説明

画像伝送方法

【課題】 双方向対話における補助情報として、画像データなどの視覚データをより効果的に提供していくための画像伝送方法を提供する。
【解決手段】 第1端末装置(1A)の利用者(3A)により表示画面(8A)上で設定された1又は複数の画像取込フレーム(801A)の該表示画面(8A)上の相対位置をモニタしながら、該画像取込フレーム(801A)で囲まれた該表示画面(8A)の一部であるフレーム画像を所定のタイミングごとに切り取り、フレーム画像が切り取られるごとに該フレーム画像を第2端末装置(1B)に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信ケーブルを介して直接接続されたりネットワークを介して接続された端末装置間での双方向対話の補助データとして利用される視覚データの加工技術等に関するものである
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔地の対話者間で互いに相手側対話者の映像を互いに視線一致した状態でモニタに表示しながらテレビ会議やカウンセリング等の親密な対話を実現する双方向対話型システムが提案されている。この視線一致技術には種々の技術が提案されており、相手側対話者像が表示されるモニタの所定位置にCCDカメラのような撮像デバイスを配置することにより視線一致を実現している(特許文献1参照)。
【0003】
一方、上述のような双方向対話型システムは、一対一対話において資料等の補助資料の利用には必ずしも適しているとは言えず、広範囲の分野での双方向対話の適用には至っていない。また、一対一対話では未だにIP電話などによる双方向対話が主流であり、テキストなどの静止画像、動画像等の視覚データは共通の対話補助データとしての利用に留まっているのが現状である。
【特許文献1】特許第3074677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、従来の双方向型対話システムについて検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、パーソナルコンピュータ(PC)の普及により一般的な職場環境下では、各人の机上に1台以上のPCの設置が実現されているにも関わらず、現実には、電話による音声対話が中心であり、PCを利用した画像伝送を併用した電話会議(IP電話など)の活用例は十分に普及しているとは言えない。
【0005】
また、上述のような環境下において、対話者間で共通の資料を参照しながらの双方向対話が行われると、勢い双方向対話の効率が低下してしまう。これは、リアルタイムの双方向画像伝送ができないことに起因している。例えば、資料を事前に一方の対話者から相手対話者にメール送信することはできるが、実際の対話では、資料のどのページ、更にはどの位置を指摘しているのかを、対話者自身が口頭で相手対話者に伝える必要があり、双方向対話におけるこのネゴシエーションによる遅延は対話自体の効率性を著しく低下させてしまう。一方で、資料が送られてきた相手対話者は、誤り無くその指定された資料を開けなくてはならない。また、相手対話者がその資料を正しく開けたか否かも、実はメール送信者である対話者自身にも判らないという課題があった。
【0006】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、音声を中心とした双方向対話の他、音声データとともに対話者の顔画像を含む画像データの送受信も同時に行われるテレビ電話サービス、テレビ会議システム等の双方対話における補助情報として、静止画像や動画像などの画像データに代表される視覚データをより効果的に提供していくための画像伝送方法、該画像伝送方法を実行するためのコンピュータプログラム、及び該コンピュータプログラムが記録された記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る画像伝送方法は、LANケーブルなどの通信ケーブル、電話回線網やインターネットなどのネットワークなど所定の伝送手段を介して直接又は間接的に接続されることにより互いに対話可能な状態に設定された第1端末装置から第2端末装置に対して、該第1端末装置から該第1端末装置の表示画面の一部を選択的に送信する画像伝送方法に関する。これら第1及び第2端末装置間の接続形態としては、通信ケーブルを会して直接接続された1対1接続(Peer-to-peer接続)、サーバを介した1対1接続、サーバを介して第1端末装置と複数の第2端末装置が接続された1対多接続などがあり、当該画像伝送方法は、音声を中心とした双方向対話の他、音声データとともに対話者の顔画像を含む映像データの送受信も同時に行われるテレビ電話サービス、テレビ会議システム等の双方向対話における補助情報として、静止画像や動画像などの画像データに代表される資料データをより効果的に提供する。