説明

産業用車両

【課題】アイドリング中のエンジン自動停止に伴い、荷を昇降するフォークなどの荷役手段により発生する不具合を防止できる産業用車両を提供することを目的とする。
【解決手段】車両本体に、エンジン56がアイドリング中にエンジン56を自動的に一時停止することを許可するアイドリングストップモードスイッチ41を備え、荷役装置に、フォークの高さが、所定の高さ以下にあるかどうかを検出する高さ検出スイッチ35を備え、少なくとも、アイドリングストップモードスイッチ41により、エンジン56を自動的に一時停止することが許可され、且つ高さ検出スイッチ35により、フォークの高さが、所定の高さ以下であることが検出されているとき、エンジン56の回転数がアイドリング回転数であることが検出されると、タイマーによる時間のカウントを開始し、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間となると、前記エンジン56を自動停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用車両に関し、特にエンジンの制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用車両としてフォークリフト等があるが、この種のフォークリフトは、走行用の車両本体と、この車両本体に設けられた荷役装置(フォーク装置)とから構成されている。
当然ながら、車両本体には、エンジンが具備されるとともに、フォーク装置として、荷を支持して昇降且つ前後に傾動可能なフォークが具備されたものであり、通常は、このフォークの昇降用の操作レバーおよび傾動用の操作レバーが設けられ、これら操作レバーを操作することにより、荷役作業を行うものである。
【0003】
ところで、最近、省エネルギーが言われており、例えば、フォークリフトにおいても、非作業時にも通常、エンジンが回転しており、所謂、アイドリング状態であり、不経済であった。
【0004】
このような観点から、例えば、エンジンがアイドリング状態になったときに、車速が略0km/hであり、且つギヤはニュートラル位置にあり、且つクラッチペダルの踏み込みが無いとの条件が成立すると、エンジンを停止するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−224695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、産業用車両では、エンジンに直結されて、荷役装置の駆動に使用する圧油を供給する油圧ポンプが設けられ、例えば、フォークリフトでは、フォークの昇降に使用するリフトシリンダに、油圧ポンプより圧油が供給されている。エンジンが停止すると油圧ポンプも停止して、圧油が供給されなくなる。このように、エンジンが停止してしまい、圧油の供給が停止された状態では、特に、初心者や新人の場合、フォークを昇降できないものと思って、フォークが上昇したままで放置される恐れがあり、上昇中のフォークやフォークに支持されている荷が、周りの作業の邪魔となったり、作業者が不用意に接触するという不具合が発生する恐れがあった。
【0007】
そこで、本発明は、荷を昇降する荷役装置を備えた産業用車両であって、アイドリング中のエンジン自動停止に伴い、フォークなどの荷役手段により発生する不具合を防止できる産業用車両を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、走行用の車両本体と、前記車両本体に取り付けられた、荷を昇降する荷役手段を有する油圧式の荷役装置とから構成され、前記車両本体に、エンジンと、前記エンジンにより駆動され前記荷役装置に圧油を供給する油圧ポンプと、バッテリと、前記バッテリより給電されて前記エンジンをスタートするスタータモータと、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出装置を備えた産業用車両であって、
前記車両本体に、前記エンジンがアイドリング中にエンジンを自動的に一時停止することを許可するアイドリングストップモードスイッチを備え、前記荷役装置に、前記荷役手段の高さが、所定の高さ以下にあるかどうかを検出する高さ検出装置を備え、少なくとも、前記アイドリングストップモードスイッチにより、前記エンジンを自動的に一時停止することが許可され、且つ前記高さ検出装置により、前記荷役手段の高さが、所定の高さ以下であることが検出されているとき、前記回転数検出装置により前記エンジンの回転数がアイドリング回転数であると判断すると、タイマーによる時間のカウントを開始し、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間となると、前記エンジンを自動停止することを特徴とするものである。
