネルギーは、出力、曝露時間および照射表面積に関して、以下の数式によって表現されてもよい。
【数1】

【0037】
ここで、Enetは送達される正味の放射エネルギーであり、P(t)は時間および面積の関数として液体に曝露される電磁放射の出力であり、tは照射の時間間隔であり、tは時間であり、Aは面積であり、そしてAは液体を保持する容器の照射面積である。実質的に一定出力を利用する本発明の方法において、正味の放射エネルギーは、放射出力および曝露時間に関して以下の数式によって表現されてもよい。
【数2】

【0038】
ここで、Enetは正味の放射エネルギーであり、Pは電磁放射の一定の放射出力であり、そしてtは照射の時間間隔である。正味の放射エネルギーはまた、単位面積あたりまたは単位体積あたりで表現されてもよい。
【0039】
電磁放射を用いて生物学的サンプルを「処理すること」または「プロセスすること」は、これによって電磁放射が生物学的サンプルに送達されて、生物学的サンプルまたは生物学的サンプルの成分の組成の所望の変化を達成し、そして/または生物学的サンプルの1つ以上の成分の生物学的活性の変化を達成するプロセスをいう。一態様において、本発明の方法は、生物学的サンプル中に存在する1種以上の病原体の生物学的活性を減少するような様式で、電磁放射を用いて、血液および血液の成分などの生物学的液体を含む生物学的サンプルを処理可能である。別の態様において、本発明の方法は、生物学的サンプル中に存在する1種以上の白血球の生物学的活性を減少するような様式で、電磁放射を用いて、生物学的サンプルを処理可能である。
【0040】
「強度」(“intensity”and“intensities”)という用語は、1つの電磁波または複数の電磁波の振幅の平方をいう。この状況における振幅という用語は、電磁波の振動の規模をいう。その代わりに、「強度」という用語は、電磁放射の1つのビームまたは電磁放射の複数のビームの時間平均エネルギー流入、例えば、電磁放射の1つのビームまたは電磁放射の複数のビームの単位時間あたり、平方センチメートルあたりの光子の数をいってもよい。
【0041】
「生物学的サンプルの成分」および「生物学的サンプル成分」は、本明細書において同義語として使用され、そして生物学的サンプルの一部または画分をいう。生物学的サンプルの成分には、粒子、分子、イオン、細胞、および細胞の断片、光増感剤、病原体、分子の集合体および複合体、病原体の集合体、白血球またはこれらの任意の組み合わせが含まれてもよい。
【0042】
「光増感剤」とは、電磁放射を吸収し、そしてこの吸収したエネルギーを利用して、所望の化学的または物理的プロセスを実行する物質をいう。血液処理適用のための光増感剤は、電磁照射の吸収の際に生物学的サンプル中に存在する病原体および/または白血球の生物学的活性の減少を開始可能である。本発明のある適用のために有用である光増感剤には、核酸に優先的に結合、これを吸収、または挿入し、このことによって、微生物、ウイルスおよび白血球に対して化合物の光力学効果を集中する化合物が含まれる。本発明の方法において有用であり得る例示的な光増感剤には、アロキサジン化合物、イソアロキサジン化合物、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン、ポルフィリン、ソラレン、色素、例えば、ニュートラルレッド、メチレンブルー、アクリジン、トルイジン、フラビン(塩酸アクリフラビン)およびフェノチアジン誘導体、クマリン、キノロン、ならびにアントロキノンが含まれるがこれらに限定されない。本発明の実施において有用である光増感剤には、患者への投与の前に、治療成分を備える生物学的サンプルからの除去を必要としない、非毒性、内因性光増感剤が含まれる。光増感剤は、処理を受ける生物学的サンプル中で、イオン化状態、部分的イオン化状態または中性状態で存在してもよい。光増感剤は、処理を受ける生物学的サンプル中で、化合物の集合体および分子複合体として存在してもよい。
【0043】
「内因性」という用語は、身体による合成の結果として、あるいは必須栄養素(例えば、ビタミン)としての摂取またはインビボでの代謝物および/もしくは副産物の形成に起因してのいずれかで、ヒトまたは哺乳動物の身体中で天然に見い出されることを意味する。「非内因性」という用語は、身体による合成の結果として、あるいは必須栄養素(例えば、ビタミン)としての摂取またはインビボでの代謝物および/もしくは副産物の形成に起因してのいずれかで、ヒトまたは哺乳動物の身体中で天然に見い出されないことを意味する。
【0044】
「増強剤」とは、所望の処理プロセスをより効率的かつ選択的にするために、処理を受ける生物学的サンプルに加えられる物質をいう。増強剤には、治療剤を備える生物学的サンプルの分解を妨害するための抗酸化剤または他の薬剤が含まれる。加えて、増強剤には、病原体および/または白血球の生物学的活性の減少の速度を改善する物質が含まれる。例示的な増強剤には、アデニン、ヒスチジン、システイン、没食子酸プロピル、グルタチオン、メルカプトプロピオニルグリシン、ジチオスレイトール、ニコチンアミド、BHT、BHA、リジン、セリン、メチオニン、グルコース(gluscose)、マンニトール、トロロクス、グリセロールおよびこれらの化合物の任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。
【0045】
「生物学的サンプル」とは、1つの生物に由来する任意の材料を広くいう。本発明の方法とともに使用可能である生物学的サンプルには、液体、および液体、コロイド、フォーム、エマルジョン、ゾルの1つ以上の混合物、およびこれらの任意の組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。本発明の方法において使用可能である生物学的サンプルには、生物学的液体、例えば、全血、血液成分、血液亜成分、血漿含有血液成分、血小板含有血液成分、赤血球含有血液成分、白血球含有血液成分、血液由来の1種以上のタンパク質を含有する溶液、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。例示的な生物学的サンプルにはまた、腹膜透析のために使用される腹腔溶液、静脈内医薬、注射用医薬、栄養溶液、食料品、組換え方法から生成された発酵培地、治療材料および診断材料を含む組換え技術によって産生される材料、治療材料および診断材料を含むトランスジェニック動物および植物から産生される材料、乳および乳製品、ならびにワクチンが含まれる。生物学的サンプルという用語は、光増感剤、抗凝固剤、安定剤、増強剤、および希釈剤などの1種以上のサンプル添加剤を備えるサンプルを含むことが意図される。本発明の方法において有用である生物学的サンプルには、具体的に、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンなどの存在する1種以上の光増感物質を有する生物学的サンプルが含まれるがこれらに限定されない。
【0046】
「血液」、「血液製剤」および「血液成分」は、本明細書で使用される場合、全血またはその成分に由来し得る全血、血液成分および材料を含む。「血液」、「血液製剤」および「血液成分」はまた、本明細書で使用される場合、抗凝固剤、増強剤、光増感剤、保存剤または希釈剤などの1種以上の添加剤を用いて処理された血液、血液成分および/または血液製剤も含む。「血液」、「血液製剤」および「血液成分」はまた、これらの材料ならびに光増感剤、増強剤、安定剤、抗凝固剤、および保存剤などの添加剤の混合物をいう。細胞血液成分には、赤血球(erythrocytes(red blood cells))、白血球(leukocytes(white blood cells))、血小板(thrombocytes(platelets))、好酸球(esinophils)、単球、リンパ球、顆粒球、および血液幹細胞が含まれるがこれらに限定されない。非細胞血液成分には、血漿、ならびに、第III因子、フォン−ウィルブランド因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、ハーゲマン因子、プロトロンビン、抗トロンビンIII、フィブロネクチン、プラスミノーゲン、血漿タンパク質画分、免疫血清グロブリン、修飾免疫グロブリン、アルブミン、血漿成長ホルモン、ソマトメジン、プラスミノーゲン、ストレプトキナーゼ複合体、セルロプラスミン、トランスフェリン、ハプトグロビン、抗トリプシン、およびプレカリクレインを含むがこれらに限定されない血液サンプルから単離された血液タンパク質が含まれる。
【0047】
「非毒性」は、患者、人、動物、または植物に投与されるときに、実質的に有害な効果を生じない、物質の特徴である。ある血液治療プロセスのために有用である非毒性物質は、血液滅菌のために一般的に使用されるポルフィリンならびにポリフィリン誘導体および代謝物よりも毒性が少ない。
【0048】
「核酸」には、リボ核酸(RNA)とデオキシリボ核酸(DNA)の両方が含まれる。
【0049】
「部分的に透明な」とは、照射されたときに、入射電磁放射の少なくとも一部の強度を伝達する材料、デバイスまたはデバイスの構成要素の特性をいう。
【0050】
「病原体減少」とは、病原体が繁殖することを部分的または全体的に妨害するプロセスをいう。病原体減少は、病原体を直接的に殺傷すること、これらの繁殖する能力に干渉すること、またはこれらのプロセスの組み合わせによって起こり得る。病原体減少は、液体中に存在する病原体の生物学的活性を減少する。例示的実施形態において、本発明の方法およびデバイスは、生物学的液体中に存在する病原体の生物学的活性を減少可能であり、その結果、この液体は治療剤としての投与のために安全である。
【0051】
「光源」または「電磁放射の供給源」とは、電磁放射を生成可能である任意のデバイスもしくは材料、または電磁放射を生成可能である複数のデバイスもしくは材料をいう。本発明において使用可能である例示的な光源には、水銀蒸気蛍光ランプ、冷陰極蛍光ランプ、エキシマーランプ、発光ダイオード(LED)、発光ダイオードのアレイ、アーク放電ランプおよびタングステンフィラメントランプが含まれるがこれらに限定されない。
【0052】
「病原性夾雑物」および「病原体」とは、ウイルス、細菌、バクテリオファージ、真菌、原生動物、血液感染寄生生物をいう。例示的なウイルスには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型、B型、C型、およびG型肝炎ウイルス、シンドビスウイルス、サイトメガロウイルス、水疱性口内炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、ヒトT−リンパ球指向性レトロウイルス、HTLV−III、リンパ節症ウイルスLAV/IDAV、パルボウイルス、輸液(TT)ウイルス、エプスタイン−バーウイルス、西ナイルウイルスおよび当分野において公知であるその他のウイルスが含まれる。例示的なバクテリオファージには、ΦX174、Φ6、R17、T4およびT2が含まれるがこれらに限定されない。例示的な細菌には、緑膿菌(P.aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidernis)、リステリア菌(L.monocytogenes)、大腸菌(E.coli)、クレブシェラ肺炎杆菌(K.pneumonia)および霊菌(S.marcescens)が含まれる。例示的な寄生生物には、マラリア、バベシアおよびトリパノソーマが含まれる。
