生物学的材料およびこの使用
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚由来の細胞またはこの細胞抽出物へ分化細胞、または分化細胞の核を暴露することを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起;(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/またはnanogを発現する、の1以上を有する、再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核を製造する方法。さらに、再プログラム化細胞の使用が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分化細胞または細胞核の再プログラミングおよび再プログラム化細胞および/または細胞核の使用に関する。特に、本発明は、分化細胞を再プログラミングして胚性幹細胞様細胞を製造する方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
胚性幹細胞は、これらが誘導される生物中の任意の他の細胞タイプを産生することができる多能性幹細胞である。多能性細胞は、順に各体内器官の全ての細胞を形成する3つ全ての胚組織層へ発達する能力を有し、および体内のありとあらゆる細胞および組織を形成し得る幹細胞を記載するために使用される。これは、胚体外膜および組織、胚、ならびに全ての後胚組織および器官へ特化する能力を有する全能細胞とは微妙に異なる。
【0003】
分化細胞は、生物内で体細胞組織を作製する細胞であり、および、通常のインビボ環境下では、一般的に、これらの発達可能性に制限されていると考えられる。分化細胞は、最終分化されていてもよく、即ち、これらが特定の細胞タイプ(例えば、ニューロン、筋細胞および骨細胞)として発生的に拘束されているか、またはこれらは、特定の系列(例えば、好塩基球、好酸球、および好中球を含む種々の免疫細胞を産生し得る骨髄性前駆細胞)内の限られた数の他の細胞タイプを生じさせる可能性を保持していてもよい。
【0004】
哺乳動物の、および特にヒトの胚性幹細胞は、多くのヒト疾患または状態の治療および/または予防についての可能性を提供する。特に、胚性幹細胞は、広範囲のヒト細胞タイプ、例えば、非常に治療的に価値がある細胞を作製する手段を提供する。しかし、現在、大抵の先進国において、哺乳動物の、および特にヒトの、胚性幹細胞の取得および使用を取り巻く倫理的および実際的問題が存在する。
【0005】
胚性幹細胞は、生体全体が誘導される細胞の集団である内細胞塊(ICM)として公知の胚中の細胞の多能性集団から通常誘導される。ICMは、問題の種に依存して、発生の初期に、典型的に受精後3から5日に現れる。クローニング法を使用して、所与の種の任意の個体から胚を作製することが可能である。典型的に、現在のクローニング法において、哺乳動物の分化細胞の核が、核移植として公知の方法で、通常同一種に由来の除核された哺乳動物の卵母細胞中へ移される(Campbell et al.,2005,Reprod Dom Anim 40:256−268)。
【0006】
核移植は、実施することが困難であることおよび成功する頻度が低いことが知られている(Campbell et al.,2005,Reprod Dom Anim 40:256−268)。成功すると、移植された核DNAは、受容卵母細胞によって再プログラミングされ、次いで卵母細胞は、受精の効果を模倣することによって刺激され、胚が形成され得る。
【0007】
通常、前記卵母細胞は有糸分裂へと刺激され、および桑実胚または胚盤胞のいずれかの段階で、「仮の」母親の子宮内へ移植される。この方法は、非常に低い成功率を有し、および生存可能な胚をほとんど作製しない。胚が形成する場合、ICMは、他の適用において使用され得る胚性幹細胞を提供するために単離されてもよい。
【0008】
この方法がヒトの、または哺乳動物の胚へ適用される場合、これは、実際的考慮および倫理的考慮の両方を有する治療的クローニングと呼ばれる。実際的な観点において、胚性幹細胞を得ることは、女性からの卵子の寄贈を必要とし、これは、哺乳動物の卵子は回収するのに高価でありおよび1人の女性からほとんど卵子が得られないので、実際上制限されている。倫理的観点において、および特にヒトに関して、別のプロセスにおける、例えば、作製される胚が胚性幹細胞のドナーとしてのみ役立つ治療的クローニングにおける中間体としての胚の作製に対する広範囲の反対が存在する。
【0009】
したがって、治療法において使用され得るが、胚性幹細胞をただ提供するだけのために胚を作製するために、クローニング法を用いずに、および特に、哺乳動物の卵母細胞を使用せずに得ることができる多能性胚性幹細胞様細胞を開発する必要性が存在する。
【0010】
分化細胞の核は、分化細胞を用いてのクローニング実験から生存可能な受精動物(fertile animals)の作製によって、以前、多能性状態へ首尾良く再プログラミングされた(Wilmut et al(1997)Nature 385:810−813;Polejaeva et al(2000)Nature 407:86−90)。これらの手順は、非常に低い効率および成功率を有する。これらの手順において、分化核は、除核された哺乳動物の卵母細胞中への核移植および該哺乳動物の卵母細胞内の因子への暴露(これは、該細胞核中の遺伝子を再活性化し、これは、胚の作製により該細胞へ多分化能を付与した)によって、多分化能へ再プログラミングされた。これらのケースにおいて、全ての操作は、問題の細胞と同一の種由来の材料を使用して行われた。
【0011】
細胞中の多分化能は、多数のマーカー遺伝子の発現を探すことによって同定され得る。ヒトにおいて、これらの遺伝子としては、POU5F1(転写因子Oct−4をコードする)、NANOG、Rex−1、Sox−2およびTertが挙げられる(Ginis et al.,2004 Dev Biol 269:Pages 360−380)。当業者は、POU5(Oct−4)およびNANOG、または任意の他の遺伝子またはタンパク質が言及されている文脈から、これが議論されている遺伝子であるかまたは遺伝子産物であるかを理解する。
【0012】
Oct−4は、胚性幹細胞を含む多能性細胞中において通常見られおよび発現される転写因子であるが、これは通常の分化細胞中において発現されない。Oct−4の活性化は、多分化能に似ている状態へ細胞が再プログラミングされることと一致している。Oct−4の実験的排除は、胚中におけるICMの完全な不在、ならびに原始外胚葉へ分化し続ける胚性幹細胞中における未分化表現型の損失を生じさせる(Nichols et al(1998)Cell.95:379−391)。
【0013】
Nanogは、また、多能性細胞において見られる別の転写因子である。nanog発現の非存在下において、胚性幹細胞はこれらの多分化能を失う(Chambers(2004)Cloning Stem Cells 6:386−391))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
幹細胞分野の実際的考慮および倫理的考慮の両方を克服するために全胚を創作することなく、胚性幹細胞または胚性幹細胞に似ている細胞(いわゆる胚性幹細胞様細胞)を製造する方法についての必要性が存在するしたがって、本発明は、再プログラミングとして知られている方法で、胚性幹細胞のこれに似ているより多能性の状態へ、分化細胞および/またはこれらの核(例えば、哺乳動物由来の分化細胞)の発達可能性を再指向する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1態様において、以下が提供される再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核を製造する方法であって、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚由来の細胞またはこの細胞抽出物へ分化細胞、または分化細胞の核を暴露することを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起(spinal projections)および/または後方に配置された骨盤骨(posteriorly located pelvic bone)から伸びる魚類中の骨盤付属物(pelvic appendages)を含む原始脊椎動物体制(primitive vertebrate body plan);
(ii)生殖細胞質(germ plasm)を含有しない生殖細胞(germ cells);および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、方法。
【0016】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0017】
または、前記方法は、以下として記載され得るnanogを発現するおよび/またはOct−4を発現するおよび/または多能性となるように分化細胞を再プログラミングする方法であって、分化細胞を、冷血脊椎動物由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこの抽出物へ暴露することを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、方法。
【0018】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0019】
または、さらに、前記方法は、本発明が提供する、以下として記載され得る胚性幹細胞様細胞を製造する方法、または再プログラム化細胞核を製造する方法であって、分化細胞または分化細胞の核を、冷血脊椎動物由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこの抽出物と接触させることを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞、
の1以上を有する、方法。
【0020】
再プログラム化細胞は、この正常な分化機能が除去または変更されてしまっている細胞である。再プログラム化細胞核は、この正常な分化機能が除去または変更されてしまっている核である。
【0021】
分化細胞は、特定の機能を有する特定の細胞タイプ、例えば、神経細胞または筋細胞へ発達した細胞である。これらの細胞は、通常の状況下では、他の細胞タイプへ一般的に発達することができない。本発明の文脈において、再分化細胞は、1つの特定の細胞タイプのものであり、および本発明の方法を使用して操作して幹細胞を形成しおよび引き続いて分化細胞へ再度変換された細胞である。再分化細胞は、この元の分化と同一のタイプまたは異なるタイプの細胞であり得る。
【0022】
原始体制
生物が原始脊椎動物体制を有するかどうかは、これらの骨格構造に関連する2つの特定の基準のうちの1つまたは両方を考慮することによって決定され得る。第1基準は肋骨構造に関し、および第2基準は骨盤骨に関する。原始魚類および原始両生類は、類似の骨格構造を有し、これは、いわゆる「誘導された(derived)」骨格(無尾類(カエル)骨格;硬骨魚骨格)を有する生物の骨格構造とは極めて対照的である。
【0023】
原始脊椎動物体制を有する生物、例えば、ハイギョまたはサンショウウオは、脊柱から横方向に広がる肋骨を有する。これは、哺乳動物において胸郭を生じさせた脊椎動物骨格の原始的な条件である。誘導された体制を有する硬骨魚等の生物における対比によって、肋骨は、横方向にではなく、背腹側に(dorso−ventrally)、広がる。この相違は、原始脊椎動物体制を有する魚とこれを有さない魚とを区別することを可能にする。
【0024】
肋骨を考慮することの代替法として、原始脊椎動物体制を有する生物はまた、骨盤骨を考慮することによって同定され得る。
【0025】
原始魚類において、骨盤付属物は、骨格の後部において骨盤骨から延びている。硬骨魚の骨格において、骨盤骨は、上肢帯付近またはこれに隣接する遥かに前方にある位置において見られるかまたはこれと融合してさえおり、魚の体のほぼ中間点またはこの点の前方にさえ、頭部付近に腹びれを位置付けている。サンショウウオ(アホロートル)によって例示される原始両生類骨格は、骨格の後部へ連結された骨盤骨を保持する。カエルは、対照的に、高度に誘導されおよび拡張された骨盤帯を有する。さらに、カエルは、骨盤帯の前方の遥かに減少された数の椎骨を有する。
【0026】
図5は、魚類および両生類における原始脊椎動物体制の保持を例示している。原始魚類と原始両生類との間の骨格構造における類似性が、誘導された骨格のこれと比較した場合の構造の相違として、明らかに見られ得る。前記図は、原始脊椎動物体制を示すハイギョの骨格と、誘導された脊椎動物体制を示す典型的な硬骨魚骨格のこれとを比較する。これはまた、サンショウウオ(アホロートル)の骨格とカエル(アフリカツメガエル)を比較する。
【0027】
ハイギョ骨格は、背側図から(背中から)示される。重要なことに、硬骨魚は側面図を示しており、脊椎突起/肋骨が横方向にではなく背腹側に広がることを例示している。両生類は両方とも背側図である。前記魚において、小さな矢印は、ハイギョにおける脊柱から横方向に突出する骨/肋骨を指し示す。これは、胸郭を生じさせた脊椎動物骨格の原始的な条件である。硬骨魚肋骨は横方向にではなく腹側に突出することに注意されたい。これは、硬骨魚革新(innovation)である。ひれを支える背側および腹側の脊椎突起もまた、硬骨魚革新である。原始魚類は、4つの肢を保持し、これらは、4本肢の陸上動物である四足類の4つの肢へ進化した。重要なことに、大きな矢印は、原始魚類および原始両生類における骨盤骨を指し示す。これは、原始魚類を規定する特徴であり、何故ならば、これは硬骨魚において失われているためである。原始脊椎動物体制は、Johnson et al(2003)Evolution and Development 5:4,414−431においてより詳細に議論されている。
【0028】
チョウザメ、カメ、ハイギョ、および哺乳動物は全て、原腸形成運動によって規定されるように、類似の発生学を共有する。
【0029】
したがって、原始脊椎動物体制は、例えばx線において、肋骨および/または脊椎突起の横方向であって背腹側(dorsoventral)ではない突出によって同定され得る。代替の骨格同定は、魚類中の骨盤骨である。
【0030】
生殖細胞質を有さない生殖細胞
雌において、生殖細胞は、卵母細胞、または卵母細胞への前駆細胞を指す。
【0031】
卵母細胞は、卵巣における場合の雌生殖細胞を規定し、および卵子は、排卵後の雌生殖細胞を規定する。
【0032】
生殖細胞質は、生殖細胞系列を生じさせる決定因子を含有する、ある生物の卵子、卵母細胞または胚中に見られる細胞質の領域である。生殖細胞質を有さない動物において、これらの同一の分子が、卵子細胞質、および同様に場合によってはGV(卵核胞)にわたって分布される。これらの分子、例えば、nanos、vasaおよびdazl遺伝子の産物は、典型的に、RNA結合タンパク質、またはこれらをコードするメッセンジャーRNAであり、これらは、多分化能再プログラミングプロセスに関与する傾向が高く、何故ならば、これらは胚性幹細胞中において見られるからである。生殖細胞質を有する生物中において、これらの分子は局在化されており、したがって場合によっては、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこれらの抽出物中において少量でありおよび比較的利用不可能であり、したがって、生殖細胞質を有する生物を、分化細胞を再プログラミングするために不適切とすることが考慮される。
【0033】
好ましくは、本発明に関して、原始脊椎動物体制を有する冷血脊椎動物はまた、生殖細胞質を含有しない卵母細胞/卵子(生殖細胞)を有する。生殖細胞質の存在または非存在は、ある生物がどのように発生するかを説明し得る。実際に、生物の体制(body plan)を見ることによって、この生物中の卵母細胞/卵子が生殖細胞質を有するかどうかを予想することが可能である。体幹の後部末端を規定する、特に後肢が、重要である。生殖細胞質の非存在下において、生殖細胞は、骨盤骨によって規定される脊椎位付近で、後部−側部中胚葉から誘導され、およびこれらは、該胚のこの後部領域だけに限定された細胞外シグナルへ応答して形成される。これらの細胞は、後に、卵母細胞へと発達する。生殖細胞質の存在下において、生殖細胞がより前方の位置で発達し、および得られる生物は、比較的に前方の成体形態(relatively anterior adult morphology)を有する。生殖細胞質を有する生物の卵母細胞、卵子、卵巣および初期胚は、生殖細胞質を有さないものと比較した場合、細胞および核の再プログラミングに対してほとんど有効ではない。
【0034】
原始脊椎動物体制を示す生物は、これらの生殖細胞中に生殖細胞質を有さないと理解される。原始脊椎動物体制の保持は、生殖細胞質の非存在の結果であると考えられる。
【0035】
卵母細胞/卵子が生殖細胞質を含有する動物を同定するために、体幹の後部末端を規定する後肢が重要である。生殖細胞質の非存在下において、生殖細胞は、骨盤骨によって規定される脊椎位付近で、後部−側部中胚葉から誘導される。卵子が生殖細胞質を含有する動物は、生殖細胞を作製するために必要とされる細胞外後部シグナルを必要とせず、何故ならば、細胞は、細胞外シグナルからではなく、卵子によって供給される物質によって特化されるためである。したがって、カエルおよび硬骨魚等の生殖細胞質を有する大抵の動物において、これらの動物は、比較的に前方の成体形態を有する。これらの動物の卵母細胞および卵子は、再プログラミングのために有用でない。
【0036】
哺乳動物の革新であるとかつて考えられた、哺乳動物中の生殖細胞質の非存在は、この系列の動物における原始脊椎動物体制の保持を結果として生じさせる、原始的発生学的特徴を保持する特定の系列の種によって保存されていることが示された。胚が原始的特徴を保持し、および、原始的成体脊椎動物形態を保持する哺乳動物および冷血脊椎動物種の胚において、PGCとして既知の、生殖細胞系(精子および卵子)を生じる幹細胞は、発生初期に生じる多能性前駆体から誘導される。大抵の実験的な非哺乳動物の生物、例えば、アフリカツメガエルまたはゼブラフィッシュ(硬骨魚)において、PGCは、哺乳動物におけるのとは全く異なる機構によって形成され、および哺乳動物のものと等価な多能性前駆体は、形成されない。アフリカツメガエルおよびゼブラフィッシュにおいて、生殖細胞は、生殖細胞決定因子を含有する、生殖細胞質の不均等分布によって体細胞から非常に早くに分離される。生殖細胞質を受け継ぐ細胞は、次いでPGCになり、および体細胞を生じない。
【0037】
図7は、多数の種々の生物由来の卵母細胞中の生殖細胞質の分布を示す。アフリカツメガエルの卵母細胞中のXdazlおよびXcat2をコードするRNAが示され、およびvasaをコードするRNAがハイギョ卵母細胞において示される。dazlおよびvasaをコードするRNAは、チョウザメ卵母細胞について示される。卵母細胞由来の切片をこれらの分子に特異的なプローブと反応させ、および該プローブを、アルカリホスファターゼ結合化抗体および標準法による色検出を使用して検出した。XdazlおよびXcat2 RNAは、細胞質内に局在され、生殖細胞質を示す。ハイギョ卵母細胞中のVasa RNAならびにチョウザメ卵母細胞中のvasaおよびdazl RNAは、均一に分布されており、生殖細胞質の非存在を示す。
【0038】
哺乳動物中においてPGCを作製する機構は、あるより下等な動物中に、しかし特定の基準を満たす種中のみに存在する。これらの種は、これらの体制に基づいて同定され得る。アホロートル等の前記基準を満たす種は、哺乳動物中におけるものと類似のPGC発達、ならびに生殖細胞発達を支配する遺伝子の類似の相補体(例えば、Oct−4およびnanogをコードする遺伝子)を有し、したがって、分化細胞、および特に哺乳動物の分化細胞を再プログラミングすることができる。したがって、前述の基準を満たす特定の種の卵母細胞は、アホロートルのこれに等価の再プログラミングポテンシャルを有することを正確に予想することが可能である。これらの基準を満たさない種は、保存された多分化能遺伝子の同一の相補体を有さず、したがって、等価の再プログラミング能を有さない。前記基準を満たす種は、生殖細胞質の非存在の結果であると考えられる原始脊椎動物体制を有する。重要なことに、Oct−4およびnanogは、生殖細胞質の非存在下においてPGCを産生するために必要とされるので、Oct−4およびnanogの保持は、生殖細胞質を有さない結果であると考えられる。
【0039】
成体は、これらの発生学の産物である。したがって、発生学が保存されているので、成体体制は保存されている。カエルおよび硬骨魚において見られる大きな変化を防止して、発生学を拘束するものは、生殖細胞を産生する機構である。生殖細胞質を有さない動物において、PGCはより少ない存在を有し、発生学的細胞運動における大きな変化を伴って起こるように、これらは、これらの産生のために必要とされるシグナルが変更されると、一掃され得る。生殖細胞質が存在する場合、PGCはシグナルの変化に対して無反応であり、何故ならば、どうであろうとこれらは形成するからである。したがって、発生学に対する制約が高められ、発生学変化の細胞運動、およびこれが、生殖細胞質を有する動物が、原始体制から変化した形態を有することができる理由である。生殖細胞質無しで、これは起こり得ない。チョウザメ、カメ、ハイギョ、および哺乳動物は全て、原腸形成運動によって規定されるように、類似の発生学を共有する。
【0040】
Oct−4および/またはnanogの発現
好ましくは、原始脊椎動物体制を保持する冷血脊椎動物はまた、Oct−4および/またはnanogを発現する卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞を有する。
【0041】
Oct−4および/またはNanog発現は、該タンパク質をコードするmRNAまたは該タンパク質産物自体をアッセイすることによって測定され得る。これを行うためのアッセイの方法の例としては、Makin et al.technique 2 p295から301(1990)に記載されるmRNAをアッセイするためのRT−PCR法、またはタンパク質産物のための抗体アッセイが挙げられる。
【0042】
卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞におけるOct−4および/またはnanogが高度に保存されると考えられるためには、これは、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を共有しなければならない。アホロートルOct−4タンパク質、AxOct−4の場合、73%のアミノ酸がマウスOct−4 DBDと同一であり、および75%がヒトOct−4 DBDと同一である。遺伝子ZPOU−2およびXLPOU91によってコードされ、およびそれぞれ分化細胞を再プログラミングする能力を与えない、ゼブラフィッシュおよびアフリカツメガエル由来の最も近いタンパク質は、要求される69%同一性未満の、63%同一である。機能的に等価なOct−4遺伝子の同一性および活性は、実施例に記載されるもののような当業者に既知の標準方法を使用して、試験され得る。
【0043】
好ましくは、ヒトOct−4 DBDおよび冷血脊椎動物のこれの間で言及されるアミノ酸同一性は、アミノ酸残基の極性または電荷を変化させないアミノ酸の保存的変化を可能にする。保存的変化の例は、当業者に周知であり、および、別のものの代わりの1つの疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンの使用、または別のものの代わりの1つの極性残基、例えば、リジンの代わりのアルギニンの使用を含む。好ましくは、2つのタンパク質配列間のアミノ酸同一性を決定する場合、保存的アミノ酸変化は、同一のアミノ酸であると考えられる。したがって、アミノ酸配列における保存的アミノ酸変化は、2つの配列間のパーセンテージアミノ酸同一性に影響を与えない。
【0044】
上記で議論した理解をさらに支持するために、種々の種におけるOct−4をコードする遺伝子を比較し、および同定された形態学的特徴を共有するものは、形態学的特徴を欠いている種よりもより密接な関係があるOct−4コーディング遺伝子を有することが示された。これらの実験において、Oct−4をコードする遺伝子を、イモリ(Notopthalmus viridens)、ガルフ・スタージョン(Asciperser oxyrhynchus)、アフリカハイギョ(Protopterus annectans)およびミシシッピアカミミガメ(Red Eared Slider)(カメ、T.scripta)から単離し、これら全ては、原始形態について記載した基準を満たす。図6において、これらの種から単離されたOct−4コーディング関連遺伝子のDNA配列が、公共データベースの一部である他の種から単離された最も密接に関連する遺伝子配列と比較され、および仮の系統樹が、Oct−4をコードする遺伝子の進化の歴史を追跡するように意図されて示される。通常の状況の下では、遺伝子配列進化は、動物の進化の関連性(即ち、種系統発生)を追跡する。したがって、関連遺伝子の任意の配列は、これらが進化的により離れている別の種(例えば、魚類、爬虫類または哺乳動物)由来の等価の遺伝子に対してよりも、共通の両生類祖先からのこれらのより最近の分岐のために、サンショウウオ(アホロートルおよびイモリ)およびカエル(ツメガエル(アフリカツメガエル)、ヒキガエル(Bufo)、アカガエル(rana))の間でより類似していると予想される。より高等な種(例えば、哺乳動物および両生類)と比較した場合、全ての魚類について、同一のロジックが適用できる。しかし、従来の系統発生学的予測とは対照的に、図6中の分析は、サンショウウオ(即ち、アホロートル)、イモリ、チョウザメ、ハイギョおよびカメが、それぞれ、マウスおよびヒトOct−4遺伝子のOct−4遺伝子に非常に関連している遺伝子を含有し、等価の遺伝子は、これらの最も密接に関連する姉妹群(即ち、カエル、ゼブラフィッシュなど)において見られないことを示している。図6に示される遺伝子配列関係は、科学界に自明でなく、およびいかなる従来の進化観でも予想されなかっただろう。
【0045】
アホロートル(サンショウウオ種Ambystoma mexicanum)中のOct−4遺伝子(Axoct−4)は、Oct−4に関連するアフリカツメガエル由来のいくつかの遺伝子を含むデータベース中のいかなる他の遺伝子よりも、より非常に哺乳動物のOct−4遺伝子に関連し、およびES細胞を救い得、場合によっては、例えばXLPOU91、アホロートルOct−4遺伝子よりもよい(MorrisonおよびBrickman,2006)。(図8は、アホロートルおよびマウス配列の比較を示す)。この結果は、Axoct−4遺伝子は、哺乳動物のOct−4遺伝子の真のオルソログ(即ち、祖先および機能によって関連される遺伝子)であることを示唆している(これはまた、発現パターンによっても支持されている(Bachvarova et al(2004)Developmental Dynamics 231 :871−880))。より多くの数のアフリカツメガエル遺伝子が、Axoct−4により類似する、祖先Oct−4配列の重複、および引き続いての機構のサブ機能化(subfunctionalization)から生じる(Prince and Pickett,2002;Nat E.ev.Genet.:3;827−37)。この結果は、アホロートル卵母細胞は、真のOct−4オルソログを含有しないアフリカツメガエルの卵母細胞よりも、哺乳動物の卵母細胞に生化学的により類似していることを示唆している。
