説明

画像処理回路、画像処理方法及び撮像装置

【課題】オートフォーカス後のピントずれの影響を低減することができる画像処理回路を提供する。
【解決手段】画像処理回路は、AF評価値が最大となるピーク位置を合焦位置と判定するAF制御を実行するAF制御部19aを含むシステム制御部19と、AF制御時に各レンズ位置毎にAF評価値を算出し、さらにシャッター時にもAF評価値を算出するAF評価値算出部70を含む信号処理部16とを備える。また、信号処理部16は、合焦位置におけるAF評価値とシャッター時のAF評価値との差分値と、複数のレンズ位置間におけるAF評価値の傾きとに応じて補正値を算出する補正値算出部80と、その補正値により補正されたエッジ強調量に基づいて画像データのエッジ成分を強調するエッジ強調部40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理回路、画像処理方法及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラなどの撮像装置には、撮像される画像のピント調節を自動で行うためのオートフォーカス機能(自動焦点制御機能)が組み込まれているものが普及している。
【0003】
例えばイメージセンサを用いたオートフォーカス(AF)制御方式では、フォーカスレンズを至近側から無限側に向かって所定ピッチで移動させ、各点の撮像データからAF評価値を算出する。そして、そのAF評価値がピーク値になるピーク位置を合焦位置として、フォーカスレンズをこのピーク位置に移動する。具体的には、フォーカスレンズを至近側から無限側に向かって移動させ、AF評価値がピーク値を過ぎて減少を始めるのを検出し、フォーカスレンズを合焦位置に移動する。なお、この方法は山登り方式と呼ばれる。
【0004】
このようなオートフォーカス機能によって、ピント調節に要するユーザの操作負担を軽減することができ、ユーザの技量に左右されることなく被写体を撮像することができる。
なお、上記従来技術に関連する先行技術として、特許文献1や特許文献2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−086799号公報
【特許文献2】特開2000−092354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記オートフォーカス機能を備える撮像装置では、オートフォーカス制御から実際にシャッターが切られるまでの間のタイムラグ、手ぶれや撮像対象の動き等によって、撮像された画像のピントがずれてしまう場合がある。
【0007】
画像処理回路で、オートフォーカス後のピントずれの影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の画像処理回路は、フォーカス状態を示す評価値が最大となる位置を合焦位置と判定するオートフォーカス制御を行う制御部と、前記合焦位置における評価値とシャッターが切られたときの評価値との差分値に応じて、補正値を算出する補正値算出部と、予め設定される所定の強調量を前記補正値にて補正し、補正後の強調量に基づいて入力画像データのエッジ成分を強調するエッジ強調部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
開示の画像処理回路によれば、オートフォーカス後のピントずれの影響を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態のデジタルカメラの全体構成を示すブロック図。
【図2】エッジ強調部と補正値算出部との内部構成を示すブロック図。
【図3】AF制御を説明するための説明図。
【図4】(a)、(b)エッジ強調処理を説明するための説明図。
【図5】変形例の補正値算出部の内部構成を示すブロック図。
【図6】変形例のエッジ強調処理を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態を図1〜図4に従って説明する。なお、図1は、デジタルカメラ10の全体構成を概略的に示すブロック図である。
図1に示すように、デジタルカメラ10は、レンズ部11と、モータ12と、モータドライバ13と、撮像素子14と、A/D変換回路15と、信号処理部16と、記録媒体17と、入力部18と、システム制御部19とを含む。
【0012】
