生理活性ポリペプチドの細菌性送達
本発明は、コロニー形成非病原性グラム陰性菌によって、対象に生理活性ポリペプチドを送達する方法に関する。本発明によって、1つ以上の生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成グラム陰性菌を投与することによって、疾患を治療または予防する方法も提供される。前記コロニー形成非病原性グラム陰性菌を、製剤の形態で投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロニー形成グラム陰性細菌株に関する。本発明は、特に生きたコロニー形成グラム陰性菌、及び生理活性タンパク質のin vivo送達のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
動物または動物細胞へのタンパク質及びRNA等の遺伝子産物の送達は、様々な適用に望ましい。そのような適用には、感染症の治療、後天的または遺伝的な疾患または状態の治療、タンパク質抗原に対する免疫応答の誘導、様々な細胞機能の研究等が含まれる。従って、様々な細菌が治療用分子の送達のために開発及び使用されている。
【0003】
例えば、生きた弱毒化病原性グラム陰性菌がワクチンとして開発されている(Garmoryら、2003年)。さらに、粘膜経路を介して様々な保護ワクチン抗原を送達するためのベクターとして、生きた弱毒化病原性グラム陰性細菌ワクチン株を使用するためのストラテジーが開発されている(Medina、2001年;Rolandら、2005年)。そのような株は、通常、コロニー形成しない。
【0004】
グラム陽性非病原性の乳酸菌も、経口用生ワクチンとして現在開発されている(Bermudez-Humaranら、2003年)。弱毒化病原性グラム陰性細菌株とは対照的に、ラクトコッカスラクティス等のグラム陽性細菌は非病原性である。さらに、それらのグラム陽性細菌ベクターは、しばしば限定的なコロニー形成能を有する。ワクチン抗原の送達に加えて、ラクトコッカスラクティスはまた、IL-10(Steidler、2002年;Steidlerら、2003年;Huybhebaertら、2005年)、IL-12(Bermudez-Humaranら、2003年;Kimotoら、2004年)、及びIL-2(Steidler、2002年)等の多くのサイトカインの送達のために開発されている。表面に固定されたタンパク質のグラム陽性菌による送達方法は、米国特許第6,737,521号に開示されており、ラクトコッカスラクティス中でサイトカインを送達する方法は米国特許第6,605,286号に記載されている。
【0005】
生細菌ベクターも、感染症の治療に潜在的に有用である。例えば、生細菌ベクターは壊死性腸炎等の感染症の治療に潜在的に有用である。壊死性腸炎は、腸壁中に壊死病斑を発症させて、家禽の罹患及び死亡をもたらす、ウェルシュ菌によって引き起こされる腸性毒血症性疾患である。それはまた、複雑で、部分的に未知な疫学及び発病メカニズムを有する多因性疾患である(Kaldhusdal、1999年)。ウェルシュ菌という細菌は、一般的に、家禽の胃腸管で見出される菌であるが(Tschirdewahnら、1991年)、壊死性腸炎の発症は散発的である(Cowenら、1987年)。それにもかかわらず、ウェルシュ菌の混入した餌が、ニワトリにおける壊死性腸炎の大流行と関係づけられてきた(Kaldhusdal、1999年)。健康なニワトリは比較的少ない数のウェルシュ菌をそれらの胃腸管内に有し、細菌密度の増大によって壊死性腸炎状態が引き起こされ得ることも研究によって示された(Cravenら、1999年)。
【0006】
バシトラシン、リノコマイシン、及び他の抗生物質が、壊死性腸炎を患っている家禽を治療するために一般的に使用されている(Cravenら、1999年)。しかし、ウェルシュ菌の抗生物質耐性株がニワトリ及びシチメンチョウから単離されていること(Devrieseら、1993年;Kondo、1988年;Watkinsら、1998年)、及びヒト病原体における抗生物質耐性と結びつく可能性を理由とした抗生物質使用を抑制する一般的な願望により、家禽保健衛生当局及び生産者は、伝統的な抗生物質に替わる新規な生成物の開発及び適用にますます関心を寄せている。しかし、現在までのところ、治療用生成物を送達する、合理的に設計された生細菌ベクターを用いた壊死性腸炎の治療に関する報告はない。しかし、細菌のプロバイオティック株の使用、並びに競合的排除治療のための、ほとんど特性決定されていない細菌の単一単離株及び混在細菌集団の使用に関する報告はある。
【0007】
大きな可能性を有するにもかかわらず、現在までに他の系で使用されている生細菌ベクターにはかなりの制限がある。例えば、経口投与の場合、細菌細胞は厳しい胃腸内条件に曝露され、生存時間が短く、多量の用量を投与する必要がある(Prakash及びJones、2005年)。対象から細菌が除去される結果、生理活性タンパク質の送達が限定的な持続時間のものとなる。弱毒化グラム陰性細菌ベクターの使用にともなうさらなる問題は、侵襲的及び/または反応原性ベクターの残留毒性(Tackerら、1992年)と、免疫原性コンストラクト等の生理活性ポリペプチドの有効な送達(Zhuら、2006年)との間の釣り合い得るのが難しいことである。
【0008】
従って、これらの制限によって妨げられない、改善された細菌ベクターが必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,737,521号
【特許文献2】米国特許第6,605,286号
【非特許文献1】J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons社(1984年)
【非特許文献2】J. Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press社(1990年)
【非特許文献3】T.A. Brown(編集)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、第1巻及び第2巻、IRL Press社(1992年)
【非特許文献4】D.M. Glover及びB.D. Hawes(編集)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、第1〜4巻、LRL Press社(1995年及び1997年)
【非特許文献5】F.M. Ausubelら(編集)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience社(1988年、現在までのすべての改訂も含まれる)
【非特許文献6】Ed Harlow及びDavid Lane(編集)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory社(1988年)
【非特許文献7】I.E. Coliganら(編集)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley&Sons社
【非特許文献8】「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社、1992年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはついに、対象に生理活性タンパク質を送達するのに有用な新規のコロニー形成グラム陰性細菌株を単離した。これらのコロニー形成細菌株は、対象における前記生理活性物質を必要とする特定の部位に、生理活性タンパク質を送達することを可能にする。
【0010】
従って、本発明は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを対象に送達する方法を提供するものであって、当該方法は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む。
【0011】
一実施形態では、前記細菌は大腸菌である。好ましくは、前記大腸菌は、血清型H抗原であるH10を有する。好ましい実施形態では、前記大腸菌は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択された株である。
【0012】
別の実施形態では、前記細菌はサルモネラの株である。好ましくは、前記株は、サルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである。
【0013】
別の実施形態では、前記細菌は選択マーカーで標識されている。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、前記対象はトリである。好ましくは、前記対象は家禽であり、より好ましくは、前記対象はニワトリである。
【0015】
本発明の別の実施形態では、前記細菌は前記対象の粘膜表面でコロニー形成する。好ましくは、前記細菌は、前記対象の腸でコロニー形成する。
【0016】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である。
【0017】
好ましい実施形態では、前記サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される。好ましくは、前記サイトカインはIL-6である。
【0018】
別の実施形態では、前記抗菌ペプチドは、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはピシコリン(Piscicolin)126、ディベルシン(divercin)V41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、もしくはディベルジシン(divergicin)750等のバクテリオシン、あるいはこれらの抗菌ペプチドのうちのいずれかの合成バリアントである。好ましくは、前記バクテリオシンは、ピシコリン126またはその合成バリアントである。
【0019】
好ましい実施形態では、前記グラム陰性菌は前記対象に経口投与される。
【0020】
本発明はまた、コロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法を提供し、当該方法は、
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;及び
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む。
【0021】
好ましくは、工程(i)は、前記対象における、異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記1つ以上のグラム陰性細菌株を単離する工程を含む。
【0022】
別の実施形態では、この方法の工程(i)は、複数の細菌株を単離する工程を含む。
【0023】
別の実施形態では、この方法の工程(ii)は、複数の細菌株を標識する工程を含み、工程(iii)は、複数の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程を含む。
【0024】
別の実施形態では、前記1つ以上のグラム陰性細菌株は、1つ以上の抗生物質に対する耐性によって標識される。好ましくは、前記1つ以上の抗生物質は、リファンピシン及び/またはナリジクス酸である。
【0025】
この方法のさらに別の実施形態では、工程(iv)は、前記対象から生体試料を単離する工程、及び前記試料が前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を含むかどうか判定する工程を含む。前記試料は、例えば、組織もしくは体液試料、またはスワブで採取した試料であってよい。好ましくは、前記試料は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から単離される。
【0026】
本発明はまた、本発明の方法によって単離されたコロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を提供する。
【0027】
本発明はまた、対象における疾患を治療または予防する方法を提供するものであって、当該方法は、治療有効量の1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を、前記対象に投与する工程を含む。
【0028】
本発明はまた、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を提供するものであって、当該細菌は、対象に投与された場合に前記対象でコロニー形成する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、前記対象はトリである。好ましくは、前記対象は家禽であり、より好ましくは、対象はニワトリである。
【0030】
一実施形態では、前記細菌は大腸菌である。好ましくは、前記大腸菌は、血清型H抗原であるH10を有する。
【0031】
好ましい実施形態では、前記大腸菌は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される。
【0032】
別の実施形態では、前記細菌はサルモネラの株である。好ましくは、前記株は、サルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである。
【0033】
別の実施形態では、前記細菌は選択マーカーで標識されている。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0034】
別の実施形態では、前記細菌は前記対象の粘膜表面でコロニー形成する。好ましくは、前記細菌は、前記対象の腸でコロニー形成する。
【0035】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である。
【0036】
好ましくは、前記サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される。好ましい実施形態では、前記サイトカインはIL-6である。
【0037】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、抗菌ペプチドである。好ましくは、前記抗菌ペプチドは、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、もしくはディベルジシン750等のバクテリオシン、あるいはこれらの抗菌ペプチドのうちのいずれかの合成バリアントである。好ましい実施形態では、前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである。
【0038】
本発明はまた、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される、コロニー形成非病原性グラム陰性菌を提供する。
【0039】
好ましくは、前記グラム陰性菌は、1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するように改変されている。
【0040】
本発明はまた、対象に投与する製剤を提供するものであって、当該製剤は、本発明によるコロニー形成非病原性グラム陰性菌と製薬上許容可能なキャリアとを含む。
【0041】
明らかであるように、本発明の一態様の好ましい特性及び特徴は、本発明の他の多くの態様にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
[微生物寄託の詳細]
CCEC22と命名された大腸菌(Escherichia coli)コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(National Measurement Institute)(前身はAGAL)に寄託された。
【0043】
CCEC31と命名された大腸菌コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託された。
【0044】
CCEC59と命名された大腸菌コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託された。
【0045】
これらの寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の規定及びその下での規則に従って実施された。これは、寄託日から30年間の生存培養物の維持を保証するものである。当該特許の発行の際に前記培養物の子孫の永久的且つ無制限な利用可能性を保証するブダペスト条約の条項の下で、前記微生物は国立計測標準研究所によって利用可能となるであろう。
【0046】
本願の譲受人は、適切な条件下で培養された際に、寄託培養物が死滅するか、あるいは紛失または破壊された場合には、通知に応じて即座に同一培養物の生存標本でそれを置換することに同意している。寄託株の利用可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って付与された権利に違反して当該発明を実施することを許可するものであると解するべきではない。
【0047】
[一般的技術及び定義]
他で特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)によって一般的に理解されているものと同じ意味を有するものとする。
【0048】
他で指示がない限り、本発明で使用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫的技術は、当業者に周知の標準的手順である。そのような技術は、J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons社(1984年)、J. Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press社(1990年)、T.A. Brown(編集)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、第1巻及び第2巻、IRL Press社(1992年)、D.M. Glover及びB.D. Hawes(編集)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、第1〜4巻、IRL Press社(1995年及び1997年)、F.M. Ausubelら(編集)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience社(1989年、現在までのすべての改訂も含まれる)、Ed Harlow及びDavid Lane(編集)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory社(1989年)、並びにI.E. Coliganら(編集)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley & Sons社(現在までのすべての改訂も含まれる)等の出典の文献全体を通して記載且つ説明されており、これらを参照により本明細書に組み込む。
【0049】
便宜上、用語「ポリペプチド」は、以下において、タンパク質と呼ぶのに十分な高分子量の分子、通常ポリペプチドと呼ばれるより低分子量の生成物、及び通常ペプチドと呼ばれるさらに低分子量の生成物を表すために使用されるであろう。
【0050】
用語「活性ポリペプチド」は、本明細書において、可能な限り最も広い意味で使用される。それは、任意の有用な目的で動物宿主に送達され得る任意のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を表す。それには、治療用及び予防用のポリペプチド及びペプチドが含まれる。それは、任意の病原性ウイルス、細菌、寄生生物、または菌類に由来する抗原であってよい。そのような場合、活性ポリペプチドは、完全抗原、抗原の抗原決定基、または抗原決定基を含む抗原断片であってよい。非限定的な例として、活性ポリペプチドは、抗体、サイトカイン、ホルモン、酵素、抗菌ペプチド、またはバクテリオシンであってもよい。
【0051】
「生物活性」は、生物学的機能を果たす能力を示し、さらにポリペプチドに関する場合、当該ポリペプチドがその天然立体配置と同じか、またはそれによく類似した安定的高次構造(「折り畳まれた形態」)をとることを意味する。例えば適切な折り畳み単位、すなわちαへリックス、βシート、ドメイン、ジスルフィド架橋等の形成をともなって、正確にもしくは実質的に正確に折り畳まれた場合、ポリペプチドは、それ本来の機能を果たす能力を有するはずである。通常、ポリペプチドにおける機能単位はドメインである。抗原に関して用いる場合、「生物活性」は、当該抗原が宿主において免疫応答を誘導することを意味する。
【0052】
