画像処理システム及びその画像改ざん鑑定方法、並びに制御プログラム
【課題】 紙媒体上の画像の改ざんを鑑定するに際し、演算負荷を軽減して演算時間を抑制することができる画像処理システムを提供する。
【解決手段】 定型的なフォームに基づいた原本紙媒体上の画像をスキャナ2270によって読み取り、該読み取り画像内の可変領域602の特徴量を抽出してID管理部2380に格納する。さらに、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象紙媒体上の画像をスキャナ2270によって読み取り、該読み取り画像内の可変領域602の特徴量を抽出する。鑑定部2390は、この特徴量とID管理部2380に格納された前記特徴量とを照合して、鑑定対象紙媒体上の画像に改ざんがないかを鑑定する。前記可変領域602は、前記定型的なフォーム内において指定する。
【解決手段】 定型的なフォームに基づいた原本紙媒体上の画像をスキャナ2270によって読み取り、該読み取り画像内の可変領域602の特徴量を抽出してID管理部2380に格納する。さらに、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象紙媒体上の画像をスキャナ2270によって読み取り、該読み取り画像内の可変領域602の特徴量を抽出する。鑑定部2390は、この特徴量とID管理部2380に格納された前記特徴量とを照合して、鑑定対象紙媒体上の画像に改ざんがないかを鑑定する。前記可変領域602は、前記定型的なフォーム内において指定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システム、及び前記画像処理システムを利用して画像の改ざん鑑定を行う画像処理システムの画像改ざん鑑定方法、並びに前記画像改ざん鑑定方法を実行するための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷された紙媒体に対して、その原本性を保証する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の原本性保証システムでは、原本データに対して、該原本データの認証情報などの電子透かし情報を重畳し、透かし情報の入った印字データを生成して紙媒体に印刷する。この印刷時に生ずるかすれなどの劣化により、透かし情報による原本/コピーの判定(原本性保証)が困難になる点を解決するために、透かしの検証により透かし残存量を算出し、この透かし残存量と、世代管理情報から抽出された透かし残像量とを比較し、原本の印刷時に生じた劣化と以後のコピーにより生じた劣化を判別し、原本/コピーの判定を行っている。
【0004】
また、電子透かし情報を用いずに、印刷された紙媒体の改ざん鑑定を行う原本性保証システムでは、紙媒体上に可変情報と固定情報が混在していても、これらを区別無く一括で保管し、鑑定対象紙媒体の面全体の画像情報と原本紙媒体の面全体の画像情報とを照合することにより、鑑定対象紙媒体の改ざんの有無(原本であるか否か)を判定するのが、一般的であった。
【特許文献1】特開2002−344736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の原本性保証システムでは、電子透かし情報だけでなく、世代管理情報を生成し、さらに透かし残存量を算出して照合する必要があり、構成が複雑化するという問題があった。
【0006】
また、上記の、電子透かし情報を用いない原本性保証システムでは、紙媒体上の画像の改ざんを鑑定するためには紙媒体の面全体の画像情報を必要とし、原本との照合の際には面全体に対する演算が必要であった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、紙媒体上の画像の改ざんを鑑定するに際し、演算負荷を軽減して演算時間を抑制することができ、また構成も簡素にすることができる画像処理システム及びその画像改ざん鑑定方法、並びに制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理システムは、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段と、定型的なフォームに基づいたシート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、原本画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量を格納する特徴量格納手段と、鑑定対象画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量と前記特徴量格納手段に格納されている特徴量とを照合する照合手段と、前記照合手段の照合結果を通知する通知手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像処理システムの画像改ざん鑑定方法は、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法において、定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出工程と、前記原本特徴量抽出工程によって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納する工程と、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出工程と、前記鑑定対象特徴量抽出工程によって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合工程と、前記照合工程の照合結果を通知する通知工程とを順次実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の制御プログラムは、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法を実行するための、コンピュータで読み取り可能な制御プログラムであって、定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出ステップと、前記原本特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納するステップと、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出ステップと、前記鑑定対象特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合ステップと、前記照合ステップの照合結果を通知する通知ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート媒体上の画像の改ざんを鑑定するに際し、演算負荷を軽減して演算時間を抑制することが可能になり、また構成も簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の画像処理システム及びその画像改ざん鑑定方法、並びに制御プログラムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
〔第1の実施の形態の構成〕
<画像処理システムの構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
この画像処理システムは、ローカルエリアネットワーク(LAN)2011上に接続された、機能複合型周辺機器(以降、MFP:Multi Function Peripheral)220と鑑定処理部2370とで構成されている。
【0015】
MFP220は、画像入力デバイスであるスキャナ2270と、画像出力デバイスであるプリンタ2295と、コントローラユニット(Controller Unit)2200と、ユーザインターフェイスである操作部2212とを有する。スキャナ2270、プリンタ2295、及び操作部2212はそれぞれ、コントローラユニット2200に接続され、コントローラユニット2200からの命令により制御されている。また、コントローラユニット2200は、LAN2011などのネットワーク伝送手段に接続されている。
【0016】
鑑定処理部2370は、ID管理部2380と鑑定部2390とから成り、コントローラユニット2200によって制御されている。ID管理部2380は、後述する紙媒体原本における特定領域の特徴量をファイルID毎に登録して管理する。鑑定部2390は、鑑定対象である紙媒体の特徴量とID管理部2380に既に登録済みの特徴量との一致、不一致を比較し、鑑定対象である紙媒体の改ざんの有無を鑑定する。
【0017】
なお、LAN2011には、MFP220のほかにも、他のMFPが接続されていても構わない。また、鑑定処理部2370はMFP220の内部に配置する構成であっても良い。
【0018】
<MFPのコントローラユニットの構成>
図2は、図1に示したMFP220のコントローラユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【0019】
コントローラユニット2000は、画像入力デバイスであるスキャナ2070と画像出力デバイスであるプリンタ2095に接続される一方、LAN2011や公衆回線(WAN)2051にも接続されて、画像情報やデバイス情報などの入出力を行う。
【0020】
このコントローラユニット2000において、CPU2001はシステム全体を制御し、内部時計2052の制御も行う。RAM2002は、CPU2001が動作するために使用するシステムワークメモリであり、また画像データを一時記憶するための画像メモリでもある。ROM2003はブートROMであり、システムのブートプログラムが格納されている。HDD2004はハードディスクドライブであり、システムソフトウェアや画像データのほか、後述する原本保証動作を行うため必要な画像処理アルゴリズムの制御情報などが格納されている。