レンズ部11は、被写体からの光を集光する複数のレンズ(フォーカスレンズ11aなど)と、これらのレンズを通過した光の量を被写体照度に応じて調整する絞り(図示略)とを備え、集光された被写体の光を撮像素子14に出力する。ここで、フォーカスレンズ11aは、ピントを調整するためのレンズであり、モータ12によって駆動され、光軸に沿って前後に移動される。なお、このモータ12は、ステッピングモータであり、システム制御部19によって制御されるモータドライバ13から供給される駆動パルスにより駆動制御される。
【0013】
上記撮像素子14は、ベイヤ配列のカラーフィルタを備え、レンズ部11を通過して入射される入射光に応じた撮像信号(アナログ信号)をA/D変換回路15に出力する。なお、撮像素子14としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCOMS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどが用いられる。
【0014】
A/D変換回路15は、上記撮像信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を画像データとして信号処理部16に出力する。
信号処理部16は、A/D変換回路15から入力される画像データ(入力画像データ)に対して各種画像処理を施し、その画像処理後の画像データを記録媒体17に記録する。また、信号処理部16は、A/D変換回路15から入力される画像データに基づいて、フォーカス状態を示すオートフォーカス(AF)評価値を算出し、そのAF評価値をシステム制御部19に出力する。
【0015】
入力部18は、ユーザにより操作されるシャッタボタン(レリーズボタン)やメニューボタン等の各種スイッチを有している。ユーザはこれらの各種スイッチを操作することにより、写真撮影や撮影モードの変更などを行うことができる。例えばシャッターボタンが半押し操作されることによってAF制御等の撮影準備処理が行われ、全押し操作されることによって実際の撮影処理が行われる。なお、シャッターボタン等が操作されると、入力部18は、その操作に応じた操作信号をシステム制御部19に出力する。
【0016】
システム制御部19は、入力部18からの各種操作信号に基づいて、ROM(図示略)に記憶された各種プログラムを実行することにより、デジタルカメラ10の各部を統括的に制御する。また、システム制御部19は、上記シャッターボタンが半押しされたときに、被写体にピントを合致させるAF制御を実行するAF制御部19aを備える。なお、これら信号処理部16及びシステム制御部19は画像処理回路として機能する。
【0017】
次に、信号処理部16の内部構成について説明する。
信号処理部16内のプリプロセス部20は、上記A/D変換回路15から入力される画像データに対し、例えばホワイトバランス調整やゲイン調整や欠陥信号の補正などの前処理を施す。色空間変換部30は、プリプロセス部20により前処理されたRGB形式の画像データをYCbCr形式の画像データに変換する。
【0018】
エッジ強調部40は、色空間変換部30にて変換された画像データのエッジを強調するエッジ強調処理を行う。
画像圧縮部50は、エッジ強調処理などの各種画像処理後の画像データを所定の符号方式(例えばJPEG方式)により圧縮し、圧縮後の画像データを記録媒体17に格納する。
【0019】
一方、上記A/D変換回路15からの画像データは、輝度成分抽出部60にも入力される。輝度成分抽出部60は、入力される画像データから輝度信号を抽出し、その輝度信号をAF評価値算出部70に出力する。
【0020】
AF評価値算出部70は、輝度成分抽出部60で取得された輝度信号に基づいてAF評価値を算出する。具体的には、AF評価値算出部70は、上記輝度信号の画面内における高周波成分を積算することで、画像データのコントラスト強度を示すAF評価値を算出する。このAF評価値算出部70は、算出したAF評価値をAF制御部19aに出力する。
【0021】
