説明

画像処理回路および画像処理方法

【課題】フィルムソースの画像データの動きベクトルの検出精度を向上し、ジャダーを緩和して画質を向上させることができる画像処理回路および画像処理方法を提供する。
【解決手段】フィルムソースの各コマの画像データを記憶するフレームメモリと、隣り合うコマの画像間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて隣り合うコマの画像間を補間した補間画像を生成しフレームメモリに記憶する補間画像生成部と、フレームメモリから、フィルムソースの各コマの画像のみ、もしくは、該各コマと補間画像を、第2のフレームレートで読み出して出力する出力部とを有し、動きベクトル検出部が、同一の隣り合うコマの画像間の動きベクトルの検出を互いに異なる条件で2回、それぞれ第1のフレームレートの異なるフレームの期間に行うことにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力フレームレートで各フレームの画像データを受信し、入力フレームレートのn倍(nは2以上の整数)の出力フレームレートで、n倍に変換処理した画像データを出力する画像処理回路および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ等の画像表示装置には、画像データとして、通常のテレビ画像のフレーム(フィールド)の画像データと、フィルムソース(映画)の各コマに対応する各フレームの画像データが混在して入力される。画像表示装置では、入力画像データの種別(テレビ画像/フィルムソース)を検出し、検出した種別に応じて変換処理を行うことにより出力画像データを生成して画像を表示する。また、近年では、倍速変換処理を行って画像を倍速表示する画像表示装置が実用化されている。
【0003】
ここで、テレビ画像は、60Hz(60I)(NTSC方式)/50Hz(50I)(PAL方式)の入力フレームレートで、フレーム毎に異なる画像データが画像表示装置入力される。テレビ画像の場合には、例えば、輝度信号成分は動き適応型の補間処理により、色差成分はライン間の補間処理で補間走査線の信号を生成することにより、飛び越し走査の画像データ(I)を順次走査の画像データ(P)に変換(IP変換)したものが画像表示装置に入力される。
【0004】
一方、フィルムソースは、24コマ(フレーム)/秒(24P)の画像である。そのため、NTSC方式のフィルムソースの場合、60Hzの入力フレームレートで、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの画像データが入力される。つまり、入力フレームレートで、フィルムソースの第1のコマの画像データが2回連続し、続く第2のコマの画像データが3回連続して入力されることが、フィルムソースの各コマについて繰り返し行われる。
【0005】
また、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの画像データが入力される場合には、例えば、同一フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームに属する飛び越し走査の信号で補間走査線の信号を生成することにより、飛び越し走査の画像データ(I:インタレース)を順次走査の画像データ(P:プログレッシブ)に変換したものが入力される。
【0006】
また、PAL方式のフィルムソースの場合、50Hzの入力フレームレートで、各フレームの各コマを2:2プルダウンして生成された各フレームの画像データが入力される。つまり、入力フレームレートで、フィルムソースの第1のコマの画像データが2回連続し、続く第2のコマの画像データが2回連続して入力されることが、フィルムソースの各コマについて繰り返し行われる。
【0007】
上記のように、フィルムソースの各コマに対応する各フレームの画像データが入力された場合、同じフレームの画像が2回ないし3回連続して画像表示装置に表示されることになる。そのため、動きの激しいシーンでは、動きがガクガクするように感じられる場合があるという問題があった。この問題は、フィルムソースのコマ不足に起因するものであり、前述のガクガク感はジャダーと呼ばれている。
【0008】
これに対し、フィルムソースの各コマに対応する各フレームの画像データが入力された場合に、隣り合う2つのフレーム間の画像データを補間して生成された補間フレーム(補間画像)を、その隣り合うフレーム間に挿入することにより、ジャダーを緩和する技術が提案されている。この補間技術では、隣り合うフレーム間における動きベクトルを検出し、検出した動きベクトルに応じて、隣り合うフレームから補間フレームを生成する。
【0009】
また、倍速表示を行う場合、出力フレームレートで、入力フレームレートの2倍の120Hz(NTSC方式)/100Hz(PAL方式)の出力画像データが必要となる。この場合、上記手法では、出力画像のフレーム間に多くの補間フレームが挿入される。
【0010】
ここで、本発明に関連性のある先行技術文献として、特許文献1,2がある。
【0011】
特許文献1には、ブロック単位の動きベクトルBVを検出する動きベクトル探索部と、内挿フレームの信号を生成する動き補正内挿フレーム生成部とを備える、動き補正フレーム数変換部によって、フレーム周波数24Hzのテレシネ順次走査のフレーム順の1から2(2フレーム)の信号に対して、動き補正型のフレーム内挿処理で、フレーム順1から5(5フレーム)のフレーム周波数60Hzの順次走査の信号に変換すること、すなわち、フレーム順1の信号のみが入力信号そのままの画像で、フレーム順2から5は内挿処理により生成された画像となることが開示されている。
【0012】
つまり、特許文献1の手法では、出力画像に、24Pのフィルムソース本来のコマ数よりも多くの補間フレームが挿入されることになる。前述のように、補間フレームは、隣り合うフレーム間の動きベクトルを検出することによって生成される。そのため、動きベクトルの検出ミスがあれば補間画像は破綻する。また、出力画像のフレーム間に挿入される補間画像が多くなればなるほど破綻が目立つようになる。
また、モーションジャダー妨害が目立ちやすい速度の動き、あるいは特殊な動きの場合のみ、動き補正のフレーム内挿処理を行うことも開示されている。
【0013】
また、特許文献2には、飛び越し走査の2:3プルダウン映像信号から、各フレームの線順次走査映像信号を生成してメモリに書き込み、それぞれ5回ずつ読み出して、120Hzのフレームレートの映像信号を生成することが開示されている。
さらに、特許文献3には、入力映像信号がインターレース映像信号であるか否か、および、フィルムソースの映像信号であるか否かを判別し、プログレッシブ映像信号に変換することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−177940号公報
【特許文献2】特開2004−302045号公報
