説明

画像から自己蛍光を除去する方法及びシステム

【課題】
【解決手段】生体材料に付随する固有の自己蛍光を除去するための方法及びシステムであって、生体材料の第1の対照画像を取得する段階と、1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターを用いた生体材料の第1組の1以上の画像を取得する段階と、1種以上の追加の色素を生体材料に添加し、次いで情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像と生体材料の第2の対照画像とを含む第2組の1以上の画像を取得し、第1の対照画像と第2の対照画像を位置合わせした後、取得した情報画像にみられる固有の自己蛍光を除去する段階とを含む方法及びシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、生体材料の画像から生体材料の固有の自己蛍光を除去する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織の自己蛍光(AF)は、顕微鏡検査及び手術への用途における基本的な問題である。これにより、シグナル検出感度が低下し、場合によっては、蛍光色素シグナルを検出できなくなることもある。タンパク質特異的な蛍光色素の正確な検出は、分子経路の定量が薬物応答の予測、治療計画作成及び癌患者の集団区分などの重要な意義を持つ、このような分子病理学イメージングとして、多くの顕微鏡検査用途に極めて重要である。
【0003】
近年、多くの蛍光色素の開発により、光学蛍光顕微鏡法が、疾患を認識するための一般に好まれる方法となっている。多くの研究で、直腸結腸、乳房、肺、子宮頸、直腸、消化管及び癌を診断するための組織の自己蛍光の変動を研究するために、蛍光分光技術が用いられている。しかしながら、これらの方法は、組織特異的な自己蛍光(AF)スペクトルの大規模なモデル化を必要とする。この面倒なモデル化プロセスは、必ずしも十分であるとは限らないのだが、人工的に導入された1種以上の色素を用いて特異的タンパク質を追跡する多重化技術を用いることで、回避することができる。多重化は、各色素の放出スペクトル及び励起スペクトルと合致するフィルターキューブを通して、重複しない放出スペクトル又は励起スペクトルを持つ異なる色素の画像を取得する段階を含む。しかしながら、このような方法では、これらの色素によって放出されるタンパク質特異的な蛍光は、適当な外部光励起によって、固有の組織の自己蛍光(AF)シグナルと未知の割合で組み合わされ、その有効性が大いに低下する。従って、固有の組織のAFを分離し、除去すれば、このような方法の精度が大いに向上することになる。
【0004】
液晶可変フィルター、蛍光分極、二波長差分蛍光補正、共焦点レーザー走査顕微鏡法及び時間分解蛍光顕微鏡法の使用など、組織のAFを除去するための様々な戦略が、文献の中で提案され、研究されているが、こうした戦略の多くは、全スペクトル範囲に対して、高価な多重スペクトルイメージングハードウェアを利用した後、スペクトル分離を行なう。ハードウェア強化の他に、組織のAFの効果を低下させるために使用可能な様々な化学的プロセスもある。
【0005】
組織のAFを関連のある色素蛍光から分離するために、デジタルで取得された蛍光顕微鏡画像を、ソフトウェア技法を用いて事後的に処理することもできる。こうした方法の中には、純粋なAFシグナルの推定量を取得し、この推定量を用いて色素シグナルとAFシグナルの両方を含む画像から重み付けサブトラクションによってAFを除去することに頼るものもある。統計的相関技術を用いて、付加的なAFシグナルを補正する方法もある。これらの技術は、多重スペクトルイメージングハードウェアを使用するよりも費用対効果が高いが、蛍光顕微鏡画像からAF成分を完全に除去することができないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−334466号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法及びシステムは、一般に、2段階の画像取得プロセスを用いて、蛍光画像から固有の組織のAFを除去する。これらの方法及びシステムは、化学的なAFの削減技術及び/又は光退色によるAFの削減技術とともに、或いはこれらの技術なしで使用することができる。
【0008】
特定の色素に同調された光学フィルターキューブ一式を用いて、全ての色素の画像を一度に取得するのではなく、2つの一般段階で画像の取得を行なう。第1の段階では、生体材料の対照画像を取得する。対照画像は、1種以上の低AF色素(例えば、紫外又は赤外)などの、対照色素で最初に生体材料を染色することによって取得可能であり、次いで、低AF色素に対応するフィルターを用いて第1の対照画像が取得される。シアン蛍光タンパク質に対応するフィルターを用いることによって、対照色素を添加せずに、対照画像を取得することも可能である。第1組の画像は、1種以上の追加の色素を添加する前に、これらの色素に対応するフィルターを用いて撮影された画像も含む。これらの対応するフィルターを用いて撮影された画像は、低AF色素を除いては、特定の波長における組織の自己蛍光を表す。第2の段階では、追加の色素を添加し、次いで対照フィルターを含む、各々のフィルターを用いた別々の画像を取得する。両方の段階で共通する構造を用いて第1の対照画像を第2の対照画像と整列させることによって対照画像を位置合わせする。その後、ロバストな推定プロセスを用いて、第2の段階で取得したAFシグナルと色素シグナルから第1の段階で取得したAFシグナルを分離し、AFのない画像を得る。本発明の方法及びシステムには、AFを低下させながら又はAFを排除しながらシグナルを維持するという技術的効果があり、この効果によって、得られるシグナル対AF比と全体的な検出感度が増大する。これらの費用対効果の高い方法及びシステムは、複雑且つ高価な計測装置又は化学技術の必要がない。本方法及びシステムは、多種多様な組織マイクロアレイ(TMA)に適応できる。しかしながら、本方法及びシステムは、TMAとともに使用することに限定されず、AFが低い対照色素又は対照プローブと追加の色素又は蛍光プローブを比較のために使用し、対照色素及び活性色素に対応するフィルターを用いた連続画像を撮影し、位置合わせすることができる任意の蛍光イメージング用途に応用することができる。これらの方法及びシステムを開示する目的のために、本明細書で使用される場合の色素という用語は、蛍光及び非蛍光のイメージング剤を包含し、本明細書中の実施例で互換的に使用されるが、その範囲及び用途において限定的であることが意図されない。
【0009】
生体材料に付随する固有の自己蛍光を除去するための、本発明の方法の一実施形態は、一般に、a)生体材料の第1の対照画像を取得する段階と、b)1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターを用いた生体材料の第1組の1以上の画像を取得する段階と、c)1種以上の追加の色素を生体材料に添加し、次いで情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像と生体材料の第2の対照画像を含む第2組の1以上の画像を取得する段階と、d)第1の対照画像と第2の対照画像を位置合わせする段階と、e)次いで段階c)で取得した画像にみられる固有の自己蛍光を除去する段階とを含む。
【0010】
第1の対照画像と第2の対照画像は、シアン蛍光タンパク質に対応するフィルターを用いて取得可能であり、及び/又は段階a)は、高いシグナル対自己蛍光比を有する対照色素を生体材料に添加する段階をさらに含み、第1の対照画像と第2の対照画像は、対照色素に対応するフィルターを用いて取得される。対照色素は、DAPIなどの、しかしこれに限定されない、UVスペクトルに対応する色素及び/又はIRスペクトルに対応する色素を含み得る。
