説明

画像ファイルの出力画像調整

【課題】画像データ生成時における色空間情報を正確に出力できる画像出力装置を提供すること。
【解決手段】カラープリンタ20のCPU31は、マトリクスS演算により得られたRGB色空間の画像データに対して、ガンマ補正、並びに、マトリクス演算Mを実行する。CPU31は設定されているガンマ補正値を用いて映像データに対してガンマ変換処理を実行する。マトリクス演算MはRGB色空間をXYZ系色空間に変換するための演算処理である。マトリクス演算Mを実行する場合には、画像データ生成時の色空間を反映させるため、CPU31はPrintMatchingタグを参照し、書き込まれている色空間に対応するマトリクス(M)を用いてマトリクス演算を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データの色空間上の変換を伴う処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影画像あるいは取り込み画像を取り扱いの容易な画像ファイルとして利用することができるディジタルスチルカメラ(DSC)、ディジタルビデオカメラ(DVC)、スキャナ等の需要が高まっている。一般的に、DSC等では、撮影画像データは画像圧縮ファイル形式の一つであるJPEG形式のファイルとして保存される。このJPEGファイルでは、圧縮率を高くするためにYCbCrの色空間を用いて画像データを表現している。したがって、DSC等は、RGB色空間によって表現されている撮影画像データをYCbCr色空間に変換している。また、このときDSC等が扱うRGB色空間は、パーソナルコンピュータで標準的に用いられているCRTモニタの色空間(例えば、sRGB:IEC61966 2−1)が用いられている。
【0003】
パーソナルコンピュータでは、RGB色空間が画像データの標準的な色空間として用いられているため、このようなJPEGファイルを受け取ったパーソナルコンピュータは、JPEGファイルを伸長し、画像データの色空間をYCbCr色空間からRGB色空間へ変換する。こうしてRGB色空間に変換された画像データは、モニタに表示され、あるいは、CMYK色空間へ変換された後、プリンタを介して印刷媒体上に印刷出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−331622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパーソナルコンピュータにおける画像処理では、一般的に、CRTモニタによる出力を前提とし、YCbCr色空間からRGB色空間へ変換された画像データの色空間は、CRTモニタが表現可能な色空間特性であると共にパーソナルコンピュータにて共通に用いられているsRGB色空間にクリッピングされていた。
【0006】
したがって、DSC等の画像データ生成装置によって生成されたJPEGファイルをパーソナルコンピュータで伸長し、YCbCr色空間からRGB色空間に変換した際に、画像データのRGB色空間の表色域がsRGB色空間の表色域より広い場合であっても、sRGB色空間の表色域外の表色値は丸められてしまっていた。かかる場合には、sRGB色空間の表色域外の表色値は出力画像に反映されない。この結果、出力装置の色再現範囲がsRGB色空間よりも広い場合であっても、出力装置の色再現能力を生かすことができず、また、DSC上で可能な色再現能力についても有効に利用することができないという問題があった。
【0007】
その一方で、モニタの色再現特性にマッチしたsRGB色空間は、標準的なRGB色空間として広く用いられており、YCbCr色空間からRGB色空間への色空間の変換処理においても、モニタによる表示を前提とする色変換マトリクスが用いられているのが現状である。したがって、sRGB色空間の表色域よりも広い表色域を有するRGB色空間を新たに定義しても、入力装置から出力装置に至るまで、画像処理を実行する色空間として新たなRGB色空間が採用されない限り、汎用性に欠けるため、色空間特性を容易に変更することはできないという問題がある。
【0008】
これらの問題に対して、一部の画像ファイルユーザは、DSC等の有する色空間を反映させた適切な出力結果を得ることができるように画像ファイル修正ソフト等を用いて画像ファイルの画像調整を行っているが、このような画像調整を行うことは煩雑である。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、画像データ生成時における色空間情報を正確に出力できる画像出力装置を提供することを目的とする。また、画像データを生成した装置、または、画像データを出力する装置の色再現域を有効に利用することができる画像出力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の一態様は、画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の一態様は、前記画像データを取り込む画像データ取り込み手段と、前記画像データに関連付けられている前記使用情報を取得する使用情報取得手段と、前記取得された使用情報に基づいて、前記所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを判定する判定手段と、前記領域外情報を使用すると判定された場合には、前記所定の色空間の領域外の情報を内包し得る広い定義領域を有する出力機器に依存しない出力機器非依存広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行する画像処理手段とを備える。
本発明の一態様において、前記領域外情報を使用しないと判定された場合には、前記画像処理手段は、前記所定の色空間と同等の定義領域を有する既定の色空間を介して前記画像データの画像処理を実行しても良い。
本発明の一態様において、前記画像データは第1の色空間によって定義されており、前記画像データ取り込み手段は、前記取り込んだ画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記画像処理手段は、前記第2の色空間によって定義されている画像データの色空間を、前記領域外表色値を用いて第3の色空間に変換しても良い。
本発明の一態様において、前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、前記第2の色空間はsRGBの色空間であり、前記第3の色空間は前記sRGBの色空間よりも広い定義領域を有する第2のRGBの色空間であっても良い。
本発明の一態様において、前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、前記第2の色空間はsRGBの色空間であり、前記第3の色空間は前記sRGBの色空間よりも広い定義領域を有するCIELABの色空間であっても良い。
本発明の一態様において、前記画像処理手段はクリッピング処理が施されていない画像データに対して前記出力機器非依存広域色空間への色変換処理を実行しても良い。
本発明の一態様において、前記画像処理手段はさらに、前記出力機器非依存広域色空間に変換された前記画像データに対して画質調整処理を実行する画質調整手段を備えても良い。
本発明の一態様は、この他にも、画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて画像処理を実行するためのプログラム、画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて出力画像データを生成する方法としても実現され得る。
本発明の他の態様として、上記課題を解決するために本発明の第1の態様は、画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、前記画像データを取り込む画像データ取り込み手段と、前記画像データに関連付けられている前記使用情報を取得する使用情報取得手段と、前記取得された使用情報に基づいて、前記所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを判定する判定手段と、前記領域外情報を使用すると判定された場合には、前記領域外情報をその定義領域に内包し得る広い定義領域を有する広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置によれば、所定の色空間の領域外の情報を使用する場合には、領域外情報をその定義領域に内包し得る広い定義領域を有する広域色空間への色変換処理を含む画像データの画像処理を実行するので、画像データ生成時に画像データに含まれていた表色値を利用して画像データを正確に再現することができる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記領域外情報を使用しないと判定された場合には、前記画像処理手段は、前記所定の色空間と同等の定義領域を有する既定の色空間を介して前記画像データの画像処理を実行しても良い。かかる構成を備えることにより、領域外情報を使用しないと判定された場合にも既定の情報を用いて画像処理を実行することができる。
【0013】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記画像データは第1の色空間によって定義されており、前記画像データ取り込み手段は、前記取り込んだ画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記画像処理手段は、前記第2の色空間によって定義されている画像データの色空間を、前記領域外表色値を用いて第3の色空間に変換しても良い。
【0014】
