説明

生物学的反応支持体微小付着物を支えるプレートを読み取るための装置

本発明は、たとえば血清学的又は分子生物学的分析で蛍光性付着物を担持するプレートを読み取るための装置のための装置に関する。本発明はまた、そのような装置を含む機器、具体的な具現化ソフトウェアならびに分析法又は診断法における前記器具及び/又は装置の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血清学的又は分子生物学的分析で使用されるような蛍光性付着物を支えるスライドを読み取るための装置に関する。本発明はまた、そのような装置を含む機器、具体的な具現化ソフトウェアならびに分析又は診断法における前記機器及び/又は装置の使用に関する。
【0002】
発明の背景
過去数年間、生物学的試料と接触したときの生化学的反応の支持体である一連の整列した付着物を含む、顕微鏡スライド又はより一般的には平らな支持体上の多重試験装置が開発されてきた。蛍光顕色試薬との最終的な反応ののち、装置は読み取られ、すなわち、各スポット上の反応が定量化される。
【0003】
スライドは、ガラス又は透明なプラスチック材料でできていることができる。スライド上のスポットの数は、数個から数千個の範囲に及ぶことができる。スポットの直径は一般に50〜250ミクロンの範囲に含まれる。前記付着物は一般に、国際的に使われるようになった米国式の用語であるマイクロアレイと呼ばれている。
【0004】
第一の態様にしたがって、付着物は、核酸配列(DNA、デオキシリボ核酸)で構成され、試験される生物学的試料は、核酸配列の混合物、たとえば、相補的DNA(cDNA)と呼ばれるそのメッセンジャRNA(リボ核酸)の増幅形態の混合物を含む。各付着物はその対応するcDNAとでハイブリッド形成する。ハイブリッド形成反応は、cDNAそのものを標識することにより、又はハイブリッド形成の区域を特定の染料で標識することにより、蛍光によって視覚化し、定量化することができる。
【0005】
第二の態様(たとえば血清学的試験)では、試験される生物学的試料は、血清又は血漿を含有し、事前にスライド上に配置された反応要素、たとえばタンパク質、細胞、細胞成分分画、バクテリア、ウイルスなどを担持するスライドと反応する。この第一の反応ののち、スライドを顕色剤と反応させる。
【0006】
すべての場合で、各スポットに特異的なシグナルが読み取られるような処理を実施する必要がある。前記シグナルは、放射性同位元素、酵素的増幅から生じる呈色反応又は蛍光シグナルであることができる。この後者の場合でこそ、スポット密度の増大によって求められる解像度を達成することが可能になる。
【0007】
スポッティング法は完成の域に達し、多重測定の有用性は確認されて、診断分野で可能な用途がいくつがあるが、臨床検査室にとって許容しうるコストで入手可能な、求められる性能を有する蛍光リーダはない。この後者のカテゴリーにこそ本発明は位置する。
【0008】
現在利用可能な機器は、レーザスキャンを使用してスライドを探る。一般に、スポットによって発せられる種々のシグナルを取得するためには、3種の異なるレーザが必要である。そして、画像がスクリーン上で再構成され、オペレータがグリッドフレームを目視しながら動かし、その間にグリッドのメッシュをスポットの画像と整合させる。スポットが不規則であるため、この処理は全く満足というにはほど遠い。当然、そのような機器は非常に高価であり、100,000USドル程度である。このような機器は、研究目的として、非常に多数のスポットを支える少数のスライドを処理するように設計されており、少数のスポットを支える多数のスライドを処理する臨床検査室での日常的処理には適合していない。
【0009】
したがって、速やかで信頼性の高い自動化分析を可能にする分析マイクロアレイスライドリーダが実際に要望されている。血清学の分野では、特に、短時間(一般的には数秒)でスライドを処理することができ、感染性疾患の場合に緊急の診断に応じることができるランダムアクセススライドリーダに対する要望が満たされていない。本発明は、そのような要望に対する解決手段を提供する。
【0010】
発明の概要
本発明は、血清学又は分子生物学用ハイブリッド形成スライドのための蛍光読み取り装置に関する。本発明はまた、一つのそのような装置を含む機器ならびに分析法又は診断法における前記機器及び/又は装置の使用に関する。以下、術語「照明」及び「照射」は、蛍光励起光を指すために互換的に使用する。
【0011】
