生物膜ろ過システム
【課題】 従来の生物浄化装置にて処理された処理液の全窒素濃度の限界は10mg/リットル程度であり、この値以下に窒素除去をすることは極めて困難であった。また、通常10〜12時間であるHRT(滞留時間)を短縮するという要望が強い。更に、最終沈殿池を設けずに処理液の透明度を改善するという要望も強かった。
【解決手段】 本発明の生物膜ろ過システムは、生物膜ろ過装置等の生物浄化装置の下流に、制御された水素供与体を注入しかつ制御された酸素含有気体を注入する生物膜ろ過型浄化槽を配し、上記の課題を解決した。
【解決手段】 本発明の生物膜ろ過システムは、生物膜ろ過装置等の生物浄化装置の下流に、制御された水素供与体を注入しかつ制御された酸素含有気体を注入する生物膜ろ過型浄化槽を配し、上記の課題を解決した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物膜ろ過を利用したろ過システムに関し、より詳細には、生物膜ろ過装置等の生物浄化装置の下流に、制御された水素供与体を注入しかつ制御された酸素含有気体を注入する生物膜ろ過型浄化槽を配したろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水道の普及率の増加とともに都市部では汚泥の処理・処分が大きな問題となっており、汚泥を効率的に処理するための集約化が進められている。汚泥集約処理プラントで発生する大量かつ高濃度の返流水を従来のように近隣の下水処理場に戻すことは近隣下水処理場に対して大きな負荷量となるため、負荷量を低減する処理を行う必要がある。また、汚泥集約処理プラントでは敷地面積に制約があり、省スペース型の返流水処理方式が要求される。
1998年度末における下水道の普及率は政令指定都市において97%に達し、下水道整備は中小市町村に重点が移って来ている。また、水環境保全に対する意識が高まるなか、閉鎖性水域の富栄養化対策や下水処理水の循環再利用などを目的とした高度処理の促進も重要な課題となっている。高度処理法における現在の主な除去対象物質は、標準活性汚泥法で除去できない窒素とリンであり、これらの除去方式として、循環式硝化脱窒法(窒素除去)や嫌気好気法(リン除去)などがすでに実用化されている。
【0003】
最近では、標準活性汚泥法と同等の滞留時間で、窒素、リンの同時除去可能な担体投入型活性汚泥法が開発され、その普及が期待されている。一方、生物膜ろ過法は物理的なろ過作用に加えて、ろ材に高密度に付着した微生物の働きにより溶解性有機物の除去や硝化を高速で行えることから、高機能な生物処理装置として開発が進められてきた(非特許文献1など)。小規模下水処理においては、前記特長に加え、沈でん池が必要なく汚泥管理が不要で維持管理が容易であることから、好気的条件で処理する好気性ろ床法が活性汚泥法に代わる二次処理方式として実用化が進んでいる。また、下水二次処理水を対象とした高度処理としても適用が進んできている。しかしながら、実用化が進んでいるこれらの方式は窒素除去に対応していないため、生物膜ろ過法の特長を生かした窒素除去プロセスが望まれていた。
【0004】
発明者等は、小規模下水向けの窒素除去プロセスとして、比重が水より軽い浮上ろ材を用いた生物膜ろ過法による窒素除去装置の開発を行った(非特許文献2など)。生物膜ろ過法のろ材として浮上ろ材を用いた場合、上向流で通水し、充填層に通気管を設置することで、通気管の下部を嫌気部、上部を好気部とすることができ、一塔で窒素除去が可能となる(非特許文献3)。また、嫌気性ろ床に浮上ろ材を用い、ろ床下部を沈でん部とすることで最初沈でん池を兼ねた脱窒槽とすることが可能であり、既設の好気性ろ床と組合せることで窒素除去を行うことができる(非特許文献4)。
このような背景のもと、発明者らは汚泥集約処理の返流水の効率的な処理方式として、SS、リンの除去を目的とした前処理プロセスと有機汚濁物質、窒素の除去を目的とした生物処理プロセスとからなる処理システムの開発を行ってきた(非特許文献5など)。
【0005】
【非特許文献1】用水と廃水, vol.25, No.5 (1983)、志村ら「生物膜ろ過法を用いた窒素除去プロセス」第31回下水道研究発表会講演集(1994)
【非特許文献2】佐久間ら「浮上ろ材を用いた生物膜ろ過法による窒素除去」第4回北大衛生工学シンポジウム講演論文集(1996)
【非特許文献3】Rogalla et.al. "Upscaling a compact nitrogen removal process" Wat. Sci. Tech.(1992))
【非特許文献4】田中ら「小規模下水処理プロセスに関する研究」荏原インフェルコ時報第104号(1991)
【非特許文献5】エバラ時報 No.187 (2000-4)、(社)日本下水道協会 第38回下水道研究発表会講演集p538-540(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の前凝集及び生物膜ろ過の組み合わせ等の生物浄化装置にて処理された処理液の全窒素濃度の限界は10mg/L程度であり、この値以下に窒素除去をすることは極めて困難であった。また、通常10〜12時間であるHRT(Hydroric Retention Time、滞留時間)を短縮するという要望が強い。更に、最終沈殿池を設けずに処理液の透明度を改善するという要望も強かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明においては、従来の生物処理装置の下流に更に生物膜ろ過槽を設けることにより、完全な窒素除去を行うことのできるろ過システムを提供する。本発明においては、まずこの生物膜ろ過槽の下層(上流側)を嫌気性として、そこに水素供与体を注入してNOx−N(即ち、NO2−N及びNO3−N)を除去することを図った。そのために、その上流で被処理液の窒素濃度を測定し、その窒素濃度において窒素を除去できるように制御された量の水素供与体を注入できるようにした。次に、この生物膜ろ過槽のほぼ中ほどから酸素含有気体を強制的に注入することによりその上層(下流側)を好気性として、下層(上流側)において窒素を処理した残量の水素供与体を除去することを図った。この段階により同時に処理液の酸素濃度を確保することも可能になる。この段階(下流側)があるため、この生物膜ろ過槽は上向流式とならざるを得ない。また、この段階(下流側)があるために、前段(上流側)では十分な又は必要に応じて過剰の量の水素供与体を用いることが可能になり、窒素の除去を完全にすることが可能になる。ここで水素供与体の除去を行い、必要に応じて被処理液の酸素濃度を所定濃度に確保するために、ろ材充填部を通過した被処理液の溶存酸素量を測定し注入する酸素含有気体量を制御する。
【0008】
即ち、本発明は、生物浄化装置及びその下流側に設けた生物膜ろ過型浄化槽から成る生物膜ろ過システムであって、該生物膜ろ過型浄化槽を上向流式として、該生物膜ろ過型浄化槽の中間部にろ材充填部分を配し、該ろ材充填部分の上流に酸化態窒素(NOx−N)検知手段を設け、該酸化態窒素検知手段からの信号により制御された量の水素供与体を該ろ材充填部分の上流に注入し、一方該ろ材充填部分の下流に溶存酸素(DO)検知手段を設け、該溶存酸素検知手段からの信号により制御された量の酸素含有気体を該ろ材充填部分のほぼ中央部に注入することを特徴とする生物膜ろ過システムである。
