説明

画像処理システム

【課題】 紙文書やイメージデータの形態で保存された情報の再利用を容易にするために、入力された画像をベクトルデータに変換することを目的とする。また、更に、ベクトルデータの変換を効率的に行うことを目的とする。
【解決手段】 電子データから紙データに変換する際、あらかじめプリンタドライバに実装されているプリフライト機能を用いて、ベクトル化が困難と思われる箇所を検出する手段と、上記プリフライトの結果から、ベクトル化をサポートするデータを付加情報として紙に埋め込むかどうかをユーザが判断し、設定する手段と、上記設定を元に、プリンタドライバが付加情報を含んだデータを作成し、電子すかし技術を用いて付加情報を埋め込み印刷する手段と、ベクトル化する際に、紙に含まれている付加情報の有無を検知する手段と、付加情報がある場合は、その情報を元にベクトル化を行う手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成処理装置を用いて電子データから紙データへ変換する際に、紙データに付加情報を付け加え、紙データから再度電子データへ変換する際に、あらかじめ付け加えた付加情報を元にベクトル化を行う画像形成方法を実行する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題が叫ばれる中、オフィスでのペーパーレス化が急速に進んでいる。
【0003】
[第1従来例]
ペーパーレス化の方法には、例えば、バインダ等で蓄積された紙文書をスキャナ等で読み取り、画像のラスターデータまたはその符号化データ(以下これらを総称してイメージデータという。)として、ポータブルドキュメントフォーマット(PDFフォーマット)等のコンパクトなファイルに変換して、画像記憶手段に格納するものがある(例えば特許文献1)。
【0004】
[第2従来例]
ペーパーレス化の方法の第2は、機能が拡張された記録装置、MFP(マルチファンクション複合機)を用い、画像記憶装置に文字や画像のオリジナルデータファイルを格納しておき、オリジナルデータファイルを印刷して紙文書に記録する際に、オリジナルデータファイルが存在する画像記憶装置内のポインタ情報を、紙文書の表紙や印刷情報中に付加情報として記録するものがある(例えば特許文献2)。これによって、ポインタ情報から直ちにオリジナルデータファイルにアクセスし、オリジナルデータファイルの編集、印刷等の再利用が可能であり、紙文書保有量を削減し得る。
【特許文献1】特開2001−358863号公報
【特許文献2】特開平10−285378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1従来例は、スキャナで読み取った画像をコンパクトな情報量のPDFファイルとして保存可能であるが、プリントされた文書から保存されているファイルを検索することができず、保存されている文書を再利用することは難しかった。
【0006】
第2従来例は、オリジナルデータファイルへのポインタ情報を持たない文書ファイルの場合は、オリジナルデータファイルを検索することができない。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点を解消すべく創案されたもので、紙文書やイメージデータの形態で保存された情報の再利用を容易にするために、入力された画像をベクトルデータに変換することを目的とする。また、更に、ベクトルデータの変換を効率的に行うことを目的とする。
【0008】
さらに具体的には、ベクトル化する際、対象となるデータによっては、正確なベクトル化が困難(または不可能)な場合が以下の例のようにある。
【0009】
* 例1:下地(絵)がある上の文字のベクトル化(図1)
* 例2:文字同士の重なりを解析して、ベクトル化(図2)
また、MFPが外部ネットワークに繋がっていない場合があり、ベクトル化の際、データベースにあるオリジナルデータにアクセスできない場合がある。(オリジナルデータは他のドメイン上のデータベースに存在する場合など。)
そして、全てのデータを付加情報として埋め込む方法も考えられるが、この場合、画質の劣化が起こる場合がある。
【0010】
よって、本発明は、上記課題を解決するために、ネットワークの繋がらない環境で、付加情報の埋め込みによる画質劣化を極力防ぎ、極力オリジナルの電子データに近いベクトル化を行うことが主な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、電子データから紙データに変換する際、あらかじめプリンタドライバに実装されているプリフライト機能を用いて、ベクトル化が困難と思われる箇所を検出する手段と、上記プリフライトの結果から、ベクトル化をサポートするデータを付加情報として紙に埋め込むかどうかをユーザが判断し、設定する手段と、上記設定を元に、プリンタドライバが付加情報を含んだデータを作成し、電子すかし技術を用いて付加情報を埋め込み印刷する手段と、ベクトル化する際に、紙に含まれている付加情報の有無を検知する手段と、付加情報がある場合は、その情報を元にベクトル化を行う手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
ベクトル化をサポートする付加情報を用いてベクトル化する事で、よりオリジナルに近い電子データを、ネットワーク上にあるデータベース等の外部記憶媒体に存在するオリジナルデータに頼らずに生成でき、かつ、付加情報の埋め込みによる画質劣化を極力押さえて復元する事が可能となる。結果として、紙データと電子データのシームレスな取り扱いを促進する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施例1)
次に本発明に係る画像処理方法を、図3のフローチャートに基づいて説明する。
また、処理の順序の概要は以下の通りである。
【0014】
1. [プリフライト処理] 電子データから紙データにする際、あらかじめプリンタドライバに実装されているプリフライト機能を用いて、ベクトル化が困難と思われる箇所を検出する。