かかる構成を備えることにより、第2の色空間によって表現されている画像データの色空間を第3の色空間に変換する際に、領域外表色値を用いて色空間を変換することができるので、画像データ生成時に画像データに含まれていた表色値を利用して画像データを正確に再現することができる。
【0015】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、前記第2の色空間は第1のRGBの色空間であり、前記第3の色空間は前記第1のRGBの色空間よりも広い定義領域を有する第2のRGBの色空間であっても良い。また、前記第2のRGBの色空間は、sRGB色空間であっても良い。さらに、前記第3の色空間は、第2のRGB色空間に代えて、CIELABの色空間であっても良い。
【0016】
かかる構成を備える場合には、第1のRGBの色空間よりも広い第2のRGB色空間を有する画像データを用いて画像を出力できるので、第1のRGB色空間を有する画像データを用いる場合よりも高い彩度の画像を出力することができる。また、出力データの色空間がCIELAB色空間の場合には、カラーマッチングが容易になるので、更に他の装置において画像処理を行う場合に便利である。
【0017】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、
前記画像データは、前記所定の色空間の定義領域内の表色値である第1の正の表色値と、前記所定の色空間の定義領域外の表色値である第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方を含むと共に、第1の色空間によって表現されており、
前記画像データ取り込み手段は、前記第1および第2の正の表色値並びに前記負の表色値を用いて、前記画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換しても良い。かかる構成を備えることにより、画像データが有する第1および第2の正の表色値および負の表色値を反映した画像処理を実行することができるので、出力装置における画像データの再現性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記画像処理手段は、前記画像データが前記第1および第2の正の表色値を有する場合には第1のガンマ補正値を用い、前記画像データが負の表色値を有する場合には前記第1のガンマ補正値とは異なる第2のガンマ補正値を用いて、前記画像データに対するガンマ補正を実行するガンマ補正手段を備えても良い。かかる構成を備えることにより、画像データが正の表色値を有する場合と、負の表色値を有する場合のそれぞれにおいて適切なガンマ補正を実行することができる。
【0019】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第2のガンマ補正値は、前記第1のガンマ補正値よりも小さい値であっても良い。かかる場合には、負の表色値をより有効に利用することが可能となり、画像データの色再現領域を更に拡張することができる。
【0020】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記画像処理手段は、前記第2の色空間によって表現されていると共に前記第1の正の表色値、前記第2の正の表色値および前記負の表色値を含む前記画像データを、前記第2の色空間よりも広く、前記第2の正の表色値および前記負の表色値の少なくとも一方をその定義領域内に含む第3の色空間へ変換しても良い。かかる場合には、第2の色空間では表現され得なかった第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方が第3の色空間の定義領域内に含まれるので、第2の正の色彩値および負の色彩値の少なくとも一方を再現して出力することができる。したがって、画像データの彩度を向上させることができると共に、画像データを生成した装置、または、画像データを出力する装置の色再現域を有効に利用することができる。
【0021】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記第1の色空間はR成分、G成分、B成分によって表されるRGBの色空間であり、前記第2のガンマ補正値は、それぞれが異なる、前記R成分用の第2のガンマ補正値、前記G成分用の第2のガンマ補正値、B成分用の第2のガンマ補正値を有しても良い。かかる構成を備えることにより、R成分、G成分、B成分の各々が有する表現領域に応じたガンマ補正を負の表色値を有する画像データに対して実行することができると共に、より彩度の高い画像出力を得ることができる。
【0022】
本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記画像ファイル取り込み手段による前記第1の色空間から前記第2の色空間への前記画像データの色空間の変換は、前記第1の色空間によって表されている画像データに対する第1のマトリクス演算処理によって実行され、前記画像処理手段による前記第2の色空間から前記第3の色空間への前記画像データの色空間の変換は、前記第2の色空間で表現されている画像データに対する第2のマトリクス演算処理によって実行されても良い。
【0023】
本発明の第2の態様は、第1の色空間によって表されていると共に、所定の色空間の表色域内の表色値である第1の正の表色値と、前記所定の色空間の表色域外の表色値である第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方を含む画像データを用いて画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、前記画像データを取得する画像データ取得手段と、前記第1および第2の正の表色値並びに前記負の表色値を用いて、前記画像データの色空間を前記第1の色空間から、前記所定の色空間よりも広く、前記第2の表色値および前記負の表色値の少なくとも一方をその表色域に含む第2の色空間に変換する色空間変換手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置によれば、画像データ色空間を、第1および第2の正の表色値並びに負の表色値を用いて、第2の表色値および負の表色値の少なくとも一方をその表色域に含む第2の色空間に変換するので、画像データ生成時に画像データに含まれていた表色値を利用して画像データを正確に再現することができる。
【0025】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、このほかにも、第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0026】
本発明の第1または第2の態様に係る画像処理装置はさらに、前記画像処理が実行された画像データを印刷媒体上に印刷する印刷手段を備えても良い。かかる場合には、画像処理を施した画像データを出力することができる。また、前記画像データと前記使用情報とは、同一の画像ファイル内に格納されていても良い。かかる場合には、画像ファイル単位にて画像データと使用情報とを取り扱うことができるので、画像データと使用情報との関連づけを容易化することができる。
【0027】
本発明の第3の態様は、画像データと、所定の色空間の定義領域外の表色値である領域外表色値を使用するか否かを示す使用情報とを用いて画像データを画像出力装置によって出力させるプログラムを提供する。本発明の第3の態様に係るプログラムは、前記画像データを取り込む機能と、前記取り込んだ画像データに関連付けられている前記使用情報に基づいて、前記領域外表色値を使用するか否かを判定する機能と、前記領域外表色値を使用すると判定された場合には、前記領域外表色値をその定義領域内に内包し得る広い定義領域を有する色空間を介して前記画像データの画像処理を実行する機能と、前記画像処理が施された画像データを出力する機能とをコンピュータによって実現させることを特徴とする。
【0028】
本発明の第3の態様に係るプログラムによれば、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第3の態様に係るプログラムは、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0029】
本発明の第4の態様は、画像データと画像データに対する画像処理条件を指定する画像処理制御情報とを関連付けて出力する画像データの生成装置を提供する。本発明の第4の態様に係る画像データ生成装置は、前記画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに対して画像処理を実行する際に、所定の色空間の領域外の情報を使用させるか否かを示す使用情報を含む前記画像処理制御情報を生成する画像処理制御情報生成手段と、前記取得された画像データと、前記生成された画像処理制御情報とを関連付けて出力する画像データ出力手段とを備えることを特徴とする。
【0030】
本発明の第4の態様に係る画像データ生成装置によれば、所定の色空間の領域外の情報を使用させるか否かを示す使用情報を含む画像処理制御情報と、取得された画像データとを関連付けて出力することができるので、領域外の情報を利用した画像データに対する画像処理を実行させることができる。
【0031】