この酸化態窒素検知手段は、生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の上流から採取した被処理液のNO2−N及びNO3−Nの量を測定する装置であればよく、この検知手段からの信号はこれらの窒素の全量に関するものである。この水素供与体の注入量を、COD/N比(mgCOD/mgN)が2.4以上、特に3〜8、より特に4〜5となるように制御することが好ましい。ここで、CODは水素供与体に因る量であり、Nは、NOx−Nの量を表す。この制御は通常これらの範囲内に任意の設定値を設け、COD/N比がこの設定値の近傍にあるようにするように行われる。この水素供与体を生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の上流から注入する。その注入位置は前記酸化態窒素検知手段による採取位置よりも下流であることが好ましい。
【0009】
また、溶存酸素検知手段は、生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の下流から採取した被処理液の溶存酸素量を検知する装置であればよい。酸素含有気体の注入量を、DO(溶存酸素量)が5mg/L以上、特に5〜8mg/L、より特に5〜7mg/Lとなるように制御することが好ましい。この制御は通常これらの範囲内に任意の設定値を設け、DOがこの設定値の近傍にあるようにするように行われる。酸素含有気体は生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分のほぼ中央部に注入する。中央部とはこのろ材充填部分の最上流部と最下流部の中央を意味し、ほぼ中央とはその上流及び下流に有効量のろ材があればよいという意味である。
水素供与体は水に可溶性で比較的低分子量の有機物であればよく、メタノール、エタノール、IPA又は酢酸等が挙げられるが、コスト面などからメタノールが好ましい。
【0010】
上記生物浄化装置は、従来知られているいかなる微生物を利用した浄化槽であってもよく、例えば、活性汚泥を用いた処理槽や生物膜ろ過法を用いた浄化槽であってよいが、生物膜ろ過型の浄化装置であることが好ましい。この生物膜ろ過型の浄化装置は、一方(通常は上流側)を嫌気性ろ床(無酸素性ろ床)から成る第一槽として他方(通常は下流側)を好気性ろ床から成る第二槽とするもの(例えば、(社)日本下水道協会 第38回下水道研究発表会講演集p538-540(2001))が好ましいが、その下部が無酸素性ろ床から成り、その上部が好気性ろ床から成る単一槽であるものも好ましい。この好気性ろ床からの流出水の一部を、無酸素ろ床に循環してもよい。
本発明の生物膜ろ過システムは上記のもので十分にその効果を発揮するものであるが、前記生物浄化装置の上流に更に凝集処理装置を設けてもよく、この凝集処理装置が、沈殿槽並びにその上流に無機凝集剤の攪拌槽及び有機凝集剤の攪拌槽の少なくとも一方から成るものであることが好ましい。このような前凝集処理を設けることにより、後段の生物処理への負荷を低減させるとともに、リンを効率的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明を制限することを意図するものではない。
本発明の生物膜ろ過システムは、ろ過といった物理的効果とろ材表面に付着増殖した微生物群による生物反応とを同時に活用することが可能である。そのため、最終沈殿池は不要であり、硝化や脱窒などの反応に関わる微生物群を高濃度に保持可能なので、省スペース型の反応器となる。生物膜ろ過システムは、無酸素性ろ床、好気性ろ床及び仕上げろ床より構成され、好気性ろ床から無酸素性ろ床へは硝化液を循環させた。前段での無酸素性ろ床の活用は、有機物及び固形物の除去にも有効であり、後段の好気性ろ床への有機物及び固形物の負荷を和らげることで、好気性ろ床での硝化促進につながる。無酸素性ろ床及び好気性ろ床は上向流で1つのろ床として中間部より曝気することによっても対応できる。仕上げろ床は、上向流式としてろ床の中間部より曝気することで、下部を無酸素槽、上部を好気槽とした。流入前にメタノールを添加することにより下部で残存酸化態窒素を脱窒させ、上部では残存メタノールの酸化及びDO濃度の回復を行うという、仕上げの処理を行った。仕上げろ床により、ほほ完全な窒素除去が期待できる。
【0012】
生物膜ろ過システムの通水方向やろ材については、種々の組み合わせが提示されている。その中で反応器の下部を沈殿池とし、ろ床部の中間に散気管を設置することで、「沈殿池−無酸素槽−好気槽」を1つの反応器にまとめ、装置のコンパクト化を図ることが可能であることから、本発明では上向流式を採用した。ろ材は、洗浄の簡易さを考慮して、浮上性のろ材を用いた。
本発明の生物膜ろ過システムの場合、運転を継続するとろ床部にSS(浮遊物質)成分が捕捉され、損失水頭が増加するので、逆洗操作が必要である。ろ床の逆洗操作は、空気洗浄、処理水による洗浄、排水の過程を組み合わせて設定する。脱窒に関わる微生物はほとんどが通性嫌気性であり、通常運転時には曝気を行わない生物浄化装置(例えば、図1の第1槽)でも、曝気による洗浄を行って問題がない。これらの操作は全て、シークエンサーや電磁弁などを活用しながら自動制御で行う。洗浄操作は・損失水頭が設定値を超過した場合、もしくは洗浄後の処理継続時間が設定値を超過した場合に開始するように自動制御を組み込んだ。
【0013】
本発明では、仕上げ槽(生物膜ろ過型浄化槽)における制御装置を組み込んだ。連続測定装置により、好気性ろ床部より流出する液中の酸化態窒素濃度測定を連続的に行い、測定値に応じて水素供与体(例えば、メタノール)添加量を制御した。脱窒に必要な水素供与体を適切に制御することで、無駄な水素供与体添加を防ぎながら、安定した脱窒処理が可能である。連続測定装置による、仕上げろ床流出水の溶存酸素濃度の連続測定も行い、測定値に応じて仕上げろ床の曝気量を制御した。これより、過大な曝気を減らし、使用電気料の節減につながる。
本発明のようにSS負荷の低減や硝化反応の促進、そしてリン除去の観点から、前凝集沈殿処理と生物膜ろ過反応器を組み合わせ、更に各種の自動制御を組み込んだ発明例は我が国で見られない。
【実施例】
【0014】
図1に示すフローの実験装置を、合流式下水道である実下水処理場に設置した。この処理場の沈砂池越流水を対象下水とし、前凝集・沈殿で処理した後に生物処理を行った。沈殿池の前段に、前凝集沈殿処理のために、凝集剤添加装置、急速撹伴槽及び緩速撹伴槽を設置した。前凝集条件は表1に示すとおりである。
【0015】
【表1】
【0016】
凝集剤としては、FeC13(添加率:10mgFe/L)と高分子凝集剤(添加率:0.25mg/L)を添加し、急速撹伴及び緩速撹絆の水理学的滞留時間(HRT)は各5分間、最初沈殿池のHRTは1時間とした。ろ床部のHRTは、第1槽で0.9時間、第2槽で1.3〜1.1時間、第3槽で1.0〜0.5時間の範囲で変化させ、第2槽から第1槽への循環率は1.5、及び1の2段階で変化させた。
【0017】