【特許文献3】特開2005−27068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、フィルムソースの画像データが入力された場合の動きベクトルの検出精度を向上し、出力画像に生じるジャダーを緩和して画質を向上させることができる画像処理回路および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、フィルムソースの各コマの画像データをそれぞれ2回以上プルダウンすることによって生成された第1のフレームレートの画像データを受信し、該第1のフレームレートのn倍(nは2以上の整数)の第2のフレームレートの画像データを出力する画像処理回路であって、前記フィルムソースの各コマの画像データを記憶するフレームメモリと、前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間を補間した補間画像を生成し、前記フレームメモリに記憶する補間画像生成部と、前記フレームメモリから、前記フィルムソースの各コマの画像のみ、もしくは、該各コマの画像に加えて前記補間画像を、前記第2のフレームレートで読み出して出力する出力部とを有し、前記動きベクトル検出部が、同一の隣り合うコマの画像間の動きベクトルの検出を、互いに異なる条件で、2回、それぞれ前記第1のフレームレートの異なるフレームの期間に行うことを特徴とする画像処理回路を提供するものである。
【0017】
また、前記補間画像生成部が、前記動きベクトル検出部による前記2回の検出のうちの、1回目に検出した動きベクトルに基づいて前記補間画像を生成し、前記動きベクトル検出部が、前記2回の検出のうちの2回目に検出した動きベクトルを前記フレームメモリに記憶し、次の隣り合うコマ間の1回目の動きベクトル検出を行うための条件の設定を、該記憶した2回目に検出した動きベクトルに基づいて行うのが好ましい。
【0018】
また、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて、ジャダーが発生するか否かを判断するジャダー判断部をさらに有し、前記ジャダー判断部がジャダーが発生しないと判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像のみを前記第2のフレームレートで読み出して出力し、前記ジャダー判断部がジャダーが発生すると判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像および前記補間画像を前記第2のフレームレートで読み出して出力するのが好ましい。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明は、第1のフレームレートの画像データを受信し、前記受信した画像データを記憶するフレームメモリと、前記受信した画像データの隣り合うフレームの画像間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて前記隣り合うフレームの画像間を補間した補間画像を生成し、前記フレームメモリに記憶する補間画像生成部と、前記フレームメモリから、前記隣り合うフレームの画像および前記補間画像を、前記第1のフレームレートのn倍(nは2以上の整数)の第2のフレームレートで読み出して出力する出力部とを有する画像処理回路を用いて、フィルムソースの各コマの画像データをそれぞれ2回以上プルダウンすることによって生成された前記第1のフレームレートの画像データを受信し、前記第2のフレームレートの画像データを出力する画像処理方法であって、前記動きベクトル検出部が、前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間の動きベクトルの検出を、互いに異なる条件で、2回、それぞれ前記第1のフレームレートの異なるフレームの期間に行い、前記出力部が、前記フレームメモリから、前記フィルムソースの各コマの画像のみ、もしくは、該各コマの画像に加えて前記補間画像を、前記第2のフレームレートで読み出して出力することを特徴とする画像処理方法を提供するものである。
【0020】
また、前記補間画像生成部が、前記動きベクトル検出部による前記2回の検出のうちの、1回目に検出した動きベクトルに基づいて前記補間画像を生成し、前記動きベクトル検出部が、前記2回の検出のうちの2回目に検出した動きベクトルを前記フレームメモリに記憶し、次の隣り合うコマ間の1回目の動きベクトル検出を行うための条件の設定を、該記憶した2回目に検出した動きベクトルに基づいて行うのが好ましい。
【0021】
また、前記画像処理回路が、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて、ジャダーが発生するか否かを判断するジャダー判断部をさらに有し、前記ジャダー判断部がジャダーが発生しないと判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像のみを前記第2のフレームレートで読み出して出力し、前記ジャダー判断部がジャダーが発生すると判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像および前記補間画像を前記第2のフレームレートで読み出して出力するのが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、フィルムソースのフレーム間動きベクトルの検出精度が向上することにより、出力画像の補間フレームの破綻を大幅に低減することができる。また、フィルムソースのコマ不足による出力画像のジャダーを緩和することができる。
さらに、倍速表示用の回路を用いることで、回路規模および消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に関わる画像処理回路の構成を表す一実施形態のブロック図である。
【図2】テレビ画像の各フレームの入力画像データとその倍速変換後の各フレームの出力画像データとの関係を表すグラフである。
【図3】ジャダーが発生した場合において、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの入力画像データとその倍速変換後の各フレームの出力画像データとの関係を表すグラフである。
【図4】ジャダーが発生しない場合において、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの入力画像データとその倍速変換後の各フレームの出力画像データとの関係を表すグラフである。
【図5】ジャダーが発生した場合において、フィルムソースの各コマを2:2プルダウンして生成された各フレームの入力画像データとその倍速変換後の各フレームの出力画像データとの関係を表すグラフである。
【図6】ジャダーが発生しない場合において、フィルムソースの各コマを2:2プルダウンして生成された各フレームの入力画像データとその倍速変換後の各フレームの出力画像データとの関係を表すグラフである。
【図7】1回目と2回目の動きベクトルの検出条件を説明する一例の概念図である。
【図8】1回目と2回目の動きベクトルの検出条件を説明する別の例の概念図である。
