説明

用紙パッケージ

【課題】突起35が差込み34から抜けにくい構成の用紙パッケージを提供する。
【解決手段】用紙パッケージのパッケージ材8は、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、用紙はその内部に収納される。そして、該パッケージ材8から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材8とともに前記プリンタにセットできるように構成してある。このパッケージ材8には切込み34を設けて、パッケージ材8に設けられた突起35を前記切込み34に差込可能に構成している。前記突起35は、該突起35のサイド側に突出するエラxを両サイドに有する幅広部35wと、当該幅広部35wよりも突起の根元側に形成される幅狭部35nと、を有する。前記幅広部35wにおける突起35の幅の最大値をBmax、前記幅狭部35nにおける突起35の幅の最小値をBmin、前記切込み34の幅をAとしたときに、Bmin<A<Bmaxの関係とされている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重ねられた状態の用紙の外側をパッケージ材で保護するとともに、該パッケージ材とともにプリンタにセットできる、用紙パッケージの構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、積層された状態のプリンタ用紙の外側をパッケージ材で覆った状態の用紙パッケージが知られている。この用紙パッケージは、それを購入したユーザ側でパッケージ材を開封してプリンタにセットして使う構成とされている。
この用紙パッケージの技術は、複数枚の用紙をパッケージ単位でまとめて取り扱うことができるため使い勝手が向上されるとともに、内部の用紙を覆って保護できるために、特に光や熱に弱い感熱紙を用紙として採用する場合に有用である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術の用紙パッケージにおいて、パッケージ材をシート状の部材(例えば、厚紙材)で形成し、これを箱状に組み立てる構成が考えられる。
シート状の部材は突起や切込みを有する形状に予め形成しておき、これを箱状に組み立てる際は、前記突起を前記切込みに単に差し込んで固定するようにすると、接着剤や粘着テープなどを使用する場合等に比してコスト的にも有利である。
【0004】
しかしながら、このような従来のパッケージ材は、突起を差し込んだ後に緩んで抜けてしまい、意図に反して箱が開いて内部の用紙をばら撒いてしまったり、突起の差込部分が緩んで箱としての形がやや崩れてしまい、プリンタにスムーズにセットできなかったり、セットできたとしても内部の用紙を真っ直ぐに送り出せず斜行等が発生する不具合があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0006】
即ち、請求項1においては、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の該用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材には、切込みを前記シート状部材の厚み方向に貫通するように設けて、パッケージ材に設けられた突起を前記切込みに挿通することで差込可能に構成し、前記突起は、突起のサイド側に突出するエラを両サイドに有する幅広部と、当該幅広部よりも突起の根元側に形成される幅狭部と、を有するように形成し、前記幅広部における突起の幅の最大値をBax、前記幅狭部における突起の幅の最小値をBmin、前記切込みの幅をAとしたときに、Bmin<A<Bmaxであるものである。
【0007】
請求項2においては、前記パッケージ材は、積層された用紙の積層方向一側の面を覆う第一の部分と、前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の一方のサイド側の縁部を覆う、第二の部分と、前記第二の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の積層方向他側に位置する、第三の部分と、前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の他方のサイド側の縁部を覆う、第四の部分と、前記第四の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の前記積層方向他側に位置する、第五の部分と、を有するように構成し、また、前記第三の部分に前記突起が、前記第五の部分に前記切込みが、それぞれ形成されて、該突起を該切込みに差込むことで第三の部分と第五の部分とを相互に固定するように構成し、更に、前記突起を前記切込みに差し込んだときに該突起の輪郭線と該切込みの輪郭線とが交わる又は接する点をPとし、前記第一の部分の用紙サイド方向の幅をH、前記第三の部分において、前記第二の部分との境界から前記点Pまでの距離をF、前記第五の部分において、前記第四の部分との境界から前記点Pまでの距離をE、としたときに、F+E≦Hであるものである。