ここで、表示画面とは、各端末装置に備えられた表示装置のモニタ画面上の、該端末装置の利用者自身(端末装置を利用する対話者自身)が視覚的に認知している表示データ自体を意味する。また、表示画面の一部とは、このモニタ画面上に同時表示されているPowerPoint(マイクロソフト社の登録商標)、表計算ソフト(例えば“Excel”など)、ワープロソフト(例えば“Word”など)、ブラウザなどのアプリケーションソフトにより生成される資料データ(テキスト、写真、映像等)などで構成された、端末装置の利用者自身が視覚的に認知している表示データの一部を意味している。
【0008】
この発明に係る画像伝送方法は、第1端末装置から第2端末装置への画像伝送において、まず第1端末装置の利用者自身が視覚的に認知している表示画面の一部を切り出すステップと、この切り出された表示画面の一部を第2端末装置に送信する伝送ステップとを備える。
【0009】
上記切り出しステップでは、第1端末装置の利用者により表示画面上で設定された1又は複数の画像取込フレームの該表示画面上の相対位置をモニタしながら、該画像取込フレームで囲まれた該表示画面の一部であるフレーム画像を所定のタイミングごとに切り取っていく。また、伝送ステップでは、切り取られたフレーム画像を第2端末装置に送信する。なお、必ずしもフレーム画像の切り出しごとに送信しなくてもよい。
【0010】
なお、フレーム画像が切り取られるタイミングは、1秒間に1回〜数回程度の一定時間ごととするタイミング、フレーム画像の変化が検知されるなど任意の条件を満たすタイミング、及び、ウィンドサイズを変更する場合など利用者自身のマウス操作やキー入力などによる制御信号の発生タイミングのいずれであってもよい。また、利用者自身によって送信指示(手動送信)されるタイミングであってもよい。特に、表示画面上に複数の画像取込フレームが設定された場合におけるフレーム画像の伝送では、伝送容量等のリソース性能を有効利用するため、予め決められた条件(例えば、画像取込フレーム内での表示変化の検出など)を満たすタイミングや利用者による制御信号の発生タイミングで切り取られたフレーム画像の伝送を行うのが好ましい。
【0011】
上述のように、対話者像や音声の送受信を中心とした双方向対話において、端末装置の利用者である対話者同士が資料を単に共有するのではなく、対話者自身が相手対話者に注目させたい部位を視覚データとして効率的に伝送することができるため、綿密かつスムースな対話進行が可能になる。すなわち、上述のような構成により、対話者同士による資料共有化のためのネゴシエーションの、双方向対話全体に占める時間比率を著しく低減することが可能になる。また、対話者自身は、共有化された資料の特定部位だけに焦点を絞って相手対話者にプレゼンテーションできる点や、送信前に予め対話者自身が伝送すべき部分を確認できる点などからも、効率的な双方向対話が可能になる。
【0012】
なお、上記画像取込フレームのサイズ及び表示画面上における設定位置については、第1端末装置の利用者自身が任意に設定可能である。ところが、この画像取込フレームが大きく設定されると、フレーム画像の圧縮などに処理負荷(時間及びリソース負荷)が大きくなるため、予め一定サイズ以上の画像取込フレームが設定された場合には、取込対象であるフレーム画像を複数の領域に分割し、これら分割された領域ごとに画像処理(画像伝送の前処理としての画像縮小や圧縮など)が行われるのが好ましい。この場合、JPEG2000のタイリング技術が有効である。JPEG2000では、分割された領域(タイル)それぞれが処理単位となるため、タイルごとに伝送の有無を決定したり、個別に圧縮率を設定することができ、より柔軟な画像処理が可能になる。
【0013】
この発明に係る画像伝送方法では、表示画面上に設定された画像取込フレーム内における表示変化が検知されるごとに(動き検知)、該画像取込フレームで規定された表示画面の一部であるフレーム画像を第2端末装置へ送信するのが好ましい。
【0014】