【0011】
第1の対照画像は座標系を有する静止画像であってもよく、第2の対照画像は座標系を有する動画像であり、これらの対照画像は、座標系を有する合成画像を形成するために、1以上の根本的変換パラメータを推定して、静止画像の座標系の上に動画像をマッピングすることによって、少なくとも部分的に位置合わせされる。対照画像は、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を用いて、少なくとも部分的に位置合わせし得る。
【0012】
生体材料に伴う固有の自己蛍光を除去するための本発明のシステムの一実施形態は、一般に、a)高いシグナル対自己蛍光比を有する1種以上の対照色素の存在を示す生体材料の対照画像を解析するように構成された処理装置と、b)対照色素に対応する1以上のフィルター及び1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターと、c)対照色素及び1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第1組の1以上の画像を取得するように構成され、生体材料の第2組の1以上の画像を取得するようにさらに構成され、生体材料が、対照色素及び1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、1種以上の情報色素の存在をさらに示す、デジタルイメージング装置とを含み、第2組の画像は、対照色素及び1種以上の情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像を含み、処理装置は対照画像を位置合わせし、次いで1種以上の情報色素の存在を示す画像から固有の自己蛍光を除去するようにさらに構成される。対照色素を使用する場合、対照色素のうちの少なくとも1つは、UVスペクトル及び/又はIRスペクトルに対応してもよい。
【0013】
デジタルイメージング装置は、シアン蛍光タンパク質に対応する対照フィルターを用いた生体材料の対照画像を取得するように構成してもよく、プロセッサは、1以上の根本的変換パラメータを推定して画像座標系をマッピングすることによって、対照画像を位置合わせするように構成される。対照画像は、1以上の強度ベースのパラメータ又は特徴ベースのパラメータを用いて位置合わせし得るが、必ずしもこれらのパラメータに限定されるものではない。対照画像は、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を用いて、少なくとも部分的に位置合わせし得る。
【0014】
生体材料に伴う固有の自己蛍光を除去するための本発明のシステムの別の一実施形態は、一般に、a)高いシグナル対自己蛍光比を有するシアン蛍光タンパク質に対応する対照フィルターを用いて撮影される生体材料の対照画像を分析するように構成された処理装置と、b)1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターと、c)対照フィルター及び1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第1組の1以上の画像を取得するように構成され、生体材料の第2組の1以上の画像を取得するようにさらに構成され、生体材料が、対照フィルター及び1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、1種以上の情報色素の存在をさらに示す、デジタルイメージング装置とを含み、第2組の画像は、対照フィルター及び1種以上の情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像を含み、処理装置は対照画像を位置合わせし、次いで1種以上の情報色素の存在を示す画像から固有の自己蛍光を除去するようにさらに構成される。同様に、対照画像は、強度ベースのパラメータ又は特徴ベースのパラメータを用いて位置合わせし得るが、これらのパラメータに限定されるものではない。対照画像は、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を用いて、少なくとも部分的に、位置合わせし得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】TMA上の全ての画像を用いて計算された第1の取得強度と第2の取得強度の接合分布を示す。第1の取得は、AFの画像を含み、第2の取得は、色素を添加した後のものである。線は、推定される始線を示す。
【図1b】第1の取得強度と第2の取得強度の接合分布を示す。線は、アルゴリズムが収束した後の最終的な近似線を表す。
【図2】様々な色素を用いた第1の画像取得と第2の画像取得のうちの6つの画像を示す。上の列は、第1の画像取得からの画像を含む。中央の列は、第2の画像取得からの画像を含む。下の列は、補正された、AFのない画像を含む。左の欄の画像は、汎カドヘリン(膜タンパク質)に直接結合したCy5色素を含む。右の欄の画像は、エストロゲン受容体に直接結合したCy3色素を含む。矢印は、通常は高いAFを示すが、このAFが除去された、血液細胞及び脂肪などの、画像中の組織領域を示す。
【図3】本方法を実行する自動システムの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の上記及びその他の特徴、態様、利点は、図面全体を通して同様の符号が同様の部分を表わす添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことによって明確に理解されるであろう。
【0017】
本発明の方法及びシステムは、生体材料の多重化蛍光イメージング及び他の蛍光イメージングの精度を高めるための2段階の画像取得プロセスを含む。第1の段階で、生体材料の対照画像を取得する。この画像は、単にシアン蛍光タンパク質に対応するフィルターを用いることによって取得可能であるか、或いは最も高いシグナル対自己蛍光比(低AF)を有する色素又は蛍光イメージング剤で最初に組織が染色可能で、その後、低AF色素(本明細書で対照色素とも呼ばれる)で染色した組織の画像が、低AF色素に対応するフィルターキューブを用いて撮影される。低AF色素(本明細書で対照色素とも呼ばれる)に対応するフィルターキューブを通した画像に加えて、1種以上の追加の色素又は蛍光イメージング剤に対応するフィルターキューブを用いて追加の画像を撮影する。これらの追加の色素(本明細書で情報色素とも呼ばれる)は種類が限定されず、生体組織の任意の特性又は特徴を明らかにするか、増強するか、或いは活性化することができる任意の色素又はイメージング剤を含む。「色素」という用語と組合せた、「追加の」及び「情報」という用語は、単に、対照画像を取得するために使用し得る対照色素(単数又は複数)と区別するために本明細書で使用される。
【0018】
対照画像又は第1組の画像は、必ずしも、第2組の画像の時間と時間的にすぐ近く又はごく近くで撮影される必要はなく、或いは第2組の画像の位置と物理的にすぐ近く又はごく近くで撮影される必要はない。むしろ、これらの画像は、後の検索及びアクセスのために撮影し、保存し得る。しかしながら、第1組の画像は、1以上の根本的変換パラメータを推定して画像の座標系をマッピングする本明細書における方法及びシステムを用いることによって、第1組の画像の対照画像を第2組の画像からの対照画像と位置合わせすることができるように、構成され、保存されなければならない。
【0019】
対照画像は、光退色段階の後に撮影された画像であってもよい。例えば、本方法及びシステムを多重化用途で使用することも企図される。多重化用途では、(典型的には異なるチャンネルに対応する)複数の色素を連続して添加し、各色素(又はチャンネル)についての画像の取得を連続して行ない、その間に、一連の色素添加と画像取得において別の色素を後から添加できるように光退色剤を生体材料に添加する。このような用途において、光退色後に撮影される適当なフィルターを用いた生体材料の画像は、対照画像としての役割を果たし得る。所与の多重化プロセスで2以上の対照画像を取得する場合、1以上のこれらの対照画像を位置合わせ段階で使用し得る。