【0046】
哺乳動物において、Oct−4は、PGCを産生するために必要とされる。これは、アフリカツメガエルにおいては当てはまらず、いかなるOct−4等価遺伝子もが哺乳動物のOct−4の真のオルソログではないことを意味する。アホロートルにおけるOct−4のメカニズムの発現パターンおよび相同性は、Oct−4がPGCを産生するために必要とされることをここで示唆している。この観察は、アホロートル卵母細胞が、アフリカツメガエル細胞よりも多分化能へ哺乳動物の分化細胞を再プログラミングするより高い能力を有する理由に寄与し、アホロートル卵母細胞は、再プログラミング能力においてむしろ哺乳動物卵母細胞のように振る舞う。さらに、生殖細胞質の非存在はまたこれらの卵母細胞/卵子を哺乳動物により似ているようにするので、これはまた、アフリカツメガエルと比較してのアホロートルの優れた再プログラミング能力に関与している可能性が高い。生殖細胞質の非存在は、Nanos、vasaおよびdazl(これらは全て、生殖細胞質に関連するRNA結合タンパク質である)等の他の因子が、再プログラミングについてよりアクセス可能となることを可能にする。
【0047】
カエルのOct−4遺伝子よりも哺乳動物Oct−4遺伝子へより密接に関連するOct−4遺伝子を有するアホロートルが実証されたので、哺乳動物Oct−4遺伝子により密接に関連するOct−4遺伝子を有する他の生物もまた、哺乳動物の分化細胞を再プログラミングし得ることが理解される。また、Axoct−4の発現パターンは、哺乳動物初期胚のこれと等価である。したがって、チョウザメおよびハイギョ、他のサンショウウオ、および「原始魚類」は、全て、アホロートルに等しい再プログラミング能を有し、およびアフリカツメガエル、他のカエル、または硬骨魚よりも遥かに大きい。
【0048】
好ましくは、再プログラム化細胞は、胚性幹細胞様細胞である。
【0049】
用語「胚性幹細胞様細胞」は、胚性幹細胞の特性を示すように再プログラミングされた分化細胞、または胚性幹細胞の特性を示す再プログラミングされた分化核を含有する細胞を指すために本明細書中において使用される。胚性幹細胞様細胞は、以下の特性の1以上を含み得るが、これらに限定されない。変換無しの増殖;連続的な増殖;自己再生および広範囲の組織を産生する能力;元の分化細胞と同一かまたは異なる細胞タイプのいずれかへ分化する能力(多分化能);脱分化または再プログラミングされる前の細胞中のこれらの同一のパラメータと比較した場合。
【0050】
好ましくは、再プログラム化細胞および/または再プログラム化細胞核は、Oct−4を発現する。または、再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核は、nanogのみを発現する。再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核はまた、多能性であり得る。
【0051】
好都合なことに、本発明のいずれかの方法に従って作製された再プログラム化細胞および/または再プログラム化細胞核は、Oct−4およびnanogの両方ならびに/または多分化能の他のマーカーを示し得る。多分化能の他のマーカーとしては、Sox−2、Rex−1、およびTERTが挙げられる。
【0052】
細胞が多能性であるかどうかは、多能性特性(即ち、細胞が、これが誘導される生物中のほとんど全ての細胞タイプへ分化するように刺激され得ること)の存在によって同定され得る。多能性細胞の分化は、前駆体媒体(progenitor medium)および/または特定の成長因子へ該多能性細胞を暴露することによって誘発され得る。Lanza,2004.Handbook of Stem Cells:Embryonic/ Adult and Foetal Stem Cells。
【0053】
好ましくは、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物中のOct−4および/またはnanogは、ヒト形態と比較して高度に保存されており、これによって、我々は、冷血脊椎動物中のOct−4が、ヒト転写因子Oct−4とDNA結合ドメインにおいて少なくとも69%アミノ酸同一性を有することを意味する。好ましくは、nanog遺伝子については、これは、ヒトnanogタンパク質と共有されるホメオドメインと少なくとも69%および最も好ましくは75%同一性である。
【0054】
有利なことに、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞中のOct−4および/またはnanogは、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する。
【0055】
アミノ酸同一性は、ClustalW(Thompson et al.(1994)Nucl.Acids.Res.,22 p4673−4680)、または任意の代替のアミノ酸配列比較ツールを使用して、測定され得る。clustalW法は、以下のパラメータを用いて使用され得る
ペアワイズアラインメントパラメータ − 方法:正確な
マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティー10.00、ギャップエクステンションペナルティー:0.10;
マルチプルアラインメントパラメータ − マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティー:10.00、遅延についての%同一性:30;ペナライズエンドギャップ:オン。ギャップセパレーションディスタンス 0、
ネガティブマトリクス:無し、ギャップエクステンションペナルティー:0.20、残基−特異的ギャップペナルティー:オン、親水性ギャップペナルティー:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、シンプルに誘導された同一の残基を含むように意図される。
【0056】
代替のパラメータもまた適切であり得る。
【0057】
ヌクレオチド配列同一性はまた、以下のパラメータを使用してClustalW(Thompson et al(1994))を使用して測定され得る
ペアワイズアラインメントパラメータ − 方法:正確な、
マトリクス:IUB、ギャップオープンペナルティー:15.00、ギャップエクステンションペナルティー:6.66;
マルチプルアラインメントパラメータ − マトリクス:IUB、ギャップオープンペナルティー:15.00、遅延についての%同一性:30、ネガティブマトリクス:無し、ギャップエクステンションペナルティー:6.66、
DNA遷移重量化(transitions weighting):0.5。
【0058】
代替のパラメータもまた適切であり得る。
【0059】
好ましくは、保存されたOct−4および/またはnanogをコードする任意のヌクレオチド配列は、ヒトOct−4および/またはnanog配列に対して、69%を超える、例えば、75%、80%、90%または95%同一性を有し(上記の試験に従う)、またはヒトOct−4および/またはnanogと機能的に等価のタンパク質をコードする0.1×SSC、65℃(ここで、SCC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.2)の洗浄条件下でヒトOct−4および/またはnanog配列へハイブリダイズする配列。
【0060】
本発明のポリペプチドは、全長およびフラグメントの両方を含む。このようなポリペプチドは、任意の従来の手段によって作製され得る。
【0061】
機能的に等価なタンパク質またはタンパク質フラグメントは、少なくとも69%配列同一性を有しおよびヒトOct−4および/またはnanogと同一の機能を保持するタンパク質および/またはフラグメントを指す。このような機能は、本明細書中に記載の方法のいずれによっても試験され得る。
【0062】
本発明に従う「核酸分子」は、一本鎖および二本鎖DNA、RNA、cDNAを含む。機能的に等価なポリペプチドをコードし得るヌクレオチド配列の誘導体は、当該分野において周知の任意の従来の方法を使用して得られ得る。
【0063】
全てのカエル、全ての硬骨魚、全ての鳥類および大抵の爬虫類を含む、保存されたOct−4遺伝子を欠いていると体制に基づいて予想される生物の群は、原始体制を保持し、および、保存されたOct−4遺伝子(有尾両生類を含む)およびnanogのオルソログをコードする遺伝子を保持する群よりも遥かに大きい。したがって、非常に少数の種の卵母細胞、卵巣、卵子および初期胚、またはこれらの抽出物のみが、本発明における使用に適切である。下記の系統が、保存された脊椎動物体制を保持する
サンショウウオ(アホロートルまたはブチイモリ属)
カメ
トカゲ
ワニ
メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);
ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);
軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ(chimeras));
軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメ);
セミオノータス目(ガー);
アミア目(アミア)
肺魚亜綱(ハイギョ);および
シーラカンス亜綱(シーラカンス)。
【0064】
したがって、冷血脊椎動物が、両生類、爬虫類および魚類からなる群から選択されることが好ましい。
【0065】
好ましくは、冷血脊椎動物は、サンショウウオ、カメ、トカゲ、ワニ、メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ(chimeras));軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメなど);セミオノータス目(ガー);アミア目(アミア);肺魚亜綱(ハイギョ);およびシーラカンス亜綱(シーラカンス)からなる群から選択される。
【0066】
最も好ましくは、冷血脊椎動物は、サンショウウオ、カメ、ハイギョおよびチョウザメからなる群から選択される。
【0067】
好都合なことに、冷血脊椎動物は、アホロートルおよびブチイモリ属を含む、サンショウウオである。
【0068】
サンショウウオの代わりに、冷血脊椎動物は、チョウザメ(学名:チョウザメ属(Acipenser))である。
【0069】
記載される生物の大部分において、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの細胞抽出物を得ることは、比較的容易であり、および材料は豊富である点で、これは特に利点である。両生類、および硬骨魚は、哺乳動物の卵子の体積の数千倍および哺乳動物の卵子組織を遥かに超える量で卵子を有し得、例えば、チョウザメ(ここからキャビアが得られる)は、卵細胞中この体重の15から25%を産生し得る。回収される材料は、場合により、保存および使用され得る。
【0070】
対比のために、哺乳動物の卵母細胞、卵子、卵巣材料および/また初期胚は、希少であり、および得ることが困難であり、さらに該材料は量が非常に限られている。
【0071】
アフリカツメガエルまたは他のカエルまたは任意の硬骨魚由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物は、本発明の方法における使用について適切でない。カエルおよび硬骨魚(両方とも冷血脊椎動物)は、原始体制を保持していない両生類および魚類の例であり、これらの卵母細胞は、生殖細胞質を含有することが公知であり、およびこれらのOct−4タンパク質は、ヒトOct−4タンパク質と比較した場合に高度に保存されていない。
【0072】
好ましくは、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞抽出物は、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む。
【0073】
核またはGVは、特定の転写因子Oct−4およびNanogを含有する。
【0074】
カエル sna 硬骨魚中の(in frog sna teleosts)生殖細胞中に局在される生殖細胞特異的RNA結合タンパク質をコードするRNA(Dazl、VASAおよびNanos)は細胞質中に均一に分布されており(Johnson et al.,2001,243:402−415;Dev,.Biol.;Bachvarova et al.,Dev.Dyn.231 ,871−880)、および生殖細胞質を有する生殖細胞中において多分化能または生殖細胞特化を維持することができるが、細胞を再プログラミングすることができない。
【0075】
本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、または初期胚の核または卵核胞、またはこの抽出物への分化細胞の暴露は、透過化分化細胞を該卵母細胞、卵子、卵巣細胞または初期胚細胞へ注入するか、または透過化分化細胞を該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の抽出物と共にインキュベートすることによって、達成され得る。
【0076】
好ましくは、透過化分化細胞は、卵母細胞、卵子、卵巣または胚、またはこの抽出物中の因子が、該細胞を通過しおよびこれを再プログラミングすることを可能にし、好ましくは、卵母細胞、卵子、卵巣または胚細胞由来のミトコンドリアまたは核は該透過化細胞を通過することができず、およびしたがって、遺伝物質の交換が存在しない。分化細胞の透過化は、当該分野において周知の任意の方法、例えば、Triton−X−100、ジギトニンまたはサポニンで該細胞を処理することによって達成され得る。
【0077】
好ましくは、本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、またはこの抽出物との接触後、再プログラム化細胞は、当該分野において周知の技術を使用して、顕微鏡用スライドまたは培養皿への遠心分離によって回収される。
【0078】
好ましくは、分化細胞核を再プログラミングするための本発明の任意の方法において、分化細胞核は、当業者に容易に明らかである周知の核移植技術を使用することによって、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚と接触され得る(上述の参考文献を参照のこと)。このような技術としては、除核された卵母細胞または卵子への分化核の注入;または除核された卵母細胞または卵子との分化細胞の融合が挙げられる。
【0079】
細胞ベースの仕事は、再プログラム化細胞が冷血脊椎動物細胞中に完全に含有されるという利点を有する。
【0080】
または、分化細胞株は、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の抽出物と共にインキュベートされ得る。
【0081】
抽出物の使用は、これが、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚中の因子が分化細胞または核に対して作用しおよびこの再プログラミングを生じさせるために、インタクトな卵母細胞、卵子または初期胚中へ分化細胞または核を注入するに必要な操作を回避するという利点を有する。抽出物を使用することはまた、前記物質を回収することを容易にし、および数千から数百万の細胞または核が一度に再プログラミングされることを可能にする。さらに、本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣および初期胚抽出物は、大量に作製され得、および利便性によって指示されるように使用のために保存され得る。
【0082】
好ましくは、全卵巣の抽出物が使用される。全卵巣抽出物を使用することによって、細胞成分を分離する必要性は存在せず、これは、ある種の冷血脊椎動物では不可能かもしれない。または、抽出物のための原料は、従来技術、例えば、0.2%コラゲナーゼ消化によって、卵巣支質から分離された卵母細胞であり得る。
【0083】
分化細胞は、分化の成熟状態を達成している細胞を指す。典型的に、分化細胞は、所定の細胞中において分化関連タンパク質をコードする遺伝子の発現を特徴とする。例えば、グリア細胞中におけるミエリンタンパク質の発現およびミエリン鞘の形成は、最終分化されたグリア細胞の典型的な例である。分化細胞は、さらに分化することができないか、または特定の細胞系列において特定の細胞へのみ分化することができる。
【0084】
好ましくは、本発明の方法において使用される分化細胞は、真核細胞である。好ましくは、分化細胞は、哺乳動物から得られる。最も好ましくは、細胞は、ヒトのものである。
【0085】
好ましくは、本発明の任意の方法において、分化細胞またはこの核は、約5℃から約30℃、より好ましくは約5℃から約21℃の温度で、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの細胞抽出物へ暴露される。より好ましくは、分化細胞または核は、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの抽出物が誘導される生物の体温と一致する温度で、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、またはこの抽出物と接触される。当業者が理解するように、冷血動物は、これら自体の体温は有さず、これらの体はこれらの環境の温度にある。より好ましくは、接触温度は、約18℃、または、冷血脊椎動物が通常生息している環境のものである。
【0086】
好ましくは、本発明に従う再プログラム化細胞核は、多分化能のマーカーである遺伝子を発現する。好ましくは、多分化能マーカー遺伝子としては、Oct−4およびnanogをコードする遺伝子が挙げられる。Oct−4遺伝子は、Oct−4プロモータの脱メチル化が生じる場合のマーカーとして使用され得る。
【0087】
本発明の第2態様において、本発明の第1態様の方法に従って製造された再プログラム化細胞が提供される。好ましくは、再プログラム化細胞は、胚性幹細胞様細胞である。
【0088】
本発明の第3態様において、本発明の第1態様の方法に従って製造された再プログラム化細胞核が提供される。
【0089】
好ましくは、再プログラム化細胞核は、引き続いて、標準的な公知の体細胞核移植(SCNT)技術において使用され得る。SCNT技術の効率は、本発明に従う分化細胞核を先ず再プログラミングすることによって増加される。
【0090】
本発明の第4態様において、以下を含む、再分化細胞を製造する方法が提供される
(a)本発明の第1態様に記載されるように、再プログラム化細胞を製造すること;および
(b)同一タイプ、または異なるタイプの分化細胞へ、これが誘導される該分化細胞へ、該再プログラム化細胞を再分化すること。
【0091】
好ましくは、再分化は、前駆体媒体を使用して行われる。一旦作製されると、再プログラム化分化細胞は、これらの分化を特定の細胞タイプへ誘発する特定の成長因子および他のシグナル伝達分子(前駆体媒体)の存在下において培養され得る。異なる前駆体媒体が、異なる細胞タイプを作製するために必要とされる。
【0092】
本発明の方法は、多能性再プログラム化細胞が、個体の分化細胞から得られることを可能にし、これらの再プログラム化細胞は、次いで、この患者を治療するために必要とされる細胞タイプへ分化され得る。
【0093】
本発明の第5態様において、本発明の第4態様の方法に従って製造された再分化細胞が提供される。
【0094】
本発明の第6態様において、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導される単離された細胞または細胞抽出物が提供され、該冷血脊椎動物は、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する。
【0095】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0096】
好ましくは、細胞および/または細胞抽出物は、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む。
【0097】
本発明の第7態様において、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物が提供される。
【0098】
さらに、本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核または本発明の第5態様に記載の再分化細胞、ならびに医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物が提供される。好適な薬学的担体、賦形剤、および希釈剤、ならびに製剤は、実施例に提供される。
【0099】
本発明の第8態様によれば、細胞の置換または再生を必要とする疾患を治療する方法であって、本発明の第6態様に記載の有効量の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または本発明の第2態様に記載の有効量の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核、または本発明の第5態様に記載の再分化細胞を、動物へ投与することを含む、方法が提供される。
【0100】
本発明の第9態様によれば、医薬としての使用のための、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物および/または本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核および/または本発明の第5態様に記載の再分化細胞が提供される。
【0101】
本発明の第10態様によれば、細胞の置換または再生を必要とする疾患の治療のための医薬の製造における、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および/または本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞、および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核、および/または本発明の第5態様に記載の再分化細胞の使用が提供される。
【0102】
異なる細胞/組織タイプが、異なる病状において、引き続いての使用のために必要とされる。
【0103】
例えば、造血幹細胞は、白血病に苦しむ個人を治療するために使用され得る。神経前駆細胞は、アルツハイマー病またはパーキンソン病等の神経変性障害に苦しむ個人を治療するために使用され得る。皮膚細胞は、個人が熱傷または傷を受けた場合に、移植片のために使用され得る。
【0104】
移植のための器官および組織の作製のための幹細胞の使用は、数例のみを挙げると、糖尿病、肝疾患、心疾患および自己免疫疾患についての有望な代替療法を提供する。移植に関連する主要な課題は、提供者の不足、および移植された組織と受容者の免疫系との可能性がある不適合性である。
【0105】
即ち、受容者としての移植された組織の免疫拒絶は、移植片を異物として見なす。本発明の方法を使用して、胚性幹細胞様細が、移植の必要がある患者から誘導され得、次いで、同一患者への移植のための組織または器官を作製するために使用され得る。これは、組織不適合性および免疫拒絶の問題を排除する。したがって、特にこれらが患者のこれらと遺伝学的に同一である場合、多能性胚性幹細胞様細胞を作製できることにおいて、大きな治療的可能性が存在する。
【0106】
したがって、本発明の第8、9および10態様において、疾患は、神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中)、皮膚交代(skin alternation)、熱傷、心疾患、糖尿病、変形性関節症および関節リウマチからなる群から選択される。
【0107】
好ましくは、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中からなる群から選択される。
【0108】
本発明の第11態様において、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導された細胞または細胞抽出物と、該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、または抽出物を使用するための指示書とを含む、分化細胞を再プログラミングするため、または分化細胞の核を再プログラミングするためのキットが提供され、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する。
【0109】
好ましくは、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞または細胞抽出物が誘導される細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0110】
場合により、キットは、さらに、再プログラミングされる1以上の分化細胞を含む。さらに場合により、キットは、再プログラム化細胞の再分化のさらなる工程を行うための前駆体媒体を含み得る。
【0111】
本発明の第12態様において、クローン化される細胞を、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物へ暴露することを含む、細胞クローニングを増強する方法が提供される。本発明のこの態様において、細胞および/または細胞抽出物は、クローン化される細胞が暴露される「プレ−ディップ(pre−dip)」の形態として使用される。本発明の細胞および/または細胞抽出物は、細胞をクローン化するために必要とされる機会および実験仕事を改善するために、より多能性状態への、クローン化される細胞の先祖返りを助け得る。
【0112】
好ましい実施形態
本発明の特定の好ましい態様を具体化する実施例を、ここで、下記の図面を参照しながら記載する。
【実施例1】
【0113】
分化哺乳動物細胞を再プログラムするアホロートル由来の卵母細胞の能力
分化哺乳動物細胞を再プログラミングするアホロートル由来の卵母細胞の能力を実証するために、マウス胎仔線維芽細胞を、アフリカツメガエルのみを使用したByrne et al(2003)Curr Biol 15:13(14)1206−13のこれと類似の方法を使用して、アフリカツメガエル(PFFX)およびアホロートル(PFFA)卵母細胞のGV(卵核胞)へ直接注入した。
【0114】
培養されたマウス胎仔線維芽細胞を、Alberio et al(2005)Exp Cell Res.307(l):131−41の方法に従って、中性洗剤(ジギトニン)での処理によって透過化した。透過化されると、GV由来の分子は、分化細胞またはPFF(透過化された胎仔線維芽細胞)中へ分散し得る。1つのGV当たり約50から200のPFF細胞を注入し、および注入された卵母細胞を21℃で一晩インキュベートした。この時、GVを卵母細胞から解剖し、およびPFFを含有したものをさらに考慮した。RNAをGVから抽出し、およびcDNAへ逆転写し、およびPCRを使用してPFFからの多分化能遺伝子の発現を検出した。より詳細には、PCRを使用して、nanogおよびOct−4をコードする遺伝子の発現を測定した。β−アクチンレベルをコントロールとして測定した。
【0115】
上述の方法は、これが哺乳動物の分化細胞によって発現されるRNAを濃縮しおよび哺乳動物の転写物を検出することにおいてより高い感度へと導く点で、公知の方法に比して利点を有する。目的は、非常に微量のトータルRNAである、哺乳動物のRNAを検出することであるので、GVの簡易な単離は、大量の精製工程を提供し、およびしたがって感度を改善する。
