生物学的活性薬剤を送達するための方法および組成物
本発明は、生物学的活性薬剤と非共有結合的に複合したポリマーを特徴とする。このポリマー複合体は、少なくとも一つの生物学的活性薬剤と複合している少なくとも一つの複合部分に共有結合的に連結した少なくとも一つの遮蔽部分を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的活性薬剤を徐放送達するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料が、とりわけ、人工臓器、インプラント、医用デバイス、人工血管、血液ポンプ、人工腎臓、心臓弁、ペースメーカーリード線の絶縁体、大動脈内バルーン、人工心臓、透析器、および血漿分離器などの医用デバイスを製造するのに広く使用されている。医用デバイス中に使用するポリマーは、生体適合性でなければならない(例えば、中毒反応、アレルギー反応、炎症反応、または他の有害反応を起こしてはならない)。特定のデバイスが長期間および短期間使用できることを決めるのは、生物系と使用される合成材料との間の界面における物理的、化学的、または生物学的プロセスである。一般に、生体用材料の化学的および物理学的/機械的特性すなわち弾性、応力、延性、靭性、時間依存性変形、強度、疲労、硬度、耐摩耗性、および透明性を含む生体適合性および生分解性の正確なプロファイルは、極めて変化に富んでいる。所望の特性を得るために、混合によって作製されるポリマーブレンドが使用されている。しかしポリマーを混合するとエントロピーが低下して相分離が起こる。したがって、熱力学的適合性は、そのポリマーブレンド系の機能および安定性にとって重要な要因である。
【0003】
デバイスの表面に対して適切な生物学的応答をするということは、生体適合性として非常に重要なことである。生体医用デバイスを実際に開発する方法としては、該デバイス用バルク材の基準を満たすポリマー材料を使用し同時にある種の表面修飾を利用することが必要であった。この理想的な表面修飾によって、特に生物学的表面特性が調整されかつバルク特性の変化は最小限になる。このような方法は、バルクポリマー鎖に生物学的活性薬剤をグラフトする方法を超える利点を有している。というのは、このグラフト方法は、ポリマーの物理的構造を有意に変化させるからである。ポリマーをバルクグラフトする方法以外の、ポリマー表面を修飾するのに使用されていた方法としては、以下の方法:非共有結合コーティング(溶媒ありおよび溶媒なし)、化学的表面グラフティング、イオン注入、ラングミュア-ブロジェット積層(Langmuir-Blodgett Overlayer)および自己集合フィルム(self assembled film)、表面修飾添加剤、表面化学反応、ならびにエッチングおよびラフニング(roughening)があった。
【0004】
医用デバイスのポリマーコーティングは、生物学的活性薬剤を送達するための貯蔵庫として働くこともある。その活性薬剤が医用薬物である場合は、この活性薬剤を、医用デバイスから長期間にわたって放出することが望ましいことが多い。動力学的に制御して薬物を直接送達するシステムはほとんどポリマーを採用している。例えば、活性薬剤は、ポリマーが酵素によって身体内で分解されて放出されるかまたは制御された速度でポリマーマトリックスから拡散される。部位特異的薬物移送系は、治療部位に高濃度の薬剤をもたらし、同時に全身投与に付随する有害作用を最小限にする。
【0005】
薬物の放出を制御するのに使用されているポリマー系は、有害な生物学的応答を引き起こす不純物を含有していてはならず(すなわち生物学的に不活性でなければならない)、所望の放出プロファイルをとらねばならず、かつ医用デバイスに必要な機械的特性を持っていなければならない。
【0006】
ほとんどの場合、生物学的活性薬剤は、適切な溶媒系中でポリマーのプラットホームと混合されるだけである。次いで、その生物学的活性薬剤は、粒子の溶解または拡散によって放出される(非生物侵食性マトリックスが使用される場合)かまたはポリマーの分解している間に放出される(生分解性ポリマーが使用される場合)。混合するとエントロピーが低下して、バルクポリマー全体にわたって相分離を起こしてポリマーコーティングの物理的/機械的特性を損なうことがある。
【0007】
米国特許第6,770,725号(特許文献1)には、生物活性化合物の、オリゴフルオロ末端基を有するポリマーとの共有結合が記載されている。この方法は、生物学的活性薬剤をデバイスの表面に配置しデバイスの表面をオリゴフルオロ末端基で修飾することによってデバイス表面の生体適合性を改善し、およびポリマー生物活性化合物のベースポリマーとのコンジュゲートの熱力学的適合性を高めるために使用された。記載されているポリマーは、ベースポリマーのバルク特性を維持することができる。
【0008】
共有結合コンジュゲーションは、ポリマーの有効官能基と生物学的活性薬剤の官能基との間の共有結合で終わる多段階化学プロセスであることが多い。一般に、生物活性剤(すなわち薬物)は、共有結合コンジュゲーションを行うために構造を修飾される。幾種類かの生物学的活性薬剤は、このような修飾によって、その薬剤活性をいくらか失うかまたは完全に不活性になることがあり、そのときこのような薬剤はコンジュゲーション法を利用して送達することが不可能になる。
【0009】
生物学的活性薬剤を局所に集中する現在のシステムで起こり得る欠点を考えると、生物学的活性薬剤を規定の放出プロファイルで標的部位に送達する、表面修飾薬物送達プラットホームが必要である。本発明は、これらの問題に取り組み、従来技術を超える利点を提供するものである。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,770,725号
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、生物学的活性薬剤の送達のためのポリマー複合体を提供する。この複合体は、少なくとも一つの複合部分(complexing moiety)に共有結合的に連結した(covalently tethered)少なくとも一つの遮蔽部分を含み、その複合部分は少なくとも一つの生物学的活性薬剤と複合している。本発明のポリマー複合体は、炎症性反応を弱めて(offset)血栓症を減らす表面特性を提供することができ、かつ、例えば移植されたデバイスの表面を形成するために使用すると、生物学的活性薬剤の移行と放出を制御することができる。
【0012】
第一の局面で、本発明は、(i)遮蔽部分、(ii)オリゴマーセグメント、(iii)複合部分、および(iv)生物学的活性薬剤を含むポリマーであって、その遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結しかつその複合部分が生物学的活性薬剤と複合しているポリマーを特徴とする。
【0013】
関連する局面で、本発明は、(i)遮蔽部分、(ii)オリゴマーセグメント、(iii)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および(iv)生物学的活性薬剤を含むポリマーであって、その遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結しかつその複合部分が生物学的活性薬剤と複合しているポリマーを特徴とする。
【0014】
上記のどの局面でも、ポリマーは、生物学的活性薬剤との非共有結合相互作用を形成する複合部分を含んでいてよい。非共有結合相互作用には、水素結合、イオン相互作用、包接複合体(inclusion complex)、包接化(clathration)、ファンデルワールス相互作用、およびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、ポリマーは、金属中心に配位結合した複合部分と生物学的活性薬剤とを含んでいてもよい。遮蔽部分は、以下に限定されることはないが、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ素化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、およびその組合わせから選択することができる。オリゴマーセグメントは、10、12、14、16、18、または20 kDaより大きい絶対分子量を有しうる。
【0015】
本発明のどのポリマーでも、そのオリゴマーセグメントとしては、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、またはポリエチレンブチレンのセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明のどのポリマーも、その0.1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤であってよい。望ましくは、ポリマーの0.1〜4、0.1〜3、0.1〜2、0.5〜5、または1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である。
【0017】
本発明のどのポリマーも、その約0.01〜5重量%が遮蔽部分であってよい。望ましくはポリマーの0.01〜4、0.01〜3、0.01〜2、0.01〜1、0.1〜5、または0.5〜5重量%が遮蔽部分である。
【0018】
本発明のどのポリマーも、複数の複合部分および複数の生物学的活性薬剤を含んでいてよい。
【0019】
上記どのポリマーの態様でも、生物学的活性薬剤は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド(rapamycin macrolide)、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン、および脂質から選択される。
【0020】
別の態様では、ポリマーの0.1〜99.9重量%が複合部分および生物学的活性薬剤であってもよい。望ましくは、ポリマーの0.1〜5、1〜10、5〜60、50〜90、または60〜99重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である。
【0021】
さらに別の態様では、遮蔽部分がポリマーの約0.1〜30重量%であってもよい。望ましくは、遮蔽部分は、ポリマーの0.01〜25、0.01〜20、0.01〜15、0.01〜5、1〜25、または5〜25重量%である。
【0022】
上記局面の一つの態様では、ポリマーは、下記式で表される:
FT-LINK A[-(oligo)a-(LINK A)b]c-Td(Bio)e
式中、FTはポリフルオロオルガノ基であり;BioはLINK Aに複合できる一つまたは複数の生物学的活性薬剤であり;各LINK Aは、独立して、Bioと複合できる複合部分を含む有機部分であり;oligoはオリゴマーのセグメントであり;Tは末端基であり;aは0または1であり;b、c、d、およびeは0より大きい整数であり;ならびに少なくとも一つのBioは少なくとも一つのLINK Aと複合している。FTは例えばポリフルオロアルキルでもよく、FTは、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-(式中、rは2〜20である)およびCF3(CF2)s(CH2CH2O)x(式中xは1〜10であり、sは1〜20である)で表されるラジカルからなる群から選択することができる。望ましくは、FTは、分子量が100〜1,500 Daである。oligoは、繰返し単位が多くとも20個の分枝または非分枝オリゴマーセグメントであってもよい。oligoは、10 kDaより大きい絶対分子量を有するオリゴマーセグメントであってもよい。LINK Aは繰返し単位が少なくとも20個の分枝もしくは非分枝オリゴマーまたはモノマーセグメントであってもよい。一つの態様では、aは0である。
【0023】
上記どの態様および局面でも、ポリマーは、ベースポリマーの特性を有していてよい。望ましくは、ポリマーがベースポリマーとして機能しているとき、そのオリゴマーセグメントは、10k Da、12 kDa、14 kDa、16kDa、20 kDa、24 kDa、28 kDa、35 kDa、50 kDa、75 kDa、または100 kDaより大きい絶対分子量を有する。
【0024】
上記どの態様および局面でも、本発明のポリマーは、約10 kDa未満の絶対分子量を有するオリゴマーセグメントを含んでいてよい。このことは、本発明のポリマーが混合物で使用される場合、望ましい。
【0025】
別の局面では、本発明は、ベースポリマーを混合した本発明のポリマーを含む混合物を特徴とする。
【0026】
さらに別の局面では、本発明は、ベースポリマーと混合されたポリマーを含有する混合物であって、その混合されたポリマーが(i)遮蔽部分、(ii)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および(iii)生物学的活性薬剤を含み、その遮蔽部分がその複合部分と共有結合的に連結し、かつその複合部分がその生物学的活性薬剤と複合している混合物を特徴とする。
【0027】
また本発明は、(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤と、(ii)(a)遮蔽部分、(b)オリゴマーセグメント、および(c)複合部分を含む第二のポリマーとを含むベースポリマーであって、遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結し、かつ放出プロファイルを変えるのに十分な量で第二のポリマーが存在しているベースポリマーを特徴とする。
【0028】
本発明は、さらに、(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤と、(ii)(a)遮蔽部分、(b)オリゴマーセグメント、および(c)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分を含む第二のポリマーとを含むベースポリマーであって、遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結し、かつ放出プロファイルを変えるのに十分な量で第二のポリマーが存在しているベースポリマーを特徴とする。
【0029】
本発明の混合物はいずれも、0.1〜10重量%のポリマー複合体を含むことができる。望ましくは、本発明の混合物は、0.01〜15、0.01〜10、0.1〜5、1〜15、1〜10、または1〜5重量%のポリマー複合体である。
【0030】
本発明の混合物に使用する例示的なベースポリマーには、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、熱可塑性ポリジエン、ならびにその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
また本発明は、本発明のポリマー複合体から形成された成形製品を特徴とする。
【0032】
本発明はさらに、本発明の混合物から形成された成形製品を特徴とする。
【0033】
別の局面では、本発明は、本発明のポリマーを含む成形製品を特徴とする。望ましくは、その製品は本発明のポリマーでコートされている。
【0034】
本発明の製品は、例えば、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント(prosthetic implant)、人工括約筋、または薬物送達デバイスのような任意の移植可能な医用デバイスとすることができる。
【0035】
いくつかの態様では、本発明の製品は、放出可能な生物学的活性薬剤の80%を2年以内に放出する。
【0036】
本発明の製品は、t50が6ヶ月を超えるという生物学的活性薬剤の放出プロファイルを有することができる。望ましくは、t50は、9ヶ月、1年、2年、または5年さえ超える。
【0037】
本発明の製品は、t10がt50の1/10より大きいという生物学的活性薬剤の放出プロファイルを有することができる。
【0038】
別の局面では、本発明は、本明細書に記載のポリマー複合体を含む生物学的活性薬剤を送達するための組成物であって、デバイスなしで、例えばクリーム、ゲル、またはローションに製剤化され、例えば医療処置なしで、医療処置中または医療処置の後に局所に塗布される組成物を特徴とする。
【0039】
本発明は、さらに、本明細書に記載のポリマー複合体を含む、有害生物(例えば昆虫または雑草)の増殖を抑制する組成物であって、その生物学的活性薬剤が農薬(例えば殺虫剤)または除草剤である組成物を特徴とする。
【0040】
また本発明は、請求項1に記載のポリマー複合体を含む表面上での微生物の増殖を低下させる組成物であって、生物学的活性薬剤が抗微生物剤である組成物を特徴とする。
【0041】
別の局面では、本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の炎症を減少させる方法を特徴とする。この方法は、炎症を減少させるのに十分な量で製品の表面から放出される抗炎症剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な抗炎症剤には、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン(nabumetone)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、メロキシカム(meloxicam)、オキサプロジン、スリンダク、トルメチン、アルゲストン、アムシノニド、べクロメタゾン(beclomethasone)、ベタメタゾン、ブデソニド(budesonide)、クロベタゾール、コルチコステロン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルクロロニド(flucloronide)、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロン、またはこれらの組合せ、および他の生物学的活性薬剤との組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
関連する局面では、本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の再狭窄を減少させる方法を特徴とする。この方法は、再狭窄を減少させるのに十分な量で製品の表面から放出される抗増殖剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な抗増殖剤には、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(Everolimus)、ABT-578、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド(iosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam)、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル(fluouracil)、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン(allopurine)、クラドリビン(cladribine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチン(pentostatin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル(docetaxel)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン(idarubincin)、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン(amsacrine)、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール(anastrozole)、フィナステリド(finasteride)、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド(flutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、ゴセレリン、Gleevec(商標)、レフルノミド(leflunomide)、SU5416、SU6668、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)、トラスツズマブ(trastuzumab)、Erbitux(商標)、PKI166、GW2016、EKB-509、EKB-569、MDX-H210、2C4、MDX-447、ABX-EGF、CI-1033、Avastin(商標)、IMC-1C11、ZD4190、ZD6474、CEP-701、CEP-751、MLN518、PKC412、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン(nitracrine)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン(Cerivastatin)、トログリタゾン(Troglitazone)、CRx-026、DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン(Taxoprexin)、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質(Sphingosine-based lipid)、およびミトタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
また本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の疼痛を軽減する方法を特徴とする。この方法は、疼痛を軽減するのに十分な量で製品の表面から放出される鎮痛剤または麻酔剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な鎮痛剤には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン(acetorphine)、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン(phenomorphan)、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、およびジヒドロアセトルフィンが含まれるが、これらに限定されない。有用な麻酔剤には、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン(mepivicaine)、ブピバカイン(bupivicaine)、アルチカイン(articaine)、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、およびロピバカイン(ropavacaine)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明はさらに、その必要がある哺乳動物における部位の筋肉を弛緩させる方法を特徴とする。この方法は、筋肉を弛緩させるのに十分な量で製品の表面から放出される鎮痙剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な鎮痙剤には、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル(bentyl)、シストスパズ(cystospaz)、デトロール(detrol)(トルテロジン(tolterodine))、ジサイクロミン、ジトロパン(ditropan)、ドナタル(donnatol)、ドナザイム(donnazyme)、ファスジル(fasudil)、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン(levsin)、レブシネックス(levsinex)、リブラックス(librax)、マルコトラン(malcotran)、ノバルチン(novartin)、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン(pamine)、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、およびピナベリウム(pinaverium)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
上記の態様と局面のすべてにおいて、生物学的活性薬剤は、そのプロドラッグ例えばアミドまたはエステルとして提供することができる。
【0046】
別の局面では、本発明は、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法であって、(i)生物学的活性薬剤を本発明のポリマーと複合させてポリマー複合体を形成する段階、および(ii)そのポリマー複合体を用いて製品の表面を形成する段階を含み、そのポリマー複合体が約0.1〜30重量%の遮蔽部分を含む方法を特徴とする。
【0047】
別の局面では、本発明は、生物学的活性薬剤の成形製品の表面からの放出を制御するための方法を特徴とする。その方法は、(i)生物学的活性薬剤を含む成形された製品を形成する段階、および(ii)その成形された製品の表面を本発明のポリマーでコートする段階を含む。
【0048】
鎖の適切な末端基Td、例えばラジカルは、いずれも本発明のポリマー中に存在していてよく、H、アルキル、エステル、ヒドロキシル、および遮蔽部分を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「十分な量」という用語は所望の結果を達成するのに必要な生物学的活性薬剤の量を意味する。その十分な量は、治療される症状(例えば、とりわけ、疼痛、有害生物防除、または微生物の増殖)、治療されている部位、選択された生物学的活性薬剤、選択されたポリマー複合体、および採用された送達媒体(例えば、とりわけ、移植されたデバイス、クリーム、またはペレット)を含む各種パラメータによって変化する。十分な量は、所与のどの症状の組合せにも、標準法を用いて決定できる。例えば、表面からの生物学的活性薬剤の放出は、上記パラメータの関数として監視できる。これらの結果に基づいて、所望の効果をもたらす速度で薬剤を放出する媒体を調製する。
【0050】
「ベースポリマー」という用語は、引張り強度が約350〜約10,000psi、破断伸度が約300%〜約1500%、支持なしの厚さ(unsupported thickness)が約5〜約100ミクロンおよび支持付きの厚さ(supported thickness)が約1〜約100ミクロンであるポリマーを意味する。
【0051】
「生物学的活性薬剤」という用語は、天然または人工の化合物であり、本発明のポリマーと複合し、次いで放出されて特定の部位に送達できる化合物を意味する。生物学的活性薬剤には、例えばペプチド、タンパク質、合成有機分子、天然の有機分子、核酸分子、およびその成分が含まれうる。望ましくは、生物学的活性薬剤は、疾病組織の部位に送達した場合に、植物または動物を治療するのに有用な化合物である。あるいは、生物学的活性薬剤を選択して、表面に非治療的機能を付与することができる。このような薬剤には、例えば殺虫剤、殺菌剤、殺真菌剤、芳香剤、および染料が含まれる。
【0052】
「複合された」または「複合」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明のポリマーの複合部分と生物学的活性薬剤との間の非共有結合性相互作用または金属中心への配位結合による相互作用を意味する。本発明に従って用いることのできる非共有結合相互作用の例には、水素結合、イオン相互作用(例えば双極子-双極子相互作用、イオン対、および塩生成)、包接複合体、包接化、ファンデルワールス相互作用(例えばπ-πスタッキング)、およびその組合せが含まれるが、これらに限定されない。この相互作用は、複合部分と生物学的活性薬剤の両者による金属中心への配位結合によるものでもよい。場合によっては、生物学的活性薬剤は、複合部分に配位結合している金属中心を含む。
【0053】
「複合部分」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤に、非共有結合性相互作用または金属中心への配位結合によって複合し、ポリマー複合体を形成する本発明のポリマーの部分を意味する。この複合部分は、帯電部分、例えば生理的pHでプロトンを失い負に帯電するようになる部分(例えばカルボキシレートまたはホスホジエステル)、生理的pHでプロトンを得て正に帯電するようになる部分(例えばアンモニウム、グアニジウム、またはアミジニウム)、プロトン付加なしで有効形式正電荷(net formal positive charge)を含む部分(例えば第四級アンモニウム)、またはプロトンを失うことなく有効形式負電荷を含む部分(例えばボレート、BR4-)であってもよい。例示的な帯電複合部分には、カルボキシレート、ホスホジエステル、ホスホルアミデート、ボレート、ホスフェート、ホスホネート、ホスホネートエステル、スルホネート、サルフェート、チオレート、フェノレート、アンモニウム、アミジニウム、グアニジウム、第四級アンモニウム、およびイミダゾリウムの官能基が含まれるが、これらに限定されない。この複合部分は、シクロデキストリンなどの生物学的活性薬剤の全体または一部を物理的に被包するように設計できる。この複合部分は、生物学的活性薬剤中に存在する相補的オリゴヌクレオチドおよび/またはペプチド配列と結合するように設計できる。この複合部分は、生物学的活性薬剤を含む金属中心に、単独でまたは金属中心を含んで、配位子として配位結合するように設計できる。
