説明

画像処理システム

【課題】更新コストを抑えつつ、ユーザにとって望ましい形で画像補正を行い、画像を見たユーザの満足度を高める。
【解決手段】マクロな視点の画像閲覧ログを読み込みステップ501更新が必要な撮影位置を選出するステップ502。その位置の画像のミクロな視点での閲覧ログを読み込む(ステップ506)。読み込んだ閲覧ログを参考にして、頻度が高い場所を代表領域として決定する(ステップ507)。選ばれた代表領域部分の画像を切り取り(ステップ508)画像の補正を行う(ステップ509)。次に、ステップ509で行った補正前後の画像について、対応する画素の変化を調べ、例えばLUTを作成する(ステップ510)。作成したLUTに従い、代表部分以外の画像を補正する(ステップ511)。次に、更新画像の位置確認と周囲の画像読込みを行い(ステップ512)、更新画像及び周囲の画像に対して接続処理を行う(ステップ513)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星画像や航空写真を利用した大容量画像を取り扱う画像処理システムに関し、より具体的には、大規模画像検索/閲覧システムに利用される追加・更新頻度の高い大容量の画像データベースに対して、効率的な画像の追加・更新を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衛星画像や航空写真などの高空から撮影した画像の利用が広まっており、各地を撮影した衛星画像をデータベースにまとめておき、利用者が希望する地域の画像を簡単に閲覧できるサービスなどが提供されている。
【0003】
このような画像提供サービスは、地図情報などと連携して、住所の検索やその周囲の土地利用状況の把握、交通の便の確認など様々な利用方法がある。これらのサービスにおいて正確な情報を提供するためには、できるだけ新しい画像をデータベース化することが望ましく、画像のデータベースの頻繁な更新が必要となる。
【0004】
このような画像提供サービスでは、撮影した画像データを無加工でユーザに提供する場合は少なく、撮影時の歪み等を取り除いて地図に重ね合わせることのできる画像処理を行ったり、元の画像を利用者により好まれるような明るさや色調に補正した画像データが用いられる。特に、衛星画像を利用する場合、撮影地点が高度であるために、元の画像は大気層の影響によって青みがかった画像になることが多い。これを自然に(建物や地面が通常の視点で見える色と同じように)見えるようにするためには、大きく色調を補正する必要がある。
【0005】
一般的な画像の場合における明るさや色調の補正は、画像内の輝度や色の分布を調べて専門家が判断しながら、それを理想的と考えられる形に再分配したりして行われる(非特許文献1〜3参照)。
【0006】
【非特許文献1】日下 秀夫 監修 映像情報メディア学会 編 カラー画像工学 大日本印刷 1997
【非特許文献2】早川 廣行、PhotoShopCS プロフェッショナル講座色補正編、ピーチプレス株式会社、2004
【非特許文献3】酒井 幸市、デジタル画像処理入門、コロナ社、1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、広大な範囲を撮影した衛星画像等の場合には、データベース内の全ての画像に対して、上記のような一般的な補正を行うことは、コスト高となり非現実的である。
【0008】
そこで、上記のような画像データベースでは以下のような補正方法が取られている。まず、広範囲の画像データベースの中から一定の割合で一部分を代表領域として抜き出し、代表領域のみで理想的な画像の補正をおこなう(代表データの作成)。その後、代表データを作成する際に使ったものと同じ条件、例えば元画像データと代表データの画素毎の対応表に従って他の部分を補正する。
【0009】
また、このような色調補正に加えて、異なる時期に撮影した隣接地域の画像を各々別に補正した場合に起こるつなぎ目の不自然さを緩和する補正等も必要となる。
【0010】
また、上記のような大規模な画像コンテンツに関しては、サービスするエリア内の画像を一度集めただけでは十分ではなく、提供する情報を最新のものとするため、頻繁に更新が必要とされる。特に、画像の補正を伴う更新は、一部人手を要し手間がかかるため、サービス自体のコスト増加の原因となる。
【0011】
また、上記の従来方法による画像の補正は、代表データとしての撮影地区の選び方、及び代表データを補正する際の専門家の判断によって、広範囲の画像補正の結果が大きく異なる結果となる。
【0012】
その特徴として、代表データに選ばれた場所はその部分が中心となって補正されるために代表データの場所および代表データと類似している場所が最も理想的に補正される点が挙げられる。代表データとして選ばれた場所が偏っていた場合、代表データと大きく様子が異なる場所の補正結果は理想的とは言えないものとなる場合が多い。理想的とは言えない補正がなされた画像がユーザに提供されると、ユーザはその画像に違和感を感じたり、撮影地域の魅力を損なったりするため、サービスの品質低下につながったりするという問題がある。