【0008】
請求項3においては、前記切込みは、その両端側に曲線部分を有する形状に構成したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0010】
〔プリンタの構成〕
まず、サーマル記録装置としてのプリンタ1の概略構造を、図1〜図4を参照しながら説明する。
図1はプリンタの斜視図、図2は側面断面図である。図3は用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図である。図4は用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図である。
【0011】
プリンタ1は図1に示すように、平面視で長方形状(A6〜A7サイズ程度の用紙を収容可能な大きさ)とされ、かつ、厚みが略2cmあるいはそれ以下となる、コンパクトな構成とされている。
プリンタ1の本体ケース2は、枠体3の下面を下カバー4で覆うとともに、上面の一部を上カバー5で覆って形成されている。
【0012】
枠体3の上面側のうち前記上カバー5で覆われた箇所を除いた残りの部分には、図2に示すように用紙収容部(給紙部)6が形成される。この用紙収容部6には、A6〜A7サイズのカットシート状の感熱紙(被印刷媒体。以下「用紙」と称する)7をパッケージ材8の内部に複数枚収納した用紙パッケージ9を、図3に示すように収容可能としている。
前記用紙収容部6の上方は蓋体10にて覆われ、この蓋体10は図2に示すように回動自在とされる。本体ケース2側には図示しないロック機構が設けられており、前述のように用紙収容部6に用紙パッケージ9をセットした状態で、図3に示すように蓋体10を閉じてロックできるようになっている。
【0013】
用紙収容部6の一側の端部には、用紙分離部11としてのピックアップローラ12および分離ブロック13等が配置されている。また、上カバー5の下方には、後に詳述する印刷機構部14としてのサーマルヘッド15、プラテンローラ16、ペーパーガイド17が配置される。
【0014】
用紙分離部11を説明する。
図4に示すように、前記用紙収容部6の、前記印刷機構部14に近い側の端部には、ピックアップローラ12と分離ブロック13とが設けられている。前記蓋体10の用紙収容部6側を向く内面には、押圧板18が回動自在に支持されている。
この押圧板18と蓋体10との間には付勢バネ19が介在され、押圧板18に対し、該押圧板18を下方へ回動させる向きの付勢力を常時作用させている。
【0015】
用紙パッケージ9は、印字面を下側へ向けながら積層された状態で内部に収納されている用紙7のうち、最も下側に位置する用紙7の下面をパッケージ材8から一部露出させた状態で、用紙収容部6にセットされる。そして、前記蓋体10を閉じてロックした際には、前述の付勢バネ19により下方へ付勢される押圧板18がパッケージ材8を介して、用紙7の用紙搬送方向先頭側の領域を押圧する。この結果、用紙7の前記露出した部分はピックアップローラ12に接触して、適宜の力で圧接される。
【0016】
前記ピックアップローラ12に近接させて分離ブロック13が設けられ、この分離ブロック13は、ピックアップローラ12の用紙送り出し方向に対して傾斜した分離案内面13aを備えている。
【0017】
この構成でピックアップローラ12が回転駆動することにより、該ピックアップローラ12に接触する最下層の用紙7に搬送力が加えられる。そして、前記分離ブロック13の分離案内面13aの分離作用とあいまって、最下層に位置する一枚の用紙7のみが分離されて送り出される。
【0018】
印刷機構部14を説明する。
分離ブロック13に隣接してプラテンローラ16が回転自在に設けられ、その外周面に近接させてペーパーガイド17が配置される。
図4の拡大図に示すように、このペーパーガイド17には、前記プラテンローラ16の外周面に沿うように、凹湾曲状の摺接面17aが形成されている。該ペーパーガイド17と本体ケース2との間には押圧コイルバネ20が設けられており、前記摺接面17aをプラテンローラ16の外周面に向けて付勢するようになっている。
【0019】
この構成において、前述の用紙分離部11で分離された用紙7は、ピックアップローラ12により搬送されて、分離ブロック13の下端と、用紙の向きをプラテンローラ16側へ向けるためのガイド板21の間を通過する。