AF制御部19aは、AF評価値に基づいて被写体にピントを合致させる山登り方式のAF制御を実行する。すなわち、AF制御部19aは、シャッターボタンの半押し操作に応答して、AF評価値に基づいて合焦位置を検出し、その合焦位置にフォーカスレンズ11aを移動する。具体的には、AF制御部19aは、モータドライバ13を介してモータ12を駆動制御することにより、図3に示すように、フォーカスレンズ11aを至近側から無限側に向かって微小ステップずつ移動させながら、所定ステップ毎のレンズ位置(図3の●参照)で順次撮影する。このとき、AF制御部19aは、輝度成分抽出部60及びAF評価値算出部70を制御して、上記各レンズ位置で撮影された画像データのコントラスト強度を示すAF評価値を算出する。ここで、あるレンズ位置でピントが合致した被写体が存在する場合には、フォーカスレンズ11aの位置に対するAF評価値は図3に示すような曲線(AF評価値曲線)を描く。AF制御部19aは、このフォーカスレンズ位置とAF評価値との関係を示すAF評価値曲線のピーク位置P1、すなわちAF評価値(画像のコントラスト)が最大となる位置を合焦位置に決定する。すなわち、このAF制御方式では、コントラスト(AF評価値)が高いほどピントが合っている(合焦度合が高い)と判定され、コントラストが低いほどピントがずれている(合焦度合が低い)と判定される。そして、AF制御部19aは、上記合焦位置検出動作終了後に、再度モータドライバ13を介してモータ12を駆動制御して、決定された合焦位置P1にフォーカスレンズ11aを移動させる。このようにして、AF制御部19aによるAF制御が実現される。
【0022】
一方、上記AF評価値算出部70は、上記AF制御における合焦位置P1のAF評価値、すなわちAF評価値のピーク値をレジスタ70aに格納する。さらに、AF評価値算出部70は、レンズ位置とその位置におけるAF評価値とを補正値算出部80に出力する。
【0023】
また、輝度成分抽出部60及びAF評価値算出部70は、システム制御部19からの制御に基づいて、シャッターボタンが全押し操作されたとき(実際にシャッターが切られたとき)に撮影された画像データからもAF評価値を算出する。そして、AF評価値算出部70は、シャッターが切られた時(以下、説明の便宜上「シャッター時」という)のAF評価値(図3の○参照)を補正値算出部80に出力するとともに、レジスタ70aに格納されているAF評価値のピーク値を補正値算出部80に出力する。
【0024】
補正値算出部80は、AF評価値算出部70から入力されるAF評価値及びレンズ位置に基づいて補正値Cを算出し、その補正値Cを上記エッジ強調部40に出力する。そして、エッジ強調部40では、その補正値Cに基づいてエッジ強調量を補正した上で、画像データのエッジを強調する。
【0025】
次に、エッジ強調部40及び補正値算出部80の内部構成について図2にしたがって説明する。
図2に示すように、エッジ強調部40は、ローパスフィルタ(LPF)41と、ハイパスフィルタ(HPF)42と、コアリング処理部43と、加算器44と、乗算器45と、加算器46と、レジスタ47とを備える。
【0026】
LPF41は、色空間変換部30から入力される輝度信号Yの所定周波数以下の低周波成分を抽出し、その抽出した信号を加算器44に出力する。また、HPF42は、色空間変換部30から入力される輝度信号Yの所定周波数以上の高周波成分(エッジ成分)を抽出し、その抽出した高周波成分をコアリング処理部43に出力する。コアリング処理部43は、HPF42により抽出された輝度信号Yの高周波成分のうち、予め設定された所定レベル以下の成分(ノイズ成分)を除去する。このコアリング処理部43は、コアリング処理後の輝度信号Yの高周波成分を乗算器45に出力する。
【0027】
一方、加算器46は、レジスタ47から読み出されるエッジ強調ゲインKと、上記補正値算出部80から入力される補正値Cとを加算して補正ゲインK1を生成し、その生成した補正ゲインK1を乗算器45に出力する。すなわち、加算器46では、補正値Cによりエッジ強調ゲインKを補正した補正ゲインK1が生成される。ここで、レジスタ47に格納されているエッジ強調ゲインKは、エッジの振幅を調整するためのゲインであり、例えば撮影モード毎に予め設定されている固定値である。
【0028】
上記乗算器45では、コアリング処理部43から入力されるコアリング処理後の輝度信号Yの高周波成分(エッジ成分)に、加算器46から入力される補正ゲインK1が乗算され、補正ゲインK1に基づきエッジ成分が強調される。この乗算器45は、乗算結果、すなわち補正ゲインK1によって強調されたエッジ成分を加算器44に出力する。
【0029】
この加算器44は、上記LPF41から入力される輝度信号Yの低周波成分と、乗算器45から入力される補正ゲインK1によって強調されたエッジ成分とを加算して輝度信号Y1を生成し、その輝度信号Y1を出力する。従って、この輝度信号Y1は、ノイズ成分が除去され、補正ゲインK1に基づきエッジ部分が強調された輝度信号(画像信号)となる。
【0030】