本発明の目的は、特に、蛍光シグナルが信頼性の高い自動的なやり方で記録され、処理されることを保証することにより、上述の欠点を回避させる、血清学又は分子生物学用ハイブリッド形成スライドのための読み取り装置を提供することである。本発明の装置の具体的な特徴は、特に、チャネリング励起光を供給するための発光ダイオードの使用ならびに読み取り及び分析の信頼性を高める励起光源及び集光光学部品の配設に基づく。
【0012】
したがって、本発明の特定の目的は、反応要素の微小付着物を担持する反応ゾーンを含むスライドを読み取り及び/又は分析するための、スライドを配置するための手段、反応ゾーンを照射するための手段及び集光光学部品を含む装置であって、
反応ゾーンを照射するための手段が、光軸、すなわち微小付着物によって発せられる蛍光が集光光学部品によって捕捉されるところの軸に対して斜めの照射を可能にするようにチャネル中に配設された発光ダイオード(LED)を含み、
装置が、それぞれが特異的な励起光を発するダイオードの少なくとも二つのチャネルを含み、
集光光学部品が、微小付着物の画像をセンサ上に形成する対物レンズを含むことを特徴とする装置に基づく。
【0013】
有利には、
ダイオードチャネルの軸は、光軸に対し、15°以上、好ましくは20°以上の角度で斜めである、及び/又は
装置は、少なくとも2個のダイオードを含み、各ダイオードは、近UV又は可視領域の波長を有する特異的な照射光を発し、それらの波長は、蛍光分子の選択的励起を可能にするために十分に離れており、好ましくは、励起波長は100nm以上の間隔によって離れており、及び/又は
各ダイオードによって発せられる照射光は別個の経路をたどり、及び/又は
装置は、スライド上の付着物のゾーンの照射を均一化する要素を含み、及び/又は
各チャネルは、少なくとも一つのダイオード、コリメータ、前記ダイオードによって発せられる励起光のスペクトルを制限するためのフィルタならびに、任意には、光の空間的分布を均一化するための光学素子及び/又は光をスライドの反応ゾーンに向ける集光素子を連続的に含み、及び/又は
集光光学部品は、スライドの反応ゾーンと合致する一つの焦点を有する第一の対物レンズ、フィルタホルダ、好ましくはフィルタホイール及び画像を形成する第二の対物レンズを含み、及び/又は
装置は、スライドを配置する手段、反応ゾーンを照射する手段及び集光光学部品をいっしょに保持する強固なベース及び/又はコンソールをさらに含む。
【0014】
本発明の特に好ましい実施態様では、3個のダイオードが、同じチャネル中、光軸に隣接した状態でグループ分けされている。
【0015】
本発明の特に好ましい実施態様では、
装置は、一般にはすべての摂動原因、すなわちスポッティングのランダムさ、照射の不規則さ及び蛍光試薬の品質のばらつきを考慮してシグナルを修正する専用ソフトウェアによって命令又は操作される。好ましくは、ソフトウェアは、同じスポットの蛍光レベルを異なる波長で比較し、異なるスポットの蛍光レベルを同じ波長で比較することができる。好ましくは、ソフトウェアは、異なる波長でのスポットの蛍光の微修正を計算するために、蛍光性又は単純拡散性である均一面に予め記録した画像を使用して、及び/又は、
装置は、種々の染料の選択的な励起を可能にするのに十分な程度に波長どうしが離れている励起光の三つのチャネルを含み、好ましくは、一つは365nmを中心とし、第二のものは470nmを中心とし、第三のものは594nmを中心とする励起光の三つのチャネルを含む。近UVから赤外線まで波長の他の組み合わせが可能であり、及び/又は
励起光均一化装置は、光の多重反射を可能にするのに適当な直径の導光管又はケーラータイプの装置である。好ましくは、光均一化装置はケーラータイプである。そのうえ、均一化は、たとえばホログラフィータイプのディフューザを加えることによって改善することができ、及び/又は
支持体が顕微鏡スライド又は平行面を有する他の支持体である場合、励起光はスライドを透過して試料に達し、及び/又は
センサ側の集光光学部品の対物レンズは、被写体側の対物レンズの焦点距離以下の焦点距離を有して、使用されるセンサにしたがって1未満又は1を超える倍率を生じさせ、及び/又は
フィルタホイールは電動化され、励起波長の変化に結合され、及び/又は
集光光学部品は、スポットの画像をたとえばCCD(「電荷結合素子」)タイプのマトリックスセンサ上に形成し、及び/又は
装置はスライド識別情報リーダを含み、及び/又は
装置は自動スライドフィーダを含む。
【0016】
これらの特徴は、特に長所であり、反応要素を信頼性の高い自動的なやり方で読み取ることを可能にして、再現精度の高い結果をもたらす。
【0017】