【0020】
第1組の画像を取得した後、組織をイメージング装置(例えば、顕微鏡だが、これに限定されない)から取り出し、次いで情報色素を添加する。前述のように、これらの追加の色素を用いて、生体材料の1以上の特徴又は特性を解明するか、増強するか、或いは修飾し、生体試料からの情報又は生体試料についての情報を収集する。全組のフィルター、すなわち、対照フィルターと追加の色素に対応するフィルターの両方を用いた第2組の画像をさらに取得する。1以上の根本的変換パラメータを推定して、合成静止画像の座標系上に合成動画をマッピングすることによって、2つの段階間で(シアン蛍光タンパク質又は低AF対照色素に対応する)共通のチャンネルを用いて2つの対照画像を位置決めする。次いでこの画像から生体材料のAFを除去する。
【0021】
これらの方法及びシステムを用いて、生体試料を画像化及び解析し、とりわけ、生体試料又は組織中の1種以上の生体材料又は標的の有無、濃度及び/又は空間的分布を判別し得る。
【0022】
特許請求された発明の主題をより明確且つ簡潔に説明し、指摘するために、以下の説明及び添付された特許請求の範囲で使用される特定の用語に対して、以下の定義を提供する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「生体材料」という用語は、生体被検体から得られるか、或いは生体被検体中にある材料を指し、これには、インビボ又はインビトロで得られる生体組織又は生体液起源の試料及びインサイチュにある可能性の生体材料が含まれる。このような試料は、ヒトを含む哺乳動物から単離されるか又はヒトを含む哺乳動物内にある体液(例えば、血液、血液血漿、血清又は尿)、臓器、組織、画分及び細胞であり得るが、これらに限定されない。生体試料には、組織を含む生体試料の切片(例えば、臓器又は組織の切片部分)も含まれ得る。生体試料には、生体組織由来の抽出物(例えば、生体液(例えば、血液又は尿)由来の抗原)も含まれ得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「インサイチュ」という用語は、一般に、もとの場所で、例えば、インタクトな臓器又は組織で、或いは臓器又は組織の代表的な部分で起こる事象を指す。幾つかの実施形態では、標的のインサイチュ解析は、生物、臓器、組織試料又は細胞培養物を含む、種々の源に由来する細胞に対して行なうことができる。インサイチュ解析は、標的がその起源部位から取り除かれた時に失われる可能性がある文脈情報を提供する。従って、標的のインサイチュ解析とは、細胞膜が完全にインタクトであれ、部分的にインタクトであれ、標的に結合したプローブが細胞内に残る場合に、全細胞又は組織試料の中にある標的結合プローブの解析を説明するものである。さらに、本明細書で開示される方法を利用して、標的を、固定或いは未固定の細胞試料中又は固定或いは未固定の組織試料中で、インサイチュで解析し得る。
【0025】
生体材料には、その物理的状態(例えば、凍結されているか、或いは染色されているか又は他の方法で処理されている状態などの、しかしこれらに限定されない)を問わず、任意の材料が含まれ得る。幾つかの実施形態では、生体材料は、組織試料、全細胞、細胞成分、サイトスピン又は細胞スメアを含み得る。幾つかの実施形態では、生体材料は組織試料を含み得る。他の実施形態では、まず対照色素を用いて、次に追加の色素を用いて、標的とされた組織の連続画像を取得することができる場合、生体材料は、インサイチュの組織標的であってもよい。組織試料は、類似機能を有し得る生体被検体の組織から得られる類似細胞の集合体を含み得る。幾つかの実施形態では、組織試料は、ヒトの組織から得られる類似細胞の集合体を含み得る。ヒト組織の好適な例としては、(1)上皮、(2)血管、骨及び軟骨を含む、結合組織、(3)筋肉組織、並びに(4)神経組織が挙げられるが、これらに限定されない。組織試料の源は、新鮮な、凍結された及び/又は保存された臓器又は組織の試料、或いは新鮮な、凍結された及び/又は保存された生検又は吸引物、血液又は任意の血液成分、体液(例えば、脳脊髄液、羊水、腹水又は間質液)、或いは被検体の妊娠又は発生の任意の時点から得られる細胞であってもよい。幾つかの実施形態では、組織試料は、初代細胞又は初代細胞株、或いは培養細胞又は培養細胞株を含み得る。
【0026】
幾つかの実施形態では、生体試料は、健常組織試料又は疾患組織試料に由来する組織切片(例えば、直腸、乳房組織、前立腺に由来する組織切片)を含む。組織切片は、組織試料の一部又は一片、例えば、組織試料から切り出された組織又は細胞の一薄片を含み得る。幾つかの実施形態では、本明細書で開示される方法を、少なくとも2つの異なる標的に関して(形態レベル又は分子レベルで)組織試料の同じ切片を解析するのに使用し得るならば、組織試料の複数の切片を採取し、解析に供してもよい。幾つかの実施形態では、組織試料の同じ切片を、少なくとも4つの異なる標的に関して(形態レベル又は分子レベルで)解析してもよい。幾つかの実施形態では、組織試料の同じ切片を、4つよりも多い異なる標的に関して(形態レベル又は分子レベルで)解析してもよい。幾つかの実施形態では、組織試料の同じ切片を、形態レベルと分子レベルの両方で解析してもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「蛍光イメージング剤」という用語は、特定の波長の光に曝して励起した時に、異なる波長の光を放出する化学的化合物である蛍光団を指す。蛍光団は、その放出プロファイル、すなわち「色」の点から説明し得る。緑色蛍光団(例えばCy3、FITC及びオレゴングリーン)は、通常、515から540ナノメートルの範囲にある波長で蛍光団を放出することを特徴とし得る。赤色蛍光団(例えば、テキサスレッド、Cy5及びテトラメチルローダミン)は、通常、590から690ナノメートルの範囲にある波長で蛍光団を放出することを特徴とし得る。蛍光団の例としては、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナートスチルベン−2,2’ジスルホン酸、アクリジン、アクリジンの誘導体及びアクリジンイソチオシアネート、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、4−アミノ−N−[3−ビニルスルホニル]フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホネート(ルシファーイエローVS)、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミド、アントラニルアミド、ブリリアントイエロー、クマリン、クマリン誘導体、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−トリフルオロメチルクマリン(クマリン151)、シアノシン、4’6−ジアミニジド−2−フェニルインドール(DAPI)、5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド)、7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナートフェニル)−4−メチルクマリン、4,4’−ジイソチオシアナートジヒドロ−スチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4,4’−ジイソチオシアナートスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−1−スルホニルクロライド(DNS、ダンシルクロライド)、エオシン、エオシン誘導体(例えば、エオシンイソチオシアネート)、エリトロシン、エリトロシン誘導体(例えば、エリトロシンB及びエリトロシンイソチオシアネート)、エチジウム、フルオレセイン及び誘導体(例えば、5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’,7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、QFITC(XRITC)、フルオレスカミン誘導体(アミンと反応した時に蛍光性がある)、IR144、IR1446、マラカイトグリーンイソチオシアネート、4−メチルウンベリフェロン、オルトクレゾールフタレイン、ニトロチロシン、パラロザニリン、フェノールレッド、B−フィコエリトリン、o−フタルジアルデヒド誘導体(アミンと反応した時に蛍光性がある)、ピレン及び誘導体(例えば、ピレン、ピレンブチレート及びスクシニミジル1−ピレンブチレート)、リアクティブレッド4(シバクロン(登録商標)ブリリアントレッド3B−4)、ローダミン及び誘導体(例えば、6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、リザミンローダミンBスルホニルクロライド、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホローダミンB、スルホローダミン101及びスルホローダミン101のスルホニルクロライド誘導体(テキサスレッド)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リボフラビン、ロゾール酸及びランタニドキレート誘導体、量子ドット、シアニン、ピリリウム色素、並びにスクアラインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
追加でプローブを使用する用途のために、本明細書で使用する場合、「プローブ」という用語は、バインダー及び標識(例えば、シグナル発生物質又は酵素)を有する作用物質を指す。幾つかの実施形態では、バインダー及び標識(シグナル発生物質又は酵素)は、単一の実体となって具現化される。バインダー及び標識を、直接的に(例えば、バインダーに組み込まれた蛍光分子を介して)又は間接的に(例えば、切断部位を含み得るリンカーを介して)結合させ、1段階で生体試料に添加してもよい。代替の実施形態では、バインダー及び標識は、別個の実体(例えば、標的と結合することができる1次抗体と、1次抗体と結合することができる酵素又はシグナル発生物質で標識された2次抗体)となって具現化される。バインダー及び標識(シグナル発生物質又は酵素)が別々の実体である場合には、それらを、1段階又は複数段階で生体試料に添加してもよい。本明細書で使用する場合、「蛍光プローブ」という用語は、蛍光シグナル発生物質と結合したバインダーを有する作用物質を指す。
【0029】
生体材料を固体支持体に固定する必要がある用途のために、本明細書で使用される場合、「固体支持体」という用語は、生体試料中に存在する標的を固定化した後、本明細書で開示される方法で検出される物品を指す。標的は、物理的吸着によって、共有結合形成によって又はそれらの組合せによって固体支持体に固定化し得る。固体支持体には、ポリマー材料、ガラス材料又は金属材料が含まれ得る。固体支持体の例としては、膜、マイクロタイタープレート、ビーズ、濾紙、試験紙、スライド、カバースリップ及び試験管が挙げられる。生体材料を膜に付着させる実施形態では、膜材料は、ナイロン、ニトロセルロース及びポリビニリデンジフルオライドから選択し得るが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、固体支持体は、ポリスチレン、ポリカーボネート及びポリプロピレンから選択されるプラスチック表面を含み得る。
【0030】
本方法及びシステムは、分析物の検出、組織化学、免疫組織化学又は免疫蛍光などの、分析、診断又は予後診断用途での使用に適合させ得るが、これらに限定されない。幾つかの実施形態では、本方法及びシステムは、組織化学、免疫染色、免疫組織化学、免疫アッセイ又は免疫蛍光用途で特に応用できる。幾つかの実施形態では、本方法及びシステムは、免疫ブロッティング技術、例えば、ウェスタンブロット又は免疫アッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))で特に応用できる。
【0031】
画像取得例
本実施例では、DAPI、Cy3及びCy5で染色した生体材料の画像が取得されるが、限定的なものではない。これら3つの色素の中で、核のマーカーであるDAPIは、非常に高いシグナル対自己蛍光比(低AF)を有することが知られている。第1の段階において、DAPIに対応するフィルターキューブを用いた材料の画像を取得する。さらに、Cy3及びCy5に対応するフィルターキューブを用いた材料の第1組の画像も取得する。追加の色素を添加する前の、追加の色素に対応するフィルターキューブ画像を用いたこれらの追加の画像は、追加の色素を添加した後に撮影される画像(これは、後に追加の色素に対応する自己蛍光を示すことになる)に対する対照画像又は対照画像としての役割を果たす。さらに、DAPI、Cy3及びCy5との相互干渉が最小限のフィルターキューブを用いた追加の光学画像も取得する。この最小限の相互干渉のフィルターキューブは、シアン蛍光タンパク質(CFP)に対応する。このフィルターキューブは、自己蛍光のみの画像を取得する時に使用され、以下にさらに詳細に記載するように、画像の位置決めのためにのみ使用される。
【0032】
第1組の画像を取得した後、追加の色素を組織に添加する。その後、全てのフィルターキューブ(DAPI、CFP、Cy3及びCy5)を用いた第2組の画像を取得する。両方の取得におけるDAPI画像とCFP画像は本質的に同じであり、以下に記載される、2組の画像を整列させる変換を決定するのに使用される。以下に記載する段階を用いて一旦画像が位置決めされれば、第1の段階でCy3キューブ及びCy5キューブを通して取得された自己蛍光画像は、第2の段階で位置決めされたCy3画像及びCy5画像から除去される。
【0033】
画像の位置決めアルゴリズムは、通常、2つのカテゴリー、すなわち、強度ベースのアルゴリズムと特徴ベースのアルゴリズムに分類される。特徴抽出ベースのアルゴリズムは、典型的には、最初の画像分析とセグメンテーション段階を必要とする。病理学的画像については、例えば、核の位置、大きさ及び形状をDAPI染色画像から抽出することができる。その後、この情報を用いて、ポイントマッチングの手法を用いて画像を整列させることができる。上皮組織/バックグラウンド、間質組織/バックグラウンド及び腺/バックグラウンドの特徴も同様に、自己蛍光画像から抽出することができるが、これらの画像に一貫して特徴点を検出するのは概して難しい。
【0034】
この例の実施形態では、いかなる事前のセグメンテーション情報も必要としない強度ベースの位置決め法が用いられており、広範なクラスの色素に応用できる。
【0035】
静止画像と呼ばれる第1組の画像の合成画像を生成するために、CFPフィルターキューブを用いて取得されたDAPI画像と組織のAF画像を加える。このAF画像は、位置決めアルゴリズムの収束に極めて重要な大規模且つ包括的な情報を提供するが、DAPI画像は位置決めの精度に不可欠な微細構造を提供する。静止画像は、IF(xF,yF)で表される。この静止画像を用いて、第1の取得からの合成画像の参照座標系を定義する。動画像は、第2組の画像の合成画像である、IM(xM,yM)で表される。
【0036】
位置決めとは、静止画像の座標系上に動画像をマッピングする根本的変換パラメータの推定のことであり、このパラメータは、以下の費用関数Fを最小化する独立変数として得られる。
【0037】
【数1】