本発明の第5の態様は、画像データと画像データに対する画像処理条件を指定する画像処理制御情報とを関連付けて出力する画像データの生成装置を提供する。本発明の第5の態様に係る画像データ生成装置は、所定の色空間の表色域内の表色値である第1の正の表色値と、前記所定の色空間の表色域外の表色値である第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方を含む前記画像データを生成する画像データ生成手段と、前記画像データに対して画像処理を実行する際に、前記第2の正の表色値および前記負の表色値の少なくともいずれか一方を使用させるか否かを示す使用情報と、前記画像データが前記第1および第2の正の表色値を有する場合に用いるべき第1のガンマ補正値と、前記画像データが負の表色値を有する場合に用いるべき前記第1のガンマ補正値とは異なる第2のガンマ補正値とを含む画像処理制御情報を生成する画像処理制御情報生成手段とを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明の第5の態様に係る画像データ生成装置によれば、所定の色空間の表色域外の表色値である第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方を使用させるか否かを示す使用情報を含む画像処理制御情報と、取得された画像データとを関連付けて出力することができるので、第2の正の表色値および負の表色値の少なくともいずれか一方を利用した画像データに対する画像処理を実行させることができる。
【0033】
本発明の第5の態様に係る画像データ生成装置において、前記画像処理制御情報には、前記画像データの色空間変換を実行する際に、前記所定の色空間よりも広く、前記第2の表色値および前記負の表色値の少なくとも一方をその表色域に含む色空間へ変換させるための色空間変換特性が含まれても良い。かかる場合には、画像データの色変換時における色空間変換特性をも指定することが可能となり、第2の正の表色値および負の表色値を用いる効果を向上させることができる。
【0034】
本発明の第6の態様は、第1の色空間によって表現されている画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示す使用情報とを用いて画像データを出力する方法を提供する。本発明の第6の態様に係る方法は、前記画像データを取得し、その取得した画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記使用情報に基づいて前記領域外情報を使用するか否かを判定し、前記領域外情報を使用すると判定した場合には、前記領域外情報を用いて、前記第2の色空間によって表現されている画像データの色空間を第3の色空間に変換し、前記変換された画像データを出力することを特徴とする。
【0035】
本発明の第6の態様に係る方法によれば、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第6の態様に係る方法は、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0036】
本発明の第7の態様は、画像データを出力する方法を提供する。本発明の第7の態様に係る方法は、第1の色空間によって表現されている前記画像データを取得し、その取得した画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記変換により得られた第2の色空間に関する情報、および、前記第2の色空間を定義する領域外の情報を保持し、前記保持した情報を反映させて、前記第2の色空間によって表現されている画像データの色空間を第3の色空間に変換し、前記変換された画像データを出力することを特徴とする。
【0037】
本発明の第7の態様に係る方法によれば、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第7の態様に係る方法は、本発明の第1の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0038】
本発明の第8の態様は、画像データの画像処理方法を提供する。本発明の第8の態様に係る画像処理方法は、第1の色空間に基づく前記画像データを取得し、その取得した画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、前記変換された画像データについての前記第2の色空間を定義する領域内および領域外の情報を保持し、前記保持した情報を反映させて、前記第2の色空間によって表現されている画像データの色空間を前記第2の色空間よりも広い定義領域を有する第3の色空間に変換することを特徴とする。
【0039】
本発明の第8の態様に係る方法によれば、本発明の第2の態様に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることができる。また、本発明の第8の態様に係る方法は、本発明の第2の態様に係る画像処理装置と同様にして種々の態様にて実現され得る。
【0040】
本発明の第9の態様は、画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置を提供する。本発明の第9の態様に係る画像処理手段は、前記画像データを取り込む画像データ取り込み手段と、前記画像データに含まれている所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを指示する指示手段と、前記領域外情報の使用が指示された場合には、前記領域外情報をその定義領域に内包し得る広い定義領域を有する広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行する画像処理手段とを備えることを特徴とする。
【0041】
本発明の第9の態様に係る画像処理装置において、前記領域外情報の使用が指示されなかった場合には、前記画像処理手段は、前記所定の色空間と同等の定義領域を有する既定の色空間を介して前記画像データの画像処理を実行しても良い。
【0042】
この他にも、本発明に係る画像処理装置は、前記画像データを取り込む画像データ取り込み手段と、前記画像データに含まれている所定の色空間の領域外の情報を使用して、前記画像データに対する画像処理を実行する画像処理手段を備える画像データに対して画像処理を実行する画像処理装置であっても良い。かかる場合には、所定の色空間の領域外の情報を使用して画像処理を実行するので、画像処理結果として得られる画像の彩度を向上させることができる。
【0043】
前記画像処理手段における画像処理にはさらに、前記領域外情報をその定義領域に内包し得る広い定義領域を有する広域色空間への色変換処理が含まれていてもよい。かかる場合には、所定の色空間では領域外であった情報を定義領域内に内包し得る広域色空間を用いるので、所定の色空間では領域外であった情報が再現されることとなり、画像処理結果として得られる画像の彩度を向上させることができる。また、前記所定の色空間の領域外の情報は、負の画像データ値であっても良く、負の画像データ値に対するガンマ補正値と正の画像データ値に対するガンマ補正値とは異なっていても良い。かかる場合には、正の画像データ値の階調特性と負の画像データ値の階調特性にそれぞれ適したガンマ補正を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】第1実施例に係る画像出力装置を適用可能な画像データ出力システムの一例を示す説明図である。
【図2】第1実施例に係る画像出力装置が出力する画像ファイル(画像データ)を生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【図3】Exifファイル形式にて格納されている画像ファイルGFの概略的な内部構造を示す説明図である。
【図4】第1実施例に係るカラープリンタ20の概略構成を示すブロック図である。
【図5】カラープリンタ20の制御回路30の内部構成を示す説明図である。
【図6】第1実施例に係るカラープリンタ20における印刷処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図7】第1実施例に係るカラープリンタ20における画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】RGB色空間の定義領域外(EA)における画像データを有効に扱う意味を説明するために色空間領域を2次元で表現する説明図である。
【図9】ガンマ補正に際して用いられる第1のガンマ補正値γ1に対応する第1のガンマ特性線L1と第2のガンマ補正値γ2r、γ2g、γ2bに対応する第2のガンマ特性線L2r、L2g、L2bとを例示的に示す説明図である。
【図10】RGB色空間上における、可視領域(VA)、sRGB(SR)、NTSC(NS)、wRGB(WR)の色空間領域を示す説明図である。
【図11】第2の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。
【図12】第3の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。
【図13】第4の実施例に係るパーソナルコンピュータPCにおける画像処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明に係る画像出力装置について以下の順序にて図面を参照しつつ、いくつかの実施例に基づいて説明する。
A.画像出力装置を含む画像データ出力システムの構成
B.画像出力装置の構成
C.画像出力装置における画像処理
D.その他の実施例
【0046】
A.画像出力装置を適用可能な画像データ出力システムの構成:
第1実施例に係る画像処理装置を適用可能な画像データ出力システムの構成について図1および図2を参照して説明する。図1は第1実施例に係る画像出力装置を適用可能な画像データ出力システムの一例を示す説明図である。図2は第1実施例に係る画像出力装置が出力する画像ファイル(画像データ)を生成可能なディジタルスチルカメラの概略構成を示すブロック図である。
