説明

甲状腺ホルモン薬剤としての3,5,3’−トリヨードチロニン硫酸塩及びその製薬調剤

【課題】自己免疫性甲状腺疾患,ホルモン生成欠陥,甲状腺切除術,先天性甲状腺機能低下症からの原発性甲状腺機能低下症(original hypothyroidism),及び,例えば甲状腺機能低下症,非甲状腺性全身疾患,絶食(fast),セレン不足等によって生じたI型5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(I型MD)の活性低下等に起因する何らかの障害等の,トリヨードチロニン(T3)の有機物欠乏症に起因する病状等を治療するのに有効な薬剤を提供する。
【解決手段】トリヨードチロニン硫酸塩をそれ自体で,若しくはチロキシン(T)と関連付けて,甲状腺の活性を有する薬剤として使用する方法,及びその製薬調剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,3,5,3’−トリヨードチロニン硫酸塩(3,5,3’-triiodothyronine sulfate)の有機物欠乏症に起因する病状を治療するために,通常,トリヨードチロニン硫酸塩又はT硫酸塩,或いはTSと名付けられる3,5,3’−トリヨードチロニン硫酸塩を活性成分として単独で,若しくはチロキシンと一緒に使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液中には,甲状腺で直接的に生成されるか,若しくは他のヨードチロニンの末梢代謝の結果物として,多数のヨードチロニンが存在する。それらの中でも,3,5,3’−トリヨードチロニン(頭文字T)は,甲状腺ホルモン(TH)の生物学的活性型とみなされる。なぜならば,Tは,甲状腺ホルモンの特定の受容体に対して高親和性を示し,通常,この受容体を活性させるのに十分な濃度で血清中に存在するからである。
【0003】
成人健常者の甲状腺の主たる分泌物は,一般に頭文字Tと表されるチロキシンである。Tは,末梢組織で,I型及びII型の5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(5’-iodothyronine monodeiodinases)の両方(それぞれ,I型MD及びII型MDと呼ぶ)によって,分子の外側芳香族環からヨウ素原子が酵素除去され,その生物学的活性型であるT(非特許文献1参照)に変換される。この代謝経路は,Tを内因的に生産する主たる機構であり,従って,Tはプロホルモンと考えるのが適切である。一方,Tの一部は,甲状腺によっても直接的に分泌される。平均して,体重70kgの成人1人が生産するTの量は,100μg/日に達するのに対して,Tの総生産量は,約25μgに達する。この25μgのうち,4〜8μgのTは,甲状腺によって直接的に分泌され,残りは,末梢組織でのTの転換から生じる。
【0004】
は,2つの異なる代謝経路がある。主たる代謝経路は,III型5−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(III型MD)によって,内側芳香族環を部分的に脱ヨード化して3,3’−ジヨードチロニンを得るものである。この3,3’−ジヨードチロニンは,生物学的に非活性で,脱ヨード化又は硫酸抱合(sulfoconjugation)を介してさらに代謝される。他方の代謝経路は,身体によって生成されるTの総量の約20%に関し,Tの硫酸抱合を増進させてTSを得る。このTSは,甲状腺ホルモンと結合できないので(非特許文献2参照),従って,生物学的に非活性である(非特許文献3参照)。
【0005】
とは違い,TSは,III型MDによって脱ヨード化されない。むしろ,TSは,I型MD(非特許文献4参照)に対する優秀な基質であり,それによって,非常に迅速に3,3’−ジヨードチロニン硫酸塩に転換される。その結果,成人健常者において,Tを硫酸抱合してTSを得ることは,Tの異化代謝の速度を上げて,その胆汁及び尿の排出を容易化する一方法を示していることが,広く知られた常識になった。実際に,健常な成人では生理学的に低いTSの血清中濃度は,I型MDの活性が低減されると高くなることが判明した。
【0006】
しかしながら,予想外なことに,身体において部分及び器官によっては,特定の生理学的条件及び状況の下で,TSを再度,その活性型のTに転換することが可能なスルファターゼが存在することも判明した(非特許文献7〜9参照)。
【0007】
そのような酵素は,肝臓,腎臓及び中枢神経系等の身体の組織内,並びに腸内のミクロフロラ内に知られている(非特許文献10)。
【0008】
近年,子宮内生活の間,内因性TSの血清中濃度が,非常に高くなっており,そのような状況,即ち,成人で一般的に知見される値よりも高くなっている状況が,少なくとも出生後生活4ヶ月目までは,身体によって保持されることが判明した(非特許文献11参照)。成長の際に,甲状腺ホルモンが果たす本質的な役割を考えると,特に中枢神経系の機能が関係している限りにおいては,この組織内で,人生の第1期(the first period of life)の間,必要な場合及び時に応じて,TSがTの予備の供給源として身体によって使用される可能性もあると推測される。解剖後のヒトの神経大脳組織の検死解剖試験片(autoptic specimens)上で行われた研究によって,同一結果中のTの量がIII型MDによって制限されることが示された(非特許文献12参照)。この酵素は,TSを攻撃しないが,TSをその活性型に再度,転換可能なスルファターゼを含有する組織内でTホルモンが特別に必要となった場合に,例外的にTホルモンの代替的な内因性供給源の役割を果たし得ることが推量される(非特許文献8,13参照)。