双方向対話中であれば、1秒間に1回〜数回程度のデータ送信を行うことにより、リアルタイムで指摘箇所のフレーム画像を送信することもできる。しかしながら、上述のようなアプリケーションソフトにより生成される表示データは、一旦画像取込フレームの位置が固定されると該画像取込フレームで規定されるフレーム画像の表示変化は生じ難い。このような状況でも一定時間ごとにフレーム画像を送信していたのでは通信リソースを有効利用しているとは言い難い。一方で、時間経過とともに部分的な変化(例えば、カーソルの移動や文字の追加表示など)も生じることから、画像取込フレーム内に表示変化が生じた時にフレーム画像を送信すれば、より通信リソースの有効利用が可能になる。なお、上述のように、1つのフレーム画像が複数の領域に分割される場合には、これら複数の領域のうち動き検知された領域のみを第2端末装置に送信すれることで、より効率的な画像伝送が可能になる。
【0015】
ここで、この発明に係る画像伝送方法で取り扱われるフレーム画像は、静止画像や動画像が含まれる。動画像には、所定の撮像装置などにより取り込まれた対話者の顔画像などの映像データの他、上記アプリケーションソフトなどにより生成された表示データ、静止画像と映像の組み合わせなども含まれる。また、上記アプリケーションソフトなどにより生成されたデータファイルは、一旦画像データに変換された後に圧縮等の処理が施される。
【0016】
上述の動き検知によって検知されるべきフレーム画像の表示変化は、第1端末装置の表示画面対話者自身が設定した画像取込フレームで規定されるフレーム画像自体の表示変化の他、表示画面内における画像取込フレームの設定変更にともなう表示変化も含まれる。この画像取込フレームの設定変更には、フレームサイズの変更やフレームの移動(カーソル等によって対話者自身がフレームを移動させる場合)が含まれる。
【0017】
この発明に係る画像伝送方法において、第1及び第2端末装置間での総伝送量が一定又は所定値以下になるよう切り取られたフレーム画像の伝送品質や画像サイズは逐次変更されるのが好ましい。例えば、テレビ電話サービスやテレビ会議システムなどのように対話者の顔画像及び音声の各データの送受信が行われるシステムにおいては、これら顔画像及び音声も含んだデータ全体として伝送量が制御される。通常、端末装置における処理負荷(CPU負荷)、伝送路容量等の画像処理、伝送能力はモニタ可能である。また、複数の画像取込フレームが設定された場合には、双方向対話中に複数のフレーム画像が並行して伝送されることになる。このような場合、或る画像伝送処理の伝送負荷だけが大きくなると他の画像伝送処理に影響を与えてしまう一方、他の画像伝送処理が行われていない場合にはより伝送負荷を大きくすることで通信リソースのより効率的な利用も可能になる。ここで、フレーム画像の伝送品質は、例えばフレーム画像の伝送レートを変更したり、該フレーム画像の圧縮率を変更することにより調整される。なお、フレーム画像が複数の領域に分割されている場合、JPEG2000を利用することにより分割領域ごとに圧縮率の変更も可能である。
【0018】
この発明に係る画像伝送方法は、第1及び第2端末装置の少なくともいずれかにおいて、切り取られたフレーム画像を、該フレーム画像が伝送されるごとに順次記録していくのが好ましい。このように逐次記録されたデータは当該双方向対話の記録データとなる。
【0019】
なお、上述のような画像伝送方法は、コンピュータ等で実行されるプログラムであってもよく、この場合、当該プログラムは、有線、無線を問わずネットワークを介して配信されてもよく、また、CD、DVD、フラッシュメモリ等の記録媒体に格納されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、双方向対話における補助情報として、静止画像や動画像などの画像データに代表される視覚データをより効果的に提供することが可能になり、綿密かつスムースな対話進行が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明に係る画像伝送方法の各実施形態を、図1〜図7を用いて詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一要素、同一部位には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0022】
図1は、この発明に係る画像伝送方法が適用可能なネットワークシステムの概略構成を示す図である。なお、図1では、第1端末装置1Aと第2端末装置1Bとがネットワーク2を介して接続されているが、LANケーブルなどの通信ケーブルによりこれら端末装置1A、1B間が直接接続されてもよい。また、インターネットと既存の電話回線など、複数種類のネットワークが併用されてもよい。これら端末装置1A、1Bの接続形態としては、図1に示されたようなサーバを介した1対1接続の他、通信ケーブルを介して直接接続された1対1接続(peer-to-peer接続)や、サーバを介して1台の端末装置(例えば端末装置1Aに相当)と複数台の端末装置(それぞれが端末装置1Bに相当)が接続された、講義形式が実現可能な1対多接続などがある。
