説明

田植機

【課題】回転式マーカの格納状態において、回転体と回転体周辺部材とを干渉させることなく、田植機全体の幅方向の長さを小さくすることができる田植機を提供する。
【解決手段】回転式マーカ40を、植付装置4に取付ける基部支持杆41と、回転体44と、該基部支持杆41と該回転体44とを連結する先端支持杆43と、から構成し、該先端支持杆43を基部支持杆41に対して分離可能とし、基部支持杆41の回動によりマーカ作業状態とマーカ引き上げ状態とを現出し、該基部支持杆41に、該先端支持杆43及び該回転体44を格納状態に保持する保持機構42を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関し、詳しくは、走行機体後部に多条植え用の植付装置を付設し、該植付装置に回転式マーカを具備した田植機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、田植機の走行機体後部に昇降可能に植付装置を装着し、該植付装置の側部に、植付け作業を行なう時の目標となる線を圃場に描くための回転式のマーカを備える技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照。)。該回転式マーカは支持杆や回転体から構成されるものであって、作業しない際の田植機の幅方向の長さを小さくするために、該支持杆を上方に回動させて引き上げ状態としたり、該引き上げ状態において回転体を回動させて格納状態とする技術が公知となっている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2001−78514号公報
【特許文献2】特開2004−159542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような回転体を回動させて格納状態とする構成の田植機において、引き上げ状態で該回転体を回転させても植付部から側方に突出しており、走行時にその突出部が他の障害物と接触する可能性があり、更に支持杆を機体中央側に回動しても回転体が周辺部材と干渉するおそれがあった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、回転式マーカの格納状態において、回転体と回転体周辺部材とを干渉させることなく、田植機全体の幅方向の長さを狭めることができる田植機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、田植機の走行機体後部に多条植え用の植付装置を付設し、該植付装置に回転式マーカを具備する田植機において、該回転式マーカを、植付装置に取付ける基部支持杆と、回転体と、該基部支持杆と該回転体とを連結する先端支持杆と、から構成し、該先端支持杆を該基部支持杆に対して分離可能とし、該基部支持杆の回動によりマーカ作業状態とマーカ引き上げ状態とを現出し、該基部支持杆に、該先端支持杆及び該回転体を格納状態に保持する保持機構を設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記格納状態において、機体側面視において、前記基部支持杆及び前記回転体が後輪と植付装置の苗載台との間に位置する構成としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記格納状態において、機体側面視において、前記基部支持杆を後輪の外周形状に沿うように構成し、前記回転体を基部支持杆に略平行状に格納したものである。
【0008】
請求項4においては、前記格納状態において、前記先端支持杆及び前記回転体を前記基部支持杆に係合させることにより、該先端支持杆と該回転体とを走行機体幅方向外側へ突出しない状態で保持するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、マーカ引き上げ状態以外に格納状態を設定することにより、運搬時の引っ掛け防止や高畦でもより際に寄ることが可能となる。
【0011】
請求項2においては、格納状態において、先端支持杆や回転体が他の部材との干渉にて変形、破損することを防止することが可能となる。
【0012】
請求項3においては、格納状態において、先端支持杆や回転体が他の部材との干渉にて変形、破損することを防止することが可能となる。
【0013】
