説明

生物類捕獲器

【課題】 従来技術のペットボトルを切断し、底の付いたボトル片部と飲み口のついたボトル片部に分け、飲み口のついたボトル片部を逆にして、底の付いたボトル片部に重ね合わせ、底の付いたボトル片部に昆虫類の誘引剤を入れた昆虫類捕獲器では、蝿等の飛べる小さな昆虫であれば捕獲できるが、イグアナ科の爬虫類であるグリーンアノール等は捕獲できないという問題があった。
【解決手段】 内面は平滑な鏡面仕上げを施し、上方が開放2した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体1と、ドーム体1の底部を切断して、開口部3を形成し、上方の開放した部分上方に生餌、擬似餌を吊り下げられるようにし、さらに上方が開放した半円球状、または円錐体状からなるドーム体1の下部を重ね合わせて載置できる上方に開口部5を有する生物等を収容する収容容器4を組み合わせて形成された生物類捕獲器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、北アメリカ南東部、西インド諸島等に生息しているイグアナ科の爬虫類であるグリーンアノール等の爬虫類を捕獲する生物類捕獲器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、昆虫類を誘引し、有効に捕獲するものとして、ペットボトルを底に平行な角度で、好みの個所で切断し、底の付いたボトル片部と飲み口のついたボトル片部に分け、飲み口のついたボトル片部を逆にして、底の付いたボトル片部に重ね合わせ、底の付いたボトル片部に昆虫類の誘引剤を入れた昆虫類捕獲器(例えば、特許文献1参照)が存在している。
【特許文献1】特開2003−199470公報(特許請求の範囲、発明の詳細な説明の欄の{発明の実施の形態}の段落{0006}〜{0007}、及び図1〜図5を参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記したような従来技術のペットボトルを底に平行な角度で、好みの個所で切断し、底の付いたボトル片部と飲み口のついたボトル片部に分け、飲み口のついたボトル片部を逆にして、底の付いたボトル片部に重ね合わせ、底の付いたボトル片部に昆虫類の誘引剤を入れた昆虫類捕獲器では、蝿等の飛べる小さな昆虫であれば捕獲できるが、従来のボトルの底に昆虫類の誘引剤、例えば昆虫等の生餌を入れても、グリーンアノールは、その生餌の近くであるボトルの外側からつつくだけで、生餌を得られないと諦めて離れてしまう。このように、北アメリカ南東部、西インド諸島等に生息しているイグアナ科の爬虫類であるグリーンアノール等は捕獲できないという問題があった。
また、小笠原諸島の父島、母島等は今迄、陸続きになったことのない島であり、世界遺産で登録されるような昆虫、動物、植物が沢山生息していた。ところが、アメリカ合衆国の統治下にあったグアム島等から建設資材に紛れ込んで持ち込まれる。あるいは、1960年代から以降、アメリカ合衆国からのペットや荷物の持ち込みにより、そのペットや荷物に紛れ込んで、グリーンアノール等が持ち込まれ、この持ち込まれたグリーンアノールが小笠原諸島に生息している固有種の貴重な昆虫類等を食べつくしてしまう勢いであるというのが現状である。
この固有種の貴重な昆虫類の保護のためには、グリーンアノールを捕獲することが必要であるが、良い捕獲手段はなかった。その手段として衛生害虫を捕獲する粘着シートを樹木に取り付けて、この粘着シート上を通るグリーンアノールをその粘着力で捕獲するが、これだと粘着シートに精々一匹〜三匹だけしか捕獲できないし、しかも粘着シートの取り付けは、沢山捕獲しようとすれば人手が多数必要になり、それを取り外して処理するのも大変面倒であるという問題があった。また、固有種の貴重な昆虫類等も捕獲されてしまい、誤って貴重な昆虫類を捕獲しても生かした状態で開放もできない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の第1発明は、請求項1に記載された通りの生物類捕獲器であり、次のようなものである。
内面は平滑な鏡面仕上げを施し、上方が開放した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体と、該ドーム体の底部を切断して、開口部を形成し、前記上方の開放した部分上方に生餌、擬似餌を吊り下げられるようにし、さらに上方が開放した半円球状、または円錐体状からなるドーム体の下部を重ね合わせて載置できる上方に開口部を有する生物であるグリーンアノール等を収容する収容容器を組み合わせて形成される構成である。