用語「異種ポリペプチド」は、当技術分野でよく理解されており、細胞に対して内因性でないポリペプチド、またはその天然配列が改変されている天然ポリペプチド、または組換えDNA技術による細胞操作の結果、その発現が量的に改変されている天然ポリペプチドを表す。対象のポリペプチドをコードする核酸分子は、対象のポリペプチドを産生し得る任意の生物由来であってよく、または完全に合成的な遺伝子であってもよい。前記ポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクション等によって細胞に添加することができる。
【0053】
本明細書で使用される用語「トリ」は、限定されるものではないが、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、並びにダチョウ、エミュー、及びヒクイドリを含めた平胸類等の生物等、鳥網という分類網の任意の種、亜種、または品種の生物を表す。当該用語には、セキショクヤケイ(Gallus gallus)、すなわちニワトリの様々な既知系統(例えば、白色レグホン、褐色レグホン、黄斑ロック、サセックス、ニューハンプシャー、ロードアイランド、オーストラロープ、ミノルカ、アムロックス(Amrox)、カリフォルニアグレイ、イタリアパートリッジ色(Italian Partidge-colored))、並びにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ダチョウ、及び商業的な量で一般的に飼育されている他の家禽の系統も含まれる。
【0054】
用語「免疫原性組成物」は、標的病原体に対する免疫応答を誘導する任意の組成物を包含し、例えば、動物(例えば、ニワトリ等のトリ)に投与または注射された後に、標的病原体(例えばウェルシュ菌)に対して免疫応答を誘導する組成物を包含する。
【0055】
用語「ワクチン」は、標的病原体に対する防御免疫応答を誘導するか、前記病原体に対して有効に防御する任意の組成物を包含し、例えば、動物(例えば、ニワトリ等のトリ、または豚(pig)等のブタ(porcine))に投与または注射された後に、標的病原体に対する防御免疫応答を誘発するか、前記病原体(例えばウェルシュ菌)に対する有効な防御を提供する組成物を包含する。病原体のサブユニット、例えば前記病原体から単離された抗原または免疫原またはエピトープ、及びサブユニット組成物は、前記病原体から単離された1つ以上の抗原、免疫原、またはエピトープを含むか、またはそれらから本質的になる。
【0056】
用語「抗原」は、当技術分野でよく理解されており、免疫系の構成要素、例えば抗体またはT細胞抗原受容体によって特異的に認識される高分子の部分を表す。用語「抗原」は、それに対して宿主において免疫応答が誘導され得るペプチド、ポリペプチド、または他の高分子を表す。本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、抗原エピトープ、例えば抗原エピトープである抗原断片を包含する。エピトープは、溶液中で、例えば他の分子から遊離した状態で、抗体によって認識される。エピトープは、前記エピトープがクラスIまたはクラスII主要組織適合複合体分子に結合している場合、T細胞抗原受容体によって認識される。
【0057】
この明細全体を通して、用語「含む」、または「含んでいる」もしくは「含むこと」等のその変形形態は、任意の他の要素、実態、もしくは工程、または一群の要素、実態、もしくは工程を除外することを意味するのではなく、言及された要素、実態、もしくは工程または一群の要素、実態、もしくは工程の含有を意味すると解されるであろう。
【0058】
[コロニー形成グラム陰性菌]
本発明による細菌は、コロニー形成非病原性グラム陰性菌であろう。グラム陰性菌には、サルモネラ、大腸菌、シゲラ、カンピロバクター、フゾバクテリウム、ボルデテラ、パスツレラ菌、アクチノバチルス、ヘモフィルス、及びヒストフィルスが含まれると当業者は理解するであろう。本発明の方法では、コロニー形成非病原性グラム陰性菌の任意の株が使用され得ると考慮される。
【0059】
本発明の方法で使用するための、コロニー形成非病原性グラム陰性菌の好ましい例は、大腸菌、またはサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィア等のサルモネラ種である。
【0060】
本発明の特に好ましい実施形態では、前記細菌は、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されている大腸菌株CCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、大腸菌株CCEC22、CCEC31、及び/またはCCEC59は、さらなる改変なしで用いられる。
【0062】
しかし、使用前に、これらの株にさらなる改変を加えてもよいと解されるであろう。一例として、使用前に、大腸菌株CCEC22、CCEC31、またはCCEC59を選択マーカーで標識することができる。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0063】
一実施形態では、前記選択マーカーは、1つ以上の抗生物質に対する耐性である。特定の一例では、大腸菌株は、リファンピシン(rif)及び/またはナリジクス酸(nal)に対する耐性によって標識される。この標識づけは、例えば、本明細書実施例3に記載のとおり、前記株を、増大する濃度のrif及び/またはnalを含有する増殖培地中に通して循環させることによって実現し得る。抗生物質耐性マーカー、及び緑色蛍光タンパク質等の他のマーカーも、適切なプラスミドを用いることによって前記株に導入することができる。
【0064】
[コロニー形成グラム陰性菌の同定]
本発明はまた、in vivoにおける異種生理活性ポリペプチドの送達に有用なコロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法を提供する。
【0065】
この方法は、
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;及び
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む。
【0066】
好ましくは、前記1つ以上の細菌株は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から単離される。
【0067】
異種生理活性ポリペプチドのin vivo送達に有用なコロニー形成グラム陰性株を同定するために、単離方法は、多数の細菌をスクリーニングする工程を含んでよいと解されるであろう。例えば、複数のグラム陰性細菌株を対象から単離し、標識し、次いで前記対象に再導入することができる。
【0068】
前記方法の特定の一例では、工程(i)は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から様々な細菌株を回収する工程を含む。次いで、回収された細菌は、例えば固体培地上でのストリークすることによって単一株を単離する前に、適当な培地中で増殖させることによって濃縮することができる。大腸菌またはサルモネラのコロニー形態を有するもの等、グラム陰性菌に類似した単一のコロニーを単離し、同定を確認するためのさらなる選択培地上で増殖させることができる。
【0069】
必要ではないが、次いで、単離された株を表現型分析によって、または遺伝物質の分析によってさらに特徴づけすることができる。この遺伝物質の分析は、例えば、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)または16SリボソームRNA遺伝子の分析等の標準的技術を含んでよい。
【0070】
前記方法の工程(ii)では、次いで、単離された株を選択マーカーで標識する。任意の様々な既知な選択マーカーを用いることができる。好ましい実施形態では、前記選択マーカーが、リファンピシンに対する耐性(rif)及び/またはナリジクス酸に対する耐性(nal)等、1つ以上の抗生物質に対する耐性である。この標識づけは、例えば、本明細書実施例3により詳細に記載のとおり、前記株を、増大する濃度のrif及び/またはnalを含有する増殖培地に通して循環させることによって実現し得る。
【0071】
前記方法の工程(iii)は、単離及び標識された株を、対象に、好ましくは経口投与によって対象に再導入する工程を含む。
【0072】
前記方法の工程(iv)は、標識された株が、対象でコロニー形成するかどうか判定する工程を含む。好ましい実施形態では、工程(iv)は、対象における、異種生理活性ポリペプチドの送達が所望されている部位から、生物学的試料(スワブ等)を単離する工程、及び前記試料が、前記標識された株の1つ以上を含むかどうか判定する工程を含む。好ましくは、生体試料は、対象から単離され、標識された株の存在について、ある期間にわたって何度も試験される。例えば、生体試料を単離して、1〜7週間の期間にわたって種々の時期に(例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎など)試験することができる。
【0073】
対象に再導入された後、しばらくの間(特に、2週間またはそれより長い期間にわたって)対象の中に残留している標識株は、対象でコロニー形成すると見なされる。
【0074】
従って、標識されたコロニー形成株がいったん同定されると、その標識株またはそれに対応する単離された非標識株を、対象における所望されている部位に生理活性ポリペプチドを送達するためのベクターとして用いることが可能となる。
【0075】
[生理活性ポリペプチド]
当業者ならば、本発明の方法を、様々な生理活性ポリペプチドを送達するのに使用できると解するであろう。適したポリペプチドの例には、局所的または全身的に機能し得るもの、例えば、局所または全身代謝に影響を与える内分泌活性を発揮し得るポリペプチドが含まれる。
【0076】
例えば、前記生理活性ポリペプチドは、免疫造血系を調節できるものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、体内における様々な正常細胞または腫瘍細胞の生存率、増殖、及び分化に影響を与え得るものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、傷害及び感染に対する急性炎症反応の免疫調節または誘導に影響を与え得るものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、それらの標的細胞受容体に作用するケモカインによって媒介された、細胞及び組織の感染に対する耐性、または上皮細胞の増殖、または創傷治癒の促進を強化または誘導し得るものであってよい。
【0077】
そのようなポリペプチドの特定の例には、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、副甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン、血管活性腸管ポリペプチド、構造グループ1型サイトカイン、例えば、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/β等、構造グループ2型サイトカイン、例えば、TNFファミリーのサイトカイン、例えば、TNFα、TNFβ、CD40、CD27、またはFASリガンド等、IL-1ファミリーのサイトカイン、線維芽細胞増殖因子ファミリー、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、及び神経成長因子等、構造グループ3型サイトカイン、例えば、上皮成長因子ファミリーのサイトカイン、ケモカイン、インシュリン関連サイトカイン、構造グループ4型サイトカイン、例えば、ヘレグリンまたはニューレグリン等、例えばEGFが含まれる。
【0078】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、前記に定義した生理活性ポリペプチドの受容体またはアンタゴニストであってよい。
【0079】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは抗原であってよい。前記抗原が、例えば細菌性、真菌性、寄生虫性、またはウイルス性の病原体に由来する場合、そのような病原体によって引き起こされた疾患に対して対象にワクチン接種するために、前記コロニー形成グラム陰性細菌株を用いることができる。例えば、トリ病原微生物に由来する抗原を送達するために、コロニー形成グラム陰性細菌株を用いることができるであろう。そのような微生物には、コリネバクテリア、マイコプラズマ、リステリア、ボレリア、クラミジア、クロストリジウム、コクシエラ、エリジペロスリックス、フラボバクテリウム、スタフィロコッカス、及びストレプトコッカスの種が含まれるが、これらに限定されない。家禽に感染することが知られている真菌性及び寄生虫性トリ病原体の例は、アメーボテニア、アプロクテラ(Aproctella)、鶏回虫、アスペルギルス、カンジダ、毛細線虫、クリプトスポリジウム、シアトストーマ、ディスファリンクス(Dispharynx)、アイメリア、フィンブリアリア(Fimbriaria)、ゴンギロネマ、ヘテラキス、ヒストモナス、オキシスピルラ(Oxyspirura)、プラズモディウム、ライリエンチヤ、ストロンギロイデス、スブルラ、シンガムス、テトラメレス、及び毛様線虫の種である。家禽に感染することが知られているウイルスは、アデノウイルス(例えば、出血性腸炎ウイルス)、アストロウイルス、コロナウイルス(例えば、伝染性気管支炎ウイルス)、パラミキソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、トリ脳脊髄炎ウイルス)、ポックスウイルス、レトロウイルス(例えば、トリ白血病/肉腫ウイルス)、レオウイルス、及びロタウイルスが含まれる。特定の例には、トリインフルエンザ、マレック病ウイルス、及びニワトリ貧血ウイルスが含まれる。抗原としての使用に好ましい遺伝子産物は、糖タンパク質及びリポタンパク質を含めたポリペプチド及びペプチドである。これらの原核及び真核生物に由来する抗原をコードする遺伝子は、標準的技術を用いることによって、コロニー形成グラム陰性株中にクローニングし、発現させることができる。
【0080】
本発明の別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドは、抗体、好ましくは組換え抗体である。本発明で使用される用語「抗体」は、完全な分子及びそれらの断片、例えばエピトープ決定基に結合し得るFab、F(ab')2、及びFv等が含まれる。これらの抗体断片は、その抗原または受容体と選択的に結合するある程度の能力を保持し、それらには:
(1)Fab、すなわち完全な軽鎖(VL及びCL)と、それに結合した重鎖VH-Cγ1断片とからなる断片であって、抗体全体を酵素パパインで消化して、完全な軽鎖と1本の重鎖の一部とを生成することによって、あるいはFab断片をコードするDNAを非病原性グラム陰性菌に導入することによって産生され得る断片;
(2)Fab'、すなわち抗体全体をペプシンで処理し、それに続いて還元して、完全な軽鎖と重鎖の一部とを生成することによって(抗体1分子あたり2つのFab'断片が得られる)、あるいはFab'断片をコードするDNAを非病原性グラム陰性菌に導入することによって得られる抗体分子断片;
(3)(Fab')2、すなわち2つのジスルフィド結合によって保持された2つのFab'断片の二量体;
(4)Fv、すなわち2本の鎖として発現される軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含有する遺伝子改変断片として定義される断片;
(5)一本鎖抗体(「SCA」)、すなわち遺伝的に融合された単一鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含有する遺伝子改変分子として定義される断片;並びに
(6)単一ドメイン抗体、すなわち典型的に軽鎖を欠失した重鎖可変ドメイン;
が含まれる。
【0081】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、抗菌ペプチドまたはその合成バリアントであってよい。抗菌ペプチドには、セクロピン、マゲイニン、及びデフェンシンが含まれる。セクロピンは、最初に詳細に特徴づけされた構造的に関連した抗菌ペプチドのファミリーであり、広範な分布の昆虫で見出されている(Boman、2003年)。脊椎動物では、マゲイニンファミリーの抗菌ペプチドが、アフリカツメガエルの皮膚及び胃腸管の腺から単離されており、感染に対する両生類粘膜表面の防御システムの基礎を形成すると考えられている(Soraviaら、1988年)。
【0082】
デフェンシンは、ヒトを含めたいくつかの哺乳動物種から単離された食細胞内に見出される抗菌ペプチドであり、配列内にある8つの不変残基によって特徴づけすることができる(Gabayら、1989年)。デフェンシン等のペプチドの抗菌活性のメカニズムは、選択的膜破壊を介しており、特徴的な広範囲の抗菌活性がもたらされる(Bowman、1995年)。デフェンシンの抗菌範囲には、グラム陽性及びグラム陰性細菌、マイコバクテリア、多くの真菌、及び一部のエンベロープウイルスが含まれる。
【0083】
細菌起源の抗菌ペプチドは、ミクロシン、コリシン、及びバクテリオシンとして知られている(Jackら、1995年;Inghamら、2003年)。バクテリオシンの配列、構造、及び活性メカニズムは多様であることが知られている。最も十分且つ徹底的に研究されているバクテリオシンには、クラスIバクテリオシン(ランチビオティック)及びクラスIIバクテリオシン(小さな熱安定性の非ランチオニン含有ペプチド)が含まれる(Ennaharら、2000年)。クラスIIバクテリオシンは、それらの活性及び潜在的適用から、重要なサブグループを形成している。クラスIIaバクテリオシンには、とりわけ、ピシコリン126、ロイコシンA、及びエンテロシンPが含まれる。クラスIIaバクテリオシンは、共通のN末モチーフであるYGNGVXaaCXaa(K/N)XaaXaaCXaaV(N/D)(W/K/R)Xaa(G/A/S)(A/N)を有し、配列中、より高い可変性を有する残基は、Xaaによって表される(Bhugaloo-Vialら、1996年)。バクテリオシンの抗菌特性を実証する一例では、ピシコリン126は、マウスに注射された場合、in vivoで抗菌活性を示すことが示され、肝臓及び脾臓におけるリステリア負荷が有意に低下した(Inghamら、2003年)。
【0084】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは酵素であってよい。前記酵素は、所望の活性を有する任意の酵素であってよい。例えば、食物の消化性または抗栄養化合物の除去を改善する役割を担う酵素を送達するために、本発明の方法を用いることは望ましいことであり得る。例えば、キシラナーゼ(Liuら、2005年)、グルカナーゼ(Choら、2000年)、セルラーゼ(Liuら、2005年)、アミラーゼ、レバンスクラーゼ、及びイヌロスクラーゼ(inulosucrase)等の多糖分解酵素及び線維分解酵素を送達して、食物の消化性を増大させることができる。摂取された食物の栄養価を増強するために、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、及びリパーゼを送達してもよい。フィターゼ(Vohra及びSatyanarayan、2003年;Nahashonら、1994年)及び酸性ホスファターゼ(Palaciosら、2005年)を送達して、植物の種子に見出されるフィチン酸塩の抗栄養作用を低減させることができる。
【0085】
[生理活性ポリペプチドの発現]
本発明の細菌は、その中に含有されている核酸から生理活性ポリペプチドを発現させる。前記核酸は、前記生理活性ポリペプチドをコードする核酸が細菌内での発現に適切な調節配列の制御下にある、1つ以上の核酸コンストラクトを含んでよい。
【0086】
Inghamらによって記載されたもの(Inghamら、2005年)等、細菌内への導入用の核酸を含む適切なベクターを、プロモーター配列、ターミネーター断片、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び他の配列を必要に応じて含んだ適切な調節配列を含むように選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えばファージ、またはファージミドであってよい。より詳細には、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」、第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press社を参照のこと。核酸の操作、例えば、核酸コンストラクトの調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入、及び遺伝子発現、並びにタンパク質の分析用の多数の既知の技術及びプロトコールが、「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社、1992年に詳細に記載されている。前記Sambrookら及びAusubelらの開示内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0087】