請求項4においては、簡単な構造で先端支持杆及び回転体を確実に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は乗用田植機100の一実施例を示す側面図であり、図2は植付装置4の一実施例を示す正面図であり、図3は回転式マーカ40を示す正面図であり、図4は回転式マーカ40周辺を示す左側面図であり、図5は作業状態及び引き上げ状態を示す回転式マーカ40の後方斜視図であり、図6は保持機構42を示す前方斜視図であり、図7は格納状態を示す回転式マーカ40の前方斜視図であり、図8は先端支持杆43及び回転体44を示す斜視図である。
【0015】
まず、本発明の一実施例に係る回転式マーカ40が搭載される多条乗用田植機100の全体構成について説明する。
図1に示すように、乗用田植機100は走行機体1の後部に昇降リンク機構27を介して植付装置4が配置され、該走行機体1は車体フレーム3前部上方にエンジン2を搭載し、前下部にフロントアクスルケースを介して前輪6を支持させると共に、後部にリヤアクスルケース7を介して後輪8を支持している。
そして、エンジン2はボンネット9に覆われ、該ボンネット9後部のダッシュボード5上に操向ハンドル14を配置し、該ボンネット9両側とその後部の車体フレーム3上を車体カバー12で覆い、操向ハンドル14後方位置に座席13を配置し、ボンネット9の両側を前ステップとし、座席13前部を中ステップとし、座席13左右両側を後ステップとしている。また、前記ボンネット9の両側には予備苗載台10・10が配設されている。
そして、前記ダッシュボード5の側部には走行変速レバー等のレバー類が、ダッシュボード5の下部のステップ上には走行用ペダル等のペダル類が配設されている。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施例における植付装置4は、苗載台16と植付爪17・17とセンターフロート34とサイドフロート35と苗マット押さえ36と苗送りベルト92等から構成され、走行機体1の後方に配設されるものである。
該苗載台16は前高後低に配設され、該苗載台16の後下部は下ガイドレール18、苗載台16の前上部は上ガイドレール19によって左右往復摺動自在に支持されている。詳しくは、該下ガイドレール18及び上ガイドレール19は、植付伝動フレーム20によって後述するフレーム65・66・・・等を介して支持されている。そして、植付伝動フレーム20より連結パイプ63を介してチェーンケース21を後方へ突出させ、該チェーンケース21の後部に一方向に回動するロータリーケース22を配置し、該ロータリーケース22の両側に一対の植付爪17・17を配置している。
【0017】
また、前記植付伝動フレーム20の前部は、ローリング支点軸68を介して前記昇降リンク機構27と連結され、該昇降リンク機構27はトップリンク25やロアリンク26等から構成されて、座席13下方に配置した図示しない昇降シリンダによって植付装置4を昇降できるようにしている。
こうして、乗用田植機は、前進走行とともに苗載台16を左右に往復摺動させ、該往復動に同期させて植付爪17・17を駆動して一株分の苗を切り出し、連続的に植え付け作業を行う構成となっている。
以下、植付装置4に関する説明においては、苗載台16の前上部を上流側とし、苗載台16の後下部を下流側とする。
【0018】
次に、本実施例に係る植付装置4の支持構成について説明する。
図2に示すように、植付装置4は、連結パイプ63や、該連結パイプ63に立設された左右一対のサイドフレーム65・65と、該サイドフレーム65・65の上部間を連結するべく車両幅方向に延びるローリングフレーム66とを備えている。そして、苗載台16下方には前記走行機体1に設けられたPTO軸(図示せず)に作動連結される植付入力軸75が配設されている。
【0019】
斯かる植付装置4は、ヒッチブラケット23と、該ヒッチブラケット23に連結されるトップリンク25及びロアリンク26を含む昇降リンク機構27とを介して、前述した様に前記走行機体1に昇降自在に連結されている。
さらに、植付装置4は、走行機体1に対して車両幅方向揺動自在とされており、該走行機体1が左右方向に傾斜しても植付装置4が水平状態に保持され得るようになっている。詳しくは、植付装置4には、下端部が前記ヒッチブラケット23に連結され且つ上端部が前記サイドフレーム65・65上部内側に連結される一対の左右フレーム71・71が備えられており、該ヒッチブラケット23に車両前後方向に沿うように設けられたローリング支点軸68回りに揺動自在に支持されている。