【0021】
操作部I/F2006は、操作部(UI)2212とのインターフェイスを司り、操作部2212に表示する画像データを操作部2212に対して出力する。また、使用者が操作部2212を介して入力した情報をCPU2001に伝える役割を果たす。
【0022】
ネットワーク(Network)インターフェイス2010は、LAN2011との接続を司り、LAN2011に対して情報の入出力を行う。モデム(MODEM)2050は、公衆回線(WAN)2051との接続を司り、公衆回線に対して情報の入出力を行う。時計2052は、時刻表示やウィークリータイマ機能の標準時刻を管理する。以上の各デバイスがシステムバス2007上に配置されている。
【0023】
イメージバスインターフェイス(Image Bus I/F)2005は、システムバス2007と、画像データを高速で転送する画像バス2008とを接続し、データ構造を変換するバスブリッジである。画像バス2008は、PCIバス又はIEEE1394で構成される。
【0024】
画像バス2008には、ラスターイメージプロセッサ(RIP)2060、デバイスI/F部2020、スキャナ画像処理部2080、プリンタ画像処理部2090、画像回転部2030、及び画像圧縮部2040が接続されている。
【0025】
ラスターイメージプロセッサ(RIP)2060は、ネットワークから送信されたPDLコードをビットマップイメージに展開する。デバイスI/F部2020は、スキャナ2070やプリンタ2095とコントローラユニット2000とを接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。スキャナ画像処理部2080は、入力画像データに対して、特徴量の算出のほか、認識、補正、加工、編集を行う。プリンタ画像処理部2090は、プリント出力画像データに対して、補正、解像度変換、電子情報の付加などの加工処理を行う。画像回転部2030は画像データの回転を行い、画像圧縮部2040は、多値画像データに対してJPEG圧縮伸張処理を、また2値画像データに対してはJBIG、MMR、MHの圧縮処理を行う。
【0026】
<MFPの操作部の外観構成>
図3は、図1に示した操作部2212の外観構成を示す図である。
【0027】
同図に示すように、LCD表示部2013上にはタッチパネルシート2019が貼られている。タッチパネルシート2019には、システムの操作画面及びソフトキーが表示されると共に、表示されたキーが押下されると、その押下された位置を示す位置情報が、操作部2212を制御するCPU(図示省略)に伝えられる。
【0028】
スタートキー2014は、紙媒体画像の読み取り動作を開始する場合等に用いられる。このスタートキー2014の中央部には、緑と赤の2色LED表示部2018があり、その色によってスタートキー2014が使える状態にあるのか否かを示している。また、ストップキー2015は、稼動中の動作を止める働きをする。そして、IDキー2016は使用者のユーザIDを入力するときに用いられ、さらに、リセットキー2017は、当該操作部2212によって行われた設定を初期化するときに用いられる。
【0029】
〔第1の実施の形態の動作〕
上記構成の画像処理システムの原本保証動作について説明する。
【0030】
この原本保証動作では、予め定型フォームを登録し、さらにこの定型フォームに従って作成された紙媒体原本を登録しておき、その後に、鑑定対象である紙媒体の原本性保証を確認するため、その改ざん鑑定処理を実行する。以下、例えば保険証書の改ざん鑑定を行う場合を例にとって具体的に説明する。
【0031】
<定型フォーム紙の一例>
図4は、本実施の形態に係る定型フォーム紙の一例を示す図である。
【0032】
この定型フォーム紙601は、各定型フォーム毎に対応した固有の情報が予め記録された固定領域603を配置し、この固定領域603外の空白部には、後述の定型フォーム登録処理で指定される可変領域602が配置される。可変領域602は、原本作成の際に可変情報が記載される領域である。
【0033】
例えば、様式Aの保険証書は、予め保険規定が印刷されていて、後で手書きで日付や人名等を記入して完成する形態と想定する。この場合、可変領域602は、日付や氏名、生年月日等の情報が手書きで記入される予定の領域であり、固定領域603は、保険規定などの印刷済み情報が記録されている領域である。言い換えると、可変領域602は、改ざんされると大きな問題となる領域であり、固定領域603は、改ざんされても意味をなさない領域である。
【0034】
<第1の実施の形態に係る定型フォームの登録処理>
次に、上記定型フォーム紙をスキャンして、その定型フォームを登録する処理について、図5〜図8を参照して説明する。この登録処理は主にスキャナ画像処理部2080で実施される。
【0035】
なお、図5は、第1の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。図6は、各処理の実行を選択するために操作部2212のLCD表示部2013上に表示されるメニュー画面を示す図であり、図7は、フォーム登録処理の領域指定時に用いる表示画面を示す図である。図8は、フォーム登録処理で格納されるフォーム情報の一例を示す図である。
【0036】
まずユーザは、例えば様式Aの保険証書の定型フォーム紙(一枚)をスキャナ2270の読み取り部にセットし、さらに図6に示すように操作部2212のLCD表示部2013上にメニュー画面を表示し、メニューから「定型フォーム登録」を選択する(ステップS201)。すると、スキャン動作が開始されて、前記読み取り部にセットされた定型フォーム紙の画像情報がMFP220内に読み込まれる(ステップS202)。
【0037】
上記定型フォーム紙の画像情報を取得した後(ステップS203)、ユーザは、取得した画像情報に対して操作部2212のLCD表示部2013上から可変領域602の指定を行う。すなわち、図7に示すように、操作部2212のLCD表示部2013上に表示された定型フォーム紙の画像情報から、カーソル2017と領域指定ボタン2012を使用して、可変領域602を指定する(ステップS204)。なお、可変領域602を指定する方法は、このようなユーザが操作部2212上で行う方法のほかに、例えば、定型フォームの空白部に予め符号化情報を埋め込む方法などがある。
【0038】
続いて、前記指定した可変領域602の処理方法として圧縮方法を指定する(ステップS205)。指定すべき可変領域602が複数ある場合には全ての領域の指定が終了するまでステップS204、ステップS205及びステップS206を繰り返し実行する。
【0039】
そして、当該定型フォーム紙のフォーム情報を作成すべく、固有の番号(例えばフォームNo.0001)が生成され(ステップS207)、さらに、本処理開始後に自動的に取得した情報(例えば、用紙サイズ、領域位置、領域処理、ページ数、及び登録日時など)と共に、例えば登録者が操作部2212から入力した、フォーム名、登録部署名及び登録者名等の情報が加えられる。このような定型フォーム紙のフォーム情報は、図8に示すようなテーブル形式でHDD2004等の所定の記憶領域に格納される(ステップS208)。
【0040】
その後、フォーム登録終了をユーザに通知し(ステップS209)、本フォーム登録処理を終了する。
【0041】
以上のような定型フォーム登録処理を繰り返すことによって、例えば様式A,様式B,様式C,…の複数種類の保険証書の定型フォームの情報を、それぞれ固有のフォーム番号に従ってMFP220に登録することができる。
【0042】
<第1の実施の形態に係る原本登録処理>
次に、本実施の形態に係る原本登録処理について、図9、図10及び図11を参照して説明する。なお、図9は、第1の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図であり、図10は、原本登録処理時のデータの流れを示す概念図である。図11は、付与情報選択時の操作部2212の画面を示す図である。
【0043】
まず、操作者は、スキャナ2270の読み取り部に紙媒体原本601a(図10)をセットする。ここで、紙媒体原本601aとは、例えば前述した保険証書(様式A)の定型フォーム紙(図4の601)上に指定された可変領域602に、可変情報として、例えば日付、氏名、生年月日等が記入されて、ある被保険者の保険証書の原本として完成したものである。
【0044】
次に、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“登録”を選択し(ステップS211)、さらに続いて、原本を保証するために付与する情報(付与情報)の選択を行う(ステップS212)。付与情報としては、図11に示すように登録日時や内容が用意されており、操作者は必要な登録情報を選択することが可能となる。登録日時は、時計部2052の日時情報から得る(図10のT1)。
【0045】
付与情報が確定すると、コントローラユニット2200は、スキャナ2270によって紙媒体原本601aをスキャンし紙媒体原本の画像情報を読み取る(ステップS213、T2)。そして、この読み取られた紙媒体原本の画像情報を用いて、前述の定型フォーム登録処理でフォーム番号毎に登録された複数のフォーム情報(様式Aのフォーム情報,様式Bのフォーム情報,…)の中に、当該紙媒体原本のフォーム情報と一致するものがあるかを照合する(ステップS214)。
【0046】
前記ステップS214の照合でフォームが一致した場合には、当該紙媒体原本は登録済みの正式な定型フォームを使用して完成したものであることが確認されたことになる。一方、前記ステップS214の照合処理でフォームが一致しなかった場合には、当該紙媒体原本の登録はできない旨の登録不可通知を操作部2212のLCD表示部2013上に表示する(ステップS218)。
