生物学的材料の付着のための改良された表面
本発明は、選択された基材に蒸着される生物活性表面コーティングに関する。ほとんどの金属または非金属基材に蒸着されて表面を提供する表面ナノ構造膜コーティングは、組織/細胞接着の強化を促進するように設計することが可能である。骨芽細胞、線維芽細胞および内皮細胞を含む付着細胞は、生存能力を保持し、適切な条件下で直ちに分化および増殖する。線維芽細胞および内皮細胞は、ナノ表面構造シリコーンを除くほとんどのコーティング基材上で良好な付着および成長を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2006年3月27日に出願された仮特許出願第60/786,118号の利益を主張し、この仮特許出願の全内容は参考によって援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、細胞およびその他の生物材料に対する接着基質を提供する改良コーティングに関する。選択されたナノテクスチャコーティング表面は、細胞の成長および増殖を促進し、金属または非金属基材上の安定したコーティングとして蒸着することが可能である。
【背景技術】
【0003】
(2.背景技術の記載)
身体が異物を自身として認識しないため、インプラント可能なデバイスの拒絶は大きな問題である。その結果、現在使用されている幅広い医療デバイスは、治癒を促進できず、しばしば高い感染率を促進する場合がある。カテーテル、関節置換、軟組織修復および歯科インプラントは、このような問題が頻繁に観察される例である。インプラントは、感染が最小限化されて治癒速度が増加されるように、理想的には細胞付着を促進するべきである。
【0004】
インプラントデバイスが作られる材料は、通常、細胞付着を促進または向上しようとして表面修飾される。残念ながら、細胞付着があっても、組織成長を適切に促進する長期的留置デバイスはない。一部のプロトコルは、組織付着を補助するためにデバイスの表面上に増殖因子を採用するが、結果は必ずしも満足いくものではなく、増殖因子は日常的には使用されない。新しい組織細胞が直ちに付着して成長するように、インプラント表面を改良するために行われた試行の成功はほとんどなく、現在の技術は、組織付着を有意に強化する表面の開発ができていない。
【0005】
整形外科用途に対する従来のチタンで作られた材料の性能を向上する生物活性コーティングがいくらか注目されている。現在使用されているデバイスは、骨結合を強化させようとして、チタン上の表面コーティングとしてヒドロキシアパタイトを適用することによって、従来の冶金技法により加工される。商業的には、ヒドロキシアパタイトは、ナノ結晶ヒドロキシアパタイトを、少ない結晶リン酸カルシウム基質を含有するミクロン粒径のヒドロキシアパタイトに変換する高温プラズマ容射蒸着過程によって、チタンで作られた金属にコーティングされる。ヒドロキシアパタイトのプラズマ容射蒸着は、使用されている1つのコーティング方法であるが、これは、臨床使用中にコーティングの層間剥離を引き起こす、高溶解性リン酸カルシウムの形成につながる場合がある相転移をもたらす(非特許文献1;非特許文献2)。
【0006】
近年、チタン等の超微細金属コーティングの使用を含む、ナノスケールの表面粗度を得るために、技法が探索されている(非特許文献3;非特許文献4)。アノード酸化チタンおよび蒸着チタンの化学エッチングも、骨芽細胞付着および後の骨形成にとって魅力的な表面を作成しようとして使用されている(非特許文献5)。
【0007】
ナノメートル表面特徴がある材料は、ミクロンスケールの特徴がある材料と比べて、骨形成を強化すると考えられる(非特許文献6;非特許文献7)。残念ながら、現在使用されているインプラントに対して、従来のコーティング過程は、効果的な骨再生に必要なナノ構造表面を提供しない。
【0008】
インプラント可能なデバイスへの組織付着の強化を目指した現在の努力の大部分は、ナノ粉末で構成されるプレス加工された金属インプラントの開発およびプラスチックのナノテクスチャリングに焦点を当てている。両方法に関する問題は、表面修飾のために材料が有意量の強度を失うことである。
【0009】
次世代整形外科用インプラントの設計への近年の取り組みは、合成インプラント表面を、骨組織中にある天然細胞外基質タンパク質によって作成される独自のナノメートルトポグラフィに適合させることを中心としている。骨組織中にあるナノメートル構造および分子は、骨形成細胞が典型的にナノメートル粗度の表面と相互作用することを示す一方で、現在使用されている従来の合成金属は、マイクロ粗度の表面を有するが、ナノスケールレベルでは平滑である(非特許文献8;非特許文献9)。
【0010】
線維性(未熟)骨は、10〜50nmの平均無機鉱物粒径を有する。線維性骨に活発に取って代わる層板骨は、長さ20〜50nmの平均無機鉱物粒径を有し、直径2〜5nmである。しかし、ナノスケール寸法では、すべてではないにしても、多くの現在利用されているインプラント表面は平滑である。そのような平滑表面は、層状の望ましくない結合組織で骨中に配置されたインプラントを最終的に封入し得る「ファイブロインテグレーション」(カルス形成)に有利に働くことが示されている。(非特許文献3)
整形外科用デバイス上の細胞付着コーティングを開発する努力に加えて、歯科インプラントに使用されるもの等のデバイス上の付着コーティングの必要性がある。ヒドロキシアパタイトまたはACTIPORETMコーティングは、CoCrMo等の典型的な医療デバイス基材に容易に蒸着されない。蒸着が可能であっても、接着がしばしば不良であり、層間剥離が起こり得る。
【0011】
組織付着を促進する表面を作るために現在使用されている2つの主な技術がある。1つの方法は、ある程度の表面粗度が得られるように金属ナノ粉末をプレス成形することであり、もう1つの方法は、成形過程を通してプラスチック上にナノ粗度表面を作成することである。
【0012】
金属粉末をプレス成形して低温で焼結することは、基材表面上の組織の内方成長を促進する表面を作成する。残念ながら、整形外科使用に必要とされる強度は、必要な強度を得るために粉末が高温で焼結されることを必要とするため、そのような組成物は、多くの整形外科用途で使用することができない。焼結温度の上昇は、表面のマイクロ構造を破壊し、よって組織付着に対するあらゆる利点が失われる。
【0013】
高分子表面にナノテクスチャリングを成形することは、組織成長を促進する表面を設計する努力の主要目的となっている。一つには、金型には、一貫した結果を伴うプラスチック表面に正しいナノテクスチャリングを与える限られた能力しかないため、この方法は限られた成功を得ている。粗い金型内へのプラスチックの流れは制御することが困難であり、部分拒絶率が50%にも高くなる場合があるため、製造過程における品質管理は、概して受け入れ難い。
【非特許文献1】R.Furlong、J.F.Osborn、「Fixation of hip protheses by hydroxyapatite ceramic coatings」、J Bone Joint Surg (Br)、73B、741−745、2001.
【非特許文献2】K.C.Baker、M.A.Anderson、S.A.Oehlke、A.I.Astashkina、D.C.Haikio、J.DrelichおよびS.W.Donahue、「Growth,characterization and biocompatibility of bone− like calcium phosphate layers biomimetically deposited on metallic substrata」、Materials Science and Engineering:C,In Press.
【非特許文献3】T.J.Webster,J.U.Ejiofor、「Increased osteoblast adhesion on nanophase metals: Ti, Ti6A14V, CoCrMo」、Biomaterials,25(19)、4731−4739、2004.
【非特許文献4】R.Z.Valiev、V.V.Stolyarov、H.J.RackおよびT.C.Lowe、「SPD−processed ultra− fine grained Ti materials for medical applications」、Medical Device Materials、ASM、Materials Park、OH、362−367、2004.
【非特許文献5】C.Yao、V.Perla、J.L.McKenzie、E.B.SlamovichおよびTJ. Webster,「Anodized Ti and Ti6A14V possessing nanometer surface features enhances osteoblast adhesion」、Journal of Biomedical Nanotechnology、1、68−73、2005.
【非特許文献6】M.Sato,E.B.SlamovichおよびT.J.Webster、「Enhanced osteoblast adhesion on hydrothermally treated hydroxyapatite/titania/poly (lactide−co−glycolide) sol−gel titanium coatings、」Biomaterials、26(12)、1349−1357、2005.
【非特許文献7】K.C.Popat、E.E.L.Swan、V.Mukhatyar、K.I.Chatvanichkul、G.K.Mor、C.A.Grimes、T.A.Desai、「Influence of nanoporous alumina membranes on long−term osteoblast response」、Biomaterials、26、4516−4522、2005.
【非特許文献8】Kaplan F.S.ら、Biomaterials In Simon SP, editor. Orthopedic basic science.Columbus、OH:American Academy of Orthopedic Surgeons、460−478、1994A.
【非特許文献9】Kaplan F.S.ら.「Form and function of bone」、In Simon SP, editor;Orthopedic basic science;Columbus、OH:American Academy of Orthopedic Surgeons、127−185、1994B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(当該分野における不足点)
表面プレスおよび成形技法の不足点は、組織接着性質のさらなる向上を有し、医療インプラント上のコーティングとしての使用に適切な表面コーティングを生産する方法の必要性を示唆する。
【0015】
従って、金属または非金属表面に接着し、優れた組織付着性質を有し、生細胞にとって毒性のないコーティングの必要性がある。このような特徴がある付着コーティングは、理想的には、一貫性があり、かつ経済的に実行可能な過程において、幅広い基材表面上に蒸着される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、1つには、ナノ粒子(約100nm以下までの粒子)蒸着を精密に制御することが可能であるという認識および選択された基材上の改良イオン蒸着過程(IPD)によって蒸着されるコーティングは、従来のプラズマ蒸着方法によって蒸着されるコーティングよりも有意に大きく組織付着を強化するという予期されない発見に基づく。この観察は、骨再生に対する生体適合性足場として働くナノ構造コーティングを生産するための方法の開発をもたらしている。
【0017】
特に驚くべき発見は、シリコーン上のIPD蒸着金属コーティングは、その他の金属または高分子で作られた基材上のIPD蒸着金属とは対照的に、例えば線維芽細胞または内皮細胞といった、一部の細胞型の付着を促進しないという観察であった。しかし、検査したほとんどの細胞は、金属またはいくつかの異なる種類の高分子上のIPD蒸着金属表面での付着および増殖の強化を示した。線維芽細胞が軟組織およびカルス形成を促進するため、骨成長を促進するために選択的骨芽細胞接着が望ましい場合は、シリコーン基材の使用が非常に有利となる場合がある。骨再生は、骨成長を促進することを目的としたインプラント上に構成することができ、かつ回復を遅延および抑制することができる。
【0018】
いくつかの種類の細胞はナノ構造コーティングに直ちに付着し、付着細胞は適切な環境で増殖することが分かっている。線維芽細胞および骨芽細胞等の付着した未熟細胞は、足場または基質として働くナノ構造支持コーティング上で分化および増殖する。論議されるように、例外は、ナノ構造IPD蒸着金属表面がシリコーン基材にコーティングされる場合の、線維芽細胞または内皮細胞の付着である。
【0019】
ナノ構造コーティングを生産するために使用されるIPD方法は、ナノ粒子生産を増加し、蒸着を制御するように調整された改良IPD過程に基づく。IPD蒸着金属は、約500Hzの好ましいスイッチング速度で、制御速度プラズマアーク標的から蒸着することが可能である。
【0020】
プラスチックまたは金属基材上に金属を蒸着するために制御されたIPD過程を使用すると、基材表面へのナノ粒子材料の接着を強化することが発見されている。蒸着したコーティングは、産業上使用されるその他の過程によって生産される膜または表面よりも、高い組織細胞接着率を促進する。IPD過程は、特殊な、または下塗りの「シード(seed)」コーティングの必要なく、基材上に直接ナノ粒子材料を蒸着する。
【0021】
基材表面上の蒸着した物質のナノ粒径および密度の厳格な管理は、当初、インプラントデバイス上の細胞接着および組織成長を向上すると予期されなかった。当業者にとって、何年もプラズマ蒸着過程に熟達した者にとっての主要な傾向は、より清浄でより均等な膜を生産するために、表面上に蒸着されるナノ粒子の数を減らすこととなっている。産業上の従来の知識は、一般に1ミクロンのサイズの範囲の粒子さえ、蒸着された膜の質に対して有害であり、その結果蒸着された膜は可能な限り平滑であって、かつ粒子を含むべきではないということであった。
【0022】
従って、標的から放出され、基材に蒸着される、サイズが約100nm未満のナノサイズの粒子が、コーティングの組織付着の質を低下させるよりもむしろ実際に強化したということは、予期に反した。従って、本発明の重要な側面は、ナノ粒子の生産を低減するよりもむしろ増加させ、かつナノ粒子のサイズを制御するための方法の開発である。イオンプラズマ蒸着過程は、他の種類のプラズマ蒸着(PVD)過程よりも高い蒸着率を達成することができ、より多くのマクロ粒子を生産する傾向があるということが概して知られている一方で、より少ないのではなく、より多くのナノ粒子蒸着が、蒸着したナノ構造表面の組織付着性質を強化することは、以前には周知または十分理解されていなかった。
【0023】
その結果、マクロ粒子生産を増加させるよりもむしろ低減することに焦点を当てることによって、プラズマアーク蒸着方法および装置を改善する他者による努力は、組織付着の向上の成功をほとんど得ていない。本明細書において記載される結果は、超ナノ粒子密度がある膜を蒸着することが、IPD生産薄膜の組織付着特性を有意に向上し、かつそのような膜がインプラントデバイス上での使用に対して特に有利であることを実証している。概して、性能向上に有用ではないと見なされる、選択されたナノ粒子の粒径範囲内のマクロ粒子を、組織付着コーティングを強化するように意図的に生産することが可能である。
【0024】
より良い接着を達成するだけではなく、ナノ粒子蒸着を増加させるように高速で蒸着するために、ナノテクスチャコーティングの高速蒸着に特に適切である方法が開発されている。従って、本発明は、生体適合性材料のナノ粒子濃密コーティングの生産および蒸着を強化するための方法を含む。コーティングは、組織付着および接着特性の向上を示す。改良IPDナノ粒子コーティング過程を使用することの結果は、ヒトおよび動物用途で使用されるインプラント医療デバイス上の組織付着を促進するのに適した、濃密で、適合性が高く、接着性が高く、厚いコーティングである。
【0025】
IPD方法によって生産されるコーティングは、基材の種類によって制限されず、プラスチックおよびセラミック等の非導電材料および金属等の導電材料を含む、幅広い材料に適用することが可能である。制御されたナノテクスチャ表面を作成する方法は、インプラント部位での治癒を加速する、医療デバイス上の生体適合性フィルムを蒸着するために使用することが可能である。
【0026】
従って、制御されたナノ濃密組織付着コーティング表面を形成するために改良IPD過程を使用して、基材上に付着コーティングを蒸着する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0027】
コーティングは、基材上の付着表面の改良IPD蒸着を使用して生産される。潜在的付着金属または金属の組み合わせを含む標的を真空チャンバに入れ、標的に電力を供給して、標的金属をイオン化粒子にイオン化するアークを生成する。ガスがイオン化プラズマ粒子と反応するように、酸素または窒素等の反応性ガスを任意で真空チャンバに導入する。基材上へのプラズマ粒子の蒸着は、標的への電力を可変的に制御しおよび/または、任意で、蒸着過程中に制御された方式で、基材を標的の近くまたは遠くに移動することによって、制御する。
【0028】
IPD方法は、医療デバイスまたは材料上の付着表面を提供し、これは、従来のようにコーティングしてあるかにかかわらず、従来の医療デバイスおよび材料によって提供されるよりも速い生体内治癒を促進する。このことは、適合性が高いナノ構造表面が基材に形成されるように、高分子または金属基材に金属を蒸着することによって達成される。
【0029】
分散金属、金属窒化物または金属酸化物粒子は、金属、プラスチック、ガラス、軟質シート、多孔性紙、セラミック、それらの組み合わせ等を含む、多種多様の基材材料にIPDによって蒸着することが可能である。基材は多くのデバイスを含み得るが、医療デバイスが特に好ましく、カテーテル、インプラント、ステント、気管チューブ、整形外科用ピンシャント、排液管、人工補装具、歯科インプラント、包帯および創縫合を含むことができる。本発明はそのようなデバイスに限定されず、フェイスマスク、衣類、手術道具および表面等の、医療分野で有用なその他のデバイスにまでおよぶことができることを理解するべきである。
【0030】
標的材料がアークプラズマ過程を介したイオン化が可能であるという条件で、標的は、付着性質を有する任意の固体材料または材料の組み合わせであってよい。好ましい材料は、付着性質を有し、生体適合性がある、すなわち意図された環境に損害を与えない金属である。そのような材料は、本明細書では概して「付着金属」と呼ばれ、亜鉛、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、ニチノール、チタン、チタン6−4、クロム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、鉄/クロム/ニッケル(ステンレス鋼)、白金および金を含む、合金ならびに金属を含む。
【0031】