本発明のさらなる目的は、生物学的作用物質、たとえば感染性の病原体、アレルゲン又は自己抗原の一連の付着物を含む反応ゾーンを含む血清学用スライドを患者からの血清試料又はその希釈物とともにインキュベートしたのち、付着物に結合した試料中の抗体(たとえばIgG及び/又はIgM)を標識試薬によって顕色させることを含む血清学的分析法であって、標識(たとえば蛍光標識)の読み取り及び分析を、先に定義したような装置によって実施することを特徴とする方法に関する。好ましくは、分析法は、3種の染料、すなわち、血清学的反応の前の、付着物に対応する第一の染料、タイプG免疫グロブリンの顕色試薬に対応する第二の染料及びタイプM免疫グロブリンの顕色試薬に対応する第三の染料を選択的に励起させる三つの分析波長を含む。好ましい実施態様では、付着物に対応する染料は、約365nmで励起することができ、タイプG免疫グロブリンの顕色試薬に対応する染料は、約470nmで励起することができ、タイプM免疫グロブリンの顕色試薬に対応する染料は、約594nmで励起することができる。
【0018】
本発明のもう一つの目的は、分析を実行し、好ましくは、
スポット中の量の蛍光の1対照、タイプG免疫グロブリンを計測する蛍光2及びタイプM免疫グロブリンを計測する蛍光3にそれぞれ対応する三つの波長における3枚のデジタル画像を含み、及び/又は
スポッティングのランダムさ、照射の不均一さ及び顕色試薬のばらつきに関する蛍光の正規化、及び/又は
フランス国出願FR2,864,624に記載されているような対照血清に基づく又は内部対照に基づく正値性スケールに照らしたシグナルの比較
を含むソフトウェアの機能に関する。
【0019】
したがって、本発明は、実施例3に示す式又は他の類似の式を具現化する、本発明の装置を作動させるためのソフトウェアシステムを含む支持体に関する。
【0020】
本発明はまた、血清学的又は分子生物学的分析のための先に定義したような装置の使用に関する。好ましくは、分子生物学的分析は、生物学的試料からのリボ核酸又はデオキシリボ核酸の分析を含む。このような場合、ガラススライドは、たとえば、試料から生じる蛍光性cDNAを捕捉するための1本鎖DNAの付着物を担持する。たとえば、励起波長は、シアニン−3による内因性標識の場合には543nm付近、シアニン−5による標識の場合には635nm付近、Sybr Green(登録商標)(Molecular Probes、米オレゴン州Eugene)とでハイブリッド形成した画分の標識の場合には488nm付近で選択することができる。このリストは限定的ではない。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、先に定義した装置の使用を含む、特に生物学的分析のためのキットに関する。
【0022】
本発明は、数多くの分野で、特に医学、獣医学、環境、農業食品の関連などにおける組織学的又は血清学的分析で応用可能である。
【0023】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、スライドの分析に適合された装置に関する。その主要な構成要素が図1に示されている。装置は、有利には、プレート(2)を担持する強固なベース(1)を含み、その目的は、種々の要素を互いに対して定位置に保持することである。
【0024】
各発光ダイオード(3)は、均一化装置を含むケーシング(4)に包囲され、全体が、スライドホルダチャンバ(6)が固着された支持体(5)に挿入された照射チャネルを構成する。このポイントを超えたところに第一の対物レンズ(7)があり、そのものが、フィルタホイールハウジング(8)に接合されたスリーブに挿入されている。フィルタホイールを越えた対称的なところには、CCDカメラ(10)に取り付けられた第二の対物レンズ(9)がある。制御モジュール(11)を介するダイオードの起動、フィルタホルダの配置及びカメラの起動は、本発明の分析ソフトウェアをも含むマイクロコンピュータによって導びかれる。
【0025】
好ましい実施態様では、集光光学部品の光軸は水平である。
【0026】
発光ダイオードは、好ましくは、500〜5000mWの範囲に含まれる電気出力を有する。光ビームをほぼ平行にするため、収束レンズのセットがダイオードの正面に配置されている。10°未満の開き角が好ましい。そして、励起ビームのスペクトル領域を制限するための特定のフィルタが配置される。好ましい領域の値は40nm以下の間隔である。
【0027】
好ましい実施態様では、励起波長は互いに離れており、一つの波長は近UV範囲にあり、第二の波長は青範囲にあり、第三の波長は黄色、オレンジ又は赤範囲にある。励起波長間の距離に好ましい値は100nm以上の間隔である。
【0028】