【0047】
当該紙媒体原本のフォームが既に登録されている正式なフォームと一致した場合には、図5に基づいて該フォームに対応付けられている可変領域の位置を特定し、当該紙媒体原本中の可変領域602の特徴量を算出する(ステップS215、T3)。この算出方法は後述する。なお、予め定型フォームに可変領域指定用の符号が埋め込まれている場合には、この符号を認識して、この符号によって検出された領域を可変領域602として検出し、その特徴量を算出する。
【0048】
続いて、鑑定処理部2370からファイルIDを発行し(ステップS216、T4)、前記算出した可変領域602の特徴量と前記確定した付加情報にファイルIDを付加して鑑定処理部2370のID管理部2380に格納した後(ステップS217、T5)、コントローラユニット2200に登録処理完了の通知を行って(ステップS219)、原本登録処理を終了する。
【0049】
次に、図9中の特徴量算出処理(ステップS215)の詳細について、図12、図13、図14、及び図15(a),(b)を参照して説明する。
【0050】
なお、図12は、図9の特徴量算出処理を実行するスキャナ画像処理部2080中の要部機能構成を示すブロック図である。図13は、紙媒体原本601aから算出された輝度信号の頻度を示すグラフである。図14は、ヒストグラムを作成するときの位置関係を示す図である。図15(a),(b)は、ヒストグラムを表すグラフであり、同図(a)は主走査方向のヒストグラムを、同図(b)は副走査方向のヒストグラムをそれぞれ表している。
【0051】
初めにスキャナ2270で読み込まれた画像は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色のディジタル信号に分解され、スキャナ画像処理部2080において特徴量が算出される。以下、特徴量の算出について詳細に説明する。
【0052】
R、G、B信号は、モノクロ信号生成部1101において、次式によってモノクロ信号Kdに変換される。
【0053】
Kd=(R+2×G+B)/4 …(1)
上記式(1)では、G信号にR、Bの2倍のゲインを掛けて平均化することにより輝度信号を得ている。なお、輝度信号の生成は本式に限らず、例えばNTSCで規定されている係数を基に算出しても構わない。
【0054】
得られた輝度信号Kdは、続く下地検出部1102に入力され、この下地検出部1102において定型フォーム紙の画像中の下地レベルが検出される。なお、図13においては、横軸に輝度信号レベル(0〜255)、縦軸は頻度を表す。図13中のL−maxは、測定可能な最大輝度レベル(本例の場合は255)を表し、U−peakは、最大頻度を表す。本実施の形態で想定する定型フォーム紙としては、テキスト中心の画像原稿を想定しているため、下地部分の多くは明るい色に集中することが多く、図13に示すような明度の高い領域にU−peakが存在する。
【0055】
U−peakが検出されると、図13に示すDfレベルだけU−peakから減算された輝度値を下地レベルThとして下地検出部1102の処理を終了する。本実施形態では、Dfは固定値とするが、ヒストグラムの形状に応じて変更しても構わない。
【0056】
下地検出部1102より検出された下地レベルThは、続く二値画像生成部1103へ送出されて、閾値Thと次式の比較演算を行うことにより、モノクロ信号Kdから二値画像(“0”と“1”)へと変換される。
【0057】
if(Kd≦Th) then Kd=1
else Kd=0
これにより、閾値信号Thより暗い部分は“1”へ、明るい部分は“0”へと変換される。二値画像生成部1103で生成された二値画像Biは、続くヒストグラム形状生成部1104へと送出される。
【0058】
ヒストグラム形状生成部1104では、暗い画素“1”を画素位置毎にカウントする。図14において、図中のOM、OSはそれぞれ、主走査方向、副走査方向の基準位置であり、この基準位置を基に各方向にヒストグラムを生成する。図15(a)は、主走査方向のヒストグラムを、図15(b)は副走査方向のヒストグラムをそれぞれ表す。得られた主・副方向のヒストグラム値は、画像の特徴量として一次元のLUT(ルックアップテーブル)の形式でRAM2002に一時保存される。
【0059】
以上がスキャナ画像処理部2080で実施される特徴量の算出アルゴリズムである。
【0060】
<第1の実施の形態の改ざん鑑定処理>
次に、本実施の形態に係る改ざん鑑定処理について、図16及び図17を参照して説明する。この改ざん鑑定処理では、例えば、既に交付された保険証書などの鑑定対象紙媒体に改ざんが有るか否かを鑑定するものである。
【0061】
なお、図16は、第1の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図であり、図17は、改ざん鑑定処理時のデータの流れを示す概念図である。
【0062】
まず、スキャナ2270の読み取り部に鑑定対象紙媒体601b(図17)をセットし、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“鑑定”を選択する(ステップS231)。すると、コントローラユニット2200は、ステップS234まで前述した原本登録処理時と同じシーケンスの処理を行う。すなわち、鑑定対象紙媒体601bをスキャンしてその画像情報を読み込み(ステップS232、T11)、前述の定型フォーム登録処理で予め登録された複数の様式のフォーム情報の中に、当該鑑定対象のフォーム情報と一致するものがあるかを照合する(ステップS233)。そして、フォームの照合を確認することができた場合は、図5に基づいて該フォームに対応付けられている可変領域の位置を特定し、当該鑑定対象の可変領域602を検出して、その可変領域における特徴量を算出し(ステップS234)、鑑定処理部2370の鑑定部2390へ送る。
【0063】
次に、鑑定部2390において、当該鑑定対象の可変領域602の特徴量と、前述した原本登録処理で登録した原本の可変領域602の特徴量とを比較する(ステップS235)。その結果、一致した場合、つまり同一の特徴量と判定された場合には(ステップS236)、鑑定部2390は、コントローラユニット2200に対して鑑定一致(改ざん無し)の鑑定結果を通知し(ステップS237)、不一致と判定された場合は(ステップS236)、鑑定不一致(改ざん有り)の鑑定結果を通知して(ステップS238)、本処理を終了する。
【0064】
また、前記ステップS233において、フォームの整合を確認することができなかった場合は、コントローラユニット2200へ鑑定不可の通知を出して(ステップS239)、本処理を終了する。
【0065】
<本実施の形態に係る特徴量の比較処理>
前述した改ざん鑑定処理時における特徴量の比較処理は、内積処理と閾値処理の2つの処理によって実現される。
【0066】
初めに内積について説明する。内積処理は、ID管理部2380内に、ファイルIDに関連付けられて既に格納されている原本の特徴量データ、つまり主走査・副走査の各一次元ベクトルデータ(LUTで管理)と、今回の鑑定処理時のスキャンデータに基づいて算出された特徴量データとを用いて、次式(2)により計算される。
【0067】
A=Σ(TMi×KMi)/(ΣTMi)2
B=Σ(TSi×KSi)/(ΣTSi)2 …(2)
この式(2)において、A、Bはそれぞれ、主走査、副走査方向の規格化された相関値を表し、TM、TSはそれぞれ、登録された主走査、副走査方向のベクトル形状であり、KM、KSはそれぞれ、今回の鑑定処理時に算出された主走査、副走査方向のベクトル形状を表す。なお、添え字“i”は位置情報を表す。この計算結果は、登録時のデータで規格化されているため、A、Bの値域は、0〜1となる。
【0068】
上記の演算によって得られた相関値A,Bは、続く閾値処理において比較され、最終的に鑑定対象画像と登録画像が同一であるか否かが判定される。本実施形態では、次式(3)の閾値処理で判定される。
【0069】
if((A≧valA)&(B≧valB)) then“登録画像と同一”
else “登録画像とは異なる”
…(3)
この式(3)において、閾値valA,valBは、スキャナ2070等の精度に依存するパラメータであるが、本実施形態では、valA=0.97、valB=0.96として処理を実装した。
【0070】
以上のように本実施の形態によれば、紙媒体の画像情報の改ざんを鑑定するに際し、紙媒体の面全体の画像情報を必要とせず、特定領域(可変領域602)の画像情報のみを用いて処理するので、紙媒体全体の画像情報を用いた処理よりも演算負荷を軽減することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、定型フォーム紙601、紙媒体原本601a、及び鑑定対象紙媒体601bが複数ページに亘る場合について説明する。
【0072】
<第2の実施の形態に係る定型フォームの登録処理>
図18は、第2の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図であり、図5と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
まず、複数ページの定型フォーム紙をスキャナ2270の読み取り部にセットし、操作部2212のLCD表示部2013上にメニュー画面を表示し、メニューから「定型フォーム登録」を選択する(ステップS201)。そして、定型フォーム紙の各ページ毎に、スキャンして画像情報を取得し(ステップS203)、さらに領域指定(ステップS204)と、特徴量の抽出を行う(ステップS205)。
【0074】
同一ページ内での領域指定が最後ならば(ステップS206)、次のページの有無を判断する(ステップS301)。ステップS206で領域指定が最後でないならば、領域の指定を継続する。また、ステップS301において次のページが有ると判定された場合はステップS202に戻り、スキャンから同じ手順を繰り返す。