【0047】
画像データ出力システム10は、画像ファイルを生成する入力装置としてのディジタルスチルカメラ12、ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像ファイルに基づいて画像処理を実行し、画像を出力する出力装置としてのカラープリンタ20を備えている。出力装置としては、プリンタ20の他に、CRTディスプレイ、LCDディスプレイ等のモニタ14、プロジェクタ等が用いられ得るが、以下の説明では、カラープリンタ20を出力装置として用いるものとする。
【0048】
ディジタルスチルカメラ12は、光の情報をディジタルデバイス(CCDや光電子倍増管)に結像させることにより画像を取得するカメラであり、図2に示すように光情報を収集するための光学回路121、ディジタルデバイスを制御して画像を取得するための画像取得回路122、取得したディジタル画像を加工処理するための画像処理回路123、各回路を制御する制御回路124を備えている。ディジタルスチルカメラ12は、取得した画像をディジタルデータとして記憶装置としてのメモリカードMCに保存する。ディジタルスチルカメラ12における画像データの保存形式としては、JPEG形式が一般的であるが、この他にもTIFF形式、GIF形式、BMP形式、RAW形式等の保存形式が用いられ得る。ディジタルスチルカメラ12はまた、各種機能を選択、設定するための選択・決定ボタン126を備えている。
【0049】
ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像データは、RGB色空間にて定義される。このとき用いられるRGB色空間としては、sRGB色空間が最も一般的であるが、その他にも、sRGB色空間よりも広い色域を有するNTSC−RGB色空間が選択されても良い。RGB色空間にて表されているデータは、メモリカードに格納される際に、データを圧縮して格納するフォーマットであるJPEG形式に適した色空間特性を有するYCbCr色空間に変換される。画像データをJPEG形式にて保存する場合には、RGB色空間にて表されている画像データを、後述するマトリクスSの逆マトリクスを用いた演算を実行して画像データの色空間をRGB色空間、例えば、sRGB色空間からYCbCr色空間に変換する。なお、sRGB色空間からYCbCr色空間に変換する際には、sRGB色空間の領域外の色彩値、すなわち、色彩値として負値のデータも有効なまま変換するものとする。
【0050】
本画像データ出力システム10に用いられるディジタルスチルカメラ12は、画像データに加えて画像処理制御情報GIを画像ファイルとしてメモリカードMCに格納する。ディジタルスチルカメラ12によって生成される画像ファイルは、画像ファイルの互換性を維持するため、通常、ディジタルスチルカメラ用画像ファイルフォーマット規格(Exif)に従ったファイル構造を有している。Exifファイルの仕様は、電子情報技術産業協会(JEITA)によって定められている。
【0051】
このExifファイル形式に従うファイル形式を有する場合の画像ファイル内部の概略構造について図3を参照して説明する。図3はExifファイル形式にて格納されている画像ファイルGFの概略的な内部構造を示す説明図である。なお、本実施例中におけるファイルの構造、データの構造、格納領域といった用語は、ファイルまたはデータ等が記憶装置内に格納された状態におけるファイルまたはデータのイメージを意味するものである。
【0052】
Exifファイルとしての画像ファイルGFは、JPEG形式の画像データを格納するJPEG画像データ格納領域101と、格納されているJPEG画像データに関する各種付属情報を格納する付属情報格納領域102とを備えている。付属情報格納領域112には、撮影時色空間、撮影日時、露出、シャッター速度等といったJPEG画像の撮影条件に関する撮影時情報、JPEG画像データ格納領域101に格納されているJPEG画像のサムネイル画像データがTIFF形式にて格納されている。付属情報は画像データがメモリカードMCに書き込まれる際に自動的に付属情報格納領域102に格納される。また、付属情報格納領域102は、DSC製造者に解放されている未定義領域であるMakernoteデータ格納領域103を備えており、DSC製造者はMakernoteデータ格納領域103に対して任意の情報を格納させることができる。なお、当業者にとって周知であるように、Exif形式のファイルでは、各データを特定するためにタグが用いられている。
【0053】
Makernoteデータ格納領域103もまた、タグによって格納されているデータを識別できる構成を備えており、本実施例では、PrintMatchingのタグが付された領域にカラープリンタ20における画像処理を制御するための画像処理制御情報GIが格納されている。
【0054】
画像処理制御情報GIは、カラープリンタ20等の出力装置が有する色再現特性、画像出力特性を考慮して、最適な画像出力結果を得ることができるように画像出力条件を指定する情報である。画像処理制御情報GIとして格納される情報には、例えば、ガンマ補正値、ターゲットとする色空間に関するパラメータ、負値の利用の有無、コントラスト、カラーバランス調整、シャープネス、色補正に関するパラメータが含まれている。このうち、ガンマ補正値、色空間、負値の利用の有無に関するパラメータ、主に被写体の色特性を忠実に再現するための情報であり、残りのパラメータは、主に好みの色再現を実現するための情報である。なお、負値とは、所定のRGB色空間、本実施例ではsRGB色空間の定義領域を超える表色値(色彩値)を意味し、256を超える正の値、負の値を意味する。なお、負値のより詳細な説明については後述する。
【0055】
ディジタルスチルカメラ12において生成された画像ファイルGFは、例えば、ケーブルCV、コンピュータPCを介して、あるいは、ケーブルCVを介してカラープリンタ20に送出される。あるいは、ディジタルスチルカメラ12に装着されているメモリカードMCが接続されたコンピュータPCを介して、あるいは、メモリカードMCをプリンタ20に対して直接、接続することによって画像ファイルがカラープリンタ20に送出される。なお、以下の説明では、メモリカードMCがカラープリンタ20に対して直接、接続される場合に基づいて説明する。
【0056】
B.画像出力装置の構成:
図4を参照して第1実施例に係る画像出力装置、すなわち、カラープリンタ20の概略構成について説明する。図4は第1実施例に係るカラープリンタ20の概略構成を示すブロック図である。
【0057】
カラープリンタ20は、カラー画像の出力が可能なプリンタであり、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の色インクを印刷媒体上に噴射してドットパターンを形成することによって画像を形成するインクジェット方式のプリンタであり、あるいは、カラートナーを印刷媒体上に転写・定着させて画像を形成する電子写真方式のプリンタである。色インクには、上記4色に加えて、ライトシアン(薄いシアン、LC)、ライトマゼンタ(薄いマゼンタ、LM)、ダークイエロ(暗いイエロ、DY)を用いても良い。
【0058】
カラープリンタ20は、図示するように、キャリッジ21に搭載された印字ヘッド211を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、このキャリッジ21をキャリッジモータ22によってプラテン23の軸方向に往復動させる機構と、紙送りモータ24によって印刷用紙Pを搬送する機構と、制御回路30とから構成されている。キャリッジ21をプラテン23の軸方向に往復動させる機構は、プラテン23の軸と並行に架設されたキャリッジ21を摺動可能に保持する摺動軸25と、キャリッジモータ22との間に無端の駆動ベルト26を張設するプーリ27と、キャリッジ21の原点位置を検出する位置検出センサ28等から構成されている。印刷用紙Pを搬送する機構は、プラテン23と、プラテン23を回転させる紙送りモータ24と、図示しない給紙補助ローラと、紙送りモータ24の回転をプラテン23および給紙補助ローラに伝えるギヤトレイン(図示省略)とから構成されている。
【0059】
制御回路30は、プリンタの操作パネル29と信号をやり取りしつつ、紙送りモータ24やキャリッジモータ22、印字ヘッド211の動きを適切に制御している。カラープリンタ20に供給された印刷用紙Pは、プラテン23と給紙補助ローラの間に挟み込まれるようにセットされ、プラテン23の回転角度に応じて所定量だけ送られる。
【0060】
キャリッジ21にはインクカートリッジ212とインクカートリッジ213とが装着される。インクカートリッジ212には黒(K)インクが収容され、インクカートリッジ213には他のインク、すなわち、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y)の3色インクの他に、ライトシアン(LC),ライトマゼンタ(LM),ダークイエロ(DY)の合計6色のインクが収納されている。
【0061】
次に図5を参照してカラープリンタ20の制御回路30の内部構成について説明する。図5は、カラープリンタ20の制御回路30の内部構成を示す説明図である。図示するように、制御回路30の内部には、CPU31,PROM32,RAM33,メモリカードMCからデータを取得するPCMCIAスロット34,紙送りモータ24やキャリッジモータ22等とデータのやり取りを行う周辺機器入出力部(PIO)35,タイマ36,駆動バッファ37等が設けられている。駆動バッファ37は、インク吐出用ヘッド214ないし220にドットのオン・オフ信号を供給するバッファとして使用される。これらは互いにバス38で接続され、相互にデータにやり取りが可能となっている。また、制御回路30には、所定周波数で駆動波形を出力する発振器39、および発振器39からの出力をインク吐出用ヘッド214ないし220に所定のタイミングで分配する分配出力器40も設けられている。