好ましい実施態様では、均一化装置は、好ましくは20〜40mmの範囲に含まれる長さ及び好ましくは6〜10mmの範囲に含まれる直径を有する高屈折率の透明材料の管で構成された導光管の入口にある拡散面で構成されている。そのような場合、入力アパーチャがビームを適当な角度で収束させる(図2)。
【0029】
もう一つの好ましい実施態様で、均一化装置は、被写体の画像が形成されるところのコリメータアパーチャの焦点に配置された拡散面で構成されている(いわゆるケーラーアセンブリ)(図3)。
【0030】
好ましい実施態様では、ディフューザは、非常に高い収率のホログラフィータイプである。
【0031】
特定の実施態様では、計測されるスライドは可動支持体中にセットされ、この可動支持体そのものはスロット中にスライドする。支持体は、スライドの反応ゾーンの右側にオリフィスを備えている。固定装置、たとえばスラスト玉軸受けが、前記支持体を、その窓が集光光学部品の軸にあるところの位置に固定する。
【0032】
好ましい実施態様では、計測されるスライドは、スロットを通して直接装置に導入され、滑りレール及び反対側のばねによって配置される。好ましい実施態様では、スライドは、過った導入を防ぐフェイルセーフ機構、たとえば切り込み付きコーナーを備えている。
【0033】
ダイオードケーシング及びスライドハウジングは、有利には、場合によっては混合された種々の材料から製造することができる剛性のアセンブリを構成する。特に、プラスチック材料、金属及び/又は37℃以上の温度で剛性である任意の材料で構成される(又はそれに基づく)ことができる。好ましい実施態様では、ブロックは、黒いナイロン(Delrin、Rilsan)又はアルマイト合金で構成されているか、反射を防止するために塗装されている。
【0034】
好ましい実施態様では、スライドハウジング又は可動スライドホルダは、焦点の維持に有害であるかもしれない変形を避けるため、金属製である。
【0035】
好ましい実施態様では、対物レンズは、20〜40mmの範囲に含まれる焦点距離を有する。もう一つの好ましい実施態様では、カメラ側対物レンズは、被写体側対物レンズの焦点距離よりも短い焦点距離を有する。これは、単一画像中でより多数のスポットを捕捉する能力を高める縮写を生成する。光電気マトリックスは、好ましくは、10,000を超える数の画素を有する。
【0036】
CCDセンサは、デジタルカメラ、たとえばNikonの「CoolPix」又は好ましくはHamamatsu 5885、Q-Imaging Qicam、Sony SVSもしくは他のブランドのようなカメラのCCDセンサであることができる。センサを冷却する必要はない。励起光の斜め配向が優れたSN比を保証する。
【0037】
一つの可能な実施態様では、光軸は垂直である。好ましい実施態様では、光軸は水平である。
【0038】
本発明装置の好ましい実施態様では、スライドは、計測スロットから突出し、バーコード又は電子タグを読み取ることを可能にする。したがって、本発明の装置は、バーコードリーダ又は電子タグを備えた通信アンテナを含む。したがって、本発明の特定の目的は、読み取りの特徴及び結果を記録することができるところの電子タグを備えたスライドに関する。
【0039】
したがって、本発明の特定の目的は、血清学用スライドに特異的な読み取りアルゴリズムに関する。三つの画像が三つの異なる蛍光で記録される。スライド調製時にスポットにシステム的に固定された蛍光タグに対応する第一の画像は、「クラスタ」すなわちスポットであるコネックスエレメントとして解析される。この方法で処理を進める利点は、いずれにしても不可避な光学的ひずみのせいで不正確になるであろう、スポットの画像上へのグリッドの配置が必要ないことである。これはまた、スライドハウジング滑りレール中のあそびの問題を解消し、自動分析が可能になる。他二つの蛍光タグに対応する他二つの画像は、それぞれ、患者の免疫グロブリンG及び免疫グロブリンM応答に対応する。微小付着物の主要な問題はそれがどれくらい含有するかであるため、本発明の要素は、蛍光タグの一つを付着物質の量の対照として使用し、対応するシグナルを使用して、血清学的反応を表すシグナルを修正することである。本発明のもう一つの要素は、拡散又は蛍光要素を担持するスライドの画像を使用して、照射の局所的差を計測したのち、それらの結果を使用して照射のばらつきを考慮してスポットの蛍光を修正することである。本発明のさらなる要素は、抗原スポットに結合した対象物の抗体に対応する蛍光を、それぞれ同じ抗IgG及び抗IgM蛍光顕色試薬によって蛍光状態にされたGタイプ又はMタイプの純粋な免疫グロブリンの参照スポットの蛍光に関連させることである。これは、実施例3でより明確になる。
【0040】