【0009】
上記構成によれば、少なくとも、アイドリングストップモードスイッチによりアイドリング中にエンジンを自動的に一時停止することが許可され、且つフォークの高さが所定の高さ以下であるとの条件が成立している状態で、エンジンの回転数が、アイドリング回転数となると、タイマーによる時間のカウントが開始され、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間となると、エンジンが一時自動停止され、よって省エネルギーが実現される。またエンジンが停止すると油圧ポンプが停止し、荷役装置に圧油が供給されなくなると、荷役手段が所定の高さより高い位置のまま放置される恐れがあるが、荷役手段の高さが所定の高さ以下であることをエンジンの自動停止の条件としているから、荷役手段と荷役手段により支持された荷が、所定の高さより高い位置のまま放置される恐れは回避される。
【0010】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記エンジンが自動停止し、前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より長い、予め設定された第2設定時間となると、前記バッテリからの給電を遮断することを特徴とするものである。
【0011】
上記構成によれば、エンジンが自動停止し、タイマーによる時間のカウントが、第2設定時間となると、バッテリからの給電が遮断され、バッテリ上がりも防止される。
また請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明であって、前記車両本体に、エンジン停止予告ランプを備え、前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より短い、予め設定された第3設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを点滅し、前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを連続点灯し、前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より長く前記第2設定時間より短い、予め設定された第4設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを、前記第3設定時間経過時の点滅より短い間隔で点滅することを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、産業用車両の運転者(操作者)に、エンジン停止予告ランプの表示の状態により次の状態が知らされる。
点滅…しばらくしてエンジンが自動停止される。
【0013】
点灯…エンジンが自動停止中である。
短い間隔で点滅…しばらくしてバッテリからの給電が遮断される。
よって、運転者(操作者)は、エンジンの状態、バッテリからの給電がどのようになるのか、予め知ることができる。
【0014】
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、前記車両本体に、走行操作機器としてブレーキペダルを備え、前記エンジンの自動停止中、前記ブレーキペダルの操作を確認すると、前記スタータモータを駆動して前記エンジンを再始動することを特徴とするものである。
【0015】
上記構成によれば、エンジンの自動停止中に、ブレーキペダルが操作されると、エンジンが再始動される。すなわち、車両本体を走行させるときの一連の動作の一つとして、ブレーキペダルが踏み込まれると、エンジンが再始動され、走行が可能となる。
【0016】
また請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明であって、前記バッテリの電圧を検出する電圧検出装置を備え、前記電圧検出装置により検出されるバッテリの電圧が規定値未満のとき、前記エンジンの自動停止を中止することを特徴とするものである。
【0017】
バッテリの電圧が規定値未満のとき、エンジンが自動停止してしまうと、エンジンを再起動するスタータモータもバッテリから給電されているために、エンジンの再起動ができなくなる恐れがある。
【0018】