【0020】
図1に戻って、苗載台16には、上面の各条毎左右両側にリブ16a・16a・・・が設けられており、苗載台16上に載置された苗マットの両側を該リブ16a・16aによってガイドできるように構成されている。そして、それぞれのリブ16a・16a間には苗マット押さえ36が配置されており、該苗マット押さえ36により苗載台16上に苗マットが保持される構成になっている。
また、図2に示すように、苗載台16の中途部から下流部にかけては、該苗載台16と略同一平面状に苗送りベルト92が配設されており、該苗送りベルト92によって苗載台16に載置された苗マットを下流へ搬送する構成となっている。
【0021】
次に、本発明の要部であって、植付け作業を行なう時の目標となる線を圃場に描くための回転式マーカ40について説明する。
回転式マーカ40は左右対称に装着されているため、以下では、進行方向左側の回転式マーカ40について説明するものとし、走行機体1右側の回転式マーカについての説明は省略する。
【0022】
図2乃至4に示すように、前記苗載台16を支持するサイドフレーム65・65下部には連結パイプ63が横設されており、該連結パイプ63の端部には支持パイプ31が側方へ延設されている。そして、後述する起伏板37等を介して、回転式マーカ40が該支持パイプ31端部に上下回動自在に配設されている。該回転式マーカ40は、基部が該支持パイプ31端部に枢支される棒状の基部支持杆41と、該基部支持杆41に保持機構42を介して着脱可能に連結される棒状の先端支持杆43と、該先端支持杆43の端部に枢支される回転体44等から構成されるものである。
【0023】
前記回転式マーカ40は、基部支持杆41の基部側が前記支持パイプ31の端部に略90度の範囲で回動可能に支持されており、田植作業時等に外下方に広げた「作業状態」と、作業を行なわないとき等に回転式マーカ40を上方へ配置した「引き上げ状態」と、田植機を輸送したり倉庫へ格納するとき等に回転式マーカ40を格納する「格納状態」とに切替可能な構成としている。図2乃至図4では、「作業状態」における回転式マーカ40を実線で、「引き上げ状態」と「格納状態」とにおける回転式マーカ40を2点鎖線で示している。詳しくは、基部支持杆41を支持パイプ31端部を支点に回動させることによって「作業状態」から「引き上げ状態」へと移行させ、該回転体44ごと先端支持杆43を基部支持杆41の保持機構42から脱着して配設姿勢を変更することによって「引き上げ状態」から「格納状態」へと移行させるのである。
以下、上記3つの状態へ変形可能な機構について詳述する。
【0024】
まず、回転式マーカ40を外下方に広げた「作業状態」から上方へ回動した「引き上げ状態」へ変形するための機構について説明する。
図2乃至図4に示すように、前記回転式マーカ40の基部支持杆41の基部側は、起伏板37及び支持プレート38の左部(図3において右側)に溶接等によって挟持固定されており、該起伏板37及び支持プレート38の中途部は前記支持パイプ31にピン等で枢支されている。該起伏板37又は支持プレート38右部にはバネ32の一端が係止されており、該バネ32の他端は支持パイプ31下面に固設された下支持プレート53に係止されている。そして、支持プレート38右部には図示しないワイヤが枢支されて、該ワイヤが前記ヒッチブラケット23等まで延設されている。
【0025】
以上の構成により、例えば、植付作業を終了し、植付装置昇降レバー等の操作によって植付装置4を上昇させると、前記ヒッチブラケット23に連結されているワイヤが引っ張られ、該ワイヤの他端に連結した支持プレート38が上昇(図3において反時計方向へ)回動し、起伏板37と共に回転式マーカ40が引き上げられる。こうして、基部支持杆41が正面視反時計方向へ回動し、その結果、回転式マーカ40が「作業状態」から「引き上げ状態」へと移行する。
本実施例においては、植付装置4の上昇と連動して回転式マーカ40が引き上げられる構成としているが、回転式マーカ40の昇降を操作するレバー等を設ける構成としても良く、限定するものではない。
【0026】