【0053】
「生物学的に活性な」とは、生きている生物またはこの成分の変化をもたらす組成物、材料、微生物、または病原体の能力をいう。
【0054】
「細胞品質の指標」とは、細胞血液成分の品質の指標をいう。例示的な細胞品質の指標は、治療的適用における引き続く使用のためのこの品質を評価するために有用な測定を提供する細胞または細胞血液成分を含む液体の物理的状態に対応するパラメーターである。代謝の間、細胞はグルコースを消費し、消費された各グルコース分子について2分子の乳酸を生成する。形成された乳酸は、血液成分サンプルのpHを低下させる効果を有する。保存の間に有限量のグルコースが細胞に供給されるので、あまりに迅速にグルコースを消費する保存された細胞血液成分は分解される。より低いグルコース消費速度および乳酸産生速度は、保存されたときに高い治療的有効性を保持している細胞血液成分を示す。それゆえに、低いグルコース消費速度および乳酸産生速度は、高い細胞品質の指標と見なされる。
【0055】
「光子の流入」または「光子流入」とは、所定の時間において規定の面積を通過する光の光子の数をいう。典型的には、光子の流入は、(光子の数)cm−2−1の単位で定義される。
【0056】
「ポリマー」とは、典型的にはモノマーと呼ばれる複数の反復する化学基を備える分子をいう。ポリマーは、しばしば、高分子量によって特徴付けられる。本発明において使用可能なポリマーは、有機ポリマーまたは無機ポリマーであり得、そしてアモルファス状態、半アモルファス状態、結晶状態または部分的結晶状態であり得る。ポリマーは、同じ化学組成を有するモノマーを備えてもよく、または異なる化学組成を有する複数のモノマー、例えば、コポリマーを備えてもよい。連結モノマー鎖を有する架橋ポリマーが、本発明のある適用のために特に有用である。本発明の方法、デバイス、およびデバイスの構成要素において使用可能なポリマーには、プラスチック、エラストマー、熱可塑性エラストマー、エラスト−プラスチック、サーモスタット、熱可塑性物質が含まれるがこれらに限定されない。例示的なポリマーには、ポリ(塩化ビニル)が含まれるがこれに限定されない。
【0057】
以下の説明において、本発明のデバイス、デバイスの構成要素および方法の多数の具体的な詳細は、本発明の正確な性質の徹底的な説明を提供するために示される。しかし、本発明はこれらの具体的な詳細なしで実施することができることが当業者には明らかである。
【0058】
本発明は、電磁放射を用いて生物学的サンプルを処理するための方法、デバイス、およびデバイスの構成要素を提供する。本発明の方法、デバイス、およびデバイスの構成要素は、処理を受ける生物学的サンプルに、十分に特徴付けられ、均一なかつ再現可能な正味の放射エネルギーおよび/または放射出力を供給可能である。加えて、本発明の方法、デバイス、およびデバイスの構成要素は、治療剤および/または再輸液剤を備える成分に対する光誘導性損傷を最小化しながら、病原体減少の増強を提供するように選択された波長の分布を有する、生物学的サンプルへの電磁放射を送達可能である
図1は、ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤を備える容器(すなわち、クエン酸可塑化PVC容器)中に保持される血液または血液成分中の病原体を減少させる方法を図示する概略図を示す。図1において示されるように、電磁放射(矢印100によって模式的に図示される)が電磁放射の供給源110によって発生され、ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤を備える容器120に方向付けられる。容器120は、抗凝固剤、増強剤、光増感剤、保存剤または希釈剤の1種以上を選択的に備え得る、病原体減少処理を受けている血液または血液成分サンプル125を保持する。容器120はまた、選択された波長の分布を有する電磁放射(矢印135によって模式的に図示される)、例えば、病原体を直接的に減少させることが可能であり、および/または病原体減少を生じる化学反応を誘導可能である電磁放射を少なくとも部分的に伝達する、少なくとも1つの部分的に透明な表面130を有する。選択された波長の分布を有する電磁放射135は容器120を通して伝達され、そして血液または血液成分サンプル125によって少なくとも部分的に吸収され、これによって、存在する病原体の生物学的活性を減少する。選択的に、電磁放射が、処理を受けるサンプルのすべての構成成分に均一に供給されることを確実にするために、電磁放射への曝露の間、攪拌機160が、血液または血液成分サンプル125を混合するために供給される。攪拌機160は、液体処理の分野において公知である任意の手段を使用して容器120に選択的に接続されてもよい。
【0059】
選択的に、ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤の容器120の部分的に透明な表面130の伝達特性(伝達パーセンテージおよび/または吸光係数)は、血液または血液成分サンプル125の処理前に、十分に特徴付けられる(例えば、測定および/または計算される)。本発明のこの態様の一実施形態において、電磁放射の供給源110によって発生される電磁放射の放射出力100は、電磁放射の供給源110と光学的に連絡して配置された光検出器145によって連続的、定期的または断続的にモニターされる。この配置は、血液または血液成分サンプル125に実際に送達される放射出力および/または正味の放射エネルギーが、ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤の容器120の部分的に透明な表面130の表面積および伝達特性の知見を用いて正確に計算されることを可能にする。
【0060】
図2は、血液または血液成分サンプルを保持するための少なくとも部分的に透明なクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグを備える例示的な容器120の概略図を提供する。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、約38%に等しい重量パーセントを有するクエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル(C2850:514原子質量単位に等しい分子量)から作られたクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)フィルム(比重:1.19+/−.02)を備える。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、1リットルの容量、6.75±0.25インチに等しい幅および約9.50±0.25インチに等しい長さを有する。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグの壁は、0.015±0.001インチに等しい厚さを有する。ある処理プロセスにおいて、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、約200ミリリットル〜約400ミリリットルの範囲から選択される容量を有する血液または血液成分サンプルを保持し、そして側面あたり約347cmに等しいクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグの表面積が、処理の間に照射される。
【0061】
クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグの組成および物理的寸法は、血液を処理するための多数の有益な属性を提供する。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、光分解的に安定であり、所定のプロセスのために有効な波長の光に対応する伝達のパーセンテージ(または吸光係数)の顕著な変化を処理プロトコールの間に受けない。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグはまた、血小板含有サンプルを処理するために有用な波長範囲に対応する285ナノメートルから365ナノメートルまでの範囲の波長を有する光を顕著に伝達する(すなわち、約30%より高い伝達パーセンテージを有する)。クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、2000PSI(流れ方向;最小)および1900PSI(横断方向;最小)の引っ張り強度を有し、伸長可能である(290%(流れ方向;最小)、330%(横断方向;最小))。
【0062】
加えられた7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン光増感剤を有する血液または血液成分中の病原体を減少させるために有用な一実施形態において、選択される波長の分布には、生物学的サンプル中で結合状態または非結合状態である7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンによって吸収される電磁放射の波長が含まれる。血液または血液成分サンプル中に存在する7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンによる電磁放射の吸収は、病原体の生物学的活性の減少を生じる光化学反応を開始する。図3は、約370ナノメートルおよび約450ナノメートルにおける吸収最大によって特徴付けられる、リン酸緩衝化生理食塩水中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの200マイクロモル濃度溶液の吸収スペクトル(吸収対波長:曲線A)を示す。しかし、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの吸収スペクトルは、これが生物学的サンプル中に存在するタンパク質、RNA分子またはDNA分子などの生物学的分子に結合されるときに、変化することが予測される。図3は、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを有し、選択された波長の紫外および可視電磁放射に曝露された血小板および血漿含有サンプルの減少効率に対応する作用スペクトル(logウイルス殺傷;曲線B)もまた示す。図3は、DNA吸収スペクトル(吸収対波長;曲線C)もまた示す。図3に提供される作用スペクトルから、結晶含有サンプル中に存在する7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンが、より高い波長(約430ナノメートルおよび約470ナノメートル)にシフトしたこの吸収最大を有することがあり得る。従って、血小板および/または血漿含有血液成分のための例示的な病原体減少方法は、約300ナノメートルから約500ナノメートルまでの範囲の波長の分布を有する電磁放射を使用する。本発明は、波長の分布が、サンプル中に存在する病原体の生物学的活性を直接的に減少可能である電磁放射に対応する病原体減少方法もまた含む(すなわち、光増感剤が生物学的サンプル中に存在しない場合)。