【0062】
制御回路30は、メモリカードMCから画像ファイルGFを読み出し、画像処理制御GIを解析し、解析した画像処理制御情報GIに基づいて画像処理を実行する。制御回路30は、紙送りモータ24やキャリッジモータ22の動きと同期を採りながら、所定のタイミングでドットデータを駆動バッファ37に出力する。制御回路30によって実行される詳細な画像処理の流れについては、以下に説明する。
【0063】
C.カラープリンタ20における画像処理:
図6および図7を参照して第1の実施例に係るカラープリンタ20における画像処理について説明する。図6は第1実施例に係るカラープリンタ20における印刷処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。図7はカラープリンタ20における画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0064】
プリンタ20の制御回路30(CPU31)は、スロット34にメモリカードMCが差し込まれると、メモリカードMCから画像ファイルGFを読み出し、読み出した画像ファイルGFをRAM33に一時的に格納する(ステップS100)。CPU31は読み出した画像ファイルGFの付属情報格納領域102から画像データの画像処理時の画像処理制御GIを示すPrintMatchingタグを検索する(ステップS110)。CPU31は、PrintMatchingタグを検索・発見できた場合には(ステップS120:Yes)、負値の利用の有無を含む画像処理制御情報GIを取得して解析する(ステップS130)。CPU31は、解析した画像処理制御情報GIに基づいて後に詳述する画像処理を実行し(ステップS140)、処理された画像データをプリントアウトする(ステップS150)。
【0065】
CPU31は、PrintMatchingタグを検索・発見できなかった場合には(ステップS120:No)、カラープリンタ20が予めデフォルト値として保有している色空間情報、例えばsRGB色空間の情報をROM32から取得して負値の利用を伴わない通常の画像処理を実行する(ステップS160)。CPU31は、処理した画像データをプリントアウト(ステップS150)して本処理ルーチンを終了する。
【0066】
カラープリンタ20において実行される画像処理について図7を参照して詳細に説明する。カラープリンタ20の制御回路30(CPU31)は、読み出した画像ファイルGFから画像データGDを取りだす(ステップS200)。ディジタルスチルカメラ12は、既述のように画像データをJPEG形式のファイルとして保存しており、JPEGファイルでは、圧縮率を高くするために、生成した画像データの色空間(sRGB色空間)をYCbCr色空間に変換して画像データを保存している。
【0067】
しかしながら、パーソナルコンピュータおよびプリンタ等では、通常、RGBの色空間にて表現されている画像データのみを取り扱い得るので、YCbCrの色空間にて表現されている画像データの色空間をRGB色空間に変換する必要がある。
【0068】
CPU31は、YCbCrの画像データをRGBの画像データに変換するために3×3マトリクス演算Sを実行する(ステップS210)。なお、マトリクス演算Sは、JPEG FIle Interchange Format(JFIF)の規格によって定義されている、画像データの色空間をYCbCr色空間からRGB色空間に変換するための演算式であり、以下に示す演算式である。
【0069】
【数1】

【0070】
このマトリクス演算Sを実行する際には、変換後得られたRGB色空間の画像データが、所定のRGB色空間、たとえば、sRGB色空間の定義領域を表す第1の正の色彩値(表色値)の領域を超える第2の正の色彩値(表色値)や、RGB色空間において負の値を取る負の色彩値(表色値)を有する場合がある。そこで、本実施例では、画像処理制御情報GIにおいて、これら第2の正の色彩値および負の色彩値を利用するか否かを指定する。ここで、sRGB色空間は、モニタの標準的な色空間として定義されている色空間であり、モニタでの画像データ出力を前提としているオペレーティングシステム(OS)において一般的に用いられている色空間である。また、sRGB色空間の定義領域に対応してRGB各成分について8ビットのデータ容量が割り当てられている。したがって、従来、sRGB色空間の定義領域を超える色彩値は、sRGB色空間の定義領域にクリッピング、すなわち丸め(切り捨て)られていた。
【0071】
一般的に、ディジタルスチルカメラ12では、sRGB色空間が用いら得ているといわれているが、sRGB色空間の定義に厳密に従っていないこともある。したがって、マトリクス演算Sを実行することによって、画像データGDの色空間はディジタルスチルカメラ12にて用いられているRGB色空間に変換される際に、sRGB色空間の定義領域を超える色彩値が存在することがあり得る。
【0072】
本実施例では、このsRGB色空間の定義領域を超える色彩値を切り捨てることなく、画像処理を実行する。CPU31は、画像処理制御情報GIにおいて負値の利用が指定さえている場合、変換後得られたRGB色空間の画像データが、第2の正の色彩値や、負の色彩値(表色値)を有する場合であっても、第2の正の色彩値および負の色彩値を、sRGB色空間の定義領域にクリッピング、すなわち丸める(切り捨てる)ことなく有効値として扱い、第1の正の色彩値と共にそのまま保存する。したがって、画像データGDが第2の正の色彩値または負の色彩値を有する場合には、sRGB色空間の定義領域よりも広い定義領域を有するRGB色空間(ディジタルスチルカメラ12にて用いられたRGB色空間)にて画像データGDは表される。このとき、画像データGDはsRGB色空間の定義領域を超えた領域に色彩値を有しているので、そのデータ容量は8ビットよりも大きくなる。
【0073】
負値を有効に扱うイメージについて、図8を参照して説明する。図8はsRGB色空間の定義領域外(EA)における画像データを有効に扱う意味を説明するために色空間領域を2次元で表現する説明図である。本実施例における負値の有効化処理では、画像データは、RGB色空間を定義領域内のデータ値の他に、図8に示すRGB色空間の定義領域外(EA)のデータ値をも保有する。図8の例では、画像データがNTSCのRGB色空間にて生成された場合の定義外領域を例示しているが、画像データが生成される色空間はこれに限られるものではない。なお、RGB色空間の定義領域は、R成分、G成分、B成分のそれぞれを座標軸に取った場合、座標(R、G、B)によって表されるが、本明細書中にて、画像データが第2の正の色彩値および負の色彩値を有すると言う場合には、(R,G,B)いずれかの成分が第2の正の色彩値および負の色彩値を取る場合を言う。
【0074】
sRGB色空間では、画像データは、R成分、G成分、B成分のそれぞれについて、256階調(8ビット)で表されるので、第1の正の色彩値の領域は、一般的に0〜255の整数値で表される。また、第2の正の色彩値の領域は256以上の整数値で表され、負の色彩値の領域は−1以下の負の整数値で表される。
【0075】
変換後のRGB空間の画像データが、sRGB色空間との対比において、第1の色彩値のみならず、第2の正の色彩値および負の色彩値を持つと言うことは、ディジタルスチルカメラ12によって画像データが生成された際に、例えば、図8を参照して既述したように、sRGB色空間よりも広いRGB色空間が用いられていたことを意味する。既述のように、sRGB色空間はCRTディスプレイの色特性に最適化された色空間特性を有しており、一般的に、ディジタルスチルカメラ12が撮影可能な色空間、または、プリンタが印刷可能な色空間を十分に表現できないことが知られている。
【0076】
したがって、このような第2の正の色彩値および負の色彩値は、sRGB色空間では色表現され得ないが、sRGB色空間よりも広いRGB色空間、あるいは、第2の正の色彩値および負の色彩値の少なくとも一方をその定義領域内に含むRGB色空間へ再変換することによって色表現され得る場合がある。そこで、本実施例に係るカラープリンタ20では、YCbCr色空間からRGB色空間に変換された画像データが有する、第2の正の色彩値および負の色彩値を含む全ての情報を有効なものとして扱い、保持する。なお、ディジタルスチルカメラ12によって画像データが生成された際に、sRGB色空間の定義領域外のデータ値が丸められてしまっている場合には、マトリクス演算Sを実行しても第2の正の色彩値および負の色彩値は得られないのは言うまでもない。
【0077】
CPU31は、こうして得られたRGB色空間の画像データに対して、ガンマ補正、並びに、マトリクス演算Mを実行する(ステップS220)。ここで実行される処理は、画像処理制御情報GIの中の色空間情報に従って実行される処理である。ガンマ補正を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中でガンマ補正値を参照し、設定されているガンマ補正値(DSCの固有値)を用いて映像データに対してガンマ変換処理を実行する。
【0078】