【0013】
このため、代表データの場所は、できるだけ写っているものに偏りのない、補正範囲全体の特徴を良く含んだ場所が望ましい。そのため、通常、代表データの場所は、ランダム又は操作者によって選ばれるが、画像データベースが大きくなる場合、選ぶ代表データも多くチェックコストも大きくなり、補正画像の質を保つのが困難となるという問題がある。
【0014】
本発明は、更新コストを抑えつつ、ユーザにとって望ましい形で画像補正を行い、画像を見たユーザの満足度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記の課題で示した代表データの選び方によって画像の補正結果が大きく異なり、理想的でない補正が適用される問題を解決するため、画像提供サービスに対してユーザの画像閲覧の統計を取り、以下の方法で画像補正を行う。
【0016】
画像を補正する場合、その画像の撮影地区の中で最も閲覧機会が多い部分を代表データとして選び、その補正にしたがって画像全体を補正する。これにより、最もよくユーザの目にふれる地域が最も理想的に補正され、さらにそこを基準としたユーザが興味を持つ(=見る機会が多い)地域を考慮して補正することで、ユーザが見る補正画像の平均的な質を向上することができる。
【0017】
また、情報価値の高い対象物ほど、より優先して更新されるようにすることもできる。ユーザに画像提供を行う際に提供した画像が写された場所やユーザの利用方法等のデータなどの画像に関する属性情報を閲覧ログに付加して、代表領域を決定することも可能である。このように、画像閲覧回数の統計情報を利用することで、よりユーザの関心が集まっている地域の更新を優先し、閲覧頻度の低い部分の更新を抑え目にすることができ、もう一つの目的であるユーザにとって情報価値の高い対象物ほどよく更新される画像データを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の画像処理システムによれば、多くのユーザが興味を持つ地域を考慮して補正することで、ユーザが見る補正画像の平均的な満足度を向上することができるという効果がある。また、ユーザに提供する画像をより新鮮なものにするための更新コストを抑えつつ、ユーザにとって情報価値の高い対象物がより優先して更新することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に一実施の形態による画像処理システムを含む衛星画像提供サービスについて図面を参照しながら説明を行う。以下では、画像補正のうち、最も印象が強い色調(色の濃淡・明暗・強弱などのぐあい)に関する補正を例にして説明するが、補正の種類をこれに限定する趣旨ではない。図1は、本実施の形態による画像処理システムを含み、インターネットを通じて会員ユーザに最新の衛星画像や地図を提供するシステムの一構成例を示す図である。図1に示すシステムは、画像提供センター側情報処理システムと、ユーザ側インターネット利用システムと、を有して構成され、それらは通信回線ネットワークNTを介して通信可能に接続されている。通信回線ネットワークNTは、例えばISDNを含む電話回線、専用回線、ケーブルテレビ回線などを指す。
【0020】
図1に示すユーザ側インターネット利用システムは、クライアントPC(パーソナルコンピュータ)101と、このクライアントPC101を通信回線ネットワークNTに接続する通信装置103と、を備える。クライアントPC101には、ハードディスク等の記録媒体にクライアントプログラム102がインストールされている。クライアントプログラム102を実行することにより、画像提供センターから提供される画像を、通信回線ネットワークNTを介して閲覧可能に構成されている。本実施の形態においては、クライアント側の処理装置をパーソナルコンピュータを例にして説明しているが、その他、インターネットが利用可能な端末であれば、例えば携帯電話、PHS、PDA、ウェアラブルコンピュータ等の携帯機器であっても適用可能である。
【0021】
画像提供センター側のシステムは、データ管理サーバ104及びサービス管理サーバ109と、これらに接続されたディスクアレイ等の記憶装置106と、データ管理サーバ104を通信回線ネットワークNTに接続する通信装置111と、を備えている。データ管理サーバ104は、内蔵記録媒体(例えばROM)内に画像更新プログラム105を格納し、画像更新プログラム105を実行することにより、ハードディスクなどの記憶装置106内に格納される画像データ107を作成し、更新する。
【0022】