【図9】(a)および(b)は、それぞれ、ビデオソースおよびテレビ画像の画像データが入力された場合の画像処理回路の動作を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の画像処理回路および画像処理方法を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に関わる画像処理回路の構成を表す一実施形態のブロック図である。同図に示す画像処理回路10は、60Hz/50Hzの入力フレームレートで画像データを受信し、これを倍速変換処理した画像データを、120Hz/100Hzの出力フレームレートで出力するものである。画像処理回路10は、フレームメモリ12と、2:3/2:2プルダウン判断部14と、フェーズ0/1判断部16と、動きベクトル検出部18と、補間画像生成部20と、ジャダー判断部22と、出力部24とによって構成されている。
【0026】
画像処理回路10には、テレビ画像の各フレームの画像データ(以下、テレビ画像の画像データともいう)と、フィルムソースの各コマを2:3/2:2プルダウンして生成された各フレームの画像データ(以下、2:3/2:2プルダウンの画像データ、ないしは、両者をまとめてフィルムソースの画像データともいう)が混在した状態で入力される。これらの入力画像データはIP変換後の画像データである。
【0027】
画像処理回路10は、入力画像データがフィルムソースの画像データである場合に、隣り合う2つのフレーム間で、異なる検出条件を設定して2回の動きベクトル検出を行うことにより動きベクトルの検出精度を向上させる。これにより、動きベクトルの検出ミスにより生じる補間画像の破綻を低減することができ、出力画像に生じるジャダーを緩和して画質を向上させることができる。
【0028】
まず、フレームメモリ12は、入力フレームレートで、最新の所定フレーム数の入力画像データを記憶する、DDRメモリ等の半導体メモリである。また、フレームメモリ12は、後述するように、動きベクトル検出部18から入力される動きベクトル、補間画像生成部20から入力される補間画像データ、ジャダー判断部22から入力されるジャダー判断信号等を記憶する。
【0029】
以下順に、2:3/2:2プルダウン判断部14は、現在のフレームの入力画像データと過去のフレームの入力画像データ(1フレーム前から1以上のフレームの入力画像データ)との比較を行って、例えば、フレーム間差分信号成分がゼロとなるフレームの発生周期等から、現在の入力画像データがテレビ画像の画像データであるのか、フィルムソースの画像データであるのかを判断し、テレビ画像/フィルムソースの判断信号を出力する。
【0030】
また、2:3/2:2プルダウン判断部14は、入力画像データがフィルムソースの画像データである場合、さらに、2:3プルダウンの画像データであるのか、2:2プルダウンの画像データであるのかを判断し、2:3/2:2プルダウンの判断信号を出力するとともに、その何番目のフレームの画像データであるのかを判断し、フレーム番号信号を出力する。2:3/2:2プルダウンの判断は、例えば、テレビ画像/フィルムソースの判断と同様にして実現できる。
【0031】
ここで、フレーム番号について説明する。例えば、2:3プルダウンの画像データは、第1のコマの画像データが2回(入力フレームレートで、2フレーム時間)連続し、第2のコマの画像データが3回連続して入力されることが、フィルムソースの各コマについて繰り返し行われる。第1および第2のコマの画像データが入力される1回目の期間がフレーム番号1であり、2回目の期間がフレーム番号2である。また、第2のコマの画像データが入力される3回目の期間がフレーム番号3である。
【0032】
続いて、フェーズ0/1判断部16は、フレームメモリ12から入力された過去の動きベクトル(1フレーム前から1以上のフレームの動きベクトル)を参照して、2:3/2:2プルダウン判断部14から入力されたテレビ画像/フィルムソースの判断信号とフレーム番号信号に基づいて、動きベクトル検出部18で動きベクトルを検出する際の検出条件(探索範囲、探索範囲数、検出ポイント、ポイント数、検出に使用するフレーム数等)を出力する。
【0033】
ここで、フェーズ0/1判断部16は、2:3/2:2プルダウンの判断信号から、テレビ画像の画像データが入力されたと判断すると、テレビ画像用の動きベクトル検出時の条件設定を行う。
【0034】
一方、フィルムソースの入力画像データが入力されたと判断すると、フェーズ0/1判断部16は、フレーム番号信号に応じて、フィルムソース用の1回目と2回目の動きベクトルの検出時で異なる条件設定を行う。フェーズ0/1判断部16は、フレームメモリ12から入力された1フレーム前の2回目の動きベクトルを参照して、現在のフレームの1回目の動きベクトルの検出条件を設定し、フレームメモリ12から入力された現在のフレームの1回目の動きベクトルを参照して、現在のフレームの2回目の動きベクトルの検出条件を設定する。
【0035】
続いて、動きベクトル検出部18は、フェーズ0/1判断部16によって設定された動きベクトルの検出条件に従って、現在のフレームの入力画像データと過去のフレームの入力画像データとを比較することにより、現在のフレームの動きベクトルを検出する。
【0036】
ここで、動きベクトル検出部18は、テレビ画像の画像データが入力された場合、入力フレームレートで、1フレーム毎に1回動きベクトルの検出を行う。検出された動きベクトルはフレームメモリ12の動きベクトル記憶領域に記憶される。また、動きベクトルが検出される毎(入力フレームレートで1フレーム毎)に、フレームメモリ12の同一の動きベクトル記憶領域に記憶される(上書きされる)。
【0037】
一方、フィルムソースの画像データが入力された場合、動きベクトル検出部18は、入力フレームレートで、1回目の期間で1回目の動きベクトル検出を行い、2回目の期間で2回目の動きベクトル検出を行う。検出された第1のフレームの1回目の動きベクトルはフレームメモリ12の第1の動きベクトル記憶領域に記憶され、続いて検出された第1のフレームの2回目の動きベクトルはフレームメモリ12の同一の第1の動きベクトル記憶領域に記憶される(上書きされる)。また、続く第2のフレームの1回目の動きベクトルはフレームメモリ12の第2の動きベクトル記憶領域に記憶され、続いて第2のフレームの2回目の動きベクトルはフレームメモリ12の同一の第2の動きベクトル記憶領域に記憶される(上書きされる)。このようにして、1フレーム毎に、動きベクトルが記憶されるフレームメモリ12の記憶領域が交互に入れ替わる。つまり、フレームメモリ12には、同時に2フレーム分の動きベクトルの検出結果が記憶される。
【0038】
なお、フレームメモリ12に、上記のように同時に2フレーム分の動きベクトルを記憶することは必須ではなく、1フレーム分の動きベクトルのみを記憶することも可能である。
【0039】
また、補間画像生成部20は、動きベクトル検出部18から入力された現在のフレームの動きベクトルに基づいて、現在のフレームの入力画像データと1フレーム前の入力画像データとを用いて補間処理を行い、現在のフレームの補間画像データを生成する。