上記構成によれば、バッテリの電圧が規定値未満のとき、エンジンの自動停止が実行されないことにより、エンジンの再起動ができなくなる恐れが回避される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の産業用車両は、エンジンの回転数がアイドリング回転数となると、タイマーによる時間のカウントが開始され、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間となると、エンジンが一時自動停止されることにより、省エネルギーを実現でき、このとき荷役手段の高さが所定の高さ以下であることをエンジン自動停止の条件としていることにより、油圧ポンプが停止して荷役装置に圧油が供給されなくなることによって荷役手段が所定の高さより高い位置のまま放置される恐れを回避できる、という効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態における産業用車両のエンジン一時停止時のタイムチャートである。
【図2】同産業用車両のエンジン周りのシステム構成図である。
【図3】同産業用車両のエンジン一時停止時のフローチャートである。
【図4】同産業用車両の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は本発明の実施の形態における産業用車両の斜視図である。
図4に示すように、産業用車両の一例であるフォークリフト10は、車両本体11と、車両本体11に取り付けられたフォーク装置(油圧式の荷役装置の一例)12から構成されている。
【0022】
前記車両本体11は、車体21と、この車体21の前部に設けられた左右一対の前車輪(駆動輪)22と、車体21の後部に設けられた左右一対の後車輪23と、車体21上に設けられた運転席24と、運転席24の上方に配設されたヘッドガード25と、運転席24の後方で車体21上に設けられたカウンターウェイト26等から構成され、車体21は、前記前車輪22と後車輪23により支持され、車両本体11は前車輪22の駆動により走行自在とされている。
【0023】
また前記フォーク装置12は、車体21の前端部に車幅方向の連結軸31を介して前後方向に傾動自在に取り付けられる、上下方向に伸縮自在なマスト32と、このマスト32を前後に傾動させるティルトシリンダ(図示せず)と、マスト32を上下方向に伸縮させるリフトシリンダ33と、マスト32に案内されて昇降自在な左右一対のフォーク(荷役手段の一例)34と、ティルトシリンダおよびリフトシリンダ33を駆動する荷役駆動部(後述するメインポンプ等)等から構成されている。またフォーク装置12には、フォーク34の高さが、所定高さ以下となると動作するフォーク高さ検出スイッチ35(図2;高さ検出装置の一例)が設けられている。前記所定高さは、フォーク34が上昇されてそのまま放置されることになり、上昇中のフォーク34やフォーク34に支持されている荷が、周りの作業の邪魔となったり、作業者が不用意に接触するという不具合が発生する恐れを回避できる高さに設定されている。
【0024】
また車両本体11の運転席24には、その前方に操作盤41(図2)が設けられ、操作盤41には、図2に示す、キースイッチ42と、アイドリングストップモードスイッチ43と、エンジン停止予告ランプ(LED)44と、計器類(図示せず)が設けられている。前記キースイッチ42は、オフ(OFF)位置、オン(ON)位置、およびスタート(ST)位置を有し、キーを操作することにより、コモン(C)をオフ(OFF)位置、またはオン(ON)位置、またはスタート(ST)位置に接続することができ、スタート(ST)位置までキーが操作されるとオン(ON)位置まで自動的に戻る機構が採用されている。また前記アイドリングストップモードスイッチ43は、後述するエンジン56がアイドリング中に、エンジン56を一時停止することを許可するかどうかを選択する手動スイッチであり、「許可」(スイッチオン)と「不許可」(スイッチオフ)に切り替えられる。フォークリフト10の運転員(操作者)が、この「許可」または「不許可」を選択する。前記エンジン停止予告ランプ(LED)44の点灯状態については後述する。
【0025】
さらに運転席24には、図4に示すように、走行操作手段として、その前方にハンドル46と、前後進操作レバー47と、パーキングブレーキ48が設けられ、床下にアクセルペダル(図示せず)と、ブレーキペダル(図示せず)が設けられ、アクセルペダルの踏み込み角度を検出するアクセルペダル角度検出器49(図2)と、ブレーキペダルの踏み込みを検出するブレーキペダルスイッチ50(図2)が設けられている。
【0026】
また運転席24には、その前方に、フォーク装置(荷役装置)12のコントロールレバーである荷役操作レバー52が設けられ、またエアコン53(図2)が設けられている。