ガンマ補正を実行するにあたり、画像処理制御情報GIによって負値の利用が指定されている場合には、CPU31は、画像データが第1および第2の色彩値を取る領域では、図9に示すように第1のガンマ補正値γ1(設定されているガンマ補正値)を用い、画像データが負の色彩値を取る領域では、第1のガンマ補正値よりも小さな第2のガンマ補正値γ2を用いる。また、第2のガンマ補正値γ2は、R成分用のγ2r、G成分用のγ2g、B成分用のγ2bとに更に分けられる。図9は、ガンマ補正に際して用いられる第1のガンマ補正値γ1に対応する第1のガンマ特性線L1と第2のガンマ補正値γ2r、γ2g、γ2bに対応する第2のガンマ特性線L2r、L2g、L2bとを例示的に示す説明図である。なお、説明を容易にするため、第2のガンマ特性線L2を除いて、代表的にR成分を例にとって説明する。なお、第1のガンマ特性線L1は、R成分については、Rt’=(Rt)γ1として表され、第2のガンマ特性線L2は、Rt’=−(−Rt)γ2rとして表される。
【0079】
一般的に、YCbCr色空間とRGB色空間とは、マトリクス演算Sを用いた上記式にて関連付けられるため、YCbCr色空間の表色系(0〜Y〜255、−128〜Cb〜127、−128〜Cr〜127)で示される画像データをRGB色空間の表色系にて表現した場合、R、G、B成分の正の色彩値の領域Tは、0〜255の領域が必ず確保されるが、負の色彩値の領域T/2は、元々、表現を予定していない領域であるため、正の色彩値の領域Tに比べて狭い傾向にある。したがって、負の色彩値に対するガンマ補正値を、正の色彩値と同様の第1のガンマ補正値γ1を用いると、図9に示すように、ガンマ補正後の負の色彩値領域R’1はガンマ補正前の負の色彩値領域R1よりも小さな領域(レンジ)しか保有することができず、せっかく利用する負の色彩値領域を有効に活用することができない。このような条件下において、R、G、B成分の負の色彩値がもたらす色空間をXYZ色空間上で広く確保するために、負の色彩値に対するガンマ補正値γとして、正の色彩値用の第1のガンマ補正値γ1(例えば、2.2)とは別の小さな第2のガンマ補正値γ2(例えば、1.5)を用いると、ガンマ変換後(補正後)のRt’、Gt’、Bt’のレンジを拡張することができる。
【0080】
つまり、撮影時においても、負の色彩値に対するガンマ補正値として正の色彩値に対するガンマ補正値とは別のより小さい値を用い、画像データの出力時にもそれぞれのガンマ補正値を用いることによって、画像データがより広いレンジにおいて表現され得ることとなり、出力される画像データの彩度が向上され、実際の被写体が有する鮮やかな色を再現することができる。
【0081】
ガンマ補正値γ>1.0の場合には、原点における傾きが0となり、第1のガンマ特性線L1と第2のガンマ特性線L2rとは、その継ぎ目(原点)において滑らかに連続して繋がれる。この結果、第1のガンマ特性線L1と第2のガンマ特性線L2rとのつなぎ目に起因する階調飛びが発生することなく、滑らかな階調値変化を有する画像データ(画像出力結果)を得ることができる。
【0082】
R成分、G成分、B成分は、それぞれ異なる負の色彩値領域を取り得るので、RGB各成分が有する負の色彩値領域の大きさによって、第2のガンマ補正値γを変更しても良い。後述する図10から読みとれるように、例えば、R成分>B成分>G成分の順に拡張される色彩値領域が大きくなる場合には、図9に示すようにR成分用の第2のガンマ補正値γ2r<B成分用の第2のガンマ補正値γ2b<G成分用の第2のガンマ補正値γ2gの順位第2のガンマ補正値γ2を大きくしても良い。かかる場合には、拡張され得る色彩値領域の範囲で適切なガンマ補正を実行することによって、その負の色彩値領域を有効に活用することができるからである。この結果、画像データをより広いレンジにて表現し、画像データの出力結果の彩度を向上させることができる。
【0083】
マトリクス演算MはRGB色空間をXYZ系色空間に変換するための演算処理である。マトリクス演算Mを実行する場合には、画像データ生成時の色空間を反映させるため、CPU31はColorSpaceタグを参照し、書き込まれている色空間に対応するマトリクス(M)を用いてマトリクス演算を実行する。このとき、sRGB色空間、NTSC色空間といった色空間が用いられ得る。ここで、XYZ系色空間を介してColorSpaceタグに記載されている色空間情報を反映させるのは、XYZ系色空間が絶対色空間であり、DSC、プリンタといったデバイスに依存しないデバイス非依存性色空間だからである。色空間を変換する際にもXYZ色空間レベルでは常に同じ値を取るようにすることにより、デバイスに依存しないカラーマッチングを行うことができる。マトリクス演算Mは以下に示す演算式である。
【0084】
RGB色空間上における、可視領域(VA)、sRGB(SR)、NTSC(NS)、wRGB(WR)の色空間領域は図10に示すとおりである。図10から理解できるように、sRGB色空間が最も狭い色空間領域を有しており、NTSC色空間領域、およびwRGB色空間領域はsRGB色空間領域よりも広い色空間領域を有している。
【0085】
【数2】

【0086】
マトリクス演算M実行後に得られる画像データGDの色空間はXYZ色空間である。従来は、プリンタまたはコンピュータにおける画像処理に際して用いられる色空間はsRGBに固定されており、ディジタルスチルカメラ12の有する色空間を有効に活用することができなかった。これに対して、本実施例では、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIに記載された画像データ生成時における色空間をターゲット色空間に設定し、設定された色空間に対応してマトリクス演算Mに用いられるマトリクス(M)を変更するプリンタ(プリンタドライバ)を用いている。したがって、ディジタルスチルカメラ12が、RGB色空間の色特性の1つであり、sRGB色空間よりも広い空間を有するNTSC色空間で画像データを生成した場合にも、画像データが生成された色空間を有効に活用して、正しい色再現を実現することができる。
【0087】
CPU31は、任意情報に基づく画像調整を実行するために、画像データGDの色空間をXYZ色空間からwRGB色空間へ変換する処理、すなわち、マトリクス演算N-1および逆ガンマ補正を実行する(ステップS230)。なお、wRGB色空間は、図10に示すとおりsRGB色空間よりも広い色空間であり、sRGB色空間では定義領域に含まれず表現されなかった第2の正の色彩値および負の色彩値も、wRGB色空間の定義領域内に含まれる表現可能な色彩値として取り扱われ得る。逆ガンマ補正を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中でカラープリンタ20側のガンマ補正値を参照し、設定されているガンマ補正値の逆数を用いて映像データに対して逆ガンマ変換処理を実行する。マトリクス演算N-1を実行する場合には、CPU31はROM31からwRGB色空間への変換に対応するマトリクス(N-1)を用いてマトリクス演算を実行する。マトリクス演算N-1は以下に示す演算式である。
【0088】
【数3】

【0089】
マトリクス演算N-1実行後に得られる画像データGDの色空間はwRGB色空間である。このwRGB色空間は既述のように、sRGB色空間よりも広い色空間であり、元来、ディジタルスチルカメラ12によって表現可能なRGB色空間に対応している。
【0090】
CPU31は、画像を特徴付けるための自動画像調整を実行する(ステップS240)。ここで実行される処理は、画像処理制御情報GIの中の画質に関連する情報に従って実行される処理である。自動画像調整を実行する際には、CPU31は既述のパラメータの中から明るさ、シャープネス等のパラメータ値をそれぞれ参照し、設定されているパラメータ値を用いて映像データに対して画像調整を実行する。なお、自動調整パラメータが指定されている場合には、自動調整パラメータによって指定されるパラメータ値を基本として、任意に指定されている他のパラメータ値を反映させる。
【0091】
また、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIにてこれら画質調整パラメータが指定されていない場合であっても、自動調整パラメータだけはディジタルスチルカメラ12側にて自動的に付されるため、CPU31は、自動調整パラメータ値に従って画像調整を実行する。
【0092】
CPU31は、印刷のためのwRGB色変換処理およびハーフトーン処理を実行する(ステップS250)。wRGB色変換処理では、CPU31は、ROM32内に格納されているwRGB色空間に対応したCMYK色空間への変換用ルックアップテーブル(LUT)を参照し、画像データの色空間をwRGB色空間からCMYK色空間へ変更する。すなわち、R・G・Bの階調値からなる画像データをプリンタ20で使用する、例えば、C・M・Y・K・LC・LMの各6色の階調値のデータに変換する。
【0093】
ハーフトーン処理では、色変換済みの画像データを受け取って、階調数変換処理を行う。本実施例においては、色変換後の画像データは各色毎に256階調幅を持つデータとして表現されている。これに対し、本実施例のカラープリンタ20では、「ドットを形成する」,「ドットを形成しない」のいずれかの状態しか採り得ない。すなわち、本実施例のプリンタ20は局所的には2階調しか表現し得ない。そこで、256階調を有する画像データを、カラープリンタ20が表現可能な2階調で表現された画像データに変換する。この2階調化(2値化)処理の代表的な方法として、誤差拡散法と呼ばれる方法と組織的ディザ法と呼ばれる方法とがある。
【0094】
カラープリンタ20では、色変換処理に先立って、画像データの解像度が印刷解像度よりも低い場合は、線形補間を行って隣接画像データ間に新たなデータを生成し、逆に印刷解像度よりも高い場合は、一定の割合でデータを間引くことによって、画像データの解像度を印刷解像度に変換する解像度変換処理を実行する。また、カラープリンタ20は、ドットの形成有無を表す形式に変換された画像データを、カラープリンタ20に転送すべき順序に並べ替えてるインターレス処理を実行する。
【0095】