【0040】
なお、動きベクトルの検出方法および補間画像の生成方法は何ら限定されない。これらの方法は、既に各種の方法が提案されており、本発明においても、これら公知の各種の方法を採用することができる。
【0041】
ジャダー判断部22は、フェーズ0/1判断部16から入力されたテレビ画像/フィルムソースの判断信号に基づいて、入力画像データがフィルムソースの画像データであると判断すると、動きベクトル検出部18から入力された現在のフレームの動きベクトルと、もしくはさらに、フレームメモリ12から入力された過去の動きベクトルに基づいて、現在のフレームにおいて、人間の目で検出可能なジャダーが発生するか否かを判断する。
【0042】
ここで、ジャダー判断部22は、現在のフレームにおいてジャダーが発生すると判断した場合、補間画像生成部20により生成され、フレームメモリ12に記憶された現在のフレームの補間画像データを出力するように指示するジャダー判断信号を出力する。一方、ジャダー判断部22は、ジャダーが発生しないと判断した場合、補間画像データを出力せず、入力画像データのみを5:5/4:4プルダウンして出力するように指示するジャダー判断信号を出力する。
【0043】
上述する5:5/4:4プルダウンは、出力フレームレートで、フィルムソースの第1のコマの画像データを5回/4回連続し、続く第2のコマの画像データを5回/4回連続して出力することを、繰り返し行うものである。5:5/4:4プルダウンのフレーム間に補間フレームが含まれることはなく、フィルムソースの各コマに対応するフレーム数も同数(5フレーム/4フレームずつ)である。そのため、5:5/4:4プルダウンにより、自然な倍速画像を得ることができる。
【0044】
出力部24は、フレームメモリ12から入力されるタイミング判断情報に基づいて、同じくフレームメモリ12から入力されるオリジナルの入力画像データと補間画像データとを出力のフレームレートで切り替えて出力する。
【0045】
図1に示す出力部24は、マルチプレクサ25および制御部26によって構成されている。マルチプレクサ25には、フレームメモリ12からオリジナルの入力画像データと補間画像データが入力され、その選択入力には、制御部26から、出力制御信号が入力されている。出力制御信号は、出力のフレームレートで変化する信号であり、この信号に応じて、オリジナルの入力画像データと補間画像データが選択的に出力される。これにより、マルチプレクサ25から、入力画像データを倍速変換した出力画像データが出力される。
【0046】
ここで、出力制御信号は、テレビ画像の場合、フィルムソースの場合(2:3プルダウンの場合、2:2プルダウンの場合、5:5/4:4プルダウンの場合)のパターンがあらかじめ制御部26に記憶されている。これらのパターンの中から、どのパターンをタイミング判断情報として出力するかは、フレームメモリ12に記憶されている、テレビ画像/フィルムソースの判断信号、2:3/2:2プルダウンの判断信号、およびジャダー判断信号に基づいて、制御部26により決定される。
【0047】
次に、入力画像データの種別と出力画像データとの関係について説明する。
まず、テレビ画像の画像データが入力された場合を説明する。
【0048】
図2は、テレビ画像の入力画像データとその倍速変換後の出力画像データとの関係を表すグラフである。このグラフの縦軸は入力画像における動き(MV)、横軸は1フレームの期間を単位とする時間(T)を表し、入力画像が画面内で左下から右上に向かって移動する様子を表す。記号●、◆は入力画像、☆は補間画像、横軸下部の記号は出力画像の配列である。グラフには、出力フレームレートの1フレームの期間を分かりやすくする目的で縦線を示してある。番号1,2,3,…は、入出力フレームの対応関係を表す。
【0049】
このグラフに示すように、テレビ画像の画像データが入力される場合、例えば、60Hzの入力フレームレートで、テレビ画像の各フレームの画像データ(●および◆)が1フレームの期間、画像処理回路10に入力されることが、テレビ画像の各フレームについて繰り返し行われる。グラフに矢印で示したように、画像データが画像処理回路10に入力されてから出力されるまでの時間は、120Hzの出力フレームレートで3フレーム分の時間である。
【0050】
画像処理回路10は、テレビ画像の画像データが入力された場合、第1の入力画像データ(●)を1回、第1の補間画像データ(☆)を1回、続く第2の入力画像データ(◆)を1回、第2の補間画像データ(☆)を1回出力することを繰り返し行うことにより、倍速変換後の出力画像データ(●☆◆☆…)を生成する。
【0051】
続いて、フィルムソースの画像データを2:3プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生すると判断された場合を説明する。
【0052】
図3のグラフに示すように、フィルムソースの画像データを2:3プルダウンした画像データが入力される場合、入力フレームレートで、フィルムソースの第1のフレームの入力画像データ(●)が2回連続して入力され、続く第2の入力画像データ(◆)が3回連続して画像処理回路10に入力されることが、フィルムソースの各フレームについて繰り返し行われる。
【0053】
この場合、画像処理回路10は、第1の入力画像データ(●)を3回連続し、第1の補間画像データ(☆)を2回連続し、続く第2のフレームの入力画像データ(◆)を3回連続し、第2の補間画像データ(☆)を2回連続して出力することを繰り返し行うことにより、倍速変換後の出力画像データ(●○●☆☆◇◆◇☆☆…)を生成する(○と◇は、それぞれ、●と◆をコピーしたフレームの画像データである)。画像データが画像処理回路10に入力されてから出力されるまでの時間は同じく3フレーム分の時間である。
【0054】
続いて、フィルムソースの画像データを2:3プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生しないと判断された場合を説明する。
【0055】
図4のグラフに示すように、画像データの入力順序は、フィルムソースの画像データを2:3プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生すると判断された場合と同じである。
【0056】
この場合、画像処理回路10は、第1の入力画像データ(●)を5回連続し、続く第2のフレームの入力画像データ(◆)を5回連続して出力すること(5:5プルダウン)を繰り返し行うことにより、倍速変換後の出力画像データ(●○●○○◇◆◇◆◇…)を生成する。この場合も、画像データが画像処理回路10に入力されてから出力されるまでの時間は同じく3フレーム分の時間である。
【0057】
続いて、フィルムソースの画像データを2:2プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生すると判断された場合を説明する。
【0058】