そして、支持パイプ31の端部には昇降プレート50の下部が枢支され、該昇降プレート50の上部には、回転式マーカ40を「引き上げ状態」に維持するためのロックプレート39が設けられ、該ロックプレート39の上部にワイヤ51の一端が係止され、下部にバネが係止されてロック方向に付勢している。該ロックプレート39の先端にはフックが形成され、該フックは前記支持プレート38に横設されたピン38aを係止可能とし、支持プレート38を介して回転式マーカ40を「引き上げ状態」において保持することができる構成としている。つまり、回転式マーカ40を上方へ回動させた状態において、即ち支持プレート38を反時計方向(図3)へ回動させた状態において、ロックプレート39により支持プレート38を保持することにより、植付装置4の昇降に係らず回転式マーカ40を「引き上げ状態」のままで保持することが可能となっている。
【0027】
一方、前記起伏板37の基部(左部)又は支持プレート38の基部(左部)と、支持パイプ31との間には下支持プレート53を介してバネ32が介装されており、回転式マーカ40は下方へ回動するように付勢されている。つまり、レバーまたはアクチュエータによりワイヤ51を引っ張り前記ロックプレート39を支持プレート38と反対方向に回動してピン38aの保持を解除すると、該バネ32の付勢力によって回転式マーカ40が圃場側に回動し、回転式マーカ40を「引き上げ状態」から「作業状態」へと移行させることができるのである。
そして、前述した様に、乗用田植機100が圃場端に至った場合や、作業を終了したり中断した場合に、植付装置4を上昇させると、ワイヤが引っ張られて回転式マーカ40を「引き上げ状態」へと持ち上げて、ロックプレート39により「引き上げ状態」を保持できる構成としている。
【0028】
次に、圃場端等で回転式マーカ40を上方へ回動配置した「引き上げ状態」から先端支持杆43及び回転体44を格納した「格納状態」へ変形する、即ち、先端支持杆43と回転体44の配設姿勢を変更する、ための保持機構42について説明する。従来の回転式マーカは、植付を終了して回転式マーカが引き上げられると、回転体が苗載台に対して略垂直に配置され(回転体自体は略水平方向を向いている)、引き上げ時に更に機体内側へ回動しようとすると、回転式マーカの回転体と施肥機や苗載台や後輪等と干渉する虞があった。また、回転機構が複雑で製造コストが嵩み、回転体の回動作業や脱着作業が煩雑である等の不具合があった。
そこで、本発明では、図2乃至図5に示すように、「引き上げ状態」において、基部支持杆41の前上端から右方へ突出している先端支持杆43及び回転体44を基部支持杆41から取り外し、図7に示すように、先端支持杆43と回転体44とを基部支持杆41と略平行な状態に再度連結し直して、「格納状態」を現出する構成としている。
【0029】
図5及び図7に示すように、前記基部支持杆41はパイプ状または棒状部材であって、「引き上げ状態」及び「格納状態」において上部が下部より機体内側に配置するように、また「作業状態」において回転体44の上方で該回転体44を支持するように、屈曲して形成されている。詳しくは、基部支持杆41は、「引き上げ状態」及び「格納状態」における側面視において、前記起伏板37から後輪8の後上方且つ植付装置4上部の前下方に向かって延設されており、途中部で機体内側上方(前方)に屈曲し、更に上部で前上方に屈曲した略クランク形状としている。つまり、「格納状態」における基部支持杆41は、側面視において、後輪8の外周形状に沿うように、後輪8と植付装置4の間の空間に配置されている。
【0030】
また、図3に示すように「作業状態」における正面視において、起伏板37から略水平方向外側に延設し中途部から斜め上方外側に屈曲し、さらに先端部で水平方向外側に屈曲して延設し、略クランク形状としている。こうして、図4に示すように、作業時には回転体44を支持する先端支持杆43が回転体44を前上方から引っ張るようになり、回転体44を安定した姿勢で引っ張り回転させることが可能となる。
【0031】
そして、該基部支持杆41の前上部側(先端部側)には保持機構42が配設されており、該保持機構42に、先端支持杆43の一側(基部側)が着脱自在に取り付けられている。ここで、基部支持杆41の先端(または全部)はパイプ状に形成されており、後述するように、先端部41bは保持機構42に属する(保持機構42の一部を構成する)ものとなっており、先端支持杆43の基部43aが挿入可能に形成されている。
【0032】
保持機構42は、図5乃至図7に示すように、基部支持杆41の先端部41bと、コ字状プレート81と、弾性プレート82と、筒状部材83と、バネ84等から構成されるものであり、後述する回転体44を枢支する先端支持杆43の基部43aを、2箇所において嵌合して着脱可能としている。