前記生理活性ポリペプチドのコード配列は、オペロン、すなわち、多シストロン性発現用核酸コンストラクトに含有されていてよい。オペロンでは、プロモーターからの転写の結果、複数のコード配列を含み、適切に配置された自らのリボソーム結合部位をそれぞれ上流に有するmRNAが生じる。従って、単一mRNAから複数のポリペプチドが翻訳され得る。従って、オペロンの使用により、本発明の細菌による複数の生理活性ポリペプチドの発現を可能となる。
【0088】
あるいは、2種の別々な生理活性ポリペプチドのコード配列は、同一核酸ベクターまたは別々のベクターの一部であってよく、そこではそれらは個別に別々のプロモーターの制御下にある。これらのプロモーターは、同じものでも、異なったものでもよい。
【0089】
本発明に従って利用されるプロモーターは、好ましくは細菌内で構成的に発現される。構成的プロモーターの使用により、発現が生じるための、誘導因子または他の調節シグナルを添加する必要性が回避される。好ましくは、前記プロモーターは、その細菌宿主細胞が生存したまま残るレベル、すなわち、たとえ増殖が維持されないでも、一部の代謝活性が保持されるレベルの発現を指示する。有利には、そのような発現は、低レベルであってよい。例えば、発現産物が細胞内に蓄積する場合、発現レベルは、細胞性タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%もしくは5%未満、例えば約1〜3%の発現産物の蓄積をもたらすものであってよい。前記プロモーターは、使用される細菌に相同なもの、すなわち、その細菌内で天然に見出されるものに相同なものであってよい。例えば、大腸菌で機能するプロモーターを使用できる。非限定的な例をとして、前記プロモーターは、大腸菌で機能するT5ファージプロモーターであってよい。
【0090】
当業者には理解されるであろうが、前記生理活性ポリペプチドは、グラム陰性菌における、発現されたタンパク質の分泌へと導くシグナル配列を含んでよい。前記シグナル配列は、好ましくは、細菌の分泌機構による、細胞からのタンパク質の分泌を指示するシグナルペプチドをコードする。増殖培地中に、細胞の内膜と外膜との間に位置するペリプラスム間隙中に、あるいは細胞表面に、前記タンパク質を分泌させることができる。発現されるタンパク質は、細菌細胞壁内の封入体の中に蓄積させることもできる。
【0091】
本発明で使用できる細菌性分泌機構の一例は、α-溶血素(HlyA)トランスポーターを利用した大腸菌のI型分泌機構である(Mergulhao、2005年)。分泌用に標的とされる組換えポリペプチドは、HlyAのC末領域を含むシグナル配列を含有する。代替の分泌機構には、SecB依存経路、シグナル認識経路(SRP)、及びツインアルギニン転移(twin-arginine translocation)経路(Mergulhao、2005年)が含まれる。適した細菌性分泌シグナルの他の非限定例には、PelB、OmpA、PhoA、及びMalEが含まれる(Choi、2004年)。
【0092】
細胞表面に組換えタンパク質を発現させる方法は、当技術分野で周知である。例として、細菌細胞表面に組換えリポタンパク質を発現するベクターは、Cullenら(2003年)に記載されており、AIDA-Iトランスポータータンパク質の天然分泌機構を利用したオートディスプレイ(Autodisplay)システムは、Jose(2006年)によって記載されている。
【0093】
[免疫原性またはワクチン組成物]
本発明の免疫原性組成物(またはワクチン)は、1つ以上の異種抗原及び/または免疫調節タンパク質を発現する、本発明によるコロニー形成非病原性グラム陰性菌を含む。例えば、前記1つ以上の抗原は、ウェルシュ菌等の細菌性病原体に由来する抗原性ポリペプチドであってよい。前記免疫原性組成物における前記1つ以上の免疫調節タンパク質は、アジュバントとして機能してよい。アジュバントとして機能し得るポリペプチドの例には、IL-6及びIL-2等のサイトカインが含まれる。前記免疫原性組成物は、製薬的または獣医学的に許容可能なキャリアをさらに含んでいてもよい。別の実施形態では、前記免疫調節タンパク質は、単独で送達される。
【0094】
当技術分野で既知のように、前記免疫原性組成物またはワクチンは、他の微生物またはウイルスから選択される、生きているまたは不活化の形態の1つ以上の免疫原、抗原、またはエピトープと組み合わせてもよい。
【0095】
[製剤]
本発明の製剤には、製剤の製造に有用なバルク製剤(bulk drug formulation)が含まれる。そのような製剤は、予防上または治療上有効な量のコロニー形成グラム陰性菌及び製薬的に許容可能なキャリアを含む。製薬的に許容可能なキャリアには、獣医学的に許容可能なキャリアが含まれる。好ましくは、本発明の製剤は、治療上有効な量の本発明の1つ以上のコロニー形成グラム陰性菌及び製薬的に許容可能なキャリアを含む。
【0096】
特定の一実施形態では、用語「製薬的に許容可能な」は、動物、とりわけヒトにおいて使用するものとして、連邦政府または州政府の監督官庁によって承認されているか、あるいは米国薬局方または他の一般的に認知されている薬局方に記載にされていることを意味する。用語「キャリア」は、希釈剤、賦形剤、またはそれとともに治療薬が投与される媒体を指す。そのような製薬的キャリアは、無菌の液体、例えば水、及び石油、動物性、植物性もしくは合成由来のものを含めた油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等であってよい。
【0097】
通常、本発明の製剤の成分は、例えば、活性剤の量を表示したアンプルもしくは小袋等の密封容器に、凍結乾燥した乾燥粉末または無水濃縮物として、別々にあるいは単位用量形態で混合されて供給される。
【0098】
前記細菌を胃腸管または鼻腔に送達するために、投与の好ましい方法は、経口摂取、鼻エアロゾル、または摂食(単独で、あるいは対象の餌、食物、または給水に組み込ませて)によるものである。これに関して、アシドフィルス菌等のプロバイオティック細菌は、細菌細胞とマンニトール等の固体支持体との凍結乾燥混合物を含有するゲルカプセルとして販売されることに留意するべきである。ゲルカプセルが液体とともに摂取された場合、凍結乾燥細胞が再水和され、生細菌となる。従って、同様の形式で、ゲルカプセル中で、または食物もしくは飲料中に混ぜるためのバルクで、本発明のグラム陰性細菌細胞を、粉末化させ凍結乾燥させた調製物として供給することができる。その後、再水和された生細菌細胞は、上部または下部消化系全体にわたる部位で集団化及び/またはコロニー形成するであろう。
【0099】
局所適用のために、前記細菌を、罹患皮膚表面に広げるための軟膏またはクリームとして処方することができる。軟膏またはクリーム製剤は、座薬等の他の標準的な製剤とともに、直腸または腟送達にも適している。局所、腟、または直腸投与に適した製剤は、医薬品化学者に周知である。
【0100】
本発明は、様々な細菌感染または細菌関連の非所望の状態を治療するための粘膜投与に特に有用であろう。
【0101】
以下に、非限定的な実施例によって及び添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【0102】
<実施例1:ニワトリからの大腸菌株の単離>
排泄腔をスワブでふき取ることによって、またはトリ盲腸内容物を回収するによって、様々な細菌種を市販のニワトリから回収した。2mLのマッコンキー培養液(MacConkey、1905年)中、37℃での各スワブの一晩培養することによって、回収された細菌を濃縮し、その後、1ループの濃縮培養物をマッコンキー寒天プレート上にストリークし、37℃で一晩インキュベーションした。典型的な大腸菌コロニー形態に類似した単一コロニーを、エオシンメチレンブルーラクトーススクロース(EMB)寒天(Holt-Harris及びTeague、1916年)プレート上にストリークし、37℃で一晩培養し、次いで80%グリセロール中に冷凍保存物を調製した。大腸菌と想定された株をCCEC1から101まで命名し、CSIROニワトリ大腸菌(CCEC)株と名付けた。プレート上で観察された特徴的コロニー形態による大腸菌の確証的同定のために、回収されたCCEC株を、さらなる選択培地寒天上(キシロースリジンデオキシコール酸(XLD))(Taylor、1965年)及びOnozによるサルモネラ同定用の寒天上(Onoz及びHoffman、1978年)で培養した。選択寒天プレート上で大腸菌として同定されなかったいずれのCCEC単離株も、さらなる分析には使用しなかった。
【0103】
最初の同定を確認するために、CCEC単離株由来の16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子の一部をPCRによって増幅した。PCRプライマーにより、様々な細菌種間の識別を可能にする16S rRNA遺伝子の可変領域を増幅した。PCR産物を精製し、配列決定し、blastn検索で整列させた場合、選択されたCCEC単離株すべての630bp産物が、大腸菌16S rRNA配列に最も近接した配列同一性を有していた。従って、ニワトリ盲腸内容物及び排泄腔スワブから回収されたCCEC単離株は、遺伝子配列、並びに指標培地上での増殖及びコロニー形態によって大腸菌として同定された。
【0104】
<実施例2:パルスフィールド電気泳動による大腸菌単離株のサブタイピング>
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分類技術を用いて、大腸菌株(CCEC単離株)をさらに分析した。すべての単離株を分析した後、前記回収物中に25種の異なるXbaI消化DNAプロファイルが見出された。
【0105】
<実施例3:抗生物質耐性大腸菌株の産生>
様々なPFGEサブタイプからの代表的株を、増大する濃度の抗生物質リファンピシンまたはナリジクス酸を含有するブロス中に通して繰り返し循環させ、これらの抗生物質に対する選択可能レベルの耐性を有する株バリアントを単離した。次いで、リファンピシン耐性を有するバリアントを、増大するレベルのナリジクス酸に通して継代培養して、両方の抗生物質に対して耐性を有する株を選択した。様々なPFGEサブタイプの代表的単離株から、我々はリファンピシン(rif)耐性の誘導体、ナリジクス酸(nal)耐性の別のセットの誘導体、及び両方の抗生物質(rif/nal)に耐性のさらに別のセットを単離した。
【0106】
<実施例4:特定病原体未感染(SPF)ニワトリの胃腸管に残留する大腸菌株の同定(試行1)>
14羽のSPFニワトリに、2重標識されたPFGEサブタイプ単離株のそれぞれを含有する1mLの混合大腸菌培養物を経口投与した。5羽の接触トリ(in-contact bird)には大腸菌培養物を直接投与しなかった。標識株の存在を検査するために、前記トリから2日毎に排泄腔スワブを採取した。標識株がニワトリ体内にどれだけ長く残留するか検査するために、42日目までスワブを採取した(図1)。混合大腸菌培養物を投与する前には、いかなる2重耐性(rif/nal)細菌単離株も検出されなかった。投与後には、試行期間である42日間の間のあらゆる試料採取点で、すべてのトリから容易に標識株を単離することができた。他のニワトリに投与した1日後のすべての接触トリから、2重耐性大腸菌を単離することができ、このことは同時収容されたトリへの迅速な拡散を示す。投与されたニワトリの盲腸内容物から2重標識株が単離された場合、4種のみのPFGEサブタイププロファイルが回収され(図2)、このことは、これらの株は残留したが、一方で他のすべての株は、実施された分析のレベルでは検出不可能であったことを示す。
【0107】
<実施例5:残留大腸菌株の血清型判定>
前記大腸菌株は、元々健康なニワトリから単離されたものであり、その後のニワトリへの投与による、いかなる有害な健康上の徴候も示されていないが、我々は、次に、前記株が共生細菌叢の無害且つ非病原性の一員であることを、それらの血清型を判定することによって、及び既知の有毒因子の存在を探索することによって確認した。株CCEC31rn、CCEC59rn、及びCCEC101rnは、微生物の同定、O及びH抗原の血清型決定、並びにこれらからの株からの任意の一般的な有毒因子の産生の確認のために、国立大腸菌研究所(National E. coli Laboratory)(オーストラリアメルボルン大学微生物学科微生物学診断部)によって分類された。3種の試料すべてが大腸菌と同定され、すべてが血清型H抗原であるH10を有していた。株CCEC31rnは、α-溶血素を発現していることが示され、O抗原(Ont)を保持していた。株CCEC59rn及びCCEC101rnは、ともに、大腸菌OR:H10として分類され、溶血性ではなかった。Ont:H10またはOR:H10の大腸菌のいずれも、ヒトまたは動物における任意の主要な疾患の発症または疾病の原因であるとは文献に記録されていない。全3株とも、ベロ毒性ではなく、シガ毒素を産生せず、いかなる細胞毒性壊死因子も産生しなかった。
【0108】
<実施例6:市販ニワトリにおける大腸菌サブタイプの残留(試行2)>
この試行は、市販のブロイラーニワトリが使用されたことを除いて、実施例5で概説したものと本質的に同じであった。試行結果の概要を図3及び4に示す。この試行では、株CCEC31rn、59rn、及び101rnは、最初の試行と同様に回収されたが、試行1で回収された集団のうちのわずかな比率を占めていたCCEC35rnは、試行2では回収されなかった。しかし、CCEC22rnは、これらの市販のトリからかなりの数が回収されたが、試行1では見られなかった。実験用大腸菌株JM109は、ニワトリから迅速に失われ、5日目後には回収できなかった。
【0109】
<実施例7:形質転換能、プラスミド安定性、及び残留大腸菌株からの組換えタンパク質発現>
多数の大腸菌単離株が、SPFニワトリ及び市販ニワトリの両方の腸に残留すると示され、それゆえ、生ベクターとしての使用するための良い候補であった。ベクターとしての使用するための第二の要件は、送達されるべき組換えタンパク質を発現するように、前記株を遺伝子操作することが可能でなければならないということである。従って、我々は、クローニングベクタープラスミドで形質転換され、モデルタンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する能力に関して、前記残留株を試験した。大腸菌株CCEC22rn、31rn、59rn、及び101rnはすべて、標準的な大腸菌電気形質転換(electro-transformation)技術を用いることによって、発現クローニングベクターpQE30で容易に形質転換された。緑色蛍光タンパク質(GFP)を保持するpTracer-CMV2プラスミドを、株CCEC31rn、59rn、及び101rnに導入した場合、全3株がUV光の下で明るい緑色の蛍光表現型を示した。同様に、形質転換細胞を液体培養で増殖させ、蛍光顕微鏡を用いて観察した場合、すべての細胞がGFPの遺伝子を発現した。従って、前記残留大腸菌株は、効率的に組換えタンパク質を発現することができる。
【0110】
前記残留株の中でのプラスミドのin vivo安定性も測定した。市販ニワトリに接種された標識株のそれぞれによって保持されている標準的な発現クローニングプラスミドpQE30(Cat)のプラスミド安定性を、投与後の28日間評価した。株CCEC31rn及びCCEC59rnを投与されたトリから単離されたコロニーは、高いプラスミド安定性を有し、73±6%及び71±16%のコロニーが、プラスミドによってコードされた抗生物質耐性の発現を保持していた。株CCEC22rn及びCCEC101rnを投与されたトリから単離されたコロニーは、図5に示すとおり、それぞれ38±13%及び25±17%という低いプラスミド安定性を有していた。
【0111】
<実施例8:ニワトリ由来の大腸菌ベクターから発現されたIL-6タンパク質の検出>
プラスミドpQE9-1L-6は、成熟ニワトリインターロイキン-6(IL-6)の遺伝子を含有しており、これを前記ニワトリ由来の大腸菌ベクターに導入した。分子量約27KDaを有する誘導タンパク質のバンドによって証明されているとおり、組換えニワトリIL-6は、ニワトリ由来の大腸菌ベクターから発現された。IL-6によって誘導された細胞増殖バイオアッセイにおいて、細胞上清のin vitro生物活性を測定した(図6)。IPTGで誘導されたCCEC31rn(pQE9-IL-6)からの上清は、有意な生物活性を示したが、一方で誘導されていない、または前記発現プラスミドを有しない同一の株は、IL-6バイオアッセイにおける生物活性を示さなかった。CCEC31rn(pQE9-IL-6)は、発現プラスミドを保持する一般的に使用されている実験用JM109より高いレベルのIL-6活性を産生した。残留大腸菌株CCEC31rnは、潜在的治療用途を有するサイトカインである組換えIL-6を明らかに産生することができる。
【0112】
<実施例9:大腸菌ベクターによって分泌されたピシコリン126(P126)の抗菌活性>
大腸菌ベクター株CCEC31rn、CCEC59rn、及びCCEC101rn中でバクテリオシンP126を構成的に発現するプラスミドを、in vitroバクテリオシン活性の分泌に関して、プレート阻害アッセイによって試験した。リステリアイノクア及びウェルシュ菌(株NE15及びNE18、CSIROコレクション)を実験室で増殖させ、バクテリオシンプレート阻害アッセイにおける試験生物としてプレーティングした。ニワトリ由来大腸菌株の上清中に分泌されたP126は、当該アッセイで試験されたリステリアイノクア及びウェルシュ菌NE株の両方の増殖を阻害した(図7)。
【0113】
<実施例10:ニワトリの腸への治療用タンパク質の送達>
前記残留大腸菌株のうちの1株(CCEC31rn)を用いて、治療用組換えタンパク質をニワトリの腸に送達する生ベクターアプローチの有効性を実証した。送達されるべきタンパク質をコードする遺伝子を保持するプラスミドを、以下に定義するとおりに、この株に導入した。
【0114】
【表1】
【0115】
プラスミドを保持する大腸菌株を、中央ログフェーズにまで増殖させ、その後、各ニワトリに1mLの経口用量のニート培養物を投与した。孵化後1日目、18日目、及び20日目に、3回の異なった大腸菌投与を試験した。孵化後21日目及び22日目に、ウェルシュ菌ニワトリ単離株NE15(高レベルの疾患を引き起こし得る)の1mL培養物を経口接種することによって、トリにウェルシュ菌を実験的に負荷した。2回の負荷投与の間の24時間、畜舎から餌を取り除き、戻す際に、1畜舎あたり20mLのウェルシュ菌培養物を接種した。トリは、2回目の負荷の3日後に剖検し、壊死性腸炎のレベルを評価するために、壊死または潰瘍形成の局所性病変について、各トリの腸を検査した。
【0116】
<実施例11:P126の送達>
18日目にCCEC31rn(P126)を接種されたニワトリは、関連コントロール群及び負荷コントロール群と比較して、ウェルシュ菌の負荷から完全に防御されていた(すなわち、この群のいかなるニワトリにおいても病変が観察されなかった)。他の日(1日目または20日目)にこの株及びプラスミドを投与されたニワトリは、それらの関連用量コントロール群または負荷コントロール群と比較して、ウェルシュ菌での負荷からのいかなる防御(病変スコアの低減)も示さなかった。
【0117】
剖検後、BHIウマ血液寒天培地上へのプレーティング(37℃で嫌気的にインキュベーションされた)することによって、投与されたニワトリの盲腸内容物中のウェルシュ菌数を測定した。図8に示す結果は、18日目にCCEC31rn(P126)を投与されたニワトリから回収されたウェルシュ菌数が、関連ベクターコントロール群(大腸菌(ベクター)、18日目)を含めた他の群と比較して、有意に減少していたことを示している。この群は、以前に、ウェルシュ菌での負荷後に、防御(病変数の減少)を示したニワトリと同じ群であった。従って、この大腸菌ベクター中での、適切に時間を合わせたP126の送達は、予防的作用を有し、ニワトリにおける壊死性腸炎の発症を阻止する。
【0118】
<実施例12:ニワトリ盲腸内容物における抗菌活性の検出>
別々の試行で、市販ブロイラーニワトリに、CCEC31rn(P126)及び関連ベクターコントロールを投与し、負荷の3日後に剖検した。ニワトリ腸内における活性P126タンパク質の存在を、盲腸内容物を試料採取し、PBS中に再懸濁し、遠心分離し、次いで0.22μmフィルターに通して上清を濾過することによって検査した。リステリアイノクアまたはウェルシュ菌を播種された阻害プレートのウェルに、30μlの上清を添加した。前記プレートを37℃で一晩インキュベーションし、阻害の領域を評価した(図9)。