【0038】
式中、Tはパラメータθによる空間変換を表す。より具体的には、この実施形態では、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を使用する。変換及び回転は、組織スライドの誤配置の修正を試行し、拡大縮小は、わずかな焦点面の変化による収差を処理することができる。この変換は、以下の静止画像の座標系に動画像をマッピングする。
【0039】
【数2】

【0040】
幾何学的なレンズ収差が因数である場合、アフィン変換又は高次多項式変換などの、高次変換モデルが使用可能であるということに留意されたい。
【0041】
平均2乗誤差、相互相関、Kullback−Liebler距離、勾配差分距離関数及び相互情報量などの、しかしこれらに限定されない、費用関数Fとして使用可能な多数の尺度がある。マルチモダリティーによる画像の位置決めにおいてロバスト性が実証されているため、相互情報量(MI)の負数を、この実施例で費用関数として使用する。MIは、以下の式で定義される。
【0042】
【数3】

【0043】
式中、Hは、画像のエントロピーを表す。ここでは、この一次方程式で定義される最小化プロセスを容易にするために、MIの正負が反転されている。
【0044】
この例の実施形態で静止画像と呼ばれる第1組の画像を、この例の実施形態で動画像と呼ばれる第2組の画像とともに位置決めした後で、固有の組織自己蛍光を除去する。この例では、イメージングプロセスをモデル化し、ロバスト推定法を用いて、モデルパラメータを推定する。
【0045】
前述のように、2段階の取得によって、2つの画像、すなわち、1つのAFのみの画像と、1つのAF+色素シグナル画像とが得られる。この例では、ロバストな回帰法を用いて、色素シグナル画像を計算する。第1の段階で取得されるAFの画像をF(x,y)と表し、第2の取得画像(シグナル+AF)をS(x,y)と表す。これらの2つの画像は以下の関係式で関連付けられる。
【0046】
【数4】

【0047】
式中、D(x,y)は、未知の色素画像であり、αは相対ゲイン定数であり、βは相対オフ組である。これらの画像を正規化して暗電流をサブトラクトする場合、βはゼロとすることができる。露光時間が既知であり、励起光強度が2度の取得の間で変化していない場合、αは、2度の取得の間の露光時間の比とすることができる。光学系におけるスペクトル漏れと反射が原因で、観察される画像が、概して、露光時間の関数であるオフ組成分を有するということに留意されたい。通常、第1の取得と第2の取得の間の露光時間は異なるので、未知の項D(x,y)を組み込むるのではなく、独立の項として相対オフ組をモデル化し得る。相対オフ組項を明確にパラメータ化することによって、D(x,y)に対する非負制約を与えることができ、それに応じて費用関数を適合させることができる。
【0048】
統計的脱相関、主成分分析、独立成分分析(ICA)及び非負ICAなどの、様々な源分離法が知られているが、これらの方法は全て、それらができる限り無相関である(PCA)か又はできる限り独立である(ICA)ように、F(x,y)とS(x,y)を新しい座標系に変換する座標変換行列を推定する。しかしながら、F(x,y)とS(x,y)の接合分布をよく見ると、完全に無相関の成分又は完全に独立した成分を得ることができるような変換がないことが分かる。例えば、図1aは、同じTMA上の複数の画像から計算される接合分布を示している。線より上の面積は発現を示し、線それ自体は自己蛍光を示す。分布が、2つのクラスター、すなわち、両方の画像上でAFとなる画素に対応する1つのクラスターと、一方の画像上ではシグナル画像となり、他方の画像上ではAFとなるクラスターによって形成されることに留意されたい。これら2つのクラスターは直交せず、互いに対する割合は、組織によって変わり得るので、PCAタイプの方法とICAタイプの方法は、一般に、不十分である。変換が直交することを要求しない方法は、非負行列因子分解(NMF)である。しかしながら、この方法は、一般に、極小になりやすく、優れた性能は、通常、過制約系によってのみ達成することができる。代わりに、本発明の好ましい方法及びシステムでは、未知の変換パラメータ(α,β)及び未知の信号(D(x,y))を解くために、ロバストな回帰法が使用される。
【0049】
未知の定数は、D(x,y)を外れ値として処理し、以下のロバストな費用関数を解くことによって推定される。
【0050】
【数5】

【0051】
式中、ρは以下の式(6)のように定義される、フーバーのロバストな費用関数[34,35]である。
【0052】
【数6】

【0053】
ρは、従来の対称フーバー費用関数とわずかに異なる[34]ということに留意されたい。これは、r≦|k|ではなく、r≦kについての簡単な最小二乗費用関数である。D(x,y)は非負関数であるので、期待される線形形式よりも顕著に小さい負の外れ値はない。この片側非対称費用関数は、より多くの費用を負のD(x,y)に付加するが、これは、所望の解にバイアスを掛けることによってアルゴリズムを収束させることに不可欠である。式(6)は、反復加重最小二乗(IRLS)で解くことができる。
【0054】
【数7】

【0055】
次いで、IRLS解法を以下の式を反復することによって実行する。
【0056】
【数8】

【0057】
図1aは、同じTMA上の全ての画像についてのS(x,y)対F(x,y)を示している。接合分布が2つのクラスターから構成されることに留意されたい。1つは、両方の画像上の対応するAFによって形成されるもの、1つは、AFと色素シグナルによって形成されるものである。図1aに示す線は、接合分布の下限に線を合わせることによって推定される、(α,β)についての初期推定値を示す。Let(fi,si)は、全てのfi=F(x,y)について、式(11)が成立するような、第1の画像と第2の画像に関する強度値である。
【0058】
【数9】

【0059】
式中、Rは(ダイナミックレンジ)/256に設定される。その後、以下の最小化による最小二乗回帰によって、初期パラメータ値を推定することができる。
【0060】
【数10】

【0061】
式(6)及び(8)におけるスケール係数kは、まずメジアン絶対偏差(MAD)によって局所標準偏差を求め、
【0062】
【数11】

【0063】
次いで、全ての局所MAD推定値のメジアンを取ることによって推定される。
【0064】
【数12】

【0065】
上記の式はいずれも、外れ値に対してロバストであることがよく知られている。
【0066】
図1aは、同じTMA画像上の全ての画像から計算されたF(x,y)とS(x,y)の接合分布を示している。図1a上の線は、式(12)を用いて計算された初期モデルパラメータを示している。初期パラメータ値から始めて、式(9)と(10)は、TMA上の各々の個々の画像についてのパラメータ推定値を精緻化する。この精緻化によって、異なる組織間、特に、正常組織と転移組織間の又は発現しているマーカーと発現していないマーカー間のわずかな組織変動とAF変動を処理することができる。図1bは、図2に示された画像(右の欄)についての接合分布と最終的な線形パラメータを示している。
【実施例】
【0067】
本実施例では、乳房組織のTMAがDAPI、Cy3及びCy5で染色された。DAPIは、DNAに結合する核マーカーである。画像の位置決めのため、且つ核関連タンパク質の発現の割合を定量するために、DAPIを本実施例で使用した。Cy3は、抗汎カドヘリン抗体と直接結合させ(カドヘリンは膜タンパク質である)、Cy5は、抗エストロゲン受容体(ER)抗体と直接結合させる。患者がER+であるかER−であるかによって、ERは、発現している場合も発現していない場合もある。本実施例において、ERの発現は、抗エストロゲン治療(タモキシフェンやその他)又は化学療法に対する応答性と相関し、よく分化した腫瘍と関連する。本実施例では、ER発現が、AFと、特に、明るい構造体として表れる血液細胞又は脂肪と、区別されるが、それは、ER発現が実際の発現と容易に混同されるおそれがあるからである。図2(右の欄)は、第1段階のCy5チャンネルの画像(上)、第2段階のCy5チャンネルの画像(中央)及び補正画像(下)を示している。矢印は、AFが高い領域を示しているが、これは、血液細胞又は脂肪が原因である可能性がある。ER発現を維持しながら、AFが除去されている。図2(左の欄)は、Cy3チャンネルの画像を示している。矢印は、取り除かれた、AFが高い構造体を示している。AFが高い構造体を除去するのに加えて、AFの低い構造体も同様に減少させている。
【0068】
本方法は、シグナルを維持しながら、AFを低下させる。従って、シグナル対AF比は増大する。脂肪及び血液細胞などのAFが高い構造体もうまく除去するが、これは特異的なタンパク質発現を非特異的な発現と区別するために極めて重要である。これらの構造体を除去することによって、正確な自動タンパク質発現も可能になる。
【0069】
本方法を実行するための自動システム10(図3)は、通常、1種以上の生体材料の1以上の画像を少なくとも一時的に保存するための保存装置12と、シアン蛍光タンパク質及び/又は高いシグナル対自己蛍光比を有する1種以上の対照色素の存在を示す生体材料の対照画像を解析するように構成されたプロセッサ14と、シアン蛍光タンパク質及び/又は対照色素に対応する1以上のフィルター並びに1種以上の追加の色素に対応する1以上のフィルターと、対照フィルター及び1種以上の追加の色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第1組の1以上の画像を取得するように構成され、生体材料の第2組の1以上の画像を取得するようにさらに構成され、生体材料が、対照フィルター及び1種以上の追加の色素に対応するフィルターと組合せて、1種以上の追加の色素の存在をさらに示す、デジタルイメージング装置とを含み、第2組の画像は、対照フィルター及び追加の色素に対応するフィルターの各々を用いた生体材料の別々の画像を含む。
【0070】
処理装置14は、対照画像を位置合わせした後、対照画像に伴う自己蛍光を1以上の画像から除去するようにさらに構成される。
【0071】
保存装置は、プロセッサと関連する任意の好適なハードドライブメモリ(例えば、CPU(中央処理装置)のROM(読み出し専用メモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)又はDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ))、或いは任意の好適なディスクドライブメモリ装置(例えば、DVD又はCD)、或いはzipドライブ又はメモリカードを含み得るが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。保存装置は、プロセッサ又は画像ディスプレイ手段から遠隔設置されてもよく、さらに、保存装置には、任意の好適な接続装置又は通信ネットワークを通じてアクセスしてもよい。通信ネットワークには、ローカルエリアネットワーク、ケーブルネットワーク、衛生ネットワーク及びインターネットが含まれるが、これらに限定されるものではなく、これらは、有線若しくは無線を問わない。プロセッサ又はCPUは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ及びデジタル信号プロセッサ(DSP)を含んでもよい。
【0072】
保存装置12及びプロセッサ14は、1つのシステム内でTMAを染色及び画像化し、さらに、限定されないが診断用途などの任意の数の用途のために画像を分析する自動ハイスループットシステムなどの分析装置の構成要素として導入してもよい。1以上のこれらの段階が1つのシステムに構成されてもよく又は1以上の自立システムとなって具体化されてもよい。システム10は、1以上の画像ディスプレイ手段16、双方向性ビューア18、バーチャル顕微鏡20、及び/又は通信ネットワーク24を経由して1以上の画像、任意の関連情報又は分析情報を1以上のリモートロケーション26に送信する手段22をさらに含んでもよい。
【0073】
ディスプレイ手段16は、LCD又はCRTを組み込んだ装置などの、しかしこれらに限定されない、デジタル画像のディスプレイが可能な任意の好適な装置を含み得る。通信手段22は、有線又は無線のデジタル通信システムを含むが、これらに限定されない、通信ネットワークを経由してデジタル情報を送信する任意の好適な手段を含み得る。このシステムはさらに、1種以上の染色剤を添加する自動装置28と、励起源32を含み且つTMAのデジタル画像の記録が可能なイメージング顕微鏡などの、しかしこれに限定されない、デジタルイメージング装置30とを含み得る。このようなイメージング装置は、自動焦点合わせをした後、処理の間、必要に応じて焦点特徴を維持し、トラッキングすることができることが好ましい。
【0074】
これらの方法及びシステムは、任意の具体的なイメージング剤、形態学的色素、バイオマーカー又はプローブに限定されるものではない。デジタルで画像化し、処理することができるように生体材料の幾つかの情報態様又は情報特徴を実際に又は人工的に可視化することができる蛍光色素又は非蛍光色素或いは蛍光イメージング剤又は非蛍光イメージング剤は、いずれも好適であろう。好適な色素及びイメージング剤には、細胞学的色素又は形態学的色素、免疫学的色素(例えば、免疫組織化学的色素及び免疫細胞化学的色素)、細胞遺伝学的色素、インサイチュハイブリダイゼーション色素、細胞化学的色素、DNA及び染色体のマーカー、並びに基質結合アッセイ色素が含まれるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0075】
本明細書では、本発明の特定の特徴のみが例説され、記載されているが、多くの修正及び変更が当業者に想到されるであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神の範囲内に含まれるような修正及び変更を全て包含する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料に付随する固有の自己蛍光を除去するための方法であって、
a)生体材料の第1の対照画像を取得する段階と、
b)1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターを用いた生体材料の第1組の1以上の画像を取得する段階と、
c)前記1種以上の情報色素を生体材料に添加し、次いで前記情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像と生体材料の第2の対照画像とを含む第2組の1以上の画像を取得する段階と、
d)前記第1の対照画像と第2の対照画像を位置合わせする段階と、
e)次いで段階c)で取得した画像にみられる固有の自己蛍光を除去する段階と
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の対照画像と第2の対照画像が、シアン蛍光タンパク質に対応するフィルターを用いて取得される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階a)が、高いシグナル対自己蛍光比を有する対照色素を生体材料に添加する段階をさらに含み、前記第1の対照画像と第2の対照画像が、前記対照色素に対応するフィルターを用いて取得される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
段階a)で添加される色素がUVスペクトルに対応する色素を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記UVスペクトルに対応する段階a)で添加される色素がDAPIである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
段階a)で添加される色素がIRスペクトルに対応する色素を含む、請求項3記載の方法。
【請求項7】
生体材料の第1の対照画像と第2の対照画像が、シアン蛍光タンパク質に対応するフィルターを用いて取得され、
前記第1の対照画像が座標系を有する静止画像であり、前記第2の対照画像が座標系を有する動画像であり、1以上の根本的変換パラメータを推定し、前記静止画像の座標系の上に前記動画像をマッピングすることによって、前記対照画像が少なくとも部分的に位置合わせされて、座標系を有する合成画像を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
段階a)が高いシグナル対自己蛍光比を有する対照色素を生体材料に添加する段階をさらに含み、
前記第1の対照画像及び第2の対照画像が、前記対照色素に対応するフィルターを用いて取得され、
前記第1の対照画像が座標系を有する静止画像であり、前記第2の対照画像が座標系を有する動画像であり、前記対照画像が、1以上の根本的変換パラメータを推定し、前記静止画像の座標系の上に前記動画像をマッピングすることによって、少なくとも部分的に位置合わせされて、座標系を有する合成画像を形成する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記対照画像が、変換、回転及び拡大縮小からなる群から選択される1以上の変換パラメータを用いる相似変換を用いて少なくとも部分的に位置合わせされる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記対照画像が、次式に従って1以上の根本的変換パラメータを推定し、静止画像の座標系の上に動画像をマッピングすることによって位置合わせされる、請求項1記載の方法。
【数1】

(式中、Fは費用関数であり、Tはパラメータθによる空間変換を表す。)。
【請求項11】
生体材料に伴う固有の自己蛍光を除去するためのシステムであって、
a)高いシグナル対自己蛍光比を有する1種以上の対照色素の存在を示す生体材料の対照画像を解析するように構成された処理装置と、
b)前記対照色素に対応する1以上のフィルター及び1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターと、
c)前記対照色素及び前記1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第1組の1以上の画像を取得するように構成され、前記対照色素及び前記1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第2組の1以上の画像を取得するようにさらに構成され、生体材料が1種以上の情報色素の存在をさらに示す、デジタルイメージング装置とを含み、
前記第2組の画像が、前記対照色素と前記1種以上の情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像を含み、
前記処理装置が前記対照画像を位置合わせした後、1種以上の情報色素の存在を示す画像から前記固有の自己蛍光を除去するようにさらに構成される、システム。
【請求項12】
前記対照色素のうちの少なくとも1つが前記UVスペクトルに対応する、請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記UVスペクトルに対応する色素のうちの少なくとも1つがDAPIである、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記対照色素のうちの少なくとも1つが前記IRスペクトルに対応する、請求項11記載のシステム。
【請求項15】
前記デジタルイメージング装置が、シアン蛍光タンパク質に対応する対照フィルターを用いて生体材料の対照画像を取得するように構成され、
前記プロセッサが、1以上の根本的変換パラメータを推定し、画像の座標系をマッピングすることによって前記対照画像の位置合わせをするように構成される、請求項11記載のシステム。
【請求項16】
前記対照画像が、強度ベースのパラメータ又は特徴ベースのパラメータを用いて位置合わせされる、請求項11記載のシステム。
【請求項17】
前記対照画像が、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を用いて、少なくとも部分的に位置合わせされる、請求項11記載のシステム。
【請求項18】
前記対照画像が、次式に従って1以上の根本的変換パラメータを推定し、静止画像の座標系の上に動画像をマッピングすることによって位置合わせされる、請求項11記載のシステム。
【数2】

(式中、Fは費用関数であり、Tはパラメータθによる空間変換を表す。)。
【請求項19】
生体材料に伴う固有の自己蛍光を除去するためのシステムであって、
a)高いシグナル対自己蛍光比を有するシアン蛍光タンパク質に対応する対照フィルターを用いて撮影された生体材料の対照画像を解析するように構成された処理装置と、
b)1種以上の情報色素に対応する1以上のフィルターと、
c)前記対照フィルター及び前記1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第1組の1以上の画像を取得するように構成され、前記対照フィルターと前記1種以上の情報色素に対応するフィルターと組合せて、生体材料の第2組の1以上の画像を取得するようにさらに構成され、生体材料が1種以上の前記情報色素の存在をさらに示す、デジタルイメージング装置とを含み、
前記第2組の画像が、前記対照フィルター及び前記1種以上の情報色素に対応する各々のフィルターを用いた生体材料の別々の画像を含み、
前記処理装置が、前記対照画像を位置合わせした後、1種以上の情報色素の存在を示す画像から前記固有の自己蛍光を除去するようにさらに構成される、システム。
【請求項20】
前記対照画像が、強度ベースのパラメータ又は特徴ベースのパラメータを用いて位置合わせされる、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記対照画像が、変換、回転及び拡大縮小を組み込んだ相似変換を用いて、少なくとも部分的に位置合わせされる、請求項19記載のシステム。
【請求項22】
前記対照画像が、次式に従って1以上の根本的変換パラメータを推定し、静止画像の座標系の上に動画像をマッピングすることによって位置合わせされる、請求項19記載のシステム。
【数3】

(式中、Fは費用関数であり、Tはパラメータθによる空間変換を表す。)。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−505004(P2011−505004A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535365(P2010−535365)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066189
【国際公開番号】WO2009/068546
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】