本実施例では、カラープリンタ20において全ての画像処理を実行し、生成された画像データに従って、ドットパターンが印刷媒体上に形成されるが、画像処理の全て、または、部分をコンピュータPC上で実行するようにしても良い。この場合には、コンピュータPCのハードディスク等にインストールされている画像データ処理アプリケーションに図7を参照して説明した画像処理機能を持たせることによって実現される。ディジタルスチルカメラ12にて生成された画像ファイルGFは、ケーブルCVを介して、あるいは、メモリカードMCを介してコンピュータPCに対して提供される。コンピュータPC上では、ユーザの操作によってアプリケーションが起動され、画像ファイルGFの読み込み、画像処理制御情報GIの解析、画像データGDの変換、調整が実行される。あるいは、メモリカードMCの差込を検知することによって、またあるいは、ケーブルCVの差込を検知することによって、アプリケーションが自動的に起動し、画像ファイルGFの読み込み、画像処理制御情報GIの解析、画像データGDの変換、調整が自動的になされても良い。
【0096】
以上、説明したように第1の実施例に従うカラープリンタ20における画像処理によれば、画像データの色空間をYCbCr色空間からRGB色空間に変換するに際して発生した第2の正の色彩値および負の色彩値を有効に取り扱い、画像処理に用いることができる。また、カラープリンタ20は、sRGB色空間よりも広いwRGB色空間に対応したCMYK色空間変換テーブルを備えている。したがって、ディジタルスチルカメラ12によって生成された、sRGB色空間の定義領域外に存在する色彩値を有効に取り扱うことができると共に、sRGB色空間の定義領域外に存在する色彩値を用いて、より高彩度の印刷結果を得ることができる。すなわち、sRGB色空間上ではその定義領域外に存在するために表現できなかった色彩値を用いて、より彩度の高い印刷結果を得ることができる。
【0097】
画像ファイルGF内の画像処理制御情報GI内のColorSpaceタグによって記述されている色空間情報を反映してカラープリンタ20における画像処理を実行することができる。したがって、ディジタルスチルカメラ12によって指定された色空間特性に従って画像データの処理を実行することが可能となり、色空間の相違に起因するディジタルスチルカメラ12における撮影結果とカラープリンタ20における出力結果の相違を防止することができる。また、ディジタルスチルカメラ12の色再現能力を正しく再現することができる。
【0098】
D.その他の実施例:
カラープリンタ20における画像処理は、図11に示すように実行されても良い。図11は第2の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。本実施例では、sRGB色空間からwRGB色空間への色空間特性の変更に際して、マトリクス演算Mおよびマトリクス演算N-1を一つのマトリクス演算(MN-1)(ステップS320)として、画像処理の高速化を図っている。
【0099】
また、カラープリンタ20における画像処理は、図12に示すように実行されても良い。図12は第3の実施例としてのカラープリンタ20における画像処理を示すフローチャートである。本実施例では、YCbCr色空間で表現されている画像データに対して自動画像調整を先ず実行する(ステップ410)。続いて、自動画像調整が終了した画像データに対して、マトリクスS演算(ステップS420)、マトリクスM演算(ステップS430)、マトリクスN-1演算(ステップS440)を実行して、色空間の変換を順次実行する。
【0100】
上記第1〜第3の実施例では、カラープリンタ20によって画像処理を実行し、また、画像処理制御情報GIにおいて負値の利用が指定されている場合に、画像データの負値および第2の正値を利用した画像処理が実行された。これに対して、第4の実施例では、画像処理をパーソナルコンピュータPCにて実行すると共に、負値の利用の有無を画像処理を実行するオペレータが指定する。このパーソナルコンピュータPCにて実行される画像処理について図13を参照して説明する。図13は第4の実施例に係るパーソナルコンピュータPCにおける画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0101】
パーソナルコンピュータPCは、オペレータによって、画像ファイルGFの読み出しが指示されると、メモリカードMCから画像ファイルGFを読み出し、読み出した画像ファイルGFをRAM33に一時的に格納する(ステップS500)。パーソナルコンピュータPCは、オペレータによって、負値利用の指示が入力されたか否かを判定する(ステップS510)。パーソナルコンピュータPCは、負値利用の指示が入力されている場合には(ステップS520:Yes)、画像データGDに含まれる負値および第2の正値を利用した画像処理を実行して(ステップS530)、本処理ルーチンを終了する。
【0102】
パーソナルコンピュータPCは、負値利用の指示が入力されていない場合には(ステップS520:No)、画像データGDに含まれる負値および第2の正値を所定のRGB表色域内にクリッピングまたは負値および第2の正値を捨てて、画像データGDに対する画像処理を実行して(ステップS540)、本処理ルーチンを終了する。このように、オペレータによって画像処理時における負値の利用の有無を指定することができれば、PrintMatchingタグを有しない画像ファイルGFに対しても、画像データGDに含まれる負値を利用した画像処理を実行することができるので、画像処理の結果として、彩度の高い画像を得ることができる。
【0103】
上記各画像処理の実施例では、共に出力装置としてカラープリンタ20を用いているが、出力装置にはCRT、LCD、プロジェクタ等の表示装置を用いることもできる。かかる場合には、出力装置としての表示装置によって、例えば、図7等を用いて説明した画像処理を実行する画像処理プログラム(ディスプレイドライバ)が実行される。あるいは、CRT等がコンピュータの表示装置として機能する場合には、コンピュータ側にて画像処理プログラムが実行される。ただし、最終的に出力される画像データは、CMYK系色空間ではなくRGB色空間を有している。
【0104】
かかる場合には、カラープリンタ20を介した印刷結果がディジタルスチルカメラ12によって生成された画像データの色空間を反映できるのと同様にして、CRT等の表示装置における表示結果を画像ファイルGFによって指定することができる。したがって、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIに、CRT等の表示装置に適したパラメータを持たせることにより、また、個々の表示装置の表示特性に最適化したパラメータを持たせることにより、ディジタルスチルカメラ12によって生成された画像データGDをより正確に表示させることができる。
【0105】
上記第1の実施例では、画像処理制御情報GIは、画像データGDと共に画像ファイルGFに格納されているが、画像データGDとは別ファイルとしてメモリカードMCに格納されても良い。
【0106】
また、上記各実施例では、画像処理制御情報GIを検出して負値利用の指示が指定されている場合、あるいは、オペレータ等によって負値利用が指示された場合に画像データGDに含まれる負値、および第2の正値を利用して画像処理を実行している。しかしながら、これらの指定、指示を受けることなく、始めから負値、および第2の正値を利用する画像処理を実行するようにしてもよい。かかる場合には、画像データGDに負値等が含まれていれば、負値等を反映した画像処理結果を得ることができ、画像データGDに負値等が含まれていなければ、通常の画像処理結果を得ることができる。
【0107】
以上、いくつかの実施例に基づき本発明に係る画像データ出力装置を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【0108】
上記第1の実施例では、マトリクスS演算時における第2の正の色彩値および負の色彩値を有効に扱う処理と、マトリクスM演算時に指定された色空間情報を反映する処理とを同時に実行しているが、これらの処理は同時に実行されなくても良い。例えば、マトリクスM演算時における色空間をwRGB空間に固定しておき、マトリクスS演算時における第2の正の色彩値および負の色彩値を有効に扱う処理のみを実行しても良い。かかる場合には、例えば、ディジタルスチルカメラ12としては表現可能であるがsRGB色空間では表現され得なかったsRGB色空間の定義領域外の色を表現することが可能となり、出力画像の彩度を向上させることができる。
【0109】
また、マトリクスS演算時に第2の正の色彩値および負の色彩値を用いた処理を実行することなく、マトリクスM演算時に撮影時または指定された色空間情報を反映する処理を実行しても良い。かかる場合には、画像処理に際して画像データ生成時における色空間を正しく解釈し、正しい色再現を実現することができる。したがって、入力装置、出力装置等の装置固有の色空間の影響を受けることのない、装置非依存性の色空間変換処理を実行することができる。この結果、撮影時に得られた画像データの出力結果と同様の出力結果を出力装置から得ることができる。
【0110】
さらに、上記実施例では、画像処理制御情報GIによって、負値の利用の有無を指定しているが、負値の利用の有無を指定することなく、正値用のガンマ補正値と負値用のガンマ補正値とを画像処理制御情報GIによって指定しても良い。画像データGDが負の値を有する場合に問題となる処理は、ガンマ補正処理である。したがって、ガンマ補正処理に用いるべきガンマ補正値を正のデータと負のデータとで使い分けることにより、画像処理において負値の利用の有無を指定する必要なく、画像処理を実行することができる。