【0119】
細菌殺傷の領域によって示されるバクテリオシン活性は、CCEC31rn(P126)を投与されたすべてのトリの盲腸から明らかに回収された。CCEC31rn(pQE30)を投与されたコントロールトリの盲腸では、抗菌活性は検出されなかった。ニワトリから単離された大腸菌の残留株が、潜在的な治療用タンパク質であるピシコリン126をニワトリの腸に送達し得ることは明らかである。適切な時期に送達された場合、深刻なニワトリ疾患である壊死性腸炎の発症を完全に阻止させることができる。
【0120】
<実施例13:ニワトリへのIL-6の送達>
大腸菌ベクターCCEC31rnを用いることによって、成熟ニワトリIL-6をニワトリに送達した。1日目及び18日目に、1mLのCCEC31rn(IL-6)またはCCEC31rn(pQE30)で誘導された培養物をニワトリに投与し、組織試料を腸から回収して、IL-6の生ベクターによる送達の生物学的作用を評価した。
【0121】
IL-6は、in vitro及びin vivoにおいて、B細胞の分化及び増殖を刺激することが報告されている。IL-6の存在下では、B細胞は、IgA産生形質細胞に分化することができ、IgAは、粘膜表面に分泌されて、ニワトリに粘膜境界で体内に進入する病原体からの防御を付与する。従って、IL-6は、粘膜免疫における重要な役割を有し、ニワトリの消化管へのIL-6の正確な送達は、腸内膜におけるB細胞(リンパ球)の増殖の増大、形質細胞数の増大、並びにIgA産生及び粘膜表面への分泌の増大を観察することによって評価することができる。
【0122】
<実施例14:CCEC31rn(IL-6)を投与されたニワトリにおけるリンパ球の増殖>
剖検で、ニワトリの盲腸扁桃及び腸内膜からリンパ球を抽出した。計数後、これらのリンパ球の増殖能を評価するために、両試料からの等数のリンパ球を増殖アッセイに使用して、増殖中の細胞に組み込まれる放射性標識を用いて測定した。
【0123】
IL-6を投与されたニワトリの盲腸扁桃から単離されたリンパ球は、分裂促進因子であるConAによる刺激あり及び刺激なしの両方において、CCEC31rn(pQE30)を接種されたコントロールニワトリからのリンパ球がより高い増殖能力を有した(図10)。刺激なしで増殖し得る細胞は、事前に活性化されていたと考えられ、防御のために強く活性化されている。当該結果は、マンホイットニーU検定で統計的に有意であった。CCEC31rn(IL-6)を投与されたトリから単離されたリンパ球が、基本のプラスミドを保持するのみの大腸菌ベクターを投与されたトリから単離されたリンパ球より、高い増殖能を有することは明らかである。このことは、大腸菌ベクターを介して、IL-6がニワトリの消化管に効果的に送達され、送達されたIL-6産物がニワトリのBリンパ球に対して影響を有することを示している。
【0124】
<実施例15:投与されたニワトリの腸内膜及び盲腸扁桃におけるIgA分泌細胞の数>
盲腸扁桃と腸内膜の切片をIgAについて染色し、各試料中の直線1cmあたりの組織におけるIgA分泌形質細胞の数を計数した。腸内膜から回収された試料(図11)では、IL-6を発現する大腸菌ベクター株を投与されたトリは、基本のプラスミドを保持するベクター株を投与された群のトリより、直線1cmあたりの組織に多数のIgA分泌細胞を有した。これらの2つの群の間の差は、マンホイットニーU検定で検定した際に有意であった(P=0.0286)。粘膜免疫に直接関与していない組織から単離された細胞から予測されるように、これらのトリの盲腸扁桃から回収された2つのニワトリ群の間における平均数は統計的に差がなかった。
【0125】
<実施例16:サルモネラソフィアを用いた、ニワトリへのピシコリン126の送達>
P126を発現するサルモネラソフィア(S. sofia)をニワトリリステリア症モデルで試験した。4群、各10羽のSPFニワトリを、2台のバブルアイソレーター(bubble isolator)に収容した(群1及び2を1台のアイソレーターに、3及び4をもう1台に)。治療群は以下のとおりであった。
1.サルモネラソフィアナイア(S. sofia Nair)及びリステリアモノサイトゲネス負荷
2.サルモネラソフィアナイア(P126)及びリステリアモノサイトゲネス負荷
3.リステリアモノサイトゲネス負荷のみ
4.負荷なし
【0126】
群1及び2は、日齢1日に約109 cfuの適切なサルモネラソフィア株を投与された。2日目に、群1、2、及び3は2×108 cfuのリステリアモノサイトゲネスを投与された。トリの健康全般は、当該試行全体を通して観察され、2羽のトリが殺され、細菌は負荷後の1、2、5、及び7日目に計数された。
【0127】
当該結果は、当該試行全体を通して、サルモネラソフィアの集団が高レベルに維持されたこと(図12)、並びに、2日目の後、リステリアモノサイトゲネスは、P126を発現するサルモネラソフィアで前処理された群から回収できなかったが、接触コントロールトリを含めた他のすべての群で見出されたこと(図13)を示した。
【0128】
[結論]
当該結果は、健康なニワトリから回収されたわずかな比率の大腸菌単離株が残留能を有することを示している。概説された方法は、そのような単離株をどのように同定及び試験できるかを明示している。多数の残留株が同定され、それに続いて、有用な生送達ベクターを作製するのに必要とされる他の特徴を有することが示された。それらはプラスミドDNAで形質転換され、in vivo条件でプラスミドベクターを維持し得、さらにモデル組換えタンパク質を発現することができる。
【0129】
ニワトリから単離された大腸菌の残留株が、潜在的な治療用タンパク質であるピシコリン126をニワトリの腸に送達できることは明らかである。適切な時期に送達された場合、それは、深刻なニワトリ疾患である壊死性腸炎の発症を完全に阻止することができる。
【0130】
大腸菌ベクターCCEC31rnを介したIL-6送達は、ニワトリ消化管の腸内膜におけるB細胞の、粘膜防御のために粘膜表面にIgAを分泌できる形質細胞への分化を増強させた。厳選された細菌ベクターによるニワトリ消化管へのIL-6の送達は成功しており、免疫系のB細胞を増殖及び分化するように刺激し、病原体の侵入及び免疫の反撃に対して、ニワトリの免疫系を準備している。
【0131】
ピシコリン126も、サルモネラソフィアを用いてニワトリに送達された。当該結果は、サルモネラソフィアをニワトリ体内に維持できること、及び細菌送達されたピシコリン126が、リステリアモノサイトゲネスに対してin vivoで活性であったことを示した。
【0132】
広範に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、特定の実施形態で示されている本発明に多数の変形及び/または改変を加えられることを当業者ならば理解するであろう。従って、本発明の実施形態は、あらゆる点で、例示的であり、制限的ではないと考えるべきである。
【0133】
前記に論じたすべての出版物を、全体として本明細書に組み込む。
【0134】
本明細書に含まれている、資料、行為、物質、装置、記事等に関するいかなる論述も、本発明の背景の提供のみを目的とするものである。それは、この出願の各請求項の優先日より前に存在していたことを理由に、これらの事項のいずれかまたはすべてが従来技術基盤の一部を形成していること、あるいは本発明に関連している分野における通常の一般知識であることを認めるものと解釈するべきではない。
【0135】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】SPFニワトリにおける、標識された大腸菌株の残留性(試行1)。
【図2】投与の42日後にニワトリ体内に存在する、それぞれの標識されたPFGE XbaI消化プロファイルのパーセンテージ(試行1)。
【図3】市販のニワトリにおける標識された大腸菌株の残留性。盲腸内容物から回収されたRif/Nal耐性コロニーの数(試行2)。
【図4】市販のニワトリにおける標識された大腸菌株の残留性。検出されるRif/Nal株を有するニワトリのパーセンテージ(試行2)。
【図5】市販のニワトリに投薬するのに使用された標識株に導入されたpQE30(Cat)プラスミドの、28日目におけるin vivoプラスミド安定性。
【図6】ニワトリ由来の大腸菌株CCEC31rn(+/- 1mM IPTG誘導)から発現された成熟ニワトリIL-6のin vitro生物活性。
【図7】ウェルシュ菌NE15(パネルA)及びNE18(パネルB)に対する分泌バクテリオシン(P126)の活性を示すプレート阻害アッセイ。P126遺伝子の構成的発現をコードしているpRM1503プラスミドを保持しているニワトリ由来の大腸菌ベクターを,一晩増殖させ、遠心沈殿させ、30μlの濾過上清を、指標細菌であらかじめ満たされたBHI 5%脱線維素ウマ血液プレートに穿孔されたウェルの中に添加した。前記プレートを、嫌気性条件で37℃にて一晩インキュベーションした。各プレートの左側には、ベクタープラスミドpQE30(バクテリオシンなし)を保持するCCEC株からの上清を添加した。各プレートの右側には、P126発現プラスミドであるpRM1503を保持するCCEC株からの上清を添加した。最上部:CCEC31rn、中央:CCEC59rn、最下部:CCEC101rn。
【図8】ニワトリ盲腸内容物中のウェルシュ菌数。
【図9】濾過された盲腸内容物中に検出されたバクテリオシン活性。濾過された盲腸内容物を遠心分離し、ニート上清をリステリアイノクア上にプレーティングした。A−コントロール:CCEC31rn(pQE30)、トリ1〜5の個々のニート上清を添加。B−CCEC31rn(P126)、トリ1〜5の個々のニート上清を添加。C−CCEC31rn(P126)、トリ6〜10の個々のニート上清を添加。
【図10】ニワトリ盲腸扁桃から単離されたリンパ球の増殖。コントロール群(CCEC31rn(pQE30))と試験群(CCEC31rn(IL-6))との間の差は、非刺激リンパ球及び刺激リンパ球の両方で有意であった(マンホイットニーU検定、P<0.0001)。
【図11】ニワトリ腸組織中のIgA分泌形質細胞の数。
【図12】感染したニワトリの盲腸内におけるサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィア集団。
【図13】盲腸におけるリステリアモノサイトゲネスの増殖。群平均を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロニー形成グラム陰性細菌株に関する。本発明は、特に生きたコロニー形成グラム陰性菌、及び生理活性タンパク質のin vivo送達のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
動物または動物細胞へのタンパク質及びRNA等の遺伝子産物の送達は、様々な適用に望ましい。そのような適用には、感染症の治療、後天的または遺伝的な疾患または状態の治療、タンパク質抗原に対する免疫応答の誘導、様々な細胞機能の研究等が含まれる。従って、様々な細菌が治療用分子の送達のために開発及び使用されている。
【0003】
例えば、生きた弱毒化病原性グラム陰性菌がワクチンとして開発されている(Garmoryら、2003年)。さらに、粘膜経路を介して様々な保護ワクチン抗原を送達するためのベクターとして、生きた弱毒化病原性グラム陰性細菌ワクチン株を使用するためのストラテジーが開発されている(Medina、2001年;Rolandら、2005年)。そのような株は、通常、コロニー形成しない。
【0004】
グラム陽性非病原性の乳酸菌も、経口用生ワクチンとして現在開発されている(Bermudez-Humaranら、2003年)。弱毒化病原性グラム陰性細菌株とは対照的に、ラクトコッカスラクティス等のグラム陽性細菌は非病原性である。さらに、それらのグラム陽性細菌ベクターは、しばしば限定的なコロニー形成能を有する。ワクチン抗原の送達に加えて、ラクトコッカスラクティスはまた、IL-10(Steidler、2002年;Steidlerら、2003年;Huybhebaertら、2005年)、IL-12(Bermudez-Humaranら、2003年;Kimotoら、2004年)、及びIL-2(Steidler、2002年)等の多くのサイトカインの送達のために開発されている。表面に固定されたタンパク質のグラム陽性菌による送達方法は、米国特許第6,737,521号に開示されており、ラクトコッカスラクティス中でサイトカインを送達する方法は米国特許第6,605,286号に記載されている。
【0005】
生細菌ベクターも、感染症の治療に潜在的に有用である。例えば、生細菌ベクターは壊死性腸炎等の感染症の治療に潜在的に有用である。壊死性腸炎は、腸壁中に壊死病斑を発症させて、家禽の罹患及び死亡をもたらす、ウェルシュ菌によって引き起こされる腸性毒血症性疾患である。それはまた、複雑で、部分的に未知な疫学及び発病メカニズムを有する多因性疾患である(Kaldhusdal、1999年)。ウェルシュ菌という細菌は、一般的に、家禽の胃腸管で見出される菌であるが(Tschirdewahnら、1991年)、壊死性腸炎の発症は散発的である(Cowenら、1987年)。それにもかかわらず、ウェルシュ菌の混入した餌が、ニワトリにおける壊死性腸炎の大流行と関係づけられてきた(Kaldhusdal、1999年)。健康なニワトリは比較的少ない数のウェルシュ菌をそれらの胃腸管内に有し、細菌密度の増大によって壊死性腸炎状態が引き起こされ得ることも研究によって示された(Cravenら、1999年)。
【0006】
バシトラシン、リノコマイシン、及び他の抗生物質が、壊死性腸炎を患っている家禽を治療するために一般的に使用されている(Cravenら、1999年)。しかし、ウェルシュ菌の抗生物質耐性株がニワトリ及びシチメンチョウから単離されていること(Devrieseら、1993年;Kondo、1988年;Watkinsら、1998年)、及びヒト病原体における抗生物質耐性と結びつく可能性を理由とした抗生物質使用を抑制する一般的な願望により、家禽保健衛生当局及び生産者は、伝統的な抗生物質に替わる新規な生成物の開発及び適用にますます関心を寄せている。しかし、現在までのところ、治療用生成物を送達する、合理的に設計された生細菌ベクターを用いた壊死性腸炎の治療に関する報告はない。しかし、細菌のプロバイオティック株の使用、並びに競合的排除治療のための、ほとんど特性決定されていない細菌の単一単離株及び混在細菌集団の使用に関する報告はある。
【0007】
大きな可能性を有するにもかかわらず、現在までに他の系で使用されている生細菌ベクターにはかなりの制限がある。例えば、経口投与の場合、細菌細胞は厳しい胃腸内条件に曝露され、生存時間が短く、多量の用量を投与する必要がある(Prakash及びJones、2005年)。対象から細菌が除去される結果、生理活性タンパク質の送達が限定的な持続時間のものとなる。弱毒化グラム陰性細菌ベクターの使用にともなうさらなる問題は、侵襲的及び/または反応原性ベクターの残留毒性(Tackerら、1992年)と、免疫原性コンストラクト等の生理活性ポリペプチドの有効な送達(Zhuら、2006年)との間の釣り合い得るのが難しいことである。
【0008】
従って、これらの制限によって妨げられない、改善された細菌ベクターが必要とされている。
【特許文献1】米国特許第6,737,521号
【特許文献2】米国特許第6,605,286号
【非特許文献1】J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons社(1984年)
【非特許文献2】J. Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press社(1990年)
【非特許文献3】T.A. Brown(編集)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、第1巻及び第2巻、IRL Press社(1992年)
【非特許文献4】D.M. Glover及びB.D. Hawes(編集)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、第1〜4巻、LRL Press社(1995年及び1997年)
【非特許文献5】F.M. Ausubelら(編集)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience社(1988年、現在までのすべての改訂も含まれる)
【非特許文献6】Ed Harlow及びDavid Lane(編集)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory社(1988年)
【非特許文献7】I.E. Coliganら(編集)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley&Sons社
【非特許文献8】「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社、1992年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはついに、対象に生理活性タンパク質を送達するのに有用な新規のコロニー形成グラム陰性細菌株を単離した。これらのコロニー形成細菌株は、対象における前記生理活性物質を必要とする特定の部位に、生理活性タンパク質を送達することを可能にする。
【0010】
従って、本発明は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを対象に送達する方法を提供するものであって、当該方法は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む。
【0011】
一実施形態では、前記細菌は大腸菌である。好ましくは、前記大腸菌は、血清型H抗原であるH10を有する。好ましい実施形態では、前記大腸菌は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択された株である。
【0012】
別の実施形態では、前記細菌はサルモネラの株である。好ましくは、前記株は、サルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである。
【0013】
別の実施形態では、前記細菌は選択マーカーで標識されている。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0014】
本発明の別の実施形態では、前記対象はトリである。好ましくは、前記対象は家禽であり、より好ましくは、前記対象はニワトリである。
【0015】
本発明の別の実施形態では、前記細菌は前記対象の粘膜表面でコロニー形成する。好ましくは、前記細菌は、前記対象の腸でコロニー形成する。
【0016】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である。
【0017】
好ましい実施形態では、前記サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される。好ましくは、前記サイトカインはIL-6である。
【0018】
別の実施形態では、前記抗菌ペプチドは、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはピシコリン(Piscicolin)126、ディベルシン(divercin)V41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、もしくはディベルジシン(divergicin)750等のバクテリオシン、あるいはこれらの抗菌ペプチドのうちのいずれかの合成バリアントである。好ましくは、前記バクテリオシンは、ピシコリン126またはその合成バリアントである。
【0019】
好ましい実施形態では、前記グラム陰性菌は前記対象に経口投与される。
【0020】
本発明はまた、コロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法を提供し、当該方法は、
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;及び
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む。
【0021】
好ましくは、工程(i)は、前記対象における、異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記1つ以上のグラム陰性細菌株を単離する工程を含む。
【0022】
別の実施形態では、この方法の工程(i)は、複数の細菌株を単離する工程を含む。
【0023】
別の実施形態では、この方法の工程(ii)は、複数の細菌株を標識する工程を含み、工程(iii)は、複数の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程を含む。