好ましい実施態様では、本発明の装置は、スライドの異なるゾーンの画像を取得でき、それにより、より多数のスポットを計測できるために、光軸に対して垂直にスライドを動かすための手段をさらに含む。この実施態様によると、40,000個までのスポットが読み取り可能であり、その数字はおおよそであり、おそらく、スポッティング技術及びセンサの画素数に依存してさらに多くなるであろう。
【0041】
もう一つの実施態様では、スライドラック、スライド識別情報読み取り装置及び読み取り装置中の機械的コンベヤを含む自動スライドフィーダが使用される。
【0042】
本発明の装置は、いかなるタイプの顕微鏡スライドにも適合する。これに関連し、本出願の状況で、「スライド」とは、生物学的付着物を固定化し、それによって反応ゾーンを定めるために使用することができる剛性の物体担持要素であると理解される。たとえば、強固な層板、膜、透明化したフィルタなどであることができる。スライドは、公知の従来材料、たとえばプラスチック、ガラス、ナイロン、生物学的ポリマー、シリカなどでできている(又はそれに基づく)ことができる。好ましいスライドはガラス顕微鏡スライドである。これらの寸法は一般に標準的、すなわち約26mm×76mmである。好ましい実施態様では、スライドは、たとえばコーナーの切り込みの形態のフェールセーフ機構を備えている。
【0043】
特に有利なやり方で、本発明の装置では、診断に使用されるスライド(又はマイクロアレイ)は、400個を超える付着物を含まず、たとえば、それが1回の撮影で蛍光画像を形成することを可能にする。先に示したように、スライドは、支持体によって、又はスライドをスロットに滑り込ませることにより、配置することができる。黒い材料の中に凹ませて設けられた前記スロットは、過って導入されたときでさえ、付着物に対する損傷を避けるため、皿穴を備えている。
【0044】
実施例及び添付図面で本発明の様々な実施態様及び用途を説明する。
【0045】
図示するように、本発明は、血清学用スライドの分析に使用することができる。血清学モードでは、スライドは、たとえば感染性、病原性、自己抗原性又はアレルギー性作用物質の一連の生物学的付着物(「スポット」)を担持する。付着物は入念にマーキングされ、そのマーキングが識別情報コードを構成する。試験される液体試料は、一般に適切なバッファ中に希釈された患者血清である。スライドの処置は、槽に順次浸漬することからなる手作業的手段によって実施することもできるし、特許出願FR0403365に記載されているような自動手段によって実施することもできる。
【0046】
本発明はまた、分子生物学的分析のために、上記のような蛍光モード又は光学密度モードで具現化することもできる。後者の場合、スライドは、スポットが付着されるところのナイロン支持体を担持し、光がナイロンによって拡散され、スポットが光を吸収する。スポットは検出され、明るい背景上の暗いスポットとして定量化される。
【0047】
本発明の他の態様及び利点は、例示的とみなされなければならず、限定的とみなされてはならない以下の実施例で明らかになる。
【0048】
実施例1 本発明の装置の説明
この実施態様は、図1に関連して記載する。
【0049】
発光ダイオードは以下のものであった。
UV励起用のNichia-NCCU001又はNCCU0033、Semrock FF 409-Ex02フィルタ付き。
470nm励起用のLumileds LXHL-MB1D、Semrock FF 506-Ex03 Aフィルタ付き。
594nm励起用のLumileds LXHL-ML1D、Chroma Technologies HG590/40フィルタ付き。
【0050】
均一化装置は導光管タイプであった。
【0051】
スライドホルダは黒Delrin製であった。
【0052】
集光光学部品は以下を含むものであった。
無限大修正Fujinon f=25mm対物レンズ。
フィルタ3枚:Semrock FF 409-Em02-B、Semrock FF 506-Em02-B及びChroma HQ655/40、黒アルマイト製線形フィルタホルダに装填。
無限大修正Fujinon f=25mm対物レンズ。
【0053】
画像は、658×494画素のSVS Vistek SV084「S」カメラのセンサに映写した。
【0054】
アセンブリは、本発明の読み取り分析ソフトウェアの具現化を実行するマイクロコンピュータによって制御した。
【0055】
実施例2 本発明の分析の説明
血清学用スライドは、0.5mm間隔の3列×4行に配設した12個のスポットを担持するものであった。第一列の最初2個のスポットがそれぞれIgG及びIgM免疫グロブリン対照であった。他のスポットは感染性作用物質であった。
【0056】