【0009】
甲状腺ホルモンを生成及び代謝する際に,TSが果たす効果的な役割を解明するように,さらなる研究が行われた。この研究によって,それが,甲状腺機能正常ラット(非特許文献14参照)及び甲状腺機能低下ラット(非特許文献10参照)で,甲状腺ホルモン様効果を示すことが最近,実証された。いずれの場合にも,TSは,Tの約1/5の効果を示した。さらに,TSを用いた治療及びTを用いた治療の両方で,甲状腺正常ラットの血清中の甲状腺刺激(thyreotropic)ホルモン(TSH)の濃度が著しく減少した。即ち,その分泌を抑制する点で類似の能力を有することを示した。これに対して,甲状腺機能低下ラットでは,TSは,TSHの抑制において,Tと比較して貧弱な性能を示した。TSHが,甲状腺の機能状態に非常に反応性の高い指標であり,且つそのホルモン分泌の微細な変化を検出可能にすることはよく知られている。実際に,甲状腺機能性が低下した条件下では,無症状として定義付けられる状態においてさえ,TSの濃度は,より高くなっている。一方,甲状腺ホルモンが過剰に存在する場合,それらは減少する。従って,TSは,TSHの形成を抑制する能力に関与する限りは,予想に反してTと比較にならないと思われる。
【0010】
結論として,特に最新の研究を考慮すると,TSによって果たされる生物学的な役割は,まだ明確且つ完全な知識に到達していない。
【0011】
実際に,その主たる,根拠十分な,且つ普遍的に受入れられている特性は,その非生物学的な活性(即ち,Tの生物学的に不活性な代謝産物であること(非特許文献2及び3)),及び硫酸化経路がTの異化代謝の代謝活性剤とみなされていることである(非特許文献5参照)。
【0012】
他方,特定の組織内で,且つそれら組織内で甲状腺ホルモンの欠乏に起因する例外的で決定的な条件下においてのみ,TSは,Tの内因性の局所的供給源としてのその能力を示した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Chopra IJ.著「Nature, source and relative biological significance of circulating thyroidhormones.」Braveman LE., Utiger RD. 編集, The Thyroid, Lippincott, Philadelphia 1991年, 126〜143頁
【非特許文献2】Spaulding SW., Smith TJ., Hinkle PM., Davis FB., Kung MP., Roth JA.著「Studies on the biological activity of triiodothyronine sulfate.」, J. Clin. Endocrinol. Metab 誌 1992年, 74巻, 1062〜1067頁
【非特許文献3】Lo Presti JS., Mizuno L., Nimalysuria A., Anderson KP., Spencer CA., Nicoloff JT.著「Characteristic of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate metabolism in euthyroidman.」, J. Clin. Endocrinol. Metab 誌 1991年, 73巻, 703〜709頁
【非特許文献4】Santini F., Hurd RE., Chopra IJ 著「A study of metabolism of deaminated and sulfoconjugated iodothyronines by rat placental iodothyronine 5-monodeiodinase.」Endocrinology誌 1992年, 131巻, 4号, 1689〜1694年
【非特許文献5】Otten MH., Mol JA., Visser TJ.著「Sulfation proceding deiodination of iodothyronines in rat hepatocytes.」Scinece誌1983年, 221巻, 81〜83頁
【非特許文献6】Mol JA., Visser TJ.著「Rapid and selective inner ring deiodination of T4 sulfate by rat liver deiodinase.」Endocrinology誌1986年, 117巻, 8〜12頁
【非特許文献7】Kung MP., Spaulding SW., Roth JA.著「Desulfation of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate by microsomes from human and rat tissues.」Endocrinology誌1988年, 122巻, 1195〜1200頁
【非特許文献8】Santini F., Chopra IJ., Wu SY., Solomon DH., Chua Teco GN.著「Metabolism of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate by tissues of the fetal rat: a consideration of the role of desulfation of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate as a source of T3.」Pediatr. Res. 誌1992年, 31巻, 541〜544頁