【0015】
2. [付加情報の埋め込みを判断する処理] 上記プリフライトの結果から、ベクトル化をサポートするデータを付加情報として紙に埋め込むかどうかをユーザが判断し、設定する。
【0016】
3. [付加情報の埋め込み処理] プリンタドライバは、上記設定を元に、付加情報を含んだデータを作成し、電子すかし技術を用いて付加情報を埋め込み、印刷する。
【0017】
4. [ベクトル化処理] ベクトル化する際は、紙に含まれている付加情報の有無を検知し、付加情報がある場合は、この情報を元にベクトル化を行う。
【0018】
[プリフライト処理]
以下で、図1の絵と文字の重なりの例から、オブジェクト同士の重なりをプリフライトで検出する方法を示す。
【0019】
絵と文字の重なりの電子データは、図4のような、SVGデータであるとする。このSVGデータより、イメージと文字は、図5の領域(イメージを囲う枠線の領域、文字を囲う枠線の領域)に存在する事になる。プリフライト時に、この2つのオブジェクトが重なっているかどうかを、SVGデータのx, y, width, height, font-size属性があれば、計算により判断することが可能であることは自明である。また、イメージや文字オブジェクトに限らず、あらゆるオブジェクトは、座標及びサイズ情報を保持しているため、同様の計算により、重なりを検出することが可能である。
【0020】
[付加情報の埋め込みを判断する処理]
前述のプリフライト処理の結果より、ベクトル化を行う際の補助情報として有効と思われるデータ(付加情報)を自動もしくは、手動で設定する。自動の場合、あらかじめ設定されているフラグ、例えば、「絵と文字の重なり情報を埋め込む」などの設定情報を元に、自動的に付加情報を埋め込むように設定を行う。また、手動で設定する場合は、プリフライトの結果から、電子データに含まれていた情報、例えば、「絵と文字の重なりがある」などの情報を、ダイアログ中にリストとしてユーザに表示させ、この中から、ユーザがどの付加情報を紙に埋め込むかを判断し、埋め込む場合は、チェックボックスにチェックを入れ、設定を行う。
【0021】
[付加情報の埋め込み処理]
以下で、具体的な付加情報の埋め込み方法について説明する。
【0022】
図4の「絵と文字の重なり」のSVGデータの場合、付加情報は、図6のようになる。図6のSVGデータには、付加情報を示す<metadata>タグがあり、これ以下のレベルのタグで、付加情報の全ての情報を表現する。図6では、<metadata>タグの下位レベルのタグとして、<overlap id="1" region="0 0 100 100">がある。<overlap>は、絵と文字などの重なりがあることを示すタグである。SVGデータに、複数の重なり領域がある可能性もあるため、属性として、idが設定されており、このidは、前述のプリフライト処理をして検出した重なり情報の順番で割り振られていく。また、region属性は、重なりの情報がどの領域にあるかを示しており、"0 0 100 100"は、左上の座標が(0, 0)、右下の座標が(100, 100)である事を示す。なお、座標の単位は、ここではSVGで指定された座標に依存する。<overlap>タグの下位レベルのタグとして、実際の重なりデータが保持される。重なりデータは、少しでも重なっていれば、その重なっているお互いまたは、複数のオブジェクト全てを重なりデータとして保持される。図4のSVGデータの場合、図6のように、絵と文字が重なっているため、<image>データ及び、<text>データが含まれる事になる。
【0023】
[ベクトル化処理]
以下、ベクトル化により、SVGデータを再度作成する処理を説明する。
【0024】
まず、付加情報が紙データに含まれているかをチェックする。検出できない場合は、そのままベクトル化を行う。検出できた場合は、前述したXML形式の付加情報を取り出し、メモリ上、もしくは、ローカルディレクトリに付加情報を保持する。そして、実際にベクトル化を行う前に、どの領域に重複データがあるかを、付加情報に含まれるoverlapタグのregion属性を元にあらかじめデータとして保持しておく。実際にベクトル化処理を行う際、ベクトル化を行っている領域が、付加情報に含まれるregion属性と重なっている場合、その領域のベクトル化は紙データからは行わず、あらかじめ保持している付加情報のデータを用いてベクトル化情報としてデータを出力する。
【0025】
なお、この実施例では、SVGデータを前提に説明をしたが、SVG以外の電子データにおいても有効である事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】下地(絵)がある上の文字列を示す図面である。
【図2】文字同士の重なりを示す図面である。
【図3】本発明を説明するための代表的なフローチャート図である。
【図4】イメージと文字の重なりを示すSVGデータである。
【図5】イメージと文字を示す図である。
【図6】イメージと文字が重なっている事を示す付加情報を保持したSVGデータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子データから紙データを出力する際、プリフライト技術によって、紙データからベクトル化する際に困難と思われる箇所を検出する手段を有する画像処理システム。
【請求項2】
プリフライト処理の結果を元に、紙データからベクトル化する際に困難と思われる箇所の情報を、付加情報として紙に埋め込む手段を有する画像処理システム。
【請求項3】
紙に含まれる付加情報を、ベクトル化する際の補助情報として利用し、ベクトル化を行う手段を有する画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−85604(P2008−85604A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262783(P2006−262783)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】