用紙7はこのガイド板21により案内され、プラテンローラ16の下面側から、該プラテンローラ16とペーパーガイド17との間に送られる。そして用紙7は、プラテンローラ16の外周面とペーパーガイド17の摺接面17aとの間で保持されつつ、プラテンローラ16の回転駆動により横向き「U」字状に反転されながら搬送され、印字面を上側に向けながらプラテンローラ16の上面側に至る。
【0020】
プラテンローラ16の上面側に位置する前記サーマルヘッド15は、発熱体部15aを有している。該サーマルヘッド15は回動軸15bまわりに回動可能に設けられて、前記発熱体部15aがプラテンローラ16の上面に接離可能とされている。
なお、このようにサーマルヘッド15を回動自在に構成したのは、前記プラテンローラ16とペーパーガイド17との間で用紙7が詰まった場合におけるジャム紙除去作業において、サーマルヘッド15が作業の邪魔にならないようにするためである。
サーマルヘッド15には捩りコイルバネタイプのスプリング22の一端が係止されて、該サーマルヘッド15の発熱体部15aがプラテンローラ16上面に近接する方向の付勢力を常時加えている。
この構成で、前述のように印字面を上側に向けながらプラテンローラ16により送られてくる用紙の上面にサーマルヘッド15の発熱体部15aが接触し、この接触する箇所において用紙7に印字がなされる。
【0021】
サーマルヘッド15はラインヘッド型とされ、搬送されてくる感熱型の用紙7に対し、該用紙7の搬送方向に直交する方向に延びるライン毎に、任意の文字や画像を印刷することができる。一本のラインにつき印刷する際の印刷幅は、印刷対象の用紙7の幅に略等しく設定されている。
このようにサーマルヘッド15を印刷ヘッドとして用いるのは、被印刷媒体として感熱紙を用いることで、インクやインクリボンなどの消耗品が不要とできるほか、インクの供給のための機構などを省略でき、プリンタ1をコンパクトに構成できるからである。
感熱紙として、本実施形態では、サーマルヘッド15の加熱により発色する発色層を受像層としてその一側の面に形成した、いわゆる感熱発色タイプのものを使用している。ただし、それに限られるものではなく、例えば、加熱により穿孔される穿孔層を基材層上に積層して受像層としたもの(感熱穿孔タイプ)を用いても構わない。また、感熱紙のみならず、熱転写方式やそれ以外の用紙を用いることも可能である。
【0022】
前記分離ブロック13には、プラテンローラ16の用紙送り出し方向に対して傾斜した排紙ガイド面13bが形成されている。
この構成において、サーマルヘッド15の発熱体部15aにより印字がなされた後の用紙7は、この排紙ガイド面13bにより案内されて、図1の鎖線に示すように、本体ケース2の上カバー5と前記蓋体10とがなす隙間から、蓋体10の上側へ排紙される。
【0023】
〔用紙パッケージの構成〕
次に、本実施形態において、プリンタ1にセットされる用紙パッケージ9について説明する。
図5は用紙パッケージの斜視図、図6はパッケージ材の展開図である。用紙パッケージを製造する工程は、図7〜図11に順を追って示されている。
【0024】
用紙パッケージ9は図5に示すように、例えばA6〜A7サイズ程度の小サイズのカットシート状の感熱紙が、パッケージ材8の内部に、複数枚(例えば、50枚程度)積層されて収納される構成となっている。ユーザはこの図5の状態で販売されている用紙パッケージを購入し、後述する工程を行って内部の用紙を露出させてから、プリンタ1の用紙収容部6にパッケージ材8とともにセットするように構成されている。
【0025】
上記のパッケージ材8は、平板状の厚紙材(シート状部材)を折り曲げて箱状に組み立てたものである。厚紙材を折り曲げる前の状態が図6に示され、該厚紙材の形状は、用紙7とほぼ同一形状(長方形)とした底部51の四囲に、舌部57、外装部53、舌固定部55、蓋部59がそれぞれ一体的に形成されたものとなっている。
【0026】
パッケージ材8の各部分の関係は、具体的には以下のとおりである。
即ち、前記底部51の用紙搬送方向末尾側の辺にはエンド部56が連続し、当該エンド部56に舌部57が連続して形成されている。
前記底部51の用紙搬送方向の一方のサイド側の辺にはサイド部52が連続し、当該サイド部52に前記外装部53が連続して形成されている。
前記底部51の用紙搬送方向の他方のサイド側の辺にはサイド部54が連続し、このサイド部54に舌固定部55が連続して形成されている。
前記底部51の用紙搬送方向先頭側の辺にはトップ部58が連続し、このトップ部58に蓋部59が連続して形成されている。
【0027】