図5のグラフに示すように、フィルムソースの画像データを2:2プルダウンした画像データが入力される場合、入力フレームレートで、フィルムソースの第1のフレームの入力画像データ(●)が2回連続して入力され、続く第2のフレームの入力画像データ(◆)が2回連続して画像処理回路10に入力されることが、フィルムソースの各フレームについて繰り返し行われる。
【0059】
この場合、画像処理回路10は、第1の入力画像データ(●)を2回連続し、第1の補間画像データ(☆)を2回連続し、続く第2のフレームの入力画像データ(◆)を2回連続し、第2の補間画像データ(☆)を2回連続して出力することを繰り返し行うことにより、倍速変換後の出力画像データ(●○☆☆◆◇☆☆…)を生成する。この場合も、画像データが画像処理回路10に入力されてから出力されるまでの時間は同じく3フレーム分の時間である。
【0060】
続いて、フィルムソースの画像データを2:2プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生しないと判断された場合を説明する。
【0061】
図6に示すように、画像データの入力順序は、フィルムソースの画像データを2:2プルダウンした画像データが入力され、かつ、ジャダーが発生すると判断された場合と同じである。
【0062】
この場合、画像処理回路10は、第1の入力画像データ(●)を4回連続し、続く第2のフレームの入力画像データ(◆)を4回連続して出力すること(4:4プルダウン)を繰り返し行うことにより、倍速変換後の出力画像データ(●○●○◆◇◆◇…)を生成する。この場合も、画像データが画像処理回路10に入力されてから出力されるまでの時間は同じく3フレーム分の時間である。
【0063】
上記のように、本実施形態の画像処理回路10では、画像データが入力されてから出力されるまでの時間は、いずれの画像データが入力された場合も3フレーム分の時間である。このように、画像データが入力されてから出力されるまでの時間を合わせることにより、既存の倍速駆動技術を用いて、すなわち、60Hz/50Hzの画像データを120Hz/100Hzの画像データに倍速変換処理を行う既存の回路を利用することができるため、本発明に関わる画像処理回路10を低コストで簡単に実現することができる。
【0064】
次に、図7および図8を参照して、1回目と2回目の動きベクトルの検出条件について説明する。
【0065】
図7は、1回目と2回目の動きベクトル検出時に、検出ポイントの配置を変更した例である。同図に示す例では、入力画像内の所定の中心ポイント(★)の周囲の所定範囲内において、その上下左右に線対象な位置の複数のポイント(□)を1回目の動きベクトルの探索範囲(実線で示す)として設定する。また、中心ポイント(★)の周辺の、1回目の動きベクトルの探索範囲の外側に、同じく上下左右に線対称な位置の複数のポイント(◎)を2回目の動きベクトルの探索範囲として設定する。
【0066】
通常の動きの範囲内であれば、1回目の探索ポイントのいずれかで精度の高い動きベクトルが検出できる。すなわち、1回目の探索ポイントのそれぞれで検出した動きベクトルの精度を、差分絶対値和等の、従来から利用されているさまざまな評価値のいずれかで評価し、最も精度が高い動きベクトルを、1回目の検出結果として採用する。しかし、1回目の探索ポイントが設定された範囲を超える、極端に大きな動きがある場合には、1回目の探索ポイントのいずれでも、高い精度で動きベクトルを検出することができない。このような場合にも、図7に示されたように、さらに広げた範囲に探索ポイントを設定して2回目の動きベクトル検出を行うことにより、高い精度で動きベクトルを検出することが可能になる。
【0067】
すなわち、2回目に、1回目に検出した動きベクトルよりも高い精度の動きベクトルが検出できた場合には、1回目に検出した動きベクトルに代えて2回目に検出した動きベクトルを採用する。一方、1回目よりも精度が高い動きベクトルが検出できなかった場合には、1回目に検出した動きベクトルを維持する。
【0068】
このように、それぞれ異なる探索ポイントを設定して2回の検出を行うことにより、1回の検出のみを行う場合に比較して、より高い精度で動きベクトルの検出を行うことができる。1回目と2回目のそれぞれの探索ポイントは、上記の例に限られず、さまざまに配置することが可能である。また、2回目の探索ポイントを固定せず、1回目の検出結果を参照して、2回目の探索ポイントを設定することも可能である。すなわち、1回目には、広い範囲に疎に探索ポイントを設定しておき、2回目には、1回目の検出において最も高い精度で動きベクトルが検出できた探索ポイントの周辺に、密に探索ポイントを設定して、さらに探索を行うことも可能である。
さらに、後から述べるように、1回目の探索ポイントについても、過去のフレーム間で検出された動きベクトルを参照して、設定することも可能である。
【0069】
続いて、図8は、1回目と2回目の動きベクトル検出時に、使用するフレーム数を変更した例である。同図に示す例では、フレームf3が現在のフレームであるとして、動きベクトルの検出時に、3つのフレームf1〜f3の画像データを使用することを1回目の動きベクトルの検出条件として設定する。また、動きベクトルの検出時に、4つのフレームf0〜f3の画像データを使用することを2回目の動きベクトルの検出条件として設定する。
【0070】
例えば、入力画像内に、外形がほぼ同じ2台の自転車A,Bが撮影されている場合を考える。図8に示すように、前述の通りフレームf3を現在のフレームとして、自転車Aは、フレームf0〜f4で画面内を左から右側へ向かって移動するものとする。一方、自転車Bは、フレームf0〜f4の間停止しているものとする。
【0071】
この場合、1回目の動きベクトル検出時には、探索範囲がフレームf1〜f3であるため、自転車A,Bの外形がほぼ同じ場合に両者を混同して動きベクトルの検出ミスが発生するおそれがある。これに対し、2回目の動きベクトルの検出時には、探索範囲がフレームf0〜f3であり、自転車Aが動き、自転車Bは停止していると判断することができるため、自転車A,Bを混同することがなくなり、動きベクトルの検出ミスが発生することを防止できる。
【0072】
このように、1回目の動きベクトル検出時に使用する過去のフレーム数よりも2回目の動きベクトル検出時に使用する過去のフレーム数を多くすることにより、より高い精度で動きベクトルの検出を行うことができる。
なお、2回目の検出で、使用する過去のフレームの数を多くし、かつ、検出処理を所定の時間内に終了するためには、例えば、探索を行うポイントの個数を減らす必要がある。1回の検出で、探索ポイントの個数と使用する過去フレームの数との両方を大きくすることが可能であれば、2回に分けて検索を行う必要は小さくなる。しかし、そのためには、処理能力の大きな演算回路が必要であり、消費電力の増大を招く。
【0073】
なお、1回目と2回目の動きベクトル検出時の検出条件の設定方法は、上記具体例に限定されず、各種の検出条件を設定することができる。
【0074】
次に、画像処理回路10の動作に従って、本発明の画像処理方法を説明する。