【0023】
この図1において、伝送手段としてのネットワーク2には、それぞれノード2a、2bを介して端末装置1A、1Bが接続されており、これら端末装置1A、1B間での双方向対話が可能になっている。例えば、端末装置1Aは、一般的に、通信制御機能等、主要な情報処理機能を実行するPC本体100Aと、表示装置200Aを備えている。同様に、端末装置1Bも、PC本体100Bと、表示装置200Bを備える。
【0024】
この発明に係る画像伝送方法は、上述のような伝送手段(図1の場合、ネットワーク2)を介して直接又は間接的に接続されることにより互いに対話可能な状態に設定された端末装置1Aから第2端末装置1Bに対して、該端末装置1Aから該第1端末装置1Aの表示画面の一部を選択的に端末装置1Bに送信する画像伝送方法である。
【0025】
図2は、この発明に係る画像伝送方法を実行可能な端末装置の構成を示すブロック図である。この端末装置1A(1B)は、モニタ等の表示装置200A(200B)と、映像処理を行うPC本体100A(100B)と、外部記録装置700と、マウス等のポインティングデバイス400と、キーボード500と、マイク600と、スピーカー300とを備える。なお、端末装置1Bについても同様の構造を有するため、以下、端末装置1Aについてのみ説明する。
【0026】
PC本体100Aは、ネットワーク2を介して相手対話者からの音声データや画像データ(符号化データ)の送受信を行うためのデータ入出力部110(図中、I/O)と、この発明に係る画像伝送方法を実行する制御部120と、送受信される画像データを格納しておくためのデータベース130(図中、D/B)と、表示装置200Aへ制御部120の指示に従って所定のパターンを表示させるための、VRAM141を有する描画部140と、マウス等のポインティングデバイス400からの位置情報の取り込みや外部記録装置700とのデータ授受を可能にするデータ入出力部150(図中、I/O)と、相手対話者の音声が出力されるスピーカー300を制御するための音源コントローラ160とを備える。
【0027】
なお、外部記録装置700は、例えば磁気テープ、CD、光ディスク、ハードディスク、DVD、フラッシュメモリ等を含み、この発明に係る画像伝送方法を実行するコンピュータプログラムや相手側対話者からの送信データなどが格納される。
【0028】
この発明に係る画像伝送方法は、上述のような構造を有する端末装置1Aが設置されたA地点と、端末装置1Bが設置されたB地点との間で実行される双方向対話に特に有効である。このような双方向対話の実施形態には、図3に示されたような種々の形態がある。
【0029】
例えば、図3(a)に示された実施形態では、双方向対話としてIP電話サービス(テレビ電話サービスやテレビ会議システムなど、対話者の顔画像とともに音声データの送受信を行う双方向対話であってもよい)などを提供しているネットワークをそのまま利用して視覚データを送信している。すなわち、A地点に居る対話者3Aの音声データがマイク600Aを介してPC本体100Aに取り込まれ、このPC本体100Aからネットワーク2を介してB地点に設置された端末装置1BのPC本体100Bに伝送される。PC本体100Bに取り込まれた音声データはスピーカ300Bから相手対話者3Bに出力される。逆に、B地点に居る対話者3Bの音声データはマイク600Bを介してPC本体100Bに取り込まれ、このPC本体100Bからネットワーク2を介してA地点に設置された端末装置1AのPC本体100Aに伝送される。PC本体100Aに取り込まれた音声データはスピーカ300Aから対話者3Aに出力される。
【0030】
このとき、対話者3Aは、表示装置200Aの表示画面の一部を指定し、双方向対話の補助資料データとして画像データをネットワーク2を介してB地点の端末装置1Bに送信している。B地点の端末装置1Bでは、端末装置1Aから送信されてきた画像データを表示装置200Bの表示画面上に設定された表示ウィンド内に表示する。
【0031】
なお、上述の図3(a)に示された実施形態では、音声データとともに対話補助データである画像データもネットワーク2を介して伝送される。しかしながら、現実の双方向対話では、上述のようなネットワークを介して音声データの送受信を行うIP電話サービスの他、既存の電話回線網20を利用した従来型の双方向対話も広く行われている。この場合、図3(b)に示されたように、音声による双方向対話は既存の電話網を利用する一方、この双方向対話と並行してネットワーク2を介した視覚データの送受信を行うことも可能である。