エンド部56やサイド部52・54やトップ部58は、積層された用紙7をパッケージ材8に収納したときに、当該用紙7の端縁側を覆う役目を果たすものである。これらの部分56・52・54・58は、いずれも互いに等しい長さだけ、前記底部51の四辺から延出するように形成されている。
【0028】
なお、本実施形態においては、前記底部51が第一の部分に、サイド部52が第二の部分に、外装部53が第三の部分に、サイド部54が第四の部分に、舌固定部55が第五の部分に、それぞれ相当する。
【0029】
パッケージ材8に形成されている底部等のそれぞれの部分(51〜59)同士の境界には、図6で細い鎖線で示すように、折り目加工(スジ入れ加工)が施されている。これにより、当該折り目で厚紙材を折り曲げ易くして組立て時の便宜を図っている。
【0030】
底部51にはプリンタセット用切込み31が、舌部57には蓋固定用切込み32舌固定用切込み33が、舌固定部55には外装固定用切込み34がそれぞれ形成され、パッケージ材8の一部部分を差し込むことができるようになっている。詳細は後述する。
【0031】
〔用紙パッケージの製造工程〕
まず、用紙パッケージ9を製造する工程を以下に説明する。
図6の状態の厚紙材は、先ず図7に示すように、そのエンド部56が底部51に対して垂直に折り曲げられるとともに、舌部57がエンド部56に対して垂直に折り曲げられる。この結果、舌部57は底部51の上側に、適宜の間隔(エンド部56の長さに相当する間隔)をおいて、平行に位置する。
【0032】
次に図8に示すように、サイド部54が底部51に対して垂直に折り曲げられるとともに、舌固定部55が前記舌部57の上に重なるように垂直に折り曲げられ、その先端に設けられている差込部39が、舌部57に形成された舌固定用切込み33に差し込まれる。
【0033】
更には図9に示すように、サイド部52が底部51に対して垂直に折り曲げられるとともに、外装部53が舌部57および舌固定部55の上に重なるように垂直に折り曲げられ、その先端に設けられた突起35が、舌固定部55に設けられた外装固定用切込み34に差し込まれる。
なお、この外装固定用切込み34と突起35は、差し込んだ後に抜けにくくするための特別な形状とされており、詳細は後述する。
【0034】
以上の結果、図10の図中左側に示すような直方体状の箱体が形作られる。この箱体はその長手方向一側(用紙搬送方向先頭側)のみが開放されており、その他の側は、底部51および舌部57、更にはサイド部52・54やエンド部56によって閉塞されている。
【0035】
そして図10に示すように、重ねられた状態の用紙7が、前記厚紙材の底部51と舌部57との間に差し込むように、箱体の前記開放側から挿入される。
なお、用紙7を挿入する際には、用紙7の感熱面(印字面)が前記底部51側を向くように、予めその向きが定められる。これは、後に用紙パッケージ9をプリンタにセットし、当該用紙7がプリンタの印刷機構部14に送られるときに、前記サーマルヘッド15側に用紙7の感熱面が向くようにするためである。
【0036】
用紙7を挿入した後は図11に示すように、前記トップ部58が底部51に対し垂直に折り曲げられるとともに、蓋部59がトップ部58に対して垂直に折り曲げられる。舌部57の上に折り重なる形となった蓋部59は、その先端の差込部38を、当該舌部57に形成されている該蓋固定用切込み32に差し込む。
これにより蓋部59が閉じられ、前記箱体の開放側が前記トップ部58により覆われた状態で固定される。
【0037】
以上により図5に示す用紙パッケージ9が完成するが、本実施形態においては、上記の用紙パッケージ9の製造作業はメーカ側で行い、プリンタ1を使用するユーザとしては、この図5の状態で販売されている用紙パッケージ9を購入し、当該用紙パッケージ9に対し以下に示す簡単な作業を施した上で、プリンタ1にセットして使用することになる。
【0038】
〔用紙パッケージのプリンタへのセット作業〕
次に、図5の状態の用紙パッケージ9をプリンタにセットするための作業の流れを、図12R>2以降を参照して説明する。図12〜図16には、当該作業の様子が順を追って示されている。
【0039】
最初に、ユーザは図5の状態の用紙パッケージ9の蓋部59の差込部38を蓋固定用切込み32から抜き取って、図12に示すように蓋部59を開く。
その上で図13に示すように、外装部53・舌固定部55のそれぞれに形成されている切取部45に指を掛けて、当該切取部45を切り離す。この二つの切取部45は図6に示すように、パッケージ材8の外装部53または舌固定部55から、底部51に跨った部分に形成されている。なお、切取部45の切離し作業を容易とすべく、図6等に示すように、パッケージ材8には当該切取部45の輪郭に沿ってミシン目加工46が施されている。