図7に示すように、コ字状プレート81は、「格納状態」における側面視において、上部の中壁81aの前後から前壁81cと後壁81bとを上方に延設してコ字状とし、正面視において逆L字状として、中壁81aの右側(機体側)から下方に取付板81dを延設している。前記中壁81aの中央部に貫通孔81eを開口し、前記基部支持杆41の先端部41bに位置を合わせて固定し、前記基部支持杆41の先端部41bを基部杆貫通孔81eに嵌挿可能としている。そして、前記取付板81dの下端は筒状部材83を介して先端部41bに固定しており、該取付板81dの側面には弾性プレート82が固設されている。
【0033】
弾性プレート82は弾性力を有する部材から形成された板バネであり、図7における「格納状態」において、前記コ字状プレート81の取付板81dと平行に該取付板81dに固設される側壁82aと、該側壁82aの上端からコ字状プレート81側へ略直角に折り曲げて延設される前壁82bと、該側壁82a下部側下辺から前記筒状部材83前下部へと略直角に折り曲げて延設される下壁82c等から構成されている。そして、該前壁82bの中央部には、先端支持杆43の基部43aが貫通される前先端杆貫通孔82dが形成されており、該下壁82cにも同様に先端支持杆43の基部側が貫通される後先端杆貫通孔82eが穿孔されている。
【0034】
なお、前先端杆貫通孔82dと後先端杆貫通孔82eの直径は後述する先端支持杆43の基部43aの直径よりも若干大きく構成して挿通できるようにし、該前先端杆貫通孔82dと後先端杆貫通孔82eの直径は前記パイプ孔41cと筒状部材83のパイプ孔の直径と略一致させている。
ここで、弾性プレート82は,その前壁82bと前記コ字状プレート81の中壁81aとが略平行に位置するように、また、その前先端杆貫通孔82dがコ字状プレート81の前記基部杆貫通孔81eに対して軸心が若干取付板81d側にずれた状態に位置するように、前記コ字状プレート81に固設されている。
【0035】
つまり、先端杆貫通孔82dと基部支持杆41の先端部41bに形成されているパイプ孔41cの軸心とが若干ずれるようにして、弾性プレート82がコ字状プレート81に固設され、該コ字状プレート81が基部支持杆41に固設されている。
そのため、作業者等が弾性プレート82を押して撓ませることにより、容易に両軸を一致させることが可能に構成されている。
【0036】
前記コ字状プレート81の中壁81aには、前記基部支持杆41の先端部41b周囲に巻回されるバネ84の一端が固設されており、該バネ84は該先端部41bを周回して、図5及び図7に示すように、他端84bが前上方へ折り曲げられて前記前壁81cと平行になるように形成されている。本実施例においては、該他端84bが更に下方へと折り曲げられて前壁81c近傍まで延設されており、「引き上げ状態」における先端支持杆43の基部側が該他端84bと前壁81cとの間に挟まれて、先端支持杆43の基部側が前記基部支持杆41の先端部41bから抜け難い構成になっている。
【0037】
そして、前記基部支持杆41の上部側面には、溶接等によって筒状部材83が固設されている。該筒状部材83は、「引き上げ状態」において、その軸が略前低後高方向となるように、詳しくは、その軸が基部支持杆41上部の軸方向と略直角となるように固設されている。このとき、筒状部材83の軸心に対して前記後先端杆貫通孔82eの軸心が若干取付板81d側にずれるように配設して、基部支持杆41上の前記弾性プレート82の下壁82c近傍に固設されている。
つまり、作業者等が弾性プレート82の下壁82cを撓ませることによって、容易に該筒状部材83と前記後先端杆貫通項82dとの軸とを一致させることができるように構成されている。
【0038】
次に、先端支持杆43について説明する。
図3・図5・図7・図8に示すように、先端支持杆43は、両端部が同一方向に向けて略直角に折り曲げられた棒状部材である。詳しくは、図3に示すように「作業状態」において正面視コ字状に、換言すれば、図5に示すように「引き上げ状態」において背面視門型形状に、更に換言すれば、図7に示すように「格納状態」において左側面視U字状に形成されているものである。そして、先端支持杆43の一端(先端側)には回転体44が枢支されており、他端(基部43a)の外周には溝状の縮径部43bが形成されて、前記パイプ孔41c及び筒状部材83に着脱自在に嵌入できる基部43aとなっている。換言すれば、先端支持杆43の基部43a側の外周にリング状の溝部(縮径部34b)が形成されているのである。
【0039】