【0075】
ステップS301において次のページ無しと判定された場合は、第1の実施の形態と同様に、フォーム番号を生成し(ステップS207)、開始後から扱った情報をフォーム情報として記録し(ステップS208)、フォーム登録通知を行い(ステップS209)、本処理を終了する。
【0076】
<第2の実施の形態に係る原本登録処理>
図19は、第2の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図であり、図9と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
まず、操作者は、スキャナ2270の読み取り部に複数ページの紙媒体原本601aをセットし、図9で説明した第1の実施の形態の原本登録処理と同様に、操作部2212において、“登録”を選択し(ステップS211)、続いて、付与情報の選択を行う(ステップS212)。そして、コントローラユニット2200は、スキャナ2270によって紙媒体原本601aの全ページをスキャンして画像情報を読み取る(ステップS311)。
【0078】
その後は、ステップS214からステップS219まで、第1の実施の形態の原本登録処理と同様の処理を行う。
【0079】
<第2の実施の形態の改ざん鑑定処理>
図20は、第2の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図であり、図16と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
まず、スキャナ2270の読み取り部に複数ページの鑑定対象紙媒体601bをセットし、図16で説明した第1の実施の形態の改ざん鑑定処理と同様に、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“鑑定”を選択し(ステップS231)、鑑定対象紙媒体601bの全ページをスキャンしてその画像情報を読み取る(ステップS331)。
【0081】
その後は、ステップS233からステップS239まで、第1の実施の形態の改ざん鑑定処理と同様の処理を行う。
【0082】
以上のように、定型フォーム紙601、紙媒体原本601a及び鑑定対象紙媒体601bが複数ページに亘る場合においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
[その他の実施の形態]
上述した実施形態で説明した特徴量算出処理(ステップS215)は、上述した算出方法に限るものではなく、その他の特徴量算出方法を用いて、可変領域の特徴量を算出するようにしてもよい。例えば、可変領域内の色情報も用いて特徴量を算出したり、周波数変換して特徴量を算出したりしてもよい。
【0084】
また、鑑定対象紙媒体の定型フォームと同じ定型フォームを有する原本が複数登録されている場合、ステップS235で、同じ定型フォームを有する複数の原本の可変領域特徴量それぞれと比較し、同じ特徴量を有する原本があった場合には、ステップS237で改ざん無しを通知すると共にその原本に関する情報(原本IDや原本の画像など)を表示するのが望ましい。
【0085】
本発明は、上述した実施形態の装置に限定されず、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器から成る装置に適用しても良い。前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、完成されることは言うまでもない。
【0086】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、不揮発性メモリを用いることができる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0087】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、次のプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPUなどが処理を行って実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したMFPのコントローラユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した操作部の外観構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る定型フォーム紙の一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。
【図6】操作部のLCD表示部上に表示されるメニュー画面を示す図である。
【図7】フォーム登録処理の領域指定時に用いる表示画面を示す図である。
【図8】フォーム登録処理で格納されるフォーム情報の一例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図である。
【図10】原本登録処理時のデータの流れを示す概念図である。
【図11】付与情報選択時の操作部の画面を示す図である。
【図12】図9の特徴量算出処理を実行するスキャナ画像処理部中の要部機能構成を示すブロック図である。
【図13】紙媒体原本から算出された輝度信号の頻度を示すグラフである。
【図14】ヒストグラムを作成するときの位置関係を示す図である。
【図15】ヒストグラムを表すグラフである。
【図16】第1の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図である。
【図17】改ざん鑑定処理時のデータの流れを示す概念図である。
【図18】第2の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。
【図19】第2の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図である。
【図20】第2の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0089】
220 MFP
2270 スキャナ部
2295 プリンタ
2200 コントローラユニット
2212 操作部
2370 鑑定処理部
2380 ID管理部
2390 鑑定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システム、及び前記画像処理システムを利用して画像の改ざん鑑定を行う画像処理システムの画像改ざん鑑定方法、並びに前記画像改ざん鑑定方法を実行するための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷された紙媒体に対して、その原本性を保証する技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の原本性保証システムでは、原本データに対して、該原本データの認証情報などの電子透かし情報を重畳し、透かし情報の入った印字データを生成して紙媒体に印刷する。この印刷時に生ずるかすれなどの劣化により、透かし情報による原本/コピーの判定(原本性保証)が困難になる点を解決するために、透かしの検証により透かし残存量を算出し、この透かし残存量と、世代管理情報から抽出された透かし残像量とを比較し、原本の印刷時に生じた劣化と以後のコピーにより生じた劣化を判別し、原本/コピーの判定を行っている。
【0004】
また、電子透かし情報を用いずに、印刷された紙媒体の改ざん鑑定を行う原本性保証システムでは、紙媒体上に可変情報と固定情報が混在していても、これらを区別無く一括で保管し、鑑定対象紙媒体の面全体の画像情報と原本紙媒体の面全体の画像情報とを照合することにより、鑑定対象紙媒体の改ざんの有無(原本であるか否か)を判定するのが、一般的であった。
【特許文献1】特開2002−344736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の原本性保証システムでは、電子透かし情報だけでなく、世代管理情報を生成し、さらに透かし残存量を算出して照合する必要があり、構成が複雑化するという問題があった。
【0006】
また、上記の、電子透かし情報を用いない原本性保証システムでは、紙媒体上の画像の改ざんを鑑定するためには紙媒体の面全体の画像情報を必要とし、原本との照合の際には面全体に対する演算が必要であった。
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑み、紙媒体上の画像の改ざんを鑑定するに際し、演算負荷を軽減して演算時間を抑制することができ、また構成も簡素にすることができる画像処理システム及びその画像改ざん鑑定方法、並びに制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理システムは、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段と、定型的なフォームに基づいたシート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、原本画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量を格納する特徴量格納手段と、鑑定対象画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量と前記特徴量格納手段に格納されている特徴量とを照合する照合手段と、前記照合手段の照合結果を通知する通知手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の画像処理システムの画像改ざん鑑定方法は、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法において、定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出工程と、前記原本特徴量抽出工程によって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納する工程と、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出工程と、前記鑑定対象特徴量抽出工程によって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合工程と、前記照合工程の照合結果を通知する通知工程とを順次実行することを特徴とする。