【0054】
「共有結合的に連結した」という用語は、本明細書において使用する場合、一つまたは複数の共有結合で隔てられた部分を意味する。例えば、遮蔽部分が複合部分に共有結合的に連結している場合、その連結には、単結合で隔てられた部分、および両部分が共有結合しているオリゴマーセグメントで隔てられた両部分が含まれる。
【0055】
「ポリマー複合体」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤と複合したポリマーを意味する。ポリマー複合体は、ベースポリマーの特性を有しかつ成形製品を形成するのにそれ自体有用なオリゴマーセグメントを含んでもよい。あるいは、ポリマー複合体は、20 kDa未満の比較的分子量の小さい化合物でもよく、これはベースポリマー系に対する有用な添加剤になる。低分子量のポリマー複合体は、ポリマー複合体とベースポリマーの混合物中の高分子ポリマー鎖の間をより容易に拡散できる。
【0056】
「プロドラッグ」という用語は、例えば酵素および/または加水分解の機序によって、インビボで生物学的活性薬剤に変換される、生物学的活性薬剤の前駆物質を意味する。プロドラッグには、エステル化された生物学的活性薬剤が含まれるが、これに限定されない。
【0057】
「遮蔽部分」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明のポリマーの親油性テール部分を意味する。遮蔽部分は、本発明のポリマーに単一点で共有結合し、例えば、ポリマーの末端をキャップするかまたはポリマーの中央部分の分枝の先端に結合している。さらに、遮蔽部分は、ベースポリマーとは不相溶のものを選択して、すなわち、べースポリマーと混合して製品を形成すると、ポリマー複合体を本発明の製品の表面に移行させることができる。遮蔽部分を選択して生物学的活性薬剤の放出プロファイルを変化させることができる。また、遮蔽部分は、生物学的活性薬剤がインビボでおよび/または本発明の製品を製造中に劣化することを減らすことができる。遮蔽部分には、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、フッ化アリール、およびその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
「放出プロファイルを変える」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤が本発明の製品から放出されるときのt50が、本発明のポリマーを含有していない同じ製品と比較して、10%、20%、30%、40%、または50%も変化することを意味する。
【0059】
「t50」という用語は、本明細書において使用する場合、放出可能な生物学的活性薬剤の50%が本発明の製品から放出される時間である。時間t10は、対応して、放出可能な生物学的活性薬剤の10%が放出される時間である。放出曲線が完全に直線である場合、t10はt50の1/5である。放出される薬剤の初期バースト(initial burst)がある場合、t10はt50の1/5よりはるかに小さい。本発明の方法と製品の場合、t10はt50の1/10より大きくなりうる。このように、生物学的活性薬剤の放出の初期バーストをほとんどまたは全くなくすことができる。放出可能な生物学的活性薬剤の量は、組み込まれた薬剤の10%がpH 7.4のリン酸緩衝食塩水中に放出されるのにかかる時間の10倍の時間で、製品から放出される量である。
【0060】
下記の頭字語は、本明細書に記載されているポリマー複合体を調製するのに使用する化合物を列挙して示す。
LDI:リシンジイソシアネート
HDI:1,6ヘキサメチレンジイソシアネート
DABS:2,5ジアミノベンゼンスルホン酸
PCN:ポリカーボネートジオール
PPO:ポリプロピレンオキシドジオール
MDI:メチレンジフェニルジイソシアネート
PTMO:ポリエチレンテトラメチレンオキシド
PCN:ポリカーボネートジオール
PDMS:(ポリジメチルシロキサン-ビス(3-アミノプロピル)末端)
PHE:(アミン末端オリゴフェニルアラニン)
PEB:(ポリエチレン-ブチレンコポリマージオール)
THDI:トリメチル-1,6ジイソシアナトヘキサン
DPS:ジヒドロキシジフェニルスルホン
PD:1,5ペンタンジオール
HDI/PCN/BD:セグメントポリウレタン
DMAc:ジメチルアセトアミド
DMF:ジメチルホルムアミド
フルオロアルキル:(OH、NH2、COOH、NCO)などの末端官能基を有するフルオロ化合物
TMPP:5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩
【0061】
本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を化学的に修飾することなく、その生物学的活性薬剤を本発明のポリマーと複合させることができる。さらに、その生物学的活性薬剤は非共有結合的に本発明のポリマーと複合しているので、生物学的活性薬剤は水性条件下で容易に放出される。
【0062】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0063】
詳細な説明
本発明の方法および組成物は、ベースポリマーの所望のバルク特性を維持しながら、制御された様式で表面を修飾することができる。表面の修飾は、界面エネルギーを最小にすることによって行われ、そして本発明の方法および組成物を用いて、特定の用途向けの特別な材料を作ることができる。例えば、表面の修飾は、表面の化学組成、疎水性、生体適合性、および/または接着特性を変えるように設計できる。さらに、表面の原子または分子を拡散および/または変換させるため、「化学」変化を含むバルク表面の再配列(緩和、分離、および再構築)を、本明細書に記載の表面修飾法を利用して制御できる。
【0064】
本発明は、生物学的活性薬剤の送達のためのポリマー複合体を特徴とする。このポリマー複合体は、多種類の生物学的活性薬剤を送達するように設計できる。本発明の方法および組成物は、送達される薬剤の構造を変える必要はない。さらに、表面における薬剤の放出は、インビボでの生分解プロセスに必ずしも依存していない。したがって、本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を非生物の部位に送達するのに使用できる。
【0065】
ポリマーおよびポリマー複合体
本発明のポリマーは、複合部分に共有結合的に連結した遮蔽部分を含む。この複合部分は、非共有結合性相互作用によってまたは金属中心への配位結合によって、生物学的活性薬剤と複合体を形成できる。生物学的活性薬剤と本発明のポリマーとの複合体を形成するために、水素結合、イオン相互作用、包接複合体、包接化、ファンデルワールス相互作用、およびそれらの組合せを含む各種の非共有結合性相互作用を利用できる。遮蔽部分は、生物学的活性薬剤を、分解(例えば酵素および/または環境による分解)しないように遮蔽することができ、かつ/またはポリマー複合体を表面に運び、表面の特性を変化させて生物学的活性薬剤を放出できる親油性テールである。遮蔽部分の化学組成と分子量および生物学的活性薬剤の構造は、一般に遮蔽作用を支配する制御因子である。
【0066】
ポリマー複合体は、ベースポリマー中に生物学的活性薬剤の均一な形態(topography)と成層(stratification)とをもたらし(例えば、ポリマー複合体自体、またはポリマー複合体とベースポリマーの混合物)、最終的に、標的部位への送達を制御することができる。さらにこの設計によって、均一に分布されている個々の所定の複合体中の生物学的活性化合物の界面コンパートメントが提供されるかまたは生物学的活性薬剤が固定される。
【0067】
ポリマー複合体に負荷される生物学的活性薬剤の量は、所望の放出プロファイルと組み合わせたポリマーの設計によって決まる。ポリマーの組成は、特定の薬剤が送達されて特定の用途に必要な機械的特性を提供するように設計できる。
【0068】
ポリマー複合体が形成される工程は、均一なマトリックスを生成する二段階または多段階の工程であってもよい。一般に本発明のポリマーとポリマー複合体は、実施例に記載されているようにして調製することができる。
【0069】
生物学的活性薬剤
本発明のポリマー複合体に組み込むことができる生物学的活性薬剤としては、治療用、診断用、および予防用の薬剤が挙げられる。その薬剤は、天然の化合物、合成の有機化合物、または無機の化合物でありうる。本発明のポリマー複合体に組み込むことができる薬剤には、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬、抗ウイルス剤、ターブログレル(terbrogrel)およびラマトロバン(ramatroban)などの抗血栓剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、脂質、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
例示的な治療薬には、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、カルシトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、毛様体神経栄養因子および副甲状腺ホルモンが含まれる。他の特異的な治療剤には、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニール、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン(scopolomine)、サリチレート、サルメテロール(salmeterol)、ホルメテロール(formeterol)、アルベテロール(albeterol)、バリウム(valium)、ヘパリン、デルマタン、クロム鉄A、エリスロポエチン、ジエチルスチルベストロール、リュープロン(lupron)、エストロゲンエストラジオール、アンドロゲンハロテスチン(androgen halotestin)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、ゾロデックス(zolodex)、タキソール、リシノプリル(lisinopril)/ゼストリル(zestril)、ストレプトキナーゼ、アミノ酪酸、止血用アミノカプロン酸、パルロデル(parlodel)、タクリン、ポタバ(potaba)、アジペックス(adipex)、メムボラル(memboral)、フェノバルビタール、インスリン、γグロブリン、アザチオプリン、パペイン(papein)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、エピネフリン、フルクロロニド、オキシコドンパーコセット(oxycodone percoset)、ダルガン(dalgan)、フレニリンブタビタール(phreniline butabital)、プロカイン、ノボカイン、モルヒネ、オキシコドン、アロキシプリン、ブロフェナク(brofenac)、ケトプロフェン、ケトロラク(ketorolac)、ヘミン、ビタミンB-12、葉酸、マグネシウム塩、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンU、ビタミンL、ビタミンK、パントテン酸、アミノフェニル酪酸、ペニシリン、アシクロビル、オフラキサシン(oflaxacin)、アモキシシリン、トブラマイシン、レトロビル(retrovior)、エピビル(epivir)、ネビラピン(nevirapine)、ゲンタマイシン、ドラセフ(duracef)、アブレセット(ablecet)、ブトキシカイン(butoxycaine)、ベノキシネート、トロペンジル(tropenzile)、ジポニウム塩(diponium salts)、ブタベリン、アポアトロピン、フェクレミン(feclemine)、レイオピロール(leiopyrrole)、オクタミルアミン、オキシブチニン(oxybutynin)、アルブテロール、メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド(budesonide acetonide)、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、およびTNF拮抗薬もしくはインターロイキン拮抗薬などのタンパク質もしくはペプチドの薬物が含まれる。例えば、生物学的活性薬剤は、NSAID、コルチコステロイド、またはCOX-2阻害剤、例えばロフェコキシブ(rofecoxib)、セレコキシブ(celecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、もしくはルミラコキシブ(lumiracoxib)などの抗炎症剤であり得る。
【0071】
例示的な診断薬には、陽電子放出断層撮影法(PET)、コンピュータ利用断層撮影法(CAT)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法、X線法、蛍光透視法、および磁気共鳴映像法(MRI)に使用されるような撮像剤が含まれる。MRIで造影剤として使用される適切な物質には、ガドリニウムのキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムのキレートが挙げられる。CATおよびX線法用に有用な物質の例としては、ヨウ素を基にした物質が挙げられる。
【0072】
好ましい生物学的活性薬剤は、実質的に精製ぺプチドまたはタンパク質である。タンパク質は100個以上のアミノ酸残基からなり、ペプチドは100個未満のアミノ酸残基からなると一般に定義されている。特に断らない限り、タンパク質という用語は本明細書において使用する場合、タンパク質とペプチドの両者を意味する。タンパク質は、例えば、天然の供給源からの単離、遺伝子組換え法またはペプチド合成法によって作製することができる。その例としては、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;DNA分解酵素、プロテアーゼ、尿酸オキシダーゼ、アルロニダーゼ(alronidase)、αガラクトシダーゼ、およびαグルコシダーゼなどの酵素;トラスツズマブなどの抗体が挙げられる。
【0073】
ラパマイシンマクロライド
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)が産生する免疫抑制性のラクタムマクロライドである。例えば、参照により組み入れられるMcAlpine, J.B., et al., J. Antibiotics 44:688 (1991);Schreiber, S.L., et al., J. Am. Chem. Soc. 113:7433 (1991);および米国特許第3,929,992号を参照のこと。本発明の方法および組成物に使用できる例示的なラパマイシンマクロライドには、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(RAD001としても公知である)、およびABT-578が含まれるが、これらに限定されない。CCI-779はラパマイシンのエステル(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロピオン酸の42-エステル)であり、米国特許第5,362,718号に開示されている。エベロリムスはアルキル化ラパマイシン(40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン)であり、米国特許第5,665,772号に開示されている。
【0074】
抗増殖剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な抗増殖剤には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン、カペシタビン、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン、クラドリビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、フィナステリド、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、Gleevec(商標)(Norvartis)、レフルノミド(Pharmacia)、SU5416(Pharmacia)、SU6668(Pharmacia)、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)(Oncogene Science)、トラスツズマブ(Genentech)、Erbitux(商標)(ImClone)、PKI166(Novartis)、GW2016(GlaxoSmithKline)、EKB-509(Wyeth)、EKB-569(Wyeth)、MDX-H210(Medarex)、2C4(Genentech)、MDX-447(Medarex)、ABX-EGF(Abgenix)、CI-1033(Pfizer)、Avastin(商標)(Genentech)、IMC-1C11(ImClone)、ZD4190(AstraZeneca)、ZD6474(AstraZeneca)、CEP-701(Cephalon)、CEP-751(Cephalon)、MLN518(Millenium)、PKC412(Novartis)、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン、トログリタゾン、CRx-026DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質、およびミトタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
コルチコステロイド
本発明の方法および組成物に使用できる例示的なコルチコステロイドには、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン(alclomerasone)、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン(clocortolone)、クロプレドノール(cloprednol)、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン(deflazacon)、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximerasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルニソリド、フルシノロンアセトニド(flucinolone acetonide)、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド(fluorocinolone acetonide)、フルオコルチンブチル(fluocortin butyl)、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオロコルトロン(fluorocortolone hexanoate)、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、酢酸フルプレドニデン(fluprednidene acetate)、フルプレドニソロン、フルランドレノリド(flurandenolide)、ホルモコータル(formocortal)、ハルシノニド、ハロメタゾン(halometasone)、酢酸ハロプレドン(halopredone acetate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン21-ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン(methylprednicolone)、フロ酸モメタゾン(mometasone furoate)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、21-ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン(prednisolone 21-diedryaminoacetate)、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21-m-スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21-ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム(prednisolone sodium 21-stearoglycolate)、テブト酸プレドニゾロン、21-トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、21-ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チキソコルトール(tixocortol)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサセトニドが含まれるが、これらに限定されない。類似の抗炎症特性を有する構造が同類のコルチコステロイドもこの群に含まれることを意図する。
【0076】
NSAID
本発明の方法および組成物に使用できる非ステロイドの抗炎症薬(NSAID)の例示的なものには、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク、およびトルメチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
鎮痛剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な鎮痛剤には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、およびジヒドロアセトルフィンが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
抗微生物剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な抗微生物剤には、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アズロシリン(azlocillin)、テモシリン(temocillin)、セファロチン(cepalothin)、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル(cefprozil)、セファクロール、ロラカルベフ(loracarbef)、セフォキシチン、セフマトゾール(cefmatozole)、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム(cefixime)、セフポドキシム(cefpodoxime)、セフチブテン(ceflibuten)、セフジニル(cefdinir)、セフピロム(cefpirome)、セフェピム(cefepime)、BAL5788、BAL9141、イミペネム(imipenem)、エルタペネム(ertapenem)、メロペネム(meropenem)、アストレオナム(astreonam)、クラブラネート、スルバクタム、タゾバクタム(tazobactam)、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、ジベカリン、イセパマイシン(isepamicin)、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ABT-773、リンコマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、オリタバンシン(oritavancin)、ダルババンシン(dalbavancin)、テイコプラニン(teicoplanin)、キヌプリスチン(quinupristin)およびダルフォプリスチン(dalfopristin)、スルファニルアミド、パラ-アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファタリジン(sulfathalidine)、リネゾリド(linezolid)、ナリジクス酸、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ペルフロキサシン(perfloxacin)、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、テマフロキサシン(temafloxacin)、ロメフロキサシン(lomefloxacin)、フレロキサシン(fleroxacin)、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、スパルフロキサシン(sparfloxacin)、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、ガチフロキサシン(gatifloxacin)、モキシフロキサシン(moxifloxacin)、ゲミフロキサシン(gemifloxacin)、シタフロキサシン(sitafloxacin)、メトロニダゾール、ダプトマイシン(daptomycin)、ガレノキサシン(garenoxacin)、ラモプラニン(ramoplanin)、ファロペネム(faropenem)、ポリミキシン、チゲサイクリン(tigecycline)、AZD2563、およびトリメトプリムが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
局所麻酔剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な局所麻酔剤には、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、およびロピバカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
鎮痙剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な鎮痙剤には、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル、シストスパズ、デトロール(トルテロジン)、ジサイクロミン、ジトロパン、ドナタル、ドナザイム、ファスジル、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン、レブシネックス、リブラックス、マルコトラン、ノバルチン、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、およびピナベリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
ベースポリマーとの混合物
ポリマー複合体がベースポリマーの特性を有していないときは、ベースポリマーとの混合物を調製して、例えば成形製品に必要な機械的特性を生じさせることが望ましい。ポリマー複合体は、ポリマーの外側界面のnm領域内に濃縮されて、ベースポリマーと熱力学的に相溶性になるように設計し相分離を防止することが望ましい。
【0082】
ベースポリマーの特性を有する多くの物質が当技術分野において公知である。本発明の混合物に有用なベースポリマーには、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレンブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、ならびに熱可塑性ポリジエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
成形製品
本発明の製品は、単独でまたはベースポリマーとの混合物として使用されるポリマー複合体から形成することができる。ポリマー複合体を単独でベースポリマーとして使用して成形製品を形成する一つの利点は、ポリマーを混合することがないので、エントロピーの低下が全くなく相分離を起こす可能性が全くないことである。
【0084】
本発明の組成物を用いてどのような成形品でも作製することができる。例えば、医用デバイスなど、体液との接触に適している製品は、本明細書に記載されている組成物を用いて作製することができる。接触期間は、例えば外科用器具の場合は短いが、インプラントなどの製品は長くなる。医用デバイスには、カテーテル、ガイドワイヤ、血管ステント、微粒子、電気リード線、プローブ、センサ、薬物デポー、経皮パッチ、血管パッチ、血液バッグ、および管が含まれるが、これらに限定されない。医用デバイスは、移植デバイス、経皮デバイス、または皮膚デバイスでありうる。移植デバイスには、患者に完全に移植されすなわち体内に完全に移植される製品が含まれる。経皮デバイスには、皮膚を通過して身体の外部から身体中に延びる製品が含まれる。皮膚デバイスは、皮膚の表面で使用される。移植デバイスには、ペースメーカーのような人工器官、ペーシングリード線のような電気リード線、細動除去器、人工心臓、心臓補助デバイス、乳房インプラントのような解剖学的再生人工器官、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、外科手術用パッチ、冠状動脈ステント、移植血管、血管の構造ステント、血管もしくは心臓血管のシャント、生体管路、外科用綿撒糸、縫合糸、弁輪形成リング、ステント、ステープル、有弁移植片、創傷治癒のために使う皮膚移植片、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、泌尿器ステント、顎顔面再建プレーティング、歯科インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤ、骨、皮膚、靭帯、腱、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。経皮デバイスには、カテーテルもしくは各種タイプのカニューレ;胸部チューブなどのドレナージチューブ;鉗子、牽引子、針、および手袋などの外科用器具;ならびにカテーテルのカフが含まれるが、これらに限定されない。皮膚デバイスには、火傷ドレッシング、創傷ドレッシング、ならびにブリッジ支持体およびブレーシング要素のような歯科用ハードウェアが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