【0063】
図4は、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル(38%重量パーセント)を有するクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)の伝達スペクトル(曲線A)および従来的なポリオレフィンバッグ(曲線B)の伝達スペクトルを示す。図4に示されるように、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグの使用は、ポリオレフィンバッグと比較して、短波長領域(285〜305nm)において光の伝達を減少する。伝達スペクトルにおけるこの違いは、治療剤および再輸液剤を含む血液成分のための血液処理適用のために有利である。なぜなら、この短波長領域の光は、血小板および細胞タンパク質などの細胞成分、ならびに血漿タンパク質などの非細胞血液成分に対して損傷を与えることが知られているからである。確かに、短波長UV光の減少効果は、処理された血小板のオルガネラ、例えば、血小板の生存度および機能のために生体エネルギーATPの供給の一部を維持するミトコンドリアなどへの深刻な損傷を回避するために重要である。再度図4を参照すると、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグの使用はまた、ポリオレフィンバッグと比較して、比較的長波長(365〜400nm)の光の伝達を増加する。伝達スペクトルのこの違いは、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジン光増感剤を使用する血液処理適用のために有利である。なぜなら、この化合物は、遊離状態または結合状態にある場合に、電磁スペクトルのこの領域中に吸収最大を有するからである。
【0064】
図5Aは、いくつかの照射時間についての紫外放射への曝露の際のクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)の伝達スペクトルを示し、図5Bは、曝露時間の関数としての308ナノメートルにおけるパーセンテージ伝達のプロットを提供する。図6Aは、いくつかの照射時間についての紫外放射への曝露の際のポリ(塩化ビニル)およびDEHP可塑剤バッグの伝達スペクトルを示し、図6Bは、曝露時間の関数としての308ナノメートルにおけるパーセンテージ伝達のプロットを提供する。図7Aは、いくつかの照射時間についての紫外放射への曝露の際のポリオレフィンバッグの伝達スペクトルを示し、図7Bは、曝露時間の関数としての308ナノメートルにおけるこのバッグのパーセンテージ伝達のプロットを提供する。図5A、図5B、図6A、図6B、図7Aおよび図7Bにおけるデータは、320nm OAI電力計(オプティカル アソシエーツ インク(Optical Associates Inc.)、サンノゼ(San Jose)、CA)によって測定されるように、約10.5mW/cmの強度で実質的に一定の放射出力を供給する電磁放射の供給源に、異なる組成を有するバッグを露出することによって生成された。電磁放射の供給源は、Ushio G25T8E Nichia NP−803 phosphorであった(放射波長=265nm〜375nm;ピーク波長=306nm〜308nm)。曝露時間は、0分、10分、20分および30分であった。研究されるバッグは、示された曝露時間後に、電磁放射の供給源との連絡から外して移動した。次いで、研究されるバッグは、320nm OAI電力計によって測定されるように、約5.4mW/cmの強度を用いて、一体型の球面に配置され、一定の放射供給源に曝露された。スペクトル出力/伝達特性は、OL−754分光放射計(オプトロニック ラボラトリーズ インク(Optronic Laboratories,Inc.)、サンディエゴ(San Diego)、CA)によって測定された。
【0065】
図5Aおよび図5Bに示されるように、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグは、30分間の曝露時間の照射の間に308nmにおける伝達パーセンテージの約10%未満の増加を示す。対照的に、ポリ(塩化ビニル)およびDEHP可塑剤容器の伝達スペクトルは、図6Aおよび図6Bに示されるように、30分間の曝露時間の間に308nmにおける伝達パーセンテージの約55%より多くの減少を示す。図7Aおよび図7Bに示されるように、ポリオレフィンバッグは、30分間の曝露時間の間に308ナノメートルにおける伝達パーセンテージの約10%より多くの減少を示す。図5A、図5B、図6A、図6B、図7Aおよび図7Bに提供される伝達スペクトルの比較は、電磁放射を用いるサンプルの処理の間に、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグが特に光分解的に安定であり、顕著な光誘導性の分解または劣化を受けないことを示す。それゆえに、本発明の方法におけるポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤容器の使用が、生物学的サンプルのための従来的な容器、例えば、DEHP可塑剤バッグおよびポリオレフィンバッグを伴うポリ(塩化ビニル)よりも、顕著により均一かつ再現可能な放射エネルギーおよび/または放射出力を提供することが予測される。
【0066】
本明細書で利用されている用語および表現は、説明の用語として使用され、限定の用語としては使用されておらず、そしてこのような用語および表現の使用においては、示されおよび記載される任意の等価物およびその一部を除外する意図は存在しないが、しかし、種々の変形例が特許請求される本発明の範囲内で可能であることが認識される。従って、本発明は好ましい実施形態、例示的な実施形態、および選択的な特徴によって具体的に記載されてきたが、本明細書に開示される概念の変形例およびバリエーションが当業者によって用いられてもよいこと、ならびにバリエーションは添付の特許請求の範囲によって規定される本明細書の範囲内にあると見なされることが理解されるべきである。本明細書に提供される特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、そして本発明は、本明細書に示されるデバイス、デバイスの構成要素、方法、ステップの多数のバリエーションを使用して実行されてもよいことが当業者に明らかである。本方法のために有用な方法およびデバイスは、多数の選択的デバイスのエレメントおよび構成要素を含むことができ、これらには、帯域通過フィルター、高域カットオフフィルターおよび低域カットオフフィルターなどの光学フィルター、視準レンズおよび反射体などの視準エレメント、レンズおよび反射体などの集束エレメント、反射体、回折格子、流動系、スターラーおよびシェーカーなどの液体混合系、光ファイバー結合器および伝送器、温度制御装置、温度センサー、広帯域光源、狭帯域光源、ペリスターポンプ、バルブ、フィルター、遠心分離システム、水簸システムなどの液体制御エレメント、ならびにこれらのエレメントの組み合わせが含まれる。
【0067】
本願において引用されるすべての参考文献は、これらが本願における開示と矛盾しない程度まで、これらの全体が本明細書における参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に具体的に記載されたもの以外の方法、デバイス、デバイスの構成要素、材料、手順および技術が、過度の実験を用いることなく、本明細書において広範に開示されるように、本発明の実施に適用できることが当業者には明らかである。本明細書に具体的に記載される方法、デバイス、デバイスの構成要素、材料、手順、および技術の当該分野で公知であるすべての機能的等価物は本発明によって包含されることが意図される。
【0068】
実施例1本発明の病原体減少方法を使用する血小板生存度研究
背景:
血小板保存の間のいくつかのインビトロ血小板品質パラメーターの変化は、放射性標識された血小板の回収および輸血後の生存によって測定されるインビボ血小板生存度の減少と関連付けられてきた。本研究の目的は、血小板のインビボ回収とのインビトロパラメーターの相関を同定することに焦点を置いた。次いで、本発明者らは、リボフラビンおよび光を使用して、病原体減少プロセスを用いて、血小板のインビボ回収のためのインビトロ細胞品質測定の予測可能性を確証した。
【0069】
研究設計および方法:
放射性標識血小板を使用する2つの血小板回収臨床研究を、規制調査および認可の下で実施した。最初の研究において、インビトロ細胞品質パラメーターの相関は、種々の線量のUV光で処理し、5日間保存した、トリマアフェレーシス手順によって収集した18例の血小板製剤を使用するインビボ血小板回収を用いて確立した。乳酸産生およびpHに基づくインビボ回収の予測因子を使用して、リボフラビンおよび光(ミラゾール(Mirasol)PRT)(6.2J/ml+50μM リボフラビン)を使用する血小板製剤の病原体減少のために設計された新規なプロセスを開発した。次いで、インビボ回収のための乳酸産生およびpHの予測可能性を、引き続くヒト臨床試験において、PRT処理された血小板を用いる直接的試験を通して確証した。
【0070】
結果:
UV処理は、乳酸産生、グルコース消費およびP−セレクチン発現を増加し、そして保存の間のpH、HSRおよびスワールの減少を生じた。この挙動は、UV線量依存性様式で示された。細胞品質パラメーターにおける変化のすべては、血小板インビボ回収と相関した。これらの中で、乳酸産生およびpHは、血小板インビボ回収と最も強力に相関したパラメーターとして、直線回帰分析によって同定された。乳酸産生およびpHの相関係数は、それぞれ、0.9090および0.8831であり、p値は0.007および0.031であった。乳酸産生およびpHの血小板生存との同様の相関および同じ傾向の予測もまた観察した。これらのアルゴリズムからの予測された5日目の血小板回収値は、ミラゾールPRTを用いて処理して血小板について44〜55%であった。24例の血小板製剤を用いる引き続く臨床研究は、PRT処理した血小板のインビボ回収が51.4+/−18.6であり、十分にこの予測の範囲内にあったことを実証した。