生物膜ろ過システムは、第1槽、第2槽(以上、本願発明の"生物浄化装置"に相当する。)及び第3槽(本願発明の"生物膜ろ過型浄化槽"に相当する。)の3槽より構成した。第1槽及び第2槽は円筒形で、直径50cm、高さ3.8mとした。これは、壁面の影響を考慮せずに、逆洗などの操作を含めて、実規模装置と同様の運転を検討するのに十分な規模である。第3槽も円筒形で、高負荷運転の実験にも対応できるように、直径20cm、高さ4.0mとした。そして、各槽に浮上ろ材を投入した。ろ床厚は、一般的に2〜4mが採用されることが多く、本発明では縦に積み重ねる可能性も考慮して、2mとした(即ち、ろ材充填部分)。水質の層別分布を把握するために、ろ材充填部にサンプリングタップを設けた。第1槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、26cm(タップ2)、76cm(タップ3)、136cm(タップ4)、171cm(タップ5)の5ケ所、第2槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、60cm(タップ2)、112cm(タップ3)、141cm(タップ4)の4ヶ所、第3槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、10cm(タップ2)、50cm(タップ3)、100cm(タップ4)、150cm(タップ5)の5ヶ所とした。ろ材として、比重0.16で球形の発泡ポリスチレン製のものを用い、その有効径を、第1槽のものは6mm、第2槽のものは4mm、第3槽のものは3mmとした。槽上部には、ろ材の流出を防止すると共に、均一な集水を保持するため、ウェッジワイヤースクリーンを設置した。運転時の曝気及び空気洗浄を行うために、各槽の底部に散気菅を設け・コンプレッサーから曝気を行えるようにした。
【0018】
生物膜ろ過システムの場合、運転を継続するとろ床部にSS成分が捕捉され、損失水頭が増加するので、逆洗操作が必要である。ろ床の逆洗操作は、空気洗浄、処理水による洗浄、排水の過程を組み合わせて設定した。脱窒に関わる微生物はほとんどが通性嫌気性であり、通常運転時には曝気を行わない第1槽や第3層下部でも、曝気による洗浄を行って問題がない。これらの操作は全て、シークエンサーや電磁弁などを活用しながら自動制御で行った。洗浄操作は、損失水頭が設定値を超過した場合、もしくは洗浄後の処理継続時間が設定値を超過した場合に開始するように自動制御を組み込んだ。
【0019】
運転条件を表2に示す。
【表2】
【0020】
本発明では、運転期間を馴致期間であるRun0、ならびにRun1からRun4までの5つに分けた。運転期間中の水温の経日変化は図2に示すとおりであり、冬期には15℃程度まで低下した。逆洗は、第1槽では損失水頭が2mを超過した場合、第2槽では「処理継続時間が4.3〜7.7dの間での設定値に達した場合に、第3槽では損失水頭が2mを超過した場合に行った。
第1槽及び第2槽は約1年間運転したものを用い、第3槽は0日目に運転を開始した。活性汚泥を第3槽に70L投入し、微生物がろ材上に付着するようにろ床部全体の曝気を2日間行った。そして、2日目より、Run1と同一の流量で通水を開始した。当初は微生物の増殖を促進するために、メタノール注入量は、必要量の3倍を目安として、11〜17mgCOD/mgNに設定した。ろ床部全体の曝気はそのまま継続し、6日目からろ床中間部からの曝気に切り替えた。これらの操作を行い、最初の29日間を第3槽の馴致期間(Run0)とした。
【0021】
処理状況を把握するため、週1〜2回の頻度で水温、DO(溶存酸素)、及びORP(酸化還元電位)を現地で午前9時〜午前10時の間に測定した。あわせてオートサンプラーによる24時間コンポジット採水を行い、pH、アルカリ度、透視度、SS、CODCr、BOD、各態窒素ならびに各態リンについて水質分析を行った。加えて、適宜各生物反応槽のろ材充填部に設けたサンプリングタツプより午前9時〜午前10時の間でに採水し、層別の水質分布を測定した。第1槽の損失水頭については、圧力計をレコーダーに接続することで連続測定を行った。さらに、ろ床の最終沈殿池としての性能を評価するために、標準活性汚泥法の最終沈殿池越流水について、SSの測定も実施した。
測定項目及び測定方法を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
なお、以下の記述で「T−」及び「S−」はそれぞれ「全」及び「溶解性」の意味であり、「流入」は沈砂池越流水を、「沈殿」は流入水が凝集沈殿処理もしくは最初沈殿池を経た水で生物処理槽に流入する水を、「第1槽」、「第2槽」、及び「第3槽」は生物処理槽の各該当槽からの流出水を指す。本システムでは最終沈殿池を設けていないので、第3槽の流出水が処理水となる。
【0024】
連続運転結果
DO濃度についての経日変化を図3に示す。第1槽及び第2槽でそれぞれ0及び6〜9mg/L程度が維持され、脱窒及び硝化に適した条件を保った。第3槽では、曝気量制御を組み込み、6mg/L程度が安定して維持された。ORPについての経日変化を図4に示す。第1槽は脱窒の進行具合により0〜−170mVで、第2槽及び第3槽は+100〜+200mVで推移した。ただし、100日目あたりでは、第1槽で−170mV程度まで、第2槽で+80mV程度まで低下し、硝化成績の悪化が見られた。
pH及びアルカリ度についての経日変化を図5及び図6にそれぞれ示す。pHは、第1槽で6.8〜7.0程度であり、凝集剤添加及び硝化の効果により第2槽で6程度まで低下した。同時にアルカリ度は20〜40mgCaCO3/L程度まで低下した。しかし、後述のとおり全てのRunで硝化は問題なく進行していたので、アルカリ剤の添加は不要であった。第3槽では、脱窒によりpH及びアルカリ度は回復し、処理水のpHは6.5〜6.7程度、アルカリ度は40〜60mgCaCO3/L程度であった。
【0025】
SS濃度についての経日変化を図7に示す。150mg/L程度で流入し、第2槽を通過後は、10mg/L以下まで除去された。その後、第3槽を通過後は5mg/L以下の処理水が安定して得られた。
透視度についての経日変化を図8に示す。第2槽は、20〜80cmの範囲で変動していたものの、第3槽では常に100cm以上であり、見た目にも良好な処理水が得られた。
CODCr濃度についての経日変化を図9に示す。200mg/L程度で流入し、第2槽を通過後は、40mg/L程度まで除去された。その後、第3槽では20mg/L程度まで除去された。BOD濃度についての経日変化を図10に示す。基本的にATU添加で測定し、処理水(T)のみATU無添加の場合も併せて測定した。100mg/L程度で流入後、第2槽までで10mg/L以下まで除去され、第3槽では5mg/Lまで低下した。生物膜反応器の場合、他栄養性細菌と自栄養性細菌の競合が生じること、後述の通り硝化反応は問題なく進行していたことから、本反応器において除去されうる有機物は除去されていたものと考えられる。故に、CODCr及びBODの分析結果より、一部の有機物成分は難分解性であり、ある程度長いHRTによる処理が必要であることが分かる。Run4では、好気性処理でのHRTをわずか1.6時間としたために、BODとしては検出される成分の一部は十分には除去されなかったものと考えられる。また、第3槽で添加したメタノールのうち、残存分はほぼ除去されているものと考えられる。
【0026】
各態窒素濃度についての経日変化を図11に示す。第2槽のアンモニア性窒素濃度(NH4+−N)は全期間を通じてほとんど検出されず、硝化反応は安定してなされていた。Run1の30〜45日目には0.5〜1.5mgN/L程度のアンモニア性窒素が残存した。水温の低下による硝化活性の低下が原因と考えられたので、続くRun2ではHRTを長くすることで、アンモニア性窒素の負荷を低下させた。その結果残存アンモニア性窒素は0.3mgN/L以下まで低下した。これより、冬場に硝化の完了に必要なHRTはろ床部で1.3時間以上とする必要性が明らかになった。その後、100日目辺りでは突然硝化が悪化し、第2槽のアンモニア性窒素濃度が8mgN/Lまで増加した。第1槽のORPが−180mV程度まで低下したことが原因と考えられたので、第1槽のORPを上げる目的で、硝化液の循環率を1から1.5に増加させたところ、硝化成績はすぐに回復した。一方脱窒については、循環率を1としたRun1及びRun2では、第1槽の酸化態窒素濃度(NOx−−N)が0.5mgN/L以下まで脱窒された。一方循環率を1.5としたRun3及びRun4では、1mgN/L程度の酸化態窒素が第1槽で残存する場合もあった。しかし、0RPは−150mV以上まで増加し、後段の硝化反応は安定して行われた。第3槽における酸化態窒素濃度は、運転開始10日後で5mgN/L程度残存しており、その後徐々に低下した。20日目以降は安定して1mgN/L以下まで脱窒が完了するようになっており、馴致には約20日間が必要であったことが分かる。