【0032】
この発明に係る画像伝送方法は、端末装置1Aから端末装置1Bへの画像伝送において、まず端末装置1Aの利用者自身が視覚的に認知している表示画面の一部を切り出すステップと、この切り出された表示画面の一部を端末装置1Bに送信する伝送ステップとを備える。
【0033】
具体的には、図4(a)に示されたように、端末装置1Aにおける表示装置200Aの表示画面8A上にて対話者3Aがカーソル80Aを利用して画像取込フレーム801Aを設定する。一方、相手対話者3Bは、端末装置1Bにおける表示装置200Bの表示画面8B上にて端末装置1Aから送信されてくるフレーム画像(静止画像、動画像のいずれでもよい)を表示するウィンド801Bをカーソル80Bの操作により設定する。
【0034】
このとき、表示画面8Aは、端末装置1Aを利用している対話者3A自身が視覚的に認知している表示データ自体を意味する。この表示画面8A上には、PowerPoint(マイクロソフト社の登録商標)、表計算ソフト(例えば“Excel”など)、ワープロソフト(例えば“Word”など)、ブラウザなどのアプリケーションソフトにより生成される資料データ(テキスト、写真、映像等)などが同時表示されており、図4(b)では、表示画面8A上に資料の静止画像データ9Aと、動画像データ9Bが同時表示されている。フレーム画像の切り出しステップでは、対話者3Aにより画像取込フレーム801Aが図4(b)で示された位置に設置されたとすると、この画像取込フレーム801Aで規定されるフレーム画像に対し、所定の画像処理(品質制御)が行われる。さらに、伝送ステップにおいて相手対話者3Bの端末装置1Bに切り取られたフレーム画像が送信されると、該端末装置1Bにおいて表示制御が行われる。具体的には、端末装置1Bにおいて、送信されたフレーム画像は、予め相手対話者3Bによって設定された表示ウィンド801B内に表示できるよう、復号化した後に拡大あるいは縮小などの処理を施して表示画面8B上の表示ウィンド801B内に表示される。
【0035】
なお、画像取込フレーム801Aのサイズ及び表示画面8A上における設定位置については、上述のように端末装置1Aを利用する対話者3A自身が任意に設定する。ところが、この画像取込フレーム801Aが大きく設定されると、フレーム画像の圧縮などに処理負荷(時間及びリソース負荷)が大きくなるため、予め一定サイズ以上の画像取込フレーム801Aが設定された場合には、取込対象であるフレーム画像を複数の領域に分割し、これら分割された領域ごとに画像処理(画像伝送の前処理としての画像縮小や圧縮など)が行われるのが好ましい。この場合、JPEG2000のタイリング技術が有効である。JPEG2000では、分割された領域(タイル)それぞれが処理単位となるため、タイルごとに伝送の有無を決定したり、個別に圧縮率を設定することができ、より柔軟な画像処理が可能になる。
【0036】
また、フレーム画像が切り取られるタイミングは、1秒間に数回程度の一定時間ごととするタイミング、フレーム画像の変化が検知されるなど任意の条件を満たすタイミング、及び、ウィンドサイズを変更するなど対話者3A自身によるマウス400Aの操作やキーボード500からの入力で発生する制御信号の発生タイミングのいずれであってもよい。さらには、対話者3A自身によって送信指示(手動送信)されるタイミングであってもよい。表示画面8A上に複数の画像取込フレーム801Aが設定された場合におけるフレーム画像の伝送では、伝送容量等のリソース性能を有効利用するため、予め決められた条件(例えば、画像取込フレーム内での表示変化の検出など)を満たすタイミングや利用者3Aによる制御信号の発生タイミングで切り取られたフレーム画像の伝送を行ってもよい。
【0037】
特に、動き検知によって検知されるべきフレーム画像の表示変化は、端末装置1Aの表示画面8A上において対話者3A自身が設定した画像取込フレーム801Aで規定されるフレーム画像自体の表示変化の他、表示画面8A内における画像取込フレーム801Aの設定変更に伴う表示変化も含まれる。この画像取込フレーム801Aの設定変更には、フレームサイズの変更やフレームの移動(カーソル等によって対話者自身がフレームを移動させる場合)が含まれる。図4(c)及び4(d)は、対話者3A自身がカーソル80Aを操作することにより画像取込フレーム801Aを移動させたときの状態を示す。
【0038】