【0010】
本発明の制御プログラムは、シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法を実行するための、コンピュータで読み取り可能な制御プログラムであって、定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出ステップと、前記原本特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納するステップと、前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出ステップと、前記鑑定対象特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合ステップと、前記照合ステップの照合結果を通知する通知ステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、シート媒体上の画像の改ざんを鑑定するに際し、演算負荷を軽減して演算時間を抑制することが可能になり、また構成も簡素にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の画像処理システム及びその画像改ざん鑑定方法、並びに制御プログラムの実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1の実施の形態]
〔第1の実施の形態の構成〕
<画像処理システムの構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【0014】
この画像処理システムは、ローカルエリアネットワーク(LAN)2011上に接続された、機能複合型周辺機器(以降、MFP:Multi Function Peripheral)220と鑑定処理部2370とで構成されている。
【0015】
MFP220は、画像入力デバイスであるスキャナ2270と、画像出力デバイスであるプリンタ2295と、コントローラユニット(Controller Unit)2200と、ユーザインターフェイスである操作部2212とを有する。スキャナ2270、プリンタ2295、及び操作部2212はそれぞれ、コントローラユニット2200に接続され、コントローラユニット2200からの命令により制御されている。また、コントローラユニット2200は、LAN2011などのネットワーク伝送手段に接続されている。
【0016】
鑑定処理部2370は、ID管理部2380と鑑定部2390とから成り、コントローラユニット2200によって制御されている。ID管理部2380は、後述する紙媒体原本における特定領域の特徴量をファイルID毎に登録して管理する。鑑定部2390は、鑑定対象である紙媒体の特徴量とID管理部2380に既に登録済みの特徴量との一致、不一致を比較し、鑑定対象である紙媒体の改ざんの有無を鑑定する。
【0017】
なお、LAN2011には、MFP220のほかにも、他のMFPが接続されていても構わない。また、鑑定処理部2370はMFP220の内部に配置する構成であっても良い。
【0018】
<MFPのコントローラユニットの構成>
図2は、図1に示したMFP220のコントローラユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【0019】
コントローラユニット2000は、画像入力デバイスであるスキャナ2070と画像出力デバイスであるプリンタ2095に接続される一方、LAN2011や公衆回線(WAN)2051にも接続されて、画像情報やデバイス情報などの入出力を行う。
【0020】
このコントローラユニット2000において、CPU2001はシステム全体を制御し、内部時計2052の制御も行う。RAM2002は、CPU2001が動作するために使用するシステムワークメモリであり、また画像データを一時記憶するための画像メモリでもある。ROM2003はブートROMであり、システムのブートプログラムが格納されている。HDD2004はハードディスクドライブであり、システムソフトウェアや画像データのほか、後述する原本保証動作を行うため必要な画像処理アルゴリズムの制御情報などが格納されている。
【0021】
操作部I/F2006は、操作部(UI)2212とのインターフェイスを司り、操作部2212に表示する画像データを操作部2212に対して出力する。また、使用者が操作部2212を介して入力した情報をCPU2001に伝える役割を果たす。
【0022】
ネットワーク(Network)インターフェイス2010は、LAN2011との接続を司り、LAN2011に対して情報の入出力を行う。モデム(MODEM)2050は、公衆回線(WAN)2051との接続を司り、公衆回線に対して情報の入出力を行う。時計2052は、時刻表示やウィークリータイマ機能の標準時刻を管理する。以上の各デバイスがシステムバス2007上に配置されている。
【0023】
イメージバスインターフェイス(Image Bus I/F)2005は、システムバス2007と、画像データを高速で転送する画像バス2008とを接続し、データ構造を変換するバスブリッジである。画像バス2008は、PCIバス又はIEEE1394で構成される。
【0024】
画像バス2008には、ラスターイメージプロセッサ(RIP)2060、デバイスI/F部2020、スキャナ画像処理部2080、プリンタ画像処理部2090、画像回転部2030、及び画像圧縮部2040が接続されている。
【0025】
ラスターイメージプロセッサ(RIP)2060は、ネットワークから送信されたPDLコードをビットマップイメージに展開する。デバイスI/F部2020は、スキャナ2070やプリンタ2095とコントローラユニット2000とを接続し、画像データの同期系/非同期系の変換を行う。スキャナ画像処理部2080は、入力画像データに対して、特徴量の算出のほか、認識、補正、加工、編集を行う。プリンタ画像処理部2090は、プリント出力画像データに対して、補正、解像度変換、電子情報の付加などの加工処理を行う。画像回転部2030は画像データの回転を行い、画像圧縮部2040は、多値画像データに対してJPEG圧縮伸張処理を、また2値画像データに対してはJBIG、MMR、MHの圧縮処理を行う。
【0026】
<MFPの操作部の外観構成>
図3は、図1に示した操作部2212の外観構成を示す図である。
【0027】
同図に示すように、LCD表示部2013上にはタッチパネルシート2019が貼られている。タッチパネルシート2019には、システムの操作画面及びソフトキーが表示されると共に、表示されたキーが押下されると、その押下された位置を示す位置情報が、操作部2212を制御するCPU(図示省略)に伝えられる。
【0028】
スタートキー2014は、紙媒体画像の読み取り動作を開始する場合等に用いられる。このスタートキー2014の中央部には、緑と赤の2色LED表示部2018があり、その色によってスタートキー2014が使える状態にあるのか否かを示している。また、ストップキー2015は、稼動中の動作を止める働きをする。そして、IDキー2016は使用者のユーザIDを入力するときに用いられ、さらに、リセットキー2017は、当該操作部2212によって行われた設定を初期化するときに用いられる。
【0029】
〔第1の実施の形態の動作〕
上記構成の画像処理システムの原本保証動作について説明する。
【0030】
この原本保証動作では、予め定型フォームを登録し、さらにこの定型フォームに従って作成された紙媒体原本を登録しておき、その後に、鑑定対象である紙媒体の原本性保証を確認するため、その改ざん鑑定処理を実行する。以下、例えば保険証書の改ざん鑑定を行う場合を例にとって具体的に説明する。
【0031】
<定型フォーム紙の一例>
図4は、本実施の形態に係る定型フォーム紙の一例を示す図である。
【0032】
この定型フォーム紙601は、各定型フォーム毎に対応した固有の情報が予め記録された固定領域603を配置し、この固定領域603外の空白部には、後述の定型フォーム登録処理で指定される可変領域602が配置される。可変領域602は、原本作成の際に可変情報が記載される領域である。
【0033】
例えば、様式Aの保険証書は、予め保険規定が印刷されていて、後で手書きで日付や人名等を記入して完成する形態と想定する。この場合、可変領域602は、日付や氏名、生年月日等の情報が手書きで記入される予定の領域であり、固定領域603は、保険規定などの印刷済み情報が記録されている領域である。言い換えると、可変領域602は、改ざんされると大きな問題となる領域であり、固定領域603は、改ざんされても意味をなさない領域である。
【0034】
<第1の実施の形態に係る定型フォームの登録処理>
次に、上記定型フォーム紙をスキャンして、その定型フォームを登録する処理について、図5〜図8を参照して説明する。この登録処理は主にスキャナ画像処理部2080で実施される。
【0035】
