説明

産業用車両

【課題】バケットのダンプ動作時にあっても、動力を無駄に消費するのを防止し得る産業用車両を提供する。
【解決手段】車両本体に傾動用シリンダにより傾動自在に設けられたブームの先端に、リンク機構を介して支持されて揺動用シリンダ19により鉛直面内で揺動自在にされたバケットを有し、且つ揺動用シリンダに作動油を供給する油圧配管22を有するホイールローダであって、油圧配管に、吐出量調節用シリンダ27を有する可変容量型の油圧ポンプ21と、この油圧ポンプの下流側に配置されて揺動用シリンダに作動油を供給する方向切換弁23とを設けるとともに、油圧ポンプの吐出量調節用シリンダを制御するための吐出量減少操作部および吐出量増大操作部を有するレギュレータ装置28を設け、このレギュレータ装置の吐出量減少操作部にバケットのダンプ動作を行わせるためのパイロット圧を供給するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダなどのようにバケットを有する産業用車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホイールローダには土砂などを掬うためのバケットがブームを介して昇降自在に設けられ、さらにこのバケットはブームに対して上下方向で揺動自在に設けられている。したがって、ブームを上下方向で揺動させるブーム用油圧シリンダが設けられるとともに、バケットを揺動させるバケット用油圧シリンダが設けられている。
【0003】
ところで、バケットのダンプ動作には、泥落としのはたき動作と、土砂の放出動作とがあり、作業の効率化のためにその動作スピードが早くされているが、やはり、土砂などのダンプ動作時には大きいショックを伴うため、どうしても、ショックを軽減するために、バケット用油圧シリンダの油圧配管途中に流量絞り弁を設ける必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−163344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、バケット用油圧シリンダの油圧配管途中に流量絞り弁を設けてダンプ動作時に発生するショックを緩和する場合、作業の効率化のために、ダンプ動作が早くされており、そのため、作動油が流量絞り弁により絞られるため、動力が無駄になるとともに、油温が高くなり冷却能力を増やす必要が生じ、コストが高くつくという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、バケットのダンプ動作時にあっても、動力を無駄に消費するのを防止し得る産業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の産業用車両は、車両本体に傾動用油圧シリンダにより傾動自在に設けられたブームの先端に、リンク機構を介して支持されるとともに当該リンク機構に接続された揺動用油圧シリンダにより鉛直面内で揺動自在にされたバケットを有し、且つ上記揺動用油圧シリンダに作動油を供給する油圧配管を有する産業用車両であって、
上記油圧配管に、吐出量調節手段を有する可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプの下流側に配置されて上記揺動用油圧シリンダに作動油を供給する方向切換弁とを設けるとともに、
上記油圧ポンプの吐出量調節手段を制御するための吐出量減少操作部および吐出量増大操作部を有するレギュレータ装置を設け、
このレギュレータ装置の吐出量減少操作部にバケットのダンプ動作を行わせるためのダンプ動作信号を入力させるようにしたものである。
【0008】
また、上記構成において、ダンプ動作信号として、方向切換弁に供給するダンプ動作用のパイロット圧を用いたものであり、さらに可変容量型油圧ポンプとして、斜板式アキシャルピストン形のものを用いたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によると、バケットのダンプ動作時に、油圧ポンプの吐出量を調節する吐出量調節手段を制御するレギュレータ装置の吐出量減少部に、ダンプ動作信号を入力するようにしたので、従来のように、ダンプ動作時に、その油圧シリンダの出口側の油量を絞り弁にて絞る必要がなく、したがって作動油の温度が高くなるのを防止し得るとともに無駄な動力の消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例に係る産業用車両の側面図である。
【図2】同産業用車両における油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る産業用車両を具体的に示した実施例に基づき説明する。