【0027】
メタノールの添加COD/NOx−−N比を図12に示す。本発明では、運転開始時は微生物の増殖を促すために、メタノール注入量を多めに設定し、COD/N比では11〜17とした。しかしながら、S−CODCr濃度の測定結果より過剰なメタノールは分解されずに流出したこと、馴致期間は他の文献で示されている例と比して著しい短縮は見られなかったことを考えると、過剰にメタノールを添加した効果は少なかったと思われる。実施設における運転立ち上げの場合、過剰なメタノールの流出は好ましくないので、過剰なメタノール添加は不要であると考えられる。第3槽での脱窒は、メタノール添加量を制御したRun2以降で安定した。全段の硝化が安定し、COD/N比を4.5以上とした期間では、残存酸化態窒素濃度を0.5mgN/L以下まで脱窒が行われ、第3槽のT−N濃度は2mgN/L以下を達成した。
リン濃度についての経日変化を図13に示す。凝集剤を添加した効果により、最終的に0.2mgP/L程度まで安定して除去された。ただし、凝集沈殿処理後で第1槽(生物浄化装置)流入時でも、0.5〜1mgP/L程度は維持されていたので、生物処理に必要なリンは確保されていた。
【0028】
層別分布
第3槽について、層別分布の測定結果を図14に示す。41日目では、ろ床下部では脱窒が進行し、ろ床中央部での残存酸化態窒素濃度は0.1mgN/Lであった。S−CODCr濃度は、メタノールの注入により、54mg/Lで流入した後、DO消費及び脱窒により減少し、ろ床中央部で19mg/Lとなり、流出時には再曝気部の効果により17mg/Lまで低下した。DO濃度は、ろ床中央部で0.3mg/L以下まで減少した後、再曝気部により9mg/Lまで回復した。I64日目でも、ほぼ同様の結果が得られた。これらの測定結果より、上向流式ろ床の中央部から曝気を行うことにより、下部で脱窒を、上部で残存有機物の除去及びDO濃度の回復を行えることが示された。
【0029】
有機物源
第3槽では、脱窒に必要な有機物源として、メタノールを添加し、その添加量の自動制御を試みた。その際には、添加量の設定が重要である。そこでRun1では重点的にメタノール添加量を幅広く変動させる運転を行った。メタノール添加量と第3槽中間部での残存酸化態窒素の関係を図15に示す。COD/N比が4.5以上の場合、残存酸化態窒素濃度は0.5mg/L以下となった。残存有機物については、COD/N比が6以下の場合、S−CODCr濃度は30mg/L程度を維持することができ、特に問題が無かった。これより、COD/N比をRun1〜3では4.5に設定した。Run4では、より安定したメタノールの添加を行うために、COD/N比を5とした。
【0030】
自動制御
いずれの槽でも、全期間を通じて逆洗は自動運転にて確実に制御することができ、損失水頭は回復した。第3槽における、メタノール添加量の制御や曝気量の制御も、前述の通り作動した。これより本システムの重要な目標である、「容易な維持管理」が可能であることが示されている。
【0031】
本発明の生物膜ろ過システムは、生物浄化装置の下流側に生物膜ろ過型浄化槽を設け、そこに制御された水素供与体を注入しその後制御された酸素含有気体を注入することと特徴とするが、このような生物膜ろ過システムは上記の実施例により以下のような顕著な効果を有することが明らかになった。
まず、図11の全窒素量(TN)及び溶解性窒素(SN、約1μmのフィルターを通した処理液の窒素量)をみると、初期の約20日間の馴致期間後には多少のばらつきはあるが、前段の第2槽の生物膜ろ過では約10mg/L程度までしか下がらなかったのが、この第3槽(即ち、本発明で追加した生物膜ろ過型浄化槽)を通過した処理液においては約1mg/L以下まで劇的に下がっていることが分かる。図15においては、実施例で用いたシステムにおいて、COD/Nを3〜7に制御することにより窒素(NOx−−N)をこのように低く制御できることを示している。
これは本発明の生物膜ろ過システムにおいて、従来技術ではなし得なかった窒素の完全除去が可能になったことを示している。
【0032】
次に、図14の下2図はS−CODCr(約1μmのフィルターを通した処理液の化学的酸素要求量(酸化にクロム系を用いる。))を示すが、ろ材充填部分(2m)の真中(即ち、高さ1mの位置)において酸素含有気体が注入されており、ろ材充填部分の終点(即ち、高さ2mの位置)において酸素濃度が7〜9mg/Lとなっているのが分かる。現在の水質汚濁に係わる環境基準を達成するためには、放流する処理液の酸素濃度は5mg/L以上であることが重要であり、この処理システムにより排出された処理液はこのレベルを満たしていることがわかる。
即ち、これらから分かるように、本発明の生物膜ろ過システムにおいては制御量の酸素含有気体を注入することから、前述のように窒素の除去を完全にするとともに、排出時の処理液の酸素濃度を適当な値にコントロールすることができる。
【0033】
表2のHRT(反応器)をみると、全てのRunでHRTが5.5〜6.2である。このようなHRT(滞留時間)にも係わらず、図11、14、15に示すように窒素量が約1mg/L以下と低い。これは従来窒素量が10mg/LにするためにHRTが10時間程度かかっていたことと比べると極めて早いといえる。
更に、図8に示すように、本発明の生物膜ろ過システムは最終沈殿池を設けていないにもかかわらず、第3槽から排出された処理液の透明度が100度以上になっている。このように本発明の生物膜ろ過システムの第3槽により透明度が顕著に改善したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実験装置を示す図である。図中の第1槽と第2槽が、"生物浄化装置"に相当し、第3槽が"生物膜ろ過型浄化槽"に相当する。
【図2】水温の経日変化を示す図である。
【図3】DO濃度の経日変化を示す図である。
【図4】ORPの経日変化を示す図である。
【図5】pHの経日変化を示す図である。
【図6】アルカリ度の経日変化を示す図である。
【図7】SS濃度の経日変化を示す図である。
【図8】透視度の経日変化を示す図である。
【図9】CODCr濃度の経日変化を示す図である。
【図10】BOD濃度の経日変化を示す図である。
【図11】窒素の経日変化を示す図である。
【図12】メタノール添加COD/NOx−−N比の経日変化を示す図である。
【図13】リン酸濃度の経日変化を示す図である。
【図14】第3槽層別分布を示す図である。
【図15】注入メタノールのCOD/N比と残存酸化態窒素濃度の関係を示す図である。
【技術分野】
【0001】
この発明は、生物膜ろ過を利用したろ過システムに関し、より詳細には、生物膜ろ過装置等の生物浄化装置の下流に、制御された水素供与体を注入しかつ制御された酸素含有気体を注入する生物膜ろ過型浄化槽を配したろ過システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下水道の普及率の増加とともに都市部では汚泥の処理・処分が大きな問題となっており、汚泥を効率的に処理するための集約化が進められている。汚泥集約処理プラントで発生する大量かつ高濃度の返流水を従来のように近隣の下水処理場に戻すことは近隣下水処理場に対して大きな負荷量となるため、負荷量を低減する処理を行う必要がある。また、汚泥集約処理プラントでは敷地面積に制約があり、省スペース型の返流水処理方式が要求される。