【0071】
結論:
これらの結果は、血小板インビボ回収がインビトロ細胞品質パラメーターから予測できること、ならびにここで利用した条件下では、乳酸産生およびpHが、インビボでのPRT処理血小板のための最も関連性が高いインビトロ指標であることを実証する。
【0072】
血小板輸血治療は、血小板減少患者または出血の高いリスクがある患者の出血症状の発現を予防または治療する際に、なお主流のままである。血小板輸血の成功は、輸血製剤の細胞生存度および止血活性、ならびに輸血レシピエントの生理学的状態に依存する。レシピエントの生理学的状態は、輸血された血小板に耐容性を示すレシピエントの能力、および細網内皮系を通して循環からこれらを取り除く傾向によって反映されるが、細胞生存度は、しばしば、放射性標識された血小板のインビボ回収および輸血後生存によって、自系ドナーにおいて決定される。良好な血小板回収は、通常、より長い血小板生存時間と関連するが、インビボ回収は、より頻繁に、血小板輸血の効力を測定する際に使用される。過去数十年間の間、保存の間の血小板生存度は、温度、保存容器のガス交換、および攪拌などの保存条件を最適化することによって顕著に改善されてきた。しかし、現在の血液バンク条件下で保存された血小板製剤は、主として血小板保存損傷の発生により、これらのインビボ生存度の保存時間依存的な減少をなお実証する。従って、インビボ細胞生存度の決定は、血小板の産生、処理および保存のための任意の新規な技術を開発することにおいて、ならびに現在使用されている血小板製剤の品質管理において、決定的なステップになる。
【0073】
試験血小板を放射性標識する方法をインビボで使用する細胞生存度の評価は、インビボヒト臨床試験が高コストで、時間がかかり、そしてドナーを放射能に曝露するので、困難な仕事であることが判明してきた。インビボ細胞生存度の減少がインビトロ細胞品質試験の有意な変化と常に関連しているという事実を考慮して、インビボ生存度を予測するためにインビトロ試験を使用することの可能性は広範に探索されてきた。低温において、第1世代の容器中で、および凍結することによる、血小板保存の初期の研究では、血小板保存の間に、円板状形状から球形型への血小板の形態変化が、低い血小板回収に付随することが観察されてきた。この観察は、血小板の生存度を予測するために、血小板スワールを使用することのための基礎を提供した。スコアリングスワールは、利用可能である最も単純な研究室方法の1つであるが、これは定性的方法であり、そして研究室から研究室で感度および再現性を欠く。形状の変化および低張ショックに対する応答の程度のアッセイは定量的であり、インビボ回収とはるかにより良好な相関を示し、それぞれ、0.71および0.57の相関係数(r)である。乳酸産生およびpH変化などの血小板の代謝パラメーターは、血小板の回収および生存との有意な相関を有することもまた示された。血小板活性化マーカーであるP−セレクチン発現のインビボ回収との相関の測定は、一貫性のない結果を生じた。Holmeらは、血小板回収との乏しい相関を報告したが、他の研究者は顕著な相関を見い出した。P−セレクチンを遺伝的に欠くマウスの血小板と、P−セレクチンを完全に発現するヒトトロンビン活性化血小板のいずれもが、通常の血小板および静止状態の血小板とは異なるインビボのライフスパンを有さなかったという知見によって、信頼がおける予測因子としてのP−セレクチン発現の臨床的有用性は疑問視されてきた。血小板のアポトーシスもまた、血小板の保存損傷の発生に起因することが示されてきたが、しかし、インビボ細胞生存度に対する直接的な関連性は確立されていない。
【0074】
上記に言及したすべての研究は、インビボ血小板生存度との、種々のインビトロ血小板品質パラメーターの相関を分析し、そしていくつかのパラメーターがインビボ回収の可能性のある予測因子であり得ると結論付けてきた。これらの研究のいずれもが、これらの知見の直接的確認を実施していない。本研究の目的は、種々の線量のUV光で処理した血小板の血小板回収と最も良好な相関を有するインビトロ細胞品質パラメーターを同定することに焦点を当てている。血小板はポリオレフィンバッグ中で処理し、次いで、クエン酸処理したPVCバッグ中で5日間保存した。同定した細胞品質パラメーターおよびこれらのインビボ回収との相関を使用して、本発明者らは、ミラゾールPRTとして知られる新規な病原体減少プロセスを用いて処理した血小板について、一連のインビボ回収を予測した。この予測は、引き続いて、IDEの援助下で米国において実施された臨床試験において確認された。この研究から、本発明者らは、乳酸産生およびpHが血小板回収のための最良の予測因子であったことを同定し、さらに確認した。これらの観察はさらに、細胞品質のインビトロ測定が、インビボ結果の予測であり得ることの暗示であり、新規な血小板処理方法論の臨床前評価のための価値のあるアプローチを与える。
【0075】
材料および方法
トリマ収集アフェレーシス血小板濃縮調製物
本研究におけるすべての血小板製剤は、トリマ自動血液成分収集システム(Automated Blood Component Collection System)(ガンブロ(Gambro)BCT,レイクウッド(Lakewood),CO)を使用して、地方の血液センターによって、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル−38%重量%を有する1リットルのクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)バッグ(「クエン酸化PVC ELP(商標)バッグ」)中に収集された、単一ドナーからのアフェレーシス血小板濃縮物であった。臨床研究においては、標的血小板収率は3.51×1011であった。ところが、標的収率は、2回目の臨床研究においては4.42×1011血小板であった。
【0076】
臨床研究1:
本研究は、オレンジ自由州大学の倫理委員会(the Ethics Committee of the University of the Orange Free State)および南アフリカ医学管理審議会(MCC)の検査および認可の下で、オレンジ自由州大学、健康科学部、血液学および細胞生物学部門(the Department of Haematology&Cell Biology,Faculty of Health Sciences,University of the Orange Free State)(ブルームフォンテーン(Bloemfontein)、南アフリカ(South Africa))において実施した。インフォームドコンセントが終了した際に、18歳から65歳の年齢の研究ボランティアを、血小板提供のための地方の判断基準およびAABB要件に基づいて、スクリーニングし、本研究に選択的に含めた。
【0077】
UV光処理および血小板保存
250mLの体積の血小板濃縮液を、3リットルのポリオレフィンバッグ(センゲバルト、ロードルフ、ドイツ国(Sengewald,Rohrdorf,Germany))に移し、製剤中最終濃度が約50μMであるように、27mLの滅菌500μMリボフラビンの添加を行った。次いで、中程度の線量レベル(7.2J/ml)または高線量レベル(12.4J/ml)のいずれかで、血小板製剤をUV光(リン光体265〜370nm)に曝露した。25〜30℃の温度で攪拌しながら、全体の照射時間は約5〜10分間で変化した。処理後、血小板製剤をクエン酸化ポリ塩化ビニルELP(商標)バッグ(ガンブロ(Gambro)BCT,レイクウッド(Lakewood)に移した。処理したPCおよび対照PCを、標準的な血液バンク条件下で、20〜24℃でさらに5日間保存した。対照血小板製剤は、リボフラビンを添加せず、UV光処理を実施しなかったこと以外は、処理した対応物と同じ様式で調製した。
【0078】
インビトロ細胞品質試験
血小板サンプルは、無菌技術を使用して、血小板保存の0日目、3日目および5日目に研究室試験のために採取し、分析は2時間以内に完了した。血小板計数、スワールスコア、pH、pO、pCO、乳酸およびグルコースについてのインビトロ細胞品質試験を、治験実施施設の標準操作手順(SOP)によって実施した。低張ショック応答(HSR)およびP−セレクチン発現は、Ruaneら(Ruane PH,Edrich R,Gampp Dら、リボフラビンおよび光を使用する血小板濃縮物中の選択されたウイルスおよび細菌の光化学的不活化(Photochemical inactivation of selected viruses and bacteria in platelet concentrates using riboflavin and light.)Transfusion 2004;44:877−85.)によって記載されるように測定した。
【0079】
インビボ血小板回収および生存測定
5日間の保存期間の最後に、研究施設のSOPに従って(ヒト血小板の放射性標識のための地方および国際標準に一致して)、血小板の少量のアリコートを111インジウムで放射性標識した。標識手順は、トロポロンとの塩化111インジウム(アマシャム(Amersham))の混合を通しての111In−トロポロンの形成後に実施した。標識される血小板サンプルのpHが>6.5である場合、このpHは、ペレット化の間の血小板の不可逆的な凝集を妨害するために、6.5まで低下させた。
【0080】
血漿中での洗浄および再懸濁後、放射活性アリコートを、自系ドナーに注入した。本研究において被験体に与えられた全体の放射能は8MBq未満であった。放射能計数のための血液サンプルは、注入の15分間後、1時間後および2〜3時間、注入後1日目には2回(午前および午後)および注入後2〜6日目には1回収集した。Holmeら(Holme S,Heaton A,Roodt J.111Inおよび51Crを用いる同時標識法は、保存された血小板濃縮物の血小板生存度の正確な評価を可能にする(Concurrent label method with 111In and 51Cr allows accurate evaluation of platelet viability of stored platelet concentrates.)Br J Haematol 1993:84:717−23)によって記載されるような2時間の放射溶出の補正後、インビボ放射活性血小板回収および生存値は、複数ヒットモデルを使用するCOSTコンピュータプログラムによって計算した。
【0081】
臨床研究2:
ミラゾールPRTプロセスを用いて処理した血小板のインビボ回収を確認することに焦点を置いた第2の臨床研究は、ニューハンプシャー(New Hampshire)のダートマス−ヒッチコック医学センター(Dartmouth−Hitchcock Medical Center)およびバージニア(Virginia)のノーフォーク赤十字センター(Norfolk Red Cross Center)において実施した。本研究は、治験用医療機器に対する適用免除(IDE)の下で、両方の研究施設のための施設内審査委員会(IRB)および米国FDAによって審査および認可された。インフォームドコンセントが終了した際に、各々の参加しているボランティアは、血小板供与のためのすべてのFDAおよびAABB判断基準に基づいて、適格性についてスクリーニングし、次いで本研究に選択的に含めた。