すなわち、図4(c)に示されたように、対話者3Aが表示画面8A上における画像取込フレーム801Aの位置を移動させることにより、端末装置1Bにおける表示画面8B上に設定された表示ウィンド801B内には、画像取込フレーム801Aの移動に伴って逐次伝送されたフレーム画像が表示される(動き検知のタイミングに一致したタイミングで表示される)。さらに、図4(d)に示されたように、対話者3Aが表示画面8A上における画像取込フレーム801Aの位置を動画像9Bの表示位置まで移動させると、端末装置1Bにおける表示画面8B上に設定された表示ウィンド801B内には、画像取込フレーム801A内に表示されている動画像9Bの一部が表示される。
【0039】
このような双方向対話において、対話者3A、3B同士が資料を単に共有するのではなく、対話者3A自身が相手対話者3Bに注目させたい部位を視覚データとして効率的に伝送することができるため、綿密かつスムースな対話進行が可能になる。すなわち、上述のような構成により、対話者3A、3B同士による資料共有化のためのネゴシエーションの、双方向対話全体に占める時間比率を著しく低減することが可能になる。また、対話者自身は、共有化された資料の特定部位だけに焦点を絞って相手対話者にプレゼンテーションできる点や、送信前に予め対話者自身が伝送すべき部分を確認できる点などからも、効率的な双方向対話が可能になる。
【0040】
次に、この発明に係る画像伝送方法を、フレーム画像の送信を上述の動き検知タイミングで行う場合を例に説明する。図5は、画像データの送信側端末における画像伝送手順(この発明に係る画像伝送方法)を説明するためのフローチャートである。
【0041】
まず、図4(a)に示されたように、端末装置1aを利用する対話者3A自身が表示画面8A上に画像取込フレーム801Aをカーソル操作により設定する(ステップST10)。
【0042】
画像取込フレーム801Aが設定されると、このフレーム801Aで規定されるフレーム画像が1秒間に数回のタイミングで取り込まれ(ステップST20)、動き検知が行われる(ステップST30)。なお、取り込まれるフレーム画像は、端末装置1Aにおける描画部140のVRAM141に格納されているビットマップデータである。
【0043】
具体的に、この動き検知は、図6に示されたように行われる。双方向対話中であれば、1秒間に1回〜数回程度のデータ送信を行うことにより、リアルタイムで指摘箇所のフレーム画像を送信することもできる。しかしながら、上述のようなアプリケーションソフトにより生成される表示データは、一旦画像取込フレーム801Aの位置が固定されると該画像取込フレーム801Aで規定されるフレーム画像の表示変化は生じ難い。このような状況でも一定時間ごとにフレーム画像を送信していたのでは通信リソースを有効利用しているとは言い難い。一方で、時間経過とともに部分的な変化(例えば、カーソルの移動や文字の追加表示など)も生じることから、画像取込フレーム801A内に表示変化が生じた時にフレーム画像を送信すれば、より通信リソースの有効利用が可能になる。なお、上述のように、1つのフレーム画像が複数の領域に分割される場合には、これら複数の画像ごとに動き検知を行い、動き検知された領域のみを第2端末装置に送信することで、より効率的な画像伝送が可能になる。すなわち、変化検出時のみ、変化領域のみの効率的な画像伝送が可能になる。
【0044】
なお、図6(a)には、時間t1、t2(=t1+Δt)でそれぞれ取り込まれた前フレーム画像t1と、後フレーム画像t2同士を比較する様子が示されている。具体的な比較では、前フレーム画像t1内の予め指定された画素の輝度値a1、a2、a3、a4、a5、a6と、後フレーム画像t2内の対応する画素の輝度値b1、b2、b3、b4、b5、b6を求め、これら対応する画素同士の差を合計することで動き量を算出する。すなわち、フレーム画像内の動き量は、以下の式で表される。
|a1−b1|+|a2−b2|+|a3−b3|
+|a4−b4|+|a5−b5|+|a6−b6|
【0045】
以上の式で算出された動き量が所定の閾値を超えている場合に、画像取込フレーム801A内に表示変化が生じたと判断される。ここで、画像取込フレーム801Aにより規定されるフレーム画像が複数の領域(JPEG2000におけるタイルに相当)に分割されている場合、この動き検知は各タイルごとに行われ、また、輝度値を比較するための画素数は、タイルごとに異なっていてもよい。
【0046】
図6(b)は、上述の動き検知動作を含む符号化処理を概念的に示すブロック図である。この図6(b)に示されたように、処理対象である後フレーム画像t2について、比較対象である前フレーム画像t1を利用した動き検知が行われ、この検知結果に基づいて、伝送ステップが行われる。この伝送ステップでは、送信されるフレーム画像が、通信リソースや通信環境を考慮して所定の圧縮率で符号化された後に送信される。