【非特許文献9】De Herder WW., Hazenberg MP., Pennock-Schroeder AM., Hennemann G., Visser TJ.著「Rapid bacteria-dependent in vitro hydrolysis of iodothyronine conjugates by intestinal contents of humans and rats.」Med. Biol. 1986年, 64巻, 31〜35頁
【非特許文献10】Santini F., Hurd RE., Lee B., Chopra IJ.著「Thyromimetic effects of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate in hypothyroid rats.」Endocrinology 1993年, 133巻, 1号, 105〜110頁
【非特許文献11】Santini F., Chiovato L., Chiri P., Lapi P., Mammoli C., Montanelli L., Scartabelli G., Ceccarini G., Coccoli L., Chopra IJ., Boldrini A., Pinchera A.著「Serum iodothyronines in human fetus and the newborn: evidence for an important role of placenta in fetal thyroid hormone homeostasis.」J. Cl. Endocrinol. Metab.誌1999年, 84巻, 2号, 493〜498頁
【非特許文献12】Santini F., Pinchera A., Ceccarini G., Castagna M., Rosellini V., Mammoli C., Montanelli L., Zucchi V., Chopra IJ., Chiovato L.著「Evidence for the role of the type III-iodothyronine deiodinase in the regulation of 3,5,3’-triiodothyronine content in the human central nervous system.」Eur. J. Endocrinol.誌2001年, 144巻, 577〜583頁
【非特許文献13】Santini F., Cortellazzi D., Baggiani AM., Marconi AM., Beck-Peccoz P., Chopra IJ.著「A study of the serum 3,5,3’-triiodothyronine sulfate concentration in normal and hypothyroid fetuses at various gestational stages.」J. Cl. Endocrinol. Metab.誌1993年, 76巻, 6号, 1583〜1587頁
【非特許文献14】Chopra IJ., Nguyen D.著「Demonstration of thyromimetic effects of 3,5,3’-triiodothyronine sulfate (T3S) in Euthyroidrats.」Thyroid誌1996年, 6巻, 3号, 229〜232頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
結果として,今日,当業者は依然として,生成物の生物学的特性の一部だけが強調(highlits)されており,更なる研究により完全で徹底した研究が必要であるという,複雑且つ多少矛盾する状況に直面している。
【0015】
いずれにせよ,当技術分野の技術水準を形成するいずれの文献にも,Tのこの異常な代謝産物を治療に用いる可能性は,開示,教示,或いは示唆されていない。また,近似する従来技術文献のいずれにも,それが実験的性質に関する文献又は概ね理論的な文献であろうとも(それ単独でも,又は他の関連文献と組合わせても),TS自体で,若しくは例えばT等の他の甲状腺ホルモン又はプロホルモンと好適に組合わせて,薬剤として使用すること又は使用する可能性ですら,示唆する文献は存在しない。身体の一部の特定組織においてのみ,特定且つ特別の状況下で,TSがTに再転換されるという事実は,生成物の対外的投与を介して有機的組織体全体にこの特性を一般化することが可能であるということを意味せず,暗示せず,且つ示唆もしない。特に,生成物を経口投与することによって,その経口投与が例え周知の製薬技術による方法に従った保護的形態であったとしても,生物学的に利用可能になり得ることは,示唆されていない。なぜならば,周知のように,適切なスルファターゼが存在しない場所では,それらがすぐに代謝されて胆汁及び尿を介して排泄されてしまうからである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
予想に反して,TSをそれ自体を,又は好ましくはT等の他の甲状腺ホルモン又はプロホルモンと組合わせて,所望の用途に応じて適切に調合することで,特にT等の活性甲状腺ホルモンの身体による生成量が必要量より不足することから生じる全ての病状に用いられる薬剤として,特に有用であることが今や判明した。また,このことは,本発明の一態様である。