【0082】
ミラゾールPRT処理および血小板保存
血小板アフェレーシス収集の2〜8時間後に、250mLの体積の血小板を、収集ELPバッグから、別の照射および保存ELP容器に重量測定的に移した。28mLの体積のリボフラビン溶液(500μM)を、シリンジを有する滅菌バリアフィルターを通して試験製剤に加えた。この製剤を、ナビガントバイオテクノロジーズ,インク(Navigant Biotechnologies,Inc.)(レイクウッド(Lakewood),CO)によって製造されたミラゾールPRT照射デバイスの中に配置し、6.2J/ml線量の紫外光に曝露した。対照製剤はリボフラビンを加えず、UV光で処理しなかった。ミラゾールPRTプロセス後、製剤(対照および試験)は、5日間、水平方向に攪拌しながら、22±2℃の重要の血液バンク条件下で保存した。
【0083】
放射性標識およびインビボ血小板回収および生存測定
5日間の保存期間の最後に、Holmeらによって特定された手順を使用して、血小板製剤のアリコートを111In−オキシムで放射性標識した。Holmeら(Holme S,Heaton A,Roodt J.111Inおよび51Crを用いる同時標識法は、保存された血小板濃縮物の血小板生存度の正確な評価を可能にする(Concurrent label method with 111In and 51Cr allows accurate evaluation of platelet viability of stored platelet concentrates.)Br J Haematol 1993:84:717−23)によって記載されるように、各放射標識サンプルに対して2時間の放射溶出評価を実施した。
【0084】
111In放射標識血小板(対照および試験)のアリコート(約2〜10mL)をもともとの被験体に再注入した。血液サンプル(EDTAチューブに5mL)を、注入の1、3、15、および26時間後、2、3、4、5〜6、7および10日後に放射能の測定のために引き出した。放射溶出の補正後インビボ放射標識血小板回収および生存値は、複数ヒットモデルを使用するCOSTコンピュータプログラムによって計算した。
【0085】
UV光伝達試験
統計学
すべてのインビトロ細胞品質パラメーターについて、平均および標準偏差を計算した。統計学的な比較は、適用可能な場合、反復測定のための共分散分析(ANCOVA)を使用して実施した。この分析は、SAS v8.1の中の「proc mixed」を使用して実施した。配列効果は最初にモデルに含まれたが、有意でない場合には脱落した。
【0086】
結果
臨床試験1:UV処理は細胞の解糖代謝を加速する
南アフリカの監督官庁であるMCCの倫理委員会認可および届出後、全体で18例の血小板製剤を、トリマアフェレーシス手順を使用して、2.9〜3.8×1011血小板の範囲の収率で収集した。製剤を、収集日に、ポリオレフィン容器、センゲバルド(Sengewald)バッグ中で、50μMリボフラビンの存在下で、中程度UV線量(7.2J/ml;N=5)または高UV線量(12.4J/rhl;N=6)のいずれかで、UVで処理した。さらなる7例の製剤は、UV光で処理しなかった対照として働いた。すべての処理および対照PC製剤は、ELP(商標)バッグに移され、ここで、アフェレーシス収集後5日間、通常の血液バンク条件下で保存した。保存の0日目(処理前)、3日目、および5日目において、すべてのPC製剤からのサンプルを、pH、pO、pCO、乳酸およびグルコース濃度、P−セレクチン、HSRならびに血小板スワールについて測定した。表1は、これらの細胞代謝および品質測定の結果を要約する。処理した血小板は、対照血小板と比較したときに、保存の間のサンプルpHの減少に伴う乳酸産生およびグルコース消費の増加を示し、このことは、UV光処理が細胞解糖代謝を増加したことを示した。UV処理はまた、血小板保存の間に、P−セレクチン発現の増加およびHSRおよびスワールスコアの減少を加速した。血小板保存の間のこれらの変化の厳しさは、適用されたUV線量のレベルと直接的に比例していたようである。
【0087】
インビボ細胞回収および生存とのインビトロ血小板品質の相関
5日間の保存の最後に、すべての処理および対照血小板サンプルは、インジウムで放射標識し、続いて、同じドナーへの標識した血小板の注入を行った。インビボで注入した血小板の放射能は7日目まで測定し、注入した血小板のインビボ回収は、複数ヒットモデル分析を使用して計算した。平均インビボ回収は、ゼロ、中程度線量、および高線量のUV光で処理した血小板について、それぞれ、60%(SD=16)、30%(SD=8)および14%(SD=7)であった。図8A〜8Hは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、pO(g)、およびpCO(h)の値の関数である。グラフ中で、白丸は対照血小板であり、黒ひし形は中程度線量のUV光処理血小板であり、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板である。図8A〜8Hにおいて、保存の間または5日目に測定された各代謝および細胞品質パラメーターは、すべての個々の血小板製剤について、血小板回収に対してプロットする。インビボ回収とのパラメーターの明確な相関を観察した。グラフの中にプロットしたパラメーターの中で、乳酸産生、pH、グルコース消費、およびP−セレクチンは、測定したインビボ回収と良好な相関を有するようである。これらの相関の程度は直線回帰分析によって定量され、表2に要約される。r値とF値の両方の相関係数は、乳酸産生およびpHがインビボ血小板回収と最も顕著に相関されることを同定し、p値はそれぞれ0.007および0.031であった。残りのパラメーターは、インビボ回収との相関のこれらの程度の順に、グルコース消費速度、P−セレクチン発現、HSR、スワール、pCOおよびpOであった。
【0088】
血小板生存時間との各細胞品質パラメーターの相関のための非常に類似したパターンは、同じ直線回帰分析を使用して観察した。再度、乳酸産生およびpHを、血小板生存との最強の相関を保有すると同定した。しかし、これらの決定基のF値は、回収値について観察したものよりも有意に高いレベルの変動を示した。この理由のため、血小板生存のために使用されるアルゴリズムは、より信頼性が低い血小板生存の予測因子と見なした。
【0089】
インビボ回収の予測因子としての乳酸およびpHの確認:臨床試験2
南アフリカにおいて実施された最初の臨床研究から得られた情報は、ミラゾールPRT処理手順のために血小板処理条件を設計するために使用した。これらの条件下で、ミラゾールPRT処理は、血小板保存の間の一連のインビトロ細胞品質試験によって評価されるように、血小板の治療剤的価値を損なうことなく、病原体還元能力を最大化した。最初の臨床研究において説明された血小板プロセシングスキームとは異なり、本研究における新鮮な血小板は、クエン酸化塩化ポリビニルELP(商標)バッグの中で、50μMリボフラビンの存在下で、6.2J/mlのUV光にこれらを曝露することによって、ミラゾールPRTでプロセスした。次いで、製剤を、処理後5日間の間、同じバッグの中に保存し、バッグ輸送ステップの必要性を除外した。図4に図示されるように、ELPバッグの使用は、短波長領域(285〜305nm)における光伝達の顕著な減少、および比較的長波長(365〜400nm)における伝達の相加を通して、最初の臨床研究において使用したセンゲバルトバッグを超えた利点を有した。長波長を有する領域は、リボフラビンが最大吸収を有する領域と一致する。インビトロ血小板細胞品質に対する、ならびにウイルスおよび細菌不活化に対する、本研究において使用されるミラゾールPRT処理条件の効果は、Liら(Li J,Xia Y,Bertino AMら 保存の間のヒト血小板のアポトーシスのメカニズム(The mechanism of apoptosis in human platelets during storage.)Transfusion 2000;40:1320−9.)およびRuaneらによって報告されているように、広範に評価されている。
【0090】
最初の臨床研究から得られた乳酸速度およびpHの直線回帰方程式を使用して(表2)、ミラゾールPRTプロセスの標準的な操作条件を用いて処理されたサンプルの血小板回収は、44〜55%の間であると予測される(表3)。この予測を生成するために使用した乳酸産生速度およびpHの値は、ELP容器中での6.2J/mlでの製剤の処理および引き続く5日間の保存後の血小板の性能の以前のインビトロ研究から導き出した。インビボ回収を予測するための乳酸速度およびpHパラメーターを使用することの信頼性は、ミラゾールPRTプロセスの第2の試験において確認した。トリマプラットフォーム上で収集した全体で24例の血小板製剤を使用した。ELPバッグ中での6.2J/mlを用いるUV処理および5日間の保存後、処理した血小板は51.4%の平均回収を実証し、標準偏差は18.6%であった。処理した製剤について観察したインビボ回収値は24.3%〜95.8%の範囲であった。この結果は、乳酸産生速度およびpHのパラメーターが、インビボでの血小板回収を予測するための単純かつ信頼できる手段を提供したことを実証した。
【0091】
考察
インビトロ細胞品質パラメーター測定から血小板のインビボ生存度を予測するために多くの試みが行われてきた。これらの予測を使用することの成功は、これらのパラメーターと回収のインビボ測定の間の比較的乏しい相関の限界におそらく起因して、わずかに報告されてきたのみであった。難問は、レシピエントの生理学的状態に主として起因する正常ボランティアの中のインビボ回収測定のかなり大きな変動から、および血小板製剤のためのインビトロ試験における生物学的変動性からの両方に由来する。相関の程度はまた、各変数の範囲および分布に依存する。得られる細胞品質パラメーターの値の範囲がより広く、かつこの分布がより均一であるほど、観察することができる相関はより良好である。本研究において観察することができる細胞品質値の範囲を広くするために、血小板は、最初の臨床研究において、3つの異なる線量のUV光で処理し、5日間保存した。結果は、すべての測定したインビトロ細胞品質パラメーターが、用量依存的様式でUV光処理に応答したことを示した。UV処理は、乳酸産生、グルコース消費、およびP−セレクチン発現を増加し、そして保存の間にpH、HSRおよびスワールの減少を生じた。細胞品質パラメーターのこれらの変化のすべては、様々な程度まで血小板インビボ回収と相関した。これらの中で、乳酸産生およびpHを、血小板インビボ回収と最も強力に相関したパラメーターとして、直線回帰分析によって同定した。乳酸産生およびpHの相関係数は0.909および0.883であり、p値は0.007および0.031であった。インビトロ細胞品質の血小板生存との相関の同様のパターンもまた観察した。これらの予測アルゴリズムの値は、引き続く臨床研究を通して首尾よく確認し、この研究は、観察された血小板インビボ回収が予測値の範囲内に十分にあることを実証した。これらの結果は、以前に示唆されてきたように、血小板インビボ回収がインビトロ細胞品質パラメーターから予測可能であること、ならびにここで利用された条件下では、乳酸産生およびpHが、インビトロPRT処理血小板生存度の最も関連性のあるインビトロ指標であることを実証する