なお、図5は、第1の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。図6は、各処理の実行を選択するために操作部2212のLCD表示部2013上に表示されるメニュー画面を示す図であり、図7は、フォーム登録処理の領域指定時に用いる表示画面を示す図である。図8は、フォーム登録処理で格納されるフォーム情報の一例を示す図である。
【0036】
まずユーザは、例えば様式Aの保険証書の定型フォーム紙(一枚)をスキャナ2270の読み取り部にセットし、さらに図6に示すように操作部2212のLCD表示部2013上にメニュー画面を表示し、メニューから「定型フォーム登録」を選択する(ステップS201)。すると、スキャン動作が開始されて、前記読み取り部にセットされた定型フォーム紙の画像情報がMFP220内に読み込まれる(ステップS202)。
【0037】
上記定型フォーム紙の画像情報を取得した後(ステップS203)、ユーザは、取得した画像情報に対して操作部2212のLCD表示部2013上から可変領域602の指定を行う。すなわち、図7に示すように、操作部2212のLCD表示部2013上に表示された定型フォーム紙の画像情報から、カーソル2017と領域指定ボタン2012を使用して、可変領域602を指定する(ステップS204)。なお、可変領域602を指定する方法は、このようなユーザが操作部2212上で行う方法のほかに、例えば、定型フォームの空白部に予め符号化情報を埋め込む方法などがある。
【0038】
続いて、前記指定した可変領域602の処理方法として圧縮方法を指定する(ステップS205)。指定すべき可変領域602が複数ある場合には全ての領域の指定が終了するまでステップS204、ステップS205及びステップS206を繰り返し実行する。
【0039】
そして、当該定型フォーム紙のフォーム情報を作成すべく、固有の番号(例えばフォームNo.0001)が生成され(ステップS207)、さらに、本処理開始後に自動的に取得した情報(例えば、用紙サイズ、領域位置、領域処理、ページ数、及び登録日時など)と共に、例えば登録者が操作部2212から入力した、フォーム名、登録部署名及び登録者名等の情報が加えられる。このような定型フォーム紙のフォーム情報は、図8に示すようなテーブル形式でHDD2004等の所定の記憶領域に格納される(ステップS208)。
【0040】
その後、フォーム登録終了をユーザに通知し(ステップS209)、本フォーム登録処理を終了する。
【0041】
以上のような定型フォーム登録処理を繰り返すことによって、例えば様式A,様式B,様式C,…の複数種類の保険証書の定型フォームの情報を、それぞれ固有のフォーム番号に従ってMFP220に登録することができる。
【0042】
<第1の実施の形態に係る原本登録処理>
次に、本実施の形態に係る原本登録処理について、図9、図10及び図11を参照して説明する。なお、図9は、第1の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図であり、図10は、原本登録処理時のデータの流れを示す概念図である。図11は、付与情報選択時の操作部2212の画面を示す図である。
【0043】
まず、操作者は、スキャナ2270の読み取り部に紙媒体原本601a(図10)をセットする。ここで、紙媒体原本601aとは、例えば前述した保険証書(様式A)の定型フォーム紙(図4の601)上に指定された可変領域602に、可変情報として、例えば日付、氏名、生年月日等が記入されて、ある被保険者の保険証書の原本として完成したものである。
【0044】
次に、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“登録”を選択し(ステップS211)、さらに続いて、原本を保証するために付与する情報(付与情報)の選択を行う(ステップS212)。付与情報としては、図11に示すように登録日時や内容が用意されており、操作者は必要な登録情報を選択することが可能となる。登録日時は、時計部2052の日時情報から得る(図10のT1)。
【0045】
付与情報が確定すると、コントローラユニット2200は、スキャナ2270によって紙媒体原本601aをスキャンし紙媒体原本の画像情報を読み取る(ステップS213、T2)。そして、この読み取られた紙媒体原本の画像情報を用いて、前述の定型フォーム登録処理でフォーム番号毎に登録された複数のフォーム情報(様式Aのフォーム情報,様式Bのフォーム情報,…)の中に、当該紙媒体原本のフォーム情報と一致するものがあるかを照合する(ステップS214)。
【0046】
前記ステップS214の照合でフォームが一致した場合には、当該紙媒体原本は登録済みの正式な定型フォームを使用して完成したものであることが確認されたことになる。一方、前記ステップS214の照合処理でフォームが一致しなかった場合には、当該紙媒体原本の登録はできない旨の登録不可通知を操作部2212のLCD表示部2013上に表示する(ステップS218)。
【0047】
当該紙媒体原本のフォームが既に登録されている正式なフォームと一致した場合には、図5に基づいて該フォームに対応付けられている可変領域の位置を特定し、当該紙媒体原本中の可変領域602の特徴量を算出する(ステップS215、T3)。この算出方法は後述する。なお、予め定型フォームに可変領域指定用の符号が埋め込まれている場合には、この符号を認識して、この符号によって検出された領域を可変領域602として検出し、その特徴量を算出する。
【0048】
続いて、鑑定処理部2370からファイルIDを発行し(ステップS216、T4)、前記算出した可変領域602の特徴量と前記確定した付加情報にファイルIDを付加して鑑定処理部2370のID管理部2380に格納した後(ステップS217、T5)、コントローラユニット2200に登録処理完了の通知を行って(ステップS219)、原本登録処理を終了する。
【0049】
次に、図9中の特徴量算出処理(ステップS215)の詳細について、図12、図13、図14、及び図15(a),(b)を参照して説明する。
【0050】
なお、図12は、図9の特徴量算出処理を実行するスキャナ画像処理部2080中の要部機能構成を示すブロック図である。図13は、紙媒体原本601aから算出された輝度信号の頻度を示すグラフである。図14は、ヒストグラムを作成するときの位置関係を示す図である。図15(a),(b)は、ヒストグラムを表すグラフであり、同図(a)は主走査方向のヒストグラムを、同図(b)は副走査方向のヒストグラムをそれぞれ表している。
【0051】
初めにスキャナ2270で読み込まれた画像は、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色のディジタル信号に分解され、スキャナ画像処理部2080において特徴量が算出される。以下、特徴量の算出について詳細に説明する。
【0052】
R、G、B信号は、モノクロ信号生成部1101において、次式によってモノクロ信号Kdに変換される。
【0053】
Kd=(R+2×G+B)/4 …(1)
上記式(1)では、G信号にR、Bの2倍のゲインを掛けて平均化することにより輝度信号を得ている。なお、輝度信号の生成は本式に限らず、例えばNTSCで規定されている係数を基に算出しても構わない。
【0054】
得られた輝度信号Kdは、続く下地検出部1102に入力され、この下地検出部1102において定型フォーム紙の画像中の下地レベルが検出される。なお、図13においては、横軸に輝度信号レベル(0〜255)、縦軸は頻度を表す。図13中のL−maxは、測定可能な最大輝度レベル(本例の場合は255)を表し、U−peakは、最大頻度を表す。本実施の形態で想定する定型フォーム紙としては、テキスト中心の画像原稿を想定しているため、下地部分の多くは明るい色に集中することが多く、図13に示すような明度の高い領域にU−peakが存在する。
【0055】
U−peakが検出されると、図13に示すDfレベルだけU−peakから減算された輝度値を下地レベルThとして下地検出部1102の処理を終了する。本実施形態では、Dfは固定値とするが、ヒストグラムの形状に応じて変更しても構わない。
【0056】
下地検出部1102より検出された下地レベルThは、続く二値画像生成部1103へ送出されて、閾値Thと次式の比較演算を行うことにより、モノクロ信号Kdから二値画像(“0”と“1”)へと変換される。
【0057】
if(Kd≦Th) then Kd=1
else Kd=0
これにより、閾値信号Thより暗い部分は“1”へ、明るい部分は“0”へと変換される。二値画像生成部1103で生成された二値画像Biは、続くヒストグラム形状生成部1104へと送出される。
【0058】
ヒストグラム形状生成部1104では、暗い画素“1”を画素位置毎にカウントする。図14において、図中のOM、OSはそれぞれ、主走査方向、副走査方向の基準位置であり、この基準位置を基に各方向にヒストグラムを生成する。図15(a)は、主走査方向のヒストグラムを、図15(b)は副走査方向のヒストグラムをそれぞれ表す。得られた主・副方向のヒストグラム値は、画像の特徴量として一次元のLUT(ルックアップテーブル)の形式でRAM2002に一時保存される。
【0059】
以上がスキャナ画像処理部2080で実施される特徴量の算出アルゴリズムである。
【0060】
<第1の実施の形態の改ざん鑑定処理>
次に、本実施の形態に係る改ざん鑑定処理について、図16及び図17を参照して説明する。この改ざん鑑定処理では、例えば、既に交付された保険証書などの鑑定対象紙媒体に改ざんが有るか否かを鑑定するものである。
【0061】
なお、図16は、第1の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図であり、図17は、改ざん鑑定処理時のデータの流れを示す概念図である。
【0062】