また車体21の内部には、図2に示すように、エンジン56と、エンジン56のスタータ(スタータモータ)57と、エンジン56の駆動軸に連結されたトランスミッション58およびメインポンプ(油圧ポンプ)59が設けられている。
【0027】
またトランスミッション58の出力軸にプロペラシャフト60が連結されており、エンジン56の駆動軸に、トランスミッション58内に設けられているクラッチ(図示せず)によってトランスミッション58の出力軸が接続されると、プロペラシャフト60により左右一対の前車輪22の車軸へエンジン56の動力が伝達され、前車輪22が回転され、車両本体11は走行される。またエンジン56によりメインポンプ59が駆動されると、メインポンプ59よりリフトシリンダ33とティルトシリンダへの圧油の供給可能となり、荷役操作レバー52の操作により荷役作業(フォーク34の昇降やマスト32の傾動)が実行され、またハンドル46のステアリング61に制御油が供給され、ハンドル46の操作を容易としている。
【0028】
さらに車体21の内部には、バッテリ63と、エンジン56のエンジン制御装置64と、スタータリレー65と、バッテリリレー66と、コンピュータからなる制御装置67が設けられている。
【0029】
図2に示すように、バッテリ63は、バッテリリレー66およびスタータリレー65を介してスタータ57へ給電可能とされ、またキースイッチ42を介してエアコン53へ給電可能とされている。
【0030】
バッテリリレー66は、キースイッチ42がオン(ON)位置またはスタート(ST)位置にキー操作されると、リレー接点はオンとなり、キースイッチ42がオフ(OFF)位置にキー操作されると、リレー接点はオフとなる。
【0031】
またバッテリリレー66のリレー接点は、キースイッチ42がオン(ON)位置の状態であっても制御装置67から電源遮断信号(後述する)が出力されると、オフとなる。このとき、キースイッチ42がスタート(ST)位置にキー操作されると、バッテリリレー66のリレー接点はオンに復帰する。
【0032】
このバッテリリレー66のリレー接点がオンとなることにより、バッテリ63よりスタータリレー65を介してスタータ57への給電が可能となり、またオフとなると、スタータ57へのバッテリ63からの給電が遮断される。
【0033】
またエアコン53へは、キースイッチ42がオン(ON)位置にキー操作されることによりバッテリ63より給電が可能となり、またキースイッチ42がオフ(OFF)位置にキー操作されると、バッテリ63からの給電が遮断される。
【0034】
またスタータリレー65は、キースイッチ42がスタート(ST)位置までキー操作されている間、または制御装置67からエンジン再始動信号(後述する)が出力されている間リレー接点がオンとなり、リレー接点がオンとなるとバッテリ63よりスタータ57へ給電され、スタータ57が駆動される。すなわち、エンジン56が始動される。また、キースイッチ42がスタート(ST)位置からオン(ON)位置に戻し操作されると、スタータリレー65のリレー接点はオフとなり、バッテリ63よりスタータ57への給電が遮断される。
【0035】
またエアコン53は、キースイッチ42がオン(ON)位置となっているとき、すなわちバッテリ63から給電可能とされているとき、エアコン53の操作スイッチ(図示せず)をオン(ON)とすることにより駆動され、またキースイッチ42がオフ(OFF)位置とされること、すなわちバッテリ63からの給電が遮断されること、またはエアコン53の操作スイッチ(図示せず)をオフ(OFF)とすることにより停止される。またエアコン53が駆動されているとき、エアコン53よりエアコン使用信号が、制御装置67へ出力される。
【0036】
また前記エンジン制御装置64は電子ガバナから構成され、キースイッチ42の操作位置(オフ位置またはオン位置またはスタート位置)、バッテリリレー66のリレー接点のオンまたはオフ、および制御装置67から出力されるエンジン始動指令信号とエンジン停止指令信号(後述する)に基づいて、エンジン56の始動・停止を実行する機能と、制御装置67から出力される回転数指令信号(後述する)により指令された回転数に応じて、エンジン56へ供給する燃料を調整してエンジン56の回転数を制御する機能を有している。またエンジン制御装置64は、エンジン56の実回転数を制御装置67へフィードバックする機能を有しており、回転数検出装置を兼ねている。
【0037】
以下、上記構成に基づく、「エンジン始動」および「エンジン停止」の動作について説明し、さらに上記制御装置67によるエンジン回転数制御(シーケンス)、すなわち「エンジン回転数指令」および「エンジン一時停止」について詳細に説明する。
【0038】