【0047】
上述のステップST30における動き検知によって画像取込フレーム801A内での表示変化が検知された場合、さらに送信されるべきフレーム画像の伝送品質や画像サイズが決定される(ステップST40)。このステップST40における伝送品質は、通信状況等の環境条件によって決定される。すなわち、送信側である端末装置1Aと受信側である端末装置1B間での総伝送量が一定又は一定値以下になるよう切り取られたフレーム画像の伝送品質や画像サイズは逐次変更される。例えば、テレビ電話サービスやテレビ会議システムなどのように対話者の顔画像及び音声の各データの送受信が行われるシステムにおいては、制御部120がこれら顔画像及び音声も含んだデータ全体として伝送量を制御する。通常、端末装置1Aにおける処理負荷(CPU負荷)、伝送路容量等の画像処理、伝送能力はモニタ可能である。また、端末装置1Aの表示画面8A上にて複数の画像取込フレーム801Aが設定された場合には、双方向対話中に複数の画像データが並行して伝送される。このような場合、当該画像伝送方法による伝送負荷だけが大きくなると他の画像伝送に影響を与えてしまう一方、他の処理が行われていない場合にはより伝送負荷を大きくすることで通信リソースのより効率的な利用も可能になる。そこで、この発明に係る画像伝送方法では、フレーム画像ごとのの伝送レートの変更(例えば、資料用の視覚データが伝送されている1〜2秒程度の間、対話者の顔画像伝送が停止されたとしても対話への影響は大きくない)、該フレーム画像の圧縮率の変更、更には画像サイズの変更を行うことにより、伝送品質の調整が行われる。なお、フレーム画像が複数の領域に分割されている場合、JPEG2000を利用することにより分割領域ごとに圧縮率の変更も可能である。
【0048】
以上のように決定された伝送品質となるよう、切り取られたフレーム画像又は複数に分割された領域に対して符号化が行われ(ステップST50)、この符号化データが相手側対話者3Bの端末装置1Bへ順次送信される(ステップST60)。ところで、資料の画像圧縮データの伝送では、画面全体を送信しようとすると一度に連続送信するパケット数が著しく多くなってしまう。そこで、ADSLなど、ネットワーク上のパケット受信状況をモニタし、状況に応じて一定の間隔を開けてパケット送信するなどの非連続型の送信制御が有効になる(例えば、10パケット連続送信した後に20msec間隔を開け、再度10パケットを送信していく)。例えば、大きい資料であれば、この資料を一旦分割しこれら分割単位ごとに送信を行い、受信されたこれら分割単位を受信側で組み立てることになるが、これら分割単位の圧縮データの送信を、連続送信ではなく、一定の間隔を開けて送信していくのが好ましい。なお、上述の各ステップを経て送信されるデータは、端末装置1AにおけるD/B130にも順次格納される。このように逐次記録されたデータは当該双方向対話の記録データとなる。また、図5に示された画像伝送手順の中断又は中止は、対話者3Aがマウス操作やキーボード入力することにより割り込み処理される。
【0049】
一方、相手対話者3Bの端末装置では、図7に示されたように、まず、双方向対話の開始に先だって、端末装置1Bにおける表示画面8B上に相手対話者3Bにより表示ウィンド801Bが設定されており(ステップST100)、端末装置1Bは、端末装置1Aからの符号化データの受信待機状態となっている(ステップST110)。
【0050】
端末装置1Aからの符号化データが到達すると、端末装置1Bでは制御部により復号化が行われ(ステップST120)、該制御部120が表示ウィンド801Bの情報(例えば、表示ウィンド801Bのサイズ)に基づいて拡大/縮小処理により得られた描画データをVRAM141に書き込んでいく(ステップST130)。この図7に示された表示動作においても、その中断又は中止は、対話者3Bがマウス操作やキーボード入力することにより割り込み処理される。
【0051】
この相手対話者3Bの端末装置1Bにおいて、以上のようにVRAM141へ書き込まれた描画データが、描画部140により表示画面8B上に表示ウィンド801B内に表示される。
【0052】