該縮径部43bの幅(縮径部43bの軸方向の長さ)は、前記弾性プレート82の前壁82b及び下壁82cの厚さよりも若干長く形成されており、該基部43aがパイプ孔41cや筒状部材83に嵌入された際に、前壁82bや下壁82cが縮径部43bと係合することができるように構成されている。つまり、基部支持杆41に一体的に固設された保持機構42を構成する弾性プレート82に、縮径部43bを係合することによって、先端支持杆43を基部支持杆41に保持させているのである。
【0040】
次に、回転体44について説明する。
図5・図7・図8に示すように、回転体44は、前記先端支持杆43に枢支される軸受部61、リング形状の外周部62、前記軸受部61と外周部62とを連結する連結部材となる複数のスポーク60・60・・・、前記外周部62に装着されている複数の爪部64・64・・・とから構成されている。
【0041】
図4及び図8に示すように、前記爪部64は、「作業状態」において側面視C字状に形成され、回転体44の外周部から外方に向けて放射状に延出しており、先端が回転方向に対して逆向きに延設されている。そして、機体の走行に伴って回転体44が回転し、その回転に伴って、土中に入った各爪部64・64・・・内に泥土が入り込み、爪部64は回転に伴い泥土層より上方へ出るが、泥土の粘着力によりある程度の高さまではその重量に打ち勝ち上昇し、その上昇途中で重力で圃場面に落下する。この落下した泥土の塊は圃場表面に所定間隔ごとに落下され、次回の走行基準線となる。
【0042】
以上の構成により、作業者が、弾性プレート82を撓ませて、前記先端杆貫通孔82dと前記基部支持杆41の先端部41bに形成されているパイプ孔41cの軸とを一致させ、先端支持杆43の基部43aを両孔82d・41cに貫通させて「作業状態」及び「引き上げ状態」とすることができる。そして、前記前壁82bを縮径部43bに係合させることにより、「作業状態」及び「引き上げ状態」において先端支持杆43を保持機構42により抜け止めでき、コ字状プレート81の前壁81cと後壁81bの間に先端支持杆43を位置させ、バネ84により前方へ回動するように付勢している。
【0043】
その後、作業者は、弾性プレート82を撓ませて、先端杆貫通孔82dと基部支持杆41の先端部41bに形成されているパイプ孔41cの軸とを一致させることによって、前記前壁82bと縮径部43bとの係合を解除し、先端支持杆43の基部43aを両孔82d・41cから抜き出することができる。
【0044】
そして、作業者は、弾性プレート82を撓ませて、前記筒状部材83の軸と前記後先端杆貫通孔82eの軸とを一致させ、先端支持杆43の基部43aを筒状部材83と後先端杆貫通孔82eとに貫通させて「格納状態」とすることができる。そして、前記下壁82cを縮径部43bに係合させることにより、「格納状態」において先端支持杆43を保持機構42に保持することが可能となる。
前述したように、筒状部材83は「格納状態」においてその軸が略前低後高方向となるように、詳しくは、その軸が基部支持杆41上部の軸方向と略直角となるように固設されており、先端支持杆43の基部43aを該筒状部材83に挿入した際に、該先端支持杆43及び回転体44が基部支持杆41の上部と略平行に位置することができるように構成されている。このとき、図4に示すように、基部支持杆41と先端支持杆43と回転体44は、植付装置4の苗載台16と後輪8との間に配設されることになる。
【0045】
本発明の回転式マーカ40においては、先端支持杆43を基部支持杆41の直下方に配設しつつ、回転体44の下部が該基部支持杆41の上面に乗って支持される構成されている。換言すれば、「格納状態」において、先端支持杆43及び回転体44とが基部支持杆41に絡まったような状態で保持される構成としている。
つまり、「格納状態」において、基部支持杆41の直下方に先端支持杆43及び回転体44を係合させて配設する、即ち、先端支持杆43及び回転体44を他の周辺部材に干渉させることなく基部支持杆41に干渉させることによって、基部支持杆41と保持機構42と先端支持杆43と回転体44から構成される回転式マーカ40をコンパクトに収め、先端支持杆43と該回転体44とを走行機体1幅方向外側へ突出しない状態で保持する構成としているのである。
【0046】
その後、作業者は、弾性プレート82を撓ませて、前記筒状部材83の軸と前記後先端杆貫通孔82eの軸とを一致させることによって、前記下壁82cと縮径部43bとの係合を解除し、先端支持杆43の基部43aを保持機構42から抜き出することができる。