図2に示すように、制御装置67には、エンジン回転数制御に必要な信号(入力信号)が入力され、信号(出力信号)が出力されている。
*入力信号
・アイドリングストップモードスイッチ43の操作信号(スイッチのオン信号)。
【0039】
・前後進操作レバー47のニュートラル位置信号。
・パーキングブレーキ48のブレーキオン信号。
・アクセルペダル角度検出器49により検出されるアクセルペダルの踏み込み角度、すなわちエンジン回転数指令値。
【0040】
・ブレーキペダルスイッチ50のオン信号、すなわちブレーキペダルの踏み込み信号。
・フォーク高さ検出スイッチ35のオン信号、すなわちフォーク34の高さが、所定高さ以下でオンとなる信号。
【0041】
・エアコン53の使用信号。
・バッテリ63の電圧信号。
・エンジン制御装置64から出力されるエンジン56の実回転数。
*出力信号
・エンジン停止予告ランプ(LED)44への表示信号(消灯信号、点滅信号、連続点灯信号、前記点滅信号より短い間隔で点滅する急点滅信号)。
【0042】
・上記バッテリリレー66への電源遮断信号。
・上記スタータリレー65へのエンジン再始動信号。
・エンジン制御装置64へのエンジン始動指令信号、エンジン停止指令信号、および回転数指令信号。
【0043】
「エンジン始動」
キースイッチ42がオン(ON)位置にキー操作されると、バッテリリレー66のリレー接点はオン状態となり、エンジン制御装置64が起動され、続いてキースイッチ42がスタート(ST)位置にキー操作されると、スタータリレー65のリレー接点がオンとなり、バッテリ63よりバッテリリレー66のリレー接点、スタータリレー65のリレー接点を介してスタータ57ヘ給電され、スタータ57が駆動されてエンジン56が始動される。またエンジン制御装置64は起動されると、エンジン56の回転数を、アイドリング回転数に制御する。
【0044】
「エンジン停止」
キースイッチ42がオフ(OFF)位置にキー操作されると、エンジン制御装置64は、オン(ON)位置(信号)を入力しなくなることから、エンジン56を停止し、続いてエンジン制御装置64による制御を停止する。またバッテリリレー66のリレー接点はオフ状態となり、バッテリ63からの給電が遮断される。
【0045】
「エンジン回転数指令」
制御装置67は、アクセルペダル角度検出器49より入力したアクセルペダルの踏み込み角度が0%のときエンジン回転数指令値がアイドリング回転速度、アクセルペダルの踏み込み角度が100%のときエンジン回転数指令値が最大速度となるように、踏み込み角度に比例してエンジン回転数指令値を求め、エンジン制御装置64へ回転数指令信号として出力する。
【0046】
これにより、エンジン制御装置64によって、制御装置67からのエンジン回転数指令値にエンジン56の回転数が制御される。
「エンジン一時停止」
制御装置67は、省エネルギーのために、アイドリングしている時間が長くなると、エンジン56を一時停止する。このエンジン一時停止の制御を、図3のフローチャートにしたがって、説明する。
【0047】
まず、エンジン制御装置64から出力されるエンジン56の実回転数がアイドリング回転数かどうかを確認し(ステップ−1)、エンジン56がアイドリング中であることを確認すると、エンジン56を一時停止するためのアイドリングストップ条件が全て成立しているかどうかを確認する(ステップ−2〜ステップ−7)。すなわち、
・アイドリングストップモードスイッチ43がオンかどうか(スイッチのオン信号を入力しているかどうか)、
・前後進操作レバー47がニュートラルかどうか(ニュートラル位置信号を入力しているかどうか)、
・パーキングブレーキ48はオンかどうか(ブレーキオン信号を入力しているかどうか)、
・フォーク34の高さが、所定高さ以下かどうか(所定高さ以下の信号であるフォーク高さ検出スイッチ35のオンを入力しているかどうか)、
・バッテリ63の電圧が、スタータ57を駆動できる電圧に設定された規定電圧以上かどうか、
・エアコン53は使用していない状態かどうか(使用信号がオフかどうか)、
を確認し、いずれか一つの条件でも不成立となっていると、またはステップ−1においてエンジン56がアイドリング中ではないとき、後述するタイマーをリセットし(ステップ−8)、ステップ−1へ戻り、全て成立していると、タイマーのカウントを開始する(ステップ−9)。
【0048】