上記の移植可能な医用デバイスは、一般に、固体状態のベース金属またはベースポリマーのプラトホームから構築される。この元のプラットホーム内のポリマー複合体は、単独でまたは混合物としても、治療薬剤のデバイスからの放出を制御する。
【0086】
また、本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を、化粧品(例えばクリーム、ゲル、およびローション)の表面に、例えば、雑草または昆虫などの有害生物の増殖を抑制するためのペレットに、または、例えば抗菌剤を水に放出する水清浄化工程で使用する膜に送達するのにも使用できる。
【0087】
以下の実施例は、本明細書において特許請求されている方法および化合物がどのように実行され、作製され、および評価されるかを当業者に完全に開示し、かつ説明するために記載されており、単に本発明を例示することだけを目的とするものであり、本発明の発明者らが自らの発明とみなしているものの範囲を限定するものではない。
【0088】
一般的な実験のプロトコル
精製:本明細書の実験の章では多種類の精製法が使用されている。各方法の概要を以下に記載する。
【0089】
透析:膜によって溶液中の分子がその大きさに基づいて分離される、サイズ排除精製法である。低分子量の分子は、透析膜を通過して大容積の溶媒中に入る。このシリーズの実験プロトコルで使用した膜は、SpectraPor 6 Regenerated Cellulose(RC)であった。
【0090】
カラムクロマトグラフィ:カラムクロマトグラフィに使用される固定相は、一般にシリカゲルである。一般に、フッ化化合物はシリカと相互作用しない。この方法は、より小さい分子を迅速に濾過できる。
【0091】
固相抽出法(カチオン):予め充填したカチオンシリカゲルカラム(プラスチック)を使用して、小カチオン化合物を反応混合物から除いた。
【0092】
限外濾過法(Centricon and Pellicon):この技術は、半透膜を用いて、大分子を小化合物から分離する分離法に基づいている。OFの溶液を、接線流を使用し膜のほうに押圧して、大分子を小分子から分離した。
【0093】
フッ素化(fluorous)固相抽出法(F-SPE):過フッ素化リガンドで修飾されたSPE基質(F-SPE)を使用し前記OFを選択して保持して、非フッ素化化合物を分離させた。
【0094】
細胞毒性検定試験:実験の章で合成したポリマー化合物を細胞毒性について試験した。その試験法の概要を以下に要約する。
【0095】
直接接触細胞毒性検定試験:HeLa上皮細胞を試験物質と直接接触させたときの生存能力を利用して、オリゴフルオロ(OF)の起こり得る細胞毒性を評価した。試験物質の試料は,寒天で支持されたSuporフィルターの上に溶媒を用いて流延した。次いで、HeLa細胞の単層を、前記フィルター上に、MEM培養培地の存在下で直接培養した。24時間インキュベートした後、そのSuporフィルターをコハク酸脱水素酵素ですすぎ次いで染色した。生存細胞を、紫色のポジティブ染色で確認し、次いで前記流延物質の周りの細胞排除領域または低細胞密度について、前記染色されたフィルターを検査することによって、細胞毒性を測定した。各細胞毒性検定試験には、図9A〜Cに示したように陽性と陰性の対照を含めたが、これらの図は生存HeLa細胞を示すため染色されたSuporフィルターの例を示している。
【0096】
実施例1: FT([HDI-DABS][PTMO]):TMPP
1a: FT([HDI-DABS][PTMO])の合成
ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)(予め乾燥した10g)をジメチルアセトアミド(DMAc)(50mL)に溶解した。1,6-へキサンジイソシアネート(HDI)と2,5-ジアミノベンゼンスルホン酸(DABS)(9.2g)をDMAc(50mL)に溶解して新しく調製した溶液を、前記PTMOの溶液と、窒素雰囲気下、2時間反応させた。その反応混合液に、DMAc(30mL)に溶解したフルオロアルコール(11.7g)を添加した。ジブチルスズジラウレートを触媒として使用した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に保持し、温度を、2.5時間、60〜70℃に維持した。沈殿法によって精製を行った。最終生成物を減圧オーブン中で24時間乾燥した。XPS分析領域は、大きさが700×300ミクロンで、原子含有量がC(50.9%)、N(7.0%)、O(19.7%)、S(1.2%)であり、フッ素の全含有量は、21.2重量%であった。IR分析結果は、以下の化学構造、すなわち3349.68(cm-1)ν(N-H) H結合、2927.20(cm-1)ν(C-H) CH2非対称伸縮、2855.41(cm-1)ν(C-H) CH2対称伸縮、1740(cm-1)ν(C=C) ウレタン非結合、1700(cm-1)ν(C-O) ウレタンH結合、1452.19(cm-1)ν(C=C) 芳香族リング、1493.40(cm-1)ν(C-C) 芳香族リング、1208.10(cm-1)ν(S=O)、1400〜1000ν(C-F)(モノフルオロアルカンはこの範囲の右で吸収し、一方ポリフルオロアルカンは1350〜1100(cm-1)の範囲にわたって複数の強いバンドを提供する)と一致した。NMR分析を利用してコンジュゲーションの前後の芳香族領域を比較した。元素分析結果C120H186O31N12S2F34は、予想の構造[%C 48.00%(52.63%(+4.63%))%H 7.88%(6.24%(+1.64%))、%N 6.95%(5.6%(+1.35%))、%F 6.48%(21.51%(-15.03%))、%S 2.14%(2.58%(-0.44%))]と一致した。
【0097】
1b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − 5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩(TMPP)
表面修飾剤(1a)(0.262g)をジメチルスルホキシド(DMSO)(5mL)に溶解して得た溶液に、5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩(TMPP)(0.0198g, 1mL DMSO)を添加した。その反応混合物を密封して24時間窒素雰囲気下に置いた。ジメチルスルホキシドを減圧(50℃、10-1mmHg)下で除いて、所望の複合体を生成させた。過剰のTMPPは、リン酸緩衝液(pH=7、3×20mL)を用いて洗浄した。最終生成物を減圧乾燥した。複合体の生成および放出のプロファイルを具体的に詳解するため、異なる媒体を用いて解離の動力学を監視する総合紫外線分析(λ=443nm)を実施した。反応が混合溶媒系(H2O(50):DMAc(50))内で完了したときその放出プロファイルは、ダンピング方式(一度に放出)を示したということは重要である(t=5分, A=0.3184;t=70分, A=3.014;t=146分, A=3.9677;t=203分, A=3.9587;t=364分, A=4.0284)(図1b)。したがって、複合体が生成するには、適切な溶媒系が不可欠の要件である。HCl(1M)(t=5分, A=0.1124), (t=67分, A=0.3549), (t=72分, A=0.3132), (t=132分, A=0.3342), (t=187分, A=0.3903), (t=252分, A=0.4740)(図1c)。NaOH(1M)(t=5分, A=-0.0686), (t=53分, A=0.0048), (t=113分, A=0.0293), (t=185分, A=0.0370), (t=241分, A=0.0837), (t=306分, A=0.2096)(図1d)。緩衝液(pH=7.4)(t=5分, A=-0.0067), (t=41分, A=-0.0067), (t=93分, A=-0.0087), (t=186分, A=0.0084), (t=1626分, A=0.1537)(図1e)。
【0098】
実施例1からのデータによって、イオン結合を生成することによって、TMPPと相互作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤を、送達プラットホームから解離できることを示した。
【0099】
実施例2: FT([LYS][PTMO]):セラミド
2a: ポリマーFT([LYS][PTMO])の合成
ポリテトラメチレンオキシド(10g, 0.0097mol予め乾燥)をDMAc(50mL)に溶解した。このポリテトラメチレンオキシド溶液に、DMAc(25mL)にリシンジイソシアネート(4.11g, 0.0194mol、新たに蒸留)を溶解して得た溶液を滴下して添加した。このプレポリマー反応混合物を、密封して、窒素雰囲気下、60〜70℃で2時間保持した。末端キャッピング剤のフルオロオリゴマー(11.74g, 0.0194mol)をDMAc(25mL)に溶解し、その溶液を前記プレポリマー反応混合物に滴下して添加した。その反応溶液をN2雰囲気下で密封して、一夜、室温で撹拌した。ジブチルスズジラウレートを触媒として使用した。触媒を回収しかつ残留フルオロオリゴマーを除くため、生成物を水とエーテルの混合物中で沈殿させた。最終生成物を減圧乾燥した。NMR分析とIR分析の結果、メチルエステル基の存在が確認された。そのエステル官能基を多くの反応に利用した。特定の化学反応に対して、カルボン酸基のような特異的官能基が必要であった。そのエステル基がカルボン酸基に変換する加水分解反応は、(1.0M)塩酸溶液を用いて完了させた。最終生成物を、(1.0M)KCl水溶液中で沈殿させ、洗浄し次いで減圧下60℃で乾燥した。エステル基の酸官能基への変換を、さらにNMR分析法で確認した。プロトンNMRはメトキシ基の消失を示した。XPS分析領域は、大きさが700×300ミクロンで、原子含有量がC(38.6%)、N(3.2%)、O(10.2%)であり、全フッ素含有量が47.6重量%であった。IR分析結果は以下の化学構造、すなわち3327.29(cm-1)ν(N-H) H結合、2945.10(cm-1)ν(C-H) CH2非対称伸縮、2865.69(cm-1)ν(C-H) CH2対称伸縮、1717.91(cm-1)ν(C=O) ウレタンアミド、1533.54(cm-1)ν(C-N) 伸縮モード、1445.56(cm-1)ν(C-N) 伸縮モード、1349.31(cm-1)ν(C-O) 伸縮、1400〜1000ν(C-F)(モノフルオロアルカンはその範囲の右側で吸収し、一方ポリフルオロアルカンは、1350〜1100(cm-1)の範囲にわたって複数の強いバンドを提供する)と一致した。元素分析結果C92H148O25N4F30は予想構造と一致した。
【0100】
2b: 複合体の生成、単離および解離のプロファイル − C6-セラミド
2a(0.1g(酸))を、窒素雰囲気下、室温でジクロロメタン(3mL)に溶解した。スフィンゴシン誘導体(セラミド(C2:0)、(C4:0)、(C6:0)、(C8:0)、(C10:0)、(C12:0)、(C14:0)、(C16:0)、(C17:0)、(C18:0)、(C18:1)、(C20:0)、(C24:0)、(C24:1))由来のモデル化合物(0.1g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記オリゴフルオロ(2a)溶液に、15分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下で2時間放置した。過剰の溶媒を、加圧して除き最終生成物を生成させた。そのスフィンゴシン化合物(セラミドのファミリー)の放出/解離をHPLC(0.5mg/mL、6回注入、保持時間14.062分)を利用して確認した(図2l)。この反応工程をさらに偏光顕微鏡法と走査型電子顕微鏡法によって分析した。その偏光顕微鏡法の結果は、2化合物を単に混合し室温で放置して溶媒を蒸発させたとき、不均一なマトリックスが生成したことを示した(図2a、2b、2c、および2d)。これをさらに、走査型電子顕微鏡法で確認した(図2e、2f、2g、および2h)。さらに、試料の均一性をステンレス鋼製の研磨されていない金属プラットホームを用いて検査した。これらのプラットホームを、前記生成物の薄層でコートし、次いで、走査型電子顕微鏡法を利用して検査した(図2iおよび2j)。これらの試験結果は、均一なコーティングを示した。さらに、その反応工程を分析して、反応中および最終生成物を単離中、活性化合物の全構造が変化しないことを確認した。示差走査型電子顕微鏡法(図2k)とNMR分析法によって、活性化合物の初期構造が無傷のままであることが確認された。この組成物を用いて、血管内デバイスに関連するプロトタイプのデバイスをコートした。走査型電子顕微鏡法(SEM)を利用して観察したところ、相分離は全く見られなかった(図2n、2m、2o、および2p)。
【0101】
実施例2からのデータによって、水素結合によってC6-セラミドと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤が、送達プラットホームから解離できることを示した。さらに、最終生成物の均一性が、製品のプロトタイプとしてスプリングをコートすることによって立証された。
【0102】
実施例3: FT[LYS(Cyd)][PTMO]):メチルバイオレット2B
3a: ポリマー[FT[LYS(Cyd)][PTMO])]の合成
シクロデキストリン(CyD)は、6、7または8個の糖単位で構築された環式で水溶性の非還元性化合物である。これらの化合物は、疎水性キャビティを有し多種類の分子種と相互に作用できる。ゲスト化合物の適性を決定する際、化学的因子より幾何学的因子のほうが決定的に重要である。リシンを基にしたオリゴフルオロ(OF)薬物送達マトリックスの骨格(2a)を、シクロデキストリン、クラウンエーテルおよび/またはカリキセレン(calixerene)と相互に作用するプラットホームとして使用した。
【0103】
6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンHCl塩(0.174g)をMilliQ水(0.5mL)に溶解した。脱塩するために、1.0N NaOH(50μl)を添加して上記HClを中和し、6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリン(CyD)を遊離塩基として沈殿させた。そのCyDを、1000 rpmで10分間遠心分離し次いで上澄み液を除去した。その遊離塩基6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンを精製し次いで減圧乾燥した。オリゴフルオロ(OF)(2a-(酸))(0.105g)を無水DMF(2mL)に溶解して0℃まで冷却した。DIC(21μL)を2時間および反応混合物を2時間撹拌した。CyD(56mg)をDMF(2mL)に溶解して、TEA(6μl)で活性化されたOFに滴下して添加した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に7日間保持した。生成物のCyD-OF(0.128mg)を、水(5mL)中に沈殿させることによって、DMF溶媒から回収した。最終生成物を精製し次いで50℃のオーブンで2日間乾燥した。
【0104】
3b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − メチルバイオレット
CyD-OF(3a)(2.7g)をDMSO(75μL)に溶解した。メチルバイオレット(MV,2.8mg)をDMSO(28mL)に溶解して濃度0.1mg/mLの溶液を調製した。このメチルバイオレット溶液1mLをさらにDMSO(10mL)で希釈して濃度0.01mg/mLの溶液を調製した。前記CyD-OF溶液(75μL)を、4mLガラス製バイアルびん中のMV溶液(500μL)に、10分間かけて滴下して加えた。この溶液を密封して暗所に12時間放置した。濃度0.01mg/mLのメチルバイオレット溶液のUV/Vis測定値(A(591nm)=0.96)を対照値とした。CyD-OFのUV/Visスペクトルを測定したが(A(591nm)=0.63)、分子レセプターを添加すると、ゲスト分子の強度が明らかに変化することを示した。複合が起こるとその吸光度が低下して、複合体の生成が確認された。対照溶液も調製した。この対照溶液は、UV/Vis試験分析に利用したのと同じモル比のOF、CyDおよびメチルバイオレットの混合物を含有する溶液であった。濃度0.01mg/mLのメチルバイオレット溶液のUV/Vis測定値は、OF、CyD、およびメチルバイオレットのUV/Visスペクトルと同一であった(すなわち吸光度の低下は全く認められなかった)。
【0105】
実施例3のデータから、複合のエンド/エキソモード(Endo/Exo mode)に適した送達系の設計が明確になった。UV吸収の低下はCydの複合を示した。
【0106】
実施例4: FT([LYS(COO-Na+)][PTMO]):シスプラチン
4a: ポリマーFT([LYS(COO-Na+)][PTMO])の合成
4a-1: 0.5gの(2a-エステル)の2.5過剰に当量の炭酸ナトリウム10%溶液を調製した。OF(2a)のメタノール溶液を、室温で、上記炭酸ナトリウム溶液にゆっくり添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下に密封し、室温で72時間撹拌した。最終生成物を精製して減圧乾燥した。NMR分析値は修飾された構造と一致した。
【0107】
4a-2: エステル官能基を有するOF(2a)(2.024g)の溶液をメタノール(20mL)に溶解した。NaOH溶液(1.0N, 2.3mL)を、上記OF(2a)に滴下して添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下6時間撹拌した。過剰の溶媒を減圧で除き、次いで最終生成物を精製して50℃で乾燥した。NMR分析値は、修飾された構造(1H NMRスペクトル(CDCl3):δH(300MHz)(-OCH3(3.74)消失)と一致した。
【0108】
4b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − シス-ジクロロジアンミン白金(II)
4b-1: 0.3gの(2a)をDMF(8mL)に溶解した。シス-ジクロロジアンミン白金(II)(0.078g)をDMF(8mL)に溶解した。このシスプラチンが完全に溶解した後、撹拌を続けながら、オリゴフルオロ(OF)(4a)を滴下して添加した。その反応混合物を、薄層クロマトグラフィで絶えず監視しながら、周囲温度で4〜8時間反応させた。過剰のシスプラチンを、適切な濾過膜を用いて遠心分離して除いた。キレート化された生成物を凍結乾燥し次いで-20℃で貯蔵した。放出のプロファイルを、UV分析法によって監視した(図4b)。
【0109】
4b-2: 0.3gの(4a-2)を水(5mL)に溶解した。シス-ジクロロジアンミン白金(II)(0.078g)を水(20mL)に溶解した。このシスプラチンが完全に溶解した後、撹拌を続けながら、オリゴフルオロ(OF)(4a)を滴下して添加した。その反応混合物を、薄層クロマトグラフィで絶えず監視しながら、周囲温度で4〜8時間反応させた。過剰のシスプラチンを、適切な濾過膜を用いて遠心分離して除いた。キレート化された生成物を凍結乾燥し次いで-20℃で貯蔵した。元素分析結果は、全白金含有量が11.1%であることを示した。放出のプロファイルを、UV分析結果を用いて記録した(図4b)。
【0110】
実施例4のデータによって、キレート化を通じてシスプラチンと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤が送達プラットホームから解離できることを示した。全白金含有量は適切な薬剤の負荷を示した。
【0111】
実施例5: FT([LYS(PEG)][PTMO]):メトトレキセート(MTX)
5a: ポリマーFT([LYS(エタノールアミン)][PTMO])の合成
リシンを基にしたOF(2a)を、エタノールアミンを共有結合するためのプラットホームとして使用した。この化学的修飾は、アミドを生成させることによって達成した。OF(2a)(1.042g)を無水MeOH(35mL)に溶解した。その溶液に炭酸カリウム(245mg)を添加し次いで激しく撹拌して透明溶液を得た。その反応混合物にエタノールアミン(108mg)を窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を7日間、緩やかに還流した。最終生成物を精製し次いで50℃のオーブンで2日間乾燥した。NMRの試験結果は、提案した構造と一致した。
【0112】
5b: ポリマーFT([LYS(PEG)][PTMO])の合成
OF(5a)(0.105g)をDMF(2mL)に溶解した。この溶液にTEA(19mL)を添加した(溶液A)。FMOc-PEG-NHS(460mg)をDMF(5mL)に溶解して得た溶液を二口反応フラスコに移した(溶液B)。溶液Aを溶液Bに、窒素雰囲気下、滴下して添加した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に12時間放置した。そのFMOcで保護された生成物を精製し次いで40℃のオーブンで乾燥した。脱保護工程を行うために、20%ピペリジン溶液を使用した。最終生成物を精製し次いで40℃のオーブンで乾燥した。NMRの試験結果は、提案した構造と一致した。
【0113】
5c: 複合体の生成、単離および解離のプロファイル − メトトレキセート
PEG-OF(5b)(0.003g)をDMSO(2mL)に溶解した。この溶液を、新しく調製したメトトレキセート(0.3mg)をDMSO(1mL)に溶解して得た溶液に滴下して加えた(30分間)。この反応混合物を、窒素雰囲気下、24時間撹拌した。最終生成物を単離し、精製し次いで減圧乾燥した。MTXの解離プロファイルを詳解するため紫外線分析を、(l=371nm), (t=30分, A=0.859); (t=60分, A=0.900), (t=120分, A=0.942)で実施した。
【0114】
5d: 塩生成の一実施例としての複合体の生成、単離および解離のプロファイル − FT([LYS][PTMO]):クロルヘキシジン
OF(2a)を、クロルヘキシジン(CHX)送達のためのプラットホームとして使用した(5d-c)。OF(2a)(0.3g)をDMAc(3mL)に溶解した。このOF溶液に、CHX(263mg)をDMAc(3mL)に溶解して得た溶液を、2時間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封し窒素雰囲気下24時間放置した。最終生成物を単離し精製し次いで24時間減圧乾燥した。
【0115】
フィルムの調製: 単離された生成物(OF:CHX)を、Carbothane 85Aを固体(52mg)としてDMFに溶解して得た10%溶液と混合する(50-130)(5d-e)かまたは同じ濃度でプレソルベートした(50-140)(5d-f)。これらの溶液(6mL)を各々、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムにした。
【0116】
これら溶液を用いて、一連の対照フィルムを、前記実験の詳細に従って同様に調製した。すなわち10% Carbothane 85A(50-100)(5d-a);CHX(26mg)を85 Aの溶液(6mL)に添加した(50-110)(5d-b);OF(2a)(33mg)を85 Aの溶液(6mL)に添加した(50-120)(5d-c)。
【0117】
XPSの試験結果は、フッ素の百分率によって、最初の10nmに表面活性を示した。CHXの存在は、塩素の百分率に基づいて確認した(図5d-g)。全フィルムのSEM画像は、図5d-a、5d-b、5d-c、5d-e、および5d-fに示してある。Carbothane中のCHXは、表面における薬剤の結晶化と均一なプラットホームの欠如を示した(5d-b)。(Carbothane 85A(OF:CHX))のSEM画像は、相分離なしの均一なプラットホームを示した。
【0118】
放出のプロファイル: フィルム片(4cm×0.5cm)を切り出しさらに0.5cm×0.5cmのセグメントに分割して、全濃度を、全試料について同じにした。これら試料を、水(1.5mL)が入っているガラス製バイアルびん中に入れた。UV/Vis吸光度を、各種時点(1、2、3、4、96時間)で測定した(5d-h)。このデータは、薬物送達プラットホームの放出させる性能のみならずCHXの放出の違いを示した。
【0119】
実施例5のデータによって、酸塩の生成でCHXと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。この放出プロファイルは、薬剤が送達プラットホームから解離できることを示した。最終生成物の均一性は、さらにSEMによって立証された。
【0120】
実施例6: FT([LDI][PTMO]):イブプロフェン
6a: ポリマーFT([LDI](PFB)[PTMO])の合成
リシンを基にしたOF(2a)を、フッ素化フェニル基の共有結合するプラットホームとして使用した。OF(2a)(0.496g)を、無水DMF(5mL)の入っている二口フラスコ(100mL)中に添加した。DIC(100μL)を添加し、次いでその反応混合物を密封して窒素雰囲気下20分間撹拌した(溶液A)。
【0121】
ペルフルオロベンジルアルコール(PFBA)(128mg)をDMF(5mL)に溶解した。完全に溶解した後、TEA(90μL)を添加した(溶液B)。溶液Bを溶液Aに滴下して加えた。この反応混合物を密封して、窒素雰囲気下、12時間撹拌した。PFBA-OFを溶媒から回収し次いで乾燥した。この生成物をさらに、1-オクタノール(3×3mL)で洗浄して過剰のPFBAを抽出した。最終生成物を精製し次に24時間減圧乾燥した。
【0122】
6b: ポリマーFT(PFB)([LDI][PTMO])の合成
PTMO(5.002g)を乾燥した二口フラスコ内に秤取し次いで脱ガスを2時間行った。PFBA(2.002g)を、別の二口フラスコ内に秤取し次いで脱ガスを2時間行った。すべてを窒素の連続流下において無水DMAc(15mL)を各フラスコに添加した。LDI(1.964g)を無水DMAc(15mL)に溶解し次いで触媒のジブチルスズジラウレート333mgと混合した。この溶液を前記PTMO溶液に、シリンジを用いて滴下して加えた。この反応を窒素雰囲気下70℃に2時間維持した(溶液A)。2時間後、PFBA溶液を溶液Aに滴下して添加して、その反応混合物を、室温に24時間維持した。この重合反応から水を除くことが不可欠である。生成物を回収し、沈殿させ、次に精製して未反応の出発物質を除いた。最終生成物を50℃のオーブンで2日間乾燥した。
【0123】
6c: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT([LDI](PFB)[PTMO])(6a):イブプロフェン
OF(6a)(0.050g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(1mL)に溶解した。イブプロフェン(0.009g)をクロロホルム(0.5mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(6a)に、30分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0124】
6d: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT(PFB)([LDI][PTMO]):イブプロフェン
OF(6b)(0.5g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(5mL)に溶解した。イブプロフェン(0.109g)をクロロホルム(1.5mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(6b)に、60分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0125】
6e: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT([LDI][PTMO]):イブプロフェン
OF(2a)(0.3g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(5mL)に溶解した。イブプロフェン(0.053g)をクロロホルム(1.0mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(2a)に45分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0126】