サービス管理サーバ109は、その内部の記録媒体(ROM等)に画像提供サービス用のプログラム110を備え、このプログラムをコンピュータに実行させることにより、必要に応じてユーザ側に画像データ107内の画像を提供することができる。また、ユーザの閲覧した内容を、閲覧ログデータ108として記録していくことができる。尚、上記のデータ管理サーバ104とサービス管理サーバ109とは、一体でも良く、別体の機器で構成しても良い。
【0023】
図1に示すシステムは、ユーザが閲覧用クライアントプログラム102を通じてサービス管理サーバ109に対して閲覧要求を送り、サービス管理サーバ109は閲覧要求に合った位置の画像を配信することで運営されている。また、画像更新プログラム105は、画像データ107を随時更新することにより、最新の画像を用意する。本実施の形態は、画像サービス運用時に配信データのログを保存し、画像データを更新する際にログを利用してより効率よく、ユーザに好まれる画像を作成することを特徴とする。図2以降を参照しながらその詳細について説明する。図2は、衛星画像処理装置を利用した衛星画像提供サービス業務の流れを示す図である。この衛星画像提供サービスは、画像提供センターにおいて希望するユーザ(個人、法人、団体等を含む)と会員契約を締結し、会員となったユーザは、インターネットを通じて自分が見たい画像の位置を指定し、画像提供センター側が該当する位置の衛星画像を配信するという仕組みを有している。このとき、画像提供センターで行われる業務は、会員の画像閲覧要求201に対して画像を配信する画像配信業務2Aと、画像配信業務2Aで配信するための各画像の鮮度を保つために画像を更新する画像更新業務2Bと、に分類することができる。画像配信業務2Aは、日常的に行われ、ユーザと直接データをやり取りする業務である。登録ユーザからサービス管理サーバ109に閲覧要求が有った場合に(201)、サービス管理サーバ109は要求された位置を写した画像データ107を記憶装置106から検索し(202)、そのときにデータ管理サーバ109に閲覧ログデータ108を渡し、これを記憶する(203)。検索している画像が見つかったら、サービス管理サーバ109は、該当する画像データ107をロードし(204)、ユーザに対してそのデータを配信する(205)。
【0024】
画像更新業務2Bは、ユーザにより新しい情報を提供するために定期的に行われる記憶装置106内の画像データ107を更新する業務であり、データ管理サーバによって保存されている閲覧ログデータを利用して衛星画像撮影元に対して、更新すべき撮影地域や、衛星の撮影スケジュールを発注し(206)、その要求に従って衛星画像撮影元は最新画像を撮影、販売する(207)。その後、データ管理サーバ画像更新プログラム105によって衛星画像に対して画像と地図が重ね合わせることのできるように画像処理を行ったり、より見やすい色調に補正した後に、同じ位置の旧画像と入れ替える(208)。本実施の形態は、特に、閲覧ログを利用することで、画像更新業務のうち符号206、208で示される業務の効率を改善することができる。以下に、閲覧ログをしようしない場合と、使用する場合とを比較して説明する。尚、色調の補正は、例えば上記非特許文献2に記載されている濃度変換の手法を用いることができる。以下に説明する代表領域に用いた濃度変換の式を例えば全体の濃度変換の式として用いれば良い。
【0025】
図3は、本実施の形態と異なり閲覧ログを利用しない場合の、従来技術による画像更新の手順を示すフローチャート図である。閲覧ログを利用しない場合、図2の206で示した画像販売元に対する撮影地域やスケジュールの指定は、サービスで扱う地域において一様に行われ、全ての地域の更新画像を購入する(301)。その後、購入したそれぞれの画像に対して、302〜310で示す画像処理を行う。これは図2の符号208で示した画像処理・更新処理に相当する。
【0026】
更新画像を読み込み(302)次に、読み込んだ画像内から代表位置(代表領域)を決定する(303)。衛星画像は、一度に広範囲を撮影することができ、画素数も一億画素(縦横10000画素)を超えるものも多い。多画素の画像である。代表領域としては、例えば、通常のモニタで一度に表示することができる程度の範囲で、100万画素(縦横1000画素)程度の一部分を決定する。このとき、代表領域を選ぶ条件は、画像内のランダムな位置又はユーザの判断による更新画像の特徴を表している適切な代表領域と判断される部分のいずれかである。
【0027】
次に、(303)で選ばれた代表領域部分の画像を切り取り(304)、その部分だけで画像の補正を行う(305)。この画像の補正は、例えば輝度の補正や色調補正がある(上記非特許文献1、2参照)。これらの補正手法については、既存の技術を用いるため詳細な説明は省略する。
【0028】
次に、(305)で行った補正処理の前後の画像の対応する画素の変化を調べ、補正前の画素値から補正後の画素値が得られるような対応表を作成する。この対応表は、全ての画素値に対応できない場合があるため、補正前の画素値から補正するための関数を作成してもよい。(306)以後、この対応表をLUT(LookUpTable)と称する。