なお、エンジン56がアイドリング中であるとき、少なくとも、「アイドリングストップモードスイッチ43がオンかどうか」、且つ「フォーク34の高さが、所定高さ以下かどうか」の条件の成立が、タイマーのカウント開始(後述するエンジン56の一時停止)の絶対条件であり、絶対条件のみの成立により、タイマーのカウントを開始するようにしてもよい。その他の条件、すなわち上記「前後進操作レバー47がニュートラルかどうか」、「パーキングブレーキ48はオンかどうか」、「バッテリ63の電圧が規定電圧以上かどうか」、「エアコン53は使用していない状態かどうか」の条件は、作業環境に応じて追加する。本実施の形態では、上記その他の条件も、全てAND条件としている。また荷役操作レバー52(荷役装置のコントロールレバー)については、何らアイドリングストップの条件としてなく、アイドリング中のエンジン56の一時運転停止とは無関係としている。
【0049】
また上記タイマーの設定時間として、予め、第1設定時間T1、第2設定時間T2、第3設定時間T3、第4設定時間T4が設定されている。
第1設定時間T1;エンジン56を一時停止するまでの時間。
【0050】
第2設定時間T2;バッテリ63からの給電を遮断するまでの時間。(T1<T2)
第3設定時間T3;第1設定時間T1より短く、エンジン56の一時停止の予告を開始するまでの時間。(T3<T1)
第4設定時間T4;第1設定時間T1より長く、第2設定時間T2より短く、エンジン56を一時停止した後、電源遮断の予告を開始するまでの時間。(T1<T4<T2)
またこれら設定時間T1〜T4は任意に設定可能としている。但し、T3<T1<T4<T2の条件は必要である。
【0051】
次に、ステップ−9によるタイマーのカウントが開始されてから第3設定時間T3が経過しているかどうかを確認し(ステップ−10)、確認すると、エンジン停止予告ランプ(LED)44へ点滅信号を出力する(ステップ−11)。
【0052】
この点滅信号に応じて、エンジン停止予告ランプ(LED)44は点滅し、エンジン56の一時停止が予告される。
またステップ−10において、第3設定時間T3が経過していない場合は、ステップ−1へ戻る。
【0053】
続いて、タイマーのカウントが開始されてから第1設定時間T1が経過しているかどうかを確認し(ステップ−12)、確認すると、エンジン制御装置64へエンジン停止指令信号を出力し、且つエンジン停止予告ランプ(LED)44へ連続点灯信号を出力する(ステップ−13)。
【0054】
上記エンジン停止指令信号に応じて、エンジン制御装置64はエンジン56を停止し(一時停止し)、また上記連続点灯信号に応じてエンジン停止予告ランプ(LED)44は連続点灯し、エンジン56が一時停止していることが報知される。
【0055】
次に、このエンジン56の一時停止の状態で、ブレーキペダルスイッチ50のオン信号、すなわちブレーキペダルの踏み込み信号を入力しているかどうか確認し(ステップ−14)、確認すると、エンジン制御装置64へエンジン始動指令信号および回転数指令信号としてアイドリング回転数指令値を出力し、スタータリレー65へのエンジン再始動信号を出力し、さらにエンジン停止予告ランプ(LED)44へ消灯信号を出力して(ステップ−15)、スタートへ戻る。なお、スタータリレー65へのエンジン再始動信号は、エンジン制御装置64よりフィードバックされてきたエンジン56の回転数が起動後の所定回転数(例えば、100rpm)となると、オフされる。
【0056】
エンジン再始動信号によりスタータリレー65を介してバッテリ63よりスタータ57へ給電されてスタータ57が駆動され、またエンジン制御装置64が駆動されることにより、エンジン56が再始動される。再始動されたエンジン56は、エンジン制御装置64によりアイドリング回転数に制御される。また消灯信号に応じて、エンジン停止予告ランプ(LED)44は消灯される。
【0057】
ステップ−14において、ブレーキペダルの踏み込み信号を確認できないとき、続いてタイマーのカウントが開始されてから第4設定時間T4が経過しているかどうかを確認し(ステップ−16)、確認すると、エンジン停止予告ランプ(LED)44へ短い間隔による急点滅信号を出力する(ステップ−17)。確認できないとき、ステップ−14へ戻り、ブレーキペダルの踏み込み信号を確認する。
【0058】
前記急点滅信号に応じて、エンジン停止予告ランプ(LED)44は、エンジン停止予告時より短い間隔で点滅し、電源遮断が予告される。
エンジン停止予告ランプ(LED)44へ急点滅信号を出力すると、続いてタイマーのカウントが開始されてから第2設定時間T2が経過しているかどうかを確認し(ステップ−18)、確認すると、バッテリリレー66への電源遮断信号を出力し、さらにエンジン停止予告ランプ(LED)44へ消灯信号を出力して(ステップ−19)、終了する。確認できないとき、ステップ−14へ戻り、ブレーキペダルの踏み込み信号を確認する。
【0059】