なお、上述の構成では、端末装置1B側で表示ウィンド801Bのサイズ設定は、相手対話者3Bにより行われるため、端末装置1A側の対話者3Aと端末装置1B側の対話者3Bが相似形のフレーム画像を見ているとは限らない。そこで、この発明は、両者の見ているフレーム画像が相似形になるように修正する機能や、両者の見ているフレーム画像の解像度を一致させる機能(ウィンドサイズ及びウィンド形状の修正機能)を備えてもよい。また、端末装置1A、1B間で同じ解像度のフレーム画像を表示させる場合、端末装置1B側で設定されたウィンドサイズでは表示しきれない可能性もある。この場合、この発明は、端末装置1B側で送信されたフレーム画像と相似形である縮小フレーム画像を表示させる機能を備えてもよい。この際、端末装置1B側は、縮小表示されている旨を示すアラーム発生や縮小率(あるいは拡大率)を表示する機能を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】この発明に係る画像伝送方法が適用可能なネットワークシステムの概略構成を示す図である。
【図2】この発明に係る画像伝送方法を実行可能な端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】この発明に係る画像伝送方法を利用した双方向対話の実施形態を説明するための図である。
【図4】この発明に係る画像伝送方法を概念的に説明するための図である。
【図5】画像データの送信側端末における画像伝送手順(この発明に係る画像伝送方法)を説明するためのフローチャートである。
【図6】この発明に係る画像伝送方法における動き検知動作の一例を説明するための図である。
【図7】この発明に係る画像伝送方法により伝送された画像データの表示動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0054】
1A、1B…端末装置、2…ネットワーク、2a、2b…ノード、8A、8B…表示画面(モニタ画面)、100A、100B…PC本体、200A、200B…ディスプレイ、801A…画像取込フレーム、801B…表示ウィンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の伝送手段を介して互いに対話可能な状態に設定された第1端末装置から第2端末装置に対して、該第1端末装置から該第1端末装置の表示画面の一部を選択的に送信する画像伝送方法であって、
前記第1端末装置において、該第1端末装置の利用者により表示画面上で設定された1又は複数の画像取込フレームの該表示画面上の相対位置をモニタしながら、該画像取込フレームで囲まれた該表示画面の一部であるフレーム画像を所定のタイミングごとに切り取り、
切り取られた前記フレーム画像を前記第2端末装置に送信する画像伝送方法。
【請求項2】
前記画像取込フレームで規定されるフレーム画像は、それぞれが処理単位となる複数の領域に分割されることを特徴とする請求項1記載の画像伝送方法。
【請求項3】
前記表示画面上に設定された画像取込フレーム内における表示変化が検知されるごとに、該画像取込フレームで規定された前記表示画面の一部であるフレーム画像を前記第2端末装置へ送信することを特長とする請求項1又は2記載の画像伝送方法。
【請求項4】
分割された前記複数の領域のうち表示変化が検知された領域を前記第2端末装置へ送信することを特長とする請求項2記載の画像伝送方法。
【請求項5】
前記画像取込フレーム内における表示変化には、前記表示画面内における前記画像取込フレームの設定変更にともなう表示変化が含まれることを特徴とする請求項3又は4記載の画像伝送方法。
【請求項6】
前記第1及び第2端末装置間での総伝送量が一定又は所定値以下になるよう切り取られた前記フレーム画像全体又は分割された領域ごとに伝送品質又は画像サイズを逐次変更することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の画像伝送方法。
【請求項7】
前記第1及び第2端末装置の少なくともいずれかにおいて、切り取られた前記フレーム画像を、該フレーム画像が伝送されるごとに順次記録していくことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の画像伝送方法。
【請求項8】
コンピュータにより請求項1〜7のいずれか一項記載の画像伝送方法を実行するコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータにより請求項1〜7のいずれか一項記載の画像伝送方法を実行するコンピュータプログラムが記録された記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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