1998年度末における下水道の普及率は政令指定都市において97%に達し、下水道整備は中小市町村に重点が移って来ている。また、水環境保全に対する意識が高まるなか、閉鎖性水域の富栄養化対策や下水処理水の循環再利用などを目的とした高度処理の促進も重要な課題となっている。高度処理法における現在の主な除去対象物質は、標準活性汚泥法で除去できない窒素とリンであり、これらの除去方式として、循環式硝化脱窒法(窒素除去)や嫌気好気法(リン除去)などがすでに実用化されている。
【0003】
最近では、標準活性汚泥法と同等の滞留時間で、窒素、リンの同時除去可能な担体投入型活性汚泥法が開発され、その普及が期待されている。一方、生物膜ろ過法は物理的なろ過作用に加えて、ろ材に高密度に付着した微生物の働きにより溶解性有機物の除去や硝化を高速で行えることから、高機能な生物処理装置として開発が進められてきた(非特許文献1など)。小規模下水処理においては、前記特長に加え、沈でん池が必要なく汚泥管理が不要で維持管理が容易であることから、好気的条件で処理する好気性ろ床法が活性汚泥法に代わる二次処理方式として実用化が進んでいる。また、下水二次処理水を対象とした高度処理としても適用が進んできている。しかしながら、実用化が進んでいるこれらの方式は窒素除去に対応していないため、生物膜ろ過法の特長を生かした窒素除去プロセスが望まれていた。
【0004】
発明者等は、小規模下水向けの窒素除去プロセスとして、比重が水より軽い浮上ろ材を用いた生物膜ろ過法による窒素除去装置の開発を行った(非特許文献2など)。生物膜ろ過法のろ材として浮上ろ材を用いた場合、上向流で通水し、充填層に通気管を設置することで、通気管の下部を嫌気部、上部を好気部とすることができ、一塔で窒素除去が可能となる(非特許文献3)。また、嫌気性ろ床に浮上ろ材を用い、ろ床下部を沈でん部とすることで最初沈でん池を兼ねた脱窒槽とすることが可能であり、既設の好気性ろ床と組合せることで窒素除去を行うことができる(非特許文献4)。
このような背景のもと、発明者らは汚泥集約処理の返流水の効率的な処理方式として、SS、リンの除去を目的とした前処理プロセスと有機汚濁物質、窒素の除去を目的とした生物処理プロセスとからなる処理システムの開発を行ってきた(非特許文献5など)。
【0005】
【非特許文献1】用水と廃水, vol.25, No.5 (1983)、志村ら「生物膜ろ過法を用いた窒素除去プロセス」第31回下水道研究発表会講演集(1994)
【非特許文献2】佐久間ら「浮上ろ材を用いた生物膜ろ過法による窒素除去」第4回北大衛生工学シンポジウム講演論文集(1996)
【非特許文献3】Rogalla et.al. "Upscaling a compact nitrogen removal process" Wat. Sci. Tech.(1992))
【非特許文献4】田中ら「小規模下水処理プロセスに関する研究」荏原インフェルコ時報第104号(1991)
【非特許文献5】エバラ時報 No.187 (2000-4)、(社)日本下水道協会 第38回下水道研究発表会講演集p538-540(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の前凝集及び生物膜ろ過の組み合わせ等の生物浄化装置にて処理された処理液の全窒素濃度の限界は10mg/L程度であり、この値以下に窒素除去をすることは極めて困難であった。また、通常10〜12時間であるHRT(Hydroric Retention Time、滞留時間)を短縮するという要望が強い。更に、最終沈殿池を設けずに処理液の透明度を改善するという要望も強かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明においては、従来の生物処理装置の下流に更に生物膜ろ過槽を設けることにより、完全な窒素除去を行うことのできるろ過システムを提供する。本発明においては、まずこの生物膜ろ過槽の下層(上流側)を嫌気性として、そこに水素供与体を注入してNOx−N(即ち、NO2−N及びNO3−N)を除去することを図った。そのために、その上流で被処理液の窒素濃度を測定し、その窒素濃度において窒素を除去できるように制御された量の水素供与体を注入できるようにした。次に、この生物膜ろ過槽のほぼ中ほどから酸素含有気体を強制的に注入することによりその上層(下流側)を好気性として、下層(上流側)において窒素を処理した残量の水素供与体を除去することを図った。この段階により同時に処理液の酸素濃度を確保することも可能になる。この段階(下流側)があるため、この生物膜ろ過槽は上向流式とならざるを得ない。また、この段階(下流側)があるために、前段(上流側)では十分な又は必要に応じて過剰の量の水素供与体を用いることが可能になり、窒素の除去を完全にすることが可能になる。ここで水素供与体の除去を行い、必要に応じて被処理液の酸素濃度を所定濃度に確保するために、ろ材充填部を通過した被処理液の溶存酸素量を測定し注入する酸素含有気体量を制御する。
【0008】
即ち、本発明は、生物浄化装置及びその下流側に設けた生物膜ろ過型浄化槽から成る生物膜ろ過システムであって、該生物膜ろ過型浄化槽を上向流式として、該生物膜ろ過型浄化槽の中間部にろ材充填部分を配し、該ろ材充填部分の上流に酸化態窒素(NOx−N)検知手段を設け、該酸化態窒素検知手段からの信号により制御された量の水素供与体を該ろ材充填部分の上流に注入し、一方該ろ材充填部分の下流に溶存酸素(DO)検知手段を設け、該溶存酸素検知手段からの信号により制御された量の酸素含有気体を該ろ材充填部分のほぼ中央部に注入することを特徴とする生物膜ろ過システムである。
この酸化態窒素検知手段は、生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の上流から採取した被処理液のNO2−N及びNO3−Nの量を測定する装置であればよく、この検知手段からの信号はこれらの窒素の全量に関するものである。この水素供与体の注入量を、COD/N比(mgCOD/mgN)が2.4以上、特に3〜8、より特に4〜5となるように制御することが好ましい。ここで、CODは水素供与体に因る量であり、Nは、NOx−Nの量を表す。この制御は通常これらの範囲内に任意の設定値を設け、COD/N比がこの設定値の近傍にあるようにするように行われる。この水素供与体を生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の上流から注入する。その注入位置は前記酸化態窒素検知手段による採取位置よりも下流であることが好ましい。
【0009】
また、溶存酸素検知手段は、生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分の下流から採取した被処理液の溶存酸素量を検知する装置であればよい。酸素含有気体の注入量を、DO(溶存酸素量)が5mg/L以上、特に5〜8mg/L、より特に5〜7mg/Lとなるように制御することが好ましい。この制御は通常これらの範囲内に任意の設定値を設け、DOがこの設定値の近傍にあるようにするように行われる。酸素含有気体は生物膜ろ過型浄化槽のろ材充填部分のほぼ中央部に注入する。中央部とはこのろ材充填部分の最上流部と最下流部の中央を意味し、ほぼ中央とはその上流及び下流に有効量のろ材があればよいという意味である。
