説明

画像処理のための装置、方法およびプログラム、並びにファイル作成のための装置、方法およびプログラム

【課題】ファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接印刷する場合であっても、ファイルごとにユーザが所望する印刷条件の下で印刷を行うことができる、画像処理のための装置、方法およびプログラム、並びにファイル作成のための装置、方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置としてのプリンタコントローラは、受信したPDFファイル中に、印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析し(S202,S203)、解析により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理のための装置、方法およびプログラム、並びにファイル作成のための装置、方法およびプログラムに関する。本発明は、より詳しくは、ファイルをプリンタドライバでPDL(Page Description Language:ページ記述言語)データに変換することなく直接印刷する際の、画像処理のための装置、方法およびプログラム、並びにファイル作成のための装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
文書ファイルがPC(パーソナルコンピュータ)からプリンタに送信されて印刷される場合、通常、文書ファイルは、PCにインストールされているプリンタドライバによってPostScript(登録商標)等のPDLで記述されたプリントデータに変換され、印刷ジョブとして送信される。この場合、プリンタドライバにより、文書ファイルについての印刷設定が作成されてヘッダとして印刷ジョブに含められる。
【0003】
一方、文書ファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接プリンタに転送して印刷させるためのダイレクトプリントが知られている。たとえばWebブラウザを利用することにより、クライアント装置が、PDF(Portable Document Format)ファイルを直接プリンタに転送して印刷させる技術が提案されている(特許文献1参照)。これにより、プリンタドライバによる処理が省略できるとともに、PCの負荷も軽減される。
【特許文献1】特開2002−264440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダイレクトプリントにおいては、プリンタドライバによる印刷設定の作成は行われず、文書ファイルが直接プリンタにより受信される。このため、印刷すべき文書ファイルについて個々に印刷設定を行うことができなかった。したがって、ユーザは、ダイレクトプリントの場合には、文書ファイルごとに印刷設定を変えることができず、所望する印刷結果を得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接印刷する場合であっても、ファイルごとにユーザが所望する印刷条件の下で印刷を行うことができる、画像処理のための装置、方法およびプログラム、並びにファイル作成のための装置、方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0007】
(1)ファイルを受信するファイル受信手段と、前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析手段と、前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定手段と、を有することを特徴とする画像処理装置
(2)前記ファイルは、ディスプレイ表示用のデータであることを特徴とする上記(1)に記載の画像処理装置。
【0008】
(3)前記ファイルは、文書作成用アプリケーションによって得られ印刷用データへの変換処理が施されていないデータであることを特徴とする上記(1)に記載の画像処理装置。
【0009】
(4)前記ファイルは、PDFファイルであることを特徴とする上記(1)に記載の画像処理装置。
【0010】
(5)前記印刷設定手段により設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷する印刷手段をさらに有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0011】
(6)印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除手段をさらに有し、前記印刷手段は、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷することを特徴とする上記(5)に記載の画像処理装置。
【0012】
(7)前記印刷設定情報は、Nページ分のデータを1ページの出力データに配置するための指示情報を含むことを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0013】
(8)前記印刷設定情報は、両面印刷するための指示情報を含むことを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0014】
(9)前記印刷設定情報は、ステープル処理を行うための指示情報を含むことを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【0015】
(10)ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力手段と、前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力手段と、を有することを特徴とするファイル作成装置。
【0016】
(11)前記ファイルは、ディスプレイ表示用のデータであることを特徴とする上記(10)に記載のファイル作成装置。
【0017】
(12)前記ファイルは、文書作成用アプリケーションによって得られ印刷用データへの変換処理が施されていないデータであることを特徴とする上記(10)に記載のファイル作成装置。