【0017】
予想に反して,TSの投与が,その通常の代謝について知られていることと異なり,身体内で長時間(12〜18時間)の間,Tの安定した濃度の維持を可能にすること,及びその効果は,甲状腺ホルモンを最も活性な形態で補充する必要がある場合に非常に有用であることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
特に,TSのTとの関連に帰着する甲状腺機能低下症の治療に好適であり,これは本発明の主たる態様である。このホルモンの関係は,TとTの組合わせにより示される通常の甲状腺の分泌に,理論的に,より正確に模倣するべきである。実際,前述のヨードチロニンを両方とも含み,通常の生理学的分泌のうちの1つに類似する比率で調剤された医薬組成物が,既に試験され,且つ市販されている。残念ながら,T及びTのこの同時経口投与は,Tの薬物動態が原因で,甲状腺ホルモンの通常の血清中濃度を再現することができなかった。事実,Tは経口後,非常に素早く吸収され,同様に素早く排出される。Tの排出速度は,Tの排出速度より約20倍,高くなっている。この理由のため,Tの経口によって,ホルモン濃度が上昇して,正常の生理学的な濃度と比較して,危険なピークを超過し,その後,非常に急速に降下して正常の生理学的な濃度以下になってしまう。この結果,今日,専門的な医師の大部分は,Tを単独で使用する方を選択する。例え,Tを単独で使用する方法によるTの生成が,甲状腺による直接的なTの分泌が存在しないか,又は著しく不十分であるために,末梢組織でのTの脱ヨード化のみに依存するとしてもである。
【0019】
これに反して,本発明による関連付けは,上述の問題は回避される。なぜならば,例えば経口後に,TSによって,血清中T濃度は緩やかに増大し,長時間,安定状態が保持され,従って,非常に高いピークの形成が防止されるからである。
【0020】
の有機物欠乏症に起因する病状の治療にTSを用いることで得られる予想外の別の利点は,TSH分泌の貧弱な抑制に関連する,最近発見された組織的な甲状腺ホルモン様活性にある。この効果は,甲状腺癌を患い甲状腺切除された患者に対して,全身シンチグラフィを行うことを考慮して,Tの投与を一時中断しなければならない場合に,特に有用である。そのような場合,Tの代わりにTSを投与することによって,診断検査の邪魔をすることなく,患者の必要性を解決する。
【0021】
甲状腺機能低下症の治療におけるTSのさらに別の利点は,その自動制限能力に関するものである。実際,TSは,甲状腺ホルモンにより一部が活性化されたI型MDによって能動的に脱ヨード化される。甲状腺機能低下症の患者では,I型MDの活性が低減しており,その結果,TSの排出も遅くなっている。実際のところ,その身体上の効果が増大している。一方,過剰に投与した場合,I型MDの活性が増大されて,従って,TSがより排出される。即ち,所望しない潜在的な付随的効果が制限される。
【0022】
最後だが決して軽んじられない,TSのさらなる利点は,それが,身体に正常的に存在する,通常,非活性な,即ち,無毒の代謝産物であるという事実である。その結果,その投与の後に,過敏症又は不耐性の問題が存在しないことは,当然,予想できる。
【0023】
従って,本発明の別の主たる態様は,活性成分として,TSをそのまま,若しくは他の甲状腺ホルモンと又はプロホルモンと組合わせて含む製薬調剤に関する。特に,好適には,Tと関連付けてTSを含む調剤に関する。
【0024】
前記調剤は,所望する投薬の種類に応じて,1又は2以上の活性剤の用量が異なり,或いは製薬形態の種類が異なる。さらに,それらには,製薬技術分野で従来的に用いられている賦形剤,希釈剤,非溶剤(dissolvents),溶剤,基剤(carriers),染料,香味料,甘味料等の有用な添加物が含まれてもよい。投与の個々の必要に応じて,個別に製薬調剤の準備を行うことは,明らかに本発明の属する従来的な技術分野に含まれる。
【実施例】
【0025】
一例(当業者を全く制限しない)として,口径使用のためにTSは,5〜1000μg,好適には10〜500μg,より好適には25〜250μgの用量範囲で投与されてよい。
【0026】
と関連付けて同様に用いられる場合,好適にはTSが10〜500μg且つTが10〜250μgの範囲,より好適にはTSが25〜250μg且つTが25〜200μgの範囲である。
【0027】
例示を目的として,複数の好適実施例のうちから,2つの代表的な経口投与の調剤を選択し,以下に記載する。当然,これらの代表的な調剤には,その他可能な変形実施例を制限する趣旨はなく,個々の病状又は特定の調剤用途に応じて,種々の投与形式,種々の用量,又は種々の成分が用いられてよい。
【0028】
例A)TSを含む経口製剤
【0029】
【表1】

【0030】
例B)TS及びTを含む経口製剤
【0031】
【表2】

【0032】
特に,関連付けを考慮する場合,本発明の調剤には,逐次的投与が可能になるように,個々に調剤されたTS及びTの投与量が含まれてもよい。この場合,1の適切なキットが提供されて,それにより,必要とする治療の用法に応じて,患者によって異なり得る方法によって,前記活性成分が別個に投与されてもよい。そのような方法によって,専門医は,患者の実際のニーズに応じた処方の変更という幅の広い選択肢をとり得る。
【0033】
制限を意図したものでは全くなく,単に例示を目的として説明すれば,経口投与の場合には,形状及び/又は色及び/又は内容物及び/又は用量が異なる2の個別のブリスター包装を含有する1の包装が,所望の目的に適し得る。その他の可能性も存在し,同業者によって容易に利用可能である。