続いて、上記補正ゲインK1を生成する際に使用される補正値Cを算出する補正値算出部80の内部構成について説明する。この補正値算出部80は、差分検出部81と、傾き検出部82と、乗算器83〜85と、レジスタ86,87とを備える。
【0031】
差分検出部81には、AF評価値算出部70から合焦位置P1におけるAF評価値(AF評価値のピーク値)と、シャッター時におけるAF評価値とが入力される。この差分検出部81は、AF評価値のピーク値とシャッター時におけるAF評価値との差分値Aを検出し、その差分値Aを乗算器83に出力する。
【0032】
乗算器83は、上記差分値Aと、レジスタ86から読み出される第1係数αとを乗算し、その乗算結果(A×α)を乗算器85に出力する。ここで、レジスタ86に格納されている第1係数αは、差分値Aを補正量に変換するための係数であり、例えば撮影モード毎に予め設定されている固定値である。本実施形態における第1係数αは、差分検出部81にて検出される差分値Aを、上記レジスタ47に格納されているエッジ強調ゲインKの10%以内の値に変換する値に設定されている。
【0033】
一方、傾き検出部82には、上記AF制御における複数のレンズ位置のAF評価値がそのレンズ位置情報とともに、AF評価値算出部70から入力される。具体的には、本実施形態の傾き検出部82には、合焦位置P1及びその位置におけるAF評価値と、合焦位置P1の一つ前(もしくは一つ後)のレンズ位置P2(図4参照)及びその位置におけるAF評価値とが入力される。この傾き検出部82は、図4に示すように、合焦位置P1とレンズ位置P2との差分値D1と、合焦位置P1におけるAF評価値とレンズ位置P2におけるAF評価値との差分値D2とに基づいて、レンズ位置P1,P2間におけるAF評価値の傾きBを検出する。ここで、図4(a)に示すように、フォーカスレンズ11aの移動に対するAF評価値の変動が大きい場合には、AF評価値の傾きBが大きくなる。これに対し、図4(b)に示すように、フォーカスレンズ11aの移動に対するAF評価値の変化が小さい場合には、AF評価値の傾きBが小さくなる。すなわち、傾き検出部82で検出されるAF評価値の傾きBは、AF評価値曲線の尖り具合を示す指標となる。そして、傾き検出部82は、検出したAF評価値の傾きBを乗算器84に出力する。
【0034】
乗算器84は、上記AF評価値の傾きBと、レジスタ87から読み出される第2係数βとを乗算し、その乗算結果(B×β)を乗算器85に出力する。ここで、レジスタ87に格納されている第2係数βは、AF評価値の傾きBを補正量に変換するための係数であり、例えば撮影モード毎に予め設定されている固定値である。本実施形態における第2係数βは、AF評価値の傾きBを0.9〜1.1の範囲内の値に変換する値に設定されている。
【0035】
乗算器85は、上記乗算器83による乗算結果(A×α)と、上記乗算器84による乗算結果(B×β)とを乗算し、下記式で示す補正値Cを算出する。
C=(A×α)×(B×β)
この乗算器85は、算出した補正値Cを上記エッジ強調部40内の加算器46に出力する。そして、加算器46では、上述したように、レジスタ47から読み出されたエッジ強調ゲインKに上記補正値Cを加算して補正ゲインK1が生成される。すなわち、補正値Cによってエッジ強調量が補正され、エッジ強調ゲインKよりも補正値Cの分だけエッジ強調量が増加される。
【0036】
次に、このように構成されたデジタルカメラ10の作用について説明する。とくに、AF制御部19a及び信号処理部16におけるAF制御及びエッジ強調処理について説明する。
【0037】
今、ユーザによってシャッターボタンが半押し操作されると、その操作に応じた操作信号が入力部18からシステム制御部19(AF制御部19a)に入力される。すると、AF制御部19aは、モータドライバ13及び信号処理部16等を制御して、上述した山登り方式のAF制御を行う。このAF制御時において、信号処理部16内のAF評価値算出部70は、所定ステップ毎の各レンズ位置におけるAF評価値を算出し、その算出したAF評価値をAF制御部19aに出力する。AF制御部19aは、AF評価値がピーク値を過ぎて減少し始めるのを検出し、AF評価値のピーク位置P1を合焦位置として決定した後、モータドライバ13を制御して、決定した合焦位置P1にフォーカスレンズ11aを移動させる。
【0038】
また、上記AF評価値算出部70は、合焦位置P1及びその位置におけるAF評価値と、合焦位置P1の一つ前のレンズ位置P2(図4参照)及びその位置におけるAF評価値とを、補正値算出部80内の傾き検出部82に出力する。すると、傾き検出部82は、図4に示すように、合焦位置P1とレンズ位置P2との差分値D1と、合焦位置P1のAF評価値とレンズ位置P2のAF評価値との差分値D2とに基づいて、AF評価値の傾きBを検出する。なお、AF評価値算出部70は、合焦位置P1におけるAF評価値をレジスタ70aに格納する。
【0039】
続いて、ユーザによってシャッターボタンが全押し操作されてシャッターが切られると、システム制御部19は、入力部18から入力される操作信号に応答して、各部を制御して実際の撮影処理を行う。このとき、AF制御から実際にシャッターが切られるまでの間のタイムラグ、手ぶれや撮像対象の動き等に起因して、ピントがずれてしまう場合があることについては前述した。このようにピントがずれると、画像としてのエッジが弱くなる。この点に着目して、本実施形態のエッジ強調処理では、ピントのずれ量に応じてエッジ強調量を補正制御するようにした。
【0040】
詳述すると、輝度成分抽出部60及びAF評価値算出部70は、シャッター時にA/D変換回路15から入力される画像データについても、その画像データ(輝度信号)からAF評価値を算出する。続いて、AF評価値算出部70は、算出したシャッター時のAF評価値と、レジスタ70aに格納したAF評価値のピーク値とを補正値算出部80内の差分検出部81に出力する。差分検出部81は、AF評価値のピーク値とシャッター時のAF評価値との差分値Aを検出する。すなわち、この差分検出部81において、AF制御からシャッター時までのピントのずれ量に対応する差分値Aが検出される。この差分検出部81で検出された差分値Aと、上記AF制御時に傾き検出部82で検出された傾きBとに基づいて、補正値算出部80にて補正値C(=A×α×B×β)が算出される。そして、この算出された補正値Cをエッジ強調ゲインKに加算することで、エッジ強調処理におけるエッジ強調量を補正し、その補正後の補正ゲインK1によってコアリング処理部43から出力されるエッジ成分を強調するようにした。これにより、上記補正値Cが大きいほど、エッジ強調量(補正ゲインK1)が増加するように補正される。
【0041】
より具体的には、AF制御からシャッター時までのピントのずれ量に対応する差分値Aが大きいほど、エッジ強調量が増加するように補正される。これにより、オートフォーカス後にピントがずれて画像のエッジが弱くなるような場合であっても、そのピントのずれ量の分だけエッジ強調量を増加できるため、ピントのずれによる影響を低減することができる。また、AF評価値曲線の尖り具合を示すAF評価値の傾きBが大きいほど、エッジ強調量が増加するように補正される。これにより、ピントのずれ量だけでなく、AF評価値曲線の特性(撮影対象)に応じてエッジ強調量を補正制御することができる。例えばフォーカスレンズ11aの移動に対するAF評価値の変動が大きい場合(図4(a)参照)、つまり被写体のコントラストが強く、エッジ強調の必要性が高い場合には、傾きBが大きくなるため、エッジ強調量を増加することができる。また、フォーカスレンズ11aの移動に対するAF評価値の変動が小さい場合(図4(b)参照)、つまり被写体のコントラストが弱く、エッジ強調の必要性が低い場合には、傾きBが小さくなるため、エッジ強調量が不要に増加されるのを抑制することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば以下の効果を奏することができる。
(1)合焦位置P1におけるAF評価値(AF評価値のピーク値)とシャッター時のAF評価値との差分値Aに応じて、エッジ強調処理におけるエッジ強調量を補正制御するようにした。すなわち、AF制御から実際にシャッターが切られるまでの間に生じるピントのずれ量に対応する差分値Aが大きくなるほど、エッジ強調量を増加させるようにした。これにより、上記ピントのずれによってエッジが弱くなった画像データに対して、そのピントのずれ量の分だけエッジ強調量を増加させてエッジ成分を強調することができる。従って、オートフォーカス後のピントのずれによる影響を低減することができる。
【0043】
また、最も合焦度合が高いAF評価値のピーク値を基準にして差分値Aを算出するようにしたため、エッジ強調量を高精度に補正制御することができる。
(2)AF評価値曲線の特性(尖り具合)を示すAF評価値の傾きBに応じて、エッジ強調処理におけるエッジ強調量を補正制御するようにした。これにより、被写体におけるエッジ強調の必要性に応じて、エッジ強調量を補正することができる。例えば被写体のコントラストが弱く、エッジ強調の必要性が低い場合には、エッジ強調量を大きくしてしまうとかえって画像が不自然になるという問題が発生する。これに対して、AF評価値の傾きBに応じてエッジ強調量を補正することにより、エッジ強調の必要性が低い場合にエッジ強調量が不要に大きく補正されることを抑制することができる。
【0044】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
・上記実施形態における補正値算出部80の内部構成(図2参照)に制限されない。例えば、図5に示されるように、傾き検出部82を傾き算出部88に置換した構成を採用してもよい。
【0045】
この傾き算出部88は、傾き検出部88aと傾き平均化部88bとを備えている。傾き検出部88aには、AF制御時における多数のレンズ位置情報及びその各レンズ位置におけるAF評価値がAF評価値算出部70から入力される。すなわち、図6の例では、傾き検出部88aには、合焦位置P1を含む4点のレンズ位置P1〜P4及びそれぞれの位置におけるAF評価値がAF評価値算出部70から入力される。この傾き検出部88aは、多数のレンズ位置情報及びAF評価値に基づいて、複数のAF評価値の傾きB1〜B3を検出する。具体的には、傾き検出部88aは、レンズ位置P4とレンズ位置P3の差分値と、レンズ位置P4のAF評価値とレンズ位置P3のAF評価値との差分値とに基づいて傾きB1を検出する。同様に、傾き検出部88aは、レンズ位置P3とレンズ位置P2の差分値と、それらAF評価値の差分値とに基づいて傾きB2を検出し、レンズ位置P2とレンズ位置P1の差分値と、それらAF評価値の差分値とに基づいて傾きB3を検出する。そして、傾き検出部88aは、検出した複数の傾きB1〜B3を傾き平均化部88bに出力する。この傾き平均化部88bは、複数の傾きB1〜B3の平均値を算出し、その平均値を傾きBとして乗算器84に出力する。
【0046】
この構成によれば、複数のレンズ位置間におけるAF評価値の傾きB1〜B3が平均化されて傾きBが算出される。これにより、AF評価値曲線の特性(尖り具合)を高精度に表わす傾きBを得ることができる。
【0047】
・上記実施形態の補正値算出部80において、図2に示す傾き検出部82(図5に示す傾き算出部88)、乗算器84,85及びレジスタ87を省略するようにしてもよい。この構成によっても、ピントのずれ量の分だけエッジ強調量を補正することができる。
【0048】
・上記実施形態の補正値算出部80では、AF評価値のピーク値とシャッター時のAF評価値との差分値Aが0の場合には補正値Cも0になる。これに代えて、補正値算出部80において、例えば上記差分値Aが0の場合には、AF評価値の傾きB及び第2係数β、すなわち乗算器84による乗算結果(B×β)のみによって補正値Cを生成するようにしてもよい。この構成によれば、AF制御からシャッター時までにピントのずれが生じなかった場合であっても、AF評価値曲線の特性に応じてエッジ強調量を補正することができる。これによって、より良い画質を得るための画像処理を実現することができる。
【0049】
・上記実施形態におけるエッジ強調部40の内部構成は図2や図5の構成に特に制限されない。例えばコアリング処理部43を省略するようにしてもよい。また、LPF41を省略するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態におけるオートフォーカス動作としては、シングルAF動作であっても、コンティニュアスAF動作であってもよい。
・上記実施形態では、シャッターボタンの半押し操作によってAF制御が開始されるようにしたが、AF制御の開始タイミングは特に制限されない。例えばシャッターボタンの全押し操作によってAF制御が開始され、そのAF制御に続いて実際の撮影処理が実行されるようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態の輝度成分抽出部60において抽出するデータは、AF評価値を算出することが可能な画像情報であれば特に制限されず、例えば緑画素データであってもよい。