【0018】
(13)前記ファイルは、PDFファイルであることを特徴とする上記(10)に記載のファイル作成装置。
【0019】
(14)前記印刷設定情報は、Nページ分のデータを1ページの出力データに配置するための指示情報を含むことを特徴とする上記(10)〜(13)のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【0020】
(15)前記印刷設定情報は、両面印刷するための指示情報を含むことを特徴とする上記(10)〜(14)のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【0021】
(16)前記印刷設定情報は、ステープル処理を行うための指示情報を含むことを特徴とする上記(10)〜(15)のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【0022】
(17)ファイルを受信するファイル受信ステップと、前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析ステップと、前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。
【0023】
(18)前記印刷設定ステップにおいて設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷する印刷ステップをさらに有することを特徴とする上記(17)に記載の画像処理方法。
【0024】
(19)印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除ステップをさらに有し、前記印刷ステップは、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷するものであることを特徴とする上記(18)に記載の画像処理方法。
【0025】
(20)ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力ステップと、前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力ステップと、を有することを特徴とするファイル作成方法。
【0026】
(21)ファイルを受信するファイル受信手順と、前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析手順と、前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定手順と、をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【0027】
(22)前記印刷設定手順において設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷手段に印刷させる印刷手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする上記(21)に記載の画像処理プログラム。
【0028】
(23)印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除手順をさらにコンピュータに実行させ、前記印刷手順は、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷手段に印刷させるものであることを特徴とする上記(22)に記載の画像処理プログラム。
【0029】
(24)ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力手順と、前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力手順と、をコンピュータに実行させるためのファイル作成プログラム。
【0030】
(25)上記(21)〜(23)のいずれか1つに記載の画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【0031】
(26)上記(24)に記載のファイル作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接印刷するダイレクトプリントの場合であっても、ファイルごとにユーザが所望する印刷条件の下で印刷を行うことができる。これにより、ユーザは、所望する印刷結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1は、印刷システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す印刷システムは、ファイル作成装置としてのPC(パーソナルコンピュータ)100と、画像処理装置としてのプリンタコントローラ200と、プリンタ300とを備えている。PC100とプリンタコントローラ200とはネットワーク400を介して、プリンタコントローラ200とプリンタ300とは直接機器間で、それぞれ相互に通信可能に接続されている。
【0035】
なお、プリンタコントローラ200とプリンタ300とは、直接機器間で接続されることなくネットワーク400を介して接続されていてもよいし、PC100とプリンタコントローラ200とは、ネットワーク400を介することなく直接機器間で接続されていてもよい。また、ネットワーク400に接続される機器の種類および台数は、図1に示す例に限定されない。
【0036】
図2は、PC100の構成を示すブロック図である。図2に示すように、PC100は、CPU101、ROM102、RAM103、ハードディスク104、ディスプレイ105、入力装置106、およびネットワークインタフェース107を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス108を介して相互に接続されている。
【0037】
CPU101は、プログラムにしたがって、上記各部の制御や各種の演算処理を行う。ROM102は、各種プログラムや各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。ハードディスク104は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや各種データを格納する。