水素供与体は水に可溶性で比較的低分子量の有機物であればよく、メタノール、エタノール、IPA又は酢酸等が挙げられるが、コスト面などからメタノールが好ましい。
【0010】
上記生物浄化装置は、従来知られているいかなる微生物を利用した浄化槽であってもよく、例えば、活性汚泥を用いた処理槽や生物膜ろ過法を用いた浄化槽であってよいが、生物膜ろ過型の浄化装置であることが好ましい。この生物膜ろ過型の浄化装置は、一方(通常は上流側)を嫌気性ろ床(無酸素性ろ床)から成る第一槽として他方(通常は下流側)を好気性ろ床から成る第二槽とするもの(例えば、(社)日本下水道協会 第38回下水道研究発表会講演集p538-540(2001))が好ましいが、その下部が無酸素性ろ床から成り、その上部が好気性ろ床から成る単一槽であるものも好ましい。この好気性ろ床からの流出水の一部を、無酸素ろ床に循環してもよい。
本発明の生物膜ろ過システムは上記のもので十分にその効果を発揮するものであるが、前記生物浄化装置の上流に更に凝集処理装置を設けてもよく、この凝集処理装置が、沈殿槽並びにその上流に無機凝集剤の攪拌槽及び有機凝集剤の攪拌槽の少なくとも一方から成るものであることが好ましい。このような前凝集処理を設けることにより、後段の生物処理への負荷を低減させるとともに、リンを効率的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明を制限することを意図するものではない。
本発明の生物膜ろ過システムは、ろ過といった物理的効果とろ材表面に付着増殖した微生物群による生物反応とを同時に活用することが可能である。そのため、最終沈殿池は不要であり、硝化や脱窒などの反応に関わる微生物群を高濃度に保持可能なので、省スペース型の反応器となる。生物膜ろ過システムは、無酸素性ろ床、好気性ろ床及び仕上げろ床より構成され、好気性ろ床から無酸素性ろ床へは硝化液を循環させた。前段での無酸素性ろ床の活用は、有機物及び固形物の除去にも有効であり、後段の好気性ろ床への有機物及び固形物の負荷を和らげることで、好気性ろ床での硝化促進につながる。無酸素性ろ床及び好気性ろ床は上向流で1つのろ床として中間部より曝気することによっても対応できる。仕上げろ床は、上向流式としてろ床の中間部より曝気することで、下部を無酸素槽、上部を好気槽とした。流入前にメタノールを添加することにより下部で残存酸化態窒素を脱窒させ、上部では残存メタノールの酸化及びDO濃度の回復を行うという、仕上げの処理を行った。仕上げろ床により、ほほ完全な窒素除去が期待できる。
【0012】
生物膜ろ過システムの通水方向やろ材については、種々の組み合わせが提示されている。その中で反応器の下部を沈殿池とし、ろ床部の中間に散気管を設置することで、「沈殿池−無酸素槽−好気槽」を1つの反応器にまとめ、装置のコンパクト化を図ることが可能であることから、本発明では上向流式を採用した。ろ材は、洗浄の簡易さを考慮して、浮上性のろ材を用いた。
本発明の生物膜ろ過システムの場合、運転を継続するとろ床部にSS(浮遊物質)成分が捕捉され、損失水頭が増加するので、逆洗操作が必要である。ろ床の逆洗操作は、空気洗浄、処理水による洗浄、排水の過程を組み合わせて設定する。脱窒に関わる微生物はほとんどが通性嫌気性であり、通常運転時には曝気を行わない生物浄化装置(例えば、図1の第1槽)でも、曝気による洗浄を行って問題がない。これらの操作は全て、シークエンサーや電磁弁などを活用しながら自動制御で行う。洗浄操作は・損失水頭が設定値を超過した場合、もしくは洗浄後の処理継続時間が設定値を超過した場合に開始するように自動制御を組み込んだ。
【0013】
本発明では、仕上げ槽(生物膜ろ過型浄化槽)における制御装置を組み込んだ。連続測定装置により、好気性ろ床部より流出する液中の酸化態窒素濃度測定を連続的に行い、測定値に応じて水素供与体(例えば、メタノール)添加量を制御した。脱窒に必要な水素供与体を適切に制御することで、無駄な水素供与体添加を防ぎながら、安定した脱窒処理が可能である。連続測定装置による、仕上げろ床流出水の溶存酸素濃度の連続測定も行い、測定値に応じて仕上げろ床の曝気量を制御した。これより、過大な曝気を減らし、使用電気料の節減につながる。
本発明のようにSS負荷の低減や硝化反応の促進、そしてリン除去の観点から、前凝集沈殿処理と生物膜ろ過反応器を組み合わせ、更に各種の自動制御を組み込んだ発明例は我が国で見られない。
【実施例】
【0014】
図1に示すフローの実験装置を、合流式下水道である実下水処理場に設置した。この処理場の沈砂池越流水を対象下水とし、前凝集・沈殿で処理した後に生物処理を行った。沈殿池の前段に、前凝集沈殿処理のために、凝集剤添加装置、急速撹伴槽及び緩速撹伴槽を設置した。前凝集条件は表1に示すとおりである。
【0015】
【表1】
【0016】
凝集剤としては、FeC13(添加率:10mgFe/L)と高分子凝集剤(添加率:0.25mg/L)を添加し、急速撹伴及び緩速撹絆の水理学的滞留時間(HRT)は各5分間、最初沈殿池のHRTは1時間とした。ろ床部のHRTは、第1槽で0.9時間、第2槽で1.3〜1.1時間、第3槽で1.0〜0.5時間の範囲で変化させ、第2槽から第1槽への循環率は1.5、及び1の2段階で変化させた。
【0017】
生物膜ろ過システムは、第1槽、第2槽(以上、本願発明の"生物浄化装置"に相当する。)及び第3槽(本願発明の"生物膜ろ過型浄化槽"に相当する。)の3槽より構成した。第1槽及び第2槽は円筒形で、直径50cm、高さ3.8mとした。これは、壁面の影響を考慮せずに、逆洗などの操作を含めて、実規模装置と同様の運転を検討するのに十分な規模である。第3槽も円筒形で、高負荷運転の実験にも対応できるように、直径20cm、高さ4.0mとした。そして、各槽に浮上ろ材を投入した。ろ床厚は、一般的に2〜4mが採用されることが多く、本発明では縦に積み重ねる可能性も考慮して、2mとした(即ち、ろ材充填部分)。水質の層別分布を把握するために、ろ材充填部にサンプリングタップを設けた。第1槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、26cm(タップ2)、76cm(タップ3)、136cm(タップ4)、171cm(タップ5)の5ケ所、第2槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、60cm(タップ2)、112cm(タップ3)、141cm(タップ4)の4ヶ所、第3槽ではろ材充填部下端より0cm(タップ1)、10cm(タップ2)、50cm(タップ3)、100cm(タップ4)、150cm(タップ5)の5ヶ所とした。ろ材として、比重0.16で球形の発泡ポリスチレン製のものを用い、その有効径を、第1槽のものは6mm、第2槽のものは4mm、第3槽のものは3mmとした。槽上部には、ろ材の流出を防止すると共に、均一な集水を保持するため、ウェッジワイヤースクリーンを設置した。運転時の曝気及び空気洗浄を行うために、各槽の底部に散気菅を設け・コンプレッサーから曝気を行えるようにした。
【0018】
生物膜ろ過システムの場合、運転を継続するとろ床部にSS成分が捕捉され、損失水頭が増加するので、逆洗操作が必要である。ろ床の逆洗操作は、空気洗浄、処理水による洗浄、排水の過程を組み合わせて設定した。脱窒に関わる微生物はほとんどが通性嫌気性であり、通常運転時には曝気を行わない第1槽や第3層下部でも、曝気による洗浄を行って問題がない。これらの操作は全て、シークエンサーや電磁弁などを活用しながら自動制御で行った。洗浄操作は、損失水頭が設定値を超過した場合、もしくは洗浄後の処理継続時間が設定値を超過した場合に開始するように自動制御を組み込んだ。
【0019】
運転条件を表2に示す。