【0116】
結果
RT−PCRを行って、PFF細胞中においてOct−4およびnanogをコードする多分化能マーカー遺伝子の発現を検出した。β−アクチンの発現をコントロールとして研究し、β−アクチンは常に全ての細胞において発現され、およびアッセイ手順の効率を確実にするためのポジティブコントロールとして役立つ。図1は、アガロースゲル上で実行した場合のRT−PCR反応の結果を示す。当業者は、白色バンドの存在がcDNAの存在を示すことに気付くように、該バンドの強度は、cDNA(遺伝子特異的産物)の量を示す。
【0117】
図1において使用される略語は、以下の通りである
ES − マウス胚性幹細胞(Chemicon製)
PFF − マウス透過化胎仔線維芽細胞 − Alberio et al(2005)Exp Cell Res.307(1):131−41の方法に従って作製
PFFA − アホロートル卵母細胞GV中へ注入されたPFF
PFFX − アフリカツメガエル卵母細胞GV中へ注入されたPFF。
【0118】
図1に示され得るように、研究した全てのサンプルは、β−アクチンについての遺伝子を強力に発現し、これは、各処理からの細胞由来のRNAはRT−PCRによって検出されること、および構成的な高レベル遺伝子発現が処置に関係なく細胞から検出可能であることを実証している。nanogをコードするnanog遺伝子およびOct−4をコードする遺伝子が、ES細胞中で発現され、これは、これらの細胞が多能性であるためと予想される。Oct−4およびnanog(多分化能のマーカー)は、正常な未処理PFF細胞中においては発現されず、何故ならば、これらの細胞は、多能性ではない分化線維芽細胞であるためである。PFF細胞をアホロートル卵母細胞のGV中で一晩インキュベートすると(PPFA)、Oct−4およびnanogの発現が検出された。PFFF細胞を一晩アフリカツメガエル 卵母細胞のGV中でインキュベートすると(PFFX)、Oct−4またはnanogの発現は検出され得なかった。アフリカツメガエル 卵母細胞のGV中のPFF細胞のインキュベーションの2日後、低レベルのOct−4発現が検出されたが、依然としてnanog発現は検出されなかった(データは示さず)。2日後に検出されたOct−4発現は、RT−PCRアッセイの検出能の膨大な増加によってのみ、即ち、複製サイクルを30ラウンドから60ラウンドへ増加させることによってのみ、観察された。PCRの各追加のラウンドは、効率的に感度の倍増であり、したがって、60ラウンドへの増加は、2の30乗の感度増加を示す。増加された感度条件下でさえ、nanog発現は検出され得なかった。
【0119】
結論を言えば、アホロートル卵母細胞は、透過化哺乳動物分化細胞との接触で、18時間のインキュベーション内に、Oct−4およびnanogをコードする多分化能マーカー遺伝子の力強い発現を誘発する。
【0120】
このことは、数日後にOct−4の低レベルの発現を誘発し得るが、nanogの発現は検出され得ないアフリカツメガエル卵母細胞と対照的である。したがって、アホロートル卵母細胞は、アフリカツメガエル卵母細胞よりも、哺乳動物分化細胞中における多分化能マーカー遺伝子の発現を再プログラミングする点で遥かにより有効である。したがって、アホロートル卵母細胞は、分化細胞を胚性幹細胞様細胞へ再プログラミングする点ではるかにより有効である。
【0121】
この実施例および引き続いての実施例において、遺伝子の発現は、該遺伝子によってコードされるRNAをアッセイすることによって測定される。
【実施例2】
【0122】
アフリカツメガエルと比較してのアホロートルおよびチョウザメ
材料および方法
卵子、卵母細胞および卵巣抽出物の作製
アフリカツメガエル卵母細胞および卵子抽出物を、Hutchison et al.,(1988)Development,103,553−566に従って作製した。未受精アフリカツメガエル卵子を、成熟した雌から回収し、および5分間、寒天質除去(dejellying)溶液(20mM TrisHCl pH 8.5、1mM DTTおよび110mM NaCl)中でインキュベートした。寒天質除去後、卵子を0.9%NaCl生理食塩水中で3回、およびプロテアーゼ阻害剤(3μg ml−1ロイペプチン、1μg ml−1ペプスタチンおよび1μg ml−1アプロチニン)を含有する氷冷却抽出緩衝液(20mM Hepes、pH7.5、100mM KCl、5mM MgCl2、2mM β−メルカプトエタノール)中で2回リンスした。卵子を10mlの遠心分離チューブ中へ詰め、および過剰の緩衝液を除去し、その後、4℃で10分間10,000gで遠心分離した。細胞質層を除去し、50μg ml−1サイトカラシンBを補充し、その後、4℃で30分間100,000gで遠心分離した。除去された(cleared)細胞質に10%グリセロールを補充し、および100から200μlアリコート中で液体窒素中に急凍した(snap frozen)。OR2媒体(82.5mM NaCl、2.5mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM NaHCO3、5mM Hepes、pH7.8)中の1mg/mlコラゲナーゼを使用して25℃で2時間卵胞細胞を消化することによって、卵母細胞抽出物を成熟した卵巣から作成した。第4−6段階の卵母細胞をサイズに基づいて選択し、抽出緩衝液中で洗浄し、および卵子抽出物について作製した。
【0123】
アホロートルおよびアフリカツメガエル卵巣抽出物のために、前記卵巣を氷冷抽出緩衝液中で洗浄し、および氷上に5から10の打撃(strokes)を適用してDounceホモジナイザーを使用することによって溶解させた。溶解物を遠心分離し、およびアフリカツメガエル卵子抽出物について記載されるように凍結保存した。
【0124】
チョウザメ(スターレットスタジョーン;学名:Acipenser ruthenus)抽出物を以下のように作製した:卵巣抽出物について、卵巣を氷冷抽出緩衝液中で洗浄し(実施例1におけるカエル卵子抽出物についての通り)、および氷上に20の打撃を適用してDounceホモジナイザーを使用することによって溶解させた。溶解物を遠心分離し、およびアフリカツメガエル卵子抽出物について記載されるように凍結保存した。
【0125】
抽出物中での細胞培養、細胞透過化およびインキュベーション
線維芽細胞を35−45日齢ウシ胎仔または12.5−13.5日齢マウスから単離し、および5%CO2中、ウシについては39℃、マウスおよびヒトについては37℃で、培養培地(CM:10%FBSが補充されたグルタミン、0.1mM β−メルカプトエタノール、2mM 非必須アミノ酸、100IU ml−1ペニシリンおよび100μg ml−1 ストレプトマイシンを含有するDMEM)中で最大5継代の間培養した。線維芽細胞を第13.5日マウスから単離下(マウス胎仔線維芽細胞、MEF)。MEFを5%O2およびCO2中37℃で培養し、および3または4継代で使用した。
【0126】
細胞を80%コンフルエンスまで増殖させ、および実験のために使用した。トリプシン処理後、細胞を透過化緩衝液(PB:20mM Hepes、pH7.3、110mM酢酸カリウム、5mM酢酸ナトリウム、2mM酢酸マグネシウム、1mM EGTA、2mM DTT、およびプロテアーゼ阻害剤)中で洗浄し、および引き続いて氷上で1分15秒間20−30μg ml−1ジギトニン1ml中でインキュベートした(Adam et al(1992)Methods Enzymol.219,97−110)。
【0127】
透過化反応を10mlのPBを添加することによって停止し、続いて4℃で10分間700gにて遠心分離した。これらの条件下で、原形質膜透過化率は95から100%であった。
【0128】
透過化細胞を、エネルギー再生系(ERS:150μg ml−1クレアチンホスホキナーゼ、60mM ホスホクレアチンが補充された卵母細胞/卵子/卵巣抽出物(1,000細胞μl−1抽出物)へ添加した。透過化MEFを、5,000細胞/μlで、20μlの卵母細胞抽出物(アホロートル、チョウザメまたはアフリカツメガエルのいずれか)へ添加し、および15℃で3時間、6時間または一晩インキュベートした。コントロール細胞を20μlのPBと共にインキュベートした。
【0129】
インキュベーション後、0.5mLのPBを添加して細胞をリンスし、次いでこれを5分間3,500Gでペレット化した。上澄みを除去し、およびペレットを必要になるまで−80℃で凍結した。
【0130】
逆転写(RT)PCR反応について
MEF細胞ペレットを収穫し、および−80℃で保存した。トータルRNAを、RNAeasyシステム(Qiagen)を使用して(約100,000細胞から)抽出し、およびDNAse処理し(Ambion)、その後、Superscript IIIシステム(Invitrogen)を使用して逆転写した。2ngのRT反応物をRT−PCRのために使用した。
【0131】
使用したプライマーおよび条件は以下の通りであるB−アクチン:ttctttgcagctccttcgtt、cttttcacggttggccttag(402bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、32サイクル)。Nanog:atgaagtgcaagcggcagaaa、cctggtggagtcacagagtagttc(464bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、35サイクル)。Oct−3/4:gtttgccaagctgctgaagc、caccagggtctccgatttgc(238bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、38サイクル)。RediTaqシステムをPCR(Sigma)のために使用した。マウスES細胞cDNAをポジティブコントロールとして、およびRT無し(no RT)をネガティブコントロールとして使用した。
【0132】
反応産物を、エチジウムブロマイドで染色した標準的な1.2%アガロースゲル上で泳動し、およびUV光下で可視化しおよび撮影した(図11)。ゲル中のレーンは、3時間、6時間、または一晩(18時間)の、アホロートル抽出物(AX);アフリカツメガエル抽出物(XL);またはチョウザメ抽出物(ST)中の細胞、または抽出物で処理されていない細胞(−)から抽出されたRNAに対応する。
【0133】
左のレーンは、分子量についてのマーカーとして機能する、Invitrogen製の100bp DNAラダーを示す。上部のゲルは、アホロートルまたはチョウザメ抽出物で処理した細胞に対応するレーン中に存在するが、アフリカツメガエル抽出物中で処理された細胞、または抽出物で処理されなかった細胞に対応するレーン中には存在しない、nanogプライマーでのPCR増殖由来の予想される464bpDNAを示す。
【0134】
下部のレーンは、ポジティブコントロールとしてのマウスβ−アクチンcDNAの増殖を示す。予想される402bpバンドは予期されるように全てのレーン中にあり、何故ならば、この遺伝子は再プログラミングによって誘発されるのではなく、これは常に全てのマウス細胞中に存在するためであることに注意のこと。これは調節遺伝子でありおよび細胞中において通常低レベルで発現されるために予期されるように、より多くのサイクルのPCRがnanogを検出するために必要である。構造遺伝子について予期されるように、β−アクチンは豊富に発現される。
【0135】
これらの実験において、Oct−4発現は活性化されない。Oct−4プロモータはメチル化によって負に調節されるので、これは予期される。したがって、活性化は、転写活性化の前兆としての該プロモータの脱メチル化を必要とし、およびこれらの実験において使用された短時間のインキュベーション時間は該プロモータを完全まで脱メチル化するに十分ではないことが予期される。
【0136】
これと一致して、実施例1および5(注入実験)は、nanogは、アホロートル 卵母細胞のGV中への注入後に活性化するのが比較的容易であることを示している。これは活性化のために1日必要とする。Oct−4転写は約5日必要とし、Oct−4プロモータを脱メチル化するために必要とされる時間を恐らく反映している。Nanogは、前もっての脱メチル化を必要としないが、アフリカツメガエル卵母細胞中へ注入された細胞中において活性化されない。
【実施例3】
【0137】
エピジェネティックマーカーを使用する再プログラミングの同定
より多能性への分化細胞の再プログラミングを探す別の方法は、細胞のエピジェネティックプロフィールを見ることである。エピジェネティックマークは、分化細胞のタンパク質(クロマチン)およびDNAの複合体で容易に見られる。多くの場合において、エピジェネティックマークは、細胞中のある遺伝子の転写を永久的に不活性化する。エピジェネティックマークは、しばしば、ヘテロクロマチンとして公知の構造へ堅く圧縮されているDNAの広範囲の領域中にクラスター化されている。多能性状態への分化細胞の再プログラミングを活性化することは、これらの抑制性エピジェネティックマークの一部または全ての逆転を必要とし、このようにして大抵のDNAを活性化へアクセス可能にする。この点において、胚性幹細胞等の多能性細胞は、典型的な分化細胞よりも遥かに少ないヘテロクロマチンおよび遥かに少ないエピジェネティックマークを含有する。恐らく、これは、多分化能に必須と思われる特性である、活性化のための多能性細胞中の全てまたは大抵の遺伝子の明白なアクセス可能性を反映している。
【0138】
2つのエピジェネティックマークが、典型的に、不活性遺伝子と関連している。大抵の細胞のDNAは、CpG島中のシトシン残基へ共有結合されているメチル基(CH3)を含有する。メチル化DNA(CH3−DNA)は、ヘテロクロマチン中において非常に顕著であり、ここで、これは、免疫化学実験においてCH3−DNA特異的抗体により明るく染色している核スポットとして検出され得る。CH3−DNAに加えて、第2のエピジェネティックマークは、クロマチンと呼ばれるより秩序的な構造を核DNAへ与えるためにDNAへ結合されている小さな高電荷タンパク質である、ヒストンの特定の残基へのCH3基の付加である。一般に、不活性遺伝子は、ヒストンH3のリジン残基9(K9)、H3K9へ付加されたCH3基の存在によって特徴付けられる。この場合、メチル化ヒストン(CH3−ヒストン)残基はDNAへ結合され、およびこの転写活性化を阻害する。多能性状態への細胞の遺伝子発現を再プログラミングするために、分化細胞核中のCH3−DNAおよびCH3−ヒストンのレベルを減少させることが必要である。この点で、胚性幹細胞は、低レベルのCH3−DNAおよびCH3−ヒストン残基を含有する。
【0139】
図3は、マウス胎仔線維芽細胞(PFF)のクロマチン内に存在するエピジェネティックマークを除去する、アホロートルの卵巣から作製された抽出物の能力を示す。より詳細には、図3は、DNAメチル化を除去する前記抽出物の能力を示す。コントロール未処理細胞(A)および3時間アホロートル卵巣由来の抽出物(AxOvEx)中でインキュベートされた細胞(B)を、緑色の蛍光を発するFITC−抗5−MeC抗体を添加することによりCH3−DNAの存在について免疫組織化学によって分析した。しかし、黒白図において、これは、画像A、B、EおよびFにおける明るいスポットして見られ得る。コントロール細胞(C)および未処理細胞(D)もまた、抽出物中の細胞の透過性を評価するためにヨウ化プロピジウムで処理した。ヨウ化プロピジウムは赤色に染色し、しかし、黒白画像において、これは、CおよびDにおいて細胞を実質的に塗り潰す暗い灰色として見られる。図EおよびFは、ヨウ化プロピジウムおよびFITC−抗5−MeC抗体の両方で染色された細胞を示す。3時間抽出物中でインキュベートされたPFFは、コントロール細胞と比較して遥かに減少されたレベルのCH3−DNA染色を含む。データは、アホロートル 卵巣由来の抽出物が、転写的に抑制されたDNAを示す主なエピジェネティックマークの1つを排除する、PFFのDNAを脱メチル化する強い能力を有していることを示している。
【0140】
図4は、アホロートル卵巣抽出物(AxOvEx)中のPFFのインキュベーションがH3K9染色を排除し、したがって、エピジェネティックマークの除去を示すことを示している。PFFは、3時間、アホロートル 卵巣抽出物中でインキュベートした(処理細胞)。処理細胞および未処理コントロールPFFを、転写抑制と関連するヒストンの主な修飾を同定する、H3K9染色の存在について免疫組織化学によって分析した。A(未処理)およびB(処理)細胞中において、緑色の蛍光を発するFITC−抗H3K9抗体と共に細胞をインキュベートした。黒白図において、この染色は明るいスポットとして見られ得る。DNAの位置を明らかにするために、両方のグループの細胞もまたDNA特異的色素DAPIで処理した。この染色は青色の蛍光を発し、しかし、黒白画像においては、これは暗い灰色として見られ得る;図4中のCおよびDを参照のこと。H3K9染色およびDAPI染色からの蛍光画像を、各サンプルについて統合した。データは、アホロートル卵巣由来の抽出物中でのPFFの処理は、PFFのクロマチンからH3K9染色を実質的に除去することを示しており、より多能性の状態への再プログラミングと一致している。
【実施例4】
【0141】
原始動物由来のNanogのクローニング
アホロートルNanog全長cDNAを以下のように単離した:アホロートル卵巣cDNAを、以下を使用してテンプレートとして使用した:
【0142】
【化1】
(それぞれ、ホメオドメインへのおよびホメオドメイン内のアミノ酸配列について)。
【0143】
PCR(56℃アニーリング、1分10秒伸長、35サイクル)によって、約260bpフラグメントを作製した。
【0144】
このフラグメントをプラスミドベクターへクローン化し、および配列決定した。RACE−レディー(RACE−ready)アホロートル卵巣cDNAプライマーを使用して、プライマーを5’および3’RACEについて設計した。
【0145】
Smart RACEキット(Clontech)を使用し、およびプライマーおよびcDNAを作製し、およびRACE反応をキット指示書に従って行った。対応のキットプライマーと共に、使用したRACEプライマーは以下であった:
【0146】
【化2】
5’RACEは約360bpフラグメントを作製し、および3’RACEは、約1150bpおよび約750bpの2つのフラグメントを作製し、アホロートルNanog cDNAの選択的なポリアデニル化を反映している。これらの産物をTAクローン化し、および配列決定した。3つの重複する産物の配列コンティグを構築し、この最長で約1.7kbの全長アホロートルNanog cDNA配列を与える。アホロートルnanogアミノ酸配列を、種々の哺乳動物由来のnanog配列と比較して、図9に与える(nanogは、以前に非哺乳動物種から単離されていない)。
【実施例5】
【0147】
アホロートル卵母細胞によるヒト成熟細胞の再プログラミング
透過化BJヒト成人原発性線維芽細胞(ATCCセルバンクコレクションhttp://www.lgcpromochem−atcc.com/(CRL−2522)から)を、実施例1におけるマウス実験について記載されるように、アホロートル卵母細胞の卵核胞(核)へ注入し、および注入された卵母細胞を18℃で5日間インキュベートした。
【0148】
卵核胞をグループ中の前記卵母細胞から解剖し、およびヒト細胞を含有するものを分析のために凍結した(図10A)。
【0149】
市販の抽出キット(RNAeasyキット)を使用して、ゲノムDNA汚染を回避するために、トータルRNAを抽出しおよびDNAse I処理した。各サンプルから抽出されたRNAを逆転写し、相補DNA(cDNA)を作製した。
【0150】
下記の遺伝子について設計された特異的なプライマーを使用して、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅のために前記cDNAを使用した:
【0151】
【化3】
【0152】
図10Bに示されるように、Nanog発現が、48時間後、アホロートル卵母細胞中でインキュベートされた細胞中で検出される。対照的に、Nanog発現は、アフリカツメガエル注入卵母細胞中において検出されない。Oct−4発現は、5日後、アホロートル注入卵母細胞中において検出される。
【0153】
したがって、成人ヒト細胞(分化細胞)は、これらがアホロートル卵母細胞の核中へ注入された後、Oct−4およびnanog遺伝子を発現するように再プログラミングされた。アフリカツメガエル卵母細胞中への注入は、nanogの活性化を生じさせない。
【0154】
これらの結果は重要であり、何故ならば、これらは、ヒトおよびマウス細胞の両方が、本発明の特性(例えば、原始脊椎動物体制)を有する冷血脊椎動物由来の細胞/細胞抽出物によって再プログラミングされ得ること、ならびに成体細胞が再プログラミングされ得ることを示しているためである。分化成体細胞は、これらの発達が依然として進行中でありおよびクロマチン上に与えられた永久的なエピジェネティックマークを有していないかもしれない胎児細胞よりも再プログラミングするのがより困難である。
【0155】
室温ではなく18度で注入卵母細胞をインキュベートすることは、注入卵母細胞の増強された生存性における利点を示し、これは少なくとも5日間培養され得、このことはOct−4の活性化を誘発するに十分な時間を可能にする。また、哺乳動物ゲノムからの転写は温度依存性であるので(Alberioら、2005)、この温度での転写の抑制は、再プログラミングをさらに助けるかもしれない。
【実施例6】
【0156】
nanog結合部位を含有するレポーター遺伝子の活性化
nanogが存在することを示すために、nanog結合部位を含むレポーター遺伝子(例えば、GATA−4のプロモータ)をnanogが活性化し得ることを示すことが可能である。図12において、レポーター遺伝子を活性化するアホロートルnanog(Axnanog)の能力の実験的試験の結果が示される。GATA−4プロモータを、蛍ルシフェラーゼ(暗闇で蛍を輝かせるタンパク質)をコードするレポーターへ融合する。このタンパク質は、照度計と呼ばれる機械で測定され得る光を発する。アウトプットが定量され得る。
【0157】
この実験において、エンプティーDNA(empty DNA)を、ヒトnanogおよびAxnanogの発現を駆動する2つのクローンと比較した。
【0158】
図12についての方法
NIH3T3細胞を24ウェルプレートへ播種し、およびLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を使用して、0.25ug/ウェル GATA−4レポーター、0.05ug/ウェル pTK−RL(Promega)、および空ベクター(cDNA)、ヒトNanog、またはアホロートルnanogタグ無し(untagged)(CMV)もしくはRFPタグ有り(mR)のいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間の細胞を収穫し、およびDualルシフェラーゼアッセイ(Promega)について処理した。RLU(相対的ルシフェラーゼ単位)を前記空ベクターコントロールへ比例する(ratioed)。バーは標準偏差を示す;n=3。
【実施例7】
【0159】
アホロートル中のnanogの単離の確認
Axnanogの発現プロフィールを調べ、およびマウスnanog遺伝子のプロフィールと比較するために比較した。Axnanogは、アホロートル発達の間に多分化能においてこれが重要な役割を果たすかのように発現されると予想されるまさにこのときに、発現されることが、判った。
【0160】
マウス胚において、nanog遺伝子は、内細胞塊および初期胚盤胞の細胞中において初期発達の間に非常に短期間発現される。これは、この期間に多分化能の維持において必須の役割を果たすことが知られている。Axnanogが同じ期間の間に発現されるかどうかを試験するために、我々は、初期胚におけるこの発現を分析した。低レベルの母性Axnanog RNAが初期および後期卵割段階(EC;LC)の間に検出可能であり、次いで、強い発現が第9段階で開始し、アホロートル胚の接合子ゲノム(zygotic genome)からの転写が開始する際、中期胞胚を特徴とする。発現は初期原腸胚(第10段階)においてピークに達し、および後期原腸胚(第12段階)において低下する。発現は、より後の段階において検出不可能である。したがって、Axnanogは、多能性細胞の存在と一致する発達の時期の間に発現され、および発現は、原腸胚段階後に消滅され、このとき、全細胞が体細胞系列への献身(commitment)を受けたと考えられ、および多能性であると予想されない。
【0161】
初期胚中のAxNanog発現
トリアゾールを使用し、続いてDNAse Iで処理する標準方法を使用して、図2に示される各段階(第8、9、10、12、16、20、25、30、35および40発達段階)で、5つのアホロートル胚からRNAを抽出した(Bordzilovskaya et al;1989.Developmental stage series of axolotl embryos.In Developmental Biology of the Axolotl.(J.B.ArmstrongおよびG.M.Malacinski編),pp.210−219.New York:Oxford University Press.)。
【0162】
Superscript(Invitrogen)を使用して前記RNAを逆転写した。各段階由来の0.5胚当量のcDNAを、Axnanog(Fl:GTTCCAGAACCGAAGGATGA;Rl:CGAAGGGTACTGCAGAGGAG 58C、45秒、72度 1分)またはアホロートルオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC;Fl:TGCGTTGGTTTAAAGCTCTC;Rl:ACATGGAAGCTCACACCAAT 56C 45秒;72C 1分)についてのプライマーと共にPCRにおいて使用し、構成的に発現される遺伝子を、cDNA完全性についてのポジティブコントロールとして使用した。PCRは35サイクル(Axnanog)または30サイクル(ODC)であった。
【0163】
反応産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.2%アガロースゲル上で分離し、次いでUV光下で撮影した(図2)。
【実施例8】
【0164】
DNA脱メチル化確認
グローバルDNA脱メチル化を、以前に記載されたプロトコル(Habib et al,(1999).Exp.Cell Res.249,46−53.)を僅かに変更して使用して、フローサイトメトリーによって確認した。
【0165】
懸濁液中の細胞を、連続的な低速(300g)ペレット化および穏やかな再懸濁工程へ供し(0.1%tween 20および1%ウシ血清アルブミン(BSA)が補充されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄)、次いで、20分間−20℃で冷凍された9volのメタノール/PBS(88%メタノール/12%PBS vol/vol)で固定した。室温にてPBST−BSAで2回洗浄後、細胞を37℃で30分間2N HClで、次いで5分間Tris HCL緩衝液(pH8.8)で連続的に処理した。次いで、細胞を、5%BSAを補充したPBS−T製のブロッキング溶液で37℃にて1時間処理し、続いて一晩4℃で抗−5−MeC抗体(where)と共にインキュベートした。
【0166】
次いで、細胞をPBS−Tで3回連続的にリンスし、およびPBST−BSA中に1対200で希釈されたフルオレセインイソチオシアネート(Dako,Trappes,フランス)へ結合されたウサギ抗−マウス免疫グロブリンと共に、室温で1時間インキュベートした。最終的に、サンプルをPBSで3回洗浄し、およびフローサイトメトリー前の30分間ヨウ化プロピジウム(PI)(PBS中50mg/ml)で染色した。分析をEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter)によって行った。
【0167】
フローサイトメトリーによってH3K9およびHPlアルファの変化を検出するために、類似のプロトコルを使用した。簡単に言えば、1%BSAおよび0.1%Tween 20(PBST−BSA)を補充したpH7.4 PBSで細胞を2回洗浄し、次いで、20分間−20℃で冷凍された9volのメタノール/PBS(88%メタノール/12%PBS vol/vol)で固定した。
【0168】
次いで、5%BSAが補充されたPBS−T製のブロッキング溶液で37℃にて細胞を1時間処理し、続いて一晩4℃で抗−トリメチル化H3K9または抗−HP1アルファ抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞をPBS−Tで3回連続的にリンスし、およびそれぞれPBST−BSA中に1対200で希釈されたフルオレセインイソチオシアネート(Dako,Trappes,フランス)へ結合されたDunkey抗ウサギ(1:100,Juckson USA)またはヤギ抗−マウス免疫グロブリンと共に、室温で1時間インキュベートした。
【0169】
最終的に、サンプルをPBSで3回洗浄し、およびフローサイトメトリー前の30分間ヨウ化プロピジウム(PI)(PBS中50mg/ml)で染色した。分析をEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter)によって行った。フローサイトメトリーの結果を図16および17中に与える。
【0170】
議論
前記細胞を、CH3−DNa抗体およびヒストンH3K9抗体での蛍光染色に基づいて選別し、および次いで、細胞の何パーセントが完全制御レベの染色を有するか、および何パーセントが経時で減少された蛍光を示すかについて検査した。
【0171】
図が示すように、両方の実験において、細胞中の蛍光の全体レベルが減少される。これは、前の結果を確認し、およびメチル化DNAおよびヒストンH3K9の低下(loss)が活性化されていることを実証する。
【実施例9】
【0172】
ヒツジクローニングを増強することにおけるアホロートル卵母細胞抽出物の使用
本発明の細胞および細胞抽出物は、核移植(NT)前にアホロートル 卵母細胞抽出物と共に細胞をインキュベートすることによって、ヒツジクローニング等のクローニング法を増強することにおいて使用され得る。
【0173】
Alberioら(2005)によってウシ細胞について記載されるように、ヒツジ線維芽細胞を透過化した。細胞を3時間18℃でアホロートル卵母細胞抽出物中でインキュベートし、次いでNTのための核ドナーとして使用した。透過化細胞は、膨張しおよび丸い形状で顕微鏡下で通常容易に認識され、およびしたがってNTのために選択した。核移植法を、Lee et al.,(2006)Biol Reprod.74:691−8によって記載されるのと同一の方法で行った。培養中で7日後、胚盤胞への発達を顕微鏡下で評価した。5つのクローン化胚が7日後に胚盤胞へ発達し、アホロートル抽出物中でインキュベートされた細胞はNTについての生存可能なドナーであることを示している。
【0174】
この実験は、アホロートル 卵母細胞抽出物への哺乳動物体細胞の暴露は、哺乳動物のクローン化胚の着床前発達について有害ではないことを示した。
【0175】
これらの胚は、本発明の抽出物へ暴露された細胞で作製されたクローン化胚のターム(term)への発達において改善を示すことが予想される。胚の妊娠および発育は、継続中である。
【実施例10】
【0176】
再プログラミングのためのキット
本発明の細胞および細胞抽出物は、本発明の方法における使用のためにキットの形態で提供され得る。これらのキットは、好ましくは、細胞/細胞抽出物試薬、および以下の少なくとも1つを含有する。
【0177】
使用のための指示書;再プログラム化細胞の再分化のための前駆体媒体;再プログラミングを行うための使い捨て備品、例えば、マルチウェルプレート、ディスペンサー、例えば、予め充填されたピペット;再プログラミングされる分化細胞、ならびに透過化緩衝液。
【0178】
キットは、再分化細胞タイプに従ってカスタマイズされ得、これは、前駆体媒体および指示書が細胞タイプおよび最終用途に従って変化し得る点で必要とされる。
【実施例11】
【0179】
薬学的製剤および投与
本発明のさらなる態様は、薬学的にまたは獣医学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体と共に本発明の第1態様に従う化合物を含む薬学的製剤を提供する。
【0180】
好ましくは、製剤は、1日用量もしくは単位、1日サブ用量またはこの適切なフラクションを含有する単位投薬量の活性成分である。
【0181】
本発明の化合物は、通常、経口または任意の非経口経路によって、活性成分を含む約薬学的製剤の形態で、場合により非毒性有機物、または無機物、酸、または塩基、付加塩の形態で、医薬的に許容される投薬形態で、投与される。治療される障害および患者、ならびに投与の経路に依存して、組成物は種々の用量で投与され得る。
【0182】
ヒト療法において、本発明の化合物は、単独で投与され得るが、通常、意図される投与経路および標準的な薬学的実務に関して選択される好適な薬学的賦形剤 希釈剤または担体共に投与される。
【0183】
例えば、本発明の化合物は、即時、遅延または制御放出適用のための、矯味矯臭剤または着色剤を含有し得る、錠剤、カプセル剤、小卵(ovules)、エキシリル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経口、経頬または舌下投与され得る。本発明の化合物または、海綿体注射(intracavernosal injection)によって投与され得る。
【0184】
このような錠剤は、賦形剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウムおよびグリシン、崩壊剤、例えば、スターチ(好ましくは、コーン、ジャガイモまたはタピオカスターチ)、ナトリウムスターチグリコレート(sodium starch glycollate)、クロスカルメロースナトリウムおよび特定のコンプレックスシリケート、ならびに造粒結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ−プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアを含有し得る。さらに、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクが含まれ得る。
【0185】
類似タイプの固体組成物はまた、ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用され得る。この点で好ましい賦形剤としては、ラクトース、スターチ、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエキシリル剤について、本発明の化合物は、種々の甘味剤または矯味矯臭剤、着色物質または色素、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、ポリエチレングリコールおよびグリセリン等の希釈剤、ならびにこれらの組み合わせと共に組合され得る。
【0186】
本発明の化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内(intraventricularly)、胸骨内(intrasternally)、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与され得、またはこれらは、注入技術によって投与され得る。これらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするに十分な塩またはグルコースを含有し得る、滅菌水溶液の形態で最も使用される。水溶液は、場合により、適切に(好ましくは、3から9のpHへ)緩衝化されるべきである。滅菌条件下で好適な非経口製剤の作製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0187】
非経口投与のために好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る、水性または非水性滅菌注射溶液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアル中に与えられ得、および使用の直前に滅菌液体担体(例えば、注射用水)を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存され得る。即席の注射溶液および懸濁液は、前述した種類の滅菌粉剤、顆粒剤および錠剤から作製され得る。
【0188】
ヒト患者への経口または非経口投与のために、本発明の化合物の1日投薬レベルは、通常、1mg/kgから30mg/kgである。したがって、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、場合により、単独でまたは一度に2回以上で投与のための1用量の活性化合物を含有し得る。いずれにしても、医師は、個々の患者に最も好適である実際の投薬量を決定し、およびこれは特定の患者の年齢、体重および応答で変化する。上記の投薬量は平均的な場合の例である。当然ながら、より高いまたはより低い投薬量範囲がふさわしい(merited)個々の場合が存在し得、およびこのようなものは本発明の範囲内である。
【0189】
本発明の化合物はまた、鼻腔内にまたは吸入によって投与され得、および噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A3または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーまたは乾燥粉末の形態で好都合なことに送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するバルブを提供することによって測定され得る。加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば、滑沢剤(例えば、ソルビタントリオレアート)をさらに含有し得る、エタノールおよび溶媒としての噴射剤の混合物を使用して、活性化合物の溶液または懸濁液を含有し得る。呼吸器または注入器における使用のためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、本発明の化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはスターチ)の粉末混合物を含有するように製剤化され得る。
【0190】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、各計量された用量または「パフ」が患者への送達のための好適な用量の本発明の化合物を送達するように、好ましくはアレンジされる。エアロゾルでの全体的な1日用量は、患者ごとに変化し、および単回用量で、またはより通常には、1日を通して分割用量で投与され得ることが理解される。
【0191】
または、本発明の化合物は、坐剤または膣坐薬の形態で投与され得、またはこれらは、ローション剤、液剤、クリーム、軟膏剤または散布剤の形態で典型的に適用され得る。本発明の化合物はまた、例えば、皮膚用パッチ剤の使用によって、経皮投与され得る。これらはまた、特に眼の疾患を治療するために、眼経路によって投与され得る。
【0192】
眼の使用のために、本発明の化合物は、場合により保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)と組み合わされた、等張のpH調節された滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、等張のpH調節された滅菌生理食塩水中の液剤として、製剤化され得る。または、これらは、ワセリン等の軟膏中に製剤化され得る。
【0193】
皮膚への局所的な適用について、本発明の化合物は、例えば、以下の1以上との混合物中に懸濁化または溶解された活性化合物を含有する好適な軟膏剤として製剤化され得る鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水。または、これは、例えば、以下の1以上の混合物中に懸濁化または溶解された好適なローションまたはクリームとして製剤化され得る鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0194】
口腔における局所投与に好適な製剤としては、香味付けされた基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含むトローチ(pastilles);ならびに、好適な液体担体中に活性成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0195】
一般的に、ヒトにおいて、本発明の化合物の経口または局所投与は、好ましい経路であり、最も簡便である。レシピエントが嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の障害に苦しむ場合、薬物は、非経口的に、例えば、舌下または経頬的に投与され得る。
【0196】
獣医学的使用のために、本発明の化合物は、通常の獣医学的実務に従って適切に受理され得る製剤として投与され、および獣医師は、特定の動物について最も適切である投与レジメンおよび投与経路を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】胚性幹細胞(ES)、透過化胎仔線維芽細胞(PFF)、ならびにアホロートル(PFFA)またはアフリカツメガエル卵母細胞(PFFX)のいずれかのGV中へ注入されたPFF中における、β−アクチン、nanogおよびOct−4遺伝子の発現を探すRT−PCR実験の結果を示す。
【図2】Bordzilovskaya et al;1989.Developmental stage series of axolotl embryos.In Developmental Biology of the Axolotl(J.B.ArmstrongおよびG.M.Malacinski編),pp.210−219.New York:Oxford University Pressに記載される40の発達段階に渡るAxananog発現プロフィール。EC=初期卵割、LC=後期卵割。
【図3】アホロートル卵巣由来の抽出物中におけるPFFのインキュベーションは、メチル化DNAの量を低下させることを示す。分化細胞は、未処理(コントロール)であったか、または3時間(3h)アホロートル卵巣から作製した抽出物(AxOvEx)中でインキュベートした。メチル化DNAについての抗体で細胞を染色した。
【図4】アホロートル卵巣抽出物(AvOvEx)中におけるPFFのインキュベーションは、H3K9染色を排除することを示す。
【図5】魚類および両生類における進化的に保存された原始的なおよび誘導された成体体制を示す骨格の比較を記載する。A.背面から示されたハイギョ骨格。B.側面から示された硬骨魚。C.背面から示されたサンショウウオ(アホロートル)骨格。D.背面から示されたカエル(アフリカツメガエル)骨格。小さな矢印は肋骨を示す。大きな矢印は骨盤骨を指し示す。
【図6】クラスV POUドメイン転写因子(Oct−4様遺伝子)の系統発生分析を示す。遺伝子を前記種の卵巣から単離し、および単純性(parsimony)によって比較し、最も密接に関連する配列を決定した。同一のクラスター内のグループは、最も密接に関連している。
【図7】生殖細胞質の有無の指標としての冷血脊椎動物の細胞質中の生殖細胞特異的RNAの分布の例を示す。
【図8】Clustal−Wを使用するマウスおよびアホロートル Oct−4のアミノ酸アラインメント。
【図9】Clustal−Wを使用するマウス、ラット、ヒト、ウシ、イヌ、オポッサム、ヒヨコおよびアホロートル由来のnanogのアミノ酸アラインメント。
【図10】A−哺乳動物細胞の注入後2日に単離されたアホロートル卵核胞 B−ヒト原発性線維芽細胞が注入された卵母細胞を記載日で回収し、およびアクチン、NanogおよびOct−4の発現をRT−PCRによって分析した。
【図11】アフリカツメガエル、アホロートルおよび/またはチョウザメ抽出物への分化細胞の暴露後のNanogおよびβ−アクチン発現を示すRT−PCRゲル。
【図12】nanog結合部位が存在するレポーター遺伝子の活性化。
【図13】Clustal Wを使用してのOct−4 DNA結合ドメイン配列比較−高度に保存された種。
【図14】Clustal Wを使用してのOct−4 DNA結合ドメイン配列−高度に保存された種および無関係の種、例えば、アフリカツメガエル(XLPOU−60およびXLPOU−91)ならびにゼブラフィッシュ(zPou2)。
【図15】アフリカツメガエルおよびゼブラフィッシュ中の保存されていないOct−4等価物と比較しての、高度に保存されたOct−4遺伝子の配列同一性を示す表。
【図16】アホロートル卵母細胞抽出物(AOC)中のDNAメチル化を、5−メチルシトシンについての染色によって評価した。処理の1および3時間後にFACS(蛍光活性化細胞選別装置)によって処理細胞を選別した。さらに、アピラーゼ(ATPアーゼ阻害剤)を補充されたグループを、該プロセスがエネルギー依存性であることを示すために含めた。AP:透過化コントロール後。
【図17】アホロートル卵母細胞抽出物中においてインキュベートされた細胞中のトリメチル化ヒストンH3リジン9(TriH3K9)を、特異的抗体でTriH3K9を染色することによって評価した。抽出物中における処理インキュベーションの1および3時間後、処理細胞をFACSによって選別した。さらに、アピラーゼ(ATPアーゼ阻害剤)を補充されたグループを、該プロセスがエネルギー依存性であることを示すために含めた。AP:透過化コントロール後。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分化細胞または細胞核の再プログラミングおよび再プログラム化細胞および/または細胞核の使用に関する。特に、本発明は、分化細胞を再プログラミングして胚性幹細胞様細胞を製造する方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
胚性幹細胞は、これらが誘導される生物中の任意の他の細胞タイプを産生することができる多能性幹細胞である。多能性細胞は、順に各体内器官の全ての細胞を形成する3つ全ての胚組織層へ発達する能力を有し、および体内のありとあらゆる細胞および組織を形成し得る幹細胞を記載するために使用される。これは、胚体外膜および組織、胚、ならびに全ての後胚組織および器官へ特化する能力を有する全能細胞とは微妙に異なる。
【0003】
分化細胞は、生物内で体細胞組織を作製する細胞であり、および、通常のインビボ環境下では、一般的に、これらの発達可能性に制限されていると考えられる。分化細胞は、最終分化されていてもよく、即ち、これらが特定の細胞タイプ(例えば、ニューロン、筋細胞および骨細胞)として発生的に拘束されているか、またはこれらは、特定の系列(例えば、好塩基球、好酸球、および好中球を含む種々の免疫細胞を産生し得る骨髄性前駆細胞)内の限られた数の他の細胞タイプを生じさせる可能性を保持していてもよい。
【0004】
哺乳動物の、および特にヒトの胚性幹細胞は、多くのヒト疾患または状態の治療および/または予防についての可能性を提供する。特に、胚性幹細胞は、広範囲のヒト細胞タイプ、例えば、非常に治療的に価値がある細胞を作製する手段を提供する。しかし、現在、大抵の先進国において、哺乳動物の、および特にヒトの、胚性幹細胞の取得および使用を取り巻く倫理的および実際的問題が存在する。
【0005】
胚性幹細胞は、生体全体が誘導される細胞の集団である内細胞塊(ICM)として公知の胚中の細胞の多能性集団から通常誘導される。ICMは、問題の種に依存して、発生の初期に、典型的に受精後3から5日に現れる。クローニング法を使用して、所与の種の任意の個体から胚を作製することが可能である。典型的に、現在のクローニング法において、哺乳動物の分化細胞の核が、核移植として公知の方法で、通常同一種に由来の除核された哺乳動物の卵母細胞中へ移される(Campbell et al.,2005,Reprod Dom Anim 40:256−268)。
【0006】
核移植は、実施することが困難であることおよび成功する頻度が低いことが知られている(Campbell et al.,2005,Reprod Dom Anim 40:256−268)。成功すると、移植された核DNAは、受容卵母細胞によって再プログラミングされ、次いで卵母細胞は、受精の効果を模倣することによって刺激され、胚が形成され得る。
【0007】
通常、前記卵母細胞は有糸分裂へと刺激され、および桑実胚または胚盤胞のいずれかの段階で、「仮の」母親の子宮内へ移植される。この方法は、非常に低い成功率を有し、および生存可能な胚をほとんど作製しない。胚が形成する場合、ICMは、他の適用において使用され得る胚性幹細胞を提供するために単離されてもよい。
【0008】
この方法がヒトの、または哺乳動物の胚へ適用される場合、これは、実際的考慮および倫理的考慮の両方を有する治療的クローニングと呼ばれる。実際的な観点において、胚性幹細胞を得ることは、女性からの卵子の寄贈を必要とし、これは、哺乳動物の卵子は回収するのに高価でありおよび1人の女性からほとんど卵子が得られないので、実際上制限されている。倫理的観点において、および特にヒトに関して、別のプロセスにおける、例えば、作製される胚が胚性幹細胞のドナーとしてのみ役立つ治療的クローニングにおける中間体としての胚の作製に対する広範囲の反対が存在する。
【0009】
したがって、治療法において使用され得るが、胚性幹細胞をただ提供するだけのために胚を作製するために、クローニング法を用いずに、および特に、哺乳動物の卵母細胞を使用せずに得ることができる多能性胚性幹細胞様細胞を開発する必要性が存在する。
【0010】
分化細胞の核は、分化細胞を用いてのクローニング実験から生存可能な受精動物(fertile animals)の作製によって、以前、多能性状態へ首尾良く再プログラミングされた(Wilmut et al(1997)Nature 385:810−813;Polejaeva et al(2000)Nature 407:86−90)。これらの手順は、非常に低い効率および成功率を有する。これらの手順において、分化核は、除核された哺乳動物の卵母細胞中への核移植および該哺乳動物の卵母細胞内の因子への暴露(これは、該細胞核中の遺伝子を再活性化し、これは、胚の作製により該細胞へ多分化能を付与した)によって、多分化能へ再プログラミングされた。これらのケースにおいて、全ての操作は、問題の細胞と同一の種由来の材料を使用して行われた。
【0011】
細胞中の多分化能は、多数のマーカー遺伝子の発現を探すことによって同定され得る。ヒトにおいて、これらの遺伝子としては、POU5F1(転写因子Oct−4をコードする)、NANOG、Rex−1、Sox−2およびTertが挙げられる(Ginis et al.,2004 Dev Biol 269:Pages 360−380)。当業者は、POU5(Oct−4)およびNANOG、または任意の他の遺伝子またはタンパク質が言及されている文脈から、これが議論されている遺伝子であるかまたは遺伝子産物であるかを理解する。
【0012】
Oct−4は、胚性幹細胞を含む多能性細胞中において通常見られおよび発現される転写因子であるが、これは通常の分化細胞中において発現されない。Oct−4の活性化は、多分化能に似ている状態へ細胞が再プログラミングされることと一致している。Oct−4の実験的排除は、胚中におけるICMの完全な不在、ならびに原始外胚葉へ分化し続ける胚性幹細胞中における未分化表現型の損失を生じさせる(Nichols et al(1998)Cell.95:379−391)。
【0013】
Nanogは、また、多能性細胞において見られる別の転写因子である。nanog発現の非存在下において、胚性幹細胞はこれらの多分化能を失う(Chambers(2004)Cloning Stem Cells 6:386−391))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
幹細胞分野の実際的考慮および倫理的考慮の両方を克服するために全胚を創作することなく、胚性幹細胞または胚性幹細胞に似ている細胞(いわゆる胚性幹細胞様細胞)を製造する方法についての必要性が存在するしたがって、本発明は、再プログラミングとして知られている方法で、胚性幹細胞のこれに似ているより多能性の状態へ、分化細胞および/またはこれらの核(例えば、哺乳動物由来の分化細胞)の発達可能性を再指向する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1態様において、以下が提供される再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核を製造する方法であって、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚由来の細胞またはこの細胞抽出物へ分化細胞、または分化細胞の核を暴露することを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起(spinal projections)および/または後方に配置された骨盤骨(posteriorly located pelvic bone)から伸びる魚類中の骨盤付属物(pelvic appendages)を含む原始脊椎動物体制(primitive vertebrate body plan);
(ii)生殖細胞質(germ plasm)を含有しない生殖細胞(germ cells);および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、方法。
【0016】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0017】
または、前記方法は、以下として記載され得るnanogを発現するおよび/またはOct−4を発現するおよび/または多能性となるように分化細胞を再プログラミングする方法であって、分化細胞を、冷血脊椎動物由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこの抽出物へ暴露することを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、方法。
【0018】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0019】
または、さらに、前記方法は、本発明が提供する、以下として記載され得る胚性幹細胞様細胞を製造する方法、または再プログラム化細胞核を製造する方法であって、分化細胞または分化細胞の核を、冷血脊椎動物由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこの抽出物と接触させることを含み、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞、
の1以上を有する、方法。
【0020】
再プログラム化細胞は、この正常な分化機能が除去または変更されてしまっている細胞である。再プログラム化細胞核は、この正常な分化機能が除去または変更されてしまっている核である。
【0021】
分化細胞は、特定の機能を有する特定の細胞タイプ、例えば、神経細胞または筋細胞へ発達した細胞である。これらの細胞は、通常の状況下では、他の細胞タイプへ一般的に発達することができない。本発明の文脈において、再分化細胞は、1つの特定の細胞タイプのものであり、および本発明の方法を使用して操作して幹細胞を形成しおよび引き続いて分化細胞へ再度変換された細胞である。再分化細胞は、この元の分化と同一のタイプまたは異なるタイプの細胞であり得る。
【0022】
原始体制
生物が原始脊椎動物体制を有するかどうかは、これらの骨格構造に関連する2つの特定の基準のうちの1つまたは両方を考慮することによって決定され得る。第1基準は肋骨構造に関し、および第2基準は骨盤骨に関する。原始魚類および原始両生類は、類似の骨格構造を有し、これは、いわゆる「誘導された(derived)」骨格(無尾類(カエル)骨格;硬骨魚骨格)を有する生物の骨格構造とは極めて対照的である。
【0023】
原始脊椎動物体制を有する生物、例えば、ハイギョまたはサンショウウオは、脊柱から横方向に広がる肋骨を有する。これは、哺乳動物において胸郭を生じさせた脊椎動物骨格の原始的な条件である。誘導された体制を有する硬骨魚等の生物における対比によって、肋骨は、横方向にではなく、背腹側に(dorso−ventrally)、広がる。この相違は、原始脊椎動物体制を有する魚とこれを有さない魚とを区別することを可能にする。
【0024】
肋骨を考慮することの代替法として、原始脊椎動物体制を有する生物はまた、骨盤骨を考慮することによって同定され得る。
【0025】
原始魚類において、骨盤付属物は、骨格の後部において骨盤骨から延びている。硬骨魚の骨格において、骨盤骨は、上肢帯付近またはこれに隣接する遥かに前方にある位置において見られるかまたはこれと融合してさえおり、魚の体のほぼ中間点またはこの点の前方にさえ、頭部付近に腹びれを位置付けている。サンショウウオ(アホロートル)によって例示される原始両生類骨格は、骨格の後部へ連結された骨盤骨を保持する。カエルは、対照的に、高度に誘導されおよび拡張された骨盤帯を有する。さらに、カエルは、骨盤帯の前方の遥かに減少された数の椎骨を有する。
【0026】
図5は、魚類および両生類における原始脊椎動物体制の保持を例示している。原始魚類と原始両生類との間の骨格構造における類似性が、誘導された骨格のこれと比較した場合の構造の相違として、明らかに見られ得る。前記図は、原始脊椎動物体制を示すハイギョの骨格と、誘導された脊椎動物体制を示す典型的な硬骨魚骨格のこれとを比較する。これはまた、サンショウウオ(アホロートル)の骨格とカエル(アフリカツメガエル)を比較する。
【0027】
ハイギョ骨格は、背側図から(背中から)示される。重要なことに、硬骨魚は側面図を示しており、脊椎突起/肋骨が横方向にではなく背腹側に広がることを例示している。両生類は両方とも背側図である。前記魚において、小さな矢印は、ハイギョにおける脊柱から横方向に突出する骨/肋骨を指し示す。これは、胸郭を生じさせた脊椎動物骨格の原始的な条件である。硬骨魚肋骨は横方向にではなく腹側に突出することに注意されたい。これは、硬骨魚革新(innovation)である。ひれを支える背側および腹側の脊椎突起もまた、硬骨魚革新である。原始魚類は、4つの肢を保持し、これらは、4本肢の陸上動物である四足類の4つの肢へ進化した。重要なことに、大きな矢印は、原始魚類および原始両生類における骨盤骨を指し示す。これは、原始魚類を規定する特徴であり、何故ならば、これは硬骨魚において失われているためである。原始脊椎動物体制は、Johnson et al(2003)Evolution and Development 5:4,414−431においてより詳細に議論されている。
【0028】
チョウザメ、カメ、ハイギョ、および哺乳動物は全て、原腸形成運動によって規定されるように、類似の発生学を共有する。
【0029】
したがって、原始脊椎動物体制は、例えばx線において、肋骨および/または脊椎突起の横方向であって背腹側(dorsoventral)ではない突出によって同定され得る。代替の骨格同定は、魚類中の骨盤骨である。
【0030】
生殖細胞質を有さない生殖細胞
雌において、生殖細胞は、卵母細胞、または卵母細胞への前駆細胞を指す。
【0031】
卵母細胞は、卵巣における場合の雌生殖細胞を規定し、および卵子は、排卵後の雌生殖細胞を規定する。
【0032】
生殖細胞質は、生殖細胞系列を生じさせる決定因子を含有する、ある生物の卵子、卵母細胞または胚中に見られる細胞質の領域である。生殖細胞質を有さない動物において、これらの同一の分子が、卵子細胞質、および同様に場合によってはGV(卵核胞)にわたって分布される。これらの分子、例えば、nanos、vasaおよびdazl遺伝子の産物は、典型的に、RNA結合タンパク質、またはこれらをコードするメッセンジャーRNAであり、これらは、多分化能再プログラミングプロセスに関与する傾向が高く、何故ならば、これらは胚性幹細胞中において見られるからである。生殖細胞質を有する生物中において、これらの分子は局在化されており、したがって場合によっては、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚またはこれらの抽出物中において少量でありおよび比較的利用不可能であり、したがって、生殖細胞質を有する生物を、分化細胞を再プログラミングするために不適切とすることが考慮される。
【0033】
好ましくは、本発明に関して、原始脊椎動物体制を有する冷血脊椎動物はまた、生殖細胞質を含有しない卵母細胞/卵子(生殖細胞)を有する。生殖細胞質の存在または非存在は、ある生物がどのように発生するかを説明し得る。実際に、生物の体制(body plan)を見ることによって、この生物中の卵母細胞/卵子が生殖細胞質を有するかどうかを予想することが可能である。体幹の後部末端を規定する、特に後肢が、重要である。生殖細胞質の非存在下において、生殖細胞は、骨盤骨によって規定される脊椎位付近で、後部−側部中胚葉から誘導され、およびこれらは、該胚のこの後部領域だけに限定された細胞外シグナルへ応答して形成される。これらの細胞は、後に、卵母細胞へと発達する。生殖細胞質の存在下において、生殖細胞がより前方の位置で発達し、および得られる生物は、比較的に前方の成体形態(relatively anterior adult morphology)を有する。生殖細胞質を有する生物の卵母細胞、卵子、卵巣および初期胚は、生殖細胞質を有さないものと比較した場合、細胞および核の再プログラミングに対してほとんど有効ではない。
【0034】
原始脊椎動物体制を示す生物は、これらの生殖細胞中に生殖細胞質を有さないと理解される。原始脊椎動物体制の保持は、生殖細胞質の非存在の結果であると考えられる。
【0035】
卵母細胞/卵子が生殖細胞質を含有する動物を同定するために、体幹の後部末端を規定する後肢が重要である。生殖細胞質の非存在下において、生殖細胞は、骨盤骨によって規定される脊椎位付近で、後部−側部中胚葉から誘導される。卵子が生殖細胞質を含有する動物は、生殖細胞を作製するために必要とされる細胞外後部シグナルを必要とせず、何故ならば、細胞は、細胞外シグナルからではなく、卵子によって供給される物質によって特化されるためである。したがって、カエルおよび硬骨魚等の生殖細胞質を有する大抵の動物において、これらの動物は、比較的に前方の成体形態を有する。これらの動物の卵母細胞および卵子は、再プログラミングのために有用でない。
【0036】
哺乳動物の革新であるとかつて考えられた、哺乳動物中の生殖細胞質の非存在は、この系列の動物における原始脊椎動物体制の保持を結果として生じさせる、原始的発生学的特徴を保持する特定の系列の種によって保存されていることが示された。胚が原始的特徴を保持し、および、原始的成体脊椎動物形態を保持する哺乳動物および冷血脊椎動物種の胚において、PGCとして既知の、生殖細胞系(精子および卵子)を生じる幹細胞は、発生初期に生じる多能性前駆体から誘導される。大抵の実験的な非哺乳動物の生物、例えば、アフリカツメガエルまたはゼブラフィッシュ(硬骨魚)において、PGCは、哺乳動物におけるのとは全く異なる機構によって形成され、および哺乳動物のものと等価な多能性前駆体は、形成されない。アフリカツメガエルおよびゼブラフィッシュにおいて、生殖細胞は、生殖細胞決定因子を含有する、生殖細胞質の不均等分布によって体細胞から非常に早くに分離される。生殖細胞質を受け継ぐ細胞は、次いでPGCになり、および体細胞を生じない。
【0037】
図7は、多数の種々の生物由来の卵母細胞中の生殖細胞質の分布を示す。アフリカツメガエルの卵母細胞中のXdazlおよびXcat2をコードするRNAが示され、およびvasaをコードするRNAがハイギョ卵母細胞において示される。dazlおよびvasaをコードするRNAは、チョウザメ卵母細胞について示される。卵母細胞由来の切片をこれらの分子に特異的なプローブと反応させ、および該プローブを、アルカリホスファターゼ結合化抗体および標準法による色検出を使用して検出した。XdazlおよびXcat2 RNAは、細胞質内に局在され、生殖細胞質を示す。ハイギョ卵母細胞中のVasa RNAならびにチョウザメ卵母細胞中のvasaおよびdazl RNAは、均一に分布されており、生殖細胞質の非存在を示す。
【0038】
哺乳動物中においてPGCを作製する機構は、あるより下等な動物中に、しかし特定の基準を満たす種中のみに存在する。これらの種は、これらの体制に基づいて同定され得る。アホロートル等の前記基準を満たす種は、哺乳動物中におけるものと類似のPGC発達、ならびに生殖細胞発達を支配する遺伝子の類似の相補体(例えば、Oct−4およびnanogをコードする遺伝子)を有し、したがって、分化細胞、および特に哺乳動物の分化細胞を再プログラミングすることができる。したがって、前述の基準を満たす特定の種の卵母細胞は、アホロートルのこれに等価の再プログラミングポテンシャルを有することを正確に予想することが可能である。これらの基準を満たさない種は、保存された多分化能遺伝子の同一の相補体を有さず、したがって、等価の再プログラミング能を有さない。前記基準を満たす種は、生殖細胞質の非存在の結果であると考えられる原始脊椎動物体制を有する。重要なことに、Oct−4およびnanogは、生殖細胞質の非存在下においてPGCを産生するために必要とされるので、Oct−4およびnanogの保持は、生殖細胞質を有さない結果であると考えられる。
【0039】
成体は、これらの発生学の産物である。したがって、発生学が保存されているので、成体体制は保存されている。カエルおよび硬骨魚において見られる大きな変化を防止して、発生学を拘束するものは、生殖細胞を産生する機構である。生殖細胞質を有さない動物において、PGCはより少ない存在を有し、発生学的細胞運動における大きな変化を伴って起こるように、これらは、これらの産生のために必要とされるシグナルが変更されると、一掃され得る。生殖細胞質が存在する場合、PGCはシグナルの変化に対して無反応であり、何故ならば、どうであろうとこれらは形成するからである。したがって、発生学に対する制約が高められ、発生学変化の細胞運動、およびこれが、生殖細胞質を有する動物が、原始体制から変化した形態を有することができる理由である。生殖細胞質無しで、これは起こり得ない。チョウザメ、カメ、ハイギョ、および哺乳動物は全て、原腸形成運動によって規定されるように、類似の発生学を共有する。
【0040】
Oct−4および/またはnanogの発現
好ましくは、原始脊椎動物体制を保持する冷血脊椎動物はまた、Oct−4および/またはnanogを発現する卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞を有する。
【0041】
Oct−4および/またはNanog発現は、該タンパク質をコードするmRNAまたは該タンパク質産物自体をアッセイすることによって測定され得る。これを行うためのアッセイの方法の例としては、Makin et al.technique 2 p295から301(1990)に記載されるmRNAをアッセイするためのRT−PCR法、またはタンパク質産物のための抗体アッセイが挙げられる。
【0042】
卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞におけるOct−4および/またはnanogが高度に保存されると考えられるためには、これは、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を共有しなければならない。アホロートルOct−4タンパク質、AxOct−4の場合、73%のアミノ酸がマウスOct−4 DBDと同一であり、および75%がヒトOct−4 DBDと同一である。遺伝子ZPOU−2およびXLPOU91によってコードされ、およびそれぞれ分化細胞を再プログラミングする能力を与えない、ゼブラフィッシュおよびアフリカツメガエル由来の最も近いタンパク質は、要求される69%同一性未満の、63%同一である。機能的に等価なOct−4遺伝子の同一性および活性は、実施例に記載されるもののような当業者に既知の標準方法を使用して、試験され得る。
【0043】
好ましくは、ヒトOct−4 DBDおよび冷血脊椎動物のこれの間で言及されるアミノ酸同一性は、アミノ酸残基の極性または電荷を変化させないアミノ酸の保存的変化を可能にする。保存的変化の例は、当業者に周知であり、および、別のものの代わりの1つの疎水性残基、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンの使用、または別のものの代わりの1つの極性残基、例えば、リジンの代わりのアルギニンの使用を含む。好ましくは、2つのタンパク質配列間のアミノ酸同一性を決定する場合、保存的アミノ酸変化は、同一のアミノ酸であると考えられる。したがって、アミノ酸配列における保存的アミノ酸変化は、2つの配列間のパーセンテージアミノ酸同一性に影響を与えない。
【0044】
上記で議論した理解をさらに支持するために、種々の種におけるOct−4をコードする遺伝子を比較し、および同定された形態学的特徴を共有するものは、形態学的特徴を欠いている種よりもより密接な関係があるOct−4コーディング遺伝子を有することが示された。これらの実験において、Oct−4をコードする遺伝子を、イモリ(Notopthalmus viridens)、ガルフ・スタージョン(Asciperser oxyrhynchus)、アフリカハイギョ(Protopterus annectans)およびミシシッピアカミミガメ(Red Eared Slider)(カメ、T.scripta)から単離し、これら全ては、原始形態について記載した基準を満たす。図6において、これらの種から単離されたOct−4コーディング関連遺伝子のDNA配列が、公共データベースの一部である他の種から単離された最も密接に関連する遺伝子配列と比較され、および仮の系統樹が、Oct−4をコードする遺伝子の進化の歴史を追跡するように意図されて示される。通常の状況の下では、遺伝子配列進化は、動物の進化の関連性(即ち、種系統発生)を追跡する。したがって、関連遺伝子の任意の配列は、これらが進化的により離れている別の種(例えば、魚類、爬虫類または哺乳動物)由来の等価の遺伝子に対してよりも、共通の両生類祖先からのこれらのより最近の分岐のために、サンショウウオ(アホロートルおよびイモリ)およびカエル(ツメガエル(アフリカツメガエル)、ヒキガエル(Bufo)、アカガエル(rana))の間でより類似していると予想される。より高等な種(例えば、哺乳動物および両生類)と比較した場合、全ての魚類について、同一のロジックが適用できる。しかし、従来の系統発生学的予測とは対照的に、図6中の分析は、サンショウウオ(即ち、アホロートル)、イモリ、チョウザメ、ハイギョおよびカメが、それぞれ、マウスおよびヒトOct−4遺伝子のOct−4遺伝子に非常に関連している遺伝子を含有し、等価の遺伝子は、これらの最も密接に関連する姉妹群(即ち、カエル、ゼブラフィッシュなど)において見られないことを示している。図6に示される遺伝子配列関係は、科学界に自明でなく、およびいかなる従来の進化観でも予想されなかっただろう。
【0045】
アホロートル(サンショウウオ種Ambystoma mexicanum)中のOct−4遺伝子(Axoct−4)は、Oct−4に関連するアフリカツメガエル由来のいくつかの遺伝子を含むデータベース中のいかなる他の遺伝子よりも、より非常に哺乳動物のOct−4遺伝子に関連し、およびES細胞を救い得、場合によっては、例えばXLPOU91、アホロートルOct−4遺伝子よりもよい(MorrisonおよびBrickman,2006)。(図8は、アホロートルおよびマウス配列の比較を示す)。この結果は、Axoct−4遺伝子は、哺乳動物のOct−4遺伝子の真のオルソログ(即ち、祖先および機能によって関連される遺伝子)であることを示唆している(これはまた、発現パターンによっても支持されている(Bachvarova et al(2004)Developmental Dynamics 231 :871−880))。より多くの数のアフリカツメガエル遺伝子が、Axoct−4により類似する、祖先Oct−4配列の重複、および引き続いての機構のサブ機能化(subfunctionalization)から生じる(Prince and Pickett,2002;Nat E.ev.Genet.:3;827−37)。この結果は、アホロートル卵母細胞は、真のOct−4オルソログを含有しないアフリカツメガエルの卵母細胞よりも、哺乳動物の卵母細胞に生化学的により類似していることを示唆している。
【0046】
哺乳動物において、Oct−4は、PGCを産生するために必要とされる。これは、アフリカツメガエルにおいては当てはまらず、いかなるOct−4等価遺伝子もが哺乳動物のOct−4の真のオルソログではないことを意味する。アホロートルにおけるOct−4のメカニズムの発現パターンおよび相同性は、Oct−4がPGCを産生するために必要とされることをここで示唆している。この観察は、アホロートル卵母細胞が、アフリカツメガエル細胞よりも多分化能へ哺乳動物の分化細胞を再プログラミングするより高い能力を有する理由に寄与し、アホロートル卵母細胞は、再プログラミング能力においてむしろ哺乳動物卵母細胞のように振る舞う。さらに、生殖細胞質の非存在はまたこれらの卵母細胞/卵子を哺乳動物により似ているようにするので、これはまた、アフリカツメガエルと比較してのアホロートルの優れた再プログラミング能力に関与している可能性が高い。生殖細胞質の非存在は、Nanos、vasaおよびdazl(これらは全て、生殖細胞質に関連するRNA結合タンパク質である)等の他の因子が、再プログラミングについてよりアクセス可能となることを可能にする。
【0047】
カエルのOct−4遺伝子よりも哺乳動物Oct−4遺伝子へより密接に関連するOct−4遺伝子を有するアホロートルが実証されたので、哺乳動物Oct−4遺伝子により密接に関連するOct−4遺伝子を有する他の生物もまた、哺乳動物の分化細胞を再プログラミングし得ることが理解される。また、Axoct−4の発現パターンは、哺乳動物初期胚のこれと等価である。したがって、チョウザメおよびハイギョ、他のサンショウウオ、および「原始魚類」は、全て、アホロートルに等しい再プログラミング能を有し、およびアフリカツメガエル、他のカエル、または硬骨魚よりも遥かに大きい。
【0048】
好ましくは、再プログラム化細胞は、胚性幹細胞様細胞である。
【0049】
用語「胚性幹細胞様細胞」は、胚性幹細胞の特性を示すように再プログラミングされた分化細胞、または胚性幹細胞の特性を示す再プログラミングされた分化核を含有する細胞を指すために本明細書中において使用される。胚性幹細胞様細胞は、以下の特性の1以上を含み得るが、これらに限定されない。変換無しの増殖;連続的な増殖;自己再生および広範囲の組織を産生する能力;元の分化細胞と同一かまたは異なる細胞タイプのいずれかへ分化する能力(多分化能);脱分化または再プログラミングされる前の細胞中のこれらの同一のパラメータと比較した場合。
【0050】
好ましくは、再プログラム化細胞および/または再プログラム化細胞核は、Oct−4を発現する。または、再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核は、nanogのみを発現する。再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核はまた、多能性であり得る。
【0051】
好都合なことに、本発明のいずれかの方法に従って作製された再プログラム化細胞および/または再プログラム化細胞核は、Oct−4およびnanogの両方ならびに/または多分化能の他のマーカーを示し得る。多分化能の他のマーカーとしては、Sox−2、Rex−1、およびTERTが挙げられる。
【0052】
細胞が多能性であるかどうかは、多能性特性(即ち、細胞が、これが誘導される生物中のほとんど全ての細胞タイプへ分化するように刺激され得ること)の存在によって同定され得る。多能性細胞の分化は、前駆体媒体(progenitor medium)および/または特定の成長因子へ該多能性細胞を暴露することによって誘発され得る。Lanza,2004.Handbook of Stem Cells:Embryonic/ Adult and Foetal Stem Cells。
【0053】
好ましくは、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物中のOct−4および/またはnanogは、ヒト形態と比較して高度に保存されており、これによって、我々は、冷血脊椎動物中のOct−4が、ヒト転写因子Oct−4とDNA結合ドメインにおいて少なくとも69%アミノ酸同一性を有することを意味する。好ましくは、nanog遺伝子については、これは、ヒトnanogタンパク質と共有されるホメオドメインと少なくとも69%および最も好ましくは75%同一性である。
【0054】
有利なことに、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞中のOct−4および/またはnanogは、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する。
【0055】
アミノ酸同一性は、ClustalW(Thompson et al.(1994)Nucl.Acids.Res.,22 p4673−4680)、または任意の代替のアミノ酸配列比較ツールを使用して、測定され得る。clustalW法は、以下のパラメータを用いて使用され得る
ペアワイズアラインメントパラメータ − 方法:正確な
マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティー10.00、ギャップエクステンションペナルティー:0.10;
マルチプルアラインメントパラメータ − マトリクス:PAM、ギャップオープンペナルティー:10.00、遅延についての%同一性:30;ペナライズエンドギャップ:オン。ギャップセパレーションディスタンス 0、
ネガティブマトリクス:無し、ギャップエクステンションペナルティー:0.20、残基−特異的ギャップペナルティー:オン、親水性ギャップペナルティー:オン、親水性残基:GPSNDQEKR。特定の残基での配列同一性は、シンプルに誘導された同一の残基を含むように意図される。
【0056】
代替のパラメータもまた適切であり得る。
【0057】
ヌクレオチド配列同一性はまた、以下のパラメータを使用してClustalW(Thompson et al(1994))を使用して測定され得る
ペアワイズアラインメントパラメータ − 方法:正確な、
マトリクス:IUB、ギャップオープンペナルティー:15.00、ギャップエクステンションペナルティー:6.66;
マルチプルアラインメントパラメータ − マトリクス:IUB、ギャップオープンペナルティー:15.00、遅延についての%同一性:30、ネガティブマトリクス:無し、ギャップエクステンションペナルティー:6.66、
DNA遷移重量化(transitions weighting):0.5。
【0058】
代替のパラメータもまた適切であり得る。
【0059】
好ましくは、保存されたOct−4および/またはnanogをコードする任意のヌクレオチド配列は、ヒトOct−4および/またはnanog配列に対して、69%を超える、例えば、75%、80%、90%または95%同一性を有し(上記の試験に従う)、またはヒトOct−4および/またはnanogと機能的に等価のタンパク質をコードする0.1×SSC、65℃(ここで、SCC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.2)の洗浄条件下でヒトOct−4および/またはnanog配列へハイブリダイズする配列。
【0060】
本発明のポリペプチドは、全長およびフラグメントの両方を含む。このようなポリペプチドは、任意の従来の手段によって作製され得る。
【0061】
機能的に等価なタンパク質またはタンパク質フラグメントは、少なくとも69%配列同一性を有しおよびヒトOct−4および/またはnanogと同一の機能を保持するタンパク質および/またはフラグメントを指す。このような機能は、本明細書中に記載の方法のいずれによっても試験され得る。
【0062】
本発明に従う「核酸分子」は、一本鎖および二本鎖DNA、RNA、cDNAを含む。機能的に等価なポリペプチドをコードし得るヌクレオチド配列の誘導体は、当該分野において周知の任意の従来の方法を使用して得られ得る。
【0063】
全てのカエル、全ての硬骨魚、全ての鳥類および大抵の爬虫類を含む、保存されたOct−4遺伝子を欠いていると体制に基づいて予想される生物の群は、原始体制を保持し、および、保存されたOct−4遺伝子(有尾両生類を含む)およびnanogのオルソログをコードする遺伝子を保持する群よりも遥かに大きい。したがって、非常に少数の種の卵母細胞、卵巣、卵子および初期胚、またはこれらの抽出物のみが、本発明における使用に適切である。下記の系統が、保存された脊椎動物体制を保持する
サンショウウオ(アホロートルまたはブチイモリ属)
カメ
トカゲ
ワニ
メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);
ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);
軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ(chimeras));
軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメ);
セミオノータス目(ガー);
アミア目(アミア)
肺魚亜綱(ハイギョ);および
シーラカンス亜綱(シーラカンス)。
【0064】
したがって、冷血脊椎動物が、両生類、爬虫類および魚類からなる群から選択されることが好ましい。
【0065】
好ましくは、冷血脊椎動物は、サンショウウオ、カメ、トカゲ、ワニ、メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ(chimeras));軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメなど);セミオノータス目(ガー);アミア目(アミア);肺魚亜綱(ハイギョ);およびシーラカンス亜綱(シーラカンス)からなる群から選択される。
【0066】
最も好ましくは、冷血脊椎動物は、サンショウウオ、カメ、ハイギョおよびチョウザメからなる群から選択される。
【0067】
好都合なことに、冷血脊椎動物は、アホロートルおよびブチイモリ属を含む、サンショウウオである。
【0068】
サンショウウオの代わりに、冷血脊椎動物は、チョウザメ(学名:チョウザメ属(Acipenser))である。
【0069】
記載される生物の大部分において、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの細胞抽出物を得ることは、比較的容易であり、および材料は豊富である点で、これは特に利点である。両生類、および硬骨魚は、哺乳動物の卵子の体積の数千倍および哺乳動物の卵子組織を遥かに超える量で卵子を有し得、例えば、チョウザメ(ここからキャビアが得られる)は、卵細胞中この体重の15から25%を産生し得る。回収される材料は、場合により、保存および使用され得る。
【0070】
対比のために、哺乳動物の卵母細胞、卵子、卵巣材料および/また初期胚は、希少であり、および得ることが困難であり、さらに該材料は量が非常に限られている。
【0071】
アフリカツメガエルまたは他のカエルまたは任意の硬骨魚由来の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物は、本発明の方法における使用について適切でない。カエルおよび硬骨魚(両方とも冷血脊椎動物)は、原始体制を保持していない両生類および魚類の例であり、これらの卵母細胞は、生殖細胞質を含有することが公知であり、およびこれらのOct−4タンパク質は、ヒトOct−4タンパク質と比較した場合に高度に保存されていない。
【0072】
好ましくは、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞抽出物は、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む。
【0073】
核またはGVは、特定の転写因子Oct−4およびNanogを含有する。
【0074】
カエル sna 硬骨魚中の(in frog sna teleosts)生殖細胞中に局在される生殖細胞特異的RNA結合タンパク質をコードするRNA(Dazl、VASAおよびNanos)は細胞質中に均一に分布されており(Johnson et al.,2001,243:402−415;Dev,.Biol.;Bachvarova et al.,Dev.Dyn.231 ,871−880)、および生殖細胞質を有する生殖細胞中において多分化能または生殖細胞特化を維持することができるが、細胞を再プログラミングすることができない。
【0075】
本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、または初期胚の核または卵核胞、またはこの抽出物への分化細胞の暴露は、透過化分化細胞を該卵母細胞、卵子、卵巣細胞または初期胚細胞へ注入するか、または透過化分化細胞を該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の抽出物と共にインキュベートすることによって、達成され得る。
【0076】
好ましくは、透過化分化細胞は、卵母細胞、卵子、卵巣または胚、またはこの抽出物中の因子が、該細胞を通過しおよびこれを再プログラミングすることを可能にし、好ましくは、卵母細胞、卵子、卵巣または胚細胞由来のミトコンドリアまたは核は該透過化細胞を通過することができず、およびしたがって、遺伝物質の交換が存在しない。分化細胞の透過化は、当該分野において周知の任意の方法、例えば、Triton−X−100、ジギトニンまたはサポニンで該細胞を処理することによって達成され得る。
【0077】
好ましくは、本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、またはこの抽出物との接触後、再プログラム化細胞は、当該分野において周知の技術を使用して、顕微鏡用スライドまたは培養皿への遠心分離によって回収される。
【0078】
好ましくは、分化細胞核を再プログラミングするための本発明の任意の方法において、分化細胞核は、当業者に容易に明らかである周知の核移植技術を使用することによって、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚と接触され得る(上述の参考文献を参照のこと)。このような技術としては、除核された卵母細胞または卵子への分化核の注入;または除核された卵母細胞または卵子との分化細胞の融合が挙げられる。
【0079】
細胞ベースの仕事は、再プログラム化細胞が冷血脊椎動物細胞中に完全に含有されるという利点を有する。
【0080】
または、分化細胞株は、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の抽出物と共にインキュベートされ得る。
【0081】
抽出物の使用は、これが、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚中の因子が分化細胞または核に対して作用しおよびこの再プログラミングを生じさせるために、インタクトな卵母細胞、卵子または初期胚中へ分化細胞または核を注入するに必要な操作を回避するという利点を有する。抽出物を使用することはまた、前記物質を回収することを容易にし、および数千から数百万の細胞または核が一度に再プログラミングされることを可能にする。さらに、本発明に従う冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣および初期胚抽出物は、大量に作製され得、および利便性によって指示されるように使用のために保存され得る。
【0082】
好ましくは、全卵巣の抽出物が使用される。全卵巣抽出物を使用することによって、細胞成分を分離する必要性は存在せず、これは、ある種の冷血脊椎動物では不可能かもしれない。または、抽出物のための原料は、従来技術、例えば、0.2%コラゲナーゼ消化によって、卵巣支質から分離された卵母細胞であり得る。
【0083】
分化細胞は、分化の成熟状態を達成している細胞を指す。典型的に、分化細胞は、所定の細胞中において分化関連タンパク質をコードする遺伝子の発現を特徴とする。例えば、グリア細胞中におけるミエリンタンパク質の発現およびミエリン鞘の形成は、最終分化されたグリア細胞の典型的な例である。分化細胞は、さらに分化することができないか、または特定の細胞系列において特定の細胞へのみ分化することができる。
【0084】
好ましくは、本発明の方法において使用される分化細胞は、真核細胞である。好ましくは、分化細胞は、哺乳動物から得られる。最も好ましくは、細胞は、ヒトのものである。
【0085】
好ましくは、本発明の任意の方法において、分化細胞またはこの核は、約5℃から約30℃、より好ましくは約5℃から約21℃の温度で、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの細胞抽出物へ暴露される。より好ましくは、分化細胞または核は、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞またはこの抽出物が誘導される生物の体温と一致する温度で、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、またはこの抽出物と接触される。当業者が理解するように、冷血動物は、これら自体の体温は有さず、これらの体はこれらの環境の温度にある。より好ましくは、接触温度は、約18℃、または、冷血脊椎動物が通常生息している環境のものである。
【0086】
好ましくは、本発明に従う再プログラム化細胞核は、多分化能のマーカーである遺伝子を発現する。好ましくは、多分化能マーカー遺伝子としては、Oct−4およびnanogをコードする遺伝子が挙げられる。Oct−4遺伝子は、Oct−4プロモータの脱メチル化が生じる場合のマーカーとして使用され得る。
【0087】
本発明の第2態様において、本発明の第1態様の方法に従って製造された再プログラム化細胞が提供される。好ましくは、再プログラム化細胞は、胚性幹細胞様細胞である。
【0088】
本発明の第3態様において、本発明の第1態様の方法に従って製造された再プログラム化細胞核が提供される。
【0089】
好ましくは、再プログラム化細胞核は、引き続いて、標準的な公知の体細胞核移植(SCNT)技術において使用され得る。SCNT技術の効率は、本発明に従う分化細胞核を先ず再プログラミングすることによって増加される。
【0090】
本発明の第4態様において、以下を含む、再分化細胞を製造する方法が提供される
(a)本発明の第1態様に記載されるように、再プログラム化細胞を製造すること;および
(b)同一タイプ、または異なるタイプの分化細胞へ、これが誘導される該分化細胞へ、該再プログラム化細胞を再分化すること。
【0091】
好ましくは、再分化は、前駆体媒体を使用して行われる。一旦作製されると、再プログラム化分化細胞は、これらの分化を特定の細胞タイプへ誘発する特定の成長因子および他のシグナル伝達分子(前駆体媒体)の存在下において培養され得る。異なる前駆体媒体が、異なる細胞タイプを作製するために必要とされる。
【0092】
本発明の方法は、多能性再プログラム化細胞が、個体の分化細胞から得られることを可能にし、これらの再プログラム化細胞は、次いで、この患者を治療するために必要とされる細胞タイプへ分化され得る。
【0093】
本発明の第5態様において、本発明の第4態様の方法に従って製造された再分化細胞が提供される。
【0094】
本発明の第6態様において、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導される単離された細胞または細胞抽出物が提供され、該冷血脊椎動物は、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する。
【0095】
好ましくは、細胞抽出物が誘導される卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0096】
好ましくは、細胞および/または細胞抽出物は、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む。
【0097】
本発明の第7態様において、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物が提供される。
【0098】
さらに、本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核または本発明の第5態様に記載の再分化細胞、ならびに医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物が提供される。好適な薬学的担体、賦形剤、および希釈剤、ならびに製剤は、実施例に提供される。
【0099】
本発明の第8態様によれば、細胞の置換または再生を必要とする疾患を治療する方法であって、本発明の第6態様に記載の有効量の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または本発明の第2態様に記載の有効量の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核、または本発明の第5態様に記載の再分化細胞を、動物へ投与することを含む、方法が提供される。
【0100】
本発明の第9態様によれば、医薬としての使用のための、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物および/または本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核および/または本発明の第5態様に記載の再分化細胞が提供される。
【0101】
本発明の第10態様によれば、細胞の置換または再生を必要とする疾患の治療のための医薬の製造における、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および/または本発明の第2態様に記載の再プログラム化細胞、および/または本発明の第3態様に記載の再プログラム化細胞核、および/または本発明の第5態様に記載の再分化細胞の使用が提供される。
【0102】
異なる細胞/組織タイプが、異なる病状において、引き続いての使用のために必要とされる。
【0103】
例えば、造血幹細胞は、白血病に苦しむ個人を治療するために使用され得る。神経前駆細胞は、アルツハイマー病またはパーキンソン病等の神経変性障害に苦しむ個人を治療するために使用され得る。皮膚細胞は、個人が熱傷または傷を受けた場合に、移植片のために使用され得る。
【0104】
移植のための器官および組織の作製のための幹細胞の使用は、数例のみを挙げると、糖尿病、肝疾患、心疾患および自己免疫疾患についての有望な代替療法を提供する。移植に関連する主要な課題は、提供者の不足、および移植された組織と受容者の免疫系との可能性がある不適合性である。
【0105】
即ち、受容者としての移植された組織の免疫拒絶は、移植片を異物として見なす。本発明の方法を使用して、胚性幹細胞様細が、移植の必要がある患者から誘導され得、次いで、同一患者への移植のための組織または器官を作製するために使用され得る。これは、組織不適合性および免疫拒絶の問題を排除する。したがって、特にこれらが患者のこれらと遺伝学的に同一である場合、多能性胚性幹細胞様細胞を作製できることにおいて、大きな治療的可能性が存在する。
【0106】
したがって、本発明の第8、9および10態様において、疾患は、神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中)、皮膚交代(skin alternation)、熱傷、心疾患、糖尿病、変形性関節症および関節リウマチからなる群から選択される。
【0107】
好ましくは、疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中からなる群から選択される。
【0108】
本発明の第11態様において、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導された細胞または細胞抽出物と、該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、または抽出物を使用するための指示書とを含む、分化細胞を再プログラミングするため、または分化細胞の核を再プログラミングするためのキットが提供され、該冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される該卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する。
【0109】
好ましくは、卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞または細胞抽出物が誘導される細胞は、高度に保存された形態のOct−4およびnanogの両方を発現する。
【0110】
場合により、キットは、さらに、再プログラミングされる1以上の分化細胞を含む。さらに場合により、キットは、再プログラム化細胞の再分化のさらなる工程を行うための前駆体媒体を含み得る。
【0111】
本発明の第12態様において、クローン化される細胞を、本発明の第6態様に記載の単離された細胞または細胞抽出物へ暴露することを含む、細胞クローニングを増強する方法が提供される。本発明のこの態様において、細胞および/または細胞抽出物は、クローン化される細胞が暴露される「プレ−ディップ(pre−dip)」の形態として使用される。本発明の細胞および/または細胞抽出物は、細胞をクローン化するために必要とされる機会および実験仕事を改善するために、より多能性状態への、クローン化される細胞の先祖返りを助け得る。
【0112】
好ましい実施形態
本発明の特定の好ましい態様を具体化する実施例を、ここで、下記の図面を参照しながら記載する。
【実施例1】
【0113】
分化哺乳動物細胞を再プログラムするアホロートル由来の卵母細胞の能力
分化哺乳動物細胞を再プログラミングするアホロートル由来の卵母細胞の能力を実証するために、マウス胎仔線維芽細胞を、アフリカツメガエルのみを使用したByrne et al(2003)Curr Biol 15:13(14)1206−13のこれと類似の方法を使用して、アフリカツメガエル(PFFX)およびアホロートル(PFFA)卵母細胞のGV(卵核胞)へ直接注入した。
【0114】
培養されたマウス胎仔線維芽細胞を、Alberio et al(2005)Exp Cell Res.307(l):131−41の方法に従って、中性洗剤(ジギトニン)での処理によって透過化した。透過化されると、GV由来の分子は、分化細胞またはPFF(透過化された胎仔線維芽細胞)中へ分散し得る。1つのGV当たり約50から200のPFF細胞を注入し、および注入された卵母細胞を21℃で一晩インキュベートした。この時、GVを卵母細胞から解剖し、およびPFFを含有したものをさらに考慮した。RNAをGVから抽出し、およびcDNAへ逆転写し、およびPCRを使用してPFFからの多分化能遺伝子の発現を検出した。より詳細には、PCRを使用して、nanogおよびOct−4をコードする遺伝子の発現を測定した。β−アクチンレベルをコントロールとして測定した。
【0115】
上述の方法は、これが哺乳動物の分化細胞によって発現されるRNAを濃縮しおよび哺乳動物の転写物を検出することにおいてより高い感度へと導く点で、公知の方法に比して利点を有する。目的は、非常に微量のトータルRNAである、哺乳動物のRNAを検出することであるので、GVの簡易な単離は、大量の精製工程を提供し、およびしたがって感度を改善する。
【0116】
結果
RT−PCRを行って、PFF細胞中においてOct−4およびnanogをコードする多分化能マーカー遺伝子の発現を検出した。β−アクチンの発現をコントロールとして研究し、β−アクチンは常に全ての細胞において発現され、およびアッセイ手順の効率を確実にするためのポジティブコントロールとして役立つ。図1は、アガロースゲル上で実行した場合のRT−PCR反応の結果を示す。当業者は、白色バンドの存在がcDNAの存在を示すことに気付くように、該バンドの強度は、cDNA(遺伝子特異的産物)の量を示す。
【0117】
図1において使用される略語は、以下の通りである
ES − マウス胚性幹細胞(Chemicon製)
PFF − マウス透過化胎仔線維芽細胞 − Alberio et al(2005)Exp Cell Res.307(1):131−41の方法に従って作製
PFFA − アホロートル卵母細胞GV中へ注入されたPFF
PFFX − アフリカツメガエル卵母細胞GV中へ注入されたPFF。
【0118】
図1に示され得るように、研究した全てのサンプルは、β−アクチンについての遺伝子を強力に発現し、これは、各処理からの細胞由来のRNAはRT−PCRによって検出されること、および構成的な高レベル遺伝子発現が処置に関係なく細胞から検出可能であることを実証している。nanogをコードするnanog遺伝子およびOct−4をコードする遺伝子が、ES細胞中で発現され、これは、これらの細胞が多能性であるためと予想される。Oct−4およびnanog(多分化能のマーカー)は、正常な未処理PFF細胞中においては発現されず、何故ならば、これらの細胞は、多能性ではない分化線維芽細胞であるためである。PFF細胞をアホロートル卵母細胞のGV中で一晩インキュベートすると(PPFA)、Oct−4およびnanogの発現が検出された。PFFF細胞を一晩アフリカツメガエル 卵母細胞のGV中でインキュベートすると(PFFX)、Oct−4またはnanogの発現は検出され得なかった。アフリカツメガエル 卵母細胞のGV中のPFF細胞のインキュベーションの2日後、低レベルのOct−4発現が検出されたが、依然としてnanog発現は検出されなかった(データは示さず)。2日後に検出されたOct−4発現は、RT−PCRアッセイの検出能の膨大な増加によってのみ、即ち、複製サイクルを30ラウンドから60ラウンドへ増加させることによってのみ、観察された。PCRの各追加のラウンドは、効率的に感度の倍増であり、したがって、60ラウンドへの増加は、2の30乗の感度増加を示す。増加された感度条件下でさえ、nanog発現は検出され得なかった。
【0119】
結論を言えば、アホロートル卵母細胞は、透過化哺乳動物分化細胞との接触で、18時間のインキュベーション内に、Oct−4およびnanogをコードする多分化能マーカー遺伝子の力強い発現を誘発する。
【0120】
このことは、数日後にOct−4の低レベルの発現を誘発し得るが、nanogの発現は検出され得ないアフリカツメガエル卵母細胞と対照的である。したがって、アホロートル卵母細胞は、アフリカツメガエル卵母細胞よりも、哺乳動物分化細胞中における多分化能マーカー遺伝子の発現を再プログラミングする点で遥かにより有効である。したがって、アホロートル卵母細胞は、分化細胞を胚性幹細胞様細胞へ再プログラミングする点ではるかにより有効である。
【0121】
この実施例および引き続いての実施例において、遺伝子の発現は、該遺伝子によってコードされるRNAをアッセイすることによって測定される。
【実施例2】
【0122】
アフリカツメガエルと比較してのアホロートルおよびチョウザメ
材料および方法
卵子、卵母細胞および卵巣抽出物の作製
アフリカツメガエル卵母細胞および卵子抽出物を、Hutchison et al.,(1988)Development,103,553−566に従って作製した。未受精アフリカツメガエル卵子を、成熟した雌から回収し、および5分間、寒天質除去(dejellying)溶液(20mM TrisHCl pH 8.5、1mM DTTおよび110mM NaCl)中でインキュベートした。寒天質除去後、卵子を0.9%NaCl生理食塩水中で3回、およびプロテアーゼ阻害剤(3μg ml−1ロイペプチン、1μg ml−1ペプスタチンおよび1μg ml−1アプロチニン)を含有する氷冷却抽出緩衝液(20mM Hepes、pH7.5、100mM KCl、5mM MgCl2、2mM β−メルカプトエタノール)中で2回リンスした。卵子を10mlの遠心分離チューブ中へ詰め、および過剰の緩衝液を除去し、その後、4℃で10分間10,000gで遠心分離した。細胞質層を除去し、50μg ml−1サイトカラシンBを補充し、その後、4℃で30分間100,000gで遠心分離した。除去された(cleared)細胞質に10%グリセロールを補充し、および100から200μlアリコート中で液体窒素中に急凍した(snap frozen)。OR2媒体(82.5mM NaCl、2.5mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、1mM NaHCO3、5mM Hepes、pH7.8)中の1mg/mlコラゲナーゼを使用して25℃で2時間卵胞細胞を消化することによって、卵母細胞抽出物を成熟した卵巣から作成した。第4−6段階の卵母細胞をサイズに基づいて選択し、抽出緩衝液中で洗浄し、および卵子抽出物について作製した。
【0123】
アホロートルおよびアフリカツメガエル卵巣抽出物のために、前記卵巣を氷冷抽出緩衝液中で洗浄し、および氷上に5から10の打撃(strokes)を適用してDounceホモジナイザーを使用することによって溶解させた。溶解物を遠心分離し、およびアフリカツメガエル卵子抽出物について記載されるように凍結保存した。
【0124】
チョウザメ(スターレットスタジョーン;学名:Acipenser ruthenus)抽出物を以下のように作製した:卵巣抽出物について、卵巣を氷冷抽出緩衝液中で洗浄し(実施例1におけるカエル卵子抽出物についての通り)、および氷上に20の打撃を適用してDounceホモジナイザーを使用することによって溶解させた。溶解物を遠心分離し、およびアフリカツメガエル卵子抽出物について記載されるように凍結保存した。
【0125】
抽出物中での細胞培養、細胞透過化およびインキュベーション
線維芽細胞を35−45日齢ウシ胎仔または12.5−13.5日齢マウスから単離し、および5%CO2中、ウシについては39℃、マウスおよびヒトについては37℃で、培養培地(CM:10%FBSが補充されたグルタミン、0.1mM β−メルカプトエタノール、2mM 非必須アミノ酸、100IU ml−1ペニシリンおよび100μg ml−1 ストレプトマイシンを含有するDMEM)中で最大5継代の間培養した。線維芽細胞を第13.5日マウスから単離下(マウス胎仔線維芽細胞、MEF)。MEFを5%O2およびCO2中37℃で培養し、および3または4継代で使用した。
【0126】
細胞を80%コンフルエンスまで増殖させ、および実験のために使用した。トリプシン処理後、細胞を透過化緩衝液(PB:20mM Hepes、pH7.3、110mM酢酸カリウム、5mM酢酸ナトリウム、2mM酢酸マグネシウム、1mM EGTA、2mM DTT、およびプロテアーゼ阻害剤)中で洗浄し、および引き続いて氷上で1分15秒間20−30μg ml−1ジギトニン1ml中でインキュベートした(Adam et al(1992)Methods Enzymol.219,97−110)。
【0127】
透過化反応を10mlのPBを添加することによって停止し、続いて4℃で10分間700gにて遠心分離した。これらの条件下で、原形質膜透過化率は95から100%であった。
【0128】
透過化細胞を、エネルギー再生系(ERS:150μg ml−1クレアチンホスホキナーゼ、60mM ホスホクレアチンが補充された卵母細胞/卵子/卵巣抽出物(1,000細胞μl−1抽出物)へ添加した。透過化MEFを、5,000細胞/μlで、20μlの卵母細胞抽出物(アホロートル、チョウザメまたはアフリカツメガエルのいずれか)へ添加し、および15℃で3時間、6時間または一晩インキュベートした。コントロール細胞を20μlのPBと共にインキュベートした。
【0129】
インキュベーション後、0.5mLのPBを添加して細胞をリンスし、次いでこれを5分間3,500Gでペレット化した。上澄みを除去し、およびペレットを必要になるまで−80℃で凍結した。
【0130】
逆転写(RT)PCR反応について
MEF細胞ペレットを収穫し、および−80℃で保存した。トータルRNAを、RNAeasyシステム(Qiagen)を使用して(約100,000細胞から)抽出し、およびDNAse処理し(Ambion)、その後、Superscript IIIシステム(Invitrogen)を使用して逆転写した。2ngのRT反応物をRT−PCRのために使用した。
【0131】
使用したプライマーおよび条件は以下の通りであるB−アクチン:ttctttgcagctccttcgtt、cttttcacggttggccttag(402bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、32サイクル)。Nanog:atgaagtgcaagcggcagaaa、cctggtggagtcacagagtagttc(464bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、35サイクル)。Oct−3/4:gtttgccaagctgctgaagc、caccagggtctccgatttgc(238bp;56℃アニーリング、1分10秒伸長、38サイクル)。RediTaqシステムをPCR(Sigma)のために使用した。マウスES細胞cDNAをポジティブコントロールとして、およびRT無し(no RT)をネガティブコントロールとして使用した。
【0132】
反応産物を、エチジウムブロマイドで染色した標準的な1.2%アガロースゲル上で泳動し、およびUV光下で可視化しおよび撮影した(図11)。ゲル中のレーンは、3時間、6時間、または一晩(18時間)の、アホロートル抽出物(AX);アフリカツメガエル抽出物(XL);またはチョウザメ抽出物(ST)中の細胞、または抽出物で処理されていない細胞(−)から抽出されたRNAに対応する。
【0133】
左のレーンは、分子量についてのマーカーとして機能する、Invitrogen製の100bp DNAラダーを示す。上部のゲルは、アホロートルまたはチョウザメ抽出物で処理した細胞に対応するレーン中に存在するが、アフリカツメガエル抽出物中で処理された細胞、または抽出物で処理されなかった細胞に対応するレーン中には存在しない、nanogプライマーでのPCR増殖由来の予想される464bpDNAを示す。
【0134】
下部のレーンは、ポジティブコントロールとしてのマウスβ−アクチンcDNAの増殖を示す。予想される402bpバンドは予期されるように全てのレーン中にあり、何故ならば、この遺伝子は再プログラミングによって誘発されるのではなく、これは常に全てのマウス細胞中に存在するためであることに注意のこと。これは調節遺伝子でありおよび細胞中において通常低レベルで発現されるために予期されるように、より多くのサイクルのPCRがnanogを検出するために必要である。構造遺伝子について予期されるように、β−アクチンは豊富に発現される。
【0135】
これらの実験において、Oct−4発現は活性化されない。Oct−4プロモータはメチル化によって負に調節されるので、これは予期される。したがって、活性化は、転写活性化の前兆としての該プロモータの脱メチル化を必要とし、およびこれらの実験において使用された短時間のインキュベーション時間は該プロモータを完全まで脱メチル化するに十分ではないことが予期される。
【0136】
これと一致して、実施例1および5(注入実験)は、nanogは、アホロートル 卵母細胞のGV中への注入後に活性化するのが比較的容易であることを示している。これは活性化のために1日必要とする。Oct−4転写は約5日必要とし、Oct−4プロモータを脱メチル化するために必要とされる時間を恐らく反映している。Nanogは、前もっての脱メチル化を必要としないが、アフリカツメガエル卵母細胞中へ注入された細胞中において活性化されない。
【実施例3】
【0137】
エピジェネティックマーカーを使用する再プログラミングの同定
より多能性への分化細胞の再プログラミングを探す別の方法は、細胞のエピジェネティックプロフィールを見ることである。エピジェネティックマークは、分化細胞のタンパク質(クロマチン)およびDNAの複合体で容易に見られる。多くの場合において、エピジェネティックマークは、細胞中のある遺伝子の転写を永久的に不活性化する。エピジェネティックマークは、しばしば、ヘテロクロマチンとして公知の構造へ堅く圧縮されているDNAの広範囲の領域中にクラスター化されている。多能性状態への分化細胞の再プログラミングを活性化することは、これらの抑制性エピジェネティックマークの一部または全ての逆転を必要とし、このようにして大抵のDNAを活性化へアクセス可能にする。この点において、胚性幹細胞等の多能性細胞は、典型的な分化細胞よりも遥かに少ないヘテロクロマチンおよび遥かに少ないエピジェネティックマークを含有する。恐らく、これは、多分化能に必須と思われる特性である、活性化のための多能性細胞中の全てまたは大抵の遺伝子の明白なアクセス可能性を反映している。
【0138】
2つのエピジェネティックマークが、典型的に、不活性遺伝子と関連している。大抵の細胞のDNAは、CpG島中のシトシン残基へ共有結合されているメチル基(CH3)を含有する。メチル化DNA(CH3−DNA)は、ヘテロクロマチン中において非常に顕著であり、ここで、これは、免疫化学実験においてCH3−DNA特異的抗体により明るく染色している核スポットとして検出され得る。CH3−DNAに加えて、第2のエピジェネティックマークは、クロマチンと呼ばれるより秩序的な構造を核DNAへ与えるためにDNAへ結合されている小さな高電荷タンパク質である、ヒストンの特定の残基へのCH3基の付加である。一般に、不活性遺伝子は、ヒストンH3のリジン残基9(K9)、H3K9へ付加されたCH3基の存在によって特徴付けられる。この場合、メチル化ヒストン(CH3−ヒストン)残基はDNAへ結合され、およびこの転写活性化を阻害する。多能性状態への細胞の遺伝子発現を再プログラミングするために、分化細胞核中のCH3−DNAおよびCH3−ヒストンのレベルを減少させることが必要である。この点で、胚性幹細胞は、低レベルのCH3−DNAおよびCH3−ヒストン残基を含有する。
【0139】
図3は、マウス胎仔線維芽細胞(PFF)のクロマチン内に存在するエピジェネティックマークを除去する、アホロートルの卵巣から作製された抽出物の能力を示す。より詳細には、図3は、DNAメチル化を除去する前記抽出物の能力を示す。コントロール未処理細胞(A)および3時間アホロートル卵巣由来の抽出物(AxOvEx)中でインキュベートされた細胞(B)を、緑色の蛍光を発するFITC−抗5−MeC抗体を添加することによりCH3−DNAの存在について免疫組織化学によって分析した。しかし、黒白図において、これは、画像A、B、EおよびFにおける明るいスポットして見られ得る。コントロール細胞(C)および未処理細胞(D)もまた、抽出物中の細胞の透過性を評価するためにヨウ化プロピジウムで処理した。ヨウ化プロピジウムは赤色に染色し、しかし、黒白画像において、これは、CおよびDにおいて細胞を実質的に塗り潰す暗い灰色として見られる。図EおよびFは、ヨウ化プロピジウムおよびFITC−抗5−MeC抗体の両方で染色された細胞を示す。3時間抽出物中でインキュベートされたPFFは、コントロール細胞と比較して遥かに減少されたレベルのCH3−DNA染色を含む。データは、アホロートル 卵巣由来の抽出物が、転写的に抑制されたDNAを示す主なエピジェネティックマークの1つを排除する、PFFのDNAを脱メチル化する強い能力を有していることを示している。
【0140】
図4は、アホロートル卵巣抽出物(AxOvEx)中のPFFのインキュベーションがH3K9染色を排除し、したがって、エピジェネティックマークの除去を示すことを示している。PFFは、3時間、アホロートル 卵巣抽出物中でインキュベートした(処理細胞)。処理細胞および未処理コントロールPFFを、転写抑制と関連するヒストンの主な修飾を同定する、H3K9染色の存在について免疫組織化学によって分析した。A(未処理)およびB(処理)細胞中において、緑色の蛍光を発するFITC−抗H3K9抗体と共に細胞をインキュベートした。黒白図において、この染色は明るいスポットとして見られ得る。DNAの位置を明らかにするために、両方のグループの細胞もまたDNA特異的色素DAPIで処理した。この染色は青色の蛍光を発し、しかし、黒白画像においては、これは暗い灰色として見られ得る;図4中のCおよびDを参照のこと。H3K9染色およびDAPI染色からの蛍光画像を、各サンプルについて統合した。データは、アホロートル卵巣由来の抽出物中でのPFFの処理は、PFFのクロマチンからH3K9染色を実質的に除去することを示しており、より多能性の状態への再プログラミングと一致している。
【実施例4】
【0141】
原始動物由来のNanogのクローニング
アホロートルNanog全長cDNAを以下のように単離した:アホロートル卵巣cDNAを、以下を使用してテンプレートとして使用した:
【0142】
【化1】
(それぞれ、ホメオドメインへのおよびホメオドメイン内のアミノ酸配列について)。
【0143】
PCR(56℃アニーリング、1分10秒伸長、35サイクル)によって、約260bpフラグメントを作製した。
【0144】
このフラグメントをプラスミドベクターへクローン化し、および配列決定した。RACE−レディー(RACE−ready)アホロートル卵巣cDNAプライマーを使用して、プライマーを5’および3’RACEについて設計した。
【0145】
Smart RACEキット(Clontech)を使用し、およびプライマーおよびcDNAを作製し、およびRACE反応をキット指示書に従って行った。対応のキットプライマーと共に、使用したRACEプライマーは以下であった:
【0146】
【化2】
5’RACEは約360bpフラグメントを作製し、および3’RACEは、約1150bpおよび約750bpの2つのフラグメントを作製し、アホロートルNanog cDNAの選択的なポリアデニル化を反映している。これらの産物をTAクローン化し、および配列決定した。3つの重複する産物の配列コンティグを構築し、この最長で約1.7kbの全長アホロートルNanog cDNA配列を与える。アホロートルnanogアミノ酸配列を、種々の哺乳動物由来のnanog配列と比較して、図9に与える(nanogは、以前に非哺乳動物種から単離されていない)。
【実施例5】
【0147】
アホロートル卵母細胞によるヒト成熟細胞の再プログラミング
透過化BJヒト成人原発性線維芽細胞(ATCCセルバンクコレクションhttp://www.lgcpromochem−atcc.com/(CRL−2522)から)を、実施例1におけるマウス実験について記載されるように、アホロートル卵母細胞の卵核胞(核)へ注入し、および注入された卵母細胞を18℃で5日間インキュベートした。
【0148】
卵核胞をグループ中の前記卵母細胞から解剖し、およびヒト細胞を含有するものを分析のために凍結した(図10A)。
【0149】
市販の抽出キット(RNAeasyキット)を使用して、ゲノムDNA汚染を回避するために、トータルRNAを抽出しおよびDNAse I処理した。各サンプルから抽出されたRNAを逆転写し、相補DNA(cDNA)を作製した。
【0150】
下記の遺伝子について設計された特異的なプライマーを使用して、標準的なポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅のために前記cDNAを使用した:
【0151】
【化3】
【0152】
図10Bに示されるように、Nanog発現が、48時間後、アホロートル卵母細胞中でインキュベートされた細胞中で検出される。対照的に、Nanog発現は、アフリカツメガエル注入卵母細胞中において検出されない。Oct−4発現は、5日後、アホロートル注入卵母細胞中において検出される。
【0153】
したがって、成人ヒト細胞(分化細胞)は、これらがアホロートル卵母細胞の核中へ注入された後、Oct−4およびnanog遺伝子を発現するように再プログラミングされた。アフリカツメガエル卵母細胞中への注入は、nanogの活性化を生じさせない。
【0154】
これらの結果は重要であり、何故ならば、これらは、ヒトおよびマウス細胞の両方が、本発明の特性(例えば、原始脊椎動物体制)を有する冷血脊椎動物由来の細胞/細胞抽出物によって再プログラミングされ得ること、ならびに成体細胞が再プログラミングされ得ることを示しているためである。分化成体細胞は、これらの発達が依然として進行中でありおよびクロマチン上に与えられた永久的なエピジェネティックマークを有していないかもしれない胎児細胞よりも再プログラミングするのがより困難である。
【0155】
室温ではなく18度で注入卵母細胞をインキュベートすることは、注入卵母細胞の増強された生存性における利点を示し、これは少なくとも5日間培養され得、このことはOct−4の活性化を誘発するに十分な時間を可能にする。また、哺乳動物ゲノムからの転写は温度依存性であるので(Alberioら、2005)、この温度での転写の抑制は、再プログラミングをさらに助けるかもしれない。
【実施例6】
【0156】
nanog結合部位を含有するレポーター遺伝子の活性化
nanogが存在することを示すために、nanog結合部位を含むレポーター遺伝子(例えば、GATA−4のプロモータ)をnanogが活性化し得ることを示すことが可能である。図12において、レポーター遺伝子を活性化するアホロートルnanog(Axnanog)の能力の実験的試験の結果が示される。GATA−4プロモータを、蛍ルシフェラーゼ(暗闇で蛍を輝かせるタンパク質)をコードするレポーターへ融合する。このタンパク質は、照度計と呼ばれる機械で測定され得る光を発する。アウトプットが定量され得る。
【0157】
この実験において、エンプティーDNA(empty DNA)を、ヒトnanogおよびAxnanogの発現を駆動する2つのクローンと比較した。
【0158】
図12についての方法
NIH3T3細胞を24ウェルプレートへ播種し、およびLipofectamine 2000試薬(Invitrogen)を使用して、0.25ug/ウェル GATA−4レポーター、0.05ug/ウェル pTK−RL(Promega)、および空ベクター(cDNA)、ヒトNanog、またはアホロートルnanogタグ無し(untagged)(CMV)もしくはRFPタグ有り(mR)のいずれかをトランスフェクトした。トランスフェクション後24時間の細胞を収穫し、およびDualルシフェラーゼアッセイ(Promega)について処理した。RLU(相対的ルシフェラーゼ単位)を前記空ベクターコントロールへ比例する(ratioed)。バーは標準偏差を示す;n=3。
【実施例7】
【0159】
アホロートル中のnanogの単離の確認
Axnanogの発現プロフィールを調べ、およびマウスnanog遺伝子のプロフィールと比較するために比較した。Axnanogは、アホロートル発達の間に多分化能においてこれが重要な役割を果たすかのように発現されると予想されるまさにこのときに、発現されることが、判った。
【0160】
マウス胚において、nanog遺伝子は、内細胞塊および初期胚盤胞の細胞中において初期発達の間に非常に短期間発現される。これは、この期間に多分化能の維持において必須の役割を果たすことが知られている。Axnanogが同じ期間の間に発現されるかどうかを試験するために、我々は、初期胚におけるこの発現を分析した。低レベルの母性Axnanog RNAが初期および後期卵割段階(EC;LC)の間に検出可能であり、次いで、強い発現が第9段階で開始し、アホロートル胚の接合子ゲノム(zygotic genome)からの転写が開始する際、中期胞胚を特徴とする。発現は初期原腸胚(第10段階)においてピークに達し、および後期原腸胚(第12段階)において低下する。発現は、より後の段階において検出不可能である。したがって、Axnanogは、多能性細胞の存在と一致する発達の時期の間に発現され、および発現は、原腸胚段階後に消滅され、このとき、全細胞が体細胞系列への献身(commitment)を受けたと考えられ、および多能性であると予想されない。
【0161】
初期胚中のAxNanog発現
トリアゾールを使用し、続いてDNAse Iで処理する標準方法を使用して、図2に示される各段階(第8、9、10、12、16、20、25、30、35および40発達段階)で、5つのアホロートル胚からRNAを抽出した(Bordzilovskaya et al;1989.Developmental stage series of axolotl embryos.In Developmental Biology of the Axolotl.(J.B.ArmstrongおよびG.M.Malacinski編),pp.210−219.New York:Oxford University Press.)。
【0162】
Superscript(Invitrogen)を使用して前記RNAを逆転写した。各段階由来の0.5胚当量のcDNAを、Axnanog(Fl:GTTCCAGAACCGAAGGATGA;Rl:CGAAGGGTACTGCAGAGGAG 58C、45秒、72度 1分)またはアホロートルオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC;Fl:TGCGTTGGTTTAAAGCTCTC;Rl:ACATGGAAGCTCACACCAAT 56C 45秒;72C 1分)についてのプライマーと共にPCRにおいて使用し、構成的に発現される遺伝子を、cDNA完全性についてのポジティブコントロールとして使用した。PCRは35サイクル(Axnanog)または30サイクル(ODC)であった。
【0163】
反応産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.2%アガロースゲル上で分離し、次いでUV光下で撮影した(図2)。
【実施例8】
【0164】
DNA脱メチル化確認
グローバルDNA脱メチル化を、以前に記載されたプロトコル(Habib et al,(1999).Exp.Cell Res.249,46−53.)を僅かに変更して使用して、フローサイトメトリーによって確認した。
【0165】
懸濁液中の細胞を、連続的な低速(300g)ペレット化および穏やかな再懸濁工程へ供し(0.1%tween 20および1%ウシ血清アルブミン(BSA)が補充されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄)、次いで、20分間−20℃で冷凍された9volのメタノール/PBS(88%メタノール/12%PBS vol/vol)で固定した。室温にてPBST−BSAで2回洗浄後、細胞を37℃で30分間2N HClで、次いで5分間Tris HCL緩衝液(pH8.8)で連続的に処理した。次いで、細胞を、5%BSAを補充したPBS−T製のブロッキング溶液で37℃にて1時間処理し、続いて一晩4℃で抗−5−MeC抗体(where)と共にインキュベートした。
【0166】
次いで、細胞をPBS−Tで3回連続的にリンスし、およびPBST−BSA中に1対200で希釈されたフルオレセインイソチオシアネート(Dako,Trappes,フランス)へ結合されたウサギ抗−マウス免疫グロブリンと共に、室温で1時間インキュベートした。最終的に、サンプルをPBSで3回洗浄し、およびフローサイトメトリー前の30分間ヨウ化プロピジウム(PI)(PBS中50mg/ml)で染色した。分析をEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter)によって行った。
【0167】
フローサイトメトリーによってH3K9およびHPlアルファの変化を検出するために、類似のプロトコルを使用した。簡単に言えば、1%BSAおよび0.1%Tween 20(PBST−BSA)を補充したpH7.4 PBSで細胞を2回洗浄し、次いで、20分間−20℃で冷凍された9volのメタノール/PBS(88%メタノール/12%PBS vol/vol)で固定した。
【0168】
次いで、5%BSAが補充されたPBS−T製のブロッキング溶液で37℃にて細胞を1時間処理し、続いて一晩4℃で抗−トリメチル化H3K9または抗−HP1アルファ抗体と共にインキュベートした。次いで、細胞をPBS−Tで3回連続的にリンスし、およびそれぞれPBST−BSA中に1対200で希釈されたフルオレセインイソチオシアネート(Dako,Trappes,フランス)へ結合されたDunkey抗ウサギ(1:100,Juckson USA)またはヤギ抗−マウス免疫グロブリンと共に、室温で1時間インキュベートした。
【0169】
最終的に、サンプルをPBSで3回洗浄し、およびフローサイトメトリー前の30分間ヨウ化プロピジウム(PI)(PBS中50mg/ml)で染色した。分析をEpics XLフローサイトメーター(Beckman Coulter)によって行った。フローサイトメトリーの結果を図16および17中に与える。
【0170】
議論
前記細胞を、CH3−DNa抗体およびヒストンH3K9抗体での蛍光染色に基づいて選別し、および次いで、細胞の何パーセントが完全制御レベの染色を有するか、および何パーセントが経時で減少された蛍光を示すかについて検査した。
【0171】
図が示すように、両方の実験において、細胞中の蛍光の全体レベルが減少される。これは、前の結果を確認し、およびメチル化DNAおよびヒストンH3K9の低下(loss)が活性化されていることを実証する。
【実施例9】
【0172】
ヒツジクローニングを増強することにおけるアホロートル卵母細胞抽出物の使用
本発明の細胞および細胞抽出物は、核移植(NT)前にアホロートル 卵母細胞抽出物と共に細胞をインキュベートすることによって、ヒツジクローニング等のクローニング法を増強することにおいて使用され得る。
【0173】
Alberioら(2005)によってウシ細胞について記載されるように、ヒツジ線維芽細胞を透過化した。細胞を3時間18℃でアホロートル卵母細胞抽出物中でインキュベートし、次いでNTのための核ドナーとして使用した。透過化細胞は、膨張しおよび丸い形状で顕微鏡下で通常容易に認識され、およびしたがってNTのために選択した。核移植法を、Lee et al.,(2006)Biol Reprod.74:691−8によって記載されるのと同一の方法で行った。培養中で7日後、胚盤胞への発達を顕微鏡下で評価した。5つのクローン化胚が7日後に胚盤胞へ発達し、アホロートル抽出物中でインキュベートされた細胞はNTについての生存可能なドナーであることを示している。
【0174】
この実験は、アホロートル 卵母細胞抽出物への哺乳動物体細胞の暴露は、哺乳動物のクローン化胚の着床前発達について有害ではないことを示した。
【0175】
これらの胚は、本発明の抽出物へ暴露された細胞で作製されたクローン化胚のターム(term)への発達において改善を示すことが予想される。胚の妊娠および発育は、継続中である。
【実施例10】
【0176】
再プログラミングのためのキット
本発明の細胞および細胞抽出物は、本発明の方法における使用のためにキットの形態で提供され得る。これらのキットは、好ましくは、細胞/細胞抽出物試薬、および以下の少なくとも1つを含有する。
【0177】
使用のための指示書;再プログラム化細胞の再分化のための前駆体媒体;再プログラミングを行うための使い捨て備品、例えば、マルチウェルプレート、ディスペンサー、例えば、予め充填されたピペット;再プログラミングされる分化細胞、ならびに透過化緩衝液。
【0178】
キットは、再分化細胞タイプに従ってカスタマイズされ得、これは、前駆体媒体および指示書が細胞タイプおよび最終用途に従って変化し得る点で必要とされる。
【実施例11】
【0179】
薬学的製剤および投与
本発明のさらなる態様は、薬学的にまたは獣医学的に許容されるアジュバント、希釈剤もしくは担体と共に本発明の第1態様に従う化合物を含む薬学的製剤を提供する。
【0180】
好ましくは、製剤は、1日用量もしくは単位、1日サブ用量またはこの適切なフラクションを含有する単位投薬量の活性成分である。
【0181】
本発明の化合物は、通常、経口または任意の非経口経路によって、活性成分を含む約薬学的製剤の形態で、場合により非毒性有機物、または無機物、酸、または塩基、付加塩の形態で、医薬的に許容される投薬形態で、投与される。治療される障害および患者、ならびに投与の経路に依存して、組成物は種々の用量で投与され得る。
【0182】
ヒト療法において、本発明の化合物は、単独で投与され得るが、通常、意図される投与経路および標準的な薬学的実務に関して選択される好適な薬学的賦形剤 希釈剤または担体共に投与される。
【0183】
例えば、本発明の化合物は、即時、遅延または制御放出適用のための、矯味矯臭剤または着色剤を含有し得る、錠剤、カプセル剤、小卵(ovules)、エキシリル剤、液剤または懸濁剤の形態で、経口、経頬または舌下投与され得る。本発明の化合物または、海綿体注射(intracavernosal injection)によって投与され得る。
【0184】
このような錠剤は、賦形剤、例えば、微結晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウムおよびグリシン、崩壊剤、例えば、スターチ(好ましくは、コーン、ジャガイモまたはタピオカスターチ)、ナトリウムスターチグリコレート(sodium starch glycollate)、クロスカルメロースナトリウムおよび特定のコンプレックスシリケート、ならびに造粒結合剤、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシ−プロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアを含有し得る。さらに、滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリルおよびタルクが含まれ得る。
【0185】
類似タイプの固体組成物はまた、ゼラチンカプセル剤中の充填剤として使用され得る。この点で好ましい賦形剤としては、ラクトース、スターチ、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液および/またはエキシリル剤について、本発明の化合物は、種々の甘味剤または矯味矯臭剤、着色物質または色素、乳化剤および/または懸濁化剤、ならびに水、エタノール、ポリエチレングリコールおよびグリセリン等の希釈剤、ならびにこれらの組み合わせと共に組合され得る。
【0186】
本発明の化合物はまた、非経口的に、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内(intraventricularly)、胸骨内(intrasternally)、頭蓋内、筋肉内または皮下に投与され得、またはこれらは、注入技術によって投与され得る。これらは、他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするに十分な塩またはグルコースを含有し得る、滅菌水溶液の形態で最も使用される。水溶液は、場合により、適切に(好ましくは、3から9のpHへ)緩衝化されるべきである。滅菌条件下で好適な非経口製剤の作製は、当業者に周知の標準的な薬学的技術によって容易に達成される。
【0187】
非経口投与のために好適な製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る、水性または非水性滅菌注射溶液;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量または複数用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアル中に与えられ得、および使用の直前に滅菌液体担体(例えば、注射用水)を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存され得る。即席の注射溶液および懸濁液は、前述した種類の滅菌粉剤、顆粒剤および錠剤から作製され得る。
【0188】
ヒト患者への経口または非経口投与のために、本発明の化合物の1日投薬レベルは、通常、1mg/kgから30mg/kgである。したがって、例えば、本発明の化合物の錠剤またはカプセル剤は、場合により、単独でまたは一度に2回以上で投与のための1用量の活性化合物を含有し得る。いずれにしても、医師は、個々の患者に最も好適である実際の投薬量を決定し、およびこれは特定の患者の年齢、体重および応答で変化する。上記の投薬量は平均的な場合の例である。当然ながら、より高いまたはより低い投薬量範囲がふさわしい(merited)個々の場合が存在し得、およびこのようなものは本発明の範囲内である。
【0189】
本発明の化合物はまた、鼻腔内にまたは吸入によって投与され得、および噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A3または1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA3)、二酸化炭素または他の好適なガスを使用して、加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーまたは乾燥粉末の形態で好都合なことに送達される。加圧エアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するバルブを提供することによって測定され得る。加圧容器、ポンプ、スプレーまたは噴霧器は、例えば、滑沢剤(例えば、ソルビタントリオレアート)をさらに含有し得る、エタノールおよび溶媒としての噴射剤の混合物を使用して、活性化合物の溶液または懸濁液を含有し得る。呼吸器または注入器における使用のためのカプセル剤およびカートリッジ(例えば、ゼラチン製)は、本発明の化合物および好適な粉末基剤(例えば、ラクトースまたはスターチ)の粉末混合物を含有するように製剤化され得る。
【0190】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、各計量された用量または「パフ」が患者への送達のための好適な用量の本発明の化合物を送達するように、好ましくはアレンジされる。エアロゾルでの全体的な1日用量は、患者ごとに変化し、および単回用量で、またはより通常には、1日を通して分割用量で投与され得ることが理解される。
【0191】
または、本発明の化合物は、坐剤または膣坐薬の形態で投与され得、またはこれらは、ローション剤、液剤、クリーム、軟膏剤または散布剤の形態で典型的に適用され得る。本発明の化合物はまた、例えば、皮膚用パッチ剤の使用によって、経皮投与され得る。これらはまた、特に眼の疾患を治療するために、眼経路によって投与され得る。
【0192】
眼の使用のために、本発明の化合物は、場合により保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)と組み合わされた、等張のpH調節された滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、等張のpH調節された滅菌生理食塩水中の液剤として、製剤化され得る。または、これらは、ワセリン等の軟膏中に製剤化され得る。
【0193】
皮膚への局所的な適用について、本発明の化合物は、例えば、以下の1以上との混合物中に懸濁化または溶解された活性化合物を含有する好適な軟膏剤として製剤化され得る鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水。または、これは、例えば、以下の1以上の混合物中に懸濁化または溶解された好適なローションまたはクリームとして製剤化され得る鉱油、ソルビタンモノステアラート、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0194】
口腔における局所投与に好適な製剤としては、香味付けされた基剤、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤、例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア中に活性成分を含むトローチ(pastilles);ならびに、好適な液体担体中に活性成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0195】
一般的に、ヒトにおいて、本発明の化合物の経口または局所投与は、好ましい経路であり、最も簡便である。レシピエントが嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の障害に苦しむ場合、薬物は、非経口的に、例えば、舌下または経頬的に投与され得る。
【0196】
獣医学的使用のために、本発明の化合物は、通常の獣医学的実務に従って適切に受理され得る製剤として投与され、および獣医師は、特定の動物について最も適切である投与レジメンおよび投与経路を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】胚性幹細胞(ES)、透過化胎仔線維芽細胞(PFF)、ならびにアホロートル(PFFA)またはアフリカツメガエル卵母細胞(PFFX)のいずれかのGV中へ注入されたPFF中における、β−アクチン、nanogおよびOct−4遺伝子の発現を探すRT−PCR実験の結果を示す。
【図2】Bordzilovskaya et al;1989.Developmental stage series of axolotl embryos.In Developmental Biology of the Axolotl(J.B.ArmstrongおよびG.M.Malacinski編),pp.210−219.New York:Oxford University Pressに記載される40の発達段階に渡るAxananog発現プロフィール。EC=初期卵割、LC=後期卵割。
【図3】アホロートル卵巣由来の抽出物中におけるPFFのインキュベーションは、メチル化DNAの量を低下させることを示す。分化細胞は、未処理(コントロール)であったか、または3時間(3h)アホロートル卵巣から作製した抽出物(AxOvEx)中でインキュベートした。メチル化DNAについての抗体で細胞を染色した。
【図4】アホロートル卵巣抽出物(AvOvEx)中におけるPFFのインキュベーションは、H3K9染色を排除することを示す。
【図5】魚類および両生類における進化的に保存された原始的なおよび誘導された成体体制を示す骨格の比較を記載する。A.背面から示されたハイギョ骨格。B.側面から示された硬骨魚。C.背面から示されたサンショウウオ(アホロートル)骨格。D.背面から示されたカエル(アフリカツメガエル)骨格。小さな矢印は肋骨を示す。大きな矢印は骨盤骨を指し示す。
【図6】クラスV POUドメイン転写因子(Oct−4様遺伝子)の系統発生分析を示す。遺伝子を前記種の卵巣から単離し、および単純性(parsimony)によって比較し、最も密接に関連する配列を決定した。同一のクラスター内のグループは、最も密接に関連している。
【図7】生殖細胞質の有無の指標としての冷血脊椎動物の細胞質中の生殖細胞特異的RNAの分布の例を示す。
【図8】Clustal−Wを使用するマウスおよびアホロートル Oct−4のアミノ酸アラインメント。
【図9】Clustal−Wを使用するマウス、ラット、ヒト、ウシ、イヌ、オポッサム、ヒヨコおよびアホロートル由来のnanogのアミノ酸アラインメント。
【図10】A−哺乳動物細胞の注入後2日に単離されたアホロートル卵核胞 B−ヒト原発性線維芽細胞が注入された卵母細胞を記載日で回収し、およびアクチン、NanogおよびOct−4の発現をRT−PCRによって分析した。
【図11】アフリカツメガエル、アホロートルおよび/またはチョウザメ抽出物への分化細胞の暴露後のNanogおよびβ−アクチン発現を示すRT−PCRゲル。
【図12】nanog結合部位が存在するレポーター遺伝子の活性化。
【図13】Clustal Wを使用してのOct−4 DNA結合ドメイン配列比較−高度に保存された種。
【図14】Clustal Wを使用してのOct−4 DNA結合ドメイン配列−高度に保存された種および無関係の種、例えば、アフリカツメガエル(XLPOU−60およびXLPOU−91)ならびにゼブラフィッシュ(zPou2)。
【図15】アフリカツメガエルおよびゼブラフィッシュ中の保存されていないOct−4等価物と比較しての、高度に保存されたOct−4遺伝子の配列同一性を示す表。
【図16】アホロートル卵母細胞抽出物(AOC)中のDNAメチル化を、5−メチルシトシンについての染色によって評価した。処理の1および3時間後にFACS(蛍光活性化細胞選別装置)によって処理細胞を選別した。さらに、アピラーゼ(ATPアーゼ阻害剤)を補充されたグループを、該プロセスがエネルギー依存性であることを示すために含めた。AP:透過化コントロール後。
【図17】アホロートル卵母細胞抽出物中においてインキュベートされた細胞中のトリメチル化ヒストンH3リジン9(TriH3K9)を、特異的抗体でTriH3K9を染色することによって評価した。抽出物中における処理インキュベーションの1および3時間後、処理細胞をFACSによって選別した。さらに、アピラーゼ(ATPアーゼ阻害剤)を補充されたグループを、該プロセスがエネルギー依存性であることを示すために含めた。AP:透過化コントロール後。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚由来の細胞またはこの細胞抽出物へ分化細胞、または分化細胞の核を暴露することを含み、前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核を製造する方法。
【請求項2】
再プログラム化細胞が胚性幹細胞様細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再プログラム化細胞、および/または再プログラム化細胞核が、Oct−4を発現する、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
再プログラム化細胞、または再プログラム化細胞核が、nanogを発現する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
再プログラム化細胞、または再プログラム化細胞核が、多能性である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物中のOct−4および/またはnanogが、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4およびヒトnanogタンパク質と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞中のOct−4および/またはnanogが、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
冷血脊椎動物が、両生類、爬虫類および魚類からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
冷血脊椎動物が、サンショウウオ、カメ、トカゲ、ワニ、メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ);軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメなど);セミオノータス目(ガー);アミア目(アミア);肺魚亜綱(ハイギョ);およびシーラカンス亜綱(シーラカンス)を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
冷血脊椎動物が、サンショウウオ、カメ、ハイギョおよびチョウザメを含む群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
冷血脊椎動物がサンショウウオである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サンショウウオがアホロートルまたはブチイモリ属である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
冷血脊椎動物がチョウザメである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
卵母細胞、卵子または初期胚の細胞抽出物が、前記卵母細胞、卵子または初期胚の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
分化細胞が透過化される、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
分化細胞が真核細胞である、請求項の1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
分化細胞が哺乳動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分化細胞がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18の方法に従って製造された再プログラム化細胞。
【請求項20】
請求項2から18の方法に従って製造された胚性幹細胞様細胞。
【請求項21】
請求項1から18の方法に従って製造された再プログラム化細胞核。
【請求項22】
(a)請求項1から18のいずれかに記載されるように、再プログラム化細胞を製造すること;および
(b)同一タイプ、または異なるタイプの分化細胞へ、これが誘導される前記分化細胞へ、前記再プログラム化細胞を再分化すること、
を含む再分化細胞を製造する方法。
【請求項23】
再分化が前駆体媒体を使用して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22または23の方法に従って製造された再分化細胞。
【請求項25】
前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導される単離された細胞または細胞抽出物。
【請求項26】
抽出物が、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む、請求項25に記載の細胞抽出物。
【請求項27】
請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核または請求項24に記載の再分化細胞、ならびに医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
請求項25および26に記載の有効量の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の有効量の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24の方法によって製造された有効量の再分化細胞を、動物へ投与することを含む、細胞の置換または再生を必要とする疾患を治療する方法。
【請求項30】
医薬としての使用のための、請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24に記載の再分化細胞。
【請求項31】
細胞の置換または再生を必要とする疾患の治療のための医薬の製造における、請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24に記載の再分化細胞の使用。
【請求項32】
疾患が、神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中)、皮膚交代(skin alternation)、熱傷、心疾患、糖尿病、変形性関節症および関節リウマチを含む群から選択される、請求項29に記載の方法または請求項30または31に記載の使用。
【請求項33】
疾患が神経疾患である、請求項32に記載の方法または使用。
【請求項34】
神経疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中を含む群から選択される、請求項33に記載の方法または使用。
【請求項35】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導された細胞または細胞抽出物と、前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、または抽出物を使用するための指示書とを含む、分化細胞を再プログラミングするため、または分化細胞の核を再プログラミングするためのキットであって、前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、キット。
【請求項36】
再プログラム化される1以上の分化細胞をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
再プログラム化細胞の再分化のさらなる工程を行うための前駆体媒体をさらに含む、請求項35または36のいずれかに記載のキット。
【請求項38】
請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物へクローン化される細胞を暴露することを含む、細胞クローニングを増強する方法。
【請求項39】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される方法。
【請求項40】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される単離された細胞または細胞抽出物。
【請求項41】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される組成物。
【請求項42】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される使用。
【請求項43】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される部品のキット。
【請求項1】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚由来の細胞またはこの細胞抽出物へ分化細胞、または分化細胞の核を暴露することを含み、前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、再プログラム化細胞または再プログラム化細胞核を製造する方法。
【請求項2】
再プログラム化細胞が胚性幹細胞様細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再プログラム化細胞、および/または再プログラム化細胞核が、Oct−4を発現する、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
再プログラム化細胞、または再プログラム化細胞核が、nanogを発現する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
再プログラム化細胞、または再プログラム化細胞核が、多能性である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞または細胞抽出物中のOct−4および/またはnanogが、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4およびヒトnanogタンパク質と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚の細胞中のOct−4および/またはnanogが、それぞれ、ヒト転写因子Oct−4またはヒトnanogタンパク質のDNA結合ドメイン(DBD)と少なくとも69%アミノ酸同一性を有する、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
冷血脊椎動物が、両生類、爬虫類および魚類からなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
冷血脊椎動物が、サンショウウオ、カメ、トカゲ、ワニ、メクラウナギ目(Hyperotreti)(メクラウナギ);ヤツメウナギ目(Hyperoartia)(ヤツメウナギ);軟骨魚綱(Chondrichthyes)(サメ、エイ、ガンギエイ、キメラ);軟質類(Chondrostei)(ビチャー、チョウザメ、ヘラチョウザメなど);セミオノータス目(ガー);アミア目(アミア);肺魚亜綱(ハイギョ);およびシーラカンス亜綱(シーラカンス)を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
冷血脊椎動物が、サンショウウオ、カメ、ハイギョおよびチョウザメを含む群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
冷血脊椎動物がサンショウウオである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サンショウウオがアホロートルまたはブチイモリ属である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
冷血脊椎動物がチョウザメである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
卵母細胞、卵子または初期胚の細胞抽出物が、前記卵母細胞、卵子または初期胚の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
分化細胞が透過化される、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
分化細胞が真核細胞である、請求項の1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
分化細胞が哺乳動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
分化細胞がヒトである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から18の方法に従って製造された再プログラム化細胞。
【請求項20】
請求項2から18の方法に従って製造された胚性幹細胞様細胞。
【請求項21】
請求項1から18の方法に従って製造された再プログラム化細胞核。
【請求項22】
(a)請求項1から18のいずれかに記載されるように、再プログラム化細胞を製造すること;および
(b)同一タイプ、または異なるタイプの分化細胞へ、これが誘導される前記分化細胞へ、前記再プログラム化細胞を再分化すること、
を含む再分化細胞を製造する方法。
【請求項23】
再分化が前駆体媒体を使用して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項22または23の方法に従って製造された再分化細胞。
【請求項25】
前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導される単離された細胞または細胞抽出物。
【請求項26】
抽出物が、卵母細胞、卵子、または初期胚細胞の核または卵核胞(GV)由来の物質を含む、請求項25に記載の細胞抽出物。
【請求項27】
請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、および医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項28】
請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核または請求項24に記載の再分化細胞、ならびに医薬的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む、薬学的組成物。
【請求項29】
請求項25および26に記載の有効量の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の有効量の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24の方法によって製造された有効量の再分化細胞を、動物へ投与することを含む、細胞の置換または再生を必要とする疾患を治療する方法。
【請求項30】
医薬としての使用のための、請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24に記載の再分化細胞。
【請求項31】
細胞の置換または再生を必要とする疾患の治療のための医薬の製造における、請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物、ならびに/または請求項19に記載の再プログラム化細胞および/または請求項21に記載の再プログラム化細胞核、ならびに/または請求項24に記載の再分化細胞の使用。
【請求項32】
疾患が、神経疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中)、皮膚交代(skin alternation)、熱傷、心疾患、糖尿病、変形性関節症および関節リウマチを含む群から選択される、請求項29に記載の方法または請求項30または31に記載の使用。
【請求項33】
疾患が神経疾患である、請求項32に記載の方法または使用。
【請求項34】
神経疾患が、パーキンソン病、アルツハイマー病、脊髄損傷、脳卒中を含む群から選択される、請求項33に記載の方法または使用。
【請求項35】
冷血脊椎動物の卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚から誘導された細胞または細胞抽出物と、前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚、または抽出物を使用するための指示書とを含む、分化細胞を再プログラミングするため、または分化細胞の核を再プログラミングするためのキットであって、前記冷血脊椎動物が、以下の特性:
(i)横方向に突出する肋骨および/または脊椎突起および/または後方に配置された骨盤骨から伸びる魚類中の骨盤付属物を含む原始脊椎動物体制;
(ii)生殖細胞質を含有しない生殖細胞;および/または
(iii)細胞抽出物が誘導される前記卵母細胞、卵子、卵巣または初期胚細胞が、高度に保存された形態のOct−4および/または高度に保存された形態のnanogを発現する、
の1以上を有する、キット。
【請求項36】
再プログラム化される1以上の分化細胞をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
再プログラム化細胞の再分化のさらなる工程を行うための前駆体媒体をさらに含む、請求項35または36のいずれかに記載のキット。
【請求項38】
請求項25および26に記載の単離された細胞または細胞抽出物へクローン化される細胞を暴露することを含む、細胞クローニングを増強する方法。
【請求項39】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される方法。
【請求項40】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される単離された細胞または細胞抽出物。
【請求項41】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される組成物。
【請求項42】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される使用。
【請求項43】
実施例および図面を参照して本明細書中に実質的に記載される部品のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2009−502131(P2009−502131A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522067(P2008−522067)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002754
【国際公開番号】WO2007/010287
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508020063)ザ・ユニバーシテイ・オブ・ノツテインガム (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002754
【国際公開番号】WO2007/010287
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508020063)ザ・ユニバーシテイ・オブ・ノツテインガム (1)
【Fターム(参考)】
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