【0038】
また、ハードディスク104には、文書を作成・編集するためのアプリケーションと、アプリケーションから指示された文書ファイルをプリンタコントローラ200が解釈可能な言語(たとえばPostScript(登録商標)などのPDL)に変換するためのプリンタドライバと、プリンタコントローラ200のステータスの閲覧およびプリンタコントローラ200に保存されている画像データ(ビットマップデータ)に関する閲覧、印刷、変更などの操作を行うために用いられるWebブラウザとがインストールされている。なお、後述するように、PC100は、所定形式のファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接プリンタコントローラ200に転送することが可能である。
【0039】
ディスプレイ105は、各種の情報を表示する。入力装置106は、マウス等のポインティングデバイスやキーボードであり、各種の入力を行うために使用される。
【0040】
ネットワークインタフェース107は、ネットワーク400を介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、イーサネット(登録商標)、トークンリング、FDDI等の規格が用いられる。
【0041】
図3は、プリンタコントローラ200の構成を示すブロック図である。図3に示すように、プリンタコントローラ200は、CPU201、ROM202、RAM203、ハードディスク204、ネットワークインタフェース205、およびプリンタインタフェース206を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス207を介して相互に接続されている。プリンタコントローラ200の上記各部のうち、PC100の上記各部と同様の機能を有する部分については、説明の重複を避けるためその説明を省略する。
【0042】
ハードディスク204は、プリンタ300に印刷のために出力したビットマップデータを保存するために使用される。また、ハードディスク204には、ビットマップデータに関する操作を実現するためのユーティリティがインストールされている。
【0043】
プリンタインタフェース206は、プリンタ300と通信するためのインタフェースであり、たとえば専用のビデオインタフェースが使用され得る。ただし、プリンタインタフェース206は、RS−232C、IEEE1394、USB等のシリアルインタフェースによるものや、IEEE1284等のパラレルインタフェースによるものの他、独自の規格によるものであってもよい。
【0044】
図4は、プリンタ300の構成を示すブロック図である。図4に示すように、プリンタ300は、CPU301、ROM302、RAM303、操作パネル部304、印刷部305、およびコントローラインタフェース306を備えており、これらは信号をやり取りするためのバス307を介して相互に接続されている。プリンタ300の上記各部のうち、PC100の上記各部と同様の機能を有する部分については、説明の重複を避けるためその説明を省略する。
【0045】
操作パネル部304は、タッチパネル、タッチパネル外の固定キー、表示ランプ等で構成されており、各種の入力および表示を行うために使用される。印刷部305は、プリンタコントローラ200から転送されたビットマップデータを電子写真方式等の印刷方式により用紙などの記録材に印刷する。コントローラインタフェース306は、プリンタコントローラ200と通信するためのインタフェースである。
【0046】
なお、PC100、プリンタコントローラ200、およびプリンタ300は、それぞれ、上記した構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、上記した構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。
【0047】
次に、印刷システムの動作について説明する。
【0048】
本実施形態の印刷システムでは、通常プリントと、ダイレクトプリントの2種類の印刷が実行可能である。通常プリントが実行される場合、印刷すべきファイルは、PC100のプリンタドライバによって、PC100においてPDLで記述されたプリントデータに変換された後、プリンタコントローラ200に送信される。一方、ダイレクトプリントが実行される場合、印刷すべきファイルは、PC100においてプリンタドライバによってPDLデータに変換されることなく、PC100から直接プリンタコントローラ200に送信される。
【0049】
ダイレクトプリントの場合、送信可能なファイル形式は、プリンタコントローラ200においてビットマップデータに展開され得るファイル形式に限定される。ダイレクトプリントは、たとえばPDF(Portable Document Format)、TIFF(Tagged Image File Format)、PostScript(登録商標)、EPS(Encapsulated PostScript(登録商標))などのファイル形式をサポートする。ダイレクトプリントは、さらに、EXCEL、WORD、POWERPOINT(登録商標)などのファイル形式をサポートすることができる。
【0050】
以下、本実施形態では、ダイレクトプリントが実行される場合について説明する。また、ダイレクトプリントにおいて使用されることが多いPDFファイルを例に取り上げて説明する。
【0051】
図5は、PC100における印刷すべきファイルの送信処理の手順を示すフローチャートである。なお、図5のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、PC100のハードディスク104などの記憶部にプログラムとして記憶されており、CPU101によって実行される。
【0052】
まず、PDFファイルの作成・編集アプリケーションにより、PDFファイルを構成するPDFファイルデータ中に、印刷対象データが入力される(S101)。このとき、図6に示すように、ディスプレイ105に、所定の印刷対象データが入力されたPDFファイルの開かれた状態が表示される。
【0053】