インキュベートの前、すべてのスポットは、360〜380nmの励起下、青領域で蛍光を発した。スライドを、まず患者の血清とともに30分間インキュベートした。次いで、すすいだのち、スライドを、二次抗体の混合物、すなわちフルオレセイン標識ヤギ抗ヒト免疫グロブリンG抗体とテキサスレッド標識ヤギ抗ヒト免疫グロブリンM抗体との混合物とともに10分間インキュベートした。結合したIgGを有するスポットは、470nmで励起可能な緑色の蛍光を示し、結合したIgMを有するスポットは、594nmで励起可能な赤色の蛍光を示した。365nmで励起した画像だけを示す(図4)。
【0057】
実施例3 本発明によるシグナル処理
アルゴリズムは、スポッティングのランダムさ、照射のばらつき及び試薬のばらつきを考慮してスポットの蛍光を修正するように設計されたものであった。
【0058】
注記
i:スポットiの面積
指数iはスポット数1〜nの範囲である。
数値i=gはIgG対照スポットに対応し、数値i=mはIgM対照スポットに対応する。
ij:バックグラウンド差し引き後の波長jにおけるスポットiの蛍光。
j=1:UV照射(参照)
j=2:470nmの照射
j=3:594nmの照射
ij:波長jにおける面積Siの照射
i2及びzi3は相対蛍光と呼ばれる。これらは、試料中の、抗原iに特異的なIgG及びIgM抗体含有量を定量化するために使用される。
【0059】
【表1】

【0060】
相対蛍光、たとえばzi2は、予想された性質を有するものであった。事実、
他のすべてが等しいならば(スポットサイズ、照射、蛍光試薬)、相対蛍光zi2は、血清学的反応又はハイブリッド形成反応の強さを表す特異的シグナルFi2に比例する。
【0061】
面積はzi2の式の中で表れず、したがって、スライド上の付着物の延展の程度に依存しない。
【0062】
付着量に依存せず、それが、Fi2及びFi1を、たとえば同じ比率、分子及び分母で変化させる。
【0063】
付着物のゾーンにおける照射の強さに依存せず、面積の蛍光がその照射に比例するため、Fi2及びEi2を同じ比率で変化させる。
【0064】
i2及びFg2を同じ比率で変化させる試薬の品質に依存しない。
【0065】
UV標識の密度が一定である限り、以下の簡略化式を使用することができる。これらは、同じ不変性を示す正規化された蛍光Fn2(i)、Fn3(i)
【0066】
【表2】

【0067】
である。
【0068】
同じ分析が相対蛍光zi3に当てはまる。実施例3に対応する結果を図5に示す。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の装置の概要図である。
【図2】導光管タイプのダイオード照射チャネルの図である。
【図3】ケーラー照射を備えたダイオード照射チャネルの図である。
【図4】取得シーケンス制御スクリーンを示す図である。
【図5】図4に対応する結果のプリントアウトを示す。IgG及びIgM対照の蛍光は随意に10,000に正規化されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応要素の微小付着物を担持する反応ゾーンを含むスライドを読み取り及び/又は分析するための、スライドを配置するための手段、反応ゾーンを照射するための手段及び集光光学部品を含む装置であって、
反応ゾーンを照射するための手段が、光軸、すなわち微小付着物によって発せられる蛍光が集光光学部品によって捕捉されるところの軸に対して斜めの照射を可能にするようにチャネル中に配設された発光ダイオードを含み、
装置が、それぞれが特異的な励起光を発するダイオードの少なくとも二つのチャネルを含み、
集光光学部品が、微小付着物の画像をセンサ上に形成する対物レンズを含むことを特徴とする装置。
【請求項2】
照射チャネルの軸が、光軸に対し、15°以上の角度で斜めである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
照射チャネルの軸が、光軸に対し、20°以上の角度で斜めである、請求項1記載の装置。
【請求項4】
少なくとも2個のダイオードを含み、各ダイオードが、近UV又は可視領域の波長を有する特異的な照射を発し、それらの波長が、蛍光分子の選択的励起を可能にするために十分に離れている、請求項1〜3のいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
励起波長が100nm以上の間隔によって離れている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
各ダイオードによって発せられる照射光が別個の経路をたどる、請求項4記載の装置。
【請求項7】