【0024】
別の実施形態では、前記1つ以上のグラム陰性細菌株は、1つ以上の抗生物質に対する耐性によって標識される。好ましくは、前記1つ以上の抗生物質は、リファンピシン及び/またはナリジクス酸である。
【0025】
この方法のさらに別の実施形態では、工程(iv)は、前記対象から生体試料を単離する工程、及び前記試料が前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を含むかどうか判定する工程を含む。前記試料は、例えば、組織もしくは体液試料、またはスワブで採取した試料であってよい。好ましくは、前記試料は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から単離される。
【0026】
本発明はまた、本発明の方法によって単離されたコロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を提供する。
【0027】
本発明はまた、対象における疾患を治療または予防する方法を提供するものであって、当該方法は、治療有効量の1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を、前記対象に投与する工程を含む。
【0028】
本発明はまた、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を提供するものであって、当該細菌は、対象に投与された場合に前記対象でコロニー形成する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、前記対象はトリである。好ましくは、前記対象は家禽であり、より好ましくは、対象はニワトリである。
【0030】
一実施形態では、前記細菌は大腸菌である。好ましくは、前記大腸菌は、血清型H抗原であるH10を有する。
【0031】
好ましい実施形態では、前記大腸菌は、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される。
【0032】
別の実施形態では、前記細菌はサルモネラの株である。好ましくは、前記株は、サルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである。
【0033】
別の実施形態では、前記細菌は選択マーカーで標識されている。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0034】
別の実施形態では、前記細菌は前記対象の粘膜表面でコロニー形成する。好ましくは、前記細菌は、前記対象の腸でコロニー形成する。
【0035】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である。
【0036】
好ましくは、前記サイトカインは、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される。好ましい実施形態では、前記サイトカインはIL-6である。
【0037】
別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドの1つ以上は、抗菌ペプチドである。好ましくは、前記抗菌ペプチドは、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、もしくはディベルジシン750等のバクテリオシン、あるいはこれらの抗菌ペプチドのうちのいずれかの合成バリアントである。好ましい実施形態では、前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである。
【0038】
本発明はまた、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される、コロニー形成非病原性グラム陰性菌を提供する。
【0039】
好ましくは、前記グラム陰性菌は、1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するように改変されている。
【0040】
本発明はまた、対象に投与する製剤を提供するものであって、当該製剤は、本発明によるコロニー形成非病原性グラム陰性菌と製薬上許容可能なキャリアとを含む。
【0041】
明らかであるように、本発明の一態様の好ましい特性及び特徴は、本発明の他の多くの態様にも適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
[微生物寄託の詳細]
CCEC22と命名された大腸菌(Escherichia coli)コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(National Measurement Institute)(前身はAGAL)に寄託された。
【0043】
CCEC31と命名された大腸菌コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託された。
【0044】
CCEC59と命名された大腸菌コロニー形成株は、2005年8月12日に登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託された。
【0045】
これらの寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際認識に関するブダペスト条約の規定及びその下での規則に従って実施された。これは、寄託日から30年間の生存培養物の維持を保証するものである。当該特許の発行の際に前記培養物の子孫の永久的且つ無制限な利用可能性を保証するブダペスト条約の条項の下で、前記微生物は国立計測標準研究所によって利用可能となるであろう。
【0046】
本願の譲受人は、適切な条件下で培養された際に、寄託培養物が死滅するか、あるいは紛失または破壊された場合には、通知に応じて即座に同一培養物の生存標本でそれを置換することに同意している。寄託株の利用可能性は、任意の政府の権限下でその特許法に従って付与された権利に違反して当該発明を実施することを許可するものであると解するべきではない。
【0047】
[一般的技術及び定義]
他で特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学における)によって一般的に理解されているものと同じ意味を有するものとする。
【0048】
他で指示がない限り、本発明で使用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫的技術は、当業者に周知の標準的手順である。そのような技術は、J. Perbal、「A Practical Guide to Molecular Cloning」、John Wiley and Sons社(1984年)、J. Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory Press社(1990年)、T.A. Brown(編集)、「Essential Molecular Biology:A Practical Approach」、第1巻及び第2巻、IRL Press社(1992年)、D.M. Glover及びB.D. Hawes(編集)、「DNA Cloning:A Practical Approach」、第1〜4巻、IRL Press社(1995年及び1997年)、F.M. Ausubelら(編集)、「Current Protocols in Molecular Biology」、Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience社(1989年、現在までのすべての改訂も含まれる)、Ed Harlow及びDavid Lane(編集)、「Antibodies:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbour Laboratory社(1989年)、並びにI.E. Coliganら(編集)、「Current Protocols in Immunology」、John Wiley & Sons社(現在までのすべての改訂も含まれる)等の出典の文献全体を通して記載且つ説明されており、これらを参照により本明細書に組み込む。
【0049】
便宜上、用語「ポリペプチド」は、以下において、タンパク質と呼ぶのに十分な高分子量の分子、通常ポリペプチドと呼ばれるより低分子量の生成物、及び通常ペプチドと呼ばれるさらに低分子量の生成物を表すために使用されるであろう。
【0050】
用語「活性ポリペプチド」は、本明細書において、可能な限り最も広い意味で使用される。それは、任意の有用な目的で動物宿主に送達され得る任意のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を表す。それには、治療用及び予防用のポリペプチド及びペプチドが含まれる。それは、任意の病原性ウイルス、細菌、寄生生物、または菌類に由来する抗原であってよい。そのような場合、活性ポリペプチドは、完全抗原、抗原の抗原決定基、または抗原決定基を含む抗原断片であってよい。非限定的な例として、活性ポリペプチドは、抗体、サイトカイン、ホルモン、酵素、抗菌ペプチド、またはバクテリオシンであってもよい。
【0051】
「生物活性」は、生物学的機能を果たす能力を示し、さらにポリペプチドに関する場合、当該ポリペプチドがその天然立体配置と同じか、またはそれによく類似した安定的高次構造(「折り畳まれた形態」)をとることを意味する。例えば適切な折り畳み単位、すなわちαへリックス、βシート、ドメイン、ジスルフィド架橋等の形成をともなって、正確にもしくは実質的に正確に折り畳まれた場合、ポリペプチドは、それ本来の機能を果たす能力を有するはずである。通常、ポリペプチドにおける機能単位はドメインである。抗原に関して用いる場合、「生物活性」は、当該抗原が宿主において免疫応答を誘導することを意味する。
【0052】
用語「異種ポリペプチド」は、当技術分野でよく理解されており、細胞に対して内因性でないポリペプチド、またはその天然配列が改変されている天然ポリペプチド、または組換えDNA技術による細胞操作の結果、その発現が量的に改変されている天然ポリペプチドを表す。対象のポリペプチドをコードする核酸分子は、対象のポリペプチドを産生し得る任意の生物由来であってよく、または完全に合成的な遺伝子であってもよい。前記ポリペプチドをコードする核酸分子は、例えば、感染、トランスフェクション、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、マイクロプロジェクション等によって細胞に添加することができる。
【0053】
本明細書で使用される用語「トリ」は、限定されるものではないが、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、並びにダチョウ、エミュー、及びヒクイドリを含めた平胸類等の生物等、鳥網という分類網の任意の種、亜種、または品種の生物を表す。当該用語には、セキショクヤケイ(Gallus gallus)、すなわちニワトリの様々な既知系統(例えば、白色レグホン、褐色レグホン、黄斑ロック、サセックス、ニューハンプシャー、ロードアイランド、オーストラロープ、ミノルカ、アムロックス(Amrox)、カリフォルニアグレイ、イタリアパートリッジ色(Italian Partidge-colored))、並びにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、アヒル、ダチョウ、及び商業的な量で一般的に飼育されている他の家禽の系統も含まれる。
【0054】
用語「免疫原性組成物」は、標的病原体に対する免疫応答を誘導する任意の組成物を包含し、例えば、動物(例えば、ニワトリ等のトリ)に投与または注射された後に、標的病原体(例えばウェルシュ菌)に対して免疫応答を誘導する組成物を包含する。
【0055】
用語「ワクチン」は、標的病原体に対する防御免疫応答を誘導するか、前記病原体に対して有効に防御する任意の組成物を包含し、例えば、動物(例えば、ニワトリ等のトリ、または豚(pig)等のブタ(porcine))に投与または注射された後に、標的病原体に対する防御免疫応答を誘発するか、前記病原体(例えばウェルシュ菌)に対する有効な防御を提供する組成物を包含する。病原体のサブユニット、例えば前記病原体から単離された抗原または免疫原またはエピトープ、及びサブユニット組成物は、前記病原体から単離された1つ以上の抗原、免疫原、またはエピトープを含むか、またはそれらから本質的になる。
【0056】
用語「抗原」は、当技術分野でよく理解されており、免疫系の構成要素、例えば抗体またはT細胞抗原受容体によって特異的に認識される高分子の部分を表す。用語「抗原」は、それに対して宿主において免疫応答が誘導され得るペプチド、ポリペプチド、または他の高分子を表す。本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、抗原エピトープ、例えば抗原エピトープである抗原断片を包含する。エピトープは、溶液中で、例えば他の分子から遊離した状態で、抗体によって認識される。エピトープは、前記エピトープがクラスIまたはクラスII主要組織適合複合体分子に結合している場合、T細胞抗原受容体によって認識される。
【0057】
この明細全体を通して、用語「含む」、または「含んでいる」もしくは「含むこと」等のその変形形態は、任意の他の要素、実態、もしくは工程、または一群の要素、実態、もしくは工程を除外することを意味するのではなく、言及された要素、実態、もしくは工程または一群の要素、実態、もしくは工程の含有を意味すると解されるであろう。
【0058】
[コロニー形成グラム陰性菌]
本発明による細菌は、コロニー形成非病原性グラム陰性菌であろう。グラム陰性菌には、サルモネラ、大腸菌、シゲラ、カンピロバクター、フゾバクテリウム、ボルデテラ、パスツレラ菌、アクチノバチルス、ヘモフィルス、及びヒストフィルスが含まれると当業者は理解するであろう。本発明の方法では、コロニー形成非病原性グラム陰性菌の任意の株が使用され得ると考慮される。
【0059】
本発明の方法で使用するための、コロニー形成非病原性グラム陰性菌の好ましい例は、大腸菌、またはサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィア等のサルモネラ種である。
【0060】
本発明の特に好ましい実施形態では、前記細菌は、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されている大腸菌株CCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59である。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、大腸菌株CCEC22、CCEC31、及び/またはCCEC59は、さらなる改変なしで用いられる。
【0062】
しかし、使用前に、これらの株にさらなる改変を加えてもよいと解されるであろう。一例として、使用前に、大腸菌株CCEC22、CCEC31、またはCCEC59を選択マーカーで標識することができる。適した選択マーカーの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、もしくはルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸等の抗生物質に対する耐性が含まれる。
【0063】
一実施形態では、前記選択マーカーは、1つ以上の抗生物質に対する耐性である。特定の一例では、大腸菌株は、リファンピシン(rif)及び/またはナリジクス酸(nal)に対する耐性によって標識される。この標識づけは、例えば、本明細書実施例3に記載のとおり、前記株を、増大する濃度のrif及び/またはnalを含有する増殖培地中に通して循環させることによって実現し得る。抗生物質耐性マーカー、及び緑色蛍光タンパク質等の他のマーカーも、適切なプラスミドを用いることによって前記株に導入することができる。
【0064】
[コロニー形成グラム陰性菌の同定]
本発明はまた、in vivoにおける異種生理活性ポリペプチドの送達に有用なコロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法を提供する。
【0065】
この方法は、
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;及び
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む。
【0066】
好ましくは、前記1つ以上の細菌株は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から単離される。
【0067】
異種生理活性ポリペプチドのin vivo送達に有用なコロニー形成グラム陰性株を同定するために、単離方法は、多数の細菌をスクリーニングする工程を含んでよいと解されるであろう。例えば、複数のグラム陰性細菌株を対象から単離し、標識し、次いで前記対象に再導入することができる。
【0068】
前記方法の特定の一例では、工程(i)は、前記対象における、前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から様々な細菌株を回収する工程を含む。次いで、回収された細菌は、例えば固体培地上でのストリークすることによって単一株を単離する前に、適当な培地中で増殖させることによって濃縮することができる。大腸菌またはサルモネラのコロニー形態を有するもの等、グラム陰性菌に類似した単一のコロニーを単離し、同定を確認するためのさらなる選択培地上で増殖させることができる。
【0069】
必要ではないが、次いで、単離された株を表現型分析によって、または遺伝物質の分析によってさらに特徴づけすることができる。この遺伝物質の分析は、例えば、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)または16SリボソームRNA遺伝子の分析等の標準的技術を含んでよい。
【0070】
前記方法の工程(ii)では、次いで、単離された株を選択マーカーで標識する。任意の様々な既知な選択マーカーを用いることができる。好ましい実施形態では、前記選択マーカーが、リファンピシンに対する耐性(rif)及び/またはナリジクス酸に対する耐性(nal)等、1つ以上の抗生物質に対する耐性である。この標識づけは、例えば、本明細書実施例3により詳細に記載のとおり、前記株を、増大する濃度のrif及び/またはnalを含有する増殖培地に通して循環させることによって実現し得る。
【0071】
前記方法の工程(iii)は、単離及び標識された株を、対象に、好ましくは経口投与によって対象に再導入する工程を含む。
【0072】
前記方法の工程(iv)は、標識された株が、対象でコロニー形成するかどうか判定する工程を含む。好ましい実施形態では、工程(iv)は、対象における、異種生理活性ポリペプチドの送達が所望されている部位から、生物学的試料(スワブ等)を単離する工程、及び前記試料が、前記標識された株の1つ以上を含むかどうか判定する工程を含む。好ましくは、生体試料は、対象から単離され、標識された株の存在について、ある期間にわたって何度も試験される。例えば、生体試料を単離して、1〜7週間の期間にわたって種々の時期に(例えば、1日毎、2日毎、3日毎、4日毎、または5日毎など)試験することができる。
【0073】
対象に再導入された後、しばらくの間(特に、2週間またはそれより長い期間にわたって)対象の中に残留している標識株は、対象でコロニー形成すると見なされる。
【0074】
従って、標識されたコロニー形成株がいったん同定されると、その標識株またはそれに対応する単離された非標識株を、対象における所望されている部位に生理活性ポリペプチドを送達するためのベクターとして用いることが可能となる。
【0075】
[生理活性ポリペプチド]
当業者ならば、本発明の方法を、様々な生理活性ポリペプチドを送達するのに使用できると解するであろう。適したポリペプチドの例には、局所的または全身的に機能し得るもの、例えば、局所または全身代謝に影響を与える内分泌活性を発揮し得るポリペプチドが含まれる。
【0076】
例えば、前記生理活性ポリペプチドは、免疫造血系を調節できるものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、体内における様々な正常細胞または腫瘍細胞の生存率、増殖、及び分化に影響を与え得るものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、傷害及び感染に対する急性炎症反応の免疫調節または誘導に影響を与え得るものであってよい。あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、それらの標的細胞受容体に作用するケモカインによって媒介された、細胞及び組織の感染に対する耐性、または上皮細胞の増殖、または創傷治癒の促進を強化または誘導し得るものであってよい。
【0077】
そのようなポリペプチドの特定の例には、インシュリン、成長ホルモン、プロラクチン、カルシトニン、黄体形成ホルモン、副甲状腺ホルモン、ソマトスタチン、甲状腺刺激ホルモン、血管活性腸管ポリペプチド、構造グループ1型サイトカイン、例えば、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/β等、構造グループ2型サイトカイン、例えば、TNFファミリーのサイトカイン、例えば、TNFα、TNFβ、CD40、CD27、またはFASリガンド等、IL-1ファミリーのサイトカイン、線維芽細胞増殖因子ファミリー、血小板由来成長因子、形質転換成長因子β、及び神経成長因子等、構造グループ3型サイトカイン、例えば、上皮成長因子ファミリーのサイトカイン、ケモカイン、インシュリン関連サイトカイン、構造グループ4型サイトカイン、例えば、ヘレグリンまたはニューレグリン等、例えばEGFが含まれる。
【0078】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、前記に定義した生理活性ポリペプチドの受容体またはアンタゴニストであってよい。
【0079】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは抗原であってよい。前記抗原が、例えば細菌性、真菌性、寄生虫性、またはウイルス性の病原体に由来する場合、そのような病原体によって引き起こされた疾患に対して対象にワクチン接種するために、前記コロニー形成グラム陰性細菌株を用いることができる。例えば、トリ病原微生物に由来する抗原を送達するために、コロニー形成グラム陰性細菌株を用いることができるであろう。そのような微生物には、コリネバクテリア、マイコプラズマ、リステリア、ボレリア、クラミジア、クロストリジウム、コクシエラ、エリジペロスリックス、フラボバクテリウム、スタフィロコッカス、及びストレプトコッカスの種が含まれるが、これらに限定されない。家禽に感染することが知られている真菌性及び寄生虫性トリ病原体の例は、アメーボテニア、アプロクテラ(Aproctella)、鶏回虫、アスペルギルス、カンジダ、毛細線虫、クリプトスポリジウム、シアトストーマ、ディスファリンクス(Dispharynx)、アイメリア、フィンブリアリア(Fimbriaria)、ゴンギロネマ、ヘテラキス、ヒストモナス、オキシスピルラ(Oxyspirura)、プラズモディウム、ライリエンチヤ、ストロンギロイデス、スブルラ、シンガムス、テトラメレス、及び毛様線虫の種である。家禽に感染することが知られているウイルスは、アデノウイルス(例えば、出血性腸炎ウイルス)、アストロウイルス、コロナウイルス(例えば、伝染性気管支炎ウイルス)、パラミキソウイルス(例えば、ニューカッスル病ウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、トリ脳脊髄炎ウイルス)、ポックスウイルス、レトロウイルス(例えば、トリ白血病/肉腫ウイルス)、レオウイルス、及びロタウイルスが含まれる。特定の例には、トリインフルエンザ、マレック病ウイルス、及びニワトリ貧血ウイルスが含まれる。抗原としての使用に好ましい遺伝子産物は、糖タンパク質及びリポタンパク質を含めたポリペプチド及びペプチドである。これらの原核及び真核生物に由来する抗原をコードする遺伝子は、標準的技術を用いることによって、コロニー形成グラム陰性株中にクローニングし、発現させることができる。
【0080】
本発明の別の実施形態では、前記生理活性ポリペプチドは、抗体、好ましくは組換え抗体である。本発明で使用される用語「抗体」は、完全な分子及びそれらの断片、例えばエピトープ決定基に結合し得るFab、F(ab')2、及びFv等が含まれる。これらの抗体断片は、その抗原または受容体と選択的に結合するある程度の能力を保持し、それらには:
(1)Fab、すなわち完全な軽鎖(VL及びCL)と、それに結合した重鎖VH-Cγ1断片とからなる断片であって、抗体全体を酵素パパインで消化して、完全な軽鎖と1本の重鎖の一部とを生成することによって、あるいはFab断片をコードするDNAを非病原性グラム陰性菌に導入することによって産生され得る断片;
(2)Fab'、すなわち抗体全体をペプシンで処理し、それに続いて還元して、完全な軽鎖と重鎖の一部とを生成することによって(抗体1分子あたり2つのFab'断片が得られる)、あるいはFab'断片をコードするDNAを非病原性グラム陰性菌に導入することによって得られる抗体分子断片;
(3)(Fab')2、すなわち2つのジスルフィド結合によって保持された2つのFab'断片の二量体;
(4)Fv、すなわち2本の鎖として発現される軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含有する遺伝子改変断片として定義される断片;
(5)一本鎖抗体(「SCA」)、すなわち遺伝的に融合された単一鎖分子として適切なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含有する遺伝子改変分子として定義される断片;並びに
(6)単一ドメイン抗体、すなわち典型的に軽鎖を欠失した重鎖可変ドメイン;
が含まれる。
【0081】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは、抗菌ペプチドまたはその合成バリアントであってよい。抗菌ペプチドには、セクロピン、マゲイニン、及びデフェンシンが含まれる。セクロピンは、最初に詳細に特徴づけされた構造的に関連した抗菌ペプチドのファミリーであり、広範な分布の昆虫で見出されている(Boman、2003年)。脊椎動物では、マゲイニンファミリーの抗菌ペプチドが、アフリカツメガエルの皮膚及び胃腸管の腺から単離されており、感染に対する両生類粘膜表面の防御システムの基礎を形成すると考えられている(Soraviaら、1988年)。
【0082】
デフェンシンは、ヒトを含めたいくつかの哺乳動物種から単離された食細胞内に見出される抗菌ペプチドであり、配列内にある8つの不変残基によって特徴づけすることができる(Gabayら、1989年)。デフェンシン等のペプチドの抗菌活性のメカニズムは、選択的膜破壊を介しており、特徴的な広範囲の抗菌活性がもたらされる(Bowman、1995年)。デフェンシンの抗菌範囲には、グラム陽性及びグラム陰性細菌、マイコバクテリア、多くの真菌、及び一部のエンベロープウイルスが含まれる。
【0083】
細菌起源の抗菌ペプチドは、ミクロシン、コリシン、及びバクテリオシンとして知られている(Jackら、1995年;Inghamら、2003年)。バクテリオシンの配列、構造、及び活性メカニズムは多様であることが知られている。最も十分且つ徹底的に研究されているバクテリオシンには、クラスIバクテリオシン(ランチビオティック)及びクラスIIバクテリオシン(小さな熱安定性の非ランチオニン含有ペプチド)が含まれる(Ennaharら、2000年)。クラスIIバクテリオシンは、それらの活性及び潜在的適用から、重要なサブグループを形成している。クラスIIaバクテリオシンには、とりわけ、ピシコリン126、ロイコシンA、及びエンテロシンPが含まれる。クラスIIaバクテリオシンは、共通のN末モチーフであるYGNGVXaaCXaa(K/N)XaaXaaCXaaV(N/D)(W/K/R)Xaa(G/A/S)(A/N)を有し、配列中、より高い可変性を有する残基は、Xaaによって表される(Bhugaloo-Vialら、1996年)。バクテリオシンの抗菌特性を実証する一例では、ピシコリン126は、マウスに注射された場合、in vivoで抗菌活性を示すことが示され、肝臓及び脾臓におけるリステリア負荷が有意に低下した(Inghamら、2003年)。
【0084】
あるいは、前記生理活性ポリペプチドは酵素であってよい。前記酵素は、所望の活性を有する任意の酵素であってよい。例えば、食物の消化性または抗栄養化合物の除去を改善する役割を担う酵素を送達するために、本発明の方法を用いることは望ましいことであり得る。例えば、キシラナーゼ(Liuら、2005年)、グルカナーゼ(Choら、2000年)、セルラーゼ(Liuら、2005年)、アミラーゼ、レバンスクラーゼ、及びイヌロスクラーゼ(inulosucrase)等の多糖分解酵素及び線維分解酵素を送達して、食物の消化性を増大させることができる。摂取された食物の栄養価を増強するために、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、及びリパーゼを送達してもよい。フィターゼ(Vohra及びSatyanarayan、2003年;Nahashonら、1994年)及び酸性ホスファターゼ(Palaciosら、2005年)を送達して、植物の種子に見出されるフィチン酸塩の抗栄養作用を低減させることができる。
【0085】
[生理活性ポリペプチドの発現]
本発明の細菌は、その中に含有されている核酸から生理活性ポリペプチドを発現させる。前記核酸は、前記生理活性ポリペプチドをコードする核酸が細菌内での発現に適切な調節配列の制御下にある、1つ以上の核酸コンストラクトを含んでよい。
【0086】
Inghamらによって記載されたもの(Inghamら、2005年)等、細菌内への導入用の核酸を含む適切なベクターを、プロモーター配列、ターミネーター断片、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、及び他の配列を必要に応じて含んだ適切な調節配列を含むように選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じて、プラスミド、ウイルス、例えばファージ、またはファージミドであってよい。より詳細には、例えば、「Molecular Cloning:a Laboratory Manual」、第2版、Sambrookら、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press社を参照のこと。核酸の操作、例えば、核酸コンストラクトの調製、突然変異誘発、配列決定、細胞内へのDNAの導入、及び遺伝子発現、並びにタンパク質の分析用の多数の既知の技術及びプロトコールが、「Short Protocols in Molecular Biology」、第2版、Ausubelら編集、John Wiley & Sons社、1992年に詳細に記載されている。前記Sambrookら及びAusubelらの開示内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0087】
前記生理活性ポリペプチドのコード配列は、オペロン、すなわち、多シストロン性発現用核酸コンストラクトに含有されていてよい。オペロンでは、プロモーターからの転写の結果、複数のコード配列を含み、適切に配置された自らのリボソーム結合部位をそれぞれ上流に有するmRNAが生じる。従って、単一mRNAから複数のポリペプチドが翻訳され得る。従って、オペロンの使用により、本発明の細菌による複数の生理活性ポリペプチドの発現を可能となる。
【0088】
あるいは、2種の別々な生理活性ポリペプチドのコード配列は、同一核酸ベクターまたは別々のベクターの一部であってよく、そこではそれらは個別に別々のプロモーターの制御下にある。これらのプロモーターは、同じものでも、異なったものでもよい。
【0089】
本発明に従って利用されるプロモーターは、好ましくは細菌内で構成的に発現される。構成的プロモーターの使用により、発現が生じるための、誘導因子または他の調節シグナルを添加する必要性が回避される。好ましくは、前記プロモーターは、その細菌宿主細胞が生存したまま残るレベル、すなわち、たとえ増殖が維持されないでも、一部の代謝活性が保持されるレベルの発現を指示する。有利には、そのような発現は、低レベルであってよい。例えば、発現産物が細胞内に蓄積する場合、発現レベルは、細胞性タンパク質の約10%未満、好ましくは約5%もしくは5%未満、例えば約1〜3%の発現産物の蓄積をもたらすものであってよい。前記プロモーターは、使用される細菌に相同なもの、すなわち、その細菌内で天然に見出されるものに相同なものであってよい。例えば、大腸菌で機能するプロモーターを使用できる。非限定的な例をとして、前記プロモーターは、大腸菌で機能するT5ファージプロモーターであってよい。
【0090】
当業者には理解されるであろうが、前記生理活性ポリペプチドは、グラム陰性菌における、発現されたタンパク質の分泌へと導くシグナル配列を含んでよい。前記シグナル配列は、好ましくは、細菌の分泌機構による、細胞からのタンパク質の分泌を指示するシグナルペプチドをコードする。増殖培地中に、細胞の内膜と外膜との間に位置するペリプラスム間隙中に、あるいは細胞表面に、前記タンパク質を分泌させることができる。発現されるタンパク質は、細菌細胞壁内の封入体の中に蓄積させることもできる。
【0091】
本発明で使用できる細菌性分泌機構の一例は、α-溶血素(HlyA)トランスポーターを利用した大腸菌のI型分泌機構である(Mergulhao、2005年)。分泌用に標的とされる組換えポリペプチドは、HlyAのC末領域を含むシグナル配列を含有する。代替の分泌機構には、SecB依存経路、シグナル認識経路(SRP)、及びツインアルギニン転移(twin-arginine translocation)経路(Mergulhao、2005年)が含まれる。適した細菌性分泌シグナルの他の非限定例には、PelB、OmpA、PhoA、及びMalEが含まれる(Choi、2004年)。
【0092】
細胞表面に組換えタンパク質を発現させる方法は、当技術分野で周知である。例として、細菌細胞表面に組換えリポタンパク質を発現するベクターは、Cullenら(2003年)に記載されており、AIDA-Iトランスポータータンパク質の天然分泌機構を利用したオートディスプレイ(Autodisplay)システムは、Jose(2006年)によって記載されている。
【0093】
[免疫原性またはワクチン組成物]
本発明の免疫原性組成物(またはワクチン)は、1つ以上の異種抗原及び/または免疫調節タンパク質を発現する、本発明によるコロニー形成非病原性グラム陰性菌を含む。例えば、前記1つ以上の抗原は、ウェルシュ菌等の細菌性病原体に由来する抗原性ポリペプチドであってよい。前記免疫原性組成物における前記1つ以上の免疫調節タンパク質は、アジュバントとして機能してよい。アジュバントとして機能し得るポリペプチドの例には、IL-6及びIL-2等のサイトカインが含まれる。前記免疫原性組成物は、製薬的または獣医学的に許容可能なキャリアをさらに含んでいてもよい。別の実施形態では、前記免疫調節タンパク質は、単独で送達される。
【0094】
当技術分野で既知のように、前記免疫原性組成物またはワクチンは、他の微生物またはウイルスから選択される、生きているまたは不活化の形態の1つ以上の免疫原、抗原、またはエピトープと組み合わせてもよい。
【0095】
[製剤]
本発明の製剤には、製剤の製造に有用なバルク製剤(bulk drug formulation)が含まれる。そのような製剤は、予防上または治療上有効な量のコロニー形成グラム陰性菌及び製薬的に許容可能なキャリアを含む。製薬的に許容可能なキャリアには、獣医学的に許容可能なキャリアが含まれる。好ましくは、本発明の製剤は、治療上有効な量の本発明の1つ以上のコロニー形成グラム陰性菌及び製薬的に許容可能なキャリアを含む。
【0096】
特定の一実施形態では、用語「製薬的に許容可能な」は、動物、とりわけヒトにおいて使用するものとして、連邦政府または州政府の監督官庁によって承認されているか、あるいは米国薬局方または他の一般的に認知されている薬局方に記載にされていることを意味する。用語「キャリア」は、希釈剤、賦形剤、またはそれとともに治療薬が投与される媒体を指す。そのような製薬的キャリアは、無菌の液体、例えば水、及び石油、動物性、植物性もしくは合成由来のものを含めた油、例えば落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等であってよい。
【0097】
通常、本発明の製剤の成分は、例えば、活性剤の量を表示したアンプルもしくは小袋等の密封容器に、凍結乾燥した乾燥粉末または無水濃縮物として、別々にあるいは単位用量形態で混合されて供給される。
【0098】
前記細菌を胃腸管または鼻腔に送達するために、投与の好ましい方法は、経口摂取、鼻エアロゾル、または摂食(単独で、あるいは対象の餌、食物、または給水に組み込ませて)によるものである。これに関して、アシドフィルス菌等のプロバイオティック細菌は、細菌細胞とマンニトール等の固体支持体との凍結乾燥混合物を含有するゲルカプセルとして販売されることに留意するべきである。ゲルカプセルが液体とともに摂取された場合、凍結乾燥細胞が再水和され、生細菌となる。従って、同様の形式で、ゲルカプセル中で、または食物もしくは飲料中に混ぜるためのバルクで、本発明のグラム陰性細菌細胞を、粉末化させ凍結乾燥させた調製物として供給することができる。その後、再水和された生細菌細胞は、上部または下部消化系全体にわたる部位で集団化及び/またはコロニー形成するであろう。
【0099】
局所適用のために、前記細菌を、罹患皮膚表面に広げるための軟膏またはクリームとして処方することができる。軟膏またはクリーム製剤は、座薬等の他の標準的な製剤とともに、直腸または腟送達にも適している。局所、腟、または直腸投与に適した製剤は、医薬品化学者に周知である。
【0100】
本発明は、様々な細菌感染または細菌関連の非所望の状態を治療するための粘膜投与に特に有用であろう。
【0101】
以下に、非限定的な実施例によって及び添付の図面を参照して、本発明を説明する。
【0102】
<実施例1:ニワトリからの大腸菌株の単離>
排泄腔をスワブでふき取ることによって、またはトリ盲腸内容物を回収するによって、様々な細菌種を市販のニワトリから回収した。2mLのマッコンキー培養液(MacConkey、1905年)中、37℃での各スワブの一晩培養することによって、回収された細菌を濃縮し、その後、1ループの濃縮培養物をマッコンキー寒天プレート上にストリークし、37℃で一晩インキュベーションした。典型的な大腸菌コロニー形態に類似した単一コロニーを、エオシンメチレンブルーラクトーススクロース(EMB)寒天(Holt-Harris及びTeague、1916年)プレート上にストリークし、37℃で一晩培養し、次いで80%グリセロール中に冷凍保存物を調製した。大腸菌と想定された株をCCEC1から101まで命名し、CSIROニワトリ大腸菌(CCEC)株と名付けた。プレート上で観察された特徴的コロニー形態による大腸菌の確証的同定のために、回収されたCCEC株を、さらなる選択培地寒天上(キシロースリジンデオキシコール酸(XLD))(Taylor、1965年)及びOnozによるサルモネラ同定用の寒天上(Onoz及びHoffman、1978年)で培養した。選択寒天プレート上で大腸菌として同定されなかったいずれのCCEC単離株も、さらなる分析には使用しなかった。
【0103】
最初の同定を確認するために、CCEC単離株由来の16SリボソームRNA(rRNA)遺伝子の一部をPCRによって増幅した。PCRプライマーにより、様々な細菌種間の識別を可能にする16S rRNA遺伝子の可変領域を増幅した。PCR産物を精製し、配列決定し、blastn検索で整列させた場合、選択されたCCEC単離株すべての630bp産物が、大腸菌16S rRNA配列に最も近接した配列同一性を有していた。従って、ニワトリ盲腸内容物及び排泄腔スワブから回収されたCCEC単離株は、遺伝子配列、並びに指標培地上での増殖及びコロニー形態によって大腸菌として同定された。
【0104】
<実施例2:パルスフィールド電気泳動による大腸菌単離株のサブタイピング>
パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分類技術を用いて、大腸菌株(CCEC単離株)をさらに分析した。すべての単離株を分析した後、前記回収物中に25種の異なるXbaI消化DNAプロファイルが見出された。
【0105】
<実施例3:抗生物質耐性大腸菌株の産生>
様々なPFGEサブタイプからの代表的株を、増大する濃度の抗生物質リファンピシンまたはナリジクス酸を含有するブロス中に通して繰り返し循環させ、これらの抗生物質に対する選択可能レベルの耐性を有する株バリアントを単離した。次いで、リファンピシン耐性を有するバリアントを、増大するレベルのナリジクス酸に通して継代培養して、両方の抗生物質に対して耐性を有する株を選択した。様々なPFGEサブタイプの代表的単離株から、我々はリファンピシン(rif)耐性の誘導体、ナリジクス酸(nal)耐性の別のセットの誘導体、及び両方の抗生物質(rif/nal)に耐性のさらに別のセットを単離した。
【0106】