【0005】
上記課題を解決するための本発明の第2発明は、請求項2に記載された通りの生物類捕獲器であり、次のようなものである。
請求項1に記載の発明に加えて、上方が開放した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体底部に設けた開口部を螺合方式にして、前記半円球状、または円錐体状からなるドーム体下部を載置する収容容器の上部を前記開口部の螺合部と螺合できるようにする構成である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第3発明は、請求項3に記載された通りの生物類捕獲器であり、次のようなものである。
請求項1、または請求項2に記載の発明に加えて、上方の空洞の半円球、または空洞の円錐体状のドーム体と、下方の生物を収容するための収容容器とを固定した状態で吊り下げられるようにする構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る生物類捕獲器は、上記説明のような構成であるので、以下に記載する効果を奏する。
(1)本発明の生物類捕獲器によれば、樹木の下における地面上に直接置いたり、樹木に吊り下げたりすることで、樹木を昇り降りして樹木上から飛び降りるようにして、餌を捕獲する習性があるグリーンアノールは樹木の上方から生餌や擬似餌を目掛けて飛びついてくる。ところが餌は、透明な小さな容器内に入っていたり、擬似餌なので咥えきれず、空洞な半円球状、空洞な円錐体状のドーム体内周面に落下し、この内周面が平滑で鏡面加工されているので、グリーンアノールが滑べり、昇って外へ逃げることができず、下方の開口部から収容容器内に落下するので捕獲が簡単に行える。しかも、粘着シートのように一匹〜三匹だけでなく、多数匹捕獲でき、人手がない場合でも1週間、半月、1ヶ月など定期的にその場所の捕獲数に見合った間隔日数を選択して回収廃棄して処分することができる。
(2)生餌、擬似餌は半円球状、円錐体状のドーム本体上方の略中心部に位置するように樹木から吊り下げたり、ドーム本体上部につば部やブラケット部を形成して、このつば部やブラケット部にワイヤーを屈曲させて取り付け、図示のようにワイヤーの上方先端からテグス糸などを取り付け、このテグス糸の先端に生餌、擬似餌を取り付けて、風などにより簡単に動くように設けたり、自動的に動くように設けることで、グリーンアノールの動きのある餌を得る習性からして、樹木の上に昇って見つけた餌を得るために飛び降りる。その結果、餌は取れずに半円球状、または円錐体状のドーム体の内周面に落下し、内周面が鏡面仕上げされているので、滑ってしまい昇って逃げることができなく、最終的には下方の収容容器内に落下するので簡単に捕獲することができる。
(3)餌は、虫等の擬似餌、あるいはプラスチックシートの小片や紙の小片等、軽く風などで飛んでいるように動くもので、生息している昆虫の色に近いような色彩を施す等、工夫をすればより捕獲が確実にでき、さらに管理も簡単にできるようになる。
(4)半円球状、または円錐体状のドーム体と下方の収容容器の連結をネジ込み式等、着脱自在にすることで、収容容器に収容させたグリーンアノールを処理するために収容容器を取り外す場合など、片手で扱うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
内面は平滑な鏡面仕上げを施し、上方が開放した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体と、該ドーム体の底部を切断して開口部を形成し、前記上方の開放した部分上方に生餌、擬似餌を吊り下げられるようにし、さらに上方が開放した半円球状、または円錐体状からなるドーム体の下部を重ね合わせて載置できる上方に開口部を有する生物であるグリーンアノール等を収容する収容容器を組み合わせて形成された生物類捕獲器である。
【実施例】
【0009】
図1は、本発明の第一実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図、図2は、本発明の第二実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図、図3は、本発明の第三実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図である。