次いで、ユーザの操作に基づいて、PDFファイルに対して注釈が設定される(S102)。注釈は、PDFファイル中に埋め込まれる追加の書き込み情報である。ここで、印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報が、編集アプリケーションにより、注釈としてPDFファイルに埋め込まれる。なお、PDFファイルは、注釈を設定するための注釈機能(Note Tool)を標準で有している。
【0054】
図7は、PDFファイルの注釈機能が選択されるときの状態の一例を示す図である。図7に示すように、プルダウンメニュー501の中から注釈機能が選択される。図8は、注釈の内容を編集するための画面が表示された状態の一例を示す図である。図8に示すように、注釈の内容を入力するためのポップアップウィンドウ502と、注釈の存在を示すノートアイコン503とが表示される。このとき、ユーザは、ポップアップウィンドウ502の中に、印刷設定情報を書込むことができる。図9は、ポップアップウィンドウ502の中に注釈の内容として書込まれた印刷設定情報の一例を示す図である。印刷設定情報の記述形式は、プリンタコントローラ200が解釈できるように、プリンタコントローラ200の設計開発者によって定義される。
【0055】
そして、作成されたPDFファイルがプリンタコントローラ200に送信される(S103)。具体的には、作成されたファイルが、プリンタコントローラ200内のRAM203などの記憶部に設定される公開フォルダ(あるいは公開キュー)に転送される。たとえば、ネットワーク400を経由したSMB(Server Message Block)通信によるデータの転送、ネットワーク400を経由したFTP(File Transfer Protocol)通信によるデータの転送、CD(Compact Disc)あるいはMO(Magneto Optical Disk)などの記録媒体を用いたデータの転送、および電子メールに添付することによるデータの転送などの各種の転送方法が使用され得る。
【0056】
図10および図11は、プリンタコントローラ200における印刷すべきファイルの受信処理の手順を示すフローチャートである。なお、図10および図11のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、プリンタコントローラ200のハードディスク204などの記憶部にプログラムとして記憶されており、CPU201によって実行される。
【0057】
まず、プリンタコントローラ200は、公開フォルダに、印刷すべきPDFファイルが存在しているか否かを判断する(S201)。すなわち、定期的に、たとえばPC100から受信した印刷すべきPDFファイルが公開フォルダに保存されているか否かが確認される。PDFファイルが公開フォルダに存在していない場合(S201でNO)、PDFファイルが公開フォルダに新規に保存されるまで待機する。
【0058】
PDFファイルが公開フォルダに存在していると判断された場合(S201でYES)、当該PDFファイルに対して注釈が設定されているか否かが判断される(S202)。注釈が設定されていない場合(S202でNO)、ステップS213に進む。
【0059】
ここで、注釈が設定されているか否かの判断方法について説明する。まず、PDFファイルに記述されているオブジェクトのうち、各ページの情報が記述されたページ一覧オブジェクトが検出される。ページ一覧オブジェクトは、PDFファイル中において、「/Type/Pages」が記述されているオブジェクトである。なお、オブジェクトとは、文書を構成する個々の要素をいう。図12は、ページ一覧オブジェクトの一例を示す図である。図12に示す例では、「/Count 1」の記述から、総ページ数は1であり、「/Kids[20 0 R]」の記述から、1ページ目の情報はオブジェクト20(「object20」)に記述されていることがわかる。この情報に基づいて、オブジェクト20の中に注釈が含まれていることを示す「/Annots」という記述があるか否かが判断される。図13は、注釈が含まれていることを示す記述を含むページの情報が記述されたページオブジェクトの一例を示す図である。
【0060】
ステップS202で注釈が設定されていると判断された場合(S202でYES)、当該注釈の記述部分に印刷設定情報が含まれているか否かが判断される(S203)。印刷設定情報が含まれていない場合(S203でNO)、ステップS213に進む。
【0061】
ここで、印刷設定情報が含まれているか否かの判断方法について説明する。まず、図13に示すページオブジェクトの中で、「/Annots」の後ろに続く番号(図13に示す例では21)が検出される。「/Annots」の後ろに続く番号は、注釈に関する情報が記述されたオブジェクトの番号を示している。図14は、注釈に関する情報が記述されたオブジェクトの一例を示す図である。図14に示す例では、注釈が2つ設定されていることがわかる。つまり、「22 0 R 25 0 R」の記述により1つ、「26 0 R 27 0 R」の記述によりもう1つの注釈が定義されている。より詳細には、「22 0 R 25 0 R」の記述を例にして説明すれば、オブジェクト22(「object22」)に注釈の内容が、オブジェクト25(「object25」)に注釈の表示位置・レイアウト情報が記述されている。注釈の内容は、上記例においては、オブジェクト22の中の「/Contents(……)」におけるかっこ内に記述されている。そして、「/Contents」の後ろに続くかっこ内の記述の中に、予め決められた記述形式の印刷設定情報が含まれているか否かが判断される。
【0062】
ステップS203で印刷設定情報が含まれていると判断された場合(S203でYES)、当該注釈の記述部分から印刷設定情報が抽出される(S204)。
【0063】
図15は、印刷設定情報の一例を示す図である。図15において、「N−up=2in1」の記述は、Nページ分のデータを1ページの出力データに配置するN−up機能を設定するための指示情報であり、ここではNは2に指定されている。また、「Duplex=LeftBinding」の記述は、両面印刷するための指示情報であり、ここでは左綴じの場合の両面印刷が指定されている。また、「Staple=1−left」の記述は、ステープル処理を行うための指示情報であり、ここでは用紙の左側の1箇所を綴じることが指定されている。また、「Punch=left」の記述は、パンチ処理を行うための指示情報であり、ここでは用紙の左側にパンチ穴を開けることが指定されている。また、「Scaling=50%」の記述は、拡大または縮小するための指示情報であり、ここでは50%に縮小することが指定されている。なお、印刷設定情報の項目は、上記の項目に限定されるものではなく、たとえば印刷部数、使用する用紙サイズなどの他の項目が含まれていてもよい。