前記電源遮断信号によりバッテリリレー66はオフ状態となり、バッテリ63からの給電が遮断される。また消灯信号に応じてエンジン停止予告ランプ(LED)44が消灯される。
【0060】
上記エンジン一時停止制御によるタイムチャートを図1に示す。
図1に示すように、エンジン56がアイドリング回転数となり、エンジン56を一時停止するためのアイドリングストップ条件がOKとなると(全て成立すると)、タイマーのカウントを開始する。このとき、エンジン停止予告ランプ(LED)44は消灯しており、バッテリリレー66はオン状態となっている。
【0061】
タイマーのカウントが開始されてから、第3設定時間T3が経過すると、エンジン停止予告ランプ(LED)44を点滅して、エンジン56の一時停止の予告を開始する。
続いてタイマーのカウントが開始されてから、第1設定時間T1が経過すると、エンジン56の一時停止し、エンジン停止予告ランプ(LED)44を連続点灯して、エンジン56の一時停止を知らせる。
【0062】
続いてタイマーのカウントが開始されてから、第4設定時間T4が経過すると、エンジン停止予告ランプ(LED)44を急点滅して、電源遮断を予告する。
続いてタイマーのカウントが開始されてから、第2設定時間T2が経過すると、バッテリ63からの給電を遮断(電源遮断)し、エンジン停止予告ランプ(LED)44を消灯する。
【0063】
このように、エンジン56がアイドリング回転数となり、アイドリングストップ条件がOKとなると、第1設定時間T1経過後、エンジン56が一時停止され、ブレーキペダルの踏み込みがないと、第2設定時間T2経過後、バッテリ63からの給電が遮断される。またエンジン56がアイドリング回転数となり、アイドリングストップ条件がOKとなると、第3設定時間T3経過後に、エンジン停止予告ランプ(LED)44により、エンジン56の一時停止が予告され、またブレーキペダルの踏み込みがないと、第4設定時間T4経過後、電源遮断が予告される。
【0064】
なお、バッテリ63からの給電が遮断された後は、キースイッチ42をスタート位置へ操作すると、通常と同様に、エンジン56が始動される。
以上のように、本実施の形態によれば、少なくとも、アイドリングストップモードスイッチ43によりアイドリング中にエンジン56を自動的に一時停止することが許可され、且つフォーク34の高さが所定の高さ以下であるとの条件が成立している状態で、エンジン56の回転数が、アイドリング回転数となると、タイマーによる時間のカウントが開始され、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間T1となると、エンジン56が一時自動停止され、よって省エネルギーを実現できる。またエンジン56が停止するとメインポンプ59が停止し、フォーク装置12に圧油が供給されなくなり、フォーク34が所定の高さより高い位置の状態のまま放置される恐れがあるが、エンジン一時停止の条件がフォーク34の高さが所定の高さ以下であることから、フォーク34とフォーク34により支持された荷が、所定の高さより高い位置のまま放置される恐れが回避され、上昇中のフォーク34やフォーク34に支持されている荷が、周りの作業の邪魔となったり、作業者が不用意に接触するという不具合が発生する恐れを回避することができる。
【0065】
また本実施の形態によれば、エンジン56が自動停止し、タイマーによる時間のカウントが、第2設定時間T2となると、バッテリ63からの給電が遮断されることにより、バッテリ63のバッテリ上がりを防止することができる。
【0066】
また本実施の形態によれば、フォークリフト10の運転者(操作者)に、エンジン停止予告ランプ44の表示の状態によりエンジンの状態、バッテリ63からの給電がどのようになるのかを知らせることができる。
【0067】
また本実施の形態によれば、エンジン56の一時自動停止中に、車両本体11を走行させるときの一連の動作の一つとして、ブレーキペダルが踏み込まれると、エンジン56が再始動され、自然に走行可能とすることができる。
【0068】
また本実施の形態によれば、バッテリ63の電圧が規定電圧以上ではないとき、すなわち規定値未満のとき、エンジン56が自動停止してしまうと、エンジン56を再起動するスタータ57もバッテリ63から給電されているために、エンジンの再起動ができなくなる恐れがあるが、バッテリ63の電圧が規定値未満のとき、エンジン56の一時停止が実行されないことにより、エンジン56の再起動ができなくなる恐れを回避できる。
【0069】