【0040】
この切取部45の切離し作業によって、前記底部51の用紙搬送方向先頭側の一部を、図6R>6に符号Aで示す折り目線を境に、蓋部59・トップ部58とともに下方(外側)へ折り返すことができるようになる。
【0041】
ユーザは蓋部59、トップ部58および底部51を折り目線Aを境に外側へ折り返した上で(図14)、その先端に形成されている差込部38を、パッケージ材8の底部51に図6R>6のように形成されているプリンタセット用切込み31に差し込む(図15)。
以上により、蓋部59が開いた状態で固定され、内部の用紙7の一部がパッケージ材8から露出される。
【0042】
次いで図16のように、この状態の用紙パッケージ9をプリンタ1の用紙収容部6にセットする。この結果、パッケージ材8内で積層されているうち最下層の用紙7の、パッケージ材8から露出されている部分が、ピックアップローラ12の上面に接触する。従って、この状態でピックアップローラ12を回転駆動させることにより、用紙7を繰り出して搬送できることになる。
【0043】
この後に蓋体10を閉じた状態が図3および図4に示され、このときは前記舌部57は、用紙7をピックアップローラ12に押し当てるための押圧板18と、用紙7との間に位置する。
【0044】
このようにして用紙7は用紙パッケージ9の形でプリンタ1にセットされ、用紙7が一枚ずつ繰り出されて無くなったときは、残ったパッケージ材8はプリンタ1から取り出されて廃棄されることになる。
この構成は、プリンタ1で多くの枚数を印刷したとしても、前記ピックアップローラ12や分離ブロック13の用紙分離性能が低下しない点で有用である。即ち、仮に用紙7が前記押圧板18に舌部57を介さず直接接触する構成とすると、プリンタ1の継続使用により押圧板18が摩耗して用紙7との間の摩擦力が低下し、分離作用が低下して用紙7を複数枚同時に送ってしまう現象(重送)が発生し易くなってしまう。この点本実施形態の構成では、用紙7が直接接触するのは舌部57であり、用紙7を所定の枚数使い切る毎に舌部57はパッケージ材8ごと新しいものに交換されることになるから、長年の使用により舌部57・用紙7間の摩擦力が低下してしまうことがなく、常に良好な分離作用が営まれて重送などの用紙搬送トラブルが防止される。
【0045】
〔突起と外装固定用切込みの構成〕
次に、パッケージ材8を箱状に組み立てる際に利用される、前記突起35と外装固定用切込み34の構成を、図6,図9及び図17以降を参照して説明する。
【0046】
図6や図9等に示すとおり、前記突起35は、パッケージ材8の前記外装部(第三の部分)53に形成されている。
突起35の具体的形状を図17を参照して説明すると、この突起35にはエラxが、突起35の両サイド側に突出するように(即ち、図17の白抜き矢印で示す突起35の差込方向に対して垂直な方向に突出するように)設けられ、当該部分に幅広部35wが構成されている。
一方、突起35の幅広部35wよりも根元側の部分には、前記幅広部35wよりもその幅が絞られた幅狭部35nが構成されている。
なお、前記幅広部35wよりも突起35の先端側においては、やはりその幅がテーパ状に絞られて、外装固定用切込み34への差し込みを容易としている。
【0047】
外装固定用切込み34は、図6や図9等に示すように、パッケージ材8の前記舌固定部(第五の部分)55に形成されている。
この切込み34の具体的形状を図17を参照して説明すると、この切込み34の中央部は前記突起35の差込方向に対し垂直な直線状に形成するとともに、その両端部は、当該突起35の差込方向手前側で折り返し反転するように曲がる、「U」字状の曲線部分を有している(34c)。また、突起35の差込方向手前側には副切込み34sが設けられて外装固定用切込み34の中央部に接続されており、当該切込み34の部分が容易に広がって突起35を差し込み易くするように配慮されている。
【0048】
そして、前記突起35の幅広部35wにおける突起の幅の最大値(即ち、一側のエラxの先端と他側のエラxの先端との間の距離)をBmax,前記幅狭部35nにおける突起の幅の最小値をBmin,前記外装固定用切込み34の幅をAとしたときに、Bmin<A<Bmaxの関係を満たすように、突起35および外装固定用切込み34の形状が定められている。
【0049】
この構成において、前述の用紙パッケージ9の製造作業で説明した図9の工程における、突起35を外装固定用切込み34に差し込む具体的な様子が、図18の(a)〜(c)に順に示される。
【0050】