<実施例4:特定病原体未感染(SPF)ニワトリの胃腸管に残留する大腸菌株の同定(試行1)>
14羽のSPFニワトリに、2重標識されたPFGEサブタイプ単離株のそれぞれを含有する1mLの混合大腸菌培養物を経口投与した。5羽の接触トリ(in-contact bird)には大腸菌培養物を直接投与しなかった。標識株の存在を検査するために、前記トリから2日毎に排泄腔スワブを採取した。標識株がニワトリ体内にどれだけ長く残留するか検査するために、42日目までスワブを採取した(図1)。混合大腸菌培養物を投与する前には、いかなる2重耐性(rif/nal)細菌単離株も検出されなかった。投与後には、試行期間である42日間の間のあらゆる試料採取点で、すべてのトリから容易に標識株を単離することができた。他のニワトリに投与した1日後のすべての接触トリから、2重耐性大腸菌を単離することができ、このことは同時収容されたトリへの迅速な拡散を示す。投与されたニワトリの盲腸内容物から2重標識株が単離された場合、4種のみのPFGEサブタイププロファイルが回収され(図2)、このことは、これらの株は残留したが、一方で他のすべての株は、実施された分析のレベルでは検出不可能であったことを示す。
【0107】
<実施例5:残留大腸菌株の血清型判定>
前記大腸菌株は、元々健康なニワトリから単離されたものであり、その後のニワトリへの投与による、いかなる有害な健康上の徴候も示されていないが、我々は、次に、前記株が共生細菌叢の無害且つ非病原性の一員であることを、それらの血清型を判定することによって、及び既知の有毒因子の存在を探索することによって確認した。株CCEC31rn、CCEC59rn、及びCCEC101rnは、微生物の同定、O及びH抗原の血清型決定、並びにこれらからの株からの任意の一般的な有毒因子の産生の確認のために、国立大腸菌研究所(National E. coli Laboratory)(オーストラリアメルボルン大学微生物学科微生物学診断部)によって分類された。3種の試料すべてが大腸菌と同定され、すべてが血清型H抗原であるH10を有していた。株CCEC31rnは、α-溶血素を発現していることが示され、O抗原(Ont)を保持していた。株CCEC59rn及びCCEC101rnは、ともに、大腸菌OR:H10として分類され、溶血性ではなかった。Ont:H10またはOR:H10の大腸菌のいずれも、ヒトまたは動物における任意の主要な疾患の発症または疾病の原因であるとは文献に記録されていない。全3株とも、ベロ毒性ではなく、シガ毒素を産生せず、いかなる細胞毒性壊死因子も産生しなかった。
【0108】
<実施例6:市販ニワトリにおける大腸菌サブタイプの残留(試行2)>
この試行は、市販のブロイラーニワトリが使用されたことを除いて、実施例5で概説したものと本質的に同じであった。試行結果の概要を図3及び4に示す。この試行では、株CCEC31rn、59rn、及び101rnは、最初の試行と同様に回収されたが、試行1で回収された集団のうちのわずかな比率を占めていたCCEC35rnは、試行2では回収されなかった。しかし、CCEC22rnは、これらの市販のトリからかなりの数が回収されたが、試行1では見られなかった。実験用大腸菌株JM109は、ニワトリから迅速に失われ、5日目後には回収できなかった。
【0109】
<実施例7:形質転換能、プラスミド安定性、及び残留大腸菌株からの組換えタンパク質発現>
多数の大腸菌単離株が、SPFニワトリ及び市販ニワトリの両方の腸に残留すると示され、それゆえ、生ベクターとしての使用するための良い候補であった。ベクターとしての使用するための第二の要件は、送達されるべき組換えタンパク質を発現するように、前記株を遺伝子操作することが可能でなければならないということである。従って、我々は、クローニングベクタープラスミドで形質転換され、モデルタンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現する能力に関して、前記残留株を試験した。大腸菌株CCEC22rn、31rn、59rn、及び101rnはすべて、標準的な大腸菌電気形質転換(electro-transformation)技術を用いることによって、発現クローニングベクターpQE30で容易に形質転換された。緑色蛍光タンパク質(GFP)を保持するpTracer-CMV2プラスミドを、株CCEC31rn、59rn、及び101rnに導入した場合、全3株がUV光の下で明るい緑色の蛍光表現型を示した。同様に、形質転換細胞を液体培養で増殖させ、蛍光顕微鏡を用いて観察した場合、すべての細胞がGFPの遺伝子を発現した。従って、前記残留大腸菌株は、効率的に組換えタンパク質を発現することができる。
【0110】
前記残留株の中でのプラスミドのin vivo安定性も測定した。市販ニワトリに接種された標識株のそれぞれによって保持されている標準的な発現クローニングプラスミドpQE30(Cat)のプラスミド安定性を、投与後の28日間評価した。株CCEC31rn及びCCEC59rnを投与されたトリから単離されたコロニーは、高いプラスミド安定性を有し、73±6%及び71±16%のコロニーが、プラスミドによってコードされた抗生物質耐性の発現を保持していた。株CCEC22rn及びCCEC101rnを投与されたトリから単離されたコロニーは、図5に示すとおり、それぞれ38±13%及び25±17%という低いプラスミド安定性を有していた。
【0111】
<実施例8:ニワトリ由来の大腸菌ベクターから発現されたIL-6タンパク質の検出>
プラスミドpQE9-1L-6は、成熟ニワトリインターロイキン-6(IL-6)の遺伝子を含有しており、これを前記ニワトリ由来の大腸菌ベクターに導入した。分子量約27KDaを有する誘導タンパク質のバンドによって証明されているとおり、組換えニワトリIL-6は、ニワトリ由来の大腸菌ベクターから発現された。IL-6によって誘導された細胞増殖バイオアッセイにおいて、細胞上清のin vitro生物活性を測定した(図6)。IPTGで誘導されたCCEC31rn(pQE9-IL-6)からの上清は、有意な生物活性を示したが、一方で誘導されていない、または前記発現プラスミドを有しない同一の株は、IL-6バイオアッセイにおける生物活性を示さなかった。CCEC31rn(pQE9-IL-6)は、発現プラスミドを保持する一般的に使用されている実験用JM109より高いレベルのIL-6活性を産生した。残留大腸菌株CCEC31rnは、潜在的治療用途を有するサイトカインである組換えIL-6を明らかに産生することができる。
【0112】
<実施例9:大腸菌ベクターによって分泌されたピシコリン126(P126)の抗菌活性>
大腸菌ベクター株CCEC31rn、CCEC59rn、及びCCEC101rn中でバクテリオシンP126を構成的に発現するプラスミドを、in vitroバクテリオシン活性の分泌に関して、プレート阻害アッセイによって試験した。リステリアイノクア及びウェルシュ菌(株NE15及びNE18、CSIROコレクション)を実験室で増殖させ、バクテリオシンプレート阻害アッセイにおける試験生物としてプレーティングした。ニワトリ由来大腸菌株の上清中に分泌されたP126は、当該アッセイで試験されたリステリアイノクア及びウェルシュ菌NE株の両方の増殖を阻害した(図7)。
【0113】
<実施例10:ニワトリの腸への治療用タンパク質の送達>
前記残留大腸菌株のうちの1株(CCEC31rn)を用いて、治療用組換えタンパク質をニワトリの腸に送達する生ベクターアプローチの有効性を実証した。送達されるべきタンパク質をコードする遺伝子を保持するプラスミドを、以下に定義するとおりに、この株に導入した。
【0114】
【表1】
【0115】
プラスミドを保持する大腸菌株を、中央ログフェーズにまで増殖させ、その後、各ニワトリに1mLの経口用量のニート培養物を投与した。孵化後1日目、18日目、及び20日目に、3回の異なった大腸菌投与を試験した。孵化後21日目及び22日目に、ウェルシュ菌ニワトリ単離株NE15(高レベルの疾患を引き起こし得る)の1mL培養物を経口接種することによって、トリにウェルシュ菌を実験的に負荷した。2回の負荷投与の間の24時間、畜舎から餌を取り除き、戻す際に、1畜舎あたり20mLのウェルシュ菌培養物を接種した。トリは、2回目の負荷の3日後に剖検し、壊死性腸炎のレベルを評価するために、壊死または潰瘍形成の局所性病変について、各トリの腸を検査した。
【0116】
<実施例11:P126の送達>
18日目にCCEC31rn(P126)を接種されたニワトリは、関連コントロール群及び負荷コントロール群と比較して、ウェルシュ菌の負荷から完全に防御されていた(すなわち、この群のいかなるニワトリにおいても病変が観察されなかった)。他の日(1日目または20日目)にこの株及びプラスミドを投与されたニワトリは、それらの関連用量コントロール群または負荷コントロール群と比較して、ウェルシュ菌での負荷からのいかなる防御(病変スコアの低減)も示さなかった。
【0117】
剖検後、BHIウマ血液寒天培地上へのプレーティング(37℃で嫌気的にインキュベーションされた)することによって、投与されたニワトリの盲腸内容物中のウェルシュ菌数を測定した。図8に示す結果は、18日目にCCEC31rn(P126)を投与されたニワトリから回収されたウェルシュ菌数が、関連ベクターコントロール群(大腸菌(ベクター)、18日目)を含めた他の群と比較して、有意に減少していたことを示している。この群は、以前に、ウェルシュ菌での負荷後に、防御(病変数の減少)を示したニワトリと同じ群であった。従って、この大腸菌ベクター中での、適切に時間を合わせたP126の送達は、予防的作用を有し、ニワトリにおける壊死性腸炎の発症を阻止する。
【0118】
<実施例12:ニワトリ盲腸内容物における抗菌活性の検出>
別々の試行で、市販ブロイラーニワトリに、CCEC31rn(P126)及び関連ベクターコントロールを投与し、負荷の3日後に剖検した。ニワトリ腸内における活性P126タンパク質の存在を、盲腸内容物を試料採取し、PBS中に再懸濁し、遠心分離し、次いで0.22μmフィルターに通して上清を濾過することによって検査した。リステリアイノクアまたはウェルシュ菌を播種された阻害プレートのウェルに、30μlの上清を添加した。前記プレートを37℃で一晩インキュベーションし、阻害の領域を評価した(図9)。
【0119】
細菌殺傷の領域によって示されるバクテリオシン活性は、CCEC31rn(P126)を投与されたすべてのトリの盲腸から明らかに回収された。CCEC31rn(pQE30)を投与されたコントロールトリの盲腸では、抗菌活性は検出されなかった。ニワトリから単離された大腸菌の残留株が、潜在的な治療用タンパク質であるピシコリン126をニワトリの腸に送達し得ることは明らかである。適切な時期に送達された場合、深刻なニワトリ疾患である壊死性腸炎の発症を完全に阻止させることができる。
【0120】
<実施例13:ニワトリへのIL-6の送達>
大腸菌ベクターCCEC31rnを用いることによって、成熟ニワトリIL-6をニワトリに送達した。1日目及び18日目に、1mLのCCEC31rn(IL-6)またはCCEC31rn(pQE30)で誘導された培養物をニワトリに投与し、組織試料を腸から回収して、IL-6の生ベクターによる送達の生物学的作用を評価した。
【0121】
IL-6は、in vitro及びin vivoにおいて、B細胞の分化及び増殖を刺激することが報告されている。IL-6の存在下では、B細胞は、IgA産生形質細胞に分化することができ、IgAは、粘膜表面に分泌されて、ニワトリに粘膜境界で体内に進入する病原体からの防御を付与する。従って、IL-6は、粘膜免疫における重要な役割を有し、ニワトリの消化管へのIL-6の正確な送達は、腸内膜におけるB細胞(リンパ球)の増殖の増大、形質細胞数の増大、並びにIgA産生及び粘膜表面への分泌の増大を観察することによって評価することができる。
【0122】
<実施例14:CCEC31rn(IL-6)を投与されたニワトリにおけるリンパ球の増殖>
剖検で、ニワトリの盲腸扁桃及び腸内膜からリンパ球を抽出した。計数後、これらのリンパ球の増殖能を評価するために、両試料からの等数のリンパ球を増殖アッセイに使用して、増殖中の細胞に組み込まれる放射性標識を用いて測定した。
【0123】
IL-6を投与されたニワトリの盲腸扁桃から単離されたリンパ球は、分裂促進因子であるConAによる刺激あり及び刺激なしの両方において、CCEC31rn(pQE30)を接種されたコントロールニワトリからのリンパ球がより高い増殖能力を有した(図10)。刺激なしで増殖し得る細胞は、事前に活性化されていたと考えられ、防御のために強く活性化されている。当該結果は、マンホイットニーU検定で統計的に有意であった。CCEC31rn(IL-6)を投与されたトリから単離されたリンパ球が、基本のプラスミドを保持するのみの大腸菌ベクターを投与されたトリから単離されたリンパ球より、高い増殖能を有することは明らかである。このことは、大腸菌ベクターを介して、IL-6がニワトリの消化管に効果的に送達され、送達されたIL-6産物がニワトリのBリンパ球に対して影響を有することを示している。
【0124】
<実施例15:投与されたニワトリの腸内膜及び盲腸扁桃におけるIgA分泌細胞の数>
盲腸扁桃と腸内膜の切片をIgAについて染色し、各試料中の直線1cmあたりの組織におけるIgA分泌形質細胞の数を計数した。腸内膜から回収された試料(図11)では、IL-6を発現する大腸菌ベクター株を投与されたトリは、基本のプラスミドを保持するベクター株を投与された群のトリより、直線1cmあたりの組織に多数のIgA分泌細胞を有した。これらの2つの群の間の差は、マンホイットニーU検定で検定した際に有意であった(P=0.0286)。粘膜免疫に直接関与していない組織から単離された細胞から予測されるように、これらのトリの盲腸扁桃から回収された2つのニワトリ群の間における平均数は統計的に差がなかった。
【0125】
<実施例16:サルモネラソフィアを用いた、ニワトリへのピシコリン126の送達>
P126を発現するサルモネラソフィア(S. sofia)をニワトリリステリア症モデルで試験した。4群、各10羽のSPFニワトリを、2台のバブルアイソレーター(bubble isolator)に収容した(群1及び2を1台のアイソレーターに、3及び4をもう1台に)。治療群は以下のとおりであった。
1.サルモネラソフィアナイア(S. sofia Nair)及びリステリアモノサイトゲネス負荷
2.サルモネラソフィアナイア(P126)及びリステリアモノサイトゲネス負荷
3.リステリアモノサイトゲネス負荷のみ
4.負荷なし
【0126】
群1及び2は、日齢1日に約109 cfuの適切なサルモネラソフィア株を投与された。2日目に、群1、2、及び3は2×108 cfuのリステリアモノサイトゲネスを投与された。トリの健康全般は、当該試行全体を通して観察され、2羽のトリが殺され、細菌は負荷後の1、2、5、及び7日目に計数された。
【0127】
当該結果は、当該試行全体を通して、サルモネラソフィアの集団が高レベルに維持されたこと(図12)、並びに、2日目の後、リステリアモノサイトゲネスは、P126を発現するサルモネラソフィアで前処理された群から回収できなかったが、接触コントロールトリを含めた他のすべての群で見出されたこと(図13)を示した。
【0128】
[結論]
当該結果は、健康なニワトリから回収されたわずかな比率の大腸菌単離株が残留能を有することを示している。概説された方法は、そのような単離株をどのように同定及び試験できるかを明示している。多数の残留株が同定され、それに続いて、有用な生送達ベクターを作製するのに必要とされる他の特徴を有することが示された。それらはプラスミドDNAで形質転換され、in vivo条件でプラスミドベクターを維持し得、さらにモデル組換えタンパク質を発現することができる。
【0129】
ニワトリから単離された大腸菌の残留株が、潜在的な治療用タンパク質であるピシコリン126をニワトリの腸に送達できることは明らかである。適切な時期に送達された場合、それは、深刻なニワトリ疾患である壊死性腸炎の発症を完全に阻止することができる。
【0130】
大腸菌ベクターCCEC31rnを介したIL-6送達は、ニワトリ消化管の腸内膜におけるB細胞の、粘膜防御のために粘膜表面にIgAを分泌できる形質細胞への分化を増強させた。厳選された細菌ベクターによるニワトリ消化管へのIL-6の送達は成功しており、免疫系のB細胞を増殖及び分化するように刺激し、病原体の侵入及び免疫の反撃に対して、ニワトリの免疫系を準備している。
【0131】
ピシコリン126も、サルモネラソフィアを用いてニワトリに送達された。当該結果は、サルモネラソフィアをニワトリ体内に維持できること、及び細菌送達されたピシコリン126が、リステリアモノサイトゲネスに対してin vivoで活性であったことを示した。
【0132】
広範に記載されている本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、特定の実施形態で示されている本発明に多数の変形及び/または改変を加えられることを当業者ならば理解するであろう。従って、本発明の実施形態は、あらゆる点で、例示的であり、制限的ではないと考えるべきである。
【0133】
前記に論じたすべての出版物を、全体として本明細書に組み込む。
【0134】
本明細書に含まれている、資料、行為、物質、装置、記事等に関するいかなる論述も、本発明の背景の提供のみを目的とするものである。それは、この出願の各請求項の優先日より前に存在していたことを理由に、これらの事項のいずれかまたはすべてが従来技術基盤の一部を形成していること、あるいは本発明に関連している分野における通常の一般知識であることを認めるものと解釈するべきではない。
【0135】
(参考文献)
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】SPFニワトリにおける、標識された大腸菌株の残留性(試行1)。
【図2】投与の42日後にニワトリ体内に存在する、それぞれの標識されたPFGE XbaI消化プロファイルのパーセンテージ(試行1)。
【図3】市販のニワトリにおける標識された大腸菌株の残留性。盲腸内容物から回収されたRif/Nal耐性コロニーの数(試行2)。
【図4】市販のニワトリにおける標識された大腸菌株の残留性。検出されるRif/Nal株を有するニワトリのパーセンテージ(試行2)。
【図5】市販のニワトリに投薬するのに使用された標識株に導入されたpQE30(Cat)プラスミドの、28日目におけるin vivoプラスミド安定性。
【図6】ニワトリ由来の大腸菌株CCEC31rn(+/- 1mM IPTG誘導)から発現された成熟ニワトリIL-6のin vitro生物活性。
【図7】ウェルシュ菌NE15(パネルA)及びNE18(パネルB)に対する分泌バクテリオシン(P126)の活性を示すプレート阻害アッセイ。P126遺伝子の構成的発現をコードしているpRM1503プラスミドを保持しているニワトリ由来の大腸菌ベクターを,一晩増殖させ、遠心沈殿させ、30μlの濾過上清を、指標細菌であらかじめ満たされたBHI 5%脱線維素ウマ血液プレートに穿孔されたウェルの中に添加した。前記プレートを、嫌気性条件で37℃にて一晩インキュベーションした。各プレートの左側には、ベクタープラスミドpQE30(バクテリオシンなし)を保持するCCEC株からの上清を添加した。各プレートの右側には、P126発現プラスミドであるpRM1503を保持するCCEC株からの上清を添加した。最上部:CCEC31rn、中央:CCEC59rn、最下部:CCEC101rn。
【図8】ニワトリ盲腸内容物中のウェルシュ菌数。
【図9】濾過された盲腸内容物中に検出されたバクテリオシン活性。濾過された盲腸内容物を遠心分離し、ニート上清をリステリアイノクア上にプレーティングした。A−コントロール:CCEC31rn(pQE30)、トリ1〜5の個々のニート上清を添加。B−CCEC31rn(P126)、トリ1〜5の個々のニート上清を添加。C−CCEC31rn(P126)、トリ6〜10の個々のニート上清を添加。
【図10】ニワトリ盲腸扁桃から単離されたリンパ球の増殖。コントロール群(CCEC31rn(pQE30))と試験群(CCEC31rn(IL-6))との間の差は、非刺激リンパ球及び刺激リンパ球の両方で有意であった(マンホイットニーU検定、P<0.0001)。
【図11】ニワトリ腸組織中のIgA分泌形質細胞の数。
【図12】感染したニワトリの盲腸内におけるサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィア集団。
【図13】盲腸におけるリステリアモノサイトゲネスの増殖。群平均を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを対象に送達する方法。
【請求項2】