ここで報告した本発明者らの観察は以前の研究と一貫している。乳酸塩は、血小板解糖系路の最終代謝生成物であり、乳酸に転換され、保存の間に保存媒体に放出される。乳酸の蓄積は、血小板解糖流量の状態を直接的に反映するのに対して、UV処理は、線量依存的様式で乳酸産生速度を刺激し、高エネルギーUV光が血小板解糖流量を加速することを示す。乳酸の蓄積は、保存の間の血漿pHの減少の原因である。新鮮な血漿は緩衝能を有するので、pHは、乳酸産生が有するのと同程度のインビボ回収との相関を有するとは予測されない。本発明者らの直線回帰分析はこのことを確認した。興味深いことに、乳酸産生の上流前駆体であるグルコース消費は、乳酸産生速度よりもインビボ回収との比較的低い相関係数を実証し、統計学的な有意さはなかった(p>0.05)。この観察のための1つの可能な説明は、グルコース消費が、解糖の最終生成物である乳酸に独占的に導かれる解糖系路には完全には関連付けられていないかもしれないことである。確かに、解糖およびTCAサイクルにおけるグルコール誘導性中間体の多くは、脂肪酸、脂質、アミノ酸およびタンパク質にもまた転換可能である。代替的な説明は、保存の開始時において製剤中に存在するグルコールの残存レベルが、保存の間にグルコース消費の速度を変化させる可能性があることである。解糖の速度はグルコースの濃度に直接的に関連するので、このメカニズムは、応答メカニズムのさらなるバリエーションを導入する際に働き得ることが可能である。
【0092】
ミラゾールPRT血小板プロセスのための照射バッグとして、ポリオレフィンセンゲヴァルドバッグよりも、クエン酸可塑化ELPバッグを選択するためのいくつかの理由が存在した。2つのバッグを通してのUV伝達のスペクトルに関する研究は、ELPバッグ材料が低波長UV光の伝達の減少を生じることを示した(図4を参照のこと)。低波長UV光のこの減少効果は、血小板の生存度および機能のために生体エネルギーATP供給の一部を維持するミトコンドリアなどの処理された血小板オルガネラへの深刻な損傷を回避するために非常に決定的である。確かに、独立した研究は、ELPバッグ中で6.2J/mlで処理され、7日間まで保存された後、解糖流量が加速された場合でさえ、ミトコンドリア機能および構造の完全性が十分に保存されていたことを確認した(投稿中原稿)。興味深いことに、以前の研究からの結果もまた、保存の間の対照と比較して、処理した生成物の5日目におけるより低いpO値によって証明されるように、ELPバッグ中で処理された製剤が、保存の間の酸素消費の増加を示すことを実証した。対照的に、ポリオレフィンセンゲヴァルドバッグ中で行った研究からの結果は、この効果を示さなかった(図8g)。本質的に、ポリオレフィンセンゲバルド容器中の固定されたエネルギー送達は、ELPバッグ中で観察されるものとは等価ではない(データ示さず)。これらの結果は、ポリオレフィンセンゲヴァルドバッグ中で処理した製剤の酸化的代謝が、ミトコンドリアの損傷の結果として破壊されたことを示唆する。明確に、ポリオレフィン容器(センゲバルドバッグ)中で処理した製剤について観察された曝露レベルは、全体のUV光線量曝露に関して最悪の場合のシナリオを表す。加えて、ELPバッグ中での照射はまた、保存のためのELPバッグへの引き続く移動を回避する付加的な利点を有し、PRT処理血小板プロセスを単純化する。
【0093】
これらの効果は、UV光の2モード性作用もまた示唆する。低波長領域におけるより低い光伝達およびより長い波長のより高い伝達、ELPバッグ中でのより少ないエネルギーの波長は、解糖とミトコンドリア活性の両方を相前後して実際に増加し得、保存の間にpHおよび製剤の安定性に関して作用のバランスを生じる。より高いエネルギー波長(短波長)におけるより高い光線量を用いると、解糖の増加および酸化的代謝の減少が起こる可能性があり、保存の間により低いpH値およびより乏しい細胞品質を生じる。本研究が実証するように、ELPバッグ中の製剤に送達された6.2J/ml UV線量に対応するミラゾールPRT処理は、51+/−18%のインビボ回収を生じ、これは、標準的な臨床実務において現在使用されている製剤の正常範囲にある値である。
【0094】
1つの血小板プロセスおよび保存システムのためのインビトロ血小板品質の直線回帰分析からのインビボ生存度予測が、他の血小板プロセスまたは処理システムに必ずしも外挿可能でないかもしれないことに注目することもまた重要である。血小板保存損傷の発生の根底にあるメカニズムは完全には理解されておらず、そして種々の処理因子への血小板の応答が困難であり得るので、1つのシステムから利用可能な予測は、他のシステムに適用されない可能性がある。例えば、本発明の報告においてインビボ回収のための最良の予測因子であることが実証された乳酸産生およびpHは、凍結または低温保存血小板の回収および生存を決定する際には有用でない可能性がある。それにも関わらず、血小板の乳酸産生およびpHからの情報が、通常の条件下で室温において5日間保存した製剤のための未処理血小板回収の良好な予測因子としてもまた働いたことに注目することは興味深い(表3を参照のこと)。
【0095】
これらの観察は、インビボでの製剤性能の見積もりのための血小板品質パラメーターのインビトロ測定の有用性をさらに実証する。インビトロ測定の値は、多数の設定において、見かけの相関の欠如のために疑問視されてきた。しかし、ここに提示した仕事は、これらの測定が、インビボでの血小板性能の価値ある指標を提供することができ、かつ新規な技術および新規な取り扱い方法論のガイドとなる開発の仕事のための手段として働く可能性があることを実証する。一旦、これらの相関が確立されると、これらはまた、より直接的であるが、しかし複雑かつ困難であるインビボ評価の代理として働くことができる可能性がある。各々の新規な処理様式の場合において、本実施例に記載したように、これらのパラメーターとインビボ性能の間の直接的相関を得ることによって、インビボ性能の最も有効かつ予測的な測定を確立することが必要であり得る。本実施例に提示した仕事において、利用した条件下でUV処理サンプルのためのインビボ回収の最も有効な予測因子は、サンプルpHおよび乳酸産生速度であることが見い出された。これらの測定の有用性は、新規な病原体減少技術、ミラゾールPRTのための処理条件を規定したさらなる開発の仕事をさらに導くこれらの能力によって実証された。
【表1】

【表2】

【表3】

【0096】
このデータは、AuBuchonら(AuBuchon JP,Herschel L,Roger Jら)病原体減少のためにリボフラビンおよび紫外光で処理したアフェレーシス血小板の効力(Efficacy of apheresis platelets treated with riboflavin and ultraviolet light for pathogen reduction.Transfusion 2004;44:16A.)によって公表されている。
【0097】
実施例2:紫外光への曝露後のクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)容器の透過性
1.緒言
およびCOに関するクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)容器の透過性は、本発明の方法におけるこれらの有用性を確認するために、電磁放射への曝露の前後で特徴付けした。血液および血液成分をプロセスするために有用である波長、放射エネルギーおよび放射出力を有する電磁放射への曝露の際に、顕著に減少しない、OおよびCOに関する透過性を示す容器を提供することが本発明の目的である。さらに、不必要かつ資源消費的なさらなるサンプル移動ステップを回避するために、血液および血液成分を保存することと、これを電磁放射を用いて処理することの両方のために有用な多機能容器を提供することが本発明の目的である。
【0098】
血小板生存度のために、血小板は、血小板の好気的代謝の構成要素であるOおよびCOの伝達を可能にする材料の中に保存されなければならない。本発明の方法の一実施形態において、血小板含有サンプル中の病原体は、紫外電磁放射への曝露によって減少される。それゆえに、OおよびCOの伝達を可能にし、かつ紫外電磁放射への曝露後にガス透過特性の顕著な減少を示さない、これらの方法におけるサンプル容器を使用することが有益である。本研究において、OおよびCOの伝達速度は、血小板含有サンプルの処理のために有用である選択した正味の放射エネルギーに系統的に曝露された、クエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)ELP血小板保存バッグ(38%重量パーセントのクエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル)について測定した。バッグ材料は、ガス透過性試験のために、乾燥していなくてはならず、かつ血液製剤を含んではならないので、リボフラビンを有する生理食塩水を、照射の間の実際の使用条件を模倣するために使用する。
【0099】
2.実験
本研究において、1リットルのクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)ELP血小板保存バッグに、250mLの生理食塩水(血小板製剤体積を模倣するため)および28mLのリボフラビンで満たす。これらのバッグをイルミネーターの中に配置し、UV電磁放射に曝露する。これらのバッグは、0(対照サンプル)または5J/cm(試験サンプル)に等しい標的エネルギーが送達された後で取り出す。液体を引き続き取り出し、バッグを切り開き、内部を吸い取って乾燥させる。試験品目の3つの複製を2つのエネルギー点で実施する。試験品目の6つを、O伝達試験のために使用し、残りの6つの試験品目をCO伝達試験のために使用する。ガス伝達試験を、確立されたプロトコールを使用して、90% RHおよびCOのために改変されたASTM D3985に従って実施する。表4および5は、本研究のための、試験品目行列および照射条件の要約をそれぞれ提供する。
【表4】

【表5】

【0100】
以下の手順は、紫外電磁放射に曝露されたクエン酸可塑化ポリ(塩化ビニル)ELP血小板保存バッグのCOおよびO伝達速度の評価のために採用する。