【0029】
次に、(306)で作成したLUTに従い、代表部分以外の画像を補正する(307)。次に、更新画像の位置確認と周囲の画像読込み(308)を行い、更新画像及び周囲の画像に対して接続処理を行う(309〜)。接続処理は、モザイクと呼ばれ、複数の画像の座標を統一し、一つの画像のようにつなげることである。このとき、隣接する画像の色調が大きく異なると不自然な画像が出来てしまうため、ヒストグラムマッチング等の処理を行い、境界を滑らかにする。(非特許文献3参照)。接続処理は、長い処理時間を要するわりには、該当部分を含む画像を見た場合にのみしか影響がないため、必ずしも重視されないが、これを行うことで、不自然な画像がユーザに提示される機会を減らすことができる。その後、画像を更新し(309)、全ての更新画像に対して各撮影シーン毎に繰り返しの画像処理を行い、撮影シーンがなくなったら処理を終了する。
【0030】
図4は、図1の符号108で示した閲覧ログの一例を示す図である。閲覧ログは図2(203)で示したように、画像配信業務中にユーザの閲覧要求に応じて作成され、データ管理サーバの記憶装置106内に保存される。閲覧ログ108を利用することによって、どの地域の画像が良く閲覧されているか、また、ある地域の画像の中でも特にどの部分がよく閲覧されるかなどを調べることができる。また、閲覧ログ108として、より詳細な情報を保存することによって、閲覧情報の変化や、ユーザの嗜好の詳細な把握を行うこともできる。
【0031】
閲覧ログ108は、図4(A)に示すように、ユーザが閲覧要求を出したトランザクション毎に、閲覧時間と閲覧位置(閲覧する地域を長方形であることを仮定して、左上隅の座標と右下隅の座標とを保存している)を最低限の情報とし、さらに詳細な情報として、例えば利用目的やユーザの年齢などを含んだ情報を記録する。
【0032】
閲覧ログ108を実際に利用する際には、一つ一つのデータではなく、統計データとして利用する。図4(B)は、閲覧ログを統計した結果を平面的・視覚的に表した図である。固定された位置で切り取られたブロック単位で衛星画像の配信を行う場合は、配信したブロック毎に閲覧された回数を統計する。一般的には、画像配信の際に、ユーザが見ることができる画像の位置(範囲)は自由に設定できるため、全体の画像をいくつかのブロックに区切り、その一部がユーザに閲覧(参照)された場合に、閲覧された部分がブロックに含まれる大きさに応じた点数を加算していく方式などを使って閲覧頻度が計算される。
【0033】
このとき設定されるブロックの大きさの例を示した図が図4(C)である。閲覧頻度の統計はマクロな視点でのブロック(左図)と、ミクロな視点でのブロック(右図)との2段階で行われる。
【0034】
マクロな視点での統計は、例えば全体をサービスしている範囲とし、1ブロックを衛星画像の撮影単位(通常一辺10km程度)として閲覧回数を集計する。ミクロな視点ではマクロな視点での1ブロックをさらに細かく区切り、配信する画像の1画面程度(通常一辺500m程度)として閲覧回数を統計する。これらの統計データの利用方法については、図5を参照しながら詳細に説明する。図5は、本実施の形態による閲覧ログを利用した画像更新手法の流れを示すフローチャート図である。図5Aは更新処理の全体を示す図であり、図5Bは、特に図5Aにおけるステップ502の処理の詳細を示す図である。
【0035】
まず符号206で示した画像販売元に対する撮影地域やスケジュールの指定の前に、図4で示したマクロな視点の画像閲覧ログを読み込み(ステップ501)、その閲覧ログを参考にして更新が必要な撮影位置を選出する(ステップ502)。更新が必要な画像の選出については、例えば一定数以上の閲覧が行われた画像であるか否かをチェックし(図5B:ステップ5021)、一定以上の閲覧回数であれば(Yes)重要であり更新が必要とみなし(ステップ5023)、そうでなければ(No)更新しない(ステップ5024)。或いは、現在提供している画像の撮影時期から、一定期間が経過したか否かを評価し(ステップ5022)、一定以上であれば(Yes)更新が必要とみなし(ステップ5023)、そうでなければ(No)更新しない(ステップ5024)。ステップ5021〜5024までの処理を、ユーザに提供している全ての範囲で行い、それぞれの画像で更新が必要か否かをチェックする。そして、ステップ502で選出された画像を購入する(ステップ503)。ステップ501〜503までの処理によって、閲覧が盛んな画像や古くなりすぎた位置の画像を優先して更新することで、効率的な画像の更新を行うことができる。
【0036】
その後、購入したそれぞれの画像に対して、ステップ504〜514までに示す各ステップを含む画像処理を行う。これらの処理は、符号208で示した画像処理・更新処理に対応する。
【0037】