この作業を説明する。図18(a)には突起35を外装固定用切込み34に差し込む前の状態が示されるが、ここで幅広部35wの最大幅(図17に示すBmax)は外装固定用切込み34の幅(図17のA)より大きいため、この図18(a)の状態から突起35を外装固定用切込み34に真っ直ぐに差し込むことはできない(単に真っ直ぐ差し込もうとすると、エラxが外装固定用切込み34の両端に引っ掛かってしまう)。
そこで、図18の(b)に示すように、突起35を外装固定用切込み34に対し若干斜めにズラしながら差し込んで、先ず一側のエラxに外装固定用切込み34を越えさせて、外装固定用切込み34の一端部が突起35の根元部(図17に図示する幅狭部35n)に位置するようにする。そうすると、一側のエラxが外装固定用切込み34に入った状態を維持したまま、他側のエラxも外装固定用切込み34の他端部を越えることができる。
なお、突起35を若干斜めにズラしながら差し込んで一側のエラxに外装固定用切込み34を越えさせる作業は、前記外装固定用切込み34の両端側に前記曲線部分34cが形成されていることで、容易とされている。
こうして、図18(c)に示すように、両側のエラxが外装固定用切込み34に完全に入った状態とすることができる。これが差込み完了の状態である。
【0051】
そして、前述のとおり幅広部35wの最大幅Bmaxは外装固定用切込み34の幅Aより大きいため、この図18(c)の状態となれば、突起35が外装固定用切込み34から抜脱されることは、突起35のエラxが当該切込み34の両端に引っ掛かることで規制される。従って、いったん突起35が外装固定用切込み34に差し込まれた後は、不用意に突起35が抜けることが防止され、パッケージ材8が箱としての形を失い内部の用紙7がバラけてしまうことが防止される。
【0052】
なお、突起35の形状は前述のものに限られず、例えば図17で変形例として示すように、エラxの部分から前記幅狭部35nに移行する際にその幅が不連続的に減少する、およそキノコ状のような形状の突起35’としても良い。この形状の突起35’はエラxの引っ掛かりが強くなるので、いったん外装固定用切込み34に差し込まれた突起35が一層抜けにくくなる点で有利である。
【0053】
また、このような突起および切込みの形状は、前記突起35および前記外装固定用切込み34の部分にのみ適用できる訳でもない。例えば、舌固定部55に設けられた突起としての前記差込部39と、舌部57に設けられた前記舌固定用切込み33の関係にも、上記形状を適用して、抜けにくくすることが可能である。
【0054】
次に、前記突起35と前記外装固定用切込み34の位置関係について、以下説明する。
突起35を図18(c)のように差し込んだ後、その差込み方向の力を解除した状態が、図19に示される。この図19の状態においては、突起35の輪郭線L35と、外装固定用切込み34の輪郭線L34とは、外装固定用切込み34の両端の前記曲線部分34c上の所定の点で、交わりあるいは接することになる。この点は前記突起35のエラxよりも根元側に位置するのが通常であり、当該点をPとする。
【0055】
そして、外装部53とサイド部52との境界線(折り目)から前記点Pまでの距離をFとし、前記舌固定部55とサイド部54との境界線(折り目)から前記点Pまでの距離をEとし、更に、前記底部51の用紙サイド方向(用紙搬送方向に直交する方向)の幅をH(図6)としたときに、F+E≦Hとなるように、突起35および外装固定用切込み34の位置を決定しているのである。
【0056】
この構成とした場合における用紙パッケージ9の断面図(具体的には、図16におけるZ−Z断面矢視図)が、図20に示される。この図20で明らかであるように、上述のように突起35や外装固定用切込み34の位置を定めた場合は、底部51,サイド部52・54,外装部53,舌固定部55がなす四角形は、全くの長方形であるか(F+E=Hの場合)、底部51側がやや広がる台形形状となる(F+E<Hの場合)。
【0057】
ここで、前記サイド部52・54は、用紙パッケージ9をプリンタ1にセットしたときに、用紙7のサイド側の端縁に当接してその向きを規制あるいは案内し、用紙7がプリンタ1に対し斜めに繰り出され供給されてしまう現象(いわゆる、斜行)を防止する役割を果たす。またサイド部52・54は、用紙7がパッケージ材8内で吸湿などの何らかの事情で丸まってカールしようとしても、それを抑制する役割をも果たす。
【0058】
従って、仮にパッケージ材8の前記断面の四角形が、図21に示すような外装部53(舌固定部55)側が広がる台形形状となってしまうと、用紙7の斜行や、用紙7のカールを原因とするトラブル(用紙7を前記ピックアップローラ12で繰り出すことができなくなる空送など)を抑制することができない。