本発明は、基材表面上への金、チタン、ニチノールまたはその他の金属イオンの蒸着、含浸、または層化を提供し、5nmより大きい粒子から成る密度の高いナノ構造を形成する。ナノ構造表面は、細胞またはその他の生物材料に対する付着点を提供する。細胞は、表面の中または上に分散される一価、二価および多価酸化物の組み合わせとして蒸着することができる、ナノピコおよびマイクロサイズの結晶性金属および金属酸化物化合物の固体構造上に結合する。
【0032】
一般に、本発明は、ナノ構造の密に分布した粒子状金属コーティングを形成するように、基材に金属イオンプラズマを蒸着することと、1つ以上の細胞をコーティング表面に付着させるのに十分な時間の間、コーティング表面を1つ以上の細胞に接触させることとを含む、バイオコーティングされた基材を調製することを対象とする。蒸着コーティングに付着する1つ以上の細胞は、付着細胞の生物学的性質を保持するバイオコーティングされた基材を形成する。事実上、バイオコーティングは、医療インプラントの場合のように、人口培養環境であろうと天然環境であろうと、適切な条件下で、細胞または組織が直ちに付着し成長することを可能にする、基質または足場に付着される。未熟細胞が付着する場合、バイオコートは、例えば骨芽細胞の骨細胞への成熟といった、分化を可能にすることができる。
【0033】
事実上、任意の細胞、一般には任意の単核細胞がナノテクスチャ表面コーティングに付着させられ得る。例は、白血球、リンパ球、好中球、好酸球、単球等を含む。特に好ましい細胞は、骨芽細胞、線維芽細胞および内皮細胞を含む。異なる細胞の混合物もまた、これらの細胞に容易に付着することが可能であり、かつ成長および増殖することが可能であると予期される。
【0034】
バイオコーティングは、イオンプラズマ蒸着(IPD)過程を使用して、様々な基材表面上に生産される。コーティング材料として選択される金属は、標的と基材アノードとの間でイオン化ビームまたはアークが生成されると、アノード標的に蒸着する金属イオンを生成する標的として働く。アーク速度を管理することによって、標的での金属イオンの生成を制御し、標的からのその相対距離によって、アノード基材での蒸着を制御すると、濃密ナノ粒子状表面を作成することが可能である。これらのナノ粒子は、安定し、かつ剥離に強い耐性を示すように、基材表面内に埋め込まれる。重要なことには、それらは、細胞に友好的な基質として働き、医療インプラント上のコーティングに対して理想的となる。
【0035】
IPD蒸着金属イオンは、好ましくは、マイクロサイズに近づくより大きい粒子としてではなく、ナノ粒子として密に蒸着される。ナノ粒径に対する最も好ましい粒径範囲は、約1から約100ナノメートルであり、より普及しているコーティング金属のうちの2つである、チタンおよび金に対して、約15nmが特に好ましい。約103粒子/cm2から約104粒子/cm2のナノ粒子密度が、良好なバイオコートを提供する典型的密度である。コーティングの厚さは、好ましくは、約0.1ミクロンから約3ミクロンである。
【0036】
IPD方法に対する標的は任意の金属となり得るが、生体内および上での使用を考慮すると、ニチノール、CoCrMo、金、白金、銅、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛またはそれらの組み合わせが好ましく、ニチノール、金およびチタンが特に好ましい。
【0037】
基材は、金属であろうとプラスチックおよびセラミックを含む非金属であろうと、多数の材料のうちのいずれにもなり得る。模範的な基材材料は、UHMWPE、EPTFE、PTFE、PEEK、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鉄/クロム/ニッケル(鋼鉄)、コバルト、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせを含む。
【0038】
本発明はまた、ナノ構造金属膜に付着する1つ以上の生体生存可能細胞を含む組成物も含む。膜は、約103/cm2から104/cm2の密度で分散される、サイズが約1ミクロンのイオンプラズマ蒸着金属から生産される。蒸着される典型的な金属は、Ag、Au、Ti、CoCrMoおよびそれらの混合物を含む。
【0039】
生体生存可能細胞は、任意の単核細胞となり得る。特に好ましい細胞は、インプラント等の表面コーティングされた医療デバイスと接触することができるものであり、その場合、線維芽細胞、骨芽細胞または内皮細胞が存在する可能性が最も高い。
【0040】
好ましい実施形態は、UHMWPEに蒸着されるナノ構造チタン表面に付着する骨芽細胞を含む。内皮細胞に対する好ましい表面は、UHMWPEまたはPTFEに蒸着されるチタンである。金属表面コーティングは、概して、約103/cm2から約104/cm2の密度で基材表面上に分散され、かつ約0.3から約1nmの厚さを有する、サイズが最大で15nmまでの粒子を含む。代替的なナノテクスチャ金属表面は、金、チタンおよびニチノールを含む。
【0041】
コーティングが約10から約100ナノメートルの深さまで金属または高分子基材を含浸するため、IPD方法によって生産されるナノ構造表面コーティングは安定性が高い。模範的な好ましいイオンプラズマ蒸着金属表面は、約103/cm2から104/cm2の表面密度および約10から約100ミクロンの厚さで、サイズが約1から約100ミクロンのナノ粒子から成り得る。
【0042】
(定義)
イオンプラズマ蒸着(IPD)は、典型的には固体金属である標的材料においてカソードアーク放電を使用して、高エネルギーのプラズマを作成する方法である。アークを金属に衝打し、アーク上の高出力密度が金属を蒸発させてイオン化し、アークを維持するプラズマを作成する。周囲のガスよりもむしろ金属蒸気自体がイオン化されるため、真空アークは高圧アークとは異なる。
【0043】
プラズマ蒸着(PVD)は、化学反応を伴わずに、原材料が真空中で基材に物理的に移動される、気相での薄膜蒸着過程である。この種類の蒸着は、熱蒸発、電子ビーム蒸着およびスパッタリング蒸着を含む。IPD過程は、物理蒸着のサブタイプである。
【0044】
マクロまたはマクロ粒子は、標的から放出される粒子を表し、本明細書において使用される場合、約100nmより大きい粒子を指す一方で、ナノ粒子は、サイズが約100nmまでの粒子である。
【0045】
「付着性質」および「潜在的付着性質」は、一部の金属が、元素状態で、典型的にはあまりに非反応性で有効な付着部位として働かないが、イオン化されるとはるかに強い付着効果を示すことができるという事実の認識を目的とした用語である。よって、標的を含む付着金属は、多くの場合は金属のイオン化時に認識される、潜在的付着性質を有する。イオン化されると、付着金属はまた、酸素または窒素等の様々な反応性ガスと組み合わされ、酸化物または窒化物およびそれらの組み合わせを形成し得る。
【0046】
本明細書において使用される場合、生物材料は、細胞等の組織成分、ヒドロキシアパタイト等の鉱化無機物およびコラーゲン等の生体基質材料を含む。
【0047】
ニチノールは、他に指示がない限り、特定粒状構造による、ニッケルおよびチタンそれぞれの約55/45の組み合わせとして定義される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、指定された数字が必ずしも正確ではないが、使用される特定の手順または方法によって決定されるように、10%範囲内でより高いまたはより低い場合があるということを示すことを目的としている。
【0049】
請求項で使用される場合、「1つの」という用語は、単一種類に限定することを目的としていない。
【0050】
いくつかの高分子に対する許容された略称は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、EPTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)およびUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)を含む。
【0051】
CoCrMoは、典型的にそれぞれ約64%、28%および6%の割合のコバルト、クロムおよびモリブデンの合金である。Ti−gal−4Vは、89%チタン、6%アルミニウムおよび4%バナジウムを含有する、外科インプラントで使用される合金である。
【0052】
KSIは、表面に1000psiを印加して接着について検査する標準引張試験である。
【0053】
本明細書において使用される場合、「生体生存可能(bioviable)」は、生物材料がその天然生物学的潜在性を維持することを示唆する記述用語であり、細胞に対しては、これは、成長および増殖能力を維持することを意味する。
【0054】
バイオコートは、例えば、細胞、組織、細胞基質ならびにヒドロキシアパタイトおよび骨等の無機構成成分のような、生物材料の性質を有する基材または「基材」に接着する膜である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
(発明の詳細な記載)
本発明は、他の最先端の付着コーティングおよび付着コーティングを蒸着するための過程よりも、多数の利点を提供する。向上したバイオコーティングを調製するために使用されるIPD蒸着方法は、粒径の制御、ある材料に対するより低い動作温度、従来のプラズマアーク過程と比較して有意に向上したスループット処理効率、延伸性および幅広い基材材料の適用を可能にする。蒸着した材料の重要な特徴は、一つには、基材表面へのイオン化粒子のインプラントによる、基材への高い表面接着性である。IPD蒸着表面は、細胞/組織付着、分化および増殖を有意に強化する表面特徴に貢献する、密に配設されたナノ粒子を含む。
【0056】
開示されたIPD過程は、真空下で行われ、細胞付着を促進するナノ構造表面を生産するために使用される。150eVから500eVの典型的エネルギーレベルは、好ましくは、ニッケル、チタン、金および/またはこれらの金属を含有する合金または組成物である、標的材料に応じて、適切に制御される。エネルギーレベルも、標的が大型である場合に、より高いエネルギー入力を必要とすることができるように、標的のサイズに左右される。該過程は、熱感性樹脂およびプラスチック基材上の蒸着に対する好ましい温度範囲である、少なくとも約30℃ほども低い温度での蒸着を可能にする。
【0057】
一般に、該方法は、標的と真空チャンバ内に収容されるアノードとの間に選択された基材を位置付けることを必要とし、前記標的は、イオン性金属を含む。アーク放電は、標的とアノードとの間で生成される。標的への電力は、約100ナノメートルから約5ミクロンのサイズを有するマクロ粒子が生産されるように、可変的に制御される。任意でまたは加えて、アーク放電中に約25℃から約75℃の間の温度で所定の時間の間、標的に向かってまたは離して、約10インチから約30インチの範囲内での基材の移動を調整してもよい。これにより、基材上で約1nmから約50ミクロンの厚さを有する、高密度でマクロ粒子状の接着性付着コーティング膜が生産される。
【0058】
特殊ニッケル/チタン合金、特殊CoCrMo合金および医療デバイスまたは用途での使用のためのコーティングとは通常考えられないその他の合金でコーティングされた表面を含む、従来の真空アーク蒸着(VAD)方法を使用しての入手ができない、優れたコーティングが得られている。改良されたIPDによる過程を利用すると、同じまたはより良い付着親和性で、より薄いコーティングおよびより短い処理時間を達成することが可能である。より高いスループットが可能であり、これは、生産費用の節約をもたらすことが可能で、特に医療産業では有意な利点である。
【0059】
開示された方法に従って、標的金属をプラズマ内にイオン化することによって、基材の表面上および内に金属を蒸着する。参照することによりその内容が本願に組み込まれる、国際出願WO 03/044240号で説明されているもの等の多くのイオンプラズマ蒸着装置がある。このような基本的装置は、細胞付着に適したコーティングとして使用するための選択された金属の制御された蒸着を実行するために改良および使用することが可能である。
【0060】
基材にコーティングを蒸着する際、標的から放出されるマクロ粒子の相対数を制御することが可能である。マクロ粒子は、完全に蒸発されることなく標的から放出される金属の融解塊である。塊は濃密で純標的材料から成る。塊の表面は通常荷電している一方で、材料の大半は中性である。
【0061】
改良IPD過程の重要な特徴は、基材表面に金属または金属/酸化物コーティングを埋め込む能力であり、よって他の蒸着方法によって蒸着されるコーティングと比べて優れた接着を得る。インプラント過程は、標的からの特定距離でアークを調整することによって、制御することが可能である。プラスチックに対しては最大で少なくとも100nm、金属およびセラミック基材に対しては最大で少なくとも10nmまで埋め込まれるコーティングを得ることが可能である。
【0062】
改良プラズマアーク蒸着過程を実行するための適切な装置は、図1に図示されるIPD過程である。図1に示されるように、標的材料1のカソードは、真空チャンバ4内に配置される。標的は、電源5によって供給される電源から標的においてアークを生成することによって、イオン化される。プラズマ構成物質は、基材2を標的に向かって移動させるまたは離す制御機構3によって、選択され、制御されまたは基材へと向けられる。電源制御6は、アーク速度を制御するために使用される。
【0063】
IPDは、必ずしも一連の視覚蒸着方法ではない。回転およびラッキングが複雑な形状にとって必要である一方で、ラッキングおよび回転は通常、他のPVD過程ほどは全く複雑ではない。また、この過程は、10ミクロン以上の任意の大きさの穴に対して5:1の反復可能穴貫通アスペクト比を生じる。マクロ粒子の蓄積により、10ミクロン未満の穴を試験することは困難である。
【0064】
本発明におけるIPD過程で達成される典型的なコーティング速度は、金または銀等の材料に対して、毎分約100nmから5ミクロンにおよぶ。このような材料に対して、毎分200nm以上のコーティング速度で、毎時間45,000平方インチ以上のコーティング面積が得られている。コーティング速度の増加および大量に加えて、単一層のコーティングしか必要とされず、これはより低い労働率およびより高い加工率/スループットを意味するため、IPD過程は、平方インチあたりの少ない処置を必要とする。
【0065】
付着反応の有効性も、付着表面を形成するための処理時間に依存している。5秒から数分のより長い処理時間は、異なる付着反応を有する付着表面をもたらす。
【0066】
IPD蒸着コーティングの粒径は、好ましくは、粒径が約100ナノメートルから約5ミクロンの範囲内となるように、標的への電力を調整することによって制御され、組織付着が望ましい場合は、ナノメートル範囲の粒子が医療デバイス上のコーティングに対して好ましい。開示された方法によって蒸着されるチタンまたは金粒子は、直径100nm未満の粒径にまで制御することができる。
【0067】
このIPD過程を使用してコーティングされる表面は、細胞増殖および成長に対して、驚くほど適合性のある表面である。一連の細胞型は、金属コーティング基材に接着し、コーティングされていない表面と比較して有意に強化された成長を示す。非金属基材上のIPD蒸着金属での組織成長強化は、骨芽細胞、線維芽細胞および内皮細胞により実証されている。このことは、人工股関節置換またはその他の整形外科用インプラント等の医療用途におけるこのような生体適合性コーティングの使用に対して、重要な意義を有する。
【0068】
骨芽細胞は、金またはチタンコーティング高分子に少なくとも最初は接着することが知られている一方で、いくつかの種類の高分子上のIPD蒸着金またはチタンは、ここでは接着および持続的な長期成長を有意に強化することが示され、増加された細胞接着が、5日後にほぼ600%増加し、21日後でさえも非常に有意であった場合に、チタンコーティングUHMWPE上で特に顕著であった。細胞接着の増加は、金またはチタンコーティングPEEKおよび金コーティングPTFEに対しても観察されたが、後者は、骨芽細胞に対して比較的低い接着を示した。
【0069】
同様の効果がチタンコーティングUHMWPE上の内皮細胞で観察され、その場合、細胞接着の500%増加が、コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングPTFE上の100%増加とともに顕著であった。
【0070】
コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングPTFE上の78%およびUHMWPE上の90%の細胞密度の増加を伴って、線維芽細胞は同じパターンに従うように思われた。
【0071】
チタンコーティングシリコーンとは際立って対照的に、線維芽細胞は、シリコーンまたはチタン単独よりも顕著に低い接着への傾向を示した。
【0072】
本発明は、次の限定されない例によってさらに解説される。
【0073】
(材料および方法)
(ヒト骨芽細胞)
ヒト骨芽細胞(CRL−11372, American Type Culture Collection,個体数2−4)を、本研究における細胞接着実験で使用した。細胞をシーディングする前に、あらゆる関心基材を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1X強度)で洗浄した。細胞を、基材の3,500細胞/cm2の初期シーディング密度で、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)を補充したDulbecco’s Modified Eagle Medium(Hyclone)中の基材上で培養した。次いで、細胞を、標準細胞培養条件下(温度37℃、5%CO2および95%加湿空気)で1、3および5日間基材上で増殖させ、培地を1日おきに交換した。規定の期間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSでそっと3回洗浄して非接着性細胞を除去した。次いで、細胞を4%ホルムアルデヒド溶液(Fisher)で固定し、DAPI(Sigma)で染色した。細胞数を数え、蛍光顕微鏡(Swiss)下で画像を撮影した。
【0074】
長期細胞実験に対しては、骨芽細胞を、50,000細胞/足場の細胞密度でシーディングし、10%のFBS、1%のP/S、2.16×10−3g/mlのβ−グリセロリン酸塩および5×10−5g/mlのアスコルビン酸塩を補充したDMEM中で、7、14および21日間培養した。規定の期間の終わりに、凍結融解サイクルを使用して、細胞を溶解した。次いで、骨芽細胞によって蒸着されたカルシウム含有鉱物の量を判定するために、基材を一晩1Nの塩酸(J.T. Baker)に浸し、カルシウム鉱物沈着を溶解した。次いで、これらの浮遊物を回収し、製造業者の指示に従ってカルシウム分析(Sigma Diagnostics; Procedure No.587)を使用して、カルシウム含有量について検査した。全実験を3通りに行い、少なくとも3回それぞれ繰り返した。
【0075】
(内皮細胞)
ラット大動脈内皮細胞をVec Technologies(Greenbush, NY)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで成長させた。細胞実験の前に、サンプルを超音波で分解し、加圧滅菌した。
【0076】