【0075】
画像処理回路10では、現在のフレームの画像データが入力されると、入力された現在のフレームの入力画像データはフレームメモリ12の過去画像記憶領域に記憶されるとともに、2:3/2:2プルダウン判断部14により、現在のフレームの入力画像データとフレームメモリ12から入力された過去のフレームの入力画像データとの比較が行われ、テレビ画像/フィルムソースの判断信号が出力される。
【0076】
また、入力画像データがフィルムソースの画像データである場合、2:3/2:2プルダウン判断部14から、さらに、2:3/2:2プルダウンの判断信号とフレーム番号信号が出力される。
【0077】
2:3/2:2プルダウン判断部14から出力されたテレビ画像/フィルムソースの判断信号と2:3/2:2プルダウンの判断信号はフレームメモリ12に記憶される。また、テレビ画像/フィルムソースの判断信号とフレーム番号信号は、フェーズ0/1判断部16へ入力される。テレビ画像/フィルムソースの判断信号はジャダー判断部22へ入力される。
【0078】
続いて、フェーズ0/1判断部16により、テレビ画像/フィルムソースの判断信号とフレーム番号信号に従い、フレームメモリ12から入力された過去の動きベクトルを参照して、動きベクトル検出部18における動きベクトルの検出条件が設定される。
【0079】
ここで、フェーズ0/1判断部16は、テレビ画像/フィルムソースの判断信号から、入力画像データがテレビ画像の画像データであると判断すると、テレビ画像の動きベクトルの検出時の条件設定を行う。一方、入力画像データがフィルムソースの画像データであると判断すると、フレーム番号信号に基づいて、フィルムソースの1回目および2回目の動きベクトルの検出時で異なる条件設定を行う。
【0080】
フェーズ0/1判断部16から出力された動きベクトルの検出条件は動きベクトル検出部18へ入力される。
【0081】
続いて、動きベクトル検出部18により、動きベクトルの検出条件に従って、現在のフレームの入力画像データと過去のフレームの入力画像データとを比較することにより、現在のフレームの動きベクトルが検出される。
【0082】
ここで、動きベクトル検出部18は、テレビ画像の画像データが入力された場合、入力のフレームレートで、各フレームごとに1回動きベクトルを検出する。一方、フィルムソースの画像データが入力された場合、動きベクトル検出部18は、入力フレームレートで、1回目のフレームが入力される期間に1回目の動きベクトルを検出し、2回目のフレームが入力される期間に2回目の動きベクトルを検出する。
【0083】
動きベクトル検出部18から出力された動きベクトルは、フレームメモリ12の動きベクトル記憶領域に記憶されるとともに、補間画像生成部20とジャダー判断部22へ入力される。
【0084】
続いて、補間画像生成部20により、動きベクトル検出部18から入力された現在のフレームの動きベクトルに基づいて、現在のフレームの入力画像データと1フレーム前の入力画像データとを用いて補間処理が行われ、現在のフレームの補間画像データが生成される。補間画像生成部20から出力された補間画像データは、フレームメモリ12の補間画像記憶領域に記憶される。
【0085】
また、入力画像データがフィルムソースの画像データである場合、補間画像生成部20により補間画像が生成されるのと同時に、ジャダー判断部22により、動きベクトル検出部18から入力された現在のフレームの動きベクトルと、フレームメモリ12から入力された過去の動きベクトルに基づいて、人間の目で検出可能なジャダーが発生するか否かの判断が行われ、ジャダー判断信号が出力される。
【0086】
ジャダー判断部22は、例えば、以下の手順でジャダー発生の有無を判断する。
(1)動きベクトル検出で検出された動きベクトルを、方向(例えば、縦、横、斜め45°ごとの8つの範囲)に分け、さらに、その大きさごとに分けて、頻度を求める。
(2)方向および大きさごとに、人間の目の感度に応じた係数をかけて、補正済みの頻度を求める。大きさについては、例えば、特開平11−177940号公報の0080段落に記されたように、人間の目が検出しやすい大きさの範囲に大きな、それから離れるにつれて小さくなる係数をかける。方向については、横>縦>斜めの順に人間の目の感度が低くなるので、その順に小さくなる係数をかける。
(3)補正済みの頻度と閾値を比較し、例えば、1つでも閾値を超えるものがあれば、ジャダーが発生すると判断する。
(4)さらに、過去の動きベクトルについても判断の対象として、判断の精度を高めることが可能である。
【0087】
ジャダー判断部22から出力されたジャダー判断信号はフレームメモリ12に記憶される。
【0088】
ここで、制御部26は、フレームメモリ12に記憶されたテレビ画像/フィルムソースの判断信号、2:3/2:2プルダウンの判断信号、およびジャダー判断信号を読み出し、これらの信号に基づいて、出力制御信号をマルチプレクサ25に出力する。そして、マルチプレクサ25から、出力制御信号に基づいて、同じくフレームメモリ12から入力されたオリジナルの入力画像データと補間画像データとが出力のフレームレートで切り替えて出力される。これにより、入力画像データは、その種別に応じて倍速変換処理され、出力部24の出力画像データとして出力される。
【0089】
続いて、画像処理回路10の動きベクトル検出時の動作を詳細に説明する。
【0090】
図9(a)は、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの画像データが入力される場合、同図(b)は、テレビ画像の各フレームの画像データが入力された場合の画像処理回路10の動作を表す概念図である。
【0091】
図9(a)に示すように、フィルムソースの各コマを2:3プルダウンして生成された各フレームの画像データは、60Hz/50Hzの入力フレームレートで、フレームf0,f0,f1,f1,f1,f2,f2,…の順に画像処理回路10へ入力される。
【0092】
1回目のフレームf0の画像データは、これが入力される期間にフレームメモリ12の第1の過去画像記憶領域に記憶され、1回目のフレームf2の画像データが入力されるまで保持される。また、1回目のフレームf1の画像データは、これが入力される期間にフレームメモリ12の第2の過去画像記憶領域に記憶され、1回目のフレームf3の画像データが入力されるまで保持される。つまり、この例では、最新の2コマ分の画像データがフレームメモリ12に記憶される。
【0093】
なお、2回目のフレームf0の画像データと、2回目および3回目のフレームf1の画像データは、フレームメモリ12に記憶するように構成してもよいし、記憶しないように構成してもよい。また、フレームf2,f3,…についても同じである。
【0094】
一方、入力フレームレートでフィルムソースの各コマに対応する各フレームの画像データが入力されてから、120Hz/100Hzの出力フレームレートで3フレーム分の時間の後に、f0*3(=f0,f0,f0),f0/f1(=f0とf1との補間画像データ)*2,f1*3,f1/f2*2,…の順に、画像処理回路10から倍速変換処理後の各フレームの画像データが出力される。