【0010】
本発明について図1〜図3に基づいて具体的に実施例を説明する。
父島、母島等の小笠原諸島は、陸続きになったことがない海に囲まれた島であるので、沢山の固有種の貴重な昆虫類、動物、植物が生息していた。例えば、小笠原固有のセミ、トンボ類等の昆虫類が沢山生息していた。ところが、北アメリカ南東部、西インド諸島等に生息しているイグアナ科の爬虫類であるグリーンアノールが、1960年代から建築資材に紛れ込んだり、旅行者によるペットや荷物に紛れ込んで持ち込まれてしまった結果、前記の貴重な昆虫類を喰い尽くしてしまい絶滅状態に近づいている。現在では、東京都内の公園で生息している昆虫の方が多いという状態になってしまっている。
そのため、ボランティア等によるグリーンアノールの捕獲が行われているが、この手段は樹木に粘着シート等を取り付け、この粘着シート上をグリーンアノールが歩いた時に捕獲するのであるが、この粘着シートで捕獲すると、在来貴重種の昆虫類も捕獲する恐れがある。
また、樹木一杯に粘着シートを取り付けることは不可能であり、グリーンアノールの捕獲数量は限られてしまう。
以上の問題点を解消するため考えられたのが、本願発明の生物類捕獲器で、グリーンアノールだけでなく似た習性のある生物であれば同様に捕獲できるものである。ここではグリーンアノール捕獲器として説明する。
グリーンアノールはヤモリのように吸盤状のようなものがあって、樹木を昇降する習性があり、この昇降が得意である。この習性からグリーンアノールは餌を取る時は、樹木の上方に昇って樹木の下方に飛んでくる昆虫等をめがけて飛び降りるようにダイビングキャッチして餌を得ている場合が多い。
この習性を利用して、しかもヤモリのように吸盤状のようなものがあるが、滑り易い鏡面仕上げされた場所、すなわち本発明の空洞な半円球状、空洞な円錐体状のドーム体の立ち上がった内周面に落下すると、昇り上がることができない。これはグリーンアノールを捕獲して観察することで見つけることができた。この習性を利用して捕獲する捕獲器を本発明は完成させたものである。
【0011】
ここで、図1に基づいて第一実施例について説明する。
ペットボトルの再生品による空洞な半円球状、空洞な円錐体状、洗面器状などのドーム体1を用意する。このドーム体1の上方を開放2し、底部に開口部3を形成し、下方に取り付ける収容容器4と螺合できるようにネジ部を螺設する。このネジ部は収容容器4に雄ネジが形成されていれば雌ネジを、収容容器4に雌ネジが形成されていれば雄ネジを螺設する。
そして、前記ドーム体1の底部の開口部3から落下してくるグリーンアノールを収容できるように収容容器4の上方開口部5に雌雄どちらかのネジを形成して、ドーム体1と連結できるようになっている。さらに、この収容容器4の底には、雨水等の水分を排出するための排水口19が形成されている。
そして、収容容器4の径が小さい場合は、地面に置いた時安定性が少し劣るため、上方のドーム体1上部の開放2した部分に設けたつば部6に係止できるように針金等によって、上下に収容容器4の外径より大きい円輪7を形成し、この上下の円輪7を支持するように周囲に複数本の支持柱8を立設して、地面に載置した場合、底面の安定性を高めるものである。
【0012】
また、この第一実施例では、ドーム体1のつば部6を利用してワイヤを湾曲状に折り曲げた一端9を固定し、上方になるようにした他端10の先端にテグス糸11を取り付け、このテグス糸11の先端に風で動くような擬似餌や、シート状の小片を適宜な形状に切断したものを取り付けてある。尚、特に生餌の場合には、軽い透明の球体容器内に収容して取り付ける。
グリーンアノールは、樹木の上からこの動く擬似餌をめがけて飛び降りるようにダイビングキャッチをして、餌を取りにくるが、取れずにドーム体1の鏡面仕上げされた滑り易い内周面に落下して、もがいて昇り逃げようとするが、滑り落ち、下方の収容容器4に落下して捕獲できるものである。
【0013】
次に、図2に基づいて第二実施例について説明する。
この第二実施例は、ドーム体1は第一実施例と同様なものを利用し、下方の収容容器4としては既存のバケツ13を用いたもので、ドーム体1の底部の開口部3にはネジを形成せず、単に孔が設けられていて、バケツ13の上方開口部5に単に載せたものである。