【表2】
【0020】
本発明では、運転期間を馴致期間であるRun0、ならびにRun1からRun4までの5つに分けた。運転期間中の水温の経日変化は図2に示すとおりであり、冬期には15℃程度まで低下した。逆洗は、第1槽では損失水頭が2mを超過した場合、第2槽では「処理継続時間が4.3〜7.7dの間での設定値に達した場合に、第3槽では損失水頭が2mを超過した場合に行った。
第1槽及び第2槽は約1年間運転したものを用い、第3槽は0日目に運転を開始した。活性汚泥を第3槽に70L投入し、微生物がろ材上に付着するようにろ床部全体の曝気を2日間行った。そして、2日目より、Run1と同一の流量で通水を開始した。当初は微生物の増殖を促進するために、メタノール注入量は、必要量の3倍を目安として、11〜17mgCOD/mgNに設定した。ろ床部全体の曝気はそのまま継続し、6日目からろ床中間部からの曝気に切り替えた。これらの操作を行い、最初の29日間を第3槽の馴致期間(Run0)とした。
【0021】
処理状況を把握するため、週1〜2回の頻度で水温、DO(溶存酸素)、及びORP(酸化還元電位)を現地で午前9時〜午前10時の間に測定した。あわせてオートサンプラーによる24時間コンポジット採水を行い、pH、アルカリ度、透視度、SS、CODCr、BOD、各態窒素ならびに各態リンについて水質分析を行った。加えて、適宜各生物反応槽のろ材充填部に設けたサンプリングタツプより午前9時〜午前10時の間でに採水し、層別の水質分布を測定した。第1槽の損失水頭については、圧力計をレコーダーに接続することで連続測定を行った。さらに、ろ床の最終沈殿池としての性能を評価するために、標準活性汚泥法の最終沈殿池越流水について、SSの測定も実施した。
測定項目及び測定方法を表3に示す。
【0022】
【表3】
【0023】
なお、以下の記述で「T−」及び「S−」はそれぞれ「全」及び「溶解性」の意味であり、「流入」は沈砂池越流水を、「沈殿」は流入水が凝集沈殿処理もしくは最初沈殿池を経た水で生物処理槽に流入する水を、「第1槽」、「第2槽」、及び「第3槽」は生物処理槽の各該当槽からの流出水を指す。本システムでは最終沈殿池を設けていないので、第3槽の流出水が処理水となる。
【0024】
連続運転結果
DO濃度についての経日変化を図3に示す。第1槽及び第2槽でそれぞれ0及び6〜9mg/L程度が維持され、脱窒及び硝化に適した条件を保った。第3槽では、曝気量制御を組み込み、6mg/L程度が安定して維持された。ORPについての経日変化を図4に示す。第1槽は脱窒の進行具合により0〜−170mVで、第2槽及び第3槽は+100〜+200mVで推移した。ただし、100日目あたりでは、第1槽で−170mV程度まで、第2槽で+80mV程度まで低下し、硝化成績の悪化が見られた。
pH及びアルカリ度についての経日変化を図5及び図6にそれぞれ示す。pHは、第1槽で6.8〜7.0程度であり、凝集剤添加及び硝化の効果により第2槽で6程度まで低下した。同時にアルカリ度は20〜40mgCaCO3/L程度まで低下した。しかし、後述のとおり全てのRunで硝化は問題なく進行していたので、アルカリ剤の添加は不要であった。第3槽では、脱窒によりpH及びアルカリ度は回復し、処理水のpHは6.5〜6.7程度、アルカリ度は40〜60mgCaCO3/L程度であった。
【0025】
SS濃度についての経日変化を図7に示す。150mg/L程度で流入し、第2槽を通過後は、10mg/L以下まで除去された。その後、第3槽を通過後は5mg/L以下の処理水が安定して得られた。
透視度についての経日変化を図8に示す。第2槽は、20〜80cmの範囲で変動していたものの、第3槽では常に100cm以上であり、見た目にも良好な処理水が得られた。
CODCr濃度についての経日変化を図9に示す。200mg/L程度で流入し、第2槽を通過後は、40mg/L程度まで除去された。その後、第3槽では20mg/L程度まで除去された。BOD濃度についての経日変化を図10に示す。基本的にATU添加で測定し、処理水(T)のみATU無添加の場合も併せて測定した。100mg/L程度で流入後、第2槽までで10mg/L以下まで除去され、第3槽では5mg/Lまで低下した。生物膜反応器の場合、他栄養性細菌と自栄養性細菌の競合が生じること、後述の通り硝化反応は問題なく進行していたことから、本反応器において除去されうる有機物は除去されていたものと考えられる。故に、CODCr及びBODの分析結果より、一部の有機物成分は難分解性であり、ある程度長いHRTによる処理が必要であることが分かる。Run4では、好気性処理でのHRTをわずか1.6時間としたために、BODとしては検出される成分の一部は十分には除去されなかったものと考えられる。また、第3槽で添加したメタノールのうち、残存分はほぼ除去されているものと考えられる。
【0026】
各態窒素濃度についての経日変化を図11に示す。第2槽のアンモニア性窒素濃度(NH4+−N)は全期間を通じてほとんど検出されず、硝化反応は安定してなされていた。Run1の30〜45日目には0.5〜1.5mgN/L程度のアンモニア性窒素が残存した。水温の低下による硝化活性の低下が原因と考えられたので、続くRun2ではHRTを長くすることで、アンモニア性窒素の負荷を低下させた。その結果残存アンモニア性窒素は0.3mgN/L以下まで低下した。これより、冬場に硝化の完了に必要なHRTはろ床部で1.3時間以上とする必要性が明らかになった。その後、100日目辺りでは突然硝化が悪化し、第2槽のアンモニア性窒素濃度が8mgN/Lまで増加した。第1槽のORPが−180mV程度まで低下したことが原因と考えられたので、第1槽のORPを上げる目的で、硝化液の循環率を1から1.5に増加させたところ、硝化成績はすぐに回復した。一方脱窒については、循環率を1としたRun1及びRun2では、第1槽の酸化態窒素濃度(NOx−−N)が0.5mgN/L以下まで脱窒された。一方循環率を1.5としたRun3及びRun4では、1mgN/L程度の酸化態窒素が第1槽で残存する場合もあった。しかし、0RPは−150mV以上まで増加し、後段の硝化反応は安定して行われた。第3槽における酸化態窒素濃度は、運転開始10日後で5mgN/L程度残存しており、その後徐々に低下した。20日目以降は安定して1mgN/L以下まで脱窒が完了するようになっており、馴致には約20日間が必要であったことが分かる。
【0027】
メタノールの添加COD/NOx−−N比を図12に示す。本発明では、運転開始時は微生物の増殖を促すために、メタノール注入量を多めに設定し、COD/N比では11〜17とした。しかしながら、S−CODCr濃度の測定結果より過剰なメタノールは分解されずに流出したこと、馴致期間は他の文献で示されている例と比して著しい短縮は見られなかったことを考えると、過剰にメタノールを添加した効果は少なかったと思われる。実施設における運転立ち上げの場合、過剰なメタノールの流出は好ましくないので、過剰なメタノール添加は不要であると考えられる。第3槽での脱窒は、メタノール添加量を制御したRun2以降で安定した。全段の硝化が安定し、COD/N比を4.5以上とした期間では、残存酸化態窒素濃度を0.5mgN/L以下まで脱窒が行われ、第3槽のT−N濃度は2mgN/L以下を達成した。
リン濃度についての経日変化を図13に示す。凝集剤を添加した効果により、最終的に0.2mgP/L程度まで安定して除去された。ただし、凝集沈殿処理後で第1槽(生物浄化装置)流入時でも、0.5〜1mgP/L程度は維持されていたので、生物処理に必要なリンは確保されていた。
【0028】
層別分布