まず、更新画像を読み込み(ステップ504)、次に、更新画像の位置を確認し(ステップ505)、その位置の画像のミクロな視点での閲覧ログを読み込む(ステップ506)。ここで読み込んだ閲覧ログを参考にして、例えば頻度が高い場所を代表領域として決定する(ステップ507)。頻度が最も高い場所を代表領域としても良いし、頻度が高い順番に例えば1〜3までの全てを含む場所を代表領域としても良い。代表領域の決定に関するアルゴリズムは限定的なものではない。また、頻度が最も高い第1の代表領域、2番目の第2の代表領域、というように順番に補正を行っていくこともできる。その場合には、頻度の高い代表領域に基づく補正ほど補正の度合いが強くでるように高い係数を持たせるが好ましい。
【0038】
以後の処理は、図3に示す処理と同様に、ステップ507で選ばれた代表領域部分の画像を切り取り(ステップ508)、その部分だけで画像の補正を行う(ステップ509)。次に、ステップ509で行った補正前後の画像について、対応する画素の変化を調べ、例えばLUTを作成する(ステップ510)。次に、ステップ510で作成したLUTに従い、代表部分以外の画像を補正する(ステップ511)。次に、更新画像の位置確認と周囲の画像読込みを行い(ステップ512)、更新画像及び周囲の画像に対して接続処理を行う(ステップ513)。その後、画像を更新し(ステップ514)、ステップ504からステップ514までの処理を繰り返し、全ての更新画像に対して繰り返しの画像処理を行った後に、本処理を終了する。
【0039】
図6は、補正具合による色調の違いを表す比較例を示す図である。図6(A)で示した画像は、補正前の衛星画像撮影元から供給される元画像を示す図である。図6(B)は、図6(A)で示される元画像に図4や図5で示した画像補正処理を適用した結果の一例と、その際に代表データとして用いた画像の一部分(代表領域1)を示す図である。この画像では、代表領域が建物の多い都市部で占められており、都市部の閲覧回数が多い場合に適している。また、図6(C)は、図6(A)で示される元画像に、図6(B)と異なる代表領域を選択して画像補正を適用した例と、その際に代表データとして用いた画像の一部分(代表領域2)を示す。この画像では、代表領域は緑地で多く占められており、緑地を含んだ部分の閲覧回数が多い場合に適している。図6(B)と図6(C)とで示される補正結果のいずれが適しているかについては、単に画像を見ただけで決定することは難しく、閲覧するユーザの嗜好によって時期的にも変化がある。
【0040】
このような場合でも、本実施の形態による技術を用いることにより、ユーザの閲覧頻度に応じた代表領域の補正を行っただけで、全体的なユーザの満足度を高めることができるという利点がある。
【0041】
尚、ユーザ毎に閲覧回数を統計処理しておけば、そのユーザにとって好ましい補正を行うことができるのは言うまでもない。また、上記の例では、閲覧頻度の高い領域の画像を代表画像として説明したが、閲覧頻度の低い領域の画像を非代表画像として、この非代表領域における補正方式とは異なる領域の補正方式を利用して例えば全体画像を補正することも可能である。次に、本発明の第2の実施の形態による画像処理システムについて説明する。第1の実施の形態では、画像位置に対するユーザの閲覧回数のみを統計して画像補正に利用するシステムについて説明した。図7は、本実施の形態による閲覧ログと詳細情報とを関連付けしたテーブルの一例を示す図である。本実施の形態では、ユーザに画像提供を行う際に提供した画像が写された場所やユーザの利用方法等のデータなどの画像に関する属性情報を閲覧ログに付加している。例えば、図7に示すように、代表領域として1〜3までが抽出された場合に、ユーザIDがA001のユーザは、画像利用方法が旅行の計画であり、趣味がリゾート地への旅行である場合には、ログの閲覧回数に加えて、同じ画像でもリゾート地を中心にして、代表領域を決定する。一方、ユーザIDがB001のユーザに関しては、建物の研究のために画像を利用するのが主目的であれば、ログ閲覧に関する閲覧回数の多い代表領域1から3の中から、建物が多い領域を代表領域として決定するのが好ましい。この場合には、閲覧ログとは独立に、ユーザに固有のユーザ情報も加味することで、より好ましい代表領域を複数の代表領域のなかから決定し補正を行うことができる。
【0042】
このように、閲覧ログに、より詳細な情報を加えることにより、さらに閲覧者の嗜好をより詳細に分析し、望ましい画像を提供することができる。これには、例えば画像の利用方法、どんなアプリケーションを通じて画像を見ているか、ユーザの年齢層や性別などを含んだ閲覧ログを保存し、利用方法やユーザの年齢によって閲覧場所に偏りがある場合、それに応じた画像補正を適用して提供することで、よりユーザ満足度の高いサービスを行うことができる。
【0043】