【0034】
本発明の医薬組成物は,例えば,自己免疫性甲状腺疾患,ホルモン生成欠陥,甲状腺切除術,先天性甲状腺機能低下症からの原発性甲状腺機能低下症(original hypothyroidism),及び,例えば甲状腺機能低下症,非甲状腺性全身疾患,絶食(fast),セレン不足等によって生じたI型5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(I型MD)の活性低下等に起因する何らかの障害等の,トリヨードチロニン(T)の有機物欠乏症に起因する病状等を治療するのに有効である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の医薬組成物は,例えば,自己免疫性甲状腺疾患,ホルモン生成欠陥,甲状腺切除術,先天性甲状腺機能低下症からの原甲状腺機能低下症(original hypothyroidism),並びに例えば甲状腺機能低下症,非甲状腺性全身疾患,FAST,セレン不足等によって生じたI型5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(I型MD)の活性低下等に起因する何らかの障害等の,トリヨードチロニン(T)の有機物欠乏症に起因する病状等を治療するのに有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤として用いるトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項2】
甲状腺ホルモン様活性を有することを特徴とする請求項1に記載の薬剤として用いるトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項3】
有機物欠乏症に起因する病状の処置に用いることを特徴とする請求項2に記載のトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項4】
前記病状は,自己免疫性甲状腺疾患,ホルモン生成欠陥,甲状腺切除術,先天性甲状腺機能低下症からの原発性甲状腺機能低下症(original hypothyroidism)を含むことを特徴とする請求項3に記載のトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項5】
I型5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素(type I 5’-iodothyronine monodeiodinase)の活性低下に起因する障害の治療に用いられることを特徴とする請求項2に記載のトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項6】
前記I型5’−ヨードチロニンモノ脱ヨード酵素の活性低下には,多数ある原因のうち,甲状腺機能低下症,非甲状腺性全身疾患,絶食(fast),セレン不足を含むことを特徴とする請求項5に記載のトリヨードチロニン硫酸塩。
【請求項7】
トリヨードチロニン硫酸塩を活性剤として含む医薬組成物。
【請求項8】
前記トリヨードチロニンが硫酸塩は,チロキシンと関連付けて調剤されることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記組成物は,賦形剤,希釈剤,非溶剤,溶剤,基剤,染料,香味料,甘味料等の添加物をさらに含むことを特徴とする請求項7及び8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
トリヨードチロニン硫酸塩は,5〜1000μgの用量範囲で投与されることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
トリヨードチロニン硫酸塩は,10〜500μgの用量範囲で投与されることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
トリヨードチロニン硫酸塩は,25〜250μgの用量範囲で投与されることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記関連は,トリヨードチロニン硫酸塩が10〜500μg,且つチロキシンが10〜250μgの用量範囲で投与されることであることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記関連は,トリヨードチロニン硫酸塩が25〜250μg,且つチロキシンが25〜200μgの用量範囲で投与されることであることを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項8,9及び11〜14のいずれかに記載の医薬組成物を個々に又は逐次的に投与するためのキット。
【請求項16】
請求項7〜15のいずれかに記載の医薬組成物を調剤するためのトリヨードチロニン硫酸塩の使用方法。

【公開番号】特開2011−102306(P2011−102306A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−288189(P2010−288189)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【分割の表示】特願2004−550983(P2004−550983)の分割
【原出願日】平成15年11月11日(2003.11.11)
【出願人】(596005333)
【Fターム(参考)】