【0014】
次に、図3に基づいて第三実施例について説明する。
前記第二実施例では、ドーム体1とバケツ13はネジ等で螺合するものでないので、樹木に吊り下げる場合には、バケツ13側から吊り下げ紐等を取り付けるが、図3に示すように支持部材14としてワイヤで下の円輪16にはバケツ13を支持する十字状に交差して渡した支持ワイヤ15を設け、この支持ワイヤ15でバケツ13の底を支持して全体として生物類捕獲器を吊り下げた場合でも支持できるように形成されている。
また、上部には円輪16をドーム体1の上方に形成してあるつば部6の下側で支えるように形成し、この円輪16で3ヶ所以上(本実施例として図3で示したものは4ヶ所のものである)の吊り下げ紐18を取り付けるための取り付け部17が形成されている。従って、樹木に吊り下げる場合は、前記支持部材14の取り付け部17に吊り下げ紐18を取り付け、吊り下げ紐18の他端で樹木に結び付けたり、吊り下げ紐18にフックを設けることでフックで吊り下げるものである。
また、餌は前記第一実施例と同様にドーム体1にワイヤを湾曲状に折り曲げて取り付け、テグス糸11の先に擬似餌を取り付けることはいうまでもない。
尚、この餌の取り付けるワイヤは取り付け部17を利用して餌を取り付けたワイヤを固設することもできるし、また樹木に単にテグス糸11に付けた餌をドーム体1の上方にくるように吊り下げても良い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
生物であるグリーンアノールだけでなく、グリーンアノールの習性と似た習性を持った爬虫類の捕獲には同様に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の第二実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の第三実施例である生物類捕獲器を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0017】
1・・・・ドーム体 2・・・・開放
3・・・・底部の開口部 4・・・・収容容器
5・・・・上方開口部 6・・・・つば部
7・・・・円輪 8・・・・支持柱
9・・・・一端 10・・・・他端
11・・・・テグス糸 12・・・・餌
13・・・・バケツ 14・・・・支持部材
15・・・・支持ワイヤ 16・・・・円輪
17・・・・取り付け部 18・・・・吊り下げ紐
19・・・・排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面は平滑な鏡面仕上げを施し、上方が開放した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体と、該ドーム体の底部を切断して、開口部を形成し、前記上方の開放した部分上方に生餌、擬似餌を吊り下げられるようにし、さらに上方が開放した半円球状、または円錐体状からなるドーム体の下部を重ね合わせて載置できる上方に開口部を有する生物であるグリーンアノール等を収容する収容容器を組み合わせて形成されたことを特徴とする生物類捕獲器。
【請求項2】
上方が開放した空洞の半円球状、または空洞の円錐体状からなるドーム体底部に設けた開口部を螺合方式にして、前記半円球状、または円錐体状からなるドーム体下部を載置する収容容器の上部を前記開口部の螺合部と螺合できるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の生物類捕獲器。
【請求項3】
上方の空洞の半円球、または空洞の円錐体状のドーム体と、下方の生物を収容するための収容容器とを固定した状態で吊り下げられるようにしたことを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の生物類捕獲器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−252219(P2007−252219A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77614(P2006−77614)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(591262827)株式会社シー・アイ・シー (9)
【Fターム(参考)】