【0047】
このように、田植機100の走行機体1後部に多条植え用の植付装置4を付設し、該植付装置4に回転式マーカ40を具備する田植機100において、該回転式マーカ40を、植付装置4に取付ける基部支持杆41と、回転体44と、該基部支持杆41と該回転体44とを連結する先端支持杆43と、から構成し、該先端支持杆43を該基部支持杆41に対して分離可能とし、該基部支持杆41の回動によりマーカ作業状態とマーカ引き上げ状態とを現出し、該基部支持杆41に、該先端支持杆43及び該回転体44を格納状態に保持する保持機構42を設けたので、マーカ引き上げ状態以外にマーカ格納状態を設定することにより、運搬時の引っ掛け防止や高畦でもより際に寄ることが可能となる。
【0048】
また、前記格納状態において、機体1側面視において、前記先端支持杆43と前記回転体44が後輪8と植付装置4の苗載台16との間に位置する構成としたので、格納状態において、先端支持杆43や回転体44が他の部材との干渉にて変形、破損することを防止することが可能となる。
【0049】
また、前記格納状態において、機体1側面視において、前記基部支持杆41を後輪8の外周形状に沿うように構成し、前記回転体44を基部支持杆41に略平行状に格納したので、格納状態において、先端支持杆43や回転体44が他の部材との干渉にて変形、破損することを防止することが可能となる。
【0050】
また、前記格納状態において、前記先端支持杆43及び前記回転体44を前記基部支持杆41に係合させることにより、該先端支持杆43と該回転体44とを走行機体1幅方向外側へ突出しない状態で保持するので、簡単な構造で先端支持杆43及び回転体44を確実に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】乗用田植機の一実施例を示す側面図。
【図2】植付装置の一実施例を示す正面図。
【図3】回転式マーカを示す正面図。
【図4】回転式マーカ周辺を示す左側面図。
【図5】作業状態及び引き上げ状態を示す回転式マーカの後方斜視図。
【図6】保持機構を示す前方斜視図。
【図7】格納状態を示す回転式マーカの前方斜視図。
【図8】先端支持杆及び回転体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0052】
1 走行機体
4 植付装置
8 後輪
16 苗載台
40 回転式マーカ
41 基部支持杆
42 保持機構
43 先端支持杆
44 回転体
100 田植機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植機の走行機体後部に多条植え用の植付装置を付設し、該植付装置に回転式マーカを具備する田植機において、
該回転式マーカを、植付装置に取付ける基部支持杆と、回転体と、該基部支持杆と該回転体とを連結する先端支持杆と、から構成し、
該先端支持杆を該基部支持杆に対して分離可能とし、
該基部支持杆の回動によりマーカ作業状態とマーカ引き上げ状態とを現出し、
該基部支持杆に、該先端支持杆及び該回転体を格納状態に保持する保持機構を設けたことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記格納状態において、
機体側面視において、前記基部支持杆及び前記回転体が後輪と植付装置の苗載台との間に位置する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記格納状態において、
機体側面視において、前記基部支持杆を後輪の外周形状に沿うように構成し、
前記回転体を基部支持杆に略平行状に格納したことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記格納状態において、
前記先端支持杆及び前記回転体を前記基部支持杆に係合させることにより、該先端支持杆と該回転体とを走行機体幅方向外側へ突出しない状態で保持することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−244304(P2007−244304A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73451(P2006−73451)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】