フィルムの調製: 単離された生成物(6c、6d、6e)(各々10mg)をDMF(0.5mL)に溶解し、その溶液(各375mL)を、Chronothane 80Aの10% DMF溶液(1.5mL)と混合した。Chronothane+OFの各溶液(各々179mL)を、6mmプロピレン製平底ウエル中にピペットで採取して流延してフィルムにした。
【0127】
一連の対照のフィルムを流延して、6aおよび6bの表面活性を試験した。6aおよび6b(各々10mg)をDMF(0.5mL)に溶解し次にこれらの溶液25μLをポリカーボネートポリウレタン(PCNU)と混合した。その溶液(各々150mL)を、6mmプロピレン製平底ウエル中にピペットで採取して流延してフィルムにした。このPCNUフィルムのXPS分析結果は、最初の10nmの表面活性を、フッ素の百分率で示した(図6h)。
【0128】
実施例6のデータによって、p-pスタッキングで、イブプロフェンと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出のプロファイルは、薬剤がその送達プラットホームから解離できることを示した。XPSのデータは、表面の頂部10nmの部分にフッ素が存在していることを示した(表1参照)。
【表1】
【0129】
実施例7: FT([LYS(Tris)][PTMO]
ポリマーFT([LYS(Tris)][PTMO]の合成
OF 2a(0.997g)を、オーブンで乾燥した二口フラスコ(100mL)に入れ次いで脱ガスを2時間行った。無水メタノール(33mL)を添加し次にその反応混合物を、すべてが溶解するまで撹拌した。トリ-ヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)(205.8mg)と無水炭酸カリウム(234.8mg)の混合物を添加した。この反応混合物を、45℃で7日間還流した。最終生成物を精製し次いで30℃で48時間、減圧乾燥した。
【0130】
この実施例によって、多価プラットホームの設計が明らかになった。
【0131】
実施例8: ポリカプロラクトン(PCL)[OF:サリチル酸]
生物学的活性薬剤が、結晶性を有するポリマー格子(例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリ(エチレンテレフタレート)、またはポリカプロラクトン内に含まれているとき、その放出プロファイルは、一般に、一回の解離または不完全な解離に基づいている。多くの場合、これは、結晶プラットホームの構造特性に基づいている。
【0132】
この実施例では、最初に、結晶マトリックス、ポリカプロラクトン(PCL)およびオリゴフルオロ(OF)の間の適合性を確認した。
【0133】
8a: OF(2a-酸)(0.208g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。サリチル酸(0.072g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。このサリチル酸溶液を、上記OF溶液に、45分間かけて滴下して加えた。その反応混合物を密封し、窒素雰囲気下、24時間放置した。最終生成物を精製し次に48時間、減圧乾燥した。
【0134】
8b: OF FT([MDI][PTMO])(0.208g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。サリチル酸(0.072g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。このサリチル酸溶液を、上記OF溶液に、45分間かけて滴下して加えた。その反応混合物を密封し、窒素雰囲気下、24時間放置した。最終生成物を精製し次に48時間、減圧乾燥した。
【0135】
フィルムの調製: ポリカプロラクトン(8a):8a(50mg)を、PCLをDCM(10mL)に溶解して得た10%溶液に添加した。この溶液(5mL)を、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムを得た。ポリカプロラクトン(8b):8b(50mg)をDMF(0.5mL)に溶解した。この溶液を、PCLの10%溶液に添加した。この溶液(5mL)を、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムを得た。
【0136】
一連の対照のフィルムを、実験の詳細に従って、これらの溶液で同様に調製した。10% PCL;SA(0.009g)を10% PCL(10mL)に添加した。5% OF;OF(0.05g)を10% PCL(10mL)に添加した。
【0137】
放出のプロファイル: フィルム片(4×0.5cm)を切り出し、さらに(0.5×0.5cm)のセグメントに分割し全試料の全濃度を同じに維持した。これらの試料を、PBS(1.5mL)の入ったガラス製バイアルびんに入れた。UV/Vis吸光度を、各種の時点(1、2、3、および4時間)で測定した(図8cおよび図8d)。
【0138】
実施例8からのデータによって、サリチル酸と相互に作用するのに適切でかつベースポリマーと適合して均一なマトリックスを生成する送達系の設計が明らかになった。その放出プロファイルは、送達プラットホームの存在下、薬剤をベースポリマーから放出できることを示した。
【0139】
他の態様
本明細書において引用した刊行物、特許および特許願はすべて、独立した各刊行物または特許願があたかも、具体的にかつ個々に表示されて参照により組み入れられるのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
本発明はその特定の態様と関連させて記載されているが、本発明はさらに変形することができ、そして本出願は、一般に本発明の原理に従いかつ本発明の関連する当技術分野において公知または通常のプラクティスに含まれるような本明細書の開示からの逸脱を含む本発明の変更、使用、または適応を含むものであり、そして上記不可欠の特徴を出願し、特許請求の範囲に従うものであると解されたい。
【0141】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1aは、FT([HDI-DABS][PTMO])と複合した5,10,15,20-テトラキス(4-N-メチルピリジル-ポルフィリン)-TMPPの構造を示す。図1b〜1eは、各種条件(例えば酸性、塩基性および中性の条件)におけるTMPPの放出プロファイルの分析結果を示すグラフである。
【図2】図2a〜2dは、各種混合物の偏光(PL)顕微鏡法によって得た画像である。図2aはポリマー2aのPL顕微鏡写真である。この図はこの化合物の特色のない特性を示している。図2bはセラミドのPL顕微鏡写真である。この図はこの化合物の結晶格子の生成を示している。図2cは対照の混合物のPL顕微鏡写真である。この図は混合物の層分離する性質を示している。またこの図はその混合物の均一性を示している。図2dは複合体のPL顕微鏡写真である。この図は最終生成物の均一性を示している。図2e〜2hは、各種混合物の走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得た画像である。図2eはポリマー2aの走査型電子顕微鏡写真である。この図はこの化合物の特色のない特性を示している。図2fはセラミドの走査型電子顕微鏡写真である。図2gは対照の混合物の走査型電子顕微鏡写真である。この図は生成物の均一な特性を示している。また相分離が見られる。図2hは複合体の走査型電子顕微鏡写真である。この図は最終生成物の均一性を示している。図2iおよび2jは、C6-セラミド-FT([LYS][PTMO])複合体の薄層でコートしたステンレス鋼製の研磨されていない金属プラットホームの走査型電子顕微鏡法による画像である。結果は均一なコーティングが形成されることを示す。図2kは、C6-セラミド-FT([LYS][PTMO])複合体の示差走査熱量測定法によって得たグラフを示す。図2lは、活性化合物の初期構造が、複合および分解の後、変化しないままであることを示すHPLCのデータを示す。図2m〜2pは、相分離が複合体に全く見られないことを示す、コートされたプロトタイプのデバイスの走査型電子顕微鏡法による画像である。図2qは化合物2aのメチルエステルの理想的な構造を示す。
【図3】図3aは化合物3aの理想的な構造を示す。図3bは、原子の位置に標識をつけた6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンの骨格を示す。
【図4】図4aは、シスプラチンの加水分解生成物と中間体を示す図式である。図4bは、FT([LYS(COO-Na+)][PTMO])と複合したシスプラチンの放出プロファイルを示すグラフである。
【図5】図5aはクロルヘキシジンの構造を示す。図5d(a)〜5d(f)は、Carboethaneから作製したフィルム(図5d(a)対照)、表面における薬剤の結晶化と均一なプラットホームの欠如をを示すCarboethane中のクロルヘキシジン(図5d(b))、Carboethane中のFT([LYS][PTMO])(図5d(c)対照)、および相分離なしの均一なプラットホームを示すCarboethane中のクロルヘキシジン-FT([LYS][PTMO])複合体(図5d(e)および5d(f))の走査型電子顕微鏡法で得た画像である。図5d(g)は、FT([LYS][PTMO])の移行特性を示す頂部10nmにおけるフッ素の百分率およびクロルヘキシジンの存在を示す頂部10nmにおける塩素の百分率を示すCarbothaneフィルムのXPSデータ(90°テイクオフ(take-off))の表である。図5d(h)は、水中に入れたフィルム片からのクロルヘキシジンの放出を示す表である。このデータは、CHXの放出プロファイルおよび薬物送達プラットホームの放出する性能(すなわち送達プラットホームからの解離)の差を示した。
【図6】図6aは、化合物6a(FT([LDI](PFB)[PTMO]))の理想的な構造である。図6bは、化合物6b(FT(PFB)([LDI][PTMO]))の理想的な構造である。図6hは、実施例6の6c((6a):イブプロフェンの複合体)、6d((6b):イブプロフェンの複合体)および6e((2a):イブプロフェンの複合体)に記載されているイブプロフェンの放出プロファイルを示すグラフである。これらのデータは、p-pスタッキングを通じてイブプロフェンと相互に作用するのに適した送達系の設計および薬剤の送達プラットホームから解離する性能を示す放出プロファイルを例証している。
【図7】図7aは、化合物7(FT[LYS(Tris)][PTMO])の理想的構造である。
【図8】図8cおよび8dは、実施例8に記載されている、ポリカプロラクトンフィルムからのサリチル酸の放出プロファイルを示すグラフである。
【図9】図9a〜9cは、陽性対照(図9c)および陰性対照(図9b)とともに直接接触細胞毒性検定試験(図9a)を示す画像である。インキュベーションを行った後、生存細胞を紫色のポジティブ染色で確認し、次いでその染色されたフィルターを、流延された物質の周囲の細胞排除領域または低細胞密度について検査することによって細胞毒性を測定した。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図2j】
【図2k】
【図2l】
【図2m】
【図2n】
【図2o】
【図2p】
【図2q】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的活性薬剤を徐放送達するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料が、とりわけ、人工臓器、インプラント、医用デバイス、人工血管、血液ポンプ、人工腎臓、心臓弁、ペースメーカーリード線の絶縁体、大動脈内バルーン、人工心臓、透析器、および血漿分離器などの医用デバイスを製造するのに広く使用されている。医用デバイス中に使用するポリマーは、生体適合性でなければならない(例えば、中毒反応、アレルギー反応、炎症反応、または他の有害反応を起こしてはならない)。特定のデバイスが長期間および短期間使用できることを決めるのは、生物系と使用される合成材料との間の界面における物理的、化学的、または生物学的プロセスである。一般に、生体用材料の化学的および物理学的/機械的特性すなわち弾性、応力、延性、靭性、時間依存性変形、強度、疲労、硬度、耐摩耗性、および透明性を含む生体適合性および生分解性の正確なプロファイルは、極めて変化に富んでいる。所望の特性を得るために、混合によって作製されるポリマーブレンドが使用されている。しかしポリマーを混合するとエントロピーが低下して相分離が起こる。したがって、熱力学的適合性は、そのポリマーブレンド系の機能および安定性にとって重要な要因である。
【0003】
デバイスの表面に対して適切な生物学的応答をするということは、生体適合性として非常に重要なことである。生体医用デバイスを実際に開発する方法としては、該デバイス用バルク材の基準を満たすポリマー材料を使用し同時にある種の表面修飾を利用することが必要であった。この理想的な表面修飾によって、特に生物学的表面特性が調整されかつバルク特性の変化は最小限になる。このような方法は、バルクポリマー鎖に生物学的活性薬剤をグラフトする方法を超える利点を有している。というのは、このグラフト方法は、ポリマーの物理的構造を有意に変化させるからである。ポリマーをバルクグラフトする方法以外の、ポリマー表面を修飾するのに使用されていた方法としては、以下の方法:非共有結合コーティング(溶媒ありおよび溶媒なし)、化学的表面グラフティング、イオン注入、ラングミュア-ブロジェット積層(Langmuir-Blodgett Overlayer)および自己集合フィルム(self assembled film)、表面修飾添加剤、表面化学反応、ならびにエッチングおよびラフニング(roughening)があった。
【0004】
医用デバイスのポリマーコーティングは、生物学的活性薬剤を送達するための貯蔵庫として働くこともある。その活性薬剤が医用薬物である場合は、この活性薬剤を、医用デバイスから長期間にわたって放出することが望ましいことが多い。動力学的に制御して薬物を直接送達するシステムはほとんどポリマーを採用している。例えば、活性薬剤は、ポリマーが酵素によって身体内で分解されて放出されるかまたは制御された速度でポリマーマトリックスから拡散される。部位特異的薬物移送系は、治療部位に高濃度の薬剤をもたらし、同時に全身投与に付随する有害作用を最小限にする。
【0005】
薬物の放出を制御するのに使用されているポリマー系は、有害な生物学的応答を引き起こす不純物を含有していてはならず(すなわち生物学的に不活性でなければならない)、所望の放出プロファイルをとらねばならず、かつ医用デバイスに必要な機械的特性を持っていなければならない。
【0006】
ほとんどの場合、生物学的活性薬剤は、適切な溶媒系中でポリマーのプラットホームと混合されるだけである。次いで、その生物学的活性薬剤は、粒子の溶解または拡散によって放出される(非生物侵食性マトリックスが使用される場合)かまたはポリマーの分解している間に放出される(生分解性ポリマーが使用される場合)。混合するとエントロピーが低下して、バルクポリマー全体にわたって相分離を起こしてポリマーコーティングの物理的/機械的特性を損なうことがある。
【0007】
米国特許第6,770,725号(特許文献1)には、生物活性化合物の、オリゴフルオロ末端基を有するポリマーとの共有結合が記載されている。この方法は、生物学的活性薬剤をデバイスの表面に配置しデバイスの表面をオリゴフルオロ末端基で修飾することによってデバイス表面の生体適合性を改善し、およびポリマー生物活性化合物のベースポリマーとのコンジュゲートの熱力学的適合性を高めるために使用された。記載されているポリマーは、ベースポリマーのバルク特性を維持することができる。
【0008】
共有結合コンジュゲーションは、ポリマーの有効官能基と生物学的活性薬剤の官能基との間の共有結合で終わる多段階化学プロセスであることが多い。一般に、生物活性剤(すなわち薬物)は、共有結合コンジュゲーションを行うために構造を修飾される。幾種類かの生物学的活性薬剤は、このような修飾によって、その薬剤活性をいくらか失うかまたは完全に不活性になることがあり、そのときこのような薬剤はコンジュゲーション法を利用して送達することが不可能になる。
【0009】
生物学的活性薬剤を局所に集中する現在のシステムで起こり得る欠点を考えると、生物学的活性薬剤を規定の放出プロファイルで標的部位に送達する、表面修飾薬物送達プラットホームが必要である。本発明は、これらの問題に取り組み、従来技術を超える利点を提供するものである。
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,770,725号
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、生物学的活性薬剤の送達のためのポリマー複合体を提供する。この複合体は、少なくとも一つの複合部分(complexing moiety)に共有結合的に連結した(covalently tethered)少なくとも一つの遮蔽部分を含み、その複合部分は少なくとも一つの生物学的活性薬剤と複合している。本発明のポリマー複合体は、炎症性反応を弱めて(offset)血栓症を減らす表面特性を提供することができ、かつ、例えば移植されたデバイスの表面を形成するために使用すると、生物学的活性薬剤の移行と放出を制御することができる。
【0012】
第一の局面で、本発明は、(i)遮蔽部分、(ii)オリゴマーセグメント、(iii)複合部分、および(iv)生物学的活性薬剤を含むポリマーであって、その遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結しかつその複合部分が生物学的活性薬剤と複合しているポリマーを特徴とする。
【0013】
関連する局面で、本発明は、(i)遮蔽部分、(ii)オリゴマーセグメント、(iii)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および(iv)生物学的活性薬剤を含むポリマーであって、その遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結しかつその複合部分が生物学的活性薬剤と複合しているポリマーを特徴とする。
【0014】
上記のどの局面でも、ポリマーは、生物学的活性薬剤との非共有結合相互作用を形成する複合部分を含んでいてよい。非共有結合相互作用には、水素結合、イオン相互作用、包接複合体(inclusion complex)、包接化(clathration)、ファンデルワールス相互作用、およびその組合わせが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、ポリマーは、金属中心に配位結合した複合部分と生物学的活性薬剤とを含んでいてもよい。遮蔽部分は、以下に限定されることはないが、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ素化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、およびその組合わせから選択することができる。オリゴマーセグメントは、10、12、14、16、18、または20 kDaより大きい絶対分子量を有しうる。
【0015】
本発明のどのポリマーでも、そのオリゴマーセグメントとしては、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、またはポリエチレンブチレンのセグメントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明のどのポリマーも、その0.1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤であってよい。望ましくは、ポリマーの0.1〜4、0.1〜3、0.1〜2、0.5〜5、または1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である。
【0017】
本発明のどのポリマーも、その約0.01〜5重量%が遮蔽部分であってよい。望ましくはポリマーの0.01〜4、0.01〜3、0.01〜2、0.01〜1、0.1〜5、または0.5〜5重量%が遮蔽部分である。
【0018】
本発明のどのポリマーも、複数の複合部分および複数の生物学的活性薬剤を含んでいてよい。
【0019】
上記どのポリマーの態様でも、生物学的活性薬剤は、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド(rapamycin macrolide)、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン、および脂質から選択される。
【0020】
別の態様では、ポリマーの0.1〜99.9重量%が複合部分および生物学的活性薬剤であってもよい。望ましくは、ポリマーの0.1〜5、1〜10、5〜60、50〜90、または60〜99重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である。
【0021】
さらに別の態様では、遮蔽部分がポリマーの約0.1〜30重量%であってもよい。望ましくは、遮蔽部分は、ポリマーの0.01〜25、0.01〜20、0.01〜15、0.01〜5、1〜25、または5〜25重量%である。
【0022】
上記局面の一つの態様では、ポリマーは、下記式で表される:
FT-LINK A[-(oligo)a-(LINK A)b]c-Td(Bio)e
式中、FTはポリフルオロオルガノ基であり;BioはLINK Aに複合できる一つまたは複数の生物学的活性薬剤であり;各LINK Aは、独立して、Bioと複合できる複合部分を含む有機部分であり;oligoはオリゴマーのセグメントであり;Tは末端基であり;aは0または1であり;b、c、d、およびeは0より大きい整数であり;ならびに少なくとも一つのBioは少なくとも一つのLINK Aと複合している。FTは例えばポリフルオロアルキルでもよく、FTは、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-(式中、rは2〜20である)およびCF3(CF2)s(CH2CH2O)x(式中xは1〜10であり、sは1〜20である)で表されるラジカルからなる群から選択することができる。望ましくは、FTは、分子量が100〜1,500 Daである。oligoは、繰返し単位が多くとも20個の分枝または非分枝オリゴマーセグメントであってもよい。oligoは、10 kDaより大きい絶対分子量を有するオリゴマーセグメントであってもよい。LINK Aは繰返し単位が少なくとも20個の分枝もしくは非分枝オリゴマーまたはモノマーセグメントであってもよい。一つの態様では、aは0である。
【0023】
上記どの態様および局面でも、ポリマーは、ベースポリマーの特性を有していてよい。望ましくは、ポリマーがベースポリマーとして機能しているとき、そのオリゴマーセグメントは、10k Da、12 kDa、14 kDa、16kDa、20 kDa、24 kDa、28 kDa、35 kDa、50 kDa、75 kDa、または100 kDaより大きい絶対分子量を有する。
【0024】
上記どの態様および局面でも、本発明のポリマーは、約10 kDa未満の絶対分子量を有するオリゴマーセグメントを含んでいてよい。このことは、本発明のポリマーが混合物で使用される場合、望ましい。
【0025】
別の局面では、本発明は、ベースポリマーを混合した本発明のポリマーを含む混合物を特徴とする。
【0026】
さらに別の局面では、本発明は、ベースポリマーと混合されたポリマーを含有する混合物であって、その混合されたポリマーが(i)遮蔽部分、(ii)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および(iii)生物学的活性薬剤を含み、その遮蔽部分がその複合部分と共有結合的に連結し、かつその複合部分がその生物学的活性薬剤と複合している混合物を特徴とする。
【0027】
また本発明は、(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤と、(ii)(a)遮蔽部分、(b)オリゴマーセグメント、および(c)複合部分を含む第二のポリマーとを含むベースポリマーであって、遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結し、かつ放出プロファイルを変えるのに十分な量で第二のポリマーが存在しているベースポリマーを特徴とする。
【0028】
本発明は、さらに、(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤と、(ii)(a)遮蔽部分、(b)オリゴマーセグメント、および(c)生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分を含む第二のポリマーとを含むベースポリマーであって、遮蔽部分および複合部分がオリゴマーセグメントと共有結合的に連結し、かつ放出プロファイルを変えるのに十分な量で第二のポリマーが存在しているベースポリマーを特徴とする。
【0029】
本発明の混合物はいずれも、0.1〜10重量%のポリマー複合体を含むことができる。望ましくは、本発明の混合物は、0.01〜15、0.01〜10、0.1〜5、1〜15、1〜10、または1〜5重量%のポリマー複合体である。
【0030】
本発明の混合物に使用する例示的なベースポリマーには、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、熱可塑性ポリジエン、ならびにその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
また本発明は、本発明のポリマー複合体から形成された成形製品を特徴とする。
【0032】
本発明はさらに、本発明の混合物から形成された成形製品を特徴とする。
【0033】
別の局面では、本発明は、本発明のポリマーを含む成形製品を特徴とする。望ましくは、その製品は本発明のポリマーでコートされている。
【0034】
本発明の製品は、例えば、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント(prosthetic implant)、人工括約筋、または薬物送達デバイスのような任意の移植可能な医用デバイスとすることができる。
【0035】
いくつかの態様では、本発明の製品は、放出可能な生物学的活性薬剤の80%を2年以内に放出する。
【0036】
本発明の製品は、t50が6ヶ月を超えるという生物学的活性薬剤の放出プロファイルを有することができる。望ましくは、t50は、9ヶ月、1年、2年、または5年さえ超える。
【0037】
本発明の製品は、t10がt50の1/10より大きいという生物学的活性薬剤の放出プロファイルを有することができる。
【0038】
別の局面では、本発明は、本明細書に記載のポリマー複合体を含む生物学的活性薬剤を送達するための組成物であって、デバイスなしで、例えばクリーム、ゲル、またはローションに製剤化され、例えば医療処置なしで、医療処置中または医療処置の後に局所に塗布される組成物を特徴とする。
【0039】
本発明は、さらに、本明細書に記載のポリマー複合体を含む、有害生物(例えば昆虫または雑草)の増殖を抑制する組成物であって、その生物学的活性薬剤が農薬(例えば殺虫剤)または除草剤である組成物を特徴とする。
【0040】
また本発明は、請求項1に記載のポリマー複合体を含む表面上での微生物の増殖を低下させる組成物であって、生物学的活性薬剤が抗微生物剤である組成物を特徴とする。
【0041】
別の局面では、本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の炎症を減少させる方法を特徴とする。この方法は、炎症を減少させるのに十分な量で製品の表面から放出される抗炎症剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な抗炎症剤には、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン(nabumetone)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、メロキシカム(meloxicam)、オキサプロジン、スリンダク、トルメチン、アルゲストン、アムシノニド、べクロメタゾン(beclomethasone)、ベタメタゾン、ブデソニド(budesonide)、クロベタゾール、コルチコステロン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルクロロニド(flucloronide)、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、およびトリアムシノロン、またはこれらの組合せ、および他の生物学的活性薬剤との組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