【0111】
また、例示した各パラメータは、あくまでも例示に過ぎず、これらのパラメータによって本願に係る発明が制限されることはない。さらに、各数式におけるマトリクスS、M、N-1の値は例示に過ぎず、ターゲットとする色空間、あるいは、カラープリンタ20において利用可能な色空間等によって適宜変更され得ることはいうまでもない。
【0112】
上記各実施例では、画像ファイル生成装置としてディジタルスチルカメラ12を用いて説明したが、この他にもスキャナ、ディジタルビデオカメラ等が用いられ得る。スキャナを用いる場合には、画像ファイルGFの基本情報、任意情報の指定はコンピュータPC上で実行されても良く、あるいは、スキャナ上に情報設定用に予め設定情報が割り当てられているプリセットボタン、任意設定のための表示画面および設定用ボタンを供えておき、スキャナ単独で実行可能にしてもよい。
【0113】
上記各実施例において用いた色空間はあくまでも例示であり、他の色空間を用いても構わない。いずれの場合にも、ディジタルスチルカメラ12等の画像データ生成装置にて生成された画像データが、画像データ生成装置の有する色空間を反映して出力されれば良い。
【0114】
上記第1実施例では、画像ファイルGFとしてExif形式のファイルを例にとって説明したが、本発明に係る画像ファイルの形式はこれに限られない。すなわち、出力装置によって出力されるべき画像データと、ディジタルスチルカメラ12等の画像データ生成装置において用いられた色空間に関する情報とが少なくとも含まれている画像ファイルであれば良い。このようなファイルであれば、画像データ生成装置において生成された画像データ(モニタ等を介して得られる画像表示)と出力装置における出力画像との出力画像の相違を低減することができるからである。
【0115】
上記第1実施例に係るカラープリンタ20はあくまで例示であり、その構成は各実施例の記載内容に限定されるものではない。カラープリンタ20は、少なくとも、画像ファイルGFの画像処理制御情報GIを解析して、記載、または、指定された色空間情報に応じて画像を出力(印刷)できればよい。
【0116】
なお、画像データと画像処理制御情報GIとが含まれる画像ファイルGFには、画像処理制御情報GIとを関連付ける関連付けデータを生成し、画像データと画像処理制御情報GIとをそれぞれ独立したファイルに格納し、画像処理の際に関連付けデータを参照して画像データと画像処理制御情報GIとを関連付け可能なファイルも含まれる。かかる場合には、画像データと画像処理制御情報GIとが別ファイルに格納されているものの、画像処理制御情報GIを利用する画像処理の時点では、画像データおよび画像処理制御情報GIとが一体不可分の関係にあり、実質的に同一のファイルに格納されている場合と同様に機能するからである。すなわち、少なくとも画像処理の時点において、画像データと画像処理制御情報GIとが関連付けられて用いられる態様は、本実施例における画像ファイルGFに含まれる。さらに、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM等の光ディスクメディアに格納されている動画像ファイルも含まれる。
【0117】
上記実施例では、ディジタルスチルカメラ20を用いて画像ファイルを生成しているが、ディジタルビデオカメラによって生成しても良い。ディジタルビデオカメラにて生成される場合には、例えば、静止画像データと出力制御情報とを格納する画像ファイル、あるいは、MPEG形式等の動画像データと出力制御情報とを含む動画像ファイルが生成される。この動画像ファイルが用いられる場合には、動画の全部または一部のフレームに対して出力制御情報に応じた出力制御が実行される。
【符号の説明】
【0118】
10…画像データ出力システム、12…ディジタルスチルカメラ、121…光学回路、122…画像取得回路、123…画像処理回路、124…制御回路、126…選択・決定ボタン、14…ディスプレイ、20…カラープリンタ、21…キャリッジ、211…印字ヘッド、212…インクカートリッジ、213…インクカートリッジ、214〜220…インク吐出用ヘッド、22…キャリッジモータ、23…プラテン、24…紙送りモータ、25…摺動軸、26…駆動ベルト、27…プーリ、28…位置検出センサ、29…操作パネル、30…制御回路、31…演算処理装置(CPU)、32…プログラマブルリードオンリメモリ(PROM)、33…ランダムアクセスメモリ(RAM)、34…PCMCIAスロット、35…周辺機器入出力部(PIO)、36…タイマ、37…駆動バッファ、38…バス、39…発振器、40…分配出力器、GF…画像ファイル(Exifファイル)、101…JPEG画像データ格納領域、102…付属情報格納領域、103…Makernote格納領域、MC…メモリカード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて画像処理を実行する画像処理装置であって、
前記画像データを取り込む画像データ取り込み手段と、
前記画像データに関連付けられている前記使用情報を取得する使用情報取得手段と、
前記取得された使用情報に基づいて、前記所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを判定する判定手段と、
前記領域外情報を使用すると判定された場合には、前記所定の色空間の領域外の情報を内包し得る広い定義領域を有し、出力機器に依存しない出力機器非依存広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行する画像処理手段とを備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記領域外情報を使用しないと判定された場合には、前記画像処理手段は、前記所定の色空間と同等の定義領域を有する既定の色空間を介して前記画像データの画像処理を実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置において、
前記画像データは第1の色空間によって定義されており、
前記画像データ取り込み手段は、前記取り込んだ画像データの色空間を前記第1の色空間から第2の色空間に変換し、
前記画像処理手段は、前記第2の色空間によって定義されている画像データの色空間を、前記領域外表色値を用いて第3の色空間に変換することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、
前記第2の色空間はsRGBの色空間であり、
前記第3の色空間は前記sRGBの色空間よりも広い定義領域を有する第2のRGBの色空間であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記第1の色空間はYCbCrの色空間であり、
前記第2の色空間はsRGBの色空間であり、
前記第3の色空間は前記sRGBの色空間よりも広い定義領域を有するCIELABの色空間であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の画像処理装置において、
前記画像処理手段はクリッピング処理が施されていない画像データに対して、クリッピング処理を伴わない前記出力機器非依存広域色空間への色変換処理を実行することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像処理装置において、
前記画像処理手段はさらに、
前記出力機器非依存広域色空間に変換された前記画像データに対して画質調整処理を実行する画質調整手段を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて画像処理を実行するためのプログラムであって、
前記画像データを取り込む機能と、
前記取り込んだ画像データに関連付けられている前記使用情報を取得する機能と、
前記取得した使用情報に基づいて、前記領域外の情報を使用するか否かを判定する機能と、
前記領域外情報を使用すると判定された場合には、前記所定の色空間の領域外の情報を内包し得る広い定義領域を有し、出力機器に依存しない出力機器非依存広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行する機能と、
前記画像処理が施された画像データを出力する機能とをコンピュータによって実現させるプログラム。
【請求項9】
画像データと、所定の色空間の領域外の情報を使用するか否かを示すと共に前記画像データに関連付けられている使用情報とを用いて出力画像データを生成する方法であって、
前記画像データを取り込み、
前記取り込んだ画像データに関連付けられている前記使用情報を取得し、
前記取得した使用情報に基づいて、前記領域外の情報を使用するか否かを判定し、
前記領域外情報を使用すると判定された場合には、前記所定の色空間の領域外の情報を内包し得る広い定義領域を有する出力機器に依存しない出力機器非依存広域色空間への色変換処理を含む前記画像データの画像処理を実行して前記出力画像データを生成する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−102533(P2013−102533A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−16624(P2013−16624)
【出願日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【分割の表示】特願2010−124209(P2010−124209)の分割
【原出願日】平成13年10月15日(2001.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】