なお、本実施の形態では、産業用車両の一例をフォークリフト10としているが、フォークリフト10に限ることはなく、荷を昇降する油圧式の荷役装置を有している産業用車両、例えばホイールローダなどであってもよい。また荷役手段は、フォーク34に限ることはなく、スコップやフックなどであってもよい。また荷役手段の高さが所定の高さ以下にあるかどうかを検出する高さ検出装置として、フォーク高さ検出スイッチ35を使用しているが、他の荷役手段の場合は、荷役手段に応じて高さ検出するようにすることは言うまでもない。
【0070】
また本実施の形態では、アイドリングストップモードスイッチ43を手動スイッチとしているが、外部からの指令により、例えば、無線装置を使用して自動的に「許可」と「不許可」を切り替えるように構成することも可能である。これによれば、予定される作業の質や量、作業時間帯により外部から自在に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 フォークリフト
11 車両本体
12 フォーク装置
21 車体
34 フォーク
35 フォーク高さ検出スイッチ
42 キースイッチ
43 アイドリングストップモードスイッチ
44 エンジン停止予告ランプ(LED)
47 前後進操作レバー
48 パーキングブレーキ
49 アクセルペダル角度検出器
50 ブレーキペダルスイッチ
53 エアコン
56 エンジン
57 スタータ
59 メインポンプ(油圧ポンプ)
63 バッテリ
64 エンジン制御装置
65 スタータリレー
66 バッテリリレー
67 制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の車両本体と、前記車両本体に取り付けられた、荷を昇降する荷役手段を有する油圧式の荷役装置とから構成され、
前記車両本体に、エンジンと、前記エンジンにより駆動され前記荷役装置に圧油を供給する油圧ポンプと、バッテリと、前記バッテリより給電されて前記エンジンをスタートするスタータモータと、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出装置を備えた産業用車両であって、
前記車両本体に、前記エンジンがアイドリング中にエンジンを自動的に一時停止することを許可するアイドリングストップモードスイッチを備え、
前記荷役装置に、前記荷役手段の高さが、所定の高さ以下にあるかどうかを検出する高さ検出装置を備え、
少なくとも、前記アイドリングストップモードスイッチにより、前記エンジンを自動的に一時停止することが許可され、且つ前記高さ検出装置により、前記荷役手段の高さが、所定の高さ以下であることが検出されているとき、
前記回転数検出装置により検出される前記エンジンの回転数がアイドリング回転数であると判断すると、タイマーによる時間のカウントを開始し、時間のカウントが、予め設定された第1設定時間となると、前記エンジンを自動停止すること
を特徴とする産業用車両。
【請求項2】
前記エンジンが自動停止し、前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より長い、予め設定された第2設定時間となると、前記バッテリからの給電を遮断すること
を特徴とする請求項1に記載の産業用車両。
【請求項3】
前記車両本体に、エンジン停止予告ランプを備え、
前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より短い、予め設定された第3設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを点滅し、
前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを連続点灯し、
前記タイマーによる時間のカウントが、前記第1設定時間より長く前記第2設定時間より短い、予め設定された第4設定時間となると、前記エンジン停止予告ランプを、前記第3設定時間経過時の点滅より短い間隔で点滅すること
を特徴とする請求項2に記載の産業用車両。
【請求項4】
前記車両本体に、走行操作機器としてブレーキペダルを備え、
前記エンジンの自動停止中、前記ブレーキペダルの操作を確認すると、前記スタータモータを駆動して前記エンジンを再始動すること
を特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の産業用車両。
【請求項5】
前記バッテリの電圧を検出する電圧検出装置を備え、
前記電圧検出装置により検出されるバッテリの電圧が規定値未満のとき、前記エンジンの自動停止を中止すること
を特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の産業用車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate