説明

画像を用いた環境センシング装置及び方法

【課題】環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、より簡便に環境の状態を数値化した状態で測定できるようにする。
【解決手段】環境の状態により色が変化するセンサ素子101と、複数の色標本を備える比色表102と、センサ素子101及び比色表102を同時に撮像するカラー撮像部103と、撮像された画像データを処理して画像状態を算出する画像データ処理部104と、算出された比色表102の画像状態をもとに検量線データを作成する検量線データ作成部105と、算出されたセンサ素子101の画像状態と作成された検量線データとにより、センサ素子101の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出する測定値算出部106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境により色が変化するセンサ素子を撮像した画像データを用いて環境の状態を測定する画像を用いた環境センシング装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、LiveE!(非特許文献1参照)などを例として、様々な環境センシングネットワークシステムが構築されている。これらの環境センシングネットワークシステムでは、一般的に温度センサ,湿度センサ、風向・風速センサなどの環境の状態を測定できるセンサを用い、例えば温度センサより出力される各温度に対応した電圧を、センサステーションやセンサハブ,データロガーなどに入力してアナログデジタル変換し、変換したデジタル値を専用回線,無線LAN,携帯回線網などを経由してデータ収集装置で収集し、設置位置(緯度、経度)などの情報と共に処理を行い、環境マップなどに対応させて情報を提供している。温度センサを用いた例としてはNECのヒートアイランド研究(非特許文献2参照)などがある。また環境省のそらまめ君(非特許文献3参照)では、大気汚染物質を分析する大型分析装置からの値を専用回線を通じて収集し、環境マップや濃度変化グラフなどを作成し、随時ホームページを通じて日本の大気環境状態をリアルタイムで確認可能としている。
【0003】
これらの環境センシングシステムに共通することは、端末のセンサにおいて目的物質の濃度量などを電圧などに変換するなど電子的な計測が行われ、得られた値がデータ収集装置に送信されていることである。これら方法を用いると、少ない送信データ量で送信が可能であるが、センサの出力とセンサステーションやセンサハブ,データロガー間のインタフェースを定める必要があり、また、出力形式やインタフェースの違いなどにより温度センサを湿度センサに交換するなどが容易ではない。また、各々のセンサに電力を供給する必要があり、この供給する電圧が異なる場合があり、また、センサの測定間隔を規定する必要があるなど様々の規格を設定する必要がある。
【0004】
一方、特定のガス,温度,湿度,及び紫外線照射量など環境の状態に応じて色が変化する検知紙や検知シールなどが、数多く研究開発されている。例えば、室内のホルムアルデヒドを検出して色が変化する試験紙(関東化学株式会社製ホルムアルデヒドテストストリップ、非特許文献4参照)が市販されている。また、自動車の排ガスの粉じんを、測定可能とした測定道具も市販されている(合同出版株式会社製「空気の汚れチェッカー」非特許文献5参照)。また、様々なpH試験紙も市販されている(アドバンテック東洋株式会社製,非特許文献6参照)。さらに、紫外線を検出するUV(紫外線)ラベルも市販されている(日油技研工業株式会社製、非特許文献7参照)。
【0005】
これらは、色標本(比色表)との比較により目視で環境状態の物理量のおおよその値を読み取るものである。これによると、簡便に環境の状態を測定することが可能となるが、前述したようなネットワークシステムなどに適用する場合、得られた測定結果を数値化し、また電子化する必要がある。また、目視による読み取りでは、個人差などにより検出の精度に限界があり、高い精度の測定は容易ではない。これらを解消するためには、吸光光度計などの比色計を用いて検知紙の色の変化を計測して数値化すればよいが、大がかりな装置を必要とするため、測定の簡便さが失われ、より多くの測定箇所を設定するなどのことが容易ではない。
【0006】
【非特許文献1】http://www.live−e.org/
【非特許文献2】http://www.it−eco.net/everywhere/02_special03_h.html
【非特許文献3】http://w−soramame.nies.go.jp/Index.php
【非特許文献4】http://www.kanto.co.jp/siyaku/hcho/index.htm
【非特許文献5】http://www.godo−shuppan.co.jp/t03_main.html
【非特許文献6】http://www.advantec.co.jp/japanese/hinran/tanpin/phpaper.html
【非特許文献7】http://www.nichigi.com/samo/products/uv.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に説明したように、環境の状態をネットワークを利用して提供するサービスなどを実現する環境センシングシステムでは、センサが複雑に構成されているため、様々なセンサを切り替えて用いることが容易ではないなど、センサとのインタフェースの規格化が容易ではないという問題があった。
【0008】
一方、簡単な構成で簡便な測定を可能とする前述した検知紙や検知シールなどの検知素子は、環境の状態を簡便に測定することが可能ではあるが、従来では、測定の結果を簡便に数値化することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、より簡便に環境の状態を数値化した状態で測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像を用いた環境センシング装置は、センサ素子及びこのセンサ素子に対応した比色表を同時に撮像するカラー撮像手段と、カラー撮像手段が撮像して得られたカラー画像データを処理してセンサ素子の画像状態及び比色表が備える複数の色標本の画像状態を算出する画像データ処理手段と、画像データ処理手段が算出した複数の色標本の画像状態をもとに検量線データを作成する検量線データ作成手段と、画像データ処理手段が算出したセンサ素子の画像状態と検量線データ作成手段が作成した検量線データとにより、センサ素子の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出する測定値算出手段とを備え、センサ素子は、環境の状態により色が変化するものであり、比色表は、異なる既知の環境の状態によるセンサ素子の色の状態を示す複数の色標本を備えるものであり、検量線データは、複数の色標本の画像状態と色標本に対応する既知の環境の状態との関係を示すものである。
【0011】
上記画像を用いた環境センシング装置において、比色表は、3つ以上の色標本を備えるものであればよい。また、センサ素子は、環境の状態として、温度,湿度,オゾン濃度,窒素酸化物濃度,硫黄酸化物濃度,ホルムアルデヒド濃度,水素イオン濃度,及び紫外線照射量のいずれかにより色が変化するものである。なお、カラー撮像手段が撮像して得られたカラー画像を通信網を介して画像データ処理手段に送信する送信手段を備えるようにしてもよい。
【0012】
また、本発明に係る画像を用いた環境センシング装置方法は、環境の状態により色が変化するセンサ素子及び異なる既知の環境の状態によるセンサ素子の色の状態を示す複数の色標本を備える色標本とを同時に撮像してカラー画像データを得る第1ステップと、撮像して得られたカラー画像データを処理してセンサ素子の画像状態及び比色表が備える複数の色標本の画像状態を算出する第2ステップと、算出した複数の色標本の画像状態をもとに、複数の色標本の画像状態と色標本に対応する既知の環境の状態との関係を示す検量線データを作成する第3ステップと、算出したセンサ素子の画像状態と作成した検量線データとにより、センサ素子の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出する第4ステップとを備えるものである。
【0013】
上記画像を用いた環境センシング方法において、比色表は、3つ以上の色標本を備えるものであればよい。また、センサ素子は、環境の状態として、温度,湿度,オゾン濃度,窒素酸化物濃度,硫黄酸化物濃度,ホルムアルデヒド濃度,水素イオン濃度,及び紫外線照射量のいずれかにより色が変化するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明では、撮像して得られたカラー画像データを処理してセンサ素子の画像状態及び比色表が備える複数の色標本の画像状態を算出し、算出した複数の色標本の画像状態をもとに、複数の色標本の画像状態と色標本に対応する既知の環境の状態との関係を示す検量線データを作成し、算出したセンサ素子の画像状態と作成した検量線データとにより、センサ素子の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出するようにした。この結果、本発明によれば、環境の状態に応じて色が変化する検知紙などのセンサ素子を利用して、より簡便に環境の状態を数値化した状態で測定できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0016】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態における画像を用いた環境センシング方法が実施される環境センシング装置の構成を示す構成図である。この装置は、まず、環境の状態により色が変化するセンサ素子101と、異なる既知の環境の状態によるセンサ素子101の色の状態を示す複数の色標本を備える比色表102と、センサ素子101及び比色表102を同時に撮像するカラー撮像部103とを備える。また、本装置は、カラー撮像部103が撮像した画像データを処理して画像状態を算出する画像データ処理部104と、画像データ処理部104が生成(算出)した比色表102の画像状態(色標本画像状態)をもとに検量線データを作成する検量線データ作成部105とを備える。また、本装置は、画像データ処理部104が算出したセンサ素子101の画像状態(センサ素子画像状態)と検量線データ作成部105が作成した検量線データとにより、センサ素子101の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出する測定値算出部106を備える。
【0017】
センサ素子101は、例えば、繊維より構成された担体に、オゾンガスと反応して色が変化する色素を含んだ検知成分及び保湿剤が担持されたオゾン検知素子(NTTアドバンステクノロジ株式会社製オゾン検知紙「オゾン見太郎」)である。この場合、センサ素子101は、環境の状態としてオゾンにより色が変化し、オゾンの濃度により異なる色の変化を示す。このセンサ素子101に対応する比色表102は、異なるオゾンの濃度に各々対応したセンサ素子101の複数の色標本を備えたものである(例えばNTTアドバンステクノロジ株式会社製「オゾン見太郎用カラーチャート)。比色表102は、例えば図1(b)に示すように、円形の板状の紙から構成されて、4等分された扇形の各領域にオゾン濃度640ppb・hourに対応した色標本121,オゾン濃度480ppb・hourに対応した色標本122,オゾン濃度240ppb・hourに対応した色標本123,及びオゾン濃度0ppb・hourに対応した色標本124を備えるものである。
【0018】
カラー撮像部103は、例えば、多色光学フィルターによりカラー化を実現した固体撮像素子を備え、撮像によりカラー画像データを生成するデジタルスチルカメラである。カラー撮像部103は、対象物を撮像することにより、対象物のカラー画像データを生成して出力する。例えば、カラー撮像部103は、センサ素子101と比色表102とを対象物として撮像してカラー画像データを得る。
【0019】
画像データ処理部104は、カラー撮像部103が撮像したカラー画像データを処理し、この画像データのなかの複数の色標本の部分より各々の色標本画像状態を算出し、また、画像データのなかのセンサ素子101の部分よりセンサ素子画像状態を算出する。例えば、画像データ処理部104は、画像状態として、各部分より所定の画素数(例えば6000画素)分の領域を取り出し、取り出した各領域の各々の画素の値の平均値を求める。画素の値は、例えば、赤成分(Rチャンネル),緑成分(Gチャンネル),及び青成分(Bチャンネル)毎の輝度値であり、画像データ処理部104は、取り出した各領域において、複数の画素の赤成分,緑成分,及び青成分毎に、輝度値の平均値を算出する。なお、取り出す領域は、例えば使用者の指示操作により設定すればよい。
【0020】
例えば、図1(c)に示すように、比色表102の中央にセンサ素子101が配置された状態を、カラー撮像部103により撮像して得られた画像データのなかより、色標本121の部分,色標本122の部分,色標本123の部分,色標本124の部分,及びセンサ素子101の部分において、6000画素分の領域を取り出す。画像データ処理部104は、取り出した各領域において、上述したように画素の値の平均値を求める。
【0021】
例えば、室内蛍光灯下で撮像した場合、色標本121の部分より、赤成分の平均輝度値「62」,緑成分の平均輝度値「123」,及び青成分の平均輝度値「184」を得る。また、色標本122の部分より、赤成分の平均輝度値「91」,緑成分の平均輝度値「137」,及び青成分の平均輝度値「184」を得る。また、色標本123の部分より、赤成分の平均輝度値「119」,緑成分の平均輝度値「150」,及び青成分の平均輝度値「184」を得る。また、色標本124の部分より、赤成分の平均輝度値「143」,緑成分の平均輝度値「157」,及び青成分の平均輝度値「184」を得る。また、初期状態のセンサ素子101の場合、センサ素子101の部分より、赤成分の平均輝度値「143」,緑成分の平均輝度値「157」,及び青成分の平均輝度値「184」を得る。
【0022】
このように、画像データ処理部104により各色標本の部分より色標本画像状態が算出されると、検量線データ作成部105は、得られた複数の色標本画像状態より、色標本画像状態と色標本に対応している濃度との関係を示す検量線データを作成する。例えば、各色標本に対応しているオゾン濃度と上述した各平均輝度値とにより、図2に示すような検量線に対応する検量線データを作成する。図2において、黒丸が赤成分より得られた検量線を示し、黒四角が緑成分より得られた検量線データを示し、黒三角が青成分より得られた検量線データを示している。図2に示すように、蛍光灯下で撮像した場合、比色表102におけるオゾン濃度と各平均輝度値の関係は、ほぼ直線的な状態となった。
【0023】
測定値算出部106は、上述したように、画像データ処理部104により求められたセンサ素子画像状態と、検量線データ作成部105が作成した検量線データとを比較することで、センサ素子101の色に対応するオゾン濃度(オゾン検出濃度)を算出する。ここで、赤成分,緑成分,及び青成分毎に検量線データが得られている場合、測定値算出部106は、最も変化が大きい赤成分から得られた検量線データと、センサ素子101の部分から得られた領域内の赤成分の輝度値の平均値とを比較する。なお、使用者の操作指示により、測定値算出部106が用いる検量線データは、変更可能である。
【0024】
以下、本装置を用いた環境センシング方法について簡単に説明すると、例えば、オゾンの検出を行っていない初期のセンサ素子101と比色表102とをカラー撮像部103で撮像すると(第1ステップ)、これにより得られたカラー画像データより、画像データ処理部104が、各部分から、色標本画像状態及びセンサ素子画像状態を算出する(第2ステップ)。次に、算出された色標本画像状態より、検量線データ作成部105が、検量線データを作成する(第3ステップ)。この後、測定値算出部106が、作成された検量線データとセンサ素子画像状態とを比較し、初期状態における算出されるオゾン濃度(初期算出値)を求める(第4ステップ)。
【0025】
次に、オゾンの検出を行った後のセンサ素子101と比色表102とをカラー撮像部103で撮像し(第1ステップ)、これにより得られたカラー画像データより、画像データ処理部104が、センサ素子101の部分からセンサ素子画像状態を算出する(第2ステップ)。次に、測定値算出部106が、算出されたセンサ素子画像状態と、作成されている検量線データとを比較し、検出後における算出されるオゾン濃度(検出後算出値)を求める(第4ステップ)。この後、測定値算出部106が、検出後算出値より初期算出値を減ずることで、オゾン濃度の測定値を求める。
【0026】
なお、検量線データは、オゾンの検出を行った後に求めるようにしても良い。また、用いるセンサ素子101が、既に少量のオゾンに曝されている場合などは、上述したように初期算出値を求めておき、これを減ずることで、より正確な測定結果が得られる。従って、用いるセンサ素子101が全くオゾンに曝されていなく、色標本121と色が一致している場合は、初期算出値を求める必要はない。
【0027】
例えば、センサ素子101をオゾン濃度100ppbの環境に2時間曝した後、蛍光灯下でセンサ素子101と比色表102とをカラー撮像部103で撮像する。この撮像により得られたカラー画像データより画像データ処理部104が算出した色標本画像状態から作成された赤成分の検量線データ(図2)と、センサ素子画像状態(赤成分の輝度値の平均値)とを比較した結果、オゾン濃度として230ppb・hourが算出された。算出された値と実際の濃度との差は、30ppb・hourであった。緑成分の検量線データ(図2)を用いた場合も、同様の結果となった。
【0028】
ここで、比色表102を用いた目視による測定(判断)では、センサ素子101の色は、比色表102の色標本124と色標本123との間の色とされ、得られる測定結果は、240ppb・hour以下となる。これに対し、上述した本実施の形態による画像を用いた環境センシング装置によれば、より正確な測定結果が得られる。また、本装置は、分光光度計や濃度計などの大がかりな測定器を用いる場合に比較して、より簡便な構成である。
【0029】
[実施の形態2]
次に、屋外の日陰で撮像した場合について説明する。まず、センサ素子101をオゾン濃度100ppbの環境に3時間曝した後、図1(c)に示すように比色表102の中央にセンサ素子101が配置された状態を、屋外の日陰でカラー撮像部103により撮像する。このことにより得られたカラー画像データから、画像データ処理部104が、各色標本の部分(10000画素分)より色標本画像状態を算出する。画像データ処理部104が、各色標本の部分より色標本画像状態を算出すると、検量線データ作成部105は、図3に示すように、色標本画像状態と色標本に対応している濃度との関係を示す検量線データを作成する。図3において、黒丸が赤成分より得られた検量線を示し、黒四角が緑成分より得られた検量線データを示し、黒三角が青成分より得られた検量線データを示している。
【0030】
次に、この撮像により得られたカラー画像データより画像データ処理部104が算出したセンサ素子画像状態(赤成分の輝度値の平均値)と図3に示す赤成分の検量線データとを比較した結果、オゾン濃度として330ppb・hourが算出された。算出された値と実際の濃度との差は、30ppb・hourであった。緑成分及び青成分の検量線データ(図3)を用いた場合も、同様の結果となった。
【0031】
ここで、図3に示すように、屋外の日陰で撮像した場合、比色表102におけるオゾン濃度と各平均輝度値の関係は、直線的な状態とはならない。このように、カラー撮像部103による撮像時の光源の状態が異なると、画像状態が異なる。しかしながら、本方法によれば、センサ素子101と比色表102とを同時に撮像して得られた画像データを用いるため、測定毎に光源の状態が異なっても、正確な測定結果が得られる。ただし、図3の一点鎖線で示すように、オゾン濃度0ppb・hourに対応した色標本124とオゾン濃度640ppb・hourに対応した色標本121とより得られる2つの画像状態から得られる検量線では、実際の状態を反映していない場合が発生する。従って、様々な光源の状態に対応させるためには、2段階より多い数(3つ以上)の色標本を備えた比色表を用いた方がよい。
【0032】
[実施の形態3]
次に、本発明に係る第3の実施の形態について説明する。上述では、カラー撮像部103で撮像したカラー画像データが、これに接続する画像データ処理部104で処理されるようにしたがこれに限るものではない。例えば、図4のシステムに示すように、カラー撮像部103で撮像したカラー画像データを、これに接続された送信部407により通信網408を介して受信部409に送信し、受信部409で受信されたカラー画像データを、受信部409に接続された画像データ処理部104で処理するようにしても良い。なお、図4において、他は図1と同様である。
【0033】
例えば、所謂カメラ付き携帯電話機を用い、カメラ付き携帯電話機でセンサ素子101と比色表102とを同時に撮影し、これにより得られたカラー画像を、インターネットを介してインターネットに接続されたコンピュータ機器に転送し、転送されたカラー画像を前述同様に処理することで、オゾン濃度の測定値を求める。この場合、カメラ付き携帯電話機が、カラー撮像部103と送信部407とに対応し、受信部409,画像データ処理部104,検量線データ作成部105,及び測定値算出部106が、コンピュータ機器に対応する。
【0034】
このように、カメラ付き携帯電話機を用いて撮像したカラー画像データを用いた場合、例えば、センサ素子101をオゾン濃度100ppbの環境に2時間曝した後、蛍光灯下でセンサ素子101と比色表102とを撮像し、この撮像により得られたカラー画像データより前述同様に検量線データを作成すると、図2の場合と同様に、比色表102におけるオゾン濃度と各平均輝度値の関係は、ほぼ直線的な状態となった。また、この撮像により得られたカラー画像データより画像データ処理部104が算出したセンサ素子画像状態(赤成分の輝度値の平均値)と赤成分の検量線データとを比較した結果、オゾン濃度として180ppb・hourが算出された。算出された値と実際の濃度との差は、20ppb・hourであった。緑成分及び青成分の検量線データを用いた場合も、同様の結果となった。
【0035】
[実施の形態4]
次に、センサ素子101として紫外線の照射により色が変化するUVラベル(日油技研工業株式会社製)を用い、比色表102として6段階の色標本を備えるUVラベル用カラーチャート(日油技研工業株式会社製)を用いた場合について説明する。以下、図4に示したシステムを用いた場合について説明する。また、以下では、画像データ処理部104は、撮像された画像データをよく知られた方法によりモノクロ画像(グレースケール)に変換し、6段階の色標本及びセンサ素子の各部分より、所定の画素数(例えば6000画素)分の領域を取り出し、取り出した各領域の各々の画素のグレースケールの値の平均値を、色標本画像状態及びセンサ素子画像状態として求める場合について説明する。
【0036】
まず、カメラ付き携帯電話機を用い、1500mj/cm2の紫外線を照射したUVラベル(センサ素子101)とUVラベルカラーチャート(比色表102)とを同時に撮像し、これにより得られたカラー画像を、インターネット(通信網408)を介してインターネットに接続されたコンピュータ機器(受信部409,画像データ処理部104,検量線データ作成部105,測定値算出部106)に転送し、転送されたカラー画像を前述同様に処理する。なお、撮像は、蛍光灯下で行う。
【0037】
処理について説明すると、受信されたカラー画像データより前述同様に、得られた6個の色標本画像状態より、これら色標本画像状態と6段階の色標本に対応しているUV(紫外線)照射量との関係を示す検量線データを作成する。この場合、1つの検量線データが得られる。得られた検量線データは、各色標本画像状態とUV照射量との関係が、ほぼ直線の上に配置される状態となった。
【0038】
次に、受信されたカラー画像データより画像データ処理部104が算出したセンサ素子画像状態と検量線データとを比較した結果、UV照射量として1700mj/cm2が算出された。算出された値と実際の濃度との差は、200mj/cm2であった。ここで、6段階のUVカラーチャートを用いた目視による測定(判断)では、1000mj/cm2以上2000mj/cm2とされるが、これに対し、上述した実施の形態による画像を用いた環境センシング装置によれば、より正確な測定結果が得られる。
【0039】
なお、上述では、オゾン検知紙,UVラベルを用いた場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、ホルムアルデヒドを検出して色が変化する試験紙,排ガスの粉じんを測定可能とした「空気の汚れチェッカー」,及びpH(水素イオン濃度)試験紙など、環境により色が変化する他のセンサ素子を用いる場合も同様に本発明は適用可能である。また、温度,湿度,オゾンに限らず窒素酸化物や硫黄酸化物などの大気汚染物質の存在(濃度)などの環境により、色が変化する他のセンサ素子を用いる場合も同様である。
【0040】