まず、スキャナ2270の読み取り部に鑑定対象紙媒体601b(図17)をセットし、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“鑑定”を選択する(ステップS231)。すると、コントローラユニット2200は、ステップS234まで前述した原本登録処理時と同じシーケンスの処理を行う。すなわち、鑑定対象紙媒体601bをスキャンしてその画像情報を読み込み(ステップS232、T11)、前述の定型フォーム登録処理で予め登録された複数の様式のフォーム情報の中に、当該鑑定対象のフォーム情報と一致するものがあるかを照合する(ステップS233)。そして、フォームの照合を確認することができた場合は、図5に基づいて該フォームに対応付けられている可変領域の位置を特定し、当該鑑定対象の可変領域602を検出して、その可変領域における特徴量を算出し(ステップS234)、鑑定処理部2370の鑑定部2390へ送る。
【0063】
次に、鑑定部2390において、当該鑑定対象の可変領域602の特徴量と、前述した原本登録処理で登録した原本の可変領域602の特徴量とを比較する(ステップS235)。その結果、一致した場合、つまり同一の特徴量と判定された場合には(ステップS236)、鑑定部2390は、コントローラユニット2200に対して鑑定一致(改ざん無し)の鑑定結果を通知し(ステップS237)、不一致と判定された場合は(ステップS236)、鑑定不一致(改ざん有り)の鑑定結果を通知して(ステップS238)、本処理を終了する。
【0064】
また、前記ステップS233において、フォームの整合を確認することができなかった場合は、コントローラユニット2200へ鑑定不可の通知を出して(ステップS239)、本処理を終了する。
【0065】
<本実施の形態に係る特徴量の比較処理>
前述した改ざん鑑定処理時における特徴量の比較処理は、内積処理と閾値処理の2つの処理によって実現される。
【0066】
初めに内積について説明する。内積処理は、ID管理部2380内に、ファイルIDに関連付けられて既に格納されている原本の特徴量データ、つまり主走査・副走査の各一次元ベクトルデータ(LUTで管理)と、今回の鑑定処理時のスキャンデータに基づいて算出された特徴量データとを用いて、次式(2)により計算される。
【0067】
A=Σ(TMi×KMi)/(ΣTMi)2
B=Σ(TSi×KSi)/(ΣTSi)2 …(2)
この式(2)において、A、Bはそれぞれ、主走査、副走査方向の規格化された相関値を表し、TM、TSはそれぞれ、登録された主走査、副走査方向のベクトル形状であり、KM、KSはそれぞれ、今回の鑑定処理時に算出された主走査、副走査方向のベクトル形状を表す。なお、添え字“i”は位置情報を表す。この計算結果は、登録時のデータで規格化されているため、A、Bの値域は、0〜1となる。
【0068】
上記の演算によって得られた相関値A,Bは、続く閾値処理において比較され、最終的に鑑定対象画像と登録画像が同一であるか否かが判定される。本実施形態では、次式(3)の閾値処理で判定される。
【0069】
if((A≧valA)&(B≧valB)) then“登録画像と同一”
else “登録画像とは異なる”
…(3)
この式(3)において、閾値valA,valBは、スキャナ2070等の精度に依存するパラメータであるが、本実施形態では、valA=0.97、valB=0.96として処理を実装した。
【0070】
以上のように本実施の形態によれば、紙媒体の画像情報の改ざんを鑑定するに際し、紙媒体の面全体の画像情報を必要とせず、特定領域(可変領域602)の画像情報のみを用いて処理するので、紙媒体全体の画像情報を用いた処理よりも演算負荷を軽減することができる。
【0071】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、定型フォーム紙601、紙媒体原本601a、及び鑑定対象紙媒体601bが複数ページに亘る場合について説明する。
【0072】
<第2の実施の形態に係る定型フォームの登録処理>
図18は、第2の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図であり、図5と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
まず、複数ページの定型フォーム紙をスキャナ2270の読み取り部にセットし、操作部2212のLCD表示部2013上にメニュー画面を表示し、メニューから「定型フォーム登録」を選択する(ステップS201)。そして、定型フォーム紙の各ページ毎に、スキャンして画像情報を取得し(ステップS203)、さらに領域指定(ステップS204)と、特徴量の抽出を行う(ステップS205)。
【0074】
同一ページ内での領域指定が最後ならば(ステップS206)、次のページの有無を判断する(ステップS301)。ステップS206で領域指定が最後でないならば、領域の指定を継続する。また、ステップS301において次のページが有ると判定された場合はステップS202に戻り、スキャンから同じ手順を繰り返す。
【0075】
ステップS301において次のページ無しと判定された場合は、第1の実施の形態と同様に、フォーム番号を生成し(ステップS207)、開始後から扱った情報をフォーム情報として記録し(ステップS208)、フォーム登録通知を行い(ステップS209)、本処理を終了する。
【0076】
<第2の実施の形態に係る原本登録処理>
図19は、第2の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図であり、図9と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0077】
まず、操作者は、スキャナ2270の読み取り部に複数ページの紙媒体原本601aをセットし、図9で説明した第1の実施の形態の原本登録処理と同様に、操作部2212において、“登録”を選択し(ステップS211)、続いて、付与情報の選択を行う(ステップS212)。そして、コントローラユニット2200は、スキャナ2270によって紙媒体原本601aの全ページをスキャンして画像情報を読み取る(ステップS311)。
【0078】
その後は、ステップS214からステップS219まで、第1の実施の形態の原本登録処理と同様の処理を行う。
【0079】
<第2の実施の形態の改ざん鑑定処理>
図20は、第2の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図であり、図16と同じ処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
まず、スキャナ2270の読み取り部に複数ページの鑑定対象紙媒体601bをセットし、図16で説明した第1の実施の形態の改ざん鑑定処理と同様に、操作部2212において、図6に示すメニュー画面から“鑑定”を選択し(ステップS231)、鑑定対象紙媒体601bの全ページをスキャンしてその画像情報を読み取る(ステップS331)。
【0081】
その後は、ステップS233からステップS239まで、第1の実施の形態の改ざん鑑定処理と同様の処理を行う。
【0082】
以上のように、定型フォーム紙601、紙媒体原本601a及び鑑定対象紙媒体601bが複数ページに亘る場合においても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0083】
[その他の実施の形態]
上述した実施形態で説明した特徴量算出処理(ステップS215)は、上述した算出方法に限るものではなく、その他の特徴量算出方法を用いて、可変領域の特徴量を算出するようにしてもよい。例えば、可変領域内の色情報も用いて特徴量を算出したり、周波数変換して特徴量を算出したりしてもよい。
【0084】
また、鑑定対象紙媒体の定型フォームと同じ定型フォームを有する原本が複数登録されている場合、ステップS235で、同じ定型フォームを有する複数の原本の可変領域特徴量それぞれと比較し、同じ特徴量を有する原本があった場合には、ステップS237で改ざん無しを通知すると共にその原本に関する情報(原本IDや原本の画像など)を表示するのが望ましい。
【0085】
本発明は、上述した実施形態の装置に限定されず、複数の機器から構成されるシステムに適用しても、1つの機器から成る装置に適用しても良い。前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体をシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、完成されることは言うまでもない。
【0086】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、不揮発性メモリを用いることができる。また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0087】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、次のプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPUなどが処理を行って実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したMFPのコントローラユニットの詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示した操作部の外観構成を示す図である。
【図4】実施の形態に係る定型フォーム紙の一例を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。
【図6】操作部のLCD表示部上に表示されるメニュー画面を示す図である。
【図7】フォーム登録処理の領域指定時に用いる表示画面を示す図である。
【図8】フォーム登録処理で格納されるフォーム情報の一例を示す図である。
【図9】第1の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図である。