前記細菌が大腸菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大腸菌が血清型H抗原であるH10を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記大腸菌が、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される株である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌がサルモネラの株である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記株がサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細菌が選択マーカーで標識される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸から選択される抗生物質に対する抗生物質耐性から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がトリである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が家禽である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象がニワトリである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌が前記対象の粘膜表面でコロニー形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌が前記対象の腸でコロニー形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生理活性ポリペプチドの1つ以上が、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインがIL-6である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌ペプチドが、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはバクテリオシン、あるいはそれらの合成バリアントから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、またはディベルジシン750、あるいはそれらの合成バリアントから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に前記グラム陰性菌が経口投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む、コロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法。
【請求項22】
工程(i)が、前記対象における異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記1つ以上のグラム陰性細菌株を単離する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(i)が、複数の細菌株を単離する工程を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
工程(ii)が複数の細菌株を標識する工程を含み、且つ工程(iii)が複数の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上のグラム陰性細菌株が、1つ以上の抗生物質に対する耐性によって標識される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の抗生物質が、リファンピシン及び/またはナリジクス酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(iv)が、前記対象から生体試料を単離する工程、及び前記試料が前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を含むかどうか判定する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が組織もしくは液体試料、またはスワブで採取した試料である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象における前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記試料が単離される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項21から29のいずれか一項に記載の方法によって単離された、コロニー形成グラム陰性細菌株。
【請求項31】
1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現する治療有効量のコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む、前記対象の疾患を治療または予防する方法。
【請求項32】
対象に投与した場合に前記対象でコロニー形成する、1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌。
【請求項33】
前記対象がトリである、請求項32に記載のグラム陰性菌。
【請求項34】
前記対象が家禽である、請求項33に記載のグラム陰性菌。
【請求項35】
前記対象がニワトリである、請求項34に記載のグラム陰性菌。
【請求項36】
前記細菌が大腸菌である、請求項32から35のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項37】
前記大腸菌が血清型H抗原であるH10を有する、請求項36に記載のグラム陰性菌。
【請求項38】
前記大腸菌株が、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される株である、請求項37に記載のグラム陰性菌。
【請求項39】
前記細菌がサルモネラの株である、請求項32から35のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項40】
前記株がサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである、請求項39に記載のグラム陰性菌。
【請求項41】
前記細菌が選択マーカーで標識されている、請求項32から40のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項42】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸から選択される抗生物質に対する耐性から選択される、請求項41に記載のグラム陰性菌。
【請求項43】
前記細菌が前記対象の粘膜表面でコロニー形成する、請求項32から42のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項44】
前記細菌が前記対象の腸でコロニー形成する、請求項32から43のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項45】
前記生理活性ポリペプチドの1つ以上が、サイトカイン、ホルモン、酵素、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である、請求項32から44のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項46】
前記サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される、請求項45に記載のグラム陰性菌。
【請求項47】
前記サイトカインがIL-6である、請求項46に記載のグラム陰性菌。
【請求項48】
前記生理活性ポリペプチドのうちの1つ以上が抗菌ペプチドである、請求項45に記載のグラム陰性菌。
【請求項49】
前記抗菌ペプチドが、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはバクテリオシン、あるいはそれらの合成バリアントである、請求項48に記載のグラム陰性菌。
【請求項50】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、またはディベルジシン750、あるいはそれらの合成バリアントである、請求項49に記載のグラム陰性菌。
【請求項51】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである、請求項50に記載のグラム陰性菌。
【請求項52】
登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される、コロニー形成非病原性グラム陰性菌。
【請求項53】
1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するように改変されている、請求項52に記載のグラム陰性菌。
【請求項54】
請求項32から53のいずれか一項に記載のグラム陰性菌と製薬的に許容可能なキャリアとを含む、対象に投与される製剤。
【請求項1】
1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを対象に送達する方法。
【請求項2】
前記細菌が大腸菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大腸菌が血清型H抗原であるH10を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記大腸菌が、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される株である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記細菌がサルモネラの株である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記株がサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細菌が選択マーカーで標識される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸から選択される抗生物質に対する抗生物質耐性から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記対象がトリである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が家禽である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象がニワトリである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細菌が前記対象の粘膜表面でコロニー形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記細菌が前記対象の腸でコロニー形成する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記生理活性ポリペプチドの1つ以上が、サイトカイン、ホルモン、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインがIL-6である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗菌ペプチドが、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはバクテリオシン、あるいはそれらの合成バリアントから選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、またはディベルジシン750、あるいはそれらの合成バリアントから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象に前記グラム陰性菌が経口投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
i)1つ以上のグラム陰性細菌株を対象から単離する工程;
ii)前記1つ以上のグラム陰性細菌株を標識する工程;
iii)前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程;
iv)前記1つ以上のグラム陰性細菌株が前記対象でコロニー形成するかどうか判定する工程;
を含む、コロニー形成非病原性グラム陰性細菌株を同定する方法。
【請求項22】
工程(i)が、前記対象における異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記1つ以上のグラム陰性細菌株を単離する工程を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(i)が、複数の細菌株を単離する工程を含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
工程(ii)が複数の細菌株を標識する工程を含み、且つ工程(iii)が複数の標識グラム陰性細菌株を前記対象に再導入する工程を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記1つ以上のグラム陰性細菌株が、1つ以上の抗生物質に対する耐性によって標識される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の抗生物質が、リファンピシン及び/またはナリジクス酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
工程(iv)が、前記対象から生体試料を単離する工程、及び前記試料が前記1つ以上の標識グラム陰性細菌株を含むかどうか判定する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が組織もしくは液体試料、またはスワブで採取した試料である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象における前記異種ポリペプチドを最終的に送達する必要がある部位から、前記試料が単離される、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
請求項21から29のいずれか一項に記載の方法によって単離された、コロニー形成グラム陰性細菌株。
【請求項31】
1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現する治療有効量のコロニー形成非病原性グラム陰性菌を対象に投与する工程を含む、前記対象の疾患を治療または予防する方法。
【請求項32】
対象に投与した場合に前記対象でコロニー形成する、1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するコロニー形成非病原性グラム陰性菌。
【請求項33】
前記対象がトリである、請求項32に記載のグラム陰性菌。
【請求項34】
前記対象が家禽である、請求項33に記載のグラム陰性菌。
【請求項35】
前記対象がニワトリである、請求項34に記載のグラム陰性菌。
【請求項36】
前記細菌が大腸菌である、請求項32から35のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項37】
前記大腸菌が血清型H抗原であるH10を有する、請求項36に記載のグラム陰性菌。
【請求項38】
前記大腸菌株が、1つ以上の異種生理活性ポリペプチドを発現するように改変されている、登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される株である、請求項37に記載のグラム陰性菌。
【請求項39】
前記細菌がサルモネラの株である、請求項32から35のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項40】
前記株がサルモネラエンテリカ亜種エンテリカ血清型ソフィアである、請求項39に記載のグラム陰性菌。
【請求項41】
前記細菌が選択マーカーで標識されている、請求項32から40のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項42】
前記選択マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、またはクロラムフェニコール、テトラサイクリン、カナマイシン、アンピシリン、リファンピシン、もしくはナリジクス酸から選択される抗生物質に対する耐性から選択される、請求項41に記載のグラム陰性菌。
【請求項43】
前記細菌が前記対象の粘膜表面でコロニー形成する、請求項32から42のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項44】
前記細菌が前記対象の腸でコロニー形成する、請求項32から43のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項45】
前記生理活性ポリペプチドの1つ以上が、サイトカイン、ホルモン、酵素、抗菌ペプチド、抗腫瘍剤、酵素、抗体、または抗原である、請求項32から44のいずれか一項に記載のグラム陰性菌。
【請求項46】
前記サイトカインが、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-32、cMGF、LT、GM-CSF、M-CSF、SCF、IFN-γ、IFN-λ、EPO、G-CSF、LIF、OSM、CNTF、GH、PRL、またはIFNα/βから選択される、請求項45に記載のグラム陰性菌。
【請求項47】
前記サイトカインがIL-6である、請求項46に記載のグラム陰性菌。
【請求項48】
前記生理活性ポリペプチドのうちの1つ以上が抗菌ペプチドである、請求項45に記載のグラム陰性菌。
【請求項49】
前記抗菌ペプチドが、コリシン、ミクロシン、セクロピン、マゲイニン、デフェンシン、またはバクテリオシン、あるいはそれらの合成バリアントである、請求項48に記載のグラム陰性菌。
【請求項50】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126、ディベルシンV41、ペディオシンPA-1、エンテロシンP、またはディベルジシン750、あるいはそれらの合成バリアントである、請求項49に記載のグラム陰性菌。
【請求項51】
前記バクテリオシンが、ピシコリン126またはその合成バリアントである、請求項50に記載のグラム陰性菌。
【請求項52】
登録番号NM05/45635で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC22、登録番号NM05/45636で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC31、または登録番号NM05/45637で国立計測標準研究所(前身はAGAL)に寄託されているCCEC59から選択される、コロニー形成非病原性グラム陰性菌。
【請求項53】
1つ以上の異種生理活性ペプチドを発現するように改変されている、請求項52に記載のグラム陰性菌。
【請求項54】
請求項32から53のいずれか一項に記載のグラム陰性菌と製薬的に許容可能なキャリアとを含む、対象に投与される製剤。
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【図12】
【図13】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図5】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2009−506079(P2009−506079A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528293(P2008−528293)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001255
【国際公開番号】WO2007/025333
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001255
【国際公開番号】WO2007/025333
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(305039998)コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガニゼイション (92)
【Fターム(参考)】
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