本実施例に係る産業用車両としては建設車両、具体的には、大型のホイールローダの場合について説明する。
【0012】
図1に示すように、このホイールローダの車両本体1は、左右に車輪4を有する前側本体部2と、同じく左右に車輪5を有する後側本体部3とから構成され、また両本体部2,3同士は、鉛直方向の上下の連結ピン6により、互いに屈折可能つまり換向可能に連結されるとともに、両本体部2,3同士間に亘って設けられた屈折用つまり換向用油圧シリンダ(以下、換向用シリンダという)7により換向(ステアリング)が行われる。
【0013】
上記前側本体部2には、ブーム11の一端部が水平ピン12を介して鉛直面内で傾動自在に支持されるとともに、その先端には、同じく水平ピン13を介してバケット14がやはり鉛直面内で、つまり上下方向で揺動自在に取り付けられており、また上記ブーム11と前側本体部2との間には当該ブーム11を傾動させる傾動用油圧シリンダ(以下、傾動用シリンダという)15が設けられており、さらにブーム11の中間部には、水平ピン16を介して前後方向に長いリンク体17が揺動自在に支持されている。なお、リンク体17の中間部が水平ピン16により支持されている。
【0014】
そして、このリンク体17の前端部とバケット14の後面側とはリンク材18を介して連結されるとともに、リンク体17の後端部と前側本体部2との間にはバケット14を上下方向で揺動させる揺動用油圧シリンダ(以下、揺動用シリンダという)19が配置されている。
【0015】
したがって、運転席8に設けられた操作レバー9により、傾動用シリンダ15を作動させることにより、ブーム11を傾動させてバケット14を上下方向で移動させることができ、また揺動用シリンダ19を作動させることにより、バケット14を上下方向で揺動させることができる。つまり、バケット14を、その開口部が下向くダンプ姿勢と、クラウド姿勢(土砂などを掬い得る上向き姿勢)との間で揺動させることができる。
【0016】
次に、バケット14を作動させるための油圧装置を、図2の油圧回路図に基づき説明する。
ここで説明する油圧装置については、本発明の要旨であるバケットに関する部分に着目して説明する。
【0017】
バケット用の油圧装置は、可変容量型の油圧ポンプ21と、この油圧ポンプ21からの作動油つまり油圧をバケット14の揺動用シリンダ19に供給するための油圧配管22と、この油圧配管22の途中に設けられた方向切換弁23と、油タンク24とから構成されている。
【0018】
ところで、上記油圧ポンプ21としては、斜板式アキシャルピストン形のポンプが用いられている(斜板式のポンプでもよい)。すなわち、この油圧ポンプ21には、ポンプ本体26と、このポンプ本体26に具備されて斜板の傾斜量を調節してアキシャルピストンのストローク量、つまり吐出量の増減を行うための吐出量調節用油圧シリンダ(吐出量調節手段の一例で、以下、吐出量調節用シリンダという)27とが設けられるとともに、この吐出量調節用シリンダ27を制御するためのレギュレータ装置28が具備されている。なお、油圧配管22の方向切換弁23の下流側には絞り弁29が設けられている。
【0019】
ここで、上記吐出量調節用シリンダ27およびレギュレータ装置28を、図2に記載した模式図に基づき簡単に説明する。
吐出量調節用シリンダ27のシリンダ室内にはピストン(サーボピストンともいう)31が往復移動自在に配置されるとともに、それぞれの両端側には、第1油室32および第2油室33が設けられている。
【0020】
また、上記レギュレータ装置28には、馬力制御部34と流量制御部35とが設けられており、これら各レギュレータ部34,35には、円柱状の穴部内にすなわち円形のシリンダ室内に円筒状のスリーブ36,37がシリンダ室の軸心方向に沿って移動自在に設けられるとともにこれら各スリーブ36,37内にスプール38,39がやはり軸心方向で移動自在に設けられている。なお、上記各スリーブ36,37は、連結部材40を介して吐出量調節用シリンダ27のピストン31に接続されている。
【0021】
上記方向切換弁23には、操作レバーからの操作信号、すなわちバケットの動作を指示するためのパイロット圧(パイロット用油圧である)を供給する第1および第2パイロット油圧配管41,42が接続されている。例えば、第1パイロット油圧配管41よりダンプ動作を指示するパイロット圧が供給(入力)され、また第2パイロット油圧配管42よりクラウド動作を指示するパイロット圧が供給(入力)される。
【0022】
さらに、上記各制御部34,35には、複数のパイロット油圧配管(後述する)が接続されて、具体的には、荷役動作に応じたパイロット圧が供給(入力)されて、各スプルール38,39が移動させられる。すなわち、吐出量調節用シリンダ27のピストン31が移動されて油圧ポンプ21における吐出量の増大または減少が行われる。
【0023】