関連する局面では、本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の再狭窄を減少させる方法を特徴とする。この方法は、再狭窄を減少させるのに十分な量で製品の表面から放出される抗増殖剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な抗増殖剤には、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(Everolimus)、ABT-578、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド(iosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam)、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル(fluouracil)、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン(allopurine)、クラドリビン(cladribine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチン(pentostatin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル(docetaxel)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン(idarubincin)、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン(amsacrine)、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール(anastrozole)、フィナステリド(finasteride)、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド(flutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、ゴセレリン、Gleevec(商標)、レフルノミド(leflunomide)、SU5416、SU6668、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)、トラスツズマブ(trastuzumab)、Erbitux(商標)、PKI166、GW2016、EKB-509、EKB-569、MDX-H210、2C4、MDX-447、ABX-EGF、CI-1033、Avastin(商標)、IMC-1C11、ZD4190、ZD6474、CEP-701、CEP-751、MLN518、PKC412、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン(nitracrine)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン(Cerivastatin)、トログリタゾン(Troglitazone)、CRx-026、DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン(Taxoprexin)、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質(Sphingosine-based lipid)、およびミトタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
また本発明は、その必要がある哺乳動物における部位の疼痛を軽減する方法を特徴とする。この方法は、疼痛を軽減するのに十分な量で製品の表面から放出される鎮痛剤または麻酔剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な鎮痛剤には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン(acetorphine)、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン(phenomorphan)、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、およびジヒドロアセトルフィンが含まれるが、これらに限定されない。有用な麻酔剤には、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン(mepivicaine)、ブピバカイン(bupivicaine)、アルチカイン(articaine)、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、およびロピバカイン(ropavacaine)が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
本発明はさらに、その必要がある哺乳動物における部位の筋肉を弛緩させる方法を特徴とする。この方法は、筋肉を弛緩させるのに十分な量で製品の表面から放出される鎮痙剤をポリマー複合体に含む本発明の製品を、前記部位に移植する段階を含む。有用な鎮痙剤には、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル(bentyl)、シストスパズ(cystospaz)、デトロール(detrol)(トルテロジン(tolterodine))、ジサイクロミン、ジトロパン(ditropan)、ドナタル(donnatol)、ドナザイム(donnazyme)、ファスジル(fasudil)、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン(levsin)、レブシネックス(levsinex)、リブラックス(librax)、マルコトラン(malcotran)、ノバルチン(novartin)、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン(pamine)、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、およびピナベリウム(pinaverium)が含まれるが、これらに限定されない。
【0045】
上記の態様と局面のすべてにおいて、生物学的活性薬剤は、そのプロドラッグ例えばアミドまたはエステルとして提供することができる。
【0046】
別の局面では、本発明は、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法であって、(i)生物学的活性薬剤を本発明のポリマーと複合させてポリマー複合体を形成する段階、および(ii)そのポリマー複合体を用いて製品の表面を形成する段階を含み、そのポリマー複合体が約0.1〜30重量%の遮蔽部分を含む方法を特徴とする。
【0047】
別の局面では、本発明は、生物学的活性薬剤の成形製品の表面からの放出を制御するための方法を特徴とする。その方法は、(i)生物学的活性薬剤を含む成形された製品を形成する段階、および(ii)その成形された製品の表面を本発明のポリマーでコートする段階を含む。
【0048】
鎖の適切な末端基Td、例えばラジカルは、いずれも本発明のポリマー中に存在していてよく、H、アルキル、エステル、ヒドロキシル、および遮蔽部分を含むが、これらに限定されない。
【0049】
「十分な量」という用語は所望の結果を達成するのに必要な生物学的活性薬剤の量を意味する。その十分な量は、治療される症状(例えば、とりわけ、疼痛、有害生物防除、または微生物の増殖)、治療されている部位、選択された生物学的活性薬剤、選択されたポリマー複合体、および採用された送達媒体(例えば、とりわけ、移植されたデバイス、クリーム、またはペレット)を含む各種パラメータによって変化する。十分な量は、所与のどの症状の組合せにも、標準法を用いて決定できる。例えば、表面からの生物学的活性薬剤の放出は、上記パラメータの関数として監視できる。これらの結果に基づいて、所望の効果をもたらす速度で薬剤を放出する媒体を調製する。
【0050】
「ベースポリマー」という用語は、引張り強度が約350〜約10,000psi、破断伸度が約300%〜約1500%、支持なしの厚さ(unsupported thickness)が約5〜約100ミクロンおよび支持付きの厚さ(supported thickness)が約1〜約100ミクロンであるポリマーを意味する。
【0051】
「生物学的活性薬剤」という用語は、天然または人工の化合物であり、本発明のポリマーと複合し、次いで放出されて特定の部位に送達できる化合物を意味する。生物学的活性薬剤には、例えばペプチド、タンパク質、合成有機分子、天然の有機分子、核酸分子、およびその成分が含まれうる。望ましくは、生物学的活性薬剤は、疾病組織の部位に送達した場合に、植物または動物を治療するのに有用な化合物である。あるいは、生物学的活性薬剤を選択して、表面に非治療的機能を付与することができる。このような薬剤には、例えば殺虫剤、殺菌剤、殺真菌剤、芳香剤、および染料が含まれる。
【0052】
「複合された」または「複合」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明のポリマーの複合部分と生物学的活性薬剤との間の非共有結合性相互作用または金属中心への配位結合による相互作用を意味する。本発明に従って用いることのできる非共有結合相互作用の例には、水素結合、イオン相互作用(例えば双極子-双極子相互作用、イオン対、および塩生成)、包接複合体、包接化、ファンデルワールス相互作用(例えばπ-πスタッキング)、およびその組合せが含まれるが、これらに限定されない。この相互作用は、複合部分と生物学的活性薬剤の両者による金属中心への配位結合によるものでもよい。場合によっては、生物学的活性薬剤は、複合部分に配位結合している金属中心を含む。
【0053】
「複合部分」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤に、非共有結合性相互作用または金属中心への配位結合によって複合し、ポリマー複合体を形成する本発明のポリマーの部分を意味する。この複合部分は、帯電部分、例えば生理的pHでプロトンを失い負に帯電するようになる部分(例えばカルボキシレートまたはホスホジエステル)、生理的pHでプロトンを得て正に帯電するようになる部分(例えばアンモニウム、グアニジウム、またはアミジニウム)、プロトン付加なしで有効形式正電荷(net formal positive charge)を含む部分(例えば第四級アンモニウム)、またはプロトンを失うことなく有効形式負電荷を含む部分(例えばボレート、BR4-)であってもよい。例示的な帯電複合部分には、カルボキシレート、ホスホジエステル、ホスホルアミデート、ボレート、ホスフェート、ホスホネート、ホスホネートエステル、スルホネート、サルフェート、チオレート、フェノレート、アンモニウム、アミジニウム、グアニジウム、第四級アンモニウム、およびイミダゾリウムの官能基が含まれるが、これらに限定されない。この複合部分は、シクロデキストリンなどの生物学的活性薬剤の全体または一部を物理的に被包するように設計できる。この複合部分は、生物学的活性薬剤中に存在する相補的オリゴヌクレオチドおよび/またはペプチド配列と結合するように設計できる。この複合部分は、生物学的活性薬剤を含む金属中心に、単独でまたは金属中心を含んで、配位子として配位結合するように設計できる。
【0054】
「共有結合的に連結した」という用語は、本明細書において使用する場合、一つまたは複数の共有結合で隔てられた部分を意味する。例えば、遮蔽部分が複合部分に共有結合的に連結している場合、その連結には、単結合で隔てられた部分、および両部分が共有結合しているオリゴマーセグメントで隔てられた両部分が含まれる。
【0055】
「ポリマー複合体」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤と複合したポリマーを意味する。ポリマー複合体は、ベースポリマーの特性を有しかつ成形製品を形成するのにそれ自体有用なオリゴマーセグメントを含んでもよい。あるいは、ポリマー複合体は、20 kDa未満の比較的分子量の小さい化合物でもよく、これはベースポリマー系に対する有用な添加剤になる。低分子量のポリマー複合体は、ポリマー複合体とベースポリマーの混合物中の高分子ポリマー鎖の間をより容易に拡散できる。
【0056】
「プロドラッグ」という用語は、例えば酵素および/または加水分解の機序によって、インビボで生物学的活性薬剤に変換される、生物学的活性薬剤の前駆物質を意味する。プロドラッグには、エステル化された生物学的活性薬剤が含まれるが、これに限定されない。
【0057】
「遮蔽部分」という用語は、本明細書において使用する場合、本発明のポリマーの親油性テール部分を意味する。遮蔽部分は、本発明のポリマーに単一点で共有結合し、例えば、ポリマーの末端をキャップするかまたはポリマーの中央部分の分枝の先端に結合している。さらに、遮蔽部分は、ベースポリマーとは不相溶のものを選択して、すなわち、べースポリマーと混合して製品を形成すると、ポリマー複合体を本発明の製品の表面に移行させることができる。遮蔽部分を選択して生物学的活性薬剤の放出プロファイルを変化させることができる。また、遮蔽部分は、生物学的活性薬剤がインビボでおよび/または本発明の製品を製造中に劣化することを減らすことができる。遮蔽部分には、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、フッ化アリール、およびその組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
「放出プロファイルを変える」という用語は、本明細書において使用する場合、生物学的活性薬剤が本発明の製品から放出されるときのt50が、本発明のポリマーを含有していない同じ製品と比較して、10%、20%、30%、40%、または50%も変化することを意味する。
【0059】
「t50」という用語は、本明細書において使用する場合、放出可能な生物学的活性薬剤の50%が本発明の製品から放出される時間である。時間t10は、対応して、放出可能な生物学的活性薬剤の10%が放出される時間である。放出曲線が完全に直線である場合、t10はt50の1/5である。放出される薬剤の初期バースト(initial burst)がある場合、t10はt50の1/5よりはるかに小さい。本発明の方法と製品の場合、t10はt50の1/10より大きくなりうる。このように、生物学的活性薬剤の放出の初期バーストをほとんどまたは全くなくすことができる。放出可能な生物学的活性薬剤の量は、組み込まれた薬剤の10%がpH 7.4のリン酸緩衝食塩水中に放出されるのにかかる時間の10倍の時間で、製品から放出される量である。
【0060】
下記の頭字語は、本明細書に記載されているポリマー複合体を調製するのに使用する化合物を列挙して示す。
LDI:リシンジイソシアネート
HDI:1,6ヘキサメチレンジイソシアネート
DABS:2,5ジアミノベンゼンスルホン酸
PCN:ポリカーボネートジオール
PPO:ポリプロピレンオキシドジオール
MDI:メチレンジフェニルジイソシアネート
PTMO:ポリエチレンテトラメチレンオキシド
PCN:ポリカーボネートジオール
PDMS:(ポリジメチルシロキサン-ビス(3-アミノプロピル)末端)
PHE:(アミン末端オリゴフェニルアラニン)
PEB:(ポリエチレン-ブチレンコポリマージオール)
THDI:トリメチル-1,6ジイソシアナトヘキサン
DPS:ジヒドロキシジフェニルスルホン
PD:1,5ペンタンジオール
HDI/PCN/BD:セグメントポリウレタン
DMAc:ジメチルアセトアミド
DMF:ジメチルホルムアミド
フルオロアルキル:(OH、NH2、COOH、NCO)などの末端官能基を有するフルオロ化合物
TMPP:5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩
【0061】
本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を化学的に修飾することなく、その生物学的活性薬剤を本発明のポリマーと複合させることができる。さらに、その生物学的活性薬剤は非共有結合的に本発明のポリマーと複合しているので、生物学的活性薬剤は水性条件下で容易に放出される。
【0062】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0063】
詳細な説明
本発明の方法および組成物は、ベースポリマーの所望のバルク特性を維持しながら、制御された様式で表面を修飾することができる。表面の修飾は、界面エネルギーを最小にすることによって行われ、そして本発明の方法および組成物を用いて、特定の用途向けの特別な材料を作ることができる。例えば、表面の修飾は、表面の化学組成、疎水性、生体適合性、および/または接着特性を変えるように設計できる。さらに、表面の原子または分子を拡散および/または変換させるため、「化学」変化を含むバルク表面の再配列(緩和、分離、および再構築)を、本明細書に記載の表面修飾法を利用して制御できる。
【0064】
本発明は、生物学的活性薬剤の送達のためのポリマー複合体を特徴とする。このポリマー複合体は、多種類の生物学的活性薬剤を送達するように設計できる。本発明の方法および組成物は、送達される薬剤の構造を変える必要はない。さらに、表面における薬剤の放出は、インビボでの生分解プロセスに必ずしも依存していない。したがって、本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を非生物の部位に送達するのに使用できる。
【0065】
ポリマーおよびポリマー複合体
本発明のポリマーは、複合部分に共有結合的に連結した遮蔽部分を含む。この複合部分は、非共有結合性相互作用によってまたは金属中心への配位結合によって、生物学的活性薬剤と複合体を形成できる。生物学的活性薬剤と本発明のポリマーとの複合体を形成するために、水素結合、イオン相互作用、包接複合体、包接化、ファンデルワールス相互作用、およびそれらの組合せを含む各種の非共有結合性相互作用を利用できる。遮蔽部分は、生物学的活性薬剤を、分解(例えば酵素および/または環境による分解)しないように遮蔽することができ、かつ/またはポリマー複合体を表面に運び、表面の特性を変化させて生物学的活性薬剤を放出できる親油性テールである。遮蔽部分の化学組成と分子量および生物学的活性薬剤の構造は、一般に遮蔽作用を支配する制御因子である。
【0066】
ポリマー複合体は、ベースポリマー中に生物学的活性薬剤の均一な形態(topography)と成層(stratification)とをもたらし(例えば、ポリマー複合体自体、またはポリマー複合体とベースポリマーの混合物)、最終的に、標的部位への送達を制御することができる。さらにこの設計によって、均一に分布されている個々の所定の複合体中の生物学的活性化合物の界面コンパートメントが提供されるかまたは生物学的活性薬剤が固定される。
【0067】
ポリマー複合体に負荷される生物学的活性薬剤の量は、所望の放出プロファイルと組み合わせたポリマーの設計によって決まる。ポリマーの組成は、特定の薬剤が送達されて特定の用途に必要な機械的特性を提供するように設計できる。
【0068】
ポリマー複合体が形成される工程は、均一なマトリックスを生成する二段階または多段階の工程であってもよい。一般に本発明のポリマーとポリマー複合体は、実施例に記載されているようにして調製することができる。
【0069】
生物学的活性薬剤
本発明のポリマー複合体に組み込むことができる生物学的活性薬剤としては、治療用、診断用、および予防用の薬剤が挙げられる。その薬剤は、天然の化合物、合成の有機化合物、または無機の化合物でありうる。本発明のポリマー複合体に組み込むことができる薬剤には、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬、抗ウイルス剤、ターブログレル(terbrogrel)およびラマトロバン(ramatroban)などの抗血栓剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、脂質、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
例示的な治療薬には、成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン、カルシトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、毛様体神経栄養因子および副甲状腺ホルモンが含まれる。他の特異的な治療剤には、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、ソマトスタチン、テストステロン、プロゲステロン、エストラジオール、ニコチン、フェンタニール、ノルエチステロン、クロニジン、スコポラミン(scopolomine)、サリチレート、サルメテロール(salmeterol)、ホルメテロール(formeterol)、アルベテロール(albeterol)、バリウム(valium)、ヘパリン、デルマタン、クロム鉄A、エリスロポエチン、ジエチルスチルベストロール、リュープロン(lupron)、エストロゲンエストラジオール、アンドロゲンハロテスチン(androgen halotestin)、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、ゾロデックス(zolodex)、タキソール、リシノプリル(lisinopril)/ゼストリル(zestril)、ストレプトキナーゼ、アミノ酪酸、止血用アミノカプロン酸、パルロデル(parlodel)、タクリン、ポタバ(potaba)、アジペックス(adipex)、メムボラル(memboral)、フェノバルビタール、インスリン、γグロブリン、アザチオプリン、パペイン(papein)、アセトアミノフェン、イブプロフェン、アセチルサリチル酸、エピネフリン、フルクロロニド、オキシコドンパーコセット(oxycodone percoset)、ダルガン(dalgan)、フレニリンブタビタール(phreniline butabital)、プロカイン、ノボカイン、モルヒネ、オキシコドン、アロキシプリン、ブロフェナク(brofenac)、ケトプロフェン、ケトロラク(ketorolac)、ヘミン、ビタミンB-12、葉酸、マグネシウム塩、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンA、ビタミンU、ビタミンL、ビタミンK、パントテン酸、アミノフェニル酪酸、ペニシリン、アシクロビル、オフラキサシン(oflaxacin)、アモキシシリン、トブラマイシン、レトロビル(retrovior)、エピビル(epivir)、ネビラピン(nevirapine)、ゲンタマイシン、ドラセフ(duracef)、アブレセット(ablecet)、ブトキシカイン(butoxycaine)、ベノキシネート、トロペンジル(tropenzile)、ジポニウム塩(diponium salts)、ブタベリン、アポアトロピン、フェクレミン(feclemine)、レイオピロール(leiopyrrole)、オクタミルアミン、オキシブチニン(oxybutynin)、アルブテロール、メタプロテレノール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド(budesonide acetonide)、イプラトロピウムブロミド、フルニソリド、クロモリンナトリウム、酒石酸エルゴタミン、およびTNF拮抗薬もしくはインターロイキン拮抗薬などのタンパク質もしくはペプチドの薬物が含まれる。例えば、生物学的活性薬剤は、NSAID、コルチコステロイド、またはCOX-2阻害剤、例えばロフェコキシブ(rofecoxib)、セレコキシブ(celecoxib)、バルデコキシブ(valdecoxib)、もしくはルミラコキシブ(lumiracoxib)などの抗炎症剤であり得る。
【0071】
例示的な診断薬には、陽電子放出断層撮影法(PET)、コンピュータ利用断層撮影法(CAT)、単一光子放出型コンピュータ断層撮影法、X線法、蛍光透視法、および磁気共鳴映像法(MRI)に使用されるような撮像剤が含まれる。MRIで造影剤として使用される適切な物質には、ガドリニウムのキレート、ならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅、およびクロムのキレートが挙げられる。CATおよびX線法用に有用な物質の例としては、ヨウ素を基にした物質が挙げられる。
【0072】
好ましい生物学的活性薬剤は、実質的に精製ぺプチドまたはタンパク質である。タンパク質は100個以上のアミノ酸残基からなり、ペプチドは100個未満のアミノ酸残基からなると一般に定義されている。特に断らない限り、タンパク質という用語は本明細書において使用する場合、タンパク質とペプチドの両者を意味する。タンパク質は、例えば、天然の供給源からの単離、遺伝子組換え法またはペプチド合成法によって作製することができる。その例としては、ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;DNA分解酵素、プロテアーゼ、尿酸オキシダーゼ、アルロニダーゼ(alronidase)、αガラクトシダーゼ、およびαグルコシダーゼなどの酵素;トラスツズマブなどの抗体が挙げられる。
【0073】
ラパマイシンマクロライド
ラパマイシン(シロリムス)は、ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス(Streptomyces hygroscopicus)が産生する免疫抑制性のラクタムマクロライドである。例えば、参照により組み入れられるMcAlpine, J.B., et al., J. Antibiotics 44:688 (1991);Schreiber, S.L., et al., J. Am. Chem. Soc. 113:7433 (1991);および米国特許第3,929,992号を参照のこと。本発明の方法および組成物に使用できる例示的なラパマイシンマクロライドには、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(RAD001としても公知である)、およびABT-578が含まれるが、これらに限定されない。CCI-779はラパマイシンのエステル(3-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-メチルプロピオン酸の42-エステル)であり、米国特許第5,362,718号に開示されている。エベロリムスはアルキル化ラパマイシン(40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン)であり、米国特許第5,665,772号に開示されている。
【0074】
抗増殖剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な抗増殖剤には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン、カペシタビン、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン、クラドリビン、ゲムシタビン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール、フィナステリド、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド、ロイプロリド、ゴセレリン、Gleevec(商標)(Norvartis)、レフルノミド(Pharmacia)、SU5416(Pharmacia)、SU6668(Pharmacia)、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)(Oncogene Science)、トラスツズマブ(Genentech)、Erbitux(商標)(ImClone)、PKI166(Novartis)、GW2016(GlaxoSmithKline)、EKB-509(Wyeth)、EKB-569(Wyeth)、MDX-H210(Medarex)、2C4(Genentech)、MDX-447(Medarex)、ABX-EGF(Abgenix)、CI-1033(Pfizer)、Avastin(商標)(Genentech)、IMC-1C11(ImClone)、ZD4190(AstraZeneca)、ZD6474(AstraZeneca)、CEP-701(Cephalon)、CEP-751(Cephalon)、MLN518(Millenium)、PKC412(Novartis)、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン、トログリタゾン、CRx-026DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質、およびミトタンが含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
コルチコステロイド