スライド上の付着物のゾーンの照射を均一化する要素を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
ケーラータイプの光均一化装置を含む、請求項7記載の装置。
【請求項9】
各チャネルが、少なくとも一つのダイオード、コリメータ、前記ダイオードによって発せられる励起光のスペクトルを制限するためのフィルタならびに、場合によっては、光の空間的分布を均一化するための光学素子及び/又は光をスライドの反応ゾーンに向ける集光素子を連続的に含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
光の空間的分布を均一化するための光学素子がホログラフィーディフューザを含む、請求項9記載の装置。
【請求項11】
集光光学部品が付着物の画像をCCDセンサ上に形成する、請求項1〜10のいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
集光光学部品が、スライドの反応ゾーンと合致する一つの焦点を有する第一の対物レンズ、フィルタホイール及び画像を形成する第二の対物レンズを含む、請求項1〜11のいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
自動スライド送り機構及び、場合によっては、スライド識別情報リーダをさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
スライドを配置する手段、反応ゾーンを照射する手段及び集光光学部品をいっしょに保持する強固なベース及び/又はコンソールをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
一つは365nmを中心とし、第二のものは470nmを中心とし、第三のものは594nmを中心とする三つの励起光チャネルを含む、請求項1〜14のいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
同じスポットの蛍光レベルを異なる波長で比較し、異なるスポットの蛍光レベルを同じ波長で比較することができるソフトウェアによって操作又は命令される、請求項1〜15のいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
ソフトウェアが、蛍光性又は単純拡散性である均一面に予め記録された画像を使用して、異なる波長でのスポットの蛍光の微修正を計算する、請求項16記載の装置。
【請求項18】
生物学的作用物質、たとえば感染性の病原体、アレルゲン又は自己抗原の一連の付着物を含む反応ゾーンを含む血清学用スライドを患者からの血清試料又はその希釈物とともにインキュベートしたのち、付着物に結合した試料中の抗体を標識試薬によって顕色させることを含む血清学的分析法であって、標識の読み取り及び分析を、請求項1〜17のいずれか1項記載の装置によって実施することを特徴とする血清学的分析法。
【請求項19】
3種の染料、すなわち、血清学的反応の前の、付着物に対応する第一の染料、タイプG免疫グロブリンの顕色試薬に対応する第二の染料及びタイプM免疫グロブリンの顕色試薬に対応する第三の染料を選択的に励起させる三つの分析波長を含む、請求項18記載の血清学的分析法。
【請求項20】
付着物に対応する染料を約365nmで励起することができ、タイプG免疫グロブリンの顕色試薬に対応する染料を約470nmで励起することができ、タイプM免疫グロブリンの顕色試薬に対応する染料を約594nmで励起することができる、請求項19記載の血清学的分析法。
【請求項21】
実施例3の式を具現化する、請求項1〜17のいずれか1項記載の装置を具現化するためのソフトウェアを含む支持体。
【請求項22】
血清学的分析又は分子生物学における生物学的試料のリボ核酸又はデオキシリボ核酸の分析のための、請求項1〜17のいずれか1項記載の装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−508537(P2008−508537A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524369(P2007−524369)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/FR2005/002009
【国際公開番号】WO2006/024772
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(507037080)
【氏名又は名称原語表記】INODIAG
【Fターム(参考)】