【0101】
1.12個のEtO滅菌した1L ELP照射バッグを入手する。
【0102】
2.データ収集シートに、部品番号およびロット番号を記録する。
【0103】
3.OまたはCOおよび標的エネルギーでバッグを標識する(すなわち、O 5J/cm)。
【0104】
4.250mlの滅菌生理食塩水および28mlの500μMリボフラビン溶液でバッグを満たす。データ収集シートに、生理食塩水およびリボフラビンのロット番号を記録する。
【0105】
5.対照(0J/cm)については、生理食塩水およびリボフラビンでバッグを満たし、次いで、これを空にし、ステップ15に進む。
【0106】
6.各試験品目を、イルミネーターマッピング機能検査(Illuminator Mapping Function Verification)(P/N 777074−563)において、OAI UV パワーメーター(Powermeter)光マッピングによって5.0J/cmまで照射する。これは約8 1/2分を要する。
【0107】
7.クエリスクリーン(Query screen)を通してイルミネーターを設定する。イルミネーターが、320nm光を用いるEXPOSUREモードで実行するように構成されており、温度設定点(SET TEMP)が30℃に、そしてENDPOINTが5.0J/cmに設定されていることを確認する。攪拌速度が120cpmに設定されていることを確認する。イルミネーターがEXPOSUREモードのために構成されていることをデータ収集シートに記録する。
【0108】
8.任意の製剤を処理する前に、ランプマッピング機能確認(Lamp Mapping Function Verification)(P/N 777074−563)が完了したことを確実にする。
【0109】
9.イルミネータープラテン上に液体を満たしたバッグを固定する。
【0110】
10.IRサーモメーターで最初の試験品目温度(℃)を測定し、そして記録する。
【0111】
11.各照射プロセスの最初に、操作の最初の30秒以内に、3つすべての「All is Well」指示ライトが作動したことを確認する。確認するとき、データ収集シート上で、はい/いいえに丸を付ける。光が作動していないならば、問題を改善することができるまで、プロセスを停止する。
【0112】
12.各試験品目を照射して、5.0J/cmの全体エネルギー線量を送達する。
【0113】
13.各照射手順の最後に、IRサーモメーターによって温度を記録する。
【0114】
14.照射後、イルミネーターからバッグを取り出す。
【0115】
15.イルミネーションバッグの液体を空にする。
【0116】
16.バッグの底部を切断して除き、キムワイプを用いて、バッグの内部を吸い取って乾燥させる。
【0117】
17.適切な試験条件で標識した妥当な滅菌ポーチ中に各バッグのセットを配置する。
【0118】
18.OおよびCO伝達に関して品目を試験する。
【0119】
3.データおよびデータ分析
表6は、計算した平均および標準偏差を含む、O伝達速度についての結果および要約統計量を列挙する。加えて、平均のt検定(α=0.05)を、試験サンプルおよび対照サンプルの各群について実施した。図9は、各サンプル(各群について3つのバッグサンプル、サンプルあたり2つの複製)についての測定したO伝達速度を示す。図10は、各群(試験および対照)についてのOの平均を示し、エラーバーは±1標準偏差を示す。図10において示されるように、試験実験および対照実験についてのO伝達速度の測定した平均値は、それぞれの標準偏差の中にある。加えて、O伝達速度の決定した平均は、t検定評価によって、試験サンプルと対照サンプルの間で有意な違いはない。
【表6】

【0120】
表7は、計算した平均および標準偏差を含む、CO伝達速度についての結果および要約統計量を列挙する。加えて、平均のt検定(α=0.05)を、試験サンプルおよび対照サンプルの各群について実施した。図11は、各サンプル(各群について3つのバッグサンプル、サンプルあたり2つの複製)についての測定したCO伝達速度を示す。図12は、各群(試験および対照)についてのCO伝達速度の平均を示し、エラーバーは±1標準偏差を示す。表7、図11および図12において示されるように、CO伝達の速度の統計学的に有意な変化は、紫外放射への曝露の際に観察される。この増加は統計学的に有意であるが、CO伝達速度は、紫外放射への曝露の際に、減少するのとは反対に、わずかに(約8%)増加する。さらに、観察した増加の規模は、血小板の品質または生存度に影響を与えるためには十分ではなく、従って、臨床的な意義を有するとは予想されない。
【表7】

【0121】
参照およびバリエーションによる援用に関する言及
本願全体を通してのすべての参考文献、例えば、発行もしくは認可された特許もしくは等価物、特許出願公開、非公開特許出願を含む特許文書、および非特許文献の文書、または他の供給源の資料は、各々の参考文献が、本願における開示と少なくとも部分的に矛盾しない程度まで、あたかも個々に参照により組み込まれるように、これらの全体が本明細書における参照により本明細書に組み込まれる(例えば、部分的に矛盾する参考文献は、この参考文献の部分的に矛盾する部分を除外して、参照により組み込まれる)。
【0122】
本明細書に対する任意の付録(appendix or appendices)は、明細書および/または図面の一部として、参照により組み込まれる。
【0123】
「備える」「備える」「備えた」または「備える」(“comprise”,“comprises”,“comprised”,or“comprising”)という用語が本明細書で使用される場合、これらは、参照される、言及した特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を特定するとして解釈されるべきであるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはこの群の存在または付加を除外しない。本発明の別個の実施形態はまた、「備える」または「備える」または「備えた」(“comprising”or“comprise(s)”or“comprised”)という用語が、文法的に類似の用語、例えば、「からなる」または「から本質的になる」で選択的に置き換えられ、これによって、必ずしも同一の広がりを持たなくてもよいさらなる実施形態を説明することを包含することを意図する。
【0124】
本発明は、種々の特定のおよび好ましい実施形態および技術を参照して記載してきた。しかし、多くのバリエーションおよび改変が、本発明の技術思想および範囲にとどまりながらなされ得ることが理解されるべきである。本明細書に具体的に記載されたもの以外の組成物、方法、デバイス、デバイスの構成要素、材料、手順および技術が、過度の実験を用いることなく、本明細書において広範に開示されるように、本発明の実施に適用できることが当業者には明らかである。本明細書に記載される組成物、方法、デバイス、デバイスの構成要素、材料、手順、および技術の分野で公知であるすべての機能的等価物が本発明によって包含されることが意図される。範囲が開示されるときは常に、すべての部分的な範囲および個々の値は、あたかも別々に示されるように包含されることが意図される。本発明は、図面に示され、または明細書に例示される任意のものを含む、開示された実施形態によって限定されず、これらは、例示または例証によって与えられ、限定によってではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲のみによって限定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤を備える容器中に保持される血液またはこの成分中の病原体を減少させる方法を図示する概略図を示す。
【図2】血液または血液成分サンプルを保持するための少なくとも部分的に透明なバッグを備える例示的な容器の概略図を提供する。
【図3】約370ナノメートル、450ナノメートル、260ナノメートルおよび220ナノメートルにおける吸収極大によって特徴付けられるリン酸緩衝化生理食塩水中の7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンの200マイクロモル濃度溶液の吸収スペクトルを示す(曲線A)。図3は、7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンを有し、選択された波長の紫外および可視電磁放射に曝露された血小板含有サンプルの減少効率に対応する作用スペクトル(logウイルス殺傷;曲線B)もまた示す。
【図4】ポリ(塩化ビニル)およびクエン酸可塑剤バッグを備える本発明の方法において有用である容器(曲線A)および従来的なポリオレフィンバッグを備える容器(曲線B)の伝達スペクトルを示す。
【図5A】図5Aは紫外放射への連続的曝露の際のクエン酸可塑剤を加えたポリ(塩化ビニル)バッグの伝達スペクトルを示す。
【図5B】図5Bは曝露時間の関数としての308ナノメートルにおける伝達パーセンテージのプロットを提供する。
【図6A】図6Aは紫外放射への連続的曝露の際のポリ(塩化ビニル)およびDEHP可塑剤バッグの伝達スペクトルを示す。
【図6B】図6Bは曝露時間の関数としての308ナノメートルにおけるこのバッグの伝達パーセンテージのプロットを提供する。
【図7A】図7Aは、紫外放射への連続的曝露の際のポリオレフィンバッグの伝達スペクトルを示す。
【図7B】図7Bは曝露時間の関数としての308ナノメートルにおけるこのバッグの伝達パーセンテージのプロットを提供する。
【図8A】図8Aは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8B】図8Bは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8C】図8Cは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8D】図8Dは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8E】図8Eは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8F】図8Fは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8G】図8Gは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図8H】図8Hは、インビボ血小板回収とのインビトロ細胞品質パラメーターの相関を示す。インビボ血小板回収は、乳酸産生(a)、5日目の22℃におけるpH(b)、グルコース消費(c)、5日目のP−セレクチン発現パーセント(d)、5日目のスワールスコア(e)、5日目のHSRパーセント(f)、5日目のpO(g)および5日目のpCO(h)の値の関数である。図8A〜8Hにおいて提供されるグラフにおいて、白丸は対照血小板に対応し、黒ひし形は中程度の線量のUV光処理血小板に対応し、そして黒四角は高線量のUV光処理血小板に対応する。