【0064】
続いて、抽出して得られた印刷設定情報から、画像処理設定情報が抽出される(S205)。つまり、印刷設定情報のうち、画像処理に関する設定情報が抽出される。たとえば図15にしめされる印刷設定情報から、図16に示される画像処理設定情報が抽出される。ただし、N−up機能のための処理などの一部の画像処理がプリンタ300で実行される場合がある。この場合、N−up機能のための処理などの一部の設定情報は、画像処理設定情報として抽出されず、後述する印刷処理設定情報として抽出される。
【0065】
続いて、抽出して得られた印刷設定情報から、印刷処理設定情報が抽出される(S206)。つまり、印刷設定情報のうち、プリンタ300で実行される印刷処理に関する設定情報が抽出される。たとえば図15にしめされる印刷設定情報から、図17に示される印刷処理設定情報が抽出される。
【0066】
そして、PDFファイルから、印刷設定情報が削除される(S207)。これにより、印刷設定情報が記述された注釈を印刷してしまう事態を防止することができる。
【0067】
ここで、注釈の記述部分に、印刷設定情報以外の通常の文章が記述されている場合、その印刷設定情報の記述のみが削除される。具体的には、注釈の内容が記述されたオブジェクト内の「/Contents」の後ろに続くかっこ内の部分から、印刷設定情報に相当する記述部分が削除される。
【0068】
また、注釈の記述部分に、印刷設定情報のみが記載されている場合、その注釈自体が削除される。具体的には、たとえば以下の手順で注釈が削除される。まず、注釈の内容が記述されたオブジェクトが削除される。続いて、注釈の表示位置・レイアウト情報が記述されたオブジェクトが削除される。続いて、注釈に関する情報が記述されたオブジェクト(図14参照)が削除される。ただし、注釈に関する情報が記述されたオブジェクトに、印刷設定情報に関係のない注釈に関する記述が含まれていた場合、印刷設定情報を含む注釈に関する記述のみが削除される。たとえば図14に示される「22 0 R 25 0 R」の記述が、印刷設定情報を含む注釈に関するものであり、「26 0 R 27 0 R」の記述が、印刷設定情報に関係のない注釈に関する記述である場合、「22 0 R 25 0 R」の記述のみが削除される。注釈に関する情報が記述されたオブジェクトが全て削除された場合、そのリンク元のページオブジェクト(図13参照)から、「/Annots」という記述が削除される。最後に、PDFファイル内の「xref」の後ろに続く、オブジェクトの位置を示す参照情報である相互参照表(Cross−Reference Table)が更新される。
【0069】
ステップS208では、受信したファイルがPDLデータへ変換する必要があるファイルであるか否かが判断される。PDLデータへ変換する必要がないファイルの場合(ステップS208でNO)、ステップS210に進む。たとえば、本実施形態の説明に使用されているPDFファイルの場合、PDLデータへ変換する必要はない。一方、PDLデータへ変換する必要があるファイルの場合には(ステップS208でNO)、受信したファイルが所定のPDLデータに変換される(S209)。たとえば、EXCEL、WORD、POWERPOINT(登録商標)などのファイルが直接受信された場合、当該ファイルはPDLデータに変換される。
【0070】
ステップS210では、受信したPDFファイルに対して、ステップS205で得られた画像処理設定情報にしたがって、ラスタライズ処理が施される。すなわち、PDFファイルが画像処理設定情報にしたがって展開されて、ビットマップデータが取得される。たとえば、図16に示す画像処理設定情報が得られた場合、2ページ分のデータを1ページの出力データに配置する2−upの処理、および50%に縮小する処理を含んだラスタライズ処理が行われる。
【0071】
続いて、ステップS206で得られた印刷処理設定情報に基づいて、プリンタ300が解釈できる印刷処理に関する印刷処理設定パラメータが作成される(S211)。そして、プリンタコントローラ200は、ステップS210で得られたビットマップデータと、ステップS211で得られた印刷処理設定パラメータとをプリンタ300に送信する(S212)。
【0072】
一方、ステップS202で注釈が設定されていないと判断された場合(S202でNO)、あるいはステップS203で印刷設定情報が含まれていないと判断された場合(S203でNO)、受信したファイルは、必要に応じてPDLデータへ変換された上で(S213,S214)、基本的な条件でラスタライズ処理が施される(S215)。なお、ステップS213およびS214の処理は、前述したステップS208およびS209の処理とそれぞれ同様である。そして、ラスタライズ処理によって得られたビットマップデータが、プリンタ300に送信される(S216)。
【0073】
図18は、プリンタ300における印刷処理の手順を示すフローチャートである。なお、図10のフローチャートにより示されるアルゴリズムは、プリンタ300のROM302などの記憶部にプログラムとして記憶されており、CPU301によって実行される。
【0074】
まず、プリンタ300は、プリンタコントローラ200から、ビットマップデータを含む印刷処理用データを受信する(S301)。受信したビットマップデータは、印刷部305により、用紙などの記録材に印刷される(S302)。ここで、印刷処理用データに印刷処理設定パラメータが含まれている場合、プリンタ300は、印刷処理設定パラメータにしたがって、印刷処理を実行する。たとえば、図17に示す印刷処理設定情報に対応する印刷処理設定パラメータが得られた場合、左綴じの場合の両面印刷の処理、用紙の左側の1箇所を綴じる処理、および用紙の左側にパンチ穴を開ける処理を含んだ印刷処理が行われる。
【0075】