更には、プリンタ1の用紙収容部6はその幅を、用紙パッケージ9をセットできるような隙間だけ見込んで、前記底部51の幅Hより僅かに大きい程度に形成してあるのが通例である。従って、前記四角形が外装部53(舌固定部55)側が広がる台形形状となり、その幅が用紙収容部6の幅を上回ってしまうと、図16に示す用紙パッケージ9のプリンタ1へのセットの際に、当該用紙パッケージ9を用紙収容部6の底部までしっかりセットすることができないという問題もある。
【0059】
この点、本願発明では突起35および外装部53を前記の関係(F+E≦Hの関係)を満たすように設けることで、そのような不具合を回避することができるのである。即ち、用紙7の斜行や空送などのトラブルは防止され、また、用紙パッケージ9をプリンタ1の用紙収容部6にセットすることも容易かつスムーズに行うことができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に説明する効果を奏する。
【0061】
即ち、請求項1に示すように、プリンタの被印刷媒体としての用紙と、シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の該用紙の外側を覆うパッケージ材と、を有し、該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、前記パッケージ材には、切込みを前記シート状部材の厚み方向に貫通するように設けて、パッケージ材に設けられた突起を前記切込みに挿通することで差込可能に構成し、前記突起は、突起のサイド側に突出するエラを両サイドに有する幅広部と、当該幅広部よりも突起の根元側に形成される幅狭部と、を有するように形成し、前記幅広部における突起の幅の最大値をBmax、前記幅狭部における突起の幅の最小値をBmin、前記切込みの幅をAとしたときに、Bmin<A<Bmaxであるので、
突起を切込みに差し込むときは、一側のエラを切込みの一端に入れた後、他側のエラを切込みの他端に入れるようにすることで、容易に差し込める。一方、いったん突起が切込みに差し込まれた後は、エラが切込みの両端に引っ掛かる形となるので、自然に抜けてしまうことが防止される。
【0062】
請求項2に示すように、前記パッケージ材は、積層された用紙の積層方向一側の面を覆う第一の部分と、前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の一方のサイド側の縁部を覆う、第二の部分と、前記第二の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の積層方向他側に位置する、第三の部分と、前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の他方のサイド側の縁部を覆う、第四の部分と、前記第四の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の前記積層方向他側に位置する、第五の部分と、を有するように構成し、また、前記第三の部分に前記突起が、前記第五の部分に前記切込みが、それぞれ形成されて、該突起を該切込みに差込むことで第三の部分と第五の部分とを相互に固定するように構成し、更に、前記突起を前記切込みに差し込んだときに該突起の輪郭線と該切込みの輪郭線とが交わる又は接する点をPとし、前記第一の部分の用紙サイド方向の幅をH、前記第三の部分において、前記第二の部分との境界から前記点Pまでの距離をF、前記第五の部分において、前記第四の部分との境界から前記点Pまでの距離をE、としたときに、F+E≦Hであるので、
パッケージ材を組み立てたときに、第一〜第五の部分がなす四角形が、第三の部分(第五の部分)側が広がる台形形状となることが防止される。この結果、プリンタへの用紙パッケージのセットが困難になったり、パッケージ材内の用紙がプリンタへ送り出される際の斜行を第二・第四の部分で防止できなかったり、パッケージ材内の用紙のカールを抑制できずに空送を発生させたりする不具合が防止される。
【0063】
請求項3に示すように、前記切込みは、その両端側に曲線部分を有する形状に構成したので、
突起のエラを切込みに差し込むことが、より一層容易になる。従って、用紙パッケージの組立性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの全体的な構成を示した斜視図。
【図2】同じく側面断面図。
【図3】プリンタの用紙収容部に用紙をセットした状態を示した側面断面図。
【図4】用紙分離部および印刷機構部の詳細を示した断面拡大図。
【図5】用紙パッケージの斜視図。
【図6】パッケージ材の展開図。
【図7】パッケージ材の舌部を折り曲げる様子を示した図。