本発明の方法および組成物に使用できる例示的なコルチコステロイドには、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン(alclomerasone)、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、クロベタゾン、酪酸クロベタゾン、クロコルトロン(clocortolone)、クロプレドノール(cloprednol)、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコン(deflazacon)、デソニド、デスオキシメタゾン(desoximerasone)、デキサメタゾン、ジフロラゾン、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート(fluazacort)、フルクロロニド(flucloronide)、フルメタゾン、ピバリン酸フルメタゾン、フルニソリド、フルシノロンアセトニド(flucinolone acetonide)、フルオシノニド、フルオロシノロンアセトニド(fluorocinolone acetonide)、フルオコルチンブチル(fluocortin butyl)、フルオコルトロン、ヘキサン酸フルオロコルトロン(fluorocortolone hexanoate)、吉草酸ジフルコルトロン、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン(fluperolone acetate)、酢酸フルプレドニデン(fluprednidene acetate)、フルプレドニソロン、フルランドレノリド(flurandenolide)、ホルモコータル(formocortal)、ハルシノニド、ハロメタゾン(halometasone)、酢酸ハロプレドン(halopredone acetate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾン21-ナトリウム、テブト酸ヒドロコルチゾン、マジプレドン(mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン(methylprednicolone)、フロ酸モメタゾン(mometasone furoate)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、21-ジエドリアミノ酢酸プレドニゾロン(prednisolone 21-diedryaminoacetate)、リン酸プレドニゾロンナトリウム、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、21-m-スルホ安息香酸プレドニゾロンナトリウム、21-ステアログリコール酸プレドニゾロンナトリウム(prednisolone sodium 21-stearoglycolate)、テブト酸プレドニゾロン、21-トリメチル酢酸プレドニゾロン、プレドニゾン、プレドニバル(prednival)、プレドニリデン、21-ジエチルアミノ酢酸プレドニリデン、チキソコルトール(tixocortol)、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンベネトニド、およびトリアムシノロンヘキサセトニドが含まれるが、これらに限定されない。類似の抗炎症特性を有する構造が同類のコルチコステロイドもこの群に含まれることを意図する。
【0076】
NSAID
本発明の方法および組成物に使用できる非ステロイドの抗炎症薬(NSAID)の例示的なものには、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム、メロキシカム、オキサプロジン、スリンダク、およびトルメチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
鎮痛剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な鎮痛剤には、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、およびジヒドロアセトルフィンが含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
抗微生物剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な抗微生物剤には、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリン、チカルシリン、メズロシリン、ピペラシリン、アズロシリン(azlocillin)、テモシリン(temocillin)、セファロチン(cepalothin)、セファピリン、セフラジン、セファロリジン、セファゾリン、セファマンドール、セフロキシム、セファレキシン、セフプロジル(cefprozil)、セファクロール、ロラカルベフ(loracarbef)、セフォキシチン、セフマトゾール(cefmatozole)、セフォタキシム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフタジジム、セフィキシム(cefixime)、セフポドキシム(cefpodoxime)、セフチブテン(ceflibuten)、セフジニル(cefdinir)、セフピロム(cefpirome)、セフェピム(cefepime)、BAL5788、BAL9141、イミペネム(imipenem)、エルタペネム(ertapenem)、メロペネム(meropenem)、アストレオナム(astreonam)、クラブラネート、スルバクタム、タゾバクタム(tazobactam)、ストレプトマイシン、ネオマイシン、カナマイシン、パロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、スペクチノマイシン、シソマイシン、ジベカリン、イセパマイシン(isepamicin)、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、アジスロマイシン(azithromycin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、テリスロマイシン(telithromycin)、ABT-773、リンコマイシン、クリンダマイシン、バンコマイシン、オリタバンシン(oritavancin)、ダルババンシン(dalbavancin)、テイコプラニン(teicoplanin)、キヌプリスチン(quinupristin)およびダルフォプリスチン(dalfopristin)、スルファニルアミド、パラ-アミノ安息香酸、スルファジアジン、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール、スルファタリジン(sulfathalidine)、リネゾリド(linezolid)、ナリジクス酸、オキソリン酸、ノルフロキサシン、ペルフロキサシン(perfloxacin)、エノキサシン、オフロキサシン、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)、テマフロキサシン(temafloxacin)、ロメフロキサシン(lomefloxacin)、フレロキサシン(fleroxacin)、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、スパルフロキサシン(sparfloxacin)、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、クリナフロキサシン(clinafloxacin)、ガチフロキサシン(gatifloxacin)、モキシフロキサシン(moxifloxacin)、ゲミフロキサシン(gemifloxacin)、シタフロキサシン(sitafloxacin)、メトロニダゾール、ダプトマイシン(daptomycin)、ガレノキサシン(garenoxacin)、ラモプラニン(ramoplanin)、ファロペネム(faropenem)、ポリミキシン、チゲサイクリン(tigecycline)、AZD2563、およびトリメトプリムが含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
局所麻酔剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な局所麻酔剤には、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン、ブピバカイン、アルチカイン、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、およびロピバカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
鎮痙剤
本発明の方法および組成物に使用できる例示的な鎮痙剤には、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル、シストスパズ、デトロール(トルテロジン)、ジサイクロミン、ジトロパン、ドナタル、ドナザイム、ファスジル、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン、レブシネックス、リブラックス、マルコトラン、ノバルチン、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、およびピナベリウムが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
ベースポリマーとの混合物
ポリマー複合体がベースポリマーの特性を有していないときは、ベースポリマーとの混合物を調製して、例えば成形製品に必要な機械的特性を生じさせることが望ましい。ポリマー複合体は、ポリマーの外側界面のnm領域内に濃縮されて、ベースポリマーと熱力学的に相溶性になるように設計し相分離を防止することが望ましい。
【0082】
ベースポリマーの特性を有する多くの物質が当技術分野において公知である。本発明の混合物に有用なベースポリマーには、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレンブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、ならびに熱可塑性ポリジエンが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
成形製品
本発明の製品は、単独でまたはベースポリマーとの混合物として使用されるポリマー複合体から形成することができる。ポリマー複合体を単独でベースポリマーとして使用して成形製品を形成する一つの利点は、ポリマーを混合することがないので、エントロピーの低下が全くなく相分離を起こす可能性が全くないことである。
【0084】
本発明の組成物を用いてどのような成形品でも作製することができる。例えば、医用デバイスなど、体液との接触に適している製品は、本明細書に記載されている組成物を用いて作製することができる。接触期間は、例えば外科用器具の場合は短いが、インプラントなどの製品は長くなる。医用デバイスには、カテーテル、ガイドワイヤ、血管ステント、微粒子、電気リード線、プローブ、センサ、薬物デポー、経皮パッチ、血管パッチ、血液バッグ、および管が含まれるが、これらに限定されない。医用デバイスは、移植デバイス、経皮デバイス、または皮膚デバイスでありうる。移植デバイスには、患者に完全に移植されすなわち体内に完全に移植される製品が含まれる。経皮デバイスには、皮膚を通過して身体の外部から身体中に延びる製品が含まれる。皮膚デバイスは、皮膚の表面で使用される。移植デバイスには、ペースメーカーのような人工器官、ペーシングリード線のような電気リード線、細動除去器、人工心臓、心臓補助デバイス、乳房インプラントのような解剖学的再生人工器官、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、外科手術用パッチ、冠状動脈ステント、移植血管、血管の構造ステント、血管もしくは心臓血管のシャント、生体管路、外科用綿撒糸、縫合糸、弁輪形成リング、ステント、ステープル、有弁移植片、創傷治癒のために使う皮膚移植片、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、泌尿器ステント、顎顔面再建プレーティング、歯科インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤ、骨、皮膚、靭帯、腱、およびこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。経皮デバイスには、カテーテルもしくは各種タイプのカニューレ;胸部チューブなどのドレナージチューブ;鉗子、牽引子、針、および手袋などの外科用器具;ならびにカテーテルのカフが含まれるが、これらに限定されない。皮膚デバイスには、火傷ドレッシング、創傷ドレッシング、ならびにブリッジ支持体およびブレーシング要素のような歯科用ハードウェアが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
上記の移植可能な医用デバイスは、一般に、固体状態のベース金属またはベースポリマーのプラトホームから構築される。この元のプラットホーム内のポリマー複合体は、単独でまたは混合物としても、治療薬剤のデバイスからの放出を制御する。
【0086】
また、本発明の方法および組成物は、生物学的活性薬剤を、化粧品(例えばクリーム、ゲル、およびローション)の表面に、例えば、雑草または昆虫などの有害生物の増殖を抑制するためのペレットに、または、例えば抗菌剤を水に放出する水清浄化工程で使用する膜に送達するのにも使用できる。
【0087】
以下の実施例は、本明細書において特許請求されている方法および化合物がどのように実行され、作製され、および評価されるかを当業者に完全に開示し、かつ説明するために記載されており、単に本発明を例示することだけを目的とするものであり、本発明の発明者らが自らの発明とみなしているものの範囲を限定するものではない。
【0088】
一般的な実験のプロトコル
精製:本明細書の実験の章では多種類の精製法が使用されている。各方法の概要を以下に記載する。
【0089】
透析:膜によって溶液中の分子がその大きさに基づいて分離される、サイズ排除精製法である。低分子量の分子は、透析膜を通過して大容積の溶媒中に入る。このシリーズの実験プロトコルで使用した膜は、SpectraPor 6 Regenerated Cellulose(RC)であった。
【0090】
カラムクロマトグラフィ:カラムクロマトグラフィに使用される固定相は、一般にシリカゲルである。一般に、フッ化化合物はシリカと相互作用しない。この方法は、より小さい分子を迅速に濾過できる。
【0091】
固相抽出法(カチオン):予め充填したカチオンシリカゲルカラム(プラスチック)を使用して、小カチオン化合物を反応混合物から除いた。
【0092】
限外濾過法(Centricon and Pellicon):この技術は、半透膜を用いて、大分子を小化合物から分離する分離法に基づいている。OFの溶液を、接線流を使用し膜のほうに押圧して、大分子を小分子から分離した。
【0093】
フッ素化(fluorous)固相抽出法(F-SPE):過フッ素化リガンドで修飾されたSPE基質(F-SPE)を使用し前記OFを選択して保持して、非フッ素化化合物を分離させた。
【0094】
細胞毒性検定試験:実験の章で合成したポリマー化合物を細胞毒性について試験した。その試験法の概要を以下に要約する。
【0095】
直接接触細胞毒性検定試験:HeLa上皮細胞を試験物質と直接接触させたときの生存能力を利用して、オリゴフルオロ(OF)の起こり得る細胞毒性を評価した。試験物質の試料は,寒天で支持されたSuporフィルターの上に溶媒を用いて流延した。次いで、HeLa細胞の単層を、前記フィルター上に、MEM培養培地の存在下で直接培養した。24時間インキュベートした後、そのSuporフィルターをコハク酸脱水素酵素ですすぎ次いで染色した。生存細胞を、紫色のポジティブ染色で確認し、次いで前記流延物質の周りの細胞排除領域または低細胞密度について、前記染色されたフィルターを検査することによって、細胞毒性を測定した。各細胞毒性検定試験には、図9A〜Cに示したように陽性と陰性の対照を含めたが、これらの図は生存HeLa細胞を示すため染色されたSuporフィルターの例を示している。
【0096】
実施例1: FT([HDI-DABS][PTMO]):TMPP
1a: FT([HDI-DABS][PTMO])の合成
ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)(予め乾燥した10g)をジメチルアセトアミド(DMAc)(50mL)に溶解した。1,6-へキサンジイソシアネート(HDI)と2,5-ジアミノベンゼンスルホン酸(DABS)(9.2g)をDMAc(50mL)に溶解して新しく調製した溶液を、前記PTMOの溶液と、窒素雰囲気下、2時間反応させた。その反応混合液に、DMAc(30mL)に溶解したフルオロアルコール(11.7g)を添加した。ジブチルスズジラウレートを触媒として使用した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に保持し、温度を、2.5時間、60〜70℃に維持した。沈殿法によって精製を行った。最終生成物を減圧オーブン中で24時間乾燥した。XPS分析領域は、大きさが700×300ミクロンで、原子含有量がC(50.9%)、N(7.0%)、O(19.7%)、S(1.2%)であり、フッ素の全含有量は、21.2重量%であった。IR分析結果は、以下の化学構造、すなわち3349.68(cm-1)ν(N-H) H結合、2927.20(cm-1)ν(C-H) CH2非対称伸縮、2855.41(cm-1)ν(C-H) CH2対称伸縮、1740(cm-1)ν(C=C) ウレタン非結合、1700(cm-1)ν(C-O) ウレタンH結合、1452.19(cm-1)ν(C=C) 芳香族リング、1493.40(cm-1)ν(C-C) 芳香族リング、1208.10(cm-1)ν(S=O)、1400〜1000ν(C-F)(モノフルオロアルカンはこの範囲の右で吸収し、一方ポリフルオロアルカンは1350〜1100(cm-1)の範囲にわたって複数の強いバンドを提供する)と一致した。NMR分析を利用してコンジュゲーションの前後の芳香族領域を比較した。元素分析結果C120H186O31N12S2F34は、予想の構造[%C 48.00%(52.63%(+4.63%))%H 7.88%(6.24%(+1.64%))、%N 6.95%(5.6%(+1.35%))、%F 6.48%(21.51%(-15.03%))、%S 2.14%(2.58%(-0.44%))]と一致した。
【0097】
1b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − 5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩(TMPP)
表面修飾剤(1a)(0.262g)をジメチルスルホキシド(DMSO)(5mL)に溶解して得た溶液に、5,10,15,20-テトラキス(メチル-4-ピリジル)21H,23Hポルフィン-テトラ-p-トシレート塩(TMPP)(0.0198g, 1mL DMSO)を添加した。その反応混合物を密封して24時間窒素雰囲気下に置いた。ジメチルスルホキシドを減圧(50℃、10-1mmHg)下で除いて、所望の複合体を生成させた。過剰のTMPPは、リン酸緩衝液(pH=7、3×20mL)を用いて洗浄した。最終生成物を減圧乾燥した。複合体の生成および放出のプロファイルを具体的に詳解するため、異なる媒体を用いて解離の動力学を監視する総合紫外線分析(λ=443nm)を実施した。反応が混合溶媒系(H2O(50):DMAc(50))内で完了したときその放出プロファイルは、ダンピング方式(一度に放出)を示したということは重要である(t=5分, A=0.3184;t=70分, A=3.014;t=146分, A=3.9677;t=203分, A=3.9587;t=364分, A=4.0284)(図1b)。したがって、複合体が生成するには、適切な溶媒系が不可欠の要件である。HCl(1M)(t=5分, A=0.1124), (t=67分, A=0.3549), (t=72分, A=0.3132), (t=132分, A=0.3342), (t=187分, A=0.3903), (t=252分, A=0.4740)(図1c)。NaOH(1M)(t=5分, A=-0.0686), (t=53分, A=0.0048), (t=113分, A=0.0293), (t=185分, A=0.0370), (t=241分, A=0.0837), (t=306分, A=0.2096)(図1d)。緩衝液(pH=7.4)(t=5分, A=-0.0067), (t=41分, A=-0.0067), (t=93分, A=-0.0087), (t=186分, A=0.0084), (t=1626分, A=0.1537)(図1e)。
【0098】
実施例1からのデータによって、イオン結合を生成することによって、TMPPと相互作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤を、送達プラットホームから解離できることを示した。
【0099】
実施例2: FT([LYS][PTMO]):セラミド
2a: ポリマーFT([LYS][PTMO])の合成
ポリテトラメチレンオキシド(10g, 0.0097mol予め乾燥)をDMAc(50mL)に溶解した。このポリテトラメチレンオキシド溶液に、DMAc(25mL)にリシンジイソシアネート(4.11g, 0.0194mol、新たに蒸留)を溶解して得た溶液を滴下して添加した。このプレポリマー反応混合物を、密封して、窒素雰囲気下、60〜70℃で2時間保持した。末端キャッピング剤のフルオロオリゴマー(11.74g, 0.0194mol)をDMAc(25mL)に溶解し、その溶液を前記プレポリマー反応混合物に滴下して添加した。その反応溶液をN2雰囲気下で密封して、一夜、室温で撹拌した。ジブチルスズジラウレートを触媒として使用した。触媒を回収しかつ残留フルオロオリゴマーを除くため、生成物を水とエーテルの混合物中で沈殿させた。最終生成物を減圧乾燥した。NMR分析とIR分析の結果、メチルエステル基の存在が確認された。そのエステル官能基を多くの反応に利用した。特定の化学反応に対して、カルボン酸基のような特異的官能基が必要であった。そのエステル基がカルボン酸基に変換する加水分解反応は、(1.0M)塩酸溶液を用いて完了させた。最終生成物を、(1.0M)KCl水溶液中で沈殿させ、洗浄し次いで減圧下60℃で乾燥した。エステル基の酸官能基への変換を、さらにNMR分析法で確認した。プロトンNMRはメトキシ基の消失を示した。XPS分析領域は、大きさが700×300ミクロンで、原子含有量がC(38.6%)、N(3.2%)、O(10.2%)であり、全フッ素含有量が47.6重量%であった。IR分析結果は以下の化学構造、すなわち3327.29(cm-1)ν(N-H) H結合、2945.10(cm-1)ν(C-H) CH2非対称伸縮、2865.69(cm-1)ν(C-H) CH2対称伸縮、1717.91(cm-1)ν(C=O) ウレタンアミド、1533.54(cm-1)ν(C-N) 伸縮モード、1445.56(cm-1)ν(C-N) 伸縮モード、1349.31(cm-1)ν(C-O) 伸縮、1400〜1000ν(C-F)(モノフルオロアルカンはその範囲の右側で吸収し、一方ポリフルオロアルカンは、1350〜1100(cm-1)の範囲にわたって複数の強いバンドを提供する)と一致した。元素分析結果C92H148O25N4F30は予想構造と一致した。
【0100】
2b: 複合体の生成、単離および解離のプロファイル − C6-セラミド
2a(0.1g(酸))を、窒素雰囲気下、室温でジクロロメタン(3mL)に溶解した。スフィンゴシン誘導体(セラミド(C2:0)、(C4:0)、(C6:0)、(C8:0)、(C10:0)、(C12:0)、(C14:0)、(C16:0)、(C17:0)、(C18:0)、(C18:1)、(C20:0)、(C24:0)、(C24:1))由来のモデル化合物(0.1g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記オリゴフルオロ(2a)溶液に、15分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下で2時間放置した。過剰の溶媒を、加圧して除き最終生成物を生成させた。そのスフィンゴシン化合物(セラミドのファミリー)の放出/解離をHPLC(0.5mg/mL、6回注入、保持時間14.062分)を利用して確認した(図2l)。この反応工程をさらに偏光顕微鏡法と走査型電子顕微鏡法によって分析した。その偏光顕微鏡法の結果は、2化合物を単に混合し室温で放置して溶媒を蒸発させたとき、不均一なマトリックスが生成したことを示した(図2a、2b、2c、および2d)。これをさらに、走査型電子顕微鏡法で確認した(図2e、2f、2g、および2h)。さらに、試料の均一性をステンレス鋼製の研磨されていない金属プラットホームを用いて検査した。これらのプラットホームを、前記生成物の薄層でコートし、次いで、走査型電子顕微鏡法を利用して検査した(図2iおよび2j)。これらの試験結果は、均一なコーティングを示した。さらに、その反応工程を分析して、反応中および最終生成物を単離中、活性化合物の全構造が変化しないことを確認した。示差走査型電子顕微鏡法(図2k)とNMR分析法によって、活性化合物の初期構造が無傷のままであることが確認された。この組成物を用いて、血管内デバイスに関連するプロトタイプのデバイスをコートした。走査型電子顕微鏡法(SEM)を利用して観察したところ、相分離は全く見られなかった(図2n、2m、2o、および2p)。
【0101】
実施例2からのデータによって、水素結合によってC6-セラミドと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤が、送達プラットホームから解離できることを示した。さらに、最終生成物の均一性が、製品のプロトタイプとしてスプリングをコートすることによって立証された。
【0102】
実施例3: FT[LYS(Cyd)][PTMO]):メチルバイオレット2B
3a: ポリマー[FT[LYS(Cyd)][PTMO])]の合成
シクロデキストリン(CyD)は、6、7または8個の糖単位で構築された環式で水溶性の非還元性化合物である。これらの化合物は、疎水性キャビティを有し多種類の分子種と相互に作用できる。ゲスト化合物の適性を決定する際、化学的因子より幾何学的因子のほうが決定的に重要である。リシンを基にしたオリゴフルオロ(OF)薬物送達マトリックスの骨格(2a)を、シクロデキストリン、クラウンエーテルおよび/またはカリキセレン(calixerene)と相互に作用するプラットホームとして使用した。
【0103】
6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンHCl塩(0.174g)をMilliQ水(0.5mL)に溶解した。脱塩するために、1.0N NaOH(50μl)を添加して上記HClを中和し、6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリン(CyD)を遊離塩基として沈殿させた。そのCyDを、1000 rpmで10分間遠心分離し次いで上澄み液を除去した。その遊離塩基6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンを精製し次いで減圧乾燥した。オリゴフルオロ(OF)(2a-(酸))(0.105g)を無水DMF(2mL)に溶解して0℃まで冷却した。DIC(21μL)を2時間および反応混合物を2時間撹拌した。CyD(56mg)をDMF(2mL)に溶解して、TEA(6μl)で活性化されたOFに滴下して添加した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に7日間保持した。生成物のCyD-OF(0.128mg)を、水(5mL)中に沈殿させることによって、DMF溶媒から回収した。最終生成物を精製し次いで50℃のオーブンで2日間乾燥した。
【0104】
3b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − メチルバイオレット
CyD-OF(3a)(2.7g)をDMSO(75μL)に溶解した。メチルバイオレット(MV,2.8mg)をDMSO(28mL)に溶解して濃度0.1mg/mLの溶液を調製した。このメチルバイオレット溶液1mLをさらにDMSO(10mL)で希釈して濃度0.01mg/mLの溶液を調製した。前記CyD-OF溶液(75μL)を、4mLガラス製バイアルびん中のMV溶液(500μL)に、10分間かけて滴下して加えた。この溶液を密封して暗所に12時間放置した。濃度0.01mg/mLのメチルバイオレット溶液のUV/Vis測定値(A(591nm)=0.96)を対照値とした。CyD-OFのUV/Visスペクトルを測定したが(A(591nm)=0.63)、分子レセプターを添加すると、ゲスト分子の強度が明らかに変化することを示した。複合が起こるとその吸光度が低下して、複合体の生成が確認された。対照溶液も調製した。この対照溶液は、UV/Vis試験分析に利用したのと同じモル比のOF、CyDおよびメチルバイオレットの混合物を含有する溶液であった。濃度0.01mg/mLのメチルバイオレット溶液のUV/Vis測定値は、OF、CyD、およびメチルバイオレットのUV/Visスペクトルと同一であった(すなわち吸光度の低下は全く認められなかった)。
【0105】
実施例3のデータから、複合のエンド/エキソモード(Endo/Exo mode)に適した送達系の設計が明確になった。UV吸収の低下はCydの複合を示した。
【0106】
実施例4: FT([LYS(COO-Na+)][PTMO]):シスプラチン
4a: ポリマーFT([LYS(COO-Na+)][PTMO])の合成
4a-1: 0.5gの(2a-エステル)の2.5過剰に当量の炭酸ナトリウム10%溶液を調製した。OF(2a)のメタノール溶液を、室温で、上記炭酸ナトリウム溶液にゆっくり添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下に密封し、室温で72時間撹拌した。最終生成物を精製して減圧乾燥した。NMR分析値は修飾された構造と一致した。
【0107】
4a-2: エステル官能基を有するOF(2a)(2.024g)の溶液をメタノール(20mL)に溶解した。NaOH溶液(1.0N, 2.3mL)を、上記OF(2a)に滴下して添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下6時間撹拌した。過剰の溶媒を減圧で除き、次いで最終生成物を精製して50℃で乾燥した。NMR分析値は、修飾された構造(1H NMRスペクトル(CDCl3):δH(300MHz)(-OCH3(3.74)消失)と一致した。
【0108】
4b: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − シス-ジクロロジアンミン白金(II)
4b-1: 0.3gの(2a)をDMF(8mL)に溶解した。シス-ジクロロジアンミン白金(II)(0.078g)をDMF(8mL)に溶解した。このシスプラチンが完全に溶解した後、撹拌を続けながら、オリゴフルオロ(OF)(4a)を滴下して添加した。その反応混合物を、薄層クロマトグラフィで絶えず監視しながら、周囲温度で4〜8時間反応させた。過剰のシスプラチンを、適切な濾過膜を用いて遠心分離して除いた。キレート化された生成物を凍結乾燥し次いで-20℃で貯蔵した。放出のプロファイルを、UV分析法によって監視した(図4b)。
【0109】
4b-2: 0.3gの(4a-2)を水(5mL)に溶解した。シス-ジクロロジアンミン白金(II)(0.078g)を水(20mL)に溶解した。このシスプラチンが完全に溶解した後、撹拌を続けながら、オリゴフルオロ(OF)(4a)を滴下して添加した。その反応混合物を、薄層クロマトグラフィで絶えず監視しながら、周囲温度で4〜8時間反応させた。過剰のシスプラチンを、適切な濾過膜を用いて遠心分離して除いた。キレート化された生成物を凍結乾燥し次いで-20℃で貯蔵した。元素分析結果は、全白金含有量が11.1%であることを示した。放出のプロファイルを、UV分析結果を用いて記録した(図4b)。
【0110】
実施例4のデータによって、キレート化を通じてシスプラチンと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出プロファイルは、薬剤が送達プラットホームから解離できることを示した。全白金含有量は適切な薬剤の負荷を示した。
【0111】
実施例5: FT([LYS(PEG)][PTMO]):メトトレキセート(MTX)
5a: ポリマーFT([LYS(エタノールアミン)][PTMO])の合成
リシンを基にしたOF(2a)を、エタノールアミンを共有結合するためのプラットホームとして使用した。この化学的修飾は、アミドを生成させることによって達成した。OF(2a)(1.042g)を無水MeOH(35mL)に溶解した。その溶液に炭酸カリウム(245mg)を添加し次いで激しく撹拌して透明溶液を得た。その反応混合物にエタノールアミン(108mg)を窒素雰囲気下で添加した。この反応混合物を7日間、緩やかに還流した。最終生成物を精製し次いで50℃のオーブンで2日間乾燥した。NMRの試験結果は、提案した構造と一致した。
【0112】
5b: ポリマーFT([LYS(PEG)][PTMO])の合成
OF(5a)(0.105g)をDMF(2mL)に溶解した。この溶液にTEA(19mL)を添加した(溶液A)。FMOc-PEG-NHS(460mg)をDMF(5mL)に溶解して得た溶液を二口反応フラスコに移した(溶液B)。溶液Aを溶液Bに、窒素雰囲気下、滴下して添加した。その反応混合物を密封して窒素雰囲気下に12時間放置した。そのFMOcで保護された生成物を精製し次いで40℃のオーブンで乾燥した。脱保護工程を行うために、20%ピペリジン溶液を使用した。最終生成物を精製し次いで40℃のオーブンで乾燥した。NMRの試験結果は、提案した構造と一致した。
【0113】
5c: 複合体の生成、単離および解離のプロファイル − メトトレキセート
PEG-OF(5b)(0.003g)をDMSO(2mL)に溶解した。この溶液を、新しく調製したメトトレキセート(0.3mg)をDMSO(1mL)に溶解して得た溶液に滴下して加えた(30分間)。この反応混合物を、窒素雰囲気下、24時間撹拌した。最終生成物を単離し、精製し次いで減圧乾燥した。MTXの解離プロファイルを詳解するため紫外線分析を、(l=371nm), (t=30分, A=0.859); (t=60分, A=0.900), (t=120分, A=0.942)で実施した。
【0114】
5d: 塩生成の一実施例としての複合体の生成、単離および解離のプロファイル − FT([LYS][PTMO]):クロルヘキシジン
OF(2a)を、クロルヘキシジン(CHX)送達のためのプラットホームとして使用した(5d-c)。OF(2a)(0.3g)をDMAc(3mL)に溶解した。このOF溶液に、CHX(263mg)をDMAc(3mL)に溶解して得た溶液を、2時間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封し窒素雰囲気下24時間放置した。最終生成物を単離し精製し次いで24時間減圧乾燥した。
【0115】
フィルムの調製: 単離された生成物(OF:CHX)を、Carbothane 85Aを固体(52mg)としてDMFに溶解して得た10%溶液と混合する(50-130)(5d-e)かまたは同じ濃度でプレソルベートした(50-140)(5d-f)。これらの溶液(6mL)を各々、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムにした。
【0116】
これら溶液を用いて、一連の対照フィルムを、前記実験の詳細に従って同様に調製した。すなわち10% Carbothane 85A(50-100)(5d-a);CHX(26mg)を85 Aの溶液(6mL)に添加した(50-110)(5d-b);OF(2a)(33mg)を85 Aの溶液(6mL)に添加した(50-120)(5d-c)。
【0117】
XPSの試験結果は、フッ素の百分率によって、最初の10nmに表面活性を示した。CHXの存在は、塩素の百分率に基づいて確認した(図5d-g)。全フィルムのSEM画像は、図5d-a、5d-b、5d-c、5d-e、および5d-fに示してある。Carbothane中のCHXは、表面における薬剤の結晶化と均一なプラットホームの欠如を示した(5d-b)。(Carbothane 85A(OF:CHX))のSEM画像は、相分離なしの均一なプラットホームを示した。
【0118】
放出のプロファイル: フィルム片(4cm×0.5cm)を切り出しさらに0.5cm×0.5cmのセグメントに分割して、全濃度を、全試料について同じにした。これら試料を、水(1.5mL)が入っているガラス製バイアルびん中に入れた。UV/Vis吸光度を、各種時点(1、2、3、4、96時間)で測定した(5d-h)。このデータは、薬物送達プラットホームの放出させる性能のみならずCHXの放出の違いを示した。
【0119】
実施例5のデータによって、酸塩の生成でCHXと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。この放出プロファイルは、薬剤が送達プラットホームから解離できることを示した。最終生成物の均一性は、さらにSEMによって立証された。
【0120】
実施例6: FT([LDI][PTMO]):イブプロフェン
6a: ポリマーFT([LDI](PFB)[PTMO])の合成
リシンを基にしたOF(2a)を、フッ素化フェニル基の共有結合するプラットホームとして使用した。OF(2a)(0.496g)を、無水DMF(5mL)の入っている二口フラスコ(100mL)中に添加した。DIC(100μL)を添加し、次いでその反応混合物を密封して窒素雰囲気下20分間撹拌した(溶液A)。
【0121】
ペルフルオロベンジルアルコール(PFBA)(128mg)をDMF(5mL)に溶解した。完全に溶解した後、TEA(90μL)を添加した(溶液B)。溶液Bを溶液Aに滴下して加えた。この反応混合物を密封して、窒素雰囲気下、12時間撹拌した。PFBA-OFを溶媒から回収し次いで乾燥した。この生成物をさらに、1-オクタノール(3×3mL)で洗浄して過剰のPFBAを抽出した。最終生成物を精製し次に24時間減圧乾燥した。
【0122】
6b: ポリマーFT(PFB)([LDI][PTMO])の合成
PTMO(5.002g)を乾燥した二口フラスコ内に秤取し次いで脱ガスを2時間行った。PFBA(2.002g)を、別の二口フラスコ内に秤取し次いで脱ガスを2時間行った。すべてを窒素の連続流下において無水DMAc(15mL)を各フラスコに添加した。LDI(1.964g)を無水DMAc(15mL)に溶解し次いで触媒のジブチルスズジラウレート333mgと混合した。この溶液を前記PTMO溶液に、シリンジを用いて滴下して加えた。この反応を窒素雰囲気下70℃に2時間維持した(溶液A)。2時間後、PFBA溶液を溶液Aに滴下して添加して、その反応混合物を、室温に24時間維持した。この重合反応から水を除くことが不可欠である。生成物を回収し、沈殿させ、次に精製して未反応の出発物質を除いた。最終生成物を50℃のオーブンで2日間乾燥した。
【0123】
6c: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT([LDI](PFB)[PTMO])(6a):イブプロフェン
OF(6a)(0.050g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(1mL)に溶解した。イブプロフェン(0.009g)をクロロホルム(0.5mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(6a)に、30分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0124】
6d: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT(PFB)([LDI][PTMO]):イブプロフェン
OF(6b)(0.5g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(5mL)に溶解した。イブプロフェン(0.109g)をクロロホルム(1.5mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(6b)に、60分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0125】
6e: 複合体の生成、単離、および放出のプロファイル − イブプロフェン
FT([LDI][PTMO]):イブプロフェン
OF(2a)(0.3g)を、窒素雰囲気下、室温で、クロロホルム(5mL)に溶解した。イブプロフェン(0.053g)をクロロホルム(1.0mL)に溶解した。完全に溶解したとき、この混合物を、前記OF溶液(2a)に45分間かけて滴下して添加した。その反応混合物を密封してN2雰囲気下に4時間放置した。過剰の溶媒を除き、次いで最終生成物を単離し、精製し次いで乾燥した。その放出プロファイルを、UV分析法を利用して監視した(図6h)。
【0126】
フィルムの調製: 単離された生成物(6c、6d、6e)(各々10mg)をDMF(0.5mL)に溶解し、その溶液(各375mL)を、Chronothane 80Aの10% DMF溶液(1.5mL)と混合した。Chronothane+OFの各溶液(各々179mL)を、6mmプロピレン製平底ウエル中にピペットで採取して流延してフィルムにした。
【0127】
一連の対照のフィルムを流延して、6aおよび6bの表面活性を試験した。6aおよび6b(各々10mg)をDMF(0.5mL)に溶解し次にこれらの溶液25μLをポリカーボネートポリウレタン(PCNU)と混合した。その溶液(各々150mL)を、6mmプロピレン製平底ウエル中にピペットで採取して流延してフィルムにした。このPCNUフィルムのXPS分析結果は、最初の10nmの表面活性を、フッ素の百分率で示した(図6h)。
【0128】
実施例6のデータによって、p-pスタッキングで、イブプロフェンと相互に作用するのに適した送達系の設計が明確になった。その放出のプロファイルは、薬剤がその送達プラットホームから解離できることを示した。XPSのデータは、表面の頂部10nmの部分にフッ素が存在していることを示した(表1参照)。
【表1】
【0129】
実施例7: FT([LYS(Tris)][PTMO]
ポリマーFT([LYS(Tris)][PTMO]の合成
OF 2a(0.997g)を、オーブンで乾燥した二口フラスコ(100mL)に入れ次いで脱ガスを2時間行った。無水メタノール(33mL)を添加し次にその反応混合物を、すべてが溶解するまで撹拌した。トリ-ヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)(205.8mg)と無水炭酸カリウム(234.8mg)の混合物を添加した。この反応混合物を、45℃で7日間還流した。最終生成物を精製し次いで30℃で48時間、減圧乾燥した。
【0130】
この実施例によって、多価プラットホームの設計が明らかになった。
【0131】
実施例8: ポリカプロラクトン(PCL)[OF:サリチル酸]
生物学的活性薬剤が、結晶性を有するポリマー格子(例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ポリ(エチレンテレフタレート)、またはポリカプロラクトン内に含まれているとき、その放出プロファイルは、一般に、一回の解離または不完全な解離に基づいている。多くの場合、これは、結晶プラットホームの構造特性に基づいている。
【0132】
この実施例では、最初に、結晶マトリックス、ポリカプロラクトン(PCL)およびオリゴフルオロ(OF)の間の適合性を確認した。
【0133】
8a: OF(2a-酸)(0.208g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。サリチル酸(0.072g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。このサリチル酸溶液を、上記OF溶液に、45分間かけて滴下して加えた。その反応混合物を密封し、窒素雰囲気下、24時間放置した。最終生成物を精製し次に48時間、減圧乾燥した。
【0134】
8b: OF FT([MDI][PTMO])(0.208g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。サリチル酸(0.072g)をジクロロメタン(3mL)に溶解した。このサリチル酸溶液を、上記OF溶液に、45分間かけて滴下して加えた。その反応混合物を密封し、窒素雰囲気下、24時間放置した。最終生成物を精製し次に48時間、減圧乾燥した。
【0135】
フィルムの調製: ポリカプロラクトン(8a):8a(50mg)を、PCLをDCM(10mL)に溶解して得た10%溶液に添加した。この溶液(5mL)を、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムを得た。ポリカプロラクトン(8b):8b(50mg)をDMF(0.5mL)に溶解した。この溶液を、PCLの10%溶液に添加した。この溶液(5mL)を、4cm×4cmのPTFE製ウエルに移して流延してフィルムを得た。
【0136】
一連の対照のフィルムを、実験の詳細に従って、これらの溶液で同様に調製した。10% PCL;SA(0.009g)を10% PCL(10mL)に添加した。5% OF;OF(0.05g)を10% PCL(10mL)に添加した。
【0137】
放出のプロファイル: フィルム片(4×0.5cm)を切り出し、さらに(0.5×0.5cm)のセグメントに分割し全試料の全濃度を同じに維持した。これらの試料を、PBS(1.5mL)の入ったガラス製バイアルびんに入れた。UV/Vis吸光度を、各種の時点(1、2、3、および4時間)で測定した(図8cおよび図8d)。
【0138】
実施例8からのデータによって、サリチル酸と相互に作用するのに適切でかつベースポリマーと適合して均一なマトリックスを生成する送達系の設計が明らかになった。その放出プロファイルは、送達プラットホームの存在下、薬剤をベースポリマーから放出できることを示した。
【0139】
他の態様
本明細書において引用した刊行物、特許および特許願はすべて、独立した各刊行物または特許願があたかも、具体的にかつ個々に表示されて参照により組み入れられるのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0140】
本発明はその特定の態様と関連させて記載されているが、本発明はさらに変形することができ、そして本出願は、一般に本発明の原理に従いかつ本発明の関連する当技術分野において公知または通常のプラクティスに含まれるような本明細書の開示からの逸脱を含む本発明の変更、使用、または適応を含むものであり、そして上記不可欠の特徴を出願し、特許請求の範囲に従うものであると解されたい。
【0141】
他の態様は特許請求の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1aは、FT([HDI-DABS][PTMO])と複合した5,10,15,20-テトラキス(4-N-メチルピリジル-ポルフィリン)-TMPPの構造を示す。図1b〜1eは、各種条件(例えば酸性、塩基性および中性の条件)におけるTMPPの放出プロファイルの分析結果を示すグラフである。
【図2】図2a〜2dは、各種混合物の偏光(PL)顕微鏡法によって得た画像である。図2aはポリマー2aのPL顕微鏡写真である。この図はこの化合物の特色のない特性を示している。図2bはセラミドのPL顕微鏡写真である。この図はこの化合物の結晶格子の生成を示している。図2cは対照の混合物のPL顕微鏡写真である。この図は混合物の層分離する性質を示している。またこの図はその混合物の均一性を示している。図2dは複合体のPL顕微鏡写真である。この図は最終生成物の均一性を示している。図2e〜2hは、各種混合物の走査型電子顕微鏡法(SEM)によって得た画像である。図2eはポリマー2aの走査型電子顕微鏡写真である。この図はこの化合物の特色のない特性を示している。図2fはセラミドの走査型電子顕微鏡写真である。図2gは対照の混合物の走査型電子顕微鏡写真である。この図は生成物の均一な特性を示している。また相分離が見られる。図2hは複合体の走査型電子顕微鏡写真である。この図は最終生成物の均一性を示している。図2iおよび2jは、C6-セラミド-FT([LYS][PTMO])複合体の薄層でコートしたステンレス鋼製の研磨されていない金属プラットホームの走査型電子顕微鏡法による画像である。結果は均一なコーティングが形成されることを示す。図2kは、C6-セラミド-FT([LYS][PTMO])複合体の示差走査熱量測定法によって得たグラフを示す。図2lは、活性化合物の初期構造が、複合および分解の後、変化しないままであることを示すHPLCのデータを示す。図2m〜2pは、相分離が複合体に全く見られないことを示す、コートされたプロトタイプのデバイスの走査型電子顕微鏡法による画像である。図2qは化合物2aのメチルエステルの理想的な構造を示す。
【図3】図3aは化合物3aの理想的な構造を示す。図3bは、原子の位置に標識をつけた6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリンの骨格を示す。
【図4】図4aは、シスプラチンの加水分解生成物と中間体を示す図式である。図4bは、FT([LYS(COO-Na+)][PTMO])と複合したシスプラチンの放出プロファイルを示すグラフである。
【図5】図5aはクロルヘキシジンの構造を示す。図5d(a)〜5d(f)は、Carboethaneから作製したフィルム(図5d(a)対照)、表面における薬剤の結晶化と均一なプラットホームの欠如をを示すCarboethane中のクロルヘキシジン(図5d(b))、Carboethane中のFT([LYS][PTMO])(図5d(c)対照)、および相分離なしの均一なプラットホームを示すCarboethane中のクロルヘキシジン-FT([LYS][PTMO])複合体(図5d(e)および5d(f))の走査型電子顕微鏡法で得た画像である。図5d(g)は、FT([LYS][PTMO])の移行特性を示す頂部10nmにおけるフッ素の百分率およびクロルヘキシジンの存在を示す頂部10nmにおける塩素の百分率を示すCarbothaneフィルムのXPSデータ(90°テイクオフ(take-off))の表である。図5d(h)は、水中に入れたフィルム片からのクロルヘキシジンの放出を示す表である。このデータは、CHXの放出プロファイルおよび薬物送達プラットホームの放出する性能(すなわち送達プラットホームからの解離)の差を示した。
【図6】図6aは、化合物6a(FT([LDI](PFB)[PTMO]))の理想的な構造である。図6bは、化合物6b(FT(PFB)([LDI][PTMO]))の理想的な構造である。図6hは、実施例6の6c((6a):イブプロフェンの複合体)、6d((6b):イブプロフェンの複合体)および6e((2a):イブプロフェンの複合体)に記載されているイブプロフェンの放出プロファイルを示すグラフである。これらのデータは、p-pスタッキングを通じてイブプロフェンと相互に作用するのに適した送達系の設計および薬剤の送達プラットホームから解離する性能を示す放出プロファイルを例証している。
【図7】図7aは、化合物7(FT[LYS(Tris)][PTMO])の理想的構造である。
【図8】図8cおよび8dは、実施例8に記載されている、ポリカプロラクトンフィルムからのサリチル酸の放出プロファイルを示すグラフである。
【図9】図9a〜9cは、陽性対照(図9c)および陰性対照(図9b)とともに直接接触細胞毒性検定試験(図9a)を示す画像である。インキュベーションを行った後、生存細胞を紫色のポジティブ染色で確認し、次いでその染色されたフィルターを、流延された物質の周囲の細胞排除領域または低細胞密度について検査することによって細胞毒性を測定した。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図2f】
【図2g】
【図2h】
【図2i】
【図2j】
【図2k】
【図2l】
【図2m】
【図2n】
【図2o】
【図2p】
【図2q】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i. 遮蔽部分、
ii. オリゴマーセグメント、
iii. 複合部分(complexing moiety)、および
iv. 生物学的活性薬剤
を含むポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し(covalently tethered)、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、ポリマー。
【請求項2】
i. 遮蔽部分、
ii. オリゴマーセグメント、
iii. 生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および
iv. 生物学的活性薬剤
を含むポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、ポリマー。
【請求項3】
複合部分が生物学的活性薬剤との非共有結合相互作用を形成し、該非共有結合相互作用が、水素結合、イオン相互作用、包接複合体(inclusion complex)、包接化(clathration)、ファンデルワールス相互作用、およびその組合せから選択される相互作用を含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項4】
複合部分および生物学的活性薬剤が、金属中心に配位結合している、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項5】
生物学的活性薬剤が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド(rapamycin macrolide)、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、抗血栓剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン、脂質、およびそのプロドラッグから選択される、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項6】
遮蔽部分が、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ素化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、およびその組合せから選択される、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項7】
式FT-LINK A[-(oligo)a-(LINK A)b]c-Td(Bio)eでさらに表される、請求項1記載のポリマー:
式中、
FTはポリフルオロオルガノ基であり、
Bioは、LINK Aに複合できる一つまたは複数の生物学的活性薬剤であり、
各LINK Aは、独立して、Bioと複合できる複合部分を含む有機部分であり、
oligoはオリゴマーセグメントであり、
Tは末端基であり、
aは0または1であり、
b、c、d、およびeは0より大きい整数であり、かつ
少なくとも一つのBioが少なくとも一つのLINK Aと複合している。
【請求項8】
FTがポリフルオロアルキルである、請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
FTの分子量が100〜1,500 Daである、請求項7記載のポリマー。
【請求項10】
FTが、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-(式中、rは2〜20である)およびCF3(CF2)s(CH2CH2O)x(式中、xは1〜10であり、sは1〜20である)で表されるラジカルからなる群から選択される、請求項7記載のポリマー。
【請求項11】
oligoが、繰返し単位が少なくとも20個の分枝または非分枝オリゴマーセグメントである、請求項7記載のポリマー。
【請求項12】
LINK Aがモノマーセグメントである、請求項7記載のポリマー。
【請求項13】
aが0である、請求項7記載のポリマー。
【請求項14】
オリゴマーセグメントが、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、またはポリエチレンブチレンのセグメントを含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項15】
複数の複合部分と複数の生物学的活性薬剤とをさらに含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項16】
ポリマーの0.1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項17】
オリゴマーセグメントが約10 kDaより大きい絶対分子量を有する、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項18】
遮蔽部分がポリマーの約0.01〜5重量%を含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項19】
オリゴマーセグメントが約10 kDaより小さい絶対分子量を有する、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項20】
ベースポリマーを混合したポリマーを含む混合物であって、該ポリマーが、
i. 遮蔽部分、
ii. 生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および
iii. 生物学的活性薬剤
を含み、該遮蔽部分が該複合部分と共有結合的に連結し、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、混合物。
【請求項21】
ベースポリマーを混合した請求項1または2記載のポリマーを含む混合物。
【請求項22】
ポリマーが混合物の0.5〜10重量%である、請求項20または21記載の混合物。
【請求項23】
ベースポリマーが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、熱可塑性ポリジエン、ならびにその組合せから選択される、請求項22記載の混合物。
【請求項24】
請求項1または2記載のポリマーから形成される成形製品。
【請求項25】
請求項20または21記載の混合物から形成される成形製品。
【請求項26】
製品が、移植可能な医用デバイスである、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項27】
製品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント(prosthetic implant)、人工括約筋、または薬物送達デバイスである、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項28】
放出可能な生物学的活性薬剤の80%が2年以内に放出される、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項29】
t10がt50の1/10より大きい、請求項28記載の成形製品。
【請求項30】
請求項1または2記載のポリマーを含む、生物学的活性薬剤の制御放出のための組成物であって、クリーム、ゲル、またはローションとして製剤化される、組成物。
【請求項31】
請求項1または2記載のポリマーを含む、有害生物の増殖を抑制するための組成物であって、生物学的活性薬剤が農薬または除草剤である、組成物。
【請求項32】
請求項1または2記載のポリマーを含む、表面における微生物の増殖を低下させるための組成物であって、生物学的活性薬剤が抗微生物剤である、組成物。
【請求項33】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の炎症を減少させる方法であって、
該製品が、該製品の表面から炎症を減少させるのに十分な量で放出される抗炎症剤を含む、方法。
【請求項34】
抗炎症剤が、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン(nabumetone)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、メロキシカム(meloxicam)、オキサプロジン、スリンダク、トルメチン、アルゲストン、アムシノニド、べクロメタゾン(beclomethasone)、ベタメタゾン、ブデソニド(budesonide)、クロベタゾール、コルチコステロン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルクロロニド(flucloronide)、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、またはトリアムシノロンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の再狭窄を減少させる方法であって、
該製品が、該製品の表面から再狭窄を減少させるのに十分な量で放出される抗増殖剤を含む、方法。
【請求項36】
抗増殖剤が、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(Everolimus)、ABT-578、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド(iosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam)、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル(fluouracil)、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン(allopurine)、クラドリビン(cladribine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチン(pentostatin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル(docetaxel)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン(idarubincin)、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン(amsacrine)、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール(anastrozole)、フィナステリド(finasteride)、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド(flutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、ゴセレリン、Gleevec(商標)、レフルノミド(leflunomide)、SU5416、SU6668、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)、トラスツズマブ(trastuzumab)、Erbitux(商標)、PKI166、GW2016、EKB-509、EKB-569、MDX-H210、2C4、MDX-447、ABX-EGF、CI-1033、Avastin(商標)、IMC-1C11、ZD4190、ZD6474、CEP-701、CEP-751、MLN518、PKC412、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン(nitracrine)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン(Cerivastatin)、トログリタゾン(Troglitazone)、CRx-026、DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン(Taxoprexin)、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質(Sphingosine-based lipid)、またはミトタンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の疼痛を軽減する方法であって、
該製品が、該製品の表面から疼痛を軽減するのに十分な量で放出される鎮痛剤または麻酔剤を含む、方法。
【請求項38】
鎮痛剤が、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン(acetorphine)、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン(phenomorphan)、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、またはジヒドロアセトルフィンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
麻酔剤が、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン(mepivicaine)、ブピバカイン(bupivicaine)、アルチカイン(articaine)、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、またはロピバカイン(ropavacaine)である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の筋肉を弛緩する方法であって、
該製品が、該製品の表面から筋肉を弛緩するのに十分な量で放出される鎮痙剤を含む、方法。
【請求項41】
鎮痙剤が、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル(bentyl)、シストスパズ(cystospaz)、デトロール(detrol)(トルテロジン(tolterodine))、ジサイクロミン、ジトロパン(ditropan)、ドナタル(donnatol)、ドナザイム(donnazyme)、ファスジル(fasudil)、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン(levsin)、レブシネックス(levsinex)、リブラックス(librax)、マルコトラン(malcotran)、ノバルチン(novartin)、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン(pamine)、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、またはピナベリウム(pinaverium)である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
(i)生物学的活性薬剤を請求項1または2記載のポリマーと複合させる段階、および
(ii)該ポリマーを用いて製品の表面を形成する段階
を含む、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法であって、
該ポリマーが該遮蔽部分を約0.1〜30重量%(w/w)含む、方法。
【請求項43】
(i)生物学的活性薬剤を含む成形製品を形成する段階、および
(ii)該製品の表面を請求項1または2記載のポリマーでコートする段階
を含む、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法。
【請求項44】
請求項1記載のポリマーを含む成形製品。
【請求項45】
請求項2記載のポリマーを含む成形製品。
【請求項46】
ポリマーでコートされている、請求項44および45記載の成形製品。
【請求項47】
(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤、ならびに
(ii)a)遮蔽部分、b)オリゴマーセグメント、およびc)複合部分を含む、第二のポリマー
を含むベースポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該第二のポリマーが、該放出プロファイルを変えるのに十分な量で存在する、ベースポリマー。
【請求項48】
(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤、ならびに
(ii)a)遮蔽部分、b)オリゴマーセグメント、およびc)該生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分を含む、第二のポリマー
を含むベースポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該第二のポリマーが、該放出プロファイルを変えるのに十分な量で存在する、ベースポリマー。
【請求項1】
i. 遮蔽部分、
ii. オリゴマーセグメント、
iii. 複合部分(complexing moiety)、および
iv. 生物学的活性薬剤
を含むポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し(covalently tethered)、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、ポリマー。
【請求項2】
i. 遮蔽部分、
ii. オリゴマーセグメント、
iii. 生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および
iv. 生物学的活性薬剤
を含むポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、ポリマー。
【請求項3】
複合部分が生物学的活性薬剤との非共有結合相互作用を形成し、該非共有結合相互作用が、水素結合、イオン相互作用、包接複合体(inclusion complex)、包接化(clathration)、ファンデルワールス相互作用、およびその組合せから選択される相互作用を含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項4】
複合部分および生物学的活性薬剤が、金属中心に配位結合している、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項5】
生物学的活性薬剤が、タンパク質、ペプチド、炭水化物、抗生物質、抗増殖剤、ラパマイシンマクロライド(rapamycin macrolide)、鎮痛剤、麻酔剤、抗血管新生剤、抗血栓剤、血管作用薬、抗凝血薬、免疫調節薬、細胞毒性薬剤、抗ウイルス剤、抗体、神経伝達物質、向精神薬、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ビタミン、脂質、およびそのプロドラッグから選択される、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項6】
遮蔽部分が、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、フルオロカーボン、フッ素化ポリエーテル、ポリアルキレンオキシド、およびその組合せから選択される、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項7】
式FT-LINK A[-(oligo)a-(LINK A)b]c-Td(Bio)eでさらに表される、請求項1記載のポリマー:
式中、
FTはポリフルオロオルガノ基であり、
Bioは、LINK Aに複合できる一つまたは複数の生物学的活性薬剤であり、
各LINK Aは、独立して、Bioと複合できる複合部分を含む有機部分であり、
oligoはオリゴマーセグメントであり、
Tは末端基であり、
aは0または1であり、
b、c、d、およびeは0より大きい整数であり、かつ
少なくとも一つのBioが少なくとも一つのLINK Aと複合している。
【請求項8】
FTがポリフルオロアルキルである、請求項7記載のポリマー。
【請求項9】
FTの分子量が100〜1,500 Daである、請求項7記載のポリマー。
【請求項10】
FTが、一般式CF3(CF2)rCH2CH2-(式中、rは2〜20である)およびCF3(CF2)s(CH2CH2O)x(式中、xは1〜10であり、sは1〜20である)で表されるラジカルからなる群から選択される、請求項7記載のポリマー。
【請求項11】
oligoが、繰返し単位が少なくとも20個の分枝または非分枝オリゴマーセグメントである、請求項7記載のポリマー。
【請求項12】
LINK Aがモノマーセグメントである、請求項7記載のポリマー。
【請求項13】
aが0である、請求項7記載のポリマー。
【請求項14】
オリゴマーセグメントが、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアミド、ポリアルキレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリラクトン、ポリシリコーン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリビニル誘導体、ポリペプチド、多糖、ポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン-ブチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、またはポリエチレンブチレンのセグメントを含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項15】
複数の複合部分と複数の生物学的活性薬剤とをさらに含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項16】
ポリマーの0.1〜5重量%が複合部分および生物学的活性薬剤である、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項17】
オリゴマーセグメントが約10 kDaより大きい絶対分子量を有する、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項18】
遮蔽部分がポリマーの約0.01〜5重量%を含む、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項19】
オリゴマーセグメントが約10 kDaより小さい絶対分子量を有する、請求項1または2記載のポリマー。
【請求項20】
ベースポリマーを混合したポリマーを含む混合物であって、該ポリマーが、
i. 遮蔽部分、
ii. 生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分、および
iii. 生物学的活性薬剤
を含み、該遮蔽部分が該複合部分と共有結合的に連結し、かつ該複合部分が該生物学的活性薬剤と複合している、混合物。
【請求項21】
ベースポリマーを混合した請求項1または2記載のポリマーを含む混合物。
【請求項22】
ポリマーが混合物の0.5〜10重量%である、請求項20または21記載の混合物。
【請求項23】
ベースポリマーが、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリカーボネート、多糖、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエンスチレン)、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレンブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-イソプレンスチレンブロックコポリマー、ポリ-R-メチルペンテン、ポリイソブチレン、ポリメチル-メタクリレート、ポリ酢酸ビニル-ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、セルロースおよびそのエステルおよび誘導体、ポリアミド、ポリエステル-ポリエーテル、スチレン-イソプレン、スチレン-ブタジエン、熱可塑性ポリオレフィン、スチレン-飽和オレフィン、ポリエステル-ポリエステル、エチレン-酢酸ビニル エチレン-アクリル酸エチル、イオノマー、熱可塑性ポリジエン、ならびにその組合せから選択される、請求項22記載の混合物。
【請求項24】
請求項1または2記載のポリマーから形成される成形製品。
【請求項25】
請求項20または21記載の混合物から形成される成形製品。
【請求項26】
製品が、移植可能な医用デバイスである、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項27】
製品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント(prosthetic implant)、人工括約筋、または薬物送達デバイスである、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項28】
放出可能な生物学的活性薬剤の80%が2年以内に放出される、請求項24または25記載の成形製品。
【請求項29】
t10がt50の1/10より大きい、請求項28記載の成形製品。
【請求項30】
請求項1または2記載のポリマーを含む、生物学的活性薬剤の制御放出のための組成物であって、クリーム、ゲル、またはローションとして製剤化される、組成物。
【請求項31】
請求項1または2記載のポリマーを含む、有害生物の増殖を抑制するための組成物であって、生物学的活性薬剤が農薬または除草剤である、組成物。
【請求項32】
請求項1または2記載のポリマーを含む、表面における微生物の増殖を低下させるための組成物であって、生物学的活性薬剤が抗微生物剤である、組成物。
【請求項33】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の炎症を減少させる方法であって、
該製品が、該製品の表面から炎症を減少させるのに十分な量で放出される抗炎症剤を含む、方法。
【請求項34】
抗炎症剤が、ナプロキセンナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、ジクロフェナクカリウム、アスピリン、スリンダク、ジフルニサル、ピロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、ナブメトン(nabumetone)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サリチル酸ナトリウム、サリチルサリチル酸(サルサレート)、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸ナトリウム(meclofenamate sodium)、メロキシカム(meloxicam)、オキサプロジン、スリンダク、トルメチン、アルゲストン、アムシノニド、べクロメタゾン(beclomethasone)、ベタメタゾン、ブデソニド(budesonide)、クロベタゾール、コルチコステロン、コルチゾン、デキサメタゾン、フルクロロニド(flucloronide)、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、またはトリアムシノロンである、請求項33記載の方法。
【請求項35】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の再狭窄を減少させる方法であって、
該製品が、該製品の表面から再狭窄を減少させるのに十分な量で放出される抗増殖剤を含む、方法。
【請求項36】
抗増殖剤が、ラパマイシン、CCI-779、エベロリムス(Everolimus)、ABT-578、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド(iosfamide)、メルファラン、クロラムブシル、ウラシルマスタード、エストラムスチン、マイトマイシンC、AZQ、チオテパ、ブスルファン、ヘプスルファム(hepsulfam)、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、シスプラチン、カルボプラチン(carboplatin)、プロカルバジン、メトトレキサート、トリメトレキサート、フルオロウラシル(fluouracil)、フロクスウリジン、シタラビン、フルダラビン(fludarabine)、カペシタビン(capecitabine)、アザシチジン、チオグアニン、メルカプトプリン、アロプリン(allopurine)、クラドリビン(cladribine)、ゲムシタビン(gemcitabine)、ペントスタチン(pentostatin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド(etoposide)、テニポシド(teniposide)、トポテカン(topotecan)、イリノテカン(irinotecan)、カンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル(docetaxel)、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ダクチノマイシン、イダルビシン(idarubincin)、プリカマイシン、マイトマイシン、アムサクリン(amsacrine)、ブレオマイシン、アミノグルテチミド、アナストロゾール(anastrozole)、フィナステリド(finasteride)、ケトコナゾール、タモキシフェン、フルタミド(flutamide)、ロイプロリド(leuprolide)、ゴセレリン、Gleevec(商標)、レフルノミド(leflunomide)、SU5416、SU6668、PTK787(Novartis)、Iressa(商標)(AstraZeneca)、Tarceva(商標)、トラスツズマブ(trastuzumab)、Erbitux(商標)、PKI166、GW2016、EKB-509、EKB-569、MDX-H210、2C4、MDX-447、ABX-EGF、CI-1033、Avastin(商標)、IMC-1C11、ZD4190、ZD6474、CEP-701、CEP-751、MLN518、PKC412、13-シス-レチノイン酸、イソトレチノイン、レチニルパルミテート、4-(ヒドロキシカルボフェニル)レチナミド、ミソニダゾール、ニトラクリン(nitracrine)、ミトキサントロン、ヒドロキシ尿素、L-アスパラギナーゼ、インターフェロンα、AP23573、セリバスタチン(Cerivastatin)、トログリタゾン(Troglitazone)、CRx-026、DHA-パクリタキセル、タキソプレキシン(Taxoprexin)、TPI-287、スフィンゴシンを基にした脂質(Sphingosine-based lipid)、またはミトタンである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の疼痛を軽減する方法であって、
該製品が、該製品の表面から疼痛を軽減するのに十分な量で放出される鎮痛剤または麻酔剤を含む、方法。
【請求項38】
鎮痛剤が、モルヒネ、コデイン、ヘロイン、エチルモルヒネ、O-カルボキシメチルモルヒネ、O-アセチルモルヒネ、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、テバイン、メトポン、エトルフィン、アセトルフィン(acetorphine)、ジプレノルフィン、ブプレノルフィン、フェノモルファン(phenomorphan)、レボルファノール、エトヘプタジン、ケトベミドン、ジヒドロエトルフィン、またはジヒドロアセトルフィンである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
麻酔剤が、コカイン、プロカイン、リドカイン、プリロカイン、メピバカイン(mepivicaine)、ブピバカイン(bupivicaine)、アルチカイン(articaine)、テトラカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、またはロピバカイン(ropavacaine)である、請求項37記載の方法。
【請求項40】
請求項24または25記載の製品を部位に移植する段階を含む、その必要がある哺乳動物における部位の筋肉を弛緩する方法であって、
該製品が、該製品の表面から筋肉を弛緩するのに十分な量で放出される鎮痙剤を含む、方法。
【請求項41】
鎮痙剤が、アトロピン、ベラドンナ、ベンチル(bentyl)、シストスパズ(cystospaz)、デトロール(detrol)(トルテロジン(tolterodine))、ジサイクロミン、ジトロパン(ditropan)、ドナタル(donnatol)、ドナザイム(donnazyme)、ファスジル(fasudil)、フレクサリル、グリコピロレート、ホマトロピン、ヒヨスチアミン、レブシン(levsin)、レブシネックス(levsinex)、リブラックス(librax)、マルコトラン(malcotran)、ノバルチン(novartin)、オキシフェンサイクリミン、オキシブチニン、パミン(pamine)、トルテロジン、チキジウム、プロザピン、またはピナベリウム(pinaverium)である、請求項40記載の方法。
【請求項42】
(i)生物学的活性薬剤を請求項1または2記載のポリマーと複合させる段階、および
(ii)該ポリマーを用いて製品の表面を形成する段階
を含む、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法であって、
該ポリマーが該遮蔽部分を約0.1〜30重量%(w/w)含む、方法。
【請求項43】
(i)生物学的活性薬剤を含む成形製品を形成する段階、および
(ii)該製品の表面を請求項1または2記載のポリマーでコートする段階
を含む、成形製品の表面からの生物学的活性薬剤の放出を制御するための方法。
【請求項44】
請求項1記載のポリマーを含む成形製品。
【請求項45】
請求項2記載のポリマーを含む成形製品。
【請求項46】
ポリマーでコートされている、請求項44および45記載の成形製品。
【請求項47】
(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤、ならびに
(ii)a)遮蔽部分、b)オリゴマーセグメント、およびc)複合部分を含む、第二のポリマー
を含むベースポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該第二のポリマーが、該放出プロファイルを変えるのに十分な量で存在する、ベースポリマー。
【請求項48】
(i)ベースポリマーからの放出プロファイルを有する生物学的活性薬剤、ならびに
(ii)a)遮蔽部分、b)オリゴマーセグメント、およびc)該生物学的活性薬剤との非共有結合性相互作用を形成することのできる二つ以上の官能基を提供する複合部分を含む、第二のポリマー
を含むベースポリマーであって、
該遮蔽部分および該複合部分が該オリゴマーセグメントに共有結合的に連結し、かつ該第二のポリマーが、該放出プロファイルを変えるのに十分な量で存在する、ベースポリマー。
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5d(a)】
【図5d(b)】
【図5d(c)】
【図5d(e)】
【図5d(f)】
【図5d(g)】
【図5d(h)】
【図6a】
【図6b】
【図6h】
【図7a】
【図8c】
【図8d】
【図9】
【図4】
【図5a】
【図5d(a)】
【図5d(b)】
【図5d(c)】
【図5d(e)】
【図5d(f)】
【図5d(g)】
【図5d(h)】
【図6a】
【図6b】
【図6h】
【図7a】
【図8c】
【図8d】
【図9】
【公表番号】特表2008−535610(P2008−535610A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505994(P2008−505994)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002351
【国際公開番号】WO2007/004067
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507337061)インターフェース バイオロジクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002351
【国際公開番号】WO2007/004067
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507337061)インターフェース バイオロジクス インコーポレーティッド (1)
【Fターム(参考)】
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