このように本実施形態によれば、プリンタコントローラ200は、受信したPDFファイル中に、印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析し、解析により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う。
【0076】
したがって、PDFファイルをプリンタドライバでPDLデータに変換することなく直接プリンタコントローラ200に転送して印刷させるダイレクトプリントの場合であっても、PDFファイルごとにユーザが所望する印刷条件の下で印刷を行うことができる。これにより、ユーザは、ダイレクトプリントの場合でも、所望する印刷結果を得ることができる。
【0077】
本発明は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0078】
たとえば、上記実施形態において、画像処理装置としてのプリンタコントローラ200は、プリンタ300と分離独立して配置されているが、本発明はこれに限定されるものではない。プリンタコントローラ200は、プリンタ300に内包されていてもよい。したがって、本発明の画像処理装置は、たとえば複写機、およびMFP(Multi−Function Peripheral)などの印刷装置にも適用可能である。
【0079】
また、上記実施形態では、本発明のファイル作成装置としてPCが使用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば携帯端末、専用装置などの他の装置が使用されてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、PDFファイル中に印刷設定情報を埋め込むために、注釈機能が利用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば文字をテキストボックスに書き込むためのテキストボックス機能が利用されてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、PDFファイルを直接印刷する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、印刷設定情報を埋め込み可能な他の形式のファイルを直接印刷する場合にも適用され得る。たとえば、WORDファイルが使用されてもよい。この場合、印刷設定情報は、たとえばコメント文を挿入するためのコメント機能を利用することにより、ファイル中に埋め込まれ得る。
【0082】
本実施形態にかかる印刷システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピュータのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえばフレキシブルディスクやCD−ROMなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送されて記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】PCの構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタコントローラの構成を示すブロック図である。
【図4】プリンタの構成を示すブロック図である。
【図5】PCにおける印刷すべきファイルの送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】所定の印刷対象データが入力されたPDFファイルの開かれた状態の一例を示す図である。
【図7】PDFファイルの注釈機能が選択されるときの状態の一例を示す図である。
【図8】注釈の内容を編集するための画面が表示された状態の一例を示す図である。
【図9】ポップアップウィンドウの中に注釈の内容として書込まれた印刷設定情報の一例を示す図である。
【図10】プリンタコントローラにおける印刷すべきファイルの受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図10から続く、プリンタコントローラにおける印刷すべきファイルの受信処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】ページ一覧オブジェクトの一例を示す図である。
【図13】注釈が含まれていることを示す記述を含むページの情報が記述されたページオブジェクトの一例を示す図である。
【図14】注釈に関する情報が記述されたオブジェクトの一例を示す図である。
【図15】印刷設定情報の一例を示す図である。
【図16】画像処理設定情報の一例を示す図である。
【図17】印刷処理設定情報の一例を示す図である。
【図18】プリンタにおける印刷処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0084】
100 PC、
101,201,301 CPU、
102,202,302 ROM、
103,203,303 RAM、
104,204 ハードディスク、
105 ディスプレイ、
106 入力装置、
107,205 ネットワークインタフェース、
108,207,307 バス、
200 プリンタコントローラ、
206 プリンタインタフェース、
300 プリンタ、
304 操作パネル部、
305 印刷部、
306 コントローラインタフェース、
400 ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイルを受信するファイル受信手段と、
前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析手段と、
前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ファイルは、ディスプレイ表示用のデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ファイルは、文書作成用アプリケーションによって得られ印刷用データへの変換処理が施されていないデータであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ファイルは、PDFファイルであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記印刷設定手段により設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷する印刷手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項6】