内皮細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルをまず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をウェルに添加し、次いで、5%CO2下で37℃にて4時間インキュベートした。試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も得た。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0077】
(線維芽細胞)
線維芽細胞(CRL−2317, American Type Culture Collection、個体数2−4)および骨芽細胞(CRL−11372, American Type Culture Collection、個体数2−4)を細胞実験で使用した。細胞をシーディングする前に、基材をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1X強度)で洗浄した。細胞を、基材の3,500細胞/cm2の初期シーディング密度で、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)を補充したDulbecco’s Modified Eagle Medium(Hyclone)中の基材上で、培養した。一部の実験は線維芽細胞単独により、一部の実験は線維芽細胞および骨芽細胞(異なる蛍光マーカ事前に染色した;Molecular Probes)を同時にシーディングして競合細胞接着を確認することによって行った。次いで、細胞を、標準細胞培養条件下(温度37℃、5%CO2および95%加湿空気)で4時間、基材に接着させた。規定の期間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSでそっと3回洗浄して非接着性細胞を除去した。次いで、接着性細胞を4%ホルムアルデヒド溶液(Fisher)で固定し、Hoescht 33258染料(Sigma)で染色した。細胞数を蛍光顕微鏡(Swiss)下で数えた。
【0078】
(表面特性化)
5kV加速電圧で電界放射型走査電子顕微鏡法(LEO)JEOL JSM−840走査型電子顕微鏡を使用して、IPD蒸着コーティング表面の走査型電子顕微鏡(SEM)分析を行った。Digital Scan Generator Plus(JEOL)ソフトウェアを使用して、デジタル画像を記録した。Leica蛍光顕微鏡、365nmの励起波長および400nmで測定された吸光度により、蛍光顕微鏡像を得た。
【0079】
(統計)
ダンカンの多重範囲検定と併用して標準分散分析(ANOVA)技法を使用して、統計的分析を行った。少なくとも3つの複製を伴って全実験を3通りに行い、p<0.01が統計的有意と考えられた。
【実施例】
【0080】
(実施例1−制御化IPD蒸着金属膜)
図1は、カソードアーク標的源(1)から選択された基材(2)上へ放出されるプラズマの蒸着を制御するのに適した装置を図示する。蒸着される粒子の大きさ、よって蒸着表面の那のテクスチャリングの程度は、真空チャンバ(4)内の移動可能基材ホルダ(3)によって、または標的への電源(5)およびアーク速度の調整(6)によって制御される。基材がアーク源に近くなればなるほど、基材上に蒸着される粒子はさらに大きくなり、さらに密集する。
【0081】
細胞接着に使用されるコーティング基材を調製するために、標的から比較的遠い距離に基材を位置付けることによって、マクロをほとんど含まない膜を蒸着した。これにより、接着膜を形成した。次いで、標的のより近くに基材を位置付けることによって、さらなるマクロ濃密膜を蒸着した。
【0082】
(標的からの基材距離の制御)
図1を参照して、基材(サンプル1)を、標的から30インチの距離にある移動可能基材ホルダ(3)内に配置した。チャンバ(4)を、5E−4トールのレベルまで膨張させた。アークを100アンペアの電流および16ボルトで開始した。基材(2)を15秒毎に1インチの速度で標的の近くに平行移動し、基材が標的から8インチになるまで続けた(30分)。
【0083】
基材(サンプル2)を、5E−4トールのレベルまで膨張させた真空チャンバ内で、標的から30インチの距離に配置した。アークを100アンペアの電流および16ボルトで開始した。基材を標的から30インチの距離で30分間維持した。
【0084】
SEM分析を使用して、サンプル1およびサンプル2の断面を検討した。サンプル1では、マクロ粒子の量およびサイズが、膜の厚さとともに増加し、すなわち、基材の近くにはより少なく、かつ、より小さいマクロ粒子があり、膜の厚さが増大するにつれて数およびサイズが増加した。逆に、サンプル2での断面は、マクロ粒子がほとんどなく均等であった。
【0085】
(アーク電力の制御)
ナノ粒子蒸着およびサイズもまた、アークの速度を十分に減速または加速するように構成することが可能である制御化IPD電源の使用によって、制御することが可能である。アークの移動速度は、生産されるマクロ粒子の数に直接関連する。標的の表面上のアークの速度を減速することにより、さらに多くのマクロ粒子を生産させ、このことは、マクロ粒子密度を増加させるために使用することが可能である。結果として生じる膜密度の増加もまた、膜に付着する組織の能力を増加させる。逆に、標的上のアークの速度を増加すると、マクロ粒子の生産が減少する。これにより、基材の表面に埋め込まれてより良い接着を生じることが可能な、さらに多くの高エネルギーイオンが生産される。
【0086】
サンプル3にはアーク制御がなく、基材を標的から12インチの距離に配置した。両サンプルを、別の動作に対する別の時にチャンバ内に配置し、5E−4トールまで膨張させた。アークを電源に対して100アンペアで設定した。各標的は、開始合計200アンペアに対して2つの供給を有した。サンプル3を、アーク制御を伴わずに5分間動作した。
【0087】
サンプル4を、300ヘルツの速度の電流の最適化スイッチングにより動作した。
【0088】
スイッチングは、標的上で200アンペアを維持するように制御したが、いつでも電流が供給上で等しくならないように、各電源を増加または減少させた。これにより、アークが強制的に所与の時間量で特定距離を移動させられることにより、マクロ粒子の密度およびサイズを制御した。
【0089】
サンプル3および4についてSEM断面分析を行った。サンプル4には、サンプル3よりもはるかに大きいマクロ粒径および密度の平均値があったことを除いて、膜は厚さ全体を通して一貫していた。サンプル3でのマクロ粒子の平均サイズは、103粒子/cm2の密度で約1ミクロンであった。サンプル4でのマクロ粒子の平均サイズは、104粒子/cm2の密度で約3ミクロンであった。
【0090】
(実施例2−IPD蒸着コーティング)
図1を参照して、真空チャンバ4を、典型的には0.1mTから30mTの範囲内の適切な作動圧力まで膨張させたが、持続放出速度を有する有効な付着表面を生産するIPD過程の能力は、0.1mTから30mTの範囲内のいずれの特定作動圧力にも依存していない。同様に、IPD過程は、動作温度に依存していない。典型的な動作温度は、25℃から200℃の範囲内であるが、より低い、またはより高い温度を使用してもよい。採用される温度は、一つには、基材によって決定される。約20℃から約40℃の間の範囲内の温度が、ほとんどの付着表面を生産するのに適している。
【0091】
基材は、例えば、回転盤を使用して回転させるか、または、受入蒸着材料の軌道に対する任意の配向性で蒸着部分を通過して転がすことが可能である。電力を標的に供給して、標的において電気アークを生成する。電力は、原材料に対して適切な圧力で、数アンペアから数100アンペアにおよび得る。電圧は、典型的に、12から60ボルトの範囲内であり、長さが数インチから数フィートにおよび得る原材料のサイズに、適切に拡大縮小される。
【0092】
UHMWPEおよびPTFE基材上のIPD蒸着チタンの模範的なコーティングを図2に示す。SEM写真から分かるように、蒸着金属は表面質感を、よりナノ粗度の表面に変える。
【0093】
(鋼鉄上のニチノールコーティング)
ニチノール標的を、選択された基材に沿って、イオンプラズマ蒸着装置の真空チャンバ内に配置した。電気アークは、ニチノール金属標的をニチノールイオン、中性荷電粒子および電子のプラズマにイオン化した。ニチノール粒子は、1ナノメートル未満から約50ミクロンにまでおよぶ粒径を有するように制御することが可能であった。
【0094】
ニチノール標的は、好ましくは医療グレードである。潜在的有毒不純物を回避するために、高純度標的材料が推奨されるが、場合によっては、低い純度の金属で満足いく結果が得られる場合がある。例えばCoCrMoといった、異なる合金も使用することが可能である。
【0095】
説明された蒸着過程を使用して、カスタムニチノール表面を、鋼鉄基材上に蒸着した。ニッケルおよびチタン標的を等しい電力で使用し、ニッケル/チタンの50/50混合を作成した。この混合物を鋼鉄クーポン上に蒸着し、SEMおよびEDXによって分析した。SEMスキャンは、サンプル中のマクロ粒子の平均サイズが、104粒子/cm2の密度で約1ミクロンであることを示した。EDXは、表面に均等に分布した約51%チタン、49%ニッケル混合物を示した。標準引張試験は、1KSI(1000psi)を超える接着強度を示した。
【0096】
(ニチノール上の金コーティング)
説明された蒸着過程を使用して、金の5ミクロンコーティングを、市販の直径1/8、壁厚さ0.005のニチノールチューブ上に蒸着した。このシード層をSEMによって分析した。SEMスキャンは、約104/cm2の密度を伴う約1ミクロンの平均マクロ粒径を示した。標準引張試験は、1KSI(1,000psi)を超える接着強度を示した。
【0097】
(Al2O3上のチタンシード層)
実施例1および2の蒸着過程を使用して、Al2O3ディスクを、シード層として3ミクロンのチタンでコーティングした。このシード層をSEMによって分析した。SEMスキャンは、サンプル中のマクロ粒子の平均サイズが、104粒子/cm2の密度で約1ミクロンであることを示した。標準引張試験は、1KSI(1,000psi)を超える接着強度を示した。
【0098】
さらなることでは、チタンをシード層上にフレーム溶射し、別の引張試験を行った。再び、コーティングは1KSIを超える強度を示した。
【0099】
(ステント上のニチノールコーティング)
説明された蒸着過程を使用して、ニチノールをステント上に蒸着した。コーティングは、1ミクロンの平均マクロ粒径および104粒子/cm2の密度で、1ミクロンの厚さまで蒸着した。標準引張試験は、1KSI以上の接着強度を示した。コーティングには、表面への血管組織付着に対する必要な特徴があるように思われ、それにより、再狭窄を阻止することが予期された。
【0100】
(実施例3−コーティング高分子基材上の骨芽細胞接着)
チタンおよび金コーティング高分子基材を調製した。基材は、それぞれ金、チタンでコーティングした、またはコーティングされていないPEEK、UHMWPEおよびPTFEであった。
【0101】
全基材を、12ウェル組織培養プレート(Corning, NY)に入れ、7.4のpHに調整した1000mlの脱イオン水中の、8gのNaCl、0.2gのKCl、1.2gのNa2HPO4および0.2gのKH2PO4を含有するIX強度の滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した(全化学物質は Sigmaより)。次いで、10%FBS(Hyclone)および1%P/Sで補充した2mlのDMEM(Hyclone)中の関心成形体上に、骨芽細胞を2500細胞/cm2の濃度でシーディングし、次いで、37℃、5%CO2および95%加湿空気の標準細胞培養条件下でインキュベートした。4時間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSで3回洗浄して非接着性細胞を除去した。接着性細胞を4%ホルムアルデヒド(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)で固定し、Hoechst 33258染料(Sigma)で染色した。365nmの励起、400nmの放出を使用して、蛍光顕微鏡(Leica)下で細胞核を視覚化して数えた。細胞カウントは、基材あたり8つの確率場での細胞の平均数として表された。全実験を3通りに行い、細胞接着を接着性細胞の平均数に基づいて評価した。数値的データは、標準分散分析(ANOVA)を使用して分析した。統計的有意性はp<0.01と考えられた。
【0102】
SEMを使用して、関心の基材上の骨芽細胞形態および接着位置を検討した。接着分析の終わりに、50、60、70、80および90%エタノール溶液中の連続洗浄を通して細胞を脱水した。次いで、3分間および10mAの電流で、アルゴン環境において100ミリトール真空中でHummer I Sputter Coater(Technics)を使用して、サンプルを金−パラジウムの薄い層でスパッタコーティングした。細胞がないサンプルと同様に、5kV加速電圧でJEOL JSM−840 走査型電子顕微鏡を使用して、画像を撮影した。Digital Scan Generator Plus(JEOL)ソフトウェアを使用して、デジタル画像を記録した。
【0103】
結果は、各コーティングされていないサンプルと比較して、骨芽細胞接着は、ナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングした3つの高分子基材(PEEK<UHMWPEおよびPTFE)上で増加したことを示した。骨芽細胞接着は、現在使用されているミクロン粒径Tiと比較して、ナノ粒子状Tiでコーティングした全サンプル上でより強力であった。
【0104】
ナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングしたPTFEは、それぞれナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングしたPEEKおよびUHMWPEの両方よりも優れていた。最良の骨芽細胞接着は、TiでコーティングしたPTFEで実証された。表1は、コーティング基材と比較した、コーティングされていない基材の骨芽細胞インキュベーションの結果を示す。
【0105】
【表1】
細胞形態の結果は、定量的に得られたものと一致した。すなわち、骨芽細胞は、コーティングされていないサンプルと比較して、TiまたはAuのいずれかでコーティングした高分子上の細胞伸展の増加を示した。
【0106】
(実施例4−チタンコーティングUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞増殖)
PTFEおよびUHMWPE基材を説明されようにチタンでコーティングした。コーティングされていないPTFEおよびUHMWPEサンプルをかみそりで切り取って平坦な接着表面を作った。シーディングの前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間120〜350nmの紫外線光に暴露するかのいずれかを行った。骨芽細胞(ATCC CRL11373)は、10%FBSおよび1%P/Sで補充したDMEM中で合流まで成長させた。
【0107】
骨芽細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングし、次いで、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、5%CO2中で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像を撮影した。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0108】
結果は、対応するコーティングされていないサンプルと比較して、チタンナノ表面コーティングが、UHMWPEおよびPTFE基材上の骨細胞の増殖を有意に増加させることを示した。おそらく各サンプルに対するコーティング密度の差異のため、サンプル群に対する統計的有意性を得ることができなかった。それにもかかわらず、各コーティングされたサンプルとコーティングされていないサンプルとの間の差異は有意であった。図3Aは、コーティングされていないおよびチタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する、1平方ミリメートルあたりの細胞で測定されたとおりの第1日の細胞増殖を比較し、図3Bは、第3日のチタンコーティングおよびコーティングされていないUHMWPEおよびPTFEに対し、図3Cは、第5日のチタンコーティングおよびコーティングされていないUHMWPEおよびPTFEに対する。チタンコーティングUHMWPEは、表2に示されるように、PTFE基材よりも優れている。チタンコーティングPTFE上の骨芽細胞増殖の増加は、当初、チタンコーティングUHMWPE上で観察された比較増加の約半分である。第3および5日では、チタンコーティングPTFEは、コーティングされていない基材と比較して、細胞増殖の2倍未満の増加を示す一方で、チタンコーティングUHMWPEは、5日後でも、そのコーティングされていない対応物と比較して、5倍以上の増殖の強化を維持する。N=6のUHMWPEに対する分析結果の統計的分析には、各コーティングされていないサンプルと比較して、p<0.1があった。
【0109】
【表2】
チタンコーティングPTFEについて第1、3および5日を比較する、10X倍率で撮影した増殖細胞の蛍光顕微鏡写真を図4に示す。図5は、チタンコーティングUHMWPE上の第1、3および5日での増殖骨芽細胞の比較を示す。
【0110】
(実施例5−チタン上の内皮細胞接着)
この実施例では、3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析を介して確認した。
【0111】
結果は、図6に図示される、コーティングシリコーン部分上の細胞接着の25%減少、コーティングUHMWPE上の細胞接着の500%増加および100%のPTFEサンプル上の100%細胞接着の増加を示した。図7は、コーティングおよびコーティングされていないシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)上の内皮細胞密度の蛍光顕微鏡像を示す。
【0112】
(実施例6−チタンコーティング基材上の線維芽細胞接着)
線維芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、37℃および5%CO2で4時間インキュベートした。規定の期間の終わりに、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像を撮影した。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0113】
細胞密度の測定から示されるように、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、PTFEおよびUHMWPEコーティングサンプル上で有意に増加し、それぞれ約78%および90%の増加を表した(図8)。チタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する線維芽細胞数および伸展の増加も観察された。
【0114】
(実施例7−線維芽細胞付着/反発)
この実施例では、UHMWPE、シリコーンおよびPTFEという3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析によって確認した。
【0115】
線維芽細胞をATCC(CRL−2317)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで成長させた。材料サンプルを供給される通りに使用した。細胞実験の前に、サンプルを超音波で分解し、加圧滅菌した。
【0116】
線維芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、まず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175Μlの細胞含有液滴をそれぞれの中に添加し、5%CO2下で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、各サンプルに対して3通りに行い、2回繰り返した(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0117】
この研究の結果は初めて、この研究で検査した他のサンプルと比較して、体外の線維芽細胞接着がシリコーン上のチタンコーティングにおいて減少したことを示した(図8)。その他すべて基材に対して、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、コーティング上で増加した。培養において1、3および5日に検査した線維芽細胞増殖は、チタンコーティングPTFEへの線維芽細胞接着のさらに劇的な増加を示したが、各コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングシリコーンおよびUHMWPE上の接着は。1、3および5日の試験に対する結果を、図9A、9Bおよび9Cに示す。各棒グラフは、各比較に対して*p<0.01であるn=3を表す。線維芽細胞の少ない接着が、シリコーン上のチタンコーティングで構成される整形外科または血管インプラントのいずれかの周囲のあまり軟質ではない瘢痕組織形成に平行移動するため、これは有望な結果であった。その他すべて基材に対して、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、コーティング上で増加した。
【0118】
定性的線維芽細胞形態像は、チタンコーティングシリコーン上の少ない線維芽細胞接着の定量的データと一致した。蛍光顕微鏡法によって分析されたとおり、図10に示されるように、検査した他の基材と比較して、より少ないよく伸展した細胞がチタンコーティングシリコーン上で観察された。
【0119】
(実施例8−コーティングおよびコーティングされていないサンプル上のタンパク質合成の増加)
この実施例では、3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析を介して確認した。骨芽細胞をATCC(CRL−11372)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで培養において成長させた。
【0120】
コーティング材料サンプルを供給されたように使用した。コーティングされていないサンプルをかみそりで切り取って接着表面を平坦にした。細胞実験の前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間UV処理するかのいずれかを行った。
【0121】
骨芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、まず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、5%CO2雰囲気中で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、液滴を含有する細胞を除去し、各サンプルウェルをDMEM培地で満たして、1、3および5日の増殖のために同条件下で再びインキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、それぞれ24、72および120時間後にPBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、各サンプルに対して3通りに行い、2回繰り返した(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0122】
タンパク質分析からの結果は、21日後の全コーティング部分に対するタンパク質合成の増加を示した。コーティングシリコーンに対しては、増加は約400%、コーティングUHMWPEに対しては、増加は約1,300%、コーティングPTFEに対しては、増加は約800%であった。これらの分析では、総タンパク量を測定した。7、14および21日での増殖の増加を図11に図示する。
【0123】
(実施例9−シリコーン、PTFEおよびUHMWPE上の骨芽細胞増殖の増加)
この実施例では、3種類の基材を、IPD過程を通して200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析によって確認した。
【0124】
骨芽細胞をATCC(CRL−11372)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで培養において成長させた。チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEサンプル供給されたように使用した。コーティングされていないサンプルをかみそりで切り取って接着表面を平坦にした。細胞実験の前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間紫外線光下で照射するかのいずれかを行った。
【0125】
骨芽細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をウェル上に配置し、5%CO2雰囲気中で37℃にて4時間インキュベートした。液滴を含有する細胞を除去し、各サンプルウェルをDMEM培地で満たして、1、3および5日の増殖のために同条件下で再びインキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、それぞれ24、72および120時間後にPBS中で再び3回洗浄した。細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、それぞれ2回繰り返して3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0126】
第1、3および5日の試験の結果は、コーティングされていない対応物を超える、全コーティング基材上の骨芽細胞増殖の増加を示す。コーティングされていない基材と比較したコーティング基材上の細胞増殖を、図12Aでは1日後、図12Bでは3日後および図12Cでは5日後で示す。図13は、TiコーティングおよびコーティングされていないPTFE上の第1、3および5日に対する、コーティングおよびコーティングされていないPTFE上のDAPI染色細胞の蛍光像の写真である。コーティングされていない基材と比較して、早くも第1日に有意な骨芽細胞増殖がある。データを表3に要約する。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】図1は、標的1、基材2、移動可能基材ホルダ3、真空チャンバ4、標的用の電源5、アークの速度を調整するためのアーク制御6といった、改良カソードアークIPD装置の一般的特徴を示す。
【図2】図2は、コーティングされていない基材とのチタンコーティング基材(チタン)の比較を示す。チタンの蒸着は、UHMならびにPTFE上の、コーティングされていない部分の、およびIPD蒸着されたチタンの、低倍率SEM写真で見ることができるように、ナノスケールの表面に粗さをもたらす。バー=両方のコーティングされていないサンプルに対して10ミクロン、チタンでコーティングしたUHMWPEに対しては20ミクロン、チタンでコーティングしたPTFEに対しては10ミクロン。
【図3A】図3Aは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、1日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図3B】図3Bは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、3日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図3C】図3Cは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、5日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図4】図4は、1、3および5日後の、コーティングされていないPTFEおよびTiでコーティングしたPTFE上の増加した骨芽細胞密度の蛍光顕微鏡像を比較する。棒は100ミクロンを表す。
【図5】図5は、7、14および21日後の、固体チタン金属、UHMWPE、PTFE、コーティングUHMWPEおよびコーティングPTFE上の骨芽細胞(石灰化)形成の増加を示す。N=3サンプル、対応するコーティングされていない試料と比較して*p<0.01、固体チタン金属棒と比較して**p<0.01。
【図6】図6は、N=3、各コーティングされていないサンプルと比較した*p<0.01に対する、Tiコーティングシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)に対する細胞接着を示す。
【図7】図7は、異なる表面上の細胞カウントの差異を比較する、コーティングおよびコーティングされていないシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)の蛍光顕微鏡像を示す。
【図8】図8は、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する線維芽細胞接着の比較を示す。コーティングされていないシリコーンと比較した、チタンコーティングシリコーン上の線維芽細胞の細胞接着の減少も図中に示される。データは3つのサンプルの平均であり、n=3であり、*がコーティングされていない対応物と比較するとp<0.01を表す。
【図9A】図9Aは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、1日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して+p<0.01である。
【図9B】図9Bは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、3日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して+p<0.01である。
【図9C】図9Cは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、5日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して*p<0.01である。
【図10】図10は、チタンコーティングシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)基材の蛍光像を示し、コーティングされていない基材と比較したこれらの表面上の線維芽細胞の数の相違を示す。
【図11】図11は、コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEサンプルに対して、7、14および21日後の吸光度によって測定されるとおりのタンパク質レベルの変化を示す棒グラフである。各コーティングされていないサンプルおよび以前の時点と比較して*p<0.01である。
【図12A】図12Aは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、1日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図12B】図12Bは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、3日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図12C】図12Cは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、5日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図13】図13は、1、3および5日後のチタンコーティングおよびコーティングされていないPTFE上の骨芽細胞増殖の蛍光像を比較する写真パネルである。
【技術分野】
【0001】
本願は2006年3月27日に出願された仮特許出願第60/786,118号の利益を主張し、この仮特許出願の全内容は参考によって援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、細胞およびその他の生物材料に対する接着基質を提供する改良コーティングに関する。選択されたナノテクスチャコーティング表面は、細胞の成長および増殖を促進し、金属または非金属基材上の安定したコーティングとして蒸着することが可能である。
【背景技術】
【0003】
(2.背景技術の記載)
身体が異物を自身として認識しないため、インプラント可能なデバイスの拒絶は大きな問題である。その結果、現在使用されている幅広い医療デバイスは、治癒を促進できず、しばしば高い感染率を促進する場合がある。カテーテル、関節置換、軟組織修復および歯科インプラントは、このような問題が頻繁に観察される例である。インプラントは、感染が最小限化されて治癒速度が増加されるように、理想的には細胞付着を促進するべきである。
【0004】
インプラントデバイスが作られる材料は、通常、細胞付着を促進または向上しようとして表面修飾される。残念ながら、細胞付着があっても、組織成長を適切に促進する長期的留置デバイスはない。一部のプロトコルは、組織付着を補助するためにデバイスの表面上に増殖因子を採用するが、結果は必ずしも満足いくものではなく、増殖因子は日常的には使用されない。新しい組織細胞が直ちに付着して成長するように、インプラント表面を改良するために行われた試行の成功はほとんどなく、現在の技術は、組織付着を有意に強化する表面の開発ができていない。
【0005】
整形外科用途に対する従来のチタンで作られた材料の性能を向上する生物活性コーティングがいくらか注目されている。現在使用されているデバイスは、骨結合を強化させようとして、チタン上の表面コーティングとしてヒドロキシアパタイトを適用することによって、従来の冶金技法により加工される。商業的には、ヒドロキシアパタイトは、ナノ結晶ヒドロキシアパタイトを、少ない結晶リン酸カルシウム基質を含有するミクロン粒径のヒドロキシアパタイトに変換する高温プラズマ容射蒸着過程によって、チタンで作られた金属にコーティングされる。ヒドロキシアパタイトのプラズマ容射蒸着は、使用されている1つのコーティング方法であるが、これは、臨床使用中にコーティングの層間剥離を引き起こす、高溶解性リン酸カルシウムの形成につながる場合がある相転移をもたらす(非特許文献1;非特許文献2)。
【0006】
近年、チタン等の超微細金属コーティングの使用を含む、ナノスケールの表面粗度を得るために、技法が探索されている(非特許文献3;非特許文献4)。アノード酸化チタンおよび蒸着チタンの化学エッチングも、骨芽細胞付着および後の骨形成にとって魅力的な表面を作成しようとして使用されている(非特許文献5)。
【0007】
ナノメートル表面特徴がある材料は、ミクロンスケールの特徴がある材料と比べて、骨形成を強化すると考えられる(非特許文献6;非特許文献7)。残念ながら、現在使用されているインプラントに対して、従来のコーティング過程は、効果的な骨再生に必要なナノ構造表面を提供しない。
【0008】
インプラント可能なデバイスへの組織付着の強化を目指した現在の努力の大部分は、ナノ粉末で構成されるプレス加工された金属インプラントの開発およびプラスチックのナノテクスチャリングに焦点を当てている。両方法に関する問題は、表面修飾のために材料が有意量の強度を失うことである。
【0009】
次世代整形外科用インプラントの設計への近年の取り組みは、合成インプラント表面を、骨組織中にある天然細胞外基質タンパク質によって作成される独自のナノメートルトポグラフィに適合させることを中心としている。骨組織中にあるナノメートル構造および分子は、骨形成細胞が典型的にナノメートル粗度の表面と相互作用することを示す一方で、現在使用されている従来の合成金属は、マイクロ粗度の表面を有するが、ナノスケールレベルでは平滑である(非特許文献8;非特許文献9)。
【0010】
線維性(未熟)骨は、10〜50nmの平均無機鉱物粒径を有する。線維性骨に活発に取って代わる層板骨は、長さ20〜50nmの平均無機鉱物粒径を有し、直径2〜5nmである。しかし、ナノスケール寸法では、すべてではないにしても、多くの現在利用されているインプラント表面は平滑である。そのような平滑表面は、層状の望ましくない結合組織で骨中に配置されたインプラントを最終的に封入し得る「ファイブロインテグレーション」(カルス形成)に有利に働くことが示されている。(非特許文献3)
整形外科用デバイス上の細胞付着コーティングを開発する努力に加えて、歯科インプラントに使用されるもの等のデバイス上の付着コーティングの必要性がある。ヒドロキシアパタイトまたはACTIPORETMコーティングは、CoCrMo等の典型的な医療デバイス基材に容易に蒸着されない。蒸着が可能であっても、接着がしばしば不良であり、層間剥離が起こり得る。
【0011】
組織付着を促進する表面を作るために現在使用されている2つの主な技術がある。1つの方法は、ある程度の表面粗度が得られるように金属ナノ粉末をプレス成形することであり、もう1つの方法は、成形過程を通してプラスチック上にナノ粗度表面を作成することである。
【0012】
金属粉末をプレス成形して低温で焼結することは、基材表面上の組織の内方成長を促進する表面を作成する。残念ながら、整形外科使用に必要とされる強度は、必要な強度を得るために粉末が高温で焼結されることを必要とするため、そのような組成物は、多くの整形外科用途で使用することができない。焼結温度の上昇は、表面のマイクロ構造を破壊し、よって組織付着に対するあらゆる利点が失われる。
【0013】
高分子表面にナノテクスチャリングを成形することは、組織成長を促進する表面を設計する努力の主要目的となっている。一つには、金型には、一貫した結果を伴うプラスチック表面に正しいナノテクスチャリングを与える限られた能力しかないため、この方法は限られた成功を得ている。粗い金型内へのプラスチックの流れは制御することが困難であり、部分拒絶率が50%にも高くなる場合があるため、製造過程における品質管理は、概して受け入れ難い。
【非特許文献1】R.Furlong、J.F.Osborn、「Fixation of hip protheses by hydroxyapatite ceramic coatings」、J Bone Joint Surg (Br)、73B、741−745、2001.
【非特許文献2】K.C.Baker、M.A.Anderson、S.A.Oehlke、A.I.Astashkina、D.C.Haikio、J.DrelichおよびS.W.Donahue、「Growth,characterization and biocompatibility of bone− like calcium phosphate layers biomimetically deposited on metallic substrata」、Materials Science and Engineering:C,In Press.
【非特許文献3】T.J.Webster,J.U.Ejiofor、「Increased osteoblast adhesion on nanophase metals: Ti, Ti6A14V, CoCrMo」、Biomaterials,25(19)、4731−4739、2004.
【非特許文献4】R.Z.Valiev、V.V.Stolyarov、H.J.RackおよびT.C.Lowe、「SPD−processed ultra− fine grained Ti materials for medical applications」、Medical Device Materials、ASM、Materials Park、OH、362−367、2004.
【非特許文献5】C.Yao、V.Perla、J.L.McKenzie、E.B.SlamovichおよびTJ. Webster,「Anodized Ti and Ti6A14V possessing nanometer surface features enhances osteoblast adhesion」、Journal of Biomedical Nanotechnology、1、68−73、2005.
【非特許文献6】M.Sato,E.B.SlamovichおよびT.J.Webster、「Enhanced osteoblast adhesion on hydrothermally treated hydroxyapatite/titania/poly (lactide−co−glycolide) sol−gel titanium coatings、」Biomaterials、26(12)、1349−1357、2005.
【非特許文献7】K.C.Popat、E.E.L.Swan、V.Mukhatyar、K.I.Chatvanichkul、G.K.Mor、C.A.Grimes、T.A.Desai、「Influence of nanoporous alumina membranes on long−term osteoblast response」、Biomaterials、26、4516−4522、2005.
【非特許文献8】Kaplan F.S.ら、Biomaterials In Simon SP, editor. Orthopedic basic science.Columbus、OH:American Academy of Orthopedic Surgeons、460−478、1994A.
【非特許文献9】Kaplan F.S.ら.「Form and function of bone」、In Simon SP, editor;Orthopedic basic science;Columbus、OH:American Academy of Orthopedic Surgeons、127−185、1994B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
(当該分野における不足点)
表面プレスおよび成形技法の不足点は、組織接着性質のさらなる向上を有し、医療インプラント上のコーティングとしての使用に適切な表面コーティングを生産する方法の必要性を示唆する。
【0015】
従って、金属または非金属表面に接着し、優れた組織付着性質を有し、生細胞にとって毒性のないコーティングの必要性がある。このような特徴がある付着コーティングは、理想的には、一貫性があり、かつ経済的に実行可能な過程において、幅広い基材表面上に蒸着される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は、1つには、ナノ粒子(約100nm以下までの粒子)蒸着を精密に制御することが可能であるという認識および選択された基材上の改良イオン蒸着過程(IPD)によって蒸着されるコーティングは、従来のプラズマ蒸着方法によって蒸着されるコーティングよりも有意に大きく組織付着を強化するという予期されない発見に基づく。この観察は、骨再生に対する生体適合性足場として働くナノ構造コーティングを生産するための方法の開発をもたらしている。
【0017】
特に驚くべき発見は、シリコーン上のIPD蒸着金属コーティングは、その他の金属または高分子で作られた基材上のIPD蒸着金属とは対照的に、例えば線維芽細胞または内皮細胞といった、一部の細胞型の付着を促進しないという観察であった。しかし、検査したほとんどの細胞は、金属またはいくつかの異なる種類の高分子上のIPD蒸着金属表面での付着および増殖の強化を示した。線維芽細胞が軟組織およびカルス形成を促進するため、骨成長を促進するために選択的骨芽細胞接着が望ましい場合は、シリコーン基材の使用が非常に有利となる場合がある。骨再生は、骨成長を促進することを目的としたインプラント上に構成することができ、かつ回復を遅延および抑制することができる。
【0018】
いくつかの種類の細胞はナノ構造コーティングに直ちに付着し、付着細胞は適切な環境で増殖することが分かっている。線維芽細胞および骨芽細胞等の付着した未熟細胞は、足場または基質として働くナノ構造支持コーティング上で分化および増殖する。論議されるように、例外は、ナノ構造IPD蒸着金属表面がシリコーン基材にコーティングされる場合の、線維芽細胞または内皮細胞の付着である。
【0019】
ナノ構造コーティングを生産するために使用されるIPD方法は、ナノ粒子生産を増加し、蒸着を制御するように調整された改良IPD過程に基づく。IPD蒸着金属は、約500Hzの好ましいスイッチング速度で、制御速度プラズマアーク標的から蒸着することが可能である。
【0020】
プラスチックまたは金属基材上に金属を蒸着するために制御されたIPD過程を使用すると、基材表面へのナノ粒子材料の接着を強化することが発見されている。蒸着したコーティングは、産業上使用されるその他の過程によって生産される膜または表面よりも、高い組織細胞接着率を促進する。IPD過程は、特殊な、または下塗りの「シード(seed)」コーティングの必要なく、基材上に直接ナノ粒子材料を蒸着する。
【0021】
基材表面上の蒸着した物質のナノ粒径および密度の厳格な管理は、当初、インプラントデバイス上の細胞接着および組織成長を向上すると予期されなかった。当業者にとって、何年もプラズマ蒸着過程に熟達した者にとっての主要な傾向は、より清浄でより均等な膜を生産するために、表面上に蒸着されるナノ粒子の数を減らすこととなっている。産業上の従来の知識は、一般に1ミクロンのサイズの範囲の粒子さえ、蒸着された膜の質に対して有害であり、その結果蒸着された膜は可能な限り平滑であって、かつ粒子を含むべきではないということであった。
【0022】
従って、標的から放出され、基材に蒸着される、サイズが約100nm未満のナノサイズの粒子が、コーティングの組織付着の質を低下させるよりもむしろ実際に強化したということは、予期に反した。従って、本発明の重要な側面は、ナノ粒子の生産を低減するよりもむしろ増加させ、かつナノ粒子のサイズを制御するための方法の開発である。イオンプラズマ蒸着過程は、他の種類のプラズマ蒸着(PVD)過程よりも高い蒸着率を達成することができ、より多くのマクロ粒子を生産する傾向があるということが概して知られている一方で、より少ないのではなく、より多くのナノ粒子蒸着が、蒸着したナノ構造表面の組織付着性質を強化することは、以前には周知または十分理解されていなかった。
【0023】
その結果、マクロ粒子生産を増加させるよりもむしろ低減することに焦点を当てることによって、プラズマアーク蒸着方法および装置を改善する他者による努力は、組織付着の向上の成功をほとんど得ていない。本明細書において記載される結果は、超ナノ粒子密度がある膜を蒸着することが、IPD生産薄膜の組織付着特性を有意に向上し、かつそのような膜がインプラントデバイス上での使用に対して特に有利であることを実証している。概して、性能向上に有用ではないと見なされる、選択されたナノ粒子の粒径範囲内のマクロ粒子を、組織付着コーティングを強化するように意図的に生産することが可能である。
【0024】
より良い接着を達成するだけではなく、ナノ粒子蒸着を増加させるように高速で蒸着するために、ナノテクスチャコーティングの高速蒸着に特に適切である方法が開発されている。従って、本発明は、生体適合性材料のナノ粒子濃密コーティングの生産および蒸着を強化するための方法を含む。コーティングは、組織付着および接着特性の向上を示す。改良IPDナノ粒子コーティング過程を使用することの結果は、ヒトおよび動物用途で使用されるインプラント医療デバイス上の組織付着を促進するのに適した、濃密で、適合性が高く、接着性が高く、厚いコーティングである。
【0025】
IPD方法によって生産されるコーティングは、基材の種類によって制限されず、プラスチックおよびセラミック等の非導電材料および金属等の導電材料を含む、幅広い材料に適用することが可能である。制御されたナノテクスチャ表面を作成する方法は、インプラント部位での治癒を加速する、医療デバイス上の生体適合性フィルムを蒸着するために使用することが可能である。
【0026】
従って、制御されたナノ濃密組織付着コーティング表面を形成するために改良IPD過程を使用して、基材上に付着コーティングを蒸着する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0027】
コーティングは、基材上の付着表面の改良IPD蒸着を使用して生産される。潜在的付着金属または金属の組み合わせを含む標的を真空チャンバに入れ、標的に電力を供給して、標的金属をイオン化粒子にイオン化するアークを生成する。ガスがイオン化プラズマ粒子と反応するように、酸素または窒素等の反応性ガスを任意で真空チャンバに導入する。基材上へのプラズマ粒子の蒸着は、標的への電力を可変的に制御しおよび/または、任意で、蒸着過程中に制御された方式で、基材を標的の近くまたは遠くに移動することによって、制御する。
【0028】
IPD方法は、医療デバイスまたは材料上の付着表面を提供し、これは、従来のようにコーティングしてあるかにかかわらず、従来の医療デバイスおよび材料によって提供されるよりも速い生体内治癒を促進する。このことは、適合性が高いナノ構造表面が基材に形成されるように、高分子または金属基材に金属を蒸着することによって達成される。
【0029】
分散金属、金属窒化物または金属酸化物粒子は、金属、プラスチック、ガラス、軟質シート、多孔性紙、セラミック、それらの組み合わせ等を含む、多種多様の基材材料にIPDによって蒸着することが可能である。基材は多くのデバイスを含み得るが、医療デバイスが特に好ましく、カテーテル、インプラント、ステント、気管チューブ、整形外科用ピンシャント、排液管、人工補装具、歯科インプラント、包帯および創縫合を含むことができる。本発明はそのようなデバイスに限定されず、フェイスマスク、衣類、手術道具および表面等の、医療分野で有用なその他のデバイスにまでおよぶことができることを理解するべきである。
【0030】
標的材料がアークプラズマ過程を介したイオン化が可能であるという条件で、標的は、付着性質を有する任意の固体材料または材料の組み合わせであってよい。好ましい材料は、付着性質を有し、生体適合性がある、すなわち意図された環境に損害を与えない金属である。そのような材料は、本明細書では概して「付着金属」と呼ばれ、亜鉛、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、ニチノール、チタン、チタン6−4、クロム、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、鉄/クロム/ニッケル(ステンレス鋼)、白金および金を含む、合金ならびに金属を含む。
【0031】
本発明は、基材表面上への金、チタン、ニチノールまたはその他の金属イオンの蒸着、含浸、または層化を提供し、5nmより大きい粒子から成る密度の高いナノ構造を形成する。ナノ構造表面は、細胞またはその他の生物材料に対する付着点を提供する。細胞は、表面の中または上に分散される一価、二価および多価酸化物の組み合わせとして蒸着することができる、ナノピコおよびマイクロサイズの結晶性金属および金属酸化物化合物の固体構造上に結合する。
【0032】
一般に、本発明は、ナノ構造の密に分布した粒子状金属コーティングを形成するように、基材に金属イオンプラズマを蒸着することと、1つ以上の細胞をコーティング表面に付着させるのに十分な時間の間、コーティング表面を1つ以上の細胞に接触させることとを含む、バイオコーティングされた基材を調製することを対象とする。蒸着コーティングに付着する1つ以上の細胞は、付着細胞の生物学的性質を保持するバイオコーティングされた基材を形成する。事実上、バイオコーティングは、医療インプラントの場合のように、人口培養環境であろうと天然環境であろうと、適切な条件下で、細胞または組織が直ちに付着し成長することを可能にする、基質または足場に付着される。未熟細胞が付着する場合、バイオコートは、例えば骨芽細胞の骨細胞への成熟といった、分化を可能にすることができる。
【0033】
事実上、任意の細胞、一般には任意の単核細胞がナノテクスチャ表面コーティングに付着させられ得る。例は、白血球、リンパ球、好中球、好酸球、単球等を含む。特に好ましい細胞は、骨芽細胞、線維芽細胞および内皮細胞を含む。異なる細胞の混合物もまた、これらの細胞に容易に付着することが可能であり、かつ成長および増殖することが可能であると予期される。
【0034】
バイオコーティングは、イオンプラズマ蒸着(IPD)過程を使用して、様々な基材表面上に生産される。コーティング材料として選択される金属は、標的と基材アノードとの間でイオン化ビームまたはアークが生成されると、アノード標的に蒸着する金属イオンを生成する標的として働く。アーク速度を管理することによって、標的での金属イオンの生成を制御し、標的からのその相対距離によって、アノード基材での蒸着を制御すると、濃密ナノ粒子状表面を作成することが可能である。これらのナノ粒子は、安定し、かつ剥離に強い耐性を示すように、基材表面内に埋め込まれる。重要なことには、それらは、細胞に友好的な基質として働き、医療インプラント上のコーティングに対して理想的となる。
【0035】
IPD蒸着金属イオンは、好ましくは、マイクロサイズに近づくより大きい粒子としてではなく、ナノ粒子として密に蒸着される。ナノ粒径に対する最も好ましい粒径範囲は、約1から約100ナノメートルであり、より普及しているコーティング金属のうちの2つである、チタンおよび金に対して、約15nmが特に好ましい。約103粒子/cm2から約104粒子/cm2のナノ粒子密度が、良好なバイオコートを提供する典型的密度である。コーティングの厚さは、好ましくは、約0.1ミクロンから約3ミクロンである。
【0036】
IPD方法に対する標的は任意の金属となり得るが、生体内および上での使用を考慮すると、ニチノール、CoCrMo、金、白金、銅、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛またはそれらの組み合わせが好ましく、ニチノール、金およびチタンが特に好ましい。
【0037】
基材は、金属であろうとプラスチックおよびセラミックを含む非金属であろうと、多数の材料のうちのいずれにもなり得る。模範的な基材材料は、UHMWPE、EPTFE、PTFE、PEEK、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鉄/クロム/ニッケル(鋼鉄)、コバルト、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせを含む。
【0038】
本発明はまた、ナノ構造金属膜に付着する1つ以上の生体生存可能細胞を含む組成物も含む。膜は、約103/cm2から104/cm2の密度で分散される、サイズが約1ミクロンのイオンプラズマ蒸着金属から生産される。蒸着される典型的な金属は、Ag、Au、Ti、CoCrMoおよびそれらの混合物を含む。
【0039】
生体生存可能細胞は、任意の単核細胞となり得る。特に好ましい細胞は、インプラント等の表面コーティングされた医療デバイスと接触することができるものであり、その場合、線維芽細胞、骨芽細胞または内皮細胞が存在する可能性が最も高い。
【0040】
好ましい実施形態は、UHMWPEに蒸着されるナノ構造チタン表面に付着する骨芽細胞を含む。内皮細胞に対する好ましい表面は、UHMWPEまたはPTFEに蒸着されるチタンである。金属表面コーティングは、概して、約103/cm2から約104/cm2の密度で基材表面上に分散され、かつ約0.3から約1nmの厚さを有する、サイズが最大で15nmまでの粒子を含む。代替的なナノテクスチャ金属表面は、金、チタンおよびニチノールを含む。
【0041】
コーティングが約10から約100ナノメートルの深さまで金属または高分子基材を含浸するため、IPD方法によって生産されるナノ構造表面コーティングは安定性が高い。模範的な好ましいイオンプラズマ蒸着金属表面は、約103/cm2から104/cm2の表面密度および約10から約100ミクロンの厚さで、サイズが約1から約100ミクロンのナノ粒子から成り得る。
【0042】
(定義)
イオンプラズマ蒸着(IPD)は、典型的には固体金属である標的材料においてカソードアーク放電を使用して、高エネルギーのプラズマを作成する方法である。アークを金属に衝打し、アーク上の高出力密度が金属を蒸発させてイオン化し、アークを維持するプラズマを作成する。周囲のガスよりもむしろ金属蒸気自体がイオン化されるため、真空アークは高圧アークとは異なる。
【0043】
プラズマ蒸着(PVD)は、化学反応を伴わずに、原材料が真空中で基材に物理的に移動される、気相での薄膜蒸着過程である。この種類の蒸着は、熱蒸発、電子ビーム蒸着およびスパッタリング蒸着を含む。IPD過程は、物理蒸着のサブタイプである。
【0044】
マクロまたはマクロ粒子は、標的から放出される粒子を表し、本明細書において使用される場合、約100nmより大きい粒子を指す一方で、ナノ粒子は、サイズが約100nmまでの粒子である。
【0045】
「付着性質」および「潜在的付着性質」は、一部の金属が、元素状態で、典型的にはあまりに非反応性で有効な付着部位として働かないが、イオン化されるとはるかに強い付着効果を示すことができるという事実の認識を目的とした用語である。よって、標的を含む付着金属は、多くの場合は金属のイオン化時に認識される、潜在的付着性質を有する。イオン化されると、付着金属はまた、酸素または窒素等の様々な反応性ガスと組み合わされ、酸化物または窒化物およびそれらの組み合わせを形成し得る。
【0046】
本明細書において使用される場合、生物材料は、細胞等の組織成分、ヒドロキシアパタイト等の鉱化無機物およびコラーゲン等の生体基質材料を含む。
【0047】
ニチノールは、他に指示がない限り、特定粒状構造による、ニッケルおよびチタンそれぞれの約55/45の組み合わせとして定義される。
【0048】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、指定された数字が必ずしも正確ではないが、使用される特定の手順または方法によって決定されるように、10%範囲内でより高いまたはより低い場合があるということを示すことを目的としている。
【0049】
請求項で使用される場合、「1つの」という用語は、単一種類に限定することを目的としていない。
【0050】
いくつかの高分子に対する許容された略称は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、EPTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)およびUHMWPE(超高分子量ポリエチレン)を含む。
【0051】
CoCrMoは、典型的にそれぞれ約64%、28%および6%の割合のコバルト、クロムおよびモリブデンの合金である。Ti−gal−4Vは、89%チタン、6%アルミニウムおよび4%バナジウムを含有する、外科インプラントで使用される合金である。
【0052】
KSIは、表面に1000psiを印加して接着について検査する標準引張試験である。
【0053】
本明細書において使用される場合、「生体生存可能(bioviable)」は、生物材料がその天然生物学的潜在性を維持することを示唆する記述用語であり、細胞に対しては、これは、成長および増殖能力を維持することを意味する。
【0054】
バイオコートは、例えば、細胞、組織、細胞基質ならびにヒドロキシアパタイトおよび骨等の無機構成成分のような、生物材料の性質を有する基材または「基材」に接着する膜である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
(発明の詳細な記載)
本発明は、他の最先端の付着コーティングおよび付着コーティングを蒸着するための過程よりも、多数の利点を提供する。向上したバイオコーティングを調製するために使用されるIPD蒸着方法は、粒径の制御、ある材料に対するより低い動作温度、従来のプラズマアーク過程と比較して有意に向上したスループット処理効率、延伸性および幅広い基材材料の適用を可能にする。蒸着した材料の重要な特徴は、一つには、基材表面へのイオン化粒子のインプラントによる、基材への高い表面接着性である。IPD蒸着表面は、細胞/組織付着、分化および増殖を有意に強化する表面特徴に貢献する、密に配設されたナノ粒子を含む。
【0056】
開示されたIPD過程は、真空下で行われ、細胞付着を促進するナノ構造表面を生産するために使用される。150eVから500eVの典型的エネルギーレベルは、好ましくは、ニッケル、チタン、金および/またはこれらの金属を含有する合金または組成物である、標的材料に応じて、適切に制御される。エネルギーレベルも、標的が大型である場合に、より高いエネルギー入力を必要とすることができるように、標的のサイズに左右される。該過程は、熱感性樹脂およびプラスチック基材上の蒸着に対する好ましい温度範囲である、少なくとも約30℃ほども低い温度での蒸着を可能にする。
【0057】
一般に、該方法は、標的と真空チャンバ内に収容されるアノードとの間に選択された基材を位置付けることを必要とし、前記標的は、イオン性金属を含む。アーク放電は、標的とアノードとの間で生成される。標的への電力は、約100ナノメートルから約5ミクロンのサイズを有するマクロ粒子が生産されるように、可変的に制御される。任意でまたは加えて、アーク放電中に約25℃から約75℃の間の温度で所定の時間の間、標的に向かってまたは離して、約10インチから約30インチの範囲内での基材の移動を調整してもよい。これにより、基材上で約1nmから約50ミクロンの厚さを有する、高密度でマクロ粒子状の接着性付着コーティング膜が生産される。
【0058】
特殊ニッケル/チタン合金、特殊CoCrMo合金および医療デバイスまたは用途での使用のためのコーティングとは通常考えられないその他の合金でコーティングされた表面を含む、従来の真空アーク蒸着(VAD)方法を使用しての入手ができない、優れたコーティングが得られている。改良されたIPDによる過程を利用すると、同じまたはより良い付着親和性で、より薄いコーティングおよびより短い処理時間を達成することが可能である。より高いスループットが可能であり、これは、生産費用の節約をもたらすことが可能で、特に医療産業では有意な利点である。
【0059】
開示された方法に従って、標的金属をプラズマ内にイオン化することによって、基材の表面上および内に金属を蒸着する。参照することによりその内容が本願に組み込まれる、国際出願WO 03/044240号で説明されているもの等の多くのイオンプラズマ蒸着装置がある。このような基本的装置は、細胞付着に適したコーティングとして使用するための選択された金属の制御された蒸着を実行するために改良および使用することが可能である。
【0060】
基材にコーティングを蒸着する際、標的から放出されるマクロ粒子の相対数を制御することが可能である。マクロ粒子は、完全に蒸発されることなく標的から放出される金属の融解塊である。塊は濃密で純標的材料から成る。塊の表面は通常荷電している一方で、材料の大半は中性である。
【0061】
改良IPD過程の重要な特徴は、基材表面に金属または金属/酸化物コーティングを埋め込む能力であり、よって他の蒸着方法によって蒸着されるコーティングと比べて優れた接着を得る。インプラント過程は、標的からの特定距離でアークを調整することによって、制御することが可能である。プラスチックに対しては最大で少なくとも100nm、金属およびセラミック基材に対しては最大で少なくとも10nmまで埋め込まれるコーティングを得ることが可能である。
【0062】
改良プラズマアーク蒸着過程を実行するための適切な装置は、図1に図示されるIPD過程である。図1に示されるように、標的材料1のカソードは、真空チャンバ4内に配置される。標的は、電源5によって供給される電源から標的においてアークを生成することによって、イオン化される。プラズマ構成物質は、基材2を標的に向かって移動させるまたは離す制御機構3によって、選択され、制御されまたは基材へと向けられる。電源制御6は、アーク速度を制御するために使用される。
【0063】
IPDは、必ずしも一連の視覚蒸着方法ではない。回転およびラッキングが複雑な形状にとって必要である一方で、ラッキングおよび回転は通常、他のPVD過程ほどは全く複雑ではない。また、この過程は、10ミクロン以上の任意の大きさの穴に対して5:1の反復可能穴貫通アスペクト比を生じる。マクロ粒子の蓄積により、10ミクロン未満の穴を試験することは困難である。
【0064】
本発明におけるIPD過程で達成される典型的なコーティング速度は、金または銀等の材料に対して、毎分約100nmから5ミクロンにおよぶ。このような材料に対して、毎分200nm以上のコーティング速度で、毎時間45,000平方インチ以上のコーティング面積が得られている。コーティング速度の増加および大量に加えて、単一層のコーティングしか必要とされず、これはより低い労働率およびより高い加工率/スループットを意味するため、IPD過程は、平方インチあたりの少ない処置を必要とする。
【0065】
付着反応の有効性も、付着表面を形成するための処理時間に依存している。5秒から数分のより長い処理時間は、異なる付着反応を有する付着表面をもたらす。
【0066】
IPD蒸着コーティングの粒径は、好ましくは、粒径が約100ナノメートルから約5ミクロンの範囲内となるように、標的への電力を調整することによって制御され、組織付着が望ましい場合は、ナノメートル範囲の粒子が医療デバイス上のコーティングに対して好ましい。開示された方法によって蒸着されるチタンまたは金粒子は、直径100nm未満の粒径にまで制御することができる。
【0067】
このIPD過程を使用してコーティングされる表面は、細胞増殖および成長に対して、驚くほど適合性のある表面である。一連の細胞型は、金属コーティング基材に接着し、コーティングされていない表面と比較して有意に強化された成長を示す。非金属基材上のIPD蒸着金属での組織成長強化は、骨芽細胞、線維芽細胞および内皮細胞により実証されている。このことは、人工股関節置換またはその他の整形外科用インプラント等の医療用途におけるこのような生体適合性コーティングの使用に対して、重要な意義を有する。
【0068】
骨芽細胞は、金またはチタンコーティング高分子に少なくとも最初は接着することが知られている一方で、いくつかの種類の高分子上のIPD蒸着金またはチタンは、ここでは接着および持続的な長期成長を有意に強化することが示され、増加された細胞接着が、5日後にほぼ600%増加し、21日後でさえも非常に有意であった場合に、チタンコーティングUHMWPE上で特に顕著であった。細胞接着の増加は、金またはチタンコーティングPEEKおよび金コーティングPTFEに対しても観察されたが、後者は、骨芽細胞に対して比較的低い接着を示した。
【0069】
同様の効果がチタンコーティングUHMWPE上の内皮細胞で観察され、その場合、細胞接着の500%増加が、コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングPTFE上の100%増加とともに顕著であった。
【0070】
コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングPTFE上の78%およびUHMWPE上の90%の細胞密度の増加を伴って、線維芽細胞は同じパターンに従うように思われた。
【0071】
チタンコーティングシリコーンとは際立って対照的に、線維芽細胞は、シリコーンまたはチタン単独よりも顕著に低い接着への傾向を示した。
【0072】
本発明は、次の限定されない例によってさらに解説される。
【0073】
(材料および方法)
(ヒト骨芽細胞)
ヒト骨芽細胞(CRL−11372, American Type Culture Collection,個体数2−4)を、本研究における細胞接着実験で使用した。細胞をシーディングする前に、あらゆる関心基材を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1X強度)で洗浄した。細胞を、基材の3,500細胞/cm2の初期シーディング密度で、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)を補充したDulbecco’s Modified Eagle Medium(Hyclone)中の基材上で培養した。次いで、細胞を、標準細胞培養条件下(温度37℃、5%CO2および95%加湿空気)で1、3および5日間基材上で増殖させ、培地を1日おきに交換した。規定の期間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSでそっと3回洗浄して非接着性細胞を除去した。次いで、細胞を4%ホルムアルデヒド溶液(Fisher)で固定し、DAPI(Sigma)で染色した。細胞数を数え、蛍光顕微鏡(Swiss)下で画像を撮影した。
【0074】
長期細胞実験に対しては、骨芽細胞を、50,000細胞/足場の細胞密度でシーディングし、10%のFBS、1%のP/S、2.16×10−3g/mlのβ−グリセロリン酸塩および5×10−5g/mlのアスコルビン酸塩を補充したDMEM中で、7、14および21日間培養した。規定の期間の終わりに、凍結融解サイクルを使用して、細胞を溶解した。次いで、骨芽細胞によって蒸着されたカルシウム含有鉱物の量を判定するために、基材を一晩1Nの塩酸(J.T. Baker)に浸し、カルシウム鉱物沈着を溶解した。次いで、これらの浮遊物を回収し、製造業者の指示に従ってカルシウム分析(Sigma Diagnostics; Procedure No.587)を使用して、カルシウム含有量について検査した。全実験を3通りに行い、少なくとも3回それぞれ繰り返した。
【0075】
(内皮細胞)
ラット大動脈内皮細胞をVec Technologies(Greenbush, NY)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで成長させた。細胞実験の前に、サンプルを超音波で分解し、加圧滅菌した。
【0076】
内皮細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルをまず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をウェルに添加し、次いで、5%CO2下で37℃にて4時間インキュベートした。試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も得た。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0077】
(線維芽細胞)
線維芽細胞(CRL−2317, American Type Culture Collection、個体数2−4)および骨芽細胞(CRL−11372, American Type Culture Collection、個体数2−4)を細胞実験で使用した。細胞をシーディングする前に、基材をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(1X強度)で洗浄した。細胞を、基材の3,500細胞/cm2の初期シーディング密度で、10%ウシ胎仔血清(Hyclone)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Hyclone)を補充したDulbecco’s Modified Eagle Medium(Hyclone)中の基材上で、培養した。一部の実験は線維芽細胞単独により、一部の実験は線維芽細胞および骨芽細胞(異なる蛍光マーカ事前に染色した;Molecular Probes)を同時にシーディングして競合細胞接着を確認することによって行った。次いで、細胞を、標準細胞培養条件下(温度37℃、5%CO2および95%加湿空気)で4時間、基材に接着させた。規定の期間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSでそっと3回洗浄して非接着性細胞を除去した。次いで、接着性細胞を4%ホルムアルデヒド溶液(Fisher)で固定し、Hoescht 33258染料(Sigma)で染色した。細胞数を蛍光顕微鏡(Swiss)下で数えた。
【0078】
(表面特性化)
5kV加速電圧で電界放射型走査電子顕微鏡法(LEO)JEOL JSM−840走査型電子顕微鏡を使用して、IPD蒸着コーティング表面の走査型電子顕微鏡(SEM)分析を行った。Digital Scan Generator Plus(JEOL)ソフトウェアを使用して、デジタル画像を記録した。Leica蛍光顕微鏡、365nmの励起波長および400nmで測定された吸光度により、蛍光顕微鏡像を得た。
【0079】
(統計)
ダンカンの多重範囲検定と併用して標準分散分析(ANOVA)技法を使用して、統計的分析を行った。少なくとも3つの複製を伴って全実験を3通りに行い、p<0.01が統計的有意と考えられた。
【実施例】
【0080】
(実施例1−制御化IPD蒸着金属膜)
図1は、カソードアーク標的源(1)から選択された基材(2)上へ放出されるプラズマの蒸着を制御するのに適した装置を図示する。蒸着される粒子の大きさ、よって蒸着表面の那のテクスチャリングの程度は、真空チャンバ(4)内の移動可能基材ホルダ(3)によって、または標的への電源(5)およびアーク速度の調整(6)によって制御される。基材がアーク源に近くなればなるほど、基材上に蒸着される粒子はさらに大きくなり、さらに密集する。
【0081】
細胞接着に使用されるコーティング基材を調製するために、標的から比較的遠い距離に基材を位置付けることによって、マクロをほとんど含まない膜を蒸着した。これにより、接着膜を形成した。次いで、標的のより近くに基材を位置付けることによって、さらなるマクロ濃密膜を蒸着した。
【0082】
(標的からの基材距離の制御)
図1を参照して、基材(サンプル1)を、標的から30インチの距離にある移動可能基材ホルダ(3)内に配置した。チャンバ(4)を、5E−4トールのレベルまで膨張させた。アークを100アンペアの電流および16ボルトで開始した。基材(2)を15秒毎に1インチの速度で標的の近くに平行移動し、基材が標的から8インチになるまで続けた(30分)。
【0083】
基材(サンプル2)を、5E−4トールのレベルまで膨張させた真空チャンバ内で、標的から30インチの距離に配置した。アークを100アンペアの電流および16ボルトで開始した。基材を標的から30インチの距離で30分間維持した。
【0084】
SEM分析を使用して、サンプル1およびサンプル2の断面を検討した。サンプル1では、マクロ粒子の量およびサイズが、膜の厚さとともに増加し、すなわち、基材の近くにはより少なく、かつ、より小さいマクロ粒子があり、膜の厚さが増大するにつれて数およびサイズが増加した。逆に、サンプル2での断面は、マクロ粒子がほとんどなく均等であった。
【0085】
(アーク電力の制御)
ナノ粒子蒸着およびサイズもまた、アークの速度を十分に減速または加速するように構成することが可能である制御化IPD電源の使用によって、制御することが可能である。アークの移動速度は、生産されるマクロ粒子の数に直接関連する。標的の表面上のアークの速度を減速することにより、さらに多くのマクロ粒子を生産させ、このことは、マクロ粒子密度を増加させるために使用することが可能である。結果として生じる膜密度の増加もまた、膜に付着する組織の能力を増加させる。逆に、標的上のアークの速度を増加すると、マクロ粒子の生産が減少する。これにより、基材の表面に埋め込まれてより良い接着を生じることが可能な、さらに多くの高エネルギーイオンが生産される。
【0086】
サンプル3にはアーク制御がなく、基材を標的から12インチの距離に配置した。両サンプルを、別の動作に対する別の時にチャンバ内に配置し、5E−4トールまで膨張させた。アークを電源に対して100アンペアで設定した。各標的は、開始合計200アンペアに対して2つの供給を有した。サンプル3を、アーク制御を伴わずに5分間動作した。
【0087】
サンプル4を、300ヘルツの速度の電流の最適化スイッチングにより動作した。
【0088】
スイッチングは、標的上で200アンペアを維持するように制御したが、いつでも電流が供給上で等しくならないように、各電源を増加または減少させた。これにより、アークが強制的に所与の時間量で特定距離を移動させられることにより、マクロ粒子の密度およびサイズを制御した。
【0089】
サンプル3および4についてSEM断面分析を行った。サンプル4には、サンプル3よりもはるかに大きいマクロ粒径および密度の平均値があったことを除いて、膜は厚さ全体を通して一貫していた。サンプル3でのマクロ粒子の平均サイズは、103粒子/cm2の密度で約1ミクロンであった。サンプル4でのマクロ粒子の平均サイズは、104粒子/cm2の密度で約3ミクロンであった。
【0090】
(実施例2−IPD蒸着コーティング)
図1を参照して、真空チャンバ4を、典型的には0.1mTから30mTの範囲内の適切な作動圧力まで膨張させたが、持続放出速度を有する有効な付着表面を生産するIPD過程の能力は、0.1mTから30mTの範囲内のいずれの特定作動圧力にも依存していない。同様に、IPD過程は、動作温度に依存していない。典型的な動作温度は、25℃から200℃の範囲内であるが、より低い、またはより高い温度を使用してもよい。採用される温度は、一つには、基材によって決定される。約20℃から約40℃の間の範囲内の温度が、ほとんどの付着表面を生産するのに適している。
【0091】
基材は、例えば、回転盤を使用して回転させるか、または、受入蒸着材料の軌道に対する任意の配向性で蒸着部分を通過して転がすことが可能である。電力を標的に供給して、標的において電気アークを生成する。電力は、原材料に対して適切な圧力で、数アンペアから数100アンペアにおよび得る。電圧は、典型的に、12から60ボルトの範囲内であり、長さが数インチから数フィートにおよび得る原材料のサイズに、適切に拡大縮小される。
【0092】
UHMWPEおよびPTFE基材上のIPD蒸着チタンの模範的なコーティングを図2に示す。SEM写真から分かるように、蒸着金属は表面質感を、よりナノ粗度の表面に変える。
【0093】
(鋼鉄上のニチノールコーティング)
ニチノール標的を、選択された基材に沿って、イオンプラズマ蒸着装置の真空チャンバ内に配置した。電気アークは、ニチノール金属標的をニチノールイオン、中性荷電粒子および電子のプラズマにイオン化した。ニチノール粒子は、1ナノメートル未満から約50ミクロンにまでおよぶ粒径を有するように制御することが可能であった。
【0094】
ニチノール標的は、好ましくは医療グレードである。潜在的有毒不純物を回避するために、高純度標的材料が推奨されるが、場合によっては、低い純度の金属で満足いく結果が得られる場合がある。例えばCoCrMoといった、異なる合金も使用することが可能である。
【0095】
説明された蒸着過程を使用して、カスタムニチノール表面を、鋼鉄基材上に蒸着した。ニッケルおよびチタン標的を等しい電力で使用し、ニッケル/チタンの50/50混合を作成した。この混合物を鋼鉄クーポン上に蒸着し、SEMおよびEDXによって分析した。SEMスキャンは、サンプル中のマクロ粒子の平均サイズが、104粒子/cm2の密度で約1ミクロンであることを示した。EDXは、表面に均等に分布した約51%チタン、49%ニッケル混合物を示した。標準引張試験は、1KSI(1000psi)を超える接着強度を示した。
【0096】
(ニチノール上の金コーティング)
説明された蒸着過程を使用して、金の5ミクロンコーティングを、市販の直径1/8、壁厚さ0.005のニチノールチューブ上に蒸着した。このシード層をSEMによって分析した。SEMスキャンは、約104/cm2の密度を伴う約1ミクロンの平均マクロ粒径を示した。標準引張試験は、1KSI(1,000psi)を超える接着強度を示した。
【0097】
(Al2O3上のチタンシード層)
実施例1および2の蒸着過程を使用して、Al2O3ディスクを、シード層として3ミクロンのチタンでコーティングした。このシード層をSEMによって分析した。SEMスキャンは、サンプル中のマクロ粒子の平均サイズが、104粒子/cm2の密度で約1ミクロンであることを示した。標準引張試験は、1KSI(1,000psi)を超える接着強度を示した。
【0098】
さらなることでは、チタンをシード層上にフレーム溶射し、別の引張試験を行った。再び、コーティングは1KSIを超える強度を示した。
【0099】
(ステント上のニチノールコーティング)
説明された蒸着過程を使用して、ニチノールをステント上に蒸着した。コーティングは、1ミクロンの平均マクロ粒径および104粒子/cm2の密度で、1ミクロンの厚さまで蒸着した。標準引張試験は、1KSI以上の接着強度を示した。コーティングには、表面への血管組織付着に対する必要な特徴があるように思われ、それにより、再狭窄を阻止することが予期された。
【0100】
(実施例3−コーティング高分子基材上の骨芽細胞接着)
チタンおよび金コーティング高分子基材を調製した。基材は、それぞれ金、チタンでコーティングした、またはコーティングされていないPEEK、UHMWPEおよびPTFEであった。
【0101】
全基材を、12ウェル組織培養プレート(Corning, NY)に入れ、7.4のpHに調整した1000mlの脱イオン水中の、8gのNaCl、0.2gのKCl、1.2gのNa2HPO4および0.2gのKH2PO4を含有するIX強度の滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した(全化学物質は Sigmaより)。次いで、10%FBS(Hyclone)および1%P/Sで補充した2mlのDMEM(Hyclone)中の関心成形体上に、骨芽細胞を2500細胞/cm2の濃度でシーディングし、次いで、37℃、5%CO2および95%加湿空気の標準細胞培養条件下でインキュベートした。4時間後、細胞培地をウェルから吸引し、基材をPBSで3回洗浄して非接着性細胞を除去した。接着性細胞を4%ホルムアルデヒド(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)で固定し、Hoechst 33258染料(Sigma)で染色した。365nmの励起、400nmの放出を使用して、蛍光顕微鏡(Leica)下で細胞核を視覚化して数えた。細胞カウントは、基材あたり8つの確率場での細胞の平均数として表された。全実験を3通りに行い、細胞接着を接着性細胞の平均数に基づいて評価した。数値的データは、標準分散分析(ANOVA)を使用して分析した。統計的有意性はp<0.01と考えられた。
【0102】
SEMを使用して、関心の基材上の骨芽細胞形態および接着位置を検討した。接着分析の終わりに、50、60、70、80および90%エタノール溶液中の連続洗浄を通して細胞を脱水した。次いで、3分間および10mAの電流で、アルゴン環境において100ミリトール真空中でHummer I Sputter Coater(Technics)を使用して、サンプルを金−パラジウムの薄い層でスパッタコーティングした。細胞がないサンプルと同様に、5kV加速電圧でJEOL JSM−840 走査型電子顕微鏡を使用して、画像を撮影した。Digital Scan Generator Plus(JEOL)ソフトウェアを使用して、デジタル画像を記録した。
【0103】
結果は、各コーティングされていないサンプルと比較して、骨芽細胞接着は、ナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングした3つの高分子基材(PEEK<UHMWPEおよびPTFE)上で増加したことを示した。骨芽細胞接着は、現在使用されているミクロン粒径Tiと比較して、ナノ粒子状Tiでコーティングした全サンプル上でより強力であった。
【0104】
ナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングしたPTFEは、それぞれナノ粒子状TiまたはAuのいずれかでコーティングしたPEEKおよびUHMWPEの両方よりも優れていた。最良の骨芽細胞接着は、TiでコーティングしたPTFEで実証された。表1は、コーティング基材と比較した、コーティングされていない基材の骨芽細胞インキュベーションの結果を示す。
【0105】
【表1】
細胞形態の結果は、定量的に得られたものと一致した。すなわち、骨芽細胞は、コーティングされていないサンプルと比較して、TiまたはAuのいずれかでコーティングした高分子上の細胞伸展の増加を示した。
【0106】
(実施例4−チタンコーティングUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞増殖)
PTFEおよびUHMWPE基材を説明されようにチタンでコーティングした。コーティングされていないPTFEおよびUHMWPEサンプルをかみそりで切り取って平坦な接着表面を作った。シーディングの前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間120〜350nmの紫外線光に暴露するかのいずれかを行った。骨芽細胞(ATCC CRL11373)は、10%FBSおよび1%P/Sで補充したDMEM中で合流まで成長させた。
【0107】
骨芽細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングし、次いで、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、5%CO2中で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像を撮影した。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0108】
結果は、対応するコーティングされていないサンプルと比較して、チタンナノ表面コーティングが、UHMWPEおよびPTFE基材上の骨細胞の増殖を有意に増加させることを示した。おそらく各サンプルに対するコーティング密度の差異のため、サンプル群に対する統計的有意性を得ることができなかった。それにもかかわらず、各コーティングされたサンプルとコーティングされていないサンプルとの間の差異は有意であった。図3Aは、コーティングされていないおよびチタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する、1平方ミリメートルあたりの細胞で測定されたとおりの第1日の細胞増殖を比較し、図3Bは、第3日のチタンコーティングおよびコーティングされていないUHMWPEおよびPTFEに対し、図3Cは、第5日のチタンコーティングおよびコーティングされていないUHMWPEおよびPTFEに対する。チタンコーティングUHMWPEは、表2に示されるように、PTFE基材よりも優れている。チタンコーティングPTFE上の骨芽細胞増殖の増加は、当初、チタンコーティングUHMWPE上で観察された比較増加の約半分である。第3および5日では、チタンコーティングPTFEは、コーティングされていない基材と比較して、細胞増殖の2倍未満の増加を示す一方で、チタンコーティングUHMWPEは、5日後でも、そのコーティングされていない対応物と比較して、5倍以上の増殖の強化を維持する。N=6のUHMWPEに対する分析結果の統計的分析には、各コーティングされていないサンプルと比較して、p<0.1があった。
【0109】
【表2】
チタンコーティングPTFEについて第1、3および5日を比較する、10X倍率で撮影した増殖細胞の蛍光顕微鏡写真を図4に示す。図5は、チタンコーティングUHMWPE上の第1、3および5日での増殖骨芽細胞の比較を示す。
【0110】
(実施例5−チタン上の内皮細胞接着)
この実施例では、3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析を介して確認した。
【0111】
結果は、図6に図示される、コーティングシリコーン部分上の細胞接着の25%減少、コーティングUHMWPE上の細胞接着の500%増加および100%のPTFEサンプル上の100%細胞接着の増加を示した。図7は、コーティングおよびコーティングされていないシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)上の内皮細胞密度の蛍光顕微鏡像を示す。
【0112】
(実施例6−チタンコーティング基材上の線維芽細胞接着)
線維芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、37℃および5%CO2で4時間インキュベートした。規定の期間の終わりに、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像を撮影した。実験は、それぞれ2回繰り返して、3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0113】
細胞密度の測定から示されるように、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、PTFEおよびUHMWPEコーティングサンプル上で有意に増加し、それぞれ約78%および90%の増加を表した(図8)。チタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する線維芽細胞数および伸展の増加も観察された。
【0114】
(実施例7−線維芽細胞付着/反発)
この実施例では、UHMWPE、シリコーンおよびPTFEという3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析によって確認した。
【0115】
線維芽細胞をATCC(CRL−2317)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで成長させた。材料サンプルを供給される通りに使用した。細胞実験の前に、サンプルを超音波で分解し、加圧滅菌した。
【0116】
線維芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、まず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175Μlの細胞含有液滴をそれぞれの中に添加し、5%CO2下で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、PBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、各サンプルに対して3通りに行い、2回繰り返した(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0117】
この研究の結果は初めて、この研究で検査した他のサンプルと比較して、体外の線維芽細胞接着がシリコーン上のチタンコーティングにおいて減少したことを示した(図8)。その他すべて基材に対して、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、コーティング上で増加した。培養において1、3および5日に検査した線維芽細胞増殖は、チタンコーティングPTFEへの線維芽細胞接着のさらに劇的な増加を示したが、各コーティングされていないサンプルと比較して、チタンコーティングシリコーンおよびUHMWPE上の接着は。1、3および5日の試験に対する結果を、図9A、9Bおよび9Cに示す。各棒グラフは、各比較に対して*p<0.01であるn=3を表す。線維芽細胞の少ない接着が、シリコーン上のチタンコーティングで構成される整形外科または血管インプラントのいずれかの周囲のあまり軟質ではない瘢痕組織形成に平行移動するため、これは有望な結果であった。その他すべて基材に対して、線維芽細胞接着は、コーティングされていないサンプルと比較して、コーティング上で増加した。
【0118】
定性的線維芽細胞形態像は、チタンコーティングシリコーン上の少ない線維芽細胞接着の定量的データと一致した。蛍光顕微鏡法によって分析されたとおり、図10に示されるように、検査した他の基材と比較して、より少ないよく伸展した細胞がチタンコーティングシリコーン上で観察された。
【0119】
(実施例8−コーティングおよびコーティングされていないサンプル上のタンパク質合成の増加)
この実施例では、3種類の基材を200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析を介して確認した。骨芽細胞をATCC(CRL−11372)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで培養において成長させた。
【0120】
コーティング材料サンプルを供給されたように使用した。コーティングされていないサンプルをかみそりで切り取って接着表面を平坦にした。細胞実験の前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間UV処理するかのいずれかを行った。
【0121】
骨芽細胞を、3,500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、まず12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をサンプル上に配置し、5%CO2雰囲気中で37℃にて4時間インキュベートした。次いで、液滴を含有する細胞を除去し、各サンプルウェルをDMEM培地で満たして、1、3および5日の増殖のために同条件下で再びインキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、それぞれ24、72および120時間後にPBS中で再び3回洗浄した。次いで、細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、各サンプルに対して3通りに行い、2回繰り返した(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するためにスチューデントt−検定を使用した。
【0122】
タンパク質分析からの結果は、21日後の全コーティング部分に対するタンパク質合成の増加を示した。コーティングシリコーンに対しては、増加は約400%、コーティングUHMWPEに対しては、増加は約1,300%、コーティングPTFEに対しては、増加は約800%であった。これらの分析では、総タンパク量を測定した。7、14および21日での増殖の増加を図11に図示する。
【0123】
(実施例9−シリコーン、PTFEおよびUHMWPE上の骨芽細胞増殖の増加)
この実施例では、3種類の基材を、IPD過程を通して200nmのTi 6−4でコーティングした。コーティングの平均ナノ粒径は30から40ナノメートルであり、SEM分析によって確認した。
【0124】
骨芽細胞をATCC(CRL−11372)から購入し、10%FBSおよび1%P/Sを伴うDMEM中で合流まで培養において成長させた。チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEサンプル供給されたように使用した。コーティングされていないサンプルをかみそりで切り取って接着表面を平坦にした。細胞実験の前に、サンプルを70%エタノール中で超音波分解して加圧滅菌するか、または20分間紫外線光下で照射するかのいずれかを行った。
【0125】
骨芽細胞を、3500細胞/cm2で各基材上にシーディングした。サンプルを、12および24ウェル細胞培養プレートに入れた。培地中の175μlの細胞含有液滴をウェル上に配置し、5%CO2雰囲気中で37℃にて4時間インキュベートした。液滴を含有する細胞を除去し、各サンプルウェルをDMEM培地で満たして、1、3および5日の増殖のために同条件下で再びインキュベートした。次いで、試料をPBSで3回洗浄し、ホルムアルデヒド中で10分間固定し、それぞれ24、72および120時間後にPBS中で再び3回洗浄した。細胞を蛍光顕微鏡法およびDAPI染料を使用して数えた。細胞形態の画像も取得した。実験は、それぞれ2回繰り返して3通りに行った(各平均データ点に対して合計6つのサンプル)。基材間の差異を判定するために標準統計的分析(スチューデントt−検定)を使用した。
【0126】
第1、3および5日の試験の結果は、コーティングされていない対応物を超える、全コーティング基材上の骨芽細胞増殖の増加を示す。コーティングされていない基材と比較したコーティング基材上の細胞増殖を、図12Aでは1日後、図12Bでは3日後および図12Cでは5日後で示す。図13は、TiコーティングおよびコーティングされていないPTFE上の第1、3および5日に対する、コーティングおよびコーティングされていないPTFE上のDAPI染色細胞の蛍光像の写真である。コーティングされていない基材と比較して、早くも第1日に有意な骨芽細胞増殖がある。データを表3に要約する。
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】図1は、標的1、基材2、移動可能基材ホルダ3、真空チャンバ4、標的用の電源5、アークの速度を調整するためのアーク制御6といった、改良カソードアークIPD装置の一般的特徴を示す。
【図2】図2は、コーティングされていない基材とのチタンコーティング基材(チタン)の比較を示す。チタンの蒸着は、UHMならびにPTFE上の、コーティングされていない部分の、およびIPD蒸着されたチタンの、低倍率SEM写真で見ることができるように、ナノスケールの表面に粗さをもたらす。バー=両方のコーティングされていないサンプルに対して10ミクロン、チタンでコーティングしたUHMWPEに対しては20ミクロン、チタンでコーティングしたPTFEに対しては10ミクロン。
【図3A】図3Aは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、1日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図3B】図3Bは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、3日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図3C】図3Cは、チタン金属棒に付着する細胞の密度と比較した、N=3、*P<0.01および**P<0.01に対する、5日後のTiでコーティングしたUHMWPEおよびPTFE上の骨芽細胞密度の増加を示す。
【図4】図4は、1、3および5日後の、コーティングされていないPTFEおよびTiでコーティングしたPTFE上の増加した骨芽細胞密度の蛍光顕微鏡像を比較する。棒は100ミクロンを表す。
【図5】図5は、7、14および21日後の、固体チタン金属、UHMWPE、PTFE、コーティングUHMWPEおよびコーティングPTFE上の骨芽細胞(石灰化)形成の増加を示す。N=3サンプル、対応するコーティングされていない試料と比較して*p<0.01、固体チタン金属棒と比較して**p<0.01。
【図6】図6は、N=3、各コーティングされていないサンプルと比較した*p<0.01に対する、Tiコーティングシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)に対する細胞接着を示す。
【図7】図7は、異なる表面上の細胞カウントの差異を比較する、コーティングおよびコーティングされていないシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)の蛍光顕微鏡像を示す。
【図8】図8は、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングUHMWPEおよびPTFEに対する線維芽細胞接着の比較を示す。コーティングされていないシリコーンと比較した、チタンコーティングシリコーン上の線維芽細胞の細胞接着の減少も図中に示される。データは3つのサンプルの平均であり、n=3であり、*がコーティングされていない対応物と比較するとp<0.01を表す。
【図9A】図9Aは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、1日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して+p<0.01である。
【図9B】図9Bは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、3日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して+p<0.01である。
【図9C】図9Cは、各コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFE上の線維芽細胞増殖を、5日後の各コーティングされていないサンプルと比較するグラフである。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、コーティングされていない基材と比較して*p<0.01である。
【図10】図10は、チタンコーティングシリコーン、ポリエチレンおよびTeflon(登録商標)基材の蛍光像を示し、コーティングされていない基材と比較したこれらの表面上の線維芽細胞の数の相違を示す。
【図11】図11は、コーティングされていないサンプルと比較した、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEサンプルに対して、7、14および21日後の吸光度によって測定されるとおりのタンパク質レベルの変化を示す棒グラフである。各コーティングされていないサンプルおよび以前の時点と比較して*p<0.01である。
【図12A】図12Aは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、1日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図12B】図12Bは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、3日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図12C】図12Cは、チタンコーティングシリコーン、UHMWPEおよびPTFEを各コーティングされていない基材と比較する、5日後の骨芽細胞増殖を示す。各棒グラフは、3つのサンプルの平均値を表し、*p<0.01である。
【図13】図13は、1、3および5日後のチタンコーティングおよびコーティングされていないPTFE上の骨芽細胞増殖の蛍光像を比較する写真パネルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオコーティングされた基材を調製するための方法であって、
約1ミクロンから約100ミクロンの範囲のサイズにおいて少なくとも約103粒子/cm2の金属コーティングの密度で粒子のナノ構造表面を形成するように、基材上に金属イオンプラズマを蒸着することと、
1つ以上の細胞を該コーティング表面に付着させるのに十分な時間の間、該コーティング表面を該1つ以上の細胞に接触させることと
を含み、
該蒸着されたコーティングに付着された該1つ以上の細胞は、該付着された細胞の生物学的特性を保持するバイオコーティングされた基材を形成する、方法。
【請求項2】
前記コーティングされた基材に付着する前記1つ以上の細胞は単核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の細胞は、内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着することは、イオンプラズマ蒸着(IPD)による、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IPD蒸着金属は、約1nmから約100nmの範囲のサイズのナノ粒子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材は、UHMWPE、EPTFE、PTFE、PEEK、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンプラズマは、ニチノール、CoCrMo、金、白金、銅、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記イオンプラズマは、ニチノール金またはチタンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記基材は、カテーテル、弁、ステントおよびインプラントから成る群から選択される金属デバイスまたは高分子材料デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ構造金属コーティングは、約103粒子/cm2から約104粒子/cm2のナノ粒子密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属コーティングは、約1ミクロンから約3ミクロンの厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
約103/cm2から104/cm2の密度で分散される、サイズが約1ミクロンまでのイオンプラズマ蒸着金属粒子として特徴付けられるナノ構造金属膜に付着される、1つ以上の生体生存可能細胞を含む、組成物。
【請求項14】
前記イオンプラズマ蒸着金属粒子は、Ag、Au、Ti、CoCrMoまたはそれらの混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記生体生存可能細胞は単核細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記単核細胞は、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞または内皮細胞である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の細胞は、UHMWPE上に蒸着されるナノ構造チタン表面に付着される骨芽細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の細胞は、UHMWPEまたはPTFE上に蒸着されるナノ構造チタンに付着される内皮細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
基材上のナノ構造金属表面コーティングであって、該表面は約103/cm2から約104/cm2の密度で、かつ約10ミクロンから約100ミクロンの厚さを有して、該基材表面上に分散される、サイズが1ミクロンまでの粒子を含む、基材上のナノ構造金属表面コーティング。
【請求項20】
前記金属表面は、金、チタンまたはニチノールである、請求項19に記載のナノ構造表面。
【請求項21】
約10ナノメートルから約100ナノメートルの深さまで、金属基材または高分子基材を含浸するナノ構造表面コーティングであって、該コーティングは、約103/cm2から104/cm2の表面密度で、かつ約500nmから約100ミクロンの厚さにおいて、約1nmから約5nmのナノ粒子から成るイオンプラズマ蒸着金属である、ナノ構造表面コーティング。
【請求項22】
付着された組織細胞をさらに含む、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項23】
前記組織細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞またはそれらの混合物である、請求項22に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項24】
前記コーティングは、Au、Ag、Ti、CoCrMoまたはそれらの混合物である、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項25】
前記基材は、鋼鉄、ニチノールまたは酸化アルミニウムである、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項26】
前記基材は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせである、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項27】
前記イオンプラズマ蒸着金属は、約300Hzのスイッチング速度で、制御速度プラズマアーク標的から蒸着される、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項28】
前記コーティングはインプラント可能な医療デバイスを含む、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項1】
バイオコーティングされた基材を調製するための方法であって、
約1ミクロンから約100ミクロンの範囲のサイズにおいて少なくとも約103粒子/cm2の金属コーティングの密度で粒子のナノ構造表面を形成するように、基材上に金属イオンプラズマを蒸着することと、
1つ以上の細胞を該コーティング表面に付着させるのに十分な時間の間、該コーティング表面を該1つ以上の細胞に接触させることと
を含み、
該蒸着されたコーティングに付着された該1つ以上の細胞は、該付着された細胞の生物学的特性を保持するバイオコーティングされた基材を形成する、方法。
【請求項2】
前記コーティングされた基材に付着する前記1つ以上の細胞は単核細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の細胞は、内皮細胞、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記蒸着することは、イオンプラズマ蒸着(IPD)による、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IPD蒸着金属は、約1nmから約100nmの範囲のサイズのナノ粒子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材は、UHMWPE、EPTFE、PTFE、PEEK、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記イオンプラズマは、ニチノール、CoCrMo、金、白金、銅、タンタル、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、亜鉛またはそれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記イオンプラズマは、ニチノール金またはチタンである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記基材は、カテーテル、弁、ステントおよびインプラントから成る群から選択される金属デバイスまたは高分子材料デバイスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ構造金属コーティングは、約103粒子/cm2から約104粒子/cm2のナノ粒子密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属コーティングは、約1ミクロンから約3ミクロンの厚さを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
約103/cm2から104/cm2の密度で分散される、サイズが約1ミクロンまでのイオンプラズマ蒸着金属粒子として特徴付けられるナノ構造金属膜に付着される、1つ以上の生体生存可能細胞を含む、組成物。
【請求項14】
前記イオンプラズマ蒸着金属粒子は、Ag、Au、Ti、CoCrMoまたはそれらの混合物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記生体生存可能細胞は単核細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記単核細胞は、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、筋細胞または内皮細胞である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
1つ以上の細胞は、UHMWPE上に蒸着されるナノ構造チタン表面に付着される骨芽細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記1つ以上の細胞は、UHMWPEまたはPTFE上に蒸着されるナノ構造チタンに付着される内皮細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
基材上のナノ構造金属表面コーティングであって、該表面は約103/cm2から約104/cm2の密度で、かつ約10ミクロンから約100ミクロンの厚さを有して、該基材表面上に分散される、サイズが1ミクロンまでの粒子を含む、基材上のナノ構造金属表面コーティング。
【請求項20】
前記金属表面は、金、チタンまたはニチノールである、請求項19に記載のナノ構造表面。
【請求項21】
約10ナノメートルから約100ナノメートルの深さまで、金属基材または高分子基材を含浸するナノ構造表面コーティングであって、該コーティングは、約103/cm2から104/cm2の表面密度で、かつ約500nmから約100ミクロンの厚さにおいて、約1nmから約5nmのナノ粒子から成るイオンプラズマ蒸着金属である、ナノ構造表面コーティング。
【請求項22】
付着された組織細胞をさらに含む、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項23】
前記組織細胞は、上皮細胞、線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞またはそれらの混合物である、請求項22に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項24】
前記コーティングは、Au、Ag、Ti、CoCrMoまたはそれらの混合物である、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項25】
前記基材は、鋼鉄、ニチノールまたは酸化アルミニウムである、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項26】
前記基材は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(EPTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエステル、ナイロン、チタン、鋼鉄、クロム、ジルコニウム、ニッケル、ニチノール、合金およびそれらの組み合わせである、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項27】
前記イオンプラズマ蒸着金属は、約300Hzのスイッチング速度で、制御速度プラズマアーク標的から蒸着される、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【請求項28】
前記コーティングはインプラント可能な医療デバイスを含む、請求項21に記載のナノ構造表面コーティング。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13】
【公表番号】特表2009−542261(P2009−542261A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502762(P2009−502762)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045314
【国際公開番号】WO2008/054408
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(508225037)カメレオン サイエンティフィック コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/045314
【国際公開番号】WO2008/054408
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(508225037)カメレオン サイエンティフィック コーポレイション (4)
【Fターム(参考)】
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