【図10】原本登録処理時のデータの流れを示す概念図である。
【図11】付与情報選択時の操作部の画面を示す図である。
【図12】図9の特徴量算出処理を実行するスキャナ画像処理部中の要部機能構成を示すブロック図である。
【図13】紙媒体原本から算出された輝度信号の頻度を示すグラフである。
【図14】ヒストグラムを作成するときの位置関係を示す図である。
【図15】ヒストグラムを表すグラフである。
【図16】第1の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図である。
【図17】改ざん鑑定処理時のデータの流れを示す概念図である。
【図18】第2の実施の形態に係るフォーム登録処理を示すフロー図である。
【図19】第2の実施の形態に係る原本登録処理を示すフロー図である。
【図20】第2の実施の形態に係る改ざん鑑定処理を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0089】
220 MFP
2270 スキャナ部
2295 プリンタ
2200 コントローラユニット
2212 操作部
2370 鑑定処理部
2380 ID管理部
2390 鑑定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段と、
定型的なフォームに基づいたシート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
原本画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量を格納する特徴量格納手段と、
鑑定対象画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量と前記特徴量格納手段に格納されている特徴量とを照合する照合手段と、
前記照合手段の照合結果を通知する通知手段とを備えたことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記定型的なフォームに関する情報と当該定型的なフォームにおける前記特定領域に関する情報とを対応付けて格納するフォーム格納手段を更に有し、
前記特徴量抽出手段では、前記フォーム情報格納手段に格納されている情報に基づいて前記読み取り画像に対応する定型的なフォームを識別し、当該識別された定型的なフォームに対応する特定領域に関する情報に基づいて前記読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理しシステム。
【請求項3】
前記特定領域を前記定型的なフォーム内において指定する指定手段を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記定型的なフォームに関する情報を少なくとも1つ以上格納するフォーム格納手段を有し、
前記鑑定対象画像のフォームと前記フォーム格納手段に格納された定型的なフォームとの一致、不一致を比較し、一致している場合のみ前記照合手段による照合を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記定型的なフォーム、前記原本画像及び前記鑑定対象画像は、1ページまたは複数ページで構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項6】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法において、
定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出工程と、
前記原本特徴量抽出工程によって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納する工程と、
前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出工程と、
前記鑑定対象特徴量抽出工程によって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合工程と、
前記照合工程の照合結果を通知する通知工程とを順次実行することを特徴とする画像処理システムの画像改ざん鑑定方法。
【請求項7】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法を実行するための、コンピュータで読み取り可能な制御プログラムであって、
定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出ステップと、
前記原本特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納するステップと、
前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出ステップと、
前記鑑定対象特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合ステップと、
前記照合ステップの照合結果を通知する通知ステップとを備えたことを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項1】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段と、
定型的なフォームに基づいたシート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
原本画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量を格納する特徴量格納手段と、
鑑定対象画像の特徴量として前記特徴量抽出手段によって抽出された前記特定領域の特徴量と前記特徴量格納手段に格納されている特徴量とを照合する照合手段と、
前記照合手段の照合結果を通知する通知手段とを備えたことを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記定型的なフォームに関する情報と当該定型的なフォームにおける前記特定領域に関する情報とを対応付けて格納するフォーム格納手段を更に有し、
前記特徴量抽出手段では、前記フォーム情報格納手段に格納されている情報に基づいて前記読み取り画像に対応する定型的なフォームを識別し、当該識別された定型的なフォームに対応する特定領域に関する情報に基づいて前記読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理しシステム。
【請求項3】
前記特定領域を前記定型的なフォーム内において指定する指定手段を有することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記定型的なフォームに関する情報を少なくとも1つ以上格納するフォーム格納手段を有し、
前記鑑定対象画像のフォームと前記フォーム格納手段に格納された定型的なフォームとの一致、不一致を比較し、一致している場合のみ前記照合手段による照合を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記定型的なフォーム、前記原本画像及び前記鑑定対象画像は、1ページまたは複数ページで構成されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項6】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法において、
定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出工程と、
前記原本特徴量抽出工程によって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納する工程と、
前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出工程と、
前記鑑定対象特徴量抽出工程によって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合工程と、
前記照合工程の照合結果を通知する通知工程とを順次実行することを特徴とする画像処理システムの画像改ざん鑑定方法。
【請求項7】
シート媒体上の画像を読み取る画像読取手段を有する画像処理システムの画像改ざん鑑定方法を実行するための、コンピュータで読み取り可能な制御プログラムであって、
定型的なフォームに基づいた原本シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する原本特徴量抽出ステップと、
前記原本特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量を特徴量格納手段に格納するステップと、
前記定型的なフォームに基づいた鑑定対象シート媒体上の画像を前記画像読み取り手段によって読み取り、該読み取り画像内の特定領域の特徴量を抽出する鑑定対象特徴量抽出ステップと、
前記鑑定対象特徴量抽出ステップによって抽出された特徴量と前記特徴量格納手段に格納された特徴量とを照合する照合ステップと、
前記照合ステップの照合結果を通知する通知ステップとを備えたことを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−48523(P2006−48523A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−231247(P2004−231247)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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