印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除手段をさらに有し、
前記印刷手段は、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷することを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記印刷設定情報は、Nページ分のデータを1ページの出力データに配置するための指示情報を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記印刷設定情報は、両面印刷するための指示情報を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記印刷設定情報は、ステープル処理を行うための指示情報を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の画像処理装置。
【請求項10】
ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力手段と、
前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力手段と、
を有することを特徴とするファイル作成装置。
【請求項11】
前記ファイルは、ディスプレイ表示用のデータであることを特徴とする請求項10に記載のファイル作成装置。
【請求項12】
前記ファイルは、文書作成用アプリケーションによって得られ印刷用データへの変換処理が施されていないデータであることを特徴とする請求項10に記載のファイル作成装置。
【請求項13】
前記ファイルは、PDFファイルであることを特徴とする請求項10に記載のファイル作成装置。
【請求項14】
前記印刷設定情報は、Nページ分のデータを1ページの出力データに配置するための指示情報を含むことを特徴とする請求項10〜13のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【請求項15】
前記印刷設定情報は、両面印刷するための指示情報を含むことを特徴とする請求項10〜14のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【請求項16】
前記印刷設定情報は、ステープル処理を行うための指示情報を含むことを特徴とする請求項10〜15のいずれか1つに記載のファイル作成装置。
【請求項17】
ファイルを受信するファイル受信ステップと、
前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析ステップと、
前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項18】
前記印刷設定ステップにおいて設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷する印刷ステップをさらに有することを特徴とする請求項17に記載の画像処理方法。
【請求項19】
印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除ステップをさらに有し、
前記印刷ステップは、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷するものであることを特徴とする請求項18に記載の画像処理方法。
【請求項20】
ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力ステップと、
前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力ステップと、
を有することを特徴とするファイル作成方法。
【請求項21】
ファイルを受信するファイル受信手順と、
前記ファイル中に印刷条件の設定に関する印刷設定情報が埋め込まれているか否かを解析するファイル解析手順と、
前記ファイル解析手段により得られた印刷設定情報に応じて、印刷条件の設定を行う印刷設定手順と、
をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項22】
前記印刷設定手順において設定された印刷条件に基づいてファイルを印刷手段に印刷させる印刷手順をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項21に記載の画像処理プログラム。
【請求項23】
印刷設定情報がファイル中に埋め込まれている場合、当該ファイルから印刷設定情報を削除する印刷設定情報削除手順をさらにコンピュータに実行させ、
前記印刷手順は、印刷設定情報が削除された後のファイルを印刷手段に印刷させるものであることを特徴とする請求項22に記載の画像処理プログラム。
【請求項24】
ファイルを構成するファイルデータ中に、印刷対象データを入力する第1入力手順と、
前記ファイルデータ中に、前記印刷対象データについての印刷条件の設定に関する印刷設定情報を入力する第2入力手順と、
をコンピュータに実行させるためのファイル作成プログラム。
【請求項25】
請求項21〜23のいずれか1つに記載の画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項26】
請求項24に記載のファイル作成プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−4183(P2006−4183A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179979(P2004−179979)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】