具体的に説明すれば、吐出量調節用シリンダ27の両油室32,33には、第3〜第5パイロット油圧配管43〜45を介してパイロット油圧ポンプ(図示せず)からパイロット圧が供給され、また馬力制御部34にはパイロット油圧配管46を介してポンプ自己圧が供給され、また流量制御部35には第7および第8パイロット油圧配管47,48を介して、油圧配管22途中に設けられた絞り弁29の入口側油圧および出口側油圧が供給されている。
【0024】
そして、さらに第1パイロット油圧配管41と流量制御部35の制御ポート部35cとの間には第9パイロット油圧配管49が設けられており、方向切換弁23にダンプ動作を指示した際に、そのパイロット圧が流量制御部35の制御ポート部35cにも供給されて、油圧ポンプ21の吐出量が減少するようにされている。すなわち、流量制御部35におけるスプール39の一端側の油室35aおよび中間部の制御ポート部35cが吐出量減少操作部にされるとともに、他端側の油室35bが吐出量増大操作部にされている。
【0025】
上記構成において、ホイールローダにより、例えば土砂の運搬作業、すなわち土砂をダンプカーに積み込む場合には、車両本体1の走行、ブーム11の傾動、およびバケット14の揺動が適宜行われる。すなわち、バケット14をクラウド姿勢にして土砂を掬い上げ、この状態でダンプカーまで走行し、そしてバケット14を上方に移動させた後、バケット14をダンプ姿勢にすることにより、土砂をダンプカーに積み込むことになる。
【0026】
ところで、バケット14をダンプ姿勢にする際に、当然ながら、そのパイロット圧が揺動用シリンダ19に供給されるが、同時に、このパイロット圧が流量制御部35の制御ポート部35cにも供給されるため、油圧ポンプ21の吐出量が減少されてバケット14がゆっくり揺動される。
【0027】
このように、バケット14のダンプ動作時に、油圧ポンプ21の吐出量を調節するレギュレータ装置28の流量制御部35に、斜板の傾斜を緩くして吐出量を減少させるためのパイロット圧を供給するようにしたので、従来のように、ダンプ動作時に、その油圧シリンダの出口側の油量を絞り弁にて絞る必要がない。すなわち、コストを高くすることなく、作動油の温度が高くなるのを防止し得るとともに、無駄な動力の消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 車両本体
14 バケット
15 傾動用油圧シリンダ
19 揺動用油圧シリンダ
21 油圧ポンプ装置
22 油圧配管
23 方向切換弁
26 ポンプ本体
27 吐出量調節用油圧シリンダ
28 レギュレータ装置
31 ピストン
32 第1油室
33 第2油室
34 馬力制御部
35 流量制御部
35a 吐出量減少操作部
35b 吐出量増大操作部
35c 制御ポート部
36 スリーブ
37 スリーブ
38 スプール
39 スプール
41 第1パイロット油圧配管
42 第2パイロット油圧配管
49 第9パイロット油圧配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に傾動用油圧シリンダにより傾動自在に設けられたブームの先端に、リンク機構を介して支持されるとともに当該リンク機構に接続された揺動用油圧シリンダにより鉛直面内で揺動自在にされたバケットを有し、且つ上記揺動用油圧シリンダに作動油を供給する油圧配管を有する産業用車両であって、
上記油圧配管に、吐出量調節手段を有する可変容量型の油圧ポンプと、この油圧ポンプの下流側に配置されて上記揺動用油圧シリンダに作動油を供給する方向切換弁とを設けるとともに、
上記油圧ポンプの吐出量調節手段を制御するための吐出量減少操作部および吐出量増大操作部を有するレギュレータ装置を設け、
このレギュレータ装置の吐出量減少操作部にバケットのダンプ動作を行わせるためのダンプ動作信号を入力させるようにしたことを特徴とする産業用車両。
【請求項2】
ダンプ動作信号として、方向切換弁に供給するダンプ動作用のパイロット圧を用いたことを特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【請求項3】
可変容量型油圧ポンプとして、斜板式のアキシャルピストン形のものを用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の産業用車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−64019(P2011−64019A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216311(P2009−216311)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】