次に、本発明の第3の実施の形態による画像処理システムについて説明を行う。上記第1及び第2の実施の形態においては、閲覧ログから求めた閲覧回数の多い代表領域の画像の補正方式を利用して他の領域の画像補正も行う点を特徴とする。すなわち、閲覧ログから求めた閲覧頻度の多い領域ほど画像の更新を頻繁に行うことを特徴とする。例えば、図5AのステップS503において、更新画像の購入の際に、購入者側からみて、閲覧頻度の大きい画像は購入回数も多いもの(更新の優先度が高い)と推定できる。そこで、画像処理システム側でも、この閲覧頻度の大きい画像ほど再撮影などを頻繁に行って、画像の変化(地形や季節による変化)に備えておくのが好ましい。
【0044】
以上に説明したように、本発明の各実施の形態による画像処理システムによれば、多くのユーザが興味を持つ地域を考慮して補正することで、ユーザが見る補正画像の平均的な満足度を向上することができる。また、ユーザに提供する画像をより新鮮なものにするための更新コストを抑えつつ、ユーザにとって情報価値の高い対象物がより優先して更新されることができるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、衛星画像の画像提供に関する画像処理システムとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態によるシステム構成例を示す全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態による画像処理システムを有する画像提供サービスを行う側の業務の流れを表す図である。
【図3】一般的な画像更新処理を説明したフローチャート図である。
【図4】本実施の形態において取り扱われる閲覧ログデータの構成、統計データの一例を表す図である。
【図5A】本実施の形態による画像更新処理をする場合の詳細を説明したフローチャートである。
【図5B】図5Aのうち更新が必要な位置を選出するためのフローチャートである。
【図6】図6(A)〜図6(C)までは、本実施の形態による画像補正例を示すイメージ図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態による画像処理に用いられる、閲覧ログと詳細情報とを関連付けしたテーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
101…クライアントPC
102…閲覧用クライアントプログラム
103…通信装置
104…データ管理サーバ
105…画像更新プログラム
106…記憶装置
107…画像データ
108…閲覧ログデータ
109…サービス管理サーバ
110…画像提供サービス要プログラム
111…通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高空から撮影した画像を提供する際の画像処理システムであって、
画像の閲覧に関する閲覧ログから得られる閲覧頻度情報に基づいて、全体画像のうちから閲覧頻度の高い一部の領域である代表領域を求め、該代表領域の画像補正手法を前記代表領域以外の領域を含む画像の画像補正に適用することを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
色調補正処理を伴う画像の更新を行う画像更新手段を有し、前記閲覧ログに、ユーザの画像閲覧に関する属性情報を付加し、前記閲覧頻度情報と前記ユーザの画像閲覧に関する属性情報とに基づいて、前記代表領域を決めることを特徴とする請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
高空から撮影した画像を提供する際の画像処理システムであって、
画像の閲覧に関する閲覧ログから得られる閲覧頻度情報に基づいて、全体画像のうちから閲覧頻度の高い一部の領域である代表領域を求め、該代表領域の画像の更新に関する優先度を高めることを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
高空から撮影した画像を提供する際の画像処理方法であって、
マクロ的な視点の画像閲覧ログを読み込み、該画像閲覧ログを参照して更新が必要な撮影位置を選出するステップと、
選出したそれぞれの画像に対して、更新画像を読み込み、該更新画像の位置を確認し、その位置の画像のミクロな視点での閲覧ログを読み込むステップと、
該読み込んだ閲覧ログを参考にして代表領域を決定し、頻度が高い場所を代表領域とし、該代表領域の色調補正手法を前記代表領域以外の領域を含む画像の色調補正に適用するステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−323180(P2007−323180A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150326(P2006−150326)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】