【図8】パッケージ材の第一外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図9】パッケージ材の第二外装部を折り曲げる様子を示した図。
【図10】用紙をパッケージ材へ挿入する様子を示した図。
【図11】パッケージ材の蓋部を閉じる様子を示した図。
【図12】用紙パッケージをプリンタに使用するために、パッケージ材の蓋部を開く様子を示した図。
【図13】切取部を切り離す様子を示した図。
【図14】蓋部を下方へ折り曲げる様子を示した図。
【図15】蓋部を下面側で固定する様子を示した図。
【図16】用紙パッケージをプリンタにセットする様子を示した図。
【図17】突起と外装固定用切込みの関係を示した図。
【図18】突起を外装固定用切込みに差し込む様子を示した要部斜視図。
【図19】突起の輪郭線と外装固定用切込みの輪郭線の接する点Pを示す平面図。
【図20】図16のZ−Z断面矢視図であって、F+E=HおよびF+E<Hの場合におけるパッケージ材の形状を示す図。
【図21】F+E>Hの場合におけるパッケージ材の形状を示す図。
【符号の説明】
1 プリンタ
7 用紙
8 パッケージ材
9 用紙パッケージ
34 外装固定用切込み(切込み)
34c 曲線部分
35 突起
51 底部(第一の部分)
52 サイド部(第二の部分)
53 外装部(第三の部分)
54 サイド部(第四の部分)
55 舌固定部(第五の部分)
x エラ
P 突起の輪郭線と外装固定用切込みの輪郭線とが交わる点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタの被印刷媒体としての用紙と、
シート状部材を折り曲げることにより箱状に構成され、積層された状態の該用紙の外側を覆うパッケージ材と、
を有し、
該パッケージ材から用紙の一部を露出させた状態で、該パッケージ材とともに前記プリンタにセットできるように構成した、用紙パッケージであって、
前記パッケージ材には、切込みを前記シート状部材の厚み方向に貫通するように設けて、パッケージ材に設けられた突起を前記切込みに挿通することで差込可能に構成し、
前記突起は、突起のサイド側に突出するエラを両サイドに有する幅広部と、当該幅広部よりも突起の根元側に形成される幅狭部と、を有するように形成し、
前記幅広部における突起の幅の最大値をBmax、前記幅狭部における突起の幅の最小値をBmin、前記切込みの幅をAとしたときに、Bmin<A<Bmaxであることを特徴とする、
用紙パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙パッケージであって、
前記パッケージ材は、
・積層された用紙の積層方向一側の面を覆う第一の部分と、
・前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の一方のサイド側の縁部を覆う、第二の部分と、
・前記第二の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の積層方向他側に位置する、第三の部分と、
・前記第一の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の他方のサイド側の縁部を覆う、第四の部分と、
・前記第四の部分に折れながら連続し、かつ、積層された用紙の前記積層方向他側に位置する、第五の部分と、
を有するように構成し、
また、前記第三の部分に前記突起が、前記第五の部分に前記切込みが、それぞれ形成されて、該突起を該切込みに差込むことで第三の部分と第五の部分とを相互に固定するように構成し、
更に、
前記突起を前記切込みに差し込んだときに該突起の輪郭線と該切込みの輪郭線とが交わる又は接する点をPとし、
前記第一の部分の用紙サイド方向の幅をH、
前記第三の部分において、前記第二の部分との境界から前記点Pまでの距離をF、
前記第五の部分において、前記第四の部分との境界から前記点Pまでの距離をE、
としたときに、F+E≦Hであることを特徴とする、用紙パッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の用紙パッケージであって、前記切込みは、その両端側に曲線部分を有する形状に構成したことを特徴とする、用紙パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2004−59064(P2004−59064A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−219280(P2002−219280)
【出願日】平成14年7月29日(2002.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】