第3槽について、層別分布の測定結果を図14に示す。41日目では、ろ床下部では脱窒が進行し、ろ床中央部での残存酸化態窒素濃度は0.1mgN/Lであった。S−CODCr濃度は、メタノールの注入により、54mg/Lで流入した後、DO消費及び脱窒により減少し、ろ床中央部で19mg/Lとなり、流出時には再曝気部の効果により17mg/Lまで低下した。DO濃度は、ろ床中央部で0.3mg/L以下まで減少した後、再曝気部により9mg/Lまで回復した。I64日目でも、ほぼ同様の結果が得られた。これらの測定結果より、上向流式ろ床の中央部から曝気を行うことにより、下部で脱窒を、上部で残存有機物の除去及びDO濃度の回復を行えることが示された。
【0029】
有機物源
第3槽では、脱窒に必要な有機物源として、メタノールを添加し、その添加量の自動制御を試みた。その際には、添加量の設定が重要である。そこでRun1では重点的にメタノール添加量を幅広く変動させる運転を行った。メタノール添加量と第3槽中間部での残存酸化態窒素の関係を図15に示す。COD/N比が4.5以上の場合、残存酸化態窒素濃度は0.5mg/L以下となった。残存有機物については、COD/N比が6以下の場合、S−CODCr濃度は30mg/L程度を維持することができ、特に問題が無かった。これより、COD/N比をRun1〜3では4.5に設定した。Run4では、より安定したメタノールの添加を行うために、COD/N比を5とした。
【0030】
自動制御
いずれの槽でも、全期間を通じて逆洗は自動運転にて確実に制御することができ、損失水頭は回復した。第3槽における、メタノール添加量の制御や曝気量の制御も、前述の通り作動した。これより本システムの重要な目標である、「容易な維持管理」が可能であることが示されている。
【0031】
本発明の生物膜ろ過システムは、生物浄化装置の下流側に生物膜ろ過型浄化槽を設け、そこに制御された水素供与体を注入しその後制御された酸素含有気体を注入することと特徴とするが、このような生物膜ろ過システムは上記の実施例により以下のような顕著な効果を有することが明らかになった。
まず、図11の全窒素量(TN)及び溶解性窒素(SN、約1μmのフィルターを通した処理液の窒素量)をみると、初期の約20日間の馴致期間後には多少のばらつきはあるが、前段の第2槽の生物膜ろ過では約10mg/L程度までしか下がらなかったのが、この第3槽(即ち、本発明で追加した生物膜ろ過型浄化槽)を通過した処理液においては約1mg/L以下まで劇的に下がっていることが分かる。図15においては、実施例で用いたシステムにおいて、COD/Nを3〜7に制御することにより窒素(NOx−−N)をこのように低く制御できることを示している。
これは本発明の生物膜ろ過システムにおいて、従来技術ではなし得なかった窒素の完全除去が可能になったことを示している。
【0032】
次に、図14の下2図はS−CODCr(約1μmのフィルターを通した処理液の化学的酸素要求量(酸化にクロム系を用いる。))を示すが、ろ材充填部分(2m)の真中(即ち、高さ1mの位置)において酸素含有気体が注入されており、ろ材充填部分の終点(即ち、高さ2mの位置)において酸素濃度が7〜9mg/Lとなっているのが分かる。現在の水質汚濁に係わる環境基準を達成するためには、放流する処理液の酸素濃度は5mg/L以上であることが重要であり、この処理システムにより排出された処理液はこのレベルを満たしていることがわかる。
即ち、これらから分かるように、本発明の生物膜ろ過システムにおいては制御量の酸素含有気体を注入することから、前述のように窒素の除去を完全にするとともに、排出時の処理液の酸素濃度を適当な値にコントロールすることができる。
【0033】
表2のHRT(反応器)をみると、全てのRunでHRTが5.5〜6.2である。このようなHRT(滞留時間)にも係わらず、図11、14、15に示すように窒素量が約1mg/L以下と低い。これは従来窒素量が10mg/LにするためにHRTが10時間程度かかっていたことと比べると極めて早いといえる。
更に、図8に示すように、本発明の生物膜ろ過システムは最終沈殿池を設けていないにもかかわらず、第3槽から排出された処理液の透明度が100度以上になっている。このように本発明の生物膜ろ過システムの第3槽により透明度が顕著に改善したことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実験装置を示す図である。図中の第1槽と第2槽が、"生物浄化装置"に相当し、第3槽が"生物膜ろ過型浄化槽"に相当する。
【図2】水温の経日変化を示す図である。
【図3】DO濃度の経日変化を示す図である。
【図4】ORPの経日変化を示す図である。
【図5】pHの経日変化を示す図である。
【図6】アルカリ度の経日変化を示す図である。
【図7】SS濃度の経日変化を示す図である。
【図8】透視度の経日変化を示す図である。
【図9】CODCr濃度の経日変化を示す図である。
【図10】BOD濃度の経日変化を示す図である。
【図11】窒素の経日変化を示す図である。
【図12】メタノール添加COD/NOx−−N比の経日変化を示す図である。
【図13】リン酸濃度の経日変化を示す図である。
【図14】第3槽層別分布を示す図である。
【図15】注入メタノールのCOD/N比と残存酸化態窒素濃度の関係を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物浄化装置及びその下流側に設けた生物膜ろ過型浄化槽から成る生物膜ろ過システムであって、該生物膜ろ過型浄化槽を上向流式として、該生物膜ろ過型浄化槽の中間部にろ材充填部分を配し、該ろ材充填部分の上流に酸化態窒素(NOx−N)検知手段を設け、該酸化態窒素検知手段からの信号により制御された量の水素供与体を該ろ材充填部分の上流に注入し、一方該ろ材充填部分の下流に溶存酸素(DO)検知手段を設け、該溶存酸素検知手段からの信号により制御された量の酸素含有気体を該ろ材充填部分のほぼ中央部に注入することを特徴とする生物膜ろ過システム。
【請求項1】
生物浄化装置及びその下流側に設けた生物膜ろ過型浄化槽から成る生物膜ろ過システムであって、該生物膜ろ過型浄化槽を上向流式として、該生物膜ろ過型浄化槽の中間部にろ材充填部分を配し、該ろ材充填部分の上流に酸化態窒素(NOx−N)検知手段を設け、該酸化態窒素検知手段からの信号により制御された量の水素供与体を該ろ材充填部分の上流に注入し、一方該ろ材充填部分の下流に溶存酸素(DO)検知手段を設け、該溶存酸素検知手段からの信号により制御された量の酸素含有気体を該ろ材充填部分のほぼ中央部に注入することを特徴とする生物膜ろ過システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−272333(P2006−272333A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187616(P2006−187616)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【分割の表示】特願2001−220985(P2001−220985)の分割
【原出願日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【分割の表示】特願2001−220985(P2001−220985)の分割
【原出願日】平成13年7月23日(2001.7.23)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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