【0095】
動きベクトル検出部18は、1回目のフレームf1の画像データが入力される期間に、フレームメモリ12に記憶されたフレームf0の画像データと、入力された1回目のフレームf1の画像データとを利用して、1回目の検出条件で、フィルムソースの隣り合うコマ間(f0→f1)の、1回目の動きベクトルの検出を行う。1回目の動きベクトルの検出結果はフレームメモリ12の第1の動きベクトル記憶領域に記憶される。
【0096】
動きベクトル検出部18により生成された1回目の動きベクトルを参照して、補間画像生成部20により、前述の補間画像データf0/f1が生成される。
【0097】
続いて、動きベクトル検出部18は、2回目のフレームf1の画像データが入力される期間に、同様にフレームf0,f1の画像データを利用して、2回目の検出条件で、2回目の動きベクトルの検出を行う。2回目の動きベクトルの検出結果は、フレームメモリ12の第1の動きベクトル記憶領域に記憶される。つまり、1回目の動きベクトルの検出結果に上書きされる。
【0098】
そして、2回目の動きベクトルの検出結果は、フレームf3の画像データが入力され、動きベクトル検出部18により、フレームf2,f3の画像データを利用して、1回目の検出条件で、動きベクトルが生成されるまで保持される。
【0099】
続いて、動きベクトル検出部18は、1回目のフレームf2の画像データが入力される期間に、フレームメモリ12に記憶されたフレームf1の画像データと、入力された1回目のフレームf2の画像データとを利用して、1回目の検出条件で、フィルムソースの隣り合うコマ間(f1→f2)の、1回目の動きベクトルの検出を行う。1回目の動きベクトルの検出結果はフレームメモリ12の第2の動きベクトル記憶領域に記憶される。
【0100】
1回目の動きベクトルを参照して、補間画像生成部20により、前述の補間画像データf1/f2が生成される。
【0101】
続いて、動きベクトル検出部18は、2回目のフレームf2の画像データが入力される期間に、同様にフレームf1,f2の画像データを利用して、2回目の検出条件で、2回目の動きベクトルの検出を行う。2回目の動きベクトルの検出結果は、フレームメモリ12の第2の動きベクトル記憶領域に記憶される。つまり、同様に1回目の動きベクトルの検出結果に上書きされる。
【0102】
そして、2回目の動きベクトルの検出結果は、フレームf4の画像データが入力され、動きベクトル検出部18により、フレームf3,f4の画像データを利用して、1回目の検出条件で、動きベクトルが生成されるまで保持される。
【0103】
ここで、図9に示す例においては、隣り合うコマ間の動きベクトルの検出を2回にわけて行い、動きベクトルの検出精度を高めているにもかかわらず、補間画像データの生成には、1回目に検出した動きベクトルが利用されている。しかしながら、1回目の動きベクトル検出においても、過去のコマ間で検出した動きベクトルを参照して、探索ポイント等の、動きベクトル検出条件を設定することができる。この、検出条件を設定するために参照する、過去のコマ間の動きベクトルとして、2回の検出を行った、精度の高い動きベクトルを利用することにより、1回目に検出できる動きベクトルの精度を高めることができる。このように精度を高めた動きベクトルを利用することにより、補間画像の破綻の可能性を低くすることができる。
【0104】
続いて、図(b)に示すように、テレビ画像の各フレームの画像データは、60Hz/50Hzの入力フレームレートで、フレームf0,f1,f2,f3,f4,…の順に画像処理回路10へ入力される。
【0105】
フレームf0の画像データは、これが入力される期間にフレームメモリ12の第1の過去画像記憶領域に記憶され、フレームf2の画像データが入力されるまで保持される。また、フレームf1の画像データは、これが入力される期間にフレームメモリ12の第2の過去画像記憶領域に記憶され、フレームf3の画像データが入力されるまで保持される。つまり、同様に最新の2フレーム分の画像データがフレームメモリ12に記憶される。
【0106】
一方、入力フレームレートでテレビ画像の各フレームの画像データが入力されてから、120Hz/100Hzの出力フレームレートで3フレーム分の時間の後に、f0,f0/f1,f1,f1/f2,f2,f2/f3,f3,…の順に、画像処理回路10から倍速変換処理後の各フレームの画像データが出力される。
【0107】
動きベクトル検出部18は、フレームf1の画像データが入力される期間に、フレームメモリ12に記憶されたフレームf0の画像データと、入力されたフレームf1の画像データとを利用して、テレビ画像の検出条件で、テレビ画像の隣り合うフレーム間(f0→f1)の動きベクトルの検出を行う。動きベクトルの検出結果はフレームメモリ12の動きベクトル記憶領域に記憶される。
【0108】
動きベクトル検出部18により生成された動きベクトルを参照して、補間画像生成部20により、前述の補間画像データf0/f1が生成される。
【0109】
そして、動きベクトル検出部18により生成された動きベクトルの検出結果は、フレームf3の画像データが入力され、動きベクトル検出部18により、フレームf2,f3の画像データを利用して、テレビ画像の検出条件で、動きベクトルが生成されるまで保持される。
【0110】
テレビ画像のフレームの画像データが入力される場合、入力フレームレートで、フレームf1の画像データが入力される期間に、フレームf0,f1の動きベクトル検出が行われる。そして、入力フレームレートで、フレームf1の次のフレーム期間にフレームf2の画像データが入力され、フレームf1,f2の動きベクトル検出が行われる。このため、同一の隣り合うフレーム間で2回目の動きベクトル検出を行うことはできない。
【0111】
フィルムソースの場合とテレビ画像の場合の比較から分かるように、画像処理回路10では、60Hz入力→120Hz出力のための倍速エンジン(動きベクトル検出部18、補間画像生成部20)をそのまま利用して、すなわち、動きベクトル検出の対象とする現在のフレームf1の画像データが入力される期間に、動きベクトル検出および補間画像データ生成を行って、2:3プルダウンの各フレームの画像データを、120Hzの出力フレームレートの画像データに変換することができる。
【0112】
同様に、画像処理回路10では、50Hz入力→100Hz出力のための倍速エンジン(通常は、同一の回路で、50Hz入力→100Hz出力と60Hz入力→120Hz出力の両方に対応する)をそのまま利用して、2:2プルダウンの各フレームの画像データを、100Hzの出力フレームレートの画像データに変換することができる。この場合も、2:3プルダウンの場合と同様に、動きベクトル検出を2回行ってその検出精度を向上させることができる。
【0113】
なお、フィルムソースの画像データが入力される場合、2:3/2:2プルダウンに限らず、他のプルダウン方式を採用してもよい。また、出力フレームレートは、入力フレームレートの2倍に限らず、n倍(nは2以上の整数)であればよい。