また、例えばGPS機能を備えたカメラ付き携帯電話機を用いることで、容易に環境マップ図が作成可能であり、これに加えて自動画像撮影機能を併用すれば、環境マップの時系列図の作成が容易に可能である。また、特別な改造を必要とせずに、市販されているカメラ付き携帯電話機を用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態における画像を用いた環境センシング装置の構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示す装置により作成される検量線データを説明するための説明図である。
【図3】図1に示す装置により作成される検量線データを説明するための説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態における画像を用いた環境センシング装置の構成例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0042】
101…センサ素子、102…比色表、103…カラー撮像部、104…画像データ処理部、105…検量線データ作成部、106…測定値算出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子及びこのセンサ素子に対応した比色表を同時に撮像するカラー撮像手段と、
前記カラー撮像手段が撮像して得られたカラー画像データを処理して前記センサ素子の画像状態及び前記比色表が備える複数の色標本の画像状態を算出する画像データ処理手段と、
前記画像データ処理手段が算出した複数の前記色標本の画像状態をもとに検量線データを作成する検量線データ作成手段と、
前記画像データ処理手段が算出した前記センサ素子の画像状態と前記検量線データ作成手段が作成した検量線データとにより、前記センサ素子の色変化に対応する環境の状態を示す物理量を測定値として算出する測定値算出手段と
を備え、
前記センサ素子は、前記環境の状態により色が変化するものであり、
前記比色表は、異なる既知の前記環境の状態による前記センサ素子の色の状態を示す複数の色標本を備えるものであり、
前記検量線データは、複数の前記色標本の画像状態と前記色標本に対応する既知の前記環境の状態との関係を示すものである
ことを特徴とする画像を用いた環境センシング装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像を用いた環境センシング装置において、
前記比色表は、3つ以上の色標本を備える
ことを特徴とする画像を用いた環境センシング装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の画像を用いた環境センシング装置において、
前記センサ素子は、前記環境の状態として、温度,湿度,オゾン濃度,窒素酸化物濃度,硫黄酸化物濃度,ホルムアルデヒド濃度,水素イオン濃度,及び紫外線照射量のいずれかにより色が変化するものであることを特徴とする環境センシング装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像を用いた環境センシング装置において、
前記カラー撮像手段が撮像して得られたカラー画像を通信網を介して前記画像データ処理手段に送信する送信手段を備える
ことを特徴とする環境センシング装置。
【請求項5】
環境の状態により色が変化するセンサ素子及び異なる既知の前記環境の状態による前記センサ素子の色の状態を示す複数の色標本を備える色標本とを同時に撮像してカラー画像データを得る第1ステップと、
撮像して得られた前記カラー画像データを処理して前記センサ素子の画像状態及び前記比色表が備える複数の色標本の画像状態を算出する第2ステップと、
算出した複数の前記色標本の画像状態をもとに、複数の前記色標本の画像状態と前記色標本に対応する既知の前記環境の状態との関係を示す検量線データを作成する第3ステップと、
算出した前記センサ素子の画像状態と作成した前記検量線データとにより、前記センサ素子の色変化に対応する前記環境の状態を示す物理量を測定値として算出する第4ステップと
を備えることを特徴とする画像を用いた環境センシング方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像を用いた環境センシング方法において、
前記比色表は、3つ以上の色標本を備える
ことを特徴とする画像を用いた環境センシング方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の画像を用いた環境センシング方法において、
前記センサ素子は、前記環境の状態として、温度,湿度,オゾン濃度,窒素酸化物濃度,硫黄酸化物濃度,ホルムアルデヒド濃度,水素イオン濃度,及び紫外線照射量のいずれかにより色が変化するものであることを特徴とする環境センシング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−116234(P2008−116234A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297533(P2006−297533)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】