【図9】各サンプルの測定したO伝達速度を示す(試験群および対照群について3つのバッグサンプル、サンプルあたり2つの複製)。
【図10】各群(試験および対照)の平均を示し、濃淡で表現した部分は、±1標準偏差を示す。
【図11】各サンプルの測定したCO伝達速度を示す(各群について3つのバッグサンプル、サンプルあたり2つの複製)。
【図12】各群(試験および対照)のCO伝達速度の平均を示し、同図において濃淡によって表現した部分は、±1標準偏差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法であって、
容器がポリマー材料およびクエン酸可塑剤を備え、前記容器は波長の分布を有する電磁放射を伝達する、生物学的サンプルを保持する前記容器を供給することと、
前記波長の分布を有する電磁放射が前記容器によって伝達され、前記生物学的サンプルによって少なくとも部分的に吸収され、これによって、前記生物学的サンプル中の病原体を減少する、前記容器を電磁放射に曝露することと、
の各ステップを備え、
前記容器による前記波長の分布を有する電磁放射の伝達が、電磁放射への曝露の間に実質的に一定である方法。
【請求項2】
前記容器による前記波長の分布を有する電磁照射の伝達は、電磁放射への曝露の間に10%以内まで一定である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器による前記波長の分布を有する電磁照射の伝達は、電磁照射への曝露の間に5%以内まで一定である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記波長の分布は、電磁スペクトルの紫外領域、電磁スペクトルの可視領域、または両方にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記容器は、約0.1分から約30分の範囲から選択される時間、前記電磁放射に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記容器は、約0.1ジュールcm−2〜約10ジュールcm−2の範囲から選択される正味の放射エネルギーに曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記波長の分布を有する前記電磁放射は、約285ナノメートル〜約365ナノメートルの範囲にわたって選択される波長を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記クエン酸可塑剤は、
クエン酸トリエチルと、
クエン酸アセチルトリエチルと、
クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルと
クエン酸アセチルトリ−n−ブチルと
からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記容器は少なくとも1種のさらなるクエン酸可塑剤をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記クエン酸可塑剤の濃度は約25%〜約50%重量の範囲にわたって選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記クエン酸可塑剤の濃度は約38%重量である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー材料はポリ(塩化ビニル)である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記容器は、可塑剤、光安定剤、熱安定剤、抗酸化剤、難燃剤、離型剤、および核化剤からなる群より選択されるさらなる添加剤をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記生物学的サンプルは血液成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的サンプルは体液である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記血液成分は、血小板、血漿、赤血球、白血球、および血漿タンパク質からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的サンプルは光増感剤をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記光増感剤は7,8−ジメチル−10−リビチルイソアロキサジンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記生物学的サンプルは、全血、血液成分、赤血球含有血液成分、血漿含有血液成分、血小板含有血液成分、白血球含有血液成分、血液由来の1種以上のタンパク質を含有する溶液、および腹腔溶液からなる群より選択される材料を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法であって、
容器がポリ(塩化ビニル)および少なくとも1種のクエン酸可塑剤を備え、前記容器は選択された波長の分布を有する電磁放射を伝達し、そして前記容器による前記選択された波長の分布を有する電磁放射の伝達が電磁放射への曝露の間に実質的に一定である、前記生物学的サンプルを保持する前記容器を供給することと、
前記選択された波長の分布にわたる波長の関数として、前記容器の伝達のパーセンテージを測定することと、
電磁放射の供給源を使用して電磁放射を発生することと、
前記光源によって発生される前記電磁放射の出力をモニターすることと、
前記容器の前記測定された伝達のパーセンテージを使用して、前記生物学的サンプルに送達された放射出力を計算することと、
所望の程度の病原体減少を提供するために必要とされる前記生物学的サンプルの曝露時間を決定することと、
前記選択された波長の分布を有する電磁放射が前記容器によって伝達され、前記生物学的サンプルによって少なくとも部分的に吸収され、これによって、前記生物学的サンプル中の前記病原体を減少する、前記曝露時間の間、前記容器を電磁放射に曝露することと、
の各ステップを備える方法。
【請求項21】
前記クエン酸可塑剤は、
クエン酸トリエチルと、
クエン酸アセチルトリエチルと、
クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシルと、
クエン酸アセチルトリ−n−ブチルと
からなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記クエン酸可塑剤の濃度が約25%〜約50%重量の範囲にわたって選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記クエン酸可塑剤の濃度が約38%重量である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリマー材料はポリ(塩化ビニル)である、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
生物学的サンプル中の病原体を減少させるための方法であって、
容器がポリマーおよび少なくとも1種の光学フィルター添加剤を備え、前記添加剤の組成および濃度が、第1の波長の分布を有する電磁放射が前記容器によって少なくとも部分的に伝達されるように選択され、第2の波長の分布を有する電磁放射の伝達が実質的に妨害され、前記第1の分布を有する電磁放射が前記生物学的サンプルの病原体の減少を開始可能である、前記生物学的サンプルを保持する容器を供給することと、
前記第2の波長の分布の電磁放射の伝達が実質的に妨害され、前記第1の波長の分布を有する電磁放射が前記容器によって伝達され、前記生物学的サンプルによって少なくとも部分的に吸収され、これによって、前記生物学的サンプル中の前記病原体を減少する、前記容器を電磁放射に曝露することと、
の各ステップを備える方法。
【請求項26】
前記添加剤は前記ポリマーのポリマーネットワーク中に固定化される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記添加剤および前記ポリマーはコポリマーであり、前記添加剤は前記ポリマーに共有結合されている、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記添加剤は、1種以上のアミノ酸、1種以上のタンパク質、1種以上のペプチド、1種以上の核酸、および1種以上のオリゴヌクレオチドからなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記添加剤は、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸n−ブチリルトリ−n−ヘキシル、およびクエン酸アセチルトリ−n−ブチルからなる群より選択される1種以上のクエン酸可塑剤からなる群より選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記添加剤は、チロシン、ヒスチジン、フェニルアラニンおよびトリプトファンからなる群より選択される1種以上のアミノ酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリマーはポリ(塩化ビニル)である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の波長の分布を有する前記電磁放射は前記生物学的サンプルの少なくとも1つの成分を損傷可能である、請求項25に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図8E】
image rotate

【図8F】
image rotate

【図8G】
image rotate

【図8H】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公表番号】特表2009−500123(P2009−500123A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520401(P2008−520401)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/026375
【国際公開番号】WO2007/006012
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(506313866)カリディアンビーシーティ バイオテクノロジーズ,エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】