【0114】
また、画像処理回路10では、過去フレームとして、フレームメモリ12に、現在のフレームの1フレーム前から1以上のフレームの画像データを記憶すればよい。同様に、動きベクトルも、過去動きベクトルとして、現在のフレームの1フレーム前から1以上のフレームの動きベクトルを記憶すればよい。
【0115】
また、本発明では、2回の動きベクトル検出を行って、動きベクトルの検出精度を向上させることが重要であり、これにより、動きベクトルの検出ミスを低減し、補間画像の破綻を低減することができる。本発明において、ジャダー判断部は必須ではないが、ジャダー判断部によりジャダー発生の有無を判断し、所定のパターンをタイミング判断情報として用いることによって高画質な画像を表示することができる。
【0116】
すなわち、ジャダーが発生すると判断した場合には、隣り合うフレーム間に補間画像を挿入することによりジャダーによる画質の低下を低減することができる。一方、ジャダーが発生しないと判断した場合には、5:5/4:4プルダウンしたフレームを出力することにより、動きベクトルの検出ミスに起因する、破綻した補間画像が挿入されることを防ぎ、フィルムソースの原画像に近い高画質な画像を表示することができる。
【0117】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0118】
10 画像処理回路
12 フレームメモリ
14 2:3/2:2プルダウン判断部
16 フェーズ0/1判断部
18 動きベクトル検出部
20 補間画像生成部
22 ジャダー判断部
24 出力部
25 マルチプレクサ(MUX)
26 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムソースの各コマの画像データをそれぞれ2回以上プルダウンすることによって生成された第1のフレームレートの画像データを受信し、該第1のフレームレートのn倍(nは2以上の整数)の第2のフレームレートの画像データを出力する画像処理回路であって、
前記フィルムソースの各コマの画像データを記憶するフレームメモリと、
前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間を補間した補間画像を生成し、前記フレームメモリに記憶する補間画像生成部と、
前記フレームメモリから、前記フィルムソースの各コマの画像のみ、もしくは、該各コマの画像に加えて前記補間画像を、前記第2のフレームレートで読み出して出力する出力部とを有し、
前記動きベクトル検出部が、同一の隣り合うコマの画像間の動きベクトルの検出を、互いに異なる条件で、2回、それぞれ前記第1のフレームレートの異なるフレームの期間に行うことを特徴とする画像処理回路。
【請求項2】
前記補間画像生成部が、前記動きベクトル検出部による前記2回の検出のうちの、1回目に検出した動きベクトルに基づいて前記補間画像を生成し、
前記動きベクトル検出部が、前記2回の検出のうちの2回目に検出した動きベクトルを前記フレームメモリに記憶し、次の隣り合うコマ間の1回目の動きベクトル検出を行うための条件の設定を、該記憶した2回目に検出した動きベクトルに基づいて行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理回路。
【請求項3】
前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて、ジャダーが発生するか否かを判断するジャダー判断部をさらに有し、
前記ジャダー判断部がジャダーが発生しないと判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像のみを前記第2のフレームレートで読み出して出力し、
前記ジャダー判断部がジャダーが発生すると判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像および前記補間画像を前記第2のフレームレートで読み出して出力することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理回路。
【請求項4】
第1のフレームレートの画像データを受信し、前記受信した画像データを記憶するフレームメモリと、前記受信した画像データの隣り合うフレームの画像間の動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて前記隣り合うフレームの画像間を補間した補間画像を生成し、前記フレームメモリに記憶する補間画像生成部と、前記フレームメモリから、前記隣り合うフレームの画像および前記補間画像を、前記第1のフレームレートのn倍(nは2以上の整数)の第2のフレームレートで読み出して出力する出力部とを有する画像処理回路を用いて、
フィルムソースの各コマの画像データをそれぞれ2回以上プルダウンすることによって生成された前記第1のフレームレートの画像データを受信し、前記第2のフレームレートの画像データを出力する画像処理方法であって、
前記動きベクトル検出部が、前記フィルムソースの隣り合うコマの画像間の動きベクトルの検出を、互いに異なる条件で、2回、それぞれ前記第1のフレームレートの異なるフレームの期間に行い、
前記出力部が、前記フレームメモリから、前記フィルムソースの各コマの画像のみ、もしくは、該各コマの画像に加えて前記補間画像を、前記第2のフレームレートで読み出して出力することを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
前記補間画像生成部が、前記動きベクトル検出部による前記2回の検出のうちの、1回目に検出した動きベクトルに基づいて前記補間画像を生成し、
前記動きベクトル検出部が、前記2回の検出のうちの2回目に検出した動きベクトルを前記フレームメモリに記憶し、次の隣り合うコマ間の1回目の動きベクトル検出を行うための条件の設定を、該記憶した2回目に検出した動きベクトルに基づいて行うことを特徴とする請求項4記載の画像処理方法。
【請求項6】
前記画像処理回路が、前記動きベクトル検出部が検出した動きベクトルに基づいて、ジャダーが発生するか否かを判断するジャダー判断部をさらに有し、
前記ジャダー判断部がジャダーが発生しないと判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像のみを前記第2のフレームレートで読み出して出力し、
前記ジャダー判断部がジャダーが発生すると判断したときには、前記出力部が、前記フィルムソースの各コマの画像および前記補間画像を前記第2のフレームレートで読み出して出力することを特徴とする請求項4または5記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−19037(P2011−19037A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161609(P2009−161609)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】