・上記実施形態の色空間変換部30における画像データの変換形式は特に制限されない。例えば色空間変換部30において、RGB形式の画像データをYUV形式の画像データに変換するようにしてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、AF制御及びエッジ強調処理を実行する処理を区分してブロックとして図1及び図2に示した。すなわち、AF制御及びエッジ強調処理は、図1及び図2に示すように、AF制御部19aと、プリプロセス部20と、色空間変換部30と、エッジ強調部40と、輝度成分抽出部60と、AF評価値算出部70と、補正値算出部80とによって実行される。なお、これら図1及び図2に示す各部は、システム制御部19において実行される処理を説明するために区分して示すものであり、これら各処理を実行するハードウェアが存在する必要はなく、これら処理をプログラムに従って実行可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0053】
10 デジタルカメラ(撮像装置)
16 信号処理回路
19 システム制御部(制御部)
19a AF制御部(制御部)
40 エッジ強調部
46 加算器
70 AF評価値算出部(評価値算出部)
80 補正値算出部
81 差分検出部
82 傾き検出部
83〜85 乗算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカス状態を示す評価値が最大となる位置を合焦位置と判定するオートフォーカス制御を行う制御部と、
前記合焦位置における評価値とシャッターが切られたときの評価値との差分値に応じて、補正値を算出する補正値算出部と、
予め設定される所定の強調量を前記補正値にて補正し、補正後の強調量に基づいて入力画像データのエッジ成分を強調するエッジ強調部と、
を備えることを特徴とする画像処理回路。
【請求項2】
前記オートフォーカス制御時に、予め設定された複数のレンズ位置毎に前記評価値を算出するとともに、前記シャッターが切られたときに前記評価値を算出する評価値算出部を備え、
前記補正値算出部は、前記複数のレンズ位置情報とそれぞれの位置における評価値とに基づいて、前記複数のレンズ位置間における評価値の傾きを算出するとともに、前記差分値及び前記評価値の傾きに応じて前記補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項3】
前記補正値算出部は、前記複数のレンズ位置間における評価値の傾きを複数算出し、それら複数の評価値の傾きの平均値を算出するとともに、前記差分値及び前記傾きの平均値に応じて前記補正値を算出することを特徴とする請求項2に記載の画像処理回路。
【請求項4】
前記補正値算出部は、前記補正値の算出に際して、前記差分値を補正量に変換するために、前記所定の強調量に基づいて設定される第1係数を前記差分値に乗算することを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の画像処理回路。
【請求項5】
前記補正値算出部は、前記補正値の算出に際して、前記傾きの平均値を補正量に変換するために、前記所定の強調量に基づいて設定される第2係数を前記差分値に乗算することを特徴とする請求項3に記載の画像処理回路。
【請求項6】
予め設定された複数のレンズ位置毎にフォーカス状態を示す評価値を算出するステップと、
前記評価値が最大となる位置を合焦位置と判定するステップと、
前記合焦位置にフォーカスレンズを移動するステップと、
シャッターが切られたときに前記評価値を算出するステップと、
前記合焦位置における評価値と前記シャッターが切られたときの評価値との差分に応じて補正値を算出するステップと、
予め設定される所定の強調量を前記補正値にて補正するステップと、
前記補正後の強調量に基づいて入力画像データのエッジ成分を強調するステップと、
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
フォーカス状態を示す評価値が最大となる位置を合焦位置と判定するオートフォーカス制御を行う制御部と、
前記合焦位置における評価値とシャッターが切られたときの評価値との差分値に応じて、補正値を算出する補正値算出部と、
予め設定される所定の強調量を前記補正値にて補正し、補正後の強調量に基づいて入力画像データのエッジ成分を強調するエッジ強調部と、
を含む画像処理回路を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−15029